其の弐の続き
■速い・安い・うまい、これで売った牛丼が、BSE問題で食べられなくなったのと、何だか似たような話です。高級品だった牛肉が、どうして食費を削るサラリーマンの主食になったのか?単に貿易交渉で関税が引き下げられただけでもなく、円高の効果だけでもなかったのでした。草食動物の牛に、肉骨粉を食べさせてドーピング効果で肥育していたのでしたなあ。
■マンションにしたところで、棟割長屋から狭苦しい文化住宅、それから公営住宅やニュータウン、運が良ければ統一規格の土地つき分譲住宅という流れとは別に、都心に聳える高級マンションは特殊な人達が暮らす建物でした。これがいつの間にか、ローンを組んで庶民でも買えないことはない商品になったのですが、バブル時代ならば余計なオマケまで付けて値段を上げても売れたのとは反対に、バブル崩壊後の長期間にわたったデフレの時代には、必要不可欠な物まで取り外して「速い・安い・危ない」名前だけはマンションだのホテルだのという建物が出現する可能性は高かったのです。放っておいても崩れるほど危険な建物を売りつけて、万一バレても「詐欺罪」ですし、巨大地震が襲って来れば、一緒に倒壊した古い建物と混ざった瓦礫の山になるか、火災で灰になるから大丈夫、と思う馬鹿者が出て来るのも予想は出来たでしょう。少なくとも、最終的な強度検査を民営化した当事者達は……。
■このニュースの続報を聴くたびに、米国で最高の売り上げを記録した伝説の自動車セールスマンの話を思い出します。彼は、いつもニコニコしていて、お客様のどんな無理な注文にも応じてしまう術を心得ていたのだそうです。彼が扱ったのは最高級車で、相手は皆大金持ち。どこの世界でも大金持ちは必ずケチですから、自動車の性能など危機もしないで、超有名ブランドの車を値切り倒して買おうとするのだそうです。「あと1000ドル負けろ!」「はい、はい」「それなら更に1000ドル負けられるだろう?」「はい、勿論でございます」「あははは、それならあと500ドル……オマケして200ドル……最後にもう100ドル負けろ」という業突く張りに、そのセールスマンは笑顔で応対しているのですが、途中で突然顔を強張らせるのだそうです。
「お客様!あと100ドル値引きしますと、エンジンも外さねばならなくなりますが、それでも宜しいのでしょうか?走りませんよ。まあ、その前にハンドルも座席も無くなっているんですがね……」
■値引きをすれば、自動車から必要な部品が一つずつ取り外されるという理屈です。こうしてこのセールスマンは、正価よりちょっぴり安い値段で最高級車を売ってしまうのだそうです。お客は値段の合理性を納得しているのですから、買い換える時にもこのセールスマンが呼ばれるというわけです。今回の不動産業界の連中は、自動車で言ったら、タイヤを一本外してウインカーやライトの電球を抜き取り、ワイパーブレードのゴムを取り外し、車体全体のネジ類を三本に一本は抜き取って売り飛ばしたようなものでしょう。
■それでも「自動車」だと言い張って立派なパンフレットを見せられて、外されたタイヤが死角になるような所から実物を見せられた客がうっかり買ってくれればシメタもの。安全に走れない自動車は、自動車ではないですし、いつ倒壊するか分からない住宅は住宅ではないでしょう。でも、寿司ネタやスーパーの鮮魚コーナーには、名前を偽った別の魚が出されているそうですから、日本は孔子様の教えを思い出して「名を正す」ところから再出発しなければならないようですなあ。
■姉歯さんのトボケた表情から判断すると、きっともっと悪質な業者がうようよ棲息していそうですから、バブル再来を喜んでいる銀行が出資している「不動産ファンド」が抱えている物件にも飛び火するでしょう。おそらく、米国のファンドはCIAのOBみたいなスタッフを投入して調べ上げているでしょうから、ヤバイ物件は早々に転売して、数十年は稼げる物件だけを管理しているのではないでしょうか?後からのこのこ付いて来た連中にはババをつかませるのが「情報戦争」の常識ですからなあ。国土交通省やら地方自治体の責任問題から、いよいよ金融庁の責任問題に飛び火するかも知れませんぞ!こんな貧乏ったらしい原因で、二度目の不動産バブルがはじけたら、日本はショックで立ち直れないのではないでしょうか?
■モンゴルやチベットの遊牧民のように、自分の手でテントやゲルを建てたり畳んだりしないと、安心して眠れないような国になるのでしょうか?『三匹の子豚』を日本の子供に読んで聞かせる時は、最後のオチを変えておかないとマズイかも知れませんなあ。国と地方自治体と業者が大急ぎで賠償責任を分け合って、大きな地震が来る前に、災難に遭ってしまった住民の皆さんが安全な住居に「無料で」移れることを祈るばかりです。しかし、この問題は、「失われた十年」とそれに続くデフレ時代という長い期間にわたって続いた犯罪から生じているようですから、どこまで被害が広まるのか、まったく予想が付きませんなあ。
おしまい
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い
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■速い・安い・うまい、これで売った牛丼が、BSE問題で食べられなくなったのと、何だか似たような話です。高級品だった牛肉が、どうして食費を削るサラリーマンの主食になったのか?単に貿易交渉で関税が引き下げられただけでもなく、円高の効果だけでもなかったのでした。草食動物の牛に、肉骨粉を食べさせてドーピング効果で肥育していたのでしたなあ。
■マンションにしたところで、棟割長屋から狭苦しい文化住宅、それから公営住宅やニュータウン、運が良ければ統一規格の土地つき分譲住宅という流れとは別に、都心に聳える高級マンションは特殊な人達が暮らす建物でした。これがいつの間にか、ローンを組んで庶民でも買えないことはない商品になったのですが、バブル時代ならば余計なオマケまで付けて値段を上げても売れたのとは反対に、バブル崩壊後の長期間にわたったデフレの時代には、必要不可欠な物まで取り外して「速い・安い・危ない」名前だけはマンションだのホテルだのという建物が出現する可能性は高かったのです。放っておいても崩れるほど危険な建物を売りつけて、万一バレても「詐欺罪」ですし、巨大地震が襲って来れば、一緒に倒壊した古い建物と混ざった瓦礫の山になるか、火災で灰になるから大丈夫、と思う馬鹿者が出て来るのも予想は出来たでしょう。少なくとも、最終的な強度検査を民営化した当事者達は……。
■このニュースの続報を聴くたびに、米国で最高の売り上げを記録した伝説の自動車セールスマンの話を思い出します。彼は、いつもニコニコしていて、お客様のどんな無理な注文にも応じてしまう術を心得ていたのだそうです。彼が扱ったのは最高級車で、相手は皆大金持ち。どこの世界でも大金持ちは必ずケチですから、自動車の性能など危機もしないで、超有名ブランドの車を値切り倒して買おうとするのだそうです。「あと1000ドル負けろ!」「はい、はい」「それなら更に1000ドル負けられるだろう?」「はい、勿論でございます」「あははは、それならあと500ドル……オマケして200ドル……最後にもう100ドル負けろ」という業突く張りに、そのセールスマンは笑顔で応対しているのですが、途中で突然顔を強張らせるのだそうです。
「お客様!あと100ドル値引きしますと、エンジンも外さねばならなくなりますが、それでも宜しいのでしょうか?走りませんよ。まあ、その前にハンドルも座席も無くなっているんですがね……」
■値引きをすれば、自動車から必要な部品が一つずつ取り外されるという理屈です。こうしてこのセールスマンは、正価よりちょっぴり安い値段で最高級車を売ってしまうのだそうです。お客は値段の合理性を納得しているのですから、買い換える時にもこのセールスマンが呼ばれるというわけです。今回の不動産業界の連中は、自動車で言ったら、タイヤを一本外してウインカーやライトの電球を抜き取り、ワイパーブレードのゴムを取り外し、車体全体のネジ類を三本に一本は抜き取って売り飛ばしたようなものでしょう。
■それでも「自動車」だと言い張って立派なパンフレットを見せられて、外されたタイヤが死角になるような所から実物を見せられた客がうっかり買ってくれればシメタもの。安全に走れない自動車は、自動車ではないですし、いつ倒壊するか分からない住宅は住宅ではないでしょう。でも、寿司ネタやスーパーの鮮魚コーナーには、名前を偽った別の魚が出されているそうですから、日本は孔子様の教えを思い出して「名を正す」ところから再出発しなければならないようですなあ。
■姉歯さんのトボケた表情から判断すると、きっともっと悪質な業者がうようよ棲息していそうですから、バブル再来を喜んでいる銀行が出資している「不動産ファンド」が抱えている物件にも飛び火するでしょう。おそらく、米国のファンドはCIAのOBみたいなスタッフを投入して調べ上げているでしょうから、ヤバイ物件は早々に転売して、数十年は稼げる物件だけを管理しているのではないでしょうか?後からのこのこ付いて来た連中にはババをつかませるのが「情報戦争」の常識ですからなあ。国土交通省やら地方自治体の責任問題から、いよいよ金融庁の責任問題に飛び火するかも知れませんぞ!こんな貧乏ったらしい原因で、二度目の不動産バブルがはじけたら、日本はショックで立ち直れないのではないでしょうか?
■モンゴルやチベットの遊牧民のように、自分の手でテントやゲルを建てたり畳んだりしないと、安心して眠れないような国になるのでしょうか?『三匹の子豚』を日本の子供に読んで聞かせる時は、最後のオチを変えておかないとマズイかも知れませんなあ。国と地方自治体と業者が大急ぎで賠償責任を分け合って、大きな地震が来る前に、災難に遭ってしまった住民の皆さんが安全な住居に「無料で」移れることを祈るばかりです。しかし、この問題は、「失われた十年」とそれに続くデフレ時代という長い期間にわたって続いた犯罪から生じているようですから、どこまで被害が広まるのか、まったく予想が付きませんなあ。
おしまい
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