旅限無(りょげむ)

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首相の留守には何かが起こる 其の九

2010-10-31 16:45:59 | 政治
 ■先にも『週刊新潮』10月21日号にビデオの内容が紹介されている事を書きましたが、手元の同誌から個人的に赤線を引いた箇所を抜粋しておきましょう。

……ビデオを見た菅総理の側近が重い口を開く。
「あのビデオを公開したら、国民は怒り狂い世論は沸騰する。右翼活動家も騒ぎ立てて大変なことになりますよ。……私が見たのは2,3分の長さの映像。漁船の船長は操舵室におり、甲板では5,6人の船員が作業している。そして巡視船から逃げることなく、明らかに故意に突っ込んできているのです。それも2回」……
「映像はみずきに向かってくる漁船の様子をバッチリ捉えています」そう明かすのは海保の関係者である。
「映像を見る限り、それは明らかに船体を使った危険極まりない“攻撃”です。漁船は急激に舵を切り、左舷船首をみずきに突き刺すような格好でぶつかってきている。……その後、約2時間にも亘って逃走を続ける漁船を、すで展開している3隻の巡視船だけでなく、新たにヘリコプターも急行させて追い詰めて行った。巡視船からの放水にも怯まない漁船の船長が甲板に立って、延々と挑発的な行動を取るところも映像には残されています」 
■海上保安庁の職員が「攻撃」と感じたのは重要な意味を持つでしょう。巡視船が「攻撃」に対抗するために使ったのは「電光掲示板」と「拡声器」と「放水」だけで、銃火器による威嚇射撃は一切せずに、最初の衝突から約4時間後の午後零時55分に「漁船に強行接舷」して「海上保安官6人がなだれ込んだ」のだそうです。漁師にとって大切な船を武器にして来る連中ですから、殺傷力の強い刃物や下手をしたら拳銃くらいは持っている惧れもあったのではないでしょうか?特別な武装はしていなくても調理用の大きな中華包丁を振り回すかも知れません。本来なら「海上保安官6人」の名前と顔を公表して大臣か首相が表彰して危険な激務を労ってもよいはずで、海上保安庁の職員も士気が高まったでしょうに……。

■『週刊新潮』の記事には次のような証言も出ています。


「漁船の船長は、巡視船が接舷する間、一貫して中指を立てるなどの挑発行為をしていました。彼は何かを怒鳴っているようでしたが、風と浪の音が激しく、まったく聞こえない。しかし、何度も何度も中指を立てた右腕を前に出していましたから、向こうの言葉で私たちを罵っていたのだと思います」こう証言するのは、海保石垣海上保安部の関係者だ。
「それを見た私たちは“こいつは日本を舐めている。日本をバカにしている。絶対に捕まえなければダメだ”という気持ちになった。巡視船に連行されてきた船長はパンツ一丁の格好でした。また、異様に酒臭く、相当量のアルコール類を飲んでいたのは間違いありません。……」 

■パンツ一丁で酔っ払っている姿は、昔の川俣軍司を思い出させますが、チャイナの福建辺りでは「中指を立てる」アメリカ式の侮蔑動作が愛用されているというのは面白い話でありますなあ。米国人だったら躊躇せずに発砲するでしょうが、日本人はそれほどアメリカ文化が浸透していませんから、中指を突き立てられ即座に反応して激怒する者は少ないと考えられますが、相手を馬鹿にして挑発する意味であることは広く知られているでしょうから、強い風浪の中で危険な任務を遂行している緊張状態の海上保安官は相当に腹が立ったでしょうなあ。数発ぶん殴っても許されそうな状況ですが、「日中友好」のためにぐっと堪えて我慢したのでしょうなあ。胃が痛くなる任務に頭が下がります。

『チベ坊』の続編のような…… 其の六

2010-10-28 15:46:54 | チベットもの
チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部ロンドン)が22日明らかにしたところによると、中国青海省果洛チベット族自治州や同省海南チベット族自治州など4カ所で20~21日、中国語による教育を決めた教育改革に反発する高校生らが街頭で抗議行動を行った。……海南チベット族自治州共和県では20日、四つの学校の中高生約2千人が抗議デモを実施。生徒らは「チベット語を自由に使いたい」などと叫んだ。隣接の興海県でもデモが起きた。 21日未明には果洛チベット族自治州大武で生徒がデモ行進、武装警察に阻止された。また同日朝、黄南チベット族自治州双朋西でも約500人の中学生がデモ行進したという。
2010年10月22日 産経新聞 

■このように懐かしい地名が並びますと胸が熱くなります。海南チベット族自治州の中心地の共和県は、拙著の舞台で「四つの学校」と言いますと『坊ちゃん』の翻訳を4割ほど残して小生が去った直後に省都の4年制大学に吸収合併された我が母校も含まれている可能性が高く、見学や交流で訪れた民族中学や短期大学相当の民族学校も含まれているのでありましょう。個人的な知り合いは既に卒業してしまった後ですが、その後輩達が決起したと聞きますと感慨深いものがあります。それにデモの参加者の中には教師も含まれているとの報道に接しますと、厳しい経済状況の下で職を賭す決断の重さを考えると共に何人かの顔が浮かんで来ます。

■果洛(ゴロ)チベット族自治州の大武は現地名マチェンという標高3700m以上の高地にある町で、ゴロ州はチベット文化に興味の有る方には世界最長の未完の物語である『ケサル王伝奇』の舞台となった土地としてご記憶かも知れません。同州にはラジャ寺という真っ青な黄河源流に近い川の畔に建つ名刹もあります。


……青海省で19日から21日にかけて、授業で中国語の使用を強制する新政策に反発するチベット族の大学生や高校生らが3日連続で抗議デモを行った。……自由アジア放送(RFA)が22日、伝えた。……連日数千人がデモに参加。同仁県では数日以内に授業ボイコットも計画されているという。デモ参加者は「チベット語を返せ」と叫び、県庁前などを行進。20日の参加者は計8000人に達した。警察は各地の学校にデモを制止するよう要請したり、学生を学校に連れ戻したりしている。青海省教育庁の当局者はRFAに「状況を把握するため、職員を現地に派遣した」と述べた。中国メディアは一連のデモを一切報じていない。 
2010年10月22日 時事通信 

■留学生として現地に入り、後に正式に日本語教師として採用された身ですから、対応に追われている教育庁の中には世話になった人もおりますし、親しかったチベット人で警察関係に就職している者もおりますから、間違った政策が発端で無用な流血や不幸な事態が起こらないように祈るばかりであります。「愛国無罪」の反日デモを楽しんでいる?低地の漢族学生達は、デモに参加しないように週末特別授業を課されている由ですが、チベットで起こったデモはその学校の授業に問題があるのですから、全寮制の学校に押し込めるのは難しいでしょうなあ。


米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によると、北京の中央民族大学で22日、チベット族の学生約400人がチベット語保護を訴えるデモを行った。中国青海省でチベット族高校生らが民族文化保護を求めるデモを行っていることに触発されたとみられる。学生らは「民族言語の保護を」などと書かれた横断幕を掲げ、約2時間にわたり校内を行進したという。……
2010年10月23日 読売新聞 

■数は少なくとも中央民族大学には青海省出身のチベット人学生が在籍していますから、現地からの極秘?情報は刻々と伝わっていることでしょう。北京動物園の北側に立地している中央民族大学では、時々、異文化に対する無理解や誤解から不幸な事件が起こるそうで、大学周囲の市民でさえ不思議なことに?チベット文化については何も知らずサフラン色の袈裟を着けた高僧が暴行されたり、チベット人学生が飲食店で絡まれた揚句に意識不明の重態になるまで殴られたなどという実話もあります。大学構内は異文化の融和・交流の雰囲気が漂っているのですが、常に政治的な緊張感はあるようで……。
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『チベ坊』の続編のような…… 其の伍

2010-10-28 15:46:14 | チベットもの
「其の四」の記事が続きます。
……英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢千人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。…… 

■日本国内にもアメリカン・スクールや韓国人学校・朝鮮学校などが存在していますが、チャイナの「民族学校」というのは飽くまでも中華人民共和国の学校ですから、少々事情は異なってはいます。しかし、少数民族の文化を尊重して保護するという建前上、野蛮で可哀想な少数民族に北京語を教えてやる!という生々しい政治の本音は巧妙に隠されているようで、漢語教育は一種の外国語授業のような扱いで所定のコマ数の中に納まっていることになっております。就職や各種事情で最初から民族学校ではない漢族向けの学校に入る少数民族の子供のおりますし、逆に高校以上のレベルになると少数民族の特別枠を狙って偽者が紛れ込むという椿事も珍しくはないようです。

■北京語が下手だとマトモな就職口が無い!という現実そのものが問題で、古い話になりますが失脚した華国鋒の後を次いで国家主席に就任した胡耀邦さんが、1980年の5月にチベットを視察した時、それまでのチベット政策の失敗を認めて謝罪する有名な演説をしました。チベット復興のために投入された「莫大な資金は何処に消えたのだ?!」と言ってはいけない事まで口走って、チベット人は感動したものの、後に失脚する遠因になったとも言われております。チベット訪問時に「政治犯の釈放」「チベット語教育の解禁」と新機軸を打ち出し、その2年後には中国憲法に基づいて「信教の自由」を改めて保証し、解放戦争と文化大革命で略奪され無残に破壊された多くの僧院の再建も始められたのでしたが、「莫大な資金」を懐に入れて我が世の春を楽しんでいたに違いない悪い奴らは大いに腹を立てて、別の事件で胡耀邦さんが失脚すると全部丸ごと御破算になったという切ない歴史がありましたなあ。

■「西部大開発」を象徴する青蔵鉄道が鳴り物入りで開通して日本のNHKなども盛んに宣伝に強力したものですが、不思議なことに西部大開発によって経済格差がどんどん広がり、開発の資本を握っている特権階級が続々と乗り込んで来て肥え太って行くばかりというチベット人にとっては袋小路に追い込まれるような状況が深刻化しているようです。中には知恵と努力と幸運?で経済的に成功したチベット人も存在しますが、先日、そんな一人のチベット人が逮捕されて財産を没収されるという事件が起きましたなあ。

■今回の学生デモの発端となったカリキュラムの全面的な改定により、チベット人はチベット語を外国語のように学ばねばならなくなるわけで、多くの由緒有る寺院を爆破・破壊し僧侶を殺害した歴史に、世界的な仏教文化を写し取って保存しているチベット語を死滅させるのか?!という重大な問題として多くのチベット人を怒らせてしまったのは大失敗でしたなあ。


……同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。
2010年10月24日 産経新聞 

■どのように願いを「尊重」するのか?青海省政府の名で決定された政策をあっさりと引っ込めるわけには行かないでしょうし、かと言って更に強行したら大規模な暴動に発展する可能性が高く、政権末期の胡錦濤国家主席としては出世の糸口を「ラサ暴動」でつかんだ身としては、絶対に「チベット暴動」で失脚するわけにも行きますまいから、最後の手段としては「青海省政府の暴走」として大きなトカゲの尻尾切りを断行するしかないかも知れませんなあ。
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首相の留守には何かが起こる 其の八

2010-10-28 14:23:55 | 政治
 衆院予算委員会は13日、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の状況を海上保安庁が撮影したビデオ映像について、那覇地検に提出を求めることを全会一致で議決した。だが、政府は当面、非公開とする方針だ。また、議決は具体的な公開方法まで含む要求にはなっておらず、ビデオが国会に提出されれば、理事会で扱いを協議する。……国会法によると、政府は基本的に要求に応じなければならない。しかし、内閣が「提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨」の声明を出せば、提出しなくてすむ。
2010年10月13日 産経ニュース 

■既に「重大な悪影響」は出てしまっております。その原因は菅アルイミ首相がビデオ公開を躊躇して攻める好機を逸したからであります。今となっては、ビデオを公開して最大の被害を受けるのは那覇地検に圧力をかけて「釈放」させた民主党政権に他なりませんから、政権維持のために邪魔なビデオを仕舞いこんで国民が忘れてくれることを願うばかりなのでしょうなあ。


……衝突事件をめぐり、菅直人首相は18日夜、民主党の岡田克也幹事長、輿石東参院議員会長らと首相官邸で会談し、海上保安庁の巡視船が衝突時に撮影したビデオテープを国会に提出する方針を決めた。公開の時期や方法については今後与野党間で協議する見通し。……ビデオには中国漁船が故意に巡視船に衝突する様子が克明に記録されており、公開すれば国際世論は日本に有利に傾くとされる。仙谷由人官房長官は9月28日の記者会見でビデオ公開の可能性を示唆したが、その後中国側に配慮し、消極姿勢に転じていた。
2010年10月18日 産経ニュース 

■「日本が一方的に悪い!」と居丈高に決め付けて学生にデモまでやらせているチャイナが事件の記録を「公開するな!」と言っているのは辻褄が合いませんが、一方的に押し捲られた日本側がそれに同調して「配慮」しているというのはメチャクチャな話であります。『週刊新潮』10月21日号の特集記事「尖閣ビデオに怒髪天の国辱シーン」で、最も重大な場面は活字になって紹介されておりますし、ネット・ニュースの中にもビデオの概要が出ているのですから、この期に及んでビデオを出し渋るのは偏に「北京政府が怒るから」という卑屈な理由によるのでしょうなあ。


中井洽衆院予算委員長は27日午後、国会内で、尖閣諸島沖の中国船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオ映像を横路孝弘衆院議長から受けとった。衆院予算委は午後に理事懇談会を開き、取り扱いを協議する。横路議長は同日午前、政府からビデオの提出を受けていた。横路氏はビデオを渡すにあたり、那覇地検からの要望として「配慮が必要なので、見る方の範囲を含めて慎重に扱ってほしい」と伝えた。これに対し、中井氏は「気をつけて対応します」と応じた。
2010年10月27日 産経ニュース 

■どうして「配慮が必要」なのでしょう?よほど正視に堪えない残酷な場面が含まれているのか?はたまた子供達に悪影響を与える猥褻画面が散在しているのでしょうか?そういう下世話な興味と期待がどんどん膨らんでしまう取り扱い方ですなあ。


自民党は28日午前……政府が国会に提出したビデオ映像は編集され不十分だとして、映像全編の提出を衆院法務委員会で求める方針を決めた。佐藤勉国対委員長代理が記者会見で明らかにした。中国人船長の釈放を判断したとされる那覇地検幹部の国会招致も法務委で求める。……ビデオ映像は、約6分間とされる。自民党国対幹部は「海上保安庁が撮影した映像は約2時間あるという。誰が編集したかも分からず、改竄された可能性もある」と述べた。……
2010年10月28日 産経新聞 

■どうして「6分間」に編集しなければならないのか?しかもオリジナル映像の95%を切り捨てた記録なのに「配慮」だの「慎重に」だのと不発弾のような扱いをしているのも解せません。そもそも、記録映像は菅アルイミ首相が国連会場に持参して「証拠の記録映像を持参した」という一言の切り札にすべき武器だったはずで、これから国内向けに何処かでこそこそと隠れて恥ずかしいビデオでも観るように奇怪な限定付きで公開しても、単に公開したという空疎な大義名分が偽造されるだけでありましょう。


……海保が撮影したビデオ映像は、漁船に衝突された巡視船「よなくに」(1349トン)と「みずき」(197トン)の船首付近から撮影されたもの。……漁船はよなくにの左後方に衝突した後、漁船の左前方を並走していたみずきに幅寄せするように接近した末、左にかじを切って衝突している。漁船がみずきと並走していた際の航行速度は約10ノットだったとみられ、漁船はその後、約12~13ノットに速度を上げてみずきに近づき、「体当たり」しているという。
漁船の最高速度は通常20ノット程度といい、逃走を図ったにしてはやや低速だった。衝突を避ける場合は減速したり離れたりするはずだが、逆に速度を上げて接近しており、「故意の衝突」を裏付けている。……海保に公務執行妨害容疑で逮捕された漁船の中国人船長は衝突前、酒を飲んでいたとみられる。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。那覇地検は日中関係を考慮し、勾留期限の4日前に船長を処分保留のまま釈放した。すでに釈放から1カ月が経過しているが、まだ処分を出していない。
2010年10月28日 産経ニュース 

■以上の記事は「27日に分かった」との報道になっているのですが、別のメディアからはもっと早くもっと詳細な内容が漏れ出ていましたぞ。

首相の留守には何かが起こる 其の七

2010-10-28 14:23:14 | 政治
 ■いよいよ始まった事業仕分けの第三弾ではありますが、これまでに法的拘束力も無い単なる宣伝用の見世物でしかない事がバレてしまっているので、自慢のファッションで身を固めた蓮舫大臣が尤もらしく「特別会計を丸裸にする!」と叫んでみても、国民の視線は列島上空の寒気団の如くに冷ややかなものでありましょう。南は豪雨の後に台風が接近、北では大雪と1月前までの狂ったような猛暑が現実のものだったのか?と我が身を抓って確かめたくなるような気象の激変ぶりは、政権交代の猛暑のような熱気が冷めてマニフェストの鍍金も剥がれた政権与党の民主党によく似ているような……。

■かつて村山内閣という奇怪な政権が出現した時に、神戸の大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件が続け様に起こったことが、最近の菅アルイミ政権の迷走ぶりを見ていると不思議に思い出されるのであります。得体の知れない自信に満ち溢れている仙谷ノーコメント官房長官や不思議なくらいに余裕綽々でニヤニヤしながら大臣席に並んでいる素人集団の姿からは政治の重みも責任感もまったく伝わって来ないのは、あの自社連立政権という与党になりたいだけの目的で生み出された野合内閣とまったく同じ意識を共有しているからではないのでしょうか?今の民主党を一皮向けば、かつての自社連立内閣よりもバラバラで前後左右の距離が大き過ぎて正体が分かりませんぞ。

■長かった猛暑の後に巨大な寒気団が南下し、大勢力の台風が北上して来る時に列島各地で不気味に目立った地震が頻発しているのが気になって仕方がない今日この頃なのでありますが、尖閣衝突事件の後始末を着けずにうやむやのまま先送りしようとする菅アルイミ政権は自らが追い詰められている現実を直視しようとはせずに、自民党と公明党の要望を丸呑みする裏取引で当面は政権が維持出来そうだと大いなる勘違いをしているとか……。


……漁船衝突事件で、中国側が打診してきた「領有権」問題の棚上げ論は中国の常套手段である。……棚上げ論は中国のかつての最高実力者、小平氏が提唱していた。1978年に来日した際、尖閣諸島の「領有権」について「この問題は後の世代の知恵に任せて解決しよう」と表明。「存在しない」はずの領土問題を強引に国際問題化させ、経済的な利益の分配をちらつかせながら、やがて軍事支配を強める手法だ。これを実践したのが南沙諸島だ。中国は1988年のベトナムとの交戦を経て諸島の一部の実効支配を強めると、1995年には当時の銭其シン外相が、氏の路線を踏まえて問題の「棚上げ」化を推進。2005年にベトナム、フィリピンとの海底資源の共同探査で合意し巧妙に主権奪取へと動いた。今や中国は南シナ海を自国の領海と位置付けている。…… 

■長らく日本の政界では「外交は票にならない」と言われ続けておりましたから、民主選挙を通して意志を示す有権者が外交問題に興味を持たず内向きの平和を貪っていた責任は重いのですが、情報を独占して政治家にも国民にも真実を伝えずに奇妙なエリート意識に凝り固まった外務官僚にはもっと大きな責任がありましょうなあ。平和憲法にしがみ付いてさえいれば軍事や安全保障の問題に頭を悩ませる必要はないと国民も政治家も外務官僚も怠惰な時を過ごして来たツケをいよいよ支払わねばならない状況になったのかも知れません。


軍事力を背景にした中国の海洋権益への意欲は強まるばかりで、18日に閉幕した中国共産党第17期中央委員会第5回総会で採択されたコミュニケでも、「国防・軍の近代化を強化し、情報化時代の局地戦に打ち勝つ能力を核心とし、多様化した軍事的任務を完遂する能力向上」を目指す方針を盛り込んだ。菅直人首相は、「日中関係は戦略的互恵関係の原点に戻りつつある」と述べ、関係回復に自信を示す。だが、交渉が中断している東シナ海のガス田共同開発でも、「東シナ海の実効支配を強めるのが中国の本当の狙い」(外務省幹部)とされている。「当面の問題を棚上げしておけば、いずれ日本は妥協する」と見越したような中国の思惑に乗せられて関係改善を急ぐのか、それとも断固として主権にこだわるのか。日本外交の岐路が訪れようとしている。
2010年10月21日 産経ニュース 

■臨時国会で取り上げられたのは「那覇地検」「政治とカネ」ばかりで、ガス田問題も尖閣防衛もまったく素通りでしたなあ。少なくとも決算委員会で防衛予算の見直しを絡めて東シナ海の安全保障を取り上げて実のある討論をして欲しかったのですが、「八百長国会」などと陰口を叩かれるようでは喧嘩の芝居ぐらいしか期待できないのでしょうなあ。既に外交的には宝の持ち腐れになってしまった海上保安庁が命懸けで撮影した証拠ビデオに関する議論も、あまり真剣みのあるものではなかったようですが……。

『チベ坊』の続編のような…… 其の四

2010-10-27 16:12:56 | チベットもの
■11月の「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」にダライ・ラマ法王が出席できるかどうか、尖閣衝突事件の処理方法を見てしまった後となりますと不安が募る一方でありますが、北京政府は来日すること自体に怒っているわけではないので、宗教家としての活動は行なわれるようであります。

東大寺(奈良市)は22日、11月に来日予定のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世が同月8日、同寺で「縁起に基づき、平和と環境のためになすべきこと」と題して講演すると発表した。
2010年10月23日 産経新聞 

■第11回の「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」は11月12日~14日に広島で開催されるそうですから、ダライ・ラマ法王は奈良から広島に向かわれるのでしょう。


……「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」を歓迎しようと、広島市立基町小学校(同市中区)の児童ら約300人が6日、イラストレーターの黒田征太郎さん(71)と一緒に、サミット会場などに掲示するポスターを描いた。黒田さんはNGO「平和市長会議」(会長=秋葉忠利広島市長)が提唱する20年までの核兵器廃絶の道筋「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に賛同し、解説本のイラストを描いた。広島の爆心地の北約900メートルにある同小は平和教育に熱心で、黒田さんの協力を得てポスターを描くことにした。隣接する幼稚園と保育園の園児も参加し、原爆ドームを薄く印刷した……紙にハトや虹など、平和をイメージした絵をクレヨンで描いた。……同サミットは11回目の今回「核兵器のない世界」をテーマに初めてアジアで開かれる。旧ソ連のゴルバチョフ元大統領やチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世らが出席を予定し、秋葉市長らは、オバマ米大統領にも出席を呼びかけている。
毎日新聞 2010年10月6日 

■子供が大好きなダライ・ラマ法王ですから、一所懸命に歓迎準備をしてくれた子供達と親しく交流できれば良いですなあ。ところで駄目モトで今年の受賞者である劉暁波さんにも招待状を公式に送っては如何でしょう?会議のテーマは「人権」「民主化」「経済格差」などとは無縁の「核兵器のない世界」なのですし、被爆地の惨状を知って貰えれば天安門事件の惨劇と共鳴して劉氏の執筆活動にも資すると思うのですが……。まあ、無理でしょうなあ。

■ここで本題に戻ります。
 

反日デモが続く中国で、少数民族による政府への抗議デモも広がりをみせている。中国語による授業を義務づける教育改革に対しチベット族が反発し、青海省チベット族居住区で火がついた学生による抗議行動が首都北京にも飛び火した。民族同化をもくろむ当局のいき過ぎた教育改革が、漢族への不信感を増幅させている。チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部・ロンドン)によると、青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日、民族学校の高校生ら5千人以上がデモ行進し、「民族、言語の平等」を訴えた。20日には同省海南チベット族自治州共和県で学生が街頭に繰り出し、「チベット語を使う自由」を要求。22日には、北京の中央民族大学でも学生がデモを敢行した。…… 

■20日水曜日にデモが行なわれた「海南チベット族自治州共和県」は、拙著『チベット語になった「坊ちゃん」』の舞台でありますので、地名を聞いただけで現地の風景と共に数多くの思い出が次々と湧き出します。19日に最初のデモが行なわれた同仁県にも北京の中央民族大学にも何度か足を踏み入れて、いろいろと見聞を広げる貴重な体験をしたことも思い出されます。北京の同大学にはチベットやウイグルなどの少数民族地域からの学生が集まっていますから、故郷からの情報は素早く伝わって学校内に広がります。「民族・言語の平等」は、チベットを併合する時に交わされた議定書にも明記されておりますし、その後に発表された政府の文書にも何度も謳われている事ですから、「分離・独立」を求めるデモのように武力で制圧するわけにも行きますまいなあ。

■拙著でも政治的な独立や経済問題よりも、まずは言語の衰亡を止めて伝統文化を守ることが重要ではなかろうか、と私見を述べておきましたが、当時は学校の教育現場における漢化政策は「少数民族の文化を尊重・保護する」という国際的な宣伝用の看板に反しないよう巧妙にじわじわと行なわれたいた印象がありましたが、政府の世代交代が進んで急進的な方針転換が必要になったのかも知れませんなあ。
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『チベ坊』の続編のような…… 其の参

2010-10-27 15:53:30 | チベットもの
■週末になる度にチャイナの各地で学生達が集まって騒いで公安当局も手を焼いているようですが、「愛国無罪」の看板も時には剥がれて落ちて下地の本音がちらちら見えるようになって来ているので北京政府も気が気ではありますまい。10月23日付けの新聞までは国際面の小さなベタ記事扱いだった青海省でのチベット人学生による抗議デモが、さすがに3日も連続して一本の導火線を辿るかのように主要な道路を伝って広がって行くのですから、大きな特集を組んだ新聞も現われましたなあ。目に見えない導火線はラサ市を目指しているような印象でありますが、ウイグル地域などにも飛び火するかも?

■チベット地域で連続している抗議運動は愛国運動などとは無関係ですから尖閣問題やら日本の悪口などへの言及は皆無で、最初から北京政府の民族教育政策に対する真正面からの抗議だけという単純であるが故に先鋭化したものであります。漢族の学生が騒いでいる内陸部の都市では、劉氏のノーベル平和賞受賞も火種の一つになっているようですが、チベット人にとってはダライ・ラマ法王という同賞を受けて先輩格の存在がありますから、ノーベル賞を非難する北京政府の態度がチベット人達にとっては法王を悪人扱いし続けている政府のチベット政策に対する怒りと恨みを思い出させる効果があったのかも知れません。


インドのジャミア・ミリア・イスラミア国立大が22日までに、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世に名誉博士号を授与したいとインド政府に提案したが、政府が却下していたことが分かった。……ダライ・ラマは海外の大学などから名誉博士号を授与されているが、インドの大学としてはこれまで例がなかった。インド政府筋は「インド政府はダライ・ラマを深く尊敬しているが、(ダライ・ラマを「国家分裂主義者」と批判する)中国との関係を悪化させたくない」と背景を説明した。中国政府は、中国が領有権を主張するインド北東部アルナチャルプラデシュ州をダライ・ラマが昨年訪問した際や、シン首相が今年、ダライ・ラマと会談した際にはインド政府に抗議した。
2010年10月22日 産経新聞 

■アルナチャルプラデシュ州をダライ・ラマ法王が昨年訪問した件に関しましては、『ダライ・ラマ法王が訪米 其の八』
で取り上げましたが、その後も日本が米国に続いてインドに接近しようとする動きに対応するかのように、チャイナはパキスタンとの関係をどんどん強化しておりますから、インド政府としては経済と軍事の両面で北京政府と対決する準備を整うまでは、チャイナ側の誇大妄想・針小棒大・我田引水・傍若無人な抗議のタネとなる問題は起こしたくはないのかも?1959年当時、世界が見捨てたチベットから逃れたダライ・ラマ一行を迎え入れて亡命政府の設立も認めたインドとダライ・ラマ法王との信頼関係は今のところ問題は無いようですから、学位の一つや二つ受けられなくても法王はいつもの調子でジョークで済ませることでありましょう。

■しかし、こうした情報は驚くほど早くチベット人の間に広まるもので、ダライ・ラマ法王の名誉が傷ついたと思って怒りを覚えた人達もいた可能性はありそうです。逆に独裁政権による厳しい報道規制が無いはずの日本では、以下のようなニュースが意図的に小さく扱われて問題の核心が見えにくくなる傾向があるような気がしますなあ。


11月予定のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世の来日に対して、中国政府が日本側の招聘自体を取りやめるよう要求していることが(9月)22日、分かった。中国政府は従来、ダライ・ラマ来日では日本側に圧力をかけてきたが、会合への出席を止めようとするのは異例。沖縄・尖閣諸島周辺での漁船衝突事件を受け、中国側が強硬姿勢を取っている可能性がある。…… 

■尖閣衝突事故に関して、日本側の「柳腰」外交の真相などは既に隠しようもなく国民に見えてしまっているようなものですが、チャイナで展開されている権力闘争の暗部や軍と政府との関係など、日本のマスコミがつかみ切れていない謎が多いようです。しかし、9月22日という日付の重要性を忘れては行けません。前日には菅アルイミ首相は誰も聞いてくれない演説をするために米国に出発していまして、仙谷ノーコメント官房長官に対して「留守中に解決してね」と責任丸投げの指示?を残して行ったことが判明しております。

■エエカッコしいの前原国交大臣の指示によって公務執行妨害で酔っ払い船長を逮捕拘留したものの、手段を選ばぬ恫喝外交を展開する北京政府の態度に菅アルイミ素人内閣は震え上がって顔面蒼白、仙谷ノーコメント官房長官は何も知らない法務大臣を脅しつつ、外務省の担当課長を那覇地検に派遣したのが9月23日!「我が国の国民への影響と今後の日中関係を考慮」するという立派な?外交的理由で船長を拘置期限前に釈放したのは翌24日のことでした。従いまして9月22日の段階で北京政府は強行姿勢による外交的勝利を確信していたはずで、事のついでにもう一度仙谷ノーコメント官房長官に「柳腰外交」をして貰おうかと虫のいい皮算用をしていたのかも知れませんぞ。


ダライ・ラマが出席を予定しているのは、広島市で開催される「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」(ローマの同サミット事務局主催)。ダライ・ラマのほかゴルバチョフ元ソ連大統領や、エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長ら歴代のノーベル平和賞受賞者9人が、「ヒロシマの遺産・核兵器のない世界」をテーマに議論する。……中国側は外交ルートを通じ「彼(ダライ・ラマ)はノーベル平和賞を受賞するような人物ではなく、招聘はしないほうがいい」などと指摘。ダライ・ラマを「分裂主義者」と見なす従来の主張を繰り返し、招聘を自粛するよう要請した。これに対し、開催地の広島市は「中国側から現時点で抗議は受けていない」(市平和推進課)として、予定通りダライ・ラマを招聘するという。…… 

■本来ならば菅アルイミ首相もそそくさと参加して、またぞろ「誰も聞いてくれない演説」をしに出掛けたくなるような民主党政権好みの国際会議なのに、この件に関して政府はまったく知らん顔でありますが、きっと「北京政府は怒っている」からなのでしょうなあ。


中国側はこれまでも、チベット問題に神経をとがらせてきた。平成17年4月に宗教団体の招きでダライ・ラマが訪日した際、日本政府が「宗教活動」として入国を認めたことに対して、駐中国大使館の日本公使を呼びつけて抗議。19年11月には、野党時代の鳩山由紀夫民主党幹事長がダライ・ラマと会談すると、駐日中国大使館が民主党を非難する声明を出した。政府関係者は「尖閣での事件にチベット人権問題が加わることで、中国国内が混乱することを中国指導部がおそれているのではないか」と分析している。
2010年9月23日 産経新聞 

■野党時代の鳩山サセテイタダク前首相は、自分の無知を一種の武器にしてこのような壮挙もしていたのですが、実際に政権を担当すると「匹夫の勇」を示す機会も無く意味不明の妄言を歴史に残して自任してしまったのでした。時にはトンデモない事をする危険があった鳩山サセテイタダク前首相が失脚して北京政府の思いをこまごまと忖度してくれる御用聞きみたいな官房長官が何も知らない菅アルイミ首相を操ってくれているので、こうした内政干渉も当然の権利と勘違いしてしまうのかも知れません。

柳腰と下駄の雪 

2010-10-24 07:08:30 | 外交・情勢(アジア)
■米国を訪問中に安倍元首相が尖閣衝突問題などに関して、強引な領土拡張のやり方を第二次大戦のナチス政権に似ていると非難したことを「失礼だ!」と神経質に北京政府は怒っているそうですが、少なくともドイツには歴史的な「東方問題」が残されていたので、ヒトラーが軍事力を背景としてその解決を計った時には国内は熱狂的に支持したのは当然でありましたし、欧州諸国も渋々ながら譲歩せざるを得なかったのも無理からに事情があったとも言われておりますから、火の無いところに無理やり火種を投げて煙を上げるように「領土問題」を発生させて回るような誰かさんとは区別した方がよいかも知れません。

■勿論、ソ連への侵攻、フランス占領、イギリス攻撃へと突き進んだ頃のナチス・ドイツと尖閣奪取を目論む北京政府とは違います。強いて似ていると言うならば、1950年代のチベット侵攻やウイグル占領、1970年代のヴェトナム懲罰戦争などの動きが全盛期のナチスに近いかも知れませんなあ。似ているのは、反日デモ騒動が起こるたびに繰り返される集団的破壊行為の方で、ナチスが扇動したユダヤ人の商店や住居が襲撃された「水晶の夜」事件を思い出させます。


複数の日系小売店で窓ガラスを割られる被害が相次ぐなど、中国に進出した日本企業の間に反日デモに対する困惑と不安が広がっている。被害を受けていない企業もいつ標的にされるか分からないほか、中国政府が厳しい対応を取らないことに「黙認しているのではないか」(大手メーカー幹部)など、不信感も募っているからだ。今後、デモがエスカレートする事態になれば、現地工場の生産中止など深刻な影響に発展する公算も大きい。…… 

■日本国内では長引く不況で思い切った設備投資も出来ず、政府の後押しとマスコミ報道などに押されて「世界の市場」のチャイナに活路を見出そうと出て行ったからには、ちょっとやそっとのことでは撤収するわけにも行かず、現地で怯えながら踏ん張っている同胞の安全を祈るばかりなのでありますが、日本人学校の運動会を延期するだの通学中に不安があるだのと聞きますと、家族の心配をしながら仕事に精を出さねばならない皆さんの御苦労が想像されます。


……四川省成都市のイトーヨーカ堂では店舗に石が投げられ、ショーウインドーが割られたほか、スポーツ用品大手のミズノは陝西省西安市にある直営店が店舗を壊され、商品を奪われた。……空調メーカーのダイキン工業は、西安市にある部品製造工場の操業を16日夜から17日にかけて一時停止した。18日に操業を再開したが、工場が反日デモの集会場所に近い距離にあったため万一に備えたという。デモ近辺の店舗を一時閉鎖したイトーヨーカ堂やカジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでは通常通りの営業を再開したが、再びデモ隊の標的になる懸念もぬぐえない。危険にさらされた場合の対応について、ファーストリテイリングの関係者は「緊急マニュアルに沿って一時的に閉店するなどの措置をとる」としている。…… 

■従業員の生命の安全を心配しながら営業・生産をしなければならないというのは異常なことであります。日本人相手なら絶対に報復されないという気味の悪い安心感があるようですが、損害賠償などの問題はどのように処理されるのでしょうなあ?まさか泣き寝入りということはないのでしょうが、地方政府や北京政府に対して謝罪も補償も求めず大人しく自前の保険で対処するだけなら泣き寝入りと同じことですから、日本政府は厳正な態度で抗議するべきでしょう。しかし、菅アルイミ内閣はこの暴動事件を他人事みたいに眺めているだけのような印象が強いのは何故でしょう?


日本食レストランや日系メーカーの自動車や家電商品が壊される被害も出ており、日本企業の店舗や日本製品への攻撃がさらに広まる可能性が出ている。こうした中、日中間を結ぶ航空路線のキャンセルも急増している。沖縄・尖閣諸島の漁船衝突事件以降、ジワジワと増え始め、先週末時点で日本航空で3600人、全日本空輸も団体客を中心に18日時点で約7500人に上った。日航によるとキャンセルの内訳は「日本発」が3100人強に上り、大西賢社長は19日、今後も落ち込みが続く場合、日中路線を減便する考えを明らかにした。電機大手のNECは現地駐在員に「広場など人が多く集まるところに近寄らないように」と注意を喚起。日産自動車も出張者に外出の際には言動に注意するよう求めている。
2010年10月19日 産経ニュース 

■日本の外務省や総理大臣が中国大使を「真夜中に」呼び出して抗議したという話は聞きませんし、北京の日本大使館が抗議の姿勢を見せたとか大きな声を上げたという報道も無いようですが、尖閣衝突事件に関連した失礼千万な北京政府のやり方と比べますと、釣り合いが取れていないような気がしますなあ。これも「柳腰」外交で切り抜けるつもりなら、深く静かに潜行して徐々に企業をチャイナから撤収させ、貿易規模も縮小するような仕掛けを作ってレアアースなどの資源の調達先も別の国に変える仕組みを準備しているのなら安心なのですが……。踏み付けられても、何処までも着いて行きます下駄の雪という姿勢を続けるだけでは、ガス田も尖閣諸島も失うわ、沖縄に関しても好き放題を言われるわ、その上、いつ何時チャイナ版「水晶の夜」が再発するか分からないわでは、日本の将来は暗くなるばかりでありますなあ。

■仙谷ノーコメント官房長官が空疎な謝罪などをしている間に、「柳腰」外交で対応しなければならない課題がどんどん増えていくのはどうしてでしょう?


……漁船衝突事件で日本側が逮捕し、那覇地検が処分保留で釈放した●其雄船長が23日までに、地元の中国福建省泉州市で「道徳模範」の一人に選ばれ、表彰を受けた。香港メディアが伝えた。今回選ばれた泉州市の道徳模範は計27人おり、●船長は仕事に熱心に取り組み社会貢献した住民に贈られる「敬業奉献模範」に選ばれた。6月から選考が始まり、計133万人の投票に基づき選ばれたという。……表彰式後は記者の取材を断り、目立たないようにしていたという。
●=擔のつくり
2010年10月23日 産経ニュース

■こういう場合、「柳腰」外交で対応すると祝電でも送るのでしょうか?嗚呼。

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首相の留守には何かが起こる 其の七 

2010-10-21 16:13:04 | 政治
■鳩山サセテイタダク前首相は、北海道教職員組合による選挙法違反事件が発端となった補欠選挙の応援に顔を出したそうで、柔道議員の谷亮子さんの現役引退を引き合いに出して「人間は引き際が大事だ」と臆面もなく言ったそうですが、総理を辞める・影響力は残さない・次期選挙に出ない、と言いたい放題の空手形を並べておいて、僅か一週間ですべてを反故にしたという自分の前科を完全に忘却しているようですなあ。実質的な総理大臣として国会で吼えまくっている仙谷官房長官も、自分が過去に言ったことを丸ごと忘れて棚に上げ、野党からの批判・追及に逆上しているようですから、記憶力の悪さは民主党が持つ唯一の党としての議員共通の特性なのかも知れません。

■鳩山前首相は、沖縄の基地移設問題を大混乱させた責任を取って自任すると祖父と父に面目ないとて、敢えて「政治とカネ」の問題を前面に出してクラッシャー小沢を道連れにする大芝居を打ったのでしたが、言行不一致・前言撤回の一例として「沖縄の心」を乱発して政府と地元との間の亀裂を広げ、最後は日米関係を軋ませるという大変な失政に至ったのでした。後任の菅アルイミ首相にとっては、飽くまでも「政治とカネ」の問題で二大悪人が去った舞台に登場する役回りになったのは儲け物でした。もしも基地移転問題の解決と日米関係の修復を課題とされたら、鳩山内閣が火達磨になっている時に蚊帳の外にいた身では代表選は辛かったことでありましょう。

■珍しくもないチャイナの反日デモの猛威が吹き荒れる原因になった漁船衝突事件が起こった尖閣諸島も、沖縄県に含まれている日本の領土なのですから、もしも、鳩山前政権が危なっかしく連発した「沖縄の心」が「沖縄県民の心」と同義語だったとしたら、尖閣問題は沖縄問題であることを忘れてはなりますまい。


中国漁船衝突事件に絡み、尖閣諸島周辺での領海侵犯や違法操業の再発防止を求める集会が沖縄県宜野湾市であり、石垣島や与那国島などの自治体の首長や漁民らが「安心して操業させてほしい」と、集まった約700人を前に訴えた。
中山義隆石垣市長は「尖閣諸島は市の行政区画だが、市長でも上陸できない」と説明。
下地敏彦宮古島市長は「尖閣の問題は、国の主権が侵されていることを受け止めて行動しなければならない」と強調した。
国境周辺の海域で操業する与那国町漁協の中島勝治組合長は「台湾や中国に拿捕されたら、大丈夫なのか」と疑問を呈した。たちあがれ日本の平沼赳夫代表など国会議員も出席。平沼代表は政府に対し「毅然とした態度を示さなければならない」として、事故状況を撮影したビデオ映像の公開を求めた。
2010年10月16日 産経ニュース 

■菅アルイミ内閣は船長の釈放は「那覇地検の判断」だという公式見解に固執し続けていますから、こうした「沖縄県の声」も地検の壁越しにちょっと聞こえる物音程度の認識なのかも知れませんが、領海侵犯・違法操業の犯罪船長を沖縄の地方検察に釈放させて自らの関与も決断も否定している菅アルイミ首相ですから、世界一危険な普天間基地の移設問題も沖縄の県知事選挙の結果が出るまでは音なしの構えの頬被りで、いよいよ決断せねばならなくなったら選出されたばかりの知事さんに責任を押し付けてしまうのでしょうか?

■民主党の前衆議院議員・喜納昌吉さん(62)が著書『沖縄の自己決定権-地球の涙に虹がかかるまで』の中で、副首相兼国家戦略担当相だった昨年9月に、菅アルイミ首相が「(普天間飛行場の移設)基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない。もう沖縄は独立した方がいい」と喋ってしまった事を暴露しているそうで、この発言はチャイナのネット上で大歓迎されているとの報道がありましたが、菅アルイミ首相は現実に「琉球独立党」という政党が1971年に結成されており、2006年11月の沖縄知事選で6220票を獲得していることをご存知の上で、「独立」を口にしているのでしょうか?きっと公の場で「独立」発言を追及されれば、官房長官を見習って急性「健忘症」になってトボけるのでしょうが……。

■仙谷官房長官の「柳腰」外交が驚くべき速さで相手国政府に伝わったらしく、本物の柳腰外交が牙を剥き始めているようですから、御用心、御用心。


……衝突事件に関連して、中国側が尖閣諸島の「領有権」をめぐる問題を棚上げするよう日本側に打診していたことが20日分かった。……日中両政府はブリュッセルで今月5日に行われた菅直人首相と温家宝首相による会議場廊下での会談で、関係改善に向けた協議を進めることで一致した。しかし、関係筋によると、その後に行われた協議で、中国側は自国の領土だと明言した上で、棚上げ論を提示してきた。これに対し、日本側は「東シナ海に領土問題はない。尖閣諸島は日本固有の領土だ」といった従来の見解を主張し、議論は物別れに終わったという。日中両政府は28日からハノイで行われる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の機会に、事件後初の正式な日中首脳会談を行う方向で最終調整している。……
2010年10月21日 産経ニュース 

■40年も前に最高実力者・小平が提案して園田直
外相が絶賛して受け入れた「棚上げ論」が、巡り巡って再び恐ろしい場面で登場したものであります。その後の40年間、日本側は馬鹿正直に本気で「棚上げ」して昼寝をしていたのに対し、北京政府は政府や軍が糸を引く「民間船」が盾になったり煙幕の役目を果たして、軍や政府の船が徹底的に周辺海域を調べ上げてしまったという話がありますから、今更、40年前のスタートラインに手に手を取って戻りましょうね、という訳には参りません。

『チベ坊』の続編のような…… 其の弐

2010-10-20 14:25:01 | チベットもの
■チベット関連の報道が悲しいほど少ない日本のマスコミには困ったもので、尖閣衝突事件に関連して以下のような動きがあったことは余り知られていないのではないでしょうか?AP通信が9月23日に伝えたニュースです。

11月予定のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世の来日に対して、中国政府が日本側の招聘自体を取りやめるよう要求していることが22日、分かった。中国政府は従来、ダライ・ラマ来日では日本側に圧力をかけてきたが、会合への出席を止めようとするのは異例。沖縄・尖閣諸島周辺での漁船衝突事件を受け、中国側が強硬姿勢を取っている可能性がある。 

■どさくさに紛れて「柳腰」の日本に対して、言いたい放題にも程がある!と憤慨したくなる八つ当たりみたいな話であります。


ダライ・ラマが出席を予定しているのは、広島市で開催される「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」(ローマの同サミット事務局主催)。ダライ・ラマのほかゴルバチョフ元ソ連大統領や、エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長ら歴代のノーベル平和賞受賞者9人が、「ヒロシマの遺産・核兵器のない世界」をテーマに議論する。……中国側は外交ルートを通じ「彼(ダライ・ラマ)はノーベル平和賞を受賞するような人物ではなく、招聘はしないほうがいい」などと指摘。ダライ・ラマを「分裂主義者」と見なす従来の主張を繰り返し、招聘を自粛するよう要請した。 

■劉暁波氏も「ノーベル平和賞を受賞するような人物ではない」ようなのですが、それなら誰が受賞に値する人物なのか、是非とも実名を挙げて教えて頂きたいものですなあ。この抗議を送り付けた時点では、まだ劉氏の平和賞受賞は決まっていなかったのですから、ノーベル平和賞に対しては一応の敬意を持っているようにも聞こえますが、今となっては平和賞自体を否定する可能性さえありそうです。でも、本当は「核兵器のない世界」という北京政府にとっては嬉しくないテーマの会議自体に反対なのではないでしょうかな?これから航空母艦と原子力潜水艦で太平洋の西半分を支配して軍事超大国の米国と対峙しようと本気で考えている誰かさん達は、いざとなったら躊躇せずに核兵器をバンバン使う心算でしょうからなあ。


これに対し、開催地の広島市は「中国側から現時点で抗議は受けていない」(市平和推進課)として、予定通りダライ・ラマを招聘するという。中国側はこれまでも、チベット問題に神経をとがらせてきた。平成17年4月に宗教団体の招きでダライ・ラマが訪日した際、日本政府が「宗教活動」として入国を認めたことに対して、駐中国大使館の日本公使を呼びつけて抗議。19年11月には、野党時代の鳩山由紀夫民主党幹事長がダライ・ラマと会談すると、駐日中国大使館が民主党を非難する声明を出した。政府関係者は「尖閣での事件にチベット人権問題が加わることで、中国国内が混乱することを中国指導部がおそれているのではないか」と分析している。
2010年9月23日 産経ニュース

■この「政府関係者」の悪い予感?が当たって、尖閣衝突事件にこじ付けて四川省の学生達が起こした本音を隠した「愛国無罪」暴動が、西のチベット地域に飛び火してしまったとしたら、今回の青海省同仁県での教育政策に対する抗議デモが小さな火種になって、広大なチベット地域の何処かに燃え広がるか、或いはウイグル地域でも共鳴作用が見られるかも?

■小平時代、チベットのラサ市で戒厳令を布いてデモを武力で鎮圧したことで権力の階段を駆け上がるチャンスを掴んでのし上がったのが胡錦濤国家主席ですが、後継者がほぼ決まり穏やかに権力を委譲して引退後の名誉と身の安全を計りたい時期に、再びチベット問題で火の粉を浴びることになるのでしょうか?

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『チベ坊』の続編のような…… 其の壱

2010-10-20 14:23:53 | チベットもの
■嗚呼、とうとう起こってしまったか、というニュースが飛び込んで参りました。拙著『チベット語になった「坊ちゃん」』をお読み下さっている皆さんには、是非とも注目して頂きたい動きであります。

チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部ロンドン)が20日明らかにしたところによると、中国青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日朝、チベット民族学校の高校生ら数千人が中国語による教育押しつけに反発して街頭抗議を行った。六つの高校の生徒らが合流してデモ行進し、地元政府役場前に集まった。5千~9千人が抗議したとの目撃情報もある。「民族や文化の平等を要求する」などと叫んだという。…… 

■基本的な事項を確認しておきましょう。青海省はウイグル自治区とチベット自治区が(頼みもしないのに)占領・吸収されたことにより大きく西に膨らんだチャイナの地図では真ん中からちょっと西方にずれた位置になりまして、国内最大の淡水湖である青海湖があることから省の名前が付けられております。青海湖はチベット語でツォ・ゴンポ、蒙古語ではココ・ノール、どちらも「青い海」の意味ですから直訳して漢字を当てております。

■デモが起こった「黄南」チベット族自治州も、マチュ(黄河)のロ(南)を意味するマロというチベット語の呼称を直訳して漢字を当てております。ただし、チベット人が暮らしている土地を流れる黄河上流部は黄土大地で濁る前の青々とした川であります。さてさて、その黄河の支流ロンウォ河沿いに建立されたロンウォ寺を中心に発達したのがレプコン(同仁)の町なのですが、この一帯にはチベット仏教の各種宗派が健在で有名な寺院が点在しております上に、仏画などの仏教美術のメッカでもあります。日本でも公開された世界最長のチベットの歴史絵巻を完成させてしまったほどの人材とエネルギーに満ち溢れている所でありまして、個人的にも何度か彼の地を訪れまして、ツテを頼って学聖トンミ・サンポータ先生の肖像画を描いて頂いた思い出の土地でもございます。


最近の教育改革で、チベット語と英語を除くすべての教科を中国語で学ぶことになったのがきっかけで、生徒らが反発したという。民族学校の元教員は「漢族は文化大革命時代を思い起こさせるような改革を強要している」と語った。中国では2008年3月、チベット自治区でチベット仏教の僧侶ら数百人が中国政府のチベット政策に抗議し、大規模暴動に発展する事件が起きた。
2010年10月20日 産経ニュース 

■拙著の続編みたいなデモ騒動ですが、既に2004年頃にはこの種の圧力が高まりつつあったようです。小生がチベット語を学び、日本語を教え、そして『坊ちゃん』などの日本語作品を両言語の近似性に着目して翻訳した学校も、その後は実質的に消滅したも同然ですからなあ。2008年3月の騒乱事件の際にも、今回のデモが起こった場所で大規模な抗議運動が発生しました。その前にも北に数十キロ離れただけの町に残るダライ・ラマ法王の御実家に、法王御自身がお忍びで帰還するとの噂が流れて近隣ばかりでなく、遠方からも多くの信者が続々と集まって地元の公安当局が強権を発して暴力的に解散させる事件も起こりましたなあ。

■現地のチベット人知識人の中には、2000年頃から物理学や化学などの理数系の辞典類を地道にチベット語で出版する動きもありましたから、露骨に「すべての教科を中国語で」教え込もうとする政策には反発するのは当然とも言えましょう。チベットには医学・暦学・天文学・数学などの科学知識、建築・衣料・染色などの実学、そして美術と文学などの芸術と世界に冠たる優れた文化と伝統と歴史が厳然として存在しているのですから、それらを根絶やしにするような政府の動きに反発する人達がいるのも当然の話であります。

■9月に新学期が始まりますが、1ヶ月余は「軍事教練」やら共産党の指導に従う生活指導やら、補習授業などもあって忙しく時は過ぎ、10月の連休後から本格的な授業が始まることになっていますから、抗議デモが10月19日火曜日の朝に起こるというのも時期的に納得が出来そうです。それに加えて「愛国無罪」の学生暴動がご近所の四川省で起こった事にも刺激を受けての行動かも知れません。四川省の西半分はチベット人の居住地帯ですからなあ。

慶祝、ノーベル平和賞 其の壱

2010-10-19 14:58:26 | 歴史
■そもそも、ダイナマイトを商品化して莫大な資産を残した偉人の名をとって創設されたという美談めいた話が相当に怪しく、何だか社会インフラを整えるための土木作業にばかりダイナマイトが使用されたような錯覚を惹起するのは如何なものか?粉々に吹き飛ばした岩石の数と人体とどちらが多かったのやら、と陰口を叩かれながらも、立志伝中の人物となったノーベル氏が生涯忘れなかったのは少年時代に味わった算数・数学を担当する教師から受けた侮辱だったそうで、それが原因で、ノーベル賞には自然科学の基礎として欠かせない「数学賞」が最初から想定されていないという、この賞の胡散臭さを物語る話も残っておりますし、目出度く経済学賞を受賞した高名な学者が運営していた信託会社が大規模に破綻したのはリーマン・ショックの10年以上も前でしたかな?

■ノルウェーを舞台にして選考される「平和賞」に関しては、裏にも表にも興味深い話が山積みですが、日本に関しても鳩山サセテイタダク前首相が基地の移設問題を滅茶苦茶にしてくれた御蔭で、政治や自国の歴史に興味の無い多くの日本国民に対して大いに啓蒙効果を上げてくれた沖縄問題の発端を作った佐藤元総理大臣が、正に沖縄を「核抜き本土並み」という表向きの条件で祖国に復帰させた功績によって問題のノーベル平和賞を日本でただ一人受賞しているのであります。その受賞当時も「カネで買った」黒い噂や米国が暗躍したやら、とかくの噂のあったノーベル平和賞でしたが、平和賞の受賞者を選考するメンバーは、常に少年のような?悪戯心を忘れず、世界が忘れ掛けている人物や世間の注目から外れた場所にいる意外な人物を選び出して楽しむという一風変わった趣味を共有するサークルのような印象の強い集団のようであります。

■チャイナ「関連」の人物として、チベットのダライ・ラマ法王に続いて受賞したのが北京政府としては絶対に忘れ去ったままにしておきたい第二次天安門虐殺事件をずっと忘れずに文筆活動を続けていた人物で、待ちに待った正真正銘の中華人民共和国人民の中からノーベル賞の受賞者が出た!と国を挙げてのお祭り騒ぎが出来ないのは残念至極でありました。日本としても尖閣衝突事件を那覇地検に解決させたことにして、うやむやのままに切り抜けようと思っていた矢先のことでありますから、ノルウェー政府の毅然とした態度と比較されて本当に可愛そうでありますが、初の?ノーベル賞の受賞者が出たというのに、北京政府がお祝いに贈ったのが、獄中にいる本人の帰りを待ち続けている奥さんを軟禁することだったとは、何とも分かり易い話であります。


香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターが14日伝えたところによると、ノーベル平和賞受賞が決まった中国の民主活動家、劉暁波氏の妻劉霞さんは、同日から近所への買い物も禁じられた。中国当局による行動規制が強まっているとみられる。……受賞発表があった8日から軟禁状態に置かれている劉霞さんは、食材などの買い物だけは公安当局の送迎付きで許されていたが、14日からは買い物のための外出も認められなくなった。受賞決定直後に携帯電話が不通になったため新たな携帯を入手していたが、それも使えなくなったといい、家族も劉霞さんと連絡が取れない状態が続いているという。
2010年10月14日 産経ニュース 

■この報道は18日段階で他のメディアも確認することが出来たようですから、本当に監視・軟禁されてしまっているようです。日本の中堅ゼネコンのフジタ社員が解放されて、今度はノーベル賞受賞者の奥さんが監禁されてしまうとは、本当に息苦しい国でありますなあ。日曜日の東京12チャンネルを観ておりましたら、日本の地方都市で行政書士をしている初老の男性が奥さんに逃げられたあ!という切ない話を紹介しておりましたぞ。地元で知り合ったチャイナ国籍の女性と結婚して一緒に旅行を楽しむ仲睦まじい御夫婦だったそうですが、迂闊にも最愛の妻の祖国に関して余りにも乏しい知識しかお持ちでなかったようで、うっかり地元の新聞に「奥さんも怒っている」という不用意な一文を交えて尖閣衝突事件に関する文章を投稿してしまったのが家出の原因だったとか……。奥さんは再婚らしくチャイナに子供を残していて国籍も変えずに永住権だけを取得して暮らしていたという話でありました。能天気な日中友好の偏った宣伝ばかりしている日本のマスコミにも少なからぬ責任があるようにも思うのですが……。

■そういうお国柄であればこそ、拙ブログとしてましては此の度のノーベル平和賞受賞を大いに祝したいと思います。

チャイナの落盤 其の弐

2010-10-17 13:45:57 | 外交・情勢(アジア)
■露骨な資本主義に限りなく近い「特色ある社会主義」の原理に基づいて統治されていることになっている現在のチャイナは、国連常任理事国の仲間からも各種国際会議で顔を合わせる他の国々とはまったく違う「特色」が有ることを示す事件が連続しております。

中国で16日、大規模な反日デモが発生したことに、胡錦濤政権は衝撃を受けている。15日には、重要政治イベントの共産党第17期中央委員会第5回総会(5中総会)が北京で開幕したばかり。街頭抗議行動が無秩序に拡大するような事態になれば、社会の安定だけでなく、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の後、修復に向かうとみられていた日中関係にも悪影響が出るのは必至だ。漁船衝突事件を受け、胡政権は、中国人船長釈放を実現するための対日圧力の一環として、満州事変の発端となった柳条湖事件から79年を迎えた9月18日、北京などで反日デモを一部容認した。しかし、完全な統制下での「反日」で、破壊行為など大きな混乱には至らなかった。
2010年10月17日(日) 読売新聞 

■チャイナの各地で起こった反日デモに関しては、飽くまでも日本政府の「柳腰外交」が発端となっていると思われるので「首相の留守には何かが起こる」のシリーズで取り上げましたが、徐々に未公開のビデオの内容と衝突事件の真相が漏れ出しておりますので、結果的に国家的英雄に仕立て上げてチャーター機で帰国させた例の船長は、実はひどい酒乱で事件を起こした時も強い酒を大量に煽って泥酔状態だったらしいですなあ。何でも逮捕拘束された時にはパンツ一丁で酒臭い息を吐き散らして千鳥足だったとか……。そんなビデオ映像が公開されたら、国家的英雄の偶像は地に落ちて泥にまみれてしまいましょうなあ。空港に集まって花束まで送って出迎えた連中は、恥ずかしさの余りに船長さんを闇討ちにしてしまうかも?

■おそらく真相を知っている北京政府の幹部達は、何も知らずにお祭り騒ぎをしている人民の姿を、さぞや苦々しい思いで眺めていたことでしょう。偶々、日本の菅アルイミ政府が閣内不統一の醜態を晒して前原大臣の「一歩も引くな!逮捕しろ!」の勇ましい掛け声で始まり、仙谷官房長官の「柳腰外交」で幕引きとなって、処分保留の釈放を那覇地検の独断だと言い張り、ビデオ公開の方は与党病が治らない公明党に助け舟を出して貰って得意の「総合的判断」とやらでお蔵入りになる可能性が高いので、国家的英雄の幻はそのままにして暴動の芽を摘んでしまえると踏んでいるかも知れませんが……。

■国会の裏取引と数合わせでビデオを仕舞い込もうとしても、菅アルイミ首相の願い通りに「国民一人ひとりが自分の問題として」外交問題を考えて行動を始めてしまえば、ろくな政策も出せずに根拠不明の高い支持率だけが頼りの民主党としては、あれよあれよと思う間に得意の「前言撤回」となってビデオ映像がなし崩しに公開されてしまう流れが生まれるかも?まあ、北京政府としては公式に酒乱船長を国家的英雄だと認めたわけでもなく、褒賞を与えてもいないので、万が一、恥ずかしい事件の真相が明らかにされようとも、酒乱船長と領土問題とは別の話だ!と開き直るのでしょうなあ。

■一時はチリの救出劇にも負けないくらいに酒乱船長の釈放劇に感動したチャイナでは、尖閣諸島の場所も知らずに「領土を守れ!」と反日感情を奮い立たせた人民も多かったのでしょうが、そんな作り物の団結心などは長続きはしないでしょうし、ちょっと冷静に考えれば尖閣諸島の海域を奪ったところで一部の漁業会社が儲かり、実質的に国営のエネルギー企業が大儲けし、第一列島線を突破せんとする人民解放軍の海軍は最も喜ぶくらいで、経済格差に苦しむ圧倒的多数の人々には何の利益にもならないことくらいは簡単に分かることです。尖閣諸島をめぐる領土問題で予期せぬ大中華意識が呼び戻されて、毎度御馴染みの反日デモへと発展したものの、チャイナが抱える国内問題を日本のせいにするのは無理がありますから、人民の怒りが本当の敵に向かって暴発することを北京政府は大いに心配しているのでありましょう。

■ノーベル平和賞の騒動で、せっかく反日愛国教育で蓋をしたはずの天安門事件の記憶が甦り、反日デモを繰り返しても一瞬のストレス解消にはなっても深刻な国内問題はまったく解決の目途が立たない事実に引き戻されれば、いよいよ中国共産党の一党独裁体制が「落盤」事故を起こして崩壊するかも?神聖不可侵の中華の領土を死守するぞ!と学生が喚き暴れた日に、日本政府以上に怒りを買った人物が現われていたのだそうです。


2010年10月15日、中国で専門家が「大都市の不動産価格を上げて低所得者を追い出そう」という主旨のコラムを発表し、批判が集中した。……中国不動産学会執行会長、北京不動産学会常務副会長の陳貴氏は14日、コラムを発表。高水準の不動産価格、家賃、そして生活コストは、北京市などの超大型都市が無秩序に拡大することを防ぐ唯一のハードルだと主張した。……国際的都市を目指す北京市にはある種のハードルが必要だと指摘。車のレベル、人のマナーなどが低くなりすぎては生活に支障が生じると指摘。北京市や上海市などの超大型都市ではこれ以上不動産価格を下げてはならず、また10万元(約120万円)以下の車にはナンバープレートを与えないなどの対策を取ることで、低収入、低学歴の人々の数を抑制できると提言している。…… 

■北方民族からの侵略を何度も受け、暴動・内乱・内戦を3年と休まず繰り返して来た歴史を持つチャイナでは、イザという時に分厚い堅固な城壁に囲まれた「城市」に逃げ込める者と、締め出されて路頭に迷って過酷な運命に翻弄される運命の者とを峻別するために2種類の戸籍があったそうで、毛沢東による社会主義革命の後も都市住民と農民との戸籍の区別はしっかり温存されていたのであります。当面は侵略を受ける危険は無さそうだし、内乱も起きない(起きて欲しくない)ようなので、経済活動に支障が出るし人権問題にも触れるので戸籍の区別は止めようという話にはなっているようなのですが……。


金持ち、エリート優先の主張に、ネットユーザーの怒りが爆発。陳氏のコラムは批判の的となった。新浪網のアンケート調査によると、14日午後6時半時点で59%が反対、賛成の38%を大きく上回った。取材を受けた陳氏は、北京のような都市では、富裕層、貧困層、北京出身者、市外出身者など各グループの利益を全て満足させることはできないとして、自身の主張は正当なものだと訴えた。
2010年10月17日(日) Record China

■恐ろしい北方騎馬民族の馬蹄ではなく、伝統的な城壁都市の外には貧困というもっと恐ろしい敵が跋扈していると考えれば、コネや賄賂を使って都市住民になろうとする者が後を絶たないのも当然で、「勝ち組」となった者達は既得権を守ろうと恐ろしい排除の論理を組み立てるのも歴史的な理由がありそうです。きっと賛成と答えた38%の中には、儚い夢に一縷の望みを懸けている若者がたくさん含まれているのでしょうなあ。既に誰も信じなくなっているとは言え、社会主義の大看板が崩落したら北京政府自体が北京の城外に追い出されることになりましょうから、この種の本音が真正面から激突するような事態は、酒乱船長が何も出来ない日本の巡視船に酔っ払って衝突した事件よりも深刻な意味を持っていそうであります。

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チャイナの落盤 其の壱

2010-10-17 12:29:27 | 外交・情勢(アジア)
■世界中から大顰蹙を買いながらも北京五輪を大成功?させ、続く上海万博も暑い・汚い・騒がしいと悪評芬芬ならがも目標入場数を手段を選ばず強引に達成して見せた上は、大国にふさわしい栄誉が欲しいと喉から手が出るほど切望していた北京政府でしたが、やっと貰えたノーベル賞は逮捕拘束中の民主化闘士への「平和賞」で、獄中の御本人は勿論のこと奥さんでさえ授賞式に出席させるわけには行かず、別の部門での受賞だったら、ああもしよう、こうもしようと人民団結・国威発揚を大々的に宣伝する催し物企画も封印するしかないのはお気の毒な話であります。一説には受賞の一報が入った当日の夜、北京市内のあちこちで祝杯を挙げる人達がいたそうですが、壁に耳あり障子に目ありの監視密告国家ゆえに、発言には慎重を期しての奇妙な祝宴が多かったとか……。

■ノーベル平和賞と言いますと、北京政府が自国の領土だと言い張っているチベットのダライラマ法王が先に受賞しているわけですから、世が世ならばチャイナは2人目の平和賞受賞を祝えたはずなのですが、最初の受賞者は亡命政府を立ち上げているし、2番目の受賞者は大そうな罪状で獄中につながれているのですから、祝いたくても祝えない政府は苦しい立場に置かれてしまったとも言えますなあ。先輩受賞者として米国のオバマ大統領は祝辞と共に即時釈放を求めているそうですが、イランや北朝鮮に対するほど厳しい姿勢で釈放を強要するつもりはなさそうです。日本のアルイミ首相などは、国会で問い詰められて「釈放されればいいなあ」と弱弱しく独り言みたいな答弁をするのが精一杯というのは悲しい話ではあります。

■悪いことは連続するもので、南米チリで起こった奇跡の33人救出劇に世界中が釘付けになって感動の余韻も冷めやらぬ時期に、チャイナでは御馴染みの炭鉱事故が発生!有難くないノーベル賞の授与に続いて、チャイナの異質性と人命軽視のお国柄が世界に紹介されることになりそうです。


中国河南省禹州市の炭鉱で16日朝、ガス爆発が起き坑内で作業をしていた21人が死亡した。16人が依然、閉じ込められている可能性がある。中国では14日、江西省鉛山県の炭鉱で9人が坑内に閉じ込められた事故があったばかり。チリの鉱山落盤事故で作業員全員が救出された直後でもあり、中国国内のインターネットでは、「どうして中国で炭鉱事故が多発するのか」「中国の炭鉱労働者の命は軽視されている」といった政府批判の声が出ている。 

■チャイナの炭鉱では、ずっと前から違法採掘が横行していたことは衆知の事で、小平時代から経済が急速に成長し始めると石炭の需要は天井知らずの状態になって掘れ暴利がむさぼれると法律など最初から無視して安全管理など考えもしない、エンゲルスやマルクスが聞いたら卒倒するに違いない地獄のような採炭商売が横行しているようで、外聞を憚る政府当局がいくら摘発しても際限も無いもぐら叩きが続くばかりで、炭鉱事故と被害者は増えるばかりなのであります。厳しく情報が統制されているチャイナ国内の報道機関は、政府の意向を反映して前近代的な違法採掘を糾弾する宣伝報道に努めているので、国内報道でもしばしば違法操業のヤミ炭鉱が摘発される事件が取り上げられておりますが、日本のマスコミはほとんど報道することはなく、それはチリの落盤事故を連日熱心に伝えていた姿勢とは対照的なものであります。


……ガス爆発はドリルによる穴開け作業中に発生。坑内にいた276人の作業員のうち37人が外に出られず、その後21人の遺体が発見された。残り16人が坑内で生存している可能性があり、救出作業が続けられている。爆発原因は、労働者たちがガス濃度の高い中で作業していたため-との指摘もある。…… 

■これほど詳細な事故情報が流れ出すのは珍しいかも知れませんなあ。最も恐ろしいのは人里離れた険しい山の奥で目立たないように違法な採掘を企てた揚句に大失敗して深刻な事故が起きてしまったら救出作業などまったく考えもせずに、さっさと作業員を見捨てて身を隠してしまう悪人たちも多いという恐ろしい話もあるようですからなあ。


中国当局の発表によると中国では、昨年1年間で約1600件の炭鉱事故が発生、死者数は2631人にのぼった。事故原因として最も指摘されるのは、炭鉱経営者が高い収益を求め、安全を確保するための投資をせず労働者に危険な採掘をさせることにある。中国政府は安全作業規則を徹底し、違反した場合の罰則を厳しくするなどの対策を講じた。炭鉱の管理職クラスの職員の安全意識を高めるため、作業員らと坑内へ入るよう通達も出したが、効果はあまり出ていない。地方政府と炭鉱経営者が癒着していることなどが背景にあると指摘される。…… 

■極端な経済格差ゆえに、危険を承知で高額な収入に惹かれて坑内に入る無数の貧しい人々がいる一方で、一攫千金を夢見て怪しげな資金を掻き集めて違法操業を推し進める強欲な悪人も多い。でも、一番悪いのはその悪人から賄賂を取って私腹を肥やす悪徳役人の群なのでしょうなあ。


チリでの落盤事故で、坑内に閉じ込められた作業員らが救出された直後、中国外務省の馬朝旭報道官は会見で、救助作業に使われた機材が中国製であることに言及。「救出に貢献したことをうれしく思う」と国際社会にアピールした。しかし、インターネットでは、「チリのように避難所が設けられていない中国の炭鉱なら、助からなかったはず」「作業員のほとんどは安全知識の教育を受けていないから生き延びることはできなかっただろう」といった書き込みが殺到した。
2010年10月17日(日) 産経新聞 

■数多くの日本製品も奇跡の救出劇の中で大活躍したと伝えられておりますが、そもそも、感動的な物語の舞台となったチリの鉱山自体が安全基準を満たさない違法な鉱山だったことが徐々に明らかになってもいるようです。そんなちょっと怪しい南米に加えてもっと危なっかしいアフリカ諸国の地下資源を買い漁っているのがチャイナだという事実を考えますと、投資先の鉱山に「安全第一」の要求をしているのか?それとも「安全よりも儲けが優先」と自国の流儀を押し付けて現地の悪徳業者と結託してぼろ儲けを画策している悪い奴がいるのではないでしょうかな?

首相の留守には何かが起こる 其の六 

2010-10-16 21:39:04 | 歴史
■日本のマスコミは週休二日制がしっかりと定着しているらしく、土日の新聞紙面やテレビ・ラジオの報道は明らかに内容が薄くなる悪い癖が染み付いてしまっているようです。どうせ読者も視聴者も遊びに夢中で、真面目な記事も番組も無駄になるだろう、とでも考えているのでしょうか?まるで代表選挙に血道を上げて、尖閣問題にも円高問題にもマトモに対応できなかった菅アルイミ内閣みたいだと言っては言い過ぎでしょうか?

……尖閣諸島の領有権をめぐり、中国四川省成都市、陝西省西安市、河南省鄭州市で16日、大規模な反日デモが起きた。……東京で同日行われた集会「中国大使館包囲! 尖閣侵略糾弾! 国民大行動」に反発した行動とみられる。……成都市では午後2時ごろから数百人が「釣魚島を守れ」「日本製品ボイコット」などと書かれた横断幕を掲げてデモ行進。中山広場には1万人が集まり、イトーヨーカ堂などの店舗のガラスが割られたという。同総領事館では「けが人の報告は聞いていない。日系企業から情報を集めている」としている。
2010年10月16日(土) 時事通信 

■きっと仙谷官房長官の「柳腰外交」というのは、この種の波風が立たないように配慮して相手の善意やら常識やら慈悲の心に期待するという虫のいい話だったのではないでしょうか?残念ながら、官房長官の口癖という「カンの野郎」が所信表明演説で外国問題を「国民一人ひとりが自分の問題として……」と、自分が総理大臣になっている事を忘れて60年代の反体制運動を呼び戻すようなことを言ったものですから、国民の中にはしっかり総理大臣の指示に従って動き出す人が現れたのであります。不思議なことに、菅アルイミ首相は御自身が「市民運動出身」を売り物にしているのに、お膝元で起こった今の市民デモ運動には無反応のようですなあ。マスコミ各社も無視しているのはもっと不思議なのですが……。

■チャイナで突然起こった反日デモは、多くの国民がプロ野球やらゴルフ大会に熱中している間に東京都下で行なわれた「国民大運動」デモに対する当然の反応なのでありますが、それを誰も報道しないので何が何だかさっぱり分からないのでしょう。最初にボタンを掛け忘れてしまったマスコミ各社は、これから後追い報道でお茶を濁すつもりなのでしょうか?

■拙ブログには「むろらん」さんの名前でデモの告示がコメントで届いていましたから、16日の土曜日午後2時から『頑張れ日本!全国行動委員会、草莽全国地方議員の会』の皆さんが主催するデモ行進があることは分かっておりました。


市民団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」(会長・田母神俊雄前航空幕僚長)などが主催し、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐり中国に抗議する集会「中国大使館包囲! 尖閣侵略糾弾! 国民大行動」が16日、都内で行われた。主催者側によると、約3200人が参加したという。集会には田母神氏や西村真吾前衆院議員のほか、地方議員や文化人らが参加した。抗議集会、デモ行進の後、在日中国大使館を訪問。「事件は領海侵犯であり船長の拘置は妥当な措置」とした上で、船長の釈放要求など中国の一連の対応を批判、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」とした抗議文を大使館のポストに入れた。 
2010年10月16日(土) 時事通信 

■何処かの中華街が襲撃されたとか、大使館に投石があったという話はないようですし、チャイナ製品を多く取り扱う100円ショップなどの窓ガラスが割られたという事件も起こっていないようです。通常は警備に当たる警察の発表よりも主催者側は多目の参加者数を言い立てるものですが、今回のデモでは逆転していて一説には6000人近い参加者を警察は確認しているとか……。元民主党議員だった西村さんも参加しているのですから、本当は前原外相も個人的には御挨拶に行きたかったかも知れませんが、さすがに派閥作りを焦っている原口前大臣でも政治生命に関わる参加は見合わせたようですなあ。

■さてさて、こうした外交問題を自分の問題として考える「国民一人ひとり」が集まって実行したデモ行進を、菅アルイミ首相はどのように評価するのでしょう?週明けのぶら下がり会見がちょっと楽しみではあります。