旅限無(りょげむ)

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長妻大臣のお仕事 其の壱

2009-11-29 14:03:47 | 政治
■今年最後の三連休、いろいろと予定を立てて充実した楽しい時を過ごそうか……などと考えていましたら、鬼の霍乱と申しましょうか、三年ぶりの大発熱に襲われまして、水分補給のほうじ茶と葛根湯を飲んで横臥の連休となってしまいました。時節柄、よもや新型インフルエンザか?!と少しばかりは身構えましたが、幸いなことに深刻な高熱は半日で治まり、節々の痛みも意識障害もないまま経過したのでありました。野口晴哉さんの『風邪の効用』については、以前に『病み上がりの記』其の弐でも取り上げましたが、通常の風邪とウイルス感染症とは別物と考えねばなりませんから、体温計でこまめに検温しながら自分の体調を観察して過ごしたのでありました。
 
■それにしましても日本国中で起こっているワクチン不足に関する騒動には憤りを感じます。家族の協力もあって風邪による発熱で過労状態が解消し、心身ともにリフレッシュ出来たのは幸いでしたが、万が一、日々の嗽(うがい)と手洗いの予防努力にもかかわらず、本物に感染してしまったら48時間以内に抗ウイルス薬を投与して貰わねばなりません。特効薬とされるタミフルやリレンザの備蓄は十分だと言われていますから、ワクチンによる感染予防は心配だけれど、感染してしまった後は安心?という実に変な状況になってしまっているようですなあ。

■『週刊文春』10月8日号の阿川佐和子さんの対談コーナーで木村盛世さんが登場した時に名指しされ、それを受けた形で同誌の11月12日号で小林信彦氏の連載記事『本音を申せば』で再び実名が書かれてしまったのが上田博三・健康局長。


……(厚労省医系技官の)木村(盛世)さんの話では、厚労省には医師免許を持った医系技官が二百五十人いるがまるで役に立たず、その中でもモンダイの人物は、上田博三という健康局長で、新型インフルエンザのワクチン輸入を阻止し、ワクチンを国内の弱小四社にしか許可していない。このことは前にも書いたが、しつこく記しておく。それが利権と天下り先のためだというから、国民はたまったものではない。……

■小林信彦さんが激怒しているのは、御自身の御家族、特にお孫さんが感染したことに加えて小さな子供が落命したニュースを知ったからだそうです。連載されている文章の中には、原始的な予防法を宣伝している厚労省に対して「まるで中世だ!」という激しい文言もありましたぞ。

■11月28日のテレビ朝日、『朝まで生テレビ』に木村さんが出演して、またまた、厚労省医異系技官が諸悪の根源だ!と発言しまして、上田博三さんの名前が改めて電波に乗りました。木村さんによりますと、これまで繰り返された薬害事件とまったく同じ、政・官・業の間に巣食う持たれ合い天下り構造がワクチン騒動の原因だと言うのですから、ワクチン接種が間に合えば助かったはずの命と引き換えに守られたどろどろした利権構造とでは釣り合いが取れそうもありません。

■『朝生』の番組では、カナダで発覚したワクチン回収を外国産ワクチンは危険だ!という悪質な宣伝に利用している厚労省内の悪い連中の存在が指弾されていたようですが、ミスター年金の長妻新大臣はかつて厚労相時代にHIV感染問題で名を上げた菅直人さん以上の業績を残せるのでしょうか?


長妻厚生労働相が最近、部下である厚労省の官僚に厳しくあたる場面が目立っている。就任当初は官僚の説明を聞き、理解するのに懸命で、その慎重さから「ミスター検討中」とやゆされていたが、省内では、「野党時代に得意とした官僚バッシングが復活した」とピリピリした空気が漂っている。

■大臣をレクチャー責めにして自分で考える時間を奪いながら、大臣の政敵に悪口を耳打ちし、マスコミには省益を守るための歪んだ情報をリークする、というのが官僚が駆使する三種の神器だとか……。


「皆さんは説明能力が低すぎる。私は大臣として恥ずかしい」長妻氏は16日、厚労省の局長らを急きょ集めると、厳しく言い放った。12、13日に行われた行政刷新会議の「事業仕分け」で局長らが「説得力のある回答が全くできていない」と不満を爆発させたのだ。局長らの意識を引き締めるため、毎週月曜日に幹部による朝礼を開くことを命じた。……

■別に厚労省の仕事で「恥ずかしい」のは、説明能力が他の省庁に比べて劣っている点だけではないでしょう。今回のワクチン不足の騒動も、その前の「水際封じ込め作戦」も、目立ちたがり屋の舛添前大臣を踊らせておいて国内の弱小メーカーにワクチンを作らせるための時間稼ぎをしていた節があり、国民の健康と生命を守るべき役所としての自覚を遠い昔に失って、自民党の長期政権と結託して失政を重ねて来たことが恥ずかしい!


また、民主党がマニフェストに掲げた「待機児童ゼロ」達成までの期間を大幅に短縮するよう指示した際、難色を示した担当局長に対し、部下の前で「もういい。あなたにはやらせない」とどなりつけることもあった。大臣室には、省に寄せられた苦情の電話やメールの内容をまとめた分厚いファイルが積み上げられている。「民間ではお客様の声は宝だ」と語る長妻氏は、こうした苦情への回答を命じ、苦情の内容によっては、謝罪文も出させている。

■「苦情への回答」を書かせてみても、結局は永田町文学を駆使して自分達には責任が無いことを縷々述べて返答するだけでしょうし、謝罪文にしても同工異曲の内容になっているのでしょう。省内の意識改革には多少の効果は期待できるかも知れませんが、国民の健康と生命を最優先にする行政感覚を復活させる効果は無さそうです。


これに対し、同省のある幹部は「大臣は、メールを世論と勘違いしている。本来の仕事以外の業務が増え、省が推進するワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実行できているのは、夜早めに帰宅する大臣だけだ」……。「業務上のストレスを部下にぶつけている」……政府内でも、「省内ばかりたたいていては、官僚との溝が深まり、政策実現の上で逆効果になりかねない」と心配する声も出ている。
11月28日 読売新聞

■今のところはミスター年金に対する国民の期待はまだ高いはずですから、長妻大臣を悪者にしてしまうのは厚労省の役人としては得策とは言えないでしょう。政権交代を後押しした手前、マスコミも民主党批判は遠慮している時期でもありますから、もう少しの間はじっと猫を被って我慢の日々が続きそうですが、12月の半ばくらいから徐々に悪意に満ちたリークが始まり、民主党批判の声が目立ち始める頃には一斉に逆襲が始まるのでしょうなあ。
厚生労働省崩壊-「天然痘テロ」に日本が襲われる日
木村 盛世
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鳩山さん大丈夫? 其の壱拾参

2009-11-16 13:52:46 | 政治
■就任以来、何かと外遊が目立つ鳩山サセテイタダク首相であります。内政問題は閣僚に丸投げして「最後は私が決める」と期限も切らない無責任な空手形ばかり切っている首相の下で、閣僚達は大変が苦労をしているようです。

岡田外相は15日、就任後初めて沖縄県を訪問し、米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、現行計画で移設先となっている名護市の島袋吉和市長や、同県の仲井真弘多知事、沖縄県議会代表者らとそれぞれ会談した。

■どうして今頃「就任後初めて」なのでしょう?選挙戦の期間には鳩山サセテイタダク首相も応援に行っていたはずですが、少なくとも米国大統領の訪日前に岡田外相は現地に行っておくべきだったでしょう。東京から好き勝手な意見が川開きの花火みたいに打ち上げられているのを不快感と不信感いっぱいにして歯痒い思いで聴かされ続けた地元の皆さんは大変な迷惑を受けたでありましょう。


仲井真知事や島袋市長は、早期の普天間返還実現には、「名護移設もやむなし」としてきた経緯があり、政府の結論先送り姿勢に対するいら立ちを表明。一方、県議会メンバーからは、民主党の従来の主張だった「県外移設」を実現するよう求められ、外相は板挟みとなった。

■板挟みになっているのは民主党そのもので、マニフェスト選挙に勝った!勝った!と勘違いして、民主党に投票した人達はマニフェスト全体に同意しているものと思い込んでいるらしい雰囲気が民主党内部に広がっていたようですが、徐々に政権与党としての現実感を味わって正気に戻り始めた人が多い中で、どうやら意地になって幻想にしがみついている人も残っているようであります。困ったことにその代表格が首相御本人かも?


仲井真知事は「普天間の一日も早い危険性の除去をお願いしたい」としたうえで、政府が結論を引き延ばしていることによって、「県外移設への大変な期待が盛り上がっている」と懸念を示した。また、島袋市長は「新政権の状況は、苦渋の選択をしてきた地元住民の意向を無に帰すもので誠に遺憾だ。(移設問題は)これまで3度の市長選を経てきた。これ以上市民を二分したくない」と訴えた。一方、県内移設反対派が多数を占める県議会の各派代表者からは、「民主党沖縄県連は、ずっと『県外』『国外』を主張してきた」「日本の外交問題を田舎の市に負わせるやり方は非常に理不尽だ」などと怒りの声が相次いだ。

■「県外」ならば別の地方自治体が受け入れに合意しなければなりませんし、「国外」ならば米国の世界戦略が大きく変わってしまいます。野党としてなら、与党が困り果てるに決まっている難問を突きつけて戦うのは当然でしょうが、与党になって正解のない問いを振り回すのは自分で自分の首を絞めるだけでありましょうなあ。


……「基本的に国が判断しなければいけない話を、名護市民一人一人に正否を問う形はあってはならない。申し訳ない」……「できるだけ年内に結論に至りたい」と述べ、来年1月の名護市長選前に結論を出したい、との考えを伝えた。外相は記者会見で、自らが模索する米軍嘉手納基地への統合案について、「地元は強く反対しており、非常に狭い道を通らなければいけない」と困難な状況にあることを認めたが、「まだ結論を出していない」とも語った。外相は16日、嘉手納基地の地元の宮城篤実嘉手納町長らと会談する。
11月15日 読売新聞

■嘉手納統合案は米国との折衝は一切無しでデスク・プランとして考え出された物のようであります。戦争を放棄した素人国家が、戦争で血を流し続けている国に対して、世界戦略に関わる重要事項について「対等で緊密な」交渉が可能なのかどうか、日米がやっと合意した普天間基地の「撤去」というスタート・ラインまでが掻き消えてしまうことのないように、手遅れになってしまう前に民主党が政権与党へと脱皮して欲しいものでありますなあ。
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鳩山さん大丈夫? 其の壱拾弐

2009-11-16 13:50:41 | 政治
■滞在僅かに23時間、取り敢えずはテロ騒動も起こらず無事にオバマ大統領が日本を離れて警察関係者はほっと安堵の心持ちでありましょう。主賓を置き去りにして一足先にシンガポールに来ていた鳩山サセテイタダク首相に対してオバマ大統領は「すばらしい訪日だった」と感想を述べてそうです。自分に都合の良い話しか受け付けない便利な?耳を持っている鳩山さんですから、天皇皇后両陛下と会食した経験に感動したという意味のオバマ発言を好き放題に換骨奪胎・取捨選択・誤解曲解の限りを尽くして根拠も無く自負心を膨らませてしまっていることでありましょう。

……13日の鳩山由紀夫首相との日米首脳会談では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題の早期決着を「大変強く迫っていた」(出席者)ことが、日米両政府当局者の話で明らかになった。……「ユキオは有利だよな」-。首相官邸で行われた首脳会談の席上、オバマ大統領は、こうぼやいてみせた。大統領も認める英語力を持つ首相だが、会談は通訳付きで行われたためだ。

■英国仕込みのはずだった麻生前総理の英語は非常に聞き取り難いと苦情を言っていたのもオバマ大統領だったはずですが、鳩山サセテイタダク首相が「有利」なのは英語能力に優れているからではないでしょう。何語を上手に操ろうとも、支離滅裂な話の筋と内容が突如として理路整然とした発言に変わってしまうことなどありませんからなあ。訪日を前にして自国の基地内では乱射事件、沖縄では米兵による轢き逃げ事件が連続して起こってしまいましたから、アフガニスタン問題と沖縄問題が絡まり合って実に困った立場での来日となったオバマ大統領を待ち構えていたのが、必殺仕分け人たちが「思いやり予算」を歴史の闇から引っ張り出して袋叩きにする騒動でした。

■40年ほど前だったら大規模な反米デモが起こっても不思議ではない困った状況でありました。


オバマ大統領は普天間問題を自ら切り出した。冷静な大統領らしく声を荒らげることはなかったものの、首相を正面に見据え、「基本は守るべきだ」「迅速に解決したい」などと強い口調で、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)以外に選択肢はないとの認識を示した。……大統領の通訳を挟んだ左隣には、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が座った。……大統領は同氏の助けの必要もないほど、基地問題に精通していた。ある日本側出席者は「物事を理解する能力に優れている」と舌を巻いた。

■この日本側出席者は、米国大統領の優れた理解力がきっと羨ましかったのでしょうなあ。常に地球儀をぐるぐる回しているように、刻々と変化する世界情勢を詳細に認識していなければならない米国大統領の激務は、何事も受身の対応で間に合ってしまう日本の総理大臣のお仕事とは比べようもありません。沖縄は単なる日本の南に位置する島ではなく、東アジア全地域を越えて中央アジアやペルシア湾にまで及ぶ広大な領域を睨んでいる最重要軍事拠点となって久しいのですから、世界最強の軍事大国の最高司令官としては、間違っても自分の任期中に手放すわけには行きません。


……9月の会談で大統領は日米同盟の重要性を訴える首相に好感を抱いたという。ところが、普天間移設をめぐる首相の発言が迷走したため、「首相に米側の真意を伝えるのは大統領以外にいない」(同当局者)と判断、強く解決を迫ることにした。首相は大統領発言に「理解する」と応じ、「日米合意は重い」と発言したものの、「選挙中から県外、国外ということを申しあげ、沖縄の期待も強まっている」と煮え切らない態度もみせ、米側を失望させた。

■鳩山さんの「理解する」は純粋な日本語表現ではなかろうか?取り敢えず相手の言い分を「聞いた」という意味だけの「はい、はい」は、相手の主張を受け入れて同意することを意味する他国の肯定発言とは大きな違いがありますが、鳩山サセテイタダク首相は日本語と米語を混用しているのではないか?と心配になりますが、その場には専門の通訳官が同席していたはず……。前後の文脈を切り貼りすれば「日米合意よりも、アメリカは出て行け!という沖縄県民の声の方が重要だ」という意味になってしまいます。


普天間問題では厳しい表情をしたオバマ大統領だが翌14日、皇居で天皇、皇后両陛下と昼食をともにした後の表情は穏やかだった。大統領は両陛下について「慈悲深い」との感想をもらし、軽快に羽田空港のタラップを上がり、大統領専用機の中に消えた。当初は両陛下との昼食会の後に日米首脳会談が予定されていた。ある日本側当局者は「(昼食会後に)鳩山首相との会談が行われていたら、失望したままシンガポールに向かうところだった。結果的に日程が変わりよかった」ともらす。……
11月16日 産経新聞

■予定の変更は単なる偶然だったのか、あるいは誰かさんが気を利かせて果断に入れ替えておいたのか?両陛下の御人徳によってオバマ大統領の初訪日は好印象で締め括られて成功裏に終わったというわけであります。それを知らないのは鳩山サセテイタダク首相御自身だけかも?

鳩山さん大丈夫? 其の壱拾

2009-11-16 08:04:49 | 政治
10月10日、北京で行われた日中韓首脳会談の場では「いままでややもすると、米国に依存しすぎていた。アジアの一員としてアジアをもっと重視する政策をつくり上げていきたい」と語り、知人の米国人をギョッとさせ……。10月24日にタイ・フアヒンで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との会合では、東アジア共同体構想に関して……「新政権の外交政策として、日米同盟を外交の基軸と位置づけている」……。前日にはわざわざ同行した松野頼久官房副長官に記者団を集めさせ、米国の関与について「極めて重要だ」と語らせて……。

■「依存し過ぎ」と「外国の機軸」とは一つの文章には押し込めない相反する言葉であります。もしも、「機軸」に「依存」せずに物事が回ると大混乱になります。巨大な機械の部品が軸から離れて高速回転したら大事故になるか機械自体が壊れてしまいますぞ。アジアも大事、アメリカも大事、人類皆兄弟!とでも言いたかったのかも知れませんが、そんな童話は外交交渉の場面に持ち込むのは非常に危険でしょうなあ。


普天間飛行場の移設問題でいえば、最終判断の時期をめぐってはまさに二転三転……。10月16日には沖縄県名護市長選(来年1月)と県知事選(同11月)の間である来年半ばに決断すると明言したのに、……23日には、「わたしは別に市長選の後でと言っているつもりはない。早く結論が出ればそれに越したことはない」と語って、市長選後に結論を出すとした自身の発言を修正……。そして今回の同行記者団に……。「名護市長選の結果をみて方向性を見定めていく。知事選もある」と述べて決着を急がない考えを示した。

■「……と言っているつもりはない」だの「……とは言っていない」などの発言が目立つ鳩山サセテイタダク首相でありますが、言語活動には「含意」という機能もありますし、明言せずとも論理的に導き出せる合理的な結論というものもあります。言葉を途中で切って黙り込んでも、それらが消えて無くなってしまうことはありません。可哀想なのは名護市の有権者で、選挙の結果次第では下手をしたら確信的な反米勢力と見なされてしまい兼ねません。政府の専権事項である外交権を地方自治体に丸投げするとは残酷な話でしょう。「市長選の結果」で政府間合意が覆るなどという話は聞いたことがありませんからなあ。


タイでは「最後はわたしが決める」とリーダーシップを強調……決断時期については11日、クリントン米国務長官からも岡田克也外相に対し、「この問題に絡んで不確実な状況が続くのは好ましくない。できるだけ早く結論を出すことが重要だと考えている」とクギを刺され……。

■自民党の対米政策が常に正しく、日本の独立を国益を厳格に守って来たとはとても思えませんが、それでも国際的な信義の問題として政権交代の度にそれまで多くの国々と締結して来た約束事を一斉に御破算にしてしまうというのは乱暴極まりない話であります。第一、そんな能力が寄せ集めの民主党政権に出来ようはずもありませんからなあ。もしも、本気で米国と事を構える覚悟で沖縄から米軍を蹴り出してしまう心算なら、前回は途中で終わった「本土決戦」を再び決意しなければならなくなるでしょうし、米国との約束事だけを見直すのはバランスが悪いとて、ロシアやチャイナ、鳩山サセテイタダク首相が大好きなアジア諸国との交渉もすべて見直す必要も出て来るでしょう。それらを「友愛」で包んで一括りにしてしまえると考えているのなら、既に政治の世界を離れて精神病理学の分野に心配事は移ってしまいます。

鳩山さん大丈夫? 其の九

2009-11-16 07:56:16 | 政治
■「いろいろな意見が出ても大丈夫。最後は私が決める」と啖呵を切って見せるのが好きな鳩山サセテイタダク首相の頭の中にも「いろいろな意見」が渦巻いている模様です。こういう人は二重人格・多重人格と呼ばれて、社会生活に適応出来ないほど症状が深刻な場合は専門医の治療を受けねばならないはずなのですが……。

鳩山由紀夫首相は15日午後、アジア外交政策に関する講演後の質疑で、紛争や災害の被災者を救援するため、自衛隊艦船を活用して海外で医療活動を行う自らの「友愛ボート」構想について、「平時から活動し、台風や地震などの災害地で救助を行うことが中心になる。紛争地域に乗り込んで医療活動をすることはない」と述べた。……
11月15日20時34分配信 時事通信

■この質疑応答が行なわれる数時間前には、「紛争があって人の命が危ないとなれば、その船が行って医療などの協力を行う」のが友愛ボートの使命だと演説しておいて、質問されたら「紛争地域」をあっさりと除外してしまえるのは、鳩山首相が二人以上存在しているからかも知れません。でも、「平時から活動」という表現の「から」は「物事の移動に視点を置いた場合の動作の起点である相手、移動の起点や経由点」を意味する格助詞でありますから、何らかの到達点が想定される場合にしか使えません。従って「平時から」と言う限りは、「○○の時まで」か「○○の時には」などの状況が変化した場合を想定した表現が続かねばなりますまいなあ。

■「避難訓練を日頃から」行なっているのは、本当の災害が起こった時のことを想定しています。絶対に災害は起きない!と思い込んでいる人は訓練などしません。もしも最初から「紛争地域」を除外しているのなら、鳩山サセテイタダク首相の発言は「平時にのみ活動」としなければなりますまいなあ。

■政治主導が首相独断と同義ならば、議会制民主主義は形骸化されて空洞化し近々消滅してしまうでしょうが、権力を握ったのが間抜けな独裁者であった場合は先行きを心配する側近たちに謀殺されてしまうのが歴史の常でありまして、鳩山サセテイタダク首相の場合はクラッシャー小沢の「俺は聞いていない!」の一言で総理を辞任しなければなりませんから、そろそろ小沢幹事長の周囲には御注進に駆け付ける者どもが徐々に増えているかも知れませんなあ。
 

……鳩山さんは14日、訪問先のシンガポールで同行記者団に対し、13日に東京で行ったオバマ米大統領との会談合意をひっくり返すかのような発言……。日米首脳会談では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を協議する日米閣僚級作業グループを設置することで合意しました。このグループについて大統領は13日、都内で行った演説で、「すでに達した合意を履行するためのものだ」……。一方、鳩山さんは「オバマ大統領とすれば、日米合意を前提と思っていたいだろうが、それが前提なら作業グループを作る必要がない」と明言……。

■聞き様によっては鳩山サセテイタダク首相が舌先三寸で大国アメリカのオバマ大統領を翻弄して見せた!痛快な外交劇に仕立てられそうでもあり、もっと露骨に言ってしまえば「オバマは間抜けだ」と嘲笑しているようにも受け取れます。英訳のやり方によっては相当に刺激的な文章になりそうなのが心配です。

鳩山さん大丈夫? 其の八

2009-11-15 16:53:44 | 政治
■11月12日の段階で、鳩山サセテイタダク首相は「新しい政権に懸念を持っておられる方々に『大丈夫ですよ』と伝えることが、日米首脳会議の大きな役割じゃないかなと思います」と関連し記者団に対して大見得を切っていたのでした。わざわざ「大丈夫ですよ」と言わねばならない理由は、「大丈夫か?!」と相手が心配しているからであります。

10月22日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は元国家安全保障会議(NSC)不拡散戦略部長のキャロリン・レディ氏の「広がる日米安保の亀裂」と題する論文を掲載、……普天間飛行場移設問題などを挙げ、鳩山政権の外交・安保政策は「東アジアの安全保障の礎石である日米同盟をむしばむ恐れがある」と警告した。……米軍の抑止力低下につながる同飛行場の国外移設を鳩山由紀夫首相はあきらめていないと指摘。首相が東アジア共同体構想と「戯れている」ことや、岡田克也外相が核先制不使用に関する対米協議に言及したことにも触れ、こうした姿勢では中国の軍拡や北朝鮮の核問題には対応できないなどと批判した。 
10月23日 時事通信

■3週間前に米国側で噴出した鳩山サセテイタダク首相に対する不信感は、オバマ大統領の訪日によって払拭されたとはとても思えない結果になりました。米国の抑止力が必要なのか、もう要らないのか?要らないのなら、それに変わる安全保障の方法を提示する用意があるのか?普天間移転問題を巡る閣内不一致そのもののドタバタ劇を眺めていた鳩山サセテイタダク首相は「最後は私が決める」と涼しい顔で答えていたようですが、クラッシャー小沢の伝家の宝刀「俺は聞いてないぞ!」発言が出ても、本当に自分が決められる主導権を持っていると考えているのか?

■わざわざ直接会談をしたというのに、オバマ大統領は橋本内閣当時の「日米合意」が履行されると安心し、一方の鳩山サセテイタダク首相は「白紙からの交渉」を始める心算だと言い出したそうですが……。


アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が14日、2日間の日程で開幕した。……オバマ大統領の名代としてAPEC関連フォーラムで講演したカーク米通商代表部(USTR)代表は14日、「米国は現在そして未来のTPPの参加国・地域とともに、アジア太平洋地域の統合を成功へと導く基礎を形づくる」と述べ、TPPを基礎にAPEC全体の統合を推し進める意欲を示した。……TPPはシンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイで発足し、すでにオーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明しており、ラッド豪首相も米国の姿勢を歓迎している。

■友愛精神で膨らませた「東アジア共同体」という風船玉が米国の一刺しで破裂するかしぼんでしまいそうであります。オバマ演説の中には「太平洋は米国の海だ!」という強いメッセージが埋め込まれていましたが、ちゃんとこうした中身が用意されていたのですなあ。


……鳩山首相は14日午後の講演後の質疑で……「さまざまな構想がしばらくの間、併存して構わない。方向性が定まってきたときに集約されるだろう」と答え、当分、態度を明確にしない姿勢を示した。14日までの各国間の調整では、首脳宣言案にアジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)実現への道筋を探る研究を続けるとしているが、TPPの扱いなどは固まっていない。一方、首脳宣言では来年のAPECに向け、「持続可能な成長」と「あまねく広がる成長」「バランスのとれた成長」の3つの新成長戦略を策定することで一致した。
11月15日 産経新聞

■「いろいろな意見が出てもよい。最後は私が決める」と普天間への基地移設問題を先送りした時と酷似した物言いに聞こえますが、肝腎の「方向性が定まって」行く交渉過程でも傍観者の立場でいる心算なのでしょうか?自分の「東アジア共同体」構想が具体的に語れるようになるのかも語らず、米国が思い切った決断をして日本の頭越しに新たな経済圏を構築しようとしている時に、日本は参加も不参加も決めずに観客みたいな顔をしていて、本当に大丈夫?

鳩山さん大丈夫? 其の七

2009-11-15 16:08:52 | 政治
鳩山由紀夫首相は14日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)関連のフォーラムで講演し、アジア太平洋地域の協力促進策の一環として、海外での災害救援などのため、自衛艦に外国人や民間人を乗せて災害地や紛争地に派遣する「友愛ボート」構想を明らかにした。また、移民ではないものの、居住する外国人を増やす施策を検討する考えを示した。

■オバマ大統領が候補者時代から「テロとの戦いの主戦場だ!」と叫んでいたアフガニスタンにも、先日、来日したダライ・ラマ14世が追われたチベットにも海は無い!という事実を承知の上で、こんな寝言を口にしたのなら、随分と気楽で無責任な政治姿勢だと言わねばなりますまいなあ。発言したのがAPECの会場ですから、オーストラリア、ブルネイ、インドネシア、韓国、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、台湾、香港、メキシコ、パプアニューギニア、チリ、ペルーと加盟国の名前を並べてみますと、確かに海からの緊急救援活動の対象になりそうな場所が多いのでありますが、加盟国の中にはアメリカ合衆国、ロシア、チャイナ、カナダなどの広大な内陸地を抱えている国々もありますぞ。


講演で首相は「命を守るための協力として友愛ボート、フラタニティーボート構想を持っている。日本の自衛艦にNGO(非政府組織)の人やアジアの多くの人が協力して乗り込んで、あちらに紛争があったぞ、人の命が危ないぞといえば、その船が行って医療の手術などの協力を行う。あるいは大規模な災害を救うため、医療の援助をするなど柔軟に活用できる船をつくる」と述べた。自衛隊の海外派遣に加え、自衛艦に外国人や民間人を乗せて任務を行うことになり、各方面に波紋を広げそうだ。

■「紛争があったぞ!」と叫んで救援を求めるのは誰でしょう?紛争で旗色の悪い方ではないでしょうか?互いに正義の旗を揚げて正当性を主張し合って殺し合っている場所に戦闘用に建造された海上自衛隊の船を出して「医療活動に来ました」と言うつもりなら、紛争そのものを理解していないことになりましょう。さらに「人の命が危ないぞ!」と多くの人が危惧しているのは隣の北朝鮮という奇妙で物騒な国ではないでしょうか?拉致被害者の救援について、総理になってからは何も語らなくなった鳩山サセテイタダク首相は、何処の誰を救おうと張り切っているのでしょうなあ?

■軍艦を「護衛艦」などと姑息に呼び替えている間に、日本の首相までもが戦闘艦に民間人や外国人を乗せるなどという恐ろしいことを構想するようになってしまったようです。海上自衛隊の皆さんは、事前にこの「友愛ボート」構想を聞いていたのでしょうか?ボンボン首相の思い付きとしても危険極まりない発言が飛び出したものです。


……講演後の質疑応答で、日本の少子化対策として、移民受け入れ政策をとる考えはないかと尋ねられたのに対し、「まず、子ども手当の充実で、どれだけ出生率が回復できるかを見ることが大事だ」と述べたうえで、「観光だけでなく、世界の人々に日本に来たい、住みたい、働きたいという思いを持っていただくようにすることが大事だ。日本に来る魅力がない、日本に住む魅力がないと思っている人が多いと思う」などと語ったが、具体的な政策については言及しなかった。
11月15日 産経新聞

■税金を払わねばならない「日本に住む魅力がない」と思っているのは無税のブルネイに移住したがっている鳩山サセテイタダク首相御自身ではないのか?と意地悪く問いたくなるような発言でありますが、為政者として熱烈に「日本に来たい、住みたい、働きたい」と思って不法な手段でも入国しようとする者や不法滞在を続けている困った人達の多さをまったく御存じないのは大問題であります。更に「子供手当て」で一時的に出生率を引き上げようとすると、手当てを目的とする無責任な親と不幸な子供が急増する恐れも無きにしもあらずで、そんな人気取りの付け焼刃政策よりも実の上がる緊急経済対策と共に長期経済成長政策を提示するべきでしょうなあ。

鳩山さん大丈夫? 其の六

2009-11-15 16:08:07 | 政治
■鳩山サセテイタダク首相という人は、単に母親に命じられ妻に焚き付けられたという理由だけで総理大臣になってしまったのではなかろうか?現役の政治家の中で、安倍・福田・麻生と総理経験者の子孫が正月の松飾かクリスマスのツリーの如く、1年ごとに付け替えられた後、残ったのは鳩山一家の血筋だけのようですから、政権交代はしたものの、政治の最高責任者は世襲絡みで受け継がれたことになりましょう。

■企業からの献金問題で代表を辞したクラッシャー小沢も有名な世襲議員である上に、田中角栄が早世した長男と年恰好が似ていると自分の後継者にしようと手塩にかけて育て上げたそうですから、生物学的な子孫ではなくとも政治家としては田中角栄の子供どのものだと言われているようですから、どちらに転んでも故吉田茂の孫にして故鈴木善幸の義理の息子である麻生総理の次は筋金入りの世襲首相が現われることになっていたというわけです。

■前回の1年弱で終わった細川連立内閣による政権交代を仕掛けたクラッシャー小沢は、3度か4度は予算編成が出来ると踏んでいたという話があるようです。今回の鳩山サセテイタダク内閣は1年間の使い捨てのつもりなのではないか?という噂が政界に流れているという話も聞こえて来ますから、真意不明の失言を連発したり、内政と外交の両方で先送りの迷走を続けて失点を重ねて行けば、来年の参議院選挙を迎える頃には首相が交代しているかも知れませんなあ。

■オバマ大統領を置き去りにしてまで。鳩山サセテイタダク首相が急いでシンガポールに乗り込んだ目的は何だろう?と思っていたら、「日本文化紹介施設」の開所式に出席しシンガポールのリー・シェンロン首相と会談しただけというのは日米関係を軽視しているような印象を受けますが……。


鳩山由紀夫首相は14日、シンガポールでブルネイのボルキア国王と会談し、個人に対し所得税が課せられていない同国の税制について、「国民に税金が課されていないと聞いた。日本国民もブルネイに移住したいと考えるだろう」と述べた。……政治資金収支報告書の虚偽記載問題で、自民党の大島理森幹事長から「脱税の可能性がある」と追及を受け、「税はしっかりと払っている」と反論した経緯がある。加えて、首相自身の資産報告書などの記載漏れも発覚したばかりで、「軽率発言」とのそしりは免れそうにない。
11月15日 産経新聞

■母方の実家筋から莫大な遺産を継承しているボンボン首相が、寝不足と緊張で酩酊状態になってぽろりと大金持ちの本音が出たのでしょうか?バブル時代に世界一の大金持ちだと騒がれた西武グループ総帥の堤義明さんも税金を払うのが大嫌いだったとか……。貧しい庶民には大金持ちの感覚や心情はさっぱり分かりませんが、国の税金を預かる首相になっても独特の吝嗇(りんしょく)さは隠せないのかも知れません。御本人はジョークか御追従のつもりで話したのかも知れませんが、鳩山サセテイタダク首相がジョークの才があるとは聞いたこともありませんから、慣れないことはやらぬが宜しいでしょう。

鳩山さん大丈夫? 其の伍

2009-11-15 13:27:11 | 政治
■本来なら首相になっていははず?のクラッシャー小沢幹事長に関する報道があります。

日本キリスト教連合会(山北宣久委員長)は、キリスト教について「排他的だ」などと語った民主党の小沢一郎幹事長に対し、11日付で抗議文を送り、発言の撤回を求めた。小沢氏の発言を「一面的理解に基づくそれこそ『排他的』で『独善的』な発言で、見識を深く疑わざるを得ない」と批判している。小沢氏は10日、和歌山県高野町の高野山真言宗総本山「金剛峯寺」を訪れた際、仏教を「度量が大きい」と評価する一方で、キリスト教を「非常に排他的で独善的」と批評し、「キリスト教を背景にした文明は欧米社会の行き詰まっている姿そのものだ」などと述べていた。
11月14日 毎日新聞

■宗教文化に関して小沢幹事長が特に高い見識を持っているとは聞いたことはありませんから、御本人は単なるリップサービスの心算だったのでしょう。何せ高野山真言宗と言えば、僧侶数 6,290人、寺院団体数 3,620、信徒数 5,490,000人(文化庁統計より)を誇る大教団でありますから、選挙が第一(生活は第二?)のクラッシャー小沢にとっては各種宗教団体も次々と票田に変えて行かねばなりません。新興宗教の某教団が東京にビルを建てたとて民主党の有力議員がお祝いに駆け付ける写真が週刊誌に掲載されたのは最近のことでありました。因みに文化庁の統計によりますと日本国内のキリスト教系の信徒さんはどんなに頑張っても90万人程度だそうですから、取り込むなら新旧仏教系教団の方が断然、お得!

■成人後にキリスト教に改宗したと公言しているのにイスラム教徒疑惑が消えないオバマ米国大統領の訪日を目前にして、小沢幹事長が宗教問題に関して軽々しい見識?を披露したのは大失敗でありましょう。この発言が世界中に配信されたらどうなるのでしょう?「欧米社会の行き詰まり」の原因がキリスト教文明にあるのなら、テロ集団を育ててしまったイスラム教文明はどうなのでしょう?そもそも、仏教の長い歴史の中には極端に排他的で独善的な教派が現われたこともありますし、『法華経』を最高の教えとする日蓮の思想を基盤とする各種教団には今でも強烈な排他性が見られるのは衆知の事実。他の宗教から自らの信仰を区別するには、大なり小なりの排他性は必要になるはずなのですが……。

■クラッシャー小沢が何を根拠にして仏教が排他的でないと断じたのかは存じませんが、この発言をした高野山を開いた弘法大師・空海さん以後、真言宗自体が高野山・醍醐派・御室派・智山派・豊山派・金剛院派などに分裂している歴史的事実をどう解釈するのでしょうなあ?新興宗教の中には空海の真言思想を基盤とする団体も数多いようですなあ。まあ、ブッシュ前大統領が大好きだった「十字軍」騒動やら血生臭い「異端審問」などの大規模な残酷劇を仏教は演じてはいませんが……。

鳩山さん大丈夫? 其の四

2009-11-15 13:26:37 | 政治
■東京だけではなく日本のあちこちを厳戒態勢にして米国大統領を迎えた割には、新政権と鳩山サセテイタダク首相にとっては得た物は非常に少なく、失った物の方が多いような空騒ぎだった印象であります。今回で二回目の首脳会談となりましたが、最初は政権交代直後の新米首相として相手側が相当に気を使って手心を加えてくれた御蔭で親密な関係が結べたような気分になれた鳩山サセテイタダク首相でしたが、この度は天皇陛下御即位20周年記念とも重なった上に、シンガポールでのAPEC会議と北京での長期滞在という「本番」を控えていたオバマ大統領としては、またまた気を使ってくれた模様であります。

■相手の気遣いを察することが出来ない鈍感さが鳩山サセテイタダク首相にはあるようで、お客様を置き去りにして一足先に到着したシンガポールでは同行記者団に対して沖縄基地問題を振り出しに戻すような発言をしたそうですなあ。根は正直なボンボン息子のようですから、ついつい軽率に「本音」を漏らしてしまう傾向があるようで、その中身が徐々に分かるに従って支持率が確実に下降し始めているようです。このまま行きますと年内には50%ラインに到達する可能性すら見えて来たようでありますが、「必殺仕分け人」のテレビ受けするパフォーマンスが援護射撃となって巻き返しを図りたい自民党の「旧悪」が次々と暴き立てられていることもありまして、新政権を再び野党に蹴落とすような対抗勢力が近いうちに出現する心配だけは無さそうですから、当面は「他に適当な党(人)が居ないから」という友愛の?精神に満ちた理由で支持率は下支えされそうではあります。

■JAL再建問題や年金問題の扱い方を見ていると、最大の支持団体である労働組合に対する真摯な気遣いがちらちらと見え隠れしておりますから、鳩山サセテイタダク首相の政治的な立場としましては、内政は選挙が第一!外交はチャイナが第一!というクラッシャー小沢の構想とぴったりと歩調を合わせているようにも見えます。国民の中に騙された!という気分が広まり、自民党の方がマシではないか?という雰囲気が膨れて行くのはいつ頃になるのでしょうなあ?


「我々、小沢総理を作るために活動しておったのですが、結果として私がこのような立場になりました」。11日、首相官邸で中国の王家瑞・共産党中央対外連絡部長の表敬訪問を受けた鳩山由紀夫首相は、このようにあいさつ。民主党の小沢一郎幹事長を「本来、首相であるべき人」と持ち上げて配慮をにじませた。王氏は、民主党と中国共産党が両国の問題を話し合う「日中交流協議機構」会議に出席するために来日した。小沢氏は同機構の活動の一環で12月に訪中を予定しており、07年の訪中団では党代表として胡錦濤国家主席と会談するなど、主に中国とのパイプ役を担っている。王氏も「小沢幹事長をはじめ、党の方々と素晴らしい意見交換をした」と応じた。
2009年11月11日 毎日新聞

■英国での隠密行動が話題になったクラッシャー小沢幹事長でしたが、チャイナ関係の動きとなりますと宣伝がましく過度にオープンでありますなあ。この「12月に予定されている訪中」というのが、政府の外交政策とは何の関係も無いように見せかけながら、実際には小沢幹事長の個人的な思い込みによって日本の外交が振り回されてしまう危険を孕んでいる企画のようなのが気になります。『週刊文春』11月5日号に以下のような証言が掲載されておりましたからなあ。


「12月10日から毎年恒例の『長城計画』という小沢さんによる訪中団が組織されます。小沢さんを支持する一新会は、ノルマが議員一人につき三人。集まらないと、後援者などに『旅費は出しますから』とお願いしなければならない。一人19万8000円。万里の長城を見る旅行で、バカバカしい」

■鬼より怖い小沢幹事長に対して「バカバカしい」などと言い放つのは命懸けでしょうから、記事には「一新会関係者」としか書かれておりません。頭数だけなら旧田中派よりも多いと言われる小沢グループ(派閥とは呼ばない)が、各自3人ずつ道連れにするのですから人数は4倍に水膨れ!しますし、忠誠心を競う御調子者などが張り切って更に多くの道連れを引っ張り込めば大型旅客機1機では乗り切れないほどの大集団になるかも知れません。特に来年の参議院選挙を控えている議員などは一新会枠の外からでも参加して小沢幹事長の御機嫌取りに励むかも?

ポタラ宮と天空の至宝……

2009-11-14 17:28:13 | チベットもの
■やっと東京の上野の森美術館で開催中の聖地チベット――ポタラ宮と天空の至宝を見学に行って来ました。まあ、簡単に感想を述べますと……1400円の入場料に見合うだけの内容ではありました。公式HPの「スタッフのコラム」などを拝見しますと素朴に真面目に取り組んでいるご様子が察せられるのではありますが……。
 
■このコラムによりますと某大学で仏教を学んでいる学生さん達が授業の一環として先生に引率されて「90分間、熱心にお勉強なさって」行ったそうです。はて?すると序章から第五章までで構成されている展示物の解説なども熟読されていたのでしょうが、第三章「元・明・清との往来」コーナーの入り口にデカデカと掲示してあった説明パネルもお読みになった?引率の先生も一緒に?

■折角の機会なので順路を行きつ戻りつしながら、(たったの?)123点の展示物を3時間近くも見て歩いていた旅限無は、問題のパネルの前で考え込んでしまったのでした。そこには


……フビライ・ハンの孫ゴダン……

と書かれていまして、おや?フビライとゴダン(クテン)とは従兄弟の間柄のはずなのだが……と自分の記憶違いか?場内を監視している係りの人に間違いではないか?と声を掛けるべきか?と暫し黙考して立ち尽くしておりました。ゴダンはチンギス汗の三男オゴタイの次男で、オゴタイが二代目(大)ハーンに即してからは今の甘粛省を領地としておったそうで、青海省を蹂躙してラサ周辺にまで侵攻したこともある猛者だったとのこと。ですがペルシア仕込の呪術のせいで奇病に罹って苦しみ、もっと強力な呪力を求めてチベットのサキャ・パンディタを脅迫同然に招請したのが、チベットと大モンゴルとのそもそもの馴れ初め。

■鎌倉時代に日本を襲ったフビライはチンギス汗の四男ツルイの次男坊で、父のツルイとゴダンの父オゴタイは兄弟なのですから、どう考えても両者は従兄弟関係でありましょう。もしも、パネルの「孫」を生かすのなら「チンギス・ハンの孫ゴデン」としなければなりますまい。天気が悪かったせいもあり、思ったほどの混雑はしていなかった場内でしたが、それでも次々に見学者が問題の?パネルの前に立ち止まっては、ふむふむ、と何やら感心しながら展示物の方へと流れていく様子を見ていますと、9月19日から始まって既に2箇月近い時が過ぎ、「会期中無休」を謳って張り切っている展示会に足を運んだ人々の数を考えると、今更、事を荒立ててケチを付けるのも何だなあ……と、無邪気に立ち番を交代するスタッフの笑顔を見ながらチベットの真実を知るべきだ!という心がだんだん萎えてしまったのでした。

■同展示会は来年の1月11日まで「会期中無休」で続くそうですし、来年の4月11日~6月14日は福岡県太宰府市の九州国立博物館での開催という運びになっているそうですから、これから御覧になる機会が有りそうな方は、どうぞ問題のパネルにご注目!?早めに入場して貧乏臭く長時間の見学を続けておりましたので、図録を購入して外に出て見ると入場時には居なかった「反対派」が入り口正面に向って睨みを利かせるように展示会の不当性を訴える看板を並べておりました。

■1997年に東武美術館が開催した『天空の至宝 チベット密教美術展』はアメリカやロシアの美術館や博物館のコレクションから個人の所蔵物まで掻き集めて圧倒的な量と質を誇っておりましたが、今回の「天空の至宝」は財団法人・日本美術協会と中華文物交流協会、そして中国チベット文化保護発展協会が主な主催団体で、朝日新聞社・TBSなども主催者に名を連ねております。因みに浅い新聞社は1997年の展示会でも主催者になっていましたなあ。

■今回の出品協力は中国チベット自治区文物局と中国文物交流中心だそうですから、チベット自治区内に安置・収蔵されていた逸品を集めて企画されたのでありましょう。従いまして「反対派」としては少なくとも展示のタイトルに「略奪された」を付けるべきだ!ということになります。半世紀前の国共内戦に敗れた蒋介石が北京の紫禁城から選びに選んで運び出した「チャイナの至宝」を台湾に運び込み、原爆が落ちても大丈夫!という岩山を刳り貫いた堅牢無比の特殊博物館を作って保存したのとは違いまして、1959年のチベット動乱の時にはダライ・ラマ14世は文字通りの着の身着のままで、夜陰に紛れて馬に跨って脱出・亡命したものですから、それまでに西欧列強の手で持ち去られず残った数々の「至宝」はそのまま残してヒマラヤを越えたのでありました。

■今回の展示品には歴代ダライ・ラマが居住していたポタラ宮に秘蔵されていた物も多く含まれているのですから、偶然にも「会期中無休」の期間にダライ・ラマ14世が来日されるという巡り会わせで、上野からさして遠くない東京両国での講演に続いて、四国松山、そして沖縄へ巡っての平和と祈りの日本滞在……。ジョークの名人でもある法王が「わたしも是非とも(久し振りに)見学したいものです。入場料金は払いますよ」とか、「来日した記念にお土産として数点を持ち帰ってもよいですか?」とか、痛烈な発言はなされなかったようでありますが、それはきっと、日本側に見事なジョークを返せる相手が居ないことをご存知だったからかも知れませんぞ。

北朝鮮流のオバマ歓迎 其の壱

2009-11-12 16:04:35 | 外交・情勢(アメリカ)
■米国テキサス州のフォートフッド陸軍基地で絶望的な「アッラー・アクバル」乱射事件が起こったのが11月5日午後1時半(日本時間6日午前4時半)のことでした。短時間に100発以上の銃弾が発射され、米兵13人が死亡し31人が負傷したとのことでした。事件を受けたオバマ大統領は11月11日の「退役軍人の日」まで全米で半旗を掲げて喪に服すようにとの指示を出したのでした。皮肉なことに乱射事件を起こしたイスラム教徒の軍医殿は、退役ならぬ「除隊」を申請して却下されたことで絶望したことが犯行動機だと言われていますなあ。
 
オバマ米大統領は11日、ワシントン近郊のアーリントン国立墓地で行われた「退役軍人の日」の献花式で演説し、現在アフガニスタンなどに派遣されている兵士について「遠い場所での困難に耐え、私たちを危険から守っている」と述べ、国への貢献をたたえた。……演説の後、オバマ氏とミシェル夫人は墓地内のイラク戦争とアフガンでの戦争の犠牲者が眠る区画を予告なしに訪れ、遺族を驚かせたという。……「(大統領の職務の中で)軍の司令官ほど重大なものはない」と強調。現在戦地にいる兵士に対しては「多くの人が自分の利益を追求する中で、大きな目的のために尽くしてきた」と賛辞を贈った。
2009年11月12日 産経ニュース

■米国にとって沖縄を筆頭に日本各地に存在する基地も「遠い場所」の中に含まれましょうし、そのまた西隣の北朝鮮はもっと「遠い場所」ということになりますなあ。乱射事件が起こったことで、12、13両日を予定していた訪日の日程が1日遅れに変更され、大統領はテキサスの現場に行ってからワシントンに戻って「退役軍人の日」に演説したのでした。そして、いよいよ13日に訪日して鳩山サセテイタダク首相と会談です。

■オバマ大統領は13日に鳩山サセテイタダク首相主催の晩餐会に出て、都内に1泊して14日に日本からシンガポールに移動するそうですから、実に慌しい1泊2日になりそうですなあ。あまりに忙しい日程なので沖縄の基地問題を取り上げる暇は無いのだそうです。シンガポールではアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席して誰かさんが掲げる「東アジア共同体」を牽制するとかしないとか……。何処の誰が仕掛けたのかは存じませんが、13日に首脳会談と晩餐会を行なう鳩山サセテイタダク首相はオバマ大統領が14日も日本に滞在してアジア外交に関する演説をしたり、天皇陛下と対面したりするのを百も承知の上で、13日深夜に一足先にシンガポールに出発するのだそうですぞ。

■オバマ大統領は14日の夜にシンガポールに向けて出発しますが、勿論、沖縄は飛び越して行きますしアフガニスタンへの兵力増派を決定済みの韓国も一旦は素通りしますが、シンガポールからの帰路に北京とソウルを訪問するのだそうです。歴訪の目的は「米国は二十一世紀のアジア・太平洋地域の指導者になる」ことだそうですが、今までの自民党政権だったら唯々諾々と受け入れて幇間(ほうかん)まがいのお追従コメントを出したところでしょうが、さてさて、鳩山サセテイタダク首相はどんな反応を示すのでしょうなあ?

■そこで「大事な国を忘れちゃいまんかってんだ!」と怒って見せているのが北朝鮮。


韓国と北朝鮮の海軍が10日、7年ぶりに交戦した。南北の警備艇による銃砲撃戦の現場は、西海岸の黄海上の南北軍事境界線付近。この海域では過去にもしばしば軍事衝突があり、南北で対立と緊張が続いている“海の火薬庫”だが、オバマ米大統領の日本や韓国訪問を前にした衝突の背景が注目される。北朝鮮の意図としては今のところ「韓国との緊張を印象付けることで内外の関心を集め、念願の対米交渉実現を図ることと、軍および民心に緊張感を持たせ国内引き締めを狙っている」(韓国軍当局筋)というのが大方の見方だ。

■銃撃戦が起こったタイミングが絶妙で、米国務省がボズワース北朝鮮政策担当特別代表を「適切な時期」に訪朝させると発表した直後だったようですから、お見事と言うべきか、北朝鮮らしい分かり易くも実に荒っぽいやり方をするものだと呆れるべきか……。


……李明博政権下の韓国軍は、対北融和政策で“事なかれ主義”に終始した過去10年の政権とは異なる。今や北朝鮮の軍事的挑発には“断固対応”との姿勢に変わっている。今回、韓国軍は北朝鮮警備艇からの銃撃に対して即時、応戦し、警備艇を半壊させ撃退している。「これまでは応戦に際しては上部の判断をあおぎ、自制することが多かった」(同筋)という。

■韓国の警備艇にはミサイル装備は無かったのかも知れませんが、半壊させて逃走を許したのは、意図的に撃沈しなかったのか、それとも惜しくも取り逃がしてしまったのか?まあ、撃沈!となれば相手は怪しい不審船ではなくて正式な警備艇なのですから、後始末が大変だったことでありましょうが……。


「西海五島」と呼ばれる延坪島沖では1999年と2002年に、南北間で戦死者を伴う激しい衝突(1次、2次延坪海戦)があった。しかし、李政権はこれまで冷遇されてきた戦死者の顕彰を積極的に進めるなど、軍の士気高揚を図ってきた。……北朝鮮の警備艇は韓国側の無線による警告を無視し、境界線を越えて韓国側への侵入を続けた。このため韓国警備艇が海上に向け警告射撃したところ、北朝鮮警備艇は韓国艇に向け直接銃撃を加えてきたため交戦状態になったという。

■北朝鮮の警備艇に無線機が積まれていたのか?という素朴な疑問も湧きますが、搭載されていても故障か電池切れなどのトラブルが発生したのかも?まあ、どちらにしても南進したのは故意によるものでしょうなあ。


韓国側でNLL(北方限界線)といわれている海上の南北軍事境界線は、北朝鮮の沿岸近くまで深く切れ込んでいる。このため北朝鮮は現状に不満が強く、NLLを無視する侵犯を繰り返してきた。今回、北朝鮮警備艇が警告を無視して侵入を続け、さらに韓国警備艇を攻撃してきたことに対し、韓国軍当局をはじめ韓国政府は「単なるNLL無視作戦」とは別に「政治的な意図」を感じている。

■6カ国協議を再開するという名目で米朝二国間協議へと落とし込みたい北朝鮮としては、ボズワース北朝鮮政策担当特別代表の訪朝が本決まりになってオバマ大統領が近所に飛来する時期を狙って、自国の存在と意志と意地を示しておきたかったと推察されますなあ。


北朝鮮は現在、核問題をめぐって米国との直接交渉の実現に全力を挙げている。南北間の軍事衝突は米国の目を朝鮮半島に引き付け、米国を北朝鮮との対話の場に引き出すのに効果がある-と計算しているのではないか……。
2009年11月10日 産経ニュース

■地下資源を除いて、核兵器とミサイルと偽札・偽タバコ・偽薬ぐらいしか売り物が無いお国柄なのですから、何かと言うとミサイルを花火みたいに打ち上げたり、「乱射」事件を起こさないと格好が付かないようです。どこまで本気かは不明ですが、「核無き世界」を語り始めた米国大統領を相手に「核だけは持ちたい」北朝鮮が危ない綱渡りを続けられるのも後わずかかも知れません。そうなって欲しいのですが……。

大変なんだね?TBS 

2009-11-12 14:57:39 | マスメディア
■テレビが流す「情報」の中には政府広報も含まれていたはずで、法律を守って真面目に暮らすようにとのメッセージを流し、下請け苛めのお手軽ワイドショーでは即席の「正義」を振りかざし、時代劇から刑事物、子供向けアニメまで勧善懲悪を基本とする番組を制作して放送するのがタテマエなのですが……。

千葉県市川市の県警行徳署前で12日、市橋達也容疑者の送検取材時の混乱で、公務執行妨害で逮捕された男が勤めるTBS広報部は、「現行犯逮捕されたのはTBSの男性社員と確認した。担当している番組や所属を含めて言えない。本人と連絡をとるべく作業しているが、細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と話した。
2009年11月12日 産経ニュース

■身柄が確保された大阪でも移動の新幹線でも、よくもまあ怪我人が出ないものだなあ、と半ば呆れてテレビの報道画面を眺めておりましたが、やっぱり報道陣から逮捕が出てしまいましたなあ。民放テレビ局は軒並み広告収入の激減で経営不振に陥り、どの局も経費節減に追われているそうであります。制作費を削れば番組が詰まらなくなって視聴率も落ちるのは分かっているのに、安上がりに作って視聴率を稼げる番組を放送しようとするから「特ダネ映像」が欲しくなる。本当に困ったら「ヤラセ」でも誤報でも騒ぎになって世間の注目を集められれば良いのだ!という自滅コースに嵌まり込む。

■軽妙と言うより軽薄な語りを「トーク」と称し、当意即妙・臨機応変などとはとても呼べない無駄話を流して「情報提供番組」だと言い張っていながら、新聞・週刊誌の記事を画面いっぱいに切り貼りして従業員のアナウンサーに「朗読」させても恥ずかしいとも思わない。取材費の節減が経費節約の切り札と言うのなら、最初からその事件に興味のある人は活字メディアに直接アクセスするでしょうし、他のメディアから情報を露骨に剽窃(ひょうせつ)した番組を漫然と眺めている人は、それほど強い関心を持ってはいないのでしょう。

■広く浅く情報の細切れを寄せ集めた「報道番組」を何の疑問も持たずに許容している視聴者は、決してテレビ・メディアを鍛えてはくれません。それに甘え切って番組の粗製乱造を重ねる送り手側にも反省の心は生まれないでしょうなあ。送検される市橋容疑者の顔を見たところで事件の真相に光が当たるわけでもないのに、大阪・東京・千葉へと報道陣の大群が移動する様は実に不快で不可解なものでありましたが、謎の?TBS男が無様に逮捕される一部始終を別のメディアが撮影してニュースにしてしまうというのも、楽屋落ちと申しましょうか、メクソ・ハナクソを笑うと申しましょうか……。

■TBS広報部が「……細かい状況については把握できておらず、詳細を確認している」と言っている脇から現場で起こった出来事の「詳細」は日本中に流れているのでありました。


……男は同日午前11時半ごろ、市橋容疑者が送検される際、警察官の制止を振り切り市橋容疑者を乗せた車に近づいて、公務の執行を妨害したなどとされる。同局の関係者によると、男は「みのもんたの朝ズバッ!」のディレクターとの情報があるという。

■不用意な発言が訴訟騒ぎにまで発展したことで名を馳せたのが『朝ズバッ!』という番組だったはずですなあ。「庶民の怒りを代弁」するとかで視聴率が高いらしく何かと低迷が続くTBSにとっては宝物みたいな番組らしいのですが、みのもんたの怒りが本物かどうか?相当に怪しいような気もします。ゲストに大物を呼ぶことが多いので旅限無も以前は観ていたこともありました。しかし、どうやら売り物の「怒り」は張りぼてに過ぎないと分かってからは朝の情報はもっぱらラジオからになった昨今であります。


男は市橋容疑者送検の取材のため、行徳署の門の脇にいたが、市橋容疑者を乗せたワゴン車が門を出たところで、県警が張っていた規制用のロープを越え、警戒していた警察官の制止を振り切り車を追い掛けた。すぐに数人の警察官に取り囲まれたが、男は警察官の手を振りほどき車に接近。数十メートル走ったところで、追い掛けてきた警察官に取り押さえられた。……警察官が「公務執行妨害で現逮(現行犯逮捕)だ」「ワッパ(手錠)だ、ワッパかけろ」と叫ぶなど、一時騒然とした雰囲気となった。
2009年11月12日 産経ニュース

■権力を監視するのが任務の社会の木鐸が「ワッパ」を掛けられる場合、通常は権力濫用だ!と官憲側が総攻撃を受けるはずなのですが、混乱を避けるために張ったロープを乗り越えての一人駆けとなると、単なる馬鹿者でしかありませんなあ。「そんなに欲しいか!視聴率?!」と言いたくなる情けない小さな事件であります。こんな取材態度を持っているのなら、TBSは来日するオバマ大統領の車にも無謀な突進を試みるのでしょうか?世界のテロリストが狙う重要人物が相手ですから、問答無用でシークレット・サービスに射殺されるのがオチ。日本の警察は優しいので、この程度の無作法に対して絶対に発砲はしないことを見越しての公務執行妨害だとしたら、とてもじゃないが権力の監視などは務まりませんでしょうなあ。

■さてさて、今日の夜から明日の朝にかけてTBS以外のテレビ局が「スクープ映像」を繰り返し繰り返し流し続けるでしょうから、本当に逮捕されたのが『朝ズバッ!』の関係者であれば他人の不幸は蜜の味!とばかりに澄ました顔で責め立てる他局と蒼褪めたコメツキバッタみたいに平身低頭して「再発防止に努めます」と毎度お馴染みの謝罪をするTBSとの比較対象は、きっと視聴率アップに貢献することでありましょう。

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森繁逝って市橋捕まる 其の参

2009-11-12 11:13:30 | 教育
■千葉県行徳警察署で逮捕された市橋容疑者は、黙秘と断食を続けている由。オバマ米国大統領が予定を1日遅らせて来日するとて東京都下は厳戒態勢だそうですが、鳩山サセテイタダク内閣がうっかり蓋を開けてしまったパンドラの箱から飛び出した「沖縄基地問題」が日米関係を根底から揺るがすのではないか?と交渉の推移を心配する声も出ているという時に、市橋容疑者が選んだ国内最後の逃亡先が沖縄。基地問題に関する政治的な思想などは持ち合わせていそうもない暇な30男にとって、ふらりと流れ込んで気ままなリゾート暮らしが出来る特殊な場所が点在する沖縄は最後に残された希望の地だったのかも知れません。しかし、迷惑な米軍基地に加えて変な連中が税金も払わずに居付いてしまうのも沖縄の人々にとっては頭の痛いことでありましょうなあ。ましてや全国指名手配されている犯罪者などは御免こうむりたいところでしょう。

■都道府県別の指名手配容疑者の数が公表されていました。元々、居住人口に大きな偏りがありますから単純に数の多少は論じられないのですが……。逃げ回っているらしい合計1933人を多い方から並べてみましょう。

①大阪 335 ②東京 261 ③愛知 117
④福岡 115 ⑤神奈川 96 ⑥北海道 65
⑦千葉  65 ⑧兵庫  63 ⑨埼玉  58
⑩滋賀  46……

■人口比で圧倒的に多い東京都を楽々と抜いて大阪府が第一位というのはちょっと不気味でありますが、名古屋市を擁する愛知県にぴたりと付いている福岡県も迫力がありますなあ。以下を見てみますと……。

岡山  45、広島 43、栃木 41、静岡 41、三重 35、
和歌山 31、宮城 30、京都 26、山口 26、岩手 24、
長崎  23、群馬 22、新潟 22、沖縄 20、茨城 19、
石川  19、大分 19、香川 18、愛媛 18、福井 16、
鳥取  16、佐賀 16、奈良 15、島根 15、富山 12、
鹿児島 12、熊本 11、青森 11、岐阜 11、山形 10、
長野  10、宮崎  9、高知  7、福島  6、秋田  5、
山梨   4、徳島  4。

■犯罪の発生件数や検挙率などの数値とも摺り合わせないと迂闊な判定は出来ませんが、少ないながらも全都道府県に未解決の凶悪犯罪が存在しているというわけですなあ。所轄の警察に頑張って頂くしかないのではありますが、平均寿命が今の半分以下だった大昔に定められた「時効制度」がずっと放置されたままだったのは政治家の怠慢だったのでありましょうし、なかなか冤罪事件が根絶できないのは警察の構造的な問題なのでしょうなあ。

■今回の市橋容疑者逮捕の功績は、通報した整形外科医とフェリー乗り場の職員にあり、整形情報に過剰なほど反応して集中豪雨的に騒ぎ立てたマスコミが陰の主役だったことになりそうです。残念ながら警察は「電話番」になってしまいました。それならアルバイトでも勤まるぞ!とまでは申しませんが、これから解明されるはずの空白の逃走期間の内容によっては警察の責任が改めて問われることになるのではないでしょうかな?返す返すも現場からの逃走を許した最初の対応の拙さが、これだけの大騒ぎを引き起こしてしまったのですから、これで万事が目出度し目出度しとはなりませんぞ。

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森繁逝って市橋捕まる 其の弐

2009-11-11 23:09:36 | 社会問題・事件
■本当に今の日本に「賞金稼ぎ」という専門職が現われるかも?と心配になる数字が出ております。

……全国の警察本部が指名手配している凶悪事件(殺人、強盗、強姦、放火)の容疑者125人のうち、約7割にあたる87人が5年以上検挙されておらず、約2割の24人は10年以上も消息がつかめていないことが、警察庁の集計で分かった。容疑者が浮上しても刑事責任が追及できず、時効が近づく。

■今頃になって「分かった」という犯罪報道もどうかと思いますが、警察機構の内部でもいろいろと大きな変化が起きているそうですから、政権交代も実現したことですから、悪人を逃がさない方法と仕組みを新たに国会で考えるのも良いかも知れません。都市部に目立っている「空き交番」やら各地で頻発する「初動捜査のミス」やら、それに輪を掛けての冤罪事件の発生!となれば警察に対する信頼が土台から揺らぐのは当然のことでありましょう。警察機構の恐るべき徹底した官僚化は国民の誰もが知っていることで、現場と上層部との間に広がる絶望的な断絶は、小説や映画で嫌というほど知らされておるところですからなあ。


警察庁によると、07年10月16日現在の指名手配容疑者は1933人。このうち、捜査重点は579人で、……。凶悪事件で、指名手配から10年以上逃走しているのは24人(殺人11人)、5年以上10年未満は63人(同33人)。……殺人容疑で10年以上逃亡している11人は、▽95年3月の地下鉄サリン事件に関与したとされる元オウム真理教の高橋克也(50)、菊地直子(36)▽90年11月に沖縄市で警察官2人を射殺したとされる又吉建男(59)の各容疑者ら。……

■引用した報道記事では、時効問題への言及が続くのですが、時効制度そのものを廃止せよ!という動きが出ているところですから、その問題には深入りしません。ただ、長きに亘った自民党政権は、笑ってしまうほど古い、化石のような法律条文を時代の変化に即応して改定する作業をずっと怠っていたことだけは確かです。


……全国の指名手配1933人のうち、警察が力を入れている「捜査重点容疑者」は毎年100人超が検挙されているが、例年30人以上いる警察庁指定重要手配容疑者は、06年までの5年間に毎年1~2人しか逮捕されていない。警察庁特別手配の元オウム真理教信者3人にいたっては、13年も逮捕されていない。

■警察庁の親分が拳銃で狙撃されるという世界でも珍しい大事件が発生したというのに、その真犯人は何処の誰なのか、さっぱり分からないというのが日本の警察組織の実態のようですから、オウム事件の闇を完全に暴(あばく)く突破口になり得る警察庁長官銃撃事件さえ解決出来ないのですから、組織全体としても士気が上がらないのも当然なのかも知れません。現場の捜査員は必死になって靴底を磨り減らして夏も冬も歩き回ったいるのでしょうが、組織全体として捜査能力が劣化しているような気がしてなりません。


警察庁は、逮捕者が増えない原因の一つに国民に「無関心」や「相互不干渉」の風潮が広まったことを挙げているが、生井澄子さんは時効を迎えるまで「どうやったら一般の人から情報を得られるか」と考え続けた。自費で200万円の懸賞金をかけたのも「情報がほしい」との願いからだった。「逃げ切れば、罪には問われない」。そんな時効制度が、指名手配容疑者の逃走を助長している面もある。

■警察組織も立派な天下りシステムを築いて運営しているのですから、政治家を動かして懸賞金制度をもっと早く作ることも出来たでしょう。しかし、明治以来の苔が生えた権威にしがみついて下々の民に頭を下げて情報を頂戴するのは嫌なのでしょうなあ。ベストセラー小説の常連に推理小説が並んでいる日本で、素人でも首をかしげたくなるような失敗を連発している上に、次から次へと不祥事が連続しているのが日本の警察で、何処かの国に比べれば相当に優秀な人材を揃えた組織だと言い張ることも出来る面もありますが、市橋容疑者の潜伏先に関する警察側の見立てと推理は、残念ながら的中しませんでした。

■一部の週刊誌によれば、市橋容疑者が大阪で身柄を確保される1週間前まで千葉県警の誰かさんは、「市橋は東京郊に潜んでいる!」との前提で必死の捜索を続けていたようです。千葉県は東京近郊ですから、自分達が管轄している縄張り内で名誉挽回を望む気持ちは分かりますが、意地や面子が先行すると捜査も推理も混乱することになるのは、ちょっとしたミステリー好きなら誰でも知っている定番みたいなものですから、作家の地道な取材が変なところで情けない実を結んだようなものであります。

■裁判員制度が始まって、犯人扱いの報道は犯罪行為だとされているはずなのに、マスコミ陣の狂奔ぶりは昔と何も変わっていないのも気になるところで、これから始まる真相解明を待たずに揣摩臆測の破片を組み立てては、面白い話を大急ぎで作り始めている節が見えるのも気になりますなあ。今回の犯人確保は警察のお手柄でなかったのと同様に、大手マスコミの働きによるものでもないようです。「自殺説」を垂れ流したテレビ局があったり、警察からのリークを真に受けてオカマ業界に隠れているという噂話を真面目に流していた局もあるとか……。これから犯行と逃亡の真相が明らかになるのですから、その前に自分達が流した情報や推理話を大急ぎで検証しておいた方が良いかもしれませんぞ。視聴率欲しさにオウム真理教の宣伝道具になって踊った苦い経験をもう一度思い出すべきでしょうなあ。