■「郵政民営化」の賛否を問う選挙だと小泉さんは鬣(たてがみ)を振り乱して吠えています。時が経つにつれて、もともと郵政民営化は何のために必要だったのかと考える人がだんだん増えて行きます。国会の予算委員会で議論されている一般会計とは別に、誰が何に幾ら使っているのかさっぱり判らない特別会計という闇の予算が有って、ここに投入されている資金の多くが郵便局に集められている預金や保険金だという大問題が有ります。郵政を民営化すればこの財政投融資の資金源を断つことが出来る!という単純な理屈から始まった議論でしたが、現金を動かさないで債券を発行すれば同じような資金源になってしまいそうです。
■これまでの財政投融資が、どんな風に動いていたのか、そして現在の帳尻はどうなっているのか、何よりも「誰が」これを主導していたのか、これらが明らかにされないと、改革すべき点もその方法もさっぱり分からないのですが、小泉さんは官僚に向ってこの帳簿を全部出せ!と命令したことは有りません。昔、菅さんが厚生大臣だった時、血友病患者の皆さんに投与されていた血液製剤の記録を探した事が有りましたなあ。お役人達は「そんな資料は無い」と平然としらばっくれていましたが、「出せ!探せ!」としつこく命令したら、ちゃんと出て来たのです。財政投融資の問題はこんなに深刻なのだ!と小泉さんが資料の山を闇の奥から吐き出させてくれたら、国民はもっとすっきりと郵政民営化を支持出来るのですが、日本の官僚体制維持と米国からの「門戸開放」要求だけで強引に推し進めているようにしか見えないのは困ったことです。
■財政投融資は、お役人達の天下りを目的とする貴重な資金として活用されているらしい、と分かっているのですが、役人だけが勝手にそんな事が出来るはずはないのです。これを利権化して肥え太った政治家の群がいたのです。その片鱗をちらりと見る話を一冊の本に見つけました。本の名前は日下公人著『一問に百答』です。その217頁に「国会議員数を減らすために何をすべきか」という設問が出て来ます。その解答はどうなっているかというと、
……比例区はなくしてしまってもかまわない。
今、衆議院議員は500人いる。これを300人に減らすことにすると、現職で落選する人が200人以上出る。その200人プラス何人かの人には退職金を3億円ずつあげることにしたらどうか。わずか600億円プラスで国会議員が一挙に200人減るのなら、これは決して高くない出費である。
国会議員の集まりに行ったとき、「3億円、退職金をもらえるとしたら、この200人削減法案に賛成しますか?」と聞いた事がある。そうしたら、みんな「それなら賛成する」と言った。「大喜びで辞める」と言う人もいた。
■フザケた国会議員年金制度を密かに作って、国民年金が破綻している時代になっても死守しようとしている議員さん達ですから、こんな「泥棒に追い銭」みたいな話は腹立たしいばかり、のような気がしますが、この話には後が有るのです。
この案を大蔵次官経験者に言ってみたことがある。すると、「未だかつて聞いたことのない名案だ。日本国民がべらぼうに得する名案だ」という言葉を頂戴した。
彼が言うには、大蔵省がしぶしぶ国会議員恩要望に沿い、付けているムダ予算は、毎年一人あたり100億円にものぼる。それが3億円で辞めてくれたらこんな安上がりの話はない。600億円で、6兆円分、いや将来を考えれば60兆円分も得をする名案だとほめられた。
こんな提案をすると、マスコミから袋叩きに遭うことは察しがつく、週刊誌は「退職金を3億円もやる必要はない」と一大キャンペーンを展開するに違いない。しかし、それではいつまでも法案が通らない。建て前だけでは国会改革はできないのだから、そこは税金の有効な使い道ということで考えてはどうか。「お金はかしこう使いなはれ」という松下幸之助さんの言葉を思い出していたただきたい。
■「55年体制」というのは、与党議員と官僚が結託して選挙地盤と天下り先を確保すると同時に、野党議員にもオコボレを渡して与野党伯仲の茶番劇を続けるためのカラクリでした。「国民のため」「地方のため」という美名によって、借金までして政・官・財の「三方一両得」を実現する巧妙な仕掛けで、選挙となると異様に熱心になる支援者達も、このオコボレに与ろうと必死だったのですから、よってたかって日本国の借金を積み上げてしまったのです。ですから、「こんな日本に誰がした!?」と問うのは無駄なのです。このシステムを完成したのが田中角栄さんでしたから、今でも角栄さんをネタにした本は沢山書かれるのでしょうなあ。将来を考えない甘い夢を見られた時代を懐かしむ人達と、その世代のヨタ話を真に受けて同じ夢を見たがる次の世代が読者となるのでしょう。しかし、米ソ冷戦も終わりましたし、安い賃金と高い技術力で成長を続けられる時代は去ったのです。角栄さんから三木さんの頃、社会保障制度や公務員の給与がどんどん手厚くなって、「少ない負担で大きな保証」が実現したのです。その差額は将来の国民が背負う事になるのは誰もが知っていたのですが、経済成長と土地の値上がりは永久に続くと皆が信じたので、あのバブル時代になってもローンを組んで住宅を購入する人々は跡を絶たなかったのでした。
■土地バブルが崩壊した後の大穴は、実はまだ埋まりきってはいませんし、個人が背負ったローンは次々と焦げ付いているのです。そして、「財政健全化」という絶望的な目標を掲げる旧大蔵官僚は、弱者切り捨ても止むを得ない!と決断しています。巨大な債務を帳消しにするには、「大きな負担で少しのサービス」に切り替えるしかないのですから、小泉さんが着手しては中途半端に終る改革の後には必ず大増税と社会保障の切捨てが待っています。しかし、この枠組みは「55年体制」の延長線上で仕組まれているので、本当に税金の無駄遣いを追跡して暴露するのは無理なのです。税金は役人と政治家の汚職で時々行方不明になってしまいますが、それは微々たる金額です。本当の無駄遣いは、常に合法的な予算として組まれて堂々と浪費され続けるのです。この予算案を作るのが政治家の主たる仕事なのですから、地方からの「陳情団」や各種支援団体が後押しして無駄な予算が膨らみ続け、それを官僚群が省益にして予算が既得権益化して予算は常に不動の比率を保ち続けるのです。
■国会議員の数が減れば、選挙対策用の無駄な予算が不要になりますから、劇的に予算編成の省別比率が変わる可能性も出て来ます。今まで選良として働いてくれた国会議員さん達に石を投げるような事をすれば、絶対に辞めてくれません。「御苦労様でした」と大人の労(えんぎら)いをしてお払い箱にするという手段は考えてみる価値は有りそうですなあ。国内政治は煎じ詰めれば「予算のぶんどり合戦」ですから、官僚にバカな命令をする議員が減れば、官僚が勝手に予算を盗めなくなりそうです。そして、この理屈は高級官僚の天下り防止にも応用出来そうです。高額な退職金を与えれば、胸を張って辞めて行くでしょうに、内心で「俺はこんな安い男じゃないぞ!」と思っている役人は、黒塗りの高級車・運転手・秘書・広いオフィスという無駄な飾りの四点セットを要求して馬鹿馬鹿しい退職金集めをするのです。日本中が偏差値教育と大学受験マニアになっていて、その上「資格信仰」を持っているのですから、東大を中心とする高い偏差値の大学に入って、公務員試験に合格した人達の努力と強運を認めて高い退職金を支払うのが正直な選択なのではないでしょうか?そうでなければ、子供に「勉強しろ!成績を上げろ!」と言っている親の立場が無くなってしまいますぞ。
■マスコミが「注目選挙区」などと30箇所程度の選挙区にスポット・ライトを当てて空騒ぎをしている陰で、「55年体制」時代をそのまま引き摺った選挙が続いているのです。今回の「刺客」ブームを見ても、無駄な議員が多いことははっきりしています。刺客さえも送られない、どうでも良い議員などが当選後に張り切って「無駄な予算」を要求するような事はもう止めた方が良いでしょうなあ。
■これまでの財政投融資が、どんな風に動いていたのか、そして現在の帳尻はどうなっているのか、何よりも「誰が」これを主導していたのか、これらが明らかにされないと、改革すべき点もその方法もさっぱり分からないのですが、小泉さんは官僚に向ってこの帳簿を全部出せ!と命令したことは有りません。昔、菅さんが厚生大臣だった時、血友病患者の皆さんに投与されていた血液製剤の記録を探した事が有りましたなあ。お役人達は「そんな資料は無い」と平然としらばっくれていましたが、「出せ!探せ!」としつこく命令したら、ちゃんと出て来たのです。財政投融資の問題はこんなに深刻なのだ!と小泉さんが資料の山を闇の奥から吐き出させてくれたら、国民はもっとすっきりと郵政民営化を支持出来るのですが、日本の官僚体制維持と米国からの「門戸開放」要求だけで強引に推し進めているようにしか見えないのは困ったことです。
■財政投融資は、お役人達の天下りを目的とする貴重な資金として活用されているらしい、と分かっているのですが、役人だけが勝手にそんな事が出来るはずはないのです。これを利権化して肥え太った政治家の群がいたのです。その片鱗をちらりと見る話を一冊の本に見つけました。本の名前は日下公人著『一問に百答』です。その217頁に「国会議員数を減らすために何をすべきか」という設問が出て来ます。その解答はどうなっているかというと、
……比例区はなくしてしまってもかまわない。
今、衆議院議員は500人いる。これを300人に減らすことにすると、現職で落選する人が200人以上出る。その200人プラス何人かの人には退職金を3億円ずつあげることにしたらどうか。わずか600億円プラスで国会議員が一挙に200人減るのなら、これは決して高くない出費である。
国会議員の集まりに行ったとき、「3億円、退職金をもらえるとしたら、この200人削減法案に賛成しますか?」と聞いた事がある。そうしたら、みんな「それなら賛成する」と言った。「大喜びで辞める」と言う人もいた。
■フザケた国会議員年金制度を密かに作って、国民年金が破綻している時代になっても死守しようとしている議員さん達ですから、こんな「泥棒に追い銭」みたいな話は腹立たしいばかり、のような気がしますが、この話には後が有るのです。
この案を大蔵次官経験者に言ってみたことがある。すると、「未だかつて聞いたことのない名案だ。日本国民がべらぼうに得する名案だ」という言葉を頂戴した。
彼が言うには、大蔵省がしぶしぶ国会議員恩要望に沿い、付けているムダ予算は、毎年一人あたり100億円にものぼる。それが3億円で辞めてくれたらこんな安上がりの話はない。600億円で、6兆円分、いや将来を考えれば60兆円分も得をする名案だとほめられた。
こんな提案をすると、マスコミから袋叩きに遭うことは察しがつく、週刊誌は「退職金を3億円もやる必要はない」と一大キャンペーンを展開するに違いない。しかし、それではいつまでも法案が通らない。建て前だけでは国会改革はできないのだから、そこは税金の有効な使い道ということで考えてはどうか。「お金はかしこう使いなはれ」という松下幸之助さんの言葉を思い出していたただきたい。
■「55年体制」というのは、与党議員と官僚が結託して選挙地盤と天下り先を確保すると同時に、野党議員にもオコボレを渡して与野党伯仲の茶番劇を続けるためのカラクリでした。「国民のため」「地方のため」という美名によって、借金までして政・官・財の「三方一両得」を実現する巧妙な仕掛けで、選挙となると異様に熱心になる支援者達も、このオコボレに与ろうと必死だったのですから、よってたかって日本国の借金を積み上げてしまったのです。ですから、「こんな日本に誰がした!?」と問うのは無駄なのです。このシステムを完成したのが田中角栄さんでしたから、今でも角栄さんをネタにした本は沢山書かれるのでしょうなあ。将来を考えない甘い夢を見られた時代を懐かしむ人達と、その世代のヨタ話を真に受けて同じ夢を見たがる次の世代が読者となるのでしょう。しかし、米ソ冷戦も終わりましたし、安い賃金と高い技術力で成長を続けられる時代は去ったのです。角栄さんから三木さんの頃、社会保障制度や公務員の給与がどんどん手厚くなって、「少ない負担で大きな保証」が実現したのです。その差額は将来の国民が背負う事になるのは誰もが知っていたのですが、経済成長と土地の値上がりは永久に続くと皆が信じたので、あのバブル時代になってもローンを組んで住宅を購入する人々は跡を絶たなかったのでした。
■土地バブルが崩壊した後の大穴は、実はまだ埋まりきってはいませんし、個人が背負ったローンは次々と焦げ付いているのです。そして、「財政健全化」という絶望的な目標を掲げる旧大蔵官僚は、弱者切り捨ても止むを得ない!と決断しています。巨大な債務を帳消しにするには、「大きな負担で少しのサービス」に切り替えるしかないのですから、小泉さんが着手しては中途半端に終る改革の後には必ず大増税と社会保障の切捨てが待っています。しかし、この枠組みは「55年体制」の延長線上で仕組まれているので、本当に税金の無駄遣いを追跡して暴露するのは無理なのです。税金は役人と政治家の汚職で時々行方不明になってしまいますが、それは微々たる金額です。本当の無駄遣いは、常に合法的な予算として組まれて堂々と浪費され続けるのです。この予算案を作るのが政治家の主たる仕事なのですから、地方からの「陳情団」や各種支援団体が後押しして無駄な予算が膨らみ続け、それを官僚群が省益にして予算が既得権益化して予算は常に不動の比率を保ち続けるのです。
■国会議員の数が減れば、選挙対策用の無駄な予算が不要になりますから、劇的に予算編成の省別比率が変わる可能性も出て来ます。今まで選良として働いてくれた国会議員さん達に石を投げるような事をすれば、絶対に辞めてくれません。「御苦労様でした」と大人の労(えんぎら)いをしてお払い箱にするという手段は考えてみる価値は有りそうですなあ。国内政治は煎じ詰めれば「予算のぶんどり合戦」ですから、官僚にバカな命令をする議員が減れば、官僚が勝手に予算を盗めなくなりそうです。そして、この理屈は高級官僚の天下り防止にも応用出来そうです。高額な退職金を与えれば、胸を張って辞めて行くでしょうに、内心で「俺はこんな安い男じゃないぞ!」と思っている役人は、黒塗りの高級車・運転手・秘書・広いオフィスという無駄な飾りの四点セットを要求して馬鹿馬鹿しい退職金集めをするのです。日本中が偏差値教育と大学受験マニアになっていて、その上「資格信仰」を持っているのですから、東大を中心とする高い偏差値の大学に入って、公務員試験に合格した人達の努力と強運を認めて高い退職金を支払うのが正直な選択なのではないでしょうか?そうでなければ、子供に「勉強しろ!成績を上げろ!」と言っている親の立場が無くなってしまいますぞ。
■マスコミが「注目選挙区」などと30箇所程度の選挙区にスポット・ライトを当てて空騒ぎをしている陰で、「55年体制」時代をそのまま引き摺った選挙が続いているのです。今回の「刺客」ブームを見ても、無駄な議員が多いことははっきりしています。刺客さえも送られない、どうでも良い議員などが当選後に張り切って「無駄な予算」を要求するような事はもう止めた方が良いでしょうなあ。