旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

財政再建の決定打?

2005-08-31 00:01:54 | 政治
■「郵政民営化」の賛否を問う選挙だと小泉さんは鬣(たてがみ)を振り乱して吠えています。時が経つにつれて、もともと郵政民営化は何のために必要だったのかと考える人がだんだん増えて行きます。国会の予算委員会で議論されている一般会計とは別に、誰が何に幾ら使っているのかさっぱり判らない特別会計という闇の予算が有って、ここに投入されている資金の多くが郵便局に集められている預金や保険金だという大問題が有ります。郵政を民営化すればこの財政投融資の資金源を断つことが出来る!という単純な理屈から始まった議論でしたが、現金を動かさないで債券を発行すれば同じような資金源になってしまいそうです。

■これまでの財政投融資が、どんな風に動いていたのか、そして現在の帳尻はどうなっているのか、何よりも「誰が」これを主導していたのか、これらが明らかにされないと、改革すべき点もその方法もさっぱり分からないのですが、小泉さんは官僚に向ってこの帳簿を全部出せ!と命令したことは有りません。昔、菅さんが厚生大臣だった時、血友病患者の皆さんに投与されていた血液製剤の記録を探した事が有りましたなあ。お役人達は「そんな資料は無い」と平然としらばっくれていましたが、「出せ!探せ!」としつこく命令したら、ちゃんと出て来たのです。財政投融資の問題はこんなに深刻なのだ!と小泉さんが資料の山を闇の奥から吐き出させてくれたら、国民はもっとすっきりと郵政民営化を支持出来るのですが、日本の官僚体制維持と米国からの「門戸開放」要求だけで強引に推し進めているようにしか見えないのは困ったことです。

■財政投融資は、お役人達の天下りを目的とする貴重な資金として活用されているらしい、と分かっているのですが、役人だけが勝手にそんな事が出来るはずはないのです。これを利権化して肥え太った政治家の群がいたのです。その片鱗をちらりと見る話を一冊の本に見つけました。本の名前は日下公人著『一問に百答』です。その217頁に「国会議員数を減らすために何をすべきか」という設問が出て来ます。その解答はどうなっているかというと、


……比例区はなくしてしまってもかまわない。
 今、衆議院議員は500人いる。これを300人に減らすことにすると、現職で落選する人が200人以上出る。その200人プラス何人かの人には退職金を3億円ずつあげることにしたらどうか。わずか600億円プラスで国会議員が一挙に200人減るのなら、これは決して高くない出費である。
 国会議員の集まりに行ったとき、「3億円、退職金をもらえるとしたら、この200人削減法案に賛成しますか?」と聞いた事がある。そうしたら、みんな「それなら賛成する」と言った。「大喜びで辞める」と言う人もいた。


■フザケた国会議員年金制度を密かに作って、国民年金が破綻している時代になっても死守しようとしている議員さん達ですから、こんな「泥棒に追い銭」みたいな話は腹立たしいばかり、のような気がしますが、この話には後が有るのです。

この案を大蔵次官経験者に言ってみたことがある。すると、「未だかつて聞いたことのない名案だ。日本国民がべらぼうに得する名案だ」という言葉を頂戴した。
 彼が言うには、大蔵省がしぶしぶ国会議員恩要望に沿い、付けているムダ予算は、毎年一人あたり100億円にものぼる。それが3億円で辞めてくれたらこんな安上がりの話はない。600億円で、6兆円分、いや将来を考えれば60兆円分も得をする名案だとほめられた。
 こんな提案をすると、マスコミから袋叩きに遭うことは察しがつく、週刊誌は「退職金を3億円もやる必要はない」と一大キャンペーンを展開するに違いない。しかし、それではいつまでも法案が通らない。建て前だけでは国会改革はできないのだから、そこは税金の有効な使い道ということで考えてはどうか。「お金はかしこう使いなはれ」という松下幸之助さんの言葉を思い出していたただきたい。


■「55年体制」というのは、与党議員と官僚が結託して選挙地盤と天下り先を確保すると同時に、野党議員にもオコボレを渡して与野党伯仲の茶番劇を続けるためのカラクリでした。「国民のため」「地方のため」という美名によって、借金までして政・官・財の「三方一両得」を実現する巧妙な仕掛けで、選挙となると異様に熱心になる支援者達も、このオコボレに与ろうと必死だったのですから、よってたかって日本国の借金を積み上げてしまったのです。ですから、「こんな日本に誰がした!?」と問うのは無駄なのです。このシステムを完成したのが田中角栄さんでしたから、今でも角栄さんをネタにした本は沢山書かれるのでしょうなあ。将来を考えない甘い夢を見られた時代を懐かしむ人達と、その世代のヨタ話を真に受けて同じ夢を見たがる次の世代が読者となるのでしょう。しかし、米ソ冷戦も終わりましたし、安い賃金と高い技術力で成長を続けられる時代は去ったのです。角栄さんから三木さんの頃、社会保障制度や公務員の給与がどんどん手厚くなって、「少ない負担で大きな保証」が実現したのです。その差額は将来の国民が背負う事になるのは誰もが知っていたのですが、経済成長と土地の値上がりは永久に続くと皆が信じたので、あのバブル時代になってもローンを組んで住宅を購入する人々は跡を絶たなかったのでした。

■土地バブルが崩壊した後の大穴は、実はまだ埋まりきってはいませんし、個人が背負ったローンは次々と焦げ付いているのです。そして、「財政健全化」という絶望的な目標を掲げる旧大蔵官僚は、弱者切り捨ても止むを得ない!と決断しています。巨大な債務を帳消しにするには、「大きな負担で少しのサービス」に切り替えるしかないのですから、小泉さんが着手しては中途半端に終る改革の後には必ず大増税と社会保障の切捨てが待っています。しかし、この枠組みは「55年体制」の延長線上で仕組まれているので、本当に税金の無駄遣いを追跡して暴露するのは無理なのです。税金は役人と政治家の汚職で時々行方不明になってしまいますが、それは微々たる金額です。本当の無駄遣いは、常に合法的な予算として組まれて堂々と浪費され続けるのです。この予算案を作るのが政治家の主たる仕事なのですから、地方からの「陳情団」や各種支援団体が後押しして無駄な予算が膨らみ続け、それを官僚群が省益にして予算が既得権益化して予算は常に不動の比率を保ち続けるのです。

■国会議員の数が減れば、選挙対策用の無駄な予算が不要になりますから、劇的に予算編成の省別比率が変わる可能性も出て来ます。今まで選良として働いてくれた国会議員さん達に石を投げるような事をすれば、絶対に辞めてくれません。「御苦労様でした」と大人の労(えんぎら)いをしてお払い箱にするという手段は考えてみる価値は有りそうですなあ。国内政治は煎じ詰めれば「予算のぶんどり合戦」ですから、官僚にバカな命令をする議員が減れば、官僚が勝手に予算を盗めなくなりそうです。そして、この理屈は高級官僚の天下り防止にも応用出来そうです。高額な退職金を与えれば、胸を張って辞めて行くでしょうに、内心で「俺はこんな安い男じゃないぞ!」と思っている役人は、黒塗りの高級車・運転手・秘書・広いオフィスという無駄な飾りの四点セットを要求して馬鹿馬鹿しい退職金集めをするのです。日本中が偏差値教育と大学受験マニアになっていて、その上「資格信仰」を持っているのですから、東大を中心とする高い偏差値の大学に入って、公務員試験に合格した人達の努力と強運を認めて高い退職金を支払うのが正直な選択なのではないでしょうか?そうでなければ、子供に「勉強しろ!成績を上げろ!」と言っている親の立場が無くなってしまいますぞ。

■マスコミが「注目選挙区」などと30箇所程度の選挙区にスポット・ライトを当てて空騒ぎをしている陰で、「55年体制」時代をそのまま引き摺った選挙が続いているのです。今回の「刺客」ブームを見ても、無駄な議員が多いことははっきりしています。刺客さえも送られない、どうでも良い議員などが当選後に張り切って「無駄な予算」を要求するような事はもう止めた方が良いでしょうなあ。

日本の反核運動 其の弐

2005-08-31 00:00:01 | 外交・世界情勢全般
其の壱の続き

■1950年に勃発した朝鮮戦争で、最後まで原子爆弾を使用しなかった米国は、ソ連の水爆実験成功に大きな衝撃を受けました。米国は、ソ連との「全面核戦争」の可能性を本格的に検討し始めて、1954年の3月1日、日本から奪い取ったマーシャル群島で初の水爆実験に成功します。有名なビキニ環礁での実験です。生き残った日本の戦艦長門を曳航して標的とする念の入れようで、貴重な写真に写った巨大な水柱の足元に小さくシルエットが見えます。水爆の衝撃波と熱線にも戦艦長門は耐え抜いて実験後の数日間は浮いていたそうです。或る夜、巨象がその死体を晒さないように長門はその姿を海中に没したと言われています。

■太平洋に散った英霊達の怨念か神風かは分かりませんが、実験当日には想定外の強い西風が吹いていました。しかし、これを無視して強行された水爆実験は、美しい珊瑚礁を抉(えぐ)って大穴を開けると同時に、珊瑚も岩も貝殻も全て砕いて天高く舞い上げました。強い放射能に汚染された微粉末と大量の海水が、危険区域の遥か東の海上にまで風に乗って運ばれたのです。ここには米国海軍の艦艇が調査と監視の目的で配置されておりまして、予想外の降灰に驚いた司令部から「緊急退避命令」が出されて、慌てて脱出したのですが、乗員の中から多数の被曝者を出してしまいました。勿論、その実態は長い間極秘とされていました。

■そして、更に東の北緯11度53分、東経166度35分、ビキニ環礁から160キロメートルの距離に有る「ロンゲラップ環礁」付近には、1月前に静岡の焼津港を出た延縄(はえなわ)漁船「第五福竜丸」他の日本漁船が多数操業していたのです。彼らは水平線上の太陽に似た閃光と火球を目撃しています。風が運んだ大量に汚染された微粉末を含んだ海水が雨のように降り注ぐ中、通信電波を出せば無線を傍受した米軍に拿捕されるのを恐れた乗組員は、一切の交信をせずに現場を密かに離れました。そして、14日後に母港に戻ってから「原爆マグロ」騒動が起きるのです。命懸けで採って来たマグロはガイガー・カウンターを当てられて廃棄処分となったのは仕方が有りませんが、 被害者であるはずの乗組員に対して見せた日本の差別的な態度と感情的な世論は恥ずべきものでした。

■「危ないマグロを持って帰るな!」ぐらいなら分かりますが、無知な日本人は彼らが悪性の病原菌のように放射能を撒き散らしているかのような過剰反応を起こしたようです。第五福竜丸の乗り組み員達は、その後ずっと謂れ無き差別と攻撃を同胞から受け続けたのです。被害者を加害者にしてしまう世間という物は恐ろしいものですが、こうしたヒステリー現象はその後も今も、続いています。そんな中で、子供達の食事を用意する(当時の)主婦達がきちんと順序立てて問題を考えたようです。第五福竜丸は、広島・長崎に続く核による被害者だと考えれば当然のことです。5月9日、地元の静岡ではなく東京で「水爆禁止署名運動杉並協議会」が結成されます。

■54年5月15日には、広島市民700人が「原水爆禁止広島市民大会」を開催しました。8月6日の「原水爆禁止広島平和大会」に2万人が参加して大会は盛況でしたが、9月23日には第五福竜丸無線長久保山愛吉さんが「放射能症」で死去するのを誰も防げませんでした。この年の11月3日に公開されたのが東宝映画の『ゴジラ』でした。水爆実験の影響で生まれた怪獣コジラは、焼け跡から復興したばかりの東京を放射能熱線で焼き尽くしました。円谷英二さんが再現した炎上する東京の姿は、焼夷弾で焼き尽くされた東京大空襲の再現ではなく、間違いなく核が投下された後の東京を念頭に置いて作られていました。その証拠に、後に円谷英二さんは『世界大戦争』という名作を作っています。朝鮮半島で火を噴いた全面核戦争を描いた恐るべきリアリティを持った作品です。今こそ見直すべき映画でしょう。

■『ゴジラ』を息を呑んで観た961万人の日本人の中から、当時の水爆保有国であった米ソ2箇国に対する明白な抗議や怒りの声は上がらず、相手も分からぬ「原水爆禁止」の希望だけが語られたのは、今に続く日本の奇妙な反核運動の特徴となって定着しています。因みに、1998年に米国で製作された米国製の『ゴジラ』では、ニューヨーク市を暴れ回ったゴジラは放射能熱線などぜんぜん吐きませんでしたし、200匹のベビー・ゴジラ共々米軍の通常兵器で皆殺しにされてしまいましたなあ。米国にとっては原水爆もゴジラも制御可能な存在でなければならないのでしょうが、核と無関係なゴジラは画竜点睛を欠いています。フランスが強行した核実験でウミイグアナが大きくなってしまった、というフランスを責める出だしでしたが、ニューヨーク市は大した破壊を受けない映画です。「9.11」以前の作品ですが、原作通りに放射能熱線で廃墟にしてしまったら、後々、予言的な作品とされて大変な騒ぎになっていたでしょう。

其の参に続く

日本の反核運動 其の壱

2005-08-30 23:44:29 | 外交・世界情勢全般
■戦後60周年記念で、新しい歴史資料が発見されたり、新証言が出て来たりしてまた少しだけ歴史の真相が明らかになりました。原爆に関する出版物やテレビ番組も、例年よりも多く目にしたような気がします。日米安全保障条約と絶対に整合性を持ち得ない「非核三原則」の看板が、北朝鮮の核武装騒ぎですっかり色褪せてしまっていますが、反核教育や運動は「あちこち」で「細々」と、夏の盛りにだけ噴出す間欠泉のような状況が続いている事に、そろそろ日本人も気が付いて何らからの打開策を考えないと行けないでしょうなな。案外、この問題は、今回の選挙で民主党の「マニフェスト」が歯切れの悪いツギハギだらけの印象を国民に与えてしまう事や、二大政党時代がやって来るかも知れないと言われているのに、共産党と社民党が唯我独尊の姿勢を変えない事に直結しているのかも知れませんぞ。

原水禁・原水協 被曝60年も分裂大会
被曝60年の原水爆禁止世界大会が8月2日から9日にかけて広島、長崎で開かれるが、今夏も原水爆禁止日本協議会(原水協)など共産党系団体を中心とした大会と、原水爆禁止日本国民会議(原水禁、旧総評系)や連合などを中心とした大会の二つに分裂したものとなる。第1回大会から50年の節目でもあり、統一行動への模索もあったが、原水協と原水禁の幹部が同席するのは、今月末に開かれる被爆者団体など主催の国際市民会議だけとなりそうだ。
原水協などの大会は2日から4日まで広島で国際会議を開催。メキシコやマレーシアの政府代表を含め、20箇国以上から約300人の海外代表を迎え、続く広島、長崎大会の分科会などで、成果をあげられなかった核不拡散条約(NPT)再検討会議後の「核兵器廃絶の展望」を模索する。
原水禁などの大会は今夏は国際会議を廃止し、これまでも連携を深めてきた連合や核禁会議(旧・同盟系)とともに4日に広島で1万人、7日に長崎で5千人規模の集会をめざす。だが、連合内の原発支持労組などとの関係もあり、原水禁の特徴である「反原発」の主張は分科会などでしかしないという。2005年7月22日 朝日新聞


■この記事を読んで、意味が明瞭に理解できる日本人がどれほど居るでしょう?「原水禁」と「原水協」という一文字しか違わない似たような名前の団体が、反核運動で協力できないらしい、とは何とか分かるでしょうが、「50年間」も同じ広島と長崎に、原爆投下の日に集まりながら、互いに無視し合って会議を開いているのです。海外からのお客さんも招いて、世界に向ってこんな姿を晒して平気でいられるのが日本の反核運動なのですなあ。人類史上唯一の被爆国で、反核・非核・核廃絶の声が一つにならないのですぞ!大人がこんなバカバカしいことをしていながら、子供達に平和教育などと、何を伝えようと言うのでしょう?

■以前に、この馬鹿馬鹿しい内輪揉めを調べたことが有るので、今回、反核運動に興味の有る読者のために読み易く書き直して提供することにしました。総選挙ではまったく問題にもされていませんが、現在、世界のNPT体制はぼろぼろになっています。核兵器は既に、「闇の商品」となりつつあるし、米国では「使い易く改良」している真っ最中です。この10年間に作られたハリウッド映画で、一体何発の核兵器が炸裂したか、よくよく数えて見なければなりませんなあ。気楽にぽんぽん爆発させて、『トゥルー・ライズ』などという作品では、今のカリフォルニア知事さんが、水平線上に沸き起こったキノコ雲を背景にして核分裂の閃光を片手で遮断しながら奥さんと接吻するハッピー・エンド?場面を演じていましたなあ。そんなふざけた映画に対して日本では、「上映反対運動」も「ビデオ類の不買運動」も起こりません。それも運動が分裂しているからでしょう。まったく残念な話です。こんな運動なら止めてしまった方が良いかも知れませんなあ。

其の弐に続く

最愛の息子か、バカ息子か? 其の参

2005-08-30 23:42:31 | 社会問題・事件
其の弐の続き

■そんな事を考えていたら、「57年ぶりの連覇」で夏の甲子園大会を盛り上げた駒大苫小牧高校の優勝旗が津軽海峡を再び渡って返還されそうだという騒動が起こりました。新聞報道によりますと、


部長は6月2日朝の練習後、部員がエラーしてもふざけていたため注意したが、反抗的な態度をとったため平手打ちで数回殴った。甲子園入りした後の8月7日にも、同じ部員をスリッパで1回殴った。この部員は、夏バテを防ぐため御飯を3杯食べるという約束があるにもかかわらず、ごまかそうとしたため、注意したが、同様に反抗的な態度をとったという。

■事件の発覚は、8月8日に殴られた問題の部員の親からの電話だったそうですが、「顔や腰を40発ぐらい殴る蹴る」の暴行を受けたと言う親と、「平手で3、4発」と言う部長との間にはもう泥仕合が始まっているようです。「大会後の処分」を求める親の申し出に従って、8月23日になって校長から高野連に電話連絡を入れてマスコミに事件が知られたという流れのようです。メディアは都合の良い「声」や「コメント」を掻き集めて流すものですが、どうして有名選手や有名監督にマイクを向けないのでしょう?鉄拳で一番有名な星野監督なら、とても参考になる発言をしそうなのに!阪神の監督時代、口よりも手の方が先に出るので、或る選手は練習中に監督に呼ばれると、キャッチャー・マスクを付けて走って来たと、星野さんは楽しそうに話していましたなあ。星野監督など多くの名選手を育てた明治大学野球部の監督が鉄拳と罵声で有名だったでしょう?ミスター長島さんも、立教大学時代に、ホームランは打つけれど守備が下手クソだったので、監督が激怒してバットで頭を痛打した話も有名ですなあ。

■無意味に殴っているような指導者は支持を失って、恨みを一身に浴びて職を失うでしょうから、「殴られても仕方がないなあ」と選手が納得しているからこそチームが成立しているとも言えます。明徳義塾も駒大苫小牧も、落ちこぼれの「逆恨み」が事件の発端のようにも見えるのは残念なことです。自分の野球人生に希望が持てる選手は、何が有っても文句を言わずに技術を磨くでしょうが、自分の才能に見切りを付けたら所属チームを道連れにしてやろう、と考える者が出て来るのが時代の風潮なのでしょうか?高野連という絶対的な権力を持っている組織が存在しているので、告発しようとする側は有利です。「高野連に言いつけてやる!」の一言に怯(おび)えながら厳しい練習など出来るものなのか、指導の現場を見た事もないような人々は考えもしないでしょうなあ。

■苦労は嫌いだけど名誉と栄光は欲しい、そんな虫の良い事を考える愚か者はいるもので、そんな人間と、どんなに苦労しても野球がやりたい、と言う者とが同じ指導者に荒々しい訓練を受けたらどうなるか?甲子園球場に集まった時にはベンチでにこにこしている指導者が、それ以外の場所では鬼の形相をしている事など誰でも知っている事だったのではないでしょうか?それは、くりくり坊主頭で「爽やか」に行進している選手達が、引退したらどんな髪型とお洒落を楽しむのか、そのギャップと同じ「裏と表」を高校野球ファンは承知していると思うのですが……。

■弱者を守る。人権を守る。暴力反対。それは正論ですが、殴らねばならない時は無いのか?という問題は残ります。熱血スポーツ感動物語の『スクール・ウォーズ』という作品が有りますなあ。荒れた高校のラグビー部を鍛えて全国優勝に導いた指導者が書いた体験記を元にした作品で、テレビ・ドラマになり、ろくな脚本が見付からない映画界が最近リメイクした大人気の作品です。


「俺はお前達を殴る!」バシッ、ドガッ、ドスッ。

という名場面が特に感動的らしいのですが、この作品が槍玉に挙げられたことはありません。「時代が違う」という便利な言葉では、人が人を育てるという営みを語れませんぞ!すべての暴力を禁止しようという思想を無制限に拡大すると、自分の欲望を制御できない困った心を持った人格が日本中に現れます。現実に、理由の分からない傷害事件や殺人事件が多発していまして、犯人が捕まるたびに、通常の肉体感覚を持てない歪なものを感じてしまいますなあ。殴ったり殴られたりした経験もなく、叱られることもなく育てられた後、自分の内側に膨れ上がった奇妙な嗜好と欲望に引き摺られて犯行に及ぶ事件は、時間を巻き戻さない限り防ぎようが有りません。

■通常の感覚では遠慮したい厳しい鍛錬が必要な世界においては、体に覚えさせる指導方法が数多く考案されていますが、殴ったり蹴ったりする「暴力」ばかりが糾弾されるのならば、正規の練習にかこつけた「シゴキ」という更に陰湿な方法も有りますから、高野連に文句を言われないようにするには、シゴキを推奨するしかないでしょうなあ。暴力にしろシゴキにしろ、バカ息子に何の苦労もさせずに栄光と名誉を与えてやりたいと虫の良いことばかり考えている親がいる限り、鼬(いたち)ごっこが続くのでしょうなあ。

■高野連の嘘臭さは、高校野球を「教育の一環」として神聖視している点に有って、これと同様の組織を持たないサッカーとの違いがますます際立って行くことでしょう。野球に比べて、待遇面では厳しいところも多いそうですが、それでもプロ選手になれる間口の広さをサッカー界は持っていますから、少年サッカー時代から、プロを目指して練習に励む若者は学校内の部活からは離れたクラブ・チームに志願して加入するようですから、一種の職業選択の意識が幼い頃から確立していると言えるでしょう。しかし、旧態依然とした野球界は、甲子園大会という唯一の入り口しか無いのですから、この登竜門を通過するためには高野連に加盟している高等学校に入学しなければならず、野球をするためだけに高校に進学する生徒が沢山いることになります。しかし、高校も高野連も、高校は神聖な教育の場だと言い張らねばなりませんから、私立高校を中心としたプロ化の流れは裏へ裏へと押し込められてしまいます。

■スポーツ推薦という「人身売買」すれすれの奇妙な進学方法が有りますから、有名高校・有名大学には二種類の意味が有ることになります。スポーツ名門校と偏差値による進学率が高い名門校とが一致していなければならないような幻想が一人歩きしているので、学生や選手達はとても中途半端な立場に置かれているのです。特に、私立高校にスポーツ特待生の身分で入学したのに、途中で体を壊して選手生命が在学中に終ってしまう悲劇が起こった時に、その生徒はどんな扱いを受けるのか、高野連はそんな青春残酷物語には無関心で、煙草と暴力事件ばかりを追い回しています。こうした息苦しさが、ますます高校野球を暗く陰湿なものにして行くでしょうから、野球をやりたがる若者はどんどん減って行くでしょう。高野連は、それを自分達が招いた結果だとは絶対に認めないのは目に見えていますなあ。

■そして、駒大苫小牧事件は、学校側が取り繕ってばかりいるので、「被害者」の父親が「イイカゲンにしろ!」と怒り出したようですなあ。やはり、夏の大会連覇の高校は、「人買い」高校だったのでしょうか?

おしまい。

最愛の息子か、バカ息子か? 其の弐

2005-08-30 23:36:38 | 社会問題・事件
其の壱の続き

■悪質なイジメが起こった場合、もしも担任教師や学校側が無能であれば、親は断固として学校側と対決しなければなりません。しかし、イジメかイジメでないかは主観と感情の問題にもなるので、陰湿で危険なイジメを無理に我慢しているのは危険ですが、逆に、何でも過剰にイジメだイジメだ!と騒ぎ過ぎるのは過保護と無責任体質を子に教える危険が有ります。明徳義塾高校で起こった事が危険なイジメなのか?週刊誌記事から抜き出してみると、


○5月頃からちょっと様子が変わったんです。すごくハシャいでいたかと思うと、無口になったり、態度が落ち着かなくなったり……。1年の時は誰でもホームシックになります。
○部内で3年生だけに許されているアイシング用の氷が何回か盗まれたことがあるんですが、それを持ち出したのがAだった。
○寮生が集合する時に大きな声を出してふざける。


■このA君の喫煙は部員全員が知っていた事で、先輩が注意したり「蹴ったり」すると、「イジメだ!暴力だ!」と騒ぐ子供だったようです。しかも、1年生の春から喫煙しているのですから、中学生時代からの愛煙家だった可能性まで有りますなあ。そのA君は大阪の名門ボーイズリーグ出身で、野球部枠に漏れて一般入試で入学したそうです。最初から野球少年としての挫折を経験しているわけで、名門高校のチームに120人も腕自慢がごっそり集まっているのですから、少し賢ければ、自分は下積みで終りそうだと予測も出来るでしょうなあ。小中学校で秀才だと言われていた子供が、進学高校に入って自分が井の中の蛙だと思い知る青春の挫折と同じものです。こうなると、選択肢は二つしか有りません。石にかじり付いて3年間努力と工夫を続けるか、さっさと見切りを付けて別の才能を伸ばすか、その決断は最終的には本人がしなければなりません。困るのは、誰かの責任を言い立てないとこの青春の決断が出来ない甘ったれが増えていることでしょうなあ。

A君は、イジメを口実にして自宅に逃げ帰った一人だった。

■父親のインタヴューも掲載されていますが、期末試験後に帰宅した息子から「学校に行きたくない」と聞いた父親は学校に乗り込んで、「学校側の落ち度」を言い立てたのですが、喫煙はその時、学校から初めて聞かされたのだそうです。息子の喫煙習慣をまったく知らないとすれば、この父親もちょっと迂闊ですなあ。慰謝料だの払い戻し金などで140万円を手に入れている父親は、高野連に届いた「匿名の投書」は自分ではないと言っています。

鬼の首でもとったように、一切の事情を調べもせずに明徳義塾を出場辞退に追い込んだ高野連。いつものように建前だけの薄っぺらな論理を振りかざす朝日。一体、いつまで偽善に満ちた「汗と涙の甲子園」物語を演出し続けるつもりなのだろうか。

と週刊誌の記事は、朝日新聞が掲載した社説を引用して締めくくっています。残されているのは「匿名の投書」の問題です。密告と監視を奨励する社会は恐ろしいものです。この投書が、まだ腹の虫が治まらないA君の家族や親族から出たと邪推する人もいるでしょうし、明徳義塾を憎む何者かがこのネタで嫌がらせをしてやろうと思った可能性もあるでしょう。こんな事が常態化したら、甲子園を目指す高校は「情報部」を作ってライバル校の不祥事を嗅ぎ回り、捏造情報を流す謀略も始まるでしょう。

■「匿名」情報など無視する態度を高野連が取れないのならば、野球どころの騒ぎでない陰湿な空気が日本中に満ち溢れるでしょうなあ。一人のバカ息子が野球部に紛れ込んだ。厳しく注意したら反抗した。退部させて高野連に事情説明をしてお仕舞い。もしも、喫煙を放置して黙認したり、暇つぶしの暴力が常習化しているようならば、始めから地方大会に出場しないように勧告すれば良いでしょうに。それでも出場するのならば、マスコミと世論の攻撃に晒されながらの試合となって、それはそれで面白い見世物です。贈収賄の罪で有罪の一審判決が下っている鈴木ムネオさんが元気に新党を作って天下国家を語っていたり、党にそそのかされて公金を上納して有罪となった辻元清美さんが、同じ政党から立候補して平気で演説していますぞ!高野連は警察でも裁判所でもないのですから、「管理と運営」以外の仕事などしない方が良いのです。

■皆様のNHKも、万一、不祥事が発覚した高校が出場して来たら、「○○の不祥事を起こした××高校です。」「○○事件を起こしたので、汚名を雪(そそ)ごうと頑張っています」などと放送すれば良いではないでしょうか?

其の参につづく

最愛の息子か、バカ息子か? 其の壱

2005-08-29 21:31:54 | 社会問題・事件
■もう10年も前になりますが、東京都下の或る大学でこんな事があったそうです。学園祭の前夜、学校側はキャンパス内に泊り込む事を禁じていたのに、バカ学生数名が警備の目を逃れて校舎内に潜伏して深夜の酒盛りを楽しんだそうです。バカと煙は高い所が好きですから、すっかり酔っ払ったバカ学生が屋上でハシャイでいたらコロリと落下して死亡したのだそうです。急遽、学園祭の中止が話し合われるような騒動になったのですが、その話をその大学の教授から聞いた時、「勿論、そのバカ学生の親は大学に謝罪に来たのでしょうね?」と問う私に、「いや、それが親が大学の監督不行き届きを言い立てて訴訟を起こすと息巻いてね。大学側は大いに困ったんだよ。」との答えが返って来ました。世の中が狂っているなあ、と思ったものですが、御本人にとっては「最愛の息子」でしょうが、大学側にとっては迷惑な愚か者でしょう。この見極めを付けられない人が増えると、世の中のコミュニケーションの型が壊れてしまいます。

■「ウチのバカ息子が、大変なご迷惑をお掛けしました……」と涙を堪えて謝罪する親に対して、大学側が「いえいえ、私達の方にも至らない所が有りました。もっと厳しく指導していれば……。」と互いに譲り合って話が進めば、誰も傷付かずに済むものを、最初から責任の押し付け合いをしてしまえば、人として話すべき事が無くなってしまいます。大学という組織が一つのルールの中で学園祭というイベントを運営しようとする時、禁じられている危険な行為や犯罪行為をするバカ者が一人でもいれば、影響は全体に及んで催しもの自体が無くなってしまいます。この酔っ払いの転落息子の場合、責任は100%本人に有るわけですから、親が訴訟を起こして騒ぎ立てれば「恥」の上塗りで、バカな親の八つ当たりとしか世間は思わないでしょう。それでも構わないとヤケを起こして裁判騒ぎを起こせば、大学側は学園祭を永久に止めてしまうか、面白くもない監視だらけの催し物に変えてしまうことになるでしょう。そうなっても自業自得なのだ、と親が言い張るようだと、大学側とも社会からも孤立して愚かな戦いを覚悟しなければなりません。

■高校野球の胡散(うさん)臭さについては、以前のブログにも書きましたが、その後、大会直前に出場辞退に追い込まれた明徳義塾の事件に関する詳細なレポートが『週刊新潮』8月25日号に掲載されました。それを読んだ時に上記の記憶が蘇ったのです。事件の発端は8月に入ってからの「匿名の投書」だったそうです。送り先は高野連と朝日新聞で、即座に馬渕史郎監督を呼び出して事実確認して8月4日の出場辞退が決るという電光石火の動きだったようです。新聞やテレビでの報道では見えなかった真相がやっとこの週刊誌記事で分かったのですが、問題はたった一人のバカ息子という事になりそうですなあ。


部内で喫煙問題が発覚したのは、高知県大会の開幕を1週間後に控えた7月9日のことである。野球部寮のボイラー室に煙草の吸殻が2本落ちていたことがきっかけだ。ただちに主将とマネージャーが野球部員全員を集合させ、「該当者は名乗り出ろ」と命じると、2年生3人と1年生6人が名乗り出た。この時、期末試験を終えて実家に帰省中だった1年生2人も喫煙していたことが判明する。その内の1人が、今回の大事件の中心人物となるのである。

■生徒達の行動には何の問題も無いと思います。この報告を受けた監督と部長は、素直に白状したのを評価して、保護者を呼んで厳重注意、喫煙学生には練習停止1週間と罰の掃除を言い渡します。この段階までに、「喫煙は出場停止」「高野連に報告しなかったのは重大な問題」と杓子(しゃくし)定規に言い立てるのなら、早々に高校野球などという偽善で固めた健康にも悪い灼熱の悪ふざけは止めてしまうべきですぞ!


問題が奇妙な方向に動き出すのは、6日後の7月15日だ。高知県大会開幕の前日である。この日、喫煙発覚の時、帰省中だった1年生部員の父親が「息子が部内で暴力を受けた」と、学校に乗り込んでくるのだ。しかも、その父親はこの時点で、加害者からの謝罪と慰謝料の請求、入学金と授業料の返還、転校手続きへの便宜という4項目からなる“要求書”も携えていた。

つまり、この段階で親子は高校野球と縁を切る決断を済ましていたと考えられます。「青春のすべてを野球に捧げる」つもりの無くなった者ほど、野球の名門校が扱いに困る相手は居ないでしょうなあ。

其の弐に続く

忘れてはいけない数字

2005-08-29 21:29:59 | 社会問題・事件
■マスメディアの選挙報道は、ますます小泉さんが大喜びするような下世話な人情話に集中しているようです。こういう時こそ、冷たい数字を反芻(はんすう)して面白おかしくも馬鹿馬鹿しい話に乗せられて後々、後悔したり怒ったりしない投票行動が出来るというものです。漏れ聞くところでは、首相官邸から缶ビールの空き缶と「ひからびたチーズ」を持って出て来た森さんの「怨み節」は全部小泉さんの指示による猿芝居だったそうですなあ。それを知ってか知らずか、夜討ち朝駆けの政治記者達は、スクープ扱いして垂れ流していたのですから、御用心、御用心。

■写真週刊誌という物を、年に2回ぐらいは購入するのですが、郵政民営化の議論がどんどん袋小路に入り込む様子を眺めながら、とても気になる記事をチェックしておいた事を思い出して、雑誌の山と格闘してみました。探し当てたのが、2004年2月3日発行のFLASH第807号(光文社刊)です。けばけばしい表紙に踊る『吉川エミリーどんどんHになる圧巻スーパーボディ』『超有名女子大大学院生ヌード』『現役ラウンドガール反則だッ!大開脚』などの大きな色文字の中から、『返せ!実名リスト初公表 年金60兆円食い潰し法人』という記事を探し出すのは大変です。16頁から始まる3頁分のデータは340円の定価を遥かに超えた価値が有りまして、保存して置いたような次第です。


帳簿上で存在するはずの年金積立金=143兆9858億円
特殊法人、地方公共団体の焦げ付き= 87兆8857億円
本当に残っている年金積立金   = 56兆1001億円

という数字が記事の大本になっています。

■面白いのは、引用されているデータを弾き出したのが、日本医師会のシンクタンク・日本医師会総合政策研究機構という所で、報告書をまとめた森宏一郎という人が解説してくれている記事です。歯医者さんたちは変な政治献金などして無駄遣いが目立ちますが、お医者さんたちは結構ためになるお金の使い方をしているのかも知れませんなあ。


年金積立金は、00年まで郵便貯金などとともに旧大蔵省の資金運用部に全額が預けられ、財政投融資として特殊法人や地方自治体、国の特別会計などの運用先に貸付られてきました。99年度末で、財政投融資の総額は443兆円。そのうち144兆円が年金積立金ですから……特殊法人や地方自治体が借りているお金のうち、約32.5%が年金積立金からの借金です。

財政投融資の貸し出し先27特殊法人の財務内容を詳細に分析して「格付け」してみると、24機関が「新規借り入れをしないと元利返済ができない」とういCCランク以下あのだそうです。その焦げ付き残高は183兆8千億円になるので、その32.5%が年金積立金とすれば59兆7千億円が食い潰されていることになるわけですなあ。更に、調べてみると、地方自治体には17兆5千億円、特別会計に10兆6千億円の年金積立金が投入されて焦げ付いていることが分かってしまったそうです。

■ですから、「年金積立をしないと将来泣きをみるぞ!」と背の高い女優さんに凄ませるCMを年金積立金で作って見せた裏で、合計87兆8千億円の年金積立金が消失していたというわけですなあ。これは絶対に戻って来ません。そして、この積立金は旧大蔵省に上納していた分だけですから、旧厚生省と社会保険庁が「必要経費」として食い荒らした分は含まれていない事を忘れてはいけませんぞ!旧大蔵省はお役人集団なのですから、勝手に大判ぶるまいして楽しんでいたのではありません。特に地方自治体に流れ込んだお金は、地元選出の議員先生達の熱心な「圧力」があってこその無駄遣いです。勿論、話題になった道路公団に積み上がっている40兆円を越える借金の32.5%も年金積立金ですから、ちゃんと民営化されれば返済されるはずなのですが、どうなることやら……。

■厚生省が管轄する「年金資金運用基金」という怪しげな役所が、保養施設グリーンピアという廃墟を作ったり下手な株式投資で焦げ付かせて作った6兆円以上の大穴も、このデータには含まれていません。こうしたフザケタ仕事に対する穏やかな反乱として、積立て拒否が広まっているわけですが、それでも何も変わらないのなら、デモ行進と厚生省取り囲み、ちょっと勢い余って投石と火炎瓶という段取りなのですが、今のところ日本人は大人しく年金破綻のニュースを待っているようですなあ。責任は全部、旧大蔵省と旧厚生省だけに有るのですが、どちらのお役所も小泉さんとは大の仲良しなので、今回の選挙でも「両省の責任追及!」の声は出て来ませんし、民主党も官公労を怒らせるわけには行かないので、「悪いのは小泉さんだ!」と見当外れの演説をしています。

■FLASHが年金食い潰しワースト20を「いいわけ&反論」付きで掲載しているので、参考までに引用しましょう。


第1位 住宅金融公庫  23兆4518億円
第2位 年金資金運用基金 10兆6150億円
第3位 日本政策投資銀行 4兆3490億円
第4位 国際協力銀行  3兆9683億円
第5位 都市基盤整備公団 3兆9017億円
第6位 日本道路公団  3兆5212億円
第7位 国民生活金融公庫 2兆7982億円
第8位 農林漁業金融公庫 1兆823億円
第9位 福祉医療機構  9800億円
第10位 中小企業金融公庫  8478億円
第11位 首都高速道路公団  6196億円
第12位 阪神高速道路公団  5292億円
第13位 沖縄振興開発金融公庫 4660億円
第14位 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 3158億円
第15位 本州四国連絡橋公団 3053億円
第16位 日本育英会  2871億円
第17位 電源開発  2795億円
第18位 石油公団  1431億円
第19位 環境事業団  1131億円
第20位 帝都高速度交通営団 944億円


■4団体は取材拒否だったそうですが、後は口をそろえて「不良債権ではない」と言い張っているのが笑えます。そして、どこも返済は可能なのだと言うのですが、ここに並んだのは焦げ付いていると思われる買い入れ金の32.5%を年金積立金として計算して出した数字なのですから、本当はこの一律三倍近い「不良債権」を抱えていることになります。こんな返す当ても無い大赤字を抱えても「倒産」しないのは、国がせっせと「政府補助金」や「補助金」などの麻薬カンフル剤を打ち続けているからです。第6位にランク・インした「道路公団」自体が、「30年間で建設資金を回収して高速道路は無料化する」という名目で世界一高い高速道路の使用料金を取りながら、無料化は実質的に無期限延期となって、その裏では勝手に「プール制度」を利用して談合割高の高速道路を造り続け、道が伸びるたびにファミリー企業が肥え太る仕組みを作っているのですから、他の団体が何をやっているのか想像するのは簡単ですなあ。

■民間銀行が返済を迫ると「貸し剥がし」だと非難されるのですから、絶対に倒産しない国営金融機関であれば、憎まれ役などしないで退職金を貰って天下りを楽しんでいれば良いので、大蔵省から借りて貸し付けた資金が焦げ付こうが煙になって消えようが、知ったことではないでしょう。こうしたデータがまったく提出されない国会で水掛け論をしていても、「構造改革」なんて出来るはずはないのです。日本がやらねばならない「構造改革」は、こうしたアホ組織を解体して責任を追及し、背任罪で責任者を処罰し、強引なオネダリをした政治家を恐喝罪・贈賄罪・国家反逆罪?などで逮捕して穴を塞ぐことでしょうし、官僚と歴代閣僚が頭を丸めて一列に並んで国民に「御免なさい」と謝って、正直にバカ借金の全額を白状して、これを穴埋めするには大増税をするしかないのです。と土下座するしかないでしょうなあ。

■それに対して米国が求める「構造改革」は、もう食い荒らされてボロボロになった年金積立金などはどうでもよくて、まだじゃぶじゃぶ残っている事になっている郵便局の資金を(外資を含んだ)民間に解放することだけです。本当は年金積立金と同じように食い荒らされているのですが、まだ国の補償が付いているので、安心して暫らくの間は食い荒らせますからなあ。夜空を埋めて飛来したB29の大編隊が日本中の都市を焼き尽くした時には、どんなに愚かな日本国民でも、何が起こっているのかは分かりましたが、国の裏帳簿を改竄したり帳尻合わせをした揚げ句に、美味しいところを米国がぱくぱく食べている様子は見えませんし、このFLASHの特集記事にも掲載されている各特殊法人の立派な建物の写真を見ていると、その中が腐ってどろどろになっている事もまったく分かりませんなあ。シロアリに食い尽くされた大邸宅がある日突然崩壊するように、日本が潰れる日がやって来るのでしょうなあ。

■こうした数字を頭に入れて、選挙演説やマニフェストを読まないと、またまた大間違いを重ねることになりますから、ご注意願います。

スポーツの夏!嫌な感じ 其の弐

2005-08-28 18:42:19 | 日記・雑学
■今回、高地大会を勝ち上がった高校は、優勝候補だったそうですなあ。この点が社会に多大な影響を及ぼしているのは多くの日本人が知っているのに表の話題にならないのも可笑しな話です。言わずと知れた「不法賭博」の問題です。随分昔の事ですが、有名な野球人で解説者として活躍していた人が、プロ野球の開幕時にスポーツ記者から優勝チームの予想を聞かれて、虫の居所が悪かったのか、「そんな事は大阪の下駄屋に聞いてくれ!」と公言してしまったばかりに、数年間、人気が高かった解説の仕事を干された事件が起きた事が有るそうです。プロ野球の賭博と高校野球の賭博、どちらの賭け金が大きいのかは分かりませんが、総額にすると結構な金額になるとの噂が有りますなあ。そういう怪しい問題が貼り付いている高校野球を美化するのは、もう止めても良いのではないでしょうか?欧州のように、スポーツ賭博を合法化して課税する方がすっきりするのですが、サッカー籤(くじ)などという中途半端な物を作って失敗してしまったので、これもダメでしょうなあ。

■野球の頂点に輝いていたプロ野球の衰退が止まらず、もっとも下で野球を支えていた親子のキャッチ・ボールが消えて久しい日本ですから、その中間地点で栄えていた高校野球も地盤沈下を起こしてやがては消滅するのかも知れません。プロ野球と高校野球が観客から見捨てられつつある原因の一つに、「地元」の欺瞞性が有ります。私立高校が先頭を切って、全国から有望な若者を金に飽かして掻き集めて学校の知名度を上げる商売を考えた段階で、高野連も朝日新聞も歯止めを掛けなかったので、地元の応援団でさえも顔を知らない選手が走り回っているような状態になってしまったようです。故郷を遠く離れている人々も、以前は親類縁者や友人知人を辿ると出場選手の一人や二人と何らかの関係が有って、まったく面識の無い若者に猛烈に親近感を持って応援したものですが、いつの間にか「地元」の選手など一人もいない県代表チームが学校の名前を高めようと露骨な商売にしてしまったのでした。

■これはプロ野球の盟主?を自負する巨人軍というチームが自業自得で苦しんでいる状況とも共通しますなあ。去年まで他のチームで大活躍していた看板選手を引っこ抜いてきて雛人形みたいに並べて「巨人軍」を作っても、中くらいに熱烈なファンはすっかり興醒めしてしまうでしょう。オール・スター戦は一年に一回か二回やれば沢山で、毎日見せられたら楽しくはないようですし、先祖返りして「全日本チーム」を復活させるつもりならば、チームの名前も経営形態も全部変えてくれた方が分かり易いでしょうなあ。

■これはオリンピックも同じ事で、国籍がコロコロ変わる選手が活躍しても、面白くもない見世物になってしまいました。そこで競技そのものに興味を持って貰おうと、記録更新に異様な注目を集める演出をするので、人体のサイボーグ化が加速してしまいました。肌の色も宗教もごちゃ混ぜのオリンピック・チームは米国では当たり前なのでしょうが、国旗や国歌を売り物にするには無理が有ります。古代オリンピックが戦争の代替品として考案した宗教的なスポーツ大会だったのですから、近代に蘇ってもギリシアの都市国家が国民国家に代わっただけで、戦争の代りに人々が熱狂して国家間のストレスを発散させる祭典になったはずなのです。「参加することに意義が有る」というのはそういう意味の言葉だったはずで、毎年のように戦乱が続いて世界大戦まで起こしてしまった欧州が苦し紛れに始めたようなものですから、まだ国家とは呼べないような所からぞろぞろ枯れ木も山の賑わいとばかりに参加しても、本当はとても世界平和とは結びつかないのです。正直に言って、オリンピックどころじゃないでしょう?と言いたくなるような「失敗国家」がどんどん増えているのですからなあ。

■冷戦時代の東側から出場した選手達の肉体は、とても人間とは思えないサイボーグそのものでした。案の定、トンデモないドーピングをして女性を男性化させたり、筋肉増強だけを目的にして内蔵と血管がぼろぼろになったりと凄まじい置き土産を残したようですが、悪い事は真似されるもので、スポーツ用品を製造販売する世界的な企業が金メダルの値段を暴騰させてしまいましたから、文字通り、生命を懸けて競技に打ち込む人々が現れました。その利権に喰らい付いて離れない怪しげなオリンピック委員会なる組織も黒い噂が絶えないのですから、「4年に一度のお祭だから」とばかりも言っていられませんなあ。日本でも、オリンピックに投入された税金を裏に回って吸い取っていた堤さんというエライ人が逮捕されても、その件に関しては一切の調査も追求も報道もされないのですから、オリンピックの闇はどんどん深くなって行くのでしょう。

■熱帯夜が続く日本で、消耗した体には休息が何より大切なのに、TBSというテレビ局は深夜から朝まで「独占!生中継」で、日本の選手が続々と予選落ちする陸上大会を放送しています。放送業界には「独占禁止法」は適応されないのかいなあ?などと暢気な事を考えている場合ではありませんぞ!寝不足のままで炎天下の労働に出掛けて倒れても、TBSは責任を取らないばかりか、それもニュースやワイド・ショーのネタにして稼ぐつもりですから、こうした馬鹿馬鹿しい商売に利用されては行けませんぞ!夏は何よりミネラル・バランスを考えた水分補給と休息、何より睡眠が必要だと名医は言っています。炎天下にジョギングやって熱中症で死亡などという、大間違いのスポーツ・ブームに騙されたままの事故にはくれぐれもご用心、ご用心。動物園にでも行って、動物さんたちの夏の過ごし方を見習いましょう。犬や猫も良い教師ですぞ!

新党の名前を考える

2005-08-28 18:39:41 | 政治
■亀井静香さんが男泣きと浪花節で頑張っている広島6区が注目されているようですが、ホリエモン君と亀井さんを並べて玩具にしているテレビ・メディアはまたまた世論をミス・リードしているような気がします。政治部記者の皆さんは、前代未聞を言い訳にして予測不能だの驚きの連続だのと、今から弱音を吐いているばかりか、誰かさんに利用されているようにも見えますなあ。たまたま広島6区を取り上げた番組を観たのですが、どこかで観たような風景ばかりで何も新しい事など起こっていないではないか?と平凡な既視感に襲われました。

■亀井さんは「義理と人情」「地縁と血縁」「お世話になっているネット・ワーク」をフル稼働させようと古い財産を全部投入しているようですし、これに対するホリエモン君は地元の企業からちゃっかり支援を受けながら、選挙に無関心だけど退屈している人達を集めながら、断片的な呟きモノローグ作戦のようです。こうした図式に持ち込まれた選挙戦は、ホリエモン君が惨敗して終るに決っているのですが、それでも喧嘩めいたお祭騒ぎに参加したがるホリエモン君は人気商売の虚業家らしく、マスコミが勝手にライブ・ドアや自分のブログを宣伝してくれて株価の底上げにでもなれば大儲けだと思っているのでしょうなあ。

■その広島6区で民主党候補になっている佐藤公治さんは、大きなスクーター・バイク?に跨(またが)って選挙運動しているようです。テレビ局も御本人もテレビ映りが良いと暢気に考えているのでしょうが、彼はヘルメットを被らず、ヘッド・ライトも点灯させないで得意げに走り回っているのですが、それは交通法規を破っていることにならないのでしょうか?昔、広い北海道で苦しい選挙戦を勝ち抜いた鈴木ムネオさんが、交通法規を平気で破って当選したのが今でも強烈な残像となっているらしいのです。ムネオさんは広い土地に散らばっている有権者に向って走行中の車の助手席から半身を乗り出して、仕舞いには両手を振って落っこちそうな格好で「支持を訴えた」のでした。警察が摘発に動けば、「俺を誰だと思ってんだ!当選したら思い知らせてやるぞ!お前の顔と名前は死んでも忘れんからな!」と目をむいて大声で脅し上げるに決っているので、警察は放って置いたのですが、やはり、交通法規も守らないような人は、もっと大きな法律も守らないようですなあ。ニューヨークの治安を改善した「破れ窓理論」は正しいようです。ヘルメットを被らないでテレビに映っている佐藤候補も、将来、変な贈収賄事件でも起こさねば良いのですが……

■亀井さんは『国民新党』を結党する前に、石原慎太郎・東京都知事にフラれてしまい、その後には田中康夫・長野県知事を担ごうとして忙しいのにわざわざ長野にまで出向いたそうですなあ。そんな事をするから、ヤスオちゃんの悪い血が騒ぎ出してしまったのですぞ!『何となくクリスタル』の田中康夫さんは、コマメに情報を集めて一つの物語に編み上げる才能に恵まれている流行(を追う)作家なのですから、風が自分に吹いたと感じたらじっとしていられません。民主党の有力支援者であったはずなのに、それは放っておいて『何となく都市型新党』に走ってしまいました。昔の社会党のように、自民党をチクチクと攻撃するのは上手でしょうが、自分で法案を作って行けるのか?仲良しグループに内紛が起こったら調停できるのか?心配が多いですなあ。

■『国民新党』の次が『(北海道の)大地』で、三番目が『新党日本(ニッポン)』なのだそうです。1976年の『新自由クラブ』から、「新」の濫用が始まったのですが、漢字制限のお蔭で、日本人の命名能力は地に落ちておりますぞ!それでも、『新自由連合』『革新自由連合』『社会民主連合』ぐらいまでは左翼市民運動の時代を感じさせましたが、80年代になると『サラリーマン新党』『福祉党』『二院クラブ』が出ては消えたかと思ったら、1992年に『日本新党』がぽっこりと誕生して、『新党さきがけ』『新生党』『新党みらい』『自由党』『公明新党』『新進党』などが出来ては解消される中で、どさくさ紛れの政権交代が起こってしまいました。社会党が自民党に取り込まれると『新社会党』が飛び出して、『民主党』はその騒動の中で誕生して今も生き残っているのは「新」が付いていないからに違いない!その後も、『太陽党』『フロムファイブ』『新党平和』『黎明クラブ』『新党友愛』『国民の声』『シリウス』、そして、誰も思えていない『暁(あかつき)』という社会党から飛び出して御調子者が一人で作った党まで有りましたなあ。

■2002年には『保守新党』というのがパッと出来てパッと消えました。政党助成金などという虫の良い制度を作ってから、年末になると新党が湧き出すような時代になってしまいましたが、余り露骨に分裂を繰り返すと選挙民が逃げると分かったので、しばらく大人しくしていたようですが、『国民新党』などという苦し紛れの新党を作ったからこんな事になっているのでしょうなあ。後は民主党が三つか四つに分裂すれば、またまた政界再編製になって新党ブームになるでしょうが、もう名前が残っていませんぞ!『選挙対策党』とか『当選したい党』では露骨過ぎるし、『税金持って来ます党』も脂ぎってしまいますなあ。元々、社会主義をファッションとして受け取ってしまった戦後政治が、選挙のたびに枝葉末節を論点にして新聞紙面上だけで論争をしながら、本当は贈収賄ぎりぎりの利益誘導選挙を繰り返してしまったツケなのです。自分達が集まった政治理念など始めから無いのですから、政党名を考えると困ってしまうのです。

■「国民」も「大地」も日本中に有りますし、「日本」を政党名に使うような乱暴な人が出て来れば、次は「亜細亜」「世界」「宇宙」……などと馬鹿馬鹿しい名前のインフレになってしまいますなあ。結構長持ちしているのが、『日本共産党』なのですが、「革命の前衛」という看板を隠してしまっているので、わけが分かりませんし、『公明党』にしても「創価学会党」という裏書が邪魔になりつつあるように見えます。あれほど大流行していた「社会」という名前が呆気なく消えてしまったように、「自由」「民主」と言いながら実質は官僚による統制経済政策を採用していたのですから、お隣の「民主主義人民共和国」という嘘ばかりの名前を笑っていられないのです。本当に「名は体を表わす」のですから、名前は難しいですなあ。

最近忙しいロシア海軍

2005-08-28 18:38:35 | 外交・世界情勢全般
■カムチャツカ沖で事故を起こしたロシア海軍の潜水艇が無事に救出されてから、幾つか面白い動きがあったのでメモしておこうと思います。8月12日の発表によりますと、ロシア海軍総司令部は救難支援に出動した英米両海軍ばかりでなく、実際の活動には間に合わなかった日本の海上自衛隊にもちゃんと「友好勲章」を授与するようにロシア政府に対して上申したのだそうです。日本で授与されるのは4隻の自衛艦を指揮した木下憲司1等海佐になるようです。良かったですね。軍人は自国の軍法と国際法を守るだけでなく、互いの名誉を重んじることで戦争に関する文化と歴史を共有しています。

■これを共有しない者がゲリラやテロリストで、身柄を抑えられた場合には軍人としての処遇はされずに凶悪犯罪者として処断される事になっています。共産ゲリラを美化する人が多くて、正式な軍隊が悪者で国際法を無視するゲリラやテロリストの方に正義が有るような錯覚をしている人がまだ多いようですが、国際テロリストが何をしでかすか分からない時代になったのですから、そろそろ乱暴な夢物語は止めた方が良いでしょうなあ。毛沢東さんは天才的な喧嘩上手でしたから、社会主義者でもないのに蒋介石を出し抜いてスターリンに自分を売り込んで、『水滸伝』そのままの山賊集団を人民解放軍にしてしまいましたが、そんな成功例は稀で、キューバ革命で英雄になったゲバラさんは南米のジャングルでただの山賊として討伐されて射殺されてしまいました。

■うっかりゲバラに憧れてキューバに行って後を追うと思った日本の大学生が、同じ社会主義国ならタダで運んでくれるのでは?と国際情勢の無知を晒して縁もユカリも無い朝鮮民主主義人民共和国に「亡命」してしまいましたなあ。別の一派は「長征伝説」やら「延安伝説」を間に受けて日本の群馬県の山の中にアジトを作ったのでしたが、チャイナのような秘密結社の伝統を持たない日本では革命ゴッコで終ってしまいました。スターリンばりに仲間内の粛清は熱心にやったようですが、仲間に入る山賊や飢えた農民などは日本にはいないので、やっぱり孤立してしまいました。

■閑話休題。米国と世界を二分して東西冷戦時代を演出したソ連という国は、とても不思議な国で、大陸間弾道弾でも長距離爆撃機でも平気で作れるのに、何故か輸出できる民生工業製品をぜんぜん作れないままでした。支店ブログの雲来末・風来末の『浦潮記』にも書きましたが、社会主義国には何とか旅客機を売りつけられましたが、開放経済になったチャイナは我慢して恥ずかしそうにソ連制の旅客機を使いながらも、熱心に米国製の旅客機に買い換えつつあります。つまり、ロシアが外貨を稼げるのは、石油・天然ガスを筆頭にダイヤモンドなどの地下資源と、「武器」だけなのですなあ。或る自衛隊研究家は、日本の陸上自衛隊の基本装備は全部ロシアから買ってしまえば予算が数十分の一で済んでしまう、と言っています。ロシア製の銃砲は、丈夫で長持ちの上に性能も良いとの事です。

■今、米国が最も恐れている核兵器を中心とした大量破壊兵器の拡散問題も、元をただせば旧ソ連から流出した裏の武器市場が存在している現実から出て来る話です。人民解放戦争や民族解放戦争の時代が終って、ロシアは表の武器市場に本格的に出ようとしているようですなあ。8月18日から、中国の人民解放軍とロシア軍が、びっくりするような大規模合同演習を始めましたぞ!中国は台湾に対する示威行為の一環であるのは明らかで、わざわざ強襲上陸作戦をやって見せるそうですなあ。でも、人民解放軍の主力部隊を構成している世代は、「一人っ子政策」で誕生した唯一の長男坊ばかりですからなあ。昔のノルマンディー上陸作戦のような人海戦術を実行出来るのかどうか、はなはだ疑問とされています。強力なコネと政治権力に入り込めるエリートとして人民解放軍は中国社会に君臨していますが、本当に戦闘になったら逃亡や暴動が起きるのではないか?とも言われているようです。

■勿論、一緒に合同演習をやるロシアは、昔のように米国と最終決戦をやるつもりなどまったく無いので、今回の目的は最大効果を狙った兵器の宣伝です。最近は、以前のように実戦を使ったCMだった中東での大規模戦闘がふっつりと無くなってしまったので、ロシア製の「新発売」を御披露する機会が無くて困っているのでしょう。イラク戦争では、中古品同然の商品を米国の新製品に狙い撃ちされてしまったので、せっかく毎年「新発売」している商品の見せ場をずっと探していたはずです。イラクが終って、次は北朝鮮か台湾で戦争が始まるだろうと、素人でも考えているのですから、どちらで始まっても片方の主役を演じるに決っている中国人民解放軍が一緒に演習をしてくれれば、嫌でも世界中の軍事専門家が注目しますから、強(したた)かな計算の上で物騒な演習をするという事ですなあ。

■面白いのは、日本のマスコミが目と鼻の先でこんな物騒な品評会をするというのに、選挙騒ぎばかりを報道している事です。何処のメディアが取材を申し込んでいるのでしょう?日頃、世界平和をしたり顔で語っている人達は、近い将来台湾で起こる地獄図を想像するてめにも、間近で取材すべきでしょうに!まかり間違えば、それが尖閣諸島に変更されるかも知れないのですから、報道人としては随分怠慢な話です。今回のロシアがお勧めの商品は、長距離爆撃機と超音速戦闘機らしいので、こんなものを中国に並べられたらどうするのでしょう?日本の航空自衛隊が持っている戦闘機がどこまで飛べるのかを知らないで、北朝鮮と事を構えるようと威勢の良い事を言う人がいるくらいですからなあ。困ったことです。

■例のカムチャツカ沖での潜水艇事故に関して小さな新聞記事が有りました。あの事故現場には、ちゃんと救命艇が用意されていたのだそうですなあ。それが何と輸入品で、説明書は全部英語!ところが誰も英語が読めないので、ただ積んでいただけだったのだそうです。「どのボタンを押せばどうなるかも分からない」状態だったそうですから、人命軽視の伝統は今も健在のようです。米国と張り合ってびっくりするような巨大な原子力潜水艦を造っているくせに、小さな救命艇を一隻も自前で造っていないという神経が面白いですなあ。何度も潜水艦事故を起こしているのですから、使わないと思っていたというわけではないはずなのに、始めから助けるつもりが無いのでしょう。

■そんな折も折、北朝鮮では金正日将軍様がお姿を現して、「日本が負けて嬉しいな」60周年記念式典を挙行したようですが、この時にわざわざロシアのコンスタンチン・プリコフスキー極東連邦管区全権代表を招待して、プーチンさんからの書簡も受け取ったそうです。このプリコフスキーさんは数年前に仰々しく自前の列車でシベリア鉄道を走って往復したモスクワ訪問の時にガイド役をした人で、またまたモスクワ訪問をしたいと将軍様はオネダリしているようです。六カ国協議が面白くない結果になってしまいそうなので、裏に回って苛めるだけの中国に当て付ける意味もあるのでしょうが、ロシアを後ろ盾にして何かを得ようとしているのでしょうなあ。六カ国協議の美味しいところをロシアにもって行かれたら、またしても日本の面子は丸潰れですぞ!何かとご活躍のロシア軍の御話でした。もしも、勲章を貰えるのなら、強引に「是非、お礼を言いたい!」と護衛艦隊を組んで小泉さんが乗ってロシアを訪問すれば良いのになあ、と少し思います。


ドキュメンタリー『アウシュビッツ』

2005-08-27 08:45:01 | 歴史
■NHKが終戦60周年記念の一環として、とても良い番組を放送してくれました。残念ながら、皆様のNHKではなく英国BBCが米国と協力して制作したドキュメンタリー作品です。さすがに情報収集能力と分析力を世界に誇る英国です。CGの使い方も適切でしたし、何よりも生存している当事者を引っ張り出してインタヴューした手腕には脱帽します。歴史研究に関しても長い伝統を持っている英国ですから、重要な出来事を漏らさず拾い上げて時系列に沿って並べて再構成された歴史は、一つの必然性を持って我々に語りかけてくれました。

■単なるナチス弾劾やヒトラー批判ではない歴史ドキュメントは、それぞれの当事者と当事国の事情や思惑に翻弄されるユダヤ人の姿を浮き彫りにしましたし、愚かな羊のように殺されてしまったように見えるユダヤ人達の中にも生き残る工夫をする者が沢山いたことも描かれました。皆様のNHKがなかなか再放送してくれない「天皇を死刑にしろ!」という裁判祭り番組などとは比べようもない良質な「人間ドキュメンタリー」作品でした。乱雑な反ユダヤ人思想が、政治機構の中で具体的な政策として決定され、それぞれの役割分担が決り、一つの職業としてアウシュビッツの建設と運営に携わって行く人々の動きが、何とも恐ろしく、異常な人々が犯した異常な犯罪行為などではない「最終的な解決策」の流れが良く分かりました。

■再現映像のドラマも抑制が効いた演出でしたから、恐るべき犯罪行為をしながらも一家庭人として暮らしている所員の姿が鮮明に復元されました。効率的な絶滅方法を試行錯誤しながら完成させてから、たった2年間で100万人を処理してしまったアウシュビッツという施設の内実がこれほど詳細にかつ冷静に描かれたことは無かったのではないでしょうか?サイマル出版が翻訳を出していたルドルフ・ヘスの自伝を読んだことが有りますが、その時に想像したヘスの実像は自分の罪を逃れるために嘘を混ぜた強弁を続ける悪人でしたが、今回のドキュメンタリーが再現したヘスは、有能で小心な官僚そのものでした。追求を逃れて偽名で農夫となって身を隠しながら、密かに妻とは連絡を取り合っている家庭人としてのヘスは、単純な憎悪や嫌悪の対象にはなりません。その流れの中に、南米に逃れたアイヒマンも出て来るのですが、ナチス政権の中で少しでも出世しようと努力しただけの小役人達が、自分がしている事をよく理解していたという事実の恐ろしさが、とても良く描かれていました。

■第一回は『大量虐殺への道』と題されて、有名な「ワンゼー湖畔の会議」を再現ドラマで見せてくれました。この会議は以前にも再現ドラマ化されていますが、今回はモノクロ画面にして演出も抑え目でしたから、単なる上層部の決定に従って政策を具体化するだけの事務的な会議であったことが上手に表現されていたようです。四半世紀前に、ポーランドのクラクフからバスに乗ってアウシュビッツを訪ねたことが有りますが、保存されている施設はほんの一部分ですし、見学用に整備されているので妙に清潔な感じがして違和感が有りました。それは、広島の原爆ドームの現物を見た時の違和感に似ています。

■実際のアウシュビッツは、正視に堪えない不潔さと悲惨さが満ちた場所でしたし、何よりも悪臭と死臭と死体を焼く煙の臭いに包まれた場所でしたから、それを追体験など絶対に出来ません。現場を訪れて、その違和感が氷解したのは、長い長い廊下の壁を埋め尽くしている葉書大の写真展示でした。何とも言えない表情でカメラを見詰める無数の顔がずっとこちらを見詰めているのです。今回のドキュメンタリーでは一部しか映されませんでしたが、殺す側と殺される側の一人一人にスポット・ライトを当てる手法なので、あの一枚一枚の写真の視線に射すくめられて涙が止まらなくなった時の衝撃に似た感覚が蘇りました。

■映画の『栄光への脱出』に、強制収容所出身の若者が爆発物を扱える特技が有ると言ってイスラエル独立闘争に志願する場面が出て来ます。その青年はどうやって爆発物を扱える技術を身に付けられたのかを組織のリーダーが問い詰めて行く場面です。秘密厳守の鉄の団結を必要とする戦闘集団ですから、過去も正直に告白しなければならないので、取り繕っていた青年は最後に本当の話をして絶叫しるのです。彼は絶滅キャンプの死体処理用に大きな穴を作る仕事をしていたのでした。映画を観た時の驚きが、今回のドキュメンタリーでは更に詳しい説明で深まりました。ガス室の処理仕事は、4人のナチス親衛隊員と100人の使役係のユダヤ人によって担われていたのです。その仕事をしていた生き残りが、カメラの前で証言する場面には息を呑みました。

■映画の『マラソンマン』や『ブラジルから来た少年』などでも描かれた地獄の天使の異名を取った医師のメンゲレもちゃんと出て来ましたし、有能なのか無能なのかよく分からないヒムラーの扱い方も決め付けずにバランスの取れたものでした。歴史ドキュメンタリーというのは、このように作るのだなあと大変に勉強になる作品でした。いつか再放送される事が有りましたら、五回シリーズの一回分だけでも御覧になるのを強くお勧めします。日本でも、GHQが創作した太平洋戦争物語や、ソ連のコミンテルンが作ってくれた民族解放物語を卒業して、あの戦争を描く視点を徐々に確立しつつありますが、間違ってもナチスと大本営とを同じように扱ったりしては行けませんぞ!欧州とロシアの長い反ユダヤ思想の流れと、東アジアの清朝崩壊以後の近代化の歴史はまったく別の歴史なのですから……

国会に行きたいかア!

2005-08-27 00:20:35 | 政治
■日本の未来を決める重要な選挙だと騒がれながら、何がどのように重要で、どこをどのように変えると、100年後の日本が見えてくるのかさっぱり分からないまま、テレビ・メディアにとって書き入れ時の大事な週末に入ってしまいました。

■昔、日本テレビという面白いゲテモノ好きのテレビ局が有りました。エ?今も有るんですか?有りますね。でも、福留さんという小柄なアナウンサーはもう居ませんね?日本テレビは、大橋巨泉さんという小器用なのに何をやってもモノにならない珍しい「俳句読み」を使って、昔は面白い番組を作ったそうです。「テレビ司会者」という不思議な商売で稼いだそうですが、オウム真理教のペテンを真に受ける若者を沢山養成するような、「UFO専門プロデューサー」を筆頭に、スプーンが曲がるの曲がらないのと大騒ぎを起こしたオチャメなイスラエル芸人を来日させたのは大橋巨泉さんです。


野球は巨人、司会は巨泉。ウッシッシ

という今でも意味の判らない独自の売り込み言葉をあちこちで言い触らしていたそうです。当時は珍しい可愛いオネエチャンの太モモやら乳房をちらちらみせながら、奇妙な深夜番組を開発したテレビ界の偉人らしいのですが、その御威光は相当なもので、海外に日本人相手の土産屋という地味な商売をしながら引退生活をしていたのに、突如として民主党の候補者として立候補して、勝手な事を言い振りまわって100万票以上の支持を得て国会に入ったと思ったら、半年もしない内に、「ひきこもり」になって家出したそうですなあ。

■戦後の「自由」だの「民主主義」だのを米国から恵んで貰った生々しい体験を持っている世代の日本人には、こういう傾向が見受けられるような気がします。自由や民主主義はもっともっと心地良くて便利で、自分の我儘が通るものと誤解している被占領体験者は、早めに自分達が体験した時代の特殊性を知って、思い込みだけであれこれ発言したりしない悠々自適の生活に入って頂きたいものです。さすがに懲りて、この国民総出のお祭選挙には、出て来ないようです。(本当に出て来ないでしょうね?)日本テレビというところは、巨人軍というプロ野球チームが必ず毎年優勝するという信条を共有するカルト組織なので、ここを退社して別の放送局で小銭稼ぎをし始めるオジさん達も「巨人カルト」として愛想を振り撒いています。あと二三年すれば、本当に貴重な見世物になる可能性が有るので、初心貫徹!浮気や自己批判は厳禁ですぞ!

■さて、オウム真理教事件で大騒動だった頃に、日本テレビは「ハンド・パワー」「来てます。来てます。」という日本語だか英語だか判らない事を言いながら腕まくり姿で素顔を見せずに手品をする人を引っ張り出します。単なるマジックではないので「マリック」という名前で、超能力すれすれの演出で視聴率を稼いだのでした。その時に、常にサクラとなって大ハシャギしていたのが、「ニューヨークに行きたいかア」と進駐軍の手先みたいな事を大声で言っていた福留さんでした。一緒に手品を演じているのですから、タネも仕掛けも分かっているのに、「不思議だ!」「奇跡だ!」と電波を混乱させていたのが福留さんで、何がどうなったのかは分かりませんが、今ではTBSに雇われてボロ儲けしているらしいとの噂で、特に土曜日の夜に放送しているすっかりマンネリ化した猫ナデ声のワイド・ショーが人気らしく、舌ったらずの奇妙な日本語を売り物にしているお嬢さんが一週間のワイド・ショー・ネタを短時間に見せてくれるので、案外、忙しい人たちが便利に利用しているようですなあ。

■日頃は目新しい事も放送しないらしいので、余り見ないのですが、猫の目のように選挙情勢が変化するので、一応、新情報でも有るかと見てみたら、やってくれました福留さん!ただの手品商品の卸し問屋だったマリックさんを超能力者に仕立て上げた手法はまだ生きているようです。ホリエモン君を出演させて、「小泉さんはカッコ良いですからね」の一言を引き出しました。これは大したものです。何を勘違いして大騒ぎしているのか分かりませんが、レッサーパンダは後足で立つという当たり前の事を知らなかったアホな日本人が、動物園に押し寄せるのと同じで、尾道にホリエモン君が行ったというだけで、自慢の携帯電話のカメラを並べてきゃあきゃあ言っている人々の姿も映してくれました。

■この映像は、どこのテレビも大喜びで使ったようですが、よくよく見れば大した人数が集まっているわけでもないのに、「大変な人気ですねえ」などと頼まれてもいない大本営発表をしているようですなあ。プロ野球が話題になれば一番安い球団を買う!と言い、地方競馬が潰れそうだと聞けば「買おうかなあ」と言って見る。あの後、忙しいホリエモン君がどこかの野球場に現れた話は聞ききませんし、余った金で駄馬を買っているのに、競馬場に通っている話も出ませんなあ。忙しいのか暇なのかさっぱり分からないホリエモン君が、全弾撃ちつくした小泉さんのところへ、民主党の岡田さんに振られた後に売り込みに行ったという話らしいのに、マスコミは選挙報道の目玉商品にして大ハシャギしているようです。

■そのホリエモン君を実況生中継で最初にインタヴューする度胸は福留さんにしか無かったのでしょう。案の定、どうでも良い話と一昨日喋って新聞に載っている話しかしていなかったので、観て損したかと思っていると、「小泉さんはカッコ良い」の一言です。小泉さんのどこらへんがカッコ良いのかは詳しく説明しませんでしたが、ホリエモン君は小泉さんがカッコ良いと思っている事は確かです。米国から日本に流れ込んだIT長者の小集団は、何故か素人目にカッコ悪いのです。米国の成金趣味丸出しのカッコ悪さがIT界の標準となってしまったらしく、大金持ちになって困っている子供のような風情の人物ばかりで、プロの風格も迫力も無いのが不思議なのです。ビル・ゲイツさんもIT技術よりも市場独占に成功する法律知識を誰よりも上手く使っただけの人だ、と意地悪く言う人もいるくらいで、市場を作って囲い込んで独占する。これが成功の秘訣のようですなあ。そして、離合集散を繰り返す中で、猫の目のように短時間の栄枯盛衰が常態化していて、シリコン・バレーの夢は次々と新しいヒーローを生み出しています。つまり、無数の敗残者が裏に居るということなのですが、マスコミは成功者だけを拾い上げますなあ。

■IT産業で一番儲かるのが、気楽に借金が出来るファイナンスと、一人だけの部屋で怪しげな映像を楽しめるアダルト・サイトだと言う人もいます。ブログをやっていても、今のところブログでは「金貸し」は無理なので、奇妙な写真映像を貼り付けてヒット数を稼ごうとしたり、強引なトラック・バックを仕掛ける馬鹿者もいますなあ。ですから、商売としてポータル・サイトを経営しようと思ったら、同じ手口で稼ぐだろうと想像は出来ます。新しい商業メディアを半独占状態で経営する人が巨大な利益を集めるのは不思議な事ではないのですが、利益を再投資する時に多くの経営者が失敗して行くようです。ネット情報が自立して既存の情報メディアは滅びると啖呵を切ったホリエモン君でしたが、郵政民営化に関しては、出来の悪いブログの受け売り程度の話しか出来ないようです。

■小泉さんは「新しい時代の息吹きを感じる」そうですが、既にホリエモン君は過去の人なのではないでしょうか?野球・競馬・宇宙旅行の次の話題が総選挙だっただけなのではないか?とこれまでの遣り口を知っている人たちは思っているでしょう。案外、地方都市ではそんな時代の空気が伝わらない場所が多いのかも知れませんなあ。東京を離れられないホリエモン君を瀬戸内の有権者が選んだら面白いでしょうが、人を馬鹿にした選挙運動が始まれば何度目かの恥を上塗りして、次のスポット・ライトを求めて移動するでしょうなあ。万一、当選でもしたら、否、落選してもリクルート疑獄と同じ事をしてしまう可能性が高いような気がしますので、民主党からの最終兵器として送り込まれたと思って楽しみにしていた方が良いかも知れません。

■同じ福留さんの番組で、松田聖子さんという人が、台湾で公演したという地味?な芸能ニュースを放送しました。米国で失敗して日本でも落ち目になってから台湾へ、というのは台湾を馬鹿にしているような気がします。何でも米国一番!で凝り固まっている小泉さんが元気なものですから、とても印象深いニュースでした。さて、したたかな松田聖子さんに負けずに、ホリエモン君が一週間でも選挙運動でスポットライトを浴びていられるか、これは見ものですぞ。いつもの事とは言いながら、マスコミの皆さんには、あまり露骨に掌を返すような豹変ぶりは見せて欲しくありませんなあ。TBSが社運を懸けてホリエモン君を追跡取材するつもりなら、初心貫徹して、福留さんに得意の「国会に行きたいかア」「スゴイ、スゴイ、キテマス、キテマス」を発揮ししてもらって選挙をせいぜい盛り上げて欲しいものでございますなあ。

岡田さん!馬脚を現すのはまだ早い

2005-08-26 08:03:20 | 政治
週刊新潮の8月25日号で、岡田克也民主党代表が、櫻井よしこさんと対談しています。まだ自民党も手駒が揃わない時期なのに、少しは相手を考えてマスコミを利用したらどうなのでしょう?「郵政民営化」是か否かの踏み絵を踏んだら最大の支援者組織が逃げ出してしまうので、選挙戦のテーマを別に設定して小泉さん仕掛けた蟻地獄から逃げねばなりません。それを知っている櫻井さんは、意地悪く岡田さんを追い込んで、有る事無い事、いろいろ喋らせて下さいました。

自民党内の面白おかしい権力闘争で投票するほど、日本人は愚かではありません。

と何の根拠も無く国民を持ち上げているつもりらしいのですが、後で指摘する戦犯問題と付き合わせると、この「賢い国民」と矛盾してしまうのですなあ。困った、困った!郵政民営化に賛成か反対かと開口一番問い詰められて、

「民営化に賛成とは言っていません。ただ、民営化に賛成か反対か、小泉さんに上手くそうした絵を作られてしまったと思います。」
「作られてしまったというのは、戦いの第一歩で後れを取っている」


と突っ込まれた段階で、選挙向けの議論は勝負有りなのですが、選挙戦が始まってから民主党が何処から持って来たのか、郵便貯金の預け入れ限度額1000万円を引き下げて、「官のお金」を追い出して民間に流すというアイデアを披露する岡田さんです。

■しかし、バブル期に300万円の限度額では窮屈だというので徐々に引き上げて来たのには理由が有って、お年寄りはバブル時代でも昔ながらの貯金を優先して、胡散臭い「株屋」には虎の子を渡さなかったので、案外大きなお金を持っているのです。その証拠に悪徳商法で荒稼ぎする連中は、後先考えないアホな若いサラリーマンを色仕掛けで落とすか、手堅くお年寄り相手に親切ごかしたリフォームだの「お得な金融商品」などを売りつけているではないですか?乱暴な奴が電話番号を調べて「オレオレ詐欺」の餌食にしているのもお年寄りですぞ!それに対談の中で、某銀行のトップの言葉を得意げに岡田さんは引用します。


我が行は戦後60年かけて取引先との信頼関係を作り上げ、ノウハウと人材を育て、ようやく数10兆の規模になった

語るに落ちるとはこの事で、この証言を論拠にしてノウハウも人材も無い郵便局が民営企業になったら金融破綻を起こすから、民営化には反対と言うのですが、長年、護送船団方式でぬるま湯仕事をしていた日本の金融機関がまだまだ欧米の生き馬の目を抜く荒業師達とは闘えない証拠にもなるのです。郵政を民営化しないでおいて、膨大な資金を民間に流したら、あっと言う間に外資に持って行かれるという事でしょうに!結局、郵政公務員の身分を守って、金融資産を持って行かれるのですから、竹中法案より愚かな選択ということです。

■岡田さんは自分の論理破綻を放置して、小泉改革は失敗すると言い続けるだけなのですが、櫻井さんが聞き出したいのは郵政談義ではなかったようです。対談後半は「靖国参拝」に議論が集中してしまうので、岡田さんはトンデモない寝言を言い出してしまいます。


もちろん東京裁判が万全だとは思っていません。ただし、我が国は無条件降伏をしていますから、意義を唱えられるのかという問題があります。しかし、日本人が自らあの戦争の総括を何らかの形できちんとしたでしょうか。……東京裁判は自ら総括しない以上、受け入れるべきです。より根本的には戦後60年経ってますが当時の資料をもう一度精査して、より真実に近い形の検証を行なう責任がある。……

こんな幼稚な事を言うから、「日本は無条件降伏はしていないのです。日本が受諾したポツダム宣言でも無条件ではない。日本軍は無無条件に武装を解除する、無条件はそこにかかっているんです。日本国の降伏は条件付きの降伏なのです。」とニッコリ笑ってバッサリ斬られてしまいます。

■どこかの無責任な学者や自称ジャーナリストが、まとまりが付かなくなった文章の末尾に貼り付ける苦し紛れの常套句を借用するからこんな無様なことになってしまうのですなあ。丁度、この対談を掲載している週刊新潮は「終戦60年秘話」を連載中で、なかなか興味深い新ネタを発掘していまして、今回は「後の韓国大使もいた7人の脱走日本人 前編」というスクープ記事を載せているのです。
岡田さんが気に入っている東京裁判でも、逮捕しては釈放を繰り返して最終的に28名を「人道と平和に対する罪」所謂A級戦犯として、「通常の戦争犯罪・民間人に対する残虐行為」所謂B・C級戦犯となると5700名が訴追されたのですが、この中には沢山の冤罪や人違い、ひどいのは単なるリンチでしかない例が含まれています。逆に、 上手く立ち回って戦後は好々爺になって手厚い恩給と戦時中に作った怪しげなコネを使って甘い汁を吸って安らかに人生を閉じた連中も沢山いるのです。

■岡田さんが提唱するような、日本人自身の手によってあの「間違った戦争」の責任を問うような大国民運動が起こったら、一体何が起こるのか、岡田さんは想像出来ないのでしょうか?アホな作戦を命じた秀才馬鹿や、役人根性丸出しで自分が出世したいばかりに無謀な戦闘を求めた馬鹿者、暇つぶしとストレス解消で下級兵士を殴って遊んでいた馬鹿上官、軍事物資の隠匿と横流し、悪質な徴兵逃れ、そして、週刊新潮が沖縄で調べ上げてスクープしたような敵前逃亡など、日本人自身が扱える訴追例は無限に出て来るのです。その規模は数万人規模になるだろうという研究者もいます。もともと、ドイツのナチスを裁いたニュルンベルグ方式で始めてみると、アジアでの戦闘は欧州のようなナチスからの解放という単純な構図が見つけられなくて裁判は迷走しましたし、冷戦が始まってしまったのでウヤムヤにして幕引きしてしまったのですから、これを日本人が便利に扱うというのは、どうも良くないことのように思えますなあ。

■更に、敗戦の夏、市ヶ谷の陸軍省から立ち上った黒い煙が東京の空を暗くしたという話を岡田さんは知らないのでしょうか?重要な記録はすべて焼かれてしまったので、研究者は泣いているのも知らないのでしょうか?岡田さんが提案している「きちんとした総括」をやろうとしたら、頼りない証言を集めるしかないのですぞ!この程度の「歴史認識」で、外交をやられたらエライことですなあ。「政権を取ったら、真っ先に拉致問題をきれいに片付けて見せます!」と何故言えないのでしょう?対談の中でも、


日米同盟は重要ですが、中国や韓国との関係、アジアとの関係も同様に重要です。

というように、ついいつもの口癖で、アジアから中国と韓国を切り出してしまいますなあ。これは『アジアの使い方』に書いて置きましたが、岡田さんが考えているアジアにはマレーシアやインドの影がほとんど無いのです。フィリピンだって危ないですなあ。どうやら岡田さんは外務官僚の白昼夢でしかないと判明した「国連安保理常任理事国入り」を本気で実現できると思い込んでいるようですから、韓国と中国に対して、どんな交換条件を用意して「信頼」と「支持」を得るつもりなのでしょう?

■前後の脈絡も無く挿入された憲法第九条だって、ものは使いようなのです、60年間、日本はそれを使い切れていないのです。岡田さんが、
「兵士だけでなく、内外の市民も空襲で原爆で多くの命が亡くなりました。こんな愚かな戦争をしたことについて誰も責任を取らない」と、対談で苦し紛れにしても言い放ったように、問題は、「こんな愚かな」に力点を置いて、そんな下手な戦争をしないことが政治家の責務なのです。なんでもかんでも「戦争をしない」のなら、いい年したオジサン・オバサンが国会に行く必要は有りません!中学校の生徒会で活躍している程度のニイチャンで充分です。「愚かな戦争をしない」のは、愚かでない戦争をする政治力を持つ事です!それに適した政治家やジャーナリストを持てない国家は消え去るのです。それは歴史が教えているではありませんか?昨日のイラクが明日の日本ではないという保証はないでしょう?もしも、そんな夢にすがり付いているのなら、B29に竹やりで立ち向かった先祖を笑ってはいけません。

■こんな役人上がりの体質丸出しの代表しか持てない民主党ならば、投票は考えてしまいますなあ。かと言って…………。嗚呼、困った!

『2008年IMF占領』 森木亮著

2005-08-25 21:10:35 | 書想(その他)
■小泉改革の「本丸」は郵政民営化なのだそうですが、国会の議論でも時々言及されながらも核心が付けないまま放置されている米国との関連を確認しておくべきだと思います。この本は光文社のペーパーバック・シリーズに含まれている一冊です。要は、著者の森木さんが長年に亘って、乱発される国債の暴落がいよいよやって来るぞ!というシミュレーション本です。日本の財政が破綻に到る流れを過去から語り起こして、財政破綻の責任に関して、松下康雄次官(元日本銀行総裁)・山口光秀主計局長(元東京証券取引所理事長)・吉野良彦官房長(元日本開発銀行総裁)という犯人の名前を出して明解に解説しています。

■戦前どころか、明治政府の財政政策から語られる日本財政史はとても面白いのですが、この本を買って良かったと思えるのは巻末資料を読んだ時です。特に『巻末資料4』はアメリカの対日政策に関する貴重な内容になっています。『年次改革要望書』を公開している米国大使館のホーム・ページのアドレス付きです。(http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html)
実物を読むのが面倒だという人には、この本はお買い得だと思います。巻末資料4では、関岡英之さんの『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書)を引用して 


この「年次改革要望書」が毎年提出されることになったは、「1993年7月の宮沢首相とクリントン大統領の首脳会議で決った」

と教えてくれます。

■2004年10月14日付の「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府要望書」を引用して丁寧な解説をしてくれています。その中に、問題の郵政民営化に関する「要望」が出て来ます。


Ⅱ-A-1-a
郵便保険と郵便貯金事業に、民間企業と同様の法律、規制、納税条件、責任準備金条件、基準、おおび規制監督を適用すること。

Ⅱ-A-1-b
特に郵便保険と郵便貯金事業の政府保有株式の完全売却が完了するまでの間、新規の郵便保険と郵便貯金商品に暗黙の政府保証があるかのような認識が国民に生じないよう、十分な方策を取る。…………

Ⅱ-A-4
日本郵政公社において販売される民間企業元受けの保険商品の選択が、公平で透明性がある形で行なわれるよう保証する。

Ⅱ-A-5
日本郵政公社の民営化の過程で、郵便保険および郵便貯金事業に新たな優遇が与えられないよう保証する。

Ⅱ-A-6
郵便保険と郵便貯金事業の民間企業に対する競争の状況を定期的に調査するための独立した委員会を設置し、民営化の過程において一貫して、同一の競争条件の継続を保証するこを目指す。


■19世紀に、英仏独が清朝チャイナを切り刻んでいる間、スペインとの戦争で忙しくて出遅れた米国は、カリブ海を押さえてから太平洋に出て、ハワイ・フィリピン・グアムまで来たところで、有名な「門戸開放」を言い出しました。美味しい所は全部貰ってしまった欧州列強は、利権の維持に必要なコストが高くなって来ていたので、米国の言い分を大体聞き入れましたが、最後に参加した日本はこれから投資分を回収しようという時でしたから、真正面から米国に反発してしまいました。米国は事前に用意していた「オレンジ計画」に従って太平洋戦争を起こして、チャイナへの進出拠点としたかった沖縄を手に入れたのでした。

■1985年のプラザ合意に始まる日本の金融機関に集まっていた富の回収は大成功して、日本には100兆円を越える大穴が開いて、それと同等の富が米国の大赤字を埋める資金となって還流して行ったと言われています。クリントン政権が着手した日本の官僚制度破壊計画は、大蔵省を崩壊させて官僚たちの裁量権の材料を根絶やしにしましたし、外務省の弱腰に付け込んでクウェート救援作戦の資金を脅し取ってばかりか、イラク派兵とインド洋での補給役を日本に押し付けて戦費の肩代わりをさせる事に成功しました。世界一に成長した日本の自動車産業も米国本土に生産拠点を移させたし、ITソフトも永久に日本が米国から買い続ける仕組みも完成しました。映像ソフトと音楽ソフトの日本市場も万全です。

■破綻した金融機関も粗方(あらかた)買収しましたから、残るのは全国津々浦々から集められている郵政省が握っている資産です。これを吐き出させて増え続ける米国の赤字を埋めてしまいたいので、郵政省破壊が計画されたのでしょう。郵政省が解体されれば、自動的に郵便局が民営化されて莫大な資産の運用は官僚の手を離れます。バブル時代に馬脚を現したように、日本の民間金融機関はとても米国の企業に太刀打ちは出来ませんから、340兆円などという金額を前にしたら卒倒してしまうでしょうが、米国は博打の掛金は大きいほど楽しい事を知っていますので、大喜びで何兆円でも引き受けてあちこちで焦げ付かせながらも利益だけはしっかりと握って離さないでしょうなあ。

■ご丁寧な事に、この要望書には「宅配便サービス」との公正な競争に関しても注文を付けているので、クロネコやまとと郵政公社がコンビニの取り合いなどしている内に、気が付いたら外資が有力宅配業者を買収してしまっているなどという事になるのかも知れません。


Ⅱ-B-2
税金や他の料金免除など競争条件を変更するような特別な便益や、物品の運送に関して政府機関による特別な取り扱いや、関税業務にかかるコストの免除などが、政府政策により競争サービスのあるひとつの提供者のみに与えられないことを必要に応じて確実にする。

Ⅱ-B-3
競争サービス条件下で、全国一律サービスの提供から得られた収益を用い非競争的な相互補助が行われる事の防止監督をする。ひとつの監督方法は、日本郵政公社および全ての関連会社の会計が分離、独立でえありかつ完全に透明性のあるものとすることであろう。


■これを書いたのは日本の官僚でもないし、野党第一党のシンクタンクでもないという事実を再確認しておきましょう。そして、こうした微に入り細を穿った要望書に対抗する文書を日本政府の官僚達は書いているのか?という大問題が有ります。郵政民営化がどんな風に進むのか、何故か米国は預言者のように正確に知っています。


Ⅱ-C-1
日本郵政公社民営化の準備期および移行期において、民間の利害関係者(外資系を含む)の要請に基づき、民間企業に影響が及ぶ可能性のある論点について、総務省、郵政民荊軻準備室、金融庁を含む関係省庁の職員と意見交換をする有意義な機会が提供されるようにする。


■こうした基本となる資料を提供しないで、「郵政民営化」に賛成か反対かが争点になっているような報道ばかりしていると、どちらに転んでも米国の注文通りの結果しか出ない流れになってしまいそうですなあ。米国は、日本郵政公社・成田国際空港・日本道路公団を筆頭にした民営化希望対象を羅列して日本政府に突きつけているそうです。つまり、民営化の議論は国会議事堂の中で行なわれているのではなくて、ワシントンと総理官邸の間で既に終了していたという事でしょうか?国会で何度か追及された時、小泉さんと竹中さんは「民営化案は米国の要望とは無関係に日本政府独自に作られたものです」とまったく同じ答弁をしていましたなあ。野党側もそれ以上の追求をしなかったのには特別な理由が有るのでしょうか?

というわけで、選挙前に是非一度は目を通しておいた方が良い本だと思います。

おめでとう!イスラエル

2005-08-25 21:07:47 | 外交・世界情勢全般
■8月21日現在、ガザ地区の入植地はあと一つを残して、「無事に」撤退が完了しています。テレビ・ニュースが配信してくれた軍隊まで投入した強制撤去の様子は、きっと学生運動花盛りの頃を知っている日本人のオジさん達には、東大闘争のクライマックス・安田砦の陥落を思い出しに違いありませんが、ご心配にはおよびません。地上数十メートルから巨大な石塊を投げ落としてあわよくば機動隊員の命を奪おうとした東大闘争や日大闘争のような事は、イスラエル国民同士の間には起こりませんよ。

■塩酸のような薬品が投下されたとの報道も有りましたが、投げ落とされたのはペンキと小石がほとんどだったようです。一番沢山投げ落とされたのは「言葉」だったに違いないのです。「出て行け!」ではなく「出て下さい」という言葉を受けて、出て行きたくない理由を声を枯らして主張できる。それを強化プラスチックの盾を持った排除側がちゃんと頷きながら聞いている!投げ落とされる「言葉」は、聖書から引用されたものに違いなく、下から打ち返される説得の「言葉」は近代国家となったイスラエル国民の心得だったはずです。お互いに泣く思いで語り合ったのですなあ。本当に目出度いことです。

■中世ヨーロッパに始まる本格的な反ユダヤ主義は、文盲だらけだった暗黒の欧州に聖書を読める知識階級が生まれた時から始まって、スペイン帝国からイタリア(ゲットーというのはイタリア語ですぞ!)、そして『屋根の上のバイオリン弾き』で有名なロシア、最後はナチス・ドイツの絶滅計画へと、ユダヤ人は「言葉」を発する権利など一切認められず、勿論、不動産の所有権も無いので地主が「出て行け!」と言ったら最後で訴訟など問題外でした。引越し費用も保証金も有りませんでした。命さえ有れば、頭脳と手先にメシのタネが有れば生きていけるので、法律家・医師・経理士・宝石職人・音楽家・画家・教師などになるように子供を育てながら流浪したユダヤ人達が、自分の信仰心を叫んで対話をしているのです。「国境内」への引き上げに要する資金も、3000万円の移転補償金も有りますし、引っ越した先では弾圧どころか「よくぞ頑張ったぞ!」と山のようなファン・レターが届くことでしょう。長いユダヤの歴史の中で、こんなに楽しい移転が有ったでしょうか?

■欧州で目立たぬように暮らしていたユダヤ人に、「分かり易く」黄色の星マークを強制した王様が沢山いました。ナチスがやった所業の中には、一つも独創的な弾圧方法など有りません。秀でた事務処理能力が禍(わざわい)して、余りに効率的にユダヤ人抹殺を実現してしまっただけの話です。ユダヤ人達は、自分達のアイデンティティを示す服装も行動も慎んでひっそり暮らしていたのに、外出時には特定の目印を付け、住居にも目印を付けるように強制される事がしばしばでした。それは「苛めても良いよ」という権力側のお墨付きですから、むかむかしている人やイライラしている人のターゲットになりました。しかし、今回、入植地に集まって頑張ったユダヤ人は誰に強制されることも無く、自分からキパ(頭に載せる丸い小さな帽子)を被り、メノラ(聖なる燭台)を振り翳(かざ)し、タリット(礼拝用の縦じまの布)を肩に掛けて抵抗していましたなあ。

■「銃撃戦も覚悟」などと無責任な欧米メディアは書き立てましたが、飛び交ったのは銃弾ではなく「言葉」でした。聖なる言葉と世俗の言葉が、真っ青な空の下で交わされたのです。欧州のどんよりと曇った空の下やロシアの雪雲の下で追い立てられた歴史を考えると、これは一種の娯楽のようなものです。ですから、遠巻きに銃撃戦を期待してカメラを向けるのではなく、建物の間近に寄ってマイクを多用して取材するべきだったのです。立て籠もる側は、きっとローマ帝国に対する最後の戦いとなった「マサダ要塞」を主ださせる演説をしたでしょうし、神がユダヤ人に土地を与えた一節を聖書から引用して朗誦したでしょう。それに対抗する説得側は、民主的に議会で決定された世俗の法律を投げ返したはずなのです。どちらも、自分の立場と相手の立場を理解しながらのパフォーマンスでした。彼らが自分達の行動を見て欲しかったのは、欧米のメディアなどではありません。彼らは神の目に映る自分の行動と心情を示したかったのです。

■聖書に書かれた巨大なイスラエルと、国際社会の間隙を縫って建国した近代イスラエルの鬩(せめ)ぎ合いです。抵抗する側も説得する側も、近代国家イスラエルが消滅したらどうなるかを良く知った上で、神の名に懸けて悔いの無い行動をした証拠が欲しかったのでしょうなあ。異教徒が面白がって内戦にでもなりはせぬか?などと下卑た好奇心で眺めていても、何も起こらないのですよ。今回の立ち退き騒動は、「出て行け!」「出て行かないぞ!」という絶望的な対立ではなかったのです。エジプトとの国境を画定し、パレスチナ政府との交渉も進んでいる国境の中に「帰っておいでよ」という立ち退き問題なのです。ユダヤ人は帰る場所(ホーム・ランド)を作りたかったのですから、「帰っておいでよ」「まだ帰りたくない!」という口論がどれ程贅沢な響きを持っているのかを良く知っています。

■死傷者も出さずに、「闘争劇」の後に政府が用意したエアコンの効いたバスに乗った引揚者達の楽しそうな顔が印象的でした。彼らは、神が自分達の抵抗と信仰心を認めたと納得しているのです。ユダヤ暦の大晦日、一年分の悔いあらための祈りを捧げた次の朝、会う他人事に「神様の通信簿が良い点になって良かったね」と伝統的な新年の挨拶を交わすのですが、ガザ入植地で頑張った人達は、きっと次のユダヤ暦の新年には電話を掛け合って祝福し合う事でしょうなあ。

■パレスチナ側は、相も変わらず「ユダヤ人を追い出したぞ!」などと気勢を上げている馬鹿者がいるようですですが、民族解放革命理論であろうと、アラブの大義であろうと、法治国家として民が安心して働いて暮らせる場所を作れないまま、とうとうテロ国家のままで21世紀に入ってしまったツケは大きく、4万人近いイスラエルへの出稼ぎ労働者が自爆テロを疑われて失職してしまった責任を取るには、新たな爆弾テロの呼びかけではダメでしょう。パレスチナが国家となるには、アラファト時代を終らせなければなりません。アラファト時代には、和平を口にした瞬間に援助資金が止められて宇賀裏切り者として処刑される危険が常に有りましたが、そんな時代は終ったのです。しかし、半世紀の間、民政部門をまったく顧みなかった闘争家アラファトさんは、教育も社会保障制度も作れないままこの世を去ってしまいました。子供を全面に押し出して弾除けにして、幼い犠牲者が出れば世界的な同情が得られるなどという残虐な戦略はもう通じなくなっているのです。

■パレスチナの多くの人々は、アラブの大義に騙され利用されている自分達の立場を良く知っています。何だか言論統制が厳しいチャイナみたいですが、時々お恵みのお金をくれるテロ集団に対して面と向かって文句を言うのは危ないし、アラファト時代に腐敗しきってしまった政府に対してはなおさら文句は言えないので、イスラエルの悪口を熱心に叫ぶぐらいしか憂さ晴らしが出来ない。そんな時代は早く終らせて、大いにユダヤ人とパレスチナ人の大激論が展開される時代になってほしいものです。

■ガザ地区に武器を密輸していたエジプトの原理主義過激派はエジプト政府の責任で根絶やしにされつつありますから、ガザはエジプトとの後見を得てパレスチナの責任に任せれば良いのですが、シリアとイランという困ったスポンサーが腰を据えているヨルダン川西岸地区となると、あの悪名高い隔離壁を無くせるようになるには、何か恐ろしい事が中東で起こらない限り無理なのかも知れません。日本人は、甲子園から日本ハムに行ったダルビッシュ君を応援していますが、彼の父上がどうして日本に来たのかは一切報道しませんなあ。そんな事だと、欧米がイランに対して飴と鞭をとっ替えひっ替えしながら苦労している理由はさっぱり分からないでしょう。

■四半世紀も前のイスラエルでも仲良くなったパレスチナ人達は、「戦争はもう要らないから、安心して仕事が出来る生活が欲しいよ」と言っていたものですが、アラファトさんはそんな事にアラブ諸国からの義援金を使わなかったのでした。パレスチナ人が本当に怒っている相手はイスラエルではない場合が多いという事を知って、これからのガザ地区の動向を見ているべきでしょうなあ。空港や多くの建物が破壊された悲劇が起こる前には、必ずそこを根城にしたテロ事件が起こっているのです。中東に関する報道を途中から関心を持って見るととてもややこしい事になってしまいます。これから焦点となるヨルダン川西岸で、「人々の生の声」を取材しようなどと気楽に考えては行けませんぞ。