旅限無(りょげむ)

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更正不能の人と国 其の参

2010-11-27 14:53:35 | 外交・情勢(アジア)
■不幸中の幸いと申しましょうか、延坪島の住民の多くは港に行っていて砲弾の雨を少し離れたところから見ていたという報道があるようです。もしも、人々が寝入っている深夜にでも砲撃されたら未曾有の惨事となったことでしょう。60余年前の朝鮮戦争では韓国に駐留していて米軍が不意を衝かれて雪崩を打って敗走したのでしたが、今回も島の駐留部隊は備えを怠って即座に反撃は出来ずに一旦避難したそうですから、軍の威信は大きく傷つき国民からは非難の声が上がるのも理解できます。正確に情報を把握して十分な迎撃体制が取られていたら、陸海空軍が連携して目障りな海岸陣地を完膚なきまでに攻撃して壊滅させることも出来たでしょうし、北朝鮮軍が持っていない精密誘導兵器で後方基地をピンポイントで潰してしまえば彼我の力の差を相手に思い知らせることが出来たものを、と文字通り「対岸の火事」を決め込んで暢気に構えている首相がいる頼りにならない隣国の日本で考えている次第であります。

……軍関係者は25日、「北朝鮮が延坪島攻撃に使った砲弾を処理する過程で、熱圧力弾の不発弾が見つかった」とし「熱圧力弾は高熱と高圧を発生させ、多くの人を殺傷し、防護施設までも破壊する効果がある」と述べた。この関係者は「一般の爆弾と違い、今回は1次爆発後に2次爆発が起きて大規模な火炎が発生した」と説明した。北朝鮮の熱圧力弾使用は韓国側の人命と施設被害を極大化するためのものを考えられる。北朝鮮は延坪島の向かい側に位置するケモリ陣地の122ミリ放射砲(曲射砲・多連装ロケット砲)を使用して熱圧力弾を撃ったと、軍は把握している。…… 

■先の大戦で米軍が東京大空襲などで使用した焼夷弾よりも1発当たりの殺傷破壊力は凄まじい兵器が使われたのなら、単なる威嚇や嫌がらせの限度を越えた本格的な戦争になっても構わないと、誰かさんが腹を括っていたのかも知れません。しかし、海越え山越えに熱圧力弾を撃ち込んだだけで上陸部隊が姿を見せなかったのですから、今回はジャブの応酬で一先ず幕を下ろして関係国の動きを見ようという算段のようです。将軍様の読み通りに北京政府は迷惑顔ながら背に腹は換えられぬと鼻先の黄海に米軍の原子力空母が入って演習するのは止めてくれ!と注文をつけてくれたとか……。北朝鮮と抱き合い心中はしたくないでしょうからなあ。


軍関係者は「ケモリ陣地には当初76.2ミリ海岸砲(直射砲)を中心に配備されていたが、延坪島攻撃の数日前、122ミリ放射砲1個中隊を展開した」とし「延坪島南側にある海兵隊延坪部隊を攻撃するために曲射砲を動員したようだ」と述べた。…… 

■病身の将軍様と三代目の大将の親子が砲兵陣地を激励に訪れていたという情報がありますから、密かに移動して配置に付いた放射砲部隊を訪問したことになりそうです。まだ北朝鮮側の被害は明らかになっていませんが、一か八かの奇襲攻撃が裏目に出れば地形が変わるほどの大規模な反撃を受けて部隊は壊滅する可能性もあると覚悟した上で攻撃命令を下したのでしょうから、万が一の場合にも「英雄」になれるとか何とか言って鼓舞したのでしょうなあ。


北朝鮮が発射した砲弾170発余りのうち約20発は爆発していないことが把握された。軍関係者は「爆発物処理班が25日に延坪島に派遣され、約20発の不発弾と破片処理を行った」とし「コンクリートの壁や木に刺さっている不発弾も見つかった」と話した。北朝鮮軍の板門店代表部は25日……「朝鮮の西海(黄海)が紛争水域になったのは、米国がわれわれの領海に勝手に引いた北方限界線(NLL)のため」とし「南朝鮮がまた軍事的な挑発をすれば、躊躇なく第2、第3の物理的報復打撃を加える」と脅迫した。
2010年11月26日 中央日報日本語版 

■1割以上が不発弾になって残り、海に落下した物もあったかも知れませんから不発弾の数が多過ぎるようですなあ。最初の一撃で島の自走砲部隊を潰せなかった事から射撃精度の低さが露呈し、その上に武器の生産能力も低いことが判明してしまうと奇襲攻撃は藪蛇に終わってしまうかも?哨戒艦の撃沈事件では至近距離から決死の魚雷発射という離れ業をやって見せた北朝鮮軍でしたが、これで有名な「ソウルを火の海にしてやるぞ!」の脅し文句も少々割り引かれることになるかも知れませんなあ。

更正不能の人と国 其の弐

2010-11-27 14:00:29 | 歴史
■「少年法」の精神と国家ゆえに北朝鮮が勝手気ままに振舞える原理とに共通性があるから、今回の死刑判決と砲撃事件とが重なって見えるのかも知れません。被告と親交のあった証人が「交際中は、タバコを顔に押しつけられたり、殴る蹴るの暴行を何度も受けた。人を人と思っておらず、被告には極刑を望む」と涙声で語ったり、検察側証人として出廷した共犯少年(18)などは「犯行をすべて自分のせいにするように仕向けられた。被告と一緒にいたときが人生で一番つらい時期だった」と述べた時の心情は、「太陽政策」の失敗を身をもって経験した延坪島の住民に通じるものがあるような気もします。

……仙台地裁は母親への暴力で保護観察中だったことや遺族に手紙を1度しか送っていないことことなどを指摘して、「反省の言葉は表面的」と判断。公判廷での反省の態度に「深みがない」と結論づけた。
2010年11月26日 産経新聞 

■小泉元総理が訪朝した時に拉致犯罪を認めて将軍様は「1度だけ」謝罪の言葉を吐いたことがありましたが、金丸信さんが約束した賠償金が貰えそうもないと分かると口を拭ってミサイル実験と核実験を繰り返すようになったのですから、あの謝罪はまったく「深みがない」ものだったと分かります。


判決は▽表面的な言葉で、反省に深みがない▽謝罪の手紙は1回だけで、被害者の精神的苦痛を和らげるような謝罪がない▽自己に不利益な点は「覚えていない」と述べるなど不合理な弁解をした--などとして「事件の重大性を十分認識しているとは到底言えない」と指摘、更生可能性について否定的な見方を示した。年齢も「相応の考慮をすべきだ」としつつ「結果の重大性などから死刑回避の決定的な事情とまでは言えない」と述べた。……弁護側は「不遇な生い立ちで精神的に未熟」とも訴えたが、判決は「不安定な家庭環境が事件の遠因だとしても、残虐さなどに照らせば、量刑上考慮するのは相当でない」と退けた。
2010年11月25日 毎日新聞 

■北朝鮮という「精神的に未熟」な独裁国家が延命しているのは、周辺国がその建国以来の「不遇な生い立ち」に同情しているからではなく、或る国は戦争よりも経済成長を優先したいし、また或る国は緩衝地帯を残しておきたい。また或る国は何をされても手出しが出来ない憲法を後生大事に守っていますし、世界一の軍事大国は中東とアフガニスタンの問題が解決しない間は新たな戦場が出現することを望まず、こうした御近所の事情をよくよく計算した上で国民生活を困窮のどん底に放置したまま核兵器と長距離ミサイルの開発に国運を賭けているのが北朝鮮という厄介者国家という構図になりましょう。

■関係国は一国を除いて戦争勃発の危機でさえも自国の国益に利用しようと知恵を絞って裏と表で動き回っているわけで、自国の存立原理を「戦争」に置く北朝鮮と「戦争」の二文字を忌み嫌ってばかりいる日本が対極に立って異様な対照を成しているようで、片方は異様に大きな存在感を持ち、もう片方は実に影が薄い印象を世界に与えているのでしょうなあ。

更正不能の人と国 其の壱

2010-11-27 13:57:02 | 外交・情勢(アジア)
■11月23日は勤労感謝の日で日本国は飛び石連休の最終日、1948年以前は新嘗祭でしたから瑞穂の国の収穫を祝い神々に感謝する日であったわけですが、日付変更線を跨いで太平洋の向こうでは第35代合衆国大統領のジョン・F・ケネディが1963年の昼過ぎに暗殺された11月22日と時差の関係でぎりぎり重なる計算です。そんな日の午後に北朝鮮がウラン濃縮を始めたぞ!と言っても相手にしない米国に腹を立てたのか、これ見よがしに韓国の島を攻撃したというわけであります。拉致問題で将軍様が前代未聞の謝罪までしたのに、ごちゃごちゃ言って、昔、金丸信という人が約束した60兆円余りの「賠償金」をまったく支払う気配を見せないことに業を煮やしているとしたら、瑞穂の国の神様に感謝するより北朝鮮の将軍様に貢物を持って来い!という回りくどいメッセージも少しは含んでいたのかも?

■党の綱領ばかりか安全保障政策も持ち合わせない今の政権政党は、竹島・尖閣・北方領土に続いて隣国が攻撃されて、どうやら少しは目が覚めたようであります。菅アルイミ首相も後手に回ったとは言いながら、やっと目の焦点が合ったような緊張の面持ちで歩き回っておりますなあ。前の総理大臣が日米関係を壊した後遺症で、日米韓の軍事協力体制も揺らぎ、最初から政府を信頼していない大手企業はさっさと自社の社員を引き上げさせるところも出ているそうな……。甘ったるい韓流ブームは暫し中休みにして朝鮮戦争や38度線をテーマにした韓国映画を集中的に観始めては如何でしょう?

■単なる偶然なのではありましょうが、悪名高い裁判員裁判による判決が続々と出ている中、とうとう少年犯罪に極刑の判決が出ましたなあ。何故か大手マスコミはこの恐ろしい制度自体を批判・検討する姿勢はまったく見せず、裁判員の苦渋をドラマ仕立てで突きまわすばかりなのが気になります。大幅な制度の見直しか拙速だった施行を反省して制度を廃止してしまうのが一番よいと思うのですが……。それはともかく、極刑判決の理由が北朝鮮による砲撃事件にも当て嵌るような気がしてならないのはどうしてでしょう?


元交際相手の姉や友人ら3人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた宮城県石巻市の元解体工の少年(19)の判決公判が25日、仙台地裁で開かれ、鈴木信行裁判長は「犯行状況や結果の重大性から考えれば、更生の可能性は著しく低い」として、求刑通り死刑を言い渡した。……「実母への暴行で保護観察中の犯行であることや、元交際相手の少女に日常的に暴力を振るっていたことも考えれば、更生の可能性は著しく低い」……犯行態様について「無抵抗の被害者をためらうことなく、次々と牛刀で刺した。傷の多くが内臓に達し、極めて執拗かつ残忍」……「元交際相手の少女を連れ戻すために、邪魔する者はすべて排除しようとした。欲しいものを奪うという点では強盗殺人に類似した側面もある」と断じた。……
2010年11月26日 産経新聞 

■北朝鮮の独裁三代記を紐解けば「犯行状況や結果の重大性から考えれば、更生の可能性は著しく低い」ことは明らかで、核兵器開発に対する制裁措置を受けている北朝鮮が暴挙に出たのは「保護観察中の犯行」のようなものでありましょうし、ややこしいタイミングでミサイルをぶっ放したり拉致犯罪やら密輸やら、偽札・偽タバコの製造も含めて「日常的に暴力を振るっていた」とも言えそうです。「無抵抗の被害者をためらうことなく、次々と牛刀で刺した」のと、昼下がりに民家が集中する地域に砲弾とロケット弾をばかすか撃ち込むのと、どちらが悪質なのか?「邪魔する者はすべて排除しようと」する態度はまったく改まらず、国際法を無視して「欲しいものを奪う」ことで独裁体制を維持している国にも死刑を求刑したくなるところですが、国家には主権が認められているので個人とは別扱いなのであります。

■個人でも「少年法」の精神に従えば、不幸な生い立ちを勘案して更正・教育の方法を第一に考えるのが本筋なのだそうですが、その精神を曲解・悪用して凶悪な少年犯罪が多発するという恐ろしいイタチゴッコが始まり、被害者家族や遺族からは怒りの声が盛り上がり世論も厳罰化を求める方向に動いたことを受けて法律が改正されたのでしたが、それを足並みを揃えるように裁判員制度が大急ぎで施行されたのは「そんなに少年を死刑にしたいのならお前達がやれ!」と誰かさんが言ったからなのでしょうなあ。

生兵法は怪我の元 其の伍

2010-11-18 16:11:16 | 政治
■前の総理大臣は日米間でやっとまとめた沖縄の基地移転問題を白紙撤回して日米関係を悪化させて辞任したのですが、羹(あつもの)に懲りてしまった民主党は膾(なます)を吹き始めているのではないでしょうな?!米国政府に後ろ足で砂をかける一方で、結果的に沖縄県民を放り出してしまった鳩山サセテイタダク首相の後始末は困難を極めているのは当然で、菅アルイミ首相は沖縄県知事選の結果を見なければ外交・安全保障政策を決められないという国政としては本末転倒の苦境に立たされたままです。そんな政府が「防衛大綱」などという国家百年の計をいじくり回して大丈夫なのでしょうか?

政府の「防衛計画の大綱」の改定を年末に控え、民主党外交・安全保障調査会(中川正春会長)がまとめた提言案の全容が16日、明らかになった。外交・安保の司令塔として首相官邸機能を見直し、NSC(国家安全保障会議)新設など政策立案・情報集約機能の強化を明記。中国の海軍力増強を受け、沖縄本島の陸上自衛隊第15旅団(約2100人)の師団(約8千人)化など南西防衛戦略の強化を盛り込んだ。…… 

■沖縄の陸上自衛隊を旅団から師団にするのなら、領海を守る最前線に出なければならない海上自衛隊と航空自衛隊はもっと強化しなければなりますまい。まさか制海権も制空権も失って絶望的な戦闘を強いられた地獄の沖縄戦を再現するつもりか?!


……提言案は中国の脅威を直視し、政府の危機管理態勢の強化を求める妥当な内容だが、民主党は旧社会党系勢力を抱えるだけに党内調整で後退する懸念もある。提言案は
(1)官邸の機能強化
(2)南西方面の防衛力向上
(3)自衛隊の人的基盤強化
(4)国際平和協力活動の活性化
(5)武器輸出三原則の見直し-の5項目からなる。
官邸の機能強化策の要となるNSCは、内閣情報調査室など現行組織を機能強化する形での設置を提起する。安倍晋三内閣がNSC新設の方向で議論したため機構論に陥り、実現できなかったことを踏まえた。…… 

■官僚組織と喧嘩せず役人を怒らせないためには「現行組織を機能強化」することにして人事に触れずに現在の組織をそっくりそのまま寄せ集めるのが最上の策でしょうし、ついでにポストも増やせば官僚組織は焼け太りして役人達は大喜びでありましょう。しかし、どれほど官邸機能を巨大化させようと情報を官房長官が独占して勝手に握り潰してしまうような政府の体質のままなら、これこそ税金の無駄遣い仕分け対象となりましょうなあ。


内閣情報調査室は、情報集約・評価を行う情報分析官6人とスタッフ計20人の現行態勢を大幅に増強。英国の合同情報委員会(JIC)が60人以上の情報分析官とスタッフを擁していることをモデルとする。情報を受け取り、政策立案・判断に生かす官邸側の機能も強化する。外交・安保担当の首相補佐官を置き、その下に20~30人規模のスタッフを配置。政策立案に必要な情報を内閣情報調査室に要求する双方向性も高める。これらの機能を総合した態勢を「日本版NSC」と位置づける。…… 

■英国好きの菅アルイミ首相らしく、米国ではなく英国の情報組織を手本にするのは結構ですが、海外での情報収集の最前線で働いているはずの(ロシア)大使館が昼寝をしていて重要な情報を集めず、分析・判断を間違えたばかりですぞ!首相補佐官の数ばかり増やして何の役に立つのでしょうなあ?


自衛隊の人的基盤強化は、若い隊員を増やし、年齢層の高い隊員を減らしてピラミッド型の隊員比率に改編する。国際平和協力活動では自衛隊の海外派遣を随時可能にする「恒久法」の制定を掲げた。…… 

■「若い隊員を増やす」には待遇を大幅に改善する必要があるはずですが、派遣切りに遭って日比谷公園で保護された人達に平然と「介護の仕事をしませんか?」と無神経で乱暴なリクルート助言をした菅アルイミ首相ですから、相当に粗雑な募集方法を考えているのではないでしょうかな?それ以上に本気で南西方面の防衛力を強化する構えを見せれば相手のチャイナよりも「有事近し」と過敏に反応して除隊する若い自衛官が続出する可能性が高そうなのですが、それを食い止める方策は考えているのでしょうか?


……菅直人首相は16日の衆院本会議で、防衛計画大綱に関し「ここに部隊がいるから侵略を抑止できるという静止的な発想から動体的な防衛力に変えていかなければならない」と語った。……
2010年11月17日 産経新聞 

■「動体的防衛力」というのは、「ある事態がこの地域で起こるなら、そこにウエートを移していく動体的な防衛力」という意味なのだそうです。その反対が「基盤的防衛力構想」で「侵略に対して必要最小限の防衛力を均衡に配備する」ことという話もあるようです。防衛費を切り刻み続けながら「動体的防衛力」を発揮しようとすれば、先の大戦で対ソ戦用に満洲に配備されていた軍隊をごっそり南方の島々に移動させて惨憺たる結果に終わったような事態が起こる危険がありそうですし、既にロシアと北京政府ががっちり手を結んで南と北の両面から領土問題を揺さぶっている現状を考えますと、「動体的防衛力」は又裂き状態に陥る心配もありそうです。

■さらに提言案の「南西防衛戦略」には「先島諸島(宮古・八重山列島)にも陸自を配備」と書かれているそうですが、補給と支援体制が無いまま島々に陸上自衛隊をばら撒くような無責任なことだけは絶対に止めて欲しいものであります。
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生兵法は怪我の元 其の四

2010-11-18 15:32:57 | 政治
■政府の中枢・頭脳となっている官房長官の思想に不安が残るままで、結党以来ずっと欠落していた安全保障政策を大慌てで作ろうとするのは非常に危険なことではないでしょうか?

参院予算委員会は17日午後、菅直人首相と関係閣僚が出席して、外交・防衛などに関する集中審議を行った。馬淵澄夫国土交通相は、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を機に領海警備の強化を求める声が出ていることに関し「海上警察権の在り方の徹底的な見直しが必要だ。行政警察権と呼ばれる抑止の行為に不備が残っている」と述べ、海上保安庁法改正に意欲を示した。海上保安官の武器使用基準緩和などが念頭にあるとみられる。……首相は、衝突事件への一連の政府対応について「日本の主権にとって、歴史に堪え得る一つの方向だったと歴史が証明してくれると確信している」と重ねて強調した。衛藤晟一氏(自民)への答弁。
2010年11月17日 時事通信 

■地方検察に外交判断を丸投げして海上保安官を追い込んで国家に反逆させるような「政府対応」が「歴史に堪え得る一つの方向」だと言うのなら、随分と歴史・歴史学者を馬鹿にした話でありましょう。まるで歴史は絶対的に政府批判をしてはダメだ!と言っているようにも聞こえますぞ。何も出来ないから何もしないまま誰かさんに首を挿げ替えられそうな自分の立場を知ってか知らずか、もう御自身が歴史上の人物になることを考えているのなら、哀れさえ誘う話になってしまいますが……。

■首相は一連の責任者が見えない「柳腰」外交が、将来は高く評価される「政府対応」だったと言い張っているのに、海上警察権・行政警察権に「不備がある」と言う。尖閣諸島周辺が、既に逮捕されても「処分保留」で釈放される海域となってしまったのに、これから大急ぎで海上保安庁の「武器使用基準警緩和」を実施して警察力を強化するのなら、「次は絶対に釈放しないぞ」というメッセージを発することになりますなあ。それなら「柳腰」外交は大失敗だったと認めていることになるのですが、寄り合い所帯の民主党は思考・判断までも寄り合い状態で矛盾している事が気にならないようでありますなあ。


民主党の外交・安全保障調査会(中川正春会長)は17日の役員会で、政府が12月に改定する「防衛計画の大綱」(防衛大綱)に向けた提言案のたたき台を示した。すべての国への武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」を緩和し、輸出禁止対象国を限定して、国際共同開発に道を開くよう提言する。また自衛隊を全国に均衡配備する根拠としてきた「基盤的防衛力構想」から脱却し、南西諸島防衛を想定した機動的な運用を求める。 

■おお、何とも勇ましい話が唐突に始まっておりますぞ!マニフェストにまともな安全保障政策が書けなかった民主党が、突如として日本防衛を真面目に考え始めたとしたら、誠に目出度い話ではありますが、「生兵法は怪我の元」の戒めを忘れると、危ない、危ない。何とかに刃物という譬(たと)えもありますからなあ。「南西諸島防衛」は本当に大事な政治課題でありまして、自民党も野党や連立相手に気を使いながらも、少しずつ強化に努めていたのですが、今の民主党に属しているベテラン議員の多くは、ずっとそれに反対していた経緯があるのが気になります。

■「武器輸出三原則」は防衛費をGNP1%と勝手に決めた三木武夫内閣が改悪してしまい、日本の防衛装備がどんどん高価になって石破議員が「工芸品」と自嘲するほどの惨状を呈しておりますが、それを結構なことだと喜んでいた政治家が民主党の中にたくさん生き残っております。


武器輸出三原則は、67年に佐藤栄作首相(当時)が
(1)共産圏諸国
(2)国連決議で禁じられている国
(3)国際紛争当事国--への輸出は認めないと国会で表明したのが始まり。その後、76年に三木武夫首相(当時)が「対象国以外にも慎む」と、原則すべての国にまで広げて厳格化した。現在は米国との武器技術供与や共同開発が例外になっている。
民主党の見直し案は、基準を佐藤内閣当時まで緩めた上で、新たに原則を作成。
(1)平和構築・人道目的にのみ完成品の輸出を認める
(2)殺傷能力の低い武器に限る
(3)共同開発・生産の対象は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や韓国、豪などを念頭にした「厳格な輸出管理規制を講じる国」--などの条件をつける。このほか、国連平和維持活動(PKO)に、自衛隊が参加する場合の武器使用基準の緩和なども求めた。…… 

■PKO法案が成立した時、断固として丸腰で自衛官を派遣しろ!と言い張っていた議員が民主党内におりますが、全員が揃って宗旨替えしたのでしょうか?それなら当時の過ちを真摯に反省して謝罪してくれないと辻褄が合いますまいなあ。(1)の「平和構築」という文言は取り扱いが非常に難しいことを民主党の外交・安全保障調査会の皆さんは理解しているのでしょうか?現在、最も「平和構築」が急がれているのはアフガニスタンのはずですが、そこに日本製の武器を売り込む心算なのか?(2)の「殺傷能力の低い武器」を厳密に規定する能力を民主党が持っているのか、非常に不安でもあります。

■それにしましても「共同開発」を議論するのが遅過ぎましたなあ。


たたき台は、8月に菅直人首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」がまとめた提言内容にほぼ沿うもの。しかし、出席者から「武器輸出三原則を変えた場合にマイナスの影響がどう出るか検証すべきだ」と慎重論が出るなど、今月中の取りまとめには流動的な要素も多い。
2010年11月18日 毎日新聞 

■「慎重論」は先送りの追い風になります。一切の責任を取りたくない菅アルイミ首相のことですから、最後は「慎重論」に与することになるのでしょうなあ。

生兵法は怪我の元 其の参

2010-11-18 15:32:21 | 政治
■戦後、自衛隊は合憲か違憲か?という実に不毛な議論が長く続いて、これを専門にする大学教授や研究者まで現われて新聞紙上でも盛んに議論されたことがありました。党是として憲法違反だ!と言い張っていた政党が選挙で大勝したこともありますし、断末魔の自民党に担がれて総理大臣を出すという椿事の起きました。その政党が分裂する騒ぎの中を巧みに生き延びたのが今の首相を顎で使うほどの政治力を持つ官房長官になっているのですから、いよいよ話はややこしくなります。

仙谷由人官房長官は18日午前の参院予算委員会で、自衛隊について「暴力装置でもある。特段の政治的な中立性が確保されなければいけない」と述べた。……事務次官通達に関する質疑のなかで述べた。
ただ、自民党の抗議を受けて、直後に撤回し、「実力組織と言い換える。自衛隊の皆さんには謝罪する」と陳謝した。
2010年11月18日 産経ニュース 

■「暴力装置」の意味と用法を理解している日本人はぐっと減って、今時の大学生にとっては死語も同然でありましょうが、ほんの40年ほど前までは「暴力装置」という言葉を知らない大学生はほとんどいなかったのではないでしょうか?そういう時期に社会主義に夢を懸けて学生運動に熱心に参加した多くの学生の中から、政治家の道に入った人も多いのですが、安保闘争の時代も今は昔の物語で「団塊の世代」の甘酸っぱい思い出になって伝承もされず十分な検証もされずに時が流れてしまったので、政権交代によって政治の断面が露(あらわ)になると地層に埋もれた化石や貝塚のようにひょっこり昔が顔を出すというわけです。

■1917年8月、ウラジーミル・イリイチ・ウリヤノフというロシア人が『国家と革命』という本を出しました。本名よりもペンネームの「レーニン」の方がずっと有名な男ですが、この本は戦後の日本で非常に有名になって中央公論社が出した『世界の名著』シリーズの第52巻レーニンにも収録されておりますし、岩波文庫にも国民文庫にも入っていたので昭和40年代を中心に爆発的に売れました。しかし、今、この本を熱心に読んでいる学生も研究している教授もほとんどいないでしょうなあ。

■この本の中に以下のような有名な一節がありまして、その昔、全文を正確に暗誦できる学生も珍しくなかったとか……。


……国家とは、その社会において経済的に支配的な一階級が、自己の利害を全社会に押しつけ、自らの支配のための「秩序」を防衛し、かくして政治的支配をおしひろげるための機構である。
古代奴隷制国家は奴隷所有者の、封建国家は封建貴族のそしてブルジョア国家は、ブルジョアジーの階級的利害を社会に強制するためのものであった。そこにおいては、自らの特殊な利害を全社会に共通な利害として主張するための、「武装した人間の特殊な部隊」を不可欠とする。警察、監獄、軍隊などの暴力装置が国家権力の本質的な機能を果すものである。そうした特殊な暴力装置の存在こそは、国家が、諸階級の対立を調停したりする、階級対立から独立した機関ではなく、支配階級が、被支配階級を抑圧するためのものであることを証明している。まさに国家こそは、搾取階級が被搾取階級をしぼりとするための道具としての位置をもっているのである。…… 

■重要なのは「警察、監獄、軍隊などの暴力装置が国家権力の本質的な機能」という部分で、確かに武装した組織ですから暴走すれば恐ろしい暴力装置として働いてしまいますが、革命後のソ連は史上最強の警察国家となって一党独裁の政府が思う存分に「暴力装置」を育てて鍛えて縦横無尽に使ったものです。今もその伝統が残っているらしいのですが……。東大在学中に司法試験に合格した仙谷ノーコメント官房長官が、レーニン全集と六法全書のどちらを本気で熟読していたかは不明ながら、優れた記憶力の持ち主であるのは確かでしょうから、前記の一節くらいは今でも暗誦できるのではないでしょうか?

■「三つ子の魂百まで」と申します。若い頭脳に刷り込まれた記憶は簡単には消えませんから、病身で激務に耐えていると思考が混濁・混乱してついうっかり昔覚えたフレーズや言葉がぽろりと口をついて出てしまうのは誰にもあることであります。しかし、総理大臣以上の政治力を持っている人が、「警察、監獄、軍隊など」を暴力装置と呼んで国家を悪と断じる思想を今も後生大事に持ち続けているとしたら、本当の「暴力装置」に変じて国家の柱がへし折れてしまう惧れがありましょう。

生兵法は怪我の元 其の弐

2010-11-18 11:39:54 | 政治
■政治主導は官僚政治の脱却を目的としたものでしたから、末期の自民党政治は人材不足が露骨に見透かされる頼りない閣僚が続出してもいましたし、本当に出来るのならばやって欲しいなあ、とうっかり考えた多くの有権者が迂闊な投票をしてしまって政権交代が実現したのでありました。しかし、官僚をバカ呼ばわりしても実害が出ないのは野党時代だけの特権みたいなもので、政権与党になったら役人の鉄則「遅れず、目立たず、働かず」に則った恐ろしいサボタージュに苦しめられることになるのは必定であります。官邸には情報が入らず総理大臣は初日から何も知らない裸の王様になってしまいますから、元々、何も知らない人が総理大臣になってしまうと目も当てられないことになりますなあ。

■因みに警察も海上保安庁も自衛隊も官僚組織に含まれていますから、これらを敵に回す政権が誕生したら国家は大きく動揺し始めるでしょうし、やがては統治が効かなくなって政府は崩壊してしまう危険がありましょう。


民主党の松崎哲久衆院議員(60)=埼玉10区=が今年7月、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)で行われた納涼祭で秘書が運転する車を呼び寄せる際、空自側の規則どおりの対応に不満を抱き、隊員に「おれをだれだと思っているのか」と“恫喝”ともとれる発言をしていたことが17日、分かった。防衛省幹部や、自衛隊を後援する民間団体「航友会」関係者が明らかにした。入間基地では今月3日の航空祭で、航友会の会長が「民主党政権は早くつぶれてほしい」と発言。これを受け、防衛省は自衛隊施設での民間人による政権批判の封じ込めを求める事務次官通達を出した。松崎氏は会場で会長の発言も聞いており、周囲に強い不快感を示していたため、「納涼祭でのトラブルも遠因になり、異例の通達につながったのでは」(防衛省幹部)との見方も出ている。…… 
松崎哲久さんは立派な閨閥に属し東大法学部と米国ハーバード大で学び、昭和57年(1982年)から自由民主党の総合政策研究所の主任研究員になって、平成4年(1992年)に日本新党の結成に参画して立候補するも落選、その結果に腹を立てて党内で訴訟闘争を起こした後、やっと民主党の議員になれたという優秀な割には苦労を重ねたエライ人のようです。「恫喝」事件が起こった入間市は松崎さんの選挙区の南隣の埼玉9区ですから、「俺を誰だと思ってんだ!」と凄んでみても「知らないねえ」と言われても仕方がないかも?

■分からないのは航友会の会長さんの発言に隊員の中から万雷の拍手喝采が起こったのかどうかという点です。「法律に通じた」官房長官よりも、自衛隊員は政治的中立を徹底的に教育されているはずですから、きっと拍手したい気持ちとぐっと抑えて手を固く握りしめていただろうと想像されます。民主党は文句があるのなら航友会の会長本人に言うべきでしょうし、自衛隊に参加者の言動を制御・制止させようという不純な動機は、最後には国民を武力で押さえ込む恐怖政治へと続いて行きそうで心配です。

■松崎議員はご自信のHPによりますと、現在の役職は『民主党広報委員長代理・民主党政調「文部科学部会」座長・衆議院「文部科学常任委員会」理事・衆議院「倫理・選挙特別委員会」理事』となっておりますから、隣の選挙区で自衛隊員を相手に「俺を誰だと思ってるんだ!」と吼えてみても余り意味が無いような気がしますし、そもそも、文部科学省に関連する仕事をしている松崎さんは何用あって自衛隊のお祭りに出席したのでしょうなあ?隣の選挙区から有権者が参加しているかも知れないから顔を売るために選挙運動の一環としての参加だったのなら、皆が守っている「規則」を自分だけ破って歪んだ自尊心を満足させるような態度は逆効果でしかないでしょうに?!どうして民主党の議員は不自然に偉そうな態度を取るのでしょう?やはり長過ぎた野党暮らしに染まっている人が多いから、急に偉くなったと錯覚しているのでしょうなあ。


松崎氏は7月27日の納涼祭に来賓として出席。帰る際に駐車場から約30メートル離れた場所に自分の車を呼び寄せるよう、車両誘導担当の隊員に要求した。だが、歩行者の安全確保策として片側通行にしていた道路を逆走させることになるため、隊員は松崎氏に駐車場まで歩くよう求めた。ところが、松崎氏は歩行者はいないとして車を寄せるよう指示。隊員が拒否したところ、「おれをだれだと思っているのか」「お前では話にならない」などと発言した。 

■松崎議員は「歩行者はいない!」と運転手に信号無視をさせたり、一方通行を逆行させるような恐ろしい運転を指示しているのでしょうか?自衛隊側には四角四面の「撃たれるまで撃つな」と窮屈で危険な順法精神を強要していながら、自分は簡単な規則さえ守らないというのでは自衛隊員の心に小波が立ちそうです。それが集まって大波になっても知りませんぞ。


別の隊員が松崎氏の秘書が運転する車を逆走させる形で寄せると、「やればできるじゃないか」という趣旨の発言もした。誘導担当の隊員が「2度と来るな」とつぶやくと、松崎氏は「もう1度、言ってみろ」と迫ったとされる。こうした過程で、松崎氏が誘導担当の胸をわしづかみにする場面もあったという。……
2010年11月18日 産経新聞 

■自衛隊の隊員と格闘でもしようとしたのか?相手は「撃たれるまで撃てない」自衛隊だから安心して侮辱しても大丈夫だと思っていたのか?まるで隣国の酒乱暴走衝突船長みたいな話ですなあ。ああ、それで証拠映像を国家機密にしたのか?!あの暴走衝突船の勇姿?は民主党の本性と通じるところがあると誰かさんが思ったのかも。

生兵法は怪我の元 其の壱

2010-11-18 10:43:28 | 政治
■アメリカ合衆国の政治史は、民主党が戦争を始めて共和党が終わらせるという循環があると聞いたことがありますが、日本も誰が言い出したのかは存じませんが二大政党制を目指してドタバタ気味の離合集散がこれからも暫くは続いて行きそうな気配ですから、アメリカに似た循環が始まるかも知れませんぞ。どこか命令口調で不自然な表現も目立つ平和憲法という縛りが効いているうちは、戦争はやらない・やれない国であり続ける宿命ではありますが、未曾有の敗戦・占領時代に憲法が作られてから、朝鮮戦争・東西対立・冷戦・毛沢東の原爆・ソ連崩壊・中国の特色ある社会主義・非対称テロ戦争と世界は大きな歴史のうねりの中で激しく変わって来ましたから、いつまでも丸腰・無抵抗で無手勝流を気取っていられるとは思えません。

■何よりも「戦争」という選択肢が最初から排除されている国の政治家と外交官は、交戦権を当然の権利としている国々で求められている使命が異なりますから資質や能力の点でも違いが目立つようになります。すべての法律の基盤となる憲法を一言一句変えずに死守する!と言っていれば、何らかの見識を持つ政治家と思われるという異様に恵まれた政治風土の中では優秀な政治かも外交官も育たず、国会答弁など「2種類で足りる」と嘯(うそぶ)く大臣が登場することもあるでしょうし、法律のことを何も知らず弁護士出身の官房長官に阿呆呼ばわりされる総理大臣が登場しても不思議はないのでしょうなあ。


防衛省が10日付で自衛隊施設での民間人による政権批判発言を封じる事務次官通達を出したことについて、17日の参院予算委員会集中審議で、自民党の衛藤晟一氏が「言論統制だ」と、北沢俊美防衛相らを強く批判、撤回を求めた。北沢氏は「自衛隊員の政治的中立を確保するためだ」と撤回を拒否した。点 

■大昔、参議院は「良識の府」と呼ばれて政党間の生臭い権力闘争とは一線を画して高尚な政治論議をする場所だとされていたのだそうですが、民党政権時代が長く続く間にいつの間にやら衆議院の「カーボン・コピー」に変質して衆議院の政局騒動のお先棒を担ぐお手軽な道具になってしまい、とうとう「参議院不要論」が語られるまでになりました。今回の衛藤・北沢論戦はとても良識の府とも思えない怒鳴り声の応酬になり、それを野次の騒音が押し包むような凄絶で下品なものだったようです。

■警察組織と海上保安庁からの情報漏洩に怯える民主党政権は、次は本物の「2.26事件」が再現されるのではないか?と自衛隊に対して神経を尖らせているとも言われ出している折に、自衛隊の敷地内で飛び出した再度の「政権交代」を求める声に、誰かさんは心底恐怖を感じたのかも知れませんなあ。


仙谷由人官房長官は17日の記者会見で、「防衛相の責任で必要な対応が取られた」と……「シビリアンコントロール(文民統制)の上から防衛省で規律を保持することは、防衛相の責務だ」と擁護した。……衛藤氏は通達について「憲法に保障された表現の自由に反するゆゆしい事態で菅内閣の隠蔽体質そのものだ」と追及した。
北沢氏は「(自衛隊員の)政治的な中立をどう担保するかが極めて重大だ。そのために粛々と(通達発出を)させていただいた」と撤回を拒否。さらに「簡単に言えば、自衛隊の施設の中で政治的な発言をすることはダメだということだ」と断言した。
衛藤氏は「こんな防衛相に任せておけない」と、北沢氏の辞任を要求した。…… 

■この「辞任要求」は絶叫口調でしたが、そうでもしないと多くの大臣に対する問責決議案やら内閣不信任案やら、国会論戦は喫緊の政治課題を放り投げて政局絡みばかりで国民もうんざりしているところですから、口調を激しくしないと野党第一党としては格好が付かないという事情も分かるのですが……。

■野次と罵声を一身に集めて受けて立った北沢防相の言う「政治的中立性」も今の菅アルイミ内閣にとっては使い難い概念でありましょう。もしも、仙谷ノーコメント官房長官の言う通り、チャイナの酒乱暴走衝突船長を処分保留で釈放したのが那覇地検の独断だったとしたら、これは外交政策への越権介入であると共に「政治的中立性」も失っていると言えるでしょう。さてさて、海上保安庁が研修用に編集・保存していた証拠映像を1箇月以上も経ってから突如として「国家機密」にする誰かさんの決断にも政治的中立性は掛けていましょうし、禁を破って映像を流出させた海上保安官の方が政治的に中立を保って主権者である国民に奉仕しているようにさえ見えるのですから、何かが大きく壊れて狂っているとしか言いようがありませんぞ。


衛藤氏は菅直人首相の任命責任を問うたが、首相はこの場では「正しいかどうかきょう初めて聞いた。簡単に判断できることではないので、(北沢氏)本人から話を聞きたい」と述べたのみだった。首相は同日夜、記者団に「自衛隊が誤解を受けることがないよう注意することは重要だ。(通達は民主党の)おおらかさとは矛盾しない」と述べ、北沢氏を支持した。…… 

■「おおらかさ」とは野放図で無責任で定見の無いことではないはずです。自衛隊関係者だけでなく自衛隊の敷地内に入る一般人も、「民主党、万歳!」「民主党よ有難う」「こんな国に生まれて良かったなあ」などと、隣の二つの国で子供達に無理やり読ませている気味の悪い教科書の文言みたいな発言だけしていろ!という通達は実に恐ろしい底意がありそうです。誰かさんは三島由紀夫の亡霊に怯えているのかも?最近、三島関連の書籍や雑誌が急に目立って増えてもおりますし、「国家機密」で海上保安庁の保安官を追い詰めたように、長年、世界で最も危険な任務を強いられている自衛隊の中にも不穏な空気が伝染して醸成されている可能性は否定できませんから、「誤解」を受けないように自衛隊を抑え付けておかねば安心できないのでしょうなあ。


自民党の石破茂政調会長は「政権批判する人を呼ぶなと次官通達で出すのは国民みんなの自衛隊との考え方に反する」と批判した。
2010年11月17日 産経新聞 

■通達の原因になった発言というのが「民主党政権は潰れて欲しい」という、おそらくは国民の半数以上が賛同する内容だったそうですから、旧ソ連時代に伝えられたブラック・ジョークを思い出すような話です。クレムリン宮殿の前で「ブレジネフ(書記長)の馬鹿野郎!」と叫んだ男が即座に逮捕されて裁判で懲役120年(年数は諸説あり)の判決を受けたという話で、オチは「刑期の20年分は国家指導者に対する侮辱罪で、あとの100年分は最重要の国家機密の漏洩罪」だったというものでした。

有言実行内閣の実行力 其の弐

2010-11-17 15:55:57 | 政治
■『週刊現代』11月27日号に、「馬淵氏にしてみれば、八ッ場ダムにしろJAL再建にそり、前原氏がやったのは全部中途半端な思いつきばかりで、自分はその尻拭いをしていると思っている」という民主党中堅議員の証言を紹介しております。「中途半端な思いつき」は前原大臣の専売特許ではないのでは?

馬淵澄夫国土交通相は6日午後、政府が建設中止を表明している八ツ場ダム(群馬県長野原町)について、「私が大臣のうちは『中止の方向性』という言葉には言及しない。予断を持たず(ダムの)検証を進め、その結果に従う」と述べ、政府方針を撤回する考えを示した。また、馬淵氏は検証作業を来年秋までに終了させる意向も示し、八ツ場ダム建設が民主党政権下で再開される可能性が出てきた。……ダム建設をめぐっては、前原誠司前国交相が就任時に中止を表明していた。
2010年11月6日 産経ニュース 

■建設決定→反対運動→説得交渉→苦渋の賛成→建設中止→中止の中止。居住地が水没するダム建設を急に中止したら何が起こるか?おそらく前原前国交大臣は一度も考えたことは無かったのではないか?「何度でも地元に来る」と言った後、1度も現地に入らず外務大臣に横滑りして後始末は後任の馬淵大臣に丸投げ。前原・馬淵両氏は、本気で次か次の次の総理大臣に就任するつもりになっているという気味の悪い噂があるようですが、何も出来ない菅アルイミ首相の後に「中途半端な思いつき」が得意な首相が出てくると大変な事になりそうです。


政府は16日、幼稚園と保育所を統合する「幼保一体化」計画に関し、幼稚園と保育所を存続させる案を含む5案を提示した。今月1日に10年後に幼稚園と保育所を廃止し、平成25年度に新設する「こども園」への完全移行案を提示したばかりだが、幼稚園や保護者の関係団体などの反発を受け、2週間余りで事実上撤回した。…… 

■待機児童問題を一挙に解決するばかりか、雇用も増えるし少子高齢化問題も解決されるとかで「一石三鳥だ!」とニヤニヤ得意顔で話していたのは菅アルイミ首相でありましたが、早くてもその三鳥は10年後にならないと得られないという変な話ではありましたが、案の定、またまた前言撤回であります。


……5案とも、こども園に移行する施設に対して財政支援を重点的に配分し、幼保一体化の実現を目指すことでは一致している。一定の要件を満たした施設は指定施設となり、単一の仕組みで公費負担の対象となる。幼稚園のみ現行制度を存続する場合には私学助成を存続させる。16日に開かれたWTでは、こども園への完全移行案に「変化が急激すぎる」と批判が集中。幼稚園のみ存続する案も幼保一体化の理念に反するとして否定的な意見が多かった。逆に幼稚園と保育所を存続させ、段階的に幼保一体化を図る案を支持する声が相次いだ。
2010年11月16日 産経新聞 

■「政治主導」で官僚ばかりか専門家からの意見も聞かずに「一石三鳥」とぶち上げてしまうのが民主党政権の悪い癖。それを幹事長代理も自覚しているのだそうです。


民主党の枝野幸男幹事長代理は14日午後、さいたま市内の講演で、菅政権の支持率が低迷している状況について、「与党になって、こんなに忙しいとは思わなかった。『政治主導』とうかつなことを言い大変なことになった。今、何よりも欲しいのは、ゆっくり考える時間と相談する時間だ。ゆっくり考え相談して、皆さんの声に応えないといけない」と釈明した。……「この政権がどこに向かっているのか分からない。漠然とした不安が不信につながっている。政権が国民意識とずれていると受け止められているのは、かなり深刻だ」と危機感をあらわにした。……
2010年11月14日 産経新聞 

■寿司職人だった法務大臣も地元の支援者を前にして本音丸出しの悪い冗談を言ったとて国会は大騒ぎしているようですが、この枝野幹事長代理の発言も相当にブラックであります。野党の癖が抜けないとも言えましょうが、自分が政権与党の幹事長として参議院選挙を取り仕切り大惨敗を喫したのに幹事長代理という閑職?に就いて惨敗の責任を中途半端に取ったことにして、代表・首相まで責任論が飛び火しないように姑息な対応をしたのも、「ゆっくり考える時間と相談する時間」が無かったからなのでしょうなあ。


北沢俊美防衛相は16日午前の衆院安全保障委員会で、民主党の枝野幸男幹事長代理が……「『政治主導』とうかつなことを言い、大変なことになった」と述べたことについて、「発言は承知していないが、閣内にもいた人物がそういうことを言ったことがうかつだ」と批判した。
2010年11月16日 産経新聞 

■枝野幹事長代理の「うかつ」発言も、北沢防相の「うかつ」発言も、どちらも正鵠を射ているのに、どちらも間違っているような印象を受けるのは何故でしょう?「複合の誤謬」という便利な言い方もありますが、民主党政権は発足以来ずっと同じ誤謬が続いているようなものです。正確に申せば「寄り合い所帯の誤謬」なのでしょう。野党時代から何度も出されたマニフェストは、どれも同様の「誤謬」が寄せ集められていたと考えれば、今の政治混乱の原因は簡単に分かるのではありますが……。
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有言実行内閣の実行力 其の壱

2010-11-17 15:22:50 | 政治
■裁判員制度が始まって初めて「死刑判決」が変な付帯意見付きで出たそうです。拙速で乱暴に施行された問題の多い制度なのに制度自体を見直し、或いは廃止するという議論がまったく出て来ないまま、とうとう一般市民が死刑判決を下すという恐ろしい場面が現実に起こったわけであります。マスコミの扱い方は、この日が来るのを残酷な期待感を持って待ち構えていたような印象があります。また、もしかすると国民の多くが必要と考えている死刑制度を廃止するために、一般市民を裁判に引っ張り込んで不快な重圧を加え続け、最後に「死刑制度反対!」の国民世論が湧き上がるように仕向けるための企みだったのではないか?とも思える実に嫌な感じもしますなあ。死刑まで含めた量刑判断を国民に強いる現行制度を国民の多くが支持しているのでしょうか?

■裁判員制度が国民全員で重大犯罪を自分の問題として考える目的で行なわれているのなら、菅アルイミ首相が所信表明演説で表明した「国民全員が外交を考える」という奇妙な話に似ているようにも思えます。どちらも専門の裁判官は不要だとか、外交官は無能だという論理的な結論を素朴に回避している点も似ていますが、一方は検察が偽造したかどうか別として裁判員は捜査資料を全部見られることになっていますが、外交の方は国民全員が考えようと思っても外交機密はまったく見られず、官房長官の一言で映像記録も見られなくなるのですから、その点はまったく別物。

■「みんなで……」の一言は便利ですが、責任の所在を掻き消してしまう麻薬的な効果があることを忘れてはなりますまい。無責任な思い付きを羅列した選挙用マニフェストも、選挙中の熱狂が終わって政権を担当するようになると、たちまち麻薬的な効果が失せて悪い酒を飲み過ぎた翌日の不快な二日酔いみたいな悪影響だけが残るもののようです。今の政治に対する不快感の正体はこれではないか?と思える昨今であります。


仙谷由人官房長官は17日の記者会見で、防衛省が自衛隊施設での民間人による政権批判発言を封じ込める事務次官通達を出したことについて理解を示し、言論封殺には当たらないとの認識を示した。……通達は、3日に航空自衛隊基地で開かれた航空祭で、自衛隊を後援する民間団体会長が、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件での政府対応のまずさを指摘して、「民主党は早くつぶれてほしい」とあいさつしたことをきっかけに出された。会長の発言を、自衛隊法などの「政治的行為の制限」違反との誤解を招く「極めて不適切な発言」と断じているが、憲法が定める表現の自由との整合性が疑問視されている。
2010年11月17日 産経新聞 

■尖閣衝突事件の映像をAPECでの日中首脳会談実現のために、起訴も裁判も不可能なのに「捜査資料」だから機密だ!として封印した仙谷ノーコメント官房長官ですから、法廷手法で「自衛隊法」を盾にとって自衛隊の口を封じたくなるのも無理はない事情があるのかも?と言うのも『週刊ポスト』11月26日号に「自衛隊にも不満が鬱積」という小見出しを含めた特集記事が掲載されていたからです。同記事は酒乱暴走船長の拘留期限が切れる前日の9月28日に、政治結社の日本青年社が漁船をチャーターして尖閣諸島海域で日本の主権をアピールする行動をしようと計画したのに、首相官邸からの「中止命令」が出て協力する漁船が係留ロープを外した時点で拘束すると海上保安庁が出航を制した事件を取り上げております。この「中止命令」が出たのは誰かさんがチャイナの船長を「処分保留で釈放」すると決定したタイミングと重なっているとか……。


……元内閣安全保障室長の佐々淳行氏は……「国民の大多数が見たいと思っていた映像を情報統制したのは仙谷官房長官です。さらに彼は船長を釈放したのは地検だ、ビデオを流出させたのは海保だと、官邸から遠くへ遠くへ問題を誘導しようとした」……今回流出したビデオは、海保職員が撮影した4本のテープのうち、2本を編集したものだ。中国人船長らを逮捕するシーンは残り2本に収められている。……そこに「中国人船長を逮捕する際に、海保職員が海に落下し、命を落とす危険にさらされた」シーンが収められているとの情報もある。…… 

■この「落水」シーンにチャイナの船員が海保職員をモリで突いている恐ろしい場面もあるとの噂まで流れているようで、命懸けで国境・領海を守っているのは自衛隊も同じで、「相手に撃たれないと攻撃できない」危険極まりない任務に耐えている隊員の中には「田母神論文事件」に関する怒りが充満していると記事は述べておりまして、昨年12月に沖縄で開催された自衛隊式典に民主党参議院議員だった喜納昌吉さんが挨拶に来るというので隊員やOBがボイコット運動を始めて関係者らしき人々から喜納さんの事務所に抗議電話が殺到して出席を断念した話も掲載されております。

■さらに同記事には警視庁公安部の内部資料114点の漏洩事件も、現政権に対する一連の「クーデター」もどきの事件に含まれているとの分析が紹介され、次に民主党政権に対する「反抗」が暴発するのは自衛隊かも?という結論になっているのでした。人騒がせな週刊誌の記事だと片付けられない深刻な危機感が菅アルイミ内閣の中に広がっているのと考えてもよさそうですなあ。

石にかじりつく菅首相 其の弐

2010-11-11 15:53:43 | 政治
■既に映像記録を流出させた御本人が名乗り出てしまったのですから、犯人探しは終了かと思いきや、予想に反して取調べが難航しているとか……。

……漁船衝突事件のビデオ映像流出について、政府は「わが国の危機管理の質の低下が問われる」(北沢俊美防衛相)と犯人捜しに躍起だ。だが菅政権は、中国人船長釈放の責任を捜査当局に押し付け、ビデオの一般公開を拒み、国民の知る権利をないがしろにしてきた。……「テープ自身、何か底意があるのかなと思う」仙谷由人官房長官は(11月)5日の記者会見で、映像投稿者がハンドルネーム(通称)に「sengoku38」と、自身の名前を使っていたことに不快感を示した。「38」。これは「左派」として仙谷氏を揶揄するものと受け取られた。民主党側は「(流出は)倒閣運動だろう」(幹部)、「政治的テロだ」(中堅)と危機感を強めている。 

■「5年、10年後に評価される」と根拠のない空元気を出して見せた菅アルイミ首相ですが、本気で言っているのなら鳩山サセテイタダク前首相に負けない自己陶酔癖を持っているのかも知れませんなあ。前言撤回の回数も、間も無く前首相を追い抜きそうですし、唯一の違いは首相よりも目立つ官房長官を任命してしまった事だけ。


……現場で苦闘している地検や海保の職員が政府の対応に不満を抱き、義憤にかられて映像を流出させていたことが分かったら、批判はどこに向かうだろうか。言い当てたのは石原慎太郎東京都知事だ。「これは内部告発だ。みんな知りたいことなんだから」。みんなの党の渡辺喜美代表はさらに言い切る。「菅政権の内部崩壊だ」 

■今更「内部崩壊」と言うのは、まるで映像流出事件が起こる前には立派な政権が存在して機能していたことになりますぞ。それはちょっと褒め過ぎかも?石原都知事の発言はマスコミ界に対する苦言とも解釈されましょう。処分保留で酒乱船長を釈放帰国させてしまった段階で、映像記録は司法が秘匿しておく意味が無くなったと激しく言い立てて「国民の知る権利」の錦の御旗を押し立てて大キャンペーンを張るもよし、密かに手を尽くして映像を入手して「情報源は明かせない」と常套句を駆使して政府を追い詰めて、全面公開を決意させるという仕事をすべきだったのではないでしょうかな?何者かが流したユーチューブ映像を無断で横取りする形で、何度も何度も使い回して商売道具にしておいて、感謝の言辞はまったく無いまま犯人探しの片棒を担ぐ姿勢は頂けませんでしたなあ。これを「恩を仇で返す」と申します。


仙谷氏は5日の記者会見で、政府内部からの流出が判明した場合の菅直人首相や仙谷氏自身の責任について、「全くないとは言わない」と述べた。犯人捜しの結果、柳田稔法相や馬淵澄夫国土交通相の進退問題に発展することもありえる。……官邸内では「衛星通信で飛ばした映像データを北朝鮮に盗まれた」という可能性を指摘する声もあり、分析は混乱を極めている。……
2010年11月5日 産経ニュース 

■北朝鮮説まで出て来るようでは、いよいよ情報収集・分析能力を持たないことを白状しているようなものでしょう。権力継承の微妙な時期の北朝鮮は食料・エネルギー・資金をチャイナにおねだりしている真っ最中なのに、どうして酒乱船長の暴走衝突行為を糾弾する論より証拠の映像記録を日本国民の知る権利を守るために流出させねばならないのか?それに秘中の秘の傍受能力を自ら公表することにもなりますから、仮にデータを盗んでいたとしても流出などさせないでしょうに!?本当に今の官邸内には、こんなトンデモない推測をして菅アルイミ首相に耳打ちしている愚か者がいるのでしょうか?危ないですなあ。

23:42

……ロシアのメドべージェフ大統領が1日、旧ソ連・ロシアの国家指導者として初めて北方領土の国後島を訪問した。日本政府は事実上の対抗措置として河野雅治駐露大使の一時帰国を決めたが、ロシア側はラブロフ外相が大統領の色丹、歯舞両島訪問計画を明らかにするなど矛を収める気配がない。
11月1日に発表された産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、菅直人内閣の支持率が政権発足後最低の36.4%まで下落。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件など政府の外交・安全保障政策を「評価しない」との回答は71.8%に達した。
……相次ぐ「外交無策」と支持率低迷に政府を支える与党からも厳しい指摘が出始めた。西岡武夫参院議長は2日の記者会見で、「政府はもう少し腰を落として、大変ご無礼だが、じっくり基本のことを考えてそれからいろんなことを決めてもらいたい」と政府の外交姿勢を批判した。 

■菅アルイミ首相が「石にかじり付いて」いる間に、韓国の軍隊が噛り付いている竹島に続いて尖閣諸島周辺と北方領土が齧り取られてしまうのではないか?本当に心配になって来ますが、11月1日の段階で、まだ3割の人達が菅アルイミ内閣の「外交・安全保障政策」を或る程度は評価している?!というのは驚くべき事であります。その後の世論調査でも民主党政権の支持率はじりじりと下がり続けており、一部では「30%割れ目前」という数値も出たようです。俗に「一つの嘘をつくと百個の嘘をつくことになる」などと申しますが、柳腰外交という「大嘘」をついてしまったばかりに、菅アルイミ内閣は国会の場で小さな嘘をどんどん積み上げているようです。いちいち取り上げる気にもなりませんが、自分の首を締め上げていることだけは確かだと思われます。


「今回ロシア大統領が北方領土に対してとった行動は、前に1回来るっていわれて、時間があるんですよね。その間、何をしておられたのか。そういう時間があるのに何もしなかったとすれば、政府として怠慢ではないか」民主党の小沢一郎元代表も3日、インターネットサイト「ニコニコ動画」に出演し、尖閣、北方領土の政府対応をみていてはらはらすると批判し、こう述べた。「中国に対してもロシアに対しても政府はきちんと自分の主張をしないといけない……」 

■「一兵卒」になったクラッシャー小沢は神出鬼没で、岡田幹事長と隠れん坊ごっこを楽しんでいるようですが、政権交代の功労者たる自分を幹事長から引きずり降ろして脱小沢のパフォーマンスに酔い痴れている現政権に対して、いよいよ牙を剥き始めた気配がありますなあ。発言内容は既に民主党が分裂してしまったか、別の政党が出来ているかのようです。


「自民党も、どこの国に対してもたいしたチャンネルはあったわけじゃないと思う。ただ、長く政権をやっていたからいろんな意味でいろんな人を知っていたのは事実だろう。それに反して民主党は、(政権獲得が)初めてなので知らないということは事実だ。ただ、今まで関係があったか、ないかということも背景として大事だが、自己主張することは何も初めての人だって、国と国を代表してやるんだからそれは堂々とやっていい」
2010年11月6日 産経ニュース 

■衝突事件が起こる前、民主党代表選挙期間中に自分が北京で相手国首脳に対して「尖閣は日本の領土だ」とびしっと言って来たと明言したクラッシャー小沢前幹事長ですから、この際、仙谷ノーコメント官房長官は、かつての野中広務・自民党幹事長を真似て「悪魔とでも手を結ぶ」「小沢さんに平伏して」とでも言って貰って一肌脱いでくれるように頼み込むしかないかも?でも「政治とカネ」のパフォーマンスでしか支持率の回復は望めそうにありませんから、菅アルイミ首相としては「石に齧り付き」仙谷官房長官の背中にしがみ付いて総理大臣の椅子に抱き付いているのが生き甲斐なのでしょうなあ。

■ロシア外交で活躍した新党大地の鈴木宗男代表は「外交に興味がない、苦手なのも分かるけれど、それではすまんでしょう」と心配しているそうですが、下手に興味を持って乱暴なことをやり続けた前の首相も困りますし、何も知らない未経験者の市民運動出身の総理大臣でも困ります。それよりもっと困るのは首相の仕事を全部横取りして内政も外交も取り仕切っている変な歴史観を持った官房長官が跳梁跋扈していることでしょうなあ。


……横浜APECプレスセンター内に作られた展示ブース「JAPAN EXPERIENCE」を内覧し……首脳会議をボランティアとして支える女子高校生らからもてはやされ上機嫌の仙谷氏。「若い高校生に大変、もてて、気持ちのいい」と感想を述べると、神奈川県の松沢成文知事が「今、日本で一番の有名人だから」とよいしょ。すると、仙谷氏はよほどうれしかったのか、「いやあ、もう、小沢なき後の、なんか、悪い…(政治家といわれてますから)」と言いかけたところで記者団に「あ、いまのは書かないでね」と口をつぐんで苦笑いした。
2010年11月6日 産経ニュース 

■クラッシャー小沢と仙谷ノーコメント官房長官との共通項は見つけ難いのですが、御本人は「有名人」「悪人」という共通項があると考えているようです。どうせ有名になるのでしたら、少しでも国益を資することで名を売って欲しいものです。自分のスケールが小さ過ぎることを認めたくないばかりに、手に余るような大きな課題を乱暴に扱って蛮勇を奮って見せるのは止めて欲しいのですが、民主党内に仙谷ノーコメント官房長官を制するだけのキャリアや実力のある政治家が居ないという事実が反映しているのでしょうなあ。


馬淵澄夫国土交通相は6日午後、政府が建設中止を表明している八ツ場ダムについて、「私が大臣のうちは『中止の方向性』という言葉には言及しない。予断を持たず(ダムの)検証を進め、その結果に従う」と述べ、政府方針を撤回する考えを示した。……検証作業を来年秋までに終了させる意向も示し、八ツ場ダム建設が民主党政権下で再開される可能性が出てきた。……ダム建設をめぐっては、前原誠司前国交相が就任時に中止を表明していた。
2010年11月6日 産経ニュース 

■前の首相が「辞めるのを止める」と言い出す政党ですし、現首相も「消費税を上げる……議論は止める」と吐いた唾を飲み込んでしまうし、健忘症の官房長官は失言を繰り返して取り消した回数も分からないくらいですから、マニフェストに羅列してあった項目の一つがまた消えることになろうと、もう誰も驚きませんし腹も立てないでしょう。要するに国民が相手にしなくなっているわけで、前の首相が辞める時に「国民が聞く耳を持ってくれない」と無責任に嘆いた事態が、再び目の前に迫りつつあるということなのかも知れません。

石にかじりつく菅首相 其の壱

2010-11-11 14:18:34 | 政治
■最後のブログ記事を書いてから、間も無く10日になりますが、この間、呆れ果てて文章化する気にもならない菅アルイミ内閣の迷走が悪化し続け、さらにマスコミ各社も律儀に付き合うかのように腰の定まらない報道ぶりでありました。菅アルイミ首相にとって、議長役を務めるAPEC会議を形式的にでも大成功させることが最優先だという薄ら寒い日本政府の実態が鮮明になったのは確かなのですが、そのためには形振り構わずどれほどの国益を損なおうと、国民の生活が混乱しようと、一向に構わないという奇怪な覚悟ばかりがギラギラと不気味に輝いているようでありますなあ。

■数日前の国会で本音がポロリと菅アルイミ首相の口から転がりだしたようです。


菅直人首相は8日の衆院予算委員会で……「私自身、どこまで頑張りきれるかわからないが、石にかじりついてでも頑張りたい」と述べ、引き続き政権を担う意欲を表明した。……「4年間の衆院任期をメドに(2大政党の)一方の政党が頑張り、4年後の解散・総選挙で継続するか国民の信を問う。そういう慣例になることが望ましい」と語った。……米CNNテレビでのインタビューに応じ、沖縄県・尖閣諸島沖での漁船衝突事件に関し、「5年、10年後に振り返った時、自分の内閣が冷静に対応したことは、評価されると確信している」と語った。
2010年11月9日 毎日新聞 

■「石にかじりついても」首相の座にかじり付いて、一体、何をしようと言うのでしょう?尖閣衝突事件の扱い方を見れば、何となくこれからの数年間に何が起こるか予想は付くような気もするのですが……。凶悪酒乱の暴走船長を釈放して夜間は閉鎖されている石垣空港をチャーター機に使わせ、御丁寧に給油サービスまでして送り返す一方で、事件発生後10日も経って捜査も裁判も不可能になっているのに、唐突に現場で撮影された映像記録を捜査・裁判の資料だから守秘義務の対象だ!と支離滅裂な決定を、どうやら法律で規定された手続きも踏まずに仙谷ノーコメント官房長官の一存で決めただけの話を振りかざして実直で優秀なベテラン保安官に、国家機密漏洩の行動を決意させてしまうまで海上保安庁を追い込んで、APECに胡錦濤国家主席が御出席下さるとの有難い思し召しに答えるように、天下の大罪人に仕立てて生贄として差し出しそうな勢いであります。

■元々、民主党政権には機密情報を取り扱う能力など最初から無かったことは、北方領土にロシアの大統領が足を踏み込んだ事件からも明らかになってしまいました。


一時帰国した河野雅治駐ロシア大使がメドベージェフ露大統領の国後島訪問について報告した。これに対し、菅直人首相は「情報収集をしっかりしてほしい」と注文をつけた。……大使は、訪問について「大統領が国内向けに指導力を誇示する狙いがあった」と説明した。だが、それはまさにロシアの言い分だ。……日本外交の「目と耳」である現地大使館は、ロシアが菅政権の弱体化につけ込み、強硬姿勢を強めているからこそ、情報収集を怠らず、必要なら菅首相を説得してでも対抗措置をとるべきだった。 

■辞表でも出すのかと思ったら、大使閣下はロクな情報も報告できないまま、何事もなかったかのように飄々と任地のモスクワに戻っていたそうですなあ。日本政府が任命する大使という職業は、何とも気楽な商売のようです。不適任者として交代させるのが筋でしょうが、少なくとも「注文」よりも厳しい言葉で叱責して日本の怒りを表わすべきだったのではないでしょうか?北方領土問題を抱える対ロ外交の中心で働いているはずの大使に向かって「情報収集してね」と注文するのは、消防署長に「火事が起こったらちゃんと消火してね」と言っているようなものです。そんな馬鹿馬鹿しい茶飲み話をするだけだったら、税金を使って往復旅行させなくても良かったかも?それこそ仕分け対象の「無駄遣い」でしょう。


……さらに、大統領の歯舞群島と色丹島への訪問計画について、仙谷由人官房長官は「いちいちコメントを加えるほどのことはない」と述べ、重大な問題を極めて過小に評価した。……メドベージェフ氏が9月29日、いったん訪問を中止した北方領土に「近いうちに必ず行く」と言明した際も危機感は薄かった。ある外務省幹部は「常識的に考えれば(訪問は)ないだろうと判断していた。結果として間違えていた」と告白した。 

■自分達が国際情勢を無視した非常識な憲法を後生大事にしている立場を採っていることを忘れて、「常識的に考え」て外交をしているのか?尖閣衝突事件の幕引きは「常識的」だったのか?日米安保体制を揺るがして沖縄から米軍基地を蹴り出して、正体不明の「東アジア共同体」を夢見て東シナ海を「友愛の海」にすると妄言を吐く首相が表われ、その次の首相は尖閣諸島がどこの国の領土なのか分からないような超法規的な幕引きに熱心なのですから、ロシアにしてみれば「招待状」を受け取ったも同然でありましょう。


戦後65年の今夏、日本が降伏文書に調印した9月2日を事実上の対日戦勝記念日にロシアが制定した際も、日本の外交当局はロシアで進行する歴史歪曲の動きに強く抗議することすらしなかった。情報収集力と分析力を向上させ、領土返還に向けた戦略の再構築をしなければ、日本の対露外交は今後も敗北を重ねることになろう。
13日、横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が始まる。傍若無人に北方領土に足を踏み入れるロシアの首脳とは会談してほしくないというのが多くの国民の感情だろう。首脳会談をするなら、国際信義に反するロシアの背信行為を厳しくただすべきだ。それもできないのなら、首脳会談はしない方がいい。
2010年11月7日 産経ニュース 

■国際信義上は議長国として会議を成功させねばなりますまい。しかし、オプションの首脳会議は日本の外交戦略と都合によって選択すべきものですから、こちらからお願いして開く必要はまったくないはずです。逆に「首脳会議の開催は難しいぞ」と先手を打っておくのが菅アルイミ首相のお仕事だったのではないでしょうかな?

首相の留守には何かが起こる 其の壱拾伍

2010-11-02 14:03:44 | 政治
 ■しかし、時は流れてゴルバチョフ時代になりまして、ソ連崩壊直前の1991年5月16日に「中ソ国境協定(中露東部国境協定)」が結ばれ、1994年には中央アジア地域の「中露国境協定(中露西部国境協定)」が結ばれ、とうとうプーチン時代には2004年10月14日の「中露国境協定」で長かった国境問題が最終的に決着したのでした。このように多数の死傷者が出る軍事衝突やら核戦争まで心配されるような深刻な対立を通して、相手の領土に対する意志と根性を見極め合うことでしか国境問題を話し合う方法を知らない国が、日本の御近所に存在しているというわけなのであります。

……ロシアは日本の反応を注意深く観察している。ここで日本人がおとなしくしているならば、「ロシアと日本は、東京宣言(1993年10月)において北方四島に関する帰属の問題を解決して平和条約を締結すると約束したが、4島を日本に返還するとは約束していない。第二次世界大戦の結果を変更させることはできない。ロシアが4島、日本は0島で、帰属の問題を解決し、平和条約を締結しよう」などと平気で言い出してくるだろう。いま、ただちにロシアの暴挙に対して激しく拳を振り上げることが必要だ。おとなしくしていてはロシアからなめられるだけだ。…… 

■平和憲法は決してグローバルスタンダードではないという事が重要でしょう。北京政府に対してもロシアに対しても、崇高な平和憲法の精神を語っても聞く耳持たないばかりか、獰猛な獅子の前にひ弱な兎が飛び出して行くようなもので、「非戦の誓い」を「侵攻の招待」と考える相手が存在する現実を認めるべきなのでしょう。しかし、佐藤氏が提唱する如く「激しく拳を振り上げる」にしても、竹島問題に言及した『防衛白書』の公表を遅延させ、尖閣衝突事件の真相ビデオを機密扱いにしている現政権の体質を考えますと、国民の怒りはロシア帝国政府よりも前に菅アルイミ内閣の外交政策に向けられて噴出するのではないでしょうか?

■北方領土事件の直前に行なわれたマスコミ各社の支持率調査では4割~3割の国民が今でも我慢強く現政権を支持しているようですが、尖閣ビデオ非公開に続いて北方領土事件の対応の影響が出る次の調査が気になるところであります。


前原誠司外務大臣がベールイ駐日ロシア大使に抗議するくらいのことをロシアは織り込んでいる。菅直人首相が政治主導で「今回の事態について大使から直接報告を受けたい」と言って、モスクワの河野雅治駐露大使を即時呼び戻すことだ。そうすれば、ロシア側も事態の深刻さを認識する。それとともに、日本外務省の対露インテリジェンス態勢を抜本から立て直し、今回のような分析ミスによる不祥事が繰り返されないようにすべきだ。
2010年11月1日 産経ニュース 

■外務省内の暗闘によって休職の身に追い込まれた佐藤氏に、政権交代した民主党政権が過去のシガラミを乗り越え「三顧の礼」を尽くして御復帰を願い「対露インテリジェンス体制を抜本的に立て直す」大仕事をお任せする……などという事は無理なのでしょうなあ。菅アルイミ首相が眠そうな顔で「遺憾です」などと国会で寝言を繰り返している間に、どんどん日本の外交は袋小路に追い込まれて行くようであります。佐藤氏が提案する「駐露大使の召還」は即刻実施すべきでしょうが、いっそのこと「領土問題で多忙」を理由にしてAPEC会議の開催を延期してしまったら如何でしょう?仙谷ノーコメント健忘症官房長官にとっては尖閣諸島の領土問題よりも胡錦濤国家主席のAPEC参加が大事だそうですが、それでは政治的に本末転倒でありましょう。

■尖閣衝突事件の真相ビデオを機密扱いにして隠し通そうと無駄な足掻きをしているのも、APECを大成功させるためだという自分の発言を忘れてしまった仙谷ノーコメント官房長官の大いなる勘違いと、それに乗せられている何も知らない何も出来ない菅アルイミ首相の妄執から出て来た話のようでが、何とかAPEC前に真相ビデオを一般国民に対して公開し、まずは尖閣衝突事件で国民の怒りを沸騰させてから、北方領土と竹島へと政府を押し動かして行かねばならないでしょう。

■出来れば一刻も早く総選挙を実施し、政権交代を反省している国民の意志を確認して政界再編と再度の政権交代、そして憲法改正へと向かわねば日本の政治は日本を滅ぼしてしまうような気がしますなあ。

首相の留守には何かが起こる 其の壱拾四 

2010-11-02 13:46:33 | 政治
■以下に産経新聞に寄稿された佐藤勝氏の文章から抜粋します。

……メドベージェフ露大統領の国後島訪問は戦略的によく練られたものだ。ロシアは、事前にこの訪問についてシグナルをいくつも出してきたが、日本外務省は「メドベージェフ大統領の北方領土訪問はない」と分析を誤った。今回の事態について、外務省のインテリジェンス能力を抜本から点検する必要がある。……訪問の目的を一言でいうと「北方領土の脱日本化」だと筆者は見ている。過去に日本外務省は、人道支援、ビザなし交流などによって、北方領土の日本化を進めていたが、それを逆転させるということだ。…… 

■小泉政権の時代に「伏魔殿」の外務省内で勃発した権力闘争によって罪を着せられて鈴木宗男議員と一緒に追い出された佐藤氏にとっては、十分に予想された悪夢でありましょう。佐藤氏は鳩山政権時代末期の日韓交渉において竹島問題を意図的に避けた点を問題にして、「竹島で譲れば北方領土が危ない!」とラジオ番組で警鐘を鳴らしていましたなあ。


……大統領は地熱発電所を訪れ、「これは小さな発電所だが、もっともエネルギー効率がよい」と発言した。日本は北方四島の住民生活を支援するためにディーゼル発電機を供与し、事実上の発電所をつくった。それにより、日本政府は北方四島住民の日本への依存度を高めようとした。今後は、ロシアが自前で電力を調達するので、日本には依存しないという意思表示を大統領が行ったと筆者は見ている。また、大統領は、現在4チャンネルのテレビ放送を「20チャンネルにする」と約束した。国後島のロシア系住民は日本のBS放送を見ている。このような状況をロシアのテレビチャンネルを20に増加させることによって変化させることをメドベージェフ大統領は意図している。さらに、「ここでは(携帯電話の)通信がどこでも通じる。もちろん日本製でない」と述べた。電力、テレビ、通信において、日本の影響力を排除するというロシア国家としての意思をメドベージェフ大統領が表明したのだ。…… 
■電力・マスメディア・通信の網を北方領土にすっぽりと掛けて、1990年代にモスクワに見捨てられ日本からの支援が身に染みていた住民の心を引き戻そうとしているということです。外務官僚の悪意あるリーク情報が国会で共産党某議員に使われ「ムネオ・ハウス」がマスコミに面白おかしく取り上げられた頃に、既に日本は外交的に敗北していたのかも知れませんなあ。


尖閣諸島問題をめぐる中国の激しい反応に対して菅直人政権が及び腰になっているすきにつけ込んで、ロシアは北方領土における不法占拠を固定化しようとしている。北方四島が係争地であることについては、日露両国政府が公式に認めていることだ。それだから、これまでロシア大統領が北方領土を訪問することはなかった。……そのような行為をすれば、日本が激しく反発し、第三国にも働きかけるので、その対応に消耗し、結果としてソ連の国益を毀損すると考えたので、ソ連は北方領土に対する静謐戦術を採用したのだ。 

■尖閣衝突事件の前に竹島問題の回避という大間違いを犯していますから、日本は西・南・北の順に領土問題で敗北し続けていることになりましょうなあ。かつては日米安保体制に加えて中ソ対立もありましたから、下手をすれば日米中に韓国を加えて敵対されたら困るとソ連が考えた時期がありましたし、ソ連崩壊後は北方領土だけでなく樺太やシベリア東部にも日本の資金を求める声が高まっていまして、バブル時代には「北方領土を買い取る」案も真面目に語られたこともありましたなあ。


ロシアはソ連と異なり、共産主義に基づく世界革命の野望は持っていない。ただし、ロシアは帝国主義国だ。まず、相手国の立場を考えずに自国の要求を最大限に表明する。これに対して、相手国がひるみ、国際社会も沈黙するならば、ロシアはそのまま権益を拡大する。相手国が激しく反発し、国際社会からもひんしゅくを買い、結果としてロシアの国益が毀損されるような状況のときにだけ、妥協し、国際協調に転じる。どうも日本の外務官僚には、ロシアが帝国主義国であるという本質が見えていないようだ。…… 

■ロシアが領土問題を解決した代表的な例は中ロ国境協定でありましょう。1956年2月のソ連共産党第20回党大会でニキータ・フルシチョフが行なった秘密報告「スターリン批判」から始まる中ソ対立の歴史の中で、原爆製造技術を巡る血生臭い駆け引きの後、1969年3月2日に、極東ウスリー川のダマンスキー島(珍宝島)で、ソ連側の警備兵と中国人民解放軍兵士が軍事衝突を起こし、中国側は800人も死亡する大事件となりまして、当時は「毛沢東の原爆」が完成していましたから、1962年のキューバ危機に匹敵する核戦争の恐怖が世界中に広まったのでした。何せ毛沢東同志は「原爆で中国の半分の3億人が死んでも、残り3億人が生き残り、何年か経てば6億人となり、もっと多くなる」と放言する人物でしたからなあ。

首相の留守には何かが起こる 其の壱拾参 

2010-11-02 13:44:14 | 政治
■テレビ朝日が10月30日の16:30から放送した『報道発 ドキュメンタリ宣言』にはちょっと驚かされました。テーマは『石井議員殺害 実行犯が語る“真相”と“黒幕”』でなかなかの力作と申せましょう。謎の多い朝の刺殺事件から8年、記者が文通と面会を重ねて引っ張り出した黒幕の存在やら3000万円と1500万円の2度に渡って巨額の報酬が支払われていたという話やら、具体的な情報が飛び出した上に石井紘基議員の中指を切断してまでカバンから犯人が抜き取った資料の行方がまったく分からないという不気味な話も出ていました。

■犯人の証言はまったく信用出来ないと断じた裁判では、殺害動機は不明のままで、消えた資料の存在も取り上げられなかったというのは政治的な圧力が加わったからだとも考えられますが、消えた資料は当時の政権がひっくり返るほどの重大な物だと石井議員本人が家族に語っていた物で、殺害されたのは予定されていた国会質問の3日前の朝。質問内容はヤミ金融と政権との癒着に関連したものだったはずと娘さんは語っていたようですが、殺害された2002年には『だれも知らない日本国の裏帳簿』を上梓しているので特別会計に関連する質問だった可能性もあり、時あたかも事業仕分け第三弾と称して何の法的根拠も強制力も持たない蟷螂の斧を振り回して特別会計に切り込むパフォーマンスが始まった時に、石井紘基議員の名前がテレビから流れ出すというのは何かの因縁なのでしょうか?石井議員の議席を継いだ小宮山ノースモーキング洋子議員を筆頭に、暗殺直後には「故人の意志を継ぐ」と語っていた前首相もその他の議員も、政権交代を機会に石井議員の残した仕事をしっかり引き継いで欲しかったのですが……。

■そう言えば、今年の異様に暑かった夏の原因はチベット高気圧が日本列島の遥か上空に居座っていたからでしたし、10月に入ってからは秋を飛び越えて急に冬のような寒さをもたらしたのは早々と南下したシベリア寒気団でしたなあ。酔っ払い船長が尖閣衝突事件を起こしたのは9月7日で、ベトナムのハノイで10分間だけ温家宝首相と「自然発生的な立ち話」が出来たと大喜びしていた菅アルイミ首相の頭を飛び越える格好で、ベトナムから樺太のユジノサハリンスク経由で国後島に歴代ロシア首脳として初めて足を踏み入れたのは11月1日の午前のことでした。

■菅アルイミ首相は10月31日の夜8時過ぎに政府専用機で羽田空港に到着していましたから、正確には「首相の留守」を狙ってロシアのメドベージェフ大統領が北方領土に入ったという訳ではありません。「自然発生的な立ち話」で日中の戦略互恵関係が確認できた!だのベトナムが第二期の原発導入を日本と契約しただの、誰も褒めてくれないから意地になって記者会見で自画自賛して空元気を出していた菅アルイミ首相でしたが、帰国して一夜明けたら南の尖閣問題も片付かないのに北方領土でも領土問題が火を噴いたのですから、まともな神経なら辞任したくなりそうなものです。しかし、政策も法案も無いけれど総理大臣になりたい!という妄執だけは人一倍強く持っている菅アルイミ首相だからこそ、自国の領土が削り取られようと役人天国が復活しようと、円高騰が常態化しようと、何があろうと首相の椅子から離れそうにありませんなあ。


前原誠司外相は1日昼、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を訪問したことを受け、外務省にベールイ駐日大使を呼んで抗議した。ベールイ氏は記者団に対し、大統領の訪問を認めた上で「ロシアの大統領がロシアの地域に訪問するかしないかは大統領の選択だ」と述べ、実効支配をする北方領土への大統領訪問を正当化した。
2010年11月1日 産経ニュース 

■抗議するつもりが逆に開き直られて北方領土問題の解決がますます困難になっただけの話ですが、前原外相はこれを外交と呼ぶのでしょうか?少なくとも前原外相よりも遥かにロシア情勢に通じている佐藤勝氏は、今回の間抜けな菅アルイミ政権の対応を大失敗と断じております。