旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

バイト、副職、片手間仕事 其の弐

2010-01-31 11:04:40 | 政治
■先の産経新聞の記事は昨年末に出たものですが、どうやら政治家秘書の兼業問題は年を越えて徐々に大きくなって来ているようです。

民主党の衆院議員の約4分の1にあたる78人が、法律で原則禁止されている公設秘書の兼職を認めていることが25日、分かった。公明党の富田茂之氏が同日の衆院予算委員会で指摘した。鳩山由紀夫首相は「原則禁止という部分がやや骨抜きにされている。国会で議論してほしい」と答弁した。富田氏側が衆院事務局に問い合わせたところ、自民党11人、みんなの党2人、国民新、社民、新党日本、改革クラブの各党でも1人の議員が秘書の兼業を認めていた。

■これは1月25日の産経新聞の記事ですが、昨年末の段階では問題は民主党の一議員だけの問題でしたが、通常国会が始まると新たな展開になっているようです。火付け役は公明党ですから、自分の党には兼業秘書は存在しないという前提に立っての質問と調査だったのでしょう。しかし、讀賣新聞の調査では違う結果になっているのが面白いのですが……。


……民主党が断トツに多く、1人で7つ兼職する秘書や、大学教授と弁護士を兼職して秘書給与以外に年間2600万円の報酬を得る秘書もいた。公設秘書の兼職は平成14年に勤務実体のない秘書給与詐取が発覚したことを受け、16年の国会議員秘書給与法改正で原則禁止された。ただ、議員の許可があれば兼職可能とする例外規定も設けられている。
1月25日 産経新聞

■弁慶の七つ道具やレインボーマン(もっと古くは七色仮面?
)でもあるまいし、7つも兼職しても政治家秘書の仕事はこなせるものなのですなあ。これでは趣味の一つみたいなものです。世間には肩書きコレクターが居るものですが、政治家秘書も単なる肩書きの一つに加えているのでしょうか?本来なら政策を立案するためにあれこれ調査して大忙しのはずなのに……。
 
 
……読売新聞社の調べによると、企業や労働組合などと兼職している公設秘書は190人にのぼる(1月28日現在)。また、兼職を認めている国会議員は衆参合わせて164人で、政党別では▽民主党122▽自民党27▽公明党4▽共産党1▽社民党2▽国民新党1▽みんなの党3▽新党日本1▽無所属3――と、民主党が圧倒的に多い。……
1月31日 読売新聞

■こちらの調査では公明党にも兼職秘書が4人います。社民党も2人になっています。ダントツ1位の民主党は78人から一挙に三桁の大台に乗る122人!国費から出ている秘書給与を強制的に寄付させる鬼のような政治家もいるそうですから、兼職させて二重三重に得ている給与からも無理やり寄付させている吝嗇(りんしょく)政治家もいそうですなあ。歳費以外に数々の手当てが出ている上に政党助成金も創設しているというのに、支援団体に寄生して秘書給与を隠れ蓑にして不思議な献金を受けているという話はさもしいやら怪しいやらで寂しい話であります。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

バイト、副職、片手間仕事 其の壱

2010-01-31 11:04:08 | 政治
■「親が親なら子も子だ」と言うべきか、親の背中を見て子は育つの諺通りと言うべきか、親分がせっせと不動産で資産運用に精を出していれば、子分の子分も熱心に兼業に励んで副収入を増やすようになるもの当然なのでしょう。でも、政治家秘書という仕事はそんなに暇なのかいなあ?

大阪市職員労働組合(市職)が、市職出身で自治労大阪府本部副委員長も務めた民主党の稲見哲男衆院議員(大阪5区)の公設秘書2人に給与を払っていたことが(12月)7日、産経新聞の調べで分かった。2人は総選挙の投開票があった今年8月30日から秘書と市職を兼職しているとして、衆院に届け出た上で国と市職から報酬を得ていたが、識者からは「(市職の)団体献金と同じようなもの」とする批判も出ている。「脱官僚」を掲げる民主党の議員と自治労系労組の距離感に、改めて疑問の声も出そうだ。

■秘書が労組の職員扱いになっているのなら、議員本人も同様の立場なのではないか?秘書の兼業が認められる強力な支援団体をバックにするか、あるいは母親が打ち出の小槌を持っている大金持ちしか政治家になれない時代になってしまうのか?支援団体の陳情を寄せ集めて予算を水膨れさせ続けた自民党政治と何が違うのか?支援団体が入れ替わっただけの政権交代ならば国の仕組みは変わらないのではなかろうか?


「議員秘書の兼職届」を衆院に提出しているのは、稲見氏の公設第2秘書と政策秘書。……市職からの報酬は、公設第2秘書が年収640万円で政策秘書は月収45万円。……国会議員秘書給与法は、特別職の国家公務員にあたる公設秘書について、兼職を原則禁じているが、議員本人が許可し、届け出た場合は例外扱いとなる。国からの年収は通常、政策秘書で約718万~約1068万円、公設第2秘書では約517万~約784万円。

■この第2政策秘書は最高1700万円の報酬を得ている可能性がある計算になります。最低でも1300万円になるわけですが、年間600万円余も報酬を頂戴していれば飼い主に厚い恩義を感じて親分の政治家に団体からの要望を熱心に伝えていても何の不思議もありません。史上初めて国民の意思で生まれた政権だと言われていますが、その実態はコアな支持団体の票に反自民票と政権交代を求める浮動票が積み上がった三重の雪だるまみたいなものだったのでしょうなあ。あれよあれよと言う間に鳩山サセテイタダク内閣の支持率が低落して5割を切ってしまいましたが、雪だるまの中心になっている支持団体は何があっても民主党支持!で固まったままでも、表面に分厚く張り付いていた浮動票層が溶け出して薄くなり、反自民党の層も同情心が湧いて来て新生自民党に期待して民主党を嫌い始めているのかも?


稲見氏は市職副委員長を経て自治労大阪府本部副委員長などを務めた。平成15年の衆院選は小選挙区では敗れたが、比例近畿ブロックで復活して初当選。17年の郵政選挙は落選し、今年8月の総選挙は小選挙区で勝利して現在2期目だ。17年は市職の「ヤミ専従」が発覚し、組織内候補の稲見氏落選の要因となった。稲見氏は当時、逆風下で支持を訴えながら「ボランティア選挙に変える」と述べ、市職の「丸抱え選挙」と距離を置く考えを示した。

■インターネットを駆使して「ボランティア選挙」に徹し、小口のクリック献金で空前の選挙資金を集めたのは米国のオバマ大統領でしたが、発覚した「ヤミ専従」の犯罪を隠蔽するための言い訳に「ボランティア選挙」を持ち出すようでは、個人献金の文化が日本に根付くことはないでしょうなあ。


……稲見氏が代表の「民主党大阪府第5区総支部」は17年と20年、市職から計100万円の献金を受けたほか、17年は大阪交通労働組合政治連盟からも50万円の献金を受け、19年には大阪市教職員組合から110万円の献金を受けた。また稲見氏の関連政治団体「稲見哲男とあゆむ会」は20年、自治労大阪府本部に120万円分のパーティー券を購入させている。稲見氏「政策秘書は秘書の仕事に専念しており、兼職期間はない。公設第2秘書は平成16年に市職を退職したが、非常勤臨時職員として市職のOB会のお手伝いをしている。地元秘書の活動が『主』で、市職のOB会は『従』だ」

■どんな尺度で仕事内容の主従関係を述べているのか分かりませんが、政治資金も秘書も特定の組織から提供してもらっているのですから、この政治家の使命は明らかでしょう。行くつく先は「大きな政府」と「役人天国」を助長する法律・制度を作ることになりそうです。


日大法学部の岩井奉信(ともあき)教授(政治学)の話 「公設秘書として給与は十分出ているはず。給与の肩代わりにもなり、いわば団体献金と同じようなものだ。政治資金規正法上、道理が通らない」
2009年12月7日 産経新聞

■鳩山サセテイタダク首相が大好きな「友愛」精神で政治家と労働組合とが結びついているのでしょうが、そんな関係をまったく知らずに投票した有権者はどう感じるでしょう?財界ゼネコンとの腐れ縁で自滅した自民党政権に変わって登場した政権が労働組合に絡め取られてしまったら、次の選挙での投票行動は混乱して迷走してしまうでしょう。もしも投票率が極端に下がったら、コアな組織票の数だけを競い合うことになるでしょうから、相当に情けない不毛な争いになりそうです。

壮大なるツケ 其の弐

2010-01-28 20:46:41 | 政治
■自民党と民主党の対決が盛り上がらない理由の一つが旧田中派が現民主党の中核に居座っていることだそうですが 自民党を割って出たら過去がきれいに清算されるという話にはなりません。週刊文春の同記事には「国民新党の亀井静香代表……JALに出資させてJSSという警備会社を設立。いまや主要空港の警備業部を一手に担っている」と書かれていますから、この人も自分の警備会社の仕事場が増えるのを大喜びしていたはずですから、激怒して町村さんに咬み付いている前原大臣の後ろ姿を亀井さんはどんな思いで見ていたのでしょうなあ?

■その前原大臣もJAL問題に関しては、八ッ場ダムとは違って言動がブレて評判を落としてしまったようですが、化け物みたいなJALを退治するのも調教するのも至難の業なのだと、政治評論家の屋山太郎さんが詳しく説明してくれております。


政府が全面支援して日本航空を再生させるという。日航は子会社と合わせ負債総額は2兆円に及ぶ。公表された再建計画では経営陣が総退陣し、社員を1万5千人削減し、企業年金を大幅カットする。金融機関は債権の8割強を放棄。株券は無価値となる。果たしてこれで再建が成るのか。日本航空は昭和62年、国鉄の分割・民営化と同時に政府保有の株を放出して民営化された。国鉄はそれまで4回の再建計画を立て、5回目の再建策が進行中だった。しかし、従来と同じ発想の再建策では5回目も破綻する-という土光臨調の判断で、分割・民営化に舵を切った。……

■「第2臨調」に参加して国鉄の分割民営化に携わった屋山さんの目には、今回のJAL再建計画は昔の国鉄の再建策と重なって見えるのだそうです。国営企業や国策会社というものは政治家や怪しい連中の食い物にされるものではありますが、どれも最終的には赤字決算になって後始末は国民から集めた税金を使って行なわれると相場は決まっております。本来なら自民党政権がそれを行なってから幕を下ろさねばならなかったのですが……。


政府の目論見は「企業再生支援機構」を通じて「日本政策投資銀行」に金融を賄わせる。……国鉄は当時、2兆円の赤字をたれ流し、負債27兆円を国が背負い込んだ。そのツケはいまだに国民が支払い続けているが、JR7社は立派に立ち直った。しかし日本航空にそのような変貌を期待するのは全く無理だ。しかも3年間でV字型の回復を目指すなどは、駄法螺の類だ。こういうことは日航の経営を精査した者なら誰でも知っている。……

■旧国鉄から切り離された赤字は60年も掛けて清算されるという話になっておりましてその原資はほとんどがタバコ税だとか、それを百も承知でタバコ税を更に引き上げる事が決まり、何とその理由が健康増進だそうですから要するにタバコを吸うな!と国は主張しているわけであります。本当に喫煙かが絶滅してしまったら国鉄が残した借金を誰が返すのでしょうなあ?今度ばかりはビールの税金は上げられませんから、いよいよ消費税の引き上げという話になるのでしょうなあ。


……日航の病巣は経営陣と組合問題に尽きる。今回、役員は全員退陣となったが、新経営陣には日航生え抜きの幹部を登用せざるを得まい。国鉄には“改革3人組”が率いる改革派がいたが、日航には改革派は全くいない。……経営陣は人事労務系統、営業系統、経営企画系統の3派に分裂している。ある一つの系統が社長を取れば、他系統は全員パージされた。この派閥抗争は凄まじいもので、パージされた側は現経営陣の悪行を暴露するという泥仕合が、年がら年中繰り返された。日航は何百社もの子会社がある。その中には幹部たちが飲み食いして潰れた料理屋もある。誰が食い潰したかが分かっても社内で責任を問われた者はいない。この無責任風土はかつての国鉄さながらだ。

■JAL社内での権力闘争は有名で、そんな馬鹿馬鹿しいことに血道を上げるている間に大小の事故が起き、利用者がどんどん減って行ったのでした。燃料をガブ飲みするジャンボ機を世界で一番多く保有して、客集めは旅行者に丸投げして莫大なキックバックを続けていれば経営が立ち行かなくなるのは誰にでも分かります。そこに地方議員が役人と結託して誰も使わない地方空港を次々に建設して空席だらけの飛行機を飛ばしていたのですから、今更、税金を使って再建するにも大義がありますまい。


労働組合は6つ存在したが、日本エアシステムを統合して8つになった。昭和40年代、共産系組合に嫌気がした経営側は全日本航空労働組合(全労)の前身である民労を設立して第2組合育成という労務方針に転換した。……45年には乗員組合の中から機長を引き抜いて機長管理職制度を発足させた。このやり方に乗員組合も機長も強く反発。さらに客室乗員組合の中にも、突如、「全労客乗組合」が結成された。敵対する組合員は今でも互いに口をきかず、あいさつもしない。会社が倒産する今回の危機に当たっても社員大会は開かれなかった。

■組合間のいがみ合いも有名で、それが実際に飛行機の中に持ち込まれたら安心して乗っていられないぞ!と書き立てた週刊誌もありましたなあ。すべての組合員が呉越同舟で同じ飛行機に乗っているからこそ、嫌がらせのサボタージュや破壊工作が行なわれなかっただけで、そこには乗客の安全を第一に考える姿勢は無かったようです。


全労設立以来、経営側になるのはすべて全労出身者になった。この経営陣をバックに全労は「同盟傘下の組合」と称して同盟の名を使い、子会社やら関連会社を乱立させ利権をほしいままにした。このような労使関係の中で会社全体の利益を図る発想が生まれようもない。国鉄が再生したのは分割・民営化を契機に国の補助金が一切期待できなくなったことが大きい。その環境の中で労働組合の対立が緩和された。

■国鉄時代には年中行事みたいに大規模なストや「順法闘争」という迷惑千万なノロノロ運転が横行しておりました。春闘シーズンには定期券を持っている通勤通学客が線路をぞろぞろと歩いて移動する姿が当たり前でした。どんなに威勢の良い戦闘的な労働組合でも企業本体が破綻して倒産したら生き延びられませんから、変な懐柔策などは取らずにJAL本体を解体してしまえば組合問題は一挙に解決します。


日航は経営困難になれば、国から利益の出る路線権の配分を受け、航空運賃の値上げも認めてもらってきた。パイロットの年収が3千万円、客室乗務員が7百万~8百万円というのは国際相場の倍以上だが、組合は会社が経営難だといっても賃下げには応じない。足りない分は必ず国が補給してくれると思っているからだ。こういう無責任な社風とささくれ立った組合対立を抱えて、日航が再生すると期待するのは大甘だ。

■どんなに赤字が積み上がっても高給取りのままで居られるのは奇怪な話であります。これは世間の道理に反していますから、世間知らずの職員達を教育するためにも再建よりも一度倒産させてしまった方が良いかも知れませんなあ。やっぱりダメでした、という話になったら鳩山サセテイタダク政権はどうやって責任を取るつもりなのでしょう?


航空路線の譲渡は易しい。同じ便を翌日、他社に飛ばさせることなどは可能だ。欧州をみれば、イギリスのBAがイベリア(スペイン)と統合、エアフランスとオランダのKLMが統合、ルフトハンザとスイスエアとオーストリア航空が統合している。もはや一国で2社を持つ時代ではない。ところが、国がやろうとしているのは2社体制を守ると称して、日航に1兆円の下駄をはかせて全日空と競争させる愚策だ。企業努力をしてきた側の会社を潰そうというのか。日航は一旦破産させて新会社をつくる以外に再生の道はないと知るべきだ。
2010年1月28日 産経ニュース

■政治決断をする決定的な瞬間に選挙のために組合を大切にする民主党の体質が露呈するのは困ったことです。航空会社は「コンクリートから人へ」の大変革には含まれないと詭弁と弄するわけには行きません。飛行機はコンクリートの塊の空港設備が無ければ飛べないのですからなあ。前原大臣は何度も「飛行機が飛ばなくなったら困る」と発言していたようですが、それとJALが倒産したら困るという話は別でしょう。いまだにJALを潰しては困るのが誰なのか?さっぱり分かりません。いっそのことJALを喰い潰した人や団体の全リストを作って公表し、連盟で謝罪記事でも出してもらって「私達が悪うございました。どうか助けて下さい」と頭を下げるところからしか話は始まらないような気がして来ます

■それにしましても自民党による長期政権が残した負の遺産はまだまだ多く、そこに埋め込まれた既得権益を後生大事に抱いている妙に元気な老人達が裏に回って陰湿な延命工作に勤しんでいるかと思うと、これから増税を押し付けられる後の世代としてはやり切れないものがありますなあ。JAL一社も扱い兼ねているようでは民主党政権には自民党時代の後始末をする能力が無いのかも知れません。クラッシャー小沢が政治生命を懸けて実現した二大政党制と政権交代も単なる茶番でしかなかったのなら、苦渋の選択をした有権者も呆れて次の選挙では自暴自棄になってしまうかも?民主党も自民党も共倒れになったら、漁夫の利を得て誰が喜ぶのでしょうなあ?
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

壮大なるツケ 其の壱

2010-01-28 18:45:52 | 政治
■発足してから大小のポカやスキャンダルが続く民主党政権でありますが、やっと国会が始まったというのに与野党の攻防には一向に熱気が感じられません。ずっと昔に役割を終え、賞味期限も消費期限も切れていたのに手を変え品を替えて遮二無二延命し続けた自由民主党が残した爪痕が日本中に残っておりますから、一夜にして野党に転じて政権与党を責め苛む立場になろうと思っても、「物言えば唇寒し」で何を言っても鏡に映っている我が身に向っての独り言みたいになってしまいます。それにしても政権交代が遅過ぎました。憲法改正も手遅れにならなければよいのですが……。

25日の衆院予算委員会で前原誠司国土交通相が、自民党の町村信孝元官房長官の質問に“逆ギレ”する一幕があった。地方の疲弊ぶりを訴える町村氏に対し、前原氏は「さっきから話を聞いていたが財政赤字を膨れ上がらせて、バラマキの公共事業をやってきたのはどの政党、政権か!ダム、空港、港の維持管理だけでも大変だ。これ、どうするんですか」と逆質問で応酬。鹿野道彦委員長は「時間なので」と制止に入ったが、怒りの収まらない前原氏は「自分たちのツケを放っといて、今の政権に文句を言うのはやめてほしい」と主張。町村氏が「何かあれば前政権のせいだという論理は拙劣だ」と議論を打ち切ると、前原氏は「一言だけ、委員長!」となおも食い下がっていた。
2010年1月25日 産経ニュース

■これは町村さんの負けでしょうなあ。敗残の自民党議員を集めると今でも「みんなでやろうぜ!」と昔の青春ドラマみたいな掛け声を発しているそうですが、解散だ!政権奪回だ!などと吼える前に、素直に「みんなでやっちゃったなあ」と溜息交じりにでも長年の失政を詫びて見せれば、先の総選挙で「逆ギレ」した元支持者たちも「分かってくれたか?」と寛大に戻って来てくれるかも知れませんぞ。

■次期参院選の比例代表候補の選定を巡って、山崎拓元副総裁(73)と保岡興治元法相(70)、片山虎之助元総務相(74)を公認しないことを町村総裁が決めた由。「70歳定年制」の内規を遵守したいのだそうです。クラッシャー小沢みたいに「そんなルールは誰が決めたんだっちゅうの!」と言って噛み付く元気も無い御老人たちには退場して貰わねば新しい戦いには臨めないのでしょう。自民党は内にも外にも膨大な「既得権」を生み育ててしまいましたから、最初に内側から掃除するのが順序というものです。でも、急いで世代交代を進めないと櫛の歯を引くように中堅若手議員が一人二人と脱党して行く姿はちょっと大袈裟に言えば北朝鮮みたいですぞ。世の人は泥舟から逃げ出すネズミに見立てたりしているようですが……。

■天下りし放題の官僚達に任せっ切りにしていた政策の後始末は本当に大変です。聊か前のめりに夢見がちの表現で「あるべき国の姿」を鳩山サセテイタダク首相は訥々と語ることがありますが、その前に片付けなければならない自民党の残滓(ざんし)が日本中に積み上がっております。否、ひょっとすると首相の極間近にこそ最大の残滓が膨れ上がったまま生き延びているのかも?

■ぼろぼろになって信頼を失って地に落ちた年金制度、待機児童が悲劇的に多い保育所不足と定員割れが続く幼稚園、無駄な薬が際限も無く廃棄され、医師とワクチンが常に不足する変な医療制度、とうの昔に飽和状態になっているのに毎年新設される大学、最初から経済的に成り立たないことを前提にした農政、米国の注文を値切るのが主要目的となった防衛政策、銀行を助けて預金者を見捨てる金融政策などなど数え上げたら自民党時代の残骸が日本中に満ち溢れております。

■どれもこれも肉眼の視界には収まらない大きな問題ばかりですが、ここに象徴的な国策企業としての役目を終えているのに奇怪な延命策で生き残った日本航空という非常に分かり易い具体例が国民の前に提出されております。『週刊文春』1月28日号に森功さんの「JAL
を喰った自民党」という短いルポ記事が掲載されておりました。その中には「岸信介、福田赳夫、安倍晋太郎、三塚博と派閥の領袖が続いてきた清和会の金城湯池」という懐かしい名前を並べて恐ろしい事が書かれておりますぞ。

■1985年8月の御巣鷹山の大事故が起こって倒産の危機を迎えたJALに伊藤淳二ワンマン会長を送り込んだのが大勲位・中曽根さんで、再建よりも政争の道具としてナショナル・フラッグが玩ばれていたようです。元役員の言葉には「有力政治家事務所にはJALの秘書室が一定の就職枠を……」「JALの秘書室には議員別に担当者がいた」などと真面目に就職活動をして採用されなかった苦い思い出を持っている人が激怒するような話もあります。

■「運輸大臣を数多く排出している清和会……加藤六月、塩川正十郎、自民党時代の亀井静香……旧経世会出身の二階俊博や宏池会の古賀誠といった運輸大臣経験者」という名前も加わりまして、昨年7月に北九州市の新興航空会社「スターフライヤー」の不透明な取引が発覚しましたが、取引相手のコンサルタント会社の社長は古賀誠さんの長男だそうですなあ。そして、ミニ小沢一郎みたいに利権漁りをしている二階さんにも、97年の関西空港開業に合わせて建設されたJAL専用の巨大社宅という変なオマケが付いていたそうで、交通の便が悪い山の上に作った理由は不明なれど、敷地を売ったのは二階さんの後援会会長だというのは確かな話のようです。

■こういう話は日本中に作られた98箇所の空港には付き物なのでしょうなあ。記念すべき?98番目に開港するのが茨城空港で、週に1便だけ韓国行きの飛行機が飛ぶのだそうです。ここは自民党茨城2区の額賀福志郎が建設に非常に熱心だったとの話がありますから、後学のためにも「額賀空港」と命名しておいて欲しいものです。他の97空港も最も開港に熱心だった政治家の名前を冠しておくべきでしたなあ。

年の始めの断末魔? 其の参

2010-01-28 13:47:18 | 外交・情勢(アジア)
■初代の金日成は自分が仕掛けた朝鮮戦争に敗れ、毛沢東が送り込んだ自称・義勇軍の人民解放軍が黒竜江を押し渡って助けに来るまでは、国境を越えて逃亡生活を送っていたと言われていますから、その汚名を雪ぐのが二代目の務めでありました。スターリンや毛沢東を見習って原爆製造に邁進したのも金日成が残した遺産でしたから、親孝行息子としては何百万人の餓死者が出ようと父の遺志を継承しなければなりませんでした。そんな家庭の事情で極東の軍事バランスを崩されては堪りませんが、それ以外に国家を維持する方法がないのですから仕方がありません。

■破綻した経済、紙クズになった流通紙幣、常態化した飢餓、宇宙からも見える電力不足などなど、世襲が噂される三代目に同情したくなるような破綻国家の実情は惨憺たるもののようです。物乞いするなら腰を低くして情に訴える話をして泣き落としを試みるものですが、石油や食糧を恵んで貰うために原爆を使って脅迫するというのは何とも可愛げのない態度でありますが、どうやら三代目襲名までの最大の目標を朝鮮戦争を終わらせるための平和条約締結と定まった節が見えるようになりますと、改めて当事国に対して「戦争中」であることを知らしめねばなりますまい。


……北朝鮮の国防委員会は(1月)15日、韓国が北朝鮮有事を想定した対応策を策定したとして、韓国に対して「報復の聖戦」を始めると宣言する声明を出し、謝罪がない限り対話や交渉の場から韓国を除外すると明らかにした。国防委員会は金正日総書記が委員長を務める国の最高指導機関。声明を出すのは初めてとみられ、韓国に対する極めて強い不満を表明した。

■「報復」までは分かりますが「聖戦」の方はさっぱり分かりません。ビン・ラーディンにすっかりお株を奪われた「聖戦」を、昔懐かしい革命武力闘争こそが本家本元の聖戦だ!と言いたいのかも知れませんが、何だかオウム真理教を思い出してしまいますなあ。そもそも、半島での「有事」を想定して準備をするのは韓国の義務でありましょう。何せ北の隣国が今でも朝鮮戦争を引き摺って物騒な挑発行為を繰り返しているのですからなあ。


声明では、韓国統一省と情報機関の国家情報院が、北朝鮮の「急変事態」に備えた「非常統治計画―復興」を策定したとする韓国紙の一部報道を挙げ、「われわれの社会主義制度の転覆を企図した」と非難した。そのうえで、統一省と国家情報院の解体を要求。大統領府を含む韓国当局者の本拠地を「根こそぎ吹き飛ばすための報復の聖戦が開始される」とした。
1月15日 読売新聞

■韓国が「復興」計画を策定してくれたと知ったら、さぞや北朝鮮で非人間的な暮らしを強いられている多くの人たちは喜ぶことでありましょう。北朝鮮の「社会主義体制」はとうの昔に「転覆」しているのではないでしょうか?計画経済は一度も成功したことがなく、配給制度は崩壊し医療も教育も整ったこともない。「報復の聖戦」とやらを発動したら、攻撃する軍隊よりも多い数の亡命者の大群が四方八方に飛び出して来ることが心配されております。チャイナ東北部と韓国には、それぞれ百万人以上の困窮者が押し出して来るかも?と押し付けられる側では非常に心配しているとか……。

■勿論、日本にとっても他人事ではなく、着の身着のままの亡命者を満載したボロ船が日本海に出て対馬海流の上を漂流していれば見殺しには出来ませんから、拉致犯罪や経済制裁を棚に上げて人命救助に出向かねばなりません。平壌の「本拠地」が根こそぎ自壊しないようにと周辺諸国は人道援助を渋々ながら続けなければなりません。

年の始めの断末魔? 其の弐

2010-01-28 13:46:20 | 外交・情勢(アジア)
■『其の壱』の続きです。

北朝鮮は平和条約の締結交渉開始を協議復帰の条件にしていると見られ、米国は条約締結を非核化、経済支援と並列して具体的に記することを検討している。他国からは国際原子力機関(IAEA)による査察強化などの案が出ているという。
1月25日 読売新聞

■完成もしていない原爆の影を利用して、一挙に朝鮮戦争を終結させた上に経済支援までせしめようと言うのですから、せっせと原爆作りに励んでいる何処かの国などは、あまりに旨い話に生唾を飲み込んでいることでありましょう。万難辛苦を乗り越えて密かに核爆発を起こす仕掛けを完成し、地下実験に一度でも成功すれば、長年の国際問題も国内問題も同時に解決できるのなら、国際世論が袋叩きにしようが国民が餓死しようがお構い無しに原爆製造に精を出す国が現われるのでしょうなあ。


……北朝鮮は28日午前8時半ごろ、黄海にある韓国領の延坪島の周辺海上に数発の砲撃を行った。北朝鮮は27日も朝から夜にかけ、「実弾射撃訓練」として海岸の砲台などから黄海に向け、約100発を撃ち込んだ。北朝鮮は砲撃を継続する方針を示しており、2日連続で韓国を挑発した。……北朝鮮は27日の砲撃では170ミリ自走砲なども使っており、兵器の性能実験をした可能性もあるという。今のところ、砲撃は韓国が軍事境界線と位置付ける北方限界線(NLL)の北朝鮮側で行われているが、北朝鮮が韓国側に撃ち込めば、韓国軍は警告射撃以上の厳しい対応を取ることも検討している。 
1月28日 時事通信

■将軍様は珍しく姿を見せて、この実弾射撃訓練をしている場所の正反対、チャイナとの国境地帯を視察中とのことです。何となくわざとらしい演出に見えますが、西南の海岸で川開きの花火みたいにポンポン大砲を撃っている間に東側の海から侵攻したりしないでしょうな?西の端から38度線に沿って東に向って順に訓練場所を移動させたりするのも困ります。自走砲などを動かす余分な燃料があるのなら火力発電所を動かして電力供給を安定させたらどうなのでしょう?どうも今年の北朝鮮は、年明け早々から燃料の無駄遣いが目立ちますなあ。


北朝鮮はこのほど、金正日総書記(国防委員長、人民軍最高司令官)視察の下に実施された戦車部隊による韓国侵攻訓練の様子をテレビ公開し注目されている。……北朝鮮の国営・朝鮮中央放送が5日、放送したテレビ画面によると、訓練場面では戦車が雪原を“進撃”する姿が登場。雪原には「中央高速道路 春川ー釜山374キロ」といった韓国内の道路標識や「全羅南道」「金海」「昌原」など韓国南部の地名が出ている。……金正日総書記が「近衛ソウル柳京洙第105戦車師団管下区分隊」を視察したと伝えたが、金総書記の軍視察報道は今年初めて。「第105戦車師団」は60年前の朝鮮戦争で最初にソウルに侵攻した部隊として知られる。

■遠い昔の歴史になった朝鮮戦争は、第二次大戦の余燼が燻(くすぶ)る殺伐とした空気が世界のあちこちに淀んでいた時期に、東西冷戦の幕開けを知らせると同時に、もう戦争に倦(う)んでいた人々に第三次大戦の予兆を見せ付けたのでした。記事にある戦車師団というのは大戦後期にソ連が投入した自慢の戦車を金日成が無理を言って借り受けた物でした。丸腰同然の韓国と北朝鮮の南進はずっと先だと暢気に構えていた駐留米軍の虚を突いての猛進に世界中が驚いたものです。

■一時は国土の大半を蹂躙された韓国側でさえ、第105戦車師団などという骨董品の名前を言われてもピンと来なくなっているのではないでしょうか?恐ろしいことですが、北朝鮮は今でも必死に朝鮮戦争を続けています。バカみたいにカネのかかる戦争よりも、思い切り商売に精を出して国富を増したいと思っている韓国の隣で、「欲しがりません、勝つまでは!」と基本的な社会インフラも整えず、食糧も医療も犠牲にして戦時体制を頑なに守っている北朝鮮。ベルリンの壁も鉄のカーテンも消え去り、ソ連は崩壊してチャイナも「特色ある」社会主義国に衣替えしたというのに、一人反帝国主義闘争を続けている北朝鮮は、時代の流れに適合するために自らを変化させる能力が先天的に欠落しているのでしょうなあ。


金総書記はこの視察で「敵の侵攻を一瞬のうちに撃破、粉砕できるようしっかり準備されている」と満足を表明したという。韓国軍や在韓米軍も有事に際し北朝鮮の首都・平壌への攻撃、占領などの計画を持っているが、北朝鮮軍の韓国南侵訓練の様子がテレビで公開されたのは初めてだ。その意図についてはソウルでは「新年にあたって国民にあらためて緊張感を持たせ、不満や不平を押さえ込むため」などの観測が出ているが、北朝鮮が第2の朝鮮戦争を想定した南侵訓練を実施していることに韓国世論は驚いている。
2010年1月7日 産経ニュース

■栄えある?標的にされた韓国側では、「まだやっているの?」という冷めた受け取り方をする人が大半なのでしょうが、何とも傍迷惑な隣人を持ってしまった不運には御同情を申し上げるしかありません。などと他人事みたいなことを言っていられないのが時々テポドンが列島上空を通過して行く日本の立場であります。戦車は日本海を渡って来ることはなかろう、などと悠長なことを言っていると拉致問題は解決しないでしょう。

年の始めの断末魔? 其の壱

2010-01-27 12:46:35 | 外交・情勢(アジア)
■昨年末、突然にデノミを断行して世界をちょっと驚かせた北朝鮮の裏事情を、先週の週刊新潮誌上で桜井よし子さんが脱北詩人の口を借りる形で解説しておりました。それによりますと、韓国で開催されたソウル五輪に対抗するために平壌で国際的なスポーツ大会を開催したのが切っ掛けで、じわじわと外貨経済の侵食が進んで自国通貨が紙クズ同然になってしまったのが原因らしいのですが、食糧は韓国などからの寄付、日用品は輸入に頼るしかない北朝鮮で外貨の使用が禁じられたら餓死者が出るのは必至でありましょう。しかし、5000億円とも言われる隠し外貨預金を持っている将軍様は国民生活がどんなに混乱し困窮しても何の痛痒も感じないようです。

■将軍様にとって唯一の心配事は子飼いの軍隊が反抗することですから、デノミの後には経済的な混乱は放置して韓国侵攻を露骨にイメージさせる軍事演習を実施して、将軍様直々に現場で視察して「その日は近いぞよ」と軍隊が余計なことを考えないように本業で手一杯の状態にしておく工夫をしていました。でも、どうやらそれだけでは安心出来なかったようですなあ。


……北朝鮮が26日に一方的に設定した韓国領海に近い黄海上の航海禁止海域に向けて砲撃を行った……。韓国軍もこれに対し射撃を行ったという。航海禁止区域が設定されたことに対し、韓国軍関係者は「冬季訓練の一環なのか、短距離ミサイル発射をしようとしているか監視中だ」として、設定された区域とその目的を分析中していた。……
1月27日 産経新聞

■カザフスタンの闇商人に武器を卸していたのがバレてしまった北朝鮮は、六カ国協議に復帰する素振りを見せて他の闇商売を邪魔されないように煙幕を張っているようですが、核開発を含めて現在進行中の悪事の数々をそのままパッケージにして世襲させ、近いうちに「三代目襲名」を実現しようと焦り気味の将軍様としては、何事も先延ばしにする時間の余裕は無いのでしょうから、年明けから矢継ぎ早に目立った行動を起こしているようです。まさか軍隊に総攻撃を命じて身内を引き連れて密かに海外亡命するようなことはないとは思うのですが……。


国連人権理事会のムンタボーン特別報告者(北朝鮮担当)は……特別報告者に就任した2004年以来、北朝鮮の人権状況が一層悪化しているとの認識を明らかにした。同氏は今年6月の退任を控えた最後の調査のため、このほど日本を訪れた。……「北朝鮮ではこの間、憲法に人権の尊重を盛り込んだものの、実際には国民への拷問や公開処刑が続けられ、(脱北者ら)国外から送還された人々への処罰はさらに厳しくなった」と指摘。国民よりも軍事優先の「先軍政治」が人権侵害の根本原因となっていると分析した。

■かの国に「憲法」が存在するという事自体が悪い冗談のような気もしますが、国の生みの親に当たる旧ソ連のスターリンという人物も世界でも最も進んだ人権思想を盛り込んだ素晴らしい「憲法」を作り、それを一度も守らずに生涯を終えたのでしたなあ。政治犯収容所の統廃合が進んでいるとも聞きますから、何やら恐ろしい事が更に効率を上げて行なわれている模様です。一度も経済計画が成功した事が無く、打つ手が悉(ことごと)く裏目に出るのが悪い癖の将軍様は、ますます嫌われて逃げ出す人が増え続けるに違いありません。しかし、脱北者と餓死者がどんどん増えて行きますと肝腎の戦争が出来なくなりますから、燃料と食糧の備蓄が底をつく前に破れかぶれの博打を打つようなことがないように祈るばかりであります。


拉致問題については、「就任当時は日本人だけの問題と考えられていたが、次第に韓国など他国の国民も被害に遭っていることが分かってきた」と語り、北朝鮮による拉致が世界的犯罪であることを強調した。
1月24日 時事通信

■「世界的犯罪」は拉致ばかりでなく、偽札製造、麻薬販売、武器密輸、各種の破壊工作と何でも揃っているのが北朝鮮で、「日本人だけの問題」は脱税したカネを段ボールに詰めて貢がせ続けた挙句に日本政府が公的資金を注入していた地方金融機関を破綻させたことでありましょう。損害賠償を訴えたいところでありますが、相手が悪過ぎますから、日本は我慢強く六カ国協議に参加し続けねばなりません。


北朝鮮が核問題を巡る6か国協議に復帰すれば、日本、米国、韓国、中国、ロシアの5か国は、核問題の包括的な解決策を盛り込んだ新提案を共同で行う方向で大筋合意していたことが24日、明らかになった。……米政府は、朝鮮半島の非核化、平和条約締結、対北経済支援の3点を同時に実現させるという提案を検討しており、北朝鮮側にその意向を伝え、協議復帰の呼び水とする狙いだ。

■いつの間にやら「平和条約締結」まで条件に含められてしまいましたぞ。これは北朝鮮外交の勝利と言えましょう。本当に使い物になるのかどうか、甚だ怪しいと言われる原爆モドキと長距離ミサイル技術に随分と高値が付いたものであります。


新提案は、2005年9月に6か国協議の共同声明でうたった核放棄や国交正常化の具体策を示す内容になる。6か国は共同声明の具体的な履行策を示した共同文書を07年2月に採択したが、核検証手続きを巡って北朝鮮と日米韓が対立し、履行は頓挫した。このため、オバマ政権は日韓中露と協議し、北朝鮮が6か国協議に復帰すれば、共同文書の内容を新提案として改良することで了承を得た。

■北朝鮮の粘り勝ち、下世話な表現ではゴネ得というものです。もっと良い条件を引き出すためには地下核実験を大成功させたいところでしょうが、次の核爆弾が完成していないのか?単に出し惜しみして安上がりに大砲の弾で代用してゴネて見せているのか?鳩山サセテイタダク首相が基地問題で必ず結論を出す!と大見得を切っている5月まで、普天間基地から朝鮮半島を睨んでいる米海兵隊に厳しい命令が下されるような事態にならなければよいのですが……。

小沢劇場は毎日開演中 其の壱拾

2010-01-19 16:04:17 | 政治
■2年半も前になりますが、クラッシャー小沢の秘書を取り上げた記事がありました。最近も一部の週刊誌が参政権付与の問題に絡めて、おどろおどろしいストーリーの材料に使った人物だと思われますが……。

民主党の小沢一郎代表の秘書を務める韓国女性が注目されている。国際担当秘書の金淑賢(キム・スクヒョン)さんだ。金さんは2000年に当時自由党の党首だった小沢代表の秘書に抜てきされ、以来7年間にわたり小沢代表を陰で支え続けてきた。日本の政界では、自民党の議員が韓国人留学生をインターンとして起用するケースはあったが、韓国人が正式に秘書として採用されたのは金さんが初めてだ。

■金さんを自由党党首だったクラッシャー小沢が秘書に正式採用したのが2000年。その前年は「長城計画」の主催者たる小沢さんにとって忘れられない事件が北京で起こっていたそうです。月刊『文藝春秋』2月特別号に掲載された城山英巳さんの「中国共産党 小沢抱きこみ工作」という興味深い文章によりますと、「長城計画」は田中派を分裂継承した経世会の竹下登が1989年9月(何と第二次天安門事件の3ヵ月後!)に始めたもので、その経世絵が金丸逮捕・引退の後、大喧嘩の末に小渕派と小沢派に分裂しますが、小沢・羽田グループが自民党を飛び出す時に金庫の政治資金と一緒に手土産として「長城計画」も奪取継承してしまいます。

■クラッシャー小沢は新進党党首として1996年5月に訪中した際には国家元首並みの厚遇を受けますが、3年後の1999年に離合集散を経て連立与党となった自由党党首として訪中した時には「周辺事態法」に関する小沢発言が北京政府の逆鱗に触れてしまい、小沢党首は露骨に冷遇されて激怒!翌2000年に朱ヨウ基首相が来日するも小沢党首は臍を曲げて会談を拒否していますし、同年12月に「長城計画」で訪中した時にも政府要人とは会わず仕舞いだったそうです。ところが2006年にクラッシャー小沢が民主党代表に就任すると北京政府は掌を返したように厚遇し始めるという流れがあります。

■従いまして、自由党党首時代の小沢が韓国人留学生を秘書として正式採用した裏にはチャイナに対する複雑な感情と策略があったような気がしてなりませんなあ。金淑賢さんの経歴は以下の通り。


韓国外国語大学日本語科卒業後、大学院を修了し1998年に日本に留学……2007年に東京大学で博士号を受け……東大で2年間の研修生活を経て再度修士課程に入学しており、多忙な秘書生活を送りながら「韓中修好に関する研究」で博士号を取得……。

■田中角栄が開いた日中友好の路線を継承したものの、2000年頃には韓国というフィルターかバッファーを挟んで日中関係を相対化しようとしたのかも知れません。


小沢代表の事務所で勤務する金さんは、国際関係の専攻を生かすため、朝鮮半島を含む国際情勢に関して補佐する業務を主に担当している。週に1回東アジア情勢を報告しており、中国、米国を含む複数のプロジェクトを企画進行している。また小沢代表を訪ねてくる日本の政治家だけでなく、海外の有力者らとの面談では通訳を担当し、選挙期間には他の日本人秘書らと同様に全国を飛び回り選挙支援活動……駐日韓国大使館とも随時政局などについて情報交換を行っており、アジア外交を重視する小沢代表の韓日関係に対する認識にも大きな影響を与えているものと金さんは自負している。

■北京で味わった屈辱を韓国への接近で意趣返し?したようにも見えますが、こうした動きから結果的に民団の選挙協力を引き出し、その見返りに投票権を与えるという乱暴な話も出て来たのかも知れませんなあ。


金さんは小沢代表を「プロ中のプロ」と評価し、カリスマ性あふれる典型的なボス型の政治家だと話す。仕事に関してはミスを許さない完ぺき主義者だ。しかし実際には温かい性格で、仕事を離れれば人間的に接してくれるという。金さんは「ボス」である小沢代表が、政権奪取の夢を実現するその日まで、秘書として補佐していく考えだ。
2007年8月9日 YONHAPNEWS

■秘書の金淑賢さんが、何処に住んでいるのかは存知ませんが、クラッシャー小沢の秘書軍団には様々な人材が揃っているようです。自宅に書生や秘書を住まわせ、近くに寮を建てて命令が出れば迅速に動かすことで選挙に強いカリスマとなって行ったのでありましょう。

小沢劇場は毎日開演中 其の九

2010-01-18 17:53:05 | 政治
■さてさて、ここら辺から小沢名義の不動産が何に使われていたのか?という問題に入って行きます。

6年に1700万円で購入したワンルームマンション「プライム赤坂」の一室は、13年12月に外国人秘書の居宅としての使用をやめ、民間のコンサルタント会社に月7万円で賃貸。その後、19年9月には主に不動産の再開発を行う都内の建設会社に1300万円で売却している。また、1億1000万円で購入した東京都港区の「グランアスク麹町」の一室は16年9月から、小沢氏が会長を務める財団法人「ジョン万次郎ホイットフィールド記念国際草の根交流センター」に月20万円で貸し付け。20年5月には小沢氏側から寄付の申し出があり、同センターに無償で譲渡されている。

■素人には理解困難な不動産取引を繰り返しているクラッシャー小沢が賃貸業に手を染めてこつこつ日銭を集めて政治資金に回しているのは分かりますが、突然「寄付」という気前のいいところを見せた話を聞きますと違和感を覚えますし、何か裏が有るのでは?と勘繰りたくも鳴ります。記事に従えば、1700万円で購入したワンルームを月7万円で約6年間賃貸したら累計で500万円余りの不動産収入となりますから、1300万円で売却しても損はしないことになる一方で、交流センターは月20万円で4年弱の賃貸ですから、収入は累計で900万円弱程度のはずです。それを無償で寄付してしまえば買値の1億1000万円のうち1億円以上が回収できないことになります。

■この違いは何なんだ?と思ったら……。


また、この一室の賃貸時には、同時に中国人留学生の無償の宿泊施設としても利用されており、同センターの職員は「小沢氏側との関係は分からないが、中国人の女子留学生2人が事務所が閉まる時間になると戻ってきて、宿泊していた」という。

■チャイナからの留学生という意外なオマケが付いていたのですなあ。財団法人の名前が数奇な運命を辿ったジョン万次郎と、その保護者となった米国のホイットフィールド船長から取られているから、てっきり日米友好を目的とした活動をしているのかと思いきや、羊頭狗肉とまでは言いませんが、米国以外の国とも草の根交流をしているようです。一体、どんな選考基準で無償の宿泊施設を利用する留学生を選んでいるのでしょうなあ?先日の特例天皇会見が強行された時にも、会見を許された習副主席のライバルとされる李国強が若い頃に小沢邸に滞在していたという話が掘り起こされましたが……。


……陸山会の預金を担保に同額を銀行から借り入れる形で購入代金を捻出しており、「借入金の利息を考えれば、なぜ預金で支払わず、新たに借り入れをおこしたのか不可解だ」(大手銀関係者)と疑問の声も出ている。さらに、こうした不動産はいずれも小沢氏個人の名義で登記されている点も問題視されている。陸山会側は「政治団体名では法律上、所有権の移転登記ができないため、代表名で行った。小沢氏と交わした確認書もある」と……だが、ある行政書士は「任意の確認書では法的拘束力も弱く、団体が解散するなどすれば、うやむやのうちに小沢氏の物件になってしまう恐れもある」としている。……
2010年1月14日 産経ニュース

■どうも産経系の報道は小沢憎し!の感情が全面に出る傾向が強いようですが、産経に限らず検察の執拗なリークをせっせと報道している他のマスコミも「定期預金」を担保にした不動産購入に焦点を当てているようです。しかし、『週刊朝日』1月22日号の特集記事には小沢周辺や平野貞夫元参院議員の証言として、小沢夫人の和子さんが一時的に立て替えて支払いを済ませ、その後で小沢名義の定期預金を担保にして借りた同額を奥さんに返却したという話が紹介されておりますぞ。平野元議員の「不動産取引では、ありうること」という発言もありますから、不動産取引は午前だ!借金は午後だ!と大騒ぎするのは検察に踊らされている証拠なのかも?勿論、担保にされた4億円の出所は謎のままなのは問題なのですが……。

■記事にある「小沢氏の物件になってしまう恐れ」に関しては、疑惑の中心になっている世田谷の自宅近くに立てた秘書の寮も、造成・整地や建築物が不自然なほど安上がりで手抜き気味との話も漏れ出しているそうで、最後は小沢一家の財産になって「世襲」されるとの憶測も流れている由。寄付を受けた財団法人も息子がトップの座に着けば目出度し、目出度しというシナリオが書けます。秘書や側近との会食に庶民的な居酒屋を選ぶのも、麻生前首相に対する嫌味や貧乏人を篭絡するために庶民派を演じているのでもなく、無駄カネを使いたくない!という強固な意志が貫かれているからなのかも知れませんなあ。

続・グーグルVSチャイナ 其の参

2010-01-18 12:13:33 | チベットもの
中国の胡錦濤政権は……「巨大市場」を武器に外国の検索企業を検閲に従わせることに自信を深めてきたが、初の「抵抗」の影響が広がれば、政権の言論統制のほころびにつながるだけに、一層締め付けを強める構えだ。……共産党による情報独占を突き崩し、「社会の安定」を揺るがしかねない「有害情報」を発信するネットの統制に全力を挙げてきた。だが、世界最高水準の「網絡警察」(サイバー・ポリス)を抱える政権にとっても、チベットやウイグルなどの民族分裂や「台湾独立」、民主化要求など、一党独裁を脅かす恐れのある「有害情報」を根絶するのは容易でない。このため、政権は、グーグルや中国の「百度」など、国内外の検索企業に対し、「協力」という名の下に監視と排除の責任を負わせてきた。

■グーグルのチャイナ参入に際して「番犬になるのか?!」と厳しい批判の声が浴びせられたのでしたが、とうとう飼い主の虐待に耐え切れなくなってしまったようです。「協力」する相手が「情報独占」を狙っているのですから、最初から開放系のインターネットとは矛盾した合意に基づいた契約が行なわれていたことになります。グーグルも納得する「有害情報」だけを対象にしておけば、こんな大騒動にはならなかったのでしょうが……。


特に、影響力の大きいグーグル社に対しては、再三にわたり揺さぶりをかけてきた。昨年6月の外務省の定例会見でも、グーグルを使ったメールがつながらないとの外国メディアの指摘に対し、秦剛・副報道局長が、グーグルがポルノ情報を流しているとの前提に立ち、「当局の手法は法に基づくもので正当」とはねつけた。それでも、今回のような事態が起きたことは、胡政権にとって衝撃だったのは間違いない。今後は、他の検索企業への影響を防ぐため、グーグル社を含む各社と個別の協議を重ねて、検閲への「協力」を改めて迫っていくものとみられる。

■日本の某ネット会社が急成長したのはポルノと金貸し業で稼いだからだ!という意地の悪い評価をする向きもあるようですが、新しいメディアが爆発的に発達する時には、どうしてもこの種の「有害情報」が氾濫する過程が必要となるようです。最初は『聖書』を大量に印刷していた活版印刷が爆発的に広まった時も、写真撮影機や映画技術も、そして最近では家庭用ビデオ機器でも、事情は似たようなものだったそうですからなあ。

■米国に負けないネット社会を作る一方で、徹底的に「有害情報」を排除してしまえると考えるのは歴史の経験則から逸脱した誇大妄想と言うべきかも知れませんが、一党独裁体制というものは何かと誇大妄想に走りがちではあります。


……「胡錦濤総書記自身がネット統制の生ぬるさに強い不満を抱いている」とされ、今年は言論統制の中でもネット統制をさらに強化する方針という。2008年以来、一党独裁を批判する「08憲章」など、大胆な政治改革要求文書がネット上で広がるなどの事態を受けたものだ。……今月12日、北京で開かれた党の精神文明建設指導委員会の会議では、イデオロギー担当の李長春・党政治局常務委員が「未成年者の健全な成長促進を目標に、法に基づき、ネットでわいせつな有害情報を広める行為を取り締まり、社会文化環境を浄化しなければならない」と述べ、一層の統制強化を宣言した。
1月14日 読売新聞

■猥褻情報と「08憲章」が並んで出て来るのは違和感を覚えますが、更にダライ・ラマ法王の肖像まで押し込まれて来ますと、笑い話の域に達してしまいます。内戦・大躍進・チベット解放・朝鮮戦争・文化大革命と天文学的な犠牲者の数を積み上げてしまった毛沢東の肖像は含まれないのでしょうが……。


……米グーグルが、中国国内で行ってきた検索表示の自主制限を一部解除していることが14日、分かった。……自主制限の一部解除は検閲やサイバー攻撃への対抗措置とみられ、同社と中国との交渉の行方にも影響を与えそうだ。……自主制限を解除した結果、中国当局が民主化を求める学生らを武力鎮圧した天安門事件(89年)で、戦車に1人で立ち向かう男性を撮影した有名な写真や戦車の発砲、虐殺された遺体の模様などが検索表示されるようになった。……国内の検索エンジン大手、百度(バイドゥ)などでは引き続き表示できない状態だ。……ダライ・ラマ14世の写真を検索すると286万件表示された。中国政府はダライ・ラマ14世を「祖国分裂主義者」とみなし、国内での写真掲載を禁じている。……

■主に内輪の口コミで知っているけれど知らない振りをして暮らしている人達にとっては、この種の氾濫に近い「情報漏洩」は衝撃的ではありましょうが、決して付和雷同して大挙してアクセスする動きは見られないのではないでしょうか?情報独占体制が簡単に揺らぐはずはないと思っている人がほとんどでしょうし、当局が巻き返しに出るのは間違いないと経験から身に染みて分かっているでしょうからなあ。


中国政府がこうした写真を表示させないためには、国内からグーグルへのアクセスを遮断する以外には方法がないとみられる。ただ、グーグルへのアクセスを遮断すると、国内の莫大な数のユーザーに多大な影響を与えることになる。また、中国が強制措置に乗り出せば、グーグルは中国からの撤退を辞さない構えで、両者の摩擦はエスカレートしそうだ。
1月14日 毎日新聞

■既に米国政府が介入の姿勢を見せていますから、一企業の問題では済まされなくなってしまいました。国家存亡が懸る検閲制度を真ん中に据えて米中両政府が交渉を始めるのか?その前に水面下で世界を仰天させるような妥協策が考案されるのか?間も無く半年間も続く上海万博が開幕するという時期に、IT技術の使用方法を巡る深刻な問題が発生するというのは、単なる偶然なのか?それとも誰かさんの深謀遠慮に基づいた大戦略が発動された結果なのか?どちらにしても中間選挙で負けられないオバマ政権の人権問題に関する性根を見せる絶好のチャンスではありましょうなあ。

■まあ、どちらの陣営からも日本の鳩山サセテイタダク首相に対して仲介の労を頼んで来る心配は皆無であるのは間違いありませんが……。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

続・グーグルVSチャイナ 其の弐

2010-01-18 12:13:18 | チベットもの
中国当局は昨年7月、「グリーンダム」と呼ばれる検閲ソフトのパソコン搭載を義務化しようとしたが、国内外の反発で断念した経緯がある。前出の駐在員は「その際、検閲ソフトを何者かがハッキングし、当局が設定したNGワードも明らかになった」と語る。駐在員が見せてくれた一覧は、ざっと1万語以上。「中共独裁体制」……「大法」など法輪功関係の言葉が圧倒的に多い。中には「膣壁膣穴舐」「淫乱的声音」といった性的表現も含まれていた。

■漢字並びと字面だけ見ても大体の意味は分かりますなあ。某大学教授が以前に外国語を学ぶには「性的表現」が豊富に含まれたテキストを熟読してしっかり反応できるように努力するのが早道だと主張していたことを思い出しましたが……。検閲の網を潜り抜けるなら暗号化せずとも漢字を並べ替えてアナグラムにして受信後に復元したりすれば大丈夫かも?それ以外にもいろいろと「対応」策はありそうですが、当局としては検閲しているぞ!摘発するぞ!という隠然たる圧力感が大事なのでしょうなあ。


一方、「中国国内で『ダライ・ラマ法王』という言葉を2回検索すると、公安がドアをノックするという話がある」と語るのは、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所(東京)のラクパ・ツォコ代表。「昨年10月にはラサに住む若者2人が法王の画像をダウンロードしただけで逮捕された。翌月にはアムド(チベット東北部)に住む男性がチベット文化に関するサイトを開設して逮捕され、15年の刑を言い渡された」と同代表は語る。

■因みに「アムド」は拙著『チベット語になった「坊ちゃん」』の舞台となっている場所です。ダライ・ラマ14世の御出身地でもありますから、政治的に緊張するとラサ市内よりも激しい反応が見られる土地柄でもあります。法王の写真を所持しているだけでも逮捕される場合が多いのですから、無限に複製・発信できるネット画像をダウンロードするのは非常に危険でしょう。誰が何をダウンロードしたかが即座に分かるというのも恐ろしい話であります。


……当局は、監視だけでなく攻撃も行っているようだ。世界ウイグル会議日本代表のイリハム・マハムティさんは「私が仲間と電話で連絡した直後、その仲間の名前で添付ファイル付きのメールが送られてきた。ファイルの中身はウイルス。もちろん、仲間はそんなメールは送っていない。いまでも私のもとには世界各国の仲間の名前でウイルスメールが届く」と証言する。人権弾圧やサイバー攻撃の道具となっている中国のインターネットに、グーグルが今後どんな“戦争”を仕掛けるのか、注目だ。
2010年1月15日 zakzak

■こうした話は現地の人達にとっては衆知の事実で、日本からの留学生もパソコンや電話を使う時には細心の注意を払うものです。グーグルがチャイナ市場に参入する時に、いろいろと調査したはずですから、やはり商売優先の苦渋の選択は間違っていたのではないでしょうか?「他山の石」として肝に銘じておくべき企業がたくさんあるような気がしますなあ。グーグルがどこまで頑張れるか……。


米グーグルが中国事業からの撤退検討を表明したことは、巨大市場の魅力から規制に妥協しながら進出してきた情報技術(IT)企業が表現の自由や検閲など中国特有の問題に対して改めて「踏み絵」を突きつけられることになる。グーグルのデビッド・ドラモンド最高法務責任者は……「検閲を受け入れ続けることはできない」と述べ、中国政府によるインターネットサイトの検閲を問題視していることを強調した。

■グーグル上層部でも妥協か?拒否か?と参入時以上に悩んだようですが、法務責任者という立場上、チャイナの度を越したやり方は看過できないのは当然でしょう。でも、そういう環境に耐えて慣れているのが世界最大の?市場と呼ばれるチャイナなのであります。


中国では国内の人権・民族問題などに関して検索した場合、「法律と政策に基づいて検索結果は部分的に表示されない」との断り書きが出るほか、人権や政治に関係する単語が突然、検索できなくなる。ネットに限らず、情報関連産業に対する中国政府の規制は厳しくなる一方だ。昨年には「青少年を有害情報から守る」という名目でネット閲覧規制ソフトをパソコンに搭載するよう義務づける方針を発表。今年5月からはIT製品の機密情報を強制的に開示させる制度が導入される見通しだ。

■ネットに対する規制は何処の国でも問題になっていますが、「有害情報」の定義は各国の事情によって大きな違いがあるようです。宗教関連の冒涜情報に敏感な国もあれば、性的な内容に過敏な国もあるようですし、勿論、独裁政権の国ではエライ人に対する批判は命懸けの所業。日本は世界でも珍しいネットが野放し状態になっている国だとも言われているとか……。


グーグルは2006年に中国に進出した際には検閲を受け入れた。しかし、08年春のチベット暴動が激化して以降、グーグルの動画投稿サイト「ユーチューブ」への中国からの接続は当局によって遮断されている。グーグルのポルノサイトへの接続規制が甘いとして当局から非難を受けるなど当局の検閲に振り回されてきたのが実情だ。

■チベット騒乱が起こらなければ「ポルノ・サイト」に目くじら立てることも無かったのでしょうなあ。上手に話を玉石混交にして自分の主張を押し通す手際は際立っているチャイナですが、受身の姿勢から攻撃に転じたのは失敗でした。米国はある程度までは慣用ですが、攻撃を受けるのは大嫌い!ですからなあ。


グーグルの事業全体に占める中国の比率は現時点で小さいが、成長市場からの撤退は中長期的な経営戦略に打撃を与えかねない。対中依存度がグーグルより高いとされるマイクロソフトやヤフーなど他の米IT大手にも影響を与えるとみられる。
1月14日 読売新聞

■万が一、本当にチャイナ撤退となれば、グーグルはそれを商売に利用して「我々は去った!」とか何とか自社イメージの向上に徹底的に利用し宣伝に使うのでしょうか?撤退した検索サイトと撤退しない他社とを比較するのは米国ではありふれた宣伝方法ですから、有り得る話でしょう。それが携帯電話の分野にまで影響が広がったらエライことになりそうですなあ。

続・グーグルVSチャイナ 其の壱

2010-01-17 17:33:33 | チベットもの
……15日に閉幕したチベット自治区の人民代表大会(議会)は、自治区政府の新しい主席にバイマ・チリン氏(58)を選出した。辞任したジアンパ・ピンツオ前主席(62)は、同大会の主任(議長)に選ばれた。……新主席は、18歳の時に中国人民解放軍に入隊、1986年から同自治区政府に転じ、秘書長、副主席などを歴任した。中国当局は昨年末から、チベット独立の動きを厳しく取り締まる方針を確認する一方、空港建設など経済新興策を発表した。今回の人事はこうした少数民族政策を強化する動きの一環とみられ、中国当局は新主席のもとでアメとムチを使い分けながら、チベット統治を加速させそうだ。
1月15日 産経新聞

■逆算しますと新主席は1952年生まれで1970年に人民解放軍に入って16年後に政界に移ったことになります。ダライ・ラマが亡命せざるを得なかったチベット動乱の時には7歳……。この人事が「アメ」の効果を持つのかどうか?甚だ疑問ではありますが、実質的な自治区トップである共産党委員会書記は漢族の張慶黎が居座るそうですから、こちらの方は間違いなく「ムチ」の役目を存分に果たすことでありましょう。チベット人の後任が陸軍出身のチベット人になったからと言って2008年3月に勃発したラサ騒乱の記憶が薄れてしまうことも無いでしょうなあ。

■騒乱直後には真偽不明の映像が乱れ飛んだものですが、その後は厳重な報道管制が敷かれ電話盗聴も以前にも増して露骨に行なわれるようになったようですが、そうした動きは映像記録に残らないサイバー空間へと広がって行ったのでした。


……米グーグルと中国当局が火花を散らしている。中国や米国、欧州で活動する人権活動家が使用していたGメール(同社提供の無料メール)を盗み見するサイバー攻撃が仕掛けられたことがきっかけだ。実際、ネット上での中国当局の“弾圧”は激烈で、日本に住む少数民族の関係者は「パソコンが壊れるほどの攻撃を受けた」と証言する。サイバー攻撃の発信源が中国で組織的だったことから、グーグルは公式ブログで中国からの撤退検討を表明。対抗策として、中国側の要請で自主規制していた「天安門事件」などの“NGワード”や画像の検索を解放する措置に出た。

■これもサイバー戦争と呼べるのかも知れませんが、パンドラの箱が開いたようなもので、これでやっと検閲内容の一部が明らかになるというものです。


中国のネット事情に詳しい日本人駐在員は「現在もグーグルの公式ブログへのアクセスは遮断されたままだ。『撤退検討』のニュースは13日にネットメディアで報じられたが、理由は伏せられていた。14日から徐々に理由が報じられるようになり、公式ブログのキャプチャー画像を多くの中国人ブロガーが貼りつけている。当局は今のところ『見たいなら見ろ』という姿勢のようだ」と話す。

■「百花斉放・百家争鳴」という不思議な政治運動が1956年~1957年の間にチャイナで発生したことがあります。旧ソ連のフルシチョフ書記長による1956年の「スターリン批判」に始まる中ソ対立の時代の幕開けに当たり、「共産党への批判は大歓迎だ!」という大キャンペーンが張られたのでしたが、うっかり、その甘言に乗せられて意見を述べた人達は、1957年5月に始まる大粛清の犠牲になってしまったのでした。

■今回も「見たい奴や見ろ!」と苦し紛れに開き直ったような党政府の態度に気を許し、うっかり、面白半分であれこれ検索していると、監視組織が逆探知して一網打尽にする時が来るかも知れません。まだまだチャイナのネット監視能力やサイバイー攻撃の実力は不明な点が多いようですから、御用心、御用心。

グーグルVSチャイナ 其の伍

2010-01-16 11:05:28 | チベットもの
……マイクロソフト中国の元総裁で、現在は新華都集団CEOの唐駿氏は、「(もし本当に撤退するとすれば)史上最も愚かな決定となるだろう」と指摘した。……中国最大手オンラインゲームパブリッシャー・盛大網絡集団でもCEOを務めていたことのある唐氏。中国インターネット市場の表裏を熟知している人物だ。「グーグルの中国における業務は検索エンジンのみならず、オフィスソフトなどの方面に深く浸透している」と指摘した上で、「中国を放棄することは、世界の半分の市場を放棄することに等しい」などと語ったという。
2010年1月13日 サーチナ

■何が「愚か」なのかと思ったら、「世界の半分の市場を放棄する」ことだそうです。冷戦時代にはココム規制などがあって、見事に世界の市場の半分は閉ざされていたのでしたが、冷戦終結と同時に米国からグローバル化の狼煙が上がり、経営者たる者は世界市場全体の独占を目指して商売を考えねばならなくなったようでありますなあ。米国が提唱して推奨したグローバル化の裏側で、さまざまな闇市場が広がり続けて行きまして、とうとう核兵器のヤミ商売まで生まれてしまったとて、米国が震え上がってしまったのですから皮肉なものであります。

■ここで一旦はチャイナから引くことで、チャイナが米国好みの人権を守る体制になってから堂々と胸を張って再登場したらどうでしょう?グーグル撤退が蟻の一穴となって、国内の不満や怒りが限界まで膨れ上がり、あれこれシミュレーションされているように大分裂が起こりでもしたら、再登場する時には英雄の凱旋という扱いになったりしませんかなあ?


中国外交部の姜瑜報道官は北京で行われた定例記者会見で14日、「中国が実施しているインターネットの管理は国際社会では一般的なやり方だ」と述べた。……また、姜瑜報道官「中国のインターネットは開放されている。中国政府はインターネットの発展を奨励すると共に、その発展のために健全で良好な環境を作っている」と述べた。
2010年1月15日 サーチナ

■社会主義を標榜する独裁政府が「健全」という言葉を使うのを聞くとゾッとしますなあ。何せ「粛清」やら「浄化」が飯より好きな連中が権力中枢で増殖することがありますと、国民の半分が死んでも構わない!と叫び出しますからなあ。先に引用した業突く張りはチャイナ市場は「世界の市場の半分」だと言っていましたが、徹底的に思想的な検閲を行なっている限り、チャイナのインターネットは極端に商売に偏った「半分」しか機能しない状態にあると言えるのではないでしょうか?それをチャイナでは「健全で良好な環境」と呼んでいるのですが、一体、誰にとって良い環境なのでしょう?


……米グーグルが中国政府に対し、ネット情報の検閲をやめるよう求め、中国撤退を示唆した問題に対し、米政府と米企業は経済、安全保障など今後の米中間に深刻な影響を与えかねないと困惑している。……事態がこじれた場合、これまで米中経済関係の拡大を支持し緊密化を米議会に働きかけてきた米産業界が急速に消極的な姿勢に転じる可能性もあるという。

■米国も一枚磐ではないので、チャイナ、チャイナと草木も靡(なび)いているわけではありません。人権を全面に押し立てて新しい大統領が現われて、歴史の桎梏(しっこく)だった黒人問題にも決着がついた象徴を手に入れた米国の人々は、経済的な不況に苦しみつつも建国以来の原理原則を思い出しているのだろうなあ、と想像してみればグーグルがチャイナから撤退!という事件は象徴的な意味を持って行くのではないでしょうかな?


米企業間のグーグルを含む20以上の大企業がサイバー攻撃を受けたとされている。米議会の対中強硬派が勢いを増しており、米政府は情報当局を使って中国政府のサーバー攻撃への関与を徹底的に調査せざるを得ないとみられる。中国当局がかかわっていることが判明すれば、民主主義や人権の擁護のためにネットの「表現の自由」は不可欠との世論がさらに高まるのは必至。グーグルが中国市場から撤退するようなことになれば、米国を代表する企業では1989年の天安門事件以来初のケースとなり、産業界や議会の親中派も守勢に立たされることになる。

■盗聴やらネット監視を強化する対テロ戦争を支える『愛国法』が成立している米国ですが、言論自体を封じ込めているわけではありません。ネット上に物騒な文言を書き込み続ければ重要な監視対象とされるでしょうが、それだけで逮捕・拘束されるわけではありません。米国流の自由にも、米国の特色という限界はあるのですが、チャイナと肩を組んで世界をG2体制で動かそう!などという事は想像も出来ない段階なのだと再認識すべきでしょうなあ。


米政府としてはとりあえず、中国外交幹部に「深刻な懸念」を伝えるとともに、ワシントンや北京で中国側との協議を続ける方針だが、今秋に中間選挙を控えていることもあって、米政府は難題を抱えたといえそうだ。
1月15日 Record China(

■どこかの国のように原理原則を投げ捨てて変な友好関係を偽造することを外交と考えるような愚かなことをしないのが米国の矜持というもので、時には滑稽にも見える大義や正義を振りかざして戦争も辞さないのが米国流。アフガニスタンや北朝鮮の問題を共同で解決するのには不可欠なチャイナでありましょうが、それとこれとは別の話だ!と切って捨てられる明快さが米国に求められることになりそうです。

■本来なら、大訪中団を率いて凱旋?帰国したクラッシャー小沢幹事長にもコメントを求めたいところですが、検察との鬼ごっこと隠れんぼで忙しいようですし、ハイチが大震災に襲われても知らん振りの冷たい「友愛」主義者の鳩山サセテイタダク首相などには、誰もこの件で質問さえしていないようでありますなあ。

■直近の報道によりますと、グーグルは実力行使に出ているらしく、ダライ・ラマ法王の写真や記事、あるいは天安門関連の情報に対するブロックを解除したとか……。アクセス数が急上昇してネット広告業界は声を殺してバンザイ三唱をしているのでしょうか?チベット地域のパソコン・ネット普及率は決して高くはありませんが、この種の情報は口コミで瞬く間に広がりますから、あちらの方でも声を潜めて画像に向って「オンマニペメフム」と唱えているチベット人が急増しているかも知れませんなあ。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

グーグルVSチャイナ 其の四

2010-01-16 11:00:52 | チベットもの
■さてさて「検閲国家」の悪評判を立てられてしまった北京政府はどんな対応を取るのでしょう?

……撤退を検討していることについて、中国の識者・陳行之氏は自身のブログで、「グーグルが中国から撤退すれば、広告代理店・検索エンジン最適化(SEO)関連業種を中心に5万人が失業、20万人以上の個人がネットビジネスのルートを絶たれ、100万社以上の企業のインターネットでのプロモーションに影響し、1億人以上のネットユーザーが“正常”に情報を検索できなくなる」と指摘した。

■あれよあれよと思う間に世の中はネット社会になってしまい、当然、企業社会も怒涛の勢いでIT化が進む時期にチャイナは改革開放の経済至上主義時代に突入したのでしたから、ほぼ無から始めて一挙に世界最先端の技術をパクリにパクリ……ではなく?貪欲に学習・吸収して巨大産業に育って上げたのでありました。何でもかんでも人海戦術を好んだ毛沢東時代を除いて、チャイナは常に過剰人口と余剰労働人口に苦悩する場所でしたから、高学歴者を大量に採用してくれるIT関連産業が栄えるのは、真に結構な話でありました。

■文字の国だの漢字の故郷だの、いろいろと立派な呼称がありますが、実際には読み書き能力を持つ人は常に極僅かだったチャイナが、やっとまともに識字率が上がりまして、何とかデジタル化時代に滑り込んだようなものです。従って昔ながらの読み書きからキーボードを使う技術を習得する人口は着実に増えて行く訳であります。そこに目を付けたのが世界のグーグル!だったのでした。まだまだ質の良い電力を安定的に供給できない貧困地帯をあちこちに広々と抱えているチャイナですから、ネット利用者はこれからますます増加するはずでしたが……。


グーグルの中国におけるシェアは3割強とされ、3億5000万人前後とされる中国のインターネットユーザーのうち、確かに1億人ほどに影響を与えることになる。……もしグーグルが本当に撤退すれば、グーグル以外の検索エンジンへの当局からの検閲・監視が相対的に強化されることになり、中国の検索エンジンの“正常”な運営及び市場全体に大きな影響を与えると指摘する。

■建国以来、報道と政治宣伝との間に何の区別も無かったチャイナで本来のインターネットの機能が存分に活かせるのか?という疑問は当初から囁かれていて、新聞や書籍の活字文化でも、恐ろしい事に私信まで平気で開封して徹底的な検閲・監視を行なっていた独裁政府が、ネットだけを野放しにする筈もなく、ソ連崩壊を目の当たりにした指導部は、間違っても政治面での開放などをしたらエライことになると学習しております。開放されるのは専(もっぱ)ら経済分野に限定して頭の中は銭金でいっぱいにして政治的な思考が入り込めないくらいに、先を争って豊かになれば良いというのが小平以来の鉄則。


陳氏は、「(5万人の失業者やそのほか上記の影響について)これらの代価は中国政府は(短期的に)受け入れられるかもしれないが、決して軽視できない困難をもたらすことになり、しかも影響を受けた人々の怒りは政府に跳ね返ってくることが予想される」と指摘している。……「すでにビジネス的な問題ではなく、社会的・政治的な問題」と指摘、「(事態がさらに混乱し)世界最大の検索エンジン・グーグルに撤退を迫るような形になれば、中国は国際社会からの批判を免れない」とし、「政府とグーグルが協議し、妥当に解決することを希望する」としている。
2010年1月15日 サーチナ

■政治と経済とを明確に分離して人民を制御しながら体制を維持するという虫の良い綱渡りが成功するかどうか?チャイナの市場を不況脱出の切り札と頼む人達の多くは、政治的な息苦しさは他人事として我慢したり見て見ぬ振りでやり過ごし「郷に入っては郷に従え」の諺通りに商売に励んでおられる由。しかし、GNPが上昇すれば必ず政治的な問題に敏感になる人達が増えるのは避けられませんから、やれチャイナが日本を抜いた!次は米国を抜くかも?などと右肩上がりの皮算用をしていられるのも時間の問題ではなかろうか?と思っていたら、今回のグーグル撤退騒動が起こったのでありました。

グーグルVSチャイナ 其の参

2010-01-16 07:51:06 | チベットもの
……グーグルがサイバー攻撃をどうやって発見したかは不明だが、同社は数週間前から調査を開始している。グーグルがサイバー攻撃と中国当局との関連を示す証拠の収集を進める一方、同社のエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は、ページ、ブリンの両氏と対応方法の協議に入った。……グーグルが中国にとどまり、中国の政治体制に従いつつも変えられるところは変えていく努力をすべきか、あるいは中国から撤退するかで衝突し、激しい議論に発展したという。……

■規模だけは確かに世界一の大きさを誇るチャイナ市場ですから、商売人としては苦労して食い込んだ金城湯池になり得る場所を捨てるのは堪えられない愚挙でありましょう。しかし、こういう議論になりますと常に「原点」を論拠にする側が有利になることが多いようです。創業の精神、企業の目的など利益の前に必要な重要事項を再確認し続けていれば、バブル騒動に巻き込まれることもないのでしょうが……。


……シュミット氏は、中国の自由化を進めるために中国で事業を展開することは道徳的な意義があるという自身の長年の考えを主張したという。ブリン氏はその意見に強く反対し、グーグルはすでに十分な手段を尽くしたと述べ、これ以上検索結果の検閲を正当化することはできないと主張した。この議論の結論がどのようなものになったかは明らかになっていない。だが結果的に三氏はこの種の攻撃について沈黙を守ることは中国側に加担することになると判断し、サイバー攻撃を受けた事実を公表することで合意したという。

■どちらの主張も「中国の自由」が重要な要素になっているので、単なる儲け話のレベルを超える上質な議論が展開されたのでしょう。どちらにしても北京政府にとっては決して有り難くない話になってしまうのですが……。


さらに三氏は、サイバー攻撃の事実を伝えるブログ記事に、人権に関する文言を加えることにも同意し、「これまでのウェブ上での発言の自由に対する制限なども踏まえて、中国事業を再検討する」との見解を掲載した。米国にとって重要性を高める一方の中国に反旗を掲げたグーグルに、他の米国企業がどう反応するかが注目される。経験豊富な観測筋は、グーグルや米国は、インターネット検閲などの問題で中国を譲歩させることは不可能とみているようだ。
2010年1月14日 ウォール・ストリート・ジャーナル

■相手が誰であっても、たとえ特例で会わせて貰った相手でも、絶対に頭は下げない!というのがチャイナ流。共産党政府が決めた事はすべてが正しく絶対に間違いは無い!というのが体制の生命線ですから、この程度のことでもう一つの生命線である検閲体制を止めるなどということは有り得ないでしょう。