旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

★『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中

2005-12-31 23:58:00 | お知らせ
昨年、暮れ忙しい最中に、旅限無は『チベット語になった『坊っちゃん』』という本を山と渓谷社より出版しました。業界の力関係で、全国の書店で簡単に入手できる状況には無いのが、実に心苦しいのですが、旧弊に安住している配本体制を乗り越えつつあるネット通販で、何と海外在住の方にも御購入いただいている由。便利な世の中になったものです。今年は『坊っちゃん』100周年とも仄聞(そくぶん)いたしました。是非、漱石が残した財産を再読して頂きたい。そして、関連本として拙著も手に取っていただけますれば、望外の幸せと存じます。以下に、恥を忍んで中身をおずおずと紹介させていただきます。

旅限無は1998年から2000年まで中国・青海省でチベット語を学び、2001年の1年間はチベット人学生にチベット語で日本語を教えておりました。この本はその時の体験・思索をまとめたものです。

■本の概要

本の最初はチベット留学の動機から始まります。奇縁で入学したのが、パンチェン・ラマが設立した中国青海省の民族学校で、その内部で起こっている諸問題のレポート部分が続きます。
「チベット語の蘇生」の試みについて可能な限り詳細に述べましたが、鍵となるのが仮名文字と文法です。作中の授業を一緒に受けて頂きますと、実際に生徒達が体験した興奮を共有できます。さだまさし氏の歌が、冒頭と最後に登場して重要な役を演じます。チベット語と日本語の共通性が「奇跡」の種なのですが、授業内容・教授法を詳細に記述してその種明かしをしまして、後は一気に『坊っちゃん』翻訳の山場へと向います。
日本人にとっての夏目漱石が、今のチベット人にとっても重要な人物になって行く物語は、教育や日本語に危機感を持っている方々に訴えるものが有ると思います。チベットと日本の「近さと遠さ」を考える様々なエピソードは、今までに無かった視点から、チベットやアジアを考える多くのヒントになるでしょう。チベット人を大いに助けた「振り仮名」の効用を再確認しようと、多めにルビが振られているのも特徴です。

■章立て

巻頭 チベットの海
序章 拝啓、さだまさし様
第一章 チベットとの出会い
第二章 チベット留学
第三章 チベット語の可能性
第四章 チベットの坊っちゃん先生
第五章 息を吹き返したチベット語
第六章 別れの時
巻末  膠着語回廊

■宣伝

・どうしてチベット人学生達は日本語を学習して半年『坊っちゃん』翻訳できるようになったのか――チベット文化圏の青海省の山奥で起こった「奇跡」の物語!

チベットの歴史・文化,仏教,中国の少数民族政策,膠着語(日本語,チベット語,朝鮮語,トルコ語,モンゴル語等)に興味のある方必読の書!

『チベット語になった『坊っちゃん』』(定価:1600円)山と渓谷社より発売中!

どうぞ宜しくお願いいたします。

年末にトカゲの尻尾がちょろちょろ

2005-12-27 13:34:17 | 社会問題・事件
■朝から晩までテレビに出ずっぱりとの悪評高い、みのもんたさんですが、複数のメディアが何にでも説教がましく顔を出すみのさんも「歌番組の素人」だと、もっぱらの前評判を立てている紅白歌合戦も近付きまして、この10年ほどは一度も鑑賞していたい者としましても、番組の出来栄えが気になるところです。仰々しく発表された出演者リストを見ても、8割がたは誰が誰やらさっぱり分からず、カタカナとアルファベットが乱立している様子だけからも、大変な混乱とごった煮ぶりが漂ってきますなあ。

■ダシの効いた美味しい味噌汁に季節はずれのデッカイ苺を載せたショート・ケーキを投げ込んだような、実に奇妙な味わいを残して嫌な事が続いた年が終わるのでしょうなあ。報道によりますと、みのさんの下には賑々しく司会チームが付くのだそうで、間抜けな証人喚問みたいに、主人公の歌手よりも長く脂ぎったみのさんの顔を中心にして軽薄な若い司会者がワイワイ集まって、愚にも付かないアホ話をして喜ぶのでしょうか?みのさんの黒ずんでテカテカした顔は厄除けの飾りには丁度良いかも知れませんが、わざとらしい馬鹿笑いの表情を眺めながら美味しい酒は飲めないでしょうなあ。

■ますます民放のパクリが板について来たNHKは、どう見ても『朝まで生テレビ』の遅過ぎる物まね形式で番組を作っていますし、先が見えない若手芸人?を寄せ集めて子供をバカにした番組も作っているようです。ニュース番組の手法も、久米宏さんが始めたらしいミニチュアやジオラマを多用した番組作りをパクッテいますなあ。昔は上品に料理番組を作っていたのに、民放に毒されてバクバクと大口開けて物を食う番組も増えているとも聞きますぞ。既に、番組の中身が「民営化」されているのに、金の集め方だけは偉そうなままでは、存続は難しいでしょうなあ。

■潮来の伊太郎元会長は、選りによって読売新聞社に草鞋(わらじ)を脱ぐ事に決まったそうで、昔の記者仲間が君臨している職場が、きっと自分には一番合っていると判断したのでしょう。何だか、生まれ故郷の川に戻って来る鮭みたいな人です。よく野球のルールも知らないらしいナベツネさんと野球中継の視聴率を上げる変なアイデアでも練るのでしょうか?嗚呼、来年のプロ野球は絶望的につまらなくなりそうですなあ。「日本シリーズ」が「紅白野球合戦」に衣替えするかも知れません。


紅白歌合戦などの番組制作費詐取事件で詐欺罪に問われた元NHKチーフプロデューサー、磯野克巳被告(49)の公判が26日、東京地裁(村瀬均裁判長)で開かれ、磯野被告は「プール金(裏金)を作ることが大きな仕事のひとつで、どれだけ作れるかが能力。最低年間2500万円、目標は3000万円と上司から言われていた」と証言し、裏金作りは仕事という認識だったと強調した。

■日本の国民が「外務省の裏金」を忘れ、競馬馬と言えばディープインパクト、そのちょっと前はハルウララを思い浮かべるようになって「アケミボタン」の名をすっかり忘れたのに、内部から腐っているらしい北海道警察の「裏金」を髣髴(ほうふつ)とさせる事件を起こしたNHKは、人の口には戸は立てられず、公金横領と内部分配の実態がちらちらと暴露され始めたというわけです。愛人とイチャつく資金だったとか、自動車や装飾品に金をかけていたとか書かれたことも有りました。全NHK職員の中に紛れ込んでいた唯一人の悪人が起こした事件だと言い張りたいNHKは、誰も認めていないのに「変った、変った」と自画自賛しているようです。


また、磯野被告は「(昨年12月4日の逮捕前に)NHKの人間からタイかフィリピン、香港に半年ほど逃げろ、NHKのことは話すな、金はすべて私的に使ったことにしろなどといわれた」と述べ、逮捕直前には3週間ほどNHKが用意した都内のホテルに宿泊していたことも明かした。産経新聞 - 12月27日

■その海外逃亡費もホテル代も、「皆様から頂いて大切に使っている受信料」から出ているのでしょうに!生贄(いけにえ)にされたサザエさんと同じ姓を持つ元チーフプロデューサーが「上司」と言っているのですから、管理職から理事、会長まで連なる「上役」達は、出世の階段を登る間に「裏金」の山分けを続けていたとしか思えませんなあ。市役所や警察で起こっている裏金騒動も、最高責任者になった人が、ずっとその習慣を守っていた一味だったからこそ、事件にもならずに「裏」での処理が可能だったわけです。NHKで育った幹部連中が「変った、変った」と百万遍言っても、誰も信用はしないでしょうなあ。

■組織ぐるみで裏金やら無駄遣いを楽しんでいると、末端から尻尾が出てしまうようです。1000億円を大阪湾に捨てた大阪市ですから、多少の公金が消えても、問題は無いと考える職員が出ない方が可笑しいのでしょうなあ。ヒマラヤ山脈みたいな借金を作った本人が、小泉さんを真似て「改革!」の旗を振って辞職して再出馬、大阪一流のベタな冗談かと思ったら、再当選して万歳三唱。あれは万歳ではなくて、全面降伏のポーズではないでしょうか?


大阪市は27日、路上生活者など身寄りのない生活保護受給者11人が病院で亡くなった後の遺留金200万円を着服したとして、市立更生相談所・緊急入院保護業務センターの男性職員(27)を懲戒免職処分とした。パチスロで膨らんだ消費者金融の借金約300万円の返済に充てていたという。市によると、職員は昨年9月から今年11月まで、生活保護を受けながら入院していた54―75歳の男女11人が死亡後に、病院側から預かった遺留金計約200万円を市に納めないで着服した。職員は全額を弁償しているが、市は近く業務上横領などで大阪府警に刑事告発する。職員は「一時的に使って後日返そうと思っていた」と話しているという。読売新聞 - 12月27日

■200万円くらいなら、弁償も出来るでしょうが、兆を超えた限りなく背任に近い税金の無駄遣いは逆立ちしても穴埋めは不可能ですなあ。大阪という場所は、うっかりゴミを出せばケバケバしい金玉飾りのゴミ処理場を使わねばなりませんし、市役所で手続きしようと思ったら恥を忍んで日本一の高層建築に行かねばならないし、海辺を散歩したら借金の象徴の埋立地を見なければならないのでしょう?楽しく生活が出来なくなってしまいましたなあ。そして、おちおち病院で死ぬ事も出来ない場所になってしまったようです。生きている間は、絶対に埋まらない借金の穴に投げ込む税金を搾られ、死んだら死(市)の職員に身包み剥がされるのでは、どうにもなりませんなあ。

■たまたま、大阪市で発覚した不祥事ですが、おそらく世知辛い世の中ですから、他の自治体でも似たような不心得者がいるとは予想できます。親方が税金や受信料をじゃぶじゃぶと無駄遣いして知らん振りしていれば、下っ端だってちょびちょび悪さをするでしょう。紅白歌合戦の元プロデューサーも、大阪のパチスロ好きな職員も、ちっちゃなトカゲの尻尾として切り落とされて、本体のNHKも大阪市役所も、もうしばらくは延命するのでしょうなあ。どちらも時期は違っても国営どころか「国家管理」の下に置かれて再建するようになるのでしょうが、親方連中が「ワシが在籍している間だけは大丈夫」と思っている限りは、その運命から逃れられないのでしょう。いよいよ問題の核心部分に近付きつつある耐震偽装問題も、近々「トカゲの尻尾」候補が絞られる事になるでしょう。本体を揺さぶったりしたら何が飛び出して来るのか、想像しただけで恐ろしいですからなあ。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

師走は借金取りが走る

2005-12-27 11:26:17 | 社会問題・事件
■師走(しわす)は借金の清算の時期として有名で、落語などでは借金取りから逃げ回って大晦日を過ごす話が幾つも有ります。江戸時代は、元旦にさえなれば前年の借金は一時棚上げで、お互いに新年を祝って笑っていたと言うのですが、呑気な時代だったのでしょうなあ。今では日本自体が目も眩むような大借金をこさえてしまっているのですが、貸主の国民(国債を買っている人)から喧しく言われないので平気な顔をしているようですなあ。どうぜ、返せるわけのない金額なので、貸主一堂が暗黙の了解でずっと棚上げしているのかとも思いますが、無理に取り立てをしてみたところで、政府にヘソクリがあるじゃなし、結局は大増税で取り立てに回っているはずの自分が借金の肩代わりをさせられるのですから、ここは黙っておいた方が得なのでしょうなあ。

■しかし、黙っているということは、「その内何とかなぁるだぁろう」と昔懐かしい青島幸男さんが作った歌のような気分で過ごしているわけではなく、将来の日本国民が払ってくれるのだろう、と全員が理由も無く信じているのです。ところが、「少子化」現象がどんどん深刻化し続けているのですから、単純に借金を頭割り計算したらエライことになりますし、ニートなどと変な名前で呼ばれる借金返済能力ゼロの人口も増加中ですから、早めに返済プランを立てておく事もできませんなあ。借金取りが本気になったら、借り主の生死を勘案せずに情け無用の取り立てをするもので、その代表は銀行なのは有名です。バブル時代はどんなに断わっても「借りてくれ」と手を変え品を変え、日参して無理やり借金させておいて、バブルが破裂すると国から税金を貰う一方で、ムチャな取り立てをしてあちこちの事業者を泣かせました。

■「晴れた日には傘を無理やり差しかけて、雨が降り出したら傘を奪い取る」とマスコミも書きたてたのですが、この比喩は生ぬるいものだったようです。本当の修羅場は奇怪な無限責任を追及して命まで奪い去ってしまう残酷なものだったようです。「失われた10年」の間に、どれ程の理不尽な自殺に追い込まれた日本人がいたのか、新聞の社会面と政治面と経済面という「縦割り行政」の壁に阻まれて、失政と悪質な業界によって自殺に追い込まれる実態は報道されませんでしたなあ。


政府は26日午後、首相官邸で自殺対策関係省庁連絡会議(議長・二橋正弘官房副長官)を開き、1998年以降3万人台で推移している自殺者を、今後10年間で2万人台前半に抑えるとした総合対策をまとめた。倒産やリストラなど経済苦を理由とした中高年層のほか、最近は若年層の自殺が増えていることから、こうした年齢層への対策をきめ細かくすることにした。中高年層に対しては、失業した際の相談窓口の強化や、経営危機に直面した中小企業への支援策を拡充する。一方、若年層はインターネットを使った集団自殺の呼び掛けに呼応するケースが増えていることから、違法な自殺サイトの閲覧を制限するソフトの無償提供、スクールカウンセラーの充実などを盛り込んだ。時事通信 - 12月26日

■声を上げられずに銀行と政府を恨んでいる遺族の皆さんは、こんな新聞記事をどんな思いで読んでおられるのでしょう?「何を今さら」という気持ちが込み上げて来るのではないでしょうし、銀行と縁を切って自力でバブル崩壊を乗り切った人達も、この記事には腹が立つでしょうなあ。でも、なぜ突然こんな表面的には「温情」を見せるような事を政府が言い出したのでしょうなあ。時は、ヒューザーに騙されたマンション住民と、内河カリスマに騙されたホテル経営者が、寒波襲来の寒空の下に放り出されつつあります。これこそ失政が生み出した悲劇ですから、個人的な「経済危機」などではありません。国が認可した「詐欺事件」なのですから、騙されない方がおかしいのです。

■別に「自殺サイト」など頼らずとも、どこかで気持ちの支えが無くなった人が早まったら、ばたばたと連鎖自殺が起こる可能性さえあります。生きている限りは借金を返し続ける覚悟をして組んだローンが、突然支払い額だけ2倍になって、手持ちの資産は無価値になるのですから、どんな元気付けの言葉をかけられるでしょう?ちびちび同情するような保障をするのではなく、詐欺に遭った分のローンを帳消しにする英断が必要なのです。それで被害者が焼け太りなどする筈もないのですから、詐欺で荒稼ぎした連中の資産を国内も国外も洗いざらい没収して偽装離婚や国籍変更など認めない強権が必要でしょうなあ。相手は「書類」偽造の名人なのですから、なまじっかな対抗策などせせら笑って「対応策」を次々と打ち出してくるに決まっているのです。まあ、その一味に政治家やら官僚まで加わっていたらエライことでしょうし、巨大な宗教団体などが絡んでいたら真相究明は永久に無理なのかも知れません。

■どちらに転んでも、絶対に損をしない契約を結んでいる取り立て屋が銀行で、万一取りっぱぐれても最後は税金のプレゼントが有るのですから、「気楽な稼業とぉ来たもぉんだぁ」と青島節を歌っていられる身分です。だらだらと証人喚問をしている内に、思い余って自殺でもしたら、「保険金が入りましたね?」などと電話するのは想定内で、わずかな資産を差し押さえて保証人からも身包み剥いで行きますからなあ。国が予算を付けて「相談窓口」やら元気付けの係を作っても、何の役にも立たないでしょうなあ。こんなに理由がはっきりしている自殺が急増する可能性が有る一方で、新聞が真相を隠して報道する自殺も有るようです。


中国・上海の在上海日本総領事館に勤務していた40歳代の男性館員が昨年5月、中国側から外交機密に関連する情報などの提供を強要されていたとする遺書を残し、総領事館内で自殺していたことが分かった。外務省は館員が死亡したことは認めているが、「遺族の意向があり、詳細については話せない」としている。複数の政府関係者らによると、館員は、総領事館と外務省本省との間でやり取りされる公電の通信技術を担当する「電信官」だった。自殺後、総領事や家族などにあてた遺書が数通見つかっており、このうち総領事あての遺書の中に、中国人の男から交友関係を問題視され、総領事館の情報を提供するよう求められたという趣旨の内容が記されていたという。
要求された項目は、総領事館に勤務する館員の氏名や、外交機密に属する文書などを上海から日本に運ぶ際に利用する航空便名――などだったといい、男は情報機関関係者だった可能性が高いとみられている。遺書の中に、「国を売ることはできない」などとも書かれており、館員は外交機密に関する情報は男に伝えなかったとみられる。読売新聞 - 12月27日

■こんな訳の分からない記事も珍しい!既に、『週刊文春』最新号でこの事件を報じているようですが、絵に描いたような謀略戦の基本「美人局(つつもたせ)」に嵌(は)められたとしか思えない事件です。記事は奥歯に物が挟まったような書き方になっているのは、要求された情報を、件の電信官が拒否したと前提しているから、死に追い詰められた本当の理由が分からないのです。橋本元総理大臣が、チャイナの女性通訳と深い仲になって外交機密を寝床で漏らした!という黒い噂が立った事が有りましたが、その真相は闇の中に葬られてしまったようです。北朝鮮を訪問していた国会議員も、熱烈歓迎の夜のプログラムに大喜びして、帰国の手土産には面白いものが写っているビデオ・テープを渡される、などという間抜けな噂まで流れたことがあります。

■大日本帝国の軍事官僚エリートも、海外では良いカモだったという話も有りますから、脇の甘さは日本外交の伝統なのかも知れませんなあ。「経済的な理由」だの「個人的な理由」だのと、自殺の真の理由を封印して報道している内は、理不尽な自殺は減らないのではないでしょうか?故中川一郎さんの自殺理由や、故竹下登さんの秘書の自殺の理由も良く分かっていないくらいですから、不動産詐欺に遭って自殺に追い込まれる庶民の事件などは、熱心に追求する記者も居ないでしょうなあ。「3万人」という驚くべき人数の中に、どれ程の悲劇と怨念が渦巻いていることか、単なる読者の身では想像する材料さえ手に入りません。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

来年の日中関係も楽しくはなさそう 其の弐

2005-12-26 13:47:24 | 外交・情勢(アジア)
■歪な経済発展で中華2000年初の金持ち階級が増えて来たので、貧乏人からむしり取るよりも、金持ち連中から合法的に巻き上げる事にしたのでしょうが…。うまく行くのでしょうか?

国務院(中央政府)はこのほど、改正個人所得税法実施条例を決定し公布した。施行は来年1月1日。年収が12万元を超えた納税者に税務当局への申告義務を課したのが大きな特徴で、駐在員など在留邦人も今後の関連通達などに注意する必要がありそうだ。

■お隣のプーチンさんが石油利権をホドロコフスキーから奪って独占する時に「脱税容疑」を使った事を忘れては行けませんぞ!税金のお目こぼしで見返りを求めたり、出し渋ったら容赦なく「脱税だ!」と難癖を付けるくらいは朝飯前の難物がゴマンと居ますから。ご用心、ご用心。


今回の条例改正は、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が今年10月に個人所得税法自体を改正したことに伴うものだ。来年1月1日施行の改正個人所得税法は、個人所得が国務院規定の額を超えた場合などは納税者自身による申告を義務付けている。改正実施条例はこの規定に対応し、申告が必要な年収の基準額を12万元と定め、これを上回った場合は年度終了後3カ月以内に所管の税務当局に申告しなければならないと定めた。

■人民解放軍のお偉方や党幹部の所得までガラス張りになれば大したものですが、国全体がマフィア経済みたいなものですから、高額納税者のリストが楽しみですなあ。発表するかどうかは分かりませんが、何処かから漏れたらきっと笑える代物でしょう。まさか、麻薬王だの偽札業者、偽物ソフトで荒稼ぎしている連中の名前は出ないでしょうが、上海あたりで商売している人ならば、「あれ?あの人が出ていないぞ!」と数十人の名前が思い浮かぶような物になるに決まっています。


また改正実施条例は企業など源泉徴収義務者に対し、源泉徴収を実施した次の月の末までに、納税者(企業の場合は従業員)の基本的な個人情報や所得額、各納税者の個別の源泉徴収額とその合計金額を、所管の税務当局に報告することを義務付けた。
ここまではNNA - 12月26日

■資本家階級にも党員資格を認めたのが数年前でしたが、待っていたのは「納税の義務」だったわけです。党員のコネが何処まで効くのか、今からいろいろと試している人が多いでしょうなあ。権力中枢の序列がぱっと変れば、主役と脇役が入れ替わり、善玉と悪玉もころりと変る国ですから、人事に関する情報が高く売り買いされるでしょう。


中国人民解放軍の4総部(総参謀部、総政治部、総後方勤務部、総装備部)の新たな首脳人事が25日明らかになり、日米両国などとの対外交渉を担当してきた熊光楷・副総参謀長(66)=上将=が引退したことがわかった。胡錦濤国家主席が3月、国家中央軍事委員会主席に就任し、軍を完全掌握して以降、初の大型人事異動になった。
軍機関紙「解放軍報」のホームページによると、空軍の劉振起中将が総政治部副主任に、空軍副司令官の李買富中将が総後勤部副部長にそれぞれ昇任した。熊氏は定年に伴う引退とみられ、後任は任命されていない。空海軍出身幹部が重用される例が多く、軍のハイテク化を重視した人事異動との見方もある。
熊氏はたびたび日米両国などを訪れ、防衛交流や台湾問題などの実務を担ってきた。中国国際戦略学会会長などの肩書で、今後も国防・安全保障問題に携わっていくとみられる。
毎日新聞 - 12月25日

■軍が最大の総合商社と言われている国ですから、戦争と商売がぴったりと癒着して、個人所得なのか部隊の所得なのかの区別も無いとも言われます。欧米からパクッたハイテク兵器を自前で作っては安値で物騒な国々に売り捌く商売が、これからもますます盛んになるという事でしょう。10年経っても「メイド・イン・チャイナ」の自動車を輸入してくれそうな国は無いでしょうし、コンピュータも怪しいものです。外貨稼ぎは100円ショップの商品と武器が中心で、石油や他の鉱物資源に加えて膨大な食糧を輸入する綱渡りが、きっと来年も続くのでしょう。「反日」運動の標的にされている小泉政権は、来年の秋口までは続くのですから、政治記者の多くが書き散らしている「次は安倍さん」というヨタ話が本当だとしたら、小泉政権が一度も実現できなかった訪中をしなければならない弱みにつけ込まれて、政権発足直後にペンキを塗りなおした上海の総領事館音壁がまたまた汚されるかも知れませんなあ。

■せっかく高倉健さんが老骨に鞭打って感動的な「少数民族」映画に出演しても、韓流ブームの次にチャイナ・ブームが来るとは思えません。尖閣問題が火を噴くか、北朝鮮問題で東アジアの外交が破綻するか、大陸の不動産バブルが破裂するか、どう転んでも来年はエライことになりそうな、とても嫌な予感がしますなあ。

------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

来年の日中関係も楽しくはなさそう 其の壱

2005-12-26 13:46:35 | 外交・情勢(アジア)
■強引な土地収用に対する暴動やら水と土の深刻な汚染が次々と明らかになっているチャイナにとって、今年はヒドイ1年だったに違いありません。「東アジア共同体」などと、見果てぬ夢を追いかけている人達の中には、日中友好至上主義が根強いようですが、先日の世論調査でも「中国嫌い!」という声が急増している実態が報道されたばかりです。秋から毛沢東伝説をぶっ壊す大著が二種類も刊行されて、結構な売れ行きとのことです。上下に2巻本を買い込んで熱心に読んでいる人達の年齢や、学生時代の体験は簡単に想像できますなあ。昭和60年頃までは「毛沢東礼賛」すれすれの法螺話が書かれた社会科の教科書を読まされ、大学に入ればマルクス経済学に文化大革命をコジツケルような絶望的な講釈を聞かされ、雑誌や書籍にも北京やモスクワ直輸入の言説が満ち溢れていた青春時代……。

■刊行されている毛沢東批判の本に書かれている話にしたところで、びっくり仰天するような目新しい話は多くないようです。建国50周年を記念して真っ赤な100元札に毛沢東さんを刷り込んだり、テレビで大河ドラマを何種類も制作したり、詩だの書だのを印刷した豪華本が発行されたりしたけれど、現地では静かなものでしたなあ。あちこちに建っている小平・江沢民・胡錦涛が並ぶデッカイ看板を見ていれば、小平と毛沢東との間で繰り広げられた政治闘争を知っている人々は、「毛沢東理論の堅持」などと小平が言っているのはウソだ、と見抜いていますし、解放戦争から文化大革命まで、碌でもない時代だった事は誰でも知っていますからなあ。

■「反日」運動で男を上げた?江沢民の時代もそろそろ終わりのようです。


中国重慶市の裁判所は25日までに国家政権転覆罪で起訴された同市在住の民主活動家、許万平氏(44)に懲役12年の実刑判決を言い渡した。許氏の妻によると、今春の反日デモ関連の署名活動に参加したとして逮捕されていた。人権団体「中国人権」は、中国政府が反日デモを活動家取り締まりの口実にしていると非難した。
毎日新聞 - 12月25日

■ソ連の命運が尽き始めたブレジネフ末期、世界一面白いロシアン・ジョークにこんなのが有りましたなあ。

1人のロシア人がクレムリン宮殿の門前で、「ブレジネフは大馬鹿野郎だぁ!」と叫んだ。すぐに警備の衛兵に拘束されて迅速な裁判が開かれ、「懲役50年」の判決が出された。判決理由は、「国家元首冒とく罪」により懲役10年で、残りの40年間は「国家の重要機密を漏洩した」罪に対する刑罰だった。

許万平さんが言い渡された「懲役12年」の内訳は、「反日活動」と「国家転覆罪」だそうですが、その割合を知りたいものであります。まあ、どちらにしても「反」の名が付くものは何でも嫌いなのが北京政府で、人民が何に「反」の怒りをぶつけたがっているのか、一番良く知っているのも北京政府ですからなあ。

中国全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は29日に、農業税条例の廃止案を採択する。国営新華社通信は、中国の歴代王朝などが続けてきた農民への課税が初めて撤廃されると意義を強調したが、農民の負担軽減は限定的とみられる。

■日本では増税、増税の大行進が始まりますが、チャイナでは「税金撤廃」です。無神論の北京政府がクリスマス・プレゼントでもないでしょうが、人民の幸福を願う「三つの代表」としては温情溢れる支配者の徳を示す善政のつもりなのでしょう。


胡錦濤指導部は昨年、農民が抱える多くの負担の一つだった農業税の撤廃を決定。既に全国31の省、直轄市、自治区のうち28が徴収をやめている。新華社は、負担軽減は年間で計約500億元(約7500億円)に上り「約8億人が利益を得る」と強調。しかし、農民1人当たりの負担減は約62元(約930円)にすぎない。

■この書き方は頂けませんなあ。その「62元に過ぎない」税金が支払えない貧農が群を作っているのがチャイナです。強固なピラミッド型の支配が全国に行き渡っている国ですから、地方政府の幹部連中は王様気分で農民から税金以外の名目で現金ばかりでなく、農産物も巻き上げているのです。国庫に納める税金は後回しになって、鼻血も出ない搾りかす同然になってから請求されても、農業税なんか払えないのです。解放戦争時代には食糧を供出させられ、大躍進時代には大切な農機具をアホみたないな製鉄炉?で溶かされてしまい、文化大革命中は役立たずのただ飯食らいの学生を押し付けられ、改革開放経済の時代には経済格差に苦しめられる。農協も族議員もいないチャイナの農民は、世界でも稀に見る不運な身分に耐えていますぞ。


中華人民共和国の建国翌年の1950年当時、農業税は歳入の39%を占めたが、昨年は1%にまで減少。新華社も「廃止に伴う歳入への影響はわずか」と指摘しており、農民の負担減の効果も限定的との見方が主流だ。共同通信 - 12月25日

■農作業など一度もしたことが無い地主階級出身の毛沢東さんは、農民を愛するどころか、肉弾白兵戦の鉄砲玉か全面核戦争の燃料ぐらいにしか考えていなかったのですから、中華2000年の悪弊を放置するぐらい、何でもない事だったでしょうなあ。無学な農民に無駄死にさせて、自分は詩作に耽っていられる強心臓でなければ、中華人民共和国の最高権力者のままで死ねなかったのですなあ。

いよいよ出るか、自民党の党員

2005-12-25 20:43:18 | 政治
■小さな、そしてどうでも良いニュースなのに、よくよく考えると根深い問題を考えるヒントになるような記事が有るものです。何処にいるのか、日常生活ではさっぱり分からない「自民党党員」という人々がいるのだそうです。別に知らなかったわけではなく、「幽霊党員」「水増し党員」などの存在は、時々新聞にも出ますから知っていましたが、正々堂々と「自民党党員」を増やそう!などという話は前代未聞なので…。共産党の「党員」が、長い間、余りにも有名だったので他の党の党員と言われても、何をしている人なのかが分かりません。第一、選挙という最大のイベントの時にも、党員が何をしているのかまったく報道されないのですから、日頃、党員の皆さんが何をしているのか、さっぱり分かりせん。

■表向きは普遍不党をモットーにしている新聞マスコミですから、選挙の前後となりますと、「支持者」「支持率」の追跡と予想で政治面を埋め、自分達でも意味不明だとしりながらも「浮動票」などというプロにしか分からない(否、誰も本当の意味は分からないかも?)専門用語を濫用しますから、ますます「党員」の存在が怪しくなります。

自民党は党員数減少に歯止めを掛けるため、18歳以上30歳未満を対象に「ヤング党員」を募集、年間4000円の党費を半額の2000円に割り引く制度を導入する方針を決めた。同党の武部勤幹事長が22日、小泉純一郎首相に説明。首相は「いい考えだ。よく相談してくれ」と述べた。同党の党員数は7年連続で減少し、04年末で約141万人。今年は郵政反対組の離党でさらに落ち込んでいると予想される。なお、来年9月の総裁選は、総裁公選規程が有権者の党費を過去2年間納めた党員に限定しているため、今後入党する「ヤング党員」には投票権はないという。毎日新聞 - 12月23日

■ちょっと調べて見ると、「自民党党員」には「職域党員」と「地域党員」の区別が有るそうです。「地域党員」は「個人党員」と呼ぶ場合も有るようですが、ややこしいのは「職域党員」で、自民党を組織として支持している業界団体に所属している党員、なんだか普通選挙制の根幹になっている秘密投票の原則に反するのではないか?とも思える制度ですが、もっと露骨な組織選挙をガンガンやっている党も有りますからなあ。年間4000円の党費を払えば入党できるわけですが、総裁選挙の騒動が始まると誰かさんが党費を肩代わりして、自分が知らない内に党員になっていた!などという変な党員が急増するのだそうです。統計資料を調べてみますと、1978年の「党員」は約140万人で、内訳は9割が「地域党員」になっています。

■ところが、翌79年には、何と310万人!「地域党員」だけでも260万人もいる!つまり、100万人も「個人党員」が増えているのですから、自民党支持者が爆発的に増えたのか?と思いたいのですが、その翌年の80年には78年段階とまったく同じ140万人に戻っている!しかも、「個人党員」の人数が減っているのですぞ!これは一体全体、何がどうなっているのでしょう?100万人の「党員」が、一年間でぱっと現われて、すっと消えたのです。100万人分の党費は40億円で賄えますなあ。目白には常に数十億円の「実弾」が用意されていたという噂も有りましたから、誰かさんが金に飽かして名簿を買い集めて登録してしまったとしか思えないわけです。どんな時代だったか良く分かる数字です。こんないい加減な事をやっているから、いるようでいない自民党党員などと言われるのですぞ!

■田中角栄さんが闇将軍になり始めたのが、大平総理誕生の党内闘争で、不思議な事に新党員の票は全部、大平さんに集まって古い名簿を後生大事にして票読みしていた福田さんは、すっかり間抜けな敗北を喫したのでした。その時に福田さんの鞄持ちをしていたのが小泉さんだったのだそうですなあ。小泉さんが「派閥が嫌い!」と言う時には、「旧田中派が大嫌い!」と言っているのです。訳の分からない党内事情の混乱の中から、一時凌ぎで総裁選に勝ってしまった小泉さんは、こんな居るのか居ないのか分からない「党員」など眼中には無かったのでしょう。党費も払わず、税金も払わず、NHKの視聴率も払わずに民放のワイドショーばかり見ているような人達を味方に付けて「自民党をぶっ壊す!」「田中真紀子さんを外務大臣にします!」「郵便局の公務員をクビにする!」「ピョンヤンに乗り込むぞ!」「道路公団の看板を変えるぞ!」と、ちょっと落ち着いて並べてみれば、メチャクチャな「改革」をジグザグに飛び回って見せ場を作っては食い散らかしただけだと分かるような時代になっていたのでした。

■小泉さんが「いい考え」と言っている「値引き党員」のアイデアは、本当に自民党をぶっ壊す事になりそうです。それにしても、既に「家族党員」という携帯電話の料金割引制度とそっくりの「2000円党員」が存在しているようですし、年間2万円以上の「特別党員」という人もいるのだそうです。「以上」というのですから、議員が泣いて喜ぶほどの高額党費を払っている人もいるのでしょうか?でも、政党助成金やら政治献金をごっそり集めても、「足りない、足りない」の大合唱をしているのですから、「特別党員」は少ないのでしょうなあ。夏には「氷代」、年末には「モチ代」と、誰が言ったのかヤクザさんが頑張って残しているような風習を守っている自民堂の奇怪な「下付金」制度が、今も残っているようです。どこの新聞も得意げに書き立てているので、問題視しているのではないのでしょう。


支給額は衆参両議院ともに1人当たり原則200万円だが、新人の衆議院議員については、派閥に所属していない議員に100万円、小選挙区支部長を務める議員居はさらに100万円の上積みがあった。このため、党からのモチ代の支給額は、最大200万円の開きが出た。
読売新聞12月25日

■こんな馬鹿馬鹿しい話ぐらいしか「ポスト小泉!」を書き立てたい政治記者が、年末の忙しい時期に提供できる話題は無いようですなあ。田中角栄さんの全盛期には、「ご機嫌伺い」に目白に行っただけで、両内ポケットスーツのと両ポケットに札束を捻じ込んで帰って来たもんだ!と浜コウさんが言っていますのに……。小泉さんは、どこか中学校の生徒会長のような臭いを発します。情けない事に、こんな馬鹿馬鹿しいネタに関連して、もっと金が欲しい!と文句を言っている「匿名希望」の議員さんの声を政治面に載せているようです。書いている記者の方は小学校の「子ども会」レベルですなあ。

■ジュニア党員で数字が上がったら……、次はボーイ党員とガール党員、その次はキッド党員で、図に乗ってベビー党員、孫を含めて三代「党員」、恥を知らない総裁が「いい考えが!」と言う限りは何でもやればよいのです。仕舞いには、「永代供養」党員までゾンビそのままに名簿に載せれば良いです。どこかから「真面目な党員だっているんだぞ!」と言うお叱りの叫び声が聞こえそうですが、その声が自民党本部まで届く事を衷心より願っておりますぞ。そもそも、『自由民主党」は、政党ではない奇怪な集団として出発したのでしょう?比例ブロックで「自由民主党」と書いて投票した人の半分でも、もともとの自由党と民主党が水と油だった事を知っていてくれれば良かったのですが……

------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

こんな政府に誰がした! 其の弐

2005-12-24 21:14:44 | 政治
■「少子化対策」と名前を付ければ、人気商売の小泉総理が応援するに決まっているのですから、トンデモ予算だって通ります。官僚の下らない作文をパンフレットに印刷して大量にばら撒く以外に、予算の使い道は無いだろうに、55億円ぽっちの予算で企業に根強い「男尊女卑」感覚を改善など出来ないでしょうなあ。一体、どうやって女性の再就職などという困難な仕事をやり遂げるつもりなのでしょう?小泉さんを支持する自画自賛コメントを出すくらいですから、役人が書いた夜郎自大の原稿を読んで任期を全うする心算なのでしょうなあ。困った方です。

24日閣議決定された06年度一般会計予算の政府案は、新規国債発行額で「30兆円枠」を復活させ、小泉純一郎首相は、社会保障や公共投資といった政策関連経費の一般歳出を2年連続で減額する公約を果たした。だが、政策に充てる経費を借金で賄う状況は変わらず、06年度末で542兆円に達する国債発行残高を減らす見通しは立たないままだ。今後も借金を積み上げ、将来世代へのつけを増やし続けるのか。財政再建のため、痛みを我慢し歳出削減と増税を受け入れるのか。近い将来、国民は重大な選択を迫られることになる。

■「近い将来」などと便利な書き方をしていますが、次の内閣が増税シミッタレ行政を強いられるのは決まっているでしょうに!ですから、「来年秋から」とはっきり書くべきでしょうなあ。


小泉首相は、「聖域無き構造改革」の総仕上げとなる06年度予算で「30兆円枠」を実現させた。それでもなお、借金である国債発行で一般会計の歳出を賄う割合(国債依存率)は37.6%。81年度から98年度までの当初予算で国債依存度を30%未満に抑えていたことを考えれば、依然として高水準だ。積み上がった借金返済の重荷は、子や孫の世代にのしかかる。そもそも「30兆円枠」を達成できたのも、景気回復による税収の自然増の影響が大きい。国だけでなく地方も税収が増え、国から地方への仕送りに当たる地方交付税の削減に貢献したからだ。だが、税収増に貢献した企業の収益改善は05年度がピークとみられ、税収が今のペースで増え続けると想定するのは現実的でない。

■神風が吹いて延命して来た小泉内閣は、実際には借金を凄まじい勢いで増加させ、外交を破綻させて米国の沖縄駐留を半永久的に認め、欠陥住宅を野放しにして来た内閣です。中国と韓国にマトモな反論もしないで無視しているだけでしたから、国内のろくに新聞も見ない人達は勘違いして喜んだでしょうが、日本語でもマトモな議論の出来ない不思議な議員でしたから、海外で相手を納得させられる話が出来るはずはないのです。靖国問題にしたところで、靖国を「追悼」施設にしてしまった罪は大きいはずなのに、国民は気が付いていませんなあ。靖国神社と広島や長崎の慰霊碑とはまったく違うのに、政治ショーの舞台に利用したのはトンデモない話です。行ったり止めたりした中曽根風見鶏内閣よりも、罪は重いと分かるのにはもう少し時間が必要なのでしょうなあ。


来年秋の自民党総裁選まで1年を切り第4コーナーを回った小泉政権は、公務員総人件費や特別会計、政府系金融機関などを対象に大なたを振るう方針を決め、「小さな政府」実現のための改革が再加速しつつある。だが、歳出削減だけで、危機水域に入った財政を再建することなどできるのか。07年から一斉に定年退職時期を迎える団塊の世代が年金受給者になる2010年代半ば以降、社会保障費は急増する。何もしなければ、現在約88兆円の社会保障給付金は20年後には約150兆円にも膨れ上がる。増税抜きで借金累増の国の財政体質を改めようとすれば、社会保障費の大幅削減で国民に痛みを強いる以外ない。それなのに小泉首相は、06年度予算の財務省原案が内示された翌日の21日、07年に消費税率引き上げなどの増税法案を提出するのは無理だとの認識を早々と示した。不人気な増税路線は先送りし、ただ「一層の歳出削減が先」と息巻いている。
毎日新聞 2005年12月24日

■小泉改革は、見せ場は作るものの「大山鳴動してネズミ一匹」を繰り返して来ました。選挙にだけは勝つという不思議な内閣ですから、内政も外交も歴史に残る実績はほとんど作らず、まったく理由が分からない高い支持率とテレビ人気だけが記憶されるだけでしょう。後始末を押し付けられる「次の内閣」は大変です。まさか、「小泉改革の総仕上げ」とか何とか、自滅覚悟の看板を上げるのを条件に総理にしてもらう事にでもなったら、小泉改革の尻拭いに苦しんだ果てに、「小泉改革を台無しにした奴」という役回りを演じるハメに陥る危険性が高いと思われます。


自民党の宮沢喜一元首相は22日、NHKの報道番組の収録で、小泉純一郎首相の後継について「今となっては安倍さんと考えている人が多いのではないか」と述べ、安倍晋三官房長官が有力との見方を示した。具体的な根拠は示さなかったが、後継首相の条件として「自民党がばらばらにならないようにどう束ねていくかが大事だ」と、調整能力を挙げた。毎日新聞 2005年12月23日

■これは悪い冗談でしょう?中曾根さんと一緒に「ジイサンは引退しろ!」の一言で姥捨てならぬジジ捨ての身になって、すっかり老け込んでしまったのに、勘違いマスコミが時々「ご意見番」のような演出で画面に引っ張り出していますが、これこそ老醜と言うべきでしょう。「自民党がばらばらにならないように」とは、この人にだけは言われたくはない!不信任案を通された揚げ句に自民党が大分裂して野に下ったのは、全部宮澤内閣のドジが原因でしたでしょうに!バブルの後始末に失敗し、得意の経済問題はめちゃくちゃで、ちょっと得意と自負していた外交も伝家の宝刀の英語とフランス語がペラペラという看板も使うチャンスも無いままに自民党を大混乱させた総理として歴史に名を残したのが宮澤さんです。小渕内閣時代には、冗談のキツいマスコミが「高橋是清」の再来とかの悪意さえ感じさせるフレーズでバブルの後始末に担ぎ出されて、やっぱり恥の上塗りをしたのも宮澤さんでした。

■こうして見ると、自民党は新しい活力を得たとはとても思えませんし、小泉さんの首に鈴を付ける人材も払底して、わけが分からない見世物政治を続ける内に、教育行政は大混乱したし、借金は大幅に増え、海外では日本の影がすっかり米国の裏に隠れてしまったのでした。自民党を思い付きで応援した人達は、本当にこんな政府を夢見ていたのでしょうか?まさか、あの総選挙は某国の工作活動が大成功した結果だった?そんな事はないのでしょうなあ。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

こんな政府に誰がした! 其の壱

2005-12-24 21:13:29 | 政治
■予算案をまとめる時期に、またまた神風が吹いて、ヒューザー騒動に国民の目が奪われた隙に小泉さんは自画自賛できる予算案を作ってしまいましたぞ。

衆院国土交通委員会は21日、耐震データ偽造事件を巡り理事会を開いた。野党が要求した建築主の小嶋進・ヒューザー社長の証人喚問と、小嶋社長を国交省課長に紹介した伊藤公介元国土庁長官ら4人の参考人招致について話し合ったが、物別れに終わった。証人喚問と参考人招致は見送られることになった。理事会では、野党側が「真相究明には喚問が欠かせない」と述べたのに対し、与党側は「捜査に委ねるべきだ」などと主張し紛糾。結論が出ないまま打ち切りになった。毎日新聞 2005年12月21日

■限りなく黒に近い灰色が、森派と国交省に立ち込めてはいますが、これはこれで理屈が通っているのです。テトリス議員やら土建屋さん代表の自民党議員が、質問時間を持て余す醜態を二度も三度も晒しては一大事ですし、へっぽこ議員の下手くそ質問よりも専門機関の捜査に任せた方が、税金の無駄遣いを防げますからなあ。

自民、公明両党は22日、耐震データ偽造問題で野党が求めていたマンション建築主、ヒューザーの小嶋進社長の証人喚問を受け入れる方針を固めた。来月、衆院国土交通委員会で行う方向で調整する。与党は当初、捜査当局による捜査開始を理由に喚問を拒んだが、世論の反発を考慮し転換した。同問題では姉歯秀次元1級建築士らに対する証人喚問の際「自民党議員による追及が甘い」として自民党本部に抗議電話が殺到。一方、民主党は与党の喚問拒否に批判を強めており、世論の怒りが小泉政権批判に波及しかねない、との警戒が与党に働いた。毎日新聞 2005年12月23日

■実に不思議なことに、得たいの知れないトンデモ候補が続々と当選した正気とは思えない総選挙が終わっても、何故か小泉総理に対する支持率は高止まりしているのだそうです。一説には、国交省に僅かに残っている田中派の臭いを根絶やしにし、ついでに本当は大嫌いな公明党を困らせるつもりの小泉さんは、世間の人気取りのために「アホな国民が怒っているみたいだから、一番テレビの視聴率が取れる小嶋社長を喚問しろ!」と言ったのかも知れません。しかし、証人喚問を拒否した理由が撤回も訂正もされないまま、「やっぱり、やる事にしました」とは、世間をバカにするにも程が有りますぞ!小泉総理の支持率が高いのは、世論の動向にに敏感だからと言う話が本当ならば、次のニュースは理解困難です。


北朝鮮による拉致被害者の家族会メンバーらが24日、東京都内で記者会見し、経済制裁の早期発動を求める声明を発表した。同日から北京で始まった日朝政府間対話で実質的な進展がなければ、北朝鮮への送金や船舶の入港停止などの措置を取るよう求めている。会見は、横田めぐみさんの偽遺骨問題を機に政府が北朝鮮に「迅速な対応をしなければ厳しい対応を取る」と発表して1年となるのを受けて行われた。家族会副代表の飯塚繁雄さん(67)は「政府の唱える『対話と圧力』がいったい何を指すのか問いただしてきたが、何も答えが出ず、むなしさを感じる連続だった」と振り返った。
 政府は11月の日朝政府間対話で、テーマごとの3協議会方式で今後協議していくことを北朝鮮側に提案したが、家族会には「拉致問題が置き去りにされる」との懸念が強い。横田早紀江さん(69)は「政府もいいかげんなことは絶対にできないと信じている」と話した。毎日新聞 2005年12月24日

■総選挙前に、暑い中で総理官邸近くで座り込みに入った拉致被害者家族を避けるようにして、小泉総理の公用車は遠回りして出入りするという事件が起きましたなあ。それでも小泉自民党に大量の票を投げ込んだ人達は、拉致問題なんかには怒りも感じないし、興味も無いという事になります。ヒューザー姉歯問題に激怒した長期ローンを抱えて怪しい不動産物件を買ってしまった国民と、拉致問題に怒りを感じている国民の数を単純に比較したら、拉致は所詮は他人事だ、と思っている国民がほとんどだろう、と小泉さんは読み切っているとも考えられます。新しい憲法に「愛国心」を100回書き込んでも、こんな内向きの国民感情が変るとも思えませんなあ。今でも政府の対北朝鮮外交は、「国交正常化」が第一義とされているのです。そんな事は分かり切っていながら、自民党を大勝させた人達は、同胞の悲しみや国家の威信よりも「郵政民営化」と「死客候補」に熱狂したのでしょうなあ。


猪口邦子少子化担当相は24日の記者会見で、06年度予算案における政府全体の少子化対策関係費を発表した。8府省庁で総額1兆457億円に上り、国と地方の「三位一体の改革」による地方への補助金削減分などを除くと、実質的には今年度当初予算と比べ795億円の増加となった。主な予算は就学前児童の教育保育充実費3051億円(05年度比138億円増)▽女性の再就職支援55億円(同6億円増)▽地域における子育て支援拠点整備費120億円(同31億円増)。猪口担当相は「少子化の原因の一つに女性が仕事か家庭かを選ばなければいけない現実があることから、(再就職支援の予算増は)解決に向けて高く評価したい」と述べた。毎日新聞 2005年12月24日

■竹中さん以来、随分と生臭い大学教授が政府に入り込んで小泉さんの威を借りて自画自賛して威張り散らしているようですが、所詮は使い捨てでしょう。ますます質が落ちている新聞社の政治記者の中には、米国の注文通りに「次期総理は竹中氏」などと提灯記事にしてもヒド過ぎる妄言を書き散らした事も有りましたなあ。猪口さんはドラえもん首なしドレス姿を晒しても平然と大臣に就任した食えない人ですが、国際政治学者などと言っても、大した本も書いていませんぞ。竹中さんは、しっかり美味しい大著の「監訳」に名前を貸して日銭を稼ぐくらいの才覚が有りましたが、猪口さんは自分が本で読んだ夢物語を国連組織の中でも信じ続けられるくらいの純朴?さを持っている人です。

少子化の裏側 其の四

2005-12-24 14:36:23 | 社会問題・事件
■学校に行くのも命懸けです。ちょっと前なら、まったく別の意味でジョークとしても使えた台詞が、そのままズバリの意味になってしまいました。苦労して子供を育てた揚げ句に殺人事件の犠牲者になったり、あまつさえ、犯人になられては堪りません。

事件の約1カ月前の大型連休。女児はHPの日記にこうつづっていた。「今日は溜息(ためいき)が出るほど暇でやんす。友達と遊んだりシナイカラ。(中略)そりゃ山の頂上で叫びたくなりますよぉ」
女児は事件後、長崎少年鑑別所で面会した父親に「本当はバスケットを続けたかった」と告げたという。父親は「毎日の忙しさの中で、娘の目線に立っていなかった気がする。パソコンも『煙たがられたくない』とのぞくことができなかった。遺族にも娘にも申し訳ない」と、自分の弱さを責めている。

■子供が安全に通学出来る場所に住まねばならない。やっと最適な場所にマンションを買ったら欠陥物件だった。自然が豊かで子供が育つ良い環境だと思ったら、「死角」だらけの物騒な場所になってしまった。実際に起こる幼児殺人事件の数はとても少ないものですが、「住所不定・無職」の犯人が自動車を使って長距離移動しているのですから、世界一の自動車を生産する日本が恨めしくもなります。


事件数日前。父親は、韓国のノンフィクション「チソン、愛しているよ」(イ・チソン作)をインターネットで注文していた。自動車事故で顔面にやけどを負い肢体まひになった女性が、絶望の淵(ふち)から立ち直るまでを描いたベストセラーを娘に読んでほしかった。左半身が不自由な父親は、女児が「読んでみる」と関心を示したのを素直に喜んだ。事件の前日に「本がもうすぐ届く」と告げると、娘は笑顔でうなずいたという。しかし、その晩、女児はインターネットで残虐なサイトの検索に没頭し、同級生の殺害方法を探していた。事件前、女児には小動物を殺すなどの明白な“兆候”はなかった。家庭は、虐待とは無縁だった。6畳の個室には、ベッドに机、ハローキティの人形。居間には宮崎駿監督や子供に人気の「名探偵コナン」のビデオ……。「何度振り返っても、なぜ事件を起こしたのか、答えが見つからない」。父親は言葉を詰まらせる。

■これまでの事件の多くは、家庭が崩壊していた事を週刊誌などが後追い取材で明らかにしてくれていましたが、今回は事情が違っていました。安全を考えて明るい内に帰宅させていた子供が、サイバー空間で残虐な世界に没入していたとすれば、やはり、仮想世界と現実との境界線が明確ではない年齢の子供には、コンピュータを与えるべきでは無いでしょうし、どんな映像を見るのかも分からないビデオ再生装置も渡すべきではないのかも知れません。でも、幼児からの英語教育とコンピュータ教育を熱心に進めているのは文科省ですからなあ……。


事件当日。父親は、警察官から「娘さんがやったのは99%間違いない」と告げられた。「信じられない」という思いの半面、調書にふてくされたような表情で指紋を押す女児の姿を見た。どうしてそんな顔をするのか分からず、戸惑った。事件後に開かれた長崎家裁佐世保支部の少年審判で、裁判長は心境を手紙でつづるよう“宿題”を出した。しかし、その文面に遺族や被害女児への謝罪の言葉などはなかった。今年3月。女児は、送致先の児童自立支援施設で、たった一人の卒業式を迎えた。肩まで伸びた髪を束ねた女児は、中学校のセーラー服を着て証書を受け取った。父親は「娘は中学生になれたけど、被害者のお嬢さんはずっと小学生のままなんだ」と感じた。家裁の決定は、女児について「『死』の意識が乏しい」と指摘している。「死」の意味を感じ取り、その裏返しにある「生」の大切さを女児は学ばねばならないが、児童自立支援施設は、法務省管轄の少年院とは違って、具体的な贖罪のプログラムがない。

■「自立支援」、何度聞いても理解出来ない言葉です。学校の一種という位置づけらしいのですが、「育て直し」プログラムが採用されているとも聞きます。衣食住と安全を確保しただけでは、子供は育たないという事でしょうか?


まだ、女児の心境を聞き出せないでいるが、父親は「これからが本当の勝負」と話す。少年審判までは付添人もいたが、今は家族しかいない。審判が終わっても、娘は罪に向き合わねばならない。「娘がそうしなければ、真の更生などありえない。逃げずに親子で一生、償いをしていくほかない」と感じている。
毎日新聞 2005年12月24日

■「子供二人の標準的なサラリーマン家庭」というパターンを政府が取ってから50年、その間に一人っ子が増え、離婚も増えて「標準的な家庭」が激減しました。その最後の段階で、メディア機器の個人所有が子供世代にまで浸透していますから、家庭像が大きく変化しているのです。公立学校のシステムは、「標準家庭」を前提としてPTA組織を持ち、交通安全対策以外の通学路の安全確保の方法を持ちませんでした。日本が抱え込んだ「制度疲労」の深刻さが、教育現場と子育ての現場に露呈した。2005年はそんな年だったようです。そして、それに対する有効な方策など1つも提示しなかった自民党が大勝した年でもありました。何だか、「耐震強度偽装事件」が年末に発覚したのは、出来すぎた今年の象徴だったようです。制度が使い物にならなくなっている事実を隠すには「偽装」するしか方法は無いでしょう。清水寺の管守さんが、今年を象徴する漢字だと言って『愛』と書いたそうですが、『偽』と書くべきだったかも知れませんぞ!

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

少子化の裏側 其の参

2005-12-24 14:34:37 | 社会問題・事件
■近代市民社会が構想した、人権思想に基づく法治国家が再検討を迫られているのですが、いよいよ子供が子供を殺す時代に突入してしまったので、子供を殺された親は、犯人の子供を復讐の対象にしなければならないのか?という恐ろしい問題さえも考えねばならなくなっています。ここでは近代国家が前提としていた「教育万能思想」に疑義が生じます。

長崎県佐世保市の小6同級生殺害事件で、加害女児が入所する児童自立支援施設は少年院や刑務所と違い、贖罪(しょくざい)教育のプログラムがないうえ、施設内での加害者に関する情報も明らかにしていない。今回の要請には「加害女児は遺族や事件と向き合わずに更生できるのか」「何を基準に女児が更生したと判断するのか」という遺族の疑問と不安が背景にある。

コンクリート詰め殺人事件という身の毛もよだつような凶悪犯罪を起こした馬鹿者が、社会に復帰した後も粗暴な行動を取り続けて再逮捕されたのも今年でしたなあ。その元少年は「官」を騙すのはいとも容易(たやす)いと嘯(うそぶ)いていたそうですなあ。


自立支援施設に入所する14歳未満の触法少年は刑罰の対象にならず、処遇は施設の裁量に任されている。福祉と保護を目的としているため、作文や面接を通じて被害者の視点から自分の起こした事件を見つめ直す贖罪のプログラムはない。少年に関する情報についても厚生労働省は「施設内の状況は子供のプライバシーに配慮が必要」と説明し、被害者側には伝えていない。この事件でも、遺族への情報提供は女児の処遇を決めた少年審判が最後だ。

■少年審判で決定された犯人の処遇の正しさは、一体、誰が保証してくれるのか?「官」を信じて民は黙って従えば良いのか?「子供のプライバシー」という言い方は卑怯な印象を受けます。「犯人のプライバシー」と言わないと、「子供」という勝手なイメージを詰め込んだ得体の知れない存在を無条件に特別扱いする根拠が揺らぐのでしょうなあ。


法務省は04年、神戸連続殺傷事件(97年)の加害少年の社会復帰を明らかにした。冷静に事実を公にすることが、男性の更生にも役立つという判断があったとみられる。男性の少年院での処遇内容も遺族に説明してきたという。事件の審判を担当した井垣康弘・元判事は「厚労省も社会や被害者への説明責任がある。肉親を奪われた被害者には、加害者の生き方に注文をつける権利があり、遺族に情報を開示することが最終的には触法少年の更生にもつながる」と指摘する。厚労省は、佐世保事件の遺族の要望に「前向きに検討する」と応じた。重大事件を起こした触法少年の更生や遺族のために情報を開示することを真剣に考える時期に来ている。
毎日新聞 2005年12月16日

■「真剣に考える時期」など、ずっと前に過ぎています。事件を起こした者の年齢ではなく、犯行の悪質さが問題とされるべき事例は、20年以上前から続いていたのではないでしょうか?「触法少年」などという呼称を悪用して、司法担当官をウソ泣きと偽造作文で楽々と騙すくらいの悪知恵は、今時の漫画やゲームからでも学べるようです。時代遅れの司法を支えているのは日本社会ですが、活字離れと不況に苦しんでいる町の本屋さんにトドメを刺す「万引き」を、「子供のする事だから許してやれ」などと平然と言い切る馬鹿者がうようよしているのですから、司法が凶悪犯罪の犯人と純真な子供の間に線を引けないのも当然なのかも知れませんなあ。

■子供が犠牲となる凶悪犯罪の原因が、子供が犠牲になる凶悪犯罪から子供を守るための選択だった、などというヤヤコシイ実態が明らかになりました。


長崎県佐世保市で昨年6月に起きた小6同級生殺害事件で、児童自立支援施設に送致された加害女児(13)の父親が、毎日新聞の取材に応じた。父親は40代半ば。事件後、女児が熱中していたバスケットボールクラブの退部と事件との関連が指摘されたことについて「暗い夜道を一人で帰らせたくなかったのが退部の理由」と明かした。「事件は、子育てに失敗した私の責任。一生をかけて被害者に償いたい」と親子で罪と向き合っていく考えを示した。

子供を狙った凶悪犯罪に恐怖を感じた親が、子供の安全を考えて夜まで続く部活動を止めさせた。銃器と人種差別、そして異常性格者の存在を前提としている米国のスクールバス方式が有りますが、日本の場合、過疎地では学童の数が少な過ぎて経済的な負担に耐えられず、都市部となれば朝の通学時間は道路が大渋滞ですから、一時間目にバスが間に合うかどうか、誰にも分かりません。日本の都市計画や交通体系という巨大な問題にぶつかるので、スクールバスは妙案とは言えないでしょうなあ。


同級生同士が殺し合う映画「バトル・ロワイアル」や、インターネットの残虐なホームページ(HP)への傾倒といった変化が女児に現れたのは、小5の冬ごろだった。そのころ、女児は熱中していたバスケットボールクラブを退部している。女児は自分のHPに日記をつづっていたが、そこからバスケットの試合の様子を伝える喜々とした文章が消えていた。事件後、複数の関係者が退部と女児の変化の関連性を指摘した。「成績が落ちたから親がやめさせた」と報じられたこともあったが、父親は「真相は違う」と語る。「練習をして市街地から遠く離れた自宅に帰り着くと、冬はいつも真っ暗。最終バスにしか間に合わず(乗り遅れれば)暗い夜道を一人で帰るしかなかった」。女児は学校では数少ないバス通学だった。家までの細道は背の高い木々に覆われ、昼でも薄暗い。

■この父親が心配したのは子供成績や環境などではなく、「生命の安全」だったのです。義務教育の現場に行くだけで生命の危機を感じる国になってしまったのですなあ。

少子化の裏側 其の弐

2005-12-24 14:32:42 | 社会問題・事件
■少年犯罪を裁く司法関係者も、更生教育の担当官も、今回の大阪で起きた事件を予見できなかったのならば、今でも同じような経路を経て社会に復帰している若者が、そこここに暮らしているということです。事件は警察から検察へ、そして裁判所から更生施設へ順送りされて法律に従って規定通りに処理されて、再び殺人事件が起こる。一昔前ならば、何年間も世間の耳目を集めるような異常な犯罪が、毎週のように続発しているので、続報を耳にしても、どの事件だったか思い出すのに苦労するほどです。新聞報道も事件の裏側を含めた全貌を報道せずに表層的な事実を羅列して終わる事が多いようです。「2度とこのような事件が起こらないように全力を…」こんな言葉を、一体、何度見聞きした事でしょう。被害者の遺族が苦しい胸の内を語り、ニュースは葬儀を「しめやかに」報道して終わると、次の事件が起きます。マスコミを含めた大いなる流れ作業全体に虚しさと怒りが集まって来たらしく、ちょっとした変化が見えるようです。

長崎県佐世保市の小6同級生殺害事件で娘を亡くした毎日新聞記者、御手洗恭二さん(47)が16日、厚生労働省に対し、国立児童自立支援施設に入所中の加害女児について、更生プログラムの内容やその実施状況などの情報公開を求める要請書を提出した。厚労省は加害女児の入所先も含め一切の情報を明らかにしていないが、今後、公開が可能かを検討する方針を明らかにした。

■誰も知らないところで、事件は最終的に「解決」された事になって、遺族も他の国民も事件解決後のすっきりしない社会生活を強いられます。高い壁に隠された特殊な施設の中で「官」が何をしているのか一切の情報が漏れて来ない。「官」は「民」が事件を忘れ去る事を望んでいるかのようです。しかし、「人権は被害者側にも存在する」そんな当たり前の事を司法機関も、渋々ながら認めざるを得なくなって、これ以上放置すると法治国家の秩序が崩壊する危機感が生まれたようです。これまでの犯罪の被害者は、まるで不運な天災に遭ったかのように、「諦めろ」「忘れろ」と言われていたのです。「罪を憎んで人を憎まず」本当にそんな事が人間に可能なのか?罪を犯したのは具体的な個人なのだから、遺族は犠牲者の遺影と共に犯人の顔を決して忘れられないでしょう。

■マスコミが聞きたくもない犯行の全貌を詳細に報道してくれるので、犯人が人の皮を被った化け物なのだと、嫌でも教えられた後で、遺族は高尚な道徳を実践する義務を負わされるわけです。長崎での子供同士の殺人事件では、被害者の父親が新聞記者であった事もあり、事件を風化させない運動が続いているようです。


要請書は自立支援の目標や達成評価、今後の予定の説明に加え、自立支援の中で、遺族との関係修復や調整も求めている。御手洗さんは厚労省で代理人の八尋光秀弁護士と会見し、「加害女児は犯した罪ときちんと向き合ってから社会復帰をすべきだと思うが、更生プログラムが分からないため、それができているかさえも今は分からない」と問題点を指摘した。遺族が加害女児と手紙や面会で交流を持つことが更生につながるかは「(加害女児がどういう状況か不明なので)今の段階では結論が出せない」と話し、加害女児と会うことには「正直に言えば、自信はない」と複雑な心情も明かした。

■生前の思い出と喪失感の板挟みに苦しみ続ける毎日を送る遺族は、「官」が隠し続ける更生プログラムの実態も効果も知る事が出来ない。では、どのようにして理不尽な犯罪を決着させれば良いのか?宗教書や哲学書を読んで自分の思考と感情を自力で鍛え上げ、犯人を許す、こんな「自己責任」は願い下げです。


しかし、「父親として事件から目をそらしたり逃げたりするのは避けたい」と述べ、いずれ社会復帰する加害女児に二度と同じ事件を起こさせないためにも、遺族との人間関係をできるだけ修復する必要性を訴えた。厚労省家庭福祉課の清川啓三課長は「(情報公開を求める)遺族の心情はよく分かる。要請を踏まえて関係機関と公開できるかどうかを検討する」と話している。
毎日新聞 2005年12月16日

■これから「検討する」というのですから、これまでに起こった凶悪事件の被害者達は、どんな苦しみを経験したのか、マスコミも熱心に取り上げようとはして来なかったような気がしますなあ。人情として、最愛の人を奪われれば、人生を棒に振ってでも「復讐」したいのは当然で、それを放置したら「敵討ちの連鎖」が起こるという説には説得力が有ります。殺人犯のほとんどは死刑にならずに社会に復帰しますが、人権の観点から差別をしないで温かく迎えなければならない、この理屈も分かります。しかし、その迎える側に被害者家族も含むと誰が決定したのか?人権から「復讐の権利」を削り取ったのは誰なのか、それがさっぱり分かりません。何故か今年は『忠臣蔵』のテレビも映画も目にしませんでしたが、「忠義」の実践として主君の仇を討つ物語が古臭くなっても、個人の恨みを晴らす『必殺』シリーズは『水戸黄門』は無くならないようです。

少子化の裏側 其の壱

2005-12-24 14:31:43 | 社会問題・事件
■日本の人口増加が止まった!と新聞各紙は一面で報道していますが、全国に衝撃が走った様子は有りません。専門家は「来るべきものが来た」と一様にコメントしているようですし、対策を求められ続けていた政府は今となっても決め手は無いようです。子育て支援を法制化しろ!という声が有りますが、具体的な政策を担当するのが国なのか地方自治体なのか、「三位一体改革」の予算の分捕り合いの中で責任の所在が分からなくなりつつありますなあ。仮に地方自治体が主体となっても、ずっと前から人口流出が続いている過疎地域では、結婚や出産に適した年齢の住民は姿を消していますし、都市部に集まった若者は、不安定な雇用環境の中で「出会いの機会が無い」と言いながら、耳をヘッド・フォンで覆い、目は携帯画面に釘付けの生活をしているようですなあ。携帯電話の向こう側には、「出会い系」という名の擬似社会が広がっているそうですが、そこは退廃と犯罪の巣窟になりつつあるようです。ご用心、ご用心。

■人口減少の原因は、逆立ちしている人口ピラミッドの上に集まっている高齢者がこの世を去る数に比べて、出生する子供の数が追い付かない事に有るのですが、その現象は人口ピラミッドがキノコ型から寸胴型に変れば無くなって、日本の人口は8千万人程度で安定するという説も有るようです。しかし、ここで問題にしなければならないのは、少子化時代に続発する子供が犠牲となる凶悪犯罪の方です。この場面では、生きている子供が減って行くという恐ろしい現実がむき出しになります。子供を生み育てる「家」が崩壊したのが戦後の歴史ですが、「家」が持っていた子育て機能を、欧米の真似をしただけの、にわか仕立ての「核家族」に背負わせるのは土台無理な話です。幼児を守り育てた「家」の代わりに保育所が必要だ!と言われ続けているのに、今でも「待機児童」という行政の恥としか思えない制度の被害者が増え続けているのです。

■それに加えて、小児科医療も崩壊している!と騒ぎになったのは今年の特徴でもありますなあ。身近に幼い子供が居ない国民が増えたからでしょう。子供は全部「他人の子供」だと思えば、保育や小児医療の問題た切実に迫って来ることなど有りません。そんな世の中の無関心に寄り掛かり、安心して子供を産めない社会構造を放置して、「晩婚化」などの個人レベルの問題に話を移すのは議論を不毛にしてしまいます。少子化の原因は「子供が増えない」からではなくて、「子供が減っている」からだと考えた方が良いのではないでしょうか?毎年、30万とも言われる生まれる前の命が堕胎によって消えているという話も有りますし、子供が殺害される事件が無くなりません。少子化も原因を考える時には、堕胎も殺害も同じ意味を持ちます。明らかに「子供が減っている」現象が起きているのです。

■病気や事故から子供を守る苦労は太古の昔から変りませんが、「殺されない」工夫をしなければならなくなったのは最近の事でしょうなあ。パチンコに殺される可哀想な子供もいますが、昔から博打に殺されたり、売り飛ばされた子供は昔もいましたから、異常性欲者による誘拐殺人と子供同士の殺人事件、この二つが最近の特徴と言えるでしょう。その数は微々たるものであっても、親の身になればその衝撃と恐怖は絶大です。犯人が捕まらない困った事件も多くなっていますが、捕まえてみたら新たな問題が浮き上がる事もあります。幼い子供の姿を見ただけで殺したくなった宅間守という犯人がいましたし、人を見れば絞め殺したくなる「窒息マニア」の前上博という人物も現われました。自分の欲望を満足させる権利の中に殺人趣味は含まれませんから、極刑を求める声が国中に満ちます。しかし、弁護側は精神的な病に逃げ込んで犯人の延命を試みなければなりません。人間が人間の精神を本当に解析出来るのか?はなはだ疑問に思えますなあ。

■サービス残業などの不法な雇用体制に耐え、長時間通勤を強いられて、ただ眠るだけの自宅との行き帰りでも、痴漢、引ったくり、行きずり殺人、拉致誘拐と物騒なことこの上も無くなりました。そんな危険な通勤通学路を無事に通過しても、「一家皆殺し」などという恐ろしい事件に巻き込まれる危険が有ります。犯人が検挙されない凶悪犯罪が鰻登りらしいのですが、偶に捕まえてみれば「再犯」だったなどという遣り切れない話になったりします。大阪市浪速区のマンションで、深夜の帰宅を狙って姉妹を殺害した山地悠紀夫(22)が、16歳の時に母親を殴り殺していた事実に日本の少年法や更生施設に関する不安や非難の声が上がっています。犯罪の最大の抑止は逮捕と処罰だと言われながら、検挙率が低下し続ける中で、せっかく逮捕拘留して更生施設に入れた犯人が、社会生活に復帰させても、「再犯」を繰り返している実態も明らかにされました。

■特に性犯罪は心の奥から湧き上がって来る歪んだ欲望によって行なわれるので、国が作った「教科書」やら作文授業を受けたぐらいで直るものでは有りません。それに加えて、仮釈放中の人物が行方不明になったりしている実態も明らかになりましたから、2005年というのは、歴史的な区切りとなる年号なのかも知れませんなあ。山路悠紀夫の場合は、母親殺害事件後の裁判で少年の弁護した弁護士が、顔を隠して報道番組の取材を受けるという異常事態です。少年法によって組み立てられているシステム自体が破綻しているとしか思えません。何の保証も無い更生の期待や、純真で健全な少年像が前提されている現行システムは、大いなる税金の無駄遣いである疑惑が強まりました。母親を殺した罪を自覚するどころか、それに味をしめて見ず知らずの女性を殺害し、逮捕された後で報道陣のカメラを見てにやにやしている犯人の姿を見た遺族の悔しさはいかばかりか……。裁判所や警察、厚生施設に投入されてた税金は何の効果も無いまま、規定通りに使われ、殺人狂を一般社会の中に放ったわけです。

暇な人たち 其の六

2005-12-22 15:50:26 | 社会問題・事件
■大前さんは、話題を変えて、またしても得意の海外事情を紹介します。

たとえば、建築が自己責任のオーストラリアでは、設計図を書くデザイナーと施工するコンストラクターがいる。ただし、それだけでは不安だから、普通はエンジニアリング・コンサルタントを雇い、予想される最大レベルのサイクロンや洪水などにその構造で耐えられるのか、漏電や漏水する怖れはないのか、といったことをプロの目から厳しくチェックさせる。

このエンジニアリング・コンサルタントという専門家が、ハリケーンで水没した米国のニューオリンズには居なかったのでしょうなあ。それに、ヒューザーに騙された人達は、数万円から40万円も払って点検専門のコンサルタントを雇っていたという証言も有りますぞ。何処の国でも何時の世でも、詐欺師の方が遥かに深く広く先を読むものですから、詐欺師が本気で仕事をしたら、逃れる術は無いのではないでしょうか?それこそ、大前さんのような有能なコンサルタントの目さえも欺けるからこそ、超一流の詐欺師と呼ばれるのではないでしょうか?


本当に信頼できる業者や厳しいコンサルタントを使わなければ、将来転売もできないような欠陥住宅を自分で抱え込む事になる。

■大前さんは、このように警告しているのですが、はたして、それで大丈夫なのでしょうか?大前さんは原子力発電所の設計に関連したコンサルタントとして有名になったそうですが、原発の解体や放射性物資の処理や保管のコスト計算までは仕事に含まなかったでしょう。50年使ったら、細心の注意を払って解体して1万年間も厳重に保管しなければならないのが原発ですからなあ。どんなに厳しいコンサルタントでも安全な原発を作って始末するのは不可能でしょう。あれは政府と軍産複合体が手を結んで作った高価なオモチャですから、後の事など誰も考えていなかったというのが真相です。「原発の電気は安い!」と大金使って宣伝したいたのに、最近では「環境に優しい!」と宣伝文句が変っていますなあ。大前さんのコンサルタントだと、どんな宣伝文句になるのでしょう?


一級建築士という国家資格を取った人は弁護士や医師と同じく、ある制約の下にプロフェッショナルになったはずである。その資格を悪用したら犯罪になるという認識がないといけない。

■どうしても姉歯さんの個人名が便利に使われてしまいますが、こうした主張をする場合に、たった一人のコンサルタントがぺらぺらっと喋っただけで、日本中のマンション業者が倒産の心配をしなければならず、住民も安心していられなくなるような大きな騒動になった点が見落とされています。資格試験が無いコンサルタントはどんな責任を負うのでしょう?今回の大前さんの「講座」は、昔なつかしい規制緩和論を持ち出しただけの、新鮮味に欠けた内容だったようです。占い師、霊媒師、預言者、透視者など、怪しげな人がまたぞろテレビ業界で稼ぎ始めているようです。オウムで痛い目に遭ったはずなのに、もう忘れているのでしょう。出版物の中にも同じ傾向が見られますなあ。カリスマだの教祖だの、どうしても弱い心はそんな物を欲しがるものなのです。もしかすると、そんなものに飛び付く人々も、暇な人なのかも知れませんなあ。

■最も暇な国交省が他人事のような顔をして済まそうとしているのを許してはなりませんぞ!税金で被害に遭った住民の安全を保証してから、大儲けした連中からしっかり取り立てる仕組みを作らねばなりません。さあ、政治家の皆さんもお役人も、忙しくなりますよ。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

『チベット語になった『坊っちゃん』』発売中!
------------------------------------------

暇な人たち 其の伍

2005-12-22 15:49:03 | 社会問題・事件
■大前さんの文章をちょっと離れますが、先日のNHKクローズアップ現代で、検査会社のERIが構造計算書の検算ソフトを持っていなかったという事実が暴露されました。では、あの会社の仕事は何だったのかと言うと、「紙」の計算書から幾つかの数値を拾ってOKを出すだけという事になります。番組では、事件が発生してから慌てて買ったソフトの講習会で苦労している社員の姿まで、御丁寧に取材していたようです。構造計算書の検算を生まれて初めてやっているのが良く分かりましたなあ。「経験豊富」な天下り役人を雇い入れて、なあなあ検査をして手数料を貰っているのですから、素人目には随分と気楽な仕事のように思えましたぞ。暇な仕事だと言ったら、真面目にやっている人達は怒るのでしょうが、姉歯さんが「プロが見たらすぐバレる」と自分で白状しているような単純なトリックを見破れなかったのですから、間抜けな警察官と同じでしょう。

■さて、コンサルタントの大前さんの文章に戻ります。


また日本は建材が他の先進国より非常に高い。たとえば、INAXやTOTOは便器や洗面台などを東南アジアで売っているが、その値段は日本の3分の1ぐらいである。それを日本に持ってきても、地方自治体の水道局やJWWA(日本水道協会)の規制があって使うことができない。

この辺の事情は、日本で一番稼いでいる水道屋さん、みのもんたさんが詳しく知っているでしょうが、コンサルタントとしては大前さんよりも内河さんの方が有能だったという事かも知れませんなあ。このフザケたカラクリの裏をかいて、東南アジアから安価な建築材料を大量に買い付けて上前を撥ねていたのですからなあ。実行力が違いますぞ。でも、そんな特別ルートを開拓するのに外務省や在外公館が手を貸さなかったとはとても思えませんから、アジアとの友好を推し進めている政党や官僚の協力を得られたのでしょう。こんな単純な抜け道を思い付く人は多かったでしょうが、国内の規制と外交政策に邪魔されないで実行できるのは非常に特殊なケースと考えねばなりません。


耐火ボードはフランス・ラファージュ社の製品が世界で最も広く使われていて品質が良く、値段は日本製の半分ぐらいだ。ところが、日本の市場は国産メーカーがほぼ独占していて、ラファージュ社の製品は日本の防火基準などを満たさない仕掛けになっている。…板ガラスやアルミサッシなど、ほとんどすべてが独占・寡占状態だ。

■具体的に固有名詞をぽんぽん出すのがコンサルタントのやり方です。内河さんは、海外の製品名を並べるだけでなく買い付けと輸入までやっていた人でした。人のフンドシで相撲を取る口先三寸の商売と陰口をいわれるのがコンサルタントという職業ですから、内河さんがカリスマに祭り上げられるのは当然だったのでしょうなあ。このようにガンジガラメの建築基準法の網の目を抜けて「コスト削減」をしようというのですから、水増しセメントやら鉄筋抜き取りは欠かせなかったでしょう。しかし、これがすんなりと通って一般人が行き来する街中で堂々と建築されて売り出されていたのです。


つまり、耐震設計のような専門的なことは、今の行政が簡単に審査できるようなものではないのである。…マンション1つを作るのに多くの無責任な発注主と下請け外注が入り乱れ、ごまかしをするための専門部隊や、それを見逃す民間検査機関が見事に組織されていることが、白日の下にさらされた。

■大前さんは随分と感情的に書いているようですが、どうしても悪知恵に長けたカリスマ・コンサルタントには言及しません。

暇な人たち 其の四

2005-12-22 14:03:07 | 社会問題・事件
■以上、馬鹿馬鹿しいセクハラ事件を列挙してみました。これらの事件が発生した場所に共通する事は何かと考えますと、第一に歪んだ強権構造が有る事です。そして、何よりも「暇な場所」である事が最大の特徴です。役人根性と暇が集まる場所は、人間が人間らしく生きられない場所になり易いのでしょう。ここからが本題なのですが、耐震強度偽装事件が発生したのは、まったく同じ性質が溢れている場所でした。マスコミが重箱の隅をつつくような報道をしている内に、本当の問題が何処に有るのかが分かり難くなります。そこで、発売中の雑誌『サピオ』12月28日・1月5日合併号に掲載された大前研一さんの文章を引用して、事件の内部を検証してみます。大前さんは日本で一番有名な「コンサルタント」ですから、同業者の内河カリスマをどう料理するのか、と楽しみに読んだのですが、残念ながらその点には一切言及していませんでした。でも、現場でしか分からない事を指摘してくれるので、この『最強のビジネスマン講座』という連載は、時々、貴重な情報源となります。毎回でないのがちょっと残念ですが…。

■第66回の題名はとても長いものになりました。「真犯人探しや規制強化論は大間違い」と小さな字で引っ張って「耐震強度偽装問題の元凶は建築基準法にあり」という題名です。全面的な規制緩和論者の大前さんですから、この題名だけで本文を読まなくても主張は理解できるのですが、貴重な情報が拾えるので引用してみます。


現在の日本のシステムでは、建築確認を申請してから認可が下りるまでに最低でも20日ぐらい、普通は1か月以上かかる。

■これが事件の発端になっているのは確かです。マスコミ報道でも、これは仕方が無い事だという前提で事件が扱われています。


世界の先進国の建築確認は、たいがいCAD (Computer-Aided Design=コンピュータを利用した設計)対応になっているから、すぐに検査結果が出る。たとえば、シンガポールはCADで申請したら、即座にイエスかノーか答えが返ってくる。しかも、皮肉なことに、そのシステムを作ったのは日本の会社である。

■これが今回の目玉となる情報です。これが本当ならば、縦割り行政の悪弊が今回の大事件の真の原因という事になります。コンピュータ産業と建設業界を管轄している役所が違うので、天下り役人も違います。片方で「IT革命」の政策を推進していても、別の役所では他人事なのでしょう。役人時代に触った事も無い仕事を天下りのお茶のみ新聞読み重役が勉強するはずは、絶対に無いのです。コピー一枚取るのも、秘書に命令するのですから、コンピュータに触るなど思いも及びませんなあ。そんなエライ連中がのさばっている業界でコンピュータが無駄に買われているのです。そういう人達の出身地が仕切っている国交省ですから、CAD対応にすれば民営化などしなくても検査は質を下げずに円滑に進むのだ、という中学生にも分かる理屈が分からないのでしょうなあ。


日本も建築基準法をCAD対応に直そうとしたのだが、直らなかった。建築基準法がコンピュータの言語に馴染まなかったのである。……なぜか?建築基準法には恣意的な裁量部分があるからだ。法律の条文に書いていないことでいろいろ細かく行政指導をしている。

■この前近代性は、恐らく永久に無くならないでしょう。これが無くなったら官僚が威張れるネタが無くなりますし、地元に利益を誘導することを使命と信じ込んでいる政治家達が暇になってしまうからです。「俺の顔は広い」「太いパイプが有る」「俺の名前をちょっと出すだけで…」「俺が口を利いたから…」こうした台詞を言いたいがためだけに生きているような輩が、日本を借金の泥沼に引き摺りこんだのですぞ!高性能のスキャナーと漏れの無い検査用フォーマットを連動させて、コンピュータで管理するような時代になったら、空威張りする余地が無くなります。山のような書類を平民に書かせる快感、その中にミスを見つけて詰(なじ)る快感、これ無くして何の為に退屈な受験競争を勝ち抜いて来たのか!困り果てた平民が、袖の下やら天下り先を献上して来る姿、この時、お役人は本当の生き甲斐を感じるのでしょうなあ。

■ですから、融通の利く制度など絶対に作っては行けないのです。コンピュータになどには任せられない国益に沿った高度な政治判断が出来るのは、東大法学部卒業の上級国家公務員試験に合格したエリートだけなのです。そんな優秀な官僚が管理している建設基準法とはどんな法律なのかと言うと。


建設基準法に適合した建物であっても、必ずしも安全でないことは、阪神淡路大震災や中越地震で明らかだ。たとえば、阪神淡路大震災の時にお辞儀をするような形で倒壊したビルやマンションは、すべて1階が柱だけのピロティ式の建物だった。倒壊した木造住宅は、すべて在来工法だった。しかし、それらの建物はみな建築確認の検査にパスしたわけだから、論理的には認可した人々に責任があるはずだが、彼らは責任を取っていない。

■大前さんは、在来工法よりも北米生まれのツーバイフォー工法の方が地震に強い可能性が高い、と指摘しますが、お役人は外来工法は大嫌いなので、真面目に検討もしないで無視しているようです。そして、大前さんが専門にしていた原子力発電所の設計を例として、建設業にとって最も重要なのは、建物や工法ではなくて「地盤」なのだと断言します。現行の建築基準法は、地表より上に関する細かい規則が並んでいるだけなので、この法律は無意味な上に建築費を無闇に高止まりさせているだけという事になるのだそうです。建築許可を出す役人と、地盤の調査をしている役人が違うというだけの話なのでしょうが、その建物に住む人間は1人であり1つの家族なのですから、万一の時に責任を問う相手は特定できない仕掛けになっているというわけでしょうなあ。