旅限無(りょげむ)

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来年の予兆 その弐

2007-12-31 10:56:59 | 日記・雑学
浮気の張本人である張アナは、胡アナとも実は「不倫成就」の末に結ばれた関係。当時、熱烈な張アナのファンだった胡アナが強引なアタックの末、妻子ある張アナを奪い取ったのだ。浮気する男は2度3度あると聞くが……3分間に及ぶ「不倫暴露ショー」は何とか幕を閉じた。この騒動を目の当たりにした記者たちは一様に、「CCTVは大丈夫か?」と首をかしげていた。
12月30日 Record China

■こうして世界に向かって否が応でも開かれ続ける電波とサイバー空間の広がりは、一党独裁の北京政府にとっては実に頭の痛い問題です。本年中もヒマラヤ山脈で越境亡命中のチベット人を「狙撃」する実写映像がネット上を駆け巡りました。北京五輪大会の開催中に、北京市内で何が起こるか?プロとアマチュアが持ち込む無数の撮影機器をすべて監視下に置くのは不可能ですから、小さな肉声や横断幕が音声と映像となってネット上を飛び回るかも知れません。これまでの五輪大会は「競技」の映像が中心でしたが、今回は初めて会場周辺の情報が貴重な価値を持つことになるかも?一般の観客や観光客が体験する「興味深い」文化摩擦体験が、演出抜きの生のチャイナを世界中に晒してしまう時、友好的な雰囲気が優るか?それとも反発と嫌悪感が強まるか?北京政府は伝統的な「学習運動」を展開中ですが、五輪大会の規模を考えるとその効果には限界がありそうです。

■開催が近づきだんだん追い詰められて危機感が膨らむと、過剰な予防策が次々と打ち出されそうです。既に、ややこしい事情がある地域では締め付けと脅迫が行われているとか……。


中国の著名な民主活動家で、HIV感染者の支援などで知られる胡佳氏(34)が国家政権転覆扇動容疑で逮捕されたもようだ。複数の民主活動家が明らかにした。胡氏は国内で幅広く人権活動を展開しており、当局は最も厳重な監視態勢を敷いていた。中国では民主・人権活動家の拘束が相次いでおり、胡氏の逮捕は、来年の北京五輪を前に影響力のある反体制派分子を根こそぎ摘み取る“浄化作戦”の一環とみられる。

■日本では年末に薬害肝炎犯罪が大問題となって、数年前の薬害エイズ問題を国民の多くが苦々しく思い出したものですが、チャイナのHIV問題は以前の日本政府がハンセン氏病政策で罪深い大間違いを犯した愚をさらに大きくして繰り返しているのは衆知の事実。社会との接触を断たれた「エイズ村」の存在が暴露されていますし、感染者と発病者の統計資料も隠蔽と改竄が激しく、友好な対策が打てない状況のようです。経済的な格差と少数民族問題に感染症対策の遅れが加わると、一挙に民主化運動が爆発する可能性が高まります。過熱する土地と株式のバブルが破裂するのが先か?国民の不満が合体するのが先か?既にチャイナに生産拠点を移してしまった日本企業の経営者は心配なことでしょうなあ。


関係者らによると、27日午後3時、20人ほどの当局者が自宅を訪れ逮捕を通告、連行した。妻の曽金燕さん(24)は自宅で軟禁されているという。胡氏の携帯電話は30日午後現在、不通になっている。

■実に皮肉な事に、この事件が起こった場所は山東省の曲阜!ひどい人権弾圧が行われた3日後に、日本のホイホイ首相が訪れて「日中両国が持つ共通の文化基盤」という奇怪な感動を口にした孔子さまの故地なのですなあ。一体、どんな「文化基盤」をホイホイ首相は考えたのでしょう?


胡氏は中国各地のほぼすべての民主活動家や人権派弁護士、欧米大使館員らと連携して当局の弾圧状況などを電子メールで発信。昨年7月から今年2月まで当局に拘束されていた。曽氏は夫が拘束された際、国際社会に支援を呼びかけ、今年、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。胡氏も欧州議会が人権活動家に贈るサハロフ賞の候補の一人だった。

■これで来年度の「ノーベル平和賞」候補が決まったようなものでしょうか?欧米の人権運動家と連携している胡氏の消息は世界中が注目しているので、万が一、不自然な死亡などが報道されたら大変なことになりますし、行方不明同然の「安全に保護」したとしても、米国の大統領選挙あたりで大きく採りあげられるでしょう。まあ、日本のホイホイ首相であろうと、「まさか」の坂を登って民主党の小沢代表が政権交代を実現したとしても、どちらにしても「抗議」などはしないでしょうなあ。ご両人とも、来日したダライ・ラマ14世に会う事さえ出来ないのですから……。

来年の予兆 その壱

2007-12-31 10:56:23 | 日記・雑学
■いよいよ大晦日。福田首相のホイホイ訪中旅行の帰国を歓迎?するかのように、日本列島の空模様は大荒れ!北海道から日本海側は大雪と強風、関東平野上空も厚い雲の中に雷鳴が轟きました。年明けの三が日は全国的に好天に恵まれると、ますます的中率を低下させている気象庁が予測しているようですが……。来年の話をすると鬼が笑うと昔の人は言いましたが、越年する諸問題の大きさと根の深さを考えれば、嫌でも来年どころか再来年の事さえ考え込んでしまう平成17年の年末であります。
 
■大きな問題から考えますと、来年は米国の大統領選挙と北京五輪大会が開催されますので、世界全体もアジアもその影響をいろいろと受けると思われます。イラク戦争で開いていしまった中東のパンドラの箱は20世紀初頭まで存在していたオスマントルコ帝国の存在を思い出させ、帝国を解体して山分けにした英仏両国の罪業も思い出させてくれました。ブッシュ父子大統領は、中東に新たな線引きをしようとしているのではないか?と勘ぐれば、イラクの国境線が融解して行く過程が来年も続くような気がします。オスマントルコ帝国が解体した時に強引に作られた「王国」と、作られることなく終わったクルドやパレスチナの国々が現行の国境線を守る側と変更する側に分かれて、それぞれの動きを激しくして行きそうです。

■米国のブッシュ大統領は、サブプライム問題という巨大な地雷を残して政権の座を降ります。否、これは地雷よりも無数の子爆弾を撒き散らす「クラスター爆弾」の方が比喩としては最適でしょうなあ。呆れるほど広範囲に「不発弾」が残るのもそっくりです。その米国を莫大な外貨準備金で支えるチャイナは、問題山積のまま北京五輪を開催します。年末にブット暗殺が起こったパキスタンはもっとも親しい友好国の一つだったというのも、何かを予感させます。

■あまり注目されない事実ですが、今の中華人民共和国はパミール高原でアフガニスタンと短い国境線で接しています。そして、印パ紛争だけが注目されるカシュミールの帰属問題にも介入していて、当該地域の北に聳える崑崙山脈部分を実行支配しているという事実があります。もしも、カシュミールがインドに呑み込まれれば、パキスタンとチャイナは隣国ではなくなりまってインドとチャイナがヒマラヤ山脈の西側で隣り合うことになります。だからこそ、北京政府はチベット地域を絶対に手放さないというわけです。インドの北半分を射程に収めるミサイル基地が国境に近いチベット高原に設置され、それを恐れがインドはミサイル射程の外に産業基盤を逃がそうと、デカン高原南部にバンガロールというIT産業の拠点を建設したという経緯があります。

■そんな印中国境のキナ臭さを消そうと、北京政府はヒマラヤ山脈を舞台にして聖火リレーを行おうと計画しています。既に現地のチベットでは聖なる山を生臭い政治に利用しようとする罰当たりなイベントに対して、無言の反対運動が起こっているとかいないとか……。


2007年12月28日、中国国営テレビの中央テレビ(中国中央電視台、CCTV)が北京五輪専用の「五輪チャンネル」設立を発表する記者会見で……。CCTVの花形アナウンサー、張斌がちょうど壇上で発言しようとした時だった。突然1人の女性が血相を変えて乱入……それは張アナウンサーの妻で北京テレビ(BTV)のアナウンサー、胡紫薇だったのだ!

■BTVは昨年「ダンボール入り肉まん」という天下の大スクープ映像を世界に発信したユニークなテレビ局だったはずです。


「私に1分間だけ時間を下さい!」とマイクを奪い取るや否や、胡アナはこう叫んだ。「夫には『不適切な関係』の女性がいます!2008年、私と夫には皆さんのように良い年は来ません!」……CCTVの副局長など数人の制止を振り切り、涙ながらに続ける胡アナ。夫も近寄って止めようとしたが「下がって!あなたどういうつもりよ!」とついに夫婦バトルか?という勢いにまで発展した。

■「1分間だけ……」発言は、日本のNHK紅白歌合戦で鈴木健二アナウンサーが都はるみさんに歌わせるヤラセ演出で使われましたなあ。「ワン・ミニッツ」は万国共通の演出効果がある一言のようです。日本の政治家も一言の失言で失脚する間抜けな事件が続発しましたが、国民の心には鬱屈した不満と不安が溜まりに溜まっていますから、来年はちょっとした発言が思わぬ過剰反応と連鎖反応が起こりそうな気がします。

「万引き」を考える その弐

2007-12-30 11:23:52 | 日本語
■もしも道具屋さんが万引きに狙われたとすると、犯人は生活が成り立たない困窮者だと直ぐに分かります。商売としては損害を受けますが、ちょっとした人助けをしたとも考えられたでしょうなあ。後で犯人が生活を立て直して謝罪と御礼にやって来たりすると見事な落語の人情話になります。ところが、今の「万引き」は相当な儲けになる!

男は住所不定、無職、清水努被告(44)。調べに「働く気はなかった。1000万円分くらいは盗んだと思う」と供述しているという。ホテル側は、清水被告がスーツ姿で出入りしていたことなどから、特に不審に思わなかったらしい。……平成17年1月ごろから埼玉県北部で万引を繰り返し、今年10月25日、CD5枚を万引しようとして警備員に取り押さえられた。逮捕されるまで716日間にわたりJR熊谷駅前のビジネスホテルに泊まり、計約370万円を支払ったという。
2007年12月29日 産経ニュース

■以前に東京駅構内のコンビニ店で数個のパンを盗み、追って来た正義感の強い店長を刺殺するという悲しい事件がありましたし、その前には京急線沿線の書店では、コミック本を万引きした少年が発見追跡されて踏み切りで列車に轢かれて死亡する事件も起きました。その事件では被害者の書店側を非難する奇怪な「人道主義」が盛り上がって閉店に追い込まれるという恐ろしい結末になったはずです。

■「万引き」という言葉が持つ語感のせいで、「たかが」という冠語が付いてしまうのが問題なのです。日本中の小さな本屋さんが実質的にはマンガ本泥棒の被害によって閉店に追い込まれているのですから、これは大問題です。シャッター商店街は寂しいものですが、本屋さんの無い町は本当に寂しい!

■ニュースにあった「中古店」で扱われている商品の大半が「新品」なので、「新古品」などという矛盾した熟語がひねり出されているくらいです。新品が「半額」で売買されれば市場経済は崩壊します。本来は市場経済のシステムから零れ落ちた勿体無い商品をリ・サイクルさせて無駄にしないのが「中古店」の社会的経済的使命だったはずです。街の古本屋さんには、骨董品のような価値のある稀少本からゴミになる寸前に救われた廉価本までが並んでいたものです。しかし、本屋さんに並んでいる新品は置かれていませんでしたなあ。貴重な稀少本には購入者は読み終えたら急いで市場に戻して次の購入者に迷惑を掛けないという粋な不文律もありました。

■幼い我が子に「万引き」させて、それを「中古店」で現金化してパチンコにウツツを抜かす困った親が時々逮捕されますが、これも中古品でもない物を売買する市場が無ければ出現しなかった現象でしょう。


28日午後6時5分ごろ、栃木県足利市鹿島町のJR両毛線小俣-山前間で男が線路を横切り、高崎発小山行きの普通電車(4両編成)にはねられ、即死した。電車は現場に約1時間停車して運転を再開した。乗客約60人にけがはなかった。……男は近くのレンタルビデオ店でDVDを万引し、店員に追われていた。約200メートル逃げたところで線路を渡り、店員の目の前ではねられたという。男は外国人とみられ、同署が身元確認を急いでいる。両毛線は上下計2本が運休、8本が最大で65分遅れ、約2800人に影響した。
2007年11月28日

■犯人が少年でなく、日本人でもないからでしょうか?今のところ被害に遭ったレンタルビデオ店を非難する愚かな声は聞こえて来ないようです。日本のガキンチョがやれる「万引き」なら、言葉が多少不自由な外国人でも簡単に真似できるのでしょうし、貧困国では今でも昔の日本と同じ様な命賭けの「万引き」は頻発していますからなあ。

「万引き」を考える その壱

2007-12-30 11:23:07 | 日本語
■「歌は世に連れ、世は歌に連れ」という慣用句がありますが、歌以上に世相を反映して変化し続けるのが言葉です。毎年「基礎用語」が入れ替わり、水面(みなも)の泡のように流れて消える「流行語」を表彰する行事も恒例となっています。大昔は人の口に乗って広まって行く間に取捨選択されて定着したもののようですが、今の流行り言葉はマスメディアが「連呼」することで爆発的に広まって花火のように消え去る激しい変化になりました。

■そんな中で売春行為(犯罪)を「援助交際」と呼ぶ悪習が蔓延したものですが、やっと下火になったのは根無し草の流行語は短期間に飽きられて古臭く感じる日本らしい感性の影響のようです。「畳と何とかは新しいのが良い」そうですから……。犯罪に関連する言葉が無責任に言い換えられると犯罪性が薄まってしまうという困った現象が起こります。これは大きな言葉の問題なので、少なくとも言葉で商売をしている人達には充分に注意して欲しいところです。

■年末年始は財布の紐が緩む時期ですから、不況が続いているとはいえ、日本中の商店は「書き入れ時」で大忙しのようです。あの手この手で集客数を上げようと、皆さんが必死になって宣伝広告の方法を工夫しているわけですが、多くの人が集まると、どうしても「招かれざる客」が紛れ込んで来るのが頭の痛いところでありましょう。そこで活躍?するのが「万引き」犯たちというわけであります。

■どうやらこの「万引き」は江戸時代から使われている言葉だそうで、数値の「万」は当て字で本来は「間」だったという語源説が有力のようです。「間が悪い」という表現はタイミングや「運」の悪さを意味しますから、タイミングを見澄まして商品を抜き取る窃盗犯罪を「間引き」と呼んだようです。「万引き」の犯行現場は商店の陳列場に限定されますから、移動中の人から財布を抜き取る「スリ」とはまったく違います。

■物の本によりますと、江戸時代には「スリ」は特技のされて職業の一つとされていたとか……。但し、この稼業に付くには特定の髪型でなければならず、現行犯で逮捕されたらきっちり処罰されるという厳しい職業だという話です。でも「1両盗んだら首が飛ぶ」と言われた厳罰主義の江戸時代ですから、スリ職人が狙う財布には小銭しか入っていないという暗黙の了解もあったようです。スリは専門的な技術を使って社会に与えるダメージを最低限度に抑えて飢え死にしない方策として認められていたらしいのですなあ。

■話はずっと飛びまして、戦後の動乱期には多くの戦災孤児が街に溢れ、物不足で経済は超インフレの大混乱となれば、餓えた子供達は命懸けで「万引き」して露命を繋いだのでした。そんな傾向が1970年頃まで続いたようですが、盗む物が食糧から菓子類、学用品から書籍へと高度成長期の中で変化したようですが、バブル崩壊後に「万引き」の意味が大きく変わってしまったようなのですなあ。


さいたま地検熊谷支部が窃盗と窃盗未遂の罪で起訴した男が、逮捕されるまで書店などでCDやDVDの万引を繰り返し、中古店で換金して約2年間にわたりホテル暮らしを続けていたことが29日、埼玉県警熊谷署の調べで分かった。

■この事件のキーワードは「中古店」と「ホテル」です。江戸時代の「道具屋」は勿体無い文化の象徴的な存在でした。長屋生活をしている人達は引っ越す際には生活に欠かせない家財道具を「道具屋」に売って身軽に移動して、新居の近くで中古品を買い直していたのだそうで、その間に各種の「修理屋」が大活躍していたというわけです。高級品を扱う「骨董屋」とは違う生活必需品の中古品がリ・サイクルではなくて、見事に「サイクル」していたというわけです。従って道具屋文化の中でボロ儲けは不可能だったのですなあ。

行きはヨイヨイ帰りは怖い その四

2007-12-30 09:07:45 | 外交・情勢(アジア)
中国外務省の劉建超報道局長は28日夜の記者会見で……福田首相は今回の訪問を「迎春の旅」と表現したが、劉局長は「道理がある」と賛同。日中関係が春を迎えたとの認識を示した。中国は昨年10月の安倍晋三首相(当時)訪中を「氷を砕く旅」、今年4月の温家宝首相訪日を「氷を溶かす旅」と位置付けている。

■年賀状の季節とは言え、飽くまでも「迎春」は旧暦の正月用の言葉です。自然界では冬の後には必ず春が巡って来るものですが、人間社会や政治の世界では二度と「春」を迎えられない場合が実に多いのが悲しいですなあ。今頃、安倍前総理はどんな気持ちで年賀状を書いているのでしょう?まさか辞任したからと「喪中」ハガキを送っているのではないでしょうし、福田現首相に「あなたももう直ぐ……」などと書いているのでしょうか?


劉局長は、福田首相が国連加盟の賛否を問う台湾の住民投票に不支持を表明したことについて「この正しい立場を称賛する」とし、「不支持」と「反対」にそれほど違いはないと述べた。新華社は「福田首相が台湾問題で4つの『ノー』」と報じた。
2007年12月29日

■教科書問題だろうと従軍慰安婦だろうと、虐殺30万人だろうと、先に騒いだ方が勝ちというのは困ります。やっぱり「ちゃぶ台」をひっくり返して激怒して見せる必要があったのかも?何だかポツダム宣言の「黙殺」騒動みたいになって行きそうで心配です。思い切って、米国から帰国して直ぐにシンガポールに飛んだ先例を踏襲して、正月気分の日本になど落ち着かないで羽田に下りたら翌日にでも台湾に飛んで見せると宜しいかも知れませんぞ。緊急の訪問の目的は、当然誤解を防ぐための「御説明」です。

■この情報はあっと言う間にチャイナ中に広がり、台湾現地にも流れるでしょう。外務省の担当官がぼそぼそと「誤報です」などと言ったところで、「4つのノー」という覚え易い短いフレーズを根絶やしにするのは大変でしょう。く


福田康夫首相は29日、温家宝首相の故郷、天津を訪問した。天津は、中国第3の経済圏「環渤海経済圏」の開発重点区域。中国側は福田首相の訪問により、天津への日本企業進出をいっそう促す狙いがあった。

■昔の田中角栄さんが言った「均衡ある開発」とはまったく逆の「先に豊かになれる者から豊かになれ!」政策を小平時代から強引に進めているチャイナですから、外資の奪い合いは凄まじいものがあります。既に日本からも莫大な投資が行われているはずなのですが、それは香港周辺や上海など南に偏っているらしく、北京・天津を基盤とする胡錦濤政権からすれば、「不足!」なのでしょう。


福田首相の視察の目玉は「浜海新区」。中国が石油化学やハイテク、航空産業、金融、物流などの振興と企業誘致に力を入れる国家プロジェクト地域だ。福田首相は開発計画の展示館を見て回り説明を受けたが、首相を出迎えた張高麗・天津市書記は「今回の訪問をきっかけに日本と協力したい。ハイテク、省エネ、環境分野などで積極的な協力をお願いしたい」と求めた。

■泉下のフビライ大汗が聞いたら苦笑いしそうな話です。元朝が始まった頃は「直沽寨」という小さな村がぽつんと有っただけの土地でしたが、隋の煬帝が完成させた南北を結ぶ大運河を越える海運を含んだ巨大な物流ネットワークをフビライが作った時に、北京と水路で結ばれた重要な海の玄関になったとか……。世は航空機時代と言っても重量のある物や大量に物資を運ぶ船舶が大活躍ですから、チャイナの北半分には大連・青島・天津が鎬(しのぎ)を削って大規模な開発計画を掲げているようですなあ。


首相はこの後、トヨタ自動車工場も訪れた。天津には米通信機器大手モトローラや、韓国のサムソン、欧州の航空機メーカー、エアバスが工場設立を決めている。日本もトヨタなどが進出しているが、「欧米企業にくらべ日本の出遅れ感は否めず、投資戦略が必要だ」(日本企業幹部)という。中国外務省関係者も「福田首相の訪問で日本側に天津周辺の開発計画を幅広く知ってもらいたい」としている。日中間では、今年4月に温家宝首相が訪日した際、渤海の水質汚濁防止で協力することが共同声明に盛り込まれており、中国側は日本の環境技術を、経済発展が著しい渤海に投入したいとの考えもあるようだ。
12月29日 産経新聞

■環境に配慮した汚染防止に関する法律が緩いのをよい事に、外国企業も適切な処理をせずに汚染を垂れ流ししているとか……。南北問題の中に危険な汚染物質が北から南に大量に運ばれている!と大問題になったのでしたなあ。今のチャイナは生産と廃棄が大規模に同居しているのですから、渤海湾は巨大な肥溜め状態。これを浄化する事など可能なのか?それよりも汚染物質の源を改善すべきでしょうなあ。そうなれば国内の法整備と環境教育の充実が先決問題で、外国に投資を強要するのは間違いという事になります。下手をして日本が浄化に少しでも成功したら、いい気になって汚染がますます進むだけのような気がしますなあ。

福田首相は29日午後、中国の重点開発地域の一つである「天津浜海新区」を訪問し、トヨタ自動車が現地企業との合弁で操業している天津工場などを視察した。……26日に内閣特別顧問に就任したトヨタの奥田碩相談役や渡辺捷昭社長とともに、生産ラインを見て回った。両国の経済関係が、着実に深まっていることをアピールする狙いがあるとみられる。天津浜海新区は、1994年に設けられ、今年10月の共産党大会では、上海の浦東開発区や深セン経済特区と並ぶ重点地域に位置付けられた。中国の温家宝首相の地元でもある。(センは土ヘンに「川」)
12月29日 読売新聞

■これでは世界のトヨタが、北京政府の意を帯して福田総理を洗脳しているようなものです。出発前からセレモニーの脚本は出来ていたのでしょうが、安手の茶番劇とも思えます。それだけではなく、上海と深センの経済特区を出し抜く権力闘争に巻き込まれる危険も心配です。まさか、帰国早々に福田首相が「天津へ行こう」キャンペーンを始めるのではないでしょうな?北京五輪の後は上海で万博が開催されるのですぞ!うまく行ったら五輪大会よりも開催期間が長い万博の方が経済効果は大きいはずですから、あれよあれよと思う間に好景気が南に集中する流れが強まる可能性もありそうです。

■甘い言葉で引っ張り込まれた後、大金を投じて整備したインフラを残して泣きの涙で手放して帰国、そんな悲劇が起こらないことを祈るばかりであります。ホイホイ福田首相の訪中は、「反省」の言葉と「投資」のカネだけが求められた非対称の外交イベントだったという予想通りの閉まらない話だったようです。
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行きはヨイヨイ帰りは怖い その参

2007-12-30 01:19:51 | 外交・情勢(アジア)
中国訪問中の福田康夫首相は28日、胡錦濤国家主席が催した夕食会で、胡主席と「論語ブーム」について語り合った。胡政権が伝統文化を重視する中、両首脳の会話は「大いに盛り上がった」(同行筋)という。夕食会で福田首相は、「日本では論語ブームが起きており、改めて孔子の教えが学ばれている」と切り出した。これに胡主席は「中国でもブームで、解説本もいろいろ出ている」と応じ、「中国には最近、伝統的な文化に戻る雰囲気がある」と語り始めた。
 胡主席はさらに、伝統文化が文化大革命期に否定されたことを紹介。その後、改革・開放で経済発展し物質的に豊かになる中で、「精神文明の建設も強化すべきだという意識が人々の間で広まっている」とブームの背景を分析した。
2007年12月29日 時事通信
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■講演後でも福田首相は「4つの武器」から「中国文化に詳しい」という武器を存分に振るっておられたようですなあ。冗談は兎も角としまして、田中角栄さんが自作の漢詩(のようなもの)を晩餐会の檜舞台で披露したという滑稽な武勇伝が残っていまして、「北京の空は青かった」とかいう漢字を羅列しただけの韻も踏まない恐ろしい作品だったそうですが、漢籍に関係する事を不用意に扱わない方が良いという教訓になっているはずなのですが……。

■日本の何処かで『論語』が流行しているとは知りませんでしたが、安部首相が残した「教育再生会議」の中には道徳教育→論語→修身復活という自論を持つ方がいらっしゃるやに仄聞しますが、活字離れ・本離れ・漢字嫌いが大増殖した日本で、一体、誰が『論語』を呼んでいるのやら……。群馬4区ではそんな珍現象が起こっているのでしょうか?一方の北京政府は、世界中に「孔子学院」という名の語学学校を戦略的に展開している最中ですから、本国でも孔子ブームを煽っていても不思議ではありません。胡錦濤さんが正直に言っているように、日本人が馴染んでいた『論語』原典は誰も読めないと思った方が「解説本もいろいろ」という意味が理解し易いでしょう。普及用の古典本は、原文の次に現代語訳があって、その後に注釈が並んでいるものです。

■更に、胡錦濤主席が「文化大革命」に言及しているのは、4人組(親分を入れると5人組)が『批林批孔』の大キャンペーンを展開した歴史を踏まえての事だと推察します。そこに「精神文明」が載れば、まさに江沢民時代からの政策を継承しているというメッセージとしては満点となります。「中国文化に詳しい」親中派の福田首相ならばすべてお見通しのことと存じますが……。日本に戻ってから、小泉時代の『米百俵』みたいに本当の『論語』ブームが起きるのでしょうか?それ以前に『論語』についてのコメントを求められた時に返す気の利いたネタを仕込んでおかねばなりませんなあ。


中国訪問中の福田首相は29日、北京の釣魚台国賓館で温家宝首相とキャッチボールを楽しんだ。4月の訪日時に立命館大でプレーした温氏に、福田首相が「ぜひ相手を」と申し入れた。当初、日程になかったが、28日の首脳会談で「まだ返事を頂いていない」と“催促”し、急きょ実現した。福田首相は無地の白いユニホーム、温氏は立命館大から贈られた背番号入りのユニホーム姿で登場。中国のユース代表選手がサポートする中、5分間で約40球を投げ合った。早めに準備運動を済ませた温氏に比べ、福田首相は何度もボールをワンバウンドさせたが、両首脳は野球を通して日中「連携」をアピールした。
12月29日 読売新聞

■「無地の白いユニホーム」を事前に用意していたとすると、これは小泉元首相がブッシュ大統領とキャッチボールをして見せたのを意識してのパフォーマンスという事になりそうですなあ。そうなりますと、胡錦濤主席との『論語』談義は、思い出すのも恥ずかしい小泉さんの音痴なプレスリーの物まねのつもりの「泥鰌すくい」を意識しての演出だった可能性も出て来ます。どちらにしても国民は誇りとは思わないでしょうが……。無理に頼み込んでまでしてキャッチボールをする必要は無いでしょうなあ。そもそも外交というのは言葉を投げあう真剣勝負なのですから、下手なボール投げなどしている暇は無いでしょう。本当の息抜きなら、見事な成果を上げてからにして欲しいものです。

■間違っても帰国してからキャッチボールの思い出話などしては行けませんぞ。それでは高砂親方の「ツルツル、ダブルアーチ」会見と同じ顰蹙ものですからなあ。「一体、何しに行ったんだ?」と冷笑を浴びるだけです。


福田康夫首相の訪中に同行して北京入りした貴代子夫人は28日、市郊外にある北京日本人学校(川村康校長、約700人)を訪問した。歓迎式で貴代子夫人は「国際的な目標を持つ人になってください」などと激励した。……終業式を先に済ませ、生徒全員が歓迎式に臨んだ。貴代子夫人は「貴重な冬休みを楽しく過ごしてください」と述べ、日本から運んだ「高崎だるま」と図書(目録)を贈った。
2007年12月28日 時事通信

■せっかくの歓迎式ですが、どうして「国際的な目標を持つ人」に群馬4区の観光名物「高崎だるま」が贈られるのでしょう?700人の生徒達の中に群馬県出身の生徒がたくさん居たのでしょうか?まさか、達磨大師がインド人だとは知らずに「エライ中国人」だとでも思ってのプレゼントなら二重三重にびっくりですが……。贈られた達磨は何処に飾るのでしょう?福田総理の辞任した後に燃やすのでしょうか?スチュワーデス出身という奥様の国際感覚も地元での長い選挙活動で劣化しているのかも知れませんなあ。

行きはヨイヨイ帰りは怖い その弐

2007-12-30 00:38:16 | 外交・情勢(アジア)
■訪中前から『ドラエモン(偽造含む)』の「のび太」をニックネームとして賜っている福田首相ですから、決して畏怖される存在ではないのは確かです。舐められているのと親しみを持たれるのも全然違いますからなあ。ジャイアンに虐められてオイオイ泣いているのび太君のイメージと重ねられたら最悪です。そもそも、福田首相にはドラエモンは付いていないのですぞ!自前の道具で成功した事が無いというのも、のび太君の特徴とか……。

■知ってか知らずか、福田首相が「4つの武器」を振るって大喝采?を浴びた名門北京大学に関する告発記事が講演の当日に発表されたそうです。


2007年12月27日、北京大学のBBSに、同大で教鞭を取るエール大学教授のメールが公開された。それによると、北京大では学生から教授に至るまで論文盗作が横行しているという。新華社が伝えた。

■これも何を今更……と思えるようなニュースですが、米国名門大学が現場の体験として発言しているとなると大変です。


エール大学生物学教授のStephen Stearns氏は19日、自身の指導学生に宛てたメールを北京大学のBBSに載せ、内外から大きな反響を呼んでいる。それは、「北京大では学生から教授まで、論文盗作が当たり前」と書かれたものだった。……「中国以外の国でも講義を受け持っているが、これほど堂々と盗作が横行している国はない」という。そして「教授までが当たり前のように学生に盗作させる」と驚きを隠せない。「見つかっても処罰が甘いのが原因の1つ」と問題点を指摘する。

■「知的所有権」という概念自体が理解できない政府が権力の頂点に立っているのですから、その頂点に登って行こうと言う大学生達が結果オーライの不正行為に走っても、それほど驚くべき事でもないでしょう。


学生に論文を書かせると、「英語が母国語の者でも、相当レベルが高くなければ書けないようなものが、次から次へと提出されてくる」のだという。「一目見てすぐに『盗作』だと分かるよ」と悲しげに語っている。一部には注意を受けても、なお改めないというツワモノもいるという。「中国の頭脳」と呼ばれ、将来のエリート街道が約束される北京大生。偏差値とモラルは比例していないようだ。
12月29日 Record China

■他人事ではなく、日本の大学でも真面目な留学生達に混じって、相当な不正行為を重ねて学位を取っている悪い奴が確かに居ると、過去に聞いたことがありますぞ。日本では「盗作」よりも「代筆」と呼んだ方がよい麗しき日中友好の物語が多いようですが、最近も続いているのでしょうか?国境を一歩出れば、日本の大学で取った学位の価値は無いも同然、などという絶望的な事を言う人も居るようですが、米国エール大学ともなると大金持ちのボンボンが集まると揶揄されながらも、学位の権威は頑張って守っているようですなあ。

■福田首相はこのような大学で講演をしたというお話です。

行きはヨイヨイ帰りは怖い その壱

2007-12-30 00:36:45 | 外交・情勢(アジア)
■間も無く帰国の福田首相。北海道から日本海側全域が大雪と強風に襲われて帰省客が難儀している年末ですから、特に重大な決定事項も無いどうでも良い首脳会談などを気にしている国民などいないのかも?最近では5割も的中しない(ような気がする)気象庁の予報から考えると、何が有ろうと一言文句を言おうと待ち構えている大群に出会わないように、到着する羽田空港近辺を除く広い範囲で悪天候になるタイミングを計っていたとは到底思えませんが……。

■帰国するのが30日、帰国会見でどんなに無責任で間抜けな自画自賛を並べようと、翌日の報道は『今年の10大ニュース』やら紅白歌合戦などの悲しくも虚しい浮かれた話で満ちているでしょうから、じっくりと訪中の成果を吟味する余裕のあるメディアは皆無?年が明けて三が日が終わった頃には、もう誰も首相の訪中の事実さえも覚えていないかも?そこまで読み切って出発したのなら大したものですなあ。


中国政府系通信社の中国新聞社は28日、訪中している日本の福田康夫首相が同日に北京大学で行った講演について、「4つの武器を使って学生たちの大きな拍手をさらった」とする評論を発表した。学生たちには「講演は日中関係に関する首相の見解を分かりやすく語っており、日本に対する理解が深まった」として好評だったという。

■ホイホイ福田首相の講演原稿は日中両国の外交部門がいじくり回して了承済みの内容で、学生のコメントも最初から決まっているような管理が行き届いた儀式ですから、日本に対する「理解」が深まったはずは無いでしょう。こうした学生のコメントも含めて「格別の大歓迎」なのです。あまり大きな葛篭(つづら)を貰って帰ったりすると、それを開けえたら恐ろしい物が飛び出して来たりすると日本の昔話には書かれていますから、御用心、御用心。


評論が指す「4つの武器」とは、「歴史問題に対する反省の態度」「日中関係に関する積極的な主張」「中国文化に詳しいこと」「ここぞというときのユーモア」。

■何でも数え上げるのが好きなお国柄とは言え、福田首相の原稿棒読み講演から三種の神器よりも多い「4つの武器」を数え上げるのは大変だったでしょうなあ。ご苦労様でした。並んだ項目を見れば一目瞭然!反省をぷんぷんと臭わせる「歴史問題」に関する部分だけが高い評価を与えられているのがよく分かりますなあ。二番目はその余韻ですし、三番目は悪い冗談で、四番目は情けないような軽侮のメッセージが詰まった評価と見えます。


講演中、歴史問題について「不幸な時期があっても直視し、子孫に伝えていくことが我々の責務だ」と語った時には、会場に集まった学生たちから一際大きな拍手が起こった。

■ガス田も北朝鮮問題も環境問題も、すべてはオマケに過ぎず、「反省」の弁を北京大学で述べるのが目的だったようなものですなあ。だからこその大喝采だったのでしょう。おそらく前列の何処かか舞台の袖から合図を出す担当者が居たはずです。それを知ってか知らずか、これこそ日中友好の証だ!などとホイホイ首相が信じ込むような事は無いとは思いますが……。


また、講演の「つかみ」として、中国人が旧正月の飾りに使う逆さまの「福」の文字を表す「福倒了」=「福到了」(福がやって来た)という言葉をもじって、「福田到了」(福田がやって来た)と話し、笑わせたことも好印象の要因だったという。
12月29日 サーチナ・中国情報局

■「福到了」のネタ一つで、福田首相は「中国文化に詳しい!」「ユーモアのセンスがある!」と書き立てているのなら、相当な皮肉と悪意があるものと思われます。試しに、是非とも年明けの国会や定例記者会見で「4つの武器」を存分に駆使して頂きたいものです。日本なら視聴率ならぬ「支持率」という厳しい評価基準が有りますから、「武器」の切れ味は数日で分かりますぞ!質の高いユーモアで笑いを取ったのか、野蛮人が庶民レベルの漢字文化をオドオドと取り上げて見せる姿が笑われたのか、それは側近がしっかり判断して御本人に伝えた方が良いでしょうなあ。笑わせたのか、笑われたのかはまったく違いますからなあ。

ホイホイ訪中 その九

2007-12-29 20:25:53 | 外交・情勢(アジア)
今後の日中関係のあり方について福田首相は、「人権、法治、民主主義といった普遍的価値を共に追求することも重要だ」と前置きした上で、「一方で日中両国に深く埋め込まれた共通の基盤、価値に思いを致すことも大切だ。両国国民に日中関係の特別な関係を思い起こしてもらいたい」などと語った。……
12月28日 産経新聞

■この段落は解読が非常に難しい構成になっています。受験問題に出されたら困る文章です。つまり「悪文」の見本みたいなものです。産経新聞の記事が悪いのではなくて福田首相の「原稿」が変なのでしょう。「普遍的価値」は中華帝国主義の事を意味しているわけではなさそうですから、相手国の「人権・法治・民主主義」の不足を責めているのか?と思わせておいて「共に追求」と続けていますから意味が分からない!日本側にも人権・法治・民主主義が完備していると胸を張って言えない面が多々有ります。

■しかし、相手は欧米諸国からも「人権問題」で非難されることが非常に多い国ですし、「法治」でないばかりに進出した日本企業の多くが泣いているのも事実で、民主的な選挙制度を持たない体制なのですから、「共に追求しましょう」という相手を間違えています。「日本を見習え!」とは絶対に言えないのなら、最初からこんな立派な「普遍的価値」などを持ち出さない方が賢明でしたなあ。聴いていた1000人の生徒達はどんな顔をしていたのでしょう?ここで感動したり拍手をすると後々面倒な事になりそうです。

■次の「一方で」という接続詞に深い意味が籠められているとしたら、少しは謎が解けそうです。「普遍的価値」と「日中両国に深く埋め込まれた共通の基盤、価値」という奇妙な代物とは別物として扱っているわけですから……。それにしても日本にも「深く埋め込まれている」物が気になりますなあ。場所柄を考えますと、一部で暴露された日本社会に深く根を張った「情報工作」の件とは違うとは思いますが、一体、何の事を言っているのやら……。年明けの国会で誰かにじっくりと質問して欲しいくらいです。外務省のチャイナスクールが見事に説明してくれることを切望しますぞ。

■同じ「講演」なのに、新聞によって書き方が随分と違います。


「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」――福田首相は28日、北京大で講演し、近現代中国を代表する作家、魯迅の言葉を引用し、アジアと世界の安定と発展のため、「共に歩き、共に道を造り、共に我々の未来を創り上げよう」と数百人の教員・学生らに呼びかけた。

■日本への留学から戻ってから、徹底的に自国の同胞を批判して怒ってばかりいた魯迅を北京大学で取り上げても大丈夫か?と心配にもなりますが、どうやら中国共産党は魯迅も孫文もひっくるめて共産党が成功させた革命を準備した偉大なる先人として歴史を組み立てているようなので、聴衆もそのつもりで聴いていたのでしょう。


……福田首相が「過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって初めて将来に誤りなきを期すことが可能になる」と歴史問題に言及すると、会場から大きな拍手が起きた。また、日中平和友好条約締結30周年を迎え、北京五輪が開かれる2008年を「日中関係飛躍元年にしたい」と強調した。
12月28日 読売新聞

■大受けだったとすると、過去を反省するのは「日本だけ」と解釈されるような文脈が組み立てられていたものと推察されます。毛沢東さんが「大躍進」や「文化大革命」で2000万人~3000万人の人民を殺した事とか、旧ソ連のフルシチョフ書記長に全面核戦争を進言して「我が国の半分が死んでも3億人が残る」と言ったことも、勿論、チベット解放戦争で恐ろしい事をやった事などの「歴史」に思い至らないような作文だったのでしょうなあ。

■「元年」という便利な表現も文才の無い政治家が愛用する困った言葉です。どうやら帰国した後であちこちから異論・反論・オブジェクションが噴き出す種をたくさん撒いて来た慌しい訪中だったことになりそうですが、いざとなったら得意の「そんなこと言ったかなあ?」が連発されるのでしょうか?年末年始は選挙区で凱旋報告などをするのでしょうが、何を語るのやら……。

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ホイホイ訪中 その八

2007-12-29 20:23:14 | 外交・情勢(アジア)
中国外交部の秦剛報道官は、福田首相の訪中を、安倍前首相が果たした「氷を割る旅」と温家宝首相の「氷を溶かす旅」に続くものと評価。日中関係のさらなる改善と発展に大きく貢献するとコメントした。……
12月28日 Record China

■氷を割って、氷を溶かしたら、後は「氷水を飲む」か「泳ぐ」か?氷水も飲みすぎるとお腹を壊しますし、泳ぐなら心臓麻痺に注意しなければなりませんぞ。まあ、反日暴動や戦乱で水が沸騰するのも困りますが、あまり文学的な表現に凝って日中間が冷えているだの凍っているだのと騒がない方が良いでしょう。でも、政治家たるもの万人を感動させる演説をする文学的な才能は必要ですぞ!


……福田康夫首相は28日、北京大学で「共に未来を創ろう」と題する講演を行い、日中間には長い交流の歴史の中で文化・伝統の「共通の基盤、価値」があり、「来年は日中関係の飛躍元年にしたい」と述べ、両国関係の進展に意欲を示した。そのうえで歴史問題について「不幸な時期があっても、しっかり直視して子孫に伝えていくことがわれわれの責務。過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって初めて、将来に誤り無きを期せる」と述べた。

■「共通の基盤、価値」とは何でしょう?漢字?箸?どちらも使い方がお互いにまったく違いますが……。まさか儒教?中国共産党は否定しているし、日本も明治と戦後の転換期に儒教っぽい物は捨ててしまったような気がしますなあ。「一党独裁」と「派閥政治」とも似ていませんし、共通の価値が見つからずにお互いに困っているのが実情ではないでしょうか?

■政治家が愛用する「日中間の長い交流」という表現も、そろそろ賞味期限切れで廃棄したらどうでしょう?日本の大和朝廷が遣隋使を送った相手は北方民族の鮮卑族が建国した隋でしたし、遣唐使の相手も同じ鮮卑系の親戚筋が立てた唐王朝でした。その後はチャイナは南北西の諸民族が入り乱れて宋が建国されるまではほとんど交流などありません。その後が元寇!で明朝は海禁政策で貿易を制限しましたなあ。「ラストエンペラー」まで続いた清朝は女真族の王朝で、清朝末期には1万人以上の留学生を日本が受け入れたのは事実です。辛亥革命を起こした孫文を応援した日本人も多かったのですから、本格的な交流が始まったのはその頃だと考えた方が良いかも?勿論、八路軍は治安出動して追い回した山賊みたいなものでしたから、そういう意味では交流が有ったとも言えますなあ。

■三国時代の魏が残した『倭人伝』以来、歴代王朝の史書は日本を「野蛮人」コーナーに入れていたという事実を無視して「長い交流」と日本側が言うのは如何なものでしょう?きっとホイホイ福田総理に質問しても明快な答えは期待できそうもありません。群馬四区の支持者の皆さんには総理の真意が分かっているのかも?


学生ら約1000人を前に行われた講演は、中国国営テレビによって全土に生中継された。外国首脳の講演の生中継は福田首相が初めてという。中国側には「国民の対日感情の改善につながる」との期待があると同時に“親中派”とされる福田首相だけに、中国の人権問題など、微妙な問題に触れることはないとの判断があったようだ。

■田中角栄さんの訪中時に、「御迷惑」発言で大騒ぎになった苦い経験が双方に有りますから、一言半句も変更を許さない打ち合わせがぎちぎちと行われたのでしょう。どうせ、気の利いたアドリブ芸を持たない福田さんですから、国会でも慣れている原稿の「棒読み」をしたのでしょう。


福田首相はさらに「共通の価値」とともには、「50年、100年先を見据えた相互理解や相互信頼」の重要性を強調。「なぜ相手は自分の気持ちを理解できないのかと不満に思う人は数多いと思う。大切なのは相手を理解するよう務めることだ」と述べ、歴史認識問題などで日本側としても配慮する必要性を強調。靖国参拝などをめぐりギクシャクした安倍晋三前首相や小泉純一郎元首相の対中姿勢との違いをにじませた。

■そう言えば「共通の価値」は米国が盛んに使っている言葉だったはずです。対テロ戦争の有志連合を作っているのが「共通の価値」による紐帯のはずです。そこには民主主義と人権というキーワードが中心に据えられているのですから、米中間でも何かと人権問題が取り上げられているのを無視して、日本が勝手にこんな場所で「共通の価値」を持ち出すのは具合が悪いのではないでしょうか?

ホイホイ訪中 その七

2007-12-29 20:22:35 | 外交・情勢(アジア)
■4年前の話とは言え、新幹線導入に関するチャイナ流の要求は、対中交渉・貿易を考える時には非常に参考になる資料なので引用してみます。
技術の移転
①設計図の貸与と技術者の派遣
②車両は数台のみ購入する
③それを分解し、複製し、中国が国内生産することの容認
④さらにそれを 中国独自の技術 として第三国に輸出することの容認

■日本の新幹線は車両だけではなく、レールや電線などの素人の目にも見える設備、その陰には世界一の安全を保証する総合監視システムなどの巨大な技術体系だと言われています。その中から車両を設計図のオマケ付きで「数台」買い、技術者を送り込んで設計・製造のノウハウを丸ごと貰った後は、開発コストを削った「複製品」(偽物かも?)を好き放題に作って世界中に売り捲くる!という言いたい放題の要求内容だったそうです。冷戦時代の旧ソ連でも手下の衛星国に軍事技術を渡す場合には情け容赦の無い支払い要求があったのは有名な話で、何故か相手が日本となるとこんなに居丈高な要求をするのがチャイナなのですなあ。

■求められたのは「技術」だけではなくて、「資金」に関しても臆面もない要求が出ていたようです。


資金の供与
①落札資金は日本の対中ODA(政府開発援助)を原資とする
②不足分は日本の銀行がシンジケートを組んで中国政府に融資
③対中ODAの増額
④工事は中国国内の業者を用いる

■日本の企業が政府の対外開発援助のほとんどを受注して、その資金を還流させていたのは有名な話ではありますが、同じ事とは言いながら相手から要求されると不愉快ですなあ。要するに日本の国庫から出たカネが北京政府を経由してぐるりと廻ってJRに戻って来て、技術だけはそっくりチャイナに移転しているというテレポーテーションみたいな話です。もっと単純化するならば、日本政府がJRに札束を放り投げて「技術をチャイナにくれてやれ!」と言っているも同然でしょうなあ。

■御丁寧なことには、自国内ではまったく整備されていもない保障サービスにまで要求が広がっているのです。こんな要求をしている暇があったら危険な製品や劣悪な模造品を根絶やしに努力して欲しいものですなあ。


保障・アフターサービス
①運営における教育・訓練の拡充
②事故が起こった場合の補償・賠償・保守責任
③中国がこれを第三国へ輸出した場合の連帯保証

■要するに、現状では日本の新幹線システムを使いこなせないと白状しているようなものですから、考えようによっては正直な弱音とも解釈は可能です。でも、最初から読み通したら腹が立ちますなあ。日本としても海外に輸出出来なければ宝の持ち腐れになってしまいますから、しっかりしたユーザーには販売したいところでしょうが、磨き上げた日本の新幹線システムを半永久的に安全に使いこなせるようになるには、今のチャイナには時間が必要なのではないでしょうか?たとえ、胡錦濤政権の権力基盤である天津~北京間の短い距離を結ぶ30分しか走行しない路線だとしても、手放しで御購入を喜んで良いものか?いろいろな疑念と不安がありますなあ。


中国政府は来年8月に開かれる北京五輪に合わせ、北京―天津間に高速鉄道を開通させる予定。当初は独シーメンス社型の高速鉄道車両のみを導入する計画だったが、福田首相の訪問で、日本の新幹線車両も同時に採用されることが決まった。新幹線車両は、山東省の鉄道車両メーカー南車四方機車車両が、日本の川崎重工業など6社の技術を導入して製造。全長120kmの北京―天津間を時速300kmのスピードで、片道わずか30分で走行する。

■120キロなら東海道新幹線で言うと東京~三島間に当たります。ひかり号は43分で走行していますが、北京~天津は300キロで30分!便利なようですが、非常に不安になるのは心配症だからでしょうか?

ホイホイ訪中 その六

2007-12-29 17:46:51 | 外交・情勢(アジア)
日本政府関係者によると、両国は首脳会談直前の協議で共同開発の対象海域をある程度、絞ったが、確定には至らなかったという。この海域には日本が主張する「中間線」が含まれており、「中間線」を認めない立場をとる中国側との間で何らかの歩み寄りがあったとみられる。ただ、中国側が単独開発している春暁(日本名・白樺)ガス田の扱いなどで溝が埋まらず、決着は先送りされた。

■国際法では慣例化している「中間線」を認めない相手が、何をどのように「歩み寄る」のか皆目見当も付きませんが、朝日新聞の記者には分かるのでしょうか?不思議な話です。「春暁」という具体的な名称が出たら決着は「先送り」と言うのですから、「歩み寄り」など無かった事になりませんかな?


温首相は会談後の会見で「これまでの合意の上で、一歩前進することができた」と評価し、福田首相も「間違いない進展が実現すると確信を持っている」と語った。

■相手は「一歩前進できた」と言い、こちらは「進展」の後に「実現すると確信」と言う。つまり、相手は言いたい事を並べて満足し、こちらは聞き役に徹して唸っていたという事でしょうなあ。交渉事に「確信」や「期待」を持った方が負けというのは常識ではないでしょうかな?


一方、国連加盟の是非を問う住民投票を予定している台湾問題については、温首相が会談で「歴史と台湾問題は日中関係の政治的基礎。住民投票の動きは地域の安定を脅かすものだ」と懸念を表明。福田首相は「投票をめぐって緊張が高まるようなことは望んでいない。一方的な現状変更につながるのであれば支持できない」と語り、住民投票に初めて不支持の立場を示した。胡主席との会談では、ガス田や台湾問題は話題にならなかったという
2007年12月29日 asahi.com

■「日中関係の政治的基礎」という重大な主張を書いてくれたのは有り難いことですが、それが「歴史」と「台湾問題」の二つとなると、安倍前政権を跳び越して小泉政権時代以前まで時計の針を戻してしまったことを意味するでしょう。台湾の住民投票が「地域の安定を脅かす」のは、平和に暮らしている台湾領内に殴り込みを掛ける物騒な国が有るからです。これはヤクザの脅し文句と同じく、手を下すの者をぼやかして相手を怖がらせる手法です。「どうして選挙をすると安定が脅かされるの?」と問い返してみたらどうでしょうか?もしも相手が「武力衝突」の可能性を匂わさせたら、すかさずこちらも「法律改正」「武器体系の見直し」に着手すると宣言しなければなりません。

■朝日新聞の記事では、福田首相の唯一の見せ場だった「誤訳」事件にはまったく触れていませんなあ。この記事を唯一の情報源にしている人は、年末の訪中は大成功だったような錯覚に陥りそうです。危ない、危ない。御丁寧にも、最後に胡錦濤主席には最大の懸案事項であるガス田(領土・領海)問題を持ち出せなかったと短く添えるとは、なかなか芸が細かいですなあ。

■別のメディアから福田首相訪中のトピックを拾います。


2007年12月28日、福田首相の訪中を破格の高待遇で迎えた中国だが、訪中土産として来年の北京五輪に合わせて開通を目指す北京―天津間の高速鉄道車両に、日本の新幹線を発注することが明らかになった。中国経済ネットが伝えた。

■新幹線の商談が「破格の高待遇」に含まれているのかどうか不明ながら、2003年段階ではJR東海の社長を激怒させるような高飛車で無理無体な要求をして、北京~上海間の高速鉄道の受注合戦から日本側が降りたという事件が起こったのではなかったでしょうか?以下がその時の驚天動地の要求項目だそうですが、ホイホイ福田首相は相手の性根が改善されているのを確認しているのでしょうか?2006年からはJR東日本が車両を納入しているようですが……。
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ホイホイ訪中 その伍

2007-12-29 17:46:12 | 外交・情勢(アジア)
安全保障分野では、中国人民解放軍の青年将校と自衛隊若手幹部の相互訪問実施で一致。軍事当局間のホットライン創設へ共同作業グループを早期につくることで合意した。

■「ホットライン」が設置されたら、毎日食前食後に尖閣諸島周辺の不自然な動きについて抗議電話を掛けられるようになるのでしょうか?逆に有る事ない事で嫌味を言われ放題になるかも?こちらに大事な時には「留守電」になっているような気がしますなあ。便利な停電や回線トラブルが発生したり……。機密情報がだだ漏れの防衛省ですから、あまり「相互訪問」の回数を増やすのは危ないかも?既に必要な情報はサイバー戦とヒューミント作戦で好き放題に盗まれている可能性さえ有りますから、これを機会に仕切り直しをすれば良いかも知れませんが……。間に合うでしょうか?


アジア外交について、福田首相は「日米同盟との共鳴」という持論を説明した。北朝鮮問題では、核計画の「完全な申告」など第2段階措置の重要性を確認し、拉致問題の解決に向けた中国の支援を促した。台湾問題では、国連加盟に関する住民投票などを巡り意見交換した。
12月28日 毎日新聞

■「共鳴」というのは直接触れずに空気を媒介にしたエネルギーの移転を意味しますから、外交に適応するのは難しい気もします。何だか僥倖を待つだけの「神頼み」みたいな印象が強いですからなあ。以上は毎日新聞の記事ですから、努めて明るい書き方をしているようです。では、毎日新聞の先輩格の朝日新聞ではどんな報道をしているのでしょう?


……胡主席には来年春の来日を要請し、主席も日程調整を急ぐ考えを示した。温首相との会談では、懸案の東シナ海のガス田問題について、結論は先送りしたが、「具体的解決策について積極的な進展が得られた」との認識で一致。胡主席来日までを念頭に早期解決を目指すことを確認した。……福田首相は官房長官時代の03年8月に訪中し、胡主席と会談したが、首相就任後の会談は初めて。一方、胡主席が来春に来日すれば、国家主席としては98年の江沢民氏以来10年ぶりとなる。

■こういう書き方をされると、福田総理が本当に親中派だという印象が強く表れますなあ。でも、「首相就任後の会談」が初めてなのは就任時期を考えれば当たり前過ぎる話ですから、形式にコダワり過ぎの勇み足のようです。


胡主席は会談冒頭、「(首相の訪中は)必ず両国の戦略的互恵関係の構築と発展をさらに推進していく」と述べたうえで、「日中関係の発展は、アジア、世界の安定と発展に重要な貢献となる」と、両国関係の重要性を強調した。福田首相も「私の考えと全く同じだ。首脳間でこれほど意見が一致することはめったにない」と応じた。

■「まったく同じだ」という話が先頭に置かれると、随分と実のある会談になったように思えるから不思議です。しかし、「戦略互恵関係」は安部首相が就任直後に訪中した時に合意されていたものですから、今更、「わたしの考えとは違う」と言えるはずはないのです。こんな事しか「同じだ」と言えるネタがないからこそ、朝日新聞は最初に書いておきたかったのかも?


これに先立つ福田首相と温首相との会談では、ガス田の共同開発について、「新たな共通認識」として4項目を確認。「国際法にのっとり、早期に解決策について合意を目指す」との文言が盛り込まれた。外務省幹部は「(両国の)法的立場はあるが、それを害さない形で国際法にのっとった解決はどういうものがあるかについて話し合われた」と述べた。

■こんなに回りくどく書かなくても、「大陸棚」に関する互いの解釈が天と地ほども違っている状態が続いていると書くべきではないでしょうか?文言も「国際法」だの「早期解決」だのと気を持たしておいて、最後に「合意を目指す」とウッチャリを掛けられては堪りませんぞ!何でも項目を並べて数え上げるのが大好きな北京政府ですから、「4項目」が作られたのでしょうが、数の少なさから内容が抽象的であろうと推測できます。外交交渉の確認事項と言うよりも、それはスローガンでしょうなあ。

ホイホイ訪中 その四

2007-12-29 12:23:53 | 外交・情勢(アジア)
台湾の陳水扁総統は来年3月の総統選と同時に「台湾の名義での国連加盟」の是非を問う住民投票を計画している。米仏は「反対」の立場を鮮明にしているが、福田首相は「反対」とは口にしなかった。ただ、中国外務省の劉建超報道官は会談後の会見で「日本が台湾問題で行った立場を評価する」と述べた。「質問を受けた以上のことを申し上げたかもしれないが…」。福田首相は会見の最後にこうとおどけてみせたが、日本の首相として最低限のラインは守った。
12月29日 産経新聞

■蛙の面に何とやら……。「立場を評価する」とはご立派な開き直り!でも、どの立場を評価するのでしょう?再確認されてしまった「不支持」の立場では困ります。福田首相が本気で怒った国益を背負った「立場」でなければ困りますぞ。


……会談後、両首相は共同記者会見に臨み、温首相は「来年桜の咲くころ」の胡主席訪日について「国家元首として10年ぶりで意義深い」と強調。「来年の日中友好条約締結30周年を両国で盛大に記念する」と述べた。福田首相は「今ほど日中両国がアジア、世界で力を持った時代はなかった。大きな責任を持ち、将来へのチャンスだ」と強調した。同行筋によると、中国の首脳が共同会見に臨むのは異例で、日中両国首相が共同会見を行うのは初めてという。首相の訪中は昨年10月の安倍晋三前首相以来で、福田首相の就任後は初めて。

■忙しい年末に呼びつけているのですから、この程度のサービスと気遣いは当然の事です。胡錦濤さんとしても、先に小沢訪中団と写真撮影したり握手の大サービスをしたのですから、親中派の2人の政治家を両天秤に掛けて値踏みをしているのでしょう。来年中にも下手をしたら政権が交代するかも知れませんから、どちらに転んでも得するように二股膏薬(ふたまたこうやく)をペタペタ貼っておく事にしたわけです。それに対して「日中両国の力」をこんなに過大に宣伝しても良いのでしょうか?何としても答礼の訪日を確約して貰わねばならない立場の福田さんですから、ちょっと大袈裟なヨイショも必要なのでしょうが、この「力」に相応しい「責任」を自覚させられるかどうか?これが問題です。

■尖閣諸島周辺にパイプを打ち込むわ、物騒なアフリカであろうと核爆弾で世界を脅す北朝鮮であろうと、資源が有るところには見境もなく手を突っ込んで廻っているのも問題ですし、エネルギーと食糧の価格を高騰させる元凶と言われているチャイナに「責任」を自覚させるのは、凶暴な猫の首に鈴を付けるよりも遥かに難しい。


ガス田開発については、共同開発の方法や対象海域の設定などを巡り、27日夜まで事務レベルで交渉を続けた。28日夜、胡主席との会談も行われるが、「中国側が原則論に一定の理解を示す部分もあり、かなり詰まっているが、直ちに乗り越えるのは難しい」(高村正彦外相)状況だ。

■「一定の理解」というのは、日本がウジウジと悩んでいるという向こうにとっては実に結構な話を指している可能性がありそうです。北京側の「原則論」は小平時代に園田外相が取られた「棚上げ先送り」の言質を意味しているのなら交渉は絶望的です。今でも中国共産党の中では小平の無謬神話が強固に守られている一方で、日本では当時の政府は愚かだったと悔いる声が多いのですから、これでは勝負になりません。この件は『園田直を知っていますか?』を御参照。


気候変動問題については、福田首相が、13年の京都議定書後をにらみ、主要な温室効果ガス排出国が参加する実効的な枠組み作りに中国も加わるよう要請。環境分野での日中協力の一環として、中国国内約10カ所に「省エネ・環境協力センター」設置を表明した。今後3年間で中国人計1万人の研修を実施することも打ち出した。また、両政府は08年から4年間、年4000人規模の青少年交流実施でも一致した。

■立派な『京都議定書』を作った議長国として、日本は実に残念な立場に追い込まれております。無視の姿勢を採っていたブッシュ政権の米国でさえも、州政府レベルではあれこれと対策が打たれているというのに、日本政府は世界を驚かすような手は打っておらず、排出ガスは逆に増えているのですから、自ら率先して『議定書』は絵に描いた餅だと証明しているようなものです。それはそれとして、日本人の生命を危険に晒さないためにも、チャイナから海と空に流出し続ける有害物質は何としても止めねばなりません。

■エチゼンクラゲの大発生は象徴的な事件で、九州から徐々にオゾマシイ汚染物質が降下中との事ですから、これは不買運動で対処できる危険な食品のようなわけには行きません。迎撃ミサイルよりも、宇宙戦艦ヤマトが持ち帰った「コスモクリーナー」ばりの空気清浄装置を開発した方が良いかも?それではオウム真理教になってしまいますかなあ。拡散する汚染は元から絶つのが一番ですから、チャイナに浄化施設を建設するのは日本のためにも必要な出費と納得するしかないかも知れませんなあ。

ホイホイ訪中 その参

2007-12-29 12:23:21 | 外交・情勢(アジア)
北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳会談。直後の共同記者会見で「台湾独立」に対する表現をめぐり、福田首相が顔色を変える一幕があった。「(独立を)支持しない」という福田首相の発言を温首相が説明。これを会場で日本語に訳した通訳が「独立反対を表明した」と強い表現に「誤訳」したためだ。会見中に、すぐ資料を取り寄せた福田首相は自らの発言が「支持しない」だったと改めて説明するはめに。台湾問題の微妙さが改めて浮き彫りになった瞬間だった。

■危ない、危ない!偶然にうっかり「誤訳」などする国ではありませんからなあ。実に危ないですなあ。共同で作った文書も勝手に切り貼りするチャイナの外交部ですから、言葉には細心の注意が必要です。まったく、敵も然るもの引っ掻くものですなあ。


日中首脳による初の共同記者会見は予定の20分間を25分もオーバーする熱の入ったものになった。両国友好の大切さを訴える温首相。だが、それまでの温和な笑顔を引き締め、台湾問題を切り出した。そして会場に通訳の日本語が響いた。
「福田首相は台湾独立に反対するとの立場を順守、厳守していくことを表明した」その声に、温首相の右隣に座っていた福田首相が凍り付いた。温首相に気付かれないように右手の人さし指で、目の前の記者席にいた外務省の藪中三十二外務審議官に「資料をよこして」とサイン。福田首相の手元に資料が滑り込んだ。

■お笑いタレントだったら間髪入れず「オイ、オイ、オイ」とツッコミを入れる場面ですが、さすがに外交の現場は波風を立てるわけには行きません。ちゃぶ台ならぬ白い布を掛けたテーブルを引っくり返して見せるパフォーマンスも禁じられております。まあ、こちらは穏便に対応しておいて、相手方の底意を晒し者にするのは良い一手でしょう。親中派を自認する議員さんや官僚も凍り付いたかも?歴史的な記録映像写真もこまごまと「修正」してしまうお国柄ですから、この程度のわざとらしい「誤訳」が飛び出しても不思議ではありませんなあ。


中国側メディアの質問に一通り応えた福田首相は、最後に「台湾についても、私から日本の立場を申す」と切り出した。受け取った資料に目を落としながら、慎重に「2つの中国という立場はとっていないし、台湾の独立も支持していない」と語り、「独立反対」という表現を「支持しない」に修正してみせた。台湾独立への日本の姿勢は「反対」なのか「支持しない」なのか-。この2つは外交上、大きな違いがある。

■「反対」となれば万が一の場合にはおっ取り刀で北京政府の尻馬に乗って台湾に喧嘩を売らねばなりません。「不支持」なら、同じ場合でも「ああ、しょうがねえなあ」と高見の見物をしながら逡巡した振りをして居られます。米国政府もこの態度で構えています。一応は「独立、独立とは言うな!」と心配したり怒って見せたりしますが、もしも公明正大に民主的な手続きで国民の総意として「独立」が決議されてしまったら、何処かの国のように武力で押し潰すような事は出来ません。いざとなったら台湾海峡に米艦隊が突入し、後詰の日本国自衛隊は沖縄周辺を固める一方で、東シナ海で後方支援の補給活動で大活躍!日米連携しての示威行為に出て、実質的には「台湾独立」を支持するという大芝居を打たねばなりませんからなあ。


「親中派」と言われる福田首相だが、言葉の使い分けにはこだわってみせた。親日感情が比較的強い台湾と日本は長く良好な関係にあり、欧米諸国とは事情が違う。日本は昭和47年の日中共同声明以来、「台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国の立場を十分理解し、尊重する」と表現するにとどまり、「独立反対」の言葉は慎重に避けてきたからだ。

■触らぬ神に祟りなし、ちょっとでも踏み込んだ物言いをしたら、あっと言う間に発言内容が何倍にも膨れ上がって日本は米中間で股裂き状態に陥ります。どんなに理不尽な主張であろうと「ふん、ふん、仰る意味は分かりますよ」と言っていれば尻尾は掴まれません。いくら親中派のホイホイ首相でも、「そこまで落ちぶれていないぞ!」という意地を見せたというところでしょうか?


首脳会談後、外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長は記者団に「『支持しない』と『反対』とはニュアンスが異なる。強度に違いがあることは日本人なら理解できるだろう」と話した。

■何だか奥歯に物が挟まったような佐々江さんの発言ですなあ。違うのは「ニュアンス」ではなくて「意味」です!同一色の明暗みたいな「強度」の問題ではありません。余計な注釈を付けると逆効果になる場合がありますぞ。
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