旅限無(りょげむ)

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飛べない自民党 其の弐

2009-09-30 16:04:31 | 政治
……谷垣氏は故池田勇人元首相が創設した派閥・宏池会(古賀派)に所属し、早くから派のニューリーダーと目されてきた。首相経験者の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎3氏と共に『麻垣康三』と呼ばれ「ポスト小泉」有力議員の1人……。政敵をつくらない温厚な性格は「優柔不断」との評判につながるが、「1度決めたら自説を曲げない頑固者」(古賀派議員)との側面も持つ。平成18年9月、小泉純一郎首相(当時)の後任を決める総裁選に初出馬した。消費税率の引き上げや、地方再生など構造改革路線の修正を政権公約に掲げたため、同僚議員から小泉内閣の財務相を辞任するよう何度も進言された。だが「責任は最後まで全うする」と拒否し続けた。今でも「今回の総裁選で『構造改革を進めた張本人』と非難されたが、判断は間違っていなかった」と涼しい顔だ。

■谷垣さんが「敵を作らない」のではなくて、自民党内の派閥がすっかり活力を失って以前のような権力闘争が出来ない虚弱体質になっているだけのことのような気もします。血で血を洗う闘争を止めて、総裁を密談で決めて総選挙をずるずると先延ばししたのが最大の敗因だったはずですが、密談のメンバーは再選されて今回の総裁選でも昔ながらの陰湿な根回し工作に熱心だったようです。戦闘力を失った派閥には存在理由は無いのに消滅しないのは、朱鷺の鳥籠みたいな物だからかも知れませんなあ。温室育ちの世襲議員ばかりが集まれば、野生味を失って選挙の大敗という「放鳥」の時期が来てもぬくぬくと鳥籠の中で団子になっているしか能がないのでしょう。

■「構造改革」と聞いて即座に谷垣さんの顔が浮かばないのは、それだけ政治家としてメッセージを伝える能力に欠けているからでしょうし、人望の無い「頑固者」ではリーダーとして苦労するだけでしょう。


総裁選では「保守政治の原点に立ち返る」と繰り返した。この保守の精神は「政治の師」と仰ぐ宏池会の大先輩・故宮沢喜一元首相から受け継いだもの。自主独立と共助の精神をもとに地域共同体や伝統文化を大切にするという宮沢氏の教えが、「家庭や地域の絆を大切にする」という谷垣氏の言葉につながっているようだ。
2009年9月28日 産経ニュース

■「保守政治の原点」「自主独立」と並べれば、当然、自主憲法の制定という話になるはずですが、そこに「共助の精神」という鳩山サセテイタダク首相の「友愛」に似た正体不明の話が挟まるから、宮沢内閣が自滅したのではないでしょうか?少なくとも分裂した旧宏池会を再生させるくらいの政治力が無ければ、満身創痍の自民党を再生させることは不可能でありましょうし、「加藤の乱」で政治生命を失った昔の親分の轍を踏まないだけの世渡り術だけでは野党の先陣は切れますまいなあ。昔の宏池会は「御公家集団」と陰口を叩かれたものですが、牙を失い生気も無くなった自民党のリーダーには相応しい新総裁とも言えそうです。

■谷垣新総裁が属している古賀派は、宮沢政権後の野党暮らしの時に分かれた一方の加藤派が、離合集散を繰り返した成れの果てで、2度目の自民党最後の総理となった麻生コロコロ首相の麻生派は、宮沢派を割った一方の河野派の成れの果てという構図で、河野太郎候補が麻生派を離脱しないのは、親父の派閥を「世襲」する打算が頭にあるからではないか?それならば派閥政治の悪口を言っては行けません。

飛べない自民党 其の壱

2009-09-30 16:03:46 | 政治
■自民党の新総裁になった谷垣さんのキャッチフレーズは「みんなでやろうぜ!」なのだそうです。みんなでやった総選挙の結果が大惨敗だったはずなのですが、変わる、変わると新装開店のパチンコ屋さんみたいな掛け声ばかりが虚しく響く古色蒼然たる自由民主党が近い将来に復活して政権を奪還するのは、かなり難しいようであります。何しろ自民党の高齢議員は心身ともに頑強ですからなあ。総理になれない総裁も「世襲」になるのか?と意地の悪い期待も込めて河野太郎候補に注目していましたが、案の定、世代交代を求める一団を露骨に分断する策に出た懲りない老人たちの思惑通り、無名の当て馬候補の西村さんに票が流れて自民党は昔のままで来年の参議院議員選挙に突入するようです。
 
■派閥の領袖を名指しで批判した河野さんが、どうして麻生派から離脱しないのか?その疑問を解いてくれる明快な説明が無かったことが、西村候補の54票を取り込めていたとしても谷垣候補の300票に100票も足りないという結果になったのかも知れません。3人の候補の誰が総裁になっても来年夏の参議院選挙は、民主党が勝手に蹴躓いて失点を重ねてくれない限りは衆議院に続いて厳しい結果になる可能性が高いでしょう。誰が何処に出掛けてどんな応援演説をするのか、今から楽しみなところではありますが……。現有議席85のうち半分以上の45人が改選になるそうですから、一体、何人が戻って来れるやら……。

■その点、現有議席が109の民主党は、あと12議席の積み増しがあれば定数242議席の半分に達してしまうというアドバンテージを握っておりますから、虎の子の5議席のうち2議席が改選となる国民新党が反自民票を巨象となった民主党に吸い取られたらエライことになります。同じく5議席を守っている社民党などは福島党首を含む3議席が改選となっていますから、国民新党以上に自党の存在感を目立たせようと勇み足をする不安が拭えません。国会が始まったら、野党自民党がちくりちくりと苛める標的にされるのは、喧嘩のセオリーから考えると社民党ではないか?と予想されます。まあ、民主党の幹部がキャバクラ遊びに公金を使っていたなどという美味しいネタも飛び出して来ましたから、野党自民党にも少しずつ活気が出て来るかも知れませんなあ。

■まだまだ長年の与党ボケから醒めない傾向もあるようで、総裁選挙はまったく盛り上がらなかった自民党も、それなりに必死でしょうが、参院選挙の結果次第では党が消滅する可能性がある国民新党と社民党は、自民党よりも焦っているように見受けられます。亀井金融担当大臣が劇薬の「徳政令」に固執するのも、党首が落選して風前の灯となってしまった弱小政党を消滅の危機から救うためには、参議院の5議席は死守して1議席でも積み増しておかねばなりませんから、党の存在をアッピールする短期決戦に燃えているのでありましょう。新政権の発足当初から「爆弾」と呼ばれて警戒されていた亀井大臣ですから、暴れ過ぎて連立政権をぶっ壊してくれることを、元気の無い自民党は密かに期待しているのでありましょうなあ。

■自民党の総裁選挙が終わった翌日、何となく自民党の将来を暗示する出来事がありました。


国内産が絶滅したトキ(国の特別天然記念物、国際保護鳥)の野生復帰に向けて、環境省は29日、新潟県佐渡市で2回目の試験放鳥をした。1回目で実現しなかった自然環境下での繁殖を目指し、放鳥数を倍の20羽(1~5歳)に増やし、雌12羽、雄8羽と雌を多めにした。……放鳥用ケージ(高さ3メートル、幅10メートル、奥行き25メートル)の放鳥口のネットが巻き上げられた。トキはしばらくケージ内の止まり木で様子をうかがった後、15分後に1羽が、約2時間40分後にさらに1羽が大空へ向かって羽ばたいた。……

■飛び立ったのが3羽ではなくて2羽だったのは、自己保身ばかり考える長老の朱鷺が居なかったからでしょうか?あるいは朱鷺は賢いから西村候補のように舞い上がってしまう軽率な個体はいないのでしょうか?更に興味深いことに、前回に放鳥された朱鷺は佐渡島から海を渡って北陸に飛んで行ったという話があります。


昨年、放鳥された10羽のうち、現在生息が確認されているのは7羽。このうち雄4羽は佐渡にとどまり、雌3羽が本州の新潟、富山両県に飛来している。環境省は15年までに佐渡で60羽程度を定着させる目標で、3回目の放鳥は来年春に同市で行う予定
2009年9月29日 毎日新聞

■佐渡島を自民党、新潟・富山を民主党と見立てると面白いかも?たっぷりと遺恨を残した総裁選でしたから、谷垣新総裁が民主党との対立軸を見失ってしまうようなら、「どっちに居ても同じだ!」と見切りを付けてクラッシャー小沢と密かに「進路相談」する自民党内の朱鷺が現われるかも知れませんぞ。

中東の狂犬変じて三木のり平 其の参

2009-09-25 16:08:11 | 外交・世界情勢全般
リビアの最高指導者カダフィ大佐が23日、国連総会で初めて一般討論演説を行い、「安全保障理事会はテロ理事会」「新型インフルエンザは細菌兵器として軍事目的で作り出されたもの」などと語り、約1時間半にわたり言いたい放題を続けた。……常任理事国が拒否権を持つ安保理の批判に特に時間を割き、「全加盟国の総意で動く国連総会の方が民主的。安保理は総会の意思を執行するためだけの機関に変えるべきだ」とこき下ろした。
9月25日 産経新聞

■一度も選挙を実施したことのない独裁者の口から「民主的」という言葉を聞くと不思議な感覚に襲われますなあ。リビアの「総意」はどうなっているのでしょう?国家国民の財産であるはずの国有化された石油資源を自分の妄想と道楽のために使って他国の戦争に介入したり、テロ組織に莫大な寄付をしたりするのがリビア国民の「総意」なのかどうか?それが判明するのもそれほど遠い話ではないような感じがした大佐の演説でありました。

■トンデモ陰謀説の中には、エイズ・ウィルスは細菌兵器だ!という有名な話がありましたが、第一世界大戦の頃ならいざ知らず、今時、致死率の低いインフルエンザを細菌兵器にして得意になるような国があるでしょうか?昔は情報が遮断されていたばかりに「香港型」などと窮屈な名前が付けられてしまいましたが、実際にはチャイナの南部で家禽類と豚と人間が非常に親しく混在している地域で、毎年、カダフィ大佐が言う「細菌兵器」が自然発生的に開発されていることにもなりそうですが……。

■今の世界が脅えているのは、所構わず仕掛けられる自動車爆弾テロと民間航空機を使った大規模テロの方です。それを最初に愛用?したのがカダフィ大佐本人なのですから、悪趣味なジョークと思って笑って聞かねばならないような話です。
 
 
リビアの最高指導者カダフィ大佐は23日、国連総会で初の一般討論演説を行った。大佐は15分の制限時間を無視して約1時間半壇上で話し続け、国連安全保障理事会をあからさまに批判した。……国連が1945年の発足以来阻止できなかった戦争が65あると指摘し、安保理が「テロ理事会」と呼ばれるべきだなどと発言した。大佐はまた、国連憲章を引用しながら、国連加盟国間の「不平等」を指摘。自国の国益のために行使されているとして、常任理事国5カ国が持つ拒否権の廃止を求め、小国が「二流国として見下されている」と主張した。

■小国が「二流国」と見下されるのは現実ですが、だからこそ自分の祖国を少しでも住みやすく、出来れば偉大な国にしたいと頑張っている人がたくさん居るのではないでしょうか?それにしましても、「国連が阻止できなかった戦争」の65個の中でリビアが介入した戦争は幾つあるのでしょうなあ?15分の制限時間は各国代表が「平等」に発言できるように配分されているのですから、それを6カ国分も独り占めして喋っていられる神経が分かりません。次々と席を立つ代表が多く、最後まで残っていた代表のほとんどは居眠りをしていた事を、カダフィ大佐自身がカメラに向って怒鳴っていたので間違いのない事実なのでしょう。リビアの国民は、こんな話ばかりを聞かされ読まされているのでしょうか?


カダフィ大佐はさらに、世界各地で感染者が増加している新型インフルエンザ(H1N1型)ウイルスが、研究所で開発された「兵器」だなどと述べたり、1963年のケネディ米大統領暗殺の黒幕がイスラエルだとする暴論を展開。また、イスラム強硬派タリバーンに、カトリックの総本山バチカン市国のような「イスラム首長国」の樹立が認められるべきだと発言した。カダフィ大佐はその一方、黒人初の米大統領となったオバマ氏を「永遠に米大統領に留まってくれたらうれしい」と称賛した。
9月24日 CNN

■イラクのサダム・フセインは、一人になると奇妙な恋愛小説をせっせと書いていたそうですが、カダフィ大佐はトンデモ話を組み立てて悦に入っているのでしょうなあ。ケネディ暗殺事件の「真相」に関しては読み切れない書籍が出回っていますが、イスラエル犯人説は新しい!キューバやベトナムで冷戦を熱くしてしまったケネディ大統領が、どうしてイスラエルによって暗殺されるのか?トンデモ話としては興味が湧きますぞ。タリバーンとバチカンを重ね合わせる歴史センスにも同様の魅力を感じますが……。

■カダフィ大佐の妄想を膨らませる材料は、きっと国家情報機関の要員が世界中から掻き集めて来るのでしょうが、国連という場で披露されて他国の同業者から嘲笑されるのを覚悟していたのでしょうか?これも宮仕えのつらさというものでしょうなあ。

中東の狂犬変じて三木のり平 其の弐

2009-09-25 15:47:11 | 外交・世界情勢全般
国連総会の一般討論初日の23日、リビアの最高指導者、カダフィ大佐が演説した。大佐は、安全保障理事会で常任理事国だけに拒否権があることなどを批判し、「安保理はテロ理事会と呼ぶべきだ」と主張した。また、国連憲章の冊子を読み上げながら、憲章の精神が守られていないと冊子を放り投げるなど「カダフィ節」健在だった。

■怖いのは「暗殺」だけの独裁者は得てして自惚れ病を深刻化させて道化になってしまうものです。流された映像を観ますと、軍服姿で不気味な威圧感を放っていた頃とは違った、老いと衰えを目の当たりにする思いがしますが、それ以上に妙な滑稽さを感じたのは何故だろう?と自問自答しておりましたら、老醜を晒したカダフィ大佐の顔が喜劇の名優にして優れた演出家だった三木のり平さんの風貌を想起させるものだった事に気が付きましたぞ。大きな鼻と眠そうな目、印象的に長い鼻の下には是非ともちょび髭が欲しい!そう思って映像を見直しますと、下手クソなコメディアンが白け切っている客席に向って毒づいているようにも見えて来るのでした。


大佐の国連訪問と演説は初めて。オバマ米大統領の演説を、大佐はリビアの席で最後まで聞いた後、総会議長に促されて登壇。気候変動、経済危機、食料危機など現在、国連はさまざまな挑戦に直面していると説明した。その後、国連憲章を読み上げながら、加盟国に同じ権利が保障されているはずなのに一部の国が拒否権を持っていると批判し、憲章の冊子を破ろうとした。

■「国際連合」が成立した経緯と歴史を本当に知らないのか?レーガン時代に米国と大喧嘩をする一方で、旧ソ連の手下(ご本人は同志)になっていたことを忘れてしまったようですなあ。かつてのリビアが「拒否権」を持っていたら……と考えると恐ろしくなりますぞ。


……「安保理で各国が同じ権利を有するには全理事国に拒否権を与えなければならない」と述べ、「今の安保理は核兵器を所有する国が特権を持っており、正義ではない」と主張した。

■だからこそ、リビアも今のイランや北朝鮮のように原爆を持とうと頑張ったのではないのですかな?旧ソ連はキューバのカストロにしつこくせがまれて核弾頭搭載可能のミサイルを与えましたが、カダフィ大佐には通常兵器しか売ってくれなかったようです。


大佐は途中、「国連が認めている武力行使は世界の平和にとって脅威になる場合に限られるのに、過去の世界の戦争のほとんどは1カ国か数カ国のために行われ、国連はそれを止めることもチェックすることもできなかった」と、安保理の機能に不満を示した。
2009年9月24日 毎日新聞

■記憶力と理解力が衰えたカダフィ大佐でも、1986年の悪夢は忘れられないことでしょう。英国の基地を飛び立った米軍機がフランス上空を通過して地中海を渡り、大佐が滞在しているとの情報に基づいてピンポイントの空爆を敢行。何故か危機一髪でカダフィ大佐本人は脱出!養女が犠牲になったという大事件がありました。欧州を震え上がらせたリビアの諜報機関はそんなに凄い能力があったのか!?と世界が驚いたものでしたが、後にフランス政府がぎりぎりのタイミングで奇襲攻撃を知らせていた分かって更に世界は驚いた次第。旧植民地のアルジェリアが内戦状態で、東隣のリビアに気を使わねばならないフランスは、自国の上空を通過するのを許可する交換条件として、領空を出たところでカダフィ大佐に危険を知らせる権利を得ていたとか……。

中東の狂犬変じて三木のり平 其の壱

2009-09-25 15:46:08 | 外交・世界情勢全般
■米国ではオバマ任期が急速に衰え始めたことが支持率の低下に現われています。大統領に当選してから就任演説まで、日本ではまるで我が事のように熱狂気味の報道合戦が行なわれたものでした。北陸の小浜市がオバマ人気に便乗したのは笑って済ませられる小さなエピソードでしたが、米国で民主党が政権を奪回したのだから日本の同じ名前の政党も政権を獲得するに違いない、などと言うインチキ占い師でも使わない乱暴なコジツケ話まで飛び出して来たのには驚かされたものです。

■まだ就任してから1週間も経たない鳩山新首相が夫婦で国連に乗り込み、旦那は演説や会談に奥さんはパーティやら何やらで大活躍だそうです。米国の習慣に従っての「蜜月期間」なのでしょうが、至れり尽くせりの同行取材で酔っ払ったような提灯記事が日本の新聞紙面に溢れ返るというのは、後の事を思うと不快な予感を与えてくれますなあ。選挙用のマニュフェストには書かれていなかった「大きな話」が鳩山サセテイタダク首相の口からぽろぽろと転がり出す様子を、もっと冷静に報道して欲しいものです。

■そんな取って付けた様なお祭り騒ぎ報道に水をぶっかけてくれたのがカダフィ大佐であります。まだ、生きていたのか?!と颯爽と軍事クーデターを起こして登場した頃の民族解放万歳!(資本主義でもない国の)社会主義国家誕生に感動!などという噴飯モノの新聞記事を読まされた若き日々を苦々しく思い出した御年配の方もいらっしゃるでしょうし、もう少し下の年代になりますと、米国レーガン大統領の時代の1988年にパンナム機を英国上空で爆破させた「狂犬」として記憶している向きもありましょう。単なる偶然なのでしょうが、北朝鮮による大韓航空機爆破テロは前年の1987年のことでしたなあ。

■1986年にはドイツのディスコで爆破テロ。1989年にはコンゴ発パリ行きのフランス機を爆破。ビンラディンの大先輩にして金正日将軍様のお友達みたいな経歴を持っているカダフィ大佐が国連に出席して演説をする世の中になったのですから、変われば変わるものであります。1992年に国連安保理でパンナム機爆破事件の容疑者を引き渡せ!と決議された頃は、自分のカリスマを信じて無視した大佐も1992年と1993年に経済制裁決議が行なわれてしまってからは、青菜に塩、ナメクジに塩の如くに元気が無くなり、1999年には容疑者の引渡し、2003年には犠牲者270人の遺族に対して総額27億ドルの補償金を支払うことに同意。2003年末には大量破壊兵器の自主的放棄と査察団の受け入れを表明。勿論、イラクのエライ人がどんな目に遭ったかを見たからなのでしょうが……。

■こうして国連の経済制裁は解除され、米国政府による「テロ支援国家」の指定も外してもらったカダフィ大佐は、2006年の5月に念願?だった米国との国交回復を実現したのでした。ブッシュ息子大統領が残した数少ない怪我の功名の業績の一つと申せましょうか?カダフィ大佐がブッシュ前大統領を表敬訪問したという報道はありませんが……。


リビアの最高指導者カダフィ大佐が無血クーデターで権力を握ってから40周年になるのを記念し、首都トリポリで(9月)1日、式典や軍事パレードなどが行われた。記念行事にはベネズエラのチャベス大統領やアフリカ各国の首脳などが出席したが、欧米首脳は姿を見せなかった。……「緑の広場」では、主賓として招かれたチャベス大統領がカダフィ大佐と抱擁を交わし、隣同士で着席。ともに反米的発言で知られることもあり、親密ぶりを演出していた。記念行事では、フランスやオーストラリアなど17カ国の軍楽隊が演奏したほか、イタリア空軍が曲芸飛行も披露。戦車やミサイルを積んだトラックによる軍事パレードも、2時間にわたって行われた。
2009年9月2日 ロイター

■テロの犠牲となった方々の遺族の目には狐と狸の化かし合いにしか見えない情景でしょうが、これが外交というものなのでしょう。地中海を挟んだ隣組である欧州各国は、荒野を好き放題に駆け回っていた狂犬が大人しく犬小屋に落ち着いてくれたのですから、形だけでもご挨拶をしておかねばなりますまい。北朝鮮からどんな贈り物や言葉が届いたのかは不明ですが、リビア国民が本当に「40周年」を心から祝っているのかどうか?は、チャイナの建国60周年記念パレードと同様に大いなる疑問ではあります。国連に集まった140以上の国や地域の中で、報道の自由がまったく存在しない国の方が圧倒的に多いという事実を忘れては行けません。

アニメの麻生 其の壱拾伍

2009-09-23 11:18:33 | 政治
 ■50年がかりで建設に漕ぎ着けたダム計画を白紙に戻せるかどうかは不明ですが、半世紀の間に起こる時代の変化を考えれば、最初に建設を思い立った政治家と計画を作った官僚たちの思惑と計算が今でも有効かどうか、非常に判断が難しいところであります。公共事業を地元に持って来れば選挙資金と票が集まると短絡した政治家と先例遵守に凝り固まった官僚の悪癖があったればこそ、産業構造の変化や少子高齢化が深刻化する中で事業自体の目的が失われても、どんなに建設費用が想定外に膨張しようとも、当初の計画通りに粛々と進めるのが従来の自民党政治でありました。官僚の間では「小さく生んで大きく育てる」悪知恵を持っていることが出世の条件だったそうですから、公共事業の濫発で世界一の借金体質になってしまうのも当然でした。

■自民党政治に鉄槌が下された時に、一気呵成に旧弊を打破するしか民主国家の日本がグランド・デザインを変更することは不可能なのですから、自民党を大敗させた有権者たちは固唾を飲んで新政権の動きを凝視しております。こういう時には象徴的な固有名詞を引っ張り出すのが効果的なので「国営マンガ喫茶」を置き土産にしてくれた麻生政権には感謝しなければなりますまいなあ。


川端達夫文部科学相は22日……09年度補正予算に建設費117億円が盛り込まれた「国立メディア芸術総合センター(仮称)」について「新たに建物は建てない」と明言したうえで、「メディア芸術を支える人やクリエーターの育成にウエートを置きたい」と述べた。……「日本の優れたメディア芸術をしっかり育て、発信していくことが極めて大事だという点では(事務方と)認識を共有した」とし、建物新築以外の方法でこの分野の振興策を改めて提案するよう文化庁の事務方に求めたことを明らかにした。建設費をソフト面の振興費に振り向けることや10年度以降の予算として組み直すことなども検討する。……「アニメ番組1本にスポンサーは数千万円払うが、現場の一番下で請け負う人たちには数百万円しか渡らない。生活できず、若い人材が辞めていく現状があることも承知している」などと述べた。
9月23日 毎日新聞

■「下々の皆さん」の生活実態をまったく御存じなかった麻生コロコロ前首相は、自分が大好きなマンガやアニメの業界で何が起こっているのかを、本当に知らなかったようです。本当にマンガみたいな話なのですが……。


川端達夫文部科学相は昨年8月、マンガ通として知られる麻生太郎前首相と……「夕刊フジ」で、「日本のマンガ、アニメ、ゲーム大いに語る」と題して対談していた。川端氏は週刊誌のゴルフマンガを愛読していることを告白し、「最近のマンガは質が高い」「かかわっている人たちの生活が気になる」などと思い入れを吐露。……8月15、22両日付の夕刊フジに掲載された。川端氏は当時、民主党副代表で、麻生氏は自民党幹事長だった。……「アニメ番組のビジネスは本当にひどい。スポンサーは5000万円出しているのに、最後の元請けプロダクションは800万円で制作している。これでは産業は絶対に育たない」と、現状を厳しく批判。「安い労働力でコストは下がるが、品質はどんどん悪くなる。劣化を起こすことが最初から分かっているビジネス。この構造を変えなければいけない」とたたみかけ、麻生氏が「それはひどいな」「たしかに、その部分を真剣に考えないと」と、気押される展開となっている。

■「それはひどいな」などと暢気なことを言っているから、役人に丸め込まれて「アニメの殿堂」のハコモノ建設で大恥を掻かされるのでしょうが、マンガ好きの政治家だったらこの種の問題にも興味を持っていて欲しかったですなあ。今となっては手遅れなのではありますが、この程度の認識しか持っていない麻生さんを総裁に担ぎ出して選挙に勝とうと考えた誰かさんは、国民を舐め切っていたのでしょう。


対談の後半では、ゲーム通の本領を発揮し、「ニンテンドーDSは『脳トレ』などのソフトを出してオジサンをゲームに引き込み、世代間コミュニケーションに役立っている」と持論を展開。続けて行った脳年齢の測定では、50代の麻生氏に対し30代と差を見せつけ、「自己ベストは27歳ですけど」とわざわざアピールした。「信長の野望」に絡んでは、「武将といえば、やっぱり豊臣秀吉だよね」。「天下取り」に話題が及ぶと、「おれみたいな性格は、平時より有事、非常時向き」と話す麻生氏に対し、「それなら野党になって頑張っていただきますか」と切り返し、麻生氏から「うまいこと言うね」と評されている。……
2009年9月22日 産経ニュース

■銀の匙を咥えて生まれて来たぬるま湯育ちの御曹司が、どうして「有事、非常時向き」なのか、さっぱり分かりませんが、少なくともリーマン・ショックの後、麻生コロコロ首相は「未曾有」の経済危機だと言い立てながら平時と変わらない対応しか出来なかったのは確かです。本当に、「マンガばかり読んでいると……」という小言は正しいのかも知れませんぞ。身を以って証明した麻生さんの数少ない業績の一つかも知れませんなあ。

アニメの麻生 其の壱拾四

2009-09-17 16:01:19 | 政治
 「民主党の鳩山(由起夫)代表も、基本計画の中身を知ったら、理解していただけると信じている」。漫画家の里中満智子さんら国立メディア芸術総合センター(仮称)の設立準備委員会のメンバーが26日、文部科学省で会見し、民主党が政権獲得後の事業凍結を表明している同センターの設立実現を訴えた。同センターの準備委は7月上旬から6回の会合を経て同日、基本計画を文化庁の玉井日出夫長官に提出した。……里中さんは「日本の文化予算はめまいがするほど少ない。誇れるメディア芸術の発信・人材育成の拠点を作らなければ、100年後に後悔する」と長期的視点から必要性を強調。東京都現代美術館の森山朋絵学芸員は「庶民の浮世絵が本当の芸術として成立する瞬間があったように、メディア芸術の拠点の実現は、歴史的瞬間に立ち会うことになる」と述べた。基本計画では、センターはメディアアートやアニメ、漫画、映画など先端技術を用いた総合的な芸術を対象にし、保存・発信・人材育成などの拠点となる。
8月26日 産経新聞

■旧来の自民党型政治で「国立メディア芸術総合センター」が完成してしまったら、「設立準備委員会」は使い捨てにされてメンバーは実質的な運営からは体よく追い出され、センター長は看板だけの名誉職に祭り上げられ、「基本計画」は換骨奪胎されて設立目的は画餅に帰して予算を食い潰し続ける無能な天下り役人は「予算が足りない」の一点張り、外部からの提案や要望などは「聞き置く」だけで暖簾に腕押しが続き、最後は税金による補助が切れて人知れず廃墟になってしまうはずです。甘い汁を吸って太ったシロアリたちは次の獲物を求めてワタリを続けるだけのことでしょう。

■本当に日本のアニメ、漫画、映画を元気にしたいのなら、国際的なイベントを毎年開いて莫大な賞金を贈ればよいでしょう。最優秀賞に1億円の奨励賞を出したとしても、ハコモノ予算から諸経費を引いても100年間は続けられるのではないでしょうか?はしなくも、今回の総選挙で自民党がアニメ文化に対してどんな認識をしているのかが露骨に分かってしまったからには、準備委員会に集まった人達はよい面の皮にされてしまったようです。
 
 
自民党CMに出演する鳩山氏似の男性。「僕に任せれば大丈夫」と自信たっぷりに「政権交代」を語り、女性にプロポーズする 最終盤に突入した衆院選で、ネット上のネガティブキャンペーンが過熱している。……自民は(8月)21日、新たに「ブレる男たち編」などを追加。鳩山代表、小沢一郎代表代行ら民主幹部4人風のシルエットが「4人バラバラ、ブレフォーです」。公約を歌い上げるが、関係者の一喝で腰砕けに。「とも言えな~い」と公約を取り下げる。

■民法のテレビ・ニュースでも取り上げていたようですから、パソコンを扱えない人達も米国並みのネガティブキャンペーンを目にしたはずです。コンテもセル画も声優も、なかなかのレベルだったと思いましたが、シナリオが最悪!民主党に対する不安を掻き立てる目論見が外れただけでなく、自民党支持者の間に「ここまで落ちたか?!」の嘆息が広がり、とうとう民主党に対する期待の方を膨らませてしまったのでした。同じ下品な手法で民主党が逆襲を仕掛けようとしたら?と想像した人達の脳裏には、自民党の有名どころが登場する「麻生おろし」のドタバタ劇を筆頭に、毎年変わる総理総裁が載った回転寿司、酒に酔って大暴れする大臣、勿論、漢字が読めない首相も浮かんでは消えて行ったのではないでしょうか?


自民広報では若者を意識したアニメ仕立てで「面白い、と老若男女問わず反響をいただき驚いています」と胸を張る。が、テレビ放映には当初から「審査に通るか不明」(自民広報)とネット戦に特化したという。公明もネットCM「永田町学院小学校」を制作。窓ガラスを割り、「秘書がやった」と言い訳する少年が登場する。公明広報は「政治とカネの問題は与野党共通の問題で清潔政治の実現を訴えたい」とする。

■公明党は宣伝名人が揃っている宗教団体が後援していますから、この種のCMならばあっと言う間に作れるのでしょうが、裁判も始まっていない疑惑を振り回して「政治とカネ」を煽り立てると、逆に「政治と宗教」のアキレス腱に痛打を浴びる危険があったかも?圧倒的有利を伝えられていた民主党は「金持ち喧嘩せず」の諺通りに同じ土俵には載らず、自公側は「貧すれば鈍する」を絵に描いたような泥沼選挙をやってしまいましたなあ。


一方、民主はネット、テレビとも同一映像。「政権交代」を前面に「マニフェスト直球勝負」(民主広報)とネガティブキャンペーンには応じない構えだ。衆院選で複数の候補者を手がける選挙プランナーの松田馨氏は与党のネガティブCMを「構造改革など政策の総括や2度の総裁辞任への反省が有権者に伝わらず、放った矢が自分に返ってくる恐れもある」と指摘し、「有権者に政治不信が広がる中、個人の魅力を訴える方が効果的」とも話している。
2009年8月27日 産経ニュース

■そして、本当に放った矢は束になって返って来たのでありました。麻生さんは、やっとアニメの何たるからを知ったかどうか?

アニメの麻生 其の壱拾参

2009-09-17 16:00:22 | 政治
 ■残念ながら民主党政権も「税金の無駄遣い」のリストから外して継承踏襲する腹を括っている「月10万円付き職業訓練」制度が実際にはまったく機能していない実態が怒りを込めて報告されていました。要するに「雇用対策」名目の7000億円が天下り団体に呑み込まれただけで、「中央職業能力開発協会」「雇用能力開発機構」「産業雇用安定センター」などという素人には違いがさっぱり分からない天下り団体(総勢7000人!)がハローワークの裏口にトグロを巻いてゴミ同然のパンフレットを作るくらいで暇を持て余して遊んでいるらしいのですなあ。「生活費の補助付きの職業訓練」などと謳いながら、実際には煩雑な手続きと馬鹿馬鹿しい条件が隠されている融通の利かない仕組みで、タライ回しにされるだけで結局は誰も利用できない制度になっているという話です。舛添デタガリ前厚労相は何も御存知ないのでしょうが……。

■選挙向けの看板になるはずの「雇用」でさえも天下り団体の栄養にしかならないのですから、アニメ館の利用価値など最初から考えられているはずはないでしょうなあ。


同センターは、具体的な展示内容などがほぼ白紙のまま整備費117億円が計上。民主党が「税金によるアニメの殿堂」と批判していた。8月下旬、有識者による設立準備委員会が具体的な事業内容などを盛り込んだセンターの基本計画を策定。所管する文化庁は本年度中の着工、平成23年度中の開館を目指していた。
2009年9月17日 産経ニュース

■最も手堅く簡単に得点が上げられる生贄として、麻生=マンガのイメージが残っている間に「アニメ館」を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうというのは新政権のパフォーマンスとしては手頃なところでしょう。土地の収用も未着手で建設会社の入札も行なわれていないようですから、新任大臣としては何の心配もなく「止めさせたぞ!」と大見得が切れるというわけですなあ。さあ、こうなりますと先陣争いが熱気を帯びて来るでしょうから、次に続けとばかりに他の大臣の中から抜け駆け気味の暴走も始まりそうです。

■その種の暴走は後のお楽しみとして置いて、もう少し「アニメ館」の断末魔を振り返ってみたいと思います。政権交代が起こると情報公開が一挙に進み、前政権の旧悪が暴かれることになっておりますが、その先駆けでもあり蟻の一穴にもなりそうですから……。
 
 
日本が誇る漫画、アニメなどを収集展示する国立メディア芸術総合センター(仮称)をめぐり、文化庁の設立準備委員会の委員らが(8月)26日、東京都内で記者会見し、基本計画を正式に発表した。センターへの根強い批判に対し、漫画家の里中満智子委員は「『アニメの殿堂』ではなく、映画、ゲーム、ほかのジャンルも含めて世界に発信し、若手を育てる施設だ」と必要性を訴えた。基本計画は「国内外への発信と支援策推進のため、拠点の設立は急務」と説明。「コンテンツ産業と観光振興などに資するよう配慮する」と経済効果も強調した。民主党が政権を獲得すれば事業を中止する方針を示していることについて、里中委員は「いまだに『漫画喫茶』と言っているが、計画の中身を見れば分かってもらえる」と理解を求めた。
8月26日 時事通信

■担ぎ出されてしまった里中さんも「世界に発信し、若手を育てる施設」と聞かされたからこそ、こんな時期にこんな場所に出てしまったのでしょう。テレビ業界も映画界も古い経営体質を温存していて作品の制作現場、最前線で知力と体力の限界に挑んでいる若い人々が一向に報われないのを当然だと考えている愚か者が巣食っている現実があるようですから、国が予算を付けて「若手を育てる」と言ってくれたのだから、マンガ界の重鎮としては無視するわけにも行かなかったのでしょうなあ。でも、こんな施設を作ったところで育って肥え太るのは何の知識も経験も無い天下り役人だけだという悲しい現実が待っているだけだったと思うのですが……。

アニメの麻生 其の壱拾弐 

2009-09-17 14:14:34 | 政治
■国営アニメ館の建設と運営に関しては何も言わなかった時には、世論の動きによっては投票前に建設の中止を発表して小さな巻き返しに利用するおつもりか?とも邪推しましたが、内部分裂の危険が生じた自民党には、そんな余裕は無かったのでした。でも、公示から繰り広げられた与野党間の論戦では悲しいくらいに影が薄かった「国立マンガ喫茶」が、突如としてお台場の実物大ガンダムみたいに立ち上がりそうな気配を見せたことがありました。

アニメ、漫画などを収集展示する国立メディア芸術総合センター(仮称)の建設をめぐり、文化庁の設立準備委員会は(8月)21日の会合で、「新設には限定しない」とした基本計画案をまとめた。「アニメの殿堂」と称され、「箱物行政」との批判が集まったが、座長の浜野保樹東大大学院教授は「日本に必要な施設だ。努力して最善の計画をつくった」と強調した。

■どうして寝た子を起こすような会合を、投票日まで1週間を切る時期に開いたのでしょう?藪を突くと蛇が出ますぞ。ますます自民党に対する逆風が強くなり、「税金の無駄遣い」を最大の武器にする民主党陣営を喜ばせるだけだと誰にでも分かるはずなのに、白紙撤回に踏み切れなかった麻生コロコロ政権は骨絡みで官僚システムに支配されていた事実を選挙前に改めて周知徹底させてしまったのでした。


同庁が4月に公表した構想は、東京・お台場を候補地とし、5階建ての建物イメージ図を示していた。しかし、計画案は「既存施設の改修などを含めて柔軟に対応する」とし、設置場所も明示しなかった。当初構想をまとめたのは浜野座長を含む有識者7人で、全員が今回の準備委でも委員を務める。浜野座長は、大幅修正した理由を「財務当局の理解を得るために仮の候補地やイメージ図を入れたが、それが誤解を生んだ」と説明した。
2009年8月21日 時事通信

■実寸ガンダムが立ったのは東京五輪開催を宣伝するためだったそうですが、国立アニメ館がお台場に建つ必然性はまったく無かったのでした。「仮の候補地」などと土壇場で逃げを打つのは卑怯千万な話であります。どうして麻生コロコロ前首相は「聖地のアキバに建てろ!」の一言が言えなかったのでしょう?自分が決めた案件ではなかったからでしょうなあ。それを恰(あたか)も自分の肝煎りで推進させたんだ!と大芝居を打って見せれば小泉劇場ほどではないにせよ、麻生劇場の幕が上がったかも知れません。そんな話も今となっては虚しいだけの思い出話でしかありません。

 
川端達夫文部科学相は(9月)17日未明の記者会見で漫画などを収集、展示する「国立メディア芸術総合センター(仮称)」を建設するかどうかについて「(関係者の)言い分はしっかりと聞いた上で結論を出したいが、方向は見えている」と中止する方針を表明した。鳩山内閣が実施する本年度補正予算の見直し作業の過程で、中止を正式決定する意向。川端氏は「(施設の)中身の詳細がほとんど決まっていないのに建設計画が突然出てきて、これはおかしいと民主党は主張してきた」と説明した。

■「中身の詳細」を決めている暇など無かったのを承知の上で民主党はワイワイと攻撃していたのでしたなあ。縦割り行政の慣習を墨守して15兆円を官僚に山分けさせ、少しは選挙対策にも利用しようと「エコ」「農業」「教育」「雇用」などの名前が付く予算には多めに配分しただけの、自民党にとって最後となる補正予算に相応しい置き土産となったのでした。「農業」関連の予算はほとんどが怪しげな基金に化けて冬眠中ですし、「雇用」関連はもっと酷いもので『週刊文春』9月17号に掲載されたジャーナリストの若林亜紀による実体験に基づいたルポには驚愕すべき事実が書かれておりましたぞ。

アニメの麻生 其の壱拾壱

2009-09-17 14:14:01 | 政治
 ■中断していたシリーズを大急ぎで再開します。本当に政権交代が実現してしまいましたが、まだ実感が湧かず乱暴に作られたテレビ・ドラマでも観ているような変な気分にもなりますが、新閣僚の布陣も決まり、来年夏の参議院選挙までに何が何でも得点を上げねばならむ!と悲壮感さえ漂う新任大臣たちは、大いに張り切って前のめり気味に始動したようです。さてさて、誰が最初に舌禍事件やポカを仕出かすか?と戦々恐々としている何処かの省庁の官僚と同じように、重苦しい不安と変な期待を感じているのも事実であります。

■アニメ好きから宇宙人に首相が変わり、官僚主導の政治が政治家主導に変わるのだそうですが、一部のマスコミは文系から理系への転換という視点で今回の政治劇を解読しているようです。思い出せば7月末日の深夜、スペースシャトルで若田光一さんが無事に地球に帰還した時、もっとマスコミは大騒ぎしなければならないはずだったのに、扱い方が小さいのに驚いたものです。その時にハタと気付いたのですが、日本のマスコミ自体が文系に偏り過ぎていて、特に政治記者の中に理系の頭脳とセンスを持っている人はほとんど居ない故に、政治関連の報道が浪花節風の人情話や怨念劇、あるいは陰謀や密談に力点を置いてしまう癖があるために読者・視聴者もついつい政治家の「人柄」などという得体の知れないモノを話題にしたり選挙行動の基準にしてしまうのでしょうなあ。

■文系がダメだと言う単純な話ではなく、経済や歴史に関して科学的なセンスを磨いておかないと、問題の所在が分からなくなるだけでなく議論があらぬ方向にずれて行っても気が付かないことになるということです。「理科離れ」は決して小中学生だけの問題ではなさそうです。歴代首相の顔を思い出してみると、政治理念に統一性があって理路整然と語れる人物が非常に少なかったことが分かります。特に自民党の歴史の後半は酷かったかも?麻生コロコロ前首相は、盛んにサブカルチャーを取り上げて「コンテンツ」を連呼していたものですが、そこに作品に取り入れられている最新の科学情報や理系の知識に対する造詣の深さはまったく感じられず、緊急経済対策にも数値で緻密に組み立てられた議論は無かったようです。

■とにかく景気対策には15兆円必要だ!という馬鹿でかいドンブリを据えただけで、あとは官僚があれこれと好き勝手に投げ込んで煮込む怪しい闇鍋みたいな予算しか作れませんでしたなあ。役人の中にはちゃっかり具材を鍋に入れずに役所の冷蔵庫に仕舞い込んだ知恵者がいたそうですから、これから新任大臣が一斉に各省庁の冷蔵庫やら冷凍庫、下手をしたら地中に埋めた甕(かめ)まで掘り起こして中身を総点検し始めねばなりません。

■例の国営アニメ館プロジェクトにしても、ハコモノの建設計画だけが妙に具体的で肝腎の「コンテンツ」と「ソフト」が空っぽだから同好の人達からも賛意を得られず、民主党から計画の中止という先制パンチを喰らってしまった麻生内閣は、まともな反論も出来ず、自民党が発表したマニフェストでも、4つに分かれている「安心」の項目の最後の最後に「アニメなど日本ブランドとしてのメディア芸術の振興、日本文化の戦略的発信などを充実」と短く素っ気無いツマ扱いでありました。あれは安倍内閣時代に官僚が書いた作文の丸写しだったのでしょう?

暢気な海洋国家 其の四

2009-09-16 14:49:38 | 外交・情勢(アジア)
■中国外務省の呉建民・外交政策諮問委員が「鳩山代表の発言に大変注目している」とマスコミに語ったのは9月4日。この日付から考えて発言には別の意味が重ねられていた節があります。

台湾の李登輝元総統(86)が4日、来日した。李氏の来日は2008年9月以来で、総統退任後は5度目。李氏は同日夜、滞在先のホテルで夕食会を主催し、森元首相や新政権を担う民主党の国会議員らが顔を見せた。李氏は夕食会に先立ち、記者団に対し、鳩山代表ら民主党首脳との接触については「特に決まっていない」と明言を避けた。李氏を「台湾独立派の代表」と見なす中国外務省は4日、「日本が台湾問題に関する約束を順守し、問題を適切に処理することを望む」との談話を発表、李氏の言動や民主党などの対応を注視する構えだ。……
9月4日 読売新聞

■鳩山代表の言う「アジア重視」の真意を探っているわけですが、北京政府は李登輝さんの来日をリトマス試験紙にしているようなものです。北京と東京から同時にメッセージを発して板挟みにするとは、何とも手回しのよいことであります。真意がつかめない鳩山政権の「アジア重視」が、北京政府との距離を縮めるのか?それとも言う事は言えるだけの距離を置くのか?頑固一徹との評判が高い岡田外相が、チャイナ大好きの小沢クラッシャー幹事長の操り人形にならずに四角四面の正論を吐いて見せるのか?自民党が中途半端に捨て置いた尖閣問題とガス田の共同開発問題に対して、民主党政権がどんな動きを見せるのか、非常に興味を引かれます。日本が政権交代の空騒ぎをしているのを見越して、チャイナはガス田周辺だけでなく沖ノ鳥島にも難癖をつけて騒いでいるのですから、インド洋での給油を続けるかどうかの議論より先に自国の領土領海の安全を確保するのが先決かと思われます。

■がらりと話題が変わってクラゲ問題です。これまた選挙騒ぎの中で扱いが小さくなってしまったニュースの一つでありました。
 
 
大型クラゲ、エチゼンクラゲが若狭湾に現れた。漁業関係者によると、例年より1カ月近く早く、今月10日ごろから頻繁に目にするようになったという。最大で傘の直径が2メートルになり、漁網を破るなど沿岸漁業への被害が懸念される。京都府舞鶴市沖にある冠島周辺の海中では19日、約1時間で20個体以上を確認できた。クラゲを食べるウマヅラハギの群れから逃れようと、海中を上下するなどしていた。エチゼンクラゲに詳しい水産大学校の上野俊士郎教授は「富栄養化でクラゲの餌となるプランクトンが増えている。今年は最大の被害を出した05年を上回る可能性が高い」と話している。
2009年8月27日 毎日新聞

■8月16日の讀賣新聞が「エツゼンクラゲ 大発生」という特集記事を組んでいまして、非常に気になる話が紹介されておりました。以下に要点を抜粋しましょう。


……2007年の被害報告は1万5500件に上った。大集団の来襲が予想される今年も被害の拡大が懸念されている。……大出現は、20世紀中は数十年に一度の出来事だったが、02年以降、ほぼ毎年起きている。なぜなのか?

■研究の第一人者、広島大学の上(うえ)真一教授は「後戻りできないほどの異変を海の生態系に起こしてしまったからだ」と警告を発しています。


……本来の生息域である渤海や黄海での魚類の乱獲が大出現の一因。韓国水産科学院の漁獲統計によると、韓国西岸の漁獲高は1980年ごろは約13万トンだったが、2005年は5万トンに落ち込んだ。中国もデータは公表していないが、03年以降、沿岸部で夏季のトロール漁業を全面禁止しており……。上教授は「小魚や大型魚の稚魚が減り動物プランクトンを食べるエチゼンクラゲの競争相手が少なくなった」とみている。……

■対馬海流に乗って日本海沿岸で巨大化するエチゼンクラゲの生まれ故郷は越前ではなくて渤海と黄海!そこがクラゲの天国になってしまったが故に恐ろしいほどのクラゲが大量発生しているというのに、その大本となった乱獲をしているチャイナの漁民にとってはエチゼンクラゲは小さくて実害は無いから知らん振り。上に政策があれば下には対策がある国ですから、政府が禁止などしても乱獲が止まることはないでしょう。近い将来、渤海と黄海がクラゲしか棲まない海になったらどうしましょう?!天敵のウマヅラハギを増やして毎日食べねばならなくなるかも知れませんぞ。

さらば、自民党 其の四

2009-09-16 13:17:41 | 政治
■そしてマスコミに囲まれて民主党の新政権が誕生しようとしている時に実に寂しく最後の閣議が開かれ、最後の定例記者会見という運びとなったのでした。 
 
麻生内閣は16日午前、臨時閣議を開き、総辞職した。麻生太郎首相は記者会見を開き、「1年という短い期間だったが、日本のために全力を尽くした。残念ながら道半ばで退任することになった」と振り返った。麻生首相の在任期間は358日間で、現行憲法下では7番目の短命政権となった。首相は在任中の成果として、4回にわたる予算編成などで世界同時不況に対応した経済対策を挙げた。一方で、やり残したこととして「経済対策が道半ばであることだ」と語った。

■同じ経済対策という主語に続けて「成果だ」と言いながら「道半ば」とも言う。今更、どこのマスコミも麻生コロコロ首相の言語能力に関して揶揄しても仕方がないと思っているのでしょうが、自画自賛している予算編成の中身は、無駄遣い・役人天国維持基金などの厳しい批判の的となって今回の選挙の争点になって自民党は大敗してしまった事実を真面目に認めないと党の再生は難しいでしょう。もしも民主党が自民党の置き土産となる麻生さんが最後に組んだ予算から「無駄遣い」を抉り出して多少でも成果が上がれば、ますます自民党の将来は暗いものになるでしょう。


次期首相に就任する民主党の鳩山由紀夫代表に対しては「景気回復を確固たるものにしてほしい。テロ対策などで的確な対応を期待している」と語った。首相は会見に先立つ臨時閣議で「自分の至らざるところを補っていただき、内閣としての使命をここまで果たせた」と述べ、閣僚の労をねぎらった。麻生首相は昨年9月に就任し、「政局より政策」を掲げ、当初目指した衆院の早期解散を先送りしてきたが、8月の衆院選で自民党は惨敗した。首相が退任当日に記者会見を行うのは異例で、本人の強い希望だったという。
9月16日 産経新聞

■この機会を逃したら、二度と再び誰も話を聞いてくれないでしょうから、異例の記者会見を開いて欲しかったのでしょうなあ。でも、独りよがりの虚しいだけの自画自賛の白けた会見など、お義理で新聞に掲載されるだけで、半日もしないできれいに忘れ去られてしまうのでありましょう。麻生コロコロ首相は気づいていないようですが、新型インフルエンザが秋を迎える日本に静かに不気味に蔓延し始めております。担当していた舛添デタガリ厚労相の救いようのない性格と無責任な官僚と無能の技官達が、「封じ込め作戦」「水際作戦」など世界中に笑われただけの見当違いの空騒ぎをして貴重な時間を無駄にしてしまったツケを、これから多くの日本人が生活と生命で支払わねばならなくなる危険があることを忘れてはなりますまいなあ。

■解散が決まった頃から選挙運動の邪魔になるからという恐るべき理由で新型インフルエンザに関する追跡調査が中断され、選挙終了と同時に死亡者や感染者の数が堰を切ったように公表される。御丁寧に「ワクチンが足りない!」という医療後進国みたいな恥ずかしい情報も公表されました。間も無く国内でワクチンの奪い合いが始まり、格安の「ワクチン接種海外ツアー」の販売も始まるかも知れません。核兵器や生物化学兵器を使わなくても国家存亡の危機に陥るかも知れない日本にしたのは誰だったのでしょう?「医者が余る」「子供は増える」と言い続けたのは旧厚生省で、同じ厚生省の管轄の保育所が足りないとはどういう訳でしょう?「弁護士が足りない!」と言ったのは法務省で、実際には仕事が減った弁護士が詐欺まがいの訴訟案件で食い繋ぐ事態になる中で、素人に「死刑判決」を言わせる裁判員制度が始まってしまいました。

■過度に外需に頼った生産構造を内需型に転換できず、場当たり的な金融行政で莫大な国富が蒸発して米国に降り注ぎ、ドジな金融機関は血税で生き延びる中で格差は拡大し、自民党政権は最後まで年間3万余人の自殺者数を減らせませんでした。麻生内閣と足並みを揃えるように日本航空の再建が絶望的になったのは皮肉な偶然なのか?経営が行き詰った原因が8つも乱立して好き放題に暴れまわった労働組合の横暴だったのなら、民主党も知らん顔はしていられないでしょう。政権交代を諸手を挙げて祝う気分が国会議事堂周辺を除いて日本の何処にも見られないのは、何とも悲しいことでありますが、余りにもボロボロに負けてしまった自民党の情けない姿が、分裂後の民主党の姿に重ならないことを祈るしかないのでしょうなあ。次期総裁も決められない自民党の体たらくを見ますと、とても悪口雑言をぶつける気にはなれません。取り敢えずは、長い間(儀礼的に)ご苦労様でした。

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さらば、自民党 其の参

2009-09-16 13:17:15 | 政治
■今となっては、早く解消しておくべきだったと自民党の落選議員の多くが臍(ほぞ)を噛んでいる旧態依然とした派閥構造に、麻生コロコロ内閣は最初から最後まで手足を縛られ翻弄され続けた1年間だったような気もします。その上、「選挙に勝ってね」などという虫の良い注文が絶対条件に付けられ、元々、誰かさんが他力本願の数合わせで決めた公明党との腐れ縁という重いオマケも付いていたのですから、誰がなっても自民党最後の首相になるのは決まっていたようなものでした。

■それでも、麻生コロコロ首相には誰も知らない?知って貰えなかった大きなビジョンがあったと思われる節がありました。本当に誰も聞く耳を持ってくれなかったのですから可哀想でした。最初の解散総選挙の機会を逸してから、マスコミが何度も先走った報道を繰り返した御蔭で、国民の心の中には無力で無能な総理総裁というイメージが固まってしまった頃のお話です。


麻生太郎首相は(6月)30日、都内のホテルで開かれた日本国際問題研究所(野上義二理事長)のセミナーで外交政策について講演し、中央アジア・カフカス(英語名コーカサス)地域を軸にユーラシア大陸の南北と東西に交通路を整備する「ユーラシア・クロスロード」構想を発表した。北朝鮮問題では再核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議の実施に向けて金融制裁や貨物検査に取り組むことを示した。イタリア・ラクイラで7月8~10日に開催される主要国首脳会議(G8サミット)で表明する考えだ

■最初の解散見送りが決まった頃、週刊誌などには「イタリアのサミットに行きたい」「ローマ法王にも会いてえなあ」などの首相発言がスクープされまして予想以上に任期が長くなるのではないか?と麻生さんの気楽な居座りぶりが面白おかしく書き立てられてもおりました。物見遊山と個人的な信仰と趣味で国際会議に参加されては堪りませんが、この6月のサミットの4箇月前、2009年2月14日に同じイタリアのローマで麻生内閣の屋台骨を揺るがす大事件が起こっていましたから、国民もマスコミも麻生首相がサミットに出席したところで何も出来はしまいし、日本の恥を重ねなければ十分だと考えていたくらいで、誰も何も期待していなくなっていましたなあ。

■ローマの酒臭い悪夢は、未曾有の経済危機に対処するために開かれたG7の財務大臣・中央銀行総裁会議の会議終了後に起こりました。集まった記者とカメラの前で日銀総裁と財務官を左右に従えて、テレビ映像を観ているだけで酒臭い息が漂うような酔眼を世界に晒したのは中川昭一前大臣で、選挙に落ちて前議員の身になってしまいました。だからと言って、麻生首相が発表したコーカサス地方に注目した「ユーラシア・クロスロード」構想が高級ホテルのバーでウォッカに酔った勢いで浮かんだ妄想だったというわけではありません。

■チェチェン問題や石油・ガスのパイプラインの利権がとぐろを巻いているコーカサスに目を付ける外交センスは評価されるべき歴史的な背景があります。


首相が平成18年に外相として発表した「自由と繁栄の弧」は、民主主義や市場経済で価値観を共有するユーラシア大陸の外周の新興国に支援や協力を行うもので、中国やロシアを牽制するねらいがあるとされていた。新たな構想は、「自由と繁栄の弧」に囲まれた地域にねらいを定めた。中央アジア・カフカス地域には石油や天然ガスが豊富にあり、首相は「この地域で安定と繁栄が相乗効果を上げれば、世界経済を大きく押し上げることになる」と強調した。同時に、太平洋から欧州へのヒト・モノ・カネの流通を整備する「現代版シルクロード」も掲げ、中国やインド、ロシアに参加を呼びかけた。

■外務省の官僚に作らせたシナリオの臭いがぷんぷんしますが、それでも壮大な構想自体が間違っているというわけではありません。ロシア・チャイナ・インドを束にしてユーラシア大陸という巨大な俎板の上に載せてしまおうという戦略はなかなか魅力的です。但し、インドはともかくチャイナとロシアに「自由と繁栄」を期待するのには無理がありますが……。


北朝鮮問題では、日本独自の取り組みのほか、「米国や韓国、中国、ロシアとも緊密に連携し、北朝鮮に強い圧力をかけることが必要だ」と述べ、安保理決議の実効性を上げるために北朝鮮を除く6カ国協議の参加国と連携していくことも表明した。
6月30日 産経新聞

■外交分野で何も得点が上げられず、かと言って解散総選挙を先送りする言い訳として便利に使われた未曾有の経済危機に対する緊急対策も奏功したとは誰も思っていあにのですから、本当は「外交の麻生」で大活躍して歴史に名を残そうと思っていたのに、結局は何も出来ずに退任することになってしまいました。もしかすると実態は逆で、外交で成果を上げるための時間を稼ぐのが主で、総選挙を誰かさん達に先送りさせらたように見せたのは擬態だったのかも?

■北朝鮮問題にも見るべき進展が無く、オバマ新政権の方が際どいながらも確実に得点を稼いで行くのと対照的な日本政府の沈黙だけが印象に残ってしまいまいした。例の大戦略が少しでも動いていたらチャイナもロシアも6カ国協議の参加国なのですから、何らかの効果が見られたかも知れませんなあ。

さらば、自民党 其の弐

2009-09-15 15:54:24 | 政治
首相は、昨秋の福田康夫前首相の辞任後、「選挙の切り札」として総裁に選出された。当初はこの勢いを駆って組閣直後に解散する腹づもりだったが、つまずきは早かった。組閣直後に中山成彬国土交通相が失言をめぐり辞任。

■官僚出身で日教組嫌いの中山さんは、勝手に立候補して落選し自民党の票を分裂させたと大いに叱られて厳しい処分を受けたようです。密かに日教組やそのシンパの議員は快哉を叫んでいることでしょう。民主党の参議院勢力を束ねているのが日教組の利益代表者なのですから、逆襲に出たい自民党にとっては貴重な武器を失ったことになるかも?教育問題は学費問題だけの話では終わりませんからなあ。


景気は急激に落ち込み、首相は「政局より政策」と解散を断念、経済対策にかじを切った。だが、「景気対策による政権浮揚」のもくろみはもろくも崩れる。目玉政策の定額給付金が不評だった上、所得制限の是非をめぐり発言がブレたこともあり信用はみるみる失墜。連夜のバー通いや、漢字の読み間違いも批判された。加えて自民党内は消費税論議や公務員制度改革などをめぐり内紛が連続、支持率下落に拍車をかけた。

■時代錯誤で政治センスを疑われた「定額給付金」をゴリ押ししたのは連立相手の公明党で、昔の「地域振興券」の二番煎じ政策ですから、有権者は連立与党の政策に呆れてしまったのでした。公明党支持者の中からもお仕置きの離反が目立ったのも、未曾有の経済危機を子供騙し・有権者騙しの一時金バラマキで切り抜けられると考えている政府与党に絶望したからなのでしょうなあ。「たら、れば」発言が報道された麻生さんですが、定額給付金を蹴飛ばして、ついでに連立を解消して自民党が一本立ちして総選挙に打って出ていたらどうなっていたでしょう?勿論、未曾ユウ演説の前ですが……。


反転攻勢の機会がなかったわけではない。3月に西松建設の違法献金事件で民主党の小沢一郎代表(当時)の公設秘書が逮捕された上、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験などにより、4月には支持率は回復基調に乗った。だが、首相は政策優先を掲げ、またも解散を見送る。これが命取りとなる。

■全国の有権者が田中角栄・金丸信・竹下登などの懐かしい名前を生々しく思い出していたものです。北朝鮮のミサイル発射に関しては、不謹慎な言い方ではありますが、民主党内に潜む北朝鮮シンパを燻り出し「圧力」の必要性を訴える短期決戦型の総選挙を仕掛ければどうなったでしょう?民主党丸の艦橋に発生したボヤの煙はどんどん濃くなり、船倉に隠れたネズミは我先に甲板に飛び出して滑稽な踊りを披露したかも知れませんなあ。


「かんぽの宿」譲渡問題をめぐる鳩山邦夫総務相と日本郵政の西川善文社長の対立は次第に激化。首相はやむなく鳩山氏を更迭したが、東京都議選など地方選の連敗もあり、党内で「麻生降ろし」が起きた。首相はなんとか封じ込め、7月21日に衆院解散にこぎつけたが、もはや党勢を回復させる手だてはなかった。

■郵政民営化に本当は反対だった発言もありました。自民党内での小泉改革に対する賛否の変化を探索する手段を持っていなかった麻生コロコロ首相の弱点が露呈し、5箇月後の総選挙では「小泉改革は失敗!」と必死で叫んで回る候補者が続出したのですから、選挙を先送りすると腹を括った時に小泉改革の総括を急ぐべきでした。総務大臣として改革に参画していたとしても、事実関係を丁寧に説明して善後策を訴えれば大敗はしなかった可能性はありましょう。因みに小泉プレスリー首相の次男坊が当選したのは父親の姿を押し隠し「改革」については一切口を閉ざしていたからでありましょうなあ。


ただ、首相は4回にわたり事業規模計130兆円の予算を成立させ、景気回復の足がかりを作った。ソマリア沖の海賊対策のため海賊対処法を成立させたことも功績といえる。「昨秋に解散すれば、こんなに負けていなかっただろう。でも、これほどの経済対策はできなかった…」首相は9日、訪問客に複雑な心境を吐露した。祖父、故吉田茂元首相にはるか及ばなかったのはなぜか。首相はなお慚愧の念に苛まれている。(酒井充)
2009年9月14日 産経新聞

■御先祖様との違いは、自分の力で首相の座に着かなかったいう唯一点でしょう。「選挙で勝てね」「ほいきた合点」といった感じで政権を受け継いだ御本人の軽率さも相当なものですが、そのお膳立てをした自民党内外の老人達の老醜は酷いものでした。解散するための薄っぺらな看板としての役目には政権構想も政策スタッフも必要なかったわけですから、未曾有の経済危機に対処しなければならなくなれば官僚に丸投げする以外に選択肢はありませんでした。官僚出身の吉田茂は官僚マシンを実に見事に稼動させていたそうですし、血で血を洗うような権力闘争を勝ち抜く能力と子分にも恵まれていました。どちらも持ち合わせていない麻生コロコロ首相を使って選挙で勝とうと考えた者達の責任は重大でありましょう。

さらば、自民党 其の壱

2009-09-15 15:45:14 | 政治
■自民党は次期総裁を決められないまま首班指名の議場に出て、当て馬・指名代打の若林某の名前を書くのだそうです。新政権発足後に開かれる最初の特別国会での行事ですから、武士の世の儀礼に擬(なぞら)えれば合戦前の矢合わせ、鏑矢(かぶらや)を互いに射て戦闘開始を確かめ合う行事に当たるでしょう。矢合わせの後には「やあ、やあ、我こそを○○なり。近き者は目にも身よ、遠き者は音にも聞け!」とか何とか大音声で名乗りを上げたものだそうですが、それを本番の討論合戦の時には別の人が大将になりますが……などという腰の引けた軍隊では先が思いやられますなあ。

■その総裁選びの方では派閥政治丸出しの旧世代と、取り合えず右往左往して見せている若手との間で、それなりの対立が起こっているようですが、自ら「捨て石」と認めて手を挙げたのが谷垣さんで、派閥の親分の古賀さん辺りが老兵連合から懇願されて、「加藤の乱」の敗残兵を生贄に差し出したような格好でしょうか?中堅若手代表に石原長男の名前が挙がったり消えたり、口だけは上手い人ですから最後は「次の次」ぐらいを狙うことにして首を引っ込めたとか……。そこで敢然と名乗りを上げたのが河野洋平の息子だったとは、半世紀以上の自民党史の中で唯一総理大臣になれなかった総裁の息子が野党自民党を「世襲」するのか?!と、奇怪な因縁話に党内でも脱力感が漂っているのではないでしょうか?まあ、親父の代では1年も経ずに社会党との連立という子供にも笑われる禁じ手を使って与党に復帰したのですから、息子も似たような役目を果たしてくれるかも?などと暢気に考えている敗残議員もいそうであります。


麻生内閣は16日、総辞職し、在任358日で次期政権に交代する。麻生太郎首相は昨年9月、「選挙の顔」として自民党総裁に選出されたが、世界的な経済危機を理由に衆院解散を先送りした後、内閣支持率は急落。自らの失言もあり、党内では「麻生降ろし」の動きが絶えなかった。「政権与党の矜持」を問うた衆院選は歴史的な惨敗。半世紀にわたる自民党政権に幕を引いた首相はいま、薩長連合軍に江戸城を無血開城した第15代将軍、徳川慶喜と同じ心境ではないか。

■何かと史実を引っ張り出して比喩に使いたがるマスコミが多いので鼻白みますが、血生臭い歴史小説が好きだった小泉プレスリー元首相とは違う趣味を持っていた麻生コロコロ首相に歴史話を当てはめるのは如何なものでしょう?少なくとも戦わなかった徳川慶喜と追い詰められて実質的には任期満了選挙だったとは言え、麻生さんは伝家の宝刀を抜いて解散総選挙に打って出たのですから、マスコミが面白おかしく報道した国会議事堂内の陣取りゲームも決して「無血開城」ではなかったはずです。過去に恋々として未練たっぷりに無駄な抵抗をして見せた老兵達の後ろには、一将功成って万骨枯るの諺通りに、中堅・若手の議員達の死屍累々です。

■政権交代を求める声と風に取り囲まれ、乾坤一擲で城から打って出たら主力群はほぼ全滅。瀕死の態で城内に逃げ戻った多くは武将や老兵で、その半数は一度は討ち死にした落ち武者のゾンビであります。ですから、歴史の比喩を使うなら会津城の落城や函館五稜郭の陥落などを引くべきではないでしょうか?クラッシャー小沢は手下の者を全国に散らし、彼らは草となって地元に溶け込み落下傘候補を当選させる策を練って待ち構え、本陣の小沢さんからは兵糧攻め・水攻め・堀埋め・櫓崩し等々の戦術が指示され、小沢さん本人は水戸黄門か北条時頼みたいに全国を行脚して寝返り・内通者を増やして行ったのでした。

■迎え討たねばならない自民党の本陣には茶坊主に囲まれながら葉巻を咥えて夜毎の酒盛りを続ける麻生コロコロ首相の姿がありました。総理総裁に担ぎ上げられた唯一の理由であり使命だったはずの解散総選挙を誰かさん達に邪魔され続けていたのですから、城の奥で憂さ晴らしの自棄酒でも飲んでいるしかなかったのかも知れませんぞ。何だかんだと屁理屈を捏ねて選挙を先送りさせ続けた張本人と思しき面々が、総選挙の戦が終わってみたら多くの子分を死に追いやっておきながら、ちゃっかり城の中に生きて戻って来たのですから、馬鹿馬鹿しくて総理総裁などやっていられない!と思ったに違いありません。敗戦の責任を一人で背負って見せたのが、精一杯の皮肉であったかも知れませんなあ。


14日午前、首相はにこやかに警護官(SP)との記念撮影に応じ、残り少ない首相官邸での生活を穏やかに過ごした。だが、その後の記者団のぶら下がり取材で表情は一変。鳩山由紀夫民主党代表との会談について問われると「個別の会談の内容を私の方から外にしゃべったことは一回もありません」の一点張りで、最後はプイッと記者を振り切った。

■「個別の会談」というのは、総裁内定を告げられた密室談義のことを指しているとも考えられます。選挙の前後で麻生コロコロ首相のベランメエ調には変化が見られるようで、選挙の後は前任の福田ホイホイ首相に似て来まして子供染みた意地の悪い応対が目立ちます。さすがに記者に向って「あなたとは違う」とは言えないのでしょうが……。何処か投げ遣りで、私情を爆発させて吐き出してしまいたい事がいっぱいあるような引き攣った表情も似ております。