旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

悲しい話 

2011-04-15 16:03:48 | 歴史
■大震災からの復興が政治課題に上って来たようですが、相も変わらず菅アルイミ首相の延命目的のパフォーマンスの臭いがぷんぷんしているのは困ったものであります。すぐにやるべき事が次々に先送りされ、事態は復興に向けて改善されるどころか、どんどん悪化しているばかりのように見えるのは単なる気のせいばかりではなさそうです。大津波と原発事故によって生活の基盤である家族や仕事を失い頼るべき地域社会も崩壊してしまった人たちに、一刻も早く希望の光を見せてあげるのが政治の仕事だと思うのですが、またまた「20年は帰れないだろうなあ」などと首相が言ったの言わなかったのと、言うべき事を言わず言わなくてもよい事やら絶対に言っては行けない事をぽろりと言ってしまう首相を担いでいる政権与党の皆さんも大変なのでしょうが、それで振り回される被災者の皆さんは本当に可哀想であります。

……福島県から千葉県船橋市に避難した子供が「放射線がうつる」などと言われ、いじめられたとする電話が同市教育委員会にあったことが14日、市教委への取材で分かった。市教委は、避難者の気持ちを考えて言動に注意するよう児童、生徒への適切な指導を求める通達を、市内の小中学校など計83校に出した。市教委は通達で、大人の不安が子供に影響しているとし、同様のいじめを防止するためには、保護者に対する“指導”も必要と指摘している。…… 

■乱暴に「東北人」と一括りにして、苦難に耐える姿を意図的に賛美して海外メディアの報道に便乗して、不自然な美談を拵えてしまったマスコミにも罪はありそうです。被災した現地の治安は日を追うごとに悪化しているのが実態らしく、窃盗やこそ泥の類が増え続けて現地の警察があちこちで厳戒態勢を布いているという話の方がリアリティがありますし、逸早く現地に取材した週刊誌は現地の厳しい状況や悲しい実態なども早い段階から報じており、その中には某避難所で原発事故を避けて逃げて来た福島県の母子を「牢名主」気取りで避難所を仕切るオジサンが、理由も言わずに門前払いしてしまったなどという悲しい話もありましたなあ。放射線の恐ろしさが一人歩きして素人の妄想で膨れ上がり、まるで感染力の強い疫病か何かと混同している人も多いのが実情で、仮に被曝していても外部ならば簡単に除染できましょうし、不幸にも内部被曝してしまった場合、放射性物質の害を受けるのは本人のみで、阿弥陀如来の後光のように体の外に放射するようなことはないというのに、支援しなければならない人を排除したり差別するなどもってのほかであります。放射線は「うつる」ものではない事ぐらいは周知徹底させておくべきでしたなあ。

■原発は安くて安全で地球に優しいなどという宣伝に使った至近と労力の万分の一でも、放射性物質に関する正しい知識の啓蒙に使うべきだったのでしょうし、「最悪の事態」についても情報を公開して一般人の素朴な疑問や不安に丁寧に対応する姿勢があったら、コスト優先で安全対策を怠るような電力商売は改善されていたかも知れませんぞ。


船橋市教育委員会によると3月中旬、福島県から避難してきた小学生のきょうだいが市内の公園で遊んでいたところ、その話し言葉を耳にしてアクセントの違いに興味を持った船橋市在住の子供が「どこから来たの?」と質問。きょうだいが福島と答えたところ「放射線がうつるぞ」などと言い、質問した子供を含め、数人の子供が一斉に逃げ出したという。きょうだいは泣きながら帰宅。この様子を見ていた住民が市議会議員を介し、市教委に連絡した。現在、福島県内から船橋市内に避難している児童、生徒は計36人。市教委が出した通達は指導に当たっては「思いやりを持って接し、温かく迎える」「避難している人の気持ちを考えて言動に注意する」など避難している子供たちへの配慮を要請。…… 
■教育委員会の仕事は「言動に注意する」ように通達することより、学校を通じて地域住民や生徒達に正確な知識を伝えることではないでしょうかな?子は親の鏡とも申しますから、被災者や避難した人達に対する理解が大人も子供も足りないのかも知れません。何の根拠も無い原発の安全神話を鵜呑みにして信じることと同様に、原発事故や放射性物質に関する間違った思い込みを振り回すのは慎むべきでありましょう。見知らぬ土地で言葉も習慣も違う環境に溶け込もうとしている子供たちは、さぞや心細い思いをしていることでしょうに、面白半分に苛めてしまう馬鹿ガキ達には大いに教育が必要でありますが、所詮は日本人のレベルはそんな物で、世間の風は冷たいと身を以って学んで逞しく育って行くのも一つの人生かも知れません。この御一家は福島市に戻ってしまったとの報道もあるようですから、この兄弟は一生涯、千葉県船橋市の人達を忘れないでしょうなあ。特に船橋市の子供たちが愚かで性格が悪いというわけでもないでしょうから、遠く九州にまで避難している人達は日本のあちこちで似たような体験をしている可能性が高いと考えた方がよいのでしょう。


市教委は「大人の不安が子供たちに影響を与え、冷静な対応が取れなくなる恐れがある」と、原発事故に関する日頃の保護者の言動などが子供に影響を与えている可能性を指摘。保護者と連携した対応の重要性も強調した。また、市教委はいまのところ、新学期を迎えた小中学校から、福島県から編入してきた児童、生徒に対するいじめの報告はないとしている。
一方、“大人社会”でも福島県民が不当な扱いを受けるケースは続いている。厚労省によると「福島から来たと話したらホテルや旅館での宿泊を拒否された。どうすればいいのか」「旅館を経営している者だが、福島から来た客を宿泊させて大丈夫か」などの問い合わせがあった。福島県は3月17日から24時間対応の「放射線に関する問い合わせ窓口」を開設。これまで風評被害に関する相談は数百件に上っており、県は国に対し、正確な情報発信を要請している。だが、現状は続々と寄せられる相談の対応に追われる日々が続いているという。
2011年4月15日(金) スポーツ報知 

■団結やら協力を説教がましく宣伝しているのは「エーシー♪」ですが、日本にはなかなか克服できない馬鹿馬鹿しい差別問題があるのは事実ですから「日本は一つのチームだ!」などと言うのは絵空事・綺麗事だと誰もが知っているでしょう。しかし、数年前の完治したハンセン氏病患者が根も葉もない理由で差別された事件とまったく同じ構図の拒否反応が宿泊施設で起こっているというのは実に悲しいことであります。多額の義捐金やさまざま寄付行為が盛んに報道されている裏側で、何が起こっているのかを冷静に知る必要がありそうです。莫大な金額の寄付も現地に入ってボランティア活動も出来ない身なればこそ、被災地の生産物も避難して来た人も温かく迎えて接して行きたいものであります。
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支持率よりも安全保障を 其の壱

2010-12-21 16:00:08 | 歴史
■大国を巻き込んだ上で痛み分けの休戦状態の国と世にも珍しい国家としての生存権を放棄したような憲法を後生大事にしている国とは行動原理が根本的に違うのは当然なのでしょうが、国連安保理の小田原評定には目もくれずに計画通りに自国領内での射撃訓練をする韓国と、役にも立たない「情報収集」を外務省に命じておいて首相官邸にクラッシャー小沢を呼びつけて1時間半も無駄話をしている日本とを比べてみますと、日米安保と米韓同盟とを結びつけて東アジアの安全保障体制を万全なものにする事など到底無理だと分かりますなあ。

北朝鮮が延坪島砲撃など黄海で軍事緊張を高めている背景には、朝鮮戦争休戦(1953年)以来、不利になっている領海の拡大などに向けた軍事的、政治的面での多目的作戦がある。軍事的緊張激化で海の南北境界線の“紛争化”を米国など国際社会に印象付ける一方、韓国に対しては“戦争の恐怖”で世論を対北平和・対話ムードに誘導し、李明博・保守政権を揺さぶる狙いがある。一方、北朝鮮では対外的緊張で国民の危機感を高め、後継体制づくりという不安定な権力過渡期を国民団結で乗り切る考えだ。こうした作戦が結果的に金正恩後継者の手柄として、その崇拝・神格化につながるというわけだ。したがって北朝鮮の狙いはあくまで局地紛争による“政治的効果”であって、本格的な軍事衝突や全面戦を考えてのことではない。 

■ラングーンでの韓国大統領爆殺未遂事件や、最近もテレビで映像化された大韓航空機爆破テロを命じたのは、今の将軍様が継承した権力を強化するための傍迷惑な儀式だったことが判明しているのですから、三代目襲名!にも同じお披露目の儀式が必要なのでしょう。柳の下に2匹目3匹目の泥鰌を探す気持ちは、日本の菅アルイミ首相の「小沢を叩けば指示が上がる」という断末魔の信仰心とも共通しているのかもしれませんが、どちらにしても国の愚策に翻弄される側の国民にとっては有難くない話でありましょう。


北朝鮮が最近、軍事挑発を繰り返している北方限界線(NLL)は朝鮮戦争休戦に由来する。休戦当時、北朝鮮周辺の制海権は韓国・国連軍が握っていて、北朝鮮軍はどの島も支配していなかった。このため国連軍司令官は延坪島や白●島など西海5島と北朝鮮本土の中間を海の境界線として、一方的にNLLLを設定した。これに対し北朝鮮は当然、不満だったが海上支配力がなかったため事実上認めてきた。艦艇や漁船などNLL外への進出も控えてきた。 

■渋るスターリンから強引に戦車や飛行機を借り出して韓国に攻め入った自称・金日成には最初から海上兵力の備えは無く、元々、ソマ満国境の森林地帯での軍人体験しか持たない指導者の限界が露呈したいたようなもので、二代目になっても奇怪な工作船やドラム缶みたいな小型潜水艦より立派な軍艦を並べることは無かったのでした。形勢が逆転して自国の国境に国連軍が迫った時に、毛沢東の独断で「義勇軍」300万人を送り込んだ中華人民共和国も、旧日本軍が残した武器やソ連から援助された兵器を寄せ集めていた段階で、とても大海軍を作り上げる能力はありませんでしたからなあ。


しかし近年、西海5島を含む周辺海域は北朝鮮の領海だとしてNLL無視の動きを見せ、南北間で衝突が相次いでいた。哨戒艦撃沈や延坪島砲撃はその延長線上にある。北朝鮮は60年続いた休戦体制を力で変更しようというわけだ。現在のNLL体制では最北端の白●島から北朝鮮の首都・平壌までは150キロ、韓国のソウルまでは210キロ。北にとっては気になる距離だ。しかし北が新たに主張している境界線だと、ソウルは北の領海から約100キロで、韓国の対北防衛体制は大きく揺らぐ。仁川国際空港などすぐそこだ。 

■今は立派なハブ空港や港湾を整備した都市の仁川ですが、ここは両国にとって忘れられない「仁川上陸作戦」が実施された歴史的な場所であります。一旦は半島南端の釜山まで包囲された韓国がマッカーサー指揮下の連合軍がノルマンディーさながらの大規模な上陸作戦を敢行したことで救われ、逆に北朝鮮側は伸び切った兵站線を真っ二つに切り離される危機的状況に陥り、命からがら北へ北へと逃げ帰った朝鮮戦争の分水嶺となった記念すべき?場所であります。北朝鮮の軍部などは恨み骨髄の仁川を奪い取って旗でも立てたい心境かのかも知れませんなあ。


北朝鮮はNLLを軍事紛争化し、米国(国連軍)との間で新たな境界線設定など“平和協定交渉”を狙っている。韓国としては軍事挑発を繰り返す金正日・正恩軍事独裁政権を相手に、領海譲歩の現状変更には絶対に応じられない。北朝鮮は一連の軍事挑発でNLLの紛争化に成功しつつあると評価しているはずだ。さらに“戦争脅迫”が韓国世論を李政権批判に向かわせ、新たな対北融和政権誕生につながることを期待している。これに対し韓国政府は「今度こそは断固たる対応」を取ることが北の軍事挑発と狙いを挫く道と判断している。南北の緊張・対決は続きそうだ。
●=領の頁を羽の旧字体に
2010年12月21日 産経新聞 

■勝手な屁理屈で領土・領海を好き勝手に拡張する所業は決して北朝鮮だけのものではなく、救いの主・養い親も同然の北京政府が偉大なる?お手本になっている可能性が高いと思われます。北朝鮮の南侵開始は1950年の6月25日ですが、前年の1949年10月に中国共産党軍は国民党軍を駆逐して全土を掌握すると同時に「チベット解放」を宣言しまして、着々と準備を進めて1950年10月7日に8方向から東チベット地域に侵攻を開始するのであります。世界の目が朝鮮半島に釘付けになっていたからチベットを侵略したのか、チベット併合を見習って半島統一を急いだのか、鶏と卵みたいな話ですが、何らかの連関があったと思われます。

■北朝鮮がNLLにイチャモンを付け始めるのは、北京政府が勝手に『領海法』を制定して南シナ海から日本近海まで、尖閣諸島も西沙諸島も南沙諸島も、全部丸ごと自国の領土だ!と規定したのが1992年で、1997年には軍事的な海洋権益の維持を明記した『国防法』まで制定して、今年の尖閣衝突事件を起こしているのであります。では、北朝鮮がちょっかいを出しているNLLの方はどうかと申しますと、朝鮮戦争の「休戦協定」が締結された1953年7月の翌月に米軍主導の国連軍が独自に設定したもので、70年代半ばからちょいちょい越境事件を起こし始め、チャイナが『国防法』を定めた2年後の1999年9月に、NLL設定は「他人の家の庭にひそかに線を引く白昼強盗のような行為」だった!と北朝鮮は騒ぎ始めました。お手本通りにNLLの南方に「海上軍事境界線」と称する独自の境界線を設定して勝手に「領海だ!」と宣言したのでした。そんな経緯の中で今年3月の韓国海軍哨戒艦撃沈事件が起きて乗員46人が戦死したのであります。

■砲撃事件の後、北京政府が相手を間違えて韓国政府に「自制」を促して埃を被っている6カ国協議を再開しましょうよ、などと能天気なことを言い出したのも、今回の国連安保理で北朝鮮を名指しで非難する文書に断固として反対したのも、本当は自分が手本にされている事が理由なのではないでしょうかな?近々、台湾に向かって「砲撃」するかも知れないし……??。

更正不能の人と国 其の弐

2010-11-27 14:00:29 | 歴史
■「少年法」の精神と国家ゆえに北朝鮮が勝手気ままに振舞える原理とに共通性があるから、今回の死刑判決と砲撃事件とが重なって見えるのかも知れません。被告と親交のあった証人が「交際中は、タバコを顔に押しつけられたり、殴る蹴るの暴行を何度も受けた。人を人と思っておらず、被告には極刑を望む」と涙声で語ったり、検察側証人として出廷した共犯少年(18)などは「犯行をすべて自分のせいにするように仕向けられた。被告と一緒にいたときが人生で一番つらい時期だった」と述べた時の心情は、「太陽政策」の失敗を身をもって経験した延坪島の住民に通じるものがあるような気もします。

……仙台地裁は母親への暴力で保護観察中だったことや遺族に手紙を1度しか送っていないことことなどを指摘して、「反省の言葉は表面的」と判断。公判廷での反省の態度に「深みがない」と結論づけた。
2010年11月26日 産経新聞 

■小泉元総理が訪朝した時に拉致犯罪を認めて将軍様は「1度だけ」謝罪の言葉を吐いたことがありましたが、金丸信さんが約束した賠償金が貰えそうもないと分かると口を拭ってミサイル実験と核実験を繰り返すようになったのですから、あの謝罪はまったく「深みがない」ものだったと分かります。


判決は▽表面的な言葉で、反省に深みがない▽謝罪の手紙は1回だけで、被害者の精神的苦痛を和らげるような謝罪がない▽自己に不利益な点は「覚えていない」と述べるなど不合理な弁解をした--などとして「事件の重大性を十分認識しているとは到底言えない」と指摘、更生可能性について否定的な見方を示した。年齢も「相応の考慮をすべきだ」としつつ「結果の重大性などから死刑回避の決定的な事情とまでは言えない」と述べた。……弁護側は「不遇な生い立ちで精神的に未熟」とも訴えたが、判決は「不安定な家庭環境が事件の遠因だとしても、残虐さなどに照らせば、量刑上考慮するのは相当でない」と退けた。
2010年11月25日 毎日新聞 

■北朝鮮という「精神的に未熟」な独裁国家が延命しているのは、周辺国がその建国以来の「不遇な生い立ち」に同情しているからではなく、或る国は戦争よりも経済成長を優先したいし、また或る国は緩衝地帯を残しておきたい。また或る国は何をされても手出しが出来ない憲法を後生大事に守っていますし、世界一の軍事大国は中東とアフガニスタンの問題が解決しない間は新たな戦場が出現することを望まず、こうした御近所の事情をよくよく計算した上で国民生活を困窮のどん底に放置したまま核兵器と長距離ミサイルの開発に国運を賭けているのが北朝鮮という厄介者国家という構図になりましょう。

■関係国は一国を除いて戦争勃発の危機でさえも自国の国益に利用しようと知恵を絞って裏と表で動き回っているわけで、自国の存立原理を「戦争」に置く北朝鮮と「戦争」の二文字を忌み嫌ってばかりいる日本が対極に立って異様な対照を成しているようで、片方は異様に大きな存在感を持ち、もう片方は実に影が薄い印象を世界に与えているのでしょうなあ。

慶祝、ノーベル平和賞 其の壱

2010-10-19 14:58:26 | 歴史
■そもそも、ダイナマイトを商品化して莫大な資産を残した偉人の名をとって創設されたという美談めいた話が相当に怪しく、何だか社会インフラを整えるための土木作業にばかりダイナマイトが使用されたような錯覚を惹起するのは如何なものか?粉々に吹き飛ばした岩石の数と人体とどちらが多かったのやら、と陰口を叩かれながらも、立志伝中の人物となったノーベル氏が生涯忘れなかったのは少年時代に味わった算数・数学を担当する教師から受けた侮辱だったそうで、それが原因で、ノーベル賞には自然科学の基礎として欠かせない「数学賞」が最初から想定されていないという、この賞の胡散臭さを物語る話も残っておりますし、目出度く経済学賞を受賞した高名な学者が運営していた信託会社が大規模に破綻したのはリーマン・ショックの10年以上も前でしたかな?

■ノルウェーを舞台にして選考される「平和賞」に関しては、裏にも表にも興味深い話が山積みですが、日本に関しても鳩山サセテイタダク前首相が基地の移設問題を滅茶苦茶にしてくれた御蔭で、政治や自国の歴史に興味の無い多くの日本国民に対して大いに啓蒙効果を上げてくれた沖縄問題の発端を作った佐藤元総理大臣が、正に沖縄を「核抜き本土並み」という表向きの条件で祖国に復帰させた功績によって問題のノーベル平和賞を日本でただ一人受賞しているのであります。その受賞当時も「カネで買った」黒い噂や米国が暗躍したやら、とかくの噂のあったノーベル平和賞でしたが、平和賞の受賞者を選考するメンバーは、常に少年のような?悪戯心を忘れず、世界が忘れ掛けている人物や世間の注目から外れた場所にいる意外な人物を選び出して楽しむという一風変わった趣味を共有するサークルのような印象の強い集団のようであります。

■チャイナ「関連」の人物として、チベットのダライ・ラマ法王に続いて受賞したのが北京政府としては絶対に忘れ去ったままにしておきたい第二次天安門虐殺事件をずっと忘れずに文筆活動を続けていた人物で、待ちに待った正真正銘の中華人民共和国人民の中からノーベル賞の受賞者が出た!と国を挙げてのお祭り騒ぎが出来ないのは残念至極でありました。日本としても尖閣衝突事件を那覇地検に解決させたことにして、うやむやのままに切り抜けようと思っていた矢先のことでありますから、ノルウェー政府の毅然とした態度と比較されて本当に可愛そうでありますが、初の?ノーベル賞の受賞者が出たというのに、北京政府がお祝いに贈ったのが、獄中にいる本人の帰りを待ち続けている奥さんを軟禁することだったとは、何とも分かり易い話であります。


香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターが14日伝えたところによると、ノーベル平和賞受賞が決まった中国の民主活動家、劉暁波氏の妻劉霞さんは、同日から近所への買い物も禁じられた。中国当局による行動規制が強まっているとみられる。……受賞発表があった8日から軟禁状態に置かれている劉霞さんは、食材などの買い物だけは公安当局の送迎付きで許されていたが、14日からは買い物のための外出も認められなくなった。受賞決定直後に携帯電話が不通になったため新たな携帯を入手していたが、それも使えなくなったといい、家族も劉霞さんと連絡が取れない状態が続いているという。
2010年10月14日 産経ニュース 

■この報道は18日段階で他のメディアも確認することが出来たようですから、本当に監視・軟禁されてしまっているようです。日本の中堅ゼネコンのフジタ社員が解放されて、今度はノーベル賞受賞者の奥さんが監禁されてしまうとは、本当に息苦しい国でありますなあ。日曜日の東京12チャンネルを観ておりましたら、日本の地方都市で行政書士をしている初老の男性が奥さんに逃げられたあ!という切ない話を紹介しておりましたぞ。地元で知り合ったチャイナ国籍の女性と結婚して一緒に旅行を楽しむ仲睦まじい御夫婦だったそうですが、迂闊にも最愛の妻の祖国に関して余りにも乏しい知識しかお持ちでなかったようで、うっかり地元の新聞に「奥さんも怒っている」という不用意な一文を交えて尖閣衝突事件に関する文章を投稿してしまったのが家出の原因だったとか……。奥さんは再婚らしくチャイナに子供を残していて国籍も変えずに永住権だけを取得して暮らしていたという話でありました。能天気な日中友好の偏った宣伝ばかりしている日本のマスコミにも少なからぬ責任があるようにも思うのですが……。

■そういうお国柄であればこそ、拙ブログとしてましては此の度のノーベル平和賞受賞を大いに祝したいと思います。

首相の留守には何かが起こる 其の六 

2010-10-16 21:39:04 | 歴史
■日本のマスコミは週休二日制がしっかりと定着しているらしく、土日の新聞紙面やテレビ・ラジオの報道は明らかに内容が薄くなる悪い癖が染み付いてしまっているようです。どうせ読者も視聴者も遊びに夢中で、真面目な記事も番組も無駄になるだろう、とでも考えているのでしょうか?まるで代表選挙に血道を上げて、尖閣問題にも円高問題にもマトモに対応できなかった菅アルイミ内閣みたいだと言っては言い過ぎでしょうか?

……尖閣諸島の領有権をめぐり、中国四川省成都市、陝西省西安市、河南省鄭州市で16日、大規模な反日デモが起きた。……東京で同日行われた集会「中国大使館包囲! 尖閣侵略糾弾! 国民大行動」に反発した行動とみられる。……成都市では午後2時ごろから数百人が「釣魚島を守れ」「日本製品ボイコット」などと書かれた横断幕を掲げてデモ行進。中山広場には1万人が集まり、イトーヨーカ堂などの店舗のガラスが割られたという。同総領事館では「けが人の報告は聞いていない。日系企業から情報を集めている」としている。
2010年10月16日(土) 時事通信 

■きっと仙谷官房長官の「柳腰外交」というのは、この種の波風が立たないように配慮して相手の善意やら常識やら慈悲の心に期待するという虫のいい話だったのではないでしょうか?残念ながら、官房長官の口癖という「カンの野郎」が所信表明演説で外国問題を「国民一人ひとりが自分の問題として……」と、自分が総理大臣になっている事を忘れて60年代の反体制運動を呼び戻すようなことを言ったものですから、国民の中にはしっかり総理大臣の指示に従って動き出す人が現れたのであります。不思議なことに、菅アルイミ首相は御自身が「市民運動出身」を売り物にしているのに、お膝元で起こった今の市民デモ運動には無反応のようですなあ。マスコミ各社も無視しているのはもっと不思議なのですが……。

■チャイナで突然起こった反日デモは、多くの国民がプロ野球やらゴルフ大会に熱中している間に東京都下で行なわれた「国民大運動」デモに対する当然の反応なのでありますが、それを誰も報道しないので何が何だかさっぱり分からないのでしょう。最初にボタンを掛け忘れてしまったマスコミ各社は、これから後追い報道でお茶を濁すつもりなのでしょうか?

■拙ブログには「むろらん」さんの名前でデモの告示がコメントで届いていましたから、16日の土曜日午後2時から『頑張れ日本!全国行動委員会、草莽全国地方議員の会』の皆さんが主催するデモ行進があることは分かっておりました。


市民団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」(会長・田母神俊雄前航空幕僚長)などが主催し、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐり中国に抗議する集会「中国大使館包囲! 尖閣侵略糾弾! 国民大行動」が16日、都内で行われた。主催者側によると、約3200人が参加したという。集会には田母神氏や西村真吾前衆院議員のほか、地方議員や文化人らが参加した。抗議集会、デモ行進の後、在日中国大使館を訪問。「事件は領海侵犯であり船長の拘置は妥当な措置」とした上で、船長の釈放要求など中国の一連の対応を批判、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」とした抗議文を大使館のポストに入れた。 
2010年10月16日(土) 時事通信 

■何処かの中華街が襲撃されたとか、大使館に投石があったという話はないようですし、チャイナ製品を多く取り扱う100円ショップなどの窓ガラスが割られたという事件も起こっていないようです。通常は警備に当たる警察の発表よりも主催者側は多目の参加者数を言い立てるものですが、今回のデモでは逆転していて一説には6000人近い参加者を警察は確認しているとか……。元民主党議員だった西村さんも参加しているのですから、本当は前原外相も個人的には御挨拶に行きたかったかも知れませんが、さすがに派閥作りを焦っている原口前大臣でも政治生命に関わる参加は見合わせたようですなあ。

■さてさて、こうした外交問題を自分の問題として考える「国民一人ひとり」が集まって実行したデモ行進を、菅アルイミ首相はどのように評価するのでしょう?週明けのぶら下がり会見がちょっと楽しみではあります。

懐かしい?ミグが墜落 

2010-08-19 16:22:09 | 歴史
■昔から「航空機事故は連続する」と言われているように、日本国内で最上級の技術を持っているパイロットが操縦するヘリコプターが埼玉の山奥と瀬戸内の海に立て続けに墜落する事故が発生したそうです。人命救助や各種調査のために日夜空を飛んでいるプロが殉職するのは実に残念なことであります。ご遺族や関係者のご心痛は想像に余りあるものがりますが、犠牲者のご冥福を祈りたいと思います。
 
■そんな折も折、朝鮮半島では世にも奇妙な墜落事故が発生とのことであります。
 


17日午後に中国遼寧省撫順県で墜落した北朝鮮の軍用機は旧ソ連が開発した「MiG-21」で、燃料切れが墜落の原因だったとみられている。軍消息筋は18日、「中国で墜落した軍用機をとらえたレーダー画面から、MiG-21と識別されたものと承知している」と伝えた。同機が離陸した北朝鮮・新義州の空軍基地には、MiG-21とMiG-19、MiG-23が展開されている。

■日本では終戦記念日、韓国では光復節の各種イベントが終わったばかりで自分の「影響力」を心配する日本の前首相が北京を訪問している時期に、領空侵犯事件が起こったというわけですが、この前首相は自分の浅はかな外交政策が日米間の大きな溝を掘ったことに凝りもせず、何でも「次は北方領土問題を解決する」とか何とか放言しているとか……。日本ではすっかり忘れ去られている「友愛の海」発言を言質として北京政府は変な要求や提案をしている節があり、日本ではアホウ扱いされていることを逆手に取られて、「前首相!前首相!」と煽てられて有頂天になるのが心配でありますなあ。

■このMiG-21はロシア亡命を試みたのではないか?との説も出ているそうですが、領空侵犯しながら撃墜されなかったのはチャイナと北朝鮮との間で素早い情報交換があったからなのか?それとも最初から骨董品同然の機種だと承知の上で迎撃の手間とコストを節約して傍観していたのものなのか?謎は多く残っていますぞ。


別の消息筋は、北朝鮮戦闘機は近ごろ短距離訓練を中心に行っており、燃料も満タンにしないで飛行させていると伝えた。新義州から墜落地点まで距離があり、墜落時に機体が炎上していないことから、燃料が切れて墜落したとの見方を示している。元北朝鮮空軍部隊幹部だった北朝鮮脱出住民(脱北者)も、戦闘機訓練は燃料不足のため、燃料を3分の2ほど入れ、約30分飛べる状態で行うのが慣例だと話している。
8月18日 聯合ニュース

■「亡命」「ミグ」と聞きますと、1976年9月6日の午後に発生したベレンコ中尉の亡命事件を思い出す方も多いのではないでしょうか?34年も前の話ではありますが、時は冷戦時代で仮想敵国のソ連から当時の最新鋭機MiG-25が飛来したのですから大騒ぎでした。極東のウラジオストク近くの空軍基地から千歳空港を目指してヴィクトル・ベレンコという空軍中尉が飛んで来て、千歳上空は雲が多くて着陸を断念し、民間の函館空港に強行着陸したのでした。日本側でも午後1時10分頃にはレーダーで機影を捉えて航空自衛隊千歳基地のF-4EJがスクランブル発進したものの、超低空飛行に移った後は見失い自衛隊は大いに緊張したのでした。

■MiG-25は自衛隊に発見されずに北海道の函館空港に接近し、市街上空を3度旋回したあと午後1時50分頃に滑走路に強行着陸したのですが、当時の住民から上空に舞う「巨大な黒い影」の不気味さを聞いたことがありますが、北の空を守る自衛隊は緊張の極に達していたのでした。午後2時10分頃には警察が空港周辺を完全封鎖し、変な法律で駆けつけた陸上自衛隊員は管轄権を盾に締め出された事実があります。亡命ではなくて「本物」だったらどうするつもりだったのでしょうなあ?

■ソ連の特殊部隊が機体を奪還しに来る?!虎の子の最新鋭機の機密保全のために破壊しに来る!?とも考えられ、函館駐屯の北部方面隊第11師団隷下の第28普通科連隊は作戦準備。61式戦車だの35mm2連装高射機関砲 L-90だのが基地内に搬入されて、ソ連軍来襲時には戦車を先頭に完全武装の自衛隊員200人が函館空港に突入する決意だったそうですが、海上自衛隊も日本海側に3隻、太平洋側に2隻を展開し、函館基地隊の掃海艇は函館港一帯を警戒、余市防備隊の魚雷艇も警備に当たり、大湊航空隊のヘリコプターは津軽海峡上空で警戒飛行してF-4EJも24時間哨戒飛行を実施。海自の竜飛警備所内には陸自東北方面隊の対戦車隊が集結して、64式対戦車誘導弾と106ミリ対戦車無反動砲が水際迎撃作戦の準備をしていたというのですから、現場では戦争を覚悟したのでありましょうなあ。

■ソ連側から「機体の即時返還」の要求があって、親ソ連だった当時の日本社会党は同調して騒いだものの、日本と米国は9月24日に共同で機体検査のためにMiG-25を分解して、米空軍のC-5Aギャラクシー大型輸送機に搭載して百里基地(茨城県)に移送した後、11月15日にやっと機体はソ連に返還され乗って来たベレンコ中尉は希望通り米国に亡命したのでした。

■今回の北朝鮮機はMiG-21の練習機だと言われているので、単なる空から落ちて来た迷惑な粗大ゴミでしかないので、チャイナ側は「ゴミ処理費用」でも要求するのかも知れませんが、3代目襲名が近いと言われている北朝鮮としては、何とも恥ずかしい事件が起きてしまって頭を抱えているのでしょうなあ。それにしても、30分しか飛べない燃料で、一体、どんな練習をしているのでしょう?まさか、大日本帝国末期みたいに離陸と肉弾特攻の訓練だけを繰り返しているのではありますまいな?!

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相談する相手は選ぶこと 其の壱

2009-05-01 15:56:29 | 歴史
■いつまで日本の総理で居られるのか分からない麻生コロコロ首相が北京を訪問したそうです。外交日程を消化するためだけの儀礼的なものならば、さほどの心配はありませんが……。

……麻生太郎首相は30日午後、北京の人民大会堂で中国の胡錦濤国家主席と約50分間にわたって会談した。新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)対策で日中双方が密接に情報交換し、感染防止で協力を進めることで合意した。……麻生首相は「新型インフルエンザ問題は非常に深刻で、日中両国で十分協力していかなければいけない」と呼びかけた。胡主席も「日中は隣国として感染リスクがあり、協力を強化できる」と応じた。……麻生首相が「北朝鮮は核実験を示唆するなど強く反発しているが、抑制した対応が重要だ」と述べ、中国が指導力を発揮することを求めた。胡主席は「当面、6カ国協議は困難な局面に直面している。対話と協議を通じて情勢の好転を促すべきだ」と述べ、粘り強い対応を呼びかけた。核軍縮について麻生首相が「世界的な核軍縮の前進のために協力してほしい」と訴え、胡主席は「今後も積極的に努力していく」と述べた。……
2009年4月30日 毎日新聞

■クセのある発音ながら英語が堪能だと自負している麻生コロコロ首相ですが、相手がチャイナとなれば通訳を挟んでの会談ということになります。従って「50分間」の会談は正味20分程度の極短いものだったということになります。一問一答形式で総花的に展開された会談は大味で新鮮味にも欠けます。北京政府は平壌の将軍様と同様で軍部を牽制しながら対米戦略を練り上げている最中でしょうから、最初から日本など眼中に無く、漫画好きで外交好きの麻生コロコロ首相が何を言おうと、肝腎なことなど一切言わずに済ましてしまうのは当然のこと。それでも「靖国問題」で嫌味の一つも言って釘を刺しておいたのは国内向けのパフォーマンスだったそうな……。

■この会談で麻生コロコロ首相は「唯一の被爆国」の首相として、核廃絶という人類の大テーマを持ち出したのだそうです。オバマ大統領は「唯一の核使用国」のリーダーとして正しい歴史認識を持っていることを世界に示してロシアとの新たな核軍縮交渉を始めようとしているのが刺激になったのでしょうなあ。でも、そういう重大な話をするのなら、是非とも相手を選んでするべきでしょう。

■まあ、新型インフルエンザの対応で「密接に情報交換」すると約束したのですから、本物のパンデミックが発生するとしたら震源地になる可能性が最も高い国の首脳に対して、その時が来たら是非とも「約束を守れ!」と強く迫って欲しいものであります。過去のサーズ騒ぎが起こった時、共産党のエライ人達は北京市から一斉に姿を消したのは有名な話ですからなあ。


中国が新疆ウイグル自治区で実施した核実験による被害で同自治区のウイグル人ら19万人が急死したほか、急性の放射線障害など甚大な影響を受けた被害者は129万人に達するとの調査結果が札幌医科大学の高田純教授(核防護学)によってまとめられた。被害はシルクロード周辺を訪れた日本人観光客27万人にも及んでいる恐れがある。

■核兵器は実戦で都市に投下しなくても、実験や保管の段階でも多大な犠牲を強いる性質を持っている兵器です。それを知らないままに米ソが核開発の競争を始めてしまったばかりに、英国、フランス、そして想定外だったチャイナまでが核保有国になってしまったのでした。極最近まで南太平洋で核実験を行ったフランスは論外としても、長い間、核実験は地上で行われていたのであります。今はIT技術が発達してスーパー・コンピュータを使えば死の灰を撒き散らすような愚かな実験はしなくて済むようになりましたが、IT技術で遅れを取ってしまった国々は今でも地下核実験をやらねばなりません。

■『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』という米国が行った核実験をユニークな角度から追跡した本がありました。著者は広瀬隆さんですが、『危険な話』よりも参考になる面白い本でした。ジョン・ウェインがチンギス汗を演じた変な映画があったことを知らない人や、西部劇が好きな人にとっても撮影の裏側に隠されている原爆の影の存在は強烈な印象を与えるはずです。ソ連やチャイナが続けていた核実験に関してこの種の本が出ていないことは不思議な話なのですが……。
ジョン・ウェインはなぜ死んだか
広瀬 隆
文藝春秋

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チャイナの買い物 其の四

2009-03-04 18:51:56 | 歴史
■大英帝国が仕掛けた「アヘン戦争」は夙に有名ですが、赤子の手を捻るも同然に一方的な勝利を収めた英国政府は、1842年の8月29日に『南京条約』を清朝に押し付けた上で調印させることに成功します。莫大な賠償金を脅し取られるのは敗北者の定めですが、香港を「永久割譲」させ、広東・厦門・福州・寧波・上海を一挙に開港させて英国製品を売りつけようとしました。勿論、最も儲かる商品は阿片でした。何とも恐ろしい話です。

■念の入った事に南京条約が締結された翌年には、『虎門寨追加条約』まで押し付けて、ちょっとした忘れ物を取りに戻って来たように「治外法権」「関税自主権放棄」「最恵国待遇条項承認」を認めさせてしまいます。この遣り口を見ていた幕末の日本が瞠目して息を失ったのは当然で、鎖国だ!攘夷だ!などと寝言を言っていたら阿片と軍艦が押し寄せてエライことになるのは必定でした。天の配剤と申しましょうか、屈辱的な「南京条約」の11年後に米国のペリー艦隊が琉球を経由して江戸湾に来襲したのでした。そうなれば、少なくとも清朝よりも手強い国に変身しておかないと、取り返しの付かない事になるのは誰にでも分かるようになったという次第。

■さてさて、奪える物は全部手に入れたはずの大英帝国でしたが、実際には開港させた狭い地域でしか好き放題に振舞えず、阿片も期待した程には捌けないという現実に気が付きます。阿片商社としてはチャイナ全土を阿片の「マーケット」にしたい!そこで仕掛けられたのが「アロー号事件」と呼ばれる奇怪な事件でありました。1856年の10月8日、清朝の官憲がイギリス船籍を自称するアロー号を臨検します。実際に船籍登録の有効期限が切れていたのですから、国籍不明の実に怪しい船を調べるのは当然です。何をやっているのか調べるために清人船員12名を拘束して、取調べの結果、3人を海賊の容疑で逮捕したそうです。

■残りの9人が見逃されたのは、日本史にも登場するハリー・S・パークスという名の在広東の英国領事が大変な剣幕で怒鳴り込んだからでした。こういう場合、相手は自分の非を認めるどころか、ある事無い事を言い立てて喚き続けますから、絶対に自国の権利を譲っては行けません。パークスは臨検を不当だと言い張るだけでは足りず、「英国国旗を引き摺り降ろされたのは最大の国辱だあ!」とその場で見ていたような大嘘をつきます。こういう場面では言った方が勝ちのようです。本当は国旗事件は起こっていなかったのですから……。

■これが第二次阿片戦争とも呼ばれるアロー号事件の発端であります。パークスは本国から譴責を受けるどころか、外交官として大手柄を立てたと褒められて、1865年(慶応元年閏5月)に次の獲物とされた日本国に赴任して、オールコックの後任として日本駐在の公使に栄転して横浜に着任したのでした。危ない、危ない。

■類は友を呼ぶのか、パークスのゴリ押しぶりに感動?した清国駐在全権使節兼香港総督だったバウリングという人物が、独断で現地に駐留していた英国海軍に「暴れろ!」と命令したから堪りません。英軍が広州付近の砲台を占領すれば、「ふざけるな!」と清朝の民は英国人の居留地を焼き払って対抗します。でも、民衆には武力はありませんから、本物が現われたら手も足も出なくなるのが悲しい現実です。

■英本国では、首相のパーマストン子爵が議会で「軍隊をチャイナへ!」と大演説をぶって見せますが、案外と議会は冷静でこの恥知らずな謀略は否決されてしまいます。ところが民主国家というのは恐ろしいもので、パーマストン首相は「解散総選挙」に打って出ます。どんな選挙運動を展開したのやら……。何処かの首相が郵政民営化を押し通そうと参議院で法案が否決されたのに怒って衆議院を解散したのは最近の話ですが、パーマストンの出兵案は選挙後の議会で可決されてしまいます。そこで派兵される5000人をシビリアン・コントロールする責任者として派遣されたのがエルギンという名の前カナダ総督だったそうです。この人物こそ、オスマントルコのスルタンから許可を貰った!と言い張ってアテネのパルテノン神殿からレリーフを剥ぎ取って持ち帰った張本人。

■不思議な言い掛かりをつけてイラクに出兵した米国のブッシュ大統領は、欧州を半分に割って有志連合軍の形を採ったように、この時の大英帝国もフランスのナポレオン3世に共同出兵の誘いを掛けます。オスマントルコを分け合う事になる両国ですから、フランスが断るはずもなく、宣教師が逮捕斬首された話を持ち出して派兵の口実としたのだそうです。こうして1857年の末に広州を襲った英仏軍は、正当な臨検をして容疑者を逮捕した清の総督大臣を問答無用で捕らえて「条約改正」を強要するのですが、翌年の2月に清朝の北京政府に対して衝き付けられた交渉の要求書には、ちゃっかりロシアとアメリカの全権大使の名前も並んでいた!

■条約改正(悪)に成功した英仏艦隊は、1859年の6月17日に条約批准のために天津の白河口に来襲します。条約は批准されないうちは単なる紙切れですから、この元朝のフビライが開鑿した北京と天津を結ぶ運河を塞ぐ抵抗戦が起こります。何でもかんでも運河に投げ込んで航行不能にしたわけですが、障害物を自力で取り除かねばならなくなった無様な艦隊に対して、モンゴル人の将軍センゲリンチンが指揮する清朝軍に攻撃され、ホウホウの体で上海に逃げ帰りましたとさ。

■意気上がる清朝の咸豊帝は、英雄センゲリンチン将軍に命じてパークス一味を捕らえるわ、英仏使節団を拷問に掛けて死者まで出すわ、ちょっとやり過ぎてしまいます。面子丸潰れの英仏軍は大艦隊を再編成し、当初の3倍を越える約1万7千人の大軍となって天津に戻って来ましたから、皇帝は腰を抜かして北の熱河に逃げ出してしまいます。こういう長い長い前置きがあって、1959年の10月18日、英軍は使節団殺害に対する報復として円明園を大規模に破壊したというわけです。どうやら英国軍が乱入する前に仏軍の兵隊が一足先に円明園で掠奪していたというのが真相らしい……。というわけで、今回の競売に出品されたネズミとウサギは、どちらの国の軍隊が略奪したのかは分かりません。しかし、英国ならば「使節団殺害」に対する報復だったと言い張りたいでしょうし、仏国だったのなら飽くまでも「宣教師殺害」に対する報復だったと言い張るでしょうなあ。

チャイナの買い物 其の参

2009-03-04 18:51:16 | 歴史
■2月19日にチャイナの弁護団がフランスの司法当局に「競売」の差し止めを申請していた件は、23日にパリ市内の裁判所で行われてあっさり棄却されてしまいました。 

2009年2月24日、中国国家文物局は、清朝末期に北京の円明園から英仏連合軍に略奪された動物像をめぐり、競売中止の申し立てが棄却されたことを受け、「国際社会の協力を仰ぎたい」とする声明を発表した。人民日報が伝えた。国家文物局は声明で「中国人民の正当な要求が尊重されることを願う。中国政府は断固として競売の反対を表明する」と改めてその立場を強調。「違法に流出した中国の文物を他人の金儲けの道具にしてはならない」と強く反発した。

■珍しく?真っ当な意見が述べられているようですが、チベットから持ち去られた大量の金銀財宝についても、同じ主張を受け入れるのでしょうか?やっぱり、チベットは歴史的に元々チャイナの一部だったのだから、国内での文物の移動でしかない、などという木で鼻を括ったような話になるのでしょうなあ。チベットの仏像などから剥ぎ取られた金や銀は略奪後に溶かされてしまい、跡形も無いそうですから、「競売」にさえも掛けられません。今は禿山になってしまった原生林から切り出された大木の山も何処に行ったのやら……。本当に「国際社会の協力を仰ぎたい」とチベット人やウイグル人は思っております。


また、パリの裁判所が棄却の理由を「法的に問題ない」としたことは、95年に採択された盗難文化財の返還に関する国際条約「ユニドロワ条約」に反すると指摘。所有者のピエール・ベルジェ氏が「ダライ・ラマ14世をチベットに戻すこと」と政治的な条件をつけたり、高額での買い取りを要求したりしたことを非難した。

■「盗難文化財」として扱え!ということは、相手を盗っ人呼ばわりしているわけですが、これを始めると気が遠くなるような「水掛論」になります。どうやら、チャイナ側としてはチベット問題に言及されたことを看過するわけには行かない事情があるようです。取ってつけたように「国際社会の協力を仰ぎたい」などと言い出しても、国際世論の多くはノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ法王に同情的ですから、こちらの要請も本気ではなかったのでしょうなあ。


競売にかけられるのは、円明園から英仏軍の略奪を受け流出した「十二支像」のうちのネズミとウサギの2体。中国の弁護士約80人が競売の中止を求め、パリの裁判所に提訴したが、裁判所は23日、訴えを棄却する判決を下した。競売は現地時間の25日午後7時から行われる。(翻訳・編集/NN)
2009-02-25  Record China

■「弁護士80人」とは、世界を傍若無人に駆け巡った聖火防衛隊よりも規模が大きくなっておりますぞ。自国内ではマトモな弁護の仕事が無いから暇だというわけでもないのでしょうが、それにしても何かと言うと人海戦術に訴えるお国柄は相変わらずのようであります。

■さてさて、問題のブロンズ像は2体と言っても頭部のみのようです。どうせ運び出すのなら、どうして全体像を無傷で持ち去らなかったのか?公開された写真から類推すれば、首を叩き落して掠奪したとしか思えません。歴史、特に戦争には当事者双方に言い分が有るものですが、円明園の焼き討ちは英仏側にとっては「報復」だったことになっております。そして、実に興味深いことに、この事件にはアテネのパルテノン神殿からレリーフを剥ぎ取った張本人の名前も出て来るのであります。日本では役人の天下りが非難の的ですが、大英帝国時代には貴族階級のジェントルマンが、世界中を引っ掻き回して巡り歩いた模様ですなあ。

チャイナの買い物 其の弐

2009-03-04 18:43:48 | 歴史
■3月になってから、俄かに注目されるようになった感のある落札されたウワギとネズミのブロンズ象でありますが、既に2月の下旬から怪しい雲行きになっておりました。それも「チベット」絡みの口喧嘩も混ざっているので、短時間のうちに政治問題に発展してしまいました。前回の話題として英国とギリシアとマケドニアの問題を取り上げましたが、考えてみれば中華人民共和国と、モンゴル帝国から正式にカーン位を継承して女真族が建てた清朝とは何の関係も無いようなものなのですが……。

2009年2月23日、1860年に英仏連合軍の略奪を受け流出した北京・円明園の十二支像のうち2体がパリで競売にかけられることになり中国側が返還を求めている問題で、所有者のピエール・ベルジェ氏は「ダライ・ラマ14世をチベットに戻すことが条件だ」と話した。……ベルジェ氏は「チベットに自由を与え、ダライ・ラマ14世を彼らの領土に返すこと」を条件とし、中国政府がこれを守れば「喜んでお返しする」と話した。これに対し、環球時報は「馬鹿げた恐喝行為」と一蹴。文物の返還問題に「政治的色彩を加えた」と痛烈に批判し、「現地のフランス人も不快感を示している」などとけん制した。……

■ピエール・ベルジェという人は、2008年6月1日に死去したイヴ・サンローラン氏の長年のパートナーで、サンローラン社の会長も務めた人ですから、同氏の遺品を何処かに寄贈したり返却するのが惜しいという訳ではなさそうです。まあ、多少の嫌味を込めて「ダライラマ法王の帰国」に言及したのでしょうが、時期としては最悪でしたなあ。傍迷惑以外の何物でもなかった世界を巡る聖火リレーなどという過剰宣伝で顰蹙を買った苦い思い出が蘇ります。あの時、フランス大統領のサルコジさんも、いろいろと御苦労なさいましたなあ。


上海欧州学会の張祖謙副秘書長もベルジェ氏の発言に「全く筋が通っていない」と反論。「フランスは当時、中国から文物を略奪し殺人や放火を行った。これらのどこに人権が存在するのか」と話した。競売に掛けられるのはウサギとネズミの頭部の像。25日(現地時間)から開始されることになっているが、これに強く反発する中国の弁護団が19日、仏司法当局に差し止めを申請。その審理が23日(同)からパリ市内の裁判所で行われる。
2009年2月24日 Record China

■こうしたフランスとチャイアンとの間で火花が飛び始めたことを正確に報道した日本のメディアはほとんど無かったような気がします。ブランド好きが多い日本のことですから、サンローランの遺産が競売に掛けられるという話は、ちょっと物欲しそうな雰囲気で小さく報じられていたようではありますが……。北京市内の円明園は観光スポットになってはいますが、瓦礫が転がる廃墟同然ですから往時を偲ぶのにも相当な専門的な知識が必要だそうですなあ。チベット留学時代には否応なく短期間の滞在を余儀なくされた北京市ですが、旅限無はほとんど観光名所巡りなどしなかったので、ガイドブックの写真くらいしか見ておりません。でも、『円明園炎上』とかいう名の古い映画がVCDになっていたのを中古で購入しましたので、多少は歴史的な興味の対象にはなっております。

■清朝の全盛期を作った康熙・雍正・乾隆の三帝時代にほぼ完成したと言われる宣教師が設計した噴水などの設備を持つ美しい庭園だったそうですが、今は無惨な廃墟になっております。さてさて、正確に言えば今の状態になったのは文化大革命時代の破壊によるもので、今回の騒動の発端とされる1856年(咸豊6年)に勃発した第二次アヘン戦争とも呼ばれるアロー号事件では、確かにフランス・イギリス連合軍が乱入して破壊と略奪の限りを尽くしたことになっております。しかし、投入された軍隊の規模と庭園の規模とを比較すると、廃墟にするのは難しかったかも?その後も「義和団事件」などの騒乱が起こる度に破壊されたそうですから、アロー号事件の際に廃墟になったわけではなさそうです。そして今の風景を作ったのは文化大革命だったというオチが付くというわけであります。

■欧州列強がやった事は凄まじいの一言に尽きますが、何でもかんでも大日本帝国を悪役にして騒ぐのを中断して、他国や自国の「正しい歴史」を学び直すよい機会になれば幸いなのですが……。因みにチベット地域で行われた解放(侵略)戦争から文化大革命までに破壊されたままの寺院の跡は各地に残っておりますから、その光景を知っているチベット人が円明園の廃墟を見れば何かを感じられるのかも知れませんなあ。

チャイナの買い物 其の壱

2009-03-03 16:01:23 | 歴史
■歴史遺産の帰属と返却に関しては様々な問題がありますが、衆人環視の世界有数のオークションという場所で競り落としておいて、「元々は自分も所有物だからカネは払わんぞ!」と開き直るという荒業を使えるのは、チャイナの成金ぐらいなものでしょうなあ。この騒動を検証する前に、有名なギリシア・アテネのパルテノン神殿から剥ぎ取られたレリーフの問題を検証してみましょう。
 
■1980年代にギリシアの文化大臣を務めていたのが世界的大女優のメリナ・メルクーリさんで、『日曜はダメよ』という名作を筆頭にカンヌ映画祭などでも高く評価されていたネームバリューを活かして英国に対して正式な外交ルートを通して「お返し願いたい」と申し入れたのは有名な話。結局は保管している大映博物と英国政府から「お返し出来ません」との丁重な返答が送られてレリーフは返還されなかったようですが、メルクーリさんは欧州や日本で文化活動を展開して立派な業績を残したのでした。英国もひやりとしたことでしょう。18世紀と19世紀は欧州列強が古代文明の発掘に熱心で、大物狙いの競争が繰り広げられまして、エジプトやメソポタミアは文字通りの草刈場と化して考古学的なデータも取らずに強盗さながらに獲物を求めてあちこち掘り返してしまい、中には輸送中に壊れたり水没したりした貴重な品物もあったくらいです。有名なシュリーマンも相当に乱暴なことをやったそうですからなあ。

■何せ当時はオスマントルコ帝国が健在でしたから、エジプトもメソポタミアもスルタンの一筆を貰えば掘り放題だったようです。問題のレリーフにしても、英国のエルギン伯爵がスルタンの「勅旨」を受けて持ち返ったのだ!というのが英国側が主張する話の基盤になっているのです。後は取って付けたように「保管技術が優れている」だの「大英博物館は無料で公開している」だの、手前味噌な自画自賛が並べられたようです。それに対してギリシア側としては、スルタンの「勅旨」は偽物である可能性が高いぞ!という英国にとっては致命的なところを突きながら、大英博物館に負けない保存専用の施設を作るから返しておくれ、と食い下がったのだそうです。

■実は持ち帰ったレリーフを英国の誰かさんが乱暴に洗ってしまったので既に作品は変質してしまっているという事実を英国も認めざるを得ず、忸怩たる思いで「その点は謝罪します」と頭を下げた上で、改めて返却には応じられないという話になったようです。まあ、その後EU統合の時代になってしまいましたから、英国とギリシアの間で喧嘩をしても詰まらないという大人の政治決着となったようですが、欧州各国が保管している膨大なコレクションを持ち出した場所に返還するなどという事にでもなったら大変でしょうからなあ。

■更にややこしいのは、古代ギリシアと今のギリシアとはどれほどの結びつきが有るのか?という非常にややこしい問題があります。ユーゴスラビアが崩壊してあれよあれよと思う間に分裂独立が起こって「マケドニア共和国」も1991年に独立したのでした。しかし、マケドニアと言えばアレキサンダー大王が生まれた有名な国ですから、武力で占領されたとは言え大王の家庭教師がアリストテレスだったなど因縁深いギリシアとしては、古代マケドニア王国の領地を自国領に含んでいることもあって、「マケドニアという国名」を奪われたような気がするのでしょう。ヴァルダルやらスコピエなどの地名で呼んでいるそうです。国旗も古代マケドニアに由来するデザインになっているのが気に入らないそうで、今でも文句を言っているのであります。

■マケドニア側としても、アレキサンダー大王の時代は「今は昔」の話で、大王の帝国が分裂した後、スラブ人が続々と南下して定住して混血が続いた上にキリスト教化も進みましたから、古代マケドニアとの縁は薄くなったなあと思っているかも知れません。でも、世界的に知られている「歴史的な地名」ですから、観光産業や国際親善のためにも有効利用したいところでしょう。文句を言っている方のギリシアとて、アテナイやスパルタの面影などは神殿の遺跡くらいしか残っていないわけでして、長い長いトルコ化の歴史、その前にはビザンチン帝国のキリスト教文明化がありましたから、アレキサンダー大王の時代にまで遡って「マケドニア」の国名を商標登録みたいには扱えない弱みはありそうです。

■パルテノン神殿のレリーフに関して、さらに詳しいことを知りたければ、以下の本などが参考になるでありましょう。
パルテノン・スキャンダル (新潮選書)
朽木 ゆり子
新潮社

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歴史バネの反発 其の弐

2008-12-25 09:59:08 | 歴史
■「100年に1度」の金融危機が荒れ狂っている時期に、何かと「歴史の節目」が大好きなチャイナでは、改革開放30年周年を何が何でも大成功だった!と言わねばならない儀式が開かれました。胡錦濤主席は、延々3時間を越える大演説を敢行したとか……。一党独裁体制の国家は全ての権力を一手に握っていなければなりませんから、その親玉ともなると大所高所から天下国家を論じながら、社会の隅々まで目が届いている事を強調するために細々した事象まで取り上げて語り続けなければなりません。

■旧ソ連時代のフルシチョフ書記長などは、短いスピーチで3時間、公式の演説ともなれば8時間を越えるのも珍しくなかったと言いますし、全盛期のカストロさんなどは豪雨の中で2日間も吠えるように演説を続けたという話もありますから、歴史的な演説が3時間程度で終わったのなら、それも改革開放が進んだ証拠なのかも知れませんなあ。でも、小平が開いたパンドラの箱から飛び出した困った歴史的遺産の矛盾や不満は増え続ける一方のようですなあ。


2008年12月18日午前、北京市の人民大会堂で「中国共産党第11回中央委員会第三次全体会議」の改革開放30周年を記念した式典が行われ、胡錦濤国家主席は「改革開放30年の歴史を総括すると、『10項目の結合』に要約される」との重要講話を発表した。……「10項目の結合」とは、「4つの基本原則(社会主義を堅持するなどの原則)と改革開放を結合し、経済発展を中心とした改革開放の正しい方向を維持する」「社会主義の基本制度と市場経済を結合し、社会全体に発展・改革の創造力をみなぎらせる」「自主独立と世界経済への参画を結合し、国内外2つの大局を統一的に計画・運営し、人類の平和と発展に貢献する」など。

■単なる偶然なのでしょうが、11月5日に中国国務院の常務会議で決定された内需拡大策も「10項目」でした。内容は低所得者層向けの賃貸住宅の建設促進や農村のインフラ建設、鉄道建設、国民の所得増、銀行の融資制限撤廃などが列挙されたもので、その予算規模は「2010年末までに4兆元(約57.5兆円)」を投じる!という空前絶後。驚天動地の大盤振る舞い。2兆円をぱらぱらと国内にばら撒けば景気が回復するんじゃないか?などと考えている日本とは比較にならない大規模な政策群で、その策定と発表の早さも世界を驚かせました。少しばかり楽観的なエコノミストは、中国国務院の対策と米国の新大統領オバマ政権が打ち出す対策が連動すれば、世界的な金融危機も終息に向かうのではないか、と考えているとか……。

■近頃のチャイナは「10項目」が好きなようで、五輪大会が終わった北京市で始まった交通規制も「10項目」。10月11日から自動車ナンバープレートの末尾の数字による運転日制限という強引な奇策を試し始めたそうです。来年の4月10までが試行期間だそうで、規制の範囲は市内の五環路以内、時間は6時から21時までとされています。交通管理部署が発表した運転規制時に外出する際の利便性を高める措置として発表されたのが「10項目」。毎日の車両交通量が約80万台減って、五環路以内の道路交通量は6.5%減るだろうと見込まれるているのだそうですが、既に偽造ナンバープレートが出現しているような気もしますなあ。

■「上に政策あれば、下には対応策がある」というお国柄ですから、強烈な政策を打ち出しても、下々に行き渡らせる段階では相当に薄味になっている場合が多いようです。上の方では事ある毎に「社会主義」を標榜しても、既に人民の心は社会主義から離れているのは間違いないようですから、「項目」ばかり増やしても思い通りに事は進まないでしょうなあ。


さらに、胡錦濤主席は「10数億人の人口を擁し、発展途上にある社会主義大国であるわが国は、30年間で貧困からの脱出、現代化の促進など、社会主義の固定化と発展という貴重な体験をしてきた」と語った。
12月19日 Record China

■今の状態を「貧困からの脱出」と呼ぶのなら、日本以上の格差社会となったチャイナの貧困層はこれからもどんどん増え続けるでしょう。軍事以外の領域では「現代化」の促進は政府が自画自賛するほど進んでいないような気がします。現代的な社会インフルが整備されつつあるのは広大な国土の極一部、沿岸都市の限定された地域だけが突出しているだけに、残された貧困地域の広さは圧倒的な存在感を持っております。本当に「社会主義の固定化」が実現したのは、胡錦濤主席が強調するこの「30年間」ではなく、それ以前の毛沢東時代と文革時代だったはずです。その後の小平時代に始まった改革開放政策が、「社会主義の固定化」だと強弁するなら、そんな社会主義は要らない!という叫びが国中に満ち溢れそうですなあ。


……共産党・政府は18日、北京の人民大会堂で、1978年にスタートした改革・開放路線の30周年記念式典を開催した。胡錦濤国家主席(党総書記)、温家宝首相ら党政治局常務委員9人全員が出席したほか、江沢民前国家主席、李鵬元首相、朱鎔基前首相ら引退した指導者も姿を見せた。……胡主席は、改革・開放以後の中国の発展について「年平均9・8%の経済成長を達成し、世界第3位の貿易大国となり、世界が注目する新しい偉大な成果を挙げた」と高く評価する一方、「党と政府の活動に欠点や不足もあり、人民が満足していないところも少なくない」と指摘、貧富の差の拡大など問題が存在していることを認めた。その上で、社会の調和を促進し、共産党設立100周年(2021年)の際に「より高い水準の小康社会(ややゆとりのある社会)」を実現するとの目標を掲げた。

■「調和」の後は「小康社会」が出現するのなら、あまり活気のある世の中にはならないかも知れません。何が何でも一党独裁の政治体制を維持しようとすれば、党が打ち出す方針や政策に欠陥が有っても、決してそれを認めずに更なる方針を接木し続けねばなりません。常に前政権の正当性を認めつつ、長い目で観れば明らかに前後が矛盾しているような政策が繰り出されて露骨な対症療法が施されます。海外から「世界最大のマーケット」を餌にして投資を呼び込んで、二桁の経済成長を続けられたのは奇跡と呼んでも良さそうですが、何かと目詰まりが多い社会システムが邪魔をして、地域間格差が広がり続けるのを防げない政府は、実際のところ「結党100周年」まで現体制が維持できるなどとは考えていないのではないでしょうか?


胡主席はまた、共産党による指導体制の重要性に繰り返し言及し、「軍に対する党の絶対的な指導により、軍隊と国防建設などで重大な成果を挙げた」と強調した。知識人たちが最近発表した、「共産党一党独裁の廃止」や「軍の国家化」などを求める「08憲章」が一般市民に浸透するなど、共産党の求心力が低下していることを意識した発言とみられる。……
12月19日 産経新聞

■突如として出現した「08憲章」は、14世紀の英国で造られた『マグナカルタ』を思い出させるような文書であります。昔の中国共産党なら草の根分けて関係者を探し出し、冤罪を含めて少し多めに逮捕して見せしめの公開処刑に持ち込むところでしょうが、今のところは昔の流儀は使わない方針のようですなあ。これも五輪効果の一つなのでしょうが、いつまでも爪を隠しているとも思えません。人民解放軍が既得権を奪われるのではないかと、少しでも不安になれば党の指導に従わずに動き出す危険性もありそうです。

■いつまで党と軍との関係が現状のままで続くのか?革命軍として誕生した人民解放軍は、建国の後は国共内戦・朝鮮戦争・チベット解放(侵略)戦争・中印戦争・中ソ軍事衝突・中越戦争……と、次々と対外戦争に動員され続けましたが、第二次天安門事件では人民に銃口を向けて達成したのが「社会主義の固定化」というものなのかも知れません。革命を起こした後は、革命国家を防衛するのが革命軍の任務ですが、いつの間にやら領土拡張を目的とした帝国主義時代の軍隊と同じ仕事をするようになるのは皮肉な話であります。

歴史バネの反発 其の壱

2008-12-15 11:23:36 | 歴史
■政治家が地元選挙区に戻って「政治活動」に忙しく走り廻る週末、政治関連のニュースがぱったりと無くなる頃を見計らったかのように、昨夕、麻生コロコロ首相が緊急記者会見を開きました。宿敵の野党からばかりでなく、身内からも好き放題に批判され始めて首の辺りに冷ややかな風を感じる師走の中旬であります。

……新たな雇用対策などを盛り込んだ23兆円規模の「生活防衛のための緊急対策」を発表した。首相は「3年後の消費税引き上げ」を税制改正の道筋を示す「中期プログラム」に盛り込む考えを強調した。対策には概算要求基準(シーリング)の枠外となる1兆円の「経済緊急対応予備費」が盛り込まれ、小泉政権以来の財政再建路線を転換することが明確となった。……首相は「100年に一度の危機だが、被害を最小限に抑えることは可能」と緊急対策に理解を求めた。……
12月12日 毎日新聞

■対策の中身は「公共事業や・宅減税による10兆円」と「金融対策13兆円」の2本柱だそうで、年明けまで凍結状態の第2次補正予算と09年度予算に振り分けて組み込むとのことです。それなら補正予算の意味が無いではないか!と怒る気にもなれないほど麻生コロコロ内閣は憐れを誘う崖っぷち状況ですなあ。連立与党の公明党から「来週の身も分からないのに3年後の話などするな!」と冷たく突き放されている麻生コロコロ首相ではなりますが、日本経済を「全治3年」との見立てを発表したのは早かったのですし、何よりも今回の金融危機を「100年に一度の危機」と受け止めたのも正解だったと言えましょう。

■米国発の「金融危機」に関するマスコミの解説や特集が、先の「世界大恐慌」と安易に比較して悦に入っているような態度がずっと気になっていたのですあります。田原総一郎さんなどは、盛んに「恐慌+政済界の醜聞+テロ」の三点セットから軍靴の響きが聞こえて来る、と警鐘を鳴らしているようです。国際金融は当時とは比較にならない複雑さと速さを持っていますし、過去の反省から生まれた各種国際機関が存在しているので、このまま「ブロック経済→軍事侵攻→世界大戦」という単純な進み方はしないとは思いますが、歴史には繰り返されるある種の必然性が潜んでいるのも確かですから、様相は違っても似たような結果を生む動きが出始めているのかも知れません。

■先の「世界恐慌」が起こったのは帝国主義時代の末期に当たっていましたから、世界の大半は植民地だったのです。第二次世界大戦が勃発した段階で、国家と呼べる政体は欧州を中心にたったの「66箇国」しか無かったのです。つまり、現在の国連加盟192カ国の3分の2は、「世界恐慌」に対処した経験を持っていないのです。勿論、大戦後に独立した比較的新しい国家にも立派な研究者や政治家がたくさんおりましょうし、他国の歴史に通じている識者も多いでしょう。しかし、実体験として「100年に一度の危機」を知らないという歴史的事実は、これから年明け早々にも何らかの影響を及ぼし始めるのではないでしょうか?

■世界でも珍しいとても長い歴史を持っている日本国は、世界恐慌も骨身に浸みるほど体験しておりますし、第二次世界大戦を太平洋に広げる役目を果たしてもいます。欧米の経済学者や歴史学者の研究も大いに参考にした世界恐慌に関する書籍も豊富に揃っているのですが、つい最近まで義務教育の歴史教育から現代史が抜き取られるという奇怪な現象が続いていたので、「世界恐慌って何?」などと恐ろしい事を口走る若者が大量に発生しているのは心配なことではあります。

■要するに、1920年代の世界大恐慌を経験しなかった「国家」が、今の世界には100以上も存在しているという事を踏まえて、今回の金融危機を乗り切ろうとする世界各国の動きを見なかればならないということです。


世界的金融危機のあおりで多くの工場が閉鎖に追い込まれた中国広東省東莞市の玩具工場で25日、出稼ぎ労働者が解雇に伴う補償金が少ないとして事務所のコンピューターなどを破壊した。地元紙は警察車両数台も破壊されたと報じた。……工場は香港系で玩具を米国や日本などに輸出。約7000人の労働者のうち500人以上の解雇を決め、一律770元(約1万円)を補償金として支払う方針を提示した。労働者側は金額が労働契約法の規定に基づかず不当に安いと主張。工場内での抗議の座り込みが治安要員に排除され、反発して事務所を襲撃した。工場側は騒動を受け、26日、補償金額を引き上げることに同意したという。東莞市では10月、大手玩具メーカーの工場が閉鎖され、失業した労働者数千人が未払い賃金の支払いを求めてデモを起こした。
11月26日 産経ニュース

■社会主義を標榜する国には失業も不況も恐慌も起きず、国民の福利厚生は至れり尽くせりで、常に世界平和のために努力し、環境問題にも真剣に取り組んでいる。そんな絵空事が広く信じられていた時代もありましたなあ。先の世界大恐慌の時代、チャイナはどんな状況だったかと言うと、1925年に孫文が死去して事態は一挙に流動化し始めて地方軍閥が林立し、孫文の直系を自認する蒋介石が1927年に上海でクーデターを起こして国共合作が破れて大混乱になります。ドイツとソ連と米国の支援を受けて蒋介石は北伐を開始し、満洲では張作霖が爆殺され、苦境に立たされた共産党は各地にソビエト区を建設して持久戦に入ります。世界大恐慌が起こった頃は、蒋介石の国民党軍と毛沢東が実験を握る前の共産党とが血みどろの戦いを展開していたのでした。

■マルクスが想定した近代工業国家の労働者が団結して資本家を倒して誕生するはずの社会主義政権が、貧困と戦乱に苦しむ巨大な農業国家に出現するという椿事が起きる20年前に当たる年に、世界恐慌が起こったのでした。ですから、チャイナの政府も国民も世界恐慌を体験していないも同然で、更に中華人民共和国政府が成立した後、社会主義洗脳教育が進められたので、もしも再び世界恐慌が起こっても、社会主義国である限りは大丈夫だ!という何の根拠もない安心感?が定着してしまったとか……。社会主義国家で、これから本物の失業問題が深刻化して労働争議も多発して行きそうなのですから、何とも皮肉な話であります。

■このお話の続きは、数日間の雑用が済んでからになります。

歴史は繰り返す? 其の壱

2008-11-04 02:11:19 | 歴史
■麻生総理は日本経済の現状を「全治3年」と診断していたのは総裁選前のことだったはずで、それが素人の誤診だったのか、名医の正しい判断だったのか?日経平均株価は10月27日にバブル経済崩壊後の安値7603円(2003年4月28日)を割り込み、翌28日には一時7000円を下回るという歴史的な事件が起きまして、各種雑誌には「全治5年」やら「10年間の不況」やら、麻生診断とは違う意見が提出されているようです。その後、日本の外を意識して世界経済の惨状を「100年に1度の暴風雨」と表現した麻生総理は、国内向けの緊急経済対策を発表しまして、「赤字国債は出さない」と断言した上で「3年後に消費税を引き上げる」と付け加えたところを見ると、最初の見立ては正しかったと今でも考えているようであります。

■解散総選挙の方も、某新聞社の勇み足報道から10月だの11月だのと、候補者にとっては気が気でない憶測記事が次々と現われましたが、麻生総理は「解散のカの字も言った覚えはない!」と発言し、自民党幹部の誰かさんは狼少年扱いされて権威が失墜したそうな……。とは言っても公明党のエライ人から「誰のお蔭で総理になれたと思っているんだ?」と鍛え抜かれた声で怒鳴りつけられれば、このまま解散を先へ先へと延期するわけにも行かないのでしょうなあ。

■解散するために総理総裁が交代したはずなのですが、自民党が極秘に行った当落シミュレーション調査の結果が悪過ぎたので、先手必勝作戦は棚上げして、柳生新陰流の極意とも言われる「負けないコツは戦わないこと」戦法に切り替えたという説が実しやかに流されておりますなあ。


麻生太郎首相はさきに打ち出した追加経済対策の具体化と並行し、11月15日のワシントンでの金融危機に対する緊急首脳会議に出席するなど、年末に向け「麻生外交」を積極果敢に展開する。「経済」とともに得意と自任する分野で自らの指導力を内外にアピールすることで得点を積み上げ、当面先送りした衆院解散・総選挙に打って出る環境を整えていく思惑のようだ。与党幹部は首相の最近の姿勢をこう評してみせた。「『日本の総理』ではなく、『世界の総理』を目指しているようだな」……

■前のホイホイ首相も「外交の福田」を自認していましたが、北京五輪と洞爺湖サミットに関連する「記念写真」ぐらいしか残せなかったのでした。「拉致問題は自分の政権で解決」とも言っていましたし、環境問題でも「日本がリーダーシップを取る」などという恐れを知らない発言もありましたが、誰も覚えていないのでしょうなあ。どうも日本の政治家たちは、族議員の習性がこびり付いてしまうようで、財務省の役人に取り込まれると「財政通」を自称し、外務省に取り込まれると「外交の○○」を看板にしてしまうような傾向が有るようです。役人の言葉を信じ、政策作りの頼みの綱にしたばかりに「失われた10年」になってしまったという反省は何処にも無いようです。


……首相がまず自身をプレーアップする舞台に据えているのが、20カ国・地域(G20)首脳による金融サミットだ。首相は10月30日の記者会見で、米国を震源地とする国際金融危機を「100年に1度の暴風雨」とし、サミットで金融機関に対する監督、規制に関する国際協調の新たな枠組みなどを提唱する考えを表明した。中川昭一財務・金融担当相は31日……サミットで打ち出す首相の提案を「麻生イニシアチブ」と命名し、「(日本には)人材も経験も資金もある。世界での役割を果たすことができる会議と思って準備をしている」と強調してみせた。……

■ちょっと前まで、金融危機を克服するには「経験のある日本」が主導して処方箋を書くべきだ!という威勢の良い話も出ていたのは確かで、中川大臣が「人材・経験・資金」と鬼に金棒みたいな発言をするのも同じ流れに乗ったものなのでしょう。しかし、本当に人材が居るのでしょうか?バブル崩壊後に大失敗を重ねたのは事実ですが、それが世界の首脳たちが傾聴する価値のある「経験」談になるのでしょうか?そして、1400兆円とも言われる世界一の貯蓄財産が存在する日本ではあっても、今回の「暴風雨」でどれほど毀損しているのやら分かったものではありません。

■「人材」を探すにしても、少なくとも日本銀行や財務省の中には見当たらないようですから、何処から見つけ出す心算なのでしょうなあ。


サミットの中核をなす主要8カ国(G8)の議長国としての自負もあるが、自民党閣僚経験者は「首相はむしろ背水の陣でサミットに臨む気構えだ。ここで日本の指導力や存在感を示せるか否かで、解散戦略も左右される」と指摘する。……金融安定で国際社会をリードしたい首相はなおも、「成田サミット」の年内開催を模索している。

■「サミット議長国」の総理がコロコロ変わっていては、重要度が高くなればなるほど本格的な国際会議の座長役は回って来ないでしょうなあ。確かに「成田サミット」というアイデアは近年稀に見る傑作でした。無駄な儀式は省いて、続々と到着するメンバーが相手を替えながら2国間交渉を行い、面子が揃ったらてきぱきと話をまとめて決定事項の発表が終わったら一斉に帰国!その姿が世界中に流されれば、どれほど力強いメッセージになったことでしょう?でも、一度潰されたアイデアを実現しても、何だか二番煎じみたいで新鮮味に欠けるでしょうし、「選挙はいつだ?」などと出鼻を挫かれて面子が丸潰れになる危険もありそうですなあ。

守りたい日本ブランド 其の弐

2008-10-19 01:30:35 | 歴史
厄介なのはこの地域が、中国と4000キロにわたり国境を接していることだ。輸出入許可証を持たない中露のブローカーが介在し、国境での検疫体制も不十分なため、“抜け穴”から危険な食べ物が容易に持ち込まれてしまっている。

■日本向けに製造している特別に管理された生産工場でも、ややこしい毒物が混入するような国から密輸された食料など、恐ろしくて買えないでしょうなあ。まあ、食糧事情が厳しい時代を経験しているロシアですから、飢え死にするよりは……と安い物なら諦めて食べねばならない場合もあるのでしょうが……。


3年前には、中国北部の松花江沿いで化学工場が爆発し、有毒物質がロシア極東の水がめであるアムール川にも大量流出した。同市では住民が大パニックに陥り、原発事故になぞらえて「極東のチェルノブイリ」とも形容された。

■あの汚染された水はしっかり海に流れ出し、美しい流氷となってオホーツク海の岸辺に漂着しておりましたから、対岸の火事ではありませんでした。


さらに、深刻な人手不足から中国人の出稼ぎ労働者が極東地域の農業の担い手となっており、彼らが本国から違法な殺虫剤や除草剤を持ち込み、国土の農薬汚染が進んでいるという。ハバロフスク州のイシャーエフ知事は「近隣州には多くの中国人農民がおり、中国産だけでなく他州の野菜や果物もチェックしなければならない」と打ち明けた。……それでも、欧州方面からの物資が輸送費で割高になるため、市民は安価な中国産に頼らざるをえないのが実情だ。各家庭の食材の「4割ほど」(食品業者)は中国産で、もし禁輸措置がとられれば「住民の生活はすぐに麻痺状態に陥る」(外交筋)といわれ、住民のジレンマは募る一方のようだ。
2008年10月18日

■安全な日本産の食料とシベリアや樺太の天然資源とを上手に交換するような特別な関係を日ロ間で結べないものでしょうか?何だか大きなチャンスが沿海州にはありそうな気もして来ますなあ。隣国のロシア人にとって憧れの日本産ですが、そのブランドを自分の手で汚してしまう輩が跡を絶たないのは実に困ったことであります。


事故米の不正転用が明らかになった「島田化学工業」(新潟県長岡市、島田清之助社長)が、今後の事業継続は困難として廃業を決めたことが分かった。問題発覚後、菓子メーカーとの取引が停止し、経営が悪化していた。取引先の三和澱粉工業(奈良県橿原市)が設立する新会社に事業譲渡する。……島田社長から9月下旬に事業譲渡を打診されたという。11月1日に全額出資の新会社「上越スターチ」を設立し、島田化学工業の持つ米からでんぷんを製造する特許権、土地、建物などを買い取るという。譲渡額は精査中。島田化学工業の従業員33人の雇用は継続するが、現経営陣は新会社に一切関与しないという。……
10月17日 毎日新聞

■何だか社会保険庁の解体みたいな話ですが、廃業は当然でありましょう。米どころ新潟!米菓の名産地!で毒コメを原料にしてあれこれ使われる澱粉を作っていたのですから、しばらくはコメや菓子の袋に「新潟」の文字を見るとちょっと気になってしまうのは人情というものです。本物の魚沼産コシヒカリの生産量と国内に出回っている商品の量とがまったく吊り合わないという疑惑はずっと囁かれていますから、この際ですから本物の日本産、新潟産のブランドを立ち上げ直しては如何でしょう?まあ、生産者と直接コンタクトを取って買うネット販売という便利な入手方法は有るのですが……。


三笠フーズ(大阪市北区)などの事故米転売問題で農林水産省は10日、事故米などの流通先業者に対する検査マニュアルを作成したと発表した。工業用のりの原料としての売却をやめ用途を飼料用に限定。二重帳簿による不正転売を防ぐため、伝票に記された流通先業者にも立ち入り検査を実施する。……農水省が三笠フーズに96回の立ち入り検査を実施したが、不正転売が見抜けず批判が集まっていた。

■作ったのが「検査マニュアル」ですから、「事業者から飲食接待や手土産を受け取らない」などの禁止事項は盛り込まれていないようです。大阪農政事務所の元消費流通課長を筆頭にOBを含めて12人も「公務員倫理規程違反」で処分されたのですから、一応、倫理規定も入れておいた方が良いのではないでしょうか?


不正転売を防ぐため農水省は既に、残留農薬やカビ毒で汚染されるなど食品衛生法上問題のある事故米については廃棄させることを決定。水にぬれたりカビが生えただけの事故米は、飼料製造メーカーに流通させることを条件に倉庫業者に売却し、会社名や売却量をウェブサイトで公表する。流通先業者への立ち入り検査は抜き打ちで定期的に実施。加工工程や在庫確認だけだった検査に▽通帳など出入金記録▽帳簿の記録と加工された事故米の照合▽業者の加工処理能力--などの確認項目を加える。
10月10日 毎日新聞

■こんな当たり前の事をやらずに、10数年間も「事故米」を右から左に流していたとは!?ミニマムアクセス米については、保管コストが嵩んで困るという報道はありましたが、その袋の中が毒やカビだらけの米とは呼べない代物だったとは知りませんでした。でも、農水省の担当者と業者はずっと知っていたわけですなあ。知らないのは消費者だけで、中間業者は灰色から白まで微妙な悪質度のグラデュエーションがあるようですが、中には真っ黒という悪徳業者も毒ゴメみたいに紛れていそうです。あまり国内で恥ずかしい偽装や誤魔化しをやっていると、農産物輸出国になれるチャンスをみすみす失ってしまいますぞ。農水省にはまだまだ多くの問題点が有るようですが、それはまた別の機会に取り上げることになるでしょう。
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