旅限無(りょげむ)

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目出度さ少ないお正月 其の伍

2011-01-31 15:59:53 | 外交・情勢(アジア)
■菅アルイミ首相がスイスに乗り込んで「開国と絆」の初夢語りを楽しんでいる時、日本政府は予定されていた今春の首相による訪米を延期することをワシントンに連絡していたそうです。日米間の「絆」はどうなるのか?「開国」は米国との首脳会談もしないまま「6月まで」に交渉を開始してしまうのか?野党時代に国会優先を理由に閣僚の海外渡航を断じて許さなかった前科がありますから、今更、国会よりも外交が重要だ!とは言えない民主党に「国際公約」を守る能力と資格は有るのでしょうか?エライことになりそうな悪い予感がしますなあ。

菅首相は、オバマ米大統領と「今春」の開催で合意していたワシントンでの日米首脳会談を今国会閉会後の6月下旬まで延期する方向で検討に入った。……「ねじれ国会」のもと、2011年度予算関連法案の年度内成立のめどが立たないなど、国会情勢が極めて厳しいとの判断に基づくものだ。複数の政府筋が29日、明らかにした。政府はすでに、米側にも延期の可能性を非公式に伝えた。……首相訪米は、昨年11月に横浜で行われた日米首脳会談の際、オバマ大統領が「来年春に菅首相を米国に招待したい」と表明したことで決まった。首相は「招待を大変うれしく思う」と応じ、会談後の記者発表で、「来年春ごろの訪米の招待を受けた」と語った。……今年に入り、オバマ大統領の日程調整のため、5月の大型連休時のワシントンでの日米首脳会談実施に向け、非公式な打診があったという。しかし、政府内で検討した結果、5月の連休前後には国会審議と政局が緊迫し、首相が日本を離れるのは難しくなるのでは、との判断が強まった。このため政府は、「訪米延期の可能性がある」と米側に伝えたという。
2011年1月30日 読売新聞 

■鳩山サセテイタダク前首相の代から「日米同盟の深化」のお題目は継承されているようですが、その内容はさっぱり見えて来ません。米中関係の方が経済優先で深化してしまったらどうするのでしょう?折角、日本の暦に合わせて5月の連休期間に会談をセットしてくれた相手に、内政問題を理由に一旦は応じた招待を断るとは何とも失礼な話であります。ネジレ国会の原因は昨年平成22年の7月11日に行なわれた参議院選挙で菅アルイミ首相が唐突に「消費税10%」と言い出して反発を買い、思い付きで変な条件を付けて迷走した結果の惨敗によるものです。従って横浜で日米首脳会談をした11月の段階で既に「国会審議と政局が緊迫」することは分かっていたはずです。日米首脳会談が成功するように先手を打って野党にも外交責任を押し付けておけば、少しは違った対応が出来たかも?御本人は「仮免許」時代の小さな失敗だと涼しい顔をしているのでしょうが、実に見っともない話でありますぞ。

■1月20日、奇しくも米中首脳会談と世界第2位が確定した中国のGDP速報と、菅アルイミ首相の初の外交演説とが重なるという椿事?が発生。勿論、三つのイベントの中で最も小さな扱いだったのは首相の外交演説でありました。既に誰も内容を覚えておりません。


……利害調整と対立回避をせめぎ合う米中主導時代のただ中にあって、日本はまさにその風を受けて立っている。しかし、菅演説には、そんな時代認識もリーダーの矜持も見受けられず、日本国民の菅首相への視線は、冷ややかに凍り付いたままだ。(久保田るり子)……異例の外交演説は、昨年以来の対米、尖閣、北方領土問題などで批判を浴びた失地回復、仕切り直しが目的で、「複数のアドバイスに基づいた」(首相周辺)秘策だったらしい。だが、新味はなく、「日米同盟が基軸」のお題目に終始した。菅首相が掲げた外交の柱は5つ。(1)日米基軸(2)経済外交(3)アジア外交の新展開(4)地球規模課題への取り組み(5)安保環境への的確な対応-だった。しかし、演説を聞いた専門家の間ではこう揶揄されている。
『お経はよく書けているが、お布施が足りないから御利益はないだろう…』「お布施」というのは対米関係修復への処方箋、「御利益」とは同盟深化の実効性である。…… 

■ただでさえ足りない「御布施」が首相の訪米延期で目減りして、ますます「御利益」が薄くなりそうであります。外交の五大柱の第一番目が「日米同盟が機軸」ならば、沖縄の基地問題を大急ぎで解決しておかなければなりませぬ。二番目の「経済外交」と三番目の「アジア外交の「新展開」いうのはTPPを包み隠しすための抽象的な表現でしょうし、四番目と五番目になると抽象化が過ぎて何のことやら、さっぱり分かりません。これだけ具体策が見えない柱を立てておけば、大失敗した時でも何とか言い訳が出来そうでありますなあ。とても政治主導の原則に従って導き出されたものではないような文言ばかりが並んでしまいました。


……24日の施政演説でも菅首相は「日米同盟の深化」を訴えていた。いずれも普天間問題の沖縄県民へのおわびとのセット。だが振興策など具体的な内容はもちろんなく、精神論に終始。これは前原誠司外相による国会の外交演説でも共通した。「能書きはいい。全部盛り込んだ。しかし、TPP(環太平洋戦略的経済連携)への参加もそうだが、問題はどうやって実践するんですか-ということですよ。国民も経済界も冷ややかでしょ。株価もほとんど動かなかった」(外交ウオッチャー)…… 

■この数年間の施政方針演説の中でも断然、面白くも可笑しくもない演説であったことは確かで、各役所から上がって来て紙をホチキスで綴じただけと悪口を言われていた自民党末期の演説でさえも、もう少し重みがあったような……。野党の闘士として与党の弱みを攻撃することで磨かれたらしい菅アルイミ首相の舌鋒の鋭さは、国民を感動させたり、野党さえも唸らせるような演説では使い物にならないようで、逆に慣れない「低姿勢」を取り繕うと単に卑屈なだけにしか聞こえず、それが露骨になると自分でも不愉快になるらしく、自分に歯向かうことは「歴史への反逆だ!」とか何とか、つい恫喝的な言葉を選んでしまいます。国連やダボス会議だけでなく、いよいよ国内の国会でも「誰も聴いてくれない」演説をしなければならなくなりますと、恐ろしくて選挙など絶対に出来ますまいなあ。

目出度さ少ないお正月 其の四

2011-01-30 17:50:46 | 外交・情勢(アジア)
■菅アルイミ首相のスイス行きを誰も止めなかったのか?!世界に向けて読み上げる原稿を誰がチェックしたんだ!?と心配になる情報が入って参りました。

菅首相は29日昼(日本時間29日夜)、ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席し、「開国と絆」と題した講演を行った。明治維新と戦後に続く「第3の開国」を実現するため、2国間や地域内の経済連携を推進すると強調。特に環太平洋経済連携協定(TPP)に関し、「今年6月をメドに交渉参加について結論を出す」とする方針を改めて示し、「6月に結論」を出すことを事実上の国際公約とした。……日本の過去10年間の経済連携への取り組みについて、「足踏み状態にあった」と振り返り、TPPのほか、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結や、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に向けた交渉開始に意欲を示した。
2011年1月29日 読売新聞 

■菅アルイミ首相が財務官僚に手玉に取られて一人で舞い上がっていないことを祈るばかりの軽率な「国際公約」の大安売りであります。誰が総理大臣なのか分からない6月に、日本は世界から「公約違反だ!」と針の筵に座らされて小突き回されるハメにならねばよいのですが……。「過去10年間」の少なくとも最後の1年間は自分が副総理だった鳩山サセテイタダク前政権でありますから、かつての自民党政権に責任を押し付けるつもりが、逆に自らを責めることにもなるのですが、御本人は気が付いているのでしょうか?更に野党時代にはあの手この手で反対したはずの「ドーハ・ラウンド」を手品のように早期妥結させてしまう秘策でもあるのでしょうか?鳩山政権の普天間移設問題と同じように空手形を乱発して事態を大混乱に陥れ、日本の外交が信用されなくなるだけなら困ったことであります。


菅直人首相は29日、……約25分の講演は日本語で行った。……日本の現状を「国民が内向きになっている」「この10年、経済連携で足踏み状態にある」と分析し「自由貿易こそ世界と繁栄を共有する最良の手段」と主張。日本と欧州連合(EU)の間で「今年こそEPA(経済連携協定)交渉を立ち上げたい」と呼び掛け、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は「6月をめどに交渉参加の結論を出す」と説明した。国内農業への打撃を懸念する声には「日本の食文化の魅力が世界に広がることで農業は成長産業として再生できる」と強調した。外交・安全保障分野では日米同盟を基軸にする考えを改めて表明。中国とあらゆる分野で協力関係を強化する考えも示した。…… 

■欧州とも環太平洋諸国とも自由貿易交渉をまとめ、米国ともチャイナとも仲良くする。何だか「黒くて白くて丸くて三角」みたいな話に聞こえますなあ。言葉というものは実に恐ろしいもので、どんな矛盾だれけの内容でも尤もらしく表現出来てしまいます。詐欺師は上手にその言葉の性質を悪用するものですが、政治家の中にも似たような手法を使う人も居るようですし、「霞ヶ関文学」と称される役人の作文は名人芸の域に達しているとか……。「官僚なんてオオバカですからね」と菅アルイミ首相が放言した事を水に流してくれるほどプライドの高い官僚は寛容ではありますまい。意趣返しに国会や国際会議の場で総理大臣に恥ずかしい裸踊りをさせているのではありますまいな?!


また、首相は持論の「最小不幸社会」に言及し、働くことで社会とつながる「居場所と出番を得られる。この絆を復活させる」と指摘した。講演の結びでは、昨年、ノーベル化学賞を受賞した日本人2人に触れ、異なる物質を触媒で結ぶ「クロスカップリング」の技術を説明。「新たな絆で(社会を)つなぎ直す。私は日本、世界をクロスカップリングしていく」と表明した。
毎日新聞 1月29日 

■「絆を復活させる」「日本、世界をクロスカップリングしていく」。飛行機の中でも原稿に手を加えていたという御本人は大向こうを唸らせる歴史に残る名演説だと夢想していたのでしょうが、「ほほう、で、どうやって?」の一言で夢から覚めてしまいましょうなあ。事実、政権交代の最大の功労者である前幹事長のクラッシャー小沢は「居場所と出番を得られる」状態ではありませんし、菅アルイミ代表は日本と世界どころか、寄り合い所帯の民主党内でさえも「クロスカップリング」出来ておりませんぞ!与野党間の「クロスカップリング」はどうなっているのでしょう?

■そもそも、クロスカップリングというのは、結び付け難い有機物を特殊な触媒を使って結合させる技術のことだったはずです。菅アルイミ首相自身が触媒になるのなら、日本からも世界からも離れた異物となって行動しなければなりますまいぞ。絵空事を言って自画自賛している暇があったら政権政党たる民主党内でこそ「絆」をつなぎ直すべきでしょうなあ。さて、鳩山サセテイタダク前首相の「友愛」と菅アルイミ首相の「絆」との違いは何でしょう?前政権が残した最大の置き土産である沖縄の基地移設問題で「友愛」と「絆」の違いが分かるでしょうか?


前原誠司外相は29日、那覇市内のホテルで講演し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に関し、「沖縄の経済発展と普天間をリンクさせる考え方は毛頭ない」と述べ、沖縄振興策と移設問題を切り離して進める考えを重ねて強調した。さらに「沖縄経済の自律的な発展をいかにしっかりやっていくかは、沖縄県に過重な安全保障の負担をお願いしている日本全体の使命でもある」と語った。…… 

■なるほど、なるほど、「自立的な発展」の一言が「沖縄の経済発展」と「普天間基地移設問題」とをクロスカップリングしているという仕掛けですな?手品のタネは「沖縄県の過重な負担」を軽減するのは「日本全体の使命」だという理屈で、結局は自民党時代のバラマキ・ハコモノ行政にまっしぐらに戻って行くという後ろ向きの理屈のようですが……。国会冒頭で外交方針に関する施政演説「原稿」を早口で乱暴に読み上げて顰蹙を買った前原外相ですから、沖縄でも同じ事をやっただけなのかも知れません。巷間、官房長官から身を退いた仙谷ノーコメント代表代行は前原政権を実現したいのだそうですが、社会党出身の仙谷さんがタカ派とされる前原外相の後見役とは面妖な話で、本当はタカ派の皮を被ったエエカッコしいの菅アルイミ首相に負けない権力亡者なのかも?


前原氏は日米安保条約に関し、「戦後65年たち、結果的に米国に依存する安保体制になっている。日本は(他国からの攻撃で)やられたらやり返す能力はなく、米国に仕返しをやってもらわないといけない」と指摘。日本単独での情報収集能力の弱さを例に挙げ、「何から何まで米国に依存するのはいかがなものか」と語った。……
2011年1月30日 産経新聞 

■米国に依存しない反撃力と情報収集能力を日本が持つのなら、どれほどの増税が必要なのでしょう?『坂の上の雲』の時代に戻って国民は重税と貧困に耐えて健気に生きていかねばならないのか?本気で対米独立を考えるのなら、結果的に反米論者とされても文句は言わない覚悟が必要となるでしょうし、かつてワシントンに乗り込んで「中国は現実的な脅威だ」と言い放った手前、反米・反中の孤立を恐れない世界戦略を立てねば間に合わないでしょう。どうやら、前原外相の頭の中は「クロスカップリング」が成功していないようですが、御本人は整合性が取れていると考えているのなら、相当にお目出度い思考回路を持っていることになりますが……。

■国交相時代に「マニュフェストに書いてあるから」の一言で群馬県の八ッ場ダムの建設中止を宣言し、尖閣衝突事件では「逮捕しろ」と命じて後始末は全部丸ごと後任の馬淵大臣に押し付けて、自分はしらっと次期総理候補を自認し、馬淵国交相は問責決議で仙谷ノーコメント官房長官と一緒に辞任。今回も「情報収集能力」を例に引いて対米依存からの脱却!みたいな勇ましい話をしてしまい、後の責任は誰に押し付けるのでしょうなあ?

目出度さ少ないお正月 其の参

2011-01-30 16:17:41 | 外交・情勢(アジア)
■目出度い「歌会始め」の夕刻、名高い仏滅改造を断行して「最強の内閣」と得意の自画自賛をした菅アルイミ首相でありましたが、当時から森、安倍、福田の歴代3内閣が残した惨憺たる短命改造内閣の末路が先例として指摘されておりまして、その原因となった閣僚の失言・不祥事や危機管理意識の欠如などは菅アルイミ内閣でも続出していますから、短命内閣の予兆は出ていたのであります。そして、「誰も聴いてくれない」演説をしに出掛けたスイスの会議にも恐ろしいジンクスがあるのだそうですなあ。

■現職首相でダボス会議に参加したのは、森、福田、麻生に続いて菅アルイミ首相で4人目なのだそうで、思い起こせば平成12年12月に発足した森改造内閣は、米原潜の漁業実習船「えひめ丸」衝突事故の不手際などで内閣支持率は10%を割り、翌年4月に改造から4カ月半で総辞職。そして、最短記録は改造から退陣まで31日だった安倍晋三政権。それを引き継いだ福田康夫政権は20年8月に閣僚17人中13人を入れ替える大幅改造してから54日後に総辞職。麻生政権は閣僚が7人もあれこれの理由で辞任するわ、党内から麻生下ろしの自滅運動が起るわ、マスコミは野党と一緒になって「解散選挙」の大キャンペーンを張るわ、世論も何だか分からないまま「政権交代」へと引っ張って行かれる騒ぎの中で改造も出来ないまま約1年間の奮闘空しく自民党最後の内閣となったのでありました。

■2009年1月末にダボス会議に参加した麻生元首相は、(1)金融危機への措置(2)世界経済の体質・体力強化(3)地球温暖化防止について具体的な数値を示して対応策を発表し、英国首相などとも精力的に経済危機への対応を話し合っておりました。菅アルイミ首相は滞在6時間で40分間の講演と質疑応答のみが報道されているようですが……。


ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は26日、スイス東部ダボスで開幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で演説、モスクワのドモジェドボ国際空港の爆弾テロに触れ「どの国も国際テロの危機にさらされている」と述べ、テロとの戦いに向けた国際協力を呼び掛けた。テログループは大統領がダボス行きを断念すると思っていただろうが「計算違いを犯した」と明言。テロに屈しない姿勢を鮮明にした。…… 

■グローバル経済を語り合う国際会議の場を「テロとの戦い」に利用するというのは聊か筋違いのような気もしますが、平和と安全の保障が無ければ経済成長どころの話ではなくなってしまいますから、こんな利用法も場違いではないのが今の世界情勢と言うものなのでしょう。とは言うものの、日本の民主党政権が尖閣諸島での暴走衝突事件に友愛精神に満ちた「柳腰外交」で対処している足元を見透かして大統領自ら北方領土を電撃訪問してからというもの、関係閣僚や政府高官が続々と北方領土に足を踏み入れているロシアに対して、菅アルイミ首相は指を咥えているばかりというのは残念なことであります。


……ロシア経済に関しては、外国資本の投資を呼び込むため、金融部門に新たに税導入はしないなど、環境整備を図ることを約束。今年中の世界貿易機関(WTO)加盟に自信を示し、その後は経済協力開発機構(OECD)に加盟すると述べた。…… 

■日本がもたもたしているのなら、欧米諸国に溢れ返っている資金を呼び込んでエネルギー開発をどんどん進めてユーラシア大陸全体に対する影響力を増大させようとの目論見を、これほど露骨に表明されてしまうと日本外交の稚拙さが目立ってしまうでしょうなあ。


また、大統領は内部告発サイト「ウィキリークス」に関する質問に対し、「秘密の暴露によって国際関係はむしろ健全化するのでは」と答えた。……後に行われた質疑応答は、インターネットを通じて募集した質問をシュワブ会長が読み上げる形で進行。演説でもネット規制に反対した大統領は、世界中にネットが普及した現在「どんな秘密も暴露されないことはない」と明言した。ただ、ロシアに関するウィキリークスの暴露については「定期的にチェックしているが、正しいものはなかった」「ネットからの引用もあり、少しも困らない」と強調し、会場の笑いを誘った。大統領はドモジェドボ国際空港の爆弾テロ捜査の陣頭指揮を執るため、ダボス訪問の日程を大幅に短縮した。 

■強権的な世論操作や暗殺も含めたジャーナリズムに対する弾圧が日常化していれば、どんな情報が暴露されても大した問題にはならないのかも知れませんが、マフィア化された経済システムを改善しないと世界貿易機関(WTO)や経済協力開発機構(OECD)に加盟するのはちょっと難しいでしょうなあ。


ダボス会議で注目を集めたメドベージェフ大統領は、2012年春に予定されている次期大統領選に立候補するかどうかでも耳目を集めている。…… 大統領は「国や政治システムにとって、また何よりもロシア国民のために正しいと思えば選挙に出馬する」とし、「私自身がどうするかは今年決める」と明言した。さらに、不出馬を決めた場合には「そのことを隠さずに言うし、何が社会と国家にとってよりよい選択だと考えるかを説明する」と述べた。…… 

■菅アルイミ首相の去就どころか出席そのものに注目する外国メディアは無かったのではないでしょうか?日本のマスコミもサッカーや火山噴火や豪雪、更にはエリカ某の去就を取り上げる熱意の半分も首相のダボス行きに注いではいないようですからなあ。誰だった国会での下手糞な棒読み演説以上のスピーチをするとは思っていないでそうからマスコミも手を抜くのは当然かも?


……フランスのニコラ・サルコジ大統領(55)は27日、ダボス会議での講演で、食料や原油など資源価格の世界的な高騰や乱高下について「インフレを助長し、世界経済の成長を妨げるリスクだ」とし、国際社会が規制強化を目指すべきだとの考えを表明した。大統領は今年の議長国を務める主要国(G8)首脳会議と20カ国・地域(G20)首脳会合を通じ、国際的なルールづくりを各国に呼び掛ける方針。……中国の膨大な経常黒字など国際的な不均衡を解消するため、ドル基軸通貨体制の見直しに意欲を示した。ドルや円など主要通貨で構成する国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に人民元を加えて積極活用、ドルへの過剰な依存からの脱却を目指している。……
2011年1月28日 SANKEI EXPRESS 

■米国スタンダード&プアーズ社の国債格付けが引き下げられた事に関して「疎い」発言してしまった菅アルイミ首相ですから、ダボス会議でも為替に関して一言も発言しなかったとしても不思議ではありません。そもそも、「その問題に関しては疎いので……」と言うのなら、党内抗争と政権にしがみ付くこと以外で、一体、どんな問題に関してなら「疎くないんだ?」と聞きたくなりますからなあ。


藤井裕久官房副長官(78)は27日午前の記者会見で、菅直人首相(64)が28日夜に日本を出発し、ダボス会議に出席すると正式発表した。……29日午前に予定されている特別講演で、貿易自由化などを推進する「第3の開国」や国際社会における日本の役割についてアピールする。現地では各国の有識者や経済界とも意見交換を行う。30日に帰国する。藤井氏は国会期間中の海外訪問について「ダボス会議はレベルの高い方々の集まり。首相の趣旨は是としないといけない」と述べた。
1月27日 SANKEI EXPRESS

■菅アルイミ首相が出発した28日の予算委員会では、自民党・公明党・共産党・みんなの党の野党4党が欠席したまま予算案の趣旨説明が行われたのでした。「誠実な対応」「丁寧な説明」「熟議の国会」との看板は何処かに仕舞いこんでの見切り発車。相変わらず小沢問題を追及するしか能が無い野党も、マニフェストを棚上げして迷走し続ける与党も、どちらも有権者から見放されるようなことばかりやっておりますなあ。

目出度さ少ないお正月 其の弐

2011-01-30 14:14:20 | 外交・情勢(アジア)
■「誰も聴いてくらない」演説をしにスイスくんだりに出掛ける暇があるのなら、被災地の宮崎・鹿児島と県民感情が爆発寸前の沖縄を歴訪するのが今の首相の義務ではなかろうか?と相変わらず不自然なニヤニヤ笑顔で飛行機に乗り込む菅アルイミ首相の雄姿?を心細い思いで見送りつつ、読みさしの『小沢一郎の政権奪取戦略』大下英治著などを引っ張り出して、何が何だか分からなくなっている民主党政権の誕生過程を再検証している次第。訳知り顔で政治記者が書き散らす政局記事では切り捨てられることの多い各政治家の出身や経歴、そして政局の節目に取った行動をじっくりと調べて書き込んだこの種のドキュメンタリー本は時々足を止めて「そもそも論」を考えるのに大いに助けになりますなあ。

■さてさて、先に名称『首相の留守には何かが起こる』という拙文を書きましたが、やっぱり今度もお呼びでない国際会議にいそいそと首相が出掛けようとする時に北アフリカが燃え上がりました。既に現時点で米国はエジプトからの邦人救出作戦に当たる海兵隊を配置しているとの報道がありますが、我が菅アルイミ首相は雪深いスイスから、留守番役に「万全の体制を取れ」と相変わらず抽象的な指令を出しているとか……。


エジプトのムバラク大統領は29日、オマル・スレイマン情報庁長官を副大統領に、シャフィク民間航空相を首相に指名したが、多数の市民が外出禁止令を無視して大統領退陣を求めるデモを続行。軍にも市民側につくよう呼び掛けている。首都カイロ南方にあるベンスエフでは、警官隊の発砲を受けて17人が死亡。……死者は全国で100人を上回った。またカイロでも、戦車が市内の警戒に当たる中、大規模なデモが続き、夜間に入って警官による発砲が少なくとも1件報告されているほか、略奪や税務当局の建物への放火も発生。こうした状況を1989年の東欧革命になぞらえ、「アラブ世界のベルリンの壁崩壊」と呼ぶアナリストもいる。…… 

■出動した戦車の列を市民が止めている風景は「ベルリンの壁崩壊」事件よりも、同年に北京市で起った第二次天安門事件を彷彿とさせますぞ。それを最も恐れている北京政府は極力、刺激的な映像や報道を遮断するのに大童(おおわらわ)だとか……。ご苦労様なことであります。


一方、米国ではオバマ大統領が、中東戦略の要となるエジプトでの騒乱について、バイデン副大統領や国家安全保障担当のドニロン大統領補佐官と協議。クローリー国務次官補(広報担当)は、ムバラク大統領が表明した新内閣の樹立について、「人員を入れ替えるだけでは済まされない」と述べ、さらなる改革を求めた。
1月30日(日)ロイター 11時10分配信 

■ああ、オバマ大統領は世界中が耳を傾けた一般教書演説の後もしっかり米国内に居て、窮地のムバラク大統領と電話会談をして「具体的行動」を求め、海兵隊を派遣しているのでありますなあ。


エジプトでムバラク大統領の独裁政権打倒を求めるデモが激しさを増す中、反政府運動に加わっているエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長は29日、大統領が同日、スレイマン情報部長官とシャフィク民間航空相をそれぞれ副大統領と新首相に指名したことに関し、対応として不十分だと批判、「大統領と政権の人々にはできるだけ早くエジプトを去るよう求める」と述べた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラに対して語った。 
1月30日 時事通信 

■何だかフィリピンの故マルコス大統領一家がマラカニアン宮殿を追い出された事件を思い出させるような緊迫した事態になっているようですが、エルバラダイ氏はイラン革命を指導したホメイニ氏のような指導者になる心算かいなあ?スンナ派とシーア派は犬猿の仲であっても同じイスラム教徒ですし、エジプト国内にも原理主義者が増加中のようですからエジプト版のイスラム革命が起るのかも?余り過激な変動があると隣国のイスラエルが過剰反応する危険がありますなあ。


日本政府は29日、エジプト滞在中の邦人旅行者らを帰国させるため、チャーター機を派遣する検討に入った。菅直人首相は同日、ダボス会議出席のために訪問中のスイスから前原誠司外相と枝野幸男官房長官に電話をかけ、「万全の対応をとるように」と指示した。前原氏は同日夕、訪問先の那覇市で記者団に対し、奥田紀宏駐エジプト大使から電話で邦人退避のためのチャーター機派遣の検討を要請されたことを明らかにし、「必要になった場合には対応できるように準備を指示した」と述べた。前原氏によると、エジプトに滞在する邦人は、旅行会社の団体旅行客だけでも2300人超。枝野氏は同日、首相官邸で記者団に対し、邦人の安否について、「悪い情報はない」と述べた。 

■湾岸戦争などで米軍に邦人救助を頼もうとした日本政府が、米軍の救出マニュアルで安全保障条約の相手国とも思えぬ優先順位が最下位になっている事実を知って仰天したという話がありますから、邦人救出は自力で行なう覚悟は必要でしょうなあ。それとも、今回もトルコに100年以上も前の「エルトゥールル号」の恩義を頼りにして助勢を頼むのなら、スイスからの帰路を変更してトルコに立ち寄って万が一の話をしておいても良いかも?


……外務省は同日午前、「中東・北アフリカ情勢に関する緊急対策本部」(本部長・前原氏)を設置して初会合を開いた。会合では、邦人保護などについて協議し、エジプト全土への渡航延期や滞在中の邦人に国外退避を勧める「危険情報」を出した。また、前原氏は同日昼から1泊2日の日程で沖縄を訪問していたが、同夜開催された2回目の対策本部の会合に出席するため、急遽、日程を短縮して帰京した。菅直人首相は同日、スイスで開かれているダボス会議の講演で、「ムバラク大統領は改革をすると言っている。多くの国民と対話して国民が広く参加する政権をつくり、市民生活の平静を取り戻すよう期待している」と述べた。
1月30日 産経新聞 

■菅アルイミ首相は「多くの国民と対話して国民が広く参加する政権」などと、ゴミくずになったマニフェストに書いてあったような文言を臆面も無く使っておりますが、自国の沖縄県普天間・長崎県諫早・群馬県八ッ場など国民との対話を「有言実行」すべき場所はたくさんありますぞ!ご自身の選挙基盤である西東京でも選挙に負けるくらい「誰も聴いてくれない」演説しか出来ない寂しい立場になっているのは承知してはいますが……。それにつけても、首相が留守でも大して政府は困らないという現実は一体、何を意味しているのでしょうなあ?

小沢一郎の政権奪取戦略
大下 英治
河出書房新社


目出度さ少ないお正月 其の壱

2011-01-30 12:19:49 | 外交・情勢(アジア)
■AFCアジア・カップの決勝で日本チームが強豪オーストラリアを破って優勝しました。3点~5点取られても文句は言えない高さと距離の猛攻を耐え忍んでの勝利。値千金のボレー・シュートは芸術的でさえありましたなあ。誠に目出度い出来事であります。用も無いのにスイスに出掛けて「誰も聴いてくれない」退屈な演説をして寂しい自画自賛の菅アルイミ首相が強引に自分も「持っている」とか何とか、変な勘違いをしない事を祈るばかりでありますが……。

■昨年の国連総会で演説中に閑古鳥が鳴いて大恥を掻いてしまった失態から、一体、何を学んだのからは存じませんが、今度は切り札の「国際公約」を口走ったそうですなあ。選挙用マニフェストを紙くずにした総理大臣が、国民から総スカンを喰った腹癒せに?世界に向けて「公約」を発表しておいて、帰国後の国会で「国際公約に反対する野党は国賊だ!」とか何とか筋違いな恫喝の道具にでもするつもりなのかも?首相がスイスのダボス会議に出席すると言い出したのはテレビ朝日の『報道ステーション』に生出演して12~14%の平均視聴率を半分に落として大恥を掻いた1月5日前後だったようです。当時から通常国会の召集直後に呼ばれてもいない国際会議にのこのこ出掛けて行くなどという話は悪い冗談としか受け取られていなかったようであります。

■その後、「与」党と「野」党の間で「謝」罪して回る憎まれ役を決して健康体ではない与謝野さんに押し付けるのに成功したと、これまた自画自賛の材料にしている節のある菅アルイミ首相には、怖いものなど無くなってしまっているようで、ブログに取り上げるのも気が退ける醜態としか見えない開き直りの態度で支離滅裂な発言を重ねていた菅アルイミ首相でありました。

■そんな首相が素人でも役人に書いて貰ったと露骨に分かる原稿を棒読みと言うのもおこがましい、実に稚拙な読み方で「誰も聴いてくれない」施政方針演説を行なったのでありました。抽象的な言辞で飾り立てただけの空しい作文の中で、国づくりの三つの理念として
〈1〉貿易自由化を柱とする「平成の開国」
〈2〉社会保障の充実などによる「最小不幸社会の実現」
〈3〉政治改革などの「不条理をただす政治」を示し、与野党協議の必要性を強調下のでありますが……。

■政権交代を果たした新政権は、必然的に前政権の負の遺産をしっかりと継承してこれを正しく清算しなければなりません。野党時代の政府の悪口さえ言っていれば済んだ気楽な立場を卒業できず、一足飛びに夢や理想を実現しようなどという乱暴で幼稚な行動に出るのは国を危うくする愚かなことなのに、鳩山サセテイタダク前首相は日米間の約束事を一方的に白紙に戻すという北朝鮮みたいな乱暴な挙に出て大火傷を負って退陣し、更に自党が作った政治的負債まで背負い込んだのが菅アルイミ内閣であったのでしたが、民主党という統一された政党など存在しないかのように、小沢・鳩山両グループを目の仇にして中世欧州の魔女狩りか悪魔祓いみたいに、脱小沢に成功すれば自民党政権時代の負債が消えてなくなり、脱鳩山に成功すれば嘘で固めたマニフェストの呪縛も解けてしまうとでも思っているかのようですなあ。一種の神憑りと申しましょうか?幻聴や幻覚に導かれるパラノイア状態とでも呼びたくなる不気味な1月でありましたなあ。

■三つの柱は正しく自民党政権が続けた失政が生んだ国家的危機を打開する方策でありましょう。自由貿易に関する国際協議を常に農業保護を名目にぶっ壊し続ける一方で、莫大な農業予算を土木工事に注ぎ込んで保護すべき農業を衰退させた失政を適格に批判して改善するのが新政権の使命であり、その施策に国民の支持が集まってこそ「平成の開国」も成功するのではないのでしょうか?農協という巨大な歴史的負債も残っておりますが、民主党はこの自民党の大票田を奪うことで政権交代を成功させてしまったのですから、各種労働組合の支持と同様に政府は自縄自縛になっているわけで、一足飛びに「開国」を世界に向かって約束するのは勇み足だったと申せましょうなあ。

■2番目の社会保障の充実などによる「最小不幸社会の実現」も、政権交代の原動力となった年金問題の解決に失敗した民主党政権ですから、財務省と厚労省の官僚群の「ご説明」に従って国民負担を大急ぎで増やして行くことになりそうです。そして、笑ってしまうのは3番目の「不条理をただす政治」という意味不明の柱であります。どうやら「不条理」というのは、政治資金問題を抱えているとされる小沢・鳩山コンビを指しているようなのですが、改造内閣の人事において海江田経産相が「人生は不条理だ」と言った記憶が生々しい時期に、よくぞ同じ文言を使えたものだと呆れてしまいましたぞ。

■最近話題の「疎い」発言にしろ、菅アルイミ首相の日本語には学生諸君は決して真似しては行けない誤用が目立ちます。国会で麻生総理が未曾有を「みぞうゆう」と読んだと鬼の首でも取ったように大いに笑いのタネにしたマスコミなのに、ぼそぼそと役人の作文を読んでいる菅アルイミ首相がここかしこで誤読を繰り返しても、まったく嘲笑する気配さえないのは不思議であります。

そして誰もいなくなる? 其の壱拾

2011-01-18 15:49:29 | 政治
■首相の誰も聴きたがらない記者会見の空疎な言葉と面子一覧表を見ただけで、性急なマスコミの質問に答えさせられる人も可哀想ですが、それを民意として押し付けられる多くの読者や視聴者も頭が混乱するばかりでありましょう。かつて福田恒存氏でしたか、初めて訪れた土地の空港に降り立った時に「○○市の感想」を求められて激怒したという話がありましたが……。

……菅直人首相が「最強の態勢に」と意気込んだ内閣改造は政権浮揚効果に乏しく、毎日新聞が14、15日に実施した緊急世論調査の内閣支持率は29%にとどまった。社会保障と税の一体改革を担う与謝野馨経済財政担当相の起用は「評価しない」が過半数を占め、枝野幸男官房長官の評価も二分。……首相が年頭に「政治的な生命をかける」と発言したのが社会保障と税の一体改革。その具体化を与謝野氏と元財務相の藤井裕久官房副長官に託した。藤井氏は15日、NHK番組で「仮に消費税(引き上げ)をやらせていただくときには(世論の)納得がなければいけない」と強調した。しかし、世論調査では民主党支持者でも4割近くが与謝野氏の入閣を評価しておらず、党内には与謝野氏の増税色に対する懸念もくすぶる。与謝野氏の古巣、自民党とたちあがれ日本も反発を強めており、与野党協議についても「できるわけがない」(民主党幹部)との悲観論が広がった。…… 

■「特別会計を含めた予算の大規模な組み替え」と「事業仕分けによる税金の無駄遣いの排除」によって30兆円やら16兆8000億円やらの財源が泉のように湧いて来るという話はどうなったのか?その後始末もしない内に「消費税引き上げ」を既定事項のように聞かされますと、政権交代に期待して裏切られた失望感と怒りが再び甦りましょうし、決して自分達の過ちを認めず八つ当たり気味に筋違いの責任転嫁と開き直りを続けていると、支持率が急落する日も近いのではないでしょうか?


もう一人の目玉閣僚、枝野氏は仙谷由人前官房長官の「脱小沢」路線を引き継ぐ役割を担う。世論調査では小沢一郎元代表に強制起訴時の離党を求める声が77%に達し、菅首相は離党勧告も辞さない構え。しかし、枝野氏起用の評価も期待したほどではなく、小沢グループからは「(菅首相と岡田、仙谷、枝野3氏の)4人組でたらい回ししているのを国民は見抜いている」との批判もあがる。結局は「国会審議のとげを抜く『問責改造』。最強の布陣なんかじゃない」(若手議員)。野党の「問責カード」に対抗しようにも、支持率が上がらなければ「衆院解散カード」は使えない。枝野氏は15日のBS朝日の番組で「解散・総選挙は全く考えていない」と言い切った。…… 

■新聞報道によりますと、ポスト菅を前原外相との談合があった上で仙谷ノーコメント官房長官が党務に戻って下準備をすることになったとか……。前原前国交相が火を着けた八ッ場ダム問題と尖閣衝突事件が大爆発して大火傷を負わされた格好の馬淵前国交相などは、きっと恨み骨髄に浸透しているでしょうから、「最強の布陣」が内部から炎上して灰燼に帰すような御家騒動が起こるかも?小沢問題が司法の手に渡って粛々と真相解明が進んで行けば、「小沢が嫌いだ!」の声に代わって「菅ではダメだ!」の怒号が響き渡る日も近いかも知れませんなあ。

■『週刊新潮』1月20日号の記事によりますと、1月5日に菅アルイミ首相が出演したテレビ朝日の『報道ステーション』の視聴率が6.9%(関東地区)だったそうです。平均視聴率12~14%が半分に落ちたという現実を菅アルイミ首相は意に介さない図太い神経を持っているからこそ、その10日後に第二次改造内閣を発足させたのでありましょう。同記事には菅アルイミ首相出演時よりも視聴率が低かったのは、裏番組に北京五輪開会式やワールドカップ日本戦が当たった時だけだったとか……。こうした現実を見れば、低迷する支持率を辛くも下支えしているのは菅アルイミ首相という政治家個人に対する支持や期待ではなく、反自民=民主党、そして、政権交代という歴史的事件に対する実に頼りない祈りにも似た思いだけなのかも知れませんなあ。


……同日のTBS番組では、山本一太参院政審会長が「個人的に言うと最初から問責を出したい」と与謝野氏に対する問責決議案提出にまで言及。……自民党は、年金改革や消費税率引き上げなどを巡って与謝野氏の主張と民主党の政策の矛盾を突き、閣内不一致をあぶり出す戦術を検討。自民党時代に民主党マニフェストを酷評した与謝野氏の「変節」や、菅首相の任命責任も問う構えだ。石原伸晃幹事長は15日、東京都内で記者団に「信頼関係を放棄した人(与謝野氏)が先頭に立ってもだれもついていかない」と述べ、社会保障と税の一体改革に関する与野党協議に応じない考えを明らかにした。…… 

■失点続きの民主党政権を攻め切れない自民党も情けない。本当に政権奪回の意志があるのかいなあ?と他人事ながら心配になります。返済不可能と言われる国の借金のうち、少なくとも600兆円規模にまで膨張させてしまった責任、補助金付けの内向き農政を続けて地方を疲弊させた責任、「ゆとり教育」を実施して数十年間続く人材不足を発生させた責任など、国民に謝罪・説明・対処方法を大急ぎで語らねばならない重要な案件が山積みなのに、自民党の復活を期待する声に応えるような仕事が行なわれていないように見受けられます。何よりも高度成長期とバブル時代に作り上げた政治構造を時代の変化に合わせて改造する大仕事に失敗した責任を明らかにしないと、相手がどんなにヘッポコ与党であっても政権奪回は難しいのでしょうなあ。


野党は次期衆院選を「できるだけ早く行うべきだ」との回答が49%に上ったことにも強い手応えを感じている。自民党の谷垣禎一総裁は談話で「国会では問題点を厳しく突き、(衆院)解散・総選挙に追い込みたい」と強調。公明党の山口那津男代表も「常在戦場の気持ちを強く持っていく」と語った。与謝野氏を一本釣りされたたちあがれ日本の園田博之幹事長は「菅内閣ではだめだということ。徹底的に追及したい」と対決色を強めた。ただ国会での与野党対決を支持する意見は30%にとどまり、強気一辺倒では逆に野党が世論の批判を浴びかねない。……
2011年1月16日 毎日新聞 

■鳩山サセテイタダク前首相の「あなた達には言われたくない!」の一言に象徴される野党体質丸出しの無責任な方言癖は、与党経験を多少は重ねるたで鳴りを潜めていますが、三つ子の魂百までの諺の通り、誰かを批判していれば済むという野党根性は簡単に抜けるものではありますまい。一方の野党第一党の自民党は「あなた達には言われたくない」とは言えない辛い立場になっております。それもこれも有権者に見捨てられた原因を真面目に反省して長い長い与党時代の失敗を総点検しない怠惰な姿勢が問題なのでしょう。年明けの国会も、きっと「熟議」とは程遠い子供の口喧嘩みたいな議論を聞かされそうですなあ。

そして誰もいなくなる? 其の九

2011-01-18 14:22:13 | 政治
■首相時代には正気を疑うような言動が多かった鳩山サセテイタダク前首相でしたが、半年も冷や飯を食わされている間に随分とまともな事を言える様になったのかも?でも、軽率な方言と空約束の後に前言撤回を繰り返して墓穴を掘る悪い癖が治っているかどうかは不明であります。の

……16日夜には、訪問先のインド・ニューデリーで同行記者団と懇談し、今回の内閣改造人事が首相、枝野官房長官、岡田幹事長、仙谷由人次期代表代行の「4人組主導」と指摘されていることについて、「(首相は)挙党態勢を望むと言いながら、自分の仲間だけで決めてしまう。『どうぞ4人でやりなさい』という気持ちだ」と言い捨てた。特に、枝野氏起用については「(昨年の)参院選で幹事長として負けた責任は大きい。半年で責任を忘れていいのか」と批判。報道各社の世論調査で内閣支持率がやや上向いたことも、「『最強の体制』と首相が胸を張るほど、国民は期待していない」と断じた。
1月17日 読売新聞 

■「四人組」と聞けば、チャイナの文化大革命時に悪名を馳せた、江青、張春橋、姚文元、王洪文の「上海組」を思い出しますが、本当は本当の首謀者である毛沢東を加えた「五人組」だというのが定説になっておりますが、もしかすると陰で糸を引く5番目の人物になりたかったのは鳩山サセテイタダク前首相ご本人だったかも知れませんなあ。いまだに気楽な野党体質が抜けない素人集団同然の民主党の現状では、権力闘争も迫力に欠けて本音丸出しの子供の喧嘩レベルで終始しているようであります。

■一昨日の夜、NHKで『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第2回 巨大組織“陸軍” 暴走のメカニズム』という長い題名のドキュメンタリーが放送されまして、戦前に誕生した「一夕(いっせき)会」という陸軍エリート官僚の秘密結社に焦点を当てて興味深い内容に仕上がっていましたなあ。特に、明治の元勲・山県有朋が作り上げた組織構造が硬直化して時代に合わない現実に危機感を抱いた若手陸軍官僚たちが、言うなれば「政権交代」の目標だけを共有して苦労の末に軍の主導権を握ったものの、その後は仲間内で意見の対立が起こって内部分裂へと至り、それが日中戦争の泥沼化を進めて行ったとの分析は、とても70年余り前の話とは思えませんでしたなあ。

■民主党の「四人組主導」の第二次改造内閣は、発足したばかりでまだ湯気が上がっている時でしょうに、湯気の中から火花が飛び交い始めたようです。党内意見がまとまらず、内ゲバが激化して国会審議が動かなくなれば、最後は自分だけ生き残って首相の椅子にしがみ付くに違いない菅アルイミ首相の底意は見え透いておりますから、妙に張り切って国難を乗り越えよう!などと真面目に発言している人は詰め腹を切らされるか、火災の中で梯子を外されて2階で焼死かも?


与謝野馨経済財政担当相は18日の閣議後会見で、税と社会保障の一体改革に向けた与野党協議について「6月までに菅内閣としての案をつくり、各党に提示する」と明言。その上で「『(政府・与党)案がないのに協議できない』という野党の主張はもっともだ」と述べ、超党派協議が政府・与党案ができた後の6月以降にずれ込んでもやむを得ないとの認識を示した。…… 

■「野党の主張は尤もだ」などと、早速、菅アルイミ首相の密かな期待に応えて与野党間の「橋渡し役」を演じ始めた心算かも知れませんが、自分自身が与野党間の対立と緊張を高めて爆発する火種になりつつある心配があるのですが、政界切っての「政策通」と言われる一方で政界随一の「政局音痴」として名が通っている人ですから、骨身に染み付いた底抜けの楽観主義を周囲に撒き散らし続けるのでしょうなあ。


消費税を含む税制抜本改革を巡っては、藤井裕久官房副長官が17日、関連法の整備を11年度までに行うとした税法の付則を堅持する考えを表明。これに関連し、与謝野氏は「副長官の発言は至当。(税法の付則は)国会も一定の範囲で拘束している」と述べた。…… 

■理路整然と論理を飛躍させるのが得意な藤井副官房長官ですから、自公政権時代に決まった「税法の付則」には、景気回復を待ってとの重大な条件が付いていたことを忘れて振りをして、野党に責任を丸投げするようなことも平気で言えてしまいます。小沢問題がこじれれば自由党解党時に行き先不明となった政党助成金の受け取り手として火の粉を浴びる可能性があり、いよいよ脱鳩山路線が本格化して『マニフェスト』の全面的な書き換えともなれば、安請け合いした「財源問題」の責任論が埃を払って取り上げられるかも知れません。改造を主導した「四人組」にしたところで決して一枚岩ではなさそうで「小沢が嫌いだ!」の一点で手を組んでいるだけで、ポスト菅の流れが見えたら四分五裂のドタバタ劇を演じそうですから、民主党政権の支持率が低いのは「小沢が悪い!」、国会が動かないのは「野党が悪い!」、党内が対立するのは「マスコが悪い!」と他人のせいにばかりしていられなくなった時が危ないのでしょうなあ。


一方、海江田万里経済産業相は18日の会見で「消費税を引き上げるなら、(一体改革の)成案を得た上で(衆院を)解散し、その後に上げるのが筋」と述べ、消費税引き上げは解散が前提となるとの認識を示した。
1月18日 毎日新聞 

■たとえクラッシャー小沢一人を離党させたところで、おそらく支持率は菅アルイミ首相が信じ込んでいるほどは上がらず、小沢一派の政治・選挙思想は党内に根を張ってしぶとく生き残ることを海江田経産相の発言は示しているのではないでしょうかな?最も解散を望んでいないのは菅アルイミ首相である事を百も承知の上で、クラッシャー小沢がテレビで「解散・総選挙」に言及した2日後に同じ趣旨の発言をしたのですからなあ。東京1区で「政権交代」の象徴的な死闘を演じて破った与謝野さんに、たとえ横滑りで閣僚ポストには就いたとは言え自分の大臣室を明け渡すのは、さぞや気分が悪いことでありましょうから、「人生不条理」と達観したような嫌味くらいでは腹の虫が治まらないのが権力欲の強い人間の心理と言うものなのでしょう。

そして誰もいなくなる? 其の八

2011-01-17 16:06:02 | 政治
■年明け早々に第二次改造内閣が誕生。こいつぁ春から縁起がいいわいなあ、と心底喜んでいる国民はほとんど居ないのではないかと思いましたら、内閣支持率が若干上昇したとの報道がありました。支持者・同情者からのお年玉みたいなものでしょうか?熱心に読んだ有権者にとっては既に紙くず同然となった選挙用『マニフェスト』ですが、どうやら改造内閣にとっては計り知れない重さを持った大荷物になっているようで、自民党在籍当時から増税論者として有名だった与謝野さんを引っ張り込んでの手早い組閣人事と相成りましたが、結果は賛否両論と言うよりも非難轟々のようですなあ。

■あちこちのテレビ局が新内閣の顔ぶれをパネルに貼り出して、あれこれ論評を加えておりましたが、改造内閣が発足したのが異例の仏滅だった!と早くも嫌な予感を煽り立てる意地の悪い論評も加わって、自ら仮免許から本免許に切り替えて張り切っている菅アルイミ首相の新たな門出はあまり目出度いものではない印象でありました。更に気になったのは1月14日午後零時52分から「新閣僚の呼び出し」が始まり、官邸内で事務的な打ち合わせが続いて午後6時から菅アルイミ首相の誰も聴いてくれない「記者会見」が開かれて実況放送され、初の閣僚会議の後、午後7時46分にはお決まりの「記念撮影」という流れが夜のニュースで形式的に紹介されたのでありました。

■しかし、午後3時27分に皇居で天皇陛下に「御報告」、引き続いて「認証式」が執り行われたのでありました。その間、約1時間半。第一次改造内閣が行なわれたのは2010年(平成22年)の9月17日でしたから、前回の認証式からたったの4箇月しか経っておりません。御高齢で健康に不安も囁かれる陛下にお出まし願っての「認証式」は、国事行為とは言っても各内閣の事情で急に決まることの多い内閣改造に付随した儀式ですから、出来れば午前中に「歌会始め」に御出席になった日の午後3時に行なうというのは、ちょっと迷惑な気もします。皇室軽視が目立つ民主党政権ですから、誰も気にしなかったのかも知れませんが……。

■因みに今年のお題は「葉」で、最年少で入選した兵庫県の中学3年生、大西春花さん(14)の作が菅アルイミ首相の改造後の記者会見の発言と重なって響きましたぞ。
「大丈夫」この言葉だけ言ふ君の不安を最初に気づいてあげたい
菅アルイミ首相は記者会見で性懲りも無く「最強」などという大仰な崖っぷちの表現を使っていたようですから、
「最強」この言葉だけ言う総理に不安を真摯に気付いて欲しい
とでも読み替えたくなったのでありました。

■第一次菅アルイミ改造内閣は「空き缶内閣」と悪口・陰口を叩かれていたものですが、実際に政府を動かしていたのは仙谷ノーコメント官房長官だというのは衆知の事実で、退任記者会見以降、マスコミに対する悪口をあちこちで言って歩いている模様であります。傍迷惑な「認証式」の2日前のことでありした……。1月12日の午前10時半から皇居・宮殿の「松の間」で催されたのが「講書始」という明治天皇以来の重要な行事で、皇族方や学術関係者と並んで閣僚も同席するのであります。今年は京都大学の立本成文名誉教授が「日本や東南アジアの国々が古くから海上交通によって交流し文明をつくりあげてきた歴史」を取り上げ、東京大学の佐々木毅名誉教授は「政治の精神」をテーマに話し、最後に京都大学の竹市雅俊名誉教授が「動物の細胞どうしを結び付けている「カドヘリン」という蛋白質が癌治療に利用できる」という話をしたそうです。

■3人の講義は正味40分ですが、両陛下は御着席になってから席を立つまでの50分間、決して椅子の背凭れに体を預けず、背筋をぴんと伸ばして微動だにせず熱心に講義に耳を傾けておられるのだそうです。その講書始めの儀の最中に、あろうことか仙谷ノーコメント官房長官は居眠りを始めて手にしていたレジュメをバサッと床に落としてしまい、講師の声だけが厳かに響く「松の間」の雰囲気を台無しにしてしまうという事件を起こしてしまったとか……。どんな謝罪や反省の言葉を両陛下に伝えたのかは存じませんが、最後に象徴的な椿事を起こしてしまったものであります。改造人事の構想も固まり、クラッシャー小沢の追い落とし・離党が見えて来たというので、何も知らない・何も出来ない首相の後見人という重責からも解放されると思った仙谷ノーコメント官房長官は、東大の佐々木毅名誉教授の語る「政治の精神」などは子守歌ぐらいにしか聞こえなかったのかも知れませんなあ。

卯(兎)年の初めに 

2011-01-12 14:50:12 | 日記・雑学
■新年のご挨拶もせずに既に10日余りが過ぎてしまいました。暗澹たる気分のまま年末が過ぎて嫌な予感と共に新年を迎えねばならない最大の理由は、やはり現政権の混乱と迷走が醸し出す軽佻浮薄の雰囲気が全国に広まっているからでありましょう。聞くところに依りますと兎年は政治が混乱する年回りだそうで、幕末に大政奉還が起った1867年(慶応3年)が兎年で、明治時代には山縣有朋・若槻礼次郎の両内閣が総辞職、昭和の世では1939年(昭和14年)に第一次近衛文麿と平沼騏一郎内閣が同年中に連続して倒れ相次いで退陣しているそうですなあ。

■また、来日中のロシア皇太子が警備中の警察官に斬り付けられた「大津事件」やら、「ノモンハン事件」が起ったのも兎年だそうですし、天変地異でも浅間山が大噴火した1783年(天明3年)も、江戸が壊滅した安政大地震が発生した1855年(安政2年)も、死者7000人以上の濃尾大地震が起きた1891年(明治24年)も、3000人の犠牲が出た丹後地震の1927年(昭和2年)も、伊豆大島の三原山が大爆発した1951年(昭和26年)も、みんな兎年だそうで、特に大きな鉄道事故が起きているのも兎年だとか……。親方日の丸の権化だった国鉄(日本国有鉄道)が消滅した1987年(昭和62年)も兎年。

■「飛躍の年」とか何とか無理にこじつけて深刻な問題から目をそらすのも庶民の知恵なのではありましょうが、世界情勢が大きなうねりの中で急速に変化している歴史の節目に、あれこれと目に付くのは日本の周回遅れ状態で、元を質せば長過ぎた自民党政権が何だかんだと言い訳をしながら先送りし続けた歴史的責任に辿り着くのですが、折角の「政権交代」が起ってみれば大急ぎで周回遅れを取り戻す様子もなく、内政と外交の継続性を無視して乱暴で稚拙なやり方で中途半端にぶっ壊して回っては前言撤回を繰り返すばかりの民主党政権に対する嘆息と失望感ばかりが聞こえて来ます。

■菅アルイミ首相が最も情熱を傾けているのが「小沢切り」だそうで、政権交代が実現した議席数を揃えた最大の功労者を粛清しようと躍起になる一方で、次の総選挙は任期満了まで何の勝算も無いままに先送りして行けば、自分の首相在任日数が上積みされるて嬉しいなあ!などと一人悦に入って国家の危機を等閑に附しているように見えるのは錯覚でありましょうか?


漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人を名乗った人物からのプレゼントが各地の児童養護施設などに贈られていることについて、細川律夫厚生労働相は11日の閣議後会見で「本当に温かい気持ちに感激している。一般の国民の皆さんも(施設で暮らす子供たちに)関心をもっていただくのはうれしい」と述べた。虐待や親の病気などの事情で児童養護施設や里親家庭で暮らす子供は全国で約4万人。少子化の中でも割合は増えており、大学進学率は一般家庭より低い。細川厚労相は「国としても懸命に取り組み、子供たちへの施策を充実させていく」と述べた。…… 

■社会全体で子育てを支援するとの美名の下に、寄り合い所帯の政党らしい選挙目当ての思い付きを寄せ集めて羅列した笑止千万な『マニフェスト』に大書された「子供手当て」を、唯一の目玉政策だと信じて帳尻合わせに大童(おおわらわ)の菅アルイミ政権ですから、既に選挙前に涼しい顔して「財源は幾らでもある!」と嘯(うそぶ)いていた舌の根もすっかりからからに乾いて、幻の財源話に関する検証も反省もせずに何となく消費税論議に世論を姑息に誘導して行くのも仕方がないのでしょうなあ。

■「子供手当て」は財源の問題に加えて支給対象世帯の所得制限も無上に、再来年度予算に組み込まれるかどうかも分からないという制度的な欠陥が指摘されておりますし、本当に子育て支援に役立てられるのか?という根本的な疑問も呈されているのですから、生煮え政策と申せましょう。その怪しい制度の所管大臣がタイガーマスク騒動に「感激している」というのは自分の職責と所属政党の責任能力を忘れた妄言のように聞こえます。行政府の大臣ならば「子供たちへの施策」の中身を具体的に提示してくれないと困りますが、既に官僚主導がすっかり板に付いてしまった菅アルイミ内閣は自民党時代よりも悪い役人の作文を暗記・棒読みする閣僚ばかりになっているとの指摘があるので、細川厚労相もアルイミ首相を見習って能天気なコメントを出してしまったのでしょう。

■考えようによっては「子供手当て」政策に対する大いなる疑念と拒否を示す動きが具体的に表われたとも言えそうですし、また、自民党時代の高齢者重視・未成年者軽視の露骨な選挙目当て政治に対する遅まきながらの批判も含まれているのかも知れません。軽薄なマスコミに同調して素朴に「感激」しているようでは、大臣としての資質に問題がありそうですが、内閣改造後も留任しそうな気配であります。でも、元々、法学部出身で弁護士でもある人ですから本来なら法務大臣になるべき人材で、2010年10月13日の予算委員会で、自民党議員から子ども手当の支給額と支給の時期について質問されても「事前の質問通告がなかった」からという理由で答弁できずに赤っ恥を掻く必要もなかったのでしょうが、長妻大臣の後釜に副大臣から自動的に繰り上がった悲喜劇も菅アルイミ内閣らしい人事ではありました。


……アニメで伊達直人の声を担当したことがある声優の森功至(かつじ)さん(65)は「40年たったこの時代に突然、伊達の名前がよみがえったようで不思議な感じです」とした上で「伊達の名前による寄付が今後も続いてよいものか、複雑な気持ちもあります」
2011年1月11日 毎日新聞 

■原作者の梶原一騎氏が亡くなっているので、声優の森功至さんを引っ張り出そうと考えるのは日本のマスコミが暇なのか構想力が枯渇してしまっているのか?どうせなら格闘家の佐山サトル氏にでもマイクを向けたら如何でしょう?民主党政権に対して激烈な批判コメントが貰えたでしょうに……。未だに寄付した人がタイガーマスク(伊達直人)を名乗った理由は、尖閣衝突事件の映像証拠を流出させた「sengoku 38」の名と同様に不明なのですが、最初のランドセルが群馬県の施設に届いたのが昨年のクリスマスだったのですから、本当は単に寅(虎)年からの連想でタイガーマスク=伊達直人と名乗っただけのことかも?真相がどうであれ、あまり騒ぎ過ぎない方が良いでしょうなあ。

■マスコミがまったく取り上げない地道な慈善活動を続けている人も多いでしょうし、付和雷同式にこの種の寄付行為が流行すると犯罪行為で得た表に出せないカネが美談の資金になる可能性も出て来るかも知れませんからなあ。閣僚の皆さんばかりでなく、国民全体で経済大国だと言われながら子供の貧困率が非常に高い日本の実情を改めて考える切っ掛けにした方が良いのではないでしょうか?