旅限無(りょげむ)

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原爆が使われる日 其の弐

2008-08-31 14:19:19 | 外交・世界情勢全般
■金門島の核危機があったというニュースと同じ日に、こんな報道も流れていました。

米国務省は30日、2007年版の国際テロ活動に関する国別報告を発表した。北朝鮮はイランやシリアとともに引き続きテロ支援国家に指定された。北朝鮮について……「1987年の大韓航空機爆破以来、テロ行為を支援していないと思われている」としつつも、日本赤軍のメンバーをかくまっていると指摘。「日本政府は北朝鮮の国家組織によって拉致されたと信じられている12人の安否について詳しい説明を求めている」と記した。その一方で、核問題をめぐる6カ国協議の合意に従って、朝鮮半島の非核化に向けた北朝鮮の行動と並行する形で、米国としても「テロ支援国家指定を解除する義務を果たすつもりである」としている。

■北朝鮮はリビアと違って大韓航空機爆破テロに関与したとは未だに認めていません。核爆弾も完成品を持っているのか持っていないのか、はっきり言いません。拉致事件は終わった話だと言い続けていますし、謀略活動は今でも熱心に続けていることが「美人スパイ」の検挙で明らかになっております。よど号乗っ取り犯だけは、隠しようが無いので飼い殺しにしているようですが、結局、ほとんど役に立たないただ飯喰らいだったので、恩着せがましく日本に返す方法を考えていたそうですなあ。ただのゴクツブシでは肩身が狭いとて、偽札運びや拉致の手伝いなどをしていたようですが、費用対効果は最低だったのでしょう。

■何を勘違いしたのか、日本の政治家の中にはよど号乗っ取り犯を帰国させようと熱心に交渉している人もいるとか……。ご奇特な方と言うよりも、税金の無駄遣いだと思われますなあ。日本にとって何の価値も無い老革命家たちを貰い受けた代償は驚くほど大きなものになるそうですから、あまり本気になって話を進めない方が良いでしょう。日本の同盟国である米国が怖れるのは偽札と同じ感覚で核兵器を闇商売に使われることでしょうし、やがて完成する大陸間弾道弾に小型核兵器が搭載されることでしょう。既に日本列島を標的にして放射性物質を詰め込んでミサイルで撃ちこむことは難なく出来るそうですから、日本も拉致と核とミサイルを三つ巴にしてばら売りなどしないで交渉を進めるべきでしょうなあ。それはそうと、いつも気になるのは「テロ支援国家」という呼称です。日本国内には「テロ国家支援組織」が存在しますが、北朝鮮自身は立派な?テロ国家のはずなのですが……。

 
テロ支援国家に指定されたのはスーダン、キューバを加えた5カ国。米政府は北朝鮮がシリアの核施設建設を秘密裏に支援したと公表した。ブッシュ大統領は4月29日の記者会見で、公表について「北朝鮮が思っている以上にわれわれが情報をつかんでいることをはっきりさせる」との目的があったと説明。核拡散やウラン濃縮も明確にするよう求めた。ヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)はシリアの核施設空爆後、北朝鮮とシリアの協力は行われていないとして、指定解除に前向きに取り組む考えを示している。
5月1日 産経新聞

■怪しげな人物のホラ話と無能なCIAのウソを信じてイラクに攻め込んだブッシュ大統領が「情報」に関する発言をするというのは、出来の悪いジョークなのですが、弱腰なのか粘り腰なのか、さっぱり分からないヒル代表にも困ったものです。一説にはブッシュ大統領以上に何が何でも「業績」を上げて有利な再就職を実現しようと頑張っているそうですが、努力するにも相手をよく見てからにした方が良さそうです。ヒルさんの将来と家庭の幸福のために「第三の核」が使われたら大変な傍迷惑ですからなあ。

■ホイホイ首相の日本政府はどうかと思えば、「対テロ戦争」に諸手を挙げて大賛成した小泉政権の流れを受けたまま、国内向けには「単なる給油活動です」と説明し、対外的には「重要な軍事行動を支援している」と自画自賛し続けるのにも限界が来ているような気がします。野党の民主党でも、「安全な場所に自衛隊を派遣」などと分かったような分からないような主張をしている場合ではありません。安全な場所なら誰も助けを必要としません。「兵より食だ」という実に明快な思想を体現したボランティア青年が犠牲になったのに、日本政府は「兵か食か」も決められず、取り敢えずは「燃料補給」を続けるのだそうです。とても「次の核」を語れる立場ではありませんなあ。
 
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原爆が使われる日 其の壱

2008-08-31 13:49:08 | 外交・世界情勢全般
■北京五輪大会が無事に?終わって正気に返ってみたら、世界中が様変わりしていることに気が付いて、一瞬で背筋が凍る思いになっている人も多いかも?能天気に自国内の選挙祭に熱狂している米国の人々を除いてでしょうが……。五輪大会が始まる3ヶ月前、まだチベット騒乱の余燼が燻(くすぶ)っているような時期から話は始まります。どうも気になって保存しておいたニュースが発端です。日付は世が世ならば旧ソ連のモスクワで盛大に「労働者の祭り」が開催されていたはずのメーデーでしたなあ。

台湾海峡で中台両軍が局地紛争に陥った1958年8月、米国が中国沿岸の前線都市アモイ(厦門)周辺への核攻撃を検討したことを示す機密文書が公開された。米軍の策定した攻撃計画は、空軍機から10~15トンの戦術核爆弾を投下する内容だったが、最終的にアイゼンハワー大統領(当時)の反対で回避された。ジョージ・ワシントン大学の研究機関を通じて公開された文書は、台湾、キューバなど58~65年に世界各地で起きた5つの危機に対し、米空軍がどう対応したのかを地域別に総括した資料。空軍戦史部が68年に作成していた。

■やっぱり米国は「第三の核」を本気で使おうとしていたのです。朝鮮戦争の時には旧満洲から虫のように湧き出してくるチャイナの「義勇軍」に業を煮やした国連軍総司令官のマッカーサーが節分の豆まきみたいに広島型と長崎型の原爆と新発売のコバルト爆弾を撒き散らして黴菌も住めない「死の安全ベルト地帯」を現出させようとして、トルーマン大統領から解任された事はありましたが、それはまだ冷戦時代が本格的に幕開けする前の昔話のようなものです。1958年当時から手軽に使える(?)「戦術核」を実戦に使用する思想が米軍内に完成していた事が恐ろしい!


……中国への核攻撃計画は58年8月中旬、台湾支配下の金門島が中国人民解放軍の激しい砲撃を受ける第2次台湾海峡危機を数日後に控えた緊張の中で、トワイニング統合参謀本部議長らを交えて検討された。「沖縄、台湾への核報復というリスク」が将来的にあっても、蒋介石政権が支配する離島を防衛するというのが同議長の構想。中国側への抑止効果が薄ければ、上海などさらに広い範囲への追加攻撃も想定された。

■「金門島砲撃」と聞いてもピンと来ない人が圧倒的多数になった平和な日本ですが、そこは蒋介石が太平洋戦争中の硫黄島以上に強固な地下要塞化が進めた大陸が肉眼で見える指呼の距離にある小島の一つです。砲撃事件が起こらなくても、双方が飽きもしないで宣伝謀略を続けていた場所としても有名です。ちょっと前までの朝鮮半島の38度線と同じで、狭い海峡を挟んで巨大スピーカーで相手の悪口と自国の自慢話を延々と喚き合い、中華人民共和国側では張りぼての町並みを作って「社会主義の成功」を演出していたとか……。高性能の双眼鏡が無かったのかも?

■大陸から蒋介石軍を追い出し、満洲・ウイグル・チベットなどを占領して歩き、朝鮮戦争の助っ人役を演じた当時のチャイナ軍は、世界最大規模の時代遅れの陸軍だけの軍隊でした。目と鼻の先の金門島に渡る海軍力も爆撃する空軍力も持ち合わせない人海戦術一本槍の毛沢東好みの軍隊だったわけです。ソ連の支援を受けて原爆製造の努力は重ねていましたが、占領併合した新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠で「毛沢東の原爆」が炸裂するにはあと6年の時間が必要だった頃の話です。


しかし、アイゼンハワー大統領が、「仮に金門島が中国側に制圧された場合でも、核兵器の使用は見送る」との意向を統合参謀本部議長に伝えたことで、計画は撤回された。核戦争を誘発する危険に加え、放射性物質による被害や、台湾側の防衛範囲に対する影響を米政権は懸念。ホワイトハウスでの会議で、同大統領は金門島への補給を米艦艇で護衛するなど、歴史が示す通りの決断を下していた。

■陸軍大将出身のアイゼンハワー大統領は、歴代の米国大統領の中で最も高い評価を得ているという説もあるくらい優秀な政治家だったようです。人気ではケネディ大統領の圧倒的ですが、ボロが出る前に暗殺されただけ、という皮肉な見方もあるとか……。それはさて置き、今の米国大統領だったら?と思うとゾッとする話ですなあ。


文書は、「共産側の侵攻が続いた場合は、核攻撃が実行されていただろう」との判断を示している。当時、米国は蒋介石政権との間で、「米華相互防衛条約」を締結しており、核兵器の使用検討のほか、台湾への軍事支援は同条約に基づいて進められた。
5月1日 産経新聞

■広島と長崎に投下した頃の核兵器は、超空の要塞B-29でもふーふー言って運ぶような代物でしたが、どんどん小型化が進んでミサイルの弾頭になり、大型の大砲から発射できるようになり、最後はスーツケース型にまでなっております。その超小型原爆が、旧ソ連の崩壊のどさくさで数個が行方不明になっているという恐ろしい噂が絶えません。航空燃料を満載したジャンボジェット機も怖いテロ兵器ですが、次に乗っ取られる飛行機にスーツケース型原爆が乗せられることを米国政府は心底怖れているとか……。

■手持ち無沙汰で北京五輪の開会式が終わっても、選挙演説も頼まれず北京でぶらぶらしているブッシュ大統領は、既に歴代最低最悪の大統領として歴史に名を残すのはほぼ確実だそうですが、唯一の功績はアフガニスタン国内に戦術核を撃ち込まなかったことかも知れません。でも、軍需産業の大株主でもあるパパ・ブッシュが膨大な武器の在庫を使い切らないでさっさと核兵器を使ってはダメだぞ!と言ったからかも?冗談はともかく、流動化して食糧・エネルギー・水資源・宗教などなど、どんな理由にせよ何処かから手ごろな価格で核兵器を入手したら、あっさり使ってしまいそうな人物があちこちに出て来ているのが恐ろしい!

日本の宿題 その六

2008-08-29 15:53:20 | 外交・情勢(アジア)
■本当は危険な国に出掛けたボランティア青年の消息を知ることより、連立相手の公明党との折衝やら民主党に対する分裂工作など、「選挙屋」政治家にはもっと大切なお仕事があるのでしょうに……。国会審議の中心議題となるはずの「対テロ特措法」にしたところで、アフガニスタンの復興が問題なのではなく、対米協力に少しでも現実味を加えるのが目的のように見えます。既に自民党内からはアフガニスタンなど面倒な外交問題を切り捨てて、石油を安全に輸入するための「シーレーン防衛」問題に話を転換しようという動きがあるようですから、アフガニスタン現地の人々を助ける話はどんどん霞んでいたところでしたから、本心では迷惑な思いをしているのではないか?と思っていたら、この種の問題に特に冷淡な印象の強い官房長官が、やっぱり事務的に対応してみせたのでした。

町村信孝官房長官は27日午前の記者会見で、……「安否は不明だ」と述べた。また、情報収集のため伊藤さんが連れ去られたジャララバードに日本大使館員を同日派遣することを明らかにするとともに、「一刻も早い解放に全力を尽くしている」と強調した。伊藤さんを拉致した犯行グループは、アフガンの反政府武装勢力タリバンとみられるが、町村長官は「確定できない」と述べた。また、町村長官は「(犯行グループの)居場所はアフガン当局がほぼ特定している」と述べたが、詳細な説明は避けた。さらに、日本政府として犯行グループと接触できていないことも明らかにした。 
8月27日 時事通信

■身代金などの条件交渉が行われていないというは最悪で、それこそ「政治的な背景」がある狂信者が起こした凶行でる可能性が高い証拠になります。今のホイホイ総理の父上は、「人命は地球より重い」という名言?を吐いて共産主義テロリストの要求を全面的に飲んで、刑務所から懲役囚を解き放つわ莫大な身代金は支払うわ、世界中からアホかいな?と陰口をたくさん頂いたことがありましたなあ。そんな恐ろしくも恥ずかしい過去をあちこちのテロリストが思い出して、福田内閣が存在している間に「地球より重い」人質を獲って大金をせしめようなどと思わないことを祈るばかりです。

■伊藤さんの拉致事件に関して「強い憤りを感じる」と言った福田ホイホイ首相でしたが、考えてみれば殺人イチコロ餃子を作って出荷居した事件が起こった時には、この種の発言が無かったのは何故でしょう?


……外務省の山本一太副大臣は27日、記者会見し、現地で伊藤さんの捜索に当たっていた捜査当局が同日、現場周辺で日本人らしい男性の遺体を発見したことを明らかにした。現地の警察署から日本時間の同日午後2時ごろ日本側に連絡があったという。遺体には足と腹部に銃で撃たれたような跡があるという。外務省では伊藤さんの可能性もあるとみて、大使館員を派遣し、身元確認を急ぐ。

■「大使館員の派遣」がなかなか実行されないのも不思議ですが、現地の捜査当局が言う「日本人らしい男性」という表現も不思議です。まるでミッドウェイ海戦の時に打電された「敵らしきもの見ゆ」みたいな受け取った側が困惑するだけの連絡であります。人口密集地でもないのに、外国人か現地の人間なのかも見分けられない状態なのか?と非常に心配にもなります。


外務省などによると、伊藤さんは現地時間26日午前7時(日本時間同11時半)ごろ、ジャララバード近郊のダラエ・ヌールで自動小銃を持った4人組にアフガニスタン人の運転手とともに拉致されたという。地元警察が捜索中に武装勢力と銃撃戦になったという情報もある。アフガニスタン政府側は一時、「伊藤さん解放」と日本側に連絡したが、後に「誤報」だったと訂正。政府は首相官邸に情報連絡室を設置して情報収集を進めている。伊藤さんは平成15年12月から、現地で農業支援などの活動をしていたという。
8月27日 産経新聞

■現地で足掛け5年間も踏ん張っていた伊藤さんには、多くのアフガニスタン人たちが信頼を寄せ、感謝もしているそうですが、その気持ちがまったく通じない者がうろうろしているのが現状なのは悲しい話です。えてして短絡的なテロに走る若者の多くは、教育も受けられない貧困状態に育ち、それに付け込んでテロの道具に利用しようとする悪い奴らが熱心に「教育」を施して立派な?テロリストに育て上げてしまいます。貧困と教育の問題は、これからますますグローバル化した世界の大問題になって行くのは分かっているのに、「外国の福田」政権からは内政・外交の両面で、この点に関する素敵な発言は出て来ませんなあ。今でも世界中で教育を支援する活動をしている多くの日本人がいるというのに……。

日本の宿題 その伍

2008-08-29 15:10:51 | 外交・情勢(アジア)
■以前に比べてアフガニスタンも随分と近くなったものだと、この2日間の報道を見ながら感じております。皆様のNHKが日中共同取材の大看板を立てて制作した『シルクロード特集』でカイバル峠の巨大な九十九折(つづらおり)やバンディ・アミール湖の神秘的な青色に驚かされたものですが、戦乱さえなければ多くの観光客が押し寄せるであろに、と他国のことながら残念に思います。1970年代頃は世界で一番麻薬が安く簡単に手に入る国として有名になったこともあり、怪しげなバックパッカーが集まったものですが、ソ連の侵攻から紆余曲折があって、とうとう世界最大の麻薬生産輸出量を誇る?国になってしまったようです。

■宗教思想の対立が取り沙汰されてる裏側では、相当に胡散臭い組織が非合法な密輸活動をしているのは間違いありません。水利工事や農業開発、そして何よりも教育施設が緊急に必要とされている場所が、麻薬と武器の密輸で賑わっているのですから、これは悲劇以外の何物でもありません。


……外務省は27日、カブールの日本大使館職員を現場近くに派遣するなど、情報収集体制を強化する。今後、事態の変化に応じて緊急対策本部(本部長・山本一太外務副大臣)を随時開催して対応する。外務省幹部は27日朝、記者団に対し「いろいろな情報があって(状況は)よく分からない。身代金の要求は聞いていない。政治的な背景は無いだろう」と語った。
8月27日 読売新聞

■情報が錯綜して詳しい状況が分からないのに、どうして「政治的な背景は無い」などと断定的に言えるのでしょう?次の国会で給油活動に関する法案を通さねばならないからという理由で情報を捻じ曲げては行けませんなあ。希望的観測を混ぜ込んで、日本側の「政治的背景」に合わせた解釈は厳禁です!


……日本政府は外務省と首都カブールの日本大使館に対策本部を設置して情報収集にあたった。……山本一太外務副大臣が26日夜の記者会見で説明したところによると、現地日本大使館に「伊藤さんが解放された」との連絡があったのは、現地時間午後3時45分(日本時間午後8時15分)で、「アフガニスタン政府の責任ある当局者」から伝えられた、という。この時点で外務省幹部は記者団に「まだ現地日本大使館員が伊藤さんの顔を見たわけではない」としながらも、解放への期待感が広がりつつあった。

■そもそも、今のアフガニスタンに「責任ある当局者」などと呼べる人が居るのなら、NATO軍もブッシュ政権も苦労はしません!残念ながらカルザイ大統領はゴッツイ米軍にがっちり固められたカブール市内に籠もり切りで、欧米諸国から流れ込む援助資金を栄養分にしてすっかり腐敗した役人を従えて形ばかりの政府を店開きしているだけのようですから、それ以外の場所が無政府状態になっているのは想像に難くありません。日常生活の治安を維持するはずの警察組織が頼りにならなければ、誰もが自己防衛のために武器を携行する必要があるわけで、そんな場所に丸腰で乗り込んみ支援活動を続ける勇気と実行力には頭が下がる思いになる人が多いからでしょう。不毛な「自己責任」論争は起こらず、心許無い不確かな情報でも、「無事」と聞いて我が事のように安心した人も多かったはず。日本の国民レベルが少しばかり向上したのかも知れません。でも、外務省は相変わらず……。


この約1時間前、「犯人が伊藤さんを拉致して農家に立てこもっているが、警官と住民約1000人が包囲しているようだ」(政府高官)との情報も入っていたためとみられる。だが、「解放情報」から1時間後、アフガン当局側から「先ほどの連絡は誤報だった。現在も捜査中だ」と訂正の連絡があり、一転して重苦しい雰囲気に。「アフガン当局は伊藤さんの安否を確認していない」(山本副大臣)ことが判明した。

■信頼出来る警察組織が存在しているのなら、パキスタンとの国境が融解して穴だらけになどなりませんし、イラクで失業?したアルカーイダ一派が退去して国内に流入することなど不可能だったはずです。各家庭に1丁以上の機関銃が行き渡っているような場所で、拉致犯人を包囲などしたら暴発を含めて一発の銃声が切っ掛けとなって一斉射撃の撃ち合いが始まり、流れ弾や兆弾で味方の同士打ちも起こるでしょうし、立て籠もった側も自暴自棄になって……。


山本副大臣が解放情報を訂正するための記者会見を行ったのは、日本時間で26日午後9時40分過ぎ。誤報の原因について山本副大臣は「アフガン政府はできるだけこの問題に対応したいという気持ちで、こういうことになったのではないか」と説明したが、表情には疲労の色が浮かんでいた。
8月27日 産経ニュース

■マスコミ(民放テレビ)に頻繁に顔を出している山本副大臣ですから、緊急記者会見の場でも緊張はしないのでしょうが、民放テレビの放言・暴言・お笑い茶化し番組の垢が付いてしまうと、発言に重みと信頼性が無くなってしまうような気がしますなあ。要するに軽率な印象が強くなって信頼性が失われます。アフガニスタンに飛んだはずの松浪チョンマゲ議員はどうなったのでしょう?

日本の宿題 その四

2008-08-28 13:52:27 | 外交・情勢(アジア)
外務省は26日、アフガニスタン東部ジャララバード近郊で武装グループに誘拐された日本人が、民間活動団体(NGO)「ペシャワール会」ダラエヌール事務所職員の伊藤和也さん(31)(静岡県掛川市出身)と確認した。同省緊急対策本部長の山本一太外務副大臣は26日夜の記者会見で、「安否は確認されていない」と述べた。アフガン政府は現地時間の26日午後、日本側に「解放」と伝え、1時間後にこれを否定、情報は混乱している。

■税金を使って世界中に大使館や領事館を設置しているのは、外務官僚のための福利厚生が目的でもなく、海外保養施設を提供しているわけでもありません。ましてや怪しげな蓄財の機会を与えるためでもありません。情報収集と邦人保護、そして外交交渉の下地作りという重大な任務があるはずです。マスコミの取材にも劣るような情報収集しかせず、民間の安全保障会社の方が遥かに頼りになるなどと陰口を言われるような在外公館は、いっそのこと民営化するか解体して撤収するくらいの荒療治が必要かも?出先機関に情報収拾能力が無い上に、本国の外務省には分析能力が無いとなったら、国民は何も知らずに丸腰で海外に出かけねばならなくなります。

■内外のマスコミが流す報道を見て、「危ないから行かないように」と勧告するのも大切な仕事なのでしょうが、現地にしっかりと根を張って良質な情報を吸い上げて集めて欲しいものです。


現地警察幹部などによると、伊藤さんは現地時間の26日午前6時ごろ、ナンガハル州ケワ地区を車で移動中、さらわれた。犯行グループは4人で、銃撃戦の情報もある。4人は隣接するクナール州に逃亡を図っていると見られ、治安部隊が追跡中で、犯人1人の身柄を確保した模様だ。

■ここにも「銃撃戦」の話が出て来ます。朝の6時に拉致誘拐事件、それも移動中の事ですから、そこで銃撃戦が始まったのなら伊藤さんの一行には武装した人物が同乗していたことになります。丸腰が基本の支援活動とは言っても、地元の人達が用心のために銃を携行していたのでしょう。命懸けで生きねばならない場所だと分かります。


「ペシャワール会」の福元満治事務局長(60)は26日、バンコク滞在中の同会現地代表・中村哲医師(61)が事件現場の同会スタッフから聞いた情報として、犯人は村人だと説明。伊藤さんの生活拠点「ダラエヌール診療所」から約1キロ離れた、伊藤さんが普段活動しているブディアライ村で、大勢の村人が犯人を囲んで伊藤さんの解放を迫り、スタッフは伊藤さんの無事を肉眼で確認したという。

■まだ事件の真相は不明ですが、「犯人は村人」という断片情報は真偽不明ながらも衝撃的です。よかれと思って実施する支援活動にも、必ず不平不満を感じて騒ぐ困った者が付き物ですからなあ。変に「支援ズレ」している場所だと無償で貰える物やサービスに対して愚かしく貪欲になる者が必ず現われるものです。もっと悲しいのは、支援の意義より個人の欲望や都合を優先して将来に想定される大きな希望を阻害するような人物が現われる事です。

■伊藤さんが頑張っていた場所ほどの危険は無かったものの、ちょっと不便な場所で4年ほど孤軍奮闘した小さな体験をした身としては、現地に渦巻くやっかみや嫉妬、絶望の中に根付く過大な期待と怠惰な姿勢との矛盾、支援している対象の裏側にある巨大な権力や暴力などなど、拙著『チベ坊』にも差し障りの無い程度に抑えて書いたいくつかの実例にも通じる問題が浮き上がって来ますなあ。

■犯人とされる村人の裏には復活したタリバーンが触手が伸びていたのかも知れませんし、ペシャワール会の運営理念と姿勢に合わない怠惰な感性の持ち主が方向違いの被害妄想を育てた可能性もあります。


アフガン情勢に詳しい自民党の松浪健四郎・外交部会長は26日深夜、カブールに向け出発した。
8月26日 読売新聞

■松浪議員が現地でどれほど活躍できるのか?遺体の搬送手続きを少しばかり円滑にしてくれるだけかも知れませんが、「日本人の嘆きと義憤」をしっかりと国を代表して伝えて来て欲しいものです。本当にこんな事が続くと、日本中の人々がアフガニスタンを嫌いになって見棄てしまうことになりますからなあ。

日本の宿題 その参

2008-08-28 13:51:10 | 外交・情勢(アジア)
■北京の五輪大会が始まる前からアフガニスタンとパキスタンでは凄惨なテロ事件が連続していた事を、多くの日本人は知らないまま五輪報道に引っ張りまわされたようなものです。

アフガニスタン中部ロガール州で13日、米国の援助団体の四輪駆動車が攻撃を受け、外国人女性3人とアフガン人運転手の4人が死亡した。……現場はカブール南郊の幹線道路で、5人の男が車を待ち伏せし銃撃した。死亡した3人はニューヨークに本部がある「国際救助委員会」のスタッフで、アフガン東部からカブールへ戻る途中だった。米国、カナダ、トリニダード・トバゴ国籍だという。……タリバン報道官を名乗る人物が犯行を認めたという。治安が悪化しているアフガンでは今年、19人の援助関係者が殺害され、昨年1年間の15人をすでに上回っている。
2008年8月13日 毎日新聞

■安全だと言われていたカブール市の近くでも、このような「待ち伏せ」襲撃事件が起こっていたのですから、更にパキスタン寄りの山岳地帯ともなれば危険度は跳ね上がっていることでしょう。ペシャワール会としても、急激な治安の悪化に対応して現地に展開しているプロジェクトの半分ほどを中断して、支援メンバーを退避させる決定をしていたという話ですし、事件が起こった場所はテロ事件が起きない特異な場所だったという話もあるようです。


アフガニスタンで「ペシャワール会」(本部・福岡市)の伊藤和也さん(31)が拉致されたが、26日夜、在アフガニスタン日本大使館から外務省に解放されたとの一報が入った。現在、外務省が伊藤さんの安否確認を急いでいるが、今回の事件による日本の対アフガン支援について日本政府は「影響は低い」(外務省関係者)とみて、12日召集の臨時国会では、インド洋での海上自衛隊の補給活動を継続する新テロ対策特別措置法(来年1月15日期限)の延長法案成立に向けた努力を続ける方針だ。

■夜になって流れた、この「解放」という未確認情報が政府関係者ばかりでなく多くの日本人を安堵させたのでしたが、飽くまでも未確認情報だったのでした。ペシャワール会の活動に関しては、複数のメディアが取り上げてもいましたから、代表の中村氏が現地で行っている支援活動の概要を知る人も多かったのでしょう。政治的な思惑とは無縁な現地の人々との交流を通して得られた知見に基づく必要最低限度の医療と農業に関する援助活動は、誰の目にも好ましく立派なことに映っていたはずです。


政府としては今回の事件の背景がどうであれ、国際社会での「テロとの対決」をめぐる共闘を貫く決意は揺るぎないとの立場だ。このため、今回の事件を今後の対アフガン支援の是非には結びつけない考えだ。ただ、対アフガン支援をめぐっては、公明党が新テロ対策特措法について、3分の2以上の賛成による衆院再議決も視野に入れる政府・自民党の方針に強いアレルギーを示し、陸自の本土派遣も反対してきた。

■イラクで起こった日本人拉致事件では、自衛隊の派遣問題が前面に押し出されて人質と犯人との間に奇妙な意見の一致が伺えるというので、狂言説まで飛び出して大混乱したのでしたが、今回はアフガニスタンでは誰も知らないとも言われるインド洋上での給油活動を継続するかどうかという迂遠な話なので、テロリスト側としても給油活動の効果や意義が分からないのではないでしょうか?今のところは洋上であろうと陸上であろうと、「自衛隊」の派遣問題は出ていないようです。これは喜ぶべきことなのでしょうか?


……福田首相はインド洋での補給活動継続を「国際公約」と位置づけ、延長法案の成立を臨時国会の重要課題の1つに掲げている。自民党内には「補給活動が継続できなければ福田内閣が退陣に追い込まれかねない」(閣僚経験者)との見方もあり、政府は新テロ対策特措法の延長問題とは切り離し、伊藤さんの安否確認と詳しい情報の収集を急いでいる。
8月26日 産経新聞

■拉致事件と給油延長問題とは、テロリスト側の方で「切り離し」ているのですから、日本政府が慌てることもないと思うのですが……。ネジレ国会と近づく総選挙で、外交・防衛問題が漂流し続けているのでしょうが、政治的混乱が続くパキスタンと意地でも核開発を進めようとしているイランに挟まれたアフガニスタンで、善意のボランティアが殺害されたのを、単なる偶発的な悲劇などとは考えずに、これを切っ掛けとして「不安定の弧」に対する日本の態度を考えるべきでしょう。給油活動に過不足があるのなら、それを正すための議論が必要でしょうし、憲法に不備があるのなら国会で話し合わねばなりますまい。「強い憤りを感じる」というのが福田首相のコメントなのだそうですが、発言者の名前が付いてなければマスコミが拾った「町の声」と区別が付きませんなあ。

日本の宿題 その弐

2008-08-28 09:18:38 | 外交・情勢(アジア)
■既に悲しい知らせが入っているようですが、福田ホイホイ外交の正体が垣間見えるようなドタバタ劇を追跡してみます。

外務省の兒玉和夫外務報道官は26日夕の記者会見で、アフガニスタンで拉致された伊藤和也さんの安否について、カブールの日本大使館を通じて「情報を確認中だ。関連情報の収集に全力を挙げている」と述べた。犯行グループからの接触などについては「一切コメントを差し控える」と語った。……26日現在でアフガンには非政府組織(NGO)関係者など149人の邦人が在留している。同報道官は「退避勧告にもかかわらず、現地にとどまり活動するのは好ましくない」と指摘した。
8月26日 時事通信

■またまた不毛な「自己責任」の論争が起きいことを願うばかりですが、武力でタリバーンを壊滅させようとしても、名にしおう文明の十字路アフガニスタンですから、かつてのアレキサンダー大王やチンギス・ハーンの遠征みたいな訳には行きません。首都のカブール近辺しか国家の主権は効力を持たず治安状態は最悪で、ブッシュ大統領が見当外れのイラクで戦争をしている間にアフガニスタンは世界一の芥子畑になったしまったのでした。国際社会から隔絶した麻薬帝国が生まれて闇の武器商人から好きなだけ物騒な兵器を買い集められるので、NATO軍の犠牲者はどんどん増える一方です。北のロシアからも東隣のパキスタンからも、ロシア製・チャイナ製・北朝鮮製の武器が密輸されているのでしょう。

■麻薬にしかならない芥子ではなく、まともな食糧になる作物を育てる手助けをする者が居なければなりませんが、国連も指を咥えて見ているしかないアフガニスタンは、かつて大英帝国が自慢の真っ赤な軍服を標的にされて苦戦し、そこの大地の色に染め替えたという屈辱を味わった場所であり、初のオリンピック大会を控えていたソ連が簡単に制圧できると勘違いして世界の笑い物になってしまった場所がアフガニスタンです。その時にせっせと米国が大金を注ぎ込んで育てたのがタリバーンでありアルカーイダだったそうですから、米国追随の外交方針を貫く日本としても決して他人事ではありません。イラクに続いて復興や治安活動のための地上部隊が投入できないか?と本気で検討して断念したのは北京五輪のちょっと前のことだったはずです。危なくて自衛隊も入れない場所ですから、一般人には入って欲しくないという外務省の言い分も分かります。

■でも、誠実な援助を必要としている場所というのは得てして危険がいっぱいの物騒な場所と相場が決まっていて、税金を使って国会議員が大名旅行で立ち寄れるような場所ではないのです。さまざまな危険があるのを承知で、新しい国づくりに協力したいと外務省が尻込みするような場所に乗り込んでいく若者が日本にも居ることを誇りに思うべきでしょう。


……ペシャワール会と外務省邦人テロ対策室などによると、スタッフは静岡県掛川市出身の伊藤和也さん(31)。26日午前6時(日本時間同10時半)ごろ、アフガン人運転手とともに、銃で武装した4人の男に拉致された。警護スタッフはいなかった。身代金などの要求はないという。……伊藤さんは他の日本人スタッフ4人とともに、ジャララバード北方約30キロのダラエヌール渓谷の診療所を拠点に、農業支援をしていた。拉致現場は診療所の南東1~2キロに位置し、試験農場のあるブディアライ村付近とみられる。

■同会を運営してる中村氏は医師でもありますから、医療活動が中心でしたが病気以前に飢餓と貧困という大問題が横たわっているわけです。外務省の言うように危ない場所だから見棄てておけ、というのも酷い話です。外務省の仕事というのが、どこかの国の腐敗役人に賄賂をたかられながら莫大な税金を使ってODAを続けることなら、役人や政治家を介さない現地の人達と直に協力して手作りの復興作業をする事の方が、世界の平和と幸福のためには役立つような気がしますなあ。


福岡市の事務局で記者会見したペシャワール会の福元満治事務局長は、4人組は反政府勢力ではなく現地住民で、住人同士のトラブルに巻き込まれた可能性がある、と説明した。……4人組は地元自警団に山に追い詰められ、その際に運転手は逃げ保護された。その後、約100人の村人が伊藤さんの行方を捜索したが、山に置き去りにされたとの情報や、4人組と一緒に行動しているなどの情報が錯綜している。

■「運転手が逃げ出した」というのが事実なら、伊藤さんは「売られた」可能性も出て来ますが、「銃撃戦」があったとの情報もあるようですから、混乱の中で生じた隙をついて1人で山を駆け下りて来たとも考えられます。そして、本当に銃の撃ち合いがあったのなら、衆寡敵せずというわけで足手まといの人質を始末して犯人が逃走するという最悪の展開も考えられるわけです。どちらにしても、非常に危険な状況になっていたのは確かでしょう。


捜索は同日夜、日没でいったん打ち切られ、27日の夜明けを待って再開される見込み。福元事務局長によると、27日朝に伊藤さんの身柄が引き渡されるとの未確認情報もあり、自警団が指定された場所に向かうという。一方、複数のタリバン関係者は毎日新聞に犯行を認めた上で、治安当局と銃撃戦となり、「死傷者が出た」と答えた。犯行の目的については、拘束されている仲間の釈放を求めるためだと説明した。伊藤さんは同会のボランティアに参加し03年12月からダラエヌールでサツマイモや飼料用作物などの栽培支援をしていた。
8月26日 毎日新聞


■「仲間の釈放」を目的として無関係の人間を拉致して取り引き材料にするという手口は、残念ながら劣勢に立たされたテロリストがよく使うものですが、超法規的な取り引きの材料に選ばれたとすれば、伊藤さんの存在はとても大きかったと犯人側も認めていることになりますし、拉致事件が発生した直後から現地の人々が大掛かりな山狩りを始めている事からも証明されています。考えてみれば、日本中が北京五輪のお祭騒ぎをしている間にも、アフガニスタンの山奥で地道な援助活動を続けていた日本人が居たという事実にはっとさせられるのですが、大会初日に起こったグルジアとロシアとの軍事衝突も五輪競技の結果や「感動物語」に押し出されてしまい、その深刻さがきちと報道されたのは大会の後ということになりました。

日本の宿題 その壱<

2008-08-27 17:26:36 | 外交・情勢(アジア)
font color="#000000">■夏休み最後の週ですから、日本中の小中学生は宿題と日記と天気調べ?などで追い込みに忙しいことと存じますが、日本の大人たちも長い間見てみぬ振りをしていた大きな宿題に手を着けねばならなくなっているようです。オリンピックの後始末もありますが、小泉改革の後始末はもっと大変ですし、野合としか言いようが無い自公連立内閣の清算も間も無く始まりそうですなあ。いよいよ大物の「証人喚問」が実現するかも?

■そんな事より外交という国家の命運が懸かる重大事を、いよいよ自前でやらねばならなくってしまった日本の政府が、何としたことか選りに選って福田ホイホイ内閣なのですから、これは一大事!


外務省邦人テロ対策室によると、26日午前、アフガニスタン東部ジャララバードで活動する非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の職員、伊藤和也さん(31)が何者かに拉致されたと、国連機関を通じて在アフガニスタン日本大使館に連絡が入った。同省が事実関係を確認している。

■これが北京五輪が何とか無事に?閉幕した2日後の夕方に日本中を駆け巡った第一報でした。その大会でテコンドー男子58キロ級に出場したルホーラ・ニクパイ(21)選手が三位決定戦でスペインの選手に勝って史上初の銅メダルを獲得した!という実に目出度い話があったのは8月20日の夜でした。前の文科省副大臣をしている松浪さんがアフガニスタンで指導したレスリング種目でなかったのは残念でしたが、文字通りの「平和の祭典」に相応しいアフガニスタン初のメダル!だったのに……。やっぱりオリンピックに参加している場合ではない国情だったようです。


アフガニスタン東部ジャララバードで発生した日本人拉致事件で、外務省は26日午後、在アフガニスタン大使館に佐藤英夫大使を本部長とする現地対策本部を設置した。また外務省領事局に連絡室を設置した。
8月26日 毎日新聞

■「対策本部」だの「連絡室」だのと言っても、専用電話の1本でも引けば良いくらいで、看板を作って机上にプレートでも立てただけでは、何の役にも立ちそうもありません。拉致されたのは中村哲医師が立ち上げた「ペシャワール会」のメンバーだそうです。1984年からパキスタンやアフガンで病院を運営しながら、手作りの灌漑施設や農業の支援を続けている頼もしい組織として有名です。以前からゲリラと間違われて米軍ヘリに銃撃されたという話も聞いていましたし、復活したタリバーンの攻勢も激しさを増していると連日報道されていますから、中村医師も徐々にメンバーを召還していたという報道もあります。

■祖国?の復興や発展よりも、イスラム教の聖戦の方が大事だと信じ込んでいる連中には、何を言っても通じないのでしょうが、事は一つのボランティア組織が被った災難では片付かない流れがありますなあ。公明党が本心では反対しているのに与党の座を降りたくないばかりに賛成しているインド洋での給油活動は、次の国会で期限の延長をしないとアフガニスタン作戦に支障が出ることになります。良識の府?の参議院で否決されても衆議院で強引に再可決するつもりの自民党と、「平和と福祉の公明党」の看板に傷を付けたくない公明党とが解散総選挙と東京都議選とを睨んで、まったく外交問題とは別に話し合いを続けているとか……。原理も原則もあったものではありませんなあ。


アフガニスタンでNGO「ペシャワール会」職員、伊藤和也さん(31)が誘拐された事件で、外務省は26日夕、緊急対策本部(本部長・山本一太副外相)を設置し、現地の情報収集と早期解放への取り組みを進めている。また、自民党外交部会長の松浪健四郎衆院議員(日本アフガニスタン協会理事長)は同日深夜、関西空港からアフガニスタンに向かう。被害者解放に向けて関係者らと交渉するという。
8月26日 毎日新聞

■役職の限界でもありましょうが、文科省副大臣時代に相撲協会をしっかり指導できなかった松浪議員が、アフガニスタンのテロリストと渡り合えるとも思えませんが、日本政府の姿勢を示す最低限度のパフォーマンスとしては意味があるでしょう。エジプトのカイロ大学卒業という変わった経歴を大いに利用している同じ自民党の某女性議員が「次期総理候補」などと噂されていれば尚更のこと、アフガニスタンと聞いてじっとしては居られなかったのかも?少なくとも公費を使って無意味な海外視察にぞろぞろ出掛ける役立たず議員よりは遥かに意味のある派遣と思われます。夏休み中の外遊ラッシュの時、誰もアフガニスタンへもイラクへも行かなかったようですなあ。ドバイには何人も行ったのに……。

北京五輪の内と外 その参百弐拾

2008-08-27 13:10:42 | チベットもの
■星野監督の「金しか要らない」発言は「カネしか要らない」と読むのが正しいのではないか?などと厳しい非難が続いている北京五輪後の日本でありますが、帰国早々にソフトバンクの川崎宗則内野手の左足第2中足骨が疲労骨折していたのが発覚したのに続いて、今度は星野監督がシニア何とかを務めているタイガースにもトンデモない「お土産」が見つかったそうですなあ。

北京五輪で日本代表の4番を務めた阪神・新井貴浩内野手(31)が腰を疲労骨折していたことが26日、明らかになった。1週間の安静後にリハビリに入るが、レギュラーシーズン出場が絶望となる可能性が出てきた。……帰国後の25日に大阪市内の病院で精密検査を受け「第5腰椎疲労骨折」と診断された。

■足首や股関節が破壊されたマラソン選手も出ましたが、まことに「スポーツは健康に悪いものだ」と改めて考えさせられます。適度な運動は医師も薦めるところですが、記録や名誉が関係する競技となりますと限度を忘れて体を壊すまで頑張ってしまうのが人情と言うものなのでしょうが、世界でも珍しい学生虐待としか思えない甲子園の高校野球という恐ろしいイベントを毎年欠かさず楽しむという残酷な趣味を持つ日本ですから、限度を忘れる事を美化してしまう傾向があるのでしょうなあ。そんな伝統が、どれほどの被害者を出して来たことか……。

■人権や健康の大切さを主張しているはずの新聞社が、炎天下に若者を集めて連投に継ぐ連投を強いいるわ、星野ジャパンばりに短髪丸坊主を推奨するわ、時には怪我や故障を隠して耐える選手を褒め称えたりもするようですなあ。プロ選手ともなれば自分の体は商売物ですから、自己管理が当然でしょうが、学校の名誉だ伝統だ!と周囲が圧力を掛けると不慮の事故や悲劇が起こるものです。確かに限界に挑戦する自己鍛錬や克己心は人間の成長には欠かせないイニシエーションではありますが、大人の欲得勘定の犠牲にしてしまうのは行き過ぎというものです。

■「金メダル候補」などと勝手にマスコミが煽り立てれば、休養や治療は二の次にして努力、努力の毎日を送らねばならない選手は可哀想です。メダルの皮算用に注ぐ熱意の半分でも、選手の心身を気遣う気持ちに回したらどうでしょう?特にマラソン競技では、円谷幸吉という忘れられない悲劇を歴史に残している日本なのですから……。


腰痛を発症した当初、7月16日に受けた検査結果は「第4、第5腰椎の椎間関節炎」で、同日から9試合スタメンから外れた。同26日の中日戦(甲子園)から先発復帰したが、前半戦ラスト2試合はスタメン出場できず。五輪出場を強行したことで、症状が悪化したものと見られる。

■日本代表の4番打者としては「不安」だと言われていた新井選手が、本当は怪我人だったと分かっていれば、結果は違っていたのかも知れません。熱血!闘将!などと持ち上げられて、それを売り物にしている星野監督からの指名や命令には逆らえないものがありそうですし、社員を過労死させてしまう経営者や管理職が多いと言われる日本には、休ませない文化のようなものが根付いているようです。女子ソフトボールの「鉄腕」上野投手にしても、マスコミが褒め称えた400球を超える連投についても、反省しておく必要があるでしょうなあ。馬鹿な指導者が「上野選手を見習え!」などと言い出したら大変ですぞ。


球団の常川チーフトレーナーは「1週間は患部の安静が必要。その後は様子を見ます」と説明した。歩行には問題なく、患部をコルセットなどで固定する必要もないという。……寝耳に水の報告に戸惑いを隠せなかったのが岡田監督だ。北京では全9試合にフルイニング出場し、打率2割5分7厘、1本塁打、7打点……「フル出場してたからな。こっちは、試合に出とったら元気やと思うやんか」と指揮官は絶句。……

■フル出場しているから元気なのか?自分の肉体を磨り潰して無理を重ねているのか?誰かが近くで察してあげないと、もっと凄惨な悲劇が起こり兼ねませんなあ。「金メダルだ!」「日の丸だ!」「国の威信と伝統だ!」と監督が1人で吹き捲っていれば、選手は故障を言い出し難いに違いありません。それを星野監督は「夢」の一言で言い抜けようとするのでしょうが、選手やファンにとっては「悪夢」でしかありません。さすがの星野監督も、自分が深く関係している球団の選手ですから、支離滅裂な強弁はできないようです。


……星野仙一監督「申し訳ない気持ちでいっぱいです。よく頑張ってくれただけに、そこまで悪かったんだと…。みじんも見せなかった。そこまでひどかったとは…。そういうふう(骨折)にしてしまったのは私の責任。タイガースと、タイガース・ファンに申し訳ないです」
8月27日 スポーツ報知

■何だか狂気のサービス残業を社員に強いておきながら、お葬式に出席した叩き上げの社長さんみたいな「そこまでひどかったとは」の一言が悲しいですなあ。選手生命を失うほどではないことがせめてもの救いでしょうか?でも、大会中に写真集まで出しているような選手が、突如として坊主頭になる精神風土は、円谷幸吉の悲劇に通じる危険があるような気がしてなりません。ほんの10年前までは、「水を飲むな!」「うさぎ跳びをしろ!」などの野蛮な指導方法が正しい事だと信じられていたわけで、星野監督はその時代に学生野球で鍛えられプロ球界で活躍したのですから、三つ子の魂百までという事があるのかも知れませんなあ。

■金メダルを掻き集めたチャイナが、これからどんなスポーツ文化(政治)を進めて行くのかは分かりませんが、「スポーツはカネになる」と広く知れ渡ったからには、人命軽視の伝統と歴史が恐ろしい姿で復活して来る可能性もありますぞ。

北京五輪の内と外 その参百壱拾九

2008-08-27 11:52:59 | チベットもの
■案の定、チャイナ国内では「大成功!」の自画自賛報道が一斉に始まり、欧米からも商売熱心な連中からはそれなりに金儲け用のインフラが整った事を喜ぶ好意的な評価が出始めているようです。でも、こやつらは北朝鮮とも熱心に商談を進めているような輩ですから、本当に北京市民やチャイナの人民たちの将来を考えて発言しているかどうかは分かったものではありませんが……。とは言ってもチベット問題をころりと忘れてマスコミの「感動物語」にあっさりと乗ってしまう日本とは違い、欧米からは北京政府がIOCに約束した人権問題と情報統制の改善はどうなった?!と厳しく追求する声も出ているようです。

「中国は五輪招致の際、表現の自由の拡大や人権問題の改善を約束した。われわれは今、その約束がウソだったことを知った」。22日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は「獄中の五輪」と題した社説で、人権や報道・言論の自由に対する中国政府の対応をこう批判し「中国は『弾圧』でも金メダルを取った」との見出しを掲げて非難した。

■「条約は破るために結ぶのだ」と言い放ったのはヒトラーでしたが、チャイナの場合は「約束」には言外の前提条件がいろいろと付いているのだ!という立場のようです。自分の国では暗黙の「常識」でしょうが、それを隠したまま国際公約のように平然と発表してしまうところにチャイナの「文明」の限界があるのでしょうなあ。大会が終わった今でも、共産党の命令一下に150万もの人々が監視員・応援団・道案内・旗振り役・空席の埋め草などに動員される異様さに当惑しているのでしょうが、この半世紀にわたるアメと鞭を組み合わせた共産党独裁体制を身を以って学んだ人民は、たとえ外国から「獄中」呼ばわりされても、笑って聞き流す忍耐力を持っています。

■五輪大会の期間に限って「弾圧」が特に強化されたという認識も無いでしょう。もっと凄い事が過去に起こったことを生々しく覚えている人達ですから、海外メディアが初めて知ったように騒いでいるのを不思議な現象だと思っているに違いありません。


同紙(ワシントン・ポス)は「中国の勝利」と題した25日付の解説記事でも、「勝利」という言葉に痛烈な皮肉を込めて、「中国人にとり、ブッシュ大統領ら多くの国際的指導者の五輪出席は、政治的抑圧を続ける中で中国共産党の支配を世界各国が支持したことを意味する」と外部世界の対応もやり玉に挙げた。

■100人近くも集まった各国首脳の中で一番暇そうだったのがブッシュ大統領でした。競技場にも応援に出掛けて自国の代表が金メダルを獲得した姿を楽しんだようですが、故意か偶然かは知りませんが、しっかりと会場に流れた米国国歌は途切れてしまって苦笑いさせられたのでしたなあ。あれも小さなチャイナの勝利なのかも?仮にチャイナの選手が優勝した会場で同じミスをしたら、音響担当はどんな目に遭ったでしょう?


23日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)の社説は「(中国当局が五輪成功を)影響力の増大に使い、国内統制を強化する危険もある」と警告した。……「中国政府はいかなる譲歩も申し出ることなく、(五輪の成功を)懐に入れた」と、国際オリンピック委員会(IOC)などの対中弱腰姿勢をも批判し、「ブッシュ大統領や他の指導者は、中国政府に五輪公約の不履行が黙殺されることも忘れ去られることもないと伝えるべきだ」と、圧力の継続を訴えた。

■何処の国の首脳も景気後退に頭を悩ませていますから、もうしばらくは?生産と消費の大きな役割を果たしているチャイナと喧嘩をするわけには行かないのでしょう。人権派を気取るフランスのサルコジ大統領も、結局は自分の方から折れて開会式に顔を出したくらいですから、敬虔なキリスト教徒で自由のためには戦争も辞さないブッシュ大統領も共産党が管理している教会で何事かを祈って見せるだけでした。約束の「不履行」という事実を忘れないで欲しいのはマスメディアに対して切望することです。


2012年のロンドン五輪を催す英国の主要紙デーリー・テレグラフ社説は「誰がアテネやアトランタ、シドニーやソウルの開会式を思い出せるだろう。陸上トラックやプール、競技場の中で起きたことは(記憶から)なくなることはない」とし、合成花火映像や9歳少女の「口パク」、多くは最大民族漢族が扮した「56民族の子供」など、開会式の演出を批判的に論じた。

■莫大な放送権料を支払ったテレビ局としては、なかなかの視聴率を稼ぎ出してくれた「開会式」には大いに感謝していることでしょう。しかし、邪推すれば世界中で開会式の中継を見守った人の半数以上は、バカ長い中華4000年のホラ話絵巻に辟易しながらも辛抱強く画面を観ていたのは「何事かが起こる」ことを怖いもの見たさが理由だったのではないでしょうか?ウイグル過激派が「公約」通りに各国首脳の何人かを巻き込むような大規模なテロ事件を起こすかも?と素人が心配になるような「前夜祭」みたいな事件が頻発していたのですから……。


……25日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は開会式や競技会場の充実を称賛しつつも、「(ロンドンでは)空席を満たし、報道陣へのインターネット接続を許可し、デモ申請者を刑務所に入れないようにすれば、北京の水準を超えるのは簡単だ」と、北京五輪の異質性には辛辣だった。
8月26日 産経新聞

■英国らしいシニカルなジョークですが、的を射た指摘であります。すっかり商業化されてしまったオリンピックを、どこまで地味に演出して世界中の人々に『憲章』の存在を思い出させる工夫が出来るか、大いに興味が沸きます。まさか中華4000年のホラ話の向こうを張って「七つの海の支配者」だった太陽が沈まなかった大英帝国を虚しく誇るような虚栄の開会式などは企画しないと思いますが……。

北京五輪の内と外 その参百壱拾八

2008-08-26 12:11:59 | チベットもの
■星野ジャパンの惨敗を受けて、早々に渡辺恒雄からフォローの風が吹き、何故か文科省が思い付いたように「強化策」を発表!わざわざ北京まで出掛けて「せいぜい頑張ってね」などと歴史に残る間抜けな激励をしたくらい、五輪大会の競技や選手はまったく感心を持っていない福田ホイホイ首相の内閣が、どうして大急ぎで特別な予算を計上することにしたのか?既に解散総選挙の日程が実しやかに噂されているのですから、福田内閣は間も無く「死に体」になるのは目に見えています。しかし、ここで手段を選ばず支持率を少しでも上げるためには姑息な人気取り政策を連発しよう!という悪足掻きが始まる時期でもあります。しかし、こういう苦し紛れのマッチ・ポンプ政策にどれほどの効果が期待できるのでしょう?く

五輪でのメダルを量産しようと、文部科学省が、海外の競技レベルや選手育成方法を分析して戦略的に指導する「ナショナルコーチ制度」を新設する方針を固めたことが25日、分かった。東京都が立候補している2016年の五輪に向けたレベル強化策の一つで、平成21年度予算の概算要求に関連経費12億5000万円を盛りこむ。

■日本の財政は火の車ですから、「焼け石に水」にもならない低予算しか投入できないのでしょうが、どこかの省庁の年間タクシー代と同額の12億円程度を使って何をするのかと思えば、「ナショナルコーチ」を新設?有象無象が離合集散を続ける各種目ごとに乱立している協会組織に対して影響力を持つほどの権限が与えられるのなら多少の効果はあるでしょうが、お手盛り人事になるのは目に見えていますから、新たな名誉職が作られるだけではないでしょうか?


ナショナルコーチは、五輪に向けて各選手の出場大会を厳選するなど、技術的な指導を超えて総合的な戦略を構想し、現場の監督やコーチを統括する指導者。メダル圏内の有望競技を選んで、現在の専任監督・コーチとは別に新任する。JOCからの要請を受けた方策で今後、JOCと協議しながら具体案を詰める。処遇を安定させるため、国が報酬のうち一定の割合を補助し、JOCが支払う方式も検討する。

■批判の集中砲火を浴びる前に、JOCが政府に捻じ込んでやらせた予防策にしか見えませんなあ。北京五輪が悲惨な結果になったのは、こういう制度が無かったからだ、という言い訳を用意するだけなら12億円もあれば十分なのかも?


北京五輪で日本のメダルは計25個。「金メダル2けた以上、総メダル30個以上」の目標には届かずアテネより12個減ったが、8位までの入賞者は計77人でアテネと同数だった。文科省は「メダルが取れるかどうかは紙一重。単なる“熱血指導”にとどまらない戦略的なレベル強化が重要だ」としている。
8月26日 産経新聞

■メダルの質をまったく問わず、単なる「数」を増やすのなら、大した予算も使わずに済みそうです。そのヒントはチャイナが徹底して追及したやり方にあります。全302種目を並べてみれば、野球やソフトボールのように金メダルが1個しかない種目もあれば、最多の47個もある陸上競技や34個もある競泳もあるのですから、話は実に単純になります。メダルの絶対数が少ないビーチバレー、バレーボール、水球、シンクロ、ホッケー、ハンドボール、新体操、トランポリン、サッカー、馬術、トラック以外の自転車、そして、組織の内紛で参加出来なかったバスケットボールを入れて、こういう種目には期待もしないし、強化策も取らない!

■逆に47個の金メダルやトラック競技のメダルは諦めるにしても、フィールド競技での銅メダル狙いに集中する。体育授業を管轄する文科省が旗を振って予算を握るのですから、陸上競技に加えて金メダルが34個も用意されている水泳の授業数を倍化させ、民間のスポーツクラブにも助成する。盲点になっている穴場の種目をクラブ活動に加えている学校にはエコヒイキの助成をする。たとえば、ボート(14個)とカヌー(16個)、重量挙げ(15個)、体操(14個)、ボクシング(11個)、セーリング(11個)などが狙い目になるでしょう。そして極めつけが「射撃」です!金メダルが15個も用意されているのですから、自衛隊員と警察官の中から強化選手を数千人単位で選抜して「手当て」を支給し、年に数回の大会を開いて篩(ふるい)にかけながら残った候補者の「手当て」を積み増して行ってはどうでしょう?

■問題になるのは「柔道」で、確かに14個の金メダルが用意されていますが、日本の柔道とは似ての似つかないレスリング着衣部門になってしまったJUDOに、過大な期待を寄せるのは止めた方が文科省の「メダル量産」計画には合致しそうです。どうしても助成したいのなら、女子選手を重点に?先日、教育審議会あたりから、「武道を必修化」する案が出たようですが、五輪競技になっていない剣道は除外しないと「量産計画」に外れることになります。金メダルが1個しかない野球とソフトボールは論外になりますが、野球はともかく?ソフトはメダルが確実なので、残念ではあります。

■北京大会でチャイナが掻き集めたメダルの出所を調べ直せば、このような姑息で楽しくない「量産計画」が見えて来るという話です。こんなことまでしてでも、本当にメダルの「数」だけを増やしたいのかどうか、馬鹿な計画を始める前に国民的な議論をしておくべきでしょうなあ。

北京五輪の内と外 その参百壱拾七

2008-08-26 11:17:47 | チベットもの
■懲りない星野監督と(いろいろな意味で)長生きしている渡辺恒雄さんとは、これまた様々な意味で持ちつ持たれつの深い関係があることが、ぼろぼろになって帰国した星野ジャパンを迎えるに当たって更に明らかになったようです。公式な反省会見を除いて、星野監督がテレビ画面に登場したのは、日本テレビの『ZERO』だったそうですが、報道番組を私用に使っては行けませんなあ。ニュース番組に「コメンテーター」として星野さんが登場した時には、悪い冗談かと思ったものですが、長嶋一茂さんとセットになっていたので冗談が悲喜劇に転じたのでした。劣勢に立たされた夜の報道番組を「ゼロから立て直す」意気込みで始めるに当たって、長嶋茂雄の長男が職業になっている一茂さんとセットで(休職中の)星野監督が登場すれば、巨人軍の次期監督が誰なのかが国民に浸透するだろう、と誰かさんは本気で考えた?

■先のWBC優勝に続いて北京五輪でも金メダルを獲得し、来期の巨人軍監督就任を織り込んで来春のWBC監督にもなってしまえば、永久に不滅の巨人軍のブランドが再び輝き出す!とも、誰かさんは考えたのかも?


……日本テレビの報道番組「NEWS ZERO」に生出演。来年3月WBCでの“続投”について「負けた監督にチャンスを、ということだと思う。今は何とも答えられませんね」と話しながらも、今後については「叩かれてもチャレンジしてきた。叩かれるぐらいチャレンジして前へ進みたい」と前向きな発言も。また、北京での敗戦を踏まえて準備期間や対応力などを課題に挙げ、若い選手には「タフさ」を求めていた。
8月26日 スポーツニッポン

■「負けた者にチャンスを」というのは、星野監督が五輪大会で固執した采配の原理だったはずです。次が無い一発勝負の国際大会で、「情実采配」を続けたからボロ負けしたと指摘されているのに、それを自分の進退問題に適応してしまうのは、ちょっと我田引水気味。若い選手に「タフさ」を求めるなら、最初から北京市内の最高級ホテルなど使わなければ良いのに……。日本代表選手団の団長さんに名指し同然に批判された事に関しては、知らん振りを決め込んでいるようですなあ。

■福田内閣を誕生させた裏の立役者だったナベツネさんの「人を観る目」の頼りなさは既に定評がありますが、そんな人に「ほかにいるか?星野君にも欠点はあるかもしらんし、失敗したかもしらんが、じゃあ星野君以上の人物が、オレはいるとは思わない。星野君以上の采配を振るう人間がいるかね。いたら教えて欲しいよ」という、決して褒めているとは思えない理由で支持されても、星野監督の汚名は簡単に挽回されないと思われます。星野監督にとっても大先輩に当たる松永怜一さんが怒っておりますぞ!スポーツ記者や評論家からの批判は無視できても、東京六大学リーグで6度の優勝、田淵や山本浩二の師匠で社会人野球に転じては日本選手権で優勝2回、84年のロス大会で代表監督として金メダルを獲得した人からの苦言は真摯に耳を傾けねばならないでしょう。


……日本は銅メダルも逸した。悔しいし、残念でもあるが、それ以上に憤りもある。ロサンゼルス大会以降、アマチュアが苦労を重ねて積み上げてきた成果が、最後の最後に崩れてしまったからだ。……

■五輪競技として野球が刻んで来た20年間を、星野ジャパンが崩壊させたという指摘は、この人以外からは出て来ないでしょうなあ。男子陸上で初のメダルを獲ったリレー4戦士は口々に日本陸上の「長い歴史」「諸先輩方の苦闘」を語っていたのが印象的でしたが、星野監督の言動からは20年余りの「歴史」の影すら感じられなかったのは何故でしょう?


敗因はいくつもあるだろうが、私はオールプロの彼らが、最後まで「箱庭」から抜け出せなかったからだと思っている。プロの彼らは整った環境下で、年に140回ほども同じ相手と繰り返し戦う。だが、五輪は違う。異なる野球文化で知らない相手と戦わねばならない。自分の庭でいかに秀逸な技能を誇っても、それを五輪でも発揮できるかとなると、話は別だ。その点、アマは国際大会に慣れており、審判も含めて、対戦相手の全容をよく把握していた。

■この指摘は痛烈です。星野ジャパンは確かにプロ野球からの選抜チームでしたが、五輪などの国際試合に関して「素人」だと急所を衝いた指摘ですからなあ。福田団長の「そんなに甘いもんじゃない!」という発言と規を一にしています。


具体例を挙げれば、初戦のキューバ戦で星野監督が審判に猛抗議したシーン。国際大会に慣れている者には、考えられない行動だった。審判団は試合後に反省ミーティングを開く。「日本はいったいなんなんだ!!」となったのは必至で、ストライクゾーンなど日本へのジャッジが最後まで辛めだったことは、決して偶然ではないだろう。

■「闘将」などと煽てられたのが禍したのでしょうなあ。国際親善を最大の目的とする五輪大会で、アマチュアリズムの権化みたいな審判に対して喰って掛かったら、選手たちは「燃える」どころか恥ずかしくて萎縮してしまったかも?つまり、「金しか要らない」発言から、ボロボロになって帰国するまで、星野監督はずっと浮いていたようです。それを厳しく戒める声はマスコミからは聞こえて来なかったような気がします。


……ゾーンぎりぎりの捕球時、プロの捕手たちは微妙に手首を内側に返してゾーン修正していたが、何気ないこの行為も、国際大会では審判の技能をばかにしたことになり、10人目の敵を作ることになる。キューバ戦敗戦の翌朝、私は日本から田淵に電話して「星野に恥をかかせるな」と猛ハッパをかけたが、ベンチワークは最後まで改善されなかった。。
2008年8月24日 SANSPO.COM

■星野監督は落合スタイルを盗用するように、「自分のスタイル」で押し切ろうとしていたようですが、そんな独りよがりのスタイルは国際試合では通じないという事なのでしょう。どうして経験者たちに教えを乞わなかったか。実に不思議な話です。

10Bの衝撃

2008-08-25 15:12:26 | 日本語
■終戦記念日の頃、讀賣新聞のコラムに「B-29」と聞いて、「そんなに柔らかい鉛筆があったのか?」と問い返す若者が居るとか居ないとか、まるで石原慎太郎都知事が持ちネタにしている撃墜王の坂井三郎さんの体験談に似た素っ頓狂な話が載っていました。坂井三郎さんの方は、電車に乗っていた時の衝撃的な体験の話で、「昔、日本はアメリカと戦争したんだぜ。お前、知ってるか?」「えっ?それマジ?それでどっちが勝ったんだ?」というアホな若者の会話を聞いてしまったというネタであります。

■でも、超空の要塞「B-29」を知らないという事は、東京大空襲も原爆投下も知らないという事ですし、「B-52」も「B-1」なども知らないのでしょうなあ。そんな若者が持っている今の世界のイメージというのは、正真正銘の天下泰平と申せましょうなあ。思い出したように8月になると「戦争を語り継ぐ」企画番組をテレビが放送しても、新聞各社が特集記事を書いても、肝腎の若い世代には何も伝わっていないのなら、何とも寂しい話です。

■さてさて、小雨の中を歩いて近所の文房具店に入った昨日、必要な物を買って支払いを済ませたところ、レジの脇に見つけたのが「10B」鉛筆であります。ぎゅっと詰めれば鉛筆4本は入る箱に、たった1本だけ封入されている不思議な商品でしたから、感じの良い店員さんに説明して貰いました。箱には毛筆のように「はね、とめ、はらい」が自在に書けるとの説明書きがありましたが、それは本当なのでした!日本の文字文化はまだまだ元気なのだと、すっきりしない天気なのに、心は晴れ晴れとしたのでした。


ほぼ埼玉県限定で売られている、硬度「10B」の鉛筆があるという。その名は『筆鉛筆』。今年7月に発売されたばかりで、10Bという“硬さ”の鉛筆は、国内初というのだが…。発売元の三菱鉛筆埼玉県販売さんに取材を敢行したのです。
そもそも、鉛筆の硬度って何種類あるのでしょうか?

「日本国内では、9Hから6Bまでの17種類が標準となっています」

では、今回の『筆鉛筆』は18種類目の鉛筆となるのですね?

「いいえ、同じくほぼ埼玉県限定の硬度8Bという鉛筆があるんですよ」

10Bのみならず、8Bも埼玉県限定だったとは!! これっていったい、どういうことなのでしょうか?

「これらの鉛筆は埼玉県内で特に盛んな、鉛筆で美しい文字を書く『硬筆書写』用に開発されたものです。文字のハネやハライを表現するため、標準以上に“やわらか”な鉛筆が、県民に求められているのです」

ちなみに、鉛筆の硬度って、どのようにして決まるものなのですか?

「黒鉛と粘土の混合比率ですね。粘土が多いほど硬い『H(hard)』寄りとなり、黒鉛が多いほど『B(black)』寄りとなります。黒鉛が多いと、折れやすくなるため6Bより上は技術的に困難だったのですが×××(伏字は企業秘密)により、今回はじめて10Bの製造に成功したわけです」

使ってみると…その太さ、濃さ、滑らかさ&タッチの繊細さなど、確かに“筆”っぽい感覚! そういえば『筆鉛筆』だけ「10B」の表記が毛筆体だしね。デッサンなど、書写以外の用途でも役立ちそうなこの逸品。気になる方は埼玉県まで買いに行きましょう。(R25編集部)
8月25日 R25

■厳重に箱詰めされた1本400円以上もする商品なので、さすがに旅限無としても「試し書き」を求めようとは思いませんでしたが、書き味は正に筆のようで抜群らしいのです。箱をちょっと開けて断面を見せて頂きましたが、鉛筆自体の太さは通常の物を変わらないのに、芯の太さは尋常ではない!10Bの柔らかさを想像して、ちょっと前のチャイナ製の鉛筆みたいに削りたての芯がぼろぼろと崩壊して使い物にならないのではないか?などと余計な心配をしたら、店員さんは決してそんなことは無いと太鼓判を押してくれたのでした。

■残念ながら、今のところは硬筆習字の稽古をする予定はないので、「非常に参考になりました」とお礼を言って店を出たのですが、何とも嬉しい気分になった旅限無でありました。

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北京五輪の内と外 その参百壱拾六

2008-08-25 13:34:32 | チベットもの
■いろいろと物議を醸した開会式でしたが、テロ予告やら市内から追い出された可哀想な人民の怒りやら、当時は誰かが何かを仕掛けるのではないか?と変な予感を持ちながら無事に大会が終了することを願ったものでしたが……。

……閉会式が行われた24日、中国当局は雨天を避けるためロケット弾を発射、雨雲を散らした。……8日の開会式でも同様の「人工消雨」措置が取られている。24日午後8時スタートの閉会式が雷雨の影響を受ける恐れが出てきたため、午後2時から8時50分にかけて飛行機8機を飛ばし、雲を消す作用のある物質を大量に散布。同時に北京、天津、河北省から計241発のロケット弾を発射した。
8月25日 時事通信

■メイン会場周辺に配置された地対空ミサイルが話題になりましたが、とうとう一発も発射されることなく大会は終了したのでした。実に目出度いことであります。開会式では(CGではない)花火が盛大に打ち上げられ、それに負けないほどの人工降雨ロケット弾が使用されたのでしたが、閉会式でも同様の作戦が実施されたのですなあ。

■8月23日の讀賣新聞に、消雨ロケットの裏話が掲載されていました。これが何とも北京五輪を象徴しているような実に興味深い内容なのであります。


今月8日の北京五輪開会式に合わせて実施された「人工消雨」作戦で、北京ではその効果もあってか晴天がひろがったが、北京から南西約200キロの河北省保定市の農村部一帯で集中豪雨が発生、農産物などが被害を受けていたことがわかった。……同様の作戦が24日の閉会式でも行われる可能性があることから、再度の豪雨を心配する声が出ている。……

■IOCとの約束も勝手に破って報道の自由を制限した北京政府ですから、大会が終わったら再び都合の悪い話は徹底的に封印してしまうでしょうから、閉会式後に何が起こったかは分からず仕舞いになるかも?


「トウモロコシ畑で私の頭の辺まで鉄砲水が来た。どっと作物が流された」……開会式で中国全体が沸いていた8日夜、突然の集中豪雨に襲われた……。気象当局は同日、保定市上空にある雨雲が北京方面に向かうと予測。……市内各所で、人工的に雨を降らせる化学物質を積んだロケット弾計33発が発射された。……豪雨は9、10日も続き、3日間の総降雨量が1年分に相当する400ミリを超えた村もあった。……

2008ね8月23日 讀賣新聞

■畑を流された農民は「北京の『消雨』は、こちらの『豪雨』だ」と心配しているという記事なのですが、鳥の巣を中心に半径120キロの対雨雲「防衛線」を設定しての計1104発のロケット弾発射!北京を含めた広い範囲に雨を降らせながら渤海湾に過ぎ去って行くはずの雨雲を、局地的に刺激して消滅させれば雲の真下では豪雨になるのは当然でしょう。こういう無茶苦茶な事をやって大成功させた北京大会を、IOCの妖怪名誉会長は絶賛しているのですなあ。一党独裁の恐ろしさが如実に現われる実に残酷な話であります。

■保定市は幹線鉄道が通っているので、車窓からも畑が広がる風景が見えましたなあ。改めて地図を見て確認しましたら、北京から保定市を通る直線をそのまま南西に延ばすと、何と「農業は太寨に学べ」と毛沢東が絶賛したヤラセ密植農法の現場となった「太寨」という地名に目が止まりましたぞ。人民解放軍を動員して、農業の常識を無視した異常な密植を行って大豊作になった!というホラ話を、革命精神に満ちた山村の農夫たちの美談に仕立てて全国的にオカルト農法を普及させたばかりに、大飢饉を招いたアノ「農業は太寨に学べ」騒動であります。チャイナのお百姓さんは、いつも馬鹿な独裁政府に虐められているのだなあ、と閉会式に思ったのでありました。

北京五輪の内と外 その参百壱拾伍

2008-08-25 12:55:33 | チベットもの
■陸上や水泳など、文字通り世界の頂点を目指して人体の極限に挑む競技を考える時の緊張感をまったく欠いた野球報道は、どこか観光旅行の宣伝企画に似た気楽さがあったような印象もありますなあ。五輪大会に関して何か大きく勘違いしたままの星野監督は、根拠も自信も無いまま「金メダル発言」を繰り返すことが五輪大会への注目を集める効果があると思い込んでいた節もあって、最後まで勝ち抜く戦いの指揮官というよりも、JOCの広報特別顧問みたいな気分になって舞い上がってしまったのかも知れませんなあ。

■準備不足と周囲の協力不足、それだけでも苦しいのに、チーム設計がメチャクチャで長年鍛えた守備位置を簡単に変えたり、打順もころころ替えたりしていれば、当惑した選手は反感を抱くことでしょう。投手出身の監督なのに、投手の起用法が稚拙で無定見、そもそも「中継ぎ」を用意していなかったそうですから、最初からただの寄せ集めチームだった可能性さえありそうです。く


直前に欠場者が出たうえに、補欠選手の準備も間に合わなかったマラソンについて、「私自身が、北京に入ってから野口(みずき)の故障情報に接した。陸連の中でもマラソンの情報と強化は特別管理となっている。そういうやり方はよくない」と批判。「今後、こういうことが無いようにしっかり情報共有できるよう、強化体制をしっかり組み替えるべき」と日本陸連に注文を出した。
8月24日 読売新聞

■1人の出場選手の後ろには、膨大な数の関連団体のエライ人やスタッフ職員がぞろぞろとくっ付いているそうで、時々組織が分裂してバスケットボールみたいに出場さえ出来なくなることもあるとか……。船頭多くして船が山に登ってしまっては元も子もありませんなあ。選手のコンディションを誰も把握していないのなら、そんな組織は解体してしまわねばなりますまい。政治家の選挙対策や役人の天下り先、地方の名士?が求める名誉職、その程度の空疎な「支援」に公金を流し込み続ければ、日本のスポーツ文化は滅びてしまいそうですなあ。

■とは申せ、「オリンピックの華」と言われるマラソン競技で、すっかり死語になった日本語を聞いて胸を衝かれた人も多かったのではないでしょうか?


夏の42.195キロを走ってきたとは思えない。観衆に手を振る勝者は、日本で力を付けたワンジルだった。……「僕はスプリント力がない。だから長いスパートをかけた」と36キロすぎに3人の中から抜け出した。2時間6分32秒。わずか3度目のマラソンで五輪新を出した。スパートの1キロ前で給水に失敗。エチオピアのメルガがボトルを手渡してくれた。昨年12月の福岡国際を制した時の2位が、このライバル。「福岡で友達になった。あそこで水を飲んでいなければ、きつかった」と感謝した。

■日本で開催された国際大会で生まれた「友情」が北京のマラソン・コースの給水所で輝きましたなあ。ワンジル選手は見事な発音で微笑みながら「我慢、我慢」と言ってくれましたが、最近、この言葉を耳にしないとはっとした日本人はきっと多かったはず。「敵に塩を贈る」「武士の情け」「困った時はお互い様」「情けは他人のためならず」などなど、懐かしい日本の慣用句を思い出した人も多かったはずです。表彰式での日本式のお辞儀がまた愛らしかったですなあ。


15歳で来日。仙台育英高の留学生は全国高校駅伝で都大路を驚かせた。トヨタ自動車九州に入り、バルセロナ五輪銀メダルの森下広一監督と出会う。力は伸びた。だが、駅伝が大きな比重を占める企業の陸上部では限界がある。「サム」と呼び、かわいがってくれた監督との決別を決めた。6月、弁護士を通じ退社届を内容証明郵便で送り、練習のためケニアへ。監督は「おれは銀だった。サムには金を取ってもらいたい」と言って送り出した。日本で6年も暮らしてきたから、よく分かる。「森下さんにメダルを見せたい」と小声で言った。

■日本人にばかり注目する偏向報道の中には、たくさんの「師弟愛」の物語が織り込まれておりましたが、何と海を越えた師弟関係が有ったのですなあ。シンクロ競技でも似たような師弟関係が生まれているのですが、相手がチャイナだからなのか、あまり歓迎はされていないようなのですが……。


来年9月のベルリンで世界記録に挑むと宣言し、「できれば3分台」と驚きのタイムを口にした。2時間4分26秒の世界記録を持つエチオピアのゲブレシラシエは大気汚染を恐れ、北京の勝負を回避した。日本育ちの好青年が王権を奪う日が、来るのかもしれない。
8月24日 時事通信

■すっかり忘れていましたが、北京の「空中鬼」を怖れて世界一速い男が出場していなかったのでした。彼は空気を恐れたのですが、どうやら日本の選手は固過ぎる北京の地面を怖れて練習方法を誤ったという話もありますなあ。どちらも選手に取っては過酷千万な話で、やはり北京でのマラソンは史上最悪のコンディションで行われたことだけは間違いなさそうです。

■それにしましてもワンジル選手の「渡辺先生」に対する尊敬と感謝の気持ちが溢れる日本語のインタヴューを聞いていると、魯迅の作品を思い出しますなあ。

藤野先生 (集団読書テキスト B 47)
魯迅
全国学校図書館協議会

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