旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

北京五輪の内と外 その弐百四拾九

2008-05-28 22:51:57 | チベットもの
■いよいよ、日本の自衛隊に「お呼び」が掛かりました!本領を発揮出来ないように工夫を重ねた節が濃厚な、世界一の救助能力を誇る我がレスキュー隊に「無駄足」を踏ませ、第二段の緊急医療チームは大学病院の「お手伝い」という格下扱いをしてから、とうとう自衛隊の助勢を求めて来た北京政府です。ちょっと、落ち着いて考えますと、江沢民政権がずたずたにした日中関係を慎重に「なし崩し」式で葬り去ろうと誰かさんが腹を括った結果だと考えることも出来そうです。

■折角の機会なので、装備が終わったばかりの空中給油機同伴で、護衛戦闘機も一緒に送り込んだら如何でしょう?ついでに、渡洋中にトラブルが起こった場合に備えて、東シナ海全域に海上自衛隊が出動して万全のバック・アップ体制もとる!というのは如何でしょう?間髪居れずに佐世保辺りに輸送艦と陸上自衛隊の隊員を集結させて、次の「お呼び」を待つ!という手も有り得ますなあ。意地の悪い冗談はともかくとしまして、日本の自衛隊に(内容に若干の問題あり)出動要請が来るまでの経緯を確認しておきましょう。


2008年5月15日、中国外交部の秦剛報道官は四川大地震に関する記者会見で、海外からの義援金や救援物資の詳細を発表した。15日現在、中国には約1億ドル(約104億円)の義援金と1000万ドル(約10億円)相当を超える救援物資が寄せられた。……最も額が大きかったのはサウジアラビア王国の現金5000万ドル(約52億円)と1000万ドル(約10億円)相当の救援物資……
▽2、日本:義援金約5億円と救援隊の派遣
▽3、ロシア:救援物資4回分(うち2回分はすでに到着)
▽4、ノルウェー:2000万ノルウェー・クローネ(約4億1000万円)
▽5、英国:100万英ポンド(約2億円)
▽6、スペイン:100万ユーロ(約1億6000万円)
▽7、韓国:100万ドル(約1億円)相当の救援物資
▽8、ベルギー:65万ユーロ(約1億円)
▽9、ドイツ:50万ユーロ(約8000万円)
▽10、米国:50万ドル(約5200万円)
▽11、フランス:25万ユーロ(約4000万円)相当の物資
▽12、ギリシャ:20万ユーロ(約3200万円)
▽13、ユニセフ(国際連合児童基金):30万ドル(約3100万円)相当の救援物資
▽14、ベトナム:20万ドル(約2000万円)
▽15、ポーランド:10万ドル(約1000万円)
▽16、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所):5万ドル(約520万円)
▽17、エストニア共和国:50万クローン(約500万円)
▽18、モザンビーク共和国:4万元(約56万円)
▽19、イタリア:野戦病院1か所、救援物資、テントなど
5月16日 Record China

■「お見舞い」であろうと「お祝い」であろうと、自宅の壁に一覧表を張り出すような家があるでしょうか?礼儀だの文明だとの言ったところで、実際には「さもしさ」という観念が欠如している国だという事実をよくよく確認してから援助をした方が良さそうですなあ。さもしいのは政府だけではなく、国を挙げての欲張り現象が起こっております。


「カルフールに感謝し、買い物に行こう」。今春、中国各地で起こった反仏行動で、不買運動の標的になった仏系スーパー「カルフール」が一転称賛されだした。四川大地震への義援金を2300万元(3億4500万円)に急増させた結果だ。中国商務省が外資系企業の支援額リストを公表、圧力が増す中での決定だ
2008年5月25日 産経ニュース

■どうせ義捐金を出すのなら、もっと気持ちよく出せる段取りというものがありそうです。事実無根の悪質なデマ情報から始まったカルフール社に対する不買運動の「落とし前」も着いていないのに、義捐金を差し出したら絵に描いたように掌を返して「買い物に行こう」運動が起きる。誇り高いフランス国民は、同社に対してどのような感慨を持っているのでしょう?嫌な奴に絡まれ、見込まれてしまったから仕方がが無いなあ、とでも思うしかありませんが……。

■ディオール社と専属契約を結んでいた米国女優のシャロン・ストーンさんは、舌禍?事件を起こして映画出演話が潰れたそうですが、さっさと莫大な義捐金を供出したら話はがらりと変わるのでしょうなあ。実際に困っている人達は絶望的に多く、助けて上げられるのなら、何とかしてあげたい!税金で運営されている自衛隊が救援に向かうのですから、風邪薬一粒でも毛布一枚でも、本当に困っている人の手に直に手渡したい!


政府は28日、中国からの要請を受けて四川大地震の被災者を支援するため、航空自衛隊のC130輸送機でテントや毛布、医薬品などの緊急支援物資を輸送する方向で調整に入った。……国際緊急援助隊派遣法に基づくもので、自衛隊部隊の中国派遣は初めて。中国からの要請は27日、北京の日本大使館にあった。町村長官は要請の具体的内容について「自衛隊のテント、毛布などを自衛隊機で中国の空港まで運んでほしいという趣旨」と述べ、自衛隊機による中国国内での輸送活動は想定していないと説明した。その上で「できるだけ早く結論を出す」と語った。
5月28日 時事通信

■救援物資に対する「略奪」「横領」「横流し」が横行しているような国に、「空港まで」などという郵便局留め扱いみたいな要請が来たからと言って、ホイホイ受諾してもよいのでしょうか?勿論、生き埋めになっている人を救うためのレスキュー隊派遣、生き残った人達の治療を目的とした医療チームの派遣、そこまでは結果に若干の不満と疑惑は残るとは言え、派遣された皆さんの腕がチャイナの被災民を少しでも救う役に立つわけですから、現段階では、あえて「大成功」と言って共に喜び、隊員の皆さんに対して感謝しつつ、誇りに思います。しかし、国際宅急便でも、「受取人」を確認しなければ荷物を渡さない慣習が定着している時代に、「空港まで」という注文は実に不思議で、尊大な印象も受けますなあ。国会の「監査委員会」などで、ちゃんと救援物資が効果的に使われたかどうか、しっかり検証するのでしょうな?!

北京五輪の内と外 その弐百四拾八

2008-05-28 08:17:42 | チベットもの
■何故かすっかり「チベット問題」に関する報道が減り、まるですべてが解決してしまっているかのような印象さえ受ける最近の日本メディアの様子に、熱し易く冷め易い国民性を改めて思い知ります。欧州では傍迷惑な聖火リレーの騒動が通過した後も、チベット問題に関連した動きが続いております。

2008年5月27日、ハリウッド女優シャロン・ストーンの四川大地震に対する発言をうけて、中国国内最大級のシネコン「UME華星国際影城」が、出演映画をボイコット……。今月25日に閉幕した第61回「カンヌ国際映画祭」でインタビューに答え、四川大地震について、チベット問題に絡んだ「中国人への因果応報」と発言。香港の「蘋果日報」「太陽報」といった日刊紙がこれを伝え、“被災者への侮辱的発言”として、非難が一気に噴出している。 ……
2008年5月27日  Record China

■どれほど有名かは存じませんが、1人の女優が発した言葉に過剰な反応を示すのは大人げない話でしょうなあ。チャイナ伝統の「天人感応説」と「革命史観」を織り込んでおけば、多少は効果が有ったかも?でも、そうなれば北京政府が激怒するでしょうから、「動員命令」が濫発される結果になって逆効果になる可能性もありそうです。
 

2008年5月27日午後3時すぎ、クリスチャン・ディオール中国は……イメージキャラクターである女優シャロン・ストーンが、四川大地震について悪意ある発言を行ったことに対し、中国のポータルサイト「新浪」の女性向けサイト「新浪女性」を通じ、声明を発表した。
……「ハリウッドスターのシャロン・ストーンが5月24日に仏カンヌで香港メディアの取材に対し、不用意に行った発言と当社の理念とはまったく相容れないもので、深い遺憾の意を表する」と述べ、「我々は中国人民の感情を傷つけるいかなる言論も決して支持しない」……先に報道された「四川大地震は(チベット問題での中国当局の対応への)報いでしょ」以外に、「中国は好きじゃない」「四川大地震には興味がある」との発言も。彼女の発言は動画サイトでも配信され、1日で20万件を超えるアクセスを記録。シャロンへの猛烈な抗議の書き込みも殺到し、一部ユーザーらがディオール全商品のボイコットを強く呼びかけている。
5月28日 Record China

■こういう報道を見て大喜びするのは日本の化粧品メーカーかも知れませんが、契約意識の高い欧米社会のことですから、これからが大変でしょうなあ。シャロン・ストーン自身と彼女の発言を支持する人達は「発言の自由」を主張するでしょうから、万が一、ディオール社が問題発言を理由にイメージキャラクターから彼女を外すようなことにでもなれば、政治問題に発展する可能性もありそうです。まあ、老舗の化粧品会社と映画女優との間だけの事ならば、金銭で話を着ける「大人の対応」で済みそうなものですが、チャイナ国内の「ボイコット!」と欧米諸国での「絶対、支持!」の声に挟まれるような事態になれば、ディオール社もちょっとした苦境に立たされそうですなあ。

■「中国は好きじゃない」という発言は文字通りに個人的感情を素直に口に出しただけですし、「チベットの報い」発言の方も、同じ感想を持った人は世界中にたくさん居そうですから、ディオール社も発言には慎重を期さねばならないでしょう。確かにチャイナは巨大な市場に成長しつつあるのでしょうが、一流企業としては国際的な認識の質も厳しく問われる立場にありますから、同社が見せるこれからの動きに注目しましょう。まあ、莫大な「寄付」を発表すれば、「猛烈な抗議」も半減するのでしょうが……。

■欧州での動きと「寄付金」に関する話をいくつか拾ってみました。


ブラウン英首相は23日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談する。3月のチベット暴動発生後、ダライ・ラマが外国首脳と会うのは初めて。しかし、会談は首相官邸でなく英国国教会カンタベリー大主教のロンドン市内の公邸で行われ、大主教も同席。会談実施に懸念を示す中国への配慮から、政治色をできるだけ薄めようとした結果とみられ、政府の姿勢に批判も出ている。

■「来訪」だけでもダライ・ラマ法王を大きく取り上げる欧州のメディアと、何かに怯えるように意識的に小さく目立たない扱いをしようとする日本のマスコミとの違いが気になります。大主教さまもご同席!というのも、ちょっと羨ましい宗教文化の重みを感じさせる話であります。別に北京政府と喧嘩をしようと思っているわけではないので、可能な限りは「政治色」を薄めておいて、後々の説明に役立てようというのも非常に「政治的」な工夫であります。


ダライ・ラマは20日、英国入り。22日に議会外交委員会で中国の人権状況について証言した後、翌23日にブラウン首相と会い、「チベット情勢全般と、中国政府とダライ・ラマ側の対話推進」(同首相)について意見交換する。このほか、チャールズ皇太子や野党各党首とも面会を予定している。
5月18日 時事通信

■正に国を挙げての大歓迎と言ったところですなあ。英国に留学しているチャイナの学生さん達には、しっかりと動員が掛けられていたようで、「ダライ・ラマはウソツキだ!」とデモ隊が組織された模様です。相手が怯(ひる)まなければ、抗議活動は徐々に下火になるのが常なので、一応は中立姿勢を示すために留学生にもマイクを向けて報道していた英国のマスコミでした。さすがに五星紅旗でロンドン市内を埋め尽くすような大掛かりな企画は無かったようですから、北京政府も相手をよく知っているのだと思われます。相手によって喧嘩の仕方を変えるのは、政治の初歩的な知恵ですからなあ。


今年3月の台湾総統選挙で当選した国民党の馬英九氏(57)が20日午前、台北市内にある総統府で就任宣誓を行い、陳水扁氏(57)の後任として総統に就任した。馬新総統は就任演説で、対中政策について「統一も独立も武力行使もしない」とする「3つのノー」を改めて確認、中国との早期対話再開を表明した。2000年から続いた台湾独立志向の民進党政権に代わって、国民党が8年ぶりに政権に復帰した。 
5月20日 時事通信

■「三つのノー」の最初に「統一しない」が来ているのですから、「独立しない」も何も、実質的な独立状態は続くということでしょうし、「武力行使」に関しても先制攻撃に関する規定だと思われます。着々と迎撃能力を整えている台湾でありますが、迎撃ミサイルのシステムを中心として空軍に力を注ぎ過ぎ?海上戦力に若干の不備が目立って来ているようですが、日米(韓)の後ろ盾がある限りは台湾周辺での武力衝突は起こせと思われます。しかし、油断は禁物で、もしも北京五輪絡みで面白くない事が起こったりすると、人民解放軍が暴発する危険はありそうですから、日本も呑気に構えている場合ではありません。それにしもて、台湾に関する報道も少ないですなあ。

北京五輪の内と外 その弐百四拾七

2008-05-28 06:16:34 | チベットもの
上海の第一財経日報(15日付)に対し四川省地質鉱産物調査開発局の範暁氏が話した内容によると、地震後、四川省各地で山崩れやダムの損壊などの重大な災害が続く心配がでている。今回、死傷者が多く出た都江堰流れる岷江の上流にある高さ156メートルの紫坪舗ダムでは亀裂が入り一部が沈下したため発電できない状態に陥った。
ダムの水位はその後、異常に上がっており、とりあえず緊急水路をつくって放流し、二次災害を防いでいる段階という。……「最悪のケースはダムで決壊事故が起きること」という。

■映画の『モスラ』でもあるまいし、ダムが決壊などしたら下流は全滅です。長々と続く大峡谷には逃げ場は有りませんから、成都を目指して逃げ下るしかないでしょう。その成都でさえも大きな被害を受ける可能性がありそうです。


四川省は水力発電が中国で最も盛んな地域で、昨年は1880万キロワットを発電した。震源地のあるアバ・チベット族チャン族自治州には396カ所のダムが集中している。……国家電網集団公司によると、地震後、四川省では550万キロワットの発電ができない状態が続いている。また、電気を工業地帯などに送電するための変電所6カ所も破壊されたとされ、電力ネットワークのかなりの部分が機能しなくなっているという。

■電力事情が悪化し、せっかく導入した外資が逃げ出せば、五輪大会が終わる頃には経済が悪化して上海万博の開催が難しくなるかも知れませんぞ。このところ音沙汰無しのIOCですが、このまま北京政府の意地を認めて開催に雪崩れ込むつもりでしょうか?今も続く五輪大会施設の整備事業など、即刻中止して四川省の復興作業に加わった方が良いのではないでしょうか?世界中のアスリートも、廃墟の中に多くの遺体が埋まったままの国で、どんな顔をして競技に参加すればよいのか、まともな神経を持っている者なら大いに困るでしょうなあ。


……四川省は天然ガス備蓄が全国の4割を占め、ここから天然ガスを中国全土に供給する施設も集中している。さらに火力発電の燃料となる石炭の供給基地としても知られている。広東省などでは石炭や天然ガスを使った発電が難しくなることを想定、電力不足が懸念されている。
5月16日 産経新聞

■新疆ウイグルから送られる天然ガスは成都を経由してチャイナの南半分に供給される大計画が進んでいるそうですから、ロシアとの話し合いが進んでいるシベリアからのガス供給計画も頓挫する可能性が出て来るかも知れませんなあ。今回の大震災は、『三国志』の蜀漢しか知らない人にとっては、現在の成都が持っている重要性を知るよい機会になったのでしょうが、犠牲が多過ぎました。


中国・四川大地震の被害が拡大していることを受けて、北京五輪組織委員会は、14日に江西省瑞金で行われる聖火リレーから式典の簡素化などリレーの規模縮小に踏み切ることを13日明らかにした。……国を挙げて被災地の救援活動にあたっている状況を考慮し、リレーの安全を優先させた。特に歌や踊りなどでリレーを彩っていた出発式典を簡略にする。来賓などのスピーチも短縮し、第1走者がスタートする前には式典参加者全員で地震の犠牲者に1分間の黙祷(もくとう)をささげるという。

■転んでもタダでは起きないつもりか?取ってつけたような黙祷などしても、大規模災害と五輪大会を強引に両立させようというのは無理があります。祝いムードを盛り上げる演出を控えるにしても、お葬式の行列のような沈鬱な雰囲気では聖火リレーを行う意味が無くなってしまうでしょうなあ。


スタートからゴールまでの各地点に募金箱を設置して義援金を募る。「一方有難、八方支援(どこかに困難があれば、四方八方が応援する)」「団結一致、衆志成城(一致団結しみんなが心を合わせればどんな困難も克服できる)」を標語に掲げることで愛国主義を鼓舞し、救援活動を支援するという政治的な狙いも隠されている。組織委は一方で、甚大な被害に見舞われた四川省で行われる6月15~18日の聖火リレーは、予定通りに実施する方針を表明した。
5月13日 産経新聞

■人民から募金を集めるより、聖火リレーを注視してそのために用意した予算を復興支援に回すとか、願わくば、莫大な軍事費の何割かを被災した人達への援助に使うことにして欲しいものですなあ。6月半ばまでには、がけ崩れで出来た「せき止めダム」も満水になり、何箇所かで決壊・鉄砲水の被害も出ているかも知れません。空からは四川名物の雨が降り、山からは土石流が流れ下る中で聖火リレーが行われるのでしょうか?

北京五輪の内と外 その弐百四拾六

2008-05-26 07:13:51 | チベットもの
……水利省の鄂竟平次官は25日、地震による土砂崩れで川がせき止められてできた「危険な状態」の地震湖が四川省だけで34カ所あり、周辺住民約70万人が危険にさらされていることを明らかにした。堤防崩壊の恐れのあるダムも69カ所あるという。

■子供達が学ぶ校舎がアレですから、人里離れた谷川に建設されたダムの中身がどうなっているのか、考えただけでもゾッとします。見た目には立派なダム設備のように見えましたが、やっぱり外側だけ真似して作った張りボテである可能性は消えません。決壊してから、ああだった、こうだったと言われても家と財産を押し流された後では何の意味もありません。学校の校舎を施工した悪徳業者を、草の根分けても探し出して復讐してやる!と呪いの声が上がっているようですが、孫受け仕事の大元が人民解放軍や共産党のエライ人と親族だったらどうしましょう?


25日の政府発表によると、地震による死者数は6万2664人で行方不明者は2万3775人。負傷者は35万8816人に上る。地震発生から26日で2週間となる。
5月25日 毎日新聞

■徐々に明らかになる道路の崩落状況を見れば、意図せずとも調査に入れない場所がたくさん有ることは想像できますし、最初から調査の対象外か結果を発表しないと決められた場所の被害は含まれていないはずです。特に、大きく動いた活断層の「西側」が調査・救援の対象外になっているのが本当に気になりますぞ!1976年に発生した唐山地震の犠牲者は「公称24万人」だそうですが、100万人近い!という声もあるそうです。共産党の発表は、大日本帝国の大本営発表よりも「正しい」のですから、地震学者や歴史学者が手や口を出す余地はございません。今回も、パンダの被害は詳しく分かっても、人民が受けた被害の全貌は永久に分からないままなのかも知れません。


25日付の中国紙・新京報は、北京五輪聖火リレーのチベット自治区通過が中心都市ラサの1日だけに短縮されると報じた。四川大地震の犠牲者追悼の3日間、リレーが中止され、五輪組織委員会が日程調整を検討していた。チベットが調整対象となったのは、独立分離感情が根強く聖火を標的にした抗議行動への警戒も理由とみられる。……チベット自治区での聖火リレーは6月19日に山南地区で、同20~21日にラサで実施される予定だった。同紙によれば、チベットで2日間短縮するほか、予備日3日間のうち1日を取り消すことで影響を最小限に抑えるという。 
5月25日 時事通信

■神をも恐れぬチョモランマ登頂に、チベット人を無理やり参加させるという暴挙が、山の神々や地の神を怒らせたのだ!と多くのチベット人は心の中では思っていることでしょう。仏教を深く信仰しているチベット人ですが、もっと古くから続く山岳信仰は実に根強いものがありますから、霊峰に土足で踏み入って神々の宿る頂上に国威発揚の聖火の缶詰を運び揚げるなど、想像もできない罰当たりな所行だと思われている事でしょう。実名報道されてしまった登頂チームに参加したチベット人達には多くの縁者が居るのでしょうに?!意地になってラサ市でチョモランマに担ぎ上げた罰当たり聖火と合体させる計画を実行したら、大変な反感を呼ぶのは火を見るよりも明らかですぞ!


……四川省は水力発電ダムが特に集中しており……天然ガスの備蓄が多いことでも知られており、中国の経済成長を支える電力、エネルギーの不足は今後、地震被害が明らかになるにつれ、ますます深刻さを増すとみられ、成長率に影響を与えるのは必至との見方が強まっている。

■ダムが作れるような山奥は、有名な『三国志』にさえ登場しません。諸葛孔明が征服したのは雲南地方で、神の如き深謀遠慮の才能に恵まれた孔明でさえ、今回の大震災があった西の山岳地帯には足を踏み入れたことは無いのです。毛沢東の「長征」と自称する大逃亡劇の舞台になった事は書きましたが、今回の震源地周辺で大規模な軍事作戦を行ったのは30代のフビライだけではないでしょうか?時は1252年~1256年、モンゴル帝国第三代皇帝モンケ汗の命令で、南宋包囲作戦の一環で、大理国の攻略を命じられたフビライは、渋々?大軍を率いて甘粛省を出発し、チベットの支配地を南下して行きました。丁度、今回の震災で動いた活断層に沿うようなコースを取ったようですが、何と、大理国に到着する前に全兵力の8割を失った!と記録されております。

■馬が足を滑らせて谷底に落下する事故が頻発した上に、モンゴル高原では一度も経験したことがない湿気と熱気で体力を消耗した騎馬軍団は、次々と謎の感染症で落命!後にモンケ汗自身が南宋攻略戦に親征し、四川省で病没!したのは有名な話です。険しい峡谷に水力発電用のダムを並べて建設したのは、核兵器を開発するための大電力を得るためだったはずです。中にはオカラ工事のダムも数多いはずで、どうせチベット人や羌族の土地だからと、安全性を無視して核関連設備が作られていたことも想像できます。「蜀犬、陽に吠ゆ」と言われる曇天多雨の土地が、これから本格的な雨季とフビライ軍を苦しめた暑気の夏を迎えます。しかも、昔は無かった巨大なダムと原爆工場、その他、化学薬品を多用する工場や鉄筋が入っていない高層住宅。救われるのはパンダだけかも?『わたしは貝になりたい』ではありませんが、『我は熊猫になりたい』などという小説が書かれるかも?
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日米パフォーマンス競争? その参

2008-05-26 07:13:32 | 政治
■一度吐いた言葉と唾液は飲み込めないと言いますが、何だか世の中全体がいい加減な思いつきで言葉を乱雑に使っているような気がします。政治は古代ギリシアの昔から、最高の言語文化を体現していたものですが、その直系を自認する米国でさえも、政治言語は大混乱しているようです。

米民主党の大統領候補指名を争うヒラリー・クリントン上院議員は23日、劣勢の選挙戦を継続する理由として、同党の候補指名を目指したロバート・ケネディ元司法長官が1968年6月に暗殺された事件を挙げた。ライバルのオバマ上院議員が“不測の事態”に見舞われることを期待したともとれる極めて不穏当な発言で、同氏は「遺憾だった」と陳謝した。

■言っては行けないことがあるという戒めの言葉として、「口は禍のもと」というのがありますが、いつの間にやら「本音で語る」という表現が良い事を意味するようになってしまいましたなあ。世の中全部が本当に「本音」を吐き散らしていたら、商売も成り立ちませんし家族も会社も組織はすべて崩壊するでしょう。これが国際政治の場となれば、すぐに全面核戦争がおきてしまいますぞ。


来月3日に予備選を控えたサウスダコタ州スーフォールズの地元紙オーガス・リーダーとのビデオ会見で、クリントン氏は、「私の夫は92年、6月半ばのカリフォルニア州予備選で勝つまで活動をやめなかったでしょ。ボビー(ロバートの愛称)・ケネディがカリフォルニアで6月に暗殺されたことは、みんな覚えているわよね。だから(選挙戦撤退の要求について)私は理解できないわ」と語った。

■生放送の取材ではなく、「ビデオ会見」だったのなら、たとえ本人がウソツキと評判の愚か者でも、スタッフが気が付いて編集できたのではないでしょうか?前段だけを残して後段を削除してしまえば、何の問題もなかったはずなのに……。


……司法長官や上院議員を務めたロバート・ケネディ氏は、68年の大統領選で、民主党の候補指名に向けた選挙活動を展開した。しかし、カリフォルニア州予備選での勝利直後、ロサンゼルスのホテルで銃撃されて死亡。民主党内の足並みは乱れ、本選で同党候補のハンフリー副大統領は共和党のニクソン候補に敗れていた。

■実写映像をCG技術を駆使して御丁寧に現役大統領の暗殺を『大統領暗殺』という作品にして公開してしまうのが米国という国ではありますが、黒人に対する根強い人種差別を大前提にした発言は下品の限度を越えていますなあ。


黒人初の大統領をめざすオバマ氏には、昨年の序盤戦段階から襲撃の懸念が浮上し、シークレット・サービスが身辺を厳重に警護している。クリントン氏は、オバマ氏を「恥知らず」呼ばわりしたり、武勇談を創作したりと放言や失言を繰り返してきたが、ケネディ暗殺をオバマ氏に重ねたともとれる発言は、米メディアが一斉に報じる騒ぎとなった。クリントン氏は「(言及した暗殺は)歴史的な事実だ」としながらも、騒ぎの広がりに「発言が国全体やケネディ家のみなさんを傷つけたのなら遺憾だった」と陳謝した。オバマ選対では、「発言は残念だ」と、あきれ気味にコメントしている。
5月24日 産経新聞

■大統領選挙となれば、候補者選びも本選も、終盤に掛かると見も蓋も無い「ネガティブ・キャンペーン」が激しくなるのも米国で、如何にも識字率が低い現実を追認するような、分かり易い絵解き物が氾濫しますから、苦し紛れに黒人運動家だったキング牧師の暗殺場面やらカトリック教徒だったケネディ大統領の暗殺場面に加えて、オバマ候補と名前がちょっと似ているサダム・フセインやウサマ・ビンラディンの肖像写真などを一瞬挟み込むようなキャンペーン映像でも用意していたのかも知れませんなあ。でも、オバマ候補の暗殺が心配?なら、さっさと候補を降りて「副大統領」の座を約束させる取り引きをしてオバマ候補の応援に回った方が得だったかも?
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日米パフォーマンス競争? その弐

2008-05-26 07:12:54 | 政治
政府は06年2月、「入院している人の半分は治療の必要がない」として、当時38万床あった病床のうち介護型療養病床(13万床)を全廃し、医療型療養病床を4割減らして15万床にする方針を決定。達成に向け、「医療の必要度が低い」と判定された人の入院費を減額し、そうした入院患者を多く抱えていた場合は病院経営が成り立たなくなるようにした。

■どんなサンプル調査をして「38万床の半分は不要」などという結論が出て来たのでしょう?そこに加えて「終末医療相談」という露骨な文言が盛り込まれているそうですから、実質的には日本人の最高齢を75歳に決めました、というような恐ろしい印象を受けてしまいます。生き残りたい者は貯金しろ!というメッセージも聞こえて来そうですが、最低賃金は上がらず、非正規雇用は野放しで、消費税も上がるとなったら「飢餓輸出」ならぬ「飢餓貯蓄」の覚悟が必要になりそうですなあ。飲まず喰わずで低賃金に耐え、貯金に励めば「メタボリック症候群」も解消されるとの御親切な政策なのでしょうか?


しかし一連の病床削減策は、入院先を求めて住み慣れた地域をやむなく離れたり、自宅にお年寄りを引き取った家族が介護に悲鳴を上げるケースなどを生んだ。「患者追い出しを誘導し、行き場のない医療難民を大量に生む」との強い批判も招いた……厚労省は07年4月、医療型療養病床のうち回復期リハビリ病棟(2万床)を削減対象から外したうえで、都道府県を通じて実情調査。……当初計画を7万床上回る約22万床……。削減対象から外したリハビリ病棟は今後少なくともいまの1.5倍、3万床程度は必要になるとみられている。需要数を合わせると現状と同じ25万床前後となり、削減計画の見直しに追い込まれた。
5月24日 毎日新聞

■天災でもないのに難民や亡命者を出し続ける変な国が日本の隣にもありますが、日本では農水省が農民を難民化させ、厚労省は若者をワークングプワの労働難民にして高齢者を医療難民にしているかのようです。既に、年金難民は出始めているらしいのですが……。


全国の検察庁や裁判所、弁護士会が来年5月に始まる裁判員制度に向け、計60を超すマスコットキャラクターを独自に考案して、広報イベントやポスターに登場させている。法律家の堅いイメージからの脱皮に懸命だが、PRの専門家は「裁判員制度に結びつかないキャラクターも多く、国民の理解につながらないのでは」と首をかしげている。

■「裁判員、参上」のキャッチコピーを考えた人物は特定されないまま、鳩山法相の「センスが悪い」の一言で「裁判員、登場」とかに変わったそうですが、どっちにしてもセンスが悪いのは同じかも?そもそも、この裁判員制度というものが、どうして誰が考え出したのか、よく分かりませんからなあ。「トンデモ裁判官が増えたから」という理由なら、トンデモ裁判官を罷免する制度を整備すればよいでしょうし、「裁判を迅速化する」のが目的なら、もったいぶってモタモタ仕事をしている担当職員を罰する法律を作れば良さそうなものです。

■噂によると、弁護士出身のクリントン大統領の時代に始まった「構造協議」の中に、米国で余りに余っている弁護士が日本で仕事が出来るように、米国型の裁判制度が望ましい、などという我田引水の暴論が含まれていたのが、紆余曲折を経て「陪審員制度」という立派な翻訳語があるのに、わざわざ「裁判員」などというピリッとしない新語を作って対応したのだとか……。既に、あちこちから「絶対に失敗する」という断言口調の予想が出ているのに、干拓工事やダム工事と同じで「官が一度決めた事」は、何が何でも実行!するという太政官制度の真髄が見られそうですなあ。


23日、東京・霞が関の法務省で、緑のインコの「サイバンインコ」、シカの「なっち」、桜島の形の「かちけん君」が鳩山法相を表敬訪問した。福岡高検、奈良地検、鹿児島地検がそれぞれ裁判員制度のPR用に作製したものだ。法相はサイバンインコの着ぐるみに入ってみせたが、「統一したキャラクターを作る必要はないの?」とも話した。

■最悪の評判を取った奈良県の無気味な護法童子キャラクターを越えるインパクトは無いにしても、「サンバンイン・コ」とは何というセンスの悪さ!シカの「なっち」も桜島の「かちけん」も、裁判員制度と、一体、どんな関係があるのかさっぱり分かりませんが、共通しているのはセンスの悪さと公費を無駄遣いしている点なのでしょうなあ。


キャラクターに最も熱心なのは検察庁。落花生をモチーフにした「らっか正義君」(千葉地検)、新選組の隊士に似せた「まこと君!」(京都地検)など、40の地検・高検で計60……。イチゴの形の「べりぃちゃん」(宇都宮地検)、「浪花のたこべぇ」(大阪地検)……「わらなっちゃん」(水戸地検)は「納豆のように粘り気があり、裁判で議論したら納得するまで引かない」、雪だるまの「ユーキー」(札幌地検)は「YOU KEYという英語で、裁判員制度はあなたが鍵という意味を込めた」……千葉地裁は……落花生に法服を着せた「ピー太くん」「ナツ実ちゃん」……長野地裁もライチョウの「トライくん」「ライムちゃん」を携帯電話のストラップに……日本弁護士連合会は今月21日、統一キャラクターとして、サイにてんびんを持たせたデザインの「サイサイ」を発表。「信念を曲げない強さでサイ判員制度に臨む」(広報室)と説明する。
5月24日 読売新聞

■その場の雰囲気を一瞬で凍らせる強引なダジャレは「オヤジ・ギャグ」との蔑称で呼ばれるそうですなあ。こんな馬鹿馬鹿しい事をやっているから、一般の国民が参加する「裁判員制度」が必要なのだ!というキャンペーン用に並べられているのなら、大変な策士が存在することになりますが、居酒屋で酩酊状態になったわけでもなく、クソ真面目な顔をして立派な建物の中で、一体、どんな会議を開いて決定したのやら……。これは法務省の管轄を飛び出して、文科省が日本語能力の崩壊というテーマで研究した方が良さそうですなあ。

北京五輪の内と外 その弐百四拾伍

2008-05-26 00:54:50 | チベットもの
■それでも、北京で五輪大会を、本気で開催するのか?と思いつつ、土曜日のNHK、日曜日のテレビ朝日が放送した四川省大地震の特集番組をちらちら眺めておりましたが、フジテレビでは柳本ジャパンの女子バレーボールが「北京へ」の切符を手に入れたと大騒ぎをして見せたものの、連夜の熱戦で疲れた蓄積したとはいえ、セルビアに惜敗!まるで全勝優勝を逃した琴欧州のような……。水泳界では「スピード違反」の素材で作った水着が大問題で、好きなパンツを穿いて泳げば良いだろうに!というのは素人の浅はかさらしいですなあ。技術大国ニッポンの名が廃るような話らしいのですが、この件は深入りしません。

■地上デジタル放送の普及キャンペーンがどれほど進んでいるのか?昔ながらの「新しいテレビで五輪大会を見よう」宣伝がどれほど効果を上げているのか?そもそも、「北京に行きたいかああ?」とまで言わずとも、「北京五輪を見たいかああ?」ぐらいの質問を視聴者にしても良いかも?と思ってしまう昨今であります。それにしましても、5月25日はちょっとした節目になるかも知れない日でしたなあ。


北京五輪開幕まであと80日と迫り、各テレビ局の五輪キャスターが続々と決まっている。NHKはエースの青山祐子アナがメーンを張り、日本テレビは元NHKの堀尾正明、明石家さんま、桜井翔というバラエティー色が強い顔ぶれ。フジテレビはヤクルト前監督の古田敦也と相武紗季。テレビ朝日は松岡修造と武内絵美アナのコンビで、テレビ東京は草野仁とトリノ五輪の金メダリスト・荒川静香がメーンキャスターを務める。……当初、TBSは元同局アナの雨宮塔子を第1候補に考えていたが、育児を理由に断られてしまったという。また、アテネ五輪でキャスターを務めた中居正広の名前も挙がったが、スケジュール調整がうまくいかないとか。そこで急浮上しているのが、なんと織田裕二だというからビックリだ。……
5月25日 日刊ゲンダイ

■仕事とは言え、四川省の大震災がどこまで被害を広げるのか、誰にも分からない時に、五輪精神など打ち捨てて単なる商売がらみのお祭騒ぎに仕立て上げようとしているテレビ業界には、危機感という物は無いのかいなア?と他人事ながら心配になります。たったの80日後ですぞ!阪神淡路の大震災の2箇月半後はどうだったのか?テレビ局には資料が無いのでしょうか?各テレビ局がそれぞれの思惑で用意している「キャスター」の皆さんには、それ相応の世界観やら五輪精神に対する理解、それに加えてチャイナという国に関する知識も豊富なのでしょうから、1人ずつ名前を挙げて論評するのは失礼でしょう。ただ、そんな不謹慎なお祭騒ぎを(新しい)テレビで見ようとは思いませんが……。


……中国東北部、ハルビン市郊外の五常市で竜巻と雹が発生し、1人が死亡、36人が負傷……。竜巻は23日午後7時10分ごろ発生。家屋19棟が倒壊、400棟が損壊し、負傷者のうち2人が重体で16人が重傷。……風速は毎秒50~69メートルと推定される。ハルビン市当局によると、この竜巻による経済的損失は約3110万元(約4億6000万円)に上る
5月25 産経新聞

■チベットの東玄関口で大震災が起こった10日後に、今度は旧満州での天災です。死者はたったの1人でも、連続する天変地異はチャイナの迷信を刺激するでしょうなあ。米国の中西部では巨大な竜巻が発生している時期とも重なりますが、場所を考えると異常さに驚かされます。まるで北京を挟み込むように、今年になって南には巨大な台風が上陸して長江流域に洪水が起こり、その上流での大震災、そして北京の北では大竜巻!ですからなあ。当局が発表している被害額に比べて被害者の数が少な過ぎるような気がしますが、北京五輪を控えて数字も控えめにしているのかも?


中国四川省地震局によると、25日午後4時21分、同省青川県付近を震源とするマグニチュード(M)6.4の地震が観測された。12日の大地震(M8)以降最大の余震で、中国中央テレビは400人以上が負傷し、少なくとも1人が死亡……。この余震で新たに7万軒以上の家屋が倒壊。震源から1200キロ以上離れた北京でも余震の揺れを感じた。省都・成都では発生直後、ビルから飛び出した人々で大通りが埋め尽くされたという。

■先の大震災で倒壊した建物から人を馬鹿にしたような、ヒューザー姉歯物件でさえも使わない細い鉄筋がむき出しになっている光景を見せられれば、建物を飛び出すのは当たり前でしょう。北京政府は、「五輪施設は安全だ!」と必死に宣伝してはいますが、それは裏を返せば「それ以外は安全の保証はない」という意味にも取れますからなあ。

日米パフォーマンス競争? その壱

2008-05-25 21:51:23 | 政治
■最近、近所のスーパーからバターの姿を見ることがめっきり減って、「バター風味マーガリン」などが棚に目だっておりますなあ。バターが無くなったからと言って、日本の食文化の根幹が揺らぐとも思えませんが、戦後の食糧難の時代に米国が仕掛けた「米を食うと馬鹿になる」「米食文化はブスを生む」などという謀略に乗って、朝食トースト文化を刷り込まれた世代が、俗に言う団塊の世代だったりすると、話はちょっと込み入って来ます。ケーキなどの菓子類や肉料理などにはバターが欠かせませんからなあ。

■降って湧いたようなバター不足も、元を質せば日本の農政に責任があるとか無いとか……。諸物価高騰の元凶は、各種投資ファンドなのかチャイナとインドの食欲なのか、はたまた米国の石油屋大統領が心変わりしてバイオエタノールを商売にしようとしたのが原因なのか、なかなか真犯人は見つかりませんが、少なくとも日本の商店からバターが消えたのは、迷走を続ける日本農政が生み出した象徴的な事件だと思われます。酪農家の皆様は、国や農協に騙され通しで困っておられる事でしょう。

■日本の農業を管轄する役所は、何故か「米が余って困る!」などという神武天皇以来、日本史上に現われたことがない妄言を広めては、税金を無駄にばら撒いて食糧自給率を下げ続け、農村を疲弊させ続け、一度も「輸出」を考えずに減反!減反!保証金付き!と生産者を馬鹿にし続けたのでした。バイオエタノールの時代が到来して、豪州や米国では多くの農家が怪気炎を上げ、農機具もバカ売れだというのに、日本は荒れた田畑と廃墟となった農村が広がる風景に寂しい風が吹き抜けております。実に不思議な話でありますなあ。ああ、「杉を植えたら儲かるぞ!」と少年少女まで駆り出して、雑木林を杉林に一変させ、スギ花粉に逆襲されている林野庁という変な役所もお仲間ですが……。

■一方で、消費者側でも一説には年間4500万トンの食糧を買っては、2000万トンを「生ゴミ」にしているのだとか……。食料品の値上げは一種の天罰だと考えた方がよいかも知れませんなあ。今頃、食糧自給率を上げましょう!と水産庁あたりが近海物の魚介類を食べて貰うキャンペーンを始めたとか……。それなら、テレビ局に圧力を掛けて、「空飛ぶマグロ」などを美味い、美味いと食い散らかすような亡国番組を禁止させたら如何でしょう?

■また、日本では「医者が足りない!」と大騒ぎです。これまた厚労省が、長年に亘って「医者が余っている!」というトンデモ情報を流し続けたのが原因だそうですなあ。どうやら、厚労省のお役人は、「医師免許所持者=現役の医師」と単純に見積もって少子化時代をシミュレートしたとか……。運転免許証を持っている人が必ず自家用車を所有している訳でもありませんし、運転しないペーパー・ドライバーもたくさん居るのが現実ですが、運転免許とは比較にならない高い学費と大変な苦労をして取得する医師免許だから、無駄にはしないだろう、と誰かさんは考えたのでしょうか?今度は慌てて医学生を増やそう!と遅過ぎる「焼け石に水」「マッチ・ポンプ」「泥縄」政策を打ち出したとか……。

■そして、高齢者が怒りの声を上げた「後(末)期高齢者医療制度」が火達磨状態!山口県の補選で大敗した与党の議員は、真っ青になって「手直し」と「御説明」に大汗をかいている模様です。「盗人」を牢屋に入れ損なった舛添厚労相は、高齢者の怨嗟の声に驚いて、「これから調査します」と言っております。行方不明の年金を探すのに、社会保険事務所に日参していて病院に行っている暇もない御高齢の皆様は、国のバカ職員に年金を減らされた上に今度は天引き!され、本当に病院に行けなくなって大いに困っております。でも、福田ホイホイ首相は「これは良い制度なんです」と空気が読めない人ランキングの上位者らしく、最悪のタイミングで失言していましたなあ。


長期入院する慢性病の高齢者向け施設である医療型「療養病床」(25万床)を11年度末までに4割減らす計画について、厚生労働省は削減を断念し、現状維持する方針に転換した。都道府県ごとに需要を調査した結果、25万床前後の確保が必要と判断した。厚労省は療養病床削減により医療給付費を3000億円削減する方針だったが、今回の計画断念で高齢者の医療費抑制政策全般にも影響を与えることは必至だ。

■実態調査もせずに、まず「3000億円削減」を前提にして計画実行される政策が、果たして医療政策と呼べるものなのでしょうか?話が全部、丸ごと逆立ちしているので与野党間の議論も逆立ちしていて、非常に分かり難くなっております。社保庁には「年金盗人」と「給料泥棒」が巣食っているそうですが、本家の厚労相には政策を知らない人材がごろごろしているのかも知れませんなあ。小泉政権時代に、「痛みを伴う改革」が流行語になっておりましたが、医療を崩壊させて本物の肉体的苦痛を受けるとは、誰も思わなかったのでしょう。何故か今でも「ジュンちゃーん」の掛け声が上がっているのが無気味です。

パンダ大震災 其の壱拾壱

2008-05-25 14:01:59 | 外交・情勢(アジア)
……87年以降の10年間に延べ1000機以上の民間機によるチベットへの兵力輸送が実施され、軍隊と民間、平時と戦時を結合した国防空輸緊急支援体制が形成されている。91年には中国民航の旅客機を使用して、新疆のカシュガルからタクラマカン砂漠を越えて西安に近い陝西省咸陽までの西部大空輸作戦が実施された。この空輸作戦にはチベットの阿里高原、新疆のカラコルム高原、パミール高原などに駐屯する辺境防衛部隊が参加した。……『中国の軍事力』平松茂雄著

■空挺部隊に関しては、専用の大型輸送機から救援物資を投下し、隊員が次々と降下する「雄姿」の報道は、どうも宣伝用のパフォーマンスらしいぞ、という疑惑が『週刊文春』5月29日号に出ております。映像を見た自衛隊関係者によりますと、「高度5000メートルからの降下」ならば専用のパラシュートで「自由降下」しなければならないのに、低空から敵陣の背後を強襲するための「空挺降下」をしているのは解せない。「自動索降下」なのに降下間隔が開き過ぎているから着地地点が広がって集合するのに時間が掛かり過ぎる、疑惑の極め付きは、隊員が携行する荷物の少なさを見れば、数日間の真面目な救援活動など想定していないのは明らかだ!という内容です。

■同誌には、「ヘリコプターの姿が見えない!」という重大な指摘も出ていました。濃霧が発生していないのに、本来なら大活躍するはずのヘリコプターが出動していないのは何故だろう?という専門家からの疑問です。この疑問に関連した重要な情報が、『正論』6月号に掲載された前掲書の著者である平松氏の「中国軍はいかにしてチベットを支配したか」という論文に出ています。


……86年9月、チベット・アリ高原で、ヘリコプターの飛行に成功……高原部隊に緊急即応機動能力を与えるばかりか、物資の輸送、救難などに使用できる。インド東部国境マクマホン・ラインに近く、チベット地区で唯一道路のない墨脱県の駐屯部隊へは、ヘリコプターにより物資を輸送できるようになったばかりか、緊急事態に迅速に対処できるようになった……チベットでは、ヘリコプターによる国境地帯のパトロールが恒常化している。『解放軍画報』に真っ白い雪を冠って長々と連なる山岳地帯をヘリコプターが飛ぶ写真が掲載されたことがある。当時、チベットで中国軍がヘリコプターを使用していることをある軍事関係者の会合で話したところ、軍事専門家や自衛官OBたちは言下に否定したことがある。……

■標高5000メートルを越える山岳地帯で軍用ヘリコプターが自由に飛び回るというのは、技術的にも操縦技能の面でも大変な困難があるという事なのでしょうなあ。それを人民解放軍は何とか克服した!というのは、まだまだ軍事機密に含まれる重要な事なのかも知れません。V字谷が崩落して道路が随所で寸断されて孤立した山間の小さな町を、自由自在に飛び回って救命救援活動をする雄姿を公開するわけには行かないのは、万が一、トラブルが発生して緊急着陸やら最悪の場合は墜落!などという恥ずかしい事が起こったら困るからかも?でも、そんな事を言っている場合ではないでしょうなあ。

■同論文は前掲書と同様に、いろいろと貴重な情報が詰まっているのですが、今もさかんに救援募金や寄付を募る動きが官民の区別無く盛り上がっている時だからこそ、知っておくべき話があります。


……96年6月から、青蔵公路に沿ってラサから青海省の西寧を経て甘粛省の蘭州を結ぶ全長1300余キロメートルの光ファイバー・ケーブルが中国軍によって敷設され、98年に開通した。こうして青蔵公路は、交通、エネルギー、通信が一体となった大動脈に発展している。因みに広州~昆明~成都を結ぶ光ファイバー・ケーブルの敷設は、わが国のODA援助により実現された。軍事目的で敷設され、工事を担当した組織は中国軍にもかかわらず、著者を除いてわが国では誰もこの点を指摘した者はいなかった。……

■指摘されている青蔵公路が整備された98年から、偶々、青海省に留学した経験を持つ者としましては、その後も青蔵鉄道の高規格複線化工事、それに沿って高規格軍用弾丸道路が建設される様子を「通学」する度に見せ付けられた事を思い出しますなあ。北朝鮮という変な国に善意の援助を送ると、最初に軍隊が巻き上げ、残った物の大部分は横流しされて闇取り引きされるという話を何度も聞かされている日本人が、チャイナと北朝鮮とは別の国だから、などと呑気な事を考えていたらトンデモないことになるかも知れませんぞ。
中国の軍事力 (文春新書)
平松 茂雄
文藝春秋

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パンダ大震災 其の壱拾

2008-05-25 14:00:24 | 外交・情勢(アジア)
劉は震災発生の12日以降、寧波市から仕入れた対災害用品に「震災救援物資」のラベルをつけて販売、現在までにテント120点を550~945元(約8200~14000円)で、寝袋692点を60~99元(約900~1500円)で販売、約12万元(約180万円)の売り上げを得た。そのほかに、一般用のテントや寝袋を合計60万元(約900万円)以上販売している。

■逞しい商魂には脱帽?というより呆れるばかりですが、背に腹は替えられないという切実な思いに駆られる被災者の皆さんは、待てど暮らせど届かない政府からの救援を頼りになど出来ませんから、こうした悪徳商人の食い物になるしか生きる術が無いのでしょう。天災よりも人災の方が恐ろしく、一番怖いのは悪政で、「苛政(かせい)は虎よりも猛(たけ)し」と言われる由縁。


……公安局は「市の非被災民地区での救援用テントおよび寝袋使用の合法性審査に関する緊急通知」に基づき、被災民でないにも関わらず、避難所のテントや寝袋を不当に使用している一部の住民や、政府指定場所以外の場所にテントや寝袋を広げる被災民も厳しく取り締まっていく方針。また、政府支給以外のこれらの物資を発見した場合には、その流通ルートなどを厳しく追及していく。
5月23日 Record China

■「被災民でないのに避難所のテントや寝袋を不当に使用」しているとは解せない話ですなあ。自宅が被災していないのに、何を好きこのんで避難所で暮らしているのでしょう?救援物資の「仕入れ」が目的なのでしょうか?また、「政府指定場所」が手狭だったり感染症の危険が高まった場合にも、政府の指示に従わねばならないのでしょうか?そもそも、取り締まっている公安当局者が、救援物資の横流し商売をしている可能性さえ有るわけですから、従順に命令を聞かない人も多いのでしょう。


中国外務省の秦剛副報道局長は13日の定例会見で、1万人以上の犠牲者を出した四川省大地震で国際社会から救援申し出を受けたことに「中国政府と人民は非常に感動し、感謝している」と語り、震災を契機に国際社会との関係を修復したい考えをにじませた。3月のチベット暴動を受けて国際社会の対中批判が強まり、聖火リレーを狙った抗議行動が頻発。中国はこれに反感を募らせ、国内では排他的な民族主義が高まっていた。
5月13日 時事通信

■この段階では、「1万人以上の犠牲者」と言われていたわけですが、何とも政治的な見積もりですなあ。民主国家なら、後々、大きな責任問題となるはずなのですが……。日本の厚生労働省などという役所も、省益に合わない数値を隠したり水増ししたり、都合が良さそうな数値だけを政治工作に使って族議員に大恥を掻かせて平然としているようですなあ。

■チベット暴動→国際社会の非難→反感→「排他的な民族主義」と単純に捉えるのは如何なものでしょう?一部にはネット社会に変貌したチャイナでは人民に対する情報操作は不可能になっている、などという楽観的な主張もあるようですが、ラサ騒乱以降、チベット地域で何が起こったかを知る方法が無くなっている事実がありますし、反日にしろ反米にしろ、政府がまったく指示もせず関与もしていないデモなどが起こるはずのないお国柄です。この後、日本からのレスキュー隊が入ったり、医療チームが頑張っている姿に対日感情が劇的に改善しているなどという、提灯記事が発表されているようですが、話はそれほど単純ではないでしょう。犠牲者の数と被害の実態が次々と明らかとなり、復興の見通しが立たないままに時間だけが過ぎて行けば、日本からの援助が足りないからだ!と八つ当たりされないとも限りませんぞ。


新華社は公式サイトで、「共産党政治局常務委員会が地震対策で会議を招集、胡錦濤が議長」の記事を最大の見出しで掲載。また、各メディアは温家宝首相が現地入りして、瓦礫の下で救出を待つ人を励ます様子や、軍の対応を大きく報じている。……空挺部隊は4500人が旅客機で四川省に向かい、必要に応じて道路が寸断された被災地に落下傘降下して、救援活動を行うという。

■民間旅客機を軍隊が利用するなど、日本では考えられない事ですが、ラサ市を筆頭にチャイナ全土に建設され続けている「民生用空港」は、観光や商用を目的にしているわけではありません。一朝事が起これば一般の上客など後回しにされて軍用輸送機が独占的に利用するために建設されていることを忘れては行けません。青海省やウイグル自治区など、一体、誰が利用するのだろう?というような場所に続々と空港が建設されているようです。日本の地方空港は公共事業の予算を消化するという主なる目的を隠蔽するために、何処かから利用客がボウフラのように湧いて来る!という正気とも思えない利用者予測を捏造しますが、チャイナの場合は軍隊の展開を考えた上で建設を進めているので、何処からも疑問の声など上がりません。成田闘争で苦労した日本のお役人が聞いたら羨ましくて涙が出るような話でしょうなあ。でも、日本の国民と同様にチャイナの人民だって怒って泣いていることを忘れては行けません。
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北京五輪の内と外 その弐百四拾四

2008-05-24 08:03:53 | チベットもの
■パンダ大震災の救援活動に関する報道だけでも、チャイナの実態が次々に明らかになっているのは、不幸中の幸いかも知れません。しかし、激甚災害が発生したからと言って、「チベット問題」が解決したわけでもありませんし、人命救助を最優先にするにしても、天災で落命するのも政府による残虐行為で殺害されるのも同じく「生存権」の問題でしょう。パンダ大震災を愛国精神の高揚と人民を団結させる手段にしてしまおうという悪巧みが着々と成功しつつあるのは恐ろしい話で、その勢いで聖火リレーは続行され、海外での宣伝活動もますます盛んなようですから、同情心に訴えられて情報操作に乗せられるのだけは御用心、御用心。

訪英中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は22日、下院議会外交委員会で中国の人権状況について証言。3月のチベット暴動後も住民の逮捕や拷問が続いていると非難するとともに、漢族の大量流入によりチベットの「文化的虐殺」が進んでいると訴えた。……「彼ら(中国当局)は人々を逮捕し、事情聴取する前に暴行などのひどい拷問を加えている」と指摘。また中国軍筋の情報として、当局は北京五輪後、100万人の漢族をチベットに新たに移住させることを計画しているとし、「意図的でないにしろ、ある種の文化的虐殺が起きている」と中国の政策を批判した。
5月23日 時事通信

■「文化的虐殺」の代表がチベット人の誇りとする言語の破壊ということになります。拙著『チベ坊』はそのチベット語自体を主人公に仕立てた変わったドキュメンタリーになっておりますが、さすがにこれほど激しい表現は書き込めませんでした。チベット仏教には優れた「言語哲学」とされる中観思想を中心とした巨大な思考体系がありますから、言語を根絶やしにされたら致命的な打撃となります。最初は商売などの日常会話が北京語になり、経済的な余裕がある家庭の子供たちは学校の初等教育で政治的な北京語を習得し、成長するに従ってチベット解放神話を刷り込まれて行く内に、自分のアイデンティティが崩壊している。

■そして、気が付けば町が漢族に占領されて看板も広告も北京語一色になってチベット語は寺院の奥でしか使われなくなり、その寺院は常に監視され何かと圧力を受ける立場にあるという具合です。チベット語の最後の牙城が仏教寺院であり僧侶たちなので、抗議行動が起こるのは決まって寺院から、という事になります。こういう恐ろしい話は日本の国会内では永久に聞けないのでしょうなあ。


チャールズ英皇太子は22日、ロンドンで訪英中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した。会談内容は公表されていないが、チベット情勢に国際社会の注目が集まる中での会談は、皇太子がダライ・ラマへの共感を明確に示したものだ。会談は、皇太子の邸宅「クラレンスハウス」で行われ、ダライ・ラマは庭で記念植樹を行った。両者は、1991年に知り合って以来、会談を重ねてきた。皇太子は2004年、ダライ・ラマの講演録に寄せた文章で、「長年、苦難と迫害を受けてきたチベットの人々を英知と愛情で励ましてきた」と、ダライ・ラマを高く評価した。
5月23日 読売新聞

■北京の五輪大会への不参加!を欧州で最初に公言したのがチャールズ皇太子でしたなあ。映画の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』にはハーラーさんと少年のダライ・ラマ14世との交流が描かれていましたが、もしかするとダライ・ラマ法王はチベットが「解放」される前の幼少期を思い出しながら、皇太子と対話しておられるのかも知れませんなあ。日本の皇族は政治的な言動が禁じられておりますから、このような会談は望めませんが、先日の胡錦濤主席が来日した際には、天皇陛下から遠回しながら人権問題につながりそうな表現が少し聞かれたようですが……。勿論、ホイホイ首相からは何も聞こえません。


ドイツ訪問中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は16日、ドイツ西部ボーフムでの記者会見で、チベット亡命政府のシンボルである「チベット旗」に毛沢東がお墨付きを与えていた、との秘話を紹介した。……中国当局が、「チベット独立」を求める証拠として敵視するのに対し、ダライ・ラマは共産中国建国の偉人である毛沢東を引き合いに出して擁護した形だ。……中国軍のチベット進駐後の1954~55年、北京に長期滞在して毛沢東と会談を重ねた際、毛沢東はチベット旗について、「中国国旗に加え、(チベット旗も)使い続ければよい」と助言したという。
5月17日 読売新聞

■これは「秘話」ではなく、多くの歴史本に書かれている有名な事実です。御存知ない方は、法王の発言にある年号に御注目!この年を挟んで、人民解放軍のチベット侵攻後の1951年5月23日に『17条協約』と呼ばれる甘言を並べた「チベット平和解放に関する協約」が締結され後にすべての条項が破られ、1956年4月、ラサに乗りこんで来た陳毅元帥が「チベット自治区準備委員会」という悪い冗談のような組織を作ります。この期間だけは、北京政府は「基本的人権」を尊重すると言い続けておりましたなあ。ヒトラーは「条約は破るために締結するのだ!」と非常に分かり易い言葉を残しましたが……。
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パンダ大震災 其の九

2008-05-24 07:28:32 | 外交・情勢(アジア)
■さてさて、既に緊急救助隊が帰国してしまった後になってしまいましたが、日中友好やら北京五輪やらを考えるのに参考になる側面が露(あらわ)になったようですから、改めて救助隊の皆さんの悔しい思いを検証してみましょう。

……日本政府は早急な支援活動に向け、さまざまな準備を整えている。ただ、支援の前提となる中国政府からの要請は13日朝までになく、待機している状態だ。町村信孝官房長官は13日午前の記者会見で「日本としては最大限の対応をする用意があることは中国側に伝えてある。準備はできている」と強調した。……「(中国は)自己完結ですべてをしたい国柄と思う」と指摘した。外務省幹部も「中国は人的支援は外部から受け入れない傾向もある」と述べ、援助物資が中心になるとの見方を示した。被災地の四川省は3月にチベット問題で住民のデモなどが起きており、これが中国側の国外からの人的支援受け入れの判断に影響している可能性があるとみられている。……
5月13日 毎日新聞

■何でもかんでも「チベット問題」に結び付けて解釈するのは危険かも知れません。改革開放だの国際化だのと笛や太鼓で宣伝してみても、軍部の発言力が強い国は基本的に鎖国状態みたいなものでしょうし、一党独裁国家ともなれば尚更です。実態を見られては困る場所が山ほどあるからこそ、外国人が入って来てもらっては具合が悪いのです。大規模な天災ともなれば、救助隊は被災者がいる場所なら何処へでも入っていきますからなあ。人命と国家の威信と、最初から天秤にさえ載らないような国が世界中にあるという事です。

■人的支援は断るけれど、「支援物資」は幾らでも頂戴!と言っている連中が、外国の善意をどのように取り扱うのか、それが前記の話というわけです。本当にチャイナの被災者を救いたいなら、自前で用意した食料と鍋窯を背負って現地に入り、その場で煮炊きして間違いなく被災者の口に入って飲み込むのを確認するだけの覚悟が必要なのでしょうなあ。誰かが窓口になっている寄付行為ならば、3割でも被災者に届いたら満足しましょう。


政府は13日、中国・四川省での大規模地震の復興支援のため、中国政府に数億円の緊急無償資金協力を実施する検討を始めた。被害の程度や中国側の要望を踏まえ、早急に支援額を決定する方針だ。……地震発生直後に中国政府に打診したが、中国側は13日朝までに、「物資や要員は当面必要ない」と回答した。町村官房長官は同日午前の記者会見で、「具体的な要請があれば最大限の対応をする用意がある、と伝えている。(自衛隊を派遣するかどうかは)要請がどういう形で来るかによる」と語った。……高村外相は記者会見で、四川省に滞在している日本人の約4割(約120人)の無事を確認したと発表した。外相は「今のところ邦人が被害にあったという報告は受けていない」と述べた。
5月13日 読売新聞

■さすがに、最初から「物資は欲しいけど人は断る!」などと露骨なことは言えないらしく、喉から手が出ていても痩せ我慢?それにしましても、「自衛隊の派遣」まで想定していたとは、町村さんも指示を出しているはずの福田ホイホイ首相も、どこまでお目出度いのでしょう?徹底的に行われた愛国教育の裏側には、「人民解放軍への感謝と尊敬」運動がぴたりと貼り付いていたのですから、外国、特に仇敵の日本から軍隊を招き入れるはずなどないでしょうに……。加えて在外邦人が口を揃えて「頼りにならない」ともっぱらの評判になっている外務省は、少なくとも初動だけは早かった模様です。「聖域なき行政改革」の余波で、役立たずの外務省なら予算も削れ!という恐ろしい声が上がっては困るからのでしょうか?その後も邦人が犠牲になったとの報道はないようであります。


2008年5月22日、四川省成都市公安局が、テントや寝袋などの震災救援物資を不法に販売していた人物12人を逮捕した。……主犯格・劉値毎はもともとアウトドア洋品店を営んでいたが、震災後は赤十字会の名を語ってテントなどを販売しており、このほど区規律審査委員会、区工商局、区赤十字会が通報を受けて同店を調べている。

■記事中の「語って」は「騙って」の変換ミスでしょう。「衣食足りて礼節を知る」というチャイナの名言がありますが、金銭欲が「開放」された時代には、意味を為さなくなっているかも知れませんなあ。逮捕されたバカ者達は、きっと通常の商売をしている感覚だったはずです。被災地での救援物資は希少価値が高い、だから手段を選ばず仕入れて高値で売り抜ける!災害復旧が進んだら商機を逃す!という乱暴な理屈で動いているだけです。こういう連中がうようよしている所に、どうやって日本人の善意を届けられるのでしょうなあ?「赤十字」の名前でボロ儲けできる変な国ですぞ!

■国連組織が窓口となって運び込まれる救援物資が町の市場に山積みになっているという悲しい話は、アフリカや中南米の国ではよく起こっているようですが、五輪大会を主催するような国でも同じ事が起こっているというのは、どこかが間違っているのでしょうなあ。

パンダ大震災 其の八

2008-05-24 07:27:47 | 外交・情勢(アジア)
中国・四川大地震を受け、日本の旅行各社は14日、相次いで四川省などへのツアー中止を決めた。チベット暴動の余波がようやく収まりつつあっただけに、各社とも「再開は当面先になるだろう」と頭を痛めている。被災地周辺は世界遺産となっている九寨溝などの景勝地が多く、中高年を中心に人気が高い。読売旅行はチベット暴動以来中止していたツアーを16日から再開予定だったが月末まですべてキャンセル。約230人が申し込んでおり、返金や旅行先の変更で対応した。エイチ・アイ・エスは今月末まで、近畿日本ツーリストも23日まで中止を決めた。JTBも今月末までツアーを見合わせる。……
5月14日 産経ニュース

■これは地震発生直後のニュースですから、その後、被害の大きさを伝える続報が届き続けて観光旅行どころではなくなってしまった人も多いことでしょう。五輪大会に便乗しようと算盤を弾いていた日中双方の関係者はがっくりと肩を落としているのでありましょうが、チャイナへの「観光旅行」という行為そのものを考えてみるよい機会にしては如何でしょう?幸いにも「青蔵鉄道」は、今回の震源となった巨大な活断層からは遠く離れているので、物理的にはラサ観光は可能でしょうが、ラサ暴動が「飛び火」した甘粛・青海・四川などのチベット人居住地域を飛び越えて、一挙にラサ市内に入って観光施設化した寺院などを急ぎ足で見て回って帰るような、まるで書き割りの看板を眺めて来るような旅行では、チベットに行った甲斐がないと思って下さる日本人が少しでも増えれば、日本のマスコミ報道の質も変わるかも知れません。

■少なくとも、四川省のパンダもラサの観光も、儲かるのは漢族ばかりだという事実を多くの日本人が知ってしまったのですから、騒乱が鎮静化した後で、どんな変化が有るのか興味津津であります。


23日付の香港紙「星島日報」などによると、中国・四川大地震の被災地で21日、軍関係者による援助物資横領を疑った被災者数千人が警察車両を破壊するなどして暴れ、警官隊と衝突して双方に負傷者が出た。同紙などは、地震発生後、被災地での大規模騒乱は初めてとしている。……四川省徳陽市。被災者らは、インスタントラーメンやおかゆ、飲用水など援助物資を積んだトラックが商店の前で積み荷を降ろし、それらの一部を軍関係者を名乗る人物が車で持ち去るのを目撃。商店内にも大量の物資があったことから、「横領だ」「汚職は許さない」などと騒ぎ出したという。
5月23日 読売新聞

■「窮鼠猫を咬む」という表現が適切かどうか、微妙な違いも感じますが、共産党軍による建国神話と陰に陽に国政を牛耳る軍を怖れながら暮らす人々が、餓えと疲労が高まった結果、我を忘れて軍に刃向かうのは、やっぱり、ネズミがネコの餌にばかりなっていはいないぞ!ということでしょうなあ。『週刊新潮』5月29日号の大震災特集の中に、「救援物資はボランティア窃盗団・横流しで消える」という恐ろしい暴露記事が掲載されております。「ボランティア偽装」というのは、救援する振りをして被災地に入り、実は「火事場泥棒 をして歩いている血も涙もないバカ者たちのことです。


……倒壊家屋に忍び込んではタンスの中を漁り、無人の店舗を荒らしては宝石類やパソコンなどを強奪。……

■こういう輩が集団でうろうろしているようです。阪神・淡路の震災が起こった時にも、瓦礫の中をうろうろする「外国人」の姿が目撃されていましたなあ。何処の誰が何をしていたのかは定かではありませんが、一説には倒壊したパチンコ屋さんからパチンコ台の心臓部であるROM基盤を集めていた火事場泥棒がいたとか……。パンダ大震災では救援物資を運ぶトラックが被災者と見られる集団に足止めされて略奪されてしまう話は、さすがに日本では見られない「チャイナの特色ある風景」でありましょうが、まるで狩りを楽しむように貴重な食糧や飲料水を奪っている連中の中には、自分自身と家族の命を救うために已む無く奪うのではなく、人の善意を踏みにじった上に、これを転売して人の弱みに付け込んでボロ儲けしようとしているバカ者が多数含まれるとか……。

■同誌には四川省出身のジャーナリスト石平氏のコメントも載っています。


……救援物資を輸送する役目を担う軍や政府当局者らが、まず自らの分を懐にしてから残りを配る。これが、物資が目減りしていく要因……上層部がまず家族や親族の分をくすね、次に配送仕分け責任者が、さらに運搬トラックの乗務員が、最後に現地の配分担当者が、それぞれ勝手に横取りします。

■何だか、これだけ羅列されても、まだまだ横領犯は他にも居そうな気配ですなあ。こうした実態を十分に承知の上で、テレビ局などはしっかり腹を括って「募金」を呼び掛けて欲しいものですなあ。とかくの噂のある24時間マラソンを売り物にしている某局が、チャリティー飢饉から寄付をしていたようですが……。まともに人の善意が通じないような国が、本当に五輪大会などを開催するのでしょうか?

北京五輪の内と外 その弐百四拾参

2008-05-23 21:07:15 | チベットもの
……チベット亡命政府によると、チベット自治州西隣の甘孜チベット族自治州北部の甘孜県で今月17~18日にデモがあり、計12人が武装警察に身柄拘束された。同県では緊張が高まっており、当局は住民の行動を厳しく制限しているという。一方、中国メディアは21日、パンチェン・ラマが同日、北京のチベット仏教寺院で行った法要の模様を伝えた。チベット族側の動きを伝えるのは、地震をきっかけに「民族の団結」を強調する中国当局の狙いを反映したものとみられる。
5月22日 毎日新聞

■便利に使いまわされる若きパンチェン・ラマの姿を、チベット人は常に複雑な思いで見つめているはずです。御本人には何の責任も無いわけですから、変な客寄せパンダみたいな扱いをして見世物にすればするほど、チベット人の怨念は深まって行くという道理が、北京政府のエライ人達には分からないようです。その一方で、大きく動いた活断層の西側には、医者であろうとボランティアであろうと、海外の目は一切入れない!という徹底した情報管制については、しっかり注意を払っていなければなりません。海外のメディアを完全に閉め出して、好き放題に「治安活動」に勤しんだチャイナの武装警察は、その任が解かれる前に今回の大震災に遭遇しているわけですから、ラサ争乱以降「情報が入手できない!」と世界中のメディアが非難していた事情は何の変化もありません。

■東京の大使館で警備の機動隊員を切りつけた犯人の身元が判明したようです。


23日午後3時10分ごろ、東京都港区元麻布の中国大使館前で、警戒中の警視庁機動隊員(25)が男にカッターナイフで首を切りつけられた。機動隊員は軽傷。男は近くにいた機動隊員に殺人未遂と公務執行妨害の現行犯で逮捕された。……男は小平市の救護施設に住む無職の52歳。統合失調症で精神科に通院していた。「警察官になりたかったがなれず恨んでいる。殺せ殺せという指令があった」と供述しているという。男は通用門を1人で警備していた機動隊員に歩いて近づき、無言で切りつけたという。前日夕方から施設を抜けだし行方が分からなくなっていた。

■警察官に対する尊敬の念と、就職願望を強く持っている男は多いようで、採用されなったという理由で時々変わった事件が起きるのは確かです。そして、「統合失調症」というのは、以前は精神分裂症と呼ばれていた発作的に意識が混濁する病名だと思いますが、症状の軽重には素人には分からない幅があるようです。人の精神に何が起こるかを科学的な尺度で完全に計量するのは不可能でしょうから、病名が付けられていない人が、「カッとなって」殺人を犯すのは珍しくはありませんし、正式に病名を付けらても、社会生活に支障がない程度までに治癒する人も多いようです。

■皮肉な言い方をすれば、この時期に反チャイナ、反北京五輪の行動を起こしたのが精神的な疾患を持っている人だったとすれば、福田内閣としてはちょっと安心という事でしょうか?でも、本人は警察官になれなかった恨みから凶行に走ったと言っているように報道されていますなあ。本当にそれ以外の事は言っていないのかどうかは、今のところは不明です。


「何をするんだ」 機動隊員の叫び声が人通りのない中国大使館前に響き渡った。首は血で赤く染まっていた。男は小型のカッターナイフを握り、なおも機動隊員に覆い被さった。現場は六本木ヒルズの南約500メートルの住宅街。……大使館周辺は普段から厳重な警戒態勢が敷かれている。叫び声を聞いた他の機動隊員らがすぐさま駆けつけ、男を同僚から引き離した。男はガードレールに押さえつけられても暴れながら大声でわめき続けた。機動隊員はのどぼとけの上を約10センチも切られていた。

■とにかく、致命傷にならなかったことのは幸いでした。お見舞い申し上げたいと思います。機動隊員の装備を考えれば、正面からの喉元に対する攻撃は恐ろしいものでしょう。咄嗟に身をかわしたのならば、日頃の鍛錬の賜物です。


男は、身体や精神上に障害がある人を保護する救護施設に平成9年から入所していた。施設長の男性は「(男は)入所はしているが精神的に落ち着き、しっかりしていた。なぜか分からず、とても驚いている」と話している。
2008年5月23日 産経ニュース

■こういう場合、「精神上に障害がある」という一言が、この人物から発言権を奪ってしまう場合が多いようです。救護施設で、どんなメディアから情報を得ていたのか?それ以前にどんな本を読んでいたのか?等々、興味のあるテーマが数多く出て来ますが、ややこしい話が飛び出して来る前に、「健康上の理由」を楯にしてマスコミは御役御免を決め込みそうであります。どこのメディアが真相に迫ってくれるのでしょう?

北京五輪の内と外 その弐百四拾弐

2008-05-23 20:00:10 | チベットもの
■チャイナ関連のニュースと言えば、パンダ大震災の救援活動しか無いような事態になっております。何処かの国とは違って民主国家の日本であれば、新聞・テレビ・ラジオなどの古いメディアからインターネットなどの新しいメディアまで、入れ物としては豊富な「数」が揃っているのに、不思議な話ですなあ。随分と昔の話だと誰もが思っている福田ホイホイ首相の訪中から、まだ半年も経っていませんし、傍迷惑な聖火リレーが羽田に下りて長野市で大暴れして去ってからも、まだ一ヶ月とは経っていない!

■大手新聞には政治面というものが存在しているのに、福田内閣成立から、長野市での聖火リレー争乱?までの経過をきっちりと外交的な意味を解きながら「後始末」をしようと努力している所はあるのでしょうか?長野市でのリレー商売は無難に成功させたような話が流されて、福田ホイホイ外交の追い風にでもなったような報道が目立ったのは記憶に新しいところですが……。


23日午後3時10分ごろ、東京都港区元麻布の中国大使館前で、警戒中の警視庁機動隊員が日本人の男にカッターナイフのような刃物で首を切りつけられた。機動隊員は軽傷で命に別状はないという。男は殺人未遂と公務執行妨害で現行犯逮捕された。麻布署で男
2008年5月23日 産経ニュース

■何の愛想もないチャイナの大使館ではありますが、その門扉を警備している日本の機動隊員の皆さんは、決して政治的な信条で各大使館前に配置されているわけではないはずです。さらに極論すれば、総理や閣僚になった政治家の自宅前に詰めている警察官も、それぞれの政治家を尊敬しているわけでも、支持しているわけでもないでしょう。少なくとも、「大津事件」のような困った事件を起こす心配の無い人が選抜されているだけでしょう。

■パンダ大震災の緊急救助作業で、日本に対する感情がチャイナ国内で急激に好転しているなどという、ちょっと信じられないようなヨタ話がニュースとして配信されている昨今ですから、政局絡み・派閥絡みの底の浅い政治ニュースを報道しているマスコミに目と耳を奪われていると、日中両国間に淀んでぶすぶすとガスを噴出しているような不信感や嫌悪感の存在をころっと忘れてしまう危険がありますなあ。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い!」とは言いますが、少なくとも厚待遇の天下り人生は望めないような現場で汗をかいている公務員を襲うのは止めましょう!かと行って、偉そうなキャリア官僚ならテロの標的にしても良い、という話ではありません。念のため……。

■「チベット問題」の事などころっと忘れて、海水パンツの素材だの、次の大会では無くなる野球の組み合わせがどうだのと、金メダルの皮算用に五輪大会の報道が偏りつつある日本ですが、欧州ではますますチベット問題が過熱しております。この違いは何なのでしょう?単に「熱し易くて冷め易い」というだけの事では無いかも?と、このところ厚労省前や社会保険事務所で怒っておられる御高齢の諸先輩方を取材したニュースを眺めながら考えてしまいます。

■「後期(末期)高齢者医療保険制度」は、10年も掛けて練り上げられた難攻不落の悪法で、これを最終的に仕上げて法案を成立させたのは小泉厚生大臣だったわけです。その後、どれほどマスコミの政治記者が吉本新喜劇みたいなガセネタ記事を書き殴っていたとしても、「純チャーン」と叫んで手を振り携帯電話のレンズを振り回していた人達の中に、確かに御高齢の方々が目立っていた記憶があります。郵政民営化選挙、別名「刺客選挙」の大騒ぎの中で、小泉自民党を大勝させた人達の中に、近々年金生活を始める人や既に高齢者医療制度を利用している人達が多数含まれていたのなら、これが日本の民度・民主主義なのだと、静かに覚悟を決めておかねばならないかも知れません。恐ろしいことではありますが……。

■日本では忘れ去られたも同然のチベット問題に戻ります。旅限無としましては、今日のチベットは明日の日本だ!などと乱暴な事は申しませんが、明後日か明々後日くらいには危ないかも……。


中国・四川大地震で、インドのチベット亡命政府は21日、全世界のチベット人に独立などを求め中国大使館前で行っているデモを当面中止するよう呼びかけた。多数の被災者がいる中で抗議を続ければ、逆にチベット人への反感を招きかねないとの判断とみられる。一方、チベット仏教界トップで亡命中のダライ・ラマ14世側と、ナンバー2として中国政府が認定したパンチェン・ラマ11世側が、インドと中国で犠牲者の追悼法要を営んでいる。……21日に出した声明で亡命政府は「中国を襲った未曽有の災害の被災者に連帯を示すため、大使館前のデモを少なくとも今月末までは見合わせるべきだ」とした。

■在日本のチャイナ大使館前で凶行に及んだ人物が、こうした情報をしっかり認識した上で、決心したのだとしたら……。でも、同胞を傷つけては行けません。絶対に!勿論、戦争でもない時に外国人に武器を向けるのも行けませんぞ。でも、ホイホイ外交に業を煮やして暴発するエネルギーが、日本のあちこちに溜まっている可能性は否定できませんなあ。