旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

されど大学 其の参

2007-08-30 14:51:48 | 教育
今年3月には、名門大出身と偽っていた塾講師23人が警察当局に摘発されるなど、教育業界でも学歴詐称の横行が指摘される。ソウル市教育庁は、市内の塾や予備校講師約4万人について、学歴調査を開始。検察当局も学歴詐称を専門に捜査する特捜チームを設置し、今年12月まで集中的に取り締まる方針を決めた。

■この辺の話になりますと、日本でも対岸の火事とは思えなくなって来ます。営業用のハッタリだと割り切って、本人と経営者とがグルになって商売してしまう事は有り得る話ですからなあ。塾講師が警察に摘発されるとは、随分と徹底していますが、日本でも影響が出て来るのでしょうか?でも、出身大学の名前だけを看板にして生徒を集めていた時代は終わっているようにも思えますが……。元暴走族、元ヤンキー、元劣等生など、マイナスを売り物にしてしまうのが今の日本ですから。


こうした一方で、ソウルの人材サービス会社「エンターウエイパートナーズ」は8月から、海外大学出身者を採用しようとする企業や教育機関を対象に、学歴が本当かどうかを調査するサービスを始めた。初日から韓国企業や大学から問い合わせが殺到し、「業務がストップするほどだった」(同社)という。同社は「今後、企業の採用にあたっては学歴チェックが当たり前のことになる」と、大幅な注文増を見込んでいる。今回の騒動で、韓国メディアからは「韓国社会の学歴至上主義が問題だ」と自省を促す論調も出ている。
2007年8月18日 読売新聞

■日本で言えば「興信所」の仕事ですが、プロの調査を通さないと相手の学歴が信用できない社会というのも、随分と息苦しい話です。最初から、学歴を過大に意識せず、目の前の本人を判断するようになれば解決するようなものです。「これでも、○○大学出身だ」などと自慢されても、直近の問題や課題を解決する能力が無ければ、何の意味も有りませんからなあ。「学閥」などという非生産的な集団を後生大事にしている困った人達が、企業の利益や税金を浪費して組織防衛に走るような本末転倒は許されるものではありません。工業製品でさえも、当たり外れが有るのですから、同じ大学を卒業したからと言っても、まったく同じ規格で製造された商品のような訳に行きません。どんな大学でも、入学するまでの努力と在学中の精進が肝腎です。


大学の卒業論文やリポートの執筆を有料で請け負う代行業者が登場し、波紋を広げている。学生がインターネット上で見つけた資料をリポートなどに引き写す「コピー&ペースト」が教育現場で問題となっているが、これを上回る究極の「丸投げ」で、文部科学省は「事実とすれば、到底認められない行為」としている。ネット検索大手のグーグルも、「こうした代行は不正行為にあたる」と判断、代行業者のネット上の広告掲載を禁止する措置に踏み切った。

■日本社会にワードプロセッサーが登場した頃に卒業論文を書き上げた者としては、キーボードの横に資料を山積みにして入力しては編集・校正を続ける絶望的な労苦を思い出しますなあ。コピーとペーストの機能以上に、ネット上の検索機能は隔世の感が有る革新的な技術です。資料検索とコピー&ペーストを「論文執筆」だと思い込んでいる学生も多いのではないでしょうか?そちらの方が、もっと恐ろしい話です。


「国立大の学生・院生を中心としたチームなので安心の品質」「6年で740件の代行実績」。ある代行業者のホームページ(HP)には、そんなうたい文句が並ぶ。別の業者のHPは「社員は学生時代に必要最低限の勉強量で優やAを取ってきた精鋭ぞろい」とアピールしている。
8月18日 読売新聞

■担当する生徒の顔も分からないマスプロ授業を続けているなら、何処の大学も同じようなものです。レポートを提出させても、文字数や紙数しかチェックしないような手抜き講義をしている有名大学なら、在籍する意味はあまり無いでしょうなあ。「友人との出会い」だの「サークル活動の思い出」「アルバイトの楽しさ」などと吹聴する人も多いようですが、少なくともそんな学生生活しか送らなかった人には教員になって欲しくはないですなあ。「大学は楽しいぞ!」の意味がまったく違うメッセージが日本中の小中学校に蔓延してしまいますから……。

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されど大学 其の弐

2007-08-30 14:51:16 | 教育
■飽くまでも平均値と印象論でしかありませんが、日本に留学して来る生徒達と欧米の有名大学に流れる生徒達との質には大きな開きが有るという有力な説が有りますなあ。勿論、拙著『チベ坊』でお馴染みの?チベット人生徒達の内、正規のルートで堂々と日本に留学して来た我が生徒達は優秀ですぞ!頑張れよー!チャイナにおける外国語学習熱は凄まじいばかりですが、すっかり日本語の人気は低調になり英語熱の1人勝ち状態なのは残念至極であります。それは兎も角、隣国ではトンデモない事が起こっているそうですなあ。

日本以上の学歴社会とされる韓国で、有名大学教授や女優、映画監督ら有名人の学歴詐称が相次いで発覚、騒動になっている。明るみに出たのは氷山の一角ともいわれ、検察当局は学歴詐称を取り締まる「特捜チーム」を設置し、本格捜査に乗り出した。さらに、学歴が本当かどうか調査するサービスを始める企業まで登場した。

■「家系図」を何よりも大切にすると評判の文化を持っている隣国ですから、「学歴」という肩書きにも特別な思い入れが有るのだろうと想像は付きます。でも、ご先祖様自慢は大なり小なり何処でも同じ様なものなのでしょう。ウソか本当か確認のしようもない大昔の御先祖様のお話ならば話半分に聞いてもいられますが、現役のアイデンティティとなると立派な犯罪になってしまいます。最近も、日本の国会議員の中で米国の某大学に留学したとかしないとか、卒業したとかしないとか、ちょっとした騒ぎになりましたなあ。官僚出身の議員は自己申告で2階級特進を届けていたとか……。実力よりも肩書き、それ以上に「見た目」というのが人間社会の弱点なのでしょうなあ。

■アホみたいに見えていても、○○大学出身などと聞くと、寒山拾得の境地に達した人物のように見えたり、話を聞いていると博覧強記と思えているのに、学歴を聞いてしまうと「どうせ一夜漬けの耳学問だろう」などと油断してしまうのも人間でしょう。そうでなければプロの詐欺師は商売出来ませんからなあ。


最初に学歴詐称が発覚したのは、韓国で「美術界のシンデレラ」ともてはやされていた東国大の申貞娥(シン・ジョンア)助教授(37)。「米カンザス州立大卒業後、米エール大大学院を修了」としていたが、7月上旬に韓国メディアが学歴詐称の疑いがあると報道。東国大は7月11日に記者会見を開き、「米国に照会した結果、学歴詐称と確認された」と発表した。申助教授が東国大に提出した証明書はいずれも偽造……申助教授は南西部の光州市で開かれる韓国有数の美術イベント「光州ビエンナーレ」の最年少監督に抜てきされ、イベントを仕切ることになっていたが、詐称発覚で辞任に追い込まれた。

■大変な勢いで米国への人口移動が起こっている韓国ですから、留学でも在米時代のキャリアでも、どさくさに紛れて好き放題の申告が可能なのでしょうなあ。でも、「エール大学」とは頑張りました。特別な奨学金でも貰わないと、なかなか学力だけでは入れないという大学ですからなあ。


韓国メディアはその後、有名人の学歴詐称をめぐってスクープ合戦を展開。元コメディアンで、現在韓国で公開中の人気映画「D―WAR」監督の沈炯来(シム・ヒョンネ)氏や人気漫画家、ラジオ番組の司会者らが次々と、自らの学歴詐称を告白した。人気の自宅リフォーム番組に出演していた建築家(51)も詐称が判明。「1996年卒業」としていた米国の大学に当時、美術学科が設置されていなかったほか、「ソウル大美術学部に合格したが、家庭の事情であきらめた」との説明も、当時の合格者名簿に名前がなく、虚偽と分かった。

■「隣の芝生」の裏返し心理なのでしょうが、学歴詐称の化けの皮が剥がされる様子は何よりも快感を伴う見世物のようですなあ。万人共通の学歴コンプレックスが一気に解消されるのは爽快な気分を味わえる体験でしょう。


8月14日には、韓国演劇界の大御所とされる女優、ユン・ソクファさん(51)が自らのホームページで、学歴詐称を告白。30年以上にわたって名門の梨花女子大を「中退」と自称していたが、在籍していなかったことを認めた。他の大学教授の学歴詐称疑惑も連日報道され、韓国の大学生の間では「うちの教授も詐称ではないか」との不安が広まり、ソウルの各大学は教授や講師の学歴調査に乗り出した。

■大学教授まで詐称が蔓延している?一体、どんな採用方法を採っているのでしょう?学生時代の学位論文から業績をきちんとチェックもせずに、どうやってカリキュラムの担当を割り振るのか、実に不思議ですなあ。但し、大学の名前と学問的な業績との間にギャップがあるのは事実です。

巨大な隣国 其の壱拾四

2007-08-28 13:02:53 | 外交・世界情勢全般
■相手の弱みにつけこんでのシビアな商売ですが、元を質せば中東地域を勝手に切り刻んで山分けした連中の末裔ですから、エネルギー価格の高騰が見込まれれば、どんな所にでも入り込む所存なのでしょうなあ。日本の石油戦略では対抗できないかも知れません。

……露外交筋は「ロシアは困難が伴う開発事業の探査作業などについて、いかに外資から技術と金を出させるかをまず考えている」と話しており、今後もロシアでの資源開発をめぐって露政府・国営企業と外資との駆け引きが繰り広げられるのは間違いなさそうだ。シュトクマンのガス埋蔵量は3・7兆立方メートル以上とされ、世界のガス需要を丸1年満たすことができる。ガスプロムは2013年にパイプライン、14年に液化天然ガス(LNG)での出荷を開始したいとしている。
7月14日 産経新聞

■旧ソ連から独立したウクライナにしろ、衛星国から脱皮した東欧諸国にしろ、ロシアからのエネルギー供給が止まれば生産活動も社会生活も大混乱するという弱い立場のままですし、欧州諸国もロシアの軟化に乗じて輸入量を爆発的に増やしてしまった後ですから、ロシアの言い分を最大限に受け入れなければなりません。中東からのエネルギー供給に不安が出れば、日本はそれ以上に卑屈な態度でロシアにお願いしなければならなくなる恐れが有るでしょうなあ。

 
ロシア極東軍管区の当局者は28日、ハバロフスクで記者会見し、千島列島(クリール諸島)に軍が文化・商業施設を建設する計画を明らかにした。同地での生活条件を改善して、勤務を希望する将兵を増やすのが目的という。同軍管区住宅局のクルノソフ局長は、スポーツ施設や映画館、ボウリング場、サウナ、プールなどを含む施設の建設を計画していると語った。一方、ムクルティチェフ同軍管区副司令官は、千島列島に現代的な商業施設を開設し、流通する商品の品目を増やすと述べた。 
6月28日 時事通信

■旧ソ連時代に「シベリア手当て」というものが有って、給料3割増しの上にあれこれと便宜を図って人口移動を加速させようとしていたそうですが、ソ連崩壊後には強制移住させられた人達やら特別待遇を求めて移住した人達が、大挙して故郷に逃げ帰ったという話も有りましたなあ。地下3メートルまで氷結したり樹液が凍って大木が爆音を発して裂けるような場所に好き好んで住むロシア人は居ないという事なのでしょう。人の背丈を越えるような霜柱にも負けない強固な鉄道を維持管理していたソ連なのに、不思議なくらいに住宅設備の改良には不熱心だったようです。やっと民生技術の開発にも力を入れて居住環境を改善しようとし始めたのかも知れません。沿海州には中国との貿易を見込んだ巨大な商業センターが建設されていますが、千島列島に「商業施設」を作って誰を相手に商売するつもりなのでしょう?やはり、日本に秋波を送っていると考えるのが自然でしょうなあ。


モンゴルで事実上、凍結されていた鉱物資源開発プロジェクトが近く再開され、日本を含めた外資による争奪戦が激化する見通しとなった。モンゴル政府がこのほど、資源メジャー(国際資本)との間で銅・石炭鉱山の共同開発に合意した。これを契機に、中国、ロシアなども権益獲得競争に参戦。日本政府も月内にモンゴルとの官民合同協議会を立ち上げ、交渉を本格化する計画だ。

■これは今年6月の記事ですが、小結の旭鷲山が引退する前の話です。いろいろな噂が有りますが、鉱山開発のスポンサーを日本で探していたというのは本当のようで、アラブの産油国と同じ様に採掘権を売って荒稼ぎしようという目論見がモンゴル中で湧き上がっている様子が透けて見えますなあ。


モンゴル南部にある世界有数の未開発銅山であるオユトルゴイ鉱山の権益を持つ資源中堅の加アイバンホーマインズと鉄鉱石世界2位の英豪系リオティントはこのほど、権益の34%をモンゴル政府が取得し、30年間の採掘契約を結ぶことで合意した。開発は7月のモンゴル議会による承認を経て始動し、2009年に銅鉱脈の露天掘り、14年に地下採掘に着手する。モンゴルの資源開発は政府が国家管理を強めるなかで、数年間にわたり停止していた。06年に外資が参加する開発案件にモンゴル政府が参加する代わりに、外資に対する税制を優遇する条件を盛り込んだ改正鉱物資源法が施行された。オユトルゴイ鉱山は、同法を適用する初の案件となる。

■北極海でロシアと領海争いに火花を散らしているカナダが、ちゃっかりシベリアを跨いでモンゴルに投資しているというわけです。モンゴル側でも、社会主義時代の官僚制度を早めに改善しておかないと、ロシアとまったく同じ経済格差が広がって社会不安が広がって行く危険が大きいでしょう。腕に自信のある若者がどんどん日本の相撲界で稼いでは、祖国に投資して政府と深く結び付こうとする動きは加速して行くでしょうし、横綱になるとビジネスに支障が出る事を朝青龍事件で思い知ったモンゴル力士の中には、適当な地位で細く長く目立たないように稼ごう!と決心した者も居るかも知れませんなあ。


……モンゴルでの資源開発が動き出したことを受け、日本政府も大手商社など民間のプロジェクト支援に乗り出す。月内にもモンゴルと資源開発のための官民合同協議会を東京で開催する計画だ。外務省や経済産業省の審議官クラスと日本モンゴル経済委員会会長を務める室伏稔・伊藤忠商事顧問らが参加する。……原料炭開発事業には、石炭輸送のためモンゴル南部と中国を結ぶ鉄道整備や発電所などのインフラ整備が欠かせず、日本側は上下水道や埋蔵量調査などの協力と合わせてモンゴルに提案する。また、モンゴルの鉱物資源法は、外資との利益配分などについて詳細な取り決めがなく、法律の運用面を含めた投資環境整備についても協議し、日本企業の権益獲得を側面から支援する。

■日本の文化もろくに教えずにモンゴルからの出稼ぎを受け入れた相撲協会が、今頃になって真っ青になって慌てふためている様子を見れば、日本の政府にもモンゴルに対する巨視的な政策など無かったのだろうなあ、と推察されます。典型的に内陸国のモンゴルを開発するのは良いのですが、これを日本に運び出すとなれば、ロシア・中国・北朝鮮などが絡んで来るでしょうなあ。


……ロシア、中国もモンゴルでの権益獲得に全力をあげている。プーチン露大統領はロシア企業に対し、高品質の原料炭約6億トンの埋蔵が見込まれている南部タバントルゴイの入札に一丸となって臨むよう指示したといわれ、日本政府の戦略がどこまで通用するかは未知数だ。日本勢はこれまで、大手商社首脳が05年に相次ぎ現地を視察。三井物産は05年にアイバンホーとモンゴルの銅・石炭鉱山の事業化調査と権益の一部取得で合意し、伊藤忠商事も、ブラジルの資源大手リオドセと共同でタバントルゴイの石炭開発・生産に向け、事業化調査に着手することで合意していた。
6月19日 フジサンケイ ビジネスアイ

■既に、モンゴルの各種権益はロシアン・マフィアに握られているという噂も有りますから、奇怪な口利き料金やら法外なコミッションなど、その筋の危ない交渉事も有りそうです。上海機構に取り込まれる流れが見えているモンゴルですから、よほど上手に両国関係を深めて行かないと、トンデモない事になる恐れも有りますなあ。仮に中国の影響力が増せば、内モンゴル自治区とモンゴル国が融合してなし崩しに取り込まれる可能性も無いとは言えません。ラジオを中心にして北京文化がウランバートルに大変な勢いで侵入していますし、ロシア語と中国語の文化的な競争は徐々に中国側が有利になって行くとの予想も有るようです。商売目的で大量の中国人がウランバートルに移入しているのも事実ですし、日本からは大相撲の本場所中継ぐらいしか情報が入らないようでは心配な事ですぞ。モンゴル語と日本語は語順も酷似している膠着語なのですから、真面目な留学生を受け入れて親日派を増やし、同時に民主化を進める援助を地道にしている必要が有るでしょうな。

■モンゴルをロシアの隣国と見るか、中国の隣国と見るか、まずはその点をクリアにして戦略を練るべきかと思うこの頃であります。それにしても、朝青龍問題が「人権問題」にまで発展したのは、一重に相撲協会の無知と無責任が原因でしょうなあ。それを偉そうに叱れない日本の政府も似たいようなものでしょうが……。

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巨大な隣国 其の壱拾参

2007-08-27 12:13:21 | 外交・世界情勢全般
ロシア外務省報道官は14日、「同条約の履行を停止したことは、北大西洋条約機構(NATO)側との交渉を停止したということではない」と述べ、NATOとの交渉継続の意向を示した。しかし、ロシアが一方的に履行停止したことで、軍事視察団の受け入れや露軍の活動に関する情報提供も中止されることになり、欧州の不安定化を招く恐れも出てきた。NATO報道官はこれに対し、「履行停止の決定が確認されれば、非常に残念だ。同条約は、欧州安保の要である」とのコメントを出した。ロシア側は、ソ連崩壊直前の1990年に調印された同条約がすでに実態に即していないとして改訂を要求。プーチン大統領は、米国の東欧でのミサイル防衛(MD)配備計画やNATOによる「一方的な軍備拡張」などに強く反発、CFE脱退を警告してきた。
7月14日 産経新聞

■ロシアは一つの巨大な国ですが、欧州側・中欧アジア・極東と大きく三つの地域を区別した戦略を持たねばならない宿命を持っていますしたが、宇宙やら北極海やらの新しい活動場所も生まれ、ソ連時代に手を出した中東やインドにも再び影響力を及ぼそうと虎視眈々の様子です。あちこち手を出したら焦点が定まらずに外交戦略が混乱し、それが原因で権力中枢が弱体化するのではないか?とも思えるのですが、ロシアという国は国際情勢がややこしくなるほど中欧の権力が強まって求心力を増すという不思議な感覚を共有している人達の集まりとも言えそうです。この辺が欧米とは違うところでしょうなあ。

■小泉政権時代に冷え込んだまま放置されている日本との関係は、参議院選挙の大敗でますます凝り固まって行きそうな気配ですが、樺太開発という良い材料が有ったのに、これを利用とする日本政府の意思が統一を欠いて後手に廻ってしまったようです。


日本政府と企業が出資しているロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン1」について、ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムのアナネンコフ副会長は19日、「産出されるすべての天然ガスはロシア国内用に使われるべきだ」と語り、中国との輸出契約を撤回するようフラトコフ首相に求めた。インタファクス通信が伝えた。
6月20日 毎日新聞

■日本から資金を出させて中国に売るという酷い話が出たり消えたりしまして、揚句の果てにはパイプラインの建設は自然破壊になるなどという柄にも無い事を言い出して「環境問題」にしてしまうロシアです。確かに樺太で行われている乱暴な開発は微妙なバランスで保たれている寒冷地の自然環境を破壊しているようです。先住民の皆さんは随分と酷い目に遭っているのですが、日本のマスコミは資源の確保を最優先にして報道しています。自然環境に配慮した開発方法を提案できれば国際世論にも注目されるのでしょうが……。
 
 
ロシア政府系天然ガス独占企業体ガスプロムは13日、バレンツ海にある世界最大級のシュトクマン天然ガス田の開発にフランスの石油大手トタルを参入させることで合意した。資源分野で外資排除を進めるロシアだが、開発が困難な現場については外国の技術と資金を投入させようという“計算”も働いているようだ。……トタルは同ガス田の「初期段階の開発」を担当する事業会社の株式25%を獲得する。ガスプロムは昨年10月、同ガス田の開発を自社だけで進めるとして外資との参入交渉を打ち切ったが、ここにきて態度を一転させた形だ。ただし、ガス田の開発権益を有する中核事業会社の株式100%はガスプロムが維持することには変わりない。

■フランスも贅沢な事は言っていられない苦しい立場のようです。膨大な埋蔵量が予想されていたロシアの地下資源は、残念ながら採掘と輸送が不可能と思われる場所に眠っているので宝の持ち腐れと言われていたものです。しかし、世界中の油田が枯渇し始めると最深度ボーリングの技術が発達したり、多少の輸送コストは無視してでも現物を確保する必要に迫られたエネルギー企業は、砂漠地帯から極寒の地へ仕事場を移しているようですなあ。


政府系メディアの専門家は今回の契約について、「(トタルの権益は明らかでないが)ガスプロムとの関係構築を優先させたのだろう」とみる一方、「ガスプロム側には(流氷下の水深350メートルにある)同ガス田の開発を独力で行う技術力はない」と指摘する。プーチン政権は2004年、石油大手ユコスを解体したのを皮切りに、石油・天然ガス分野の国家管理を急速に進めている。昨年には、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが主導していた極東のガス田「サハリン2」の経営権を「環境破壊」を口実に奪取、先月には英BP社が進めていた東シベリアのコビクタ・ガス田の経営権を譲渡させた。それでも、外資側のロシアへの参入意欲は衰えず、このほどシェルは露国営石油ロスネフチと、BPはガスプロムとの間で将来の資源開発に関する「協力協定」を締結した。世界的にも、石油・天然ガスの有望埋蔵地が政治的に不安定な国・地域に分布しているためとみられる。

巨大な隣国 其の壱拾弐

2007-08-24 12:36:28 | 外交・世界情勢全般
■再び、物騒な話です。

ロシア国防省のブジンスキー国際条約局長は18日、記者団との懇談でプーチン大統領が先に履行停止を命じた欧州通常戦力(CFE)条約に代わる新たな軍縮条約の締結を提案した。同局長はさらに、米国とも新たな戦略兵器削減条約が必要との考えを示した。欧米諸国を揺さぶることでロシアに有利な条件を引き出そうする強気の発言とみられている。……欧州地域の通常兵器の配備や移動などの上限を定め、欧州における安全保障のカギとなってきたCFE条約が「すでに時代遅れとなった」として、「同条約をさらに改定して批准するか、新条約を締結する必要がある」と語った。

■ベルリンの壁に続いてソ連が崩壊した時には、薔薇色の未来が見えたEU諸国は嬉々として東欧諸国を「大きな欧州の家」に招き入れました。社会主義時代の負の遺産よりも、安い労働力の魅力が勝っていたからです。しかし、職場のパイは大きくなりませんから、職場を奪われる人達からは怨嗟の声が上がり、ドイツのように同胞のために多大な援助を強いられる国も出て来ました。断末魔のソ連からは、「欧州=大きな家」構想が表明されたので冷戦は完全に終結したと誰もが思いました。しかし、歴史の底流は簡単に方向を変えませんでしたなあ。


ロシア側は、旧ソ連圏で拡大を続ける北大西洋条約機構(NATO)の軍事力がロシア側を3~4倍上回るとして強い警戒感を抱く。同局長は新条約について詳しくは述べなかったが、NATO拡大を認める代償として、ロシア軍部隊の国内移動制限の撤廃や、バルト3国など新NATO加盟国の軍備制限などを求める考えとみられる。さらに、同局長は、2009年に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新たな条約の締結に向け、ロシア側の提案内容を米国側にすでに伝えたことを明らかにした。

■これは、「冷戦の終わり」の終わりを意味します。米ソが中距離核ミサイルを並べて対峙した時、東欧と中欧を戦場にしてハルマゲドンが始まると騒がれたものです。使える核兵器として開発された持ち運びが簡便な中距離核はさすがに評判が悪く、互いに話し合いの下に期間を限定して引き上げたのでしたが、その後、長距離核の技術が進み燃料を減らしたり、急上昇と急降下を組み合わせて短い距離のターゲットも攻撃可能になったとかで、目に見える中距離核ミサイルの基地を常設する必要は無くなったようです。それでも中世以来、ナポレオンやヒトラーの時代と地政学的な条件は同じで、東欧は東西に巨大な力が生まれると軍事衝突の舞台になってしまう場所なのですなあ。


……ロシア側は、戦略核の運搬手段と核弾頭の総数制限に加え、戦略核の自国領内のみでの配備を要求。さらに、条約履行の手順や検証方法まで記した新条約案を提示した。米露両国は、年内にも新条約の共通のたたき台をつくり具体的な協議に入るという。一方、ロシア空軍幹部は17、18の両日、同国の戦略爆撃機が日本海、黒海、アラスカ、カナダの上空で、巡航ミサイルの発射訓練を行ったことを明らかにした。西側外交筋は「ロシア側の新たな軍縮条約締結提案は、ロシアに有利な条件を引き出すための戦術だろう。ロシア軍は、グルジアやモルドバの撤退要請にもかかわらず依然駐留を続けており、旧ソ連圏への帝国主義的な野望に変化はない」と指摘している。
7月19日 産経新聞

■「アラスカ、カナダ上空」に日本海も含まれているのは物騒な話です。この「巡航ミサイル」の実験は米空軍のB1にそっくりなツポレフ160とかいう爆撃機を使って空中発射したものと思われます。巡航ミサイルはGPSと地形解析ソフトとの連動が不可欠ですから、ロシアがどの程度の技術を持っているのか?が問題でしょう。米国並みの技術を入手しているとしたら、ピンポイントで核攻撃が可能ということになります。日本海側の原発などは絶好の標的ですなあ。北朝鮮には爆撃機も巡航ミサイルも無いのでミサイル防衛システムである程度は撃ち落せるとされていますが、核弾頭付きの巡航ミサイルが飛び交うような事態になったら対処の方法は無いでしょう。


ロシア大統領府報道部は14日、プーチン大統領が欧州における通常兵器の配備や移動などの上限を定めた欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止を命じる大統領令に署名したことを明らかにした。欧州における安全保障のカギとなってきた同条約の履行停止をロシアが決めたことで、欧米とロシアの対立がさらに深まる懸念が出てきた。

■チェチェンに対する強攻策を正当化するために、米国の「対テロ戦争」に同調する動きを見せたプーチン大統領でしたが、対欧州政策となると話は別です。イラク戦争で亀裂が入ったEUの様子を見れば、東側から圧力を加えてロシアの存在感を増せるとの計算なのでしょうなあ。ブッシュ・パパ大統領がマルタ会談でまとめた話を、息子の代で御破算にするというのは親不孝なようですが、石油商売に加えて戦争商売にも熱心な一族ですから、NATO軍に武器を売りつける口実に利用できると算盤を弾いているのかも知れませんなあ。

オリンピックの裏側で 其の七

2007-08-23 12:20:57 | 外交・情勢(アジア)
■スポーツの祭典!として蘇った近代オリンピックは、古代ギリシアで4年に一度、宗教的な祭典として行われていた戦争を止めて祝うイベントを真似たものです。古代ギリシアは飽くまでも個人の名誉を讃える祭典だったそうですが、近代五輪はヒトラーのアイデアで表の「国威発揚」と裏の「民族差別」を演出するグロテスクな祭典に変貌します。史上初の聖火リレーは、純粋なアーリア民族の若い男女だけを選んで実施されたそうですなあ。国ごとの入場行進も、ヒトラーに向かって右手を上げる見せ場を作る為に考案されたとか……。

■国を代表して国旗を立てて参加する選手団の中には、生まれと育ちと稼ぎの場所が違うアスリートも混じっています。要するに勝てば良いのです。色とりどりの米国選手団も、小さな南洋の島国も、同じ一国扱いですからなあ。国別のメダル獲得数などという悪い冗談も止めた方が良いでしょう。


20日、北京市朝陽公園で行われた女子ビーチバレー大会はブラジルチームの優勝で幕を閉じたが、相手チームにブーイングするなど観客の応援マナーの悪さが問題になった。北京オリンピック開幕まで1年を切り、各競技会場では予行演習をかねた国際大会が開催されている。観客席を埋めつくした地元中国の応援団は、当然ながら中国チームのプレーには盛大な拍手を送り試合を盛り上げたが、対戦相手のナイスプレーに拍手はまばら。中には相手のプレーを妨害するようなブーイングも飛び出し、場内に気まずい空気が流れるシーンもあった。

■「国威発揚」を煽り続けた愛国教育で育った若者にとっては、当然の観戦態度でしょうなあ。「ブーイング」ぐらいで収まっていれば満足すべきです。本番になったら、必ず博打の対象になりますから、各競技場は殺気立って来ますぞ!中には借金までして全財産を賭けるマニアが続出しそうですから、思い余っての行為に出る者が見られるでしょうなあ。選手と観客の距離が取れないマラソンなどの競技は危険ですし、移動中や宿舎での生活も油断が出来ません。


中国のメディアが一般市民に「あなたは外国選手にも拍手ができますか?」との質問を向けたところ「対戦相手が中国でなければできる」とか「ナイスプレーならするかも」と心許なかった。伝統的に勝ち負けに強くこだわるため、自国チームを一方的に応援する傾向にある中国。結果よりプロセスを楽しもう、と呼びかけている
8月21日 Record China

■それは無理な注文です。既に、最多の金メダル獲得が至上命令になっているはずですから、各競技団体は非合法な必殺技を考えているはずです。徹底的な官僚体制ですから、緻密なピラミッド構造を持つスポーツ団体は上位下達で必勝を期しているでしょう。「ナイスプレー」というのは、自国が勝った上での話です。今更、「愛国教育は間違いだった!」などと口が裂けても言えない胡錦濤政権は可哀想でもあります。まだまだ、江沢民さんはお元気なのですからなあ。上海出身の選手など、どんな指示を受けているのか分かったものではありませんぞ。

■広大な国土から有望株を見つけ出して国費で養成した選手たちは、勝てば天国、負ければ地獄です。さてさて、栄光の中華人民共和国代表選手団に、どれほどの少数民族出身のアスリートが居るのでしょう?万一、目覚しい活躍をしても、出身民族名が大きく扱われる事は無いでしょうが……。


4日付の香港紙・明報などが報じたところによると、中国四川省の甘孜チベット族自治州理塘県で1日、警官によるチベット族住民の連行に反発した住民約1000人と警官隊が衝突、住民2人が負傷し、30人が身柄を拘束された。拘束者は200人に上るとの情報もある。衝突時、警官隊は威嚇発砲したという。……同県でチベット族の祭りが催された際、男性住民(53)がチベット族の団結やチベット独立、死刑判決を受けたチベット仏教高僧の釈放などを訴える演説を行った。警官がこの男性を連行しようとしたため、住民との衝突に発展したという。衝突後、住民約200人が留置施設に押しかけ、男性の釈放を求める騒ぎも起きた。香港メディアによると、同州では今年5月、チベット族が聖なる山として崇拝する山での鉱山開発をめぐり、チベット族住民と地元当局などが衝突する事件が起きている。
2007年8月4日 読売新聞

■チョモランマに聖火リレーの舞台にするのも問題で、元を質せば異教徒の聖火ですから、そんな物を聖域に持ち込まれては困る人も居ます。国旗や国家に憎悪の心を持っている人も案外と多いものです。それは兎も角、高地で育つチベット人達の運動能力はアフリカのケニアなどにも負けないはずなのですが、スポーツ施設と指導者の不足で人材発掘が難しいようです。サッカーやバスケットくらいだと、テレビ中継を見ていればルールの概要は理解されるようですが、「野球」となるとさっぱり分からないようです。投げて打って走る、それぞれの動きに意味が有るので、野球という競技はなかなか説明するのは難しいものです。一見単純な陸上競技も、しっかりした指導者が居ないと記録など伸びるものではありません。この点でも、チャイナの教育は大きく遅れている事が分かります。そんな基盤の上に、金メダルを積み上げようというのですから、応援団も会場スタッフも、いろいろと協力する必要が有るでしょうなあ

世界陸上という空騒ぎ 

2007-08-21 22:41:57 | 日記・雑学
■「サスケ」とかいう危なっかしい事を素人にやらせる番組を製作しているTBSテレビが大いに宣伝している「世界陸上」イベントが近付きました。報道番組なのか宣伝なのか区別の付かない番組編成をして強引に盛り上げているつもりなのでしょうが、来年は北京五輪なのですから、その前年にサーカス仕立てのスポーツ・イベントを、わざわざ残暑厳しい大阪まで見物に行く人がどれほどいるでしょう?TBSが願って止まない高めの視聴率は期待できるかも知れませんが、開催地の大阪市としては現金収入を当て込んでいるでしょうから、「また借金を増やすのか?」と有権者から突き上げられるのは目に見えていますなあ。

陸上の世界選手権大阪大会の前売り入場券販売が伸び悩んでいる。国際陸連のディアク会長も危機感を募らせて来日を早め、21日には当初予定になかった記者会見を申し入れ、大会組織委員会の河野洋平会長、関淳一大阪市長とともに大会の盛り上げを訴えた。ディアク会長は来日直前、13日付で関市長あてに文書を送っていた。その中で「現時点の売り上げ水準では、市と日本陸連の双方にとって不本意であろう力不足との印象を生みかねない。明らかに否定的影響をもたらし、または大会の成功を危うくする可能性もある」と強い表現で警告した。 
8月21日 時事通信

■何とも愛想の無い「直訳」報道ですが、「力不足」「否定的影響」「大会不成功」などと連打される直截な表現は、直訳の方がディアク会長の怒りがよく伝わっているようです。それにしましても、大会組織委員会長が河野洋平さんだというのは初耳です。一体、どういう人選なのでしょう?まさか、悪評ふんぷんの外務大臣時代の「功績」やら、今の衆議員議長という重責?から選ばれたのでしょうか?生体間肝臓移植で生き延びた方でもありますから、あまり世界のアスリートを迎えるイベントには不向きなのではないでしょうか?医療関係の国際会議なら打って付けかも知れないのに……。その横に大借金を造った関市長の名前が並ぶと、それだけで無駄な公共事業の臭いが漂いますなあ。


25日に開幕する陸上の世界選手権大阪大会を前に、同大会組織委員会の河野洋平会長(日本陸連会長)、国際陸連(IAAF)のラミン・ディアク会長、関淳一大阪市長が21日、大阪市内で記者会見し、準備状況や大会成功への抱負を語った。河野会長は「競技場(長居陸上競技場)のグラウンドは最高の状態。参加選手すべてが自己ベストの記録を出せる可能性がある。必ずや大阪でいい大会ができると確信している」と強調。関市長は「関西圏の小中学校約700校、約5万人の子供たちを無料で招待する。子供たちの心に何かを残すことと、選手に最高の舞台を用意することの2点に集中してやってきた」と話した。前売り入場券の販売が伸び悩むだけに、ディアクIAAF会長は「できるだけ多くの人に競技場へ足を運んでもらいたい」と期待した。8月21日 時事通信

■河野さんの「確信」など、誰が信じるでしょう?皆が忘れている新自由クラブの独立騒動から、自民党総裁選挙の大コケ劇、緊急着陸した台湾の空港で飛行機から一歩の降りずに頑張った「武勇伝」を北京で披瀝する外交センス……。「グラウンド状態」が最高なのは当たり前の話でしょうに?!他の大会ではコンディションが悪いとでも言うのでしょうか?要するに客寄せに役立つネタが何も無い、というだけの話でしょうなあ。同じ与党の大物?を招聘するのなら、跳んだり跳ねたり出来るイキの良い人に頼めば良かったのに!タイゾー君とか……?どうせ吉本興業を宣伝に動員しているようですから、似たようなテイストで……。

■このまま厳しい残暑が続けば、河野会長が「確信」している高成績や世界記録など絶対に無理でしょう。妙な軍隊精神で我慢を強いる朝日新聞主催の甲子園大会とは違いますから、世界のアスリートはコンディションにうるさいはずです。まさか、灼熱の甲子園大会の地獄を世界から呼び集めた名選手にも押し付けようとでも思ったのではないでしょうな?!関市長の「無料で招待」という言い方も笑えます。要するにバッタモンの処分でしょ?もう、入場券はゴミになっているという証拠を自分で表明しては行けませんなあ。足元を見られまっせ!

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巨大な隣国 其の壱拾壱

2007-08-21 18:22:28 | 外交・世界情勢全般
1923年に創設されたロシア映画の伝統的な撮影拠点、「モスフィルム」を見学した。ソ連崩壊後の経済破綻(はたん)で、ロシア映画は「ゼロまで落ちた」(シャフナザロフ所長)ともいわれた。が、今や、スタジオには最新の撮影・編集機器が備えられ、モスフィルムは「欧州で最高の映画撮影所」とも評されている。実際、ロシアでは国産映画が元気だ。昨年の映画全体の興行収入は一昨年よりも3割増え、収入に占める国産映画の比率は、数年前の1割未満から約4分の1に伸びている。モスフィルムではハリウッドばりの特撮映画がどんどん制作され、プーチン大統領も先に「ロシア映画は十分な勢いで復活しており、展望は明るい」と自信を見せた。

■『戦艦ポチョムキン』と『戦争と平和』ぐらいしかロシア映画など観ていないぞ!という人も多いでしょうが、戦後の暗いスターリン時代にはおぞましい宣伝映画しか作れなかったのは昔の話で、独特な詩情を湛えた名作が作られるようにもなりました。まあ、国情に応じて恐ろしく難解な隠喩が散りばめられた作品も多いようで、分からない人にはさっぱり分からないという場合も多いとか……。しかし、文化的な分野に大きな資金が流れ込むという事は、経済的な豊かさが本物だという証拠です。


もっとも、当の映画人はプーチン氏のように楽観的ではない。“ペレストロイカ世代”の名監督であるシャフナザロフ氏は「今のロシア映画界からはソ連時代のような創造力は失われた」と危機感を表明する。同氏は理由を明言しなかったものの、「(映画)教育の水準が下がったことと、国の文化支援が足りないことが一因だ」と話した。確かに、今のロシア映画界には、氏が1970年代に仕事をともにしたタルコフスキーやミハルコフらに比肩する大物監督は見当たらない。ロシア映画界は文学と同様、若い世代の新しい才能を待ちわびているのだ。
7月23日 産経新聞

■「教育水準の低下」によって生じた文化的な低迷は、多少の資金投入ぐらいでは取り戻せない!日本の文科省もしっかりと胆に銘じておくべき言葉ですぞ。映画人ばかりでなく、すべての文化人が苦しみに耐えて創作活動をしていた旧ソ連時代には、不思議に名作が生まれたものでした。ハリウッドの物真似ばかりの成金映画は観たくないですし、反米嗜好の強い欧州を市場とするのなら尚更の事、ロシア独自の映画芸術を復興発展させねばなりません。黒澤明が『デルス・ウザーラ』を完成させた事を知らない日本人が多いようでは、日本との共同制作などはまだまだ夢物語なのでしょうなあ。因みに、昭和天皇をイッセー尾形さんが演じたロシア映画の『太陽』は不評のようですなあ。

■ドキュメント・タッチの政治犯罪物などは期待出来そうですが、シナリオ段階で深刻な妨害を受けそう。かと言って、マフィア成金を主人公にした提灯宣伝映画では客は集まりそうにないし……。それならハリウッド映画を真似た荒唐無稽な爆発・炎上、カー・チェイスしかネタは無いという事でしょうか?米国製の『インナー・サークル』などは大いに楽しめる作品なのですが、本国では無理なのでしょうなあ。プーチン大統領の裏話などは格好のノンフィクション謀略映画の材料なのでしょうに、残念です!


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インナー・サークル~映写技師は見ていた~

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オリンピックの裏側で 其の六

2007-08-21 17:36:11 | 外交・情勢(アジア)
■人気が出ない「五輪マスコット」を手掛かりにあれこれ考察しようかと思っておりましたが、そんな悠長な事を言っていられない事態になって来たようなので、ちょっと寄り道します。

中国北京市の環境保護観測センターは20日、来年8月の北京五輪に向けた実験として同日まで4日間実施された交通規制により、大気汚染緩和の効果が確認されたことを明らかにした。新華社が報じた。
北京市ではナンバープレートが偶数、奇数の車両を一日置きに通行禁止とし、通行量は4日間で計約500万台分削減された。この結果、規制前日の16日に116だった大気汚染指数は91、93、95、95に下降。市内の大気の質は「2級」(かなり良い)となった。 
8月21日 時事通信

■日本のテレビも新聞も、予想外にこのニュースを大きく取り扱ったようですが、たった「4日間」の実験で効果が上がったからと言って、何も問題は解決していないのではないでしょうか?この偶数と奇数で交通規制をするというアイデアは、シンガポールなどにも先例が有りますが、徹底的な監視網を敷けない事が分かると規制は有名無実化するようですし、「500万台」という削減数に注目すれば、「偽造ナンバー」の需要が非常に大きい事にもなりますぞ!この実験に気を良くした当局が、本気でこれを実施しようとするのなら、あちこちの偽物屋が大繁盛する事でしょうなあ。急速に発展しているネット・ビジネスや伝統的な口コミで、「バレないナンバー・プレート」が大量に出回るのではないでしょうか?もう、気の早い連中は増産態勢に入っているかも?


21日付の中国紙・北京青年報によると、北京市で農村からの出稼ぎ労働者ら「流動人口」が510万7000人に達したことが分かった。北京市に戸籍を持つ住民は1204万人で、同市の人口は計1700万人を突破した。このほど開催された全国流動人口管理・サービス工作座談会で明らかになったもので、来年8月の北京五輪を前に地方からの建設労働者らが急増しているもようだ。 
8月21日 時事通信

■この「500万人」という数値も、決して正確なものではないでしょう。おそらくは実数は遥かに多いはずです。先に定住に成功した同郷人を頼って北京に出て来る人達は、違法と承知の上でコミュニティを形成して隠れ住むと言われていますし、子供も生まれているので単純な統計上の引き算などでは実態はつかめないと思われます。ただでさえ飲用水が不足し、貧弱な暖房設備さえ無い劣悪な環境の中に隠れ住んでいるような人達が、環境面でどれほどの負荷を掛けているのやら……。何よりも、500万以上もの大人口が、五輪大会の開会式と同時に不要とされるとしたら、どんな大混乱が発生するのでしょう?強制的に帰郷させる決定が下されれば、文革時代の「下放」運動の再現ですなあ。こつこつ貯めた現金を抱いて、大人しく貧しい故郷に帰るでしょうか?


中国全土で豚のウイルス感染症「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」が猛威を振るっている。中国農業省獣医局の賈幼陵局長は20日、この感染症が全国26の省・自治区・直轄市に拡大し、今年だけで25万7000頭が発症、17万5000頭が処分されたことを明らかにした。豚肉輸出量世界4位の中国だけに、この感染症が国外に“輸出”される危険もあり、国連食糧農業機関(FAO)は中国側に早急な対応を求めている。

■「早急な対応」などと言われても、加工食品になってしまったら中身はダンボールやら毒肉やら、区別など付きませんぞ!豚肉を忌避しているイスラム教徒の回族などは笑っているかも知れませんが、羊肉や牛肉の値段が上がると困るでしょうなあ。チベット草原の羊は大丈夫でしょうか?羊泥棒や牛泥棒が増えるでしょうなあ。馬まで盗んで食べる連中もいるのですから、肉ならなんでも盗んで売る輩が爆発的に増えそうです。


PRRSの流行は昨年から問題視され、昨年は全国の10省で40万頭が病死。今年に入りさらに感染は広がり、5月には業界関係者が「2000万頭が感染した」と発言している。当局はこれを否定しているものの、昨年初めに全国で6億8100万頭いた豚は今年初め4億6700万頭にまで減少している。

■「減っている」のが「消費された」と同義語ならエライ事です。広大な国土をくまなく監視して危険な肉を排除する事など不可能でしょう。日本の養豚農家をイメージしたら大きな間違いを犯します。本当に汚い方法で育てられているのがチャイナの豚ですから、悪性の伝染病が流行したらひとたまりも有りません。そこに交通網の整備が進んだ環境変化が重なってしまうと、何処から流れて来たのか分からない豚肉があちこちの市場に流れ込みますなあ。


PRRSは今年、ベトナム中部クアンナム省などでも流行しており、その致死率の高さから「中国型ではないか」との疑いがでている。FAOの駐北京報道官は「(中国型かどうか)専門家による調査が必要」とし、中国当局に病死した豚肉組織のサンプルを提供するよう求めたという。中国では豚連鎖球菌、口蹄(こうてい)疫、PRRSと豚の疾病流行が相次ぐ一方で、世界的な飼料用トウモロコシの高騰が重なり、廃業に追い込まれる養豚業者が続出。これにより豚肉の価格も急騰している。こういった豚肉不足を見込み、ヤミ業者が病死豚肉を市場に流す事件が広東省などで相次ぎ、食の安全を脅かしている。
8月21日 産経新聞

■肉食を何よりの贅沢と考える食文化を持っている人達が、驚異的な好景気の恩恵を受ければ世界中の肉を食い尽くすような勢いで、煮たり焼いたり炒めたりして消費してしまいますなあ。廃業してしまった無数の養豚場は、おそらく放置されているでしょうから、病原菌を完全に除去するのは不可能と思われます。五輪大会に向けて食の安全をどうやって確保するつもりなのでしょう?まさか、北京市内の高級ホテルが一斉に菜食主義に転向するわけにも行きませんし、豚肉抜きのチャイニーズ料理では商売にならないでしょう。メニューを守るために、「安全な肉」を海外から大量に輸入して凌ぐしかないかも知れません。そうなれば、今度は世界中の食肉が高騰してしまいます。

■自国から水も食糧も全部持ち込める豊かな国ならば対応の方法は有りますが、現地で提供される食事を摂らねばならない国の代表団は可哀想ですなあ。本当にあと1年でマトモな大会に出来るのでしょうか?肉を嫌って野菜や魚介類に切り替えても、農薬やら有害物質やら、こちらも安心して食べられないようでは、競技に集中できなくなってしまいますなあ。日本はODA枠で対象国の選手団に「安全な食糧」を提供しますかな?それでも見物客には「自己責任」で怪しげな物を飲んだり食べたりしてもらうしかないですなあ。北京五輪観戦ツアーは断食ツアーになったりして……。

■間の無く、旅行ガイドに「安全度」を示すレストラン案内が掲載されるかも知れませんが、それも単なる参考資料でしかないでしょう。毎日の仕入れに危険な食材が紛れ込むのを阻止するのは至難の業でしょうからなあ。頼りは「安全な輸入食糧」だけ!?大変な五輪大会になりそうです。

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巨大な隣国 其の壱拾

2007-08-21 16:27:40 | 外交・世界情勢全般
ロシア西部ニジェゴロド州のシャンツェフ知事は11日、同州都ニジニーノブゴロドと首都モスクワ間の約400キロを結ぶ高速鉄道の建設構想で、ドイツと並んで日本の新幹線の技術を導入するのが現実的だと述べた。日露間の鉄道分野の協力を目的とした日本の官民代表団との初の円卓会議に参加した際に記者団に語り、専門家レベルで経済性や技術面の検討を重ね最終判断する方針を示した。日本政府は新幹線技術の支援に向け、早ければ秋にも両国政府などにより本格的な検討に着手したい意向。両国の鉄道協力は6月の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)での日露首脳会談で、安倍晋三首相が提示した極東・東シベリア地域での協力強化に関する構想の一環。
2007年7月12日 産経新聞

■総理に随行した広報のプロ?が、『美しい星』構想などという寝言を全面に押し出そうなどと画策したので、このような重要なプロジェクトの話が陰に隠れてしまいましたぞ!ニジーノブゴロドは、ヴォルガ河に面した交通の要衝でパイプラインも通っております。東のナホトカ辺りから工事を始めるよりも、モスクワ周辺から鉄道網を広げて行くという手も有るわけですなあ。日本国内で採算割れ覚悟の新幹線延長を考えるよりも、世界に目を向けて磨き上げた鉄道技術を売る方が生産的ですし、外交上も効果的でしょう。自動車が電気で走るようになっても陸送の王者は鉄道ですからなあ。

■最初の商売相手としてロシアはなかなか有望で、欧州から吸い上げているオイル・アネーが潤沢な内に大きな商売をしてしまった方が良さそうです。本当にぼろ儲けしているみたいですからなあ。


五輪の開催はロシアにとって悲願だった。ロシアでこれまで開催された五輪は西側のボイコットにあった1980年のモスクワ夏季大会のみ。それだけにロシアが今回、誘致に向けて見せた意欲には並々ならぬものがあった。プーチン大統領が国際オリンピック委員会(IOC)のプレゼンテーションに出向いたのはもちろん、早くからPR会社と巨額の契約を結び、CNNなどの国際英語放送で「ソチ」のCMを頻繁に放映するなど準備に余念がなかった。

■ゲンナマに弱い国際五輪委員会ですし、ロシア仕込みのハニー・トラップなども併用したら、ころりと買収されるのは当然の話です。ロシア国内でも温暖な気候で有名な保養地で、冬季五輪を開催するなどというアホな話は、銭ゲバ組織でなければ考えませんからなあ。今から「雪不足」が心配されているのですから、実に面白い冬季五輪になりそうです。


冬季五輪で多くのメダリストを輩出しているロシアは「五輪に多くの貢献をしているにもかかわらず、一度も冬季五輪を開催する栄誉にあずかっていない」(プーチン大統領)と訴えた。ただ、国家を挙げての五輪誘致運動には、自国開催を国威発揚の象徴的事業にしようとの政治的思惑も強い。自国への誘致に成功すれば、ロシアが1991年のソ連崩壊後の混乱を脱し、政治・経済的に安定したことを国内外にアピールできるからだ。

■北京五輪と似たような誘致動機ですが、少数民族の過激派によるテロの心配が有るのも似ています。開催前に物騒な事件が頻発したりすると、さすがの国際五輪委員会も考え直さねばならなくなりますからなあ。長野五輪では、訳の分からない借金がごっそり見つかって大騒ぎしましたが、結局、その全貌は闇の中。ロシアは泡銭が唸っているそうですから、借金など気にならないでしょう。


……ソチは94年にも2002年の五輪開催地として名乗りをあげたものの、当時は紛争地のチェチェン共和国に近いとの理由で選から漏れた経緯があり、プーチン政権にとって今回の誘致成功の意味は大きい。石油価格高騰でオイルマネーがだぶつくロシアは、ソチでの冬季五輪施設の建設に120億ドル(約1兆4700億円)の巨額をつぎ込むとしている。プーチン政権は衰退したロシア南部や極東の復興を大きな課題としており、「オイルマネーがあるいま、ソチでの五輪開催によって南部の振興に弾みをつけようとしている」(在モスクワ外交筋)とみられている。
7月5日 産経新聞

■ソチならば、後々、高級リゾート地としても利用可能ですから、ここにも日本の新幹線が売り込める商機が有るかも?でも、チェチェンの武装勢力が工事を妨害する心配は有りますなあ。

巨大な隣国 其の九

2007-08-21 16:27:08 | 外交・世界情勢全般
■チャイナでも北京~上海間の高速鉄道プロジェクト話が有りましたが、車両と軌道と制御システムと発券システムまで一括して採用されないと、日本が誇る新幹線の本領は発揮されない!という意見も強かったのに、ドイツ企業と共同で参加する契約を結んだはずですなあ。大きな事故が起こった場合、日本に責任を押し付けるような事が無い様にして欲しいものです。さて、ロシアの新幹線は今年になってから、別の展開を見せます。

政府は28日、鉄道網の近代化を目指すロシアに新幹線技術を提供するため、7月にロシア側と協議をもつ可能性を明らかにした。経済産業省通商政策局の増山 壽一欧州中東アフリカ課長兼ロシア室長の発表によると、政府代表団が7月にロシアを訪問し、ロシア鉄道のウラジーミル・ヤクーニン社長や政府関係者らと、新幹線技術の売買を念頭に予備的な協議を行う予定。同室長は、「ロシアの多くの自治体首長や住民が日本の技術に関心を示している」と述べた。ロシア政府は今年9月にシベリア鉄道をはじめとする高速鉄道網の整備計画を策定する見込み。

■モスクワ~ペテルスブルク間とは比べ物にならない巨大プロジェクトです。無駄使いが目立つと批判が多かった豪雪地帯を走る上越新幹線ですが、そこで培った寒冷地対応の技術がシベリアで活かされると良いですなあ。武器を輸出できない日本ですから、こうした大規模なプラント輸出は大切です。


高速鉄道の技術提供に関しては、フランスのTGVやドイツのICEとの厳しい競争が予想され、経産省ではロシア側の予算や鉄道網整備に対する熱意をつかみたいと考えているという。すべてが順調に運んだ場合、年内に日露の政府と民間セクターの代表からなる作業部会を設置し、計画をさらに掘り下げていく。増山室長によると、鉄道網の近代化と共に沿線地域の開発も含めた合意に達することが、日本側にとって最良のシナリオだという。

■モンゴル国内を通って北京とモスクワは鉄道で直結されていますから、ユーラシア大陸の主要幹線を日本の技術で高速化出来れば、温暖化対策にもなりますから、大いに努力して欲しいものです。まさか、ここでも経済産業省と外務省が協力態勢を採っていないなどという馬鹿な話にはなっていないでしょうな?!

 
サンクトペテルブルクとモスクワ北方では、トヨタ自動車や日産自動車など日本企業が工場建設を進めている。高速鉄道網が導入されれば、こうしたロシアの工場への日本からの部品調達をより効率化できる。増山室長は、天然資源の輸送も高速化できるため、日本が安定したエネルギー供給を確保する助けにもなると期待を示した。
2007年6月28日 AFP

■北極海航路の開発と鉄道の高速化が両輪となって進むと、ロシアは大きな変化を見せることになるかも知れませんなあ。出来れば、マフィア経済を根絶して民主化を進めて欲しいものですが、強権政治しか知らない歴史を持つ国ですから、あまり贅沢な事を言ってもいられないのですが……。軍用車しか作っていない変な国ですから、日本の自動車技術を無料で軍事転用などされないようにしなければなりませんが、鉄道が高速化されれば、当然、軍事利用も盛んになるのですから仕方がない面も有りますなあ。

巨大な隣国 其の八

2007-08-21 16:26:39 | 外交・世界情勢全般
全ロシア科学海洋研究所のカミンスキー所長によれば、ロシアは今回の調査で北極海中央部のロモノソフ海嶺とその周辺の120万平方キロが、シベリア沿岸から続く大陸棚であることを証明する有力なデータを入手した。この海域に眠る石油や天然ガスは、100億トンにのぼるという。ロシア北部ムルマンスク州のセリン第1副知事は記者会見で「調査はこの重要な地域におけるロシアの地政学的、経済的利益を守る実践的な行動である」と語り、資源獲得に強い意欲を示した。……ロシアは2001年、世界で初めて国連大陸棚限界委員会(CLCS)に大陸棚の拡張を申請したものの、データ不足を理由に却下された。最終的に自国の大陸棚を認めさせるためには、各国とも新しいデータを2009年までに同委員会に提出しなければならない。

■先に引用しておいた「大陸棚問題」です。少し前までは、米ソの原子力潜水艦が静かな対峙を続けていた北極海でしたが、とうとう人類の生活圏に入りつつあるという訳ですなあ。領土争いは軍事衝突を覚悟して繰り広げられるのが常識ですから、耐寒装備を充実させ耐寒訓練を積んだ特殊な海軍国が衝突する恐れも出て来ます。


ロシアが海底調査に力を入れるのは、まさにこのためだが、地球温暖化によって北極の地下資源開発が将来的に容易になるとの思惑が各国で広がりつつあり、ロシアの“領土拡張”路線が思惑通りに進むかは不明だ。これまでロシアのほかカナダ、米国、デンマーク、ノルウェーが北極海大陸棚での権利を主張。特にロシアが狙うロモノソフ海嶺については、デンマークとカナダが自国大陸棚であると訴え、連合調査団まで形成してロシアへの対抗姿勢をあらわにしている。国際的な資源獲得競争が激しさを増す中、ロシアの“領土”拡張欲が冷たい海にホットな争いをもたらすのは間違いない。
6月30日 産経新聞

■記事は前後していますが、北極海の重要性を確認するために少し古い記事を引用しました。その北極海はベーリグ海峡でオホーツク海に続いているのですからなあ。


ロシアのグレフ経済発展貿易相は8日、北方領土の国後島を視察した後、記者団に対し、国後、択捉で計画されている2空港近代化や港湾整備を2012年までに完了させると述べた。タス通信が伝えた。2空港などの整備は、同国政府が昨年策定した「クリール諸島(千島列島)社会経済発展計画」(07~15年)の一環。極東ウラジオストクでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合が開催される12年をめどに主要インフラの整備を急ぎ、ロシアによる北方領土実効支配を誇示する狙いがあるとみられる。
8月9日 時事通信

■来年のサミットが北海道の洞爺湖で開かれるのは、ウラジオストク会議を牽制する遠謀深慮なのかも?それならば大したものです。小渕総理が沖縄サミットを成功させたので、今度は北海道、それだけの理由だったのでしょうが……。どうせなら、北方領土が見えるような場所で開催したら良かったかも?昔のベルリンでも台湾海峡でも、最近まで朝鮮半島の38度線でも、これ見よがしに自国の繁栄を誇示する努力をしていたものですが、北海道東部に関してはそのような動きは見られませんでしたなあ。北方領土に対する援助では「ムネオハウス」が冗談めかして取り上げられたくらいで終わっていますし、国家の意志として領土返還を求める工夫が足りないような気がしますなあ。

■そんな中で、ちょっと面白い開発話が有ります。2005年からのお話です。 


日本とドイツが競合していたロシアの高速鉄道建設計画で、国営ロシア鉄道は独シーメンスとの間で総額20億ドル(約2100億円)の車両購入契約を結び、28日までに導入交渉を開始、日本勢の敗退が正式に決まった。ロシア版新幹線計画は2007年までにモスクワとサンクトペテルブルクを時速250キロの高速鉄道で結ぶ構想。旧ソ連のゴルバチョフ時代から計画され、エリツィン前政権時代の1990年代は日本の重電メーカーが先行していたが、昨年12月の独ロ首脳会談でドイツ版新幹線採用が打ち出された。北方領土問題をめぐる日ロ交渉が難航する中で、プーチン大統領とシュレーダー首相の個人的親交が採用を決定付けたもようだ。
2005年1月28日 時事通信

■先日、爆弾テロで転覆事故を起こした路線です。世界で一番長いシベリア鉄道を運用している伝統が有るのに、いかにも民生工業製品には無関心なお国柄で、自力で高速化は出来なかったのがロシアです。米国のように大陸横断鉄道を通しておきながら、石油会社の要望に応じて鉄道網を減らして自動車社会に転換した例も有りますが、ロシアは鉄道王国になるべき立場にいたのですが、ロケットや原水爆、超音速爆撃や原子力潜水艦は作っても高速鉄道は造らなかったのでした。

巨大な隣国 其の七

2007-08-21 14:35:30 | 外交・世界情勢全般
北極海のロモノソフ海嶺とその周辺はシベリア沿岸から続く大陸棚で、資源の開発権があると主張するロシアの海底調査隊は今月2日、北極点直下の海底に到達、チタン製のロシアの国旗を打ち込んだ。この行為自体で開発権が認められるわけではないが、ロシアは調査で大陸棚と認められるだけのデータが集まったとしている。

■「大陸棚」の問題は非常に厄介で、チャイナはこれに便乗して沖縄まで呑み込もうとしていると言われていますし、日本列島の西側はうかうかしていると削り取られてしまうかも知れません。チャイナが公刊している「歴史地図」には、シベリア全土を清朝時代の最大版図の中に含めている物が有ります。しかし、今更「正しい歴史認識」をロシアに要求して北極海沿岸に到達する軍事行動は採らないでしょうなあ。ロシアは北へ、チャイナは東へ領海を広げて行くという分担が決まっているのなら、国連での議論がややこしくなりそうです。


北極には、各国の領有権の主張を凍結している南極条約のような取り決めがなく、資源の利用開発は国連海洋法条約のもとで行われ、沿岸から200カイリの排他的経済水域(EEZ)の外でも、国連大陸棚限界委員会(CLCS)に海底が陸地からの延長である「大陸棚」と認められれば開発権が与えられる。ロシアはCLCSに大陸棚の拡張を申請しており、データの提出期限が2009年に迫っている。

■日本の尖閣諸島も同じ交渉日程に乗っているはずですから、ロシアとチャイナが連携する可能性を考えておかねばなりません。北方領土の返還もままならない日本は、南樺太の正当な領有権などすっかり忘れているくらいですから、ロシアが地球温暖化を利用して「北極海航路」を拓き、北廻りで日本海に出て来た時には腰を抜かすのではないでしょうか?


ロモノソフ海嶺については、カナダやデンマークも自国の大陸棚であると主張している。ロシアの調査に対抗する形で、デンマークは12日、40人の科学者らで作るチームを送り込み、同海嶺の海底地図を作製する。米国も今月10日、沿岸警備隊の砕氷船を探査のため派遣した。探査チームの科学者は「政治的意図はない」としているが、ロシアのメディアは米国が資源競争に参加しようとしていると報じているという。

■領土・領海という物の本性を学ぶには絶好の現象が北極海で起こっているわけですが、日本のマスコミは「対岸の火事」とさえ思っていないようです。北極海が永久結氷の海でなくなる事を前提として関係国が動いているのですから、海運業界の大変化に備えておかねばなりませんぞ。


北極海の資源争いでは05年、当時のカナダの国防相がカナダ・エルズミア島とグリーンランド(デンマーク領)の間にあるハンズ島にカナダの国旗を立て、デンマークとの関係が悪化したことがある。北極海には地球の未発見資源の4分の1があると推定されている。米航空宇宙局(NASA)は北極海を覆う氷が1978年以来の観測史上最小を記録したと報告しており、地球温暖化も“資源争奪戦”の背景にある。
8月12日 産経新聞

■グリーンランドが本当に緑の大陸になり、シベリアの永久凍土が溶け出し、北極海に波が立つ時代が間も無くやって来る!日本も北海道の地位を高める政策転換が必要になるでしょうなあ。関東地方までが亜熱帯になれば、東北・北海道が温帯になって農林業の勢力分布も大きく変化する可能性が有ります。今更、何をやっても温暖化自体は止められませんし、地球は誕生以来、何度も灼熱地獄と極寒地獄を繰り返して来た歴史が有りますし、氷河期と間氷期が繰り返されたのは最近の話です。人類が出現する遥か以前から、気象変動は起こっていた事を考えれば、化石燃料の利用がどれほどの温暖化要因になっているのかは怪しいとも言われていますなあ。どっち道、化石燃料はそれほど長く湯水のように使い放題というわけには行かなくなりますから、新しいエネルギーの開発を進めながら、気象変動によって現われる国際情勢の変化を予測しておくべきでしょう。少なくとも建国以来、ずっと寒さと戦って来たロシアが、温暖化現象を大いに利用しようとしているのは確かなようですからなあ。


世界最大の領土と膨大な地下資源を誇るロシアが、北極海の海底探査を本格化させている。開発が手つかずの北極に“海底領土”を広げ、その地下資源を確保するのが狙いだ。これまでの調査により、ロシアはドイツ、フランス、イタリア3カ国の全国土面積の合計に匹敵する面積の“領土”を得られるとの自信を深めている。このほどロシアは、原子力砕氷船「ロシア」を約1カ月半にわたって北極圏に派遣し、水中カメラや地震波を使って海底地形を調査した。

■冷戦時代に「レーニン号」という原子力砕氷船を建造したロシアでしたが、技術が追いつかずに廃船になってしまった事実が有ります。原子力潜水艦の建造競争で米国と対等に渡り合った国ですから、諦めずに開発を続けていたのは驚くべき事ではないでしょう。北極海の氷が薄くなってくれれば、多少の問題が有る砕氷船でも充分に活躍できるというわけですなあ。因みに日本は南極観測には熱心ですが、北極には僅かな冒険野郎が挑戦しただけです。

巨大な隣国 其の六

2007-08-21 14:35:01 | 外交・世界情勢全般
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の「北東アジアの安全保障」作業部会第2回会合が20日、2日間の日程でモスクワのロシア外務省別館で始まった。議長を務めるロシア外務省のラフマニン特命大使は、作業部会の冒頭、「今回の会合の目的は、朝鮮半島の非核化に向けた今後の議論の方向性を定めることだ」と述べ、今回で結論がでるというものではなく、同部会が長期的なものになるとの見通しを示した。同部会第1回会合は今年3月、北京のロシア大使館で開かれたが、「そのときと比べ、北朝鮮の各国に対する批判的な発言は少なかった」(外交筋)という。
8月21日 産経新聞

■腰が引けているような姿勢が目立ったロシアでしたが、米国がすっかり弱気になって北朝鮮のペースに協議が流れ始めるまで待っていたのか?「長期的な」話し合いをするというのが無気味です。先代からの自主独立路線を捨てて、北朝鮮が上海機構に飛び込むような決断をするとは思えませんが、6カ国協議参加国のうち2カ国が上海機構の主要国になっている関係から、ロシア・中国・北朝鮮という東アジアの核保有国が連帯すれば、インド・パキスタンを加えて5つの核保有国が機構内に入る計算になってしまいます。NATO側は米・英・仏の3カ国が核保有国ですから、世界中の核兵器管理を考えれば上海機構の発言力が高まる一方ですなあ。その勢いでイランを後押しするような流れが出来ると核兵器の拡散は誰にも止められなくなりそうです。


ベネズエラのチャベス大統領は19日のテレビ・ラジオ番組で、ロシアからドラグノフ狙撃銃5000丁や、暗視スコープを購入することを明らかにした。「米国が侵略してきた時のゲリラ戦に備えるため」としている。 
8月21日 時事通信

■イラクが簡単に片付いたら次はベネズエラが狙われる、ともっぱらの噂だった国です。露骨な反米主義者のチャベス大統領は、自身の地位を終身制にするつもりのようですから、これだけでも上海機構に参加する資格は充分に満たしているようなものです。ドラグノフ銃は1000メートルを楽々と超える化け物狙撃銃として有名ですし、暗視スコープまで装備して米国自慢の新型兵団と本気で戦うつもりのようですなあ。イラクは時代遅れの兵器を売りつけられて惨敗したのですから、反米国家はその轍を踏まないように最新兵器を買い集めるのは当然の話です。産油国のベネズエラには今のところ核開発の動きは無いようですが、イランと同じ理由で原子力発電所が必要だ!と言い出すかも知れませんなあ。売りつけたい国はいくらでも居るのですから、米国がどんなに嫌がっても止めようは無いでしょう。

■武器やエネルギーを取引材料にした陣取り合戦は、冷戦時代が復活したようなものですが、ロシアはさらに歴史を撒き戻してシベリアを呑み込んだ18世紀を再現しようとするような動きを見せています。


北極海に眠る豊富な資源をめぐって、各国の争奪戦が加熱している。ロシアが今月初めに海底調査隊を派遣したのに続き、カナダは10日、北極海域に新たに2カ所の軍事施設を建設すると発表した。米国も調査船を派遣、デンマークも12日、調査チームを送る予定だ。地球温暖化で氷が縮小していることや、資源開発の権利を主張するための国連機関への資料提出期限が迫っていることなどが争奪戦に拍車をかけているとみられる。

■ベーリング海峡は発見者の名に由来しているのですが、ベーリングさんがデンマーク海軍の出身だったのは、案外、知られていないかも知れませんなあ。バイキングの血はまだまだ熱くたぎっているという事でしょう。氷が大規模に溶け出して注目されている北極海ですが、地球温暖化を心配する人が居れば、それを利用してフロンティアの開拓を計画する者も居るという事です。
(杉浦美香)

AP通信などによると、カナダ軍は北部ヌナブット準州に属するコーンウォリス島に100人規模の軍事訓練センターを、同準州バフィン島には官民共用の港湾施設を建設する。3日間にわたり北部を視察していたハーパー首相は最終日の10日、コーンウォリス島を訪れた際、この建設計画を明らかにした。記者団に「北極の主権を守るもっとも大事な原則は『利用しろ、さもなければ失う』ということだ。これで、北極海でのカナダの存在を示すことになった」と述べた。

■「国際信義を信頼する」憲法を持っている日本は、竹島だろうと尖閣諸島であろうと、軍事的に占拠されても黙っているしか有りません。そんな憲法を後生大事にしている内に、100年も経たずに領海・領土が蚕食されて見るも無惨な姿になるかも知れませんなあ。「利用しろ、さもなければ失う」とは蓋(けだ)し名言ですなあ。

巨大な隣国 其の伍

2007-08-21 14:34:28 | 外交・世界情勢全般
ロシアが今強く意識しているのは、政権奪取に向けて勢いづく民主党など野党勢力に、鳩山由紀夫・民主党幹事長ら親ロシア的な政治家たちが多く含まれていることだろう。それは「野党は日本史に新たなページを開こうとしている」(国営テレビNTV)や「日本は野党が勝利を祝うが、安倍首相は辞任したくない」(大手日刊紙RBK)といった報道ぶりにも表れていた。安倍政権の求心力が弱まるにつれ、ロシア側が鳩山氏ら民主党の有力議員らにさまざまな形の秋波を送ってくることは間違いない。

■民主党が一枚岩ではないのを国民はよく承知しています。自国の防衛問題と絡めて外交問題でも内部分裂が表面化したら、空中分解が起こるでしょうなあ。「テロ特措法」で米国に嫌味を言ってみせた小沢代表でしたが、ロシアとの関係を重視しているようにも見えません。民主党の誰が最初にロシアを訪問するのか?これは注意して見ておかねばならないでしょう。鳩山さんにずば抜けた外交センスを期待する人は皆無でしょうし、菅さんが鳩山さんを出し抜いて跳ね上がる予兆も見えないようです。しばらくは内政の粗探しをしながら政権交代を目指すのでしょうが、その先には大きく変化した国際環境が待ち構えているのですから、きちんと準備しておいて貰いたいものですなあ。


……ロシアでは、今年12月の下院選、そして来年春の大統領選と、2つの重要な政治日程を控え、政治への関心が高まっている。そこで、選挙で大敗しても辞任しない安倍首相の姿勢についても、独特のロシア流評価がある。ロシア国民の多くは自らの体験から「政権交代は政治の不安定化や新たな汚職の温床を生み出すだけで、いいことは何もない」と思っており、安倍首相の続投表明を肯定的に見る傾向もある。ロシア下院議席の7割近くを占めるプーチン大統領の翼賛与党「統一ロシア」(グリズロフ党首)は、その創設に当たり戦後の日本政治を事実上独占してきた自民党の機構や党綱領などを参考にした。ロシアにも同様の主導政党を創設し、安定した政権運営を図ろうというのが最大の目的だった。「統一ロシア」の幹部が、かつて記者に「一党独裁体制を敷いてきたソ連共産党ですら崩壊した。われわれもいつかは落日を迎えることになるだろう」と漏らしたことがあった。その文脈からすれば、プーチン・ロシアにとって自民党の敗北はひとごとではない。
8月2日 産経新聞

■「政権交代は混乱の元」と言ってくれる隣人の存在は安部首相にとっては強い味方を得たようなものなのに、どうしてロシアを訪問しないのでしょう?政府間での交渉が進んでいなくても、友党関係を結んで交流を持つ事は可能なようにも思えます。「領土の割譲」は最大の汚点とされている膨張の歴史を持つロシアですから、北方領土を返還する見返りは余ほど大きな物でなければなりません。それには長期的な開発計画や経済交流の大プロジェクトが必要になります。


2007年8月14日、胡錦涛中国国家主席は、キルギス共和国の首都ビシュケクで開催される第7回上海協力機構(SOC)6か国首脳会議に出席のため、北京を出発した。……キルギス共和国のバキエフ大統領とロシアのプーチン大統領の要請によるもの。胡主席はロシア・ウラル地方で現在行なわれているSOC6か国初の「対テロ」合同軍事演習を視察する。胡錦涛主席に同行する閣僚は、呉儀(ウー・イー)国務院副総理兼中央軍事委員会副主席、曹剛川(ツァオ・ガンチュアン)国務委員兼国防部部長、楊潔フ(ヤン・ジエフー)外交部部長、薄熙来(ボー・シーライ)商務部部長ら9人である。
8月14日 Record China

■上海機構には、インド・パキスタン・イランが参加しつつありますから、これでインド洋の北岸は固められます。北京政府は猛烈な勢いでアフリカに進出していますから、インド洋をぐるりと囲み切る戦略を持っていると推察されます。米国がイラクで大失敗を犯したのですから、中東地域が東西から挟み込まれると大きな変動を起こす可能性が出て来ます。折角、苦労してインド洋で給油支援を続けている日本ですが、アフガニスタンも上海機構に片足を突っ込んでいるので徒労に終わる恐れさえ出て来そうですなあ。防衛省と外務省の足並みを揃えさせる総理大臣が必要です!人事で振舞わされているようでは……。