旅限無(りょげむ)

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広がる麻薬禍 その伍

2008-11-16 18:05:38 | 社会問題・事件
■この数週間に明らかになった麻薬関連のニュースを集めてみました。何とも恐ろしい状況になってしまったものですなあ。

大麻などを隠し持っていたとして関東信越厚生局麻薬取締部は8日、プロテニスプレーヤーの宮尾祥慈(27)と、元アダルトビデオ女優で飲食店従業員、菊地有紗(22)の両容疑者を大麻取締法違反(共同所持)容疑などで逮捕……。菊地容疑者宅のマンションで、乾燥大麻約0.7グラムなどを所持していた疑い。……菊地容疑者は「宮尾容疑者に勧められて大麻を始めた。9月ごろに都内のホテルで日本人の密売人から買った」と供述しているという。2人は9月から交際し、大麻は菊地容疑者宅に保管して使用していたという。……
11月8日 毎日新聞

■世界ランク23位の有望株だという報道もありましたが、テニスの熱心なファンでもなければプロ選手と言っても名前も顔も分かりません。でも、テニス人口は増えているようですし、若い世代でも部活や専門クラブで将来を夢見て頑張っている人たちの中には、それなりに憧れや尊敬の対象にしていたのでしょうから、こうした転落ドラマを見せられると落胆するのでしょうなあ。既に、この二人は覚醒剤にまで手を出していた事が続報で明らかになっていますから、女性側の職歴が特別な意味を持って記事を読む者にあらぬ妄想を抱かせたり、面白おかしく劣情を煽り立てる効果があるからこその大きな扱いなのだと思われます。

■重要なのは「都内のホテルで日本人の密売人」が関与している事でしょう。ホテルの部屋に売人が参上するのか?木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中というわけでラウンジの何処かでさり気無く現金と薬物が交換されるのか?注文は電話かメールか?いろいろと映画の一場面を想像してしまいますなあ。どちらにしても、東京都内に薬物販売網が張り巡らされていることは明らかです。


東京都港区の住宅街で主婦や会社員ら延べ約2万人に覚せい剤などの薬物を密売したとして、関東信越厚生局麻薬取締部が密売グループのリーダーでイラン国籍の男を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)容疑などで逮捕していたことが分かった。麻布や白金などエリア別に「売り子」を置き、昨年11月以降だけで約2億円を売り上げたとみられる。リーダー格の摘発は珍しく、麻薬取締部は高級住宅街を舞台にした薬物汚染の全容解明を進める。

■振り込め詐欺や麻薬犯罪の中心人物が摘発されるのは珍しい!という現実が恐ろしい!危ない橋を渡らされている雑魚をどんなに捕まえても、所詮は使い捨ての交換部品ですから組織自体はびくともせずに存続し、客が増えれば際限も無く増殖して行くのが犯罪組織。仲間割れでも起こしてくれないと警察の捜査ぐらいでは根絶やしには出来ないようです。このイラン人が運営していた組織が縄張りにしていた顧客の多くは、もう次の組織に取り込まれているのでしょう。


逮捕されたのは、住所不定、アボルファズル・ザルバリ被告(42)=覚せい剤取締法違反罪などで既に起訴。……ザルバリ被告はイラン国籍の売り子役の男4人=同=と共謀し、今年5~7月、港区のマンションやアパートの一室で、覚せい剤約20グラム、コカイン約42グラムなどを販売目的で所持していた疑い。

■こちらはホテルではなく普通の集合住宅で販売していたようです。「プライバシー尊重」などと言って近所付き合いも無い勝手気ままな都会の生活だったのでしょうから、隣の住人も犯罪どころか職業も家族構成も分からないまま、偶然に出入りしている姿を見かけたり、エレベーターや階段などで顔を見て外国人が住んでいることだけは知っていた可能性はありますが……。プライバシーの名目に隠れて犯罪が身近で行われているというのは、何とも気味が悪い話であります。


1日平均約70人に売りさばき、1カ月の売り上げは多い時で約2000万円に上ったという。5月以降、順次逮捕した4人の供述からザルバリ被告が浮上し、7月に港区の路上で逮捕した。……96年ごろから偽造旅券で密入国を繰り返し、都内や中部地方で覚せい剤などを密売。初めは繁華街などで売っていたが、防犯カメラの設置が増え、警察の取り締まりも強化されたことから住宅街に目をつけ、最近は活動の中心を港区などの高級住宅街に移していた。

■「防犯カメラ」は本当に防犯効果が有るのですなあ。でも、カメラが設置された特定の狭い区域から犯罪が駆逐されても、カメラが設置されていない広大な生活空間に悪人が大移動するのでは、絵に描いたようなイタチごっこですなあ。それも犯罪の臭いのする怪しげな場所ではなくて閑静な「高級住宅街」で商売するとは賢く大胆な発想の転換と呼ぶべきでしょうか?


手口は、顧客の連絡先があらかじめ入力された「客付き携帯」と呼ばれる携帯電話を入手し、自ら売買内容を交渉。話がまとまると、麻布、高輪、白金の3地区を担当するそれぞれの売り子に受け渡しの日時や場所を指示していた。受け渡しはほとんどが住宅街の路上。特定の売買拠点を作ると取り締まりの対象になりやすいと判断したとみられる。売り子の男は、六本木のクラブなどで勧誘していたという。

■「六本木」という地名は麻薬犯罪の報道とは切っても切れないものになりました。芸能人やらスポーツ選手やらが、六本木を遊び場にしていると自慢げに話すのをテレビが垂れ流しているからか?地方からテレビで見聞きした場所を目指して右も左も分からないまま見学?に集まる地方の若者がいるとも聞きますが、繁華街には暴力と麻薬が付き物だと諦めてしまったら御仕舞いで、安全に遊べる場所に変えようと地元の人達が努力した結果が、核兵器ならぬ麻薬の拡散だったとしたら、実に皮肉な話であります。それにしましても「携帯電話」という新しい文明の利器は、使いようによっては打ち出の小槌になる世の中は恐ろしいものだと思い知らされますなあ。

■自動車の次に若者から見棄てられるのは携帯電話か?否、生活費を削ってでも携帯料金を支払う人が多いようですから、それはもう少し先の話かも知れません。でも、不況が深刻になったら携帯料金を支払うために麻薬の売り子になってしまう人間が現われる可能性はありそうです。


……4人は「ザルバリ被告の指示でやった」と供述、「日本人は金があるし真面目に払うからやりやすかったが、こんなに薬物を買う人がいて日本は大丈夫かと心配になった」と話しているという。……ザルバリ被告のグループのようなイラン人の密売組織は都内に約10グループあるとみられる。同部はザルバリ被告らをさらに追及し、薬物や客付き携帯の入手ルートなどについて調べる。
2008年7月2日 産経ニュース

■幸か不幸か日本は銃社会ではないので、麻薬取り引きがこじれて銃撃戦になるような事は無いとイランの密売グループの親分を感激させたのでしょう。どこまで個人情報を売人に握られているのかは分かりませんが、犯人が所持していた携帯電話には、少なくとも「連絡方法」が残されているそうですから、そこから麻薬使用者を割り出して摘発・治療に取り掛からないと手遅れになるかも知れませんなあ。イラン人に心配されているほど麻薬が蔓延しているのですから、飲酒運転よりも怖い麻薬運転が起こっているかも知れませんぞ。気が付いたら電車内や路上に無数の川俣軍司さんが大量発生していたなどという事態は是非とも避けたいものですなあ。