旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

テレビ・ラジオの曲がり角 其の参

2009-04-29 09:44:21 | マスメディア
■これから地デジに切り替わると「双方向性」が高まって視聴者が番組に直接的に参加できるのだそうですが、こういう馬鹿母に向かって画面の向こうから熱湯を浴びせるようなことは技術的に不可能でしょうなあ。他人の不幸を笑って見ていられる神経が、やがては暇潰しに我が子の虐待に向かわせたのでしょうが、こういう一見鈍感な人が過剰な自己防衛本能を持っているのが困った話で、我が子を含めて自分以外の生き物が苦しむ姿を笑って見ていられるのに、自分の皮膚に熱湯の一滴で飛んで来たりすると救急車だ!入院だ!と騒ぎ出したりしそうです。万が一、その一滴を飛ばした人物が特定されるような場合なら「自分だけの」人権を最大化して相手を徹底的に責め上げそうです。総務大臣を見習って「絶対に許さない!」とか何とか言いそうですなあ。

……2人は容疑を認め、「泣き叫ぶ長女の姿がおもしろかった」などと供述。「娘に申し訳ないことをしてしまった」などと反省している。……食べさせたシューマイを熱いとはき出した長女の様子を見て、熱湯に入るお笑い芸人の様子を思いだし、長女を熱湯に入れることを計画。……少女にはほかに、8カ月の長男がいるが、今年2月、足首を持って子供を振り回した際にできやすいという頭部外傷で入院しており、同課は少女が長男にも虐待していた疑いがあるとして調べている。 
4月28日 産経新聞

■生後8ヶ月の赤ちゃんの「足首を持って振り回」すというのも、何処かのお笑い芸人が手本になっているのでしょうか?単純に計算すると、19歳の「お笑い」好きの母親は虐待された子を17歳で出産していることになりますから、16歳の頃から奔放?な生活をしていた可能性があるので、乱暴に一般化はできない事件だと言えそうです。しかし、そういう生活をしている視聴者も存在することを知った上で視聴率競争に取り組む覚悟がテレビ業界には必要でしょうし、観る側にも成熟した視聴者になる心構えが必要なのかも知れません。もしも、これからもテレビ文化と深く関わって行こうと思うのならば、という話ではありますが……。
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テレビ・ラジオの曲がり角 其の弐

2009-04-29 09:43:57 | マスメディア
■「最低の人間」発言で物議を醸してしまった鳩山総務大臣は、事務所に多数の抗議電話が殺到したとて前言撤回、手榴弾を投げ込む予告電話まで掛かった所もあったそうです。どちらもテレビを真剣?に観ていることには変わりはなさそうですが、テレビ業界がよい方向に向かう助けにはならないような気もします。

民放連は27日、平成23年7月の地上デジタル放送完全移行をPRする新キャラクターを発表した。2本足で立ちアンテナの形の角を持つ“ゆるキャラ”で、愛称は「地デジカ」くん。地デジ移行の「注意喚起」を促す意味で黄色い服を着ている。……地デジ普及推進のメーンキャラクターを務めているSMAPの草なぎ剛さん(34)が23日に公然わいせつ容疑で現行犯逮捕され、地デジCMは全局で放送中止中。……発表会に出席した鳩山邦夫総務相は「(草なぎさんは)立派に大人の反省をして立ち直ってくださると信じている。彼がいない分、地デジカくんに頑張ってもらわないといけない」と話した。
4月27日 産経新聞

■逮捕が23日で「地デジカ」くんの発表が27日。生身の人間で代役を立てるのは非常に難しかったのでしょうが、何とも安直なお役所仕事ではあります。無気味な可愛さですっかり日本中に知れ渡ってしまった「せんと君」ぐらいのインパクトがないと草ナギ君の穴埋めは無理でしょう。SMAP人気と「女子アナ」ブーム?に便乗すれば地上デジタル化は順調に進むだろうと、何処かの誰かさんが考えたところから間違いが始まっているのですが……。

■あわてて作った面白くも可笑しくもない「地デジカ」君の着ぐるみに入っているのは鳩山大臣ではありません。「ゆるキャラ」のブームに便乗して登場した「サイバンインコ」という名前もデザインも苦笑と冷笑を浴びた着ぐるみに入って大汗をかいていた鳩山大臣でしたが、あれで懲りたのか?単に「地デジカ」君の着ぐるみが鳩山大臣の体型を考慮していなかっただけだったのか?理由は不明ですが、これから大急ぎでCM制作とポスター作りが始まるのかと思うと気が滅入るようなデザインと名前でありますなあ。

■2009年から正式に始まる「裁判員制度」自体が、このまま本当に開始できるのか?と心配されるほど疑問と批判の声が日に日に高まっている昨今であります。例の「サイバンインコ」は各地の地方検察庁が張り切って作った60種類以上もの「ゆるキャラ」の中から鳩山大臣が直々に選んだ福岡高検の作品で、法務省・検察庁の公式キャラクターなのだそうです。2009年版の『現代用語の基礎知識』(自由国民社)にも掲載されることが決まっているという報道もありましたが、本当かいな?と長年お世話になった『基礎知識』の衰えも心配になります。着ぐるみよりも制度自体に欠陥が多い裁判員制度ですから、「サイバンインコ」よりも不幸にも選ばれてしまった初代裁判員の皆さんの御心労と御苦労を思うと気が重くなって来ますなあ。

■「サイバンインコ」がテレビCMに出て来たという話は聞きませんが、最初から広報用の予算にテレビ枠は組まれていなかったのかも知れません。地デジ移行に関する広報にはは莫大な予算が使われているようですし、各テレビ局も死活問題ですから自腹を切って全面的に協力しているらしく、誰も観ないのに草ナギ君の広報CMがのべつ幕無しに垂れ流し状態で放送されていたようですから、これからは同じ頻度で「サイバンインコ」ならぬ「地デジカ」君が顔を出すことになるわけですなあ。彦根城の築城400年を記念して登場したゆるキャラの元祖「ひこにゃん」に負けないほどの人気者にはなれないまま、「サイバンインコ」と共に寂しくお蔵入りとなるのでしょうか?

■どうやらテレビが持っていた神通力や影響力には大きな翳(かげ)りが見えているとしか思えないのですが、一部には今でも非常に偏った形で強い影響力を持っているのが心配です。


2歳の長女を熱湯を入れた風呂につけたとして、警視庁少年事件課と綾瀬署は28日までに、傷害容疑で、東京都足立区の無職の母親(19)と友人の無職少女(19)を逮捕した。長女は両足に2カ月のやけどを負ったという。……「言うことを聞かず、いらいらしていた。お笑いタレントが熱いおでんを食べさせられるのを思い出し、懲らしめようと思った」などと供述。……自宅マンションで、ベビーバスに入れた深さ約8センチの熱湯に、長女の両足を約1分間つけるなどした疑い。……熱湯は60度以上あったとみられ、母親らは長女の肩を押さえつけ、茶碗で熱湯をすくって体にかけるなどした。「熱い」と床を転げ回る姿が面白く、笑って見ていたという。……4月28日 時事通信

■「熱いおでんを食べさせられ」たお笑いタレントは誰なのか?それを特定してみたところで我が子が泣き叫ぶ姿を「笑って見ていた」鬼の心が矯正されるはずもありません。我が子に対する虐待が笑いのネタになっているという衝撃的な事態が起こっている!同列に語っているのですから、この19歳の馬鹿母は残酷趣味のテレビ番組を大笑いしながら観ていたのでしょうなあ。他人が火傷するかも知れない危険な事をしている姿を見て笑える……。そういう視聴者が一定数存在するからこそテレビ局はこういう企画を大真面目に考えるのでしょうし、それを命じられた職業人は命懸けで命令に従うことになります。テレビ画面を挟んで、アチラ側とコチラ側とが完全に隔絶しているわけですなあ。

テレビ・ラジオの曲がり角 其の壱

2009-04-29 08:49:07 | マスメディア
■深夜に酔って裸踊りをしたSMAPに所属する草ナギ君の騒動はまだまだ波紋を広げそうですが、同じ時期に北野誠という人が突然、テレビ・ラジオ業界から姿を消すという事件が起きました。どちらもテレビ業界で隠然たる影響力を持っている事務所関係者の意向で起こったことらしいのですが、視聴者側にとっては何の関係もない話であります。報道を看板にして「生き返り」に必死の某テレビ局でさえも、草ナギ君が所属する事務所に突撃取材をするでもなく、北野誠さんの追放劇の裏事情を詳報するでもなし、片方は酒の上での小さな失敗談に仕立て上げて事務所を守ろうとしている気配さえ感じますし、その一方で北野誠さんの追放劇に関しては事件自体が存在しないような扱い方をしているようですなあ。

■半世紀を越えてテレビ業界が大きな曲がり角に来ている時期ですから、政界ならぬテレビ業界の再編成さえ起こり兼ねないような雲行きになっているのに、あまりにも長い間に深く大きくなった業界内のシガラミで身動きが取れなくなっているのかも知れませんなあ。「脱皮できない蛇は死ぬ」という格言もありますから、使用する電波帯を替えるだけの空騒ぎをしている場合ではないような気がします。

■貴重な時間を潰してテレビの番組を隈なく観なくても新聞やネットのテレビ欄を眺めているだけで、テレビ文化の現状は垣間見えることがあります。それにしましても、一体、何処の誰が観ているのだろう?と真剣に頭を悩ませるような名前の番組が増えましたなあ。窮屈な字詰めで内容を紹介する編集になっているのに、何度読んでも番組の意図や内容がさっぱり分からない番組も多いようです。

■4月24日のテレビ欄、フジテレビの夜の番組はなかなか興味深い編成になっておりましたぞ。午後9時から映画『少林サッカー』を放映した後、10:52からは『キク!みる!』という番組名からして自社製のテレビ宣伝予告を挟んで『VVV6 ラーメン&女子アナ』という題名の読み方も分からず内容もまったく不明の30分番組が放送されたようです。11:58というテレビ朝日が始めたと言われる「フライング」時間から始まるのが遅めの報道番組『ニュースJAPAN』。この日の内容予告は「全裸“草ナギ容疑者”送検へ」となっていて、スポーツ枠の『すぽると!』は「NBA特集」。問題は午前1:05からの『キャンパスナイトフジ』という昔の人気番組を露骨に焼き直したような名前の番組で、予告では「女子大生が入浴&生着替え&寝る瞬間▽興奮生放送」となっております。

■草ナギ君が深夜の裸踊りで「容疑者」となって「送検」されたと報道しておいて、覗き犯罪の疑いが懸けられそうなややこしい企画の番組を制作しているテレビ局の奇怪さが凝縮されているようなテレビ欄になっておりました。未見ではありますが、まさか、『ニュースJAPAN』の枠内で覗きや痴漢などの性犯罪を取り上げていなかったでしょうな?!真面目に観続けた視聴者は大混乱してしまいますからなあ。

■テレビが腐って滅んでも、娯楽と報道はラジオで十分だ、と思っていると、同じ4月24日のラジオ欄を見てビックリ仰天!皆様のNHK第一放送では夕方6時から神宮球場の『ヤクルト×横浜』の実況中継がありまして、テレビ側では視聴率が取れないという分かり易い理由でプロ野球の実況放送が軒並み消滅しているというのに、ラジオでは歳時記みたいに野球シーズンらしい番組編成になっております。WBCのサムライ人気でプロ野球界も再生したのかも知れませんが……。TBSラジオは5:50から東京ドームの『巨人×中日』開設は元木大介さん、文化放送も5:50分から『巨人×中日』解説は大塚光二さん、ニッポン放送も5:30から『巨人×中日』解説は田尾安志さん、ラジオ日本も『巨人×中日』解説は中畑清さん。

■この並びを目にした一瞬に「もう日本シリーズが始まったのか?」と馬鹿馬鹿しい妄想が頭に浮かびましたが、セ・リーグ同士が対戦するはずもないので、ペナント・レース中の記憶が消えてしまったわけではないと一安心?しかし、最初からラジオ欄に並んでいるのですから、天候や事件などで突然番組が差し替えられたというわけではなさそうです。では、この日は他の対戦は無かったのか?と思って調べてみたら、ちゃんと『阪神×広島』『日本ハム×オリックス』『楽天×オリックス』『ロッテ×西武』の試合が行われていたのでした。特に日本ハムのダルビッシュ投手が「今季初完封」だったそうですし、西武の涌井投手は「先発全員奪三振」という新記録を出しております。両投手のファンの皆さんはインターネットやケーブルTVを通じて観戦したのでしょうなあ。

五輪後のチャイナ 其の参

2009-04-25 10:24:43 | 外交・情勢(アジア)
■チャイナ側は知的所有権に関してどんな認識を持っているのか、甚だ疑問に感じていると、次のようなニュースが目に付きましたぞ。

中国国家知的財産権局の田力普局長は21日に行った記者会見で、中国でみられる携帯電話などIT分野の模倣製品について、「模倣や盗作による製品製造は技術革新ではないということを強く認識しなければならない」として、製造企業を戒めた。……「山寨(パクり)」という言葉が流行しており、有名メーカーの携帯電話を模した製品が「山寨機」と呼ばれている。ただ、「山寨」の定義ははっきりしておらず、違法、合法の場合も含まれる。

■随分前のことですが、香港の映画界にはシナリオ本が存在しないという話を聞いたことがあります。シナリオは映画監督の頭の中にだけ存在していて完成するまで映画の内容は出演者もスタッフもまったく分からないのだとか……。理由は簡単で、他社がスパイを送り込んでアイデアを盗み、本家よりも早く撮影して封切ってしまうからだそうです。今は香港映画を米国ハリウッドがリメイクする時代ですから、まともな映画製作が行われているのかも知れませんが……。

■チャイナ観光の土産の中で隠れた人気があるのが日本製を下手に真似た菓子類で、わざわざ日本語の誤記を印刷してある包装で笑える上に、実際に中身を一口食べてみると食感も味もまったく違う!という「一粒で二度おいしい」ちょっと危険な土産物だとか……。


田局長は「パクりとはいっても、独自の新たな技術を詰め込み、品質が良く、機能が多彩で他社の権利を侵害しておらず、合理的な価格で消費者に受け入れられていれば、そうした製品は肯定されるべきだ」との認識を示した。その上で、「中国当局が知的財産権の保護に力を入れていることは、外部からの圧力によるものではなく、自国の発展のためだからだ」と説明。「技術革新を重要視し、独自の技術を持つことを奨励する雰囲気を確立して、考え方を変えることができて初めて、海賊版や模倣による権利侵害などは減る」と述べた。
2009年4月23日 毎日新聞

■パクリ自体が「他社の権利を侵害して」いるという単純な常識を欠いた局長さんのお説教には、まったく説得力がありません。技術と法律の世界的な問題を「雰囲気」と「考え方」の話にすり替えている間は、チャイナが知的所有権を尊重する国に変わることはなさそうです。きっといつまでも「肯定されるべき」偽物が作られ続けるのでしょうなあ。とは言っても立派な自国産の製品をぞろりと並べる大イベントも行われておりますぞ。


中国海軍の創設60年を記念する中国初の国際観艦式が23日、北海艦隊司令部のある山東省青島沖で実施された。米露など14カ国から艦艇21隻が参加。胡錦濤国家主席(中央軍事委主席)が観閲した。中国は近く初の空母建造に乗り出すとみられており、国際協調をアピールして「脅威論」をぬぐい去る狙いがありそうだ。

■チャイナの海軍「創設60年」につきましては、『日本の隣の軍事大国 其の参』に書きましたが、これほど大掛かりな観艦式になるとは予想しておりませんでしたなあ。


……同日午後、胡主席は駆逐艦「石家荘」に設置された台に上り、海上に整列停泊した外国軍艦の間を航行しながら観閲した。中国海軍も最新鋭の大型駆逐艦や機密性の高い原子力潜水艦などを国外に対し初めて披露した。

■チャイナでは国内各地の地名を軍艦に付ける傾向があるようですが、勿論、その多くは「正しい歴史認識」に裏打ちされた革命戦争の激戦地から取られているようです。駆逐艦「石家荘」というのも、1947年11月6日~12日に激戦があった有名な場所で、人民解放軍にとっては最初の大都市攻略に成功したという記念すべき聖地なのだとか……。勿論、この時の敵は大日本帝国陸軍ではなくて蒋介石の国民党軍でした。


胡主席は先立って同日午前、日本を含む29カ国代表団と会談し、軍事路線について「中国は断固として平和発展の道を歩む。中国は永遠に覇権をとなえず、軍拡競争にも参加せず、いかなる国の軍事的脅威にもならない」と強調した。

■本当に「平和発展の道」を進んでくれれば嬉しいのですが、実際には「軍拡競争」の先頭を走っているのを多くの国が心配し日本にとっては立派な「軍事的脅威」となっております。国内インフラの未整備やら教育や医療など急いで対処しなければならない政治課題が多いと言うのに9兆円以上もの莫大な軍事予算を注ぎ続けているチャイナであります。


中国海軍は1949年4月23日に国民党海軍第2艦隊が造反して人民解放軍の華東軍区海軍創立を宣言。陸軍主体の中国軍で70年代までは沿岸警備が主任務だったが、改革・開放政策がスタートした80年代から近海、遠洋作戦に変わり、急速に近代化を遂げた。
2009年4月23日 サーチナ

■今では立派な兵器輸出国にまでなったチャイナは、日本が自ら禁じている武器商売で外貨を稼ぎまくり、日本が自ら禁じている核兵器の技術をどんどん発展させて原子力潜水艦から発射できる多弾頭型核兵器まで持つに到っております。因みに今回の観艦式には、ブラジル、フランス、バングラデシュ、カナダ、オーストラリア、ロシア、タイ、シンガポール、米国、インド、メキシコ、パキスタン、韓国、ニュージーランドの艦艇が招待されております。国名を見渡しますと、チャイナの「お得意様」「手下」「援助対象国」「仮想敵国」「宿敵」がごちゃごちゃと並んでおりますが、当面の邪魔な国であるはずの日本には「海上自衛隊幹部」だけの招待状が届いただけで、自衛隊の艦艇は一隻も招かれませんでした。

■台湾を標的にする時に米国艦隊に脅されないためにも航空母艦の建造を悲願としているチャイナの海軍は、北朝鮮のテポドンみたいに日本を無視して米国との太平洋山分け二等分に向かって突き進んでいるようにも見えますなあ。チャイナが笑いのタネにしかならない偽物を作っている時代の方が、もしかすると平和なのかも知れませんぞ。
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

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五輪後のチャイナ 其の弐

2009-04-24 12:13:21 | 外交・情勢(アジア)
チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とかかわりのある外国公館などのコンピューターに不正にアクセス、情報を盗み取る大掛かりなスパイ網が存在していることが、カナダのトロント大のチームの調べで分かった。……侵入システムの多くは、チベット独立に反対する中国を拠点にしていた。中国の公的な関与があるのかどうかは不明。在ニューヨークの中国総領事館は同紙の取材に「中国政府はサイバー犯罪を厳しく禁止している」と関与を否定している。……侵入されたのはチベット亡命政府のあるインドやニューヨーク、ロンドンにあるチベットの亡命センターのほか、ワシントンのインド大使館などのコンピューターで、103カ国の計1295台に上った。ダライ・ラマ側がトロント大のチームに調査を依頼していた。
2009年3月29日 共同通信

■北京政府が「厳しく禁止している」事項は山ほどあって、その中で厳守されているものは皆無だとか……。これほどだ大規模なハッキングが個人的な愛国心から計画実行されたとは考えられませんし、増強され続ける軍事力の中にサイバー攻撃専門部隊が存在しているのは有名な話であります。どんな情報を探っていたのかは不明ですが、常に監視しているぞ!という無気味なメッセージを与えるのが最大の目的だったとも考えられます。検閲と相互監視が徹底している体制ですから、このくらいの事は常日頃からやっているのでしょうなあ。


中国政府がデジタル家電などの中核情報をメーカーに強制開示させる制度を5月に発足させることが23日、明らかになった。……当初の制度案を一部見直して適用まで一定の猶予期間を設けるものの、強制開示の根幹は変更しない。日米欧は企業の知的財産が流出する恐れがあるとして制度導入の撤回を強く求めてきたが、中国側の「強行突破」で国際問題に発展する懸念が強まってきた。

■「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物」という基本的な欲張り体質は相変わらずで、知的所有権の基本さえ十分に理解されていない現状を放置しておいて、相手の知的所有権を根本から掘り崩して奪い取ろうというのですから、何とも乱暴で無視の良い話であります。


制度は、中国で生産・販売する外国製の情報技術(IT)製品について、製品を制御するソフトウエアの設計図である「ソースコード」の開示をメーカーに強制するものだ。中国当局の職員が日本を訪れ製品をチェックする手続きも含まれる。拒否すれば、その製品の現地生産・販売や対中輸出ができなくなる。どの先進国も採用していない異例の制度で、非接触ICカードやデジタル複写機、金融機関向けの現金自動預け払い機(ATM)システムなど、日本企業が得意な製品も幅広く開示対象になる可能性がある。

■確かに清朝時代までのチャイナには世界に誇れる独自の文化が存在しておりました。しかし、旧ソ連の支援と指導によって誕生した中華人民共和国となりますと、建国段階からハードもソフトもソ連製を翻訳流用することに必死で努力した時代が長く続いたという経緯がありますから、その点は隣の北朝鮮とよく似ているので、きっと借りた物と貰った物と買った物と、恐らくは盗んだ物とも区別がはっきり付けられない習い性になっているのかも?そんな困った体質を改善するのは容易なことではなさそうです。本当に万国博覧会を上海で開催するのでしょうか?


中国側は、ソフトの欠陥を狙ったコンピューターウイルスの侵入防止などを制度導入の目的に挙げる。しかし、ソースコードが分かればICカードやATMなどの暗号情報を解読するきっかけとなる。企業の損失につながるだけでなく、国家機密の漏洩につながる可能性もあるため日米欧の政府が強く反発。日本の経済界も昨秋、中国側に強い懸念を伝えた。……08年5月に実施規則を公表し、09年5月から適用する予定だった。各国からの反対で、中国当局が今年3月、制度実施の延期を表明したが、……猶予期間はメーカー側が提出する書類を用意する時間に配慮したものだが、いつまで猶予するかは不明だ。日米欧の政府は詳細が分かり次第、中国側に問題点を指摘し、制度の見直しや撤廃を求めていくことになる。……
2009年4月24日 読売新聞

■平和の祭典を開催する3箇月前に、こんな横暴な制度を一方的に通告していたのでしたが、まさか本気ではあるまい、とタカを括っていた国もあったようで少なくとも日本政府が強く反発した様子はありません。「世界一の市場」から弾き出されないためには、IT技術の裸踊りを演じなければならないのか?

五輪後のチャイナ 其の壱

2009-04-24 12:12:39 | 外交・情勢(アジア)
■深夜の裸踊りで逮捕されてしまった草ナギ君の話題が沸騰中のようです。総務大臣まで激怒して「絶対に許さない!」と言っているそうですが、地上デジタル放送への移行が順調に進まないことに苛立っての八つ当たりみたいな感じもしますなあ。酒乱の気(け)があったという話も聞かれますが、ビール瓶で弟子の額を割ったり手下に殺人を命令するような酒乱親方に比べれば、深夜の公園で裸踊りなら、安眠妨害の御近所迷惑ではありましょうが、そんなに大騒ぎしなくても良さそうな気もして来ます。地上デジタル放送への移行が役所の思惑通りに進まないのは、テレビというメディア自体がお茶の間の主人ではなくなった時代の変化を反映しているのでしょうし、全国一斉にどうしても観たい!という番組がほとんど見当たらなくなってしまったテレビ業界の失敗が原因とも思われますから、裸踊りで更迭される草ナギ君の代役を立ててみても事態は変わらないでしょうなあ。
 
■そんな酔っ払い話に目を奪われている場合ではない!またまた成田空港近くのホテルにちょっと滞在しただけでダライ・ラマ14世が忙しく「来日」を終えてしまいましたぞ。一部の新聞メディアが小さく扱っただけだったのは、北京五輪の次の次を東京で開催したいという談合が成立しているからでしょうか?IOCの調査団を迎えてわざとらしく「熱烈大歓迎」を演出したものの、東京五輪の必要性に関する国民的な関心も賛同も得られていないのですから、マスコミが客観報道の立場を捨ててまで応援するのも変な話です。

■あの北京五輪開催を決めたIOCが派遣した調査団を下にも置かない接待漬けにすることは、そのまま北京五輪の大成功を追認することにもなるのに、今は昔の北京大会なのか、その点を蒸し返して批判する声は聞かれなかったようです。IOCが日本を去った直後に来日したのがダライ・ラマ14世だったというわけです。


……ダライ・ラマ14世は22日、滞在先である千葉県成田市内のホテルで記者会見し、中国のチベット弾圧について、「中国は昨年夏の北京五輪の際には弾圧姿勢を緩和してきたが、その後は再び強硬になり、いまは逆戻りしてしまった」と指摘し、「中国は大国だが、子供のような行動をする」と痛烈に批判した。……昨年3月、チベット自治区ラサ市内で起きた大規模な騒乱に関与したとして死刑判決が相次いでいることについて、「現在のチベットの状況を反映している。そうした事実や現実を直視してほしい」と強調した。

■監視と情報管制は以前に増して強化されているようで、現地で何が起こっているのか、ほとんど実情が伝わって来ない無気味さがあります。今回の来日では政治家など目立った人物との会見は無かった模様ですから、日本は東京五輪の開催という変な夢を見たことで足枷をはめられたも同然なのかも知れませんなあ。それに加えて経済危機というので、またまた「世界一の市場」という印籠の輝きが増して来ましたから、何かとチャイナには気兼ねする事が増えているようです。


ダライ・ラマによると、昨年11月、最後の対中対話で、「中国とは対立しないとの文書を提出した」ものの、中国側はその後、「ダライ・ラマは分裂主義者」などと一方的に批判しただけだった。ダライ・ラマはこの後、米国に約2週間滞在し、カリフォルニア大やハーバード大の研究者らと交流。その後、デンマークやアイスランド、オランダを訪問する予定。ダライ・ラマの外遊は、自らがインドに亡命するきっかけとなったチベット動乱から50年を迎えた同自治区などで中国政府による厳戒態勢が敷かれて以来初めて。昨年11月から途絶えている対中対話再開の重要性を国際社会に訴えるねらいがあるとみられる。
2009年4月22日 産経新聞

■北京で五輪大会を開催したところで何も変わらなかったということです。IOCは民主化だの人権への配慮だの、いろいろと言質を取っていたはずなのに、その後始末はせずに「次の次」を新たな食い物にして世界をほっつき歩いているわけですなあ。いっそのこと北朝鮮の平壌あたりで無理やり開催させたら如何でしょう?大々的に開催要請を公表し、それをあれこれ理由を付けて拒絶する様子を国民が知ったら、さぞや大きな影響があるでしょうに……。

■悪い冗談は兎も角としまして、平和の祭典が開催地となった国家をよくした例(ためし)など無いのですから、ヒトラーが完成させた今の五輪大会のスタイルは変わらず、これからも国威発揚・国内統合を表の目的として裏では人権弾圧が繰り返されるのではないか?とIOC調査団が振り撒いた気色悪い微笑を見ながら思った次第です。

地デジは丸裸? 其の弐

2009-04-23 11:43:51 | マスメディア
草なぎ容疑者はCM出演も多い。社団法人「デジタル放送推進協会」では現在のCMが7月まで放送の予定。その後も新しいCMを制作し、起用する方針だったという。協会側は「別のタレントを起用せざるをえない事態になり、残念。今流れているスポットCMはすべて打ち切り、各局とも別のものに差し替えることになるだろう」と話していた。

■ニュース速報がテレビ画面に流れた直後に、某民放テレビ局では既存の地デジ広報CMを流していたようですぞ。報道部門は何をしていたのでしょう?


昨年7月から「日韓共同キャンペーン」に出演中の公共広告機構(AC)では、「どんな状況か把握し、幹部で協議することになる」と困惑した様子。衣料用洗剤「アリエール」に起用しているP&Gでは「現在放映中のテレビコマーシャルは自粛する」としている。「ヤマサ醤油」でも「まだ契約は残っていて、夏にも放送する予定で検討していた。事件を知ったばかりで事実関係が把握できていない。すぐに対応を決めたい」と、情報収集に追われていた。……
4月23日 産経新聞

■多くの番組に出続ける上にテレビCMにも起用されているのなら、視聴者は同じ人物を延々と見せられることになるわけですな?熱狂的なファンならば随喜の涙を流すかも知れませんが、その他大勢の一般視聴者にとっては商品の印象が薄まって逆効果なのではないでしょうか?「エコ・ライバルになろう」の政府広報はラジオでも流れているのですが、何を訴えているのかさっぱり分からない不思議な作品になっております。ジャニーズ事務所と韓流ブームに二股かけて便乗すれば相当の広報効果が期待できる!とか何とか広告代理店に騙されて税金の無駄遣いをしてしまったのかも?空疎な政府広報など無くなっても誰も困りません。数年前、背が高い女優?さんが脅迫まがいの「年金保険料を払え!」広報CMに出演しながら自分自身が未納者だった!などという悪い冗談みたいな話もありましたなあ。

■その女優?さんの顔を見るたびに「年金」を思い出す人も多いのではないでしょうか?その後、年金問題は再現もなくおぞましいウミを噴出し続けております。今回の公然猥褻裸おどり事件で、地上デジタル放送への切り替えはますます遅滞することになるかも?そして、番組に「復帰」した後も草なぎ容疑者の顔を見るたびに地デジ広報を思い出すことになるのでしょう。今は何をしているのかまったく報道もされない参議院議員に当選した元テレビ朝日の女性アナウンサーがいましたが、彼女も地デジ広報のメンバーだったはずです。彼女が立候補した時にい全民放テレビ局が協力して制作した広報CMをおお慌てで作り直していたのを思い出します。

■草なぎ容疑者が単に深酒をしただけで、変な薬物を併用していないことを祈りつつ、地デジ切り替えが日本のテレビ文化の終わりの始まりになりそうな予感が強まった「逮捕劇」ではありました。
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地デジは丸裸? 其の壱

2009-04-23 11:43:24 | マスメディア
■解散総選挙の日程がいよいよ現実的な政治日程に載り始めている模様です。公明党の選挙対策の事情だの小泉チルドレンの処遇だの、揚句の果ては増え過ぎた世襲議員を制限するだの、日本の国益とは何の関係もない瑣末な話ばかりが新聞の政治面に毎日並んでいるようです。「100年に1度」未曾ユウの経済危機に負けない対策が絵に描いたような泥縄式でまとめられ、米国のオバマ政権が打ち出した「グリーン・ニューディール」をお手本意したそうですが、上海モーターショーにしらっと出品されたロースルロイスの偽物みたいなことにならねばよいのですが……。

省エネ家電の購入時にもらえるポイントを次の買い物代金に充てられる「エコポイント」制度で、ポイントの使える対象商品が拡大されることが22日、分かった。政府は当初、省エネ家電だけを対象としていたが、「限定しすぎると消費喚起効果が薄れる」として拡大品目の検討に入った。……経済産業、環境、総務の3省が品目拡大の検討に着手した。……地上デジタル放送対応テレビの普及を促すことから、地デジ対応のアンテナや、その設置工事も議論されている。3省の担当者は、ポイントが使える対象を広げるにも、「どこまで拡大するのか線引きが難しい」(環境省)と頭を悩ませている。……
4月23日 産経新聞

■典型的なバラマキ政策でしかない「生活給付金」にしても、既に死語となり果てた「夫婦と子供2人」の典型的な核家族だの三世代同居の大家族などを念頭にして配布方法を考えてしまったために、DV問題に悩んでいる別居夫婦から訴訟を起こされたりします。その他もろもろ、配布が進むに従って想定外の問題が噴出しそうです。ここぞとばかりに予算獲得を目指して玉石混交の案を上げた各省庁の官僚群には何の責任もありません。政策を決定して全体的なバランスを執る仕事ができない内閣がアホなのでしょう。環境対策とは何の関係もない地デジ対応のテレビが特別扱いされる理由は誰にも分かりません。売れずに困っている商品は他にもたくさん有るでしょうに……。


草なぎ剛容疑者(34)逮捕の一報が入った23日午前、レギュラー出演しているテレビ局、CM、レコード会社の関係者などはあわただしく対応に追われた。「笑っていいとも!」「SMAP×SMAP」「僕らの音楽」「チョナン・カン」など、人気レギュラー番組4本を抱えるフジテレビでは、「事実関係を確認中。担当者が協議している」と混乱した様子。バラエティー番組「『ぷっ』すま」に出演中のテレビ朝日では、28日夜に放送を予定している番組について、「現在、どう対応するか、編成担当者で協議している」と話す。……

■どの番組もほとんど観たことがないので内容に関して云々(うんぬん)出来ないのですが、仮に莫大な投資をして地上デジタル放送に切り替えた後も、鮮明が画像と多様な情報交換能力を利して放送を続けなければならないほどの価値有る番組なのかどうか?少しはテレビ業界は考えるべき時期はもう過ぎ去ってしまったのでしょうなあ。仄聞するところでは毒舌を売り物にしていた北野某が業界のエライ人の逆鱗に触れて煙のようにパッとテレビ・ラジオ業界から姿を消したとか……。

■テレビ業界は一部のプロダクションや事務所の御機嫌を気にしながら番組を制作して放送している実態がちらりと見えるような話ですが、草なぎ容疑者も絶対的な影響力を持つ事務所の所属だそうですから、朝から晩までテレビに出続けるような異常事態に到ったのでしょうが、それが高い視聴率に跳ね返って来るというのなら、既にテレビは国民全体が楽しむ物ではなくなっている証拠でしょう。。


主演映画「BALLAD 名もなき恋のうた」(山崎貴監督)を9月5日から公開予定の東宝でも、午前10時前から社員が次々に出社し、対応に追われた。「撮影はすでに終わっている。公開前に主演者が逮捕されたケースはこれまで聞いたことがない」と困惑の表情。公開の有無を含め、対応はこれから協議して決定するという。……4月25日から5月18日までの週末に、テレビ朝日で順次スペシャル番組を放送予定だったが同局は、「検討中」としている。

■先日、中東情勢の緊張という僥倖?もあってアカデミー外国語映画賞を受賞した『おくりびと』という作品の主役も草なぎ容疑者と同じ事務所に所属していたはずですが、映画界とテレビ会社が異様に密着して濫造しては数ヶ月で忘れられてしまう消費財みたいな作品群も不自然なキャスティングが目立っているようですなあ。

雨の三日も降ればよい 其の四

2009-04-21 16:06:08 | 日本語
……日本漢字能力検定協会の大久保 昇前理事長(73)が、在任中にもかかわらず退職金およそ5,300万円を受け取っていたことがわかった。……およそ1年半前、在任中にもかかわらず理事会や評議員会に諮らないまま、退職金およそ5,300万円を受け取り、その後、分割払いで5,300万円全額を返済したという。……協会名義のクレジットカードで、飲食などをしていたことも明らかになった。協会名義のクレジットカード使用により生じた代金は、大久保前理事長が代表を務める協会の関係会社「オーク」が協会に支払っていたという。……
4月21日 FNNニュース

■記者会見の場では、「新しく就任した方が、これだけの組織を混乱なく運営できるかは懸念が多い。新執行部が軌道に乗るまで、お手伝いしたいと思う」と自分の影響力を最大限に残そうとする並々ならぬ決意を示していた大久保某でしたが、この騒動が起こるずっと前に「退職金」を受け取っていた!好き放題にカネを入れたり出したり、協会自体が便利なキャッシュ・カードみたいな物だったようです。勿論、最終的に支払い主は、いろいろな書籍を購入して一所懸命に勉強してくれる真面目な漢検の受検者の皆様なのでありました。

■その受検者が固唾を呑んで待っている合否判定の裏側にも、やっぱり生臭いゼニの臭いがぷんぷんしていたようです。


財団法人・日本漢字能力検定協会が、大久保昇前理事長らが代表を務める親族企業4社と巨額の取引を行っていた問題で、4社のうち大久保浩前副理事長が代表を務める採点業務などの請負会社「日本統計事務センター」が、採点や決済など検定業務のシステム開発に関し、委託料の半額以下で別会社に再委託していた疑いの高いことが21日、関係者の話でわかった。同センターがゲームソフト用の一部著作権料に関し、協会に対して業者から受け取った額の約1割しか支払っていなかったことも判明。不適切な利益取得の構図が浮かんだ。

■検定協会の名称にも「日本」の冠が付いていましたが、大久保父子はよほど「日本」という二文字が好きなようです。その上に「大」を付けなかったのがせめてもの遠慮だったのかも?ゲームソフトに目を付けて商売の幅を広げて行く経営感覚は大したものですが、それと検定の採点作業を平行させてしまうというのは、何とも人を喰った話のような気もします。捻り鉢巻で辞書や字典を片手に問題集に取り組むのは嫌だなあ、という受検者向けに「ゲーム感覚で漢検に合格!」とか何とか宣伝していたのでしょうか?所詮は漢字文化もゲーム感覚の領域ということのようです。


……協会は平成7年から同センターと取引を始め、検定試験の採点、検定料の決済業務や、これらの業務に絡むシステム開発などを委託。20年度までの14年間の取引総額は約99億3700万円にのぼるという。……このうち検定業務のシステム開発に絡み、17年10月~20年9月の3年間で、協会に対して約3億770万円を請求。センターは別の3社に再委託していたが、3社には約44%の約1億3540万円しか支払っていなかった。……このうち委託業務の一つの「新基幹システム構築費」について、協会への請求額が約9000万円だったのに対し、同センターの再委託先への支払額は2000万円だったと説明していることを取り上げ、「得ている利益が過大である疑念は払拭できない」と指摘している。

■6割近くもの中間搾取、これを「濡れ手に粟」の商売と言いいます。一度やったら止められない、実に気楽で美味しい商売です。否、これは商売とは呼べないかも知れません。受検者の数が右肩上がりで増え続ければ、この種のシステムはこれから先もどんどん規模を拡大しながらリニューアル作業が繰り返されますから、莫大な利益が約束されたも同然。


協会への請求書は同センター代表の浩副理事長が作成しており、協会の副理事長として取引に関して利害が相反する立場にあったが、関係者によると、第三者による承認は行われていなかった。……漢字検定問題などのデータ使用に関し、同センターが携帯ゲーム機用ソフトの製造・販売会社とライセンス契約を交わす一方、協会には同社からの著作権料の1割のみを収める契約を交わしていたことも判明。協会とセンターの契約書の押印者は、いずれも浩前副理事長だったという。……携帯電話サイトに関する別会社とのライセンス契約に関しては、センターは協会に著作権料を支払っておらず、2社が平成20年9月期までの2年間で支払った著作権料計約7600万円のうち、協会に渡ったのはわずか約700万円だったという。
2009年4月21日 産経ニュース

■こうした所業を漢字一文字で表わせば、「搾」「抜」「盗」のどれかになりそうです。搾られ、抜かれ、盗まれたのは受検料金や教材費だけではなく、漢字文化のそのものと日本文化の品位だったのかも知れませんなあ。それでも漢字検定を受け続ける人が残っているのが日本文化の良いところなのでしょうか?今のところ、漢字検定協会の上空には黒い雨雲が垂れ込めてはいても、長雨が降りそうな気配はなさそうですが……。
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雨の三日も降ればよい 其の参

2009-04-21 15:46:58 | 日本語
……文科省も改善指導で「取引全般の必要性が不明瞭」と指摘。協会は同社との取引解消を決めたが、10日に開かれた理事会・評議員会の提出議案では「広報業務のアウトソーシングは一般的に行われているもので、少なくともこれまでの取引には合理性があった」と説明し、両会で承認を得た。……ファミリー企業4社の直近決算期の売上高は計約約29億2400万円で、メディア社を除く3社も、うち77・9~82・9%を協会との取引に依存していた。
2009年4月20日 産経ニュース

■悪名高い天下り団体やら建設業界やら旧郵政省の話を手本にでもしたとしか思えない徹底した丸投げ・孫受けシステムがフル稼働しながら自己増殖し続けたというわけですなあ。


……協会は昭和50年に任意団体として同社が設立し平成4年に旧文部省の認可を得て財団法人となって独立。協会が理事会・評議員会に提示しないまま行った同社との取引額は、4~20年度の17年間で計約114億円にのぼり、うち漢字検定に関する書籍の製作・販売は約87億円……。取引量や額については大久保前理事長や長男の浩前副理事長が決定し、第三者による検証がなされていないことについて「財団法人としての協会の事業運営としては不適切」と批判。「オークの利益が大きく、仕入れ価格が不適正と評価される余地は否定できない」としている。……これに対し、協会は文部科学省に提出した改善報告書で、今月10日に開かれた理事会・評議員会でこれまでの取引について追認されたことから「合理性があったと認められた」と主張。さらに、協会は両会で、今年度も書籍関連で予定額約8億6700万円の取引の承認を求める議案を提出し、了承された。……
2009年4月19日 産経ニュース

■高い検定料を支払って受検するのだから不合格になったらカネが無駄になる!それより何より恥ずかしいし自分のプライドが許さない!と考えてしまう人情に付け込んで、教則本・過去問・予想問題などを売りつける。直接検定とは関係のない漢字に関する肩の凝らない「教養書」なども用意する受検者250万人!と豪語している協会ですから、飽くまでも強気の商売を続けられたのでしょうなあ。青息吐息の出版界でも、占い本と健康本と資格関連の書籍は売れ続けているそうですから……。

■「捨てる神あれば拾う神あり」と申しましょうか?「毒を喰らわば皿までも」という気持ちなのでしょうか?はやり、「盗っ人に追い銭」というのが最も適切かも?


太田市は4月から、英語、漢字検定試験の3級受検者に、受検費用の半額を補助する「各種検定助成制度」を始めた。資格試験への公的助成は珍しいという。漢検を巡っては、公益事業による過大な利益などが問題となっているが、市は「問題が早く収束し、公正な検定が行われるよう期待している」と予定通り制度を実施する方針だ。……補助の対象者は市内の中学3年生6049人。受検料は改定されるが、昨年の3級試験は英検が2300円、漢検が2000円だった。市は322万5000円を予算化……。昨年の中学生の英検3級取得者は552人(19・4%)、漢検3級は425人(14・9%)だった。……市教委は「今後は中学3年生の50%が英検、漢検の3級を取得できるようにしていきたい」と張り切っている。……
4月21日 毎日新聞

■最近、麻生コロコロ内閣が拙速に組み上げた緊急経済対策補正予算は「エコ」の二文字さえ入っていれば湯水の如くに予算が付けられたのだそうですが、「教育」の二文字さえ付ければ制度や政策の愚劣さや錯誤などはきれいに隠蔽されてしまうもののようです。それはちょうど入所者10人が焼死した無届け老人施設「静養ホームたまゆら」を経営していた、特定非営利活動法人(NPO法人)「彩経会」の高桑五郎理事長(84)さんが「福祉の理想郷」を今でも熱く語っているのを、誰も正面から否定したり罵倒したり出来ないのに似ています。「たまゆら」が建っていたのは太田市と同じ群馬県の渋川市でしたが、単なる偶然なのでしょうなあ。

■漢字検定を巨大な収奪マシンに成長させた大久保父子も同じことで、「漢字文化」の四文字を振り回せばすべての腐臭は掻き消えてしまいそうになります。相撲協会の「伝統」という二文字にも相当な魔力があるようですが……。

雨の三日も降ればよい 其の弐

2009-04-21 15:46:22 | 日本語
「漢字検定全員合格」を目指して毎回参加している同市内の別の学習塾は、今回も数十人の小中学生が受検する予定。同塾教室長(47)は「生徒がさらに上の級を目指して頑張ってきただけに、受検を取りやめるわけにはいかない。漢字検定の価値は変わっておらず、中止は何としても避けてほしい」と困惑ぎみに話した。

■検定問題に多くの問題を抱え込んでいる今までの漢字検定で、級が上がったからと言っても漢字能力が向上した証明にはなりません。まあ、既に高校や大学の受験に使えるツールにまで成長してしまった「漢検の級」ですから、受験産業としては実に困ったことなのでありましょうなあ。


同協会本部の地元・京都市内にある学習塾でも従来通り申し込みを受け付けているものの、担当者は「検定が実施されるか見守るしかない。いろいろケースを想定して対応を検討している」とうんざりした様子で話した。……個人の受検者を受け付けている大阪市内の書店では、申込件数は前回と大きく変わっていないものの、中止の場合に事務的な混乱が起こることを心配する。担当者は「中止になれば、預かった受検料の返還はどうするのか。店頭で一人ずつに返金するわけにもいかない」と困惑。6月の検定については「受検者の気持ちを考えると、協会の問題で一方的に取りやめるのはどうか。検定をやめるにしてもその次からにしては」と話した。

■あまりにも大きくなり過ぎた検定商売ですから、「今回が最後」ということにして幕引きするのが一番よいのかも知れません。こうした検定制度では、基本的に申し込みをキャンセルすることは不可能という規定になっているようですから、騒ぎが起こる前に申し込んでしまった人達の中には抗議の意を示すための「欠席」が続出するかも?


ジュンク堂書店大阪本店(大阪市)では、今年2月に行われた検定では100件前後の申し込みがあったが、今回は2、3割減少したという。ただし、漢字に関する書籍の売れ行きは好調で、担当者は「協会の問題とは別に、漢字を勉強したいという人が減ったわけではなく、意外と冷静に受け止めているのでは」と話した。
2009年4月21日 産経ニュース

■そろそろ、漢字も英語も変な検定試験に合格するために学ぶものではなさそうだ、と気が付いてもよいかも知れませんなあ。日本には諸橋轍次先生が完成させた親文字5万余字・熟語53万余語を収録した『大漢和辞典』全15巻(大修館書店)という世界最大の漢和辞典もありますし、白川静先生の漢字学三部作『字統』『字訓』『字通』という畢生の字典もあります。その他、無数の漢字文化に関連する名著があるのですから、こつこつと自分の興味の赴くままに気長に勉強を続けるのが最善の策でありましょう。

■それにしても漢字検定を思い付いた大久保某の銭ゲバぶりは凄まじい!


財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市)が、大久保昇前理事長らが代表を務めるファミリー企業4社と巨額の取引を行ってきた問題で、うち広告会社「メディアボックス」の直近決算期の売上高は約3億2300万円で、ほぼ全額を協会の委託に依存していた……。協会の設置した調査委員会は、同社が請け負った業務の大半を別会社に再委託していると指摘し「取引の必要性自体がまったく認められない」と批判している。……協会は同社に機関誌の編集・印刷や、協会の年間プロモーション企画・進行管理業務にかかわる広報業務などを委託。平成9年度から取引が始まり、20年度までの11年間の取引総額は約36億3100万円……。昨年5月期の売上高は約3億2300万円で、調査委はほぼ全額が協会との取引だったと指摘。同社の同期の純利益は2600万円、純資産は1億3900万円だったという。……同社は再委託先からの請求額より高い額を協会に請求し、差額を抜き取る形で利益を上げていたとみられるという。

■最悪の「丸投げ商法」を展開していたようですなあ。

雨の三日も降ればよい 其の壱

2009-04-21 15:45:27 | 日本語
■漢字検定の問題が日々深刻化して行くようです。文科省が激怒したのは自省内からの天下りを受け入れなかったことへの意趣返しか逆恨みが原因か?などと勝手に想像しておりましたが、どうやら公益法人の漢検協会がやっている金儲けの凄まじさを相当程度まで把握した上でのことだったような気配が濃厚になって参りました。公益法人の不祥事と言えば、殺人事件に大麻事件、裁判には勝ったようですが噂が絶えない八百長疑惑など「再発防止」など悪い冗談にしか聞こえない相撲協会という横綱がおりますが、同じ文科省の管轄なのに漢字検定協会のように徹底的な攻撃対象にはなっていないのは、それこそ正に「伝統文化」の威光というものでしょうか?

■都都逸の中に「大工(土方)殺すにぁ~刃物は要らぬぅ~雨のぉ三日ぁも降ればいい~♪」というのがありました。『男はつらいよ』シリーズで寅さんがトラ屋の縁側で雨を見ながら口ずさんでもいましたが……。船頭殺すにぁ~10日も降ればいい~♪などの派生作品もあるようですなあ。何だか漢検にも当てはまりそうな気がしますなあ。


財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市)が不適切な運営で文部科学省から指導を受けた問題をめぐり、受検希望者から申し込みを受け付ける学習塾や書店で困惑が広がっている。6月予定の次回検定について、文科省が協会に示唆した延期や中止が現実になれば、受検料の返還などの事務の混乱が起こるのを危惧しているのだ。「協会のもうけの片棒を担ぐのか」と保護者から批判されて、すでに受け付けを取りやめた学習塾も出始めており、関係者は検定の行方をやきもきしながら見守っている。

■理事に名前を連ねていたエイラ人達は素早くこっそりと辞任しているのに、受検する側の団体の方は奇妙なほど動きが鈍いようです。どこまで行っても文科省のお墨付きには絶対の信頼を置いているのか?単なる先例墨守の石頭ばかりが揃っているからなのか?『漢字という財産 其の六』で、高島俊男さんの言葉を借りて考えてみたように、既に漢字文化と漢字検定協会とはまったく無関係だという事は明らかになっているのですから、「別の指導方法を考える」の声が湧きあがって来ないのが不思議であります。


小・中学生を対象に漢字検定に力を入れている大阪市内の学習塾では、6月21日に予定されている21年度第1回検定について、40~50人の児童・生徒の受検を予定していたが、今回の問題を受けて参加を急遽取りやめた。保護者から「協会が利益を上げるのに加担するのか」との声も上がったといい、塾長(52)は「文科省の認可を受けながら、もうけばかり考えている協会は信頼できない。漢検に変わる手段があるか探している」と話す。

■こうしたニュースが流れ出す前に、「漢字検定ボイコット」を打ち出せば厳しい塾業界の中では大きな宣伝効果があったのでないでしょうか?漢字文化の保護と伝承などという大きな話ではなく、生徒達の漢字学習意欲を高めるためなら、手作りの教材やテスト問題を工夫するとか、専門の書店が編集してくれている既存の教材を吟味して選択するとか、漢字検定以外にも幾らでも方法はあるのですからなあ。寄らば大樹の陰とばかりに親方日の丸に擦り寄って、国家資格でも何でもない検定を受けて一喜一憂している人は、大久保親子にとってはネギを背負った鴨同然だったのですから、塾生の保護者が文句を言うのは当然のことでありましょう。

話にならない話 其の伍

2009-04-19 18:42:53 | 外交・情勢(アジア)
其の四の続き

2009年4月13日、華字紙・中文導報は、日本に不法滞在していた中国人が特別在留資格を得た後、定住化する傾向が強まっていると報じた。……法務省入国管理局が2月17日発表した今年1月1日現在の不法滞在者は、5年前と比べ52%減の11万3072人。うち中国人は同45.2%減の1万8385人だった。減少の理由は「強制退去」のほか、ここ数年は毎年1万を超える不法滞在者に「特別在留資格」が与えられていることも挙げられる。合法的な在留資格を得た元不法滞在者は、そのまま定住する傾向が強いという。……統計によれば、03年からの5年間で特別在留資格を得た外国人は5万1148人。うち不法滞在だった人は4万605人に上った。また、03年から07年までに特別在留資格を得た中国人は8748人だったが、そのうちのほとんどは不法滞在者だった。
4月15日 Record China

■「特別残留資格」というのは法務大臣が与える「在留特別許可」のことだと思われます。日本の入管制度では、「日本人配偶者があり、同居期間も長く、子どももいて、日本人側に収入や職業が確かで、偽装婚等の嫌疑に乏しいような場合」には特別許可が与えられるようです。先のフィリピン人一家の場合は「日本人配偶者」という決定的な要素が無かった事案だったがゆえに、法務大臣も特別許可を与えられなかったのでしょうなあ。常に問題になる「偽装結婚」の真偽を見分けるのは入国管理局の審査官ということになるわけですが、何となく「少子高齢化」問題の解決策は大規模な移民受け入れ政策だ!という一部の声に影響されて、特別許可の大盤振る舞いが始まっているのではないか?との疑念もありそうです。

■日本国内には特別許可を与えるようにとデモを組織する熱心な支援者も多いようですから、選挙が近づくにつれてますます特別許可が出易くなったりするかも?


2009年4月11日……先日、韓国から送還された中国人不法滞在者5人が北京市に到着した。いずれも2006~08年に合法的な資格で渡航、滞在期限が切れてもそのまま韓国で仕事を続けた。全員が1日10数時間も厳しい肉体労働に従事し月80~100万ウォンを稼いでいた。……現在の為替レートで計算すると3~4000元(約4万4000円~5万8000円)程度にしかならない。帰国した男性らは韓国渡航にあたり、ブローカーに10万元(約147万円)もの大金を支払っていた。結局、辛い思いをして儲かるどころか、損ばかりだったため、自ら出頭し帰国したという。こうした状況は5人だけではなく、多くの不法滞在者が韓国当局に自首し、帰国の途についている。
2009年4月12日 Record China

■為替レートで円高が進めば、自動的に「在留特別許可」の申請数も増えるという解釈も出来そうな話であります。円高になれば海外から輸入する原材料やエネルギーが安くなるわけですが、他国からの出稼ぎ労働者にとっては為替差益の魅力が増すということでもあります。「6カ国協議」に参加しているロシア・チャイナ・日本・韓国の間には、こんな水面下での緊張関係があるのですなあ。ロシアのシベリア地区では将軍様が直々に派遣した労働者たちが雪深い極寒の森で伐採作業をしているのは有名な話ですが、鴨緑江を越えて来る脱北者が旧満洲に入り込むのを北京政府は好まないようですし、北京市内などで営業していた北朝鮮レストランは次口に閉店しているという報道もありました。

■元々「6カ国協議」は北朝鮮の核とミサイルの開発問題を主として取り上げる場で、勿論、日本政府は「拉致!拉致!」と包括的解決には欠かせない項目を連呼していますが、どちらにしても北朝鮮の経済問題などはまったく話し合わないのが前提になっています。テポドンの性能を必死に向上させているのは「人工衛星」を打ち上げて喜ぶためではないことは、北朝鮮国内に通信衛星の需要がまったく無いことでも明らかで、中東やアフリカなどにミサイルの現物や関連技術を「輸出」するための宣伝用見本の実戦的パフォーマンスとして世界の耳目を集めて商品価値を高めるという、北朝鮮にとっては死活的な経済活動だと解釈すべきなのでしょうなあ。

話にならない話 其の四

2009-04-19 18:36:49 | 外交・情勢(アジア)
其の参の続き

■「100年に1度の経済危機」というフレーズを聞かなくなったのはテポドン発射の前後からでしたか?それもと民主党の小沢代表の秘書が逮捕された後だったでしょうか?経済サミットに参加した国々は、競い合うように財政出動と金融緩和に走り出し、世界市場に溢れ出したアブク銭が発作的にあちこちの株価を跳ね上げてみたり、外国為替市場に波風を立てたりしているようですが、問題は何も解決されてはいない事を忘れてはなりますまい。日本の麻生コロコロ内閣が提出した補正予算案も他国に負けないバラマキ政策の組み合わせですから、間も無く日本の円もあちこちにミニ・バブルを作り始めることでしょう。

■背に腹は換えられないとて打ち出した経済政策から噴出したカネが他国に流れ出さないようにするのが保護政策で、その行き着く先は排他的なブロック経済の形勢、出遅れてブロックから弾き飛ばされた国は強引に割り込もうとして武力衝突へと発展……という馬鹿馬鹿しいシナリオが動き出さないようにと、国際会議では互いに「保護主義政策は止めましょうね」と約束だけはしているようなのですが、実体経済が悪化してしまえば人心は荒廃し、貧困と飢餓が広がり出すようなことになったら、平和の祈りも寛容の精神もあっさり捨てられ忘れられ、恐るべき適者生存の原理が露骨に動き始めるのでしょうなあ。

■地下核実験に続いて新型テポドンを発射した北朝鮮は「6カ国協議の消滅」を宣言しましたが、分かり易く言い直せば「米国以外の雑魚は相手にせず」と言っているのでしょう。考えようによっては北朝鮮はリーマン・ショックの被害を最も受けなかった国の一つだったとも言えるわけで、欧州あたりに隠されているという将軍様一族の亡命資金を運用している先で、どれほどサブプライム・ローン絡みで損失を出したかは知りませんが、地上の楽園での人々の生活はリーマン・ショックの前も後も大した変化は無いようです。

■「6カ国協議」の参加国の中で、北朝鮮を除く5カ国は深刻な打撃を受けているのですから、協議の前提ががらりと変わってしまっているような気がしますなあ。最初から参加各国の足並みが揃っていたわけではありませんが、今回のテポドン発射でいよいよ亀裂が大きくなって空中分解してしまいそうな様相を呈しておりますが、その裏側では「100年に1度の経済危機」の影響が出ているようです。


……4月7~10日に同国の外バイカル地区移民局、内務局、国境警備局、警察局などの関連部門が共同で、外国移民に対する一斉検査を行った。ヘリコプターも動員される大規模な調査で、中国との国境に近い外バイカルスク村では、中国人120人の身柄を拘束し、罰金を科した。そのうちの16人に対しては強制退去を命じたという。拘束された者のうち多くはビジネスビザで入国し、そのままロシアの市場で商売を行っていたという。……ロシア連邦移民局が今年2月に公開した資料によると、現在同国には400万人にのぼる違法労働移民が存在している。経済危機の影響でロシア国内でも企業の操業停止や減産が相次いでいる。自国民の雇用確保のため、移民の入国制限政策を開始しており、その一環として今回の一斉検査は行われた
20094月15日 Record China

■日本では長年違法滞在を続けていたフィリピン人夫婦が中学生の娘さんと別れて強制送還されるというのでマスコミが不自然なほど大きく取り上げて騒いでおりましたが、もしも「400万人」もの違法労働者が一斉摘発されて多くが強制退去を命じられたりしたら、日本の海外ニュースではどのように報道するのでしょう?既にロシア国内では外国人労働者に対する暴力事件も多発しているようですし、欧州でも他国の出稼ぎ労働者が襲撃される事件が発生しているようです。日本では「オヤジ狩り」の次に外国人狩りが頻発するような事態にはなっていないようですが……。

外交の麻生! 其の参

2009-04-19 12:44:23 | 外交・情勢(アジア)
■毎日新聞の誤報かどうかはさて措いて、谷内発言は大きな波紋を呼んでしまいました。その波が海を越えてロシアにまで届かないことを祈りたいところですが、無理でしょうなあ。

元駐ロシア大使の丹波實氏は17日、産経新聞のインタビューに応じ、北方領土問題に関して4島を面積で二等分する論が政府内で公然と提起されていることについて「国家の根幹、座標軸を崩すものであり、国益に反する」との見解を表明した。……前外務事務次官の谷内正太郎政府代表が17日付毎日新聞で「個人的には(4島返還ではなく)3・5島返還でもいいのではないかと考えている……」と述べた4島面積等分論を厳しく批判したものだ。

■外交の麻生コロコロ首相は逸早く火の粉が降って来ない問題の圏外に逃れたつもりなのでしょうが、現場でロシアと交渉した経験を持っている元駐ロ大使から「国益に反する」と斬って捨てられては、政策の継続性と整合性に大いなる疑問が出て来そうです。外相時代の麻生さんが言い出し、その麻生さんが外交代表に任命した外交官の口から「面積二等分論」が出て来たのですから、最高責任者として麻生コロコロ首相はきちんと対応しなければなりますまいなあ。


丹波氏はまた、麻生太郎首相が2月の日露首脳会談後、記者団に対し「向こうが2島、こっちが4島ではまったく進展しない。政治家が決断する以外、方法がない」などと語ったことについても「これまで日本のいかなる首相も4島(返還)の軸を動かした人はいない」と、きわめて問題が多いとの認識を示した。同時に1993年、当時の日露首脳が4島帰属を「法と正義の原則を基礎として解決する」とうたった東京宣言の意義に触れ、「いまは忍耐と頑張りの時期だ」と強調した。

■麻生コロコロ首相に「忍耐と頑張り」は似合わないような気がします。その点では「外交を喧嘩にした」と評された小泉元首相と共通するサプライズ狙いを好みそうな印象が強いと言えそうです。「相手の嫌がることはしない」などという外交権を放棄して国家の独立さえ危うくなるような放言を残した福田ホイホイ前首相とは一味違っていそうなのですが……。


丹波氏との一問一答は次の通り。

--谷内正太郎政府代表が、4島ではなく3・5島返還でもいいと発言したと伝えられた

 「北方領土問題は、国家の根幹を成す問題である。座標軸を崩してはいけない。日本には、歴史的にも、法的にも4島返還を主張する根拠がある。1993年、ロシアのエリツィン大統領(当時)が来日して署名した東京宣言にも、4島の帰属を法と正義の原則を基礎として解決し、平和条約を締結するとはっきり書かれている。北方領土の面積を折半するとか、3島返還するというのはバナナのたたき売りの議論だ。あってはならない。個人的見解だと言っても、政府代表を務める者がそんなことを言ってはいけない」

 --なぜ、こういう発言が出るのか

 「もし支持率が低いからといわれる政治家が外交で点を稼ごうということであれば、とんでもない。ロシア側から何の働きかけもない中でこうした議論を展開するのは極めて遺憾であり、国益に反する行為だ」
 
■極めて「遺憾」ではなく、極めて「稚拙」「愚劣」「独りよがり」「能天気」などが適当な表現でありましょう。かつての田中角栄さんが日中国交正常化に踏み切った時には、文字通り「生命懸け」で事を進めたと言われています。ヴェトナム戦争に勝てなかった米国が日本の頭越しに北京政府に接近した流れに乗り遅れないことが日本の国益だと信じて当時の大平外務大臣と抱き合い心中になる覚悟で北京を訪問したのだそうです。台湾との断交を含めて田中内閣の東アジア外交が正しかったかどうかは議論が残っているようですが、自分の政権維持や選挙目当てのパフォーマンスでなかったのは確かでしょう。

■小泉元総理の平壌電撃訪問は、拉致被害者の帰国問題やら『平壌宣言』の文面やら、いろいろと問題を残した強引なサプライズ・イベントだった印象が強く、世論の支持率だけで政権を維持していた総理らしい露骨な支持率を上げる目的が透けて見えたものです。麻生コロコロ首相が狙うとすれば、ロシアとの領土問題を解決して平和条約を締結するという歴代内閣が成し得なかった大業なのでしょうなあ。果たして歴史的な大任を果たせる能力が選挙管理内閣として誕生じた麻生内閣に有るのでしょうか?経済対策を単なる選挙向けの継ぎ接ぎだらけのバラマキにしてしまったばかりか、赤字国債を大規模に積み増してしまう麻生内閣のことですから、日本の国益を守り切る対ロシア外交を正しく進められるかどうか、はなはだ疑問でありますなあ。