旅限無(りょげむ)

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冗談も過ぎるとホラーになる 其の壱拾弐

2012-04-27 16:07:48 | 社会問題・事件
■航空機の事故は連続すると巷間言われていますが、小学生が犠牲になる痛ましい交通事故が連続しております。クラッシャー小沢の一審無罪判決でテレビ・マスコミ各社が空騒ぎをしていた4月26日を挟み、23日の朝は京都の亀岡市、27日の朝は愛知県岡崎市と千葉県館山市で登校中の小学生が死傷してしまいました。岡崎市の事故は24歳の会社員が小5男児と小3女児を病院送りにしてしまい、館山市では20歳のアルバイト店員がバス停に立っていた小1男児を意識不明の重体にしてしまった由。どの事故も若者が運転する軽自動車が朝の登校時間に起こしたもので、犠牲者はすべて小学生。特に通学を始めて1箇月しか経っていないピカピカの1年生が目立つのは何とも痛ましいことであります。

■「少年法」の壁で最も犠牲者が多かった亀岡市の事故では加害者の名前は伏せられたままなのに、遺族になってしまった被害者側の松村さんは不可解な「謝罪の電話」を受けたことですっかり日本中に顔と名前が知れ渡ってしまったようです。妊娠7カ月の妻と3人目の子を同時に失って「加害者には死んで償ってもらう」と語っていたという夫の松村さんの心情は、山口県光市で出勤中に妻と幼子を惨殺された本村さんとも共通しているのかも知れません。光市母子殺人事件は13年もの時間をかけて極刑の判決が下されたのでしたが、「少年法」が障害になるのなら自分の手で犯人を殺すと公言した映像は強烈な印象を残しましたが、大切な家族を失う悲しみは同じはずなのに交通事故となったら途端に罪が軽くなるのは、やはり法律に問題がありそうです。

■報道によりますと少年は接見した弁護士に対して、10人の死傷者を出したことを「忘れずに生きていきたい」と言ったのだそうですが、教育も受けずに定職も無く18歳で深夜に他人から借りた自動車で当て所なく無免許運転を続けて彷徨している「趣味は(無免許)ドライブ」とサイトに書き込んでいた男が、これから税金で衣食住を保証して貰う窮屈な生活を送って7年ほどして25歳で社会復帰する仕組みになっているようなので、本人もそれを承知で長い人生をぼんやりと考えているのでしょうが、遺族の皆さんにとっては聞きたくもない能天気な話でありましょうし、現実の社会はそんなに優しくも甘くもないことを本人は間も無く気付くことになるのでしょう。

■以前にミニバイクの無免許運転で検挙され、今回の大事故に関わった連中とは暴走族仲間で、6、7人が4人乗りの軽自動車に乗っていた等の続報があるようです。いつかは何処かで大事故を起こすに違いない幼稚で悪質な自動車遊戯の犠牲者に偶々なってしまった不運を嘆かねばならない御遺族の心情は想像も出来ませんが、加害者側と被害者側との感情の隔たりが余りにも大きい事が気になります。遺族への謝罪電話を手助けした警察や学校も、重大な交通事故と殺人事件とをまったく別物と思い込んでいたのかも知れませんし、毎日、交通情報で「事故で渋滞中です」と聞かされる誰もが人としての感覚が麻痺しているのかも知れません。そもそも、世界に冠たる自動車産業を発達させた日本の道路事情は劣悪なままなのが問題で、連続した事故の現場は正確な意味の「歩道」は存在しておらず、どう見ても「車道を子供が歩いている」状態であります。でも、それが異様な光景とは誰も思わない。それが何より恐ろしいことだと思います。馬車交通の伝統を持たないまま自動車社会に突入してしまった日本の特殊性をもっと自覚しておくべきなのでしょうなあ。映画の『三丁目の夕日』が再現した昭和30年代と基本的に生活空間の構造は変わっていないという現実をよくよく再認識すべき時なのかも知れません。

■京都亀岡市で起こった事故の原因の一つが民主党政権が途中で投げ出した高速無料化政策だとする話もあるようですが、思い付きを書き並べたマニフェスト政治では日本の交通事情を改善するのは無理なのでしょう。少子化が国家的危機を招くと騒いでいる一方で、ピカピカの1年生が登下校中に命を落とすような悲しい事故が起こるというのも悪い冗談のような話であります。自動車の便利さに隠れている恐ろしさを忘れてはなりますまいぞ。

■さてさて党内のごたごた続きで民主党政権の政治は停滞が続いているのでありますが、石原東京都知事の「尖閣購入」の爆弾発言に驚いて、ぴくりと反応して「国も購入……」と口走ってみたもののすぐに腰砕けになった野田ドジョウ内閣は相変わらず「何も決めない。何もやらない」状態が続いているようです。そもそも、今回の石原発言の裏には島の地権者である男性の民主党政権に対する不満や不安があった由。従って事態が大きく動き始めたのは民主党の腰砕け外交の功績でもあるわけなのですが、これまた悪い冗談であります。石原知事とのパイプ役となったのは自民党の山東昭子参院議員だそうで、平成22年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で見せた民主党の奇怪で卑屈な対応を見て腹が決まったとのことであります。然(さ)もありなんと思える話で、男性は「国を守るために島を所有してきたが、個人で守っていくのは限界がある」と考えるのも当然でありましょう。

■そして本日4月27日、石原都知事は野田ドジョウ首相と直談判に及んだ模様です。

冗談も過ぎるとホラーになる 其の壱拾壱

2012-04-25 16:09:57 | 社会問題・事件
■日本でも日本でも訳の分からない事が続出しておりまして、拙ブログも呆然と事態の推移を眺めているばかりでありました。なかなか春の陽気にはならない奇妙な花冷えの中で桜を愛でる気にもなれなかったのも、震災からの復興はますます遅れ、やっと放射性物質の含有基準が決まったと思ったら東日本の農業が壊滅するのではないか?と心配になる騒ぎが起こりまして原発の大事故は「収束」などほど遠い実態が再確認されたのであります。野田ドジョウ首相は泰然自若を演じて消費税引き上げ以外のことは官僚任せで閣僚2人に突きつけられた問責決議も意に介さず、もっぱら党内融和をモットーにクラッシャー小沢に有罪判決が下されるように日々祈念しているとかいないとか……。

■長引く不況が少しは緩和されるかも?と僅かばかりの期待を持たねばならない大型連休を前にして賑々しく開通した旧自民党政権の置き土産「第2東名」が開通したと空疎なお祝い気分がマスコミから流れていたと思ったら、巨大な石がごろごろと路面に転がり落ちてトラックが乗り上げてしまうという恐ろしい事故が起きてしまいました。建設の必要性にあちこちから疑問の声が上がっていた第2東名でしたが、大震災の津波災害を逆利用して東海・東南海地震が起きても安心の新しい大動脈だと大いに宣伝に努めていた矢先のことでしたから、さぞや高速道路会社は落胆していることでありましょう。津波が到達しない「安全な高速道路」は海から遠い山の斜面を削って通したものだそうで、狐や狸などの野生動物がぴょんぴょん飛び込んで来る楽しい?道路でもあるそうですから、特に夜間にご利用になる皆様は決して驚いてハンドル操作を間違ったりしませんようにお祈り致します。そもそも道路建設自体が巨大な自然破壊なのですから、可哀想な野生動物を轢き殺してしまっても大事故を起こすよりはマシだと心を鬼にしてハンドルを握る覚悟が必要でありましょうなあ。

■さてさて京都の亀岡市で起こった凄惨な「殺人事件」は、途切れることなく続報が続きまして第一報を聴いて素人なりに予想した通りの背景があったことが刻々と明らかになりつつあります。「小人閑居して不善を為す」の格言を最悪の形で具現してしまったと一言で片付けてしまうには結果が余りにも重大!仄聞しますに運転していた(非常に暇な)18歳の無職・無免許の少年は、最高で懲役20年と定められた「危険運転致死傷罪」には該当せず、7年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金と定める自動車運転「過失致死傷罪」が適用される由。
「危険運転致死傷罪」というのも旧自民党政権が重ねた失政の一つに数えられるべき名前と中身が酷く乖離した運用し難い奇怪な罪なのですが、1999年11月28日午後に東京の世田谷区の東名高速道路東京IC付近で発生した3歳と1歳の女の子二人が12トンの酔っ払いトラックに追突された車中で焼き殺されるという悲しい大事故と、2000年6月に神奈川県座間市で発生した飲酒・無免許・無車検の暴走車に大学生が轢き殺される無念な事故が正しく裁かれないことに怒った国民37万余人の署名で政治利権とは無関係ながら、旧自民党政権が2001年6月に道路交通法改正法案を作って11月には刑法改正法案が全会一致で国会を通過。やっと最高懲役15年の刑罰が決まったのでした。

■今回の京都亀岡市での殺人事件は飲酒は無かったようですが無免許で夜通し走り回って極度の寝不足だったことが原因とのこと。もしも使用された「凶器」が友達の友達から無理やり借りた中古の軽自動車ではなく無許可の銃器だったらどうなのでしょう?単純に死傷者10人という「破壊力」を考えますと、至近距離からサブマシンガンを乱射した場合と同等かも知れません。また、犠牲になったのは小学生だったことを考えますと2001年6月8日午前に大阪教育大学附属池田小学校に宅間守という37歳の男が凶器を持って乱入して小学1年生1名、2年生7名を殺害し、他にも児童13名と教諭2名を傷つけた事件にも似た印象を受けます。たまたま使った凶器が自動車だったことだけで刑罰が軽くなるのだとしたら、御遺族や被害者家族の皆さんは納得できないことでしょう。旧自民党政権の置き土産に欠陥があるのは明らかなのですから一刻も早く改正する努力をすべきでしょうなあ。一般的な生活感覚では理解できない奇怪な規定事項が紛れ込んでいるために、唖然とするような判決が各地で下されているようですが、本当は政権交代によってこの種の改革がどんどん進むのではないかと多くの有権者は期待したのでしたが……。それにしてもガキの玩具になった自動車という物は実に恐ろしい結果を生んでしまいますなあ。失われた幼い命に合掌するのみであります。

■話題は変わりまして尖閣買い上げについてであります。4月22日の日曜にテレビ朝日で放送された報道ステーションSundayという番組で石原慎太郎都知事を大々的に取り上げておりましたが、誰が呼んだか存じませんがゲスト・コメンテーターは歌手の加藤登紀子さんでした。故・森繁久弥さんに見出されたその歌唱力は抜群だと認めますが、コメンテーターとしては適任ではなかったようです。文字通り「冗談も過ぎるとホラーになる」ようなコメントを散発して司会者や他のコメンテーターを困らせているのが画面にはっきり映っておりました。今では懐かしい平和ボケ発言が妙に新鮮に聞こえたとも申せましょうが、きっと再出演は無いでしょう。加藤さんは尖閣諸島の買取には断固反対で石原慎太郎も大嫌いだということはよく分かりました。他の報道番組も蜂の巣を突いたようにワシントンでの石原発言を大きく取り上げて大騒ぎをしておりましたので、民主政権の無能振りと重ねながらちょっと考えてみようと思います。