旅限無(りょげむ)

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渇くチャイナ 其の四

2006-08-31 10:15:02 | 外交・情勢(アジア)


中国共産党中央と国務院は両地の干害を重く見て、温家宝総理が自ら重要な指示を行った。中国共産党四川省委員会、省政府、省内各被災地は、緊急干害対策マニュアルを発動。資金2億4600万元、干害対策設備84万セット余りを投入し、作業チーム23組を奥地にまで派遣して、被災地の支援にあたっている。重慶市の各部門も1億5400万元を投入し、作業チーム25組を派遣して支援を行っている。
人民網日本語版 2006年8月17日

■農民暴動を上手に利用して革命政権を樹立した現政権は、その破壊力の恐ろしさを骨の髄まで知っていますから、可能な限りの「対策」を打ち出し続けるでしょうなあ。しかし、この対策費を誰かさんがチョロマカシたりして発覚したら、エライことになりますぞ。


江西省の一部地域で干害が拡大している。高温・晴天の日が続いたためで、同省洪水・干害防止総指揮部によると、25日までに約16万ヘクタールの農作物に被害が出ているほか、ダムと貯水池37カ所が干上がった。また、56万人の飲用水確保が困難になっている。主な干害発生地域は景徳鎮、上饒、鷹潭、九江の4市を始めとした江西省北東部で、今後も北部を中心に、被害状況緩和の見通しは立っていない。 人民網日本語版 2006年8月26日

■湖南省よりも更に下流に位置する江西省でもこれだけの被害が出います。経済成長の核となっている上海まで大して距離は残されていませんぞ。万国博覧会を開くにも水問題がネックになる可能性も有りそうですなあ。


吉林省にある黒龍江(アムール川)の支流である松花江の更に支流、〓牛河で21日、水質汚染事故が発生した。吉林市環保局よると主な汚染物質はジメチルアニリンで、周囲約5キロにわたり水質汚染が広がり、川の一部は赤く染まって泡が浮いている状況だった。23日付で新華社が報じた。(〓は牛へんに亡、以下同)
警察、消防など関係当局は松花江と〓牛河に活性炭を入れるなどして、水質物質の除去作業を行った。松花江では23日夜までの段階で汚染物質は検出されていない。

■この2年間で松花江の大規模な水質汚染事故は2度目です。小規模な汚染は数知れず発生しているようですが、最後はオホーツク海に流れ出て来ますぞ!


汚染の原因は蛟河市にある食品添加剤工場が排水を〓牛河に流していたため。警察当局などはこの工場の責任者5人を含む計7人を拘留し、調べを進めている。松花江では2005年11月にも中国石油天然気集団(CNPC)傘下の中国石油吉林石化公司(吉林省)の化学工場で起きた爆発事故により水質汚染が発生。断水など生活用水に大きな被害が出たほか、ロシア側にも汚染が及び、外交問題に発展した。サーチナ・中国情報局  8月24日

環境問題に関する意識を高めるのは容易な事ではありません。日本も立派なゴミ放置大国ですからなあ。資源ゴミの分別もせず、海辺の花火クズから河原やキャンプ場の粗大ゴミ、ちょっと山に入ったら家電製品から自動車が捨ててあります。遠くから見たら美しい富士山は世界有数のゴミの山ですし、下水処理もまだまだ完全ではありません。テレビのワイドショーは日本中の「ゴミ屋敷」のレポートを得意技にしていますし、チャイナを笑っている場合ではありませんなあ。工業地帯の地下には何が埋まっているのか分かったものではないとも言われています。困った事です。それでも、環境汚染や自然災害を逃れようと国外に飛び出して行く日本人はほとんど居ないようですが、昔から世界中にチャイナタウンを作り続けている人々は手段を選ばず違法な人口移動を実行してしまいます。


法務部が29日に明らかにしたところによると、国内に住む外国籍配偶者は7月末現在で8万6499人に上り、そのうち最も多かったのが中国籍の5万2299人で、全体の60%を占めた。以下、ベトナム1万2080人(14%)、日本6921人(8%)、フィリピン4143人(5%)、タイ1527人(2%)、モンゴル1475人(2%)、米国1279人(1%)、その他6775人(8%)と集計された。

■これは韓国の統計です。あちらにも「国際結婚斡旋業」が有るのかどうかは知りませんが、飛行機もフェリーも定期便が就航しているので経済成長と環境の良さを求めて移り住むチャイナの人々は増え続けるのでしょうなあ。


法務部は、国際結婚の増加に伴う国内居住結婚移民者数の急増を受け、移民者家族が韓国社会の構成員として定着できるよう、出入国管理事務所ごとに国籍別・地域別の結婚移民者ネットワークを構築することを決定した。ソウル出入国管理事務所ではネットワークの一環として、永登浦区民会館、松坡区民会館、城東区庁、東大門区庁の4か所で、地方自治体、女性家族部、社会団体とともに結婚移民者家族を招待しイベントを開催する。帰化手続き、韓国語講座、医療、職業教育、法律相談などの支援プログラムを紹介するほか、外国人文化公演なども企画されている。法務部は、各出入国管理事務所が運営する外国人人権保護・権益増進協議や人権担当官制度を通じ、結婚移民者相談を活性化させるほか、通訳サービスなども提供する計画だ。
YONHAP NEWS  8月30日

■国際親善を進める政策のようにも見えますし、外国人排斥運動の予防策のようにも思えますが、どちらにしても5万人を越えているチャイナからの移住者を制限するつもりは無いようです。民主的な革新政権ですから、少々甘い夢見がちな発想で政策を考えている節も有りますが、外国から大量の移民がやって来るというのは歴史上かつて無かった経験でもあるでしょうから、試練はこれから始まるのかも知れませんなあ。更に深読みすれば、念願の「南北統一」が実現した時に押し寄せてくる北の同胞を受け容れるシステムを今の内に完備しておこうという魂胆とも勘ぐれないこともないですなあ。ちょっと危なっかしい人道的な「支援プログラム」が、一体、どこから生まれて来るのか当惑していると、ビックリするようなニュースを見つけましたぞ。


韓国警察庁は29日、暴走族が事前に申告すれば、指定する道路や時間帯で集団走行を認めるとの方針を発表した。暴走族の欲求に条件付きで応えることで、暴走行為をなくすことを狙った苦肉の策だが、効果に対して疑問の声も上がっている。韓国では日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」(8月15日)などの祝祭日に、暴走族がオートバイなどで集団暴走を行う。年々、暴走行為は激しくなる一方で、今年の光復節には取り締まりの警察官がオートバイにはねられ重傷を負った。発表によると、暴走族が事前に警察署などに申告すれば、祝祭日に特定の道路、時間内で仲間たちとの集団走行を許可する。ただ、集団の先頭と後尾は警察の車両が走り、「エスコートする」という。 読売新聞 - 8月30日

■お節介なのか腰抜けなのか分からない「苦肉の策」ですが、暴走族の心情としては警察にエスコートして貰って走ってもぜんぜん楽しくないのではないでしょうか?「柳に風」相手の力を受け流す高度な政治判断が、狙い通りに功を奏するかどうか、心配しながら続報を待ちましょう。しかし、世界は韓国政府のような優しいプランを用意してくれるような所は稀で、チャイナから外に出た人達は昔から酷い目に遭い続けた歴史が有ります。


22日付の中国新聞社は「モスクワ東部にあるチェルキゾフ市場で21日午前に発生した爆発によって中国人5人が死亡した」と伝えた。……爆発によって10人が死亡し、55人がケガをした。検察当局は、死者の中に中国人5人が含まれているとしている。爆発があったチェルキゾフ市場は1990年代初頭に建設された。広さは20ヘクタールで、衣服や靴などの生活用品を販売する商店が多い。中国人やベトナム人が営む商店が大半を占め、特に中国人の商店は3000店を超えているという。22日付の東北新聞網は爆発が起きたのは中国人が営むコーヒー店付近だったと報じている。
○関連ニュース
・ヨルダン同時爆発テロで中国人3人死亡、身元判明(2005/11/11)
・ヨルダン同時爆破テロで中国の軍事関係者4人死傷(2005/11/10)
サーチナ・中国情報局  8月22日

■インドネシアで時々起こる反華僑暴動は有名ですが、最近はモンゴルでも中華料理レストランが焼き討ちに遭っています。中東やアフリカへの移民も急増しているようですから、世界中で排斥運動が起こるでしょうなあ。水不足、食糧不足、環境汚染を手っ取り早く解消するには移民を促進させれば良いわけです。人間をゴミ扱いしては行けませんが、海外に出てせっせと「仕送り」してくれれば、政府にとっては一石二鳥というわけです。欧米で違法移民群が摘発されても、北京政府は積極的に防止策を取ろうとしないのは、それが役立つからでしょう。留学だろうが結婚だろうが、先を争って国を捨てる人々が増え続ける、そんな国に命懸けで逃げ込むのが北朝鮮の「脱北者」達です。

■あの国も旱魃と洪水に繰り返し襲われる可哀想な国なのですが、毛沢東の「大躍進」を真似て「千里馬」運動を進めて山の木を切り尽くしてしまった過去が有ります。人道援助には限度が有りますし、水争いとなったら直ぐに生存戦争が始まるのですから、環境問題は焦眉の急という事なのです。日本を襲う集中豪を集めて水不足の土地に運ぶ技術は開発されませんし、気象コントロールは見果てぬ夢のままです。しかし、これで日本からのODA特別枠が確保される?

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渇くチャイナ 其の参

2006-08-31 10:14:32 | 外交・情勢(アジア)


交通部長江航道局によると、重慶市や四川省を中心とした干ばつの影響で、長江の水位が極端に低下している。重慶市や武漢市・漢口における水位は夏季としては100年ぶりの低レベルとなり、河川を利用した水運への影響が懸念されている。第一財経日報が伝えた。長江の水位が目立って低下し始めたのは7月中旬。例年ならば、長江の水量が最も多くなる季節だが、今年は上流から順に重慶市、宜昌市、沙市市、武漢市・漢口における水位が渇水期のレベルに近い状態になった。

■大昔から水運が発達していたチャイナには、悪名高い煬帝は父文帝が残した「広通渠」「山陽トク」を受け継いで、「通済渠」と「永済渠」を完成し、南の杭州から北京までを結ぶ大運河が出現しています。今でもこの大インフラが使われているのですから、誠にチャイナは水運の国として発展して来たのですなあ。


重慶市では7月21日に雨が降ったが、干ばつはまだ続くと考えられている。長江の水位は更に低下しつづけ、物流ルートとして重要な役割を果たしている河川水運の維持が極めて困難になるとの見方が出ている。また、重慶市のやや下流にある三峡ダムが、9月下旬に水位156メートルを達成することを目標に放水を減少させていることも、長江の水位の低下に拍車をかけている。

■物流が止まれば経済成長も止まるわけですが、まだまだ「2桁成長」を続けるぞ!と共産党政府は張り切っているようです。ますます海に面している沿岸部と内陸部との格差が広がって行く一方でしょう。


重慶市と四川省で続いている干ばつは、農業、畜産業、養殖漁業、発電などに大きな被害をもたらしている。重慶市内では家畜10万頭(家きん類を含む)が飲み水の欠乏のために死に、オレンジなどの生産が盛んな巴南地区、万州地区、雲陽地区、巫山地区では苗木の60%が枯死した。また、重慶市内では市に電力を供給する水力発電所がほぼストップ。120万キロワット分の発電能力が失われ、電力事情が極端に悪化している。サーチナ・中国情報局 - 8月22日

■家畜が死んで「苗」が枯死したら、食糧の欠乏が何年も続く事になります。電化を進めている近代化路線が肝腎の発電が止まれば滅茶苦茶になってしまいます。重慶の深刻な水不足に関してはもっと詳しい報道も有ります。


30日の新華社電によると、中国内陸部・重慶市の陳光国副市長は、5月中旬から続く同市の深刻な干ばつについて「全体的に100年に1回の特大のものだ」との見方を示した。1891年から存在する重慶の気象記録のうち、最も厳しい干ばつだという。重慶の今回の干ばつの特徴については、(1)長期間にわたっており、大部分の地域で60日間を超え、巫渓県では96日間に上っている(2)猛暑が伴い、気温が44.5度を最高に各地で35度以上の日が31~57日続いている(3)水源が枯渇し、市内の3分の2の小川で流れが止まっている-と指摘した。これまでに795万人の飲料水が不足。干ばつによる直接の経済損失は63億7500万元(約930億円)に達し、このうち51億2800万元が農業分となっている。時事通信 - 8月30日

■太古の時代なら、天の神々にお願いするために王様が生贄にされたことでしょうし、もう少し歴史が下ればシャーマンやら徳の高いお坊さんが雨乞いの儀式を執り行ったことでしょう。チャイナに伝わっている「聖人伝説」には「徳」が付き物で、これは自然現象に影響を与える超能力を含んでいたと言われています。水不足は自然現象ですから降雨を待つしかないのですが、長年の不満と蔓延する政府の汚職体質などに人々の怒りが向かうと暴動が起こりますぞ。そのエネルギーを束ねる英雄が出現すると「易姓革命」が起こって王朝が交代するわけですが、現政権が社会主義「革命」によって誕生したチャイナでは、マルクス・レーニン主義のドグマによって次の「革命」は起こらない事になっているのですが、科学的社会主義で雨を降らせられるかどうかは怪しいものです。


四川省と重慶市は今年6月以降、相次いで観測史上最悪の干害に見舞われ、両地共に「1級干害赤色警報」が発令されている。四川省では16日までに省内121県(区・市)で干害が発生。住民382万人・家畜493万頭の飲料水が不足し、春作物の耕地200万ヘクタール以上が被害に遭った。重慶市では13日までに住民746万人・家畜684万頭の飲料水が不足し、耕地127万ヘクタールが被害に遭った。また、市内3分の2の郷・鎮(街道)で給水が困難になっている。

■自由な移動が厳しく制限されている現体制に人々が大人しく従っていれば良いのですが、現金収入を求めて一家の稼ぎ頭(かしら)が遠い沿岸部に違法の出稼ぎに行くのを黙認していた政府も、一族郎党が旱魃を避けて大移動を始めたら手段を選ばずに移動を禁じるはずです。

渇くチャイナ 其の弐

2006-08-31 10:13:58 | 外交・情勢(アジア)


貴州省では北部の遵義(じゅんぎ)市で干ばつの被害が発生している。06年の降水量は例年の1割から4割程度で、全市のダムや貯水池の半数程度、さらに井戸の一部も干上がっている。干ばつの被害を受けた耕作地面積は28万ヘクタール以上に達し、153.43万人が飲み水の確保が困難な状態。直接の経済的損失は7.09億元程度とみられている。サーチナ・中国情報局 - 8月16日

■貴州省は大出世する前の胡錦濤さんが地味にダムを作って管理していた中華人民共和国の中でも1、2を争う貧しい地域ですが、水だけは豊富な場所だったはずですなあ。黄河と長江の主要大河の上流から中流にかけて水が枯れたら、それよりも下流の地域はせっせと地下水を汲み上げて凌ぐしか有りません。上海の大規模な地盤沈下は収まったのでしょうか?


中国は近く、資金投入規模では過去最大となる環境科学研究プロジェクト「水質汚染の抑制と処理」を立ち上げる。すでに指導チームが立ち上げられ、関連業務が本格的にスタートしている。18日に開かれた「全国環境保護科学技術大会」で明らかになった。同プロジェクトは、「国家中長期科学技術発展計画綱要」に盛り込まれた16大プロジェクトの一つ。

■水の絶対「量」が不足しているのも恐ろしい事ですが、やっと手に入れた水の「質」が生命に関わるような危ない汚染物質で満ちているのでは、もうお手上げです。ビール工場やら清涼飲料水の会社が乱立しているのですが、大丈夫なのでしょうか?いちいち高性能の浄水装置を完備しているとは思えない建物があちこちに有って、大きな看板が立ってはいるのですが……。特にビール工場では生産量をどんどん増やしながら、膨大な廃液をそのまま川に放流しているのが大問題になっているそうですからなあ。エチゼンクラゲの養殖をしているようなものです。


同プロジェクトは、環境保護総局が中心となり、科学技術部、発展改革委員会、財政部、建設部、水利部、農業部、教育部、中国科学院(科学アカデミー)、中国工程院(工学アカデミー)との共同で進められる。国家財政や地方財政からの拠出金は数十億元に上る見込み。 環境保護総局の周生賢局長は、同プロジェクトの中で重点を置くべき点として、▽飲用水の安全▽流域単位での環境対策▽都市における水質汚染対策――を挙げる。また、国の環境保護目標を踏まえて検討を進め、国の水質環境問題の解決に向けた戦略構想や技術的措置を打ち出し、水質環境の改善や飲用水の安全確保を、技術的な面から支えていく必要があると指摘した。
人民網日本語版 2006年8月19日

■まあ、簡単に縮めて言いますと、「現状ではチャイナの水は危なくて飲めません」という意味になります。大きな容器に「ミネラルウォーター」を配達する商売も盛んになっていますが、その製造元の水源はどうなっているのでしょうか?


国の洪水・渇水対策部門の発表によると、中国では17日現在、全国15の省・自治区・直轄市で干害に見舞われ、1億3千万畝(1畝は約15分の1ヘクタール)の耕地に被害が出ている。中でも5703万畝が深刻な被害に見舞われ、1389万畝で作物が立ち枯れとなった。また、1803万人分の飲用水が一時的に不足している。国の対策部門はこれを受け、被害の深刻な重慶市などにチームを派遣し、対策を指揮。さらに財政部との協議により、緊急対策資金として1億元を拠出し、各地の干害対策を支援することを決定した。気象予報によると、干害に見舞われている地域では、高温・少雨の天候が今後数日間は続く見通しで、困難な状況はしばらく続きそうだ。
人民網日本語版 2006年8月19日

■「1億元」と言っても、140億円(計算違いの御指摘を受けました。正しくは約14億円)ぐらいのものです。その程度で広大な地域に広がる大旱魃にどうやって対応するのでしょう?「1803万人」という数値もその調査方法が分かりませんから、本当は遥かに多いのかも知れませんぞ。


「中国・貴州水問題トップフォーラム」がこのほど、貴州省貴陽市で開かれた。水利部長江水利委員会総工程師弁公室の主任を務める呉道喜・シニアエンジニアはこの席上、長江が直面している5つの問題に言及した。内容は次の通り。
①水害が経済と社会の発展に、いまだ脅威を与えている
②一部地域で水資源の需給バランスが著しく崩れている
③総合的な生態環境が、根本的改善をみていない
④土砂の流出について、効果的な防止方法が確立されていない
⑤主要支流とその河口の修繕工事は「任重くして道遠し」
人民網日本語版 2006年8月20日

■これもまた、縮めて言うと「長江は危なっかしい川のまま」という意味になります。三峡ダムなんかを作って喜んでいる場合ではないでしょうなあ。「三皇五帝」に続く禹という伝説の王は、治水の業績が認められて譲位を受けた事になっています。中華何千年であろうと、いまだに治水は道半ばなのです。

渇くチャイナ 其の壱

2006-08-31 10:13:27 | 外交・情勢(アジア)
■日本の夏も様変わりして猛暑に落雷にと、凶暴な自然を改めて思い知らせてくれております。降り過ぎるぐらい雨が降って局地的には洪水と鉄砲水の災厄に襲われた皆さんにはお気の毒ですが、幸いに「渇水」や「旱魃」の声は聞こえて来ませんなあ。しかし、隣のチャイナでは恐ろしい事が起こっていますぞ。地球温暖化の影響も有るのでしょうが、数千年間に渡って森林の乱伐を繰り返し、強大な権力が生まれるたびに大規模な土木工事や無謀な開墾などを続けた結果でもあるようです。水と空気が無ければ生きては行けませんから、人はそれを求めて大移動を始めるものですが……。

中国各地で干ばつが発生している。特に深刻なのが四川省と重慶市で、合わせて1000万人以上が飲み水の確保が困難な状態になっている。また河川の水量が極端に減り、船舶が運行不能になったり、水力発電ができなくなるケースも発生している。その他、湖南省、甘粛省、貴州省などでも干ばつの被害が拡大している。…重慶市は中国の中でも夏の猛暑で知られ、最高気温が摂氏40度以上となる日が続いている。その一方で5月13日以来、「降水量ゼロ」の日が70日を超えた。このため重慶市洪水干ばつ防止指揮部は9日に、干ばつに関する最大レベルの警報である赤色警報を発令した。

■大河の沿岸都市として有名な重慶ですから遠い西の水源、チベット高原が砂漠にならない限りは何とか飲み水は確保できるのでしょうが、農業用水となったら話は別です。更に下流域は一衣帯水、一蓮托生ですから凄まじい水争いが起きても不思議ではありません。


既に129万3300ヘクタールの耕作地が干ばつの被害を受け、そのうち28万ヘクタールでは作物が完全に枯死した状態。また、全市で755.8万人と701.6万頭の家畜が飲み水の確保が困難な状態になっている。干ばつによる直接の経済被害は25億元に達するとみられている。また、市内を流れる河川の3分の2が干上がり、全てのダムが水力発電のできない状態になっている。また、長江では水位が下がった関係で、航行が不能となる船舶も出ている。

■これは8月半ばのニュースなので、その後多少の降雨があって文字通りの焼け石に水ではあろうとも、若干の効果は有った模様です。しかし、南部の沿岸を襲った台風の成れの果ての雲では大した恵みにはならないでしょうなあ。


…四川省政府災害救援オフィスによると、省内で全耕地面積の39%に相当する139万ヘクタールが干ばつの影響を受け、そのうち15万8400ヘクタールでは収穫が絶望的。309万人と401万頭の家畜が飲み水の確保が困難な状態になっている。干ばつによる直接の経済被害は70.3億元に達するとみられている。8月になってから省内の一部地域では降雨があったが、干ばつを解消するには至らず、20日ごろまで干ばつ被害は更に拡大する可能性が高い。重慶市と隣接する四川省の干ばつは、1949年の中華人民共和国建国以来最大規模だとされている。

■『三国志』でも豊かな土地として描かれる四川盆地は、チベット高原の東隣で膨大な雪解け水が縦横に流れる雨と霧の名所ですが、そこもからからに乾いてしまったら、チャイナはいよいよ地獄絵図になってしまいますなあ。


湖南省で干ばつの被害が発生しているのは、主に省北西部の湘西土家族苗族自治州、張家界市、懐化市だ。今年6月以来、台風の接近が相次ぎ、省南東部にはまとまった雨がもたらされたが、省西部では例年と比べて降水量が5割程度という状態が続いている。省洪水干ばつ防止指揮部によると、省全体で33万3400ヘクタール以上の耕作地が干ばつの被害を受け、湘西土家族苗族自治州と張家界市では27万人が飲み水の確保が困難な状態になっている。

■毛沢東さんの生まれ故郷でもある湖南省は、悪夢のような「大躍進」時代から、せっせと天然の水瓶だった湖水を埋め立てて自らの首を絞めた可哀想な地域です。それらの大小の湖沼は遊水地の役目も担っていたので、降れば洪水、降らねば旱魃という農家にとっては厳しい土地になってしまったそうですなあ。


甘粛省では、省都の蘭州市で干ばつの被害が深刻化している。市水利局の張宝志・局長は15日、農村部を含む蘭州市内各地域の2006年1月1日から8月8日までの降水量について「86.8ミリから170.2ミリの間で、観測が始まって以来の最低値だ」と説明した。このため、全市の耕作地面積14万5000ヘクタールのうち10万ヘクタールで深刻な干ばつの被害が発生している。また、8万人と5万頭の家畜が飲み水の確保が困難な状態になっている。また、蘭州市はもともと植生に乏しい地域であったため、過去6年間にわたり緑化事業を進めてきたが、植樹した7万ヘクタール余りのうち4万3000ヘクタールが干ばつにより樹木が枯死するなど大きな被害を受けている。

■「蘭州の夏」など、思い出すのも息苦しくなるような酷暑の地です。何処にいようと何をしていようと逃げ場の無い暑さで、金持ちは冷房をがんがん効かせようとしますし、貧乏人は用も無いのに冷房の効いた建物に逃げ込んで、恐ろしく非生産的な時を過ごすばかりです。頑張って働いている人達も体力の消耗を避けてマイペースの様子なのも仕方が無いでしょうなあ。黄色く濁る前の黄河が流れているものの、盆地を取り囲む山々には草も木もその姿を見ないような場所です。

楽しい町大阪! 其の弐

2006-08-31 00:53:06 | 社会問題・事件


柴崎克治市民局長は「事前に予約していたもので、この日の処分を想定できなかった。こんな時期だからこそ、職員の親睦を図るうえでも、パーティーを楽しみにしている職員は数多くおり、急に中止しろとはいえない。許可したのは私であり、批判は甘んじて受ける」と話している。
産経新聞  8月30日

■「パーティ命!」と意気込んでいる職員の血走った目が想像できます。中止などしたら「暴動」が起きるのでしょう。一体、何しに市役所に通っているのやら……。「公務員」になる目的がズレてしまっているのか、「ブッチャケた話」になってしまっているのか、身も蓋も無い状態になっているのかも知れませんなあ。早めに「破綻」して貰った方が将来の国家負担が少なくて済むのではないでしょうか?組織が悪しき伝統に悪乗りして悪弊を消せないのも困った話ですが、役人が個人的に「アルバイト」をしているのも困りますなあ。


大阪拘置所(大阪市都島区)の刑務官らによる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された同拘置所主任看守桑野勝彦容疑者(37)が、大阪府警捜査2課などの調べに対し、指定暴力団山口組系組長金政基容疑者(66)から、現金数十万円を受け取っていたことを認める供述をしていることが、23日分かった。……「見返り欲しさに便宜を図った」と供述。同課は、金容疑者が桑野容疑者に渡した現金の趣旨について追及している。…桑野容疑者は2004年7月、同拘置所に拘置中の金容疑者を、監視カメラのない房に移すなどの便宜を供与。見返りに東京ディズニーリゾートのパスポート引換券や宿泊費用を負担してもらっていたが、さらに複数回にわたって現金計数十万円を受け取っていたことが分かった。時事通信 8月24日

■『バラキ』とか『コーザ・ノストラ』とか、往年のマフィア映画には牢獄を天国に変えて楽しく暮らしているボスの懲役生活が描かれていましたが、江戸時代の牢名主でもあるまいし、牢屋で特別待遇が有るとは思いもしませんでした。拘置所と刑務所は違う!と言う声も聞こえそうですが、刑務官という仕事は同じでしょう。それも今回の容疑者は「主任看守」ですからなあ。名作『仁義なき戦い』シリーズには面会でケチな賄賂を貰って特例を認める情けない場面も出て来ますが、ヤクザさんから使い古しの車を貰ったり家族でディズニーランド豪華旅行など、あまりにも生活感あふれるプレゼントが泣かせます。子供達は何も知らずに「作文」でも書いていたのではないでしょうか?一生のトラウマになってしまうのが心配です。大阪拘置所も、「厚生会」を見習って職員の希望を取って「団体旅行」を企画してあげたら良かったのでしょうか?犯罪を犯してでもディズニーランドという場所には行きたいのですかなあ。


大阪拘置所の刑務官を巡る汚職事件で、同拘置所主任看守・桑野勝彦容疑者(37)(収賄容疑で逮捕)が、大阪府警捜査2課の調べに対し、舎房担任者として受け持った複数の暴力団関係者らに処遇についての便宜供与を持ちかけていたと供述していることがわかった。指定暴力団山口組6代目組長の篠田建市受刑者(64)(銃刀法違反の罪で服役中)らの名を挙げているが、実際の便宜供与は否定しているという。

■何と自分から「売り込んで」いたのですなあ。商売人です。さすがと言うべきか、山口組の大親分ともなれば、正々堂々とお縄を頂戴して大人しくしているもののようです。気の利いた説教の一つもしたのかも知れませんなあ。暴力団撲滅だの「頂上作戦」だのと言っても、看守さんがこれでは暴力団が無くならないわけですなあ。


府警の追及に対し、桑野容疑者は、複数の暴力団関係者らの名を挙げて、自ら接近し、便宜を持ちかけていたことを認めたという。この中には、配下組員に拳銃を所持させたなどとして、銃刀法違反(共同所持)の罪で懲役6年の実刑判決が確定し、昨年12月から今年2月まで同拘置所に収監されていた篠田受刑者も含まれ、牛肉偽装事件で逮捕された「ハンナン」関係者の名前も挙げたという。
読売新聞  8月30日

■またこれで名作ドキュメントが一冊登場するのでしょう。映画化の話も持ち上がるでしょう。やはり、吉本新喜劇のオール・スター・キャストで大作コメディに仕立てるのでしょうか?笑いの質が関東とは違うとは言われていますが、汚職や犯罪の質も違うようです。芸と冗談は「舞台」の上だけにして貰いたいですなあ。間違っても、「収監されるなら大阪に限るデ」などと闇社会の推薦を受けたり、「就職するなら市役所に限るデ」などと青少年の志を捻じ曲げるようなことのないように、大阪の皆さんには頑張って欲しいものです。でも、こんな面白い事を繰り返していて、本当に借金は返せるのでしょうか?

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楽しい町大阪! 其の壱

2006-08-31 00:52:38 | 社会問題・事件
■どこまでもしぶとく楽しませてくれる大阪に感謝したくなるようなニュースです。かつての「天下の台所」はすっかり「役人の天国」になっているようですなあ。納税者の皆さんにはお気の毒ですが、芦原病院に消えた莫大な金銭と言い、今世紀中は残るに違いない沿岸部に並ぶ奇妙な建築物の群と言い、孫子の代まで苦労が耐えないのではないでしょうか?それにしても、このニュースは凄い!

同和行政をめぐる一連の不祥事で大阪市が過去に例のない大量処分に臨んだ29日夜、市民局職員の親睦(しんぼく)団体「厚生会」が、大阪市北区の高級ホテルで、局長を含む職員約250人が参加する解散パーティーを開いていたことがわかった。

■「厚生」というのは辞書によりますと「人々の生活を健康で豊かなものにすること」なのだそうです。しかし、大阪では「健康で豊かに暮らすべき人」は250人しか居ないことになるのでしょうか?このネーミングもドスが効いていますなあ。役人でなければ人であらず、という「本音」が爆発しているかのようです。


市民局は、同和対策関連事業の見直しを統括しており、参加者には処分を受けたばかりの職員も含まれていた。同局は「偶然処分の日に重なった。公費は一切使っていない」としているが、職員厚遇の温床と批判された厚生会最後の「宴会」に、市内部からも疑問の声が出ている。

「偶然」で押し切れると踏んだのでしょうが、「公費は一切使っていない」などと当たり前の事を強調するところも愛らしいやら、呆れるやら…。恥さらしな「処分」が決まったのですから「急遽中止」というのが常識的な流れでしょうなあ。日程が重なったのは偶然でも、挙行したのは偶然ではありません。舐めてマッセ!


市民局によると、パーティーは、職員厚遇批判を受け、同局の厚生会が8月末で解散する前の「お別れディナーパーティー」として企画。7月にホテルの宴会場を予約した。パーティーは午後7時から約2時間にわたり、宴会場で開催。1人あたり1万円前後の予算で、洋風ディナーのほか、中国の雑技団による出し物、高級食材や音楽プレーヤー、1泊2日の北海道旅行などが当たる抽選会なども行われた。

■「食い倒れ」と「吉本」の本場ですから、パーティの企画力は他の地方自治体の追随を許さないものが有るようです。「中国雑技団」とは見事な発案!飲めや歌えの大盛況の様子が目に浮かぶようです。


会場は、当選者が決まるたび、大きな拍手と歓声で沸き立ち、参加賞として大阪市営地下鉄などで使用できる「レインボーカード」が配られた。参加した局幹部は「何事にも節目が必要。けじめとしてパーティーは必要だった」と説明。「貴重な親睦の場で、本当は解散したくはなかった」と話す職員もいたが、市民の批判に考慮してか、ホテル内には、このパーティーについての案内掲示などは一切なかった。

■「親睦」「解散したくない」、何だかヤクザの解散式みたいなコメントですなあ。悪乗りして「同期の桜」なんかを熱唱したのではないでしょうな?!


厚生会は、各局や区役所単位に約50団体あり、各所属長らが会長を兼務。多額の公費助成を受けて職員旅行やパーティーなどを開催していたことから、「厚遇の温床」との批判を受け、外部識者をまじえた市福利厚生制度等改革委員会が今年5月に解散を提言。自主参加の新組織をつくるよう求めていた。提言を受け、各団体は18年度中に解散する見通しになっている。

即刻解散ではなかったのですなあ。この根付きの良さとしぶとさも大阪ならではなのでしょうか?冗談みたいな県知事や参議院議員が選出される楽しい場所ですから、役人も負けずに楽しく仕事(以外のこと)に熱心に取り組んでいるのでしょうなあ。記事を他人事と思って読んでいる人は何だか腹が立つよりも楽しくなりませんか?


市民局厚生会は17年度以降は、給与から天引きされる職員の会費だけで運営されているといい、残高500万円のうち、約300万円を最後のパーティーにあてたとしている。残りの約200万円は7月の役員会で今年度中に開設を検討している「市民活動基金」に寄付することを決めたという。同和行政をめぐっては、30、31日に外部委員らでつくる「市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」が開かれ、最終提言を行う予定。市民局などは提言をもとに同和行政の見直し策をまとめる方針にしている。

■確かに「同和政策」の暴走は大問題ですが、何だかそれだけに行政の腐敗を全部押し付けて幕引きするような印象も有りますなあ。本当に問題はそれだけなのでしょうか?100億、200億という金額を蕩尽しておいて、寄付は200万円というシミッタレぶりも大阪気質?というより、やはり唯我独尊の役人体質なのでしょうなあ。

パイプラインを考える 其の四

2006-08-30 19:09:48 | 外交・世界情勢全般
■日本の財界からの圧力が有ったのでしょうが、石油に対抗して原子力発電を売り込もうと言うのは如何なものでしょう?日本はますますプルトニウム型原爆の材料が貯まる一方で、当初の計画だった核燃料サイクルも頓挫したままなのに、カザフスタンのウラン鉱山開発を助けてあげるとどんなメリットが有るのでしょう?ウラン資源は安定供給されている現状で、運び出しにリスクが有るカザフスタンがウラン鉱石をじゃんじゃん掘り出したら、何処に売り飛ばすか分かったものでは有りませんぞ!

ロシア政府は23日までに、先に閣議決定した北方領土を含む千島列島総合開発のための「クリール(千島)諸島社会経済発展計画(2007~15年)」の全文を公表した。同計画は千島海域の海洋資源保護を重視し、「経済犯罪を摘発する法執行機関に追加的な財政・技術的手段を提供する」と述べ、国境警備隊を拡充する方針を打ち出した。計画の全容が判明したのは初めて。

■日本にとっては「蟹食べ放題」の問題でしか注目されないような北方領土ですが、ロシアにとっては広大なパイプ・ライン設置計画にがっちりと組み込まれているのです。これでは喧嘩にもなりませんなあ。


計画は、法執行機関の強化が「この地域最大級の問題である密漁の解決につながる」としている。北海道根室市の漁船を銃撃・拿捕(だほ)した国境警備隊の武力や権限が拡大され、日本漁船摘発が進む可能性がある。財政支援は連邦機関が負担する。全文120ページの計画は、03年に千島中部の大陸棚で実施した資源探査で、有望な石油・天然ガス鉱脈が確認されたことを明らかにし、「近くクリール北部・南部でも石油・ガスの調査が計画されている」と指摘。北方領土周辺で石油・ガス探査に乗り出す方針を明らかにした。 
時事通信  8月23日

■貝殻島付近で銃撃・拿捕事件が起こったのは8月16日未明でした。外交交渉が暗礁に乗り上げてしまった上にロシアに遠慮して自主規制と称してどんどん北方領土から遠ざかっていた日本ですから、パイプ・ラインが敷設でもされたらニッチもサッチも行かなくなるでしょう。国後・択捉辺りに大油田でも発見されたら、外務省は国中から袋叩きに遭うでしょうなあ。世界がパイプ・ラインで結ばれてまったく新しい様相を呈しているのに、日本は何も手が打てない実情が浮き彫りになります。中央アジアやアフリカ諸国に大使館や総領事館を置こうと外務省は、ポスト小泉の麻生外相にアドバルーンを上げさせているようですが、これまでの在外公館がろくな情報収集もせず、邦人保護も等閑(なおざり)にしていた実情から考えて、数ばかり増やしても役人のポストが増えるだけで日本の外交能力が向上するとも思えません。とても憲法9条を保障する予防外交を展開する可能性は無いでしょうなあ。外交も小泉改革の延長線上で「民営化」するしかないようです。

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パイプラインを考える 其の参

2006-08-30 19:09:16 | 外交・世界情勢全般


中国大手石油会社、中国海洋石油(CNOOC)<0883.HK>は、東シナ海の日中中間線付近で開発を進めていた白樺(中国名・春暁)ガス田で生産を開始した。同社の親会社、中国海洋石油総公司がウェブサイト(www.cnooc.com.cn)で明らかにした。同サイトによると、現地を視察した張国宝・国家発展改革委員会副主任は「春暁はすでに完全に生産段階に入った」と表明。「下流部門のユーザーが不足しているため、開発ペースが制限される」とし、CNOCCにガスの販売先の確保を求めた。同社は、春暁の生産を今年前半に開始すると表明していたが、これまで、この問題に関するコメントは避けていた。
ロイター 8月5日

■二酸化炭素の排出量やエネルギー効率の良さから、21世紀最大の価値を持つとも言われる天然ガスですが、日本は船で輸入するしか方法は無いものの各分野での利用方法が確立しているとも言われていますなあ。チャイナはまだ質の悪い石炭をもうもうと煙を吐き出しながら使っている段階ですから、天然ガスの需要はまだまだ少ないというわけです。しかし、最終的には経済成長が続けば天然ガスの利用技術が普及するのは当然と踏んで、日本が昼寝している間に当面は必要の無いガス田をせっせと手に入れているというわけですなあ。贅沢な話です。その内、日本の方から領土問題を棚上げして、「共同開発」の話を持ち掛けて来るのを待っているのでしょうが、それまでには独占生産体制が整って、平然と「買え!」と言う事でしょう。


英国系メジャー(国際石油資本)BPのプルドーベイ油田(アラスカ州)がパイプラインの腐食で操業停止になった問題で、ホワイトハウスのスノー報道官は8日の会見で、サウジアラビアとメキシコ政府が米国の供給不足の補充に応じる考えを表明していることを明らかにした。ただし、現時点で深刻な供給不安に陥る可能性はないとの認識も示した。油田操業停止問題でサウジアラビア、メキシコ両政府と連絡を取った結果、「もし米国に供給不足が生じれば、われわれを助けることに同意してくれた」という。また、ボドマン・米エネルギー長官は同日の記者会見で、同油田の全面的な操業停止は必要ないとの見方を示した。アラスカから大量の供給を受ける米西海岸への影響が懸念されているが代替供給も確保できるという。しかし、エネルギー省では同油田の操業再開は来年1月までかかるという見通しを示している。
フジサンケイ ビジネスアイ 8月10日

■マネー・ゲームに熱中している間に、あちこちで米国のインフラの不足や老朽化が顕著になっているようです。利益最優先で抽象的な経済取引を楽しんでいる間に、具体的な製油所やパイプラインに支障が出て経済の基盤となる国民生活が不安定になっている米国は、ハリケーン対策とイラク派兵との両立が出来ずに立ち往生するような国になっています。中南米にの産油国は続々と反米姿勢を示しているのですから、イラクが片付いたらそちらで「石油のための戦争」を始めるのでしょうなあ。でも、イラクが終わらぬ内にイランが米国の足元を見て強硬姿勢を取り出しているのですから、ベネズエラから燃え広がっている反米産油国の連携は野放し状態が続く事でしょう。


ロシアのガスプロムネフチは、近く中央アジア3カ国に代表事務所を開設し、中国とアフガニスタンの石油市場への進出を図る計画だ。新華社が報じた。 キルギス政府が10日発表したプレスコミュニケによると、ガスプロムネフチのアジア子会社のアビルダエフ社長は同国バキエフ大統領との会談で、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの3カ国に代表事務所を開設し、同社の石油採掘・加工事業を中央アジア全体に拡大する計画を明かした。アビルダエフ社長は、この戦略により同社の中国・アフガニスタン向け石油販売業務の展開が非常に有利になるとしている。同社は現在、キルギス国内で約100カ所のガソリンスタンドを経営している。
人民網日本語版 2006年8月11日

■米英両国がタリバーンの残党狩りをしているアフガニスタンで、しっかり商売を始めるロシアは高みの見物です。「上海機構」は最初は貧乏国家が集まって傷の舐め合いをするだけかと思われていたのに、どうしてどうして、合同軍事演習を実施してNATOばりの軍事同盟組織になろうとしている所を見せたかと思えば、今度はEUの前身だった「石炭共同体」のような経済共同体の構築に着手しているかのようです。蜘蛛の巣のようにパイプ・ラインが国境を越え、各国の主要地域を結び付けて運命共同体を生み出すつもりなのでしょうなあ。組織の結束を固めるには内外価格差を大きくして見せれば良いのですから、最悪の場合、日本は馬鹿高い石油と天然ガスを売り付けられることになるのかも知れませんなあ。


政府は16日、ウランの安定供給を図るため、カザフスタンとの協力強化に乗り出す方針を固めた。今月下旬に同国を訪問する小泉首相がナザルバエフ大統領との会談で、ODAによるウラン鉱山開発への技術協力を表明する。石油に依存するエネルギー政策転換を図るとともに、資源外交を展開する中露に対抗する狙いもある。
毎日新聞 8月16日

パイプラインを考える 其の弐

2006-08-30 19:08:35 | 外交・世界情勢全般
■カザフスタンも北京政府も、自国内でのイスラム過激派を押さえ込みたい思惑で一致し、ロシアが米国に同調して「対テロ戦争」を正当化する姿勢とも連動しています。この無人の沙漠を通るパイプ・ラインがテロの標的になるかならないか、世界を混乱させるには絶好の攻撃目標です。カザフスタン国境を越えたらすぐに爆弾騒ぎが続くウイグル自治区ですから、人民解放軍が必死で守るのでしょうなあ。

…日中間で激しい綱引きが続いている東シベリア原油パイプラインでも、中国が優位に立った。29日付の新華社によると、ロシア国営パイプライン会社・トランスネフチのワインシュトク社長は28日、東シベリア原油パイプラインの第一期工事をロシア政府の要求通り完成させることが可能であることを強調した上で、中国への支線接続に速やかに着手することを表明した。事実上、中国への支線接続を最優先する意向を示したものと考えられる。

■日本に対する嫌がらせと交渉条件を有利に導く作戦かと思っていたら、羽振りの良いプーチン政権は本気で日本を切り捨てる腹を固めたとも言われているます。日ロ間に信頼が生まれていないのですから、パイプラインの建設だけやらされて、完成したらポイと捨てられたら堪りませんが、シベリアは日本にとって最も近くに眠る巨大な地下資源の宝庫ですから、神業並みの外交手腕が必要なのですが……。


6日付の産権導刊はこうしたカザフスタンやロシアとの資源エネルギー分野における接近はマラッカ海峡における有事に対処するためと分析している。また同誌は、中国が進めているミャンマーやパキスタンとの協力や外国の石油企業の買収などもマラッカ海峡における有事を回避するための動きとして紹介している。
以上、サーチナ・中国情報局 - 7月31日

■「マラッカ海峡」は台湾有事となったら米国が世界の警察官として最初に確保しようとする重要な場所ですから、まだそれに対抗する海軍力を持っていない人民解放軍にとってはマラッカ海峡の奪い合いが戦局を左右するようなことになっては困る訳ですなあ。北京政府は着々と地球儀をぐるぐる回しながら、最速にして最大の効果の上がる外交戦略を展開しているということでしょう。とても日本には真似出来ない動きです。残念ながら……。


中国とアフリカ中央部のチャド共和国は6日、北京で「中国・チャドの国交回復に関する共同声明」を発表し、国交樹立を宣言した。同日付で中国新聞社が伝えた。声明の内容は「中華人民共和国とチャド共和国は両国国民の利益と願いによって06年8月6日から大使級の外交関係を取り戻す」「平等な立場から互いの国の大使館建設と業務履行に便宜を与える」といったもの。チャドはアフリカ中央部の内陸国で1960年にフランスから独立。97年8月から台湾と国交を交わし、中国との外交関係は断絶していた。……原油生産で同国南部には埋蔵量10億バレルの石油資源が存在するといわれる。03年には、同国南部ドーバから隣国カメルーンのクリビ港に至る全長1070キロメートルの石油パイプラインが世界銀行の融資によって完成し、稼動を開始。日量10万バレルの石油の商業生産を開始しており、今後25年間にわたって年間20億ドルの石油収入が見込まれている。中国は近年、資源確保のためのアフリカ外交を積極的に展開しており、今回の国交樹立もこの流れの一環とみられる。台湾政府はこれに伴い、チャドと断行することを発表した。台湾と外交関係のある国はこれで24カ国となった。
サーチナ・中国情報局 - 8月7日

■因みに日本の外務省はチャドに在外公館を持っていません。カメルーンの日本大使館が日本の3.4倍の面積を持つ、この巨大な産油国を管轄しているのだそうです。リビアの軍事的介入やスーダンからの難民流入で内政は不安定とは言いながら、そんな国だからこそ海外からの援助や友好関係の申し出には飛びついて来るとの北京政府の読みは迫力が有ります。同時に台湾を孤立化させる戦略にも有効なのですから、相当なリスクを覚悟で友好関係を維持するつもりなのでしょう。

パイプラインを考える 其の壱

2006-08-30 19:08:00 | 外交・世界情勢全般
■産油国でもない島国の日本にって、原油は遠い砂漠から海を越えて渡って来る物で、価格や分量も相手任せの他力本願になってしまいがちです。何とか2回の石油危機を乗り越えて、エネルギー効率を世界一に高めた成功体験を持っている人が国内の各界で重責を担っているからでしょうか、このまま何とかなるだろう、と多くの人が考えているのかも知れませんが、世界は熾烈なパイプ・ラインの争奪戦を繰り広げています。

業界関係者によると、イラク北部のトルコ向け原油パイプラインが攻撃を受け、輸出再開がさらに遅れる見通しとなっている。ある海運業者はロイターに「きのう再度爆撃を受けた」と述べた。パイプラインは、トルコのジェイハン港向けのもの。別の関係者もパイプラインが破壊活動を受けたと述べたが、詳細は不明だという。あるイラク石油省高官は、パイプラインのメンテナンス作業にはさらに時間が必要となる、と述べた。
ロイター - 8月1日

■NATO加盟国でEUにも参加したいと熱心に運動しているトルコは、中央アジアやカスピ海沿岸の原油を積み出す場所として唯一政治的にも安定しているイスラム国という地位を占めています。欧州諸国から信頼されれば、イスラム諸国から恨みを買う事にもなりますから、何とも危ない綱渡りを続けねばならないのが辛いところです。パイプ・ラインへの破壊活動は、小規模なものを含めると日常茶飯事に起きているようで、この8月1日のニュースのように大きく取り上げられる事は稀です。イラクの復興が大幅に遅れているのも、唯一の資金源になるはずの原油の輸出が予定通りに進まない事に大きな原因が有ると言われています。戦争で破壊された所を修理し、また壊されては修理している欧米の石油会社は、危険手当が付く高収入の仕事がいつまでも続くので密かに喜んでいる節が有りますが、予想を下回るイラク原油の積み出し量が市場に品薄感を広めて、取引価格が天井知らずに暴騰すれば、これまた石油会社の利益を積み増してくれるわけですなあ。

■露骨に表面化はしませんが、全世界が原油価格の暴騰で大儲けしている者と原材料費・燃料価格の高騰に四苦八苦している者とに二分割されています。日本のように、ほぼ全ての生産物の価格上昇を引き起こす原油高を利用して、あれこれと数値を並べて「景気回復」の証拠だ!と力んでいる国は珍しいのではないでしょうか?政府の中には深刻なエネルギー危機に対応しようとする動きも有って、小泉首相が取る物も取り合えず中央アジアに出掛けて行ったのも、東に伸びるパイプ・ラインに日本が食い込もうという算段なのでしょう。しかし、積み出し作業をする肝腎な国々との外交関係が気まずくなっていては、内陸で「友好親善」をぶち上げても何の役にも立たないような気がしますなあ。まして訪問国は「上海機構」加盟国となれば、北京政府とロシア政府の頭越しに交渉など絶対に出来ませんぞ。

■ロシアもチャイナも日本が何だかんだと「掴み金」をくれるなら、貰っておけば?ぐらいに眺めているのかも知れませんなあ。


中国が周辺地域からパイプラインを使った原油輸入を加速させている。カザフスタンから新疆ウイグル自治区に向けた原油パイプラインの全面運転が29日、開始した。一方、日中間で激しい綱引きが続いている東シベリア原油パイプラインの接続問題で、ロシアは中国への接続を最優先する意向を示した。(7月)31日付で新華社などが伝えた。

小泉首相の卒業旅行と茶化せない一種の緊迫感が漂っている今回の中央アジア歴訪は、こうした動きに衝撃を受けた外務省が急遽決めたものではないでしょうか?間に合えば良いのですが……。


…カザフスタンからパイプラインで輸入された原油は29日17時(現地時間)、新疆ウイグル自治区にある終着点の独山子石化公司製油所に到達し、全線で商用運転が始まった。同パイプラインの始点はカザフスタンのアタスで、終点は新疆ウイグル自治区の阿拉山口。全長は962.2キロメートルで、毎年輸送される原油は2000万トン。パイプラインの建設費用は7億ドル。建設工事は2004年9月に始まり、05年11月に完成した。阿拉山口と独山子を結ぶ246キロメートルは中国石油天然気(ペトロチャイナ)が完成させた。両国の資源エネルギー分野での協力は97年から開始。両国政府が天然ガスの分野における協力を盛り込んだ協定を締結し、カザフスタン西部と中国の新疆ウイグル自治区を結ぶ原油パイプラインを建設することも提起された。

後始末が大変だ! 其の四

2006-08-29 23:13:36 | 社会問題・事件


一方、地区の福祉向上などを目的に設立された財団法人「飛鳥会」(東淀川区)に運営委託した西中島駐車場(淀川区)に過大な利益を上げさせたり、地区の保育所などへ数々の不当な優遇を与えていた問題が今年に入り、相次いで表面化した。飛鳥会を私物化していた理事長で解放同盟支部長(いずれも当時)は大阪府警に逮捕され事件化した。
毎日新聞 - 8月29日

■素人にでも分かる馬鹿馬鹿しい「支出」は処分の対象になるでしょうが、事はそれほど単純ではないでしょう。このまま大阪で幕引きとなれば、ほっと胸を撫で下ろしている地方自治体は沢山あるでしょうなあ。さた、お次は毎回100億円を越える被害額が報道される「手軽な詐欺」の後始末です。


警察庁は29日、「私設私書箱」と「電話秘書代行」の両業者を、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の新法案「犯罪収益流通防止法(仮称)」の対象にして、契約者の本人確認と契約書の保存義務を課す方針を固めた。来年の通常国会提出を目指しているが、同法案を巡っては、弁護士、会計士、宝石・貴金属商なども合わせて対象にすることが既に公表されており、反発の声も起きている。私設私書箱と電話秘書代行は、これまで開設の届け出義務などの法規制がなかった。このため振り込め詐欺の受け取りや会社所在地の偽装など犯罪への悪用が指摘されていた。こうしたことから同庁は、両業種に対し、資金洗浄が疑われる取り引きの警察への届け出を義務付ける。違反すれば、担当省庁が発覚後に是正命令が出し、従わなければ罰則を課す。

■私書箱を利用する犯罪というのは考え難かったのですが、携帯電話の出現で新たな利用価値が見つかったようです。「電話代行」は劇画のゴルゴ13も愛用している尻尾を捕まれない貴重な連絡方法を提供していたわけですが、漫画を越えて悪質な犯罪に利用する馬鹿者が出て来たのですから、この対応は遅過ぎたくらいです。


両業種は、これまで担当省庁がなかったが、私設私書箱業者は経済産業省が、電話秘書業者は総務省と経産省がそれぞれ担当することが決まっている。9月にも業者に対する説明会を実施して法案について意見を聴取する。同法の策定は、国際機関の金融活動作業部会(FATF)の勧告に基づくもの。金融機関に加え、弁護士なども対象とされる方向で検討が進んでいるが、顧客情報の守秘の立場から、反対の声が上がっており、調整が続いている。
毎日新聞 - 8月29日

■詐欺犯罪は不滅ですから、次の一手に注目です。高みの見物を決め込む決心を固めておけば、万一、愚か者が接近して来ても楽しみながら撃退できる力になりますぞ。犯罪は法律の前に生まれて稼いで栄え、新たな法律が出来る前に消えてなくなります。ご用心、ご用心。


国は数々のセーフティネットを法律で定めて作ってくれているのですが、その法律を運用しているのが生身の人間のお役人なのですから、税金泥棒丸出しの間抜けな犯罪も無くなりません。


神奈川県警厚木署は28日、厚木市愛甲、元同市生活福祉課主任、加藤克則容疑者(35)を詐欺容疑で逮捕した。調べでは、加藤容疑者は04年4月~今年3月にかけて約40回、生活保護費支給システムの端末機を不正に操作し、保護世帯から緊急の支給申請があったように入力し、計約800万円を着服した疑い。加藤容疑者はすでに懲戒免職になっている。市によると、着服額は計約4150万円に上り、遊興費に使われたという。毎日新聞 - 8月28日

■こうした報道では「遊興費」などという抽象的な表現は止めて欲しいものです。「ノーパン・しゃぶしゃぶ」とか、「アケミ・ボタン」のように具体的な名称が出て来ないと、大人しい日本人には怒りの心が生まれないのですから…。厚木市○○町の○○店、という具合に報道してもらえば、地元の納税者の怒りは本物になりそうです。他人の金で楽しむ場所は、きっと人も羨む?楽しい高級店のはずですからなあ。そんな事を楽しみに地方公務員の試験を受けていたのか?と市民が呆れる事から政治の変革も始まるのではないでしょうか?生活保護に関しては、納得の行かない甘ったれたケースも多いようですが、逆に切羽詰って申請したのに拒絶されてサラ金の蟻地獄に吸い込まれたり命を絶つケースも多いと聞きます。厳正な法律の適応は望ましい事ですが、時には温情も必要で、しかし、それを役人のお手盛りにして貰っては困ります。勿論、自分の「お小遣い」にしてアフター・ファイブを充実させているようでは、不正な生活保護申請は増えるばかりでしょうなあ。厚木市民の皆さんは、「どうせ予算が余ってんだろう?」などと怖い顔をしてお役所を脅さないように御注意願います。

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後始末が大変だ! 其の参

2006-08-29 23:13:05 | 社会問題・事件
■一部の週刊誌などでは、銭ゲバの会長が元凶だ!と書き立てていたようですが、その会長が名前だけ消して責任を取った事にしたら、危なくてパロマ製品は使えませんなあ。社会保険庁と同じで、誰が発案し、誰がマニュアルを作って下に通知したのは誰なのか?これが分からなければ、露骨なトカゲの尻尾切りでしかありません。

不正改造は、制御装置内の配線を短絡させることで、排気用ファンが停止してもガスが供給されるようにするもの。一連の事故28件のうち15件で行われ、死者が出た13件に限ると11件で行われていた。また、問題発覚後、パロマ側が23日までに点検作業を行った1万8211件のうち、1%を超える231件で見つかっている。
読売新聞 - 8月29日

■この記事ではよく判りませんが、要するに「安全装置」が反応した時に黙らせるという恐ろしい細工をしていたわけで、客が心でも良いと判断した人物が必ず居るのです。そして、下請けの悲しさか人間性の麻痺か、その指示に従って異常燃焼が起こっても安全装置が動かない「改造」をしたのです。そんな点検を受けた使用者は運が悪かったとしか言いようが有りません。アウシュビッツは青酸ガスを発生させえるチクロンBを使いましたが、その前は排気ガスや一酸化炭素も試みています。パロマはガス器具会社ですから、一酸化炭素段階?で留まったようなものです。機密性の高い鉄筋コンクリート製のアパートではなく、隙間風が吹き込む貧乏長屋だったら犯罪は未然に防げたかも知れません。

■まさか、目出度く長生きしている会長さんが、敗戦直後の掘っ立て小屋やバラックで日本国民のほとんどが暮らしていると思い込んでいたのではないでしょうな?ガス器具が備え付けの賃貸住宅を利用しなけらばならない者は、不自然な死亡事故が起こった部屋を何も知らずに借りねばなりませんし、雑居ビルや地下の飲食店となったら喚起にも限界が有ります。それを承知で「改造」したのですから、犯人が分かったら業界全体としては困るのかも知れません。下請け、孫受けの悲しい構造で、ネジ一本を不正に操作した人は、莫大な報奨金を貰っていたはずはないのですから……。

■ナチスが決行した「最終解決」は、ユダヤ人を特定した、欧州の長い伝統に根ざした差別の極致として起こった大事件でした。差別の無い社会も国家も存在しませんから、たゆまない戦いが必要なのですが、肌の色が違うわけでもなく、宗教が違うという理由でもない奇妙な差別が日本には存在する、とマニアックな知日派だけは知っています。


旧芦原病院(大阪市浪速区)への不正融資や財団法人「飛鳥会」(同市東淀川区)事件など一連の関連不祥事で、大阪市の関淳一市長は29日、中山芳樹・前健康福祉局長を諭旨免職、局長級2人を1カ月の停職にするなど、職員計105人(関連団体の6人を含む)の処分を発表し、「組織風土に問題があった」と陳謝した。関市長は既に自身の減給(50%、6カ月)を公表。助役2人と収入役の計3人も給与の一部を自主返還(10%、1~3カ月)する予定で、一連の問題で責任を問われるのは総計109人に上る。

■このニュースは実に唐突でした。8月27日の日曜夕方、TBSの『報道特集』が放送した長尺のドキュメントを観て初めて知った人も多かったのではないでしょうか?笑える沿岸開発を続けて実質的に財政を破綻させてしまった大阪市には、奇怪な駅前駐車場の利権問題が有るのは既報でした。しかし、「芦原病院」と具体的な名指しの報道は大手新聞社も記事にしないで済ませていたようですなあ。加藤紘一さん宅を焼いた初老の悲しい右翼団体員と同様に、報道出来ない理由が有るようです。明らかになった金額は、悪趣味ゴミ焼却場や無人の人工島を作ったアホ・プロジェクトよりは小額らしいのですが、その根は遥かに深く複雑なようです。


刑事事件を起こして逮捕されるなどした以外の職員を免職・停職処分にするのは同市で初。関淳一市長は「前例のない重い処分。けじめをつけ再出発したい」と話した。関市長は一連の問題の背景について、同和対策関連事業に対し「失敗が許されない」とする偏った思い込みがあったことや、補助金支出を全市的にチェックする体制が不十分だった――などと分析。免職、停職以外の処分の内訳は、減給3カ月7人▽同1カ月17人▽戒告22人▽文書訓告48人▽口頭注意8人。処分された105人のうち、旧芦原病院関係で処分されたのは計33人。外郭団体を経由させた迂回(うかい)融資などにかかわった中山前局長のほか、岸廣成・同局医務保健総長と寺本良平・元同局理事が停職1カ月。当時の課長以上13人が減給10%(1~3カ月)の処分を受けた。飛鳥会事件関係では、西中島駐車場(同市淀川区)の委託契約の見直しを怠るなどした局長級2人が減給10%(1カ月)となるなど、計46人が処分された。

■ここでもややこしい数字が並んでいますが、この関市長さんは、「出直し」をアッピールして御丁寧にも再選された方ではなかったでしょうか?出直しの前に、更に出直さねばならないとなると、大阪市はいよいよ大変ですなあ。アホ・プロジェクトの無駄遣いに関しては責任の取りようが無く、組合がちょろまかして裏金くらいなら返済も可能というわけで、新規一転、大阪市が生まれ変わった、と信じた人は居なかったでしょうが……。


…◇主な懲戒処分対象者と理由
<諭旨免職>中山芳樹・前健康福祉局長
・旧芦原病院(補助金不正支出、迂回融資、銀行に虚偽説明)
・飛鳥会関連(保育所への架空当直費)
<停職1カ月>寺本良平・元健康福祉局理事
・旧芦原病院(補助金不正支出、迂回融資)
岸廣成・健康福祉局医務保健総長
・旧芦原病院(補助金不正支出、迂回融資、外郭団体の債務保証)
<減給3カ月>現元・健康福祉局理事の計2人▽現元・同局健康推進部長の計3人(以上、旧芦原病院関連)▽教育委員会事務局職員(飛鳥会関連)

■このようにずらずらと並んでも、誰も逮捕されたり刑事罰を受けることは有りません。辞めても誰かさんが「功労者」扱いして第二の人生を保障してくれるのでしょうし、その他の処分にも絶妙な「補填」が出来る仕掛けが有ることは周知の事実。


…大阪市の関連不祥事 地区医療センターと位置づけていた旧芦原病院(浪速区)に対し、高額医療機器の購入費名目で支出した補助金が不正流用されるのを容認したり、運転資金用立てのため無関係の外郭団体を借り手に仕立てるなどして迂回(うかい)融資を実行するなど、市ぐるみで不正な金策をぜん立てした。

■ざっくりと事件が掘り出されたような報道ですが、市の財政に空いた「不正な穴」の実情は分からないままのようです。同和政策として正当な予算執行も含まれているのですから、線引きは至難の業。

後始末が大変だ! 其の弐

2006-08-29 23:12:26 | 社会問題・事件
■大はグリーンピアから小はゴルフ・ボールまで、天下り先から日々の健康維持まで、お役人は湯水のごとく人様の「年金」を食い潰すのがお役目!今回の「処分」は、法に定めた申請を待たずに、気を利かして保険料の払い込みを「免除」してあげた、言うなれば「サービス過剰」の咎(とが)ですから、下々の者にとっては何事も無いような「処分」で済まされるわけでしょうなあ。一体、何人分の年金支給額が消えてなくなったのでしょう?

自らも監督者として訓告処分となった村瀬長官は「やってはいけないことを組織全体でやってしまった。真摯(しんし)に反省し、職員の意識改革を徹底したい」と謝罪。また、社会保険事務所の課長以上(約3700人)を対象に、役職に応じ給与の一部自主返納を呼びかける。

■「呼びかける」とはどういう事でしょう?「組織全体」に責任を押し付けた村瀬長官御自身は、どんな責任が有ったのでしょう?絵に描いたような「皆で渡れば…」の理屈です。グリーンピア関連で磨り潰された年金支給資金の総額を、「3700人」で割ったら返済可能な金額が算定されるのでしょうか?要するに「使ってしまったものは仕方が無い」というもの凄い理屈が押し通っているようですなあ。


処分者の所属(当時)は社保庁が8人、事務局・事務所が1744人。行為者が1604人(局長13人、所長155人)、監督者が148人(局長23人、所長32人)。処分内容別では、▽停職6人▽減給81人▽戒告82人▽訓告222人▽厳重注意1361人。社保庁の大量処分を巡っては、国会議員やタレントの年金加入記録をのぞき見していた問題で昨年12月、3273人を処分。そのうち、行為者として今回も処分された職員は198人に達し、懲りない体質を浮き彫りにした。

■「懲りない体質」などと便利に切り捨てるのは持っての他ですぞ!「ふざけるなよ」とこれから内部告発者が出て来るのを、国民が挙(こぞ)って期待しているのですから、「覗き見」と「流用(横領)」とどっちが悪い?!と開き直る職員がキレ易くなる環境を用意して上げなければなりませんぞ。馬鹿な国民から巻き上げた年金保険料(この名称が胡散臭いですなあ)で、快適な職場を作って楽しく勤務していた勘違い役人を一網打尽にしない限り、年金制度の穴だらけ笊(ざる)体質は変わりません。バカ正直に年金「保険料」を収めながらサービス残業に駆り立てられながら健康を害して若死にする者と、定時に出社し退社し、昼休みには無料のゴルフ練習場で無料のボールを好き放題打って汗を流し、休憩時間には豪華なマッサージ椅子で凝ってもいない体のスジを揉んで恍惚となる。「年金制度」は断固として死守存続しなければなりませんなあ。


不正免除問題は今年2月、京都事務局で発覚したのを受け、社保庁が計5回調査を実施。その結果、保険料納付率アップなどのため、個人の申請意思を確認しないまま免除の承認手続きを行うなどの不正免除が合計で38万5440件も発覚した。
毎日新聞 - 8月28日

■鬼の首を取ったように得意げにこんなヨタ記事を書き散らしていると、お役人の高笑いが聞こえなくなりますぞ!「不正免除問題」など、年金制度の歪みと詐欺性には何の関わりも有りません。マスコミもお役人が作った年金制度のジャングルに迷い込んでいるのではないでしょうか?これが「後始末」ならば、元厚生大臣の小泉プレスリー総理が頬被りして逃亡してしまった事になりはしませんか?これも全部「次期政権」の宿題なのでしょうか?酷い話ですなあ。本気で「処分」したら桁違いの「生首」が飛んで、役所仕事しか知らないいい年をした皆さんが格差社会の真っ只中、路頭に迷うことになるのですが……。


パロマ工業製の瞬間湯沸かし器で一酸化炭素中毒事故が続発した問題で、経済産業省は28日、同社に製品回収の緊急命令を出し、一応の区切りとした。同社製品での事故多発の事実を公表してから1か月半。しかし、事故の最大原因である制御装置の不正改造については、問題発覚後の点検調査などで明らかになった231件も含め、誰が行ったかは1件も判明していない。遺族からは「このまま幕引きされたのでは納得できない」と怒りの声が相次いだ。

後始末が大変だ! 其の壱

2006-08-29 23:11:47 | 社会問題・事件
■殺人事件と不祥事発覚が連日の報道を賑わせておりますなあ。「火の無いところに煙は立たず」の諺通りで、煙が漏れてしまうのは火元が相当に激しく燃えている証拠なのではないでしょうか?煙を吹き散らすような応急処置をしても、火種が無くならない限りは火はあちこちに燃え広がって行くものです。殺人事件は犯人の逮捕で決着するように素人は考えてしまいますが、裁判になって突如「無実」の主張が飛び出したりしますし、迷宮入りやら時効やら、ひどいのになると犯人が外国人で祖国に逃亡してのうのうと暮らしていたりしますからなあ。「犯人引渡し条約」という締結していて当然の条約が、何と米国と韓国の2カ国としか日本は条約を持っていないのだそうですなあ。それで「グローバル化」だの「ボーダーレス化」だのと演説する政治家がごろごろしているのですから、あきれてしまいます。日本は単なる犯罪の温床か草刈場になってしまっているようなわけです。

■「不祥事」の幕引きは「遺憾表明」と「大量処分」と決まっているようですが、消えてしまった現金は戻らず、責任者がきちんと刑事罰を受けることも無いまま、何となく事件が忘れられて行きますなあ。ゴキブリと同じで、不祥事が1件発覚したら、その数十倍の不祥事が隠れていると思って、頑張って記憶を保つ必要が有ります。小さな不祥事が単なる氷山の一角で、腐敗の根元に近いところから火を噴くこともありますからなあ。


香港の人権団体、中国人権民主化運動情報センターは28日、江沢民前国家主席の元秘書を名乗り、上海の上海浦東発展銀行から8200万元(約12億円)をだまし取ったとして、上海の企業幹部が昨年逮捕され、近く死刑判決を受ける可能性があると伝えた。男は人民解放軍系列の会社の管理職、王建国被告。2004年9月、「江主席の元秘書」として、「中央軍事委員会」の押印がある委任状を持って同銀行を訪問。「戦闘機や戦車など退役兵器が手元にある」と説明、融資を申し込んだ。銀行は王被告の名前と会社を調べた上で申込書を回したところ、各段階の審査を通過し融資が実行された。同センターによると8200万元のうち6600万元の行方が分からなくなっており、退役将軍らの手に渡った疑いがあるなど、軍関係者が関与した可能性が浮上しているという。
産経新聞 - 8月29日

■経済成長著しいとは言っても、まだまだ貧しいチャイナの地ですから、「12億円」の詐欺は日本の100億円以上の衝撃が有るでしょう。江沢民さんの隠然たる影響力が残っていると言われ続け、胡錦濤政権はその影から脱しようと必死の努力をしているとも言われている中で、「元秘書を名乗る男」という微妙な犯罪者が出て来たわけです。自称「元秘書」が本物の「元秘書」なのかどうかは分かりませんが、押印済みの「委任状」という動かぬ証拠が確保されていれば、軍事委員会と江沢民さんとの黒いコネクションが炙り出される可能性は有ります。しかし、証拠品の全部が偽造だと言い逃れる方法は幾らでも有りそうですから、続報が待たれるところです。ただ、余り人民解放軍を追い詰めると、開き直って「危機」を演出して事件を揉み消そうという悪い癖が出ますから、ご用心、ご用心。

■お話し変わって日本国内でも、あちこちで一斉に「幕引き」が始まっていますぞ。何だか総会屋封じの株主総会同日開催みたいな印象も有りまして、みんなで処分を発表すればマスコミからの集中砲火は避けられるとでも考えているのではないでしょうか?


国民年金保険料不正免除問題で、村瀬清司社会保険庁長官は28日、職員1752人の処分を発表した。最も重い処分は停職2カ月の鈴木薫・前静岡社会保険事務局長と高野裕治・大阪社保事務局年金部長で、国家公務員法上の懲戒処分(停職と減給、戒告)は169人に達した。9月の人事異動で、社保庁としては役職と給与を引き下げる「降格」人事も初めて行うという。一方で、社会保険事務所長を民間企業経験者から募集する。一連の問題での処分者は、本来なら処分対象となる退職者らも含めると、1872人に上る。

■解体が決まったような報道が重なった社会保険庁ですから、何だか「死んだ犬」を叩いているな話になりますが、解体・解消の「法律」が決まるまでは、何事もなく振舞うのがお役所の掟(おきて)であります。あちこちで露見した「年金流用(横領)」は、「法令に定めるところによって執行された予算」ですから、何のお咎(とが)めも無いのですなあ。

悪い冗談 其の参

2006-08-28 08:56:28 | 外交・情勢(アジア)


イラン核関連活動停止への包括見返り案を提示した国連安保理常任理事国5カ国とドイツのうち、米国とドイツはイラン側回答への不満を表明している。イランの回答の内容は公開されていないが、メルケル独首相は24日、テレビでのインタビューで「満足できるものではない。『ウラン濃縮を停止し、交渉の席につく』という決定的な一文が回答に明記されていない」と述べた。
ロイター - 8月25日

■交渉をしたいのかしたくないのか、はっきり分からない人を食ったような態度を取り続けるイランから発せられる主張は、どうにも得体が知れないものばかりのようですが、以下の話は「悪い冗談」ではありますまい。とうとう日本政府にも火の粉が飛んで来ましたなあ。


日本の国際石油開発が権益を持つイラン南西部アザデガン油田開発について、イラン石油公社傘下の石油開発技術会社のバザルガン社長は27日、「日本側と9月15日までに開発着手で合意できなかった場合、国内企業や中国、ロシアとの共同開発も模索する」と警告した。石油省が運営する通信社が伝えた。読売新聞 - 8月28日

■親分の米国からは、再三に亘って「アザデガンは諦めろ」と迫られている日本政府は、他に原油を安定供給してくれそうな場所も見つからないので、何とか米国の御機嫌を損ねないで利権を守ろうとのらりくらりと対応していましが、交渉相手のイランから「最後通牒」を突きつけられてしまった格好です。さて、どうするのでしょう?ロシアは北京政府と手を組んでパイプラインを餌に色目を使った揚句に「やっぱり売ってあげない」と言い出しているようですし、勿論、偉大な輸入国になっている米国が日本の石油を手当てしてくれるはずも有りません。本当は国内の燃料を自給出来るだけのメタンハイドレードが海底にごろごろ転がっているのですが、誰が誰に遠慮しているのか採算ラインに乗せる努力を怠ったままのようですなあ。気が付いたらごっそりと「領海」も「排他的経済水域」も、かつての「絶対防衛圏」みたいに削り取られて、技術が開発され生産体制も整ったのに、肝腎の資源が無くなっていた!などという間抜けな事にならないように祈るばかりであります。

■「悪い冗談」の最たるものが次の記事です。


2008年8月の北京五輪に向けて、中国政府は「マナー向上」キャンペーンを本格化させた。国営新華社通信などによると、党中央精神文明建設指導委員会はキャンペーンを指示する通知の中で、「礼儀の国のイメージが損なわれている」と現状に危機感を示し、「旅行先で大声で騒ぐ」「たんを吐く」などの「非文明行動」の撲滅を目指している。

■伝説ではチャイナには周と言う古代王朝が有って、そこの王様も家臣も揃って行儀が良く、礼儀に従った宮廷儀式が厳かに執り行われていたそうで、民も何の心配も無く楽しく暮らしていたとか…。孔子はそのウソだか本当だか分からない伝説国家を再興しようと頑張ったそうです。しかし、司馬遷の『史記』以来、記録されたチャイナの歴史は権謀術数に長けた亡者達が謀略の限りを尽くした物語になっていますなあ。遠い昔には虎が出るほど深い森が広がっていた場所が、今ではぺんぺん草も生えない砂漠地帯になっていますし、樹木の影も見えない禿山が連なり、旱魃(かんばつ)やら動乱やらで大規模な人口変動を繰り返して来ました。食糧も水も慢性的に不足し、常に過剰人口に悩み続ける、そんな厳しい環境の中で公共道徳など育まれるはずも有りません。

■社会的な環境問題と言う以前に、自分の家のゴミを往来に放り出して掃除が終わり、体内から出る固体も液体も「出物腫れ物ところ嫌わず」で、町中にも罰金で脅す排泄行為禁止の文言があちこちに見られます。「礼儀の国のイメージ」と言うのも、儒教が祖霊崇拝を中心として七面倒くさい「礼」を事細かに書き記した文書が残されているだけの話です。意地悪く考えれば、礼儀知らずばかりが目立つからこそ、あんなに微に入り細を穿つ文書を作ったのではないでしょうか?


「中国公民旅遊文明素質行動」と題された通知は、礼儀を知らず、秩序や法を守らず、環境保護を守らない非文明的な一部の(中国人)観光客が海外から批判されている、と指摘。そのうえで、「良好な国際イメージを確立することが急務だ」としている。

■「海外から批判されている」のは、国内では誰も文句を言わないし、言ったら倍になって怒鳴り返される流儀が行き渡っているからでしょう。喰い散らかし飲み散らかすのが何よりも贅沢で、妙に生理現象には素直に対応する生活習慣は簡単に変わらないでしょうなあ。


撲滅の対象となっているのは、▽レストランなど公共の場で大声で騒ぐ▽たんを吐く▽どこでもごみを捨てる▽電車、バスで降りる人を押しのけて乗り込む▽列に並ばない-など。テーマパークや公園で子供に小便をさせるなどの行動も批判されている。キャンペーンは、観光、公安、商務、建設、鉄道、交通など関係部門が、今月から3年間継続実施する。

■ここに列挙されている行動を取らないと、生活が成り立たないのですから仕方が有りません。何でも足りない、余っているのは人間だけ、上に政策有れば下には対応策が有る。中華数千年の歴史は、そのまま「大キャンペーン」の繰り返しだったとも言えるほど、礼儀から刑罰まで、破られるのを前提として作られた文書が山ほど有るようです。共産党支配になってからも、無数のキャンペーン文書が作られています。老若男女が熱心に政府発行の文書を「学習」する大キャンペーンには、何の効果も無い事を一番よく知っているのは政府自身でしょうに……。拙著『チベット語になった「坊っちゃん」』にも、公教育施設を利用した大規模な学習運動を現場で見た体験を書いておきました。ご興味の有る方にはご一読をお勧めいたします。


北京では五輪をにらみ、「文明礼儀」に関したパンフレットを作成。上海でも10年の上海万博を視野に入れ、「100万人家庭礼儀学習」と題するマナー向上運動を始めている。中央政府は道徳心を高め、文明的な国家建設の意義を強調しているが、「個人主義」「拝金主義」の広がりで、どこまで効果が上がるか注目されている。
産経新聞 - 8月27日

■「100万人家庭礼儀学習」?はて、中華人民共和国の人口は何人でしたっけ?何はともあれ、全人類の5人に1人が「漢民族」だそうですから、少しでも行儀が良くなれば世界は平和になるには違いありませんなあ。頑張って貰いたいものです。万一、史上初のキャンペーンに効果が現れないとも限りませんからなあ。

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