旅限無(りょげむ)

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原発狂想曲 其の弐

2007-04-12 08:50:02 | 日記・雑学

合弁相手は、ロシアが設立準備中の国営原子力独占企業体「アトムエネルゴプロム(アトムプロム)」で、合弁工場では、大型の蒸気タービンや発電機、水蒸気を冷却する復水器などが生産される見込み。建設時期や建設地、投資額は今後詰めるが、出資比率はロシア側が51%、東芝が49%とする案が有力だ。東芝によるロシア国内の原発保守事業への参加やアトムプロムに対する原子炉の技術供与も交渉の議題となる見通しで、年内決着を目指す。……ロシアは今後25年間で、40~60基の原発建設を新たに予定しているが、主要部品の生産力や技術力不足が課題となっている。このため、東芝の技術を活用して、原発整備を急ぐ。一方、東芝は、ロシア政府やアトムプロムとのパイプを築くことで、ロシアでの原発ビジネス拡大の足がかりになると判断した模様だ。
2007年4月10日 読売新聞

■ロシア国内だけでも巨大な商売になりそうですが、東芝から最新技術が得られれば、ロシアはあちこちに売り付けようとしているはずで、それがインドなのか中国なのかイランなのか、気がもめるところであります。東芝がロシアと組めば、三菱はフランスと提携するのだそうです。話は去年の秋のことでした。


三菱重工業が、フランス最大の原子力関連企業アレバと原子力発電プラント事業で提携することで最終調整していることが15日、明らかになった。世界で主流の加圧水型原子炉(PWR)で新型炉を共同開発するほか、プラントの共同受注、技術協力などを通じて強力な企業連合を形成するのが狙いだ。三菱重工業にとっては、海外で共同受注していた提携先の米大手ウェスチングハウス(WH)が東芝に買収されるための戦略変更となる。世界の原発事業は、東芝グループ、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)連合に「三菱・アレバ」を加えた三つどもえの競争が本格化する。

■最新の報道と合わせますと、「東芝+米国のWH+ロシアのアトムプロム」という地球をぐるりと1周するような原発会社が生まれたようなものです。


原子炉には主に、関西電力などが採用するPWRと、東京電力などの沸騰水型原子炉(BWR)の2方式がある。PWRは放射性廃棄物の発生量が比較的少ないため、世界の原発の約7割が採用しており、アレバはその最大メーカーだ。欧米では原油高を背景に原発建設を推進・再開する動きがあり、電力需要が急増している中国も原発建設に積極的だ。三菱重工業とアレバは、提携で開発コストを抑え、米国や中国などで新規受注の拡大を目指す。

■沸騰水型と加圧水型の違いは、発電用タービンを回転させる高圧蒸気が原子炉内の核燃料に直接触れているか、蒸気発生器の内部で熱だけを貰って出て来るかの違いです。放射能を帯びている水を原子炉内部に閉じ込めている加圧水型の方が、理論的には安全だという認識が広まっているというお話ですが、炉心が暴走したらどちらもアウトなのですが……。


……WHは世界の原発の主流である加圧水型原子炉(PWR)技術を開発した「本家」で、三菱重工業はWHとの提携で今日の自社技術を築いてきた。しかし、これまで「沸騰水型原子炉(BWR)」方式を得意としてきた東芝は、54億ドルという破格の買収額を提示してWHを買収し、PWR方式への進出を打ち出してきた。東芝の意向によっては、三菱重工とWHとの提携関係が打ち切られる可能性がある。国内原発メーカーにとっての主戦場は、国土が狭く電力需要が頭打ちの日本ではなく、米国や中国などの海外市場に移っている。……
2006年10月16日 読売新聞

■どちらの方式にも対応できる東芝勢に対抗して、三菱重工は欧州と組んで世界市場に挑むという構図になり、そこに日立とGE連合が絡んで原発受注を競うというわけですなあ。


……世界の原発は今後20年間に100基程度の建設が見込まれ、急速に需要が伸びる見通しだ。今後予想される受注競争に向け、東芝は米ウェスチングハウス(WH)を買収し、三菱重工業は仏アレバと業務提携するなど、原子力業界の再編が加速している。
2006年11月14日 読売新聞

■「100基」もの高価な発電設備が国境を越えて売ったり買ったりされるのですから、裏工作資金やらリベートやら、昔のロッキード事件どころではない怪しげな事が起こっていても不思議では有りません。特に余り民主的でない政治形態を持つ国ならば、独裁者に露骨な賄賂や贈り物が用意されるでしょうし、そういう国には元気なジャーナリズムは存在しないのが普通ですからなあ。


AP通信によると、北朝鮮の金桂寛(キム・ケグァン)外務次官は9日、平壌を訪問中のビル・リチャードソン・米ニューメキシコ州知事一行と会談し、2月の6か国協議で合意した寧辺の核施設の停止・封印など「初期段階の措置」について、60日間の期限内に作業を終えるのは「非常に難しい」との認識を示した。北朝鮮高官が期限内の履行は困難との見通しを示したのは初めて。一方で金次官は、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」で凍結されている北朝鮮関連資金が戻れば、寧辺の核施設に対する国際原子力機関(IAEA)の査察官を直ちに受け入れる考えも示した。
4月9日 読売新聞

■この報道から、たったの2日でマカオの銀行口座は北朝鮮が好き勝手に使える状態になってしまいました。やっと合意に到った「60日」という期限を自分の責任で破られてしまっては米国としては面子丸潰れですから、何がなんでも予定通りに「寧辺」は止めたい立場を完全に見透かされていたという事でしょうなあ。

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原発狂想曲 其の壱

2007-04-12 08:49:30 | 日記・雑学
■地球温暖化の原因が化石燃料から発生する二酸化炭素だという主張が世界的に共有されているのですから、食糧から抽出したバイオ燃料やら、風や波や地熱を利用した自然エネルギーやら、新顔の燃料電池も含めて技術的な問題とそれ以上に深刻なコストの問題を考えれば、当面の需要を賄うには原子力発電に頼るしかない、というコンセンサスが形成されるようになっております。使用済み燃料の処理や、廃炉後の解体と高レベル放射性物資の長期間に亘る管理までを含めた全コストの計算をうやむやにしてでも、何故か切り札は原発だ!という事になっているようです。

■出ては消える「石油の枯渇」という、誰かさんが濡れ手に粟の暴利を貪れる変な噂話も、だんだん真実味を帯びているとも言われますから、現在は産油国として名を成している国々も、イザ!という時のために原発が必要だ!と言う主張には一理あることになります。


イランのアガザデ原子力庁長官は9日、同国中部ナタンツの核関連施設で演説し、同国が進める核開発計画に関連して、産業規模のウラン濃縮活動を開始したことを明らかにした。同長官は核開発の進展を祝う式典で、「われわれはウラン濃縮活動が産業規模に入ったことを祝うため、きょうここに集まった」と述べた。アハマディネジャド大統領も演説する予定。 
4月9日 時事通信

■自慢の遠心分離機3000基が稼動したという事なのでしょうが、ずらりと並べられた設備は、悪名高いパキスタンのカーン博士の設計による物だと言われていますし、それ以外の技術は欧州から誰かさんが売り込んだ物とされているようです。欧州の某国は、自分が売って設けた設備から生み出される核弾頭が中距離ミサイルに載せられるのを心配しているというわけです。中でもドイツがイランの原爆を心配しているとか……。イランの大統領は国際世論が厳しさを増しているのを承知で「NPT脱退」まで言い出したそうですぞ。北朝鮮問題が小康状態になろうとしている時期に合わせているような動きが気になりますなあ。


タス通信によると、ロシアのイワノフ第1副首相は9日、世界初の水面に浮く原発を10年までに建設し、ロシア北西部アルハンゲリスク州のセベロドビンスクに導入する計画を明らかにした。計7基の浮上型原発を造り、極東などで使用する計画という。ロシアは浮上型原発を船でけん引して国外への輸出も狙っている模様だ。
4月9日 毎日新聞

■原子力潜水艦と原子力船で米国と張り合っていた旧ソ連の技術がそのまま残っているのですから、推進装置に使っていた原子炉を大きくすれば船内では使い切れないほどの電力が得られるのも当然です。でも、原子力潜水艦の「後始末」に関しては世界で最悪と言われるロシアですから、安全性や環境汚染に対する設計思想が確立されているのかどうか、これが大問題ですなあ。海に面している国々は当然ながら、内陸国でも大河を持っていればロシア製の浮き原発を買い入れることが可能でしょう。しかし、それはテロ攻撃の恰好の標的とされるのも当然の話で……。ところで、この新製品を購入したらロシア製の核燃料も買えるのでしょうか?

■その核大国のロシアに、日本の企業が合併話を進めているというのですから驚きますなあ。


東芝がロシアでの原子力発電所の建設参入を目指してロシア側と行ってきた提携交渉で、発電機などの原発用機器の工場をロシア国営企業と合弁で設立することが(4月)9日、明らかになった。来日中のロシアのセルゲイ・キリエンコ原子力庁長官やアトムプロムの関連会社首脳が12日、東芝幹部と会談し、大筋合意する見通しだ。日本企業が、海外で原子力発電用の機器を生産するのは初めてとなる。

■東芝とロシアという組み合わせと聞きますと、クリントン時代の米国が仕掛けて来た「スクリュー音減少」の言い掛かり謀略が思い出されますなあ。本当は次期戦闘機を独自に開発しようとしていた日本の航空界を邪魔するためにでっち上げたトンデモない話だったと言われていますが、世界中で原発建設競争が始まっているので、今回の合併話は邪魔されていない模様です。

ブッシュ包囲網 其の弐

2007-04-11 19:12:16 | 外交・情勢(アメリカ)

イラクのマリキ首相が10日の毎日新聞との単独会見で、米・イラン間の「橋渡し役」を買って出た背景には、「内戦」状態にある自国の宗派間抗争の収束には隣国イランやシリアの協力が不可欠にもかかわらず、両国と、イラクの治安責任を負う米国との緊張関係に変化がみられないことへの焦りがある。

■万一米国がイラクから撤収しても、それと同時にイランとの戦争などが始まったらイラ・イラ戦争の再現になってしまう可能性が有ります。治安活動を共同で行っている新生イラク軍は、隣国に攻め込む米軍に協力するのも、ましてやイランの側に立って助太刀するわけにも行かないでしょう。では、高見の見物をしていられるか?と言われたら困るでしょうなあ。ず


一方で国内には、首相の施策に異を唱える声もあり、国民融和への道はなお遠いのが現状だ。イスラム教シーア派のマリキ首相は、シーア派国家イランと深い関係にある国内勢力を権力基盤とする半面、駐留米軍の武力なしに治安を維持できないという「板挟み状態」にある。米・イラン間の懸け橋は、こうした状況を切り抜けるための手段といえる。

■米国は宗派間の対立を利用しているわけではなく、反フセイン勢力を中心として新しい政府を立ち上げたばかりに、軍隊や警察の重責を担うポストに弾圧されていたシーア派の人達が就いてしまっただけの事でしょう。しかし、それを冷静に受け入れられないスンナ派の立場も分かります。


ブッシュ政権の駐留米軍増派とイラク軍による、バグダッドを中心とする集中的な武装勢力掃討作戦を受け、マリキ首相は「宗派間対立は急激に減少した」と強調するが、米軍撤退の明確な予定を示せないのが実情だ。さらに掃討作戦を巡っても、スンニ派からはシーア派民兵組織マフディ軍などへの対応の甘さも指摘されている。先月来日したハシミ副大統領(スンニ派)は毎日新聞の取材に、「(国際テロ組織)アルカイダとマフディ軍は同じように掃討しなければならない」と不満を語った。

■一時はマフディ軍の中核を成す人々がイランに逃走したとの情報も流れましたが、バグダッド市内には彼らの自治区域が厳然と存在しているのです。少なくとも米軍が手出ししなければ、サドル派が抑えている区域だけは自前の治安維持組織が機能していると言われています。でも、武装している事では、過激派もスンナ派もマフディ軍も同じですからなあ。


これに対し、マリキ首相は「(イラクの治安における)最大の危険は、シーアやスンニを名乗り、双方を攻撃しているアルカイダと(旧フセイン政権の残党)バース党だ」と繰り返し、宗派間抗争の最大の責任は両派外の「外敵」にあると主張した。また、北部クルド地域の境界線問題でも、マリキ首相の見解はクルド側の主張と大きく食い違う。油田都市キルクークの帰属を求めるクルド地域政府のバルザニ議長に対し、マリキ首相は「現時点でキルクークが特定の地域に帰属するなどと言うべきではない」と不快感を隠さなかった。「今の住民はもともとキルクークに住んでいた人たちではないかもしれない」とも述べ、石油権益維持を狙うクルド側に強い警戒感を示した。
4月11日 毎日新聞

■テロ攻撃が起これば、その真犯人が特定出来ずとも、被害者側には明確に敵のイメージが浮かんでしまいます。正体不明のままテロ事件を起こせば、宗派間の疑心暗鬼はどんどん膨らんで行きます。まあ、出来ればこのままスンナ派とシーア派が目に見えない境界線で棲み分けて共存してくれれば良いのですが、伝統的な部族間の縄張りがひどく偏った油田分布を包み込んでいるので、完全に棲み分けが行われれば、今度は支配地を巡って本物の内戦が起こる危険が有ります。クルド人はスンナ派とシーア派の喧嘩を余所に、粛々とキルクークの大油田地帯を自分達の「領土」にしてしまう工作を進めているようですなあ。

■ブッシュ大統領としては、「キルクークはクルドの物でもスンナ派の物でもない!それは米国のものだ!」と言いたいのかも知れませんが、それを言ってしまったら、戦争目的が単なる「石油利権」の獲得だったと白状してしまう事になりますからなあ。かと言って、「中東民主化」を米国流に進めて「連邦制」を提案などしたら、それこそ火に油を注ぎこむことになります。スンナ派とシーア派の対立に石油利権の分割運動が重なったら、産油インフラが自国民の手によって破壊されてしまう心配が有ります。安倍総理が「北部クルド地域での電力事業復興計画など二つのプロジェクトに対し、総額577億円の円借款を行う方針」を打ち出した事が、クルド地区に対する他の地位からの憎悪を強めてしまう結果になったら何にもなりませんなあ。

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ブッシュ包囲網 其の壱

2007-04-11 19:11:45 | 外交・情勢(アメリカ)
■温家宝さんが来日して、「戦略的互恵関係」などと言う分かったような分からないような玉虫色の外務省的表現で友好ムードを演出するつもりが、さっそく「台湾問題」で躓いているとか……。日中関係を邪魔しようというわけでもないでしょうが、米国の通商代表部は知的所有権問題に関してとうとうWTOに提訴してしまいましたぞ!加盟を望んだ北京政府は、海賊版商品の根絶など不可能だと分かっていたはずですが、加盟を助けた米国の方は大真面目にWTOの諸規則をチャイナが遵守すると思っていた節が有りますなあ。これは大問題に発展しそうです。

■台湾問題で日中間に隙間風が入るくらいが米国にとっては丁度良いのでしょうが、北朝鮮問題となると風向きがガラリと変わります。マカオの怪しい銀行口座に関しては北朝鮮側の要求を大急ぎで丸呑みしてしまった米国に対して、今度は日本が新たな拉致事件について毎日「新情報」を連発しております。日米間の適度な離間が望ましい北京政府は、首相来日直前になって拉致問題に関しての「協力」を発表する大サービスです。米国としては自分達が大きな飴を用意したのですから、北京政府からは少々冷たい風が吹いてくれた方が具合が良いでしょうなあ。

■ブッシュ大統領にとってはイラクの占領を継続し、兵力もじゃんじゃん増強して大失敗を糊塗しなければならないので、北朝鮮の件は日中間の綱引きに任せて置きたいところでしょう。


旧フセイン政権崩壊4周年に当たる9日、イラク中部のイスラム教シーア派聖地ナジャフで、シーア派住民の大規模な反米デモが行われた。参加者らは米国旗を焼いたり足で踏みつけたりして、「ブッシュ(米大統領)を倒せ、米国を倒せ」などと叫び、気勢を上げた。デモは、シーア派強硬指導者ムクタダ・サドル師が呼びかけた。女性や子供を含む数万~10万人が参加したとみられ、シーア派内での同師の影響力を誇示しようとするものだ。中部ディワニーヤでは数日前、サドル師派の民兵組織マフディー軍と米軍、政府軍の戦闘が発生。サドル師派は兵士や警官に味方につくよう呼びかけている。一方、イラク政府は9日早朝から24時間、首都バグダッドで車両による外出禁止令を出し、テロ警戒の厳戒態勢をとった。
4月10日 産経新聞

■爆弾怖さに「自動車禁止令」が出されたら、胸を張って徒歩で集まれば良いだけの話、ついでに歩行者が体に巻きつけた爆弾を炸裂させる騒ぎまで起こっているようです。現地で反米デモが起こっているかと思えば、米国の軍中枢部からもブッシュ政権に対する不信感が湧き出しているようです。


11日付の米紙ワシントン・ポストは、イラクとアフガニスタンにおける戦闘を一手に指揮する強力な軍最高司令官ポストの創設方針をホワイトハウスが固め、具体的な人選に入ったものの、候補に名の挙がった少なくとも3人の退役大将は「どんな苦労をするか知れたものではない」と尻込みし、次々に辞退していると報じた。長期化する両国での戦闘が米軍の重い負担となっている状況下で、最高司令官人事にも難航するブッシュ政権の苦境を物語るものだとポスト紙は指摘している。
4月11日 時事通信

■以前に司法分野の人事でも手古摺っていたブッシュ大統領でしたが、とうとう軍の最高司令官としての人事任命権も怪しくなっているようですなあ。大将が嫌がる戦争に駆り出されている将兵は、こんなニュースを聞いたらどんな気分になるのでしょう?建国以来、ずっと戦争を続けて来た米国の歴史の中で、ライヴァル間の足の引っ張り合いは時々起こったようですが、作戦の最高司令官が次々と「辞退」するような騒ぎは、余り聞いたことが有りません。勝利無き戦争に幕引きする役回りになった大統領は往々にして悲劇に見舞われることになっている米国ですが、「増派」を始めた段階でこんな事態になってしまうとは、ブッシュ政権はこれだけでも充分に歴史に残りますなあ。


米民主党のリード上院院内総務は10日の記者会見で、イラク駐留米軍の撤退期限を盛り込んだ戦費法案について、「われわれは国民の声を代弁している。ブッシュ大統領は拒否権で脅しをかけるのではなく、議会と交渉すべきだ」と述べ、撤退期限条項の削除には応じない考えを強調した。 
4月11日 時事通信

■開戦当初は、国中が愛国心で盛り上がっていた頃とは何もかもが変わってしまいました。「国民の声」がイラクからの早期撤退に傾いているのは確かなようですから、民主党は絶好の追い風を得たようなものです。でも、米国議会は与党も野党も挙国一致でブッシュ支持!を叫んでいたはずですから、反対に回る議員は反省の弁を述べてからでないと、真正面から反対を主張するわけには行かないはずですぞ!世論を利用して撤退を主張している議員の中に、本当に早期撤退したらイラクがどうなるのか?という大問題を真面目に考えている人物が見当たらないのが心配です。愚かな戦争を始めることより、その愚かな戦争から後先考えずに手を引くのは、もっと危険なことだと考えないのは、非常に無責任です。

■民主党のオバマ候補は、たまたま改選時には議員ではなかった事を最大の武器にしているそうですが、それは余りにご都合主義ではないでしょうか?その尻馬に乗っている議員達はもっと破廉恥な輩かも知れませんなあ。一方的に勝っている間は主戦論で、苦戦が始まったら反戦論、どちらもイラクの住民にとっては迷惑な話です。本当に現地はどうなっているのか?と訝しんでいる向きには、丁度良いところでマリキ首相が来日してくれました。

変な記念日 其の弐

2007-04-09 21:10:44 | 政治

イスラム教シーア派の反米指導者サドル師が予定する9日の大規模な反米集会に参加するため、イラク中南部の聖地ナジャフに8日、数千人のイラク市民が集結している。サドル師は、イラクで暴力が絶えないは米軍率いるイラク侵攻が原因だとし、米軍によるバグダッド侵攻から4年を記念してイラク市民に抗議を呼びかけている。…

■イラン絡みでシーア派を目の敵にしている米軍に対して、「民主的」な集会で反対を表明しようとしているサドル派ですから、これを無碍に弾圧するわけには行きますまい。米本土でも「反戦」デモがあちこちで見られるようになっているのですからなあ。


米軍によると、8日にバグダッド南部での攻撃で米兵4人が死亡したほか、バグダッド北部での作戦行動中に負傷した米兵2人も死亡した7日には、バグダッド北部ディーワーニーヤで爆発により米兵4人が死亡している。イラク当局によると、バグダッド南部で自動車が爆発し、17人が死亡、20人以上が負傷。ほかにも車を使った自爆攻撃で7人が死亡している。サドル師は、米軍がイラク内紛を故意に煽っているとし、自ら率いるマハディ軍とイラク治安部隊の双方に対してディーワーニーヤでの戦いを中止するよう求めた。
4月9日 ロイター

■前掲の毎日新聞記事では、米兵10人の死亡だけが報道されていましたが、更に詳しい地名入りのこの報道を読むと、米軍はバクダッド市内で南北から挟み撃ちに遭っていることが分かります。南部はシーア派の地域と言われていますから、米軍を狙う振りをして序(つい)でにシーア派住民を殺害しようとしている勢力が暗躍しているのでしょうなあ。


8日付の米紙ワシントン・ポストは、「あなたが読んでいない戦い」と題するマケイン上院議員(共和)の投稿を論説面に掲載した。2008年大統領選挙の有力候補の1人でもある同議員はこの中で、イラクの状況が以前に比べて改善されたと指摘。「メディアがほとんど報道しないので国民はこのことを知らされていない」「戦いの戦略的方向性に関係のない自動車爆弾攻撃などにより大きな注意を払っている」とマスコミ批判を展開した。……

■「以前に比べて」という所がミソでしょう。一体、どこの時点と比較して「改善」されたと言うのでしょう?内戦だ!自動車爆弾攻撃を米国の「戦略」に対する攻撃だとは考えないのなら、犠牲者はまだまだ増えそうですから、マスコミは尻馬に乗って「安全」報道など出来ないでしょう。4周年を一区切りとして、英米のジャーナリストが現地取材に入りましたが、英国の軍隊にがっちりと守られていても決死の取材だったようですからなあ。


同議員は、バグダッドを最近訪問した際の印象として、治安状況が大幅に改善していることや米軍との協力が進展している点などを挙げ、「米国は初めて正しい戦略を策定した」とブッシュ大統領の増派が機能し始めていると強調した。 
4月9日 時事通信

■増員が「初めて正しい戦略」なら、この意見はブッシュ政権を批判していることになりますぞ!最初からパウエルさんが主張した30万から50万人の兵力を投入しておけば、国境警備も国内の武装解除も短期間に済ませられたはずです。社会生活の基盤を破壊されて住民の憎悪を掻き立てるだけの「空爆」を何年も続け、地上戦になったら政府中枢だけを壊滅させて権力の空白を作り出せば、民主的な雰囲気よりも重石が取れた対立と憎悪が噴出してしまうのは分かっていた事です。幸いにも、日本はどの勢力とも対立関係に無い事になっていますから、米国とは別の「復興」政策が打ち出せるチャンスかも知れませんが……。


久間章生防衛相は9日午後、都内のホテルでイラクのマリキ首相と会談した。マリキ首相は、自衛隊派遣など日本政府の復興支援に対する謝意を表明。また、国内の治安回復に最大限の努力をする考えを示すとともに、「日本企業のイラクでの活動再開を希望する」と要請した。これに対し、久間氏は「イラクが復興し治安が安定すれば、政府、民間とも一層の貢献をしたい」と応じた。 
4月9日 時事通信

■イラクの「復興支援」を任務として陸上自衛隊が派遣されたはずなのですが、現段階でも「復興」が未来の事として語られているのは如何なものでしょう?これでは自衛隊の派遣がまったく無意味だった事を防衛大臣が認めているように聞こえますぞ!「治安が回復すれば」などと言っていたら、実質的には門前払いを喰わせてしまった事になります。これでは来賓に失礼なのではないでしょうか?相手が勝手に物乞いに来たんだ!と言わんばかりの対応をするのなら、最初から来日をやんわりと拒否した方が親切というものでしょう。誰がこんな外交日程を組んだのでしょう?

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変な記念日 其の壱

2007-04-09 21:10:06 | 政治
■日本では統一地方選が一段落しまして、結局、マスコミが煽り立てるほどには投票率は上がらず、過去最低を記録した選挙区も有ったそうです。日本中に報道された東京都知事選も、一向に争点が絞られず、東京の首都がどうなるのか?さっぱり分からず、勢いづいている都市再開発をオリンピック誘致で更に加速させよう!などと、誰かさんが「バブルの夢をもう一度」と期待に胸を膨らませるような話題ばかりが取り沙汰されましたが……。今のところ、大規模テロ攻撃を受ける心配は無さそうだと思われるている東京ですから、景気の良い話が受けるのかも知れません。

■印象としましては、マスコミが面白おかしく「対立候補」達を取り上げた影響で、投票率は上向いたものの、いざ投票となったら消極的な減点法でしか候補者を決められない選挙民が多かったのではないでしょうか?マスコミの商売上、ライヴァル視されていた浅野候補でしたが、「宮城出身」ばかりが強調され続けて東京なりのナショナリズムに火を着けて、排他的な選別行動を惹起(じゃっき)したのかも知れませんなあ。夕張市を見棄てた現職知事が再選された北海道から、岩手県以外は揃って現職が当選しました。岩手県も反自民の流れではなく、小沢一郎さんの子飼いだったから当選しただけとも思われます。全体的にダイナミックな選挙にはならなかったようですなあ。

■何事も集中豪雨的に報道するのが日本のマスコミなので、選挙翌日にイラク首相がイランに妨害されながら、苦労して来日していると言うのに、もう終わってしまった選挙の残滓を優先させているようです。


天皇陛下は9日、来日中のイラクのマリキ首相と皇居・宮殿で会見した。マリキ首相が「断固たる措置をとるつもりです」と語ると、天皇陛下は「首相としてご苦労が多いことと察します」とねぎらった。また、天皇陛下は「国づくりが進み、イラク国民が平和に、幸せに暮らせることを願っています」と述べた。
4月9日 毎日新聞

■石原都知事を奪い合うようにテレビやラジオが、変わり映えのしない「勝利の弁」を放送していた間に、皇居ではちゃんと天皇陛下がイラクの首相に温かいお言葉を掛けていたのでした。イラク復興は進んでいるのかいないのか、駐留軍はいつまで治安活動を続けるのか、日本の航空自衛隊はどうなるのか、統一地方選ではまったく争点になどならないのは当然ながら、重要な政治課題なのですが……。


米軍の進攻から4年目を迎えるイラクの首都バグダッドでは、9日から24時間の自動車による外出禁止令が敷かれる。イラク軍関係者が8日、明らかにした。バグダッドでの武装勢力掃討作戦を進める米軍とイラク治安部隊のスポークスマンは「4周年に当たり抗議活動が行われるだろう。テロリストにこの機会を利用させたくない」と語った。自動車の使用禁止令は、現時時間9日午前5時から翌日午前5時までの24時間実施されるという。

■戦争が始まった時は、サダム・フセインの悪政から解放された人々が歓呼の声で米軍を向かえ、感謝の言葉が雨あられ、となる筋書きでしたが、4年目の記念日に祝いの花火が上がる可能性はゼロで、盛大な爆弾テロは間違いなく発生すると誰もが思っているわけです。国内の指示も信頼も得られないマリキ首相自身が、4周年の記念式典を開くどころか、復興資金を出してくれそうな日本にお願いにやって来たのですから、イラクから見れば、日本の存在は相当に大きいと考えねばなりませんぞ。


イラク駐留米軍によると7、8日の両日、米兵10人が死亡した。AP通信が伝えた。バグダッドでは8日、路上の仕掛け爆弾で3人が、武装勢力の攻撃で1人が死亡した。首都周辺部での戦闘でも2人が命を落とした。7日にはバグダッド北東のディヤラ県の路上で爆発が起き、4人が死亡した。
4月9日 毎日新聞

■現地では、4周年記念の日に向けて尻上がりに爆弾テロが増加する傾向が見えたのですから、世界有数の産油国に「自動車禁止」が出さねばなりません。少なくともサダム・フセイン時代には、イラクの首相が物乞い外交をする事など有りませんでしたなあ。米軍が湾岸戦争以来、ずっと空爆して破壊した社会インフラの多くは、元々、日本のゼネコンが受注して建設したものだったのでした。でも今は、法律を破ってでも仕事が欲しい日本のゼネコンでも、イラクからの仕事は請けられないでしょうなあ。

お花祭りに青海チベット鉄道

2007-04-08 20:27:14 | チベットもの
■本日の午前中にNHKのBS放送で「青海チベット鉄道」に関する番組が観られると知り、半分ばかり観ましたぞ。4月4日にラサから青海省の西寧まで、途中下車しながら移動した記録映像を挟み込みながら、西寧からの生放送という斬新な?企画でした。列車内の映像は、先に放送された特別番組に比べれば相当に遜色が有るのは仕方が有りませんが、西寧に到着した後に氷が融け始めた青海湖の岸辺に立った映像はちょっとした見物でした。生憎の曇り空でしたが、岸に打ち上げられた氷片の山と、それを舐めている羊の群が観られました。でも、夏の風景を知らない人があの画面を見ると、青海湖はただ大きいだけの殺風景な場所だと思われてしまいそうですなあ。

■この番組は『関口知宏の中国鉄道大紀行~最長片道ルート36000キロをゆく 「西寧」』と言うのだそうです。何でも、日本国内の鉄道を乗り継ぐ番組の企画をそのまま大陸に延長したもののようですが……。テレビ朝日が長々と放送している『世界の車窓から』のような安定感も味わいも無い、妙に忙しい印象の番組のようです。御本人は取材の裏話風に苦労話をおずおずと披露しているのですが、どうも、論より証拠で「列車内で寝て食べているだけ」の番組になってしまっていましたなあ。用も無い物見遊山の長旅が、どれほど空虚なものかを教えてくれる貴重な番組と思って観ていれば、それほど腹も立ちません。

■時節柄、ヤラセが有ったか無かったかは問わないことにしても、西寧の市場街での「生中継」は、一体、この街の何を伝えたいのかさっぱり分からない薄味の内容になっていたようです。市内の何処からでも見える急な崖地に作られている「北禅寺」の石段に挑戦したのは御愛嬌で、漢族の仏教寺院として建立されてから、紆余曲折を経て今は道教の「道観」になっている、なかなか見栄えのする宗教文化の貴重な遺産ではあります。でも、西寧は道教の都市ではありません!イスラム回族の見事なモスクが圧巻ですし、実際に、市場街で焼き芋やら民族衣装の買い物で「値切り」技術を習得する場面で、白い帽子を被った回族が何人も行き過ぎていましたぞ。勿論、チベット仏教の僧侶も1人2人と通り過ぎていましたなあ。

■あの市場の近くに、チベット仏教の歴史上、非常に重要な「場所」が有るのですが、そこは現在官庁所在地になっているので取材は難しいのでしょうが、少なくとも他民族都市の姿を映し出して欲しかったですなあ。西寧には僅かながらも日本人が滞在して居るのですから、少しくらいは紹介しても良かったのではないでしょうか?演出なのか、単なる準備不足なのか、ばたばたとぎこちなく進む番組の流れを見ていると、青海チベット鉄道の「終着点」以外の意味を西寧には見出せない企画のようですから、情報量としては遺憾ながら僅少でありました。

■唯一、キラリと光った場面が有りましたぞ!誰が読んで来たのか、小ぶりのチベット・ギターを奏でながら唄っているチベット人の青年をカメラは捉えました!関口君が「先生」と呼んでいる鉄道旅行のガイド兼通訳の女性に、実に天真爛漫、能天気、ものを知らないこと甚だしい爽やかな日本人青年らしく、歌の意味を知りたいと無茶な要求をしました。青海湖畔で羊の群を追っていた年齢不詳のチベット牧民でさえ、ちゃんと「北京語」での質問に答えられていたのですが、省都の西寧の市場で歌っている青年に、どうでも良い質問を発して通訳を頼んだところ、何と、まったく話が通じない!

■これは一瞬の出来事でしたが、生中継の妙味を感じましたなあ。関口青年は事の重大性にはまったく気が付かない、天真爛漫、世界は一家、人類皆兄弟風の軽い笑顔でカメラの後ろに控えるディレクターさんの指示に従って、「はい、次ですね」という具合に流しましたが……。「先生」は早口でこう言ったのです。


「エッ。ああ、この人はチベット人なので、中国語を知らない。中国語を勉強してない!」

■関口青年は、「ああ、そう」と上の空の生返事をして、誰かの指示に従ってその場を離れて急いで別の場所に向かって歩き出したのですが、この場面を放送したという一点で、この「生放送」企画は大正解でしたぞ!「先生」は、一瞬でしたが、本当にムッとして怒っていました。「北京語が分からない人民」に対して、どう接して良いのか分からないし、その必要も無い!という態度と表情が、実に生々しかったですなあ。でも、相手は一張羅の民族服を着て、民族市場の一角に陣取って、チベット民謡の弾き語りをして多少の現金収入を得ようとしている、恐らくは牧民の青年です。どうして、日本のテレビ相手に北京語を披露しなければならないのでしょう?青年が爪弾くチベット・ギターの金属的な澄んだ音は、なかなかのものでしたし、カメラが捕らえた歌の一節も、「お捻り」を要求するには充分なものでしたぞ。

■中華人民共和国の中では北京語が「何処でも」通じる、などと誰がディレクターさんに教えたのでしょう?万が一、あのチベット青年が、本当は北京語の日常会話ぐらいは易々とこなせるのに、あの場面を利用して知らん振りしたとしたら、ちょっと、その後の展開が心配ですなあ。でも、画面から表情を読んだ限りでは、彼は本当に北京語をまったく知らないようでした。かく言う旅限無も、青海省で4年も留学生活を過ごしながら、とてもじゃありませんが、北京語で生活など出来ません。その詳しい謎解きは、拙著『チベ坊』でお読み下さい。

■釈尊の誕生日のお花祭りには、特段の意味が無くなってしまった日本ですが、折角、この日に西寧から生放送をしたのですから、青海湖の風景も結構ですが、もっと近いところに名刹のフクン・ブム(タール寺)が有るのですから、ラサからの鉄道旅行の終着点として西寧を紹介して頂けるのなら、初代ダライ・ラマの御師匠様に所縁のあるお寺を紹介して欲しかったですなあ。「ラサから西寧」という括り方を、「ポタラ宮からタール寺へ」という風に変えれば、新しい鉄道が完成した意味を、別の角度から知ることが出来たかも知れませんからなあ。


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外交の表と裏 其の壱

2007-04-08 14:41:26 | 外交・世界情勢全般

6カ国協議筋は7日、マカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されている北朝鮮の資金返還問題をめぐり、訪中していたグレーザー米財務次官補代理(テロ資金・金融犯罪担当)と北朝鮮、中国との間で行われていた折衝は決着がつかなかったことを明らかにした。同筋は6カ国協議の米首席代表を務めるヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が近く北京を訪れ、北朝鮮側と協議するとの見通しを示した。

■マカオで凍結されている口座のカネが、北朝鮮の核開発問題とリンクしてからは、すべてが上手く行くような話になったものの、直ぐに送金問題が障害となって絶望的な見通しが報道され、今度は「打開策」が見つかった!と糠喜びの話が出て、やっぱりダメか?という何とも頼りない迷走が続いているようです。


2月の6カ国協議で合意した寧辺の核施設の稼働停止・封印などの「初期段階の措置」の期限が14日に迫っているが、北朝鮮の求めるBDA問題が解決していないため、期限内実施は事実上、不可能となった。……マコーマック国務省報道官は6日、記者団に「解決する技術的方策が見つかった」と述べ、一定の進展があったとの認識を示した。ただ同報道官は資金の返還実施に関しては「米国は積極的な役割は果たさない」と述べ、中国やBDAを監督するマカオ当局に委ねる姿勢を示した。……当初、北京にある中国銀行の朝鮮貿易銀行口座に送金することで米朝が合意したが、中国銀行側が拒否。中国銀行のマカオ支店への送金、香港の金融機関のマカオ支店への送金などの解決策が検討されたが、最終的な決着には至っていないという。……
4月8日 産経新聞

■そこでヒルさんがまたまた日本、韓国、中国の間を飛び回ることになったのだそうですが、恥の上塗りにならなければ良いですなあ。これまでは、1人で相撲を取って転んでばかりのヒルさんです。それは彼個人の資質の問題ばかりではなく、元々、欧州専門の外交畑を歩いていた人を北朝鮮との直接交渉役に抜擢した誰かさんの責任でしょうし、米国政府自体も北朝鮮に対する「経済制裁」に徹しているわけではないようですから、ヒルさんの醜態は米国政府の姿が反映しているだけなのかも知れません。


米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7日、北朝鮮が今年1月、エチオピアに極秘で武器を輸出していたと報じた。米政府は、エチオピアがイスラム過激派を相手にした対テロ作戦を進めていることから、武器取引を把握しながら黙認していたという。

■1月と言えば、米朝がベルリンで秘密交渉をしていた時期であります。その場でマカオの銀行口座の凍結を解除する口約束が出来ていたとされていますし、米国から提示された条件は「イランにミサイル技術を渡さない」というものだったとも言われています。逆に言えば、「イラン以外で商売してほしい」という意味にも取れますなあ。


昨年10月の北朝鮮の核実験を受け、米政府は国連安保理で採択された制裁決議の着実な履行を各国に促してきただけに、二重基準ぶりが問題となりそうだ。同紙によると、中央情報局(CIA)は1月末、旧ソ連型戦車の部品や装備を載せたとみられるエチオピアの貨物船が北朝鮮から出港したことを察知。しかし、政権内部で対応を協議した結果、これを阻止しない方針が決まった。エチオピアは、隣国ソマリアを拠点とするイスラム過激派との戦闘に使用するため、北朝鮮から安価な武器を購入していた。対北朝鮮制裁決議の採択直後、エチオピア政府は米側に対し、「武器の取引先を変える必要性は分かっているが、急には変えられない」と通告していたという。 
4月8日 時事通信

■「敵の敵は味方」という鉄則は貫かれているようで、米国は直接関与していないので、レーガン時代の「イラン・コントラ」疑惑とは質が違う事件と言えそうですが、対テロ戦争に使う武器なら「テロ支援国家」が売っても良い?という話になりますなあ。エチオピアが「急には変えられない」と通告しているのが本当なら、「ずっと昔から」取り引きをしている事を意味しますし、旧ソ連製兵器の部品がアフリカに送り込まれているのなら、同じ規格でたくさんの武器を製造している中国からも、あれこれと輸出されているはずですなあ。「表」で積極的なアフリカ外交を展開している「裏」には、そのような取り引きも有るのでしょう。米国が文句を付けない相手を見極めて武器商売をしていると考えられますなあ。

■国連がいくら監視団を送っても、「裏」から大量に武器が供給されているのなら、アフリカ各地の紛争は終わりそうもありません。アフリカでの対テロ戦争用に輸出された武器の決済が、問題のマカオの銀行口座で行われていたとしたら、それも「合法的」な預金として扱われているのでしょう。そんな物騒な交渉を「裏」でしている6箇国協議で、日本は何を言えば良いのでしょう?

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外交の表と裏 其の壱

2007-04-08 14:40:59 | 外交・世界情勢全般
■これから100万トンの原油をタダで貰って盛大に燃やそうと勇んでいる北朝鮮の問題がややこしくなる一方で、久し振りに来日する中国首相はお土産として、『京都議定書』の次に用意されている地球温暖化防止に関する国際協約には積極的に参加する決定を持ってくるとか……。多少は地球温暖化現象と二酸化炭素の排出量との因果関係には疑念は有るとは言うものの、国際的な合意に決定的な影響力を持っている国々が参加しないよりは、積極的に参加してくれる方が良いに決まっております。我がままばかり言っているように見える米国でも、幾つかの州政府は果敢に環境問題に取り組んでいるのですから、『京都議定書』を足がかりにして、環境対策が加速して行きそうな気配です。

■でも、中国首相を迎える安倍総理の口から「エネルギー、環境、朝鮮半島の問題」での具体的な協力関係を構築したい、などと早々に発表されると、北朝鮮問題を餌にして日本からの技術援助を引き出す外交戦術に、本番前から日本が乗せられているような気もしますなあ。「エネルギー問題」などと遠回しに言わず、「尖閣諸島」の名前を出しておかないと、手遅れになる心配もありますなあ。外交の最優先課題は「領土問題」なのですから……。


地球温暖化で北極の氷が溶けるとの予測が出るなか、カナダとデンマークの間で、極北の無人島をめぐる領有権争いが過熱してきた。デンマーク領グリーランドとカナダ領エルズミア島を隔てる幅40キロほどの海峡の中ほどに位置するハンス島。近い将来、この海峡の氷が溶けて北米と欧州、アジアなどを結ぶ「北極航路」の要衝に一変すると、この小さな島をめぐって資源探査や漁業権といった国益が生じる可能性がでてきたためだ。

■「北極航路」とは聞き慣れない言葉でしょうが、ロシアが東へ領土を爆発的に広げた歴史の中では、非常に重要な言葉です。原子力砕氷船「レーニン号」などという大失敗も有りましたが、「ベーリング海峡」に名を残す、ヴィトゥス・ヨナセン・ベーリングのオホーツク海から北太平洋の探検以来、北極海の氷が緩む夏の期間に北極海の岸沿いに太平洋に抜ける航路の開発が試みられたのだそうです。ベーリングさんは、ロシア海軍に所属していましたが、正真正銘のデンマーク人!今では欧州の小さな半島国家のデンマークですが、バイキングの末裔で北大西洋を走り回った歴史を持ち、グリーンランドという世界一大きな「島」を領有している国です。


AP通信などによると、デンマークとカナダは1973年に海峡の中間に境界を引く合意を結んだが、ハンス島の帰属は保留にされていた。ところが84年、この氷と石の島にデンマークのグリーランド担当大臣が上陸、国旗を掲げてポールの根本に「ようこそデンマークの島へ」とのメッセージを残した。デンマーク軍などの上陸はその後も続いたため、2005年、今度はカナダの国防大臣が兵士とともに上陸して国旗を掲げた。

■「竹島」や「尖閣諸島」と、ちょっと似ている島の領有問題ですが、これくらい分かり易く互いの政府と軍が動くと「交渉」もやり易いのではないでしょうか?片方が一方的に上陸してあれこれ施設を建設してしまうのを遠巻きに眺めていて、ぶつぶつ言っている内に取り返すのなら大き目の戦闘を仕掛けないとどうにもならないような事態になってしまいますからなあ。


……両国は穏当な解決を目指して大きな外交問題に発展してはいなかったが、新たに持ち上がってきたのが地球温暖化の急速な進展予測だ。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は今年2月には、今世紀末までに最大6・4度の気温上昇予測を発表。米航空宇宙局(NASA)は今月、2004年~05年に北極海の多年氷が14%減少したとのデータを公表した。米国学会誌には、2040年夏に北極の氷はほぼ消滅するとの試算も掲載され、北極海をタンカーなどが行き交うことがにわかに現実味を帯びてきた。

■海面下に沈んでしまう島国が有れば、こうして氷の中から現れる島も有るという事です。他人事みたいに黙っているロシアは、念願の「温かい領海」が地球温暖化で国土の北に現れるのです。ユーラシア大陸の地図を上下逆にして眺めてみれば、広大なシベリアには無数の河川が流れていて、それらは氷の海に流れ込んでいるのが分かります。シベリアの探検や開発は、常に河川を利用して進められて来たのですが、結氷しない大河と北の海岸とが常時利用できるようになると、内陸のパイプ・ラインと「北極航路」の2本立てで交易活動と軍事行動が可能となりますなあ。


北極海を挟んで米大陸とユーラシア大陸は対岸にあり、航路が開かれるメリットは計り知れない。北極海への入り口にあるハンス島は地政学的に極めて重要性を位置を占めることになる。新航路ができれば温暖化の恩恵といえるが、一方で同島海域の石油などの資源探査や漁業問題なども絡み、同島をめぐる領有権争いが激しくなれば、それは温暖化のとばっちりといえそうだ。
4月7日 産経新聞

■ユーラシア大陸を、船でぐるりと1周出来るようになると人類の歴史が一変するでしょうなあ。大陸の無い北極海も、これまでは米ロの原子力潜水艦が睨み合っている場所でしたが、これからは海上と空中が解放されることになります。そして、ヴァイキングの子孫達が、北欧のスカンジナビア半島から再び世界の海に出て行くのでしょうか?日本近海でも、ベーリング海峡という蓋が無くなるのですから、オホーツク海と日本海の価値がぐっと上がりそうですぞ。従って、日本海の向こう岸にややこしい国が有るのは、ますます困った事になりそうですなあ。

中華数千年の残影 其の参

2007-04-07 18:50:59 | 歴史

世界的な富豪で、10日間のアジア歴訪で3つのホテルを買収したサウジアラビアのアルワリード王子は5日、ロイターとのインタビューで、中国の消費・エネルギーセクターへの投資についても検討していることを明らかにした。サウジアラビアの投資資金はこれまでも中国に流入してきたが、銀行およびホテルセクターに限られてきた。王子は「中国には潜在的な顧客が13億人いる。数年前は1人当たりの国内総生産(GDP)が数百ドルだったが、現在は毎年増加している」とし、「彼らは車やクオリティーの高い食べ物を求めている。消費財に関連するものならすべてが重要だ」と語った。

■インド洋を制したかつてのアラビア商人達とは違って、オイル・マネーを投資して利潤を上げようとするアラブの王族がやって来るとは、明代に大艦隊を率いて国威発揚に貢献した鄭和が聞いたら、どんな感想を持つでしょう?鄭和自身が南部出身のイスラム教徒で、メッカ巡礼という個人的には宿願を持っていたのは有名な話で、インド洋沿岸の華僑とイスラム商人のネット・ワークを巧みに利用してアラビア半島からアフリカの東岸まで到達した歴史が、こうしたアラブとの縁を結ぶ遠因になっているのかも知れませんなあ。

■アラビア商人はグローバル化の先駆者で、うっかりヴァスコ・ダ・ガマという1人の欧州人に南回りでインド洋に出られる航路を教えたばかりに、全アジアが互恵関係の商業圏ではなく、一方的な収奪を目的とする植民地になってしまったのでした。因みに、ヴァスコ・ダ・ガマはポルトガル人で、欲張りな王様の命令でイスラム商人の裏を掻いてインドから香辛料を仕入れる航路を見つけようと、アフリカ大陸南端に辿り着いたのは、鄭和の大艦隊がインド洋を巡った90年以上も後の話で、欧州では大西洋を南下し続けると恐ろしい怪物に食われるか、世界の果ての大きな滝から落ちてしまうぞ!と実(まこと)しやかに噂されていたそうですが、何とか辿り着いてみると、そこはアラビア商人の貿易拠点として輝いているのでした。未知のインド洋を渡れるかどうか、思案しているヴァスコ・ダ・ガマさんに「渡れるよ」と気楽に教えてしまった人の名は、アハメッド・ビン・マジッドというのだそうです。御子孫はお元気なのでしょうか?

■これからの投資活動は大歓迎でしょうが、昔、欧州人を連れ込んだように、今度はテロリストを連れ込まないようにと北京政府も願っていることでしょう。


王子のアジア歴訪中に、王子が率いる投資会社キングダム・ホテル・インベストメント(KHI)はマレーシア、フィリピン、中国のホテルを買収したが、……中国が外国企業の出資をほとんど認めていないエネルギーセクターへの投資にも関心を示した。世界第2位の原油消費国である中国と、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは、要人訪問や大型契約などを通じてこのところ関係を強化している。サウジアラビアの石油会社サウジ・アラムコ、中国石油化工(シノペック)、米エクソンモービル<XOM.N>は先週、製油と販売に関する合弁事業設立で合意した。……
4月6日 ロイター

■あちこちで石油採掘権を削られている日本に比べて、チャイナの石油漁りは凄まじい勢いで進められているようですなあ。でも、日本並に工業化を進め、米国並の自動車社会を本気で実現したら、世界中の石油資源が枯渇するのが先か?温暖化での滅亡が先か?という恐ろしい未来が早くやって来そうです。バイオエネルギーも開発するそうですが、その原料は家畜飼料と同じ物ですぞ!産油国と石油会社と自動車会社などは儲かるのでしょうが……。これはまったく新しい歴史の始まりですなあ。


2007年4月5日、山東省桓台県で、100人近い偽僧侶が逮捕された。彼らは少林寺の名前を騙り、高額の精力剤を売りつけていた。5日午前、桓台県の市街地に100人近い僧服姿の男たちが現れた。彼らは3~5人ほどのグループに分かれ、家々をまわった。自らを少林寺の僧侶だと名乗り、武術の演舞と寺への寄付を募りにやって来たのだと自己紹介した。その後、「少林寺秘蔵の精力剤」を販売していると騙り、高値で売りつけていた。相手にあわせて60元(約900円)から330元(約4950円)の値をつけていたという。

■さてさて、少林寺です。日本でも『少林寺』ブランドのカンフー映画が大流行しましたし、日本人の宗道臣さんが始めた格闘技の名前でも有名ですが、それぞれ別物です。達磨大師が修行したと言う伝承を独占している河南省嵩山少林寺は、大唐帝国2代皇帝太宗を助けた武勲を誇る古いお寺で、支店ブログ『五劫の切れ端』で断続的に連載中の三蔵法師玄奘さんが、インドから戻って最初に翻訳場にしたい、と願い出た山奥の静かな御寺です。それとは別に、多くのカンフー映画の題材に使われた神秘的な拳法を作ったと言われているのは福建省の伝説めいた寺の事で、日本で生まれた少林寺拳法の名前の由来となると開祖の自伝しか資料が無いので、何とも言えない模様です。まあ、どれも歴史好きには楽しい伝説がたくさん詰まっているという点では共通しているようです。つまり、詐欺師にとっても便利な名前という事ですなあ。ご用心、ご用心。


市民からの通報を受け、警察はこの偽僧侶たちを逮捕した。ある偽僧侶の供述によると、彼らはみな河南省の出身。この男は4日前に友人の紹介でこの組織に加わったという。僧服と商品の薬は組織が提供したもの。組織は偽僧侶たちに住居と食事を保証した上、毎日15元(約225円)の給料を与えたという。国際的な知名度を誇る少林寺だけに、その名を騙る偽僧侶は後を絶たないが、一度に100人もの偽僧侶が捕まったのは前代未聞だと注目を集めている。
2007年4月6日 レコード・チャイナ

■宗教と詐欺犯罪とを明確に分けるのは至難の業とも言われていますから、日本でも怪しげな集団がアルバイトを雇って托鉢僧侶に仕立て上げて荒稼ぎした事件が起こっていますし、妙な健康法やら占いやら、危ない話はいくらでも有ります。本来は煩悩を絶つ修行に明け暮れる御寺で、どうして「少林寺秘蔵の精力薬」などが開発されるのでしょう?それでは煩悩の炎が燃え上がってお坊さん達はますます苦しむでしょうに!?これはまったく「正しい歴史認識」では御座いませんなあ。お仕舞い。

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中華数千年の残影 其の弐

2007-04-07 18:50:34 | 歴史

開発業者の万福稜園開発有限公司は墓地の各区画を「転売が可能で、購入から1年経過後には自社が時価で買い取ることもできる」と宣伝していたが、買い取りに応じないケースが発覚。業者の経営責任者らは行方をくらましており、開発に便宜を図った衝陽市も事態の収拾に力を注いでいる。業者は政府の規定に沿わない墓地を販売していたという。区画は29タイプで、販売価格は8000-25万元(約12万-380万円)。

■祖先崇拝の伝統を共有しているところに、「土地投機」が起これば住宅や商業地に加えて墓地の転売で一儲けしようとする人が現れるのも当然でしょうなあ。そこに目を付けて、日本の「原野商法」みたいな詐欺を考える悪い奴も出て来るというわけです。


販売開始から1年余りで6500区画が売れたが、実際に使用しているのは296区画のみ。販売総額は1.2億元に上る。開発業者が設けた問い合わせセンターには846件の苦情が寄せられている。計2003万元の返金などを求めるもので、これまでに448件について1078万元が返金された。
4月5日 サーチナ・中国情報局(

■日本のお墓にも多くの問題が有るようですが、「墓転がし」の詐欺騒動はあまり耳にしませんから、複雑な信仰文化を抱え込みつつも何とか折り合いを付けて過ごしているのでしょうなあ。あちらでは墓地の詐欺ですが、こちらにはメイド・イン・チャイナの怪しげな墓石を高値で売り付ける困った業者が暗躍しているとか……。


2007年4月5日、新疆ウイグル自治区の渉外運輸管理事務所が明らかにしたところによると、近隣諸国との貿易が年々活発化するのを受けて、今後、中央アジア諸国と中国を結ぶ12の国際道路を建設する計画だ。同自治区は8か国と接し、国境線総延長が中国国内で最も長いため、客運と貨物運輸の中心になる条件が整っているといわれる。

■紛れも無くこれは「シルクロード」の復活そのものです。かつてはソグド人やペルシア人が活躍した大陸交易を、北京政府が復活させようとしているわけですなあ。NHKが日中国交正常化を記念して『シルクロード』特集を制作して大評判になった頃とは隔世の感が有ります。


計画では中国からロシア、ハザクスタン、タジキスタン、パキスタンなどへ続く国際道路の中国領内部分を建設する予定で、最も長いものはウルムチを出発し、タシケント、マシュハド、テヘラン、イスタンブール、そして欧州へとつながる。同自治区内だけでも全長1680kmに上り、2010年の完成を目指す。

■西や北からエネルギー資源や鉱物資源を大量に輸入して、雑貨や工業製品を輸出する計画でしょうが、この新しいネットワークに乗って漢民族の拡散が進むのでしょうなあ。大唐帝国の復活とも思えますが、「白村江の戦い」の再現は御免蒙りたいものです。


現在、すでに開通している国際道路は101ルート、通行許可を持つ車が自治区内に1500台登録されている。道路が完成すれば国境貿易が一層活発になり、最も外国へ開けたエリアとして繁栄していくことが期待される。
4月6日 レコード・チャイナ

■新疆ウイグル地区で燻(くすぶ)る独立運動が、国境を越えて同じトルコ系民族と結び付く危険を覚悟で貿易に活路を見出そうとする大計画のようですから、ウイグル族の今後には注目しておかねばなりません。同系の民族関係以上に、この国際道路が「イスラムの道」として発展するのは北京政府の望むことではないでしょうからなあ。


2007年4月2日、ウラジオストックで「中華人民共和国とロシア連邦の国境確定に関する協定」が結ばれた。40年以上にもわたり、交渉が続いてきた中ロの国境紛争だが、今回の協定でついに決着を迎えた。この協定により、中ロの最後の紛争地・大ウスリー島とボリショイ島が中国に返還されることとなった。遅々として進まなかった国境紛争交渉だが、プーチン大統領は昨年10月の訪中を期に、ロシア全体の利益に合致するとして、返還に合意したという。両国議会の承認をえて、今回の協定締結を迎えた。

■真冬には一面銀世界となって大河も結氷するややこしい場所ですから、密貿易も横行しますし、ちょっとした国家間の緊張が起こると、すぐに誤射事件が起こる物騒な場所だったようです。これで清朝時代から続いたロシアとの国境争いが、一応、決着したというわけです。お互いに国境警備の軍事費が節約できるようになるのでしょうなあ。敵対関係を解消して、互いに商売に専心することになりそうです。


現在、黒竜江省政府は大ウスリー島の開発計画を策定中で、貿易港・貨物基地が建設される予定。今後、中ロ貿易の中継地として発展が予想される。また今回の中ロの国境確定交渉が、日ロの北方四島返還交渉にどのような影響を与えるのか、注目される。
4月6日 中国情報局

■北方領土の場合は、軍事的な意味と共に水産資源の分配の問題も有りますから、中ロ国境交渉と同列には扱えないかも知れません。敗戦のどさくさ紛れに旧ソ連が占領したのは事実ですが、ロマノフ王朝の東進政策の延長とも言えますし、日露戦争での屈辱をスターリンが晴らした歴史的遺産とも言える「戦利品」ですから、スターリンの業績とロマノフ王朝の栄光を同時に否定して日本と交渉を進められるかどうか、ロシアが求める見返りを日本政府が国民世論の反発を呼ばない方法で用意できるかどうかが鍵となりそうです。

中華数千年の残影 其の壱

2007-04-07 18:50:06 | 歴史
■いよいよ7年ぶりにチャイナの首相が来日し、22年ぶりに国会で演説までする日が目前となりました。「正しい歴史認識」を突きつけられる日本が、どんな「熱烈歓迎」を用意しているのか?相手は「新幹線には乗らん」などと、非常に分かり易いメッセージを次々と投げ込んで、来日直前まで日本政府に対する「圧力」を、陰に陽に与え続けるでしょう。ここで、最近のニュースを材料に、「正しい歴史認識」の復習?をしておきましょう。

2007年4月5日、この日は中国のお盆と呼ばれる墓参りの祭日・清明節だが、陝西省西安市で、中華民族の始祖と呼ばれる黄帝を祀る盛大な儀式が挙行された。会場は陝西省黄陵県橋山にある黄帝廟前の広場。国内外から集まった1万人もの中国人により壮大な儀式が挙行された。全国人民大会常委会李鉄映(リ・ティエイン)副委員長、全国人民大会常委会・蒋正華(ジャン・ジェンホア)副委員長、中国人民政治協商会議・張思卿(ジャン・スーチン)副主席ら多くの要人も出席した。

■「黄帝」と聞いて、何だか効きそうな栄養ドリンクを思い浮かべる日本人も多いのでしょうが、どうして栄養ドリンクにこの名前が付いているかと言うと、『黄帝内経』という古代の医学書を書いた人とされているからです。謎めいた言葉で鍼灸術から占いまで、生き延びる知恵を並べて教えてくれる有り難い書物です。『傷寒論』という古い伝染病を中心とした病理学を解説した書物と共に、今も研究され続けている有名な本の著者だそうです。「正しい歴史認識」に含まれるかどうか、ちょっと微妙ですが、三皇五帝と呼ばれる神話時代の支配者からチャイナの歴史は説き起こされる事が多いようです。「三皇」には諸説有りますが、伏羲・女か・神農が代表的な名前で、どうもモンスターのような姿をしていたようです、神農はミノタウロスみたいに牛の頭を持っていたそうで、薬草と毒草を自分の体を使って試験したそうで、体中を薬草で編んだ服で包み、手当たり次第に植物や鉱物を口に放り込んでいたそうな……。医学の基礎と農業技術を教えて回った方だそうです。

■その後を継いだ「五帝」の筆頭が黄帝だそうで、という。蚩尤(しゆう)と言う巨大ロボットみたいな化け物を倒して中華の元となる地域を初めて統一したのだそうです。黄帝、センギョク、コク、堯、舜と続いたのが「五帝」だと司馬遷が書いています。舜から禹に位が譲られて夏(か)王朝が始まったとされていて、その後の殷(商)、周、秦、漢と王朝が続いて20世紀の辛亥革命で終わります。夏王朝の存在を示す遺跡は未発見なのに、何故かそれより古い黄帝を先祖とする人が多いのは不思議な現象ですなあ。


儀式の内容は以下の通り。1・全員起立、黙礼。2・太鼓と鐘を打ち鳴らす。3・献花。4・陝西省省長の挨拶。5・黄帝像に礼拝。6・礼楽の演奏と踊り。7・黄帝陵へ拝礼。黄帝は中華民族の始祖と呼ばれ、中国人の家系図をさかのぼると必ず黄帝に行き当たると言われている。
4月6日 レコード・チャイナ

■靖国神社の参拝も、こうした神話に基づく盛大な儀式とイメージが重なってしまうのが問題なのかも知れません。でも、こうした世界各地に残る伝説や神話を他国の人があれこれと口出しするのは遠慮しておくべきでしょうなあ。因みに日本の神社のほとんどは、死者の魂が生前の恨みや悲しみから禍を起こすのを避ける「魂鎮め」を目的として建てられています。


湖南省衝陽市で台湾系資本の開発業者が販売していた墓地「観福園」の区画が投機対象になり、購入した市民が売却しようとしたところ業者が応じなかったため、多数の購入者が代金の返還を求める騒ぎが起きている。5日付で人民日報が伝えた。

■先祖崇拝は世界各地に発展した精神文化ですが、それぞれが持つ意味には違いが有るようです。仏教が伝播した場所では土着の信仰を取り込んで釈尊の教えとは随分と違う儀式や文化が付加されていますが、元々、先祖の弔いを専門にして居た儒教集団が漢王朝の時代に国教化されてから、チャイナの精神文化は祖先崇拝を中心にして展開したと考えられます。長男が代々墓を守り、規定の儀式を執り行う独占的な権利と義務を持つとされているので、1人子政策を断行したら男女の人口比が大きく歪んでしまうのも当然とか……。

日本は歓迎準備中?

2007-04-07 01:11:14 | 外交・情勢(アジア)
■もう幾つ寝ると~♪と唄いたくなるほど、歴史的な外交イベントが近付いております。残念ながら、それは日本の安倍総理がいよいよ初めて米国を訪問するというお話ではありません。

4日付中国新聞社電によると、中国の温家宝首相は4日午前、北京・中南海の紫光閣で日本の報道機関16社の記者らと会見し、11日からの日本訪問期間中、日中の「戦略的互恵関係」の構築に向けた要望、範囲、主要任務を盛り込んだ共同文書を作成するとの見通しを明らかにした。安倍晋三首相が将来、靖国神社を参拝した場合の中国政府の対応について、温首相は「今年は中日国交正常化35周年、盧溝橋事件70周年だ。日本側が中国人民の感情を傷つけないことを望む」などと述べた。温首相は、日本との経済交流を強化したい分野について「省エネルギー、環境保護、ハイテクノロジー、中小企業、金融、情報の分野で特に協力を強化したい」と述べた。
2007年4月5日 中国情報局(

■35年前に国交正常化したのは、田中政権時代の日本と今の中華人民共和国でした。これは間違い有りません。でも、70年前の「盧溝橋事件」となると、当事者は誰だ?という問題が残されていますぞ。その場所で夜間演習をしていたのは大日本帝国陸軍と、川向こうで対峙していた中華民国陸軍でしたが、「謎の発砲」を繰り返した何者かが居たことが問題で、それが当時の大日本帝国が起こしたドンデモ謀略の一つであれば、話は随分と簡単になるでしょうが、毛沢東にイジメ殺された劉少奇という恐るべき開明派の実力者が、「謀略成功」の報告をしていたという疑惑が消えません。極東軍事裁判でも、この事件は取り上げられていないので、今でも真相が不明ということになっております。恐らくは現政権が崩壊でもしないと、貴重な資料も記録も表沙汰にはならないでしょうなあ。

■言うべきを言わず、押すべきを押さず、引かなくても良いところで引いてしまう外交を続けると、歴史は一向に解明されませんし、変な出費が嵩(かさ)んで仕方が有りません。今回の記者会見で「南京虐殺」には言及しなかったのを「武士の情け」とでも言われたら、若き頼もしいリーダーと思われて政権を獲った安倍総理は、決定的な失点をするところでしたが、その辺は阿吽の呼吸で言及しないで済まして貰えた?ようです。

■日本のマスコミは、首相が米国に行く!となれば、ぞろぞろと大挙してくっ付いて行きますし、ベテラン記者などと言われる人は首相専用機に同乗して訪米するそうですが、他の国に行く時には相手の国をバカにしているのではないか?と思えるほど手薄な取材しかしないようです。そんな事を繰り返していれば、読んだり観たりしている国民の頭の中の世界地図は、その半分が米国になってしまうのも仕方がないでしょうなあ。残りの半分がチャイナになったら、日本の将来は有りません。


10日からの訪韓を前に温家宝首相は5日、韓国メディア19社と会見した。記者から高句麗や長白山(白頭山)をめぐる両国の認識の違いについて質問が出されたが、温首相は「中国と韓国の間には領土問題は存在しない」と述べた。また「両国間には数千年に渡る友好がある。民族や国境地帯に関する歴史を政治化すべきではない」と語った。6日付で中国新聞社が伝えた。
2007年 4月6日中国情報局

■少しばかり東アジアの歴史に興味を持って、ちょっとした読書をしている人の耳には、「数千年に亘る友好」という表現に激しい違和感を呼び起こすのではないでしょうか?半島三国時代から、一体、いつ頃に「友好」関係が有ったのでしょう?新羅の時代に苗字が激変し、純粋儒教が千年間も人々を縛り上げ、朝貢か侵略か?の二者択一を迫り続けた歴史の中に「友好」を見つけるのは難しいような気がします。半世紀の「日帝」時代よりはマシだった!という声も上がりそうですし、その300年前に行われた豊臣秀吉の「侵略」を責める声も上がりそうです。歴史的事実として、大和朝廷以来、半島は日本にとって師であり友でありました。20世紀になって対ロシア戦略に没頭する中で、まことに失礼ながら、明代の貿易利権争いと同じ構図が半島を中心にして現出してしまったのは悲劇だったと思います。長大な半島の歴史の中で、この50年は非常に短いものながら、ごく最近の出来事なので簡単に整理は出来ません。

■でも、「民族や国境地帯に関する歴史を政治化すべきではない」と言っている御本人が、広大な他民族国家を運営していた清朝を受け継いだと、自らを正当化しているのですから、西のチベット、北西のウイグルを飲み込んだ理屈を、半島にだけは適用しないと、誰が考えるでしょう?既に「脱北問題」で、旧満州には多数の朝鮮族が住んでいる事を日本の国民は改めて学びました。白頭山は、北朝鮮王朝の発祥の地とされる聖地になっていますが、昔は渤海という謎の国が栄え、その前には隋王朝の国力を消尽させた強国の高句麗が覇を唱えた場所の象徴みたいな山です。高句麗時代を懐かしむ時、白頭山は日本の富士山のような存在になるでしょうから、そこに別の名前が付いているのは気分が良くないでしょうなあ。

■「歴史問題」としてクレームを付けている韓国は立派です。長い歴史の中で、東は日本から西はカスピ海沿岸まで、朝鮮(韓)民族がさまざまな理由で散らばり、今では欧米諸国に留学や商売を目的に更に散らばっている半島の人々と日本が、この100年にも満たない短い期間に生じた摩擦を克服解消出来ることを願って止みません。日本人がすっかり忘れ、勉強もしなくなった遠い昔に起因する「歴史問題」を北京政府に対して提示する根性は見上げたものだと、日本からも応援の声を上げたいものですなあ。


中国国家海洋局は6日までに、「2006年海洋行政執法公報」を発表し、東シナ海の海洋権益を維持するため、航空機や船舶による定期監視体制を構築したと明らかにした。許可を得ずに東シナ海の大陸棚で天然ガスの資源探査活動を行ったり、中国の開発活動を妨害したりする外国船舶を監視、駆逐すると強調。公報では、中国が日中中間線で開発を進め、両国の摩擦となっている春暁(白樺)ガス田を中国側の船舶が巡航している写真も公開しており、同ガス田の権益を主張した形だ。 
4月6日 時事通信

■高句麗や白頭山に比べて、尖閣諸島に関連する日本の領海問題はここまで押し込まれています。韓国メディアに対する態度と、ほぼ同時期に日本政府に対して出されたこの「公報」との違いは何でしょう?こういう事態に対処する知恵を得るには、河野洋平衆議院議長を特使にして、現地の大使とも協力して貰い、好き放題に「融和外交」に勤(いそ)しんで頂いて、偉大なる「反面教師」の姿を国を挙げて勉強するしかないかも知れませんなあ。憲法改正以外は、何でも「先送り」している安倍内閣には、この種の劇薬が必要なのではないか?などと思ってしまう今日この頃です。

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御難続きのテレビ 

2007-04-06 19:30:17 | マスメディア
■『あるある大事典』のデータ捏造騒動が、社長の辞任と評判の悪い検証番組を放送して収まったかのようなテレビ業界は、新番組に切り替わる年に一回の大勝負?の季節だと言うのに、幸先の悪い話がぞろぞろと出ているようですなあ。NHKの「朝の連続ドラマ」が初回から史上最低の視聴率だったと報道され、年末の「紅白歌合戦」と同様に、日本人のテレビ視聴生活の質と傾向が大きく変わりつつある事を再確認したばかりです。

尾身幸次財務相は6日の閣議後会見で、レッドソックスの松坂大輔投手が公式戦初勝利を挙げたことに関連し「この種の問題を7時のNHKニュースで毎朝とりあげるのは、全体のニュースのバランスからみて問題がある」と、松坂投手の活躍に時間を割くNHKの報道に注文をつけた。……松坂投手の活躍については「経済と同様、人もグローバル化し、いい人材が新しい天地を見いだしていくことは大変いいこと」と評価したが、NHKに対しては「世界の動きをもう少し放送してくれないと、公共放送としての意味が薄れてくるのではないか」と、報道内容に疑問を呈した。
4月6日 毎日新聞。

■他の報道によりますと、「生活や経済、国際関係のニュースをバランスよく報道してほしい」と要望したのでしょうが、本音は「政治関連」の報道、それも夏の参議院買改選選挙に向かって補選も始まり、自民党はピリピリしている時期ですからなあ。東京都知事選は、とりあえず石原都政が五輪誘致抜きで続きそうですから、問題は「小泉人気」で大勝したままの参議院で、どれほど議席を減らすか?という恐ろしいものになっているでしょう。前回の衆議院解散選挙で、タイゾー君やら刺客議員やらマドンナ?議員が生まれてしまった事を、選挙民はきっと反省しているでしょうから、もしも、野党側からマトモな主張や見識が示されれば、自民党政権に対する厳しい判断が示される可能性が有りますからなあ。「夕張の恨み」がどれほど日本全土に伝染しているのか?これがまた問題です。

■小泉人気はテレビ人気と同じ物でしたから、選挙とは何の関係も無い松坂君ばかりが高視聴率のニュース番組に取り上げられているのが悔しくて仕方がない!という議員さんがたくさんいるのでしょう。変な議員宿舎は完成するし、農水大臣は変な還元水を飲んでいるし、肝腎の安倍総理の人気は下がったままですからなあ。これに加えて民放各局が、自民党独裁状態の地方議会での税金無駄遣いの徹底追及などをしているようですから、最悪の条件で選挙戦に突入することになりそうです。唯一の頼みは野党側の自滅を加速させるアクシデントが連続してくれることでしょうなあ。

■でも、NHKとて「視聴率」を稼がないと、受信料の支払い拒否の問題に発展しますから、形振り構わず民放で人気が出た番組は、後先考えずにパクってしまえ!の勢いのようです。とは言え、皆様のNHKには決して真似できない民放独自の番組というものが有るようですなあ。


TBSの番組「新SASUKE 2007」の収録で、出演したお笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」の小杉竜一(33)が左肩を脱臼していたことが2日、分かった。ケガをしたのは3月3日、横浜市青葉区のスタジオでのこと。ロープにぶら下がり、水上の島に飛び移る競技で脱臼。警察には届けなかった。TBS広報部は「通常のケガであり、事故という認識はない。本人との間で解決している」と話している。小杉は2日、吉本興業の都内4劇場をPRする女性限定イベント「よしもと劇場4姉妹キャンペーン」にMCとして登場。「もう大丈夫ですよ。ケガした時も救急車ではなく、タクシーで病院に行きました」と話した。
4月3日 スポーツニッポン

■またまた吉本興業のゲーニン君が無茶なことをやったのか?と思ったら、この番組は一般視聴者からも参加者を募って、なかなか危ない事をやらせる企画らしく、被害は「人気のためなら命も要らぬ」?ゲーニン君だけではなかったそうですなあ。


TBS系の人気番組「新SASUKE 2007」で、タレントの男性(33)が脱臼する事故を起こしながら、TBSが警察に通報していなかった問題で、同局は6日、ほかに4人が複雑骨折などの重軽傷を負っていたことを明らかにした。いずれも警察に通報しておらず、今月3日に届けたという。……事故は「ロープグライダー」と呼ばれる競技に集中。タレントの男性以外にも一般参加の男性が右足のすねを複雑骨折し、全治6カ月の重傷を負ったほかねんざ2件、脱臼1件と計5件の事故が起こった。今月2日にタレントの事故を調べていて明らかになった。

■先の記事では「元気なゲーニン君」の話でしたから、出演料やら今後の出演依頼やら、ゲーニン君にとってはテレビ局から厚遇を受けられる条件を手に入れたようなものでしょうから、脱臼くらいは何でもないかも知れません。でも、お笑い芸人には、もっと別に努力すべき事が有るのではないでしょうか?


TBSは「安全管理体制に問題はなかったが、事故の原因や報告体制の見直し、競技の安全性などについて調べている」としている。
4月6日 産経新聞

■「全治6ヶ月」の複雑骨折と言えば、並大抵の怪我ではありません。しかも「右足のすね」というのも気になりますなあ。医療技術は進んでいるので、元通りの脚に治してもらえるのでしょうが、そこまで危険なことをやって見せないと、最近の視聴者は納得しないのでしょうか?昔、米国で毎年開催される自動車レースの生中継番組で、ゲストの永六輔さんが視聴者の願望を代表して「早く事故が起きませんかね?」と発言して騒ぎになった事が有りましたが、プロのスポーツ番組の中には大事故が起きる危険を伴う競技がたくさん有りますから、「決定的瞬間」を見てしまった視聴者は、やはり得した気分になれるのでしょうか?

■格闘技番組も随分と過激になっているようですが、テレビに出て稼ぐ人達は専門分野の区別無く、怪我や命の危険を冒して見せなければ行けない立場になっているとしたら、何とも恐ろしい話です。今回の事故を起こした番組は、「バラエティ」枠の企画だそうです。確かに、「何でも有り」の枠ですから、危険も有り、なのでしょうなあ。ところで、岩手県知事選挙に出馬するプロレスラー議員と同じ名前のTBSのこの番組は、この程度の事故では打ち切りにはならないようですが、選挙期間中は放送を自粛するのでしょうか?

■などと書いていたら、同じテレビ局が午前零時過ぎに奇妙な番組を放送していましたぞ!新聞のテレビ欄によりますと『叱って!ブロンド先生 金髪美女が国分に英語のSM調教』という名前の番組です。英語に堪能な筑紫哲也さんのニュース・ショーの直後に放送されています。衆知の名のように「国分」と言われても誰のことやらさっぱり分かりませんが、英語に堪能ではない芸人さんを「金髪美女」と絡ませて笑おうという企画と思われます。これを1箇月前に企画していたとしたら、千葉県行徳の英会話講師殺人事件を予告していたようなものですが、それを遺族が来日して大使までが記者会見を開き、犯人が逃亡している時期にそのまま放送するという視聴率のためならオウムの味方にさえなってしまう根性は、今でも健在ということなのかも知れませんなあ。

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対話と圧力 其の弐

2007-04-06 16:33:36 | 外交・世界情勢全般

米国防総省は5日、イラン沖のペルシャ湾に展開していたニミッツ級原子力空母「ジョン・C・ステニス」が4日、同湾を離れ、アラビア海の北部海域に戻ったことを明らかにした。これにより、ペルシャ湾の米空母戦闘群は当面、「ドワイト・D・アイゼンハワー」の1隻態勢に縮小されたことになる。「ステニス」がペルシャ湾を離れた4日は、イランに拘束されていた英兵15人の解放が発表された日と重なっている。
4月6日 時事通信

■こういう記事を目にしますと、イランが米軍の大演習を非常に気にしていて、15人の兵士を利用して米軍の兵力削減を求めていたようにも見えてきますが、もしも、「現在、ペルシャ湾を遊弋している米空母を減らせ」という条件が出されていたとしたら、条件の中に明確な日時や期間が入っていない盲点を利用して、米軍がトリックを使った可能性も考えられそうです。
 

米海軍は3日、ペルシャ湾に空母ニミッツを派遣したと発表した。ペルシャ湾に展開している空母ドワイト・アイゼンハワーと交代し、先月末に同湾入りした空母ジョン・ステニスと合流する。中東をにらんでペルシャ湾に空母2隻態勢を堅持するブッシュ政権の方針を示し、イランに対する軍事圧力を維持する形となった。
4月5日 毎日新聞

■空母が交代する期間だけは、ペルシア湾内の米空母が1隻だけになる計算ですから、もしもイランから空母の削減を要求されていたにしても、兵士の解放に合わせて1隻減るという約束は出来たことになります。米軍としては演習が終わった空母を休ませたり整備したりする必要が有ったのかも知れませんし、新たに空母ニミッツを投入して次の大演習を試みるつもりかも知れませんなあ。
 

ゲーツ米国防長官は5日、イランによる英兵15人解放の見返りに、米軍がイラク北部で拘束したイラン人5人を釈放する可能性を否定した。イラン人5人は、米軍が1月にイラク北部アルビルで拘束した。米政府は、5人がイラン革命防衛隊「アルクッズ(エルサレム)部隊」の要員であり、イラクの反米武装勢力に対する高性能爆弾の供給にかかわっていると主張している。 
4月6日 時事通信

■飽くまでも、今回の問題は英国とイランとの間の問題ですから、米国が付き合って何らかの取り引きをする義理は無い!というのが「表」向きの話で、イランとしては米軍の軍事的圧力を一時的にでも減らしたという実績と欧州諸国との交渉のパイプが得られたわけですから、一応の成果を得たという計算でしょうなあ。


米保守系紙ワシントン・タイムズは5日、6か国協議にかかわる各国外交官が、4月14日ごろとされる北朝鮮による核施設の停止・封印の期限を延長することを検討している、と報じた。……マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)にある北朝鮮関連資金の返還をめぐる問題の長期化により、寧辺(ヨンビョン)の核施設の停止・封印や国際原子力機関(IAEA)要員による監視再開など核放棄に向けた「初期段階の措置」の実施準備が本格的に始まっていない。このため、2月13日合意から「60日以内」と定められている初期段階措置の実施期限の延長が、協議担当外交官の間で私的に話し合われているという。ただし、延長期間についてはまだ合意がないとしている。
4月6日 読売新聞

■北朝鮮の核開発問題に関しては、経済制裁の「圧力」を米国が一方的に解除してしまったばかりに、「対話」さえも出来なくなってしまったようです。イランは今回の交渉で大いに時間を稼ぎ、外交的な得点も上げられましたが、今度は北朝鮮問題がブッシュ政権の悩みのタネになってしまいそうですなあ。米国は「嘘ツキだ」という汚名を雪ぐために軍事行動には訴えられませんから、次の暴発を待って「圧力」を強める考えかも知れません。そんな時期に、突如として30年以上も前の「拉致事件」が公表され、毎日のように詳しい背景が報道されまして、あれよあれよと思う間に、国際指名手配まで事態が急展開しています。米国が失った「圧力」を、日本が補おうとしているかのように……。

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