合弁相手は、ロシアが設立準備中の国営原子力独占企業体「アトムエネルゴプロム(アトムプロム)」で、合弁工場では、大型の蒸気タービンや発電機、水蒸気を冷却する復水器などが生産される見込み。建設時期や建設地、投資額は今後詰めるが、出資比率はロシア側が51%、東芝が49%とする案が有力だ。東芝によるロシア国内の原発保守事業への参加やアトムプロムに対する原子炉の技術供与も交渉の議題となる見通しで、年内決着を目指す。……ロシアは今後25年間で、40~60基の原発建設を新たに予定しているが、主要部品の生産力や技術力不足が課題となっている。このため、東芝の技術を活用して、原発整備を急ぐ。一方、東芝は、ロシア政府やアトムプロムとのパイプを築くことで、ロシアでの原発ビジネス拡大の足がかりになると判断した模様だ。
2007年4月10日 読売新聞
■ロシア国内だけでも巨大な商売になりそうですが、東芝から最新技術が得られれば、ロシアはあちこちに売り付けようとしているはずで、それがインドなのか中国なのかイランなのか、気がもめるところであります。東芝がロシアと組めば、三菱はフランスと提携するのだそうです。話は去年の秋のことでした。)
三菱重工業が、フランス最大の原子力関連企業アレバと原子力発電プラント事業で提携することで最終調整していることが15日、明らかになった。世界で主流の加圧水型原子炉(PWR)で新型炉を共同開発するほか、プラントの共同受注、技術協力などを通じて強力な企業連合を形成するのが狙いだ。三菱重工業にとっては、海外で共同受注していた提携先の米大手ウェスチングハウス(WH)が東芝に買収されるための戦略変更となる。世界の原発事業は、東芝グループ、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)連合に「三菱・アレバ」を加えた三つどもえの競争が本格化する。
■最新の報道と合わせますと、「東芝+米国のWH+ロシアのアトムプロム」という地球をぐるりと1周するような原発会社が生まれたようなものです。
原子炉には主に、関西電力などが採用するPWRと、東京電力などの沸騰水型原子炉(BWR)の2方式がある。PWRは放射性廃棄物の発生量が比較的少ないため、世界の原発の約7割が採用しており、アレバはその最大メーカーだ。欧米では原油高を背景に原発建設を推進・再開する動きがあり、電力需要が急増している中国も原発建設に積極的だ。三菱重工業とアレバは、提携で開発コストを抑え、米国や中国などで新規受注の拡大を目指す。
■沸騰水型と加圧水型の違いは、発電用タービンを回転させる高圧蒸気が原子炉内の核燃料に直接触れているか、蒸気発生器の内部で熱だけを貰って出て来るかの違いです。放射能を帯びている水を原子炉内部に閉じ込めている加圧水型の方が、理論的には安全だという認識が広まっているというお話ですが、炉心が暴走したらどちらもアウトなのですが……。
……WHは世界の原発の主流である加圧水型原子炉(PWR)技術を開発した「本家」で、三菱重工業はWHとの提携で今日の自社技術を築いてきた。しかし、これまで「沸騰水型原子炉(BWR)」方式を得意としてきた東芝は、54億ドルという破格の買収額を提示してWHを買収し、PWR方式への進出を打ち出してきた。東芝の意向によっては、三菱重工とWHとの提携関係が打ち切られる可能性がある。国内原発メーカーにとっての主戦場は、国土が狭く電力需要が頭打ちの日本ではなく、米国や中国などの海外市場に移っている。……
2006年10月16日 読売新聞
■どちらの方式にも対応できる東芝勢に対抗して、三菱重工は欧州と組んで世界市場に挑むという構図になり、そこに日立とGE連合が絡んで原発受注を競うというわけですなあ。
……世界の原発は今後20年間に100基程度の建設が見込まれ、急速に需要が伸びる見通しだ。今後予想される受注競争に向け、東芝は米ウェスチングハウス(WH)を買収し、三菱重工業は仏アレバと業務提携するなど、原子力業界の再編が加速している。
2006年11月14日 読売新聞
■「100基」もの高価な発電設備が国境を越えて売ったり買ったりされるのですから、裏工作資金やらリベートやら、昔のロッキード事件どころではない怪しげな事が起こっていても不思議では有りません。特に余り民主的でない政治形態を持つ国ならば、独裁者に露骨な賄賂や贈り物が用意されるでしょうし、そういう国には元気なジャーナリズムは存在しないのが普通ですからなあ。
AP通信によると、北朝鮮の金桂寛(キム・ケグァン)外務次官は9日、平壌を訪問中のビル・リチャードソン・米ニューメキシコ州知事一行と会談し、2月の6か国協議で合意した寧辺の核施設の停止・封印など「初期段階の措置」について、60日間の期限内に作業を終えるのは「非常に難しい」との認識を示した。北朝鮮高官が期限内の履行は困難との見通しを示したのは初めて。一方で金次官は、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」で凍結されている北朝鮮関連資金が戻れば、寧辺の核施設に対する国際原子力機関(IAEA)の査察官を直ちに受け入れる考えも示した。
4月9日 読売新聞
■この報道から、たったの2日でマカオの銀行口座は北朝鮮が好き勝手に使える状態になってしまいました。やっと合意に到った「60日」という期限を自分の責任で破られてしまっては米国としては面子丸潰れですから、何がなんでも予定通りに「寧辺」は止めたい立場を完全に見透かされていたという事でしょうなあ。
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