旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

記念撮影の後先 其の弐拾弐

2009-12-29 09:35:26 | 外交・情勢(アジア)
民主党大訪中団の事前折衝で、約140人の民主党国会議員全員が、胡錦濤中国国家主席と握手して写真撮影を行うことに中国側が難色を示したが、これに対して小沢一郎幹事長が「だったら行かない」として、訪中計画を中止する構えを見せていたことが23日、分かった。

■撮影会と訪中計画とが天秤に載ったのなら、この話は12月9日の崔大使と小沢幹事長との会談でのことでしょう。しかし、このリーク話には不自然な点が多いですなあ。公表されたのがクリスマス直前というタイミング、鳩山サセテイタダク首相の偽装献金問題と予算編成が大詰めを迎えていた時期にも当たります。何よりも「訪中直前」なのに交渉事項の中に「特例会見」の件がきれいに消えている!


その結果、10日夕、北京市の人民大会堂では、胡氏の前に国会議員が列をつくり、次々と胡主席と笑顔で写真に納まる記念撮影会が実現した。民主党国際局長の藤田幸久参院議員によると、訪中直前の段階で中国側は、胡氏と国会議員一人一人との写真撮影について「時間がかかり過ぎる」ことを理由にいったんは断ってきた。だが、それを聞いた小沢氏は「そんなに時間はかからないはずだ」として、握手撮影が実現しない場合は、訪中自体の取りやめも辞さない考えを示したという。

■出発直前で本当に「中止も辞さない」と言ったのか?ますますツーショット撮影会を提案したのは誰なのか?が分からなくなる仕掛けになっている話のようです。もっと穿った見方をすれば、江沢民時代の愛国教育政策の遺産で反日感情が強く残っているチャイナで、今も隠然たる力を持っている江沢民側が胡錦濤主席を攻撃する材料に利用する可能性が高まり、密かに善後策を打診されたクラッシャー小沢が国内でマニフェスト破りの憎まれ役を演じたついでに、ツーショット撮影は自分がゴリ押しして実現させたんだ、と言い張ることで胡錦濤政権に恩を売ったとか……。

■日本での特例会見の様子は大々的に報道されたのに、北京でのツーショット撮影会どころか人民大会堂で訪中団を出迎えた様子もチャイナ国内ではまったく報じられていないそうですからなあ。


小沢氏が握手撮影会にこだわった理由について藤田氏は「小沢氏は普段から『長い演説をするよりも、握手と写真の方が重要だ』と考えており、それを中国側にも求めたということではないか」と話している。
12月24日 産経新聞

■「演説よりも握手」というのは小沢流の選挙戦術の話ではないでしょうか?あのツーショット握手撮影会は、一体、誰にとって「重要」なのか?さっぱり分からない話です。まさか、140余人の民主党議員と握手した胡錦濤主席が日本大好き!民主党大好き!と言い始めるはずはないでしょう。すると、小沢幹事長が引き連れて行った国会議員が揃ってチャイナ胡錦濤好きになるのが「重要」という理屈になりますが……。


……胡錦濤国家主席は北京で10日午後、民主党の小沢一郎幹事長を団長とする日本民主党代表団と会談した。中国国際放送局が伝えた。胡錦濤主席は「日中間の四つの共同声明に則って、各分野・各レベルにわたる交流と協力を強化し、重要で繊細な問題を適切に処理するとともに、様々な世界的な課題にともに対応し、戦略的互恵関係の一層の発展を推し進めていきたい」と述べた。

■報じられた映像は会談の模様だけだったことが分かります。普通は夜7時のテレビ・ニュースの冒頭で国の大小に関わらず何処かの首脳が国家主席を表敬訪問した映像が必ず流され、客人は腰を低くして迎えるチャイナ側は決して頭を下げず胸を張った姿勢で余裕の握手をする映像が毎晩流れるお国柄。従って小沢大訪中団を出迎える胡錦濤主席の映像が無かったら、視聴者はすぐに異変に気が付くはずなのですが……。

■少なくとも両国で対応すべき「様々な世界的な課題」の中には地球温暖化問題やガス田問題は含まれていないようです。そして「戦略的互恵関係」というものの正体は今でも不明なのが不気味であります。

記念撮影の後先 其の弐拾壱

2009-12-29 09:35:07 | 外交・情勢(アジア)
……「憲法で規定している国事行為にはそのものはありません。しかし、その憲法の理念と考え方は天皇陛下の行動は内閣の助言と承認によって、行われる、おこなわれなきゃならないという基本的考え方は、天皇陛下にはまったくのプライベートちゅうのはないに等しいわけですから、日本国の象徴、日本国民統合の象徴というお立場にあるわけだから、その意味では、ご自身で自由にあっちいったり、こっちいったりちゅうことはできないわけで、その、天皇陛下の行動の責任を負うのは内閣なん(だ)。国民の代表、国民が選んだ政府内閣が責任を負うということなんですから、内閣が判断したことについて天皇陛下がその意を受けて行動なさるということは私は当然のことだと思いますし、天皇陛下にお伺いすれば、喜んで、私はやってくださるものと、そのように思っております」
12月21日 産経ニュース

■「国民が選んだ」がキーワードのようです。だからこそ、参議院選挙での必勝を期して鬼神も驚かす獅子奮迅の選挙運動を展開中の小沢幹事長なのであります。選挙に勝って議会の過半数を制すれば、何をやろうと勝手なのだ!法律に触れない限りには何でも許されるのだ!その法律を作るのは政権政党だから、欠陥と不備と穴を用意して存分に利用するのも許される!ついでに憲法を曲解して天皇を自在に利用してしまおう!というのは乱暴ですなあ。皇族にもプライベートは間違いなくありまっしょうし、先日も子供ランドやらに御一家でお出掛けになったそうですが、あれも内閣の判断と助言によって行なわれたのか?

■既にかつてのナチス・ヒトラー政権を引き合いに出して小沢独走体制を危ぶむ声が増えているようですが、ナチスは民主的で有名なワイマール憲法体制の中で行なわれた民主的な選挙によって議席を増やして行ったのでありましたなあ。最後はテロや放火など乱暴なこともやりましたが、基本的には選挙で勝ち続けて「民意」を代表していると言い続けたのがヒトラー政権でした。その何よりも大切な選挙に不可欠な政治資金に検察から難癖を付けられているのがクラッシャー小沢の苛立ちの原因とも言われているようであります。
 

……の習近平国家副主席の日本訪問は、天皇陛下と習氏との会見を巡る日中両国政府の不手際によって、日本国民の対中感情にしこりを残す形になった。中国の「次代のリーダー」と目される習氏の来日が、今後の日中関係の展望を切り開く契機にならなかったことは残念だ。鳩山首相と習氏の会談では、日中の戦略的互恵関係を推進していくことで一致した。首相が、日中間の懸案である東シナ海のガス田共同開発を前進させることや、中国の軍事力の透明性を高めるよう求めたのは当然である。

■これは12月18日付けの讀賣新聞に掲載された社説です。例のナベツネ発言(19日)を予告するかのように「両政府の不手際」と表現を軟化させております。まるで日本側にも責任の半分があるような話になっているのが気になります。それにガス田問題や軍事問題に関して鳩山サセテイタダク首相が何を言おうと馬耳東風だることを百も承知で「当然」とちょっと持ち上げてもおりますなあ。「こちらもやる時にはやりますからね」の一言が出せない友愛総理大臣であります。


習氏は台湾問題の重要性とともに、チベット、ウイグルの少数民族問題が「中国の核心的利益」であると指摘、日本側にくぎを刺すのを忘れなかった。だが、少数民族問題ではまず、中国側が弾圧行為をやめ、対話を通じて、人権状況を改善することが先決ではないか。……一昨年秋、2階級特進で、党中央政治局常務委員(9人で構成)に抜てきされ、昨春には国家副主席……北京五輪では運営の責任者を務めるなど、次期国家主席の最有力候補と見られている。首相官邸が天皇陛下との会見を特例として実現したり、首相主催の夕食会を開いたりして国家元首級の扱いをしたのも、習氏の立場を重視したためだろう。

■日本などとは比べ物にならない激しい権力闘争のお国柄、簡単に「次期」を考えるのは危ない、危ない。「最有力候補」「国家元首級」という表現にも危うさが感じられますし、それらが特例会見を強行する理由というのは牽強付会・我田引水かも?そして、チベット、ウイグル問題に何も言わせないぞ!と北京五輪開催直前の大騒ぎを無視する態度も容認しているのも気になる社説であります。


中国側も天皇陛下との会見実現を強く求めた。胡錦濤国家主席が副主席だった98年に来日した際に、天皇陛下と会見していたこともあり、習氏に同等の待遇を求めたものと見られる。中国側は、天皇と会見することが、指導者としての権威付けになると考えたのだろう。ただ、中国では、引退後も影響力のある江沢民前国家主席を後ろ盾とする習氏と、胡主席が支持する李克強副首相との後継争いはまだ決着していない。習氏に代表される勢力と、李氏を推す勢力の綱引きが、当面続くと見られている。

■天皇との会見が「権威付け」の道具にされているのを承知の上で、後継者争いの先は見えないと言うのでは、特例会見に応じた日本側だけが損をした勘定になりませんかな?日本側で得したのはたった一人だけかも?


92年の天皇陛下の訪中は、天安門事件による国際的孤立からの脱却に効果があった、と中国側は評価している。天皇外遊の政治的側面を示すものだ。日中関係の重要性からも、今回のようなトラブルはあってはならない。天皇の会見など公的行為にかかわる問題には、日中双方に慎重な対応が求められよう。
2009年12月18日 読売新聞

■今回の騒動は単なる「トラブル」などではなく、政権与党を牛耳る陰の実力者が外交と皇室を好き放題に翻弄して動かしたことが問題で、「慎重な対応」が求められるのは日中双方ではなくてチャイナの外交部とツーショット撮影会の餌に食い付いた幹事長だけでしょう。その張本人が撮影会の裏話を語っているようですが……。

記念撮影の後先 其の弐拾

2009-12-28 10:42:49 | 外交・情勢(アジア)
■なかなか引退しない元気なお年寄りが増えるのも、少子高齢化現象の影響なのでしょうが、後進に跡を譲ってきれいに身を引くのも美徳というものです。周囲からは「いつまでも元気で御活躍下さい」という声も聞かれるのでしょうが、あまりそれを真に受けない方が良いかも?特に大企業のトップを経験した財界人や首相経験者などには呆れるほどのエネルギーを持っている人が多いとか……。

中曽根康弘元首相は24日、都内の事務所で記者団と懇談し、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見を実現させた政府の対応について「慎重に処理してきたと思う。あの程度の時間的ズレは(30日ルールの)原則の枠内のことなので、認めていい」と述べた。
自らが首相官邸サイドに会見の実現を要請した点に関しては「ノーコメント」とした。
2009年12月24日 産経新聞

■都内の事務所を移転したと報道された、まだまだ元気な中曽根大勲位であります。靖国問題が外交問題になる切っ掛けを作った人ですから、不用意に発言するのは如何なものか?とも思うのですが……。「あの程度」というのはチャイナ側が最初に日程を伝えて来た11月下旬のことを言っているのでしょうか?それとも楊外相が小沢幹事長に協力要請した11月20日か?何故か宮内庁への打診がもたもたして遅れ11月26日になった時点のことでしょうか?やっぱり、自分が崔大使から頼まれて官房長官に電話した12月7日の時点を想定しているのでしょうなあ。いくら「ノーコメント」だと言ってもマスコミにはバレているのですから、会見まで10日余りしかない時点を「あの程度のズレ」と言うのは無茶でしょう。

■こういう時こそ野党・自民党の出番となります。


自民党は16日、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との特例会見の実態を調査する「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」(委員長・石破茂政調会長)を設置し、外務省、宮内庁の関係者から経緯などを聴いた。外務省の垂秀夫中国・モンゴル課長は、11月30日の時点で、鳩山由紀夫首相と平野博文官房長官に会見は不可能だと伝えた上で、中国側にも通知したことを明らかにした。官邸サイドはこの時点で、「30日ルール」があるため会見はできないと認識していた可能性が出てきた。

■「可能性」ではなくて事実でしょう。まあ、疑わしきは罰せず、推定無罪の人道主義を採用しての慎重な表現なのでしょうが、国策捜査に便乗する時とは態度が違うような気もしますが……。


……平野氏は、14日の記者会見で、政府が一度、中国側に拒否した事実について「承知していない」と強調。11日には、30日ルールを「承知していない」と述べていた。……垂氏(中国・モンゴル課長)は、前原誠司国土交通相が15日の記者会見で、自民党側が会見実現に向けた圧力をかけたような発言したことに関連し、平野氏の指示を受けて、自民党の中曽根康弘元首相に7日前後に、30日ルールを説明し、中曽根氏は「了解した」と答えたと述べた。
2009年12月16日 産経新聞

■「嘘吐き平野」と呼ばれるだけのことはありますなあ。官房長官に就任した直後に「官房機密費」の存在を知らない、前政権から引継ぎもしてない、とトンデモないことを言った人ですから、この程度の「承知してない」発言は大したことではないのでしょう。しかし、12月11日の段階で「30日ルール」を知らなかったというのは変です。12月7日に崔大使→中曽根大勲位→(首相)平野→羽毛田長官という要請リレーが行なわれ、羽毛田長官から30日ルール厳守を理由に拒絶されてから逆コースで大勲位にまで連絡が行っているのですからなあ。それに運命の12月9日、チャイナ側は切り札として訪中直前のクラッシャー小沢を使って再び小沢→平野→羽毛田長官という要請リレーが行なわれておりますし……。

■先に引用した小沢幹事長のオフレコ激怒発言でも「30日ルール」に合う様に調整しろ!と言ったのに平野官房長官が何もしなかった事が暴露されていましたから、平野発言は保身目的だけの姑息なものと思われます。こんな人が官房機密費を管理していて大丈夫なのでしょうか?いつもは憎まれ役が多い外務省ですが、この特例会見についてはちょっと気の毒な板挟み状態になっていたようであります。

記念撮影の後先 其の壱拾九

2009-12-28 10:42:35 | 外交・情勢(アジア)
小沢氏が記者会見で天皇と外国要人との会見を「憲法の定める天皇の国事行為」と断じ、「それを政治利用と言ったら、陛下は何もできない」と批判に反駁したのに対し、産経と読売が16日付で論及した。産経は「国事行為ではなく、公的行為」としたうえで、「憲法の天皇に関する規定は、象徴としての天皇が政治利用されることを防ぐのが趣旨である。小沢氏は憲法を恣意的に解釈している」と指摘した。読売は「国事行為に準じた公的行為」とし、「天皇の行為に政治的中立を疑わせることがあってはならない」のが問題の本質だと強調した。……

■記者を小ばかにした「君は憲法を読んだことがあるか?」に始まる小沢流憲法論に対しては、野党や専門家から即座に反論が出て言った本人も後に「国事行為」発言を訂正しました。でも、自分の「信念」は正しいのだそうですから、是非とも「信念」の中身を知りたいものであります。


■天皇と中国副主席の特例会見に関する各社の社説

産経 ・禍根残す強引な会見設定(12日付)
   ・政治利用の正当化許すな(15日付)
・政治利用まだ気づかぬか(16日付)

朝日 ・悪しき先例にするな(13日付)
   ・政治主導をはき違えるな(17日付)

毎日 ・誤解招かぬ慎重さを(13日付)
   ・次世代にらむ関係築け(15日付)
   ・冷静な論議が必要だ(17日付)

読売 ・憂慮される安易な「政治利用」(13日付)
   ・不穏当きわまる辞表提出発言(16日付)

日経 ・日中関係も損ねる特例会見(15日付)

東京 ・親善も傷つけた不手際(15日付)
   ・成果損なう拙劣な外交(16日付)
2009年12月21日 産経ニュース

■やはり、朝日の「先例」や毎日の「誤解」「次世代」「冷静」などの言葉には違和感を覚えますなあ。チャイナ側はゴリ押しが通って大喜びしているのですから「誤解」など生じておりませんし、「次世代」を考えるCOP15の会議をぶっ壊したのは誰か?と考えれば、しっかり相手を見て付き合い方を考えねばなりますまい。


……小沢一郎幹事長は21日の記者会見で……「(外国要人との会見は)憲法で規定する国事行為にないが、天皇陛下の行動の責任を負うのは内閣だ。天皇陛下が内閣の意を受けて行動なさるのは、当然のことだ」と指摘。14日の記者会見では外国要人との会見を「国事行為」と位置づけていたが、事実関係を修正した上で、会見の正当性を重ねて強調した。……
毎日新聞 2009年12月21日

■どうも小沢流の憲法解釈には腑に落ちない物を感じてしまいます。それが何かと考えていると、『週刊文春』12月24日号に福田和也さんが『小沢は歴史観がない。切腹ものだ』という明快な批判文を寄稿していました。その中で「内閣は陛下に助言はできても命令はできない」と明確に指摘してから、


……過去に小沢氏はインタヴューで「昭和天皇は内閣の意思を無視して、もしくはそれに反して、いわば形式的な権限である天皇大権を活用して終戦の詔勅を出した」(週刊ポスト05年1月1・7日号)

■と過去の発言を引用して、当時の鈴木貫太郎内閣が陸軍を抑える切り札として身体を張って果たした役目を強調しておりました。最後の御前会議で表決が二分され、最後に御聖断を仰ぐという絶妙のシナリオを作った内閣と天皇との関係がありました。鈴木首相は剛勇で鳴らした陸軍大将でもあり、長く侍従長を務めた人物でしたから最適の人事だったと言われておりますからなあ。小沢流の歴史観では「一億玉砕」に向って転がり始めていた前政権の東條内閣の意志に昭和天皇は黙って従っているべきだった、とでも言いたげであります。

■『週刊新潮』最新号には韓国で江上波夫さんの『騎馬民族国家』を中途半端に引用して、独断的で妄想気味の小沢流古代史を披露していた事実が出ています。チャイナに行ったら参議院選挙が「解放戦争」になってしまうのですから、韓国に行ったら日本の天皇家は「半島出身」ぐらいのことは言い兼ねないのがクラッシャー小沢の不思議なところなのでしょうなあ。同記事では佐原真さんの反論が紹介されており、今の歴史学界では誰も採用していない現状も披露されております。

■個人的に江上さんの本に関しては、御専門だった北方騎馬民族の詳しい研究内容が駆使されている点には感心しながら、興味深く読んだ記憶がありますが、岡田英弘さんの『歴史とは何か』という本に、江上説は朝鮮戦争における北朝鮮軍(ソ連製戦車)の怒涛の南下から受けた衝撃が下敷きになっているという解釈がありまして、佐原さんの著書と合わせて納得したことを思い出した次第。

騎馬民族国家―日本古代史へのアプローチ (中公新書)
江上 波夫
中央公論社

このアイテムの詳細を見る


騎馬民族は来なかった (NHKブックス)
佐原 真
日本放送出版協会

このアイテムの詳細を見る


歴史とはなにか (文春新書)
岡田 英弘
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る

記念撮影の後先 其の壱拾八

2009-12-28 10:42:17 | 外交・情勢(アジア)
■各新聞社の「特例会見」の取り上げ方を産経新聞が比較しておりました。そこでもナベツネの意見と讀賣新聞との違いは明らかです。

各紙社説を列挙すると、波紋の大きさがわかる。……強引な設定には各紙とも厳しい見解を示したが、最大の論点「天皇の政治利用」にあたるかどうかでは、各紙の判断に違いが見られた。産経は会見前の12日付で「政治的に利用されている」と議論の口火を切った。そして15日付で、天皇との会見は胡錦濤国家主席の有力後継候補とされる習氏の存在を日本に印象づけたい中国の意向に沿ったものだと論じ、「明らかに天皇の政治利用であり、会見を求める中国の要求をきっぱりと拒否すべきだった」と主権国家のありようを説いた。

■確かに産経が最もこの問題を大きく、回数も多く取り上げていたように思います。事の経緯を見ると、外務省と宮内庁は何度も「きっぱりと拒否」しているのが分かりますし、交渉役を仰せ付かった平野官房長官も最初は無理を承知で形ばかりの連絡役でしかなったような印象がありますし、鳩山サセテイタダク首相にしてもクラッシャー小沢が激怒するまではルール厳守の姿勢を貫いていたように思えます。


……読売は13日付の冒頭で、宮内庁の羽毛田信吾長官が、天皇の政治利用に当たる懸念を示したのは「当然」だとし、「天皇が時の政権に利用されたと疑念が持たれることは、厳に慎むべきなのだ。その基本を現政権はわかっていないのではないか」と結んだ。東京も、政権が天皇の会見を恣意的に扱えば「象徴天皇を政治利用することになりかねない」と指摘している。

■小沢流の「憲法論」「皇室外交論」が出ていない13日の段階では羽毛田長官の異例の会見が中心テーマになっていますから、ルールが破られて残念だ、という長官の無念さが肯定的に受け取られていたのでした。


朝日は……今回を明確な「政治利用」とは断定していない。「歴史的な政権交代」で鳩山政権や民主党に「不慣れ」もあるとしたうえで天皇の権能に関する憲法の規定にふれ、「政治主導だからといって、安易に扱われるべきではない。今回の件を、悪しき先例にしてはいけない」(13日付)とした。「先例」という以上、特例を認めたといえる。

■先例にされたら堪ったものではありませんから、民主党応援団の朝日新聞の大甘論評は迫力不足と申せましょう。対米外交のみならず宮内庁との折衝でも「不慣れ」では困ります。必殺!仕分け人は憲政史上初の試みでしたから多少の不手際や財務省の影が射すのも仕方が無いかも知れません。しかし、内閣と国会にとって最大の仕事となる「予算編成」まで素人臭い辻褄合わせになっては困りますなあ。首相などは政治資金の取り扱いまで「不慣れ」だったようですが……。


毎日も「鳩山政権の不手際」と批判する一方、「米国とともにアジアとの関係を重視する鳩山内閣が会見実現に動いた事情も理解できる」とバランスをとった。

■多国間の外交には「漁夫の利」は付き物で、特に3カ国間のバランスとなりますと、常に2対1の危険が付きまといます。両方に良い顔をしている間に孤立して、密かに手を結んだ両方から攻められるような間抜けな外交だけは御免蒙ります。欲張り過ぎる者は「二兎を追う者」とも呼ばれ「虻蜂獲らず」にならないように戒める格言がたくさんありますから、御用心、御用心。

記念撮影の後先 其の壱拾七

2009-12-27 18:12:19 | 外交・情勢(アジア)
■30日ルールならぬ「100日蜜月ルール」が切れたとて、マスコミは一斉に鳩山サセテイタダク内閣を攻撃し始めたようです。まさに手の平を返したようだと言いたくもなりますが、無責任な普天間移転問題、「政治とカネ」の問題、「マニフェスト」違反の予算案、そこに「天皇の政治利用」まで重なって来ますと、責める材料が多過ぎて困るくらいでしょうなあ。

■しかし、捨てる神あれば拾う神ありと申します通り、鳩山サセテイタダク内閣と切り離して小沢幹事長を擁護する声が出ているようですぞ。


読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長は19日午前、日本テレビの番組「本音激論!なかそね荘」にゲスト出演し、天皇陛下との会見における「1か月ルール」について、「官僚的なバカバカしいルール作り。弊習、陋習だ」と痛烈に批判した。……「国民の知らないところでそんなルールを勝手に決めている」と指摘、今回の中国の習近平国家副主席と陛下の会談のように、「健康でニコニコと会うことができる能力がある」にもかかわらず、「ルールはルールだ。大国と小国は同じだ」として否定する運用とルールについて「官僚的なバカバカしいルール作りであって、弊習です。つまらぬ陋習だ」と批判した。また、「宮内庁の言うことはバカげている」と同庁の姿勢を切り捨てている。……
12月19日 Record China

■必殺!仕分け人ブームで、正義の民主党VS悪の官僚という単純明快な図式が出来上がってしまいましたが、肝腎の仕分け作業の成果は削減目標3兆円に対して1兆円弱、正義と悪の対比より、嘘と本当、有能と無能との対比をした方が良さそうです。このシリーズの其の八でも言及しました通り「宮内庁法第2条」という立派な法律に基づいて、自社さ連立内閣の合意によって定められたのが「30日ルール」でありまして、決まった時のさきがけ幹事長は今の首相でした。何でも「役人が勝手にやっている」と決め付けるのは乱暴な話でありましょう。

■会見の場で陛下が「健康でニコニコと会うことができる能力がある」ように見えたのは、会見する相手に対して失礼のないように、相手が不快に思ったり心配したりしないようにと、天皇としての役目を果たすために精一杯の努力を続けておられることの証明であって、結果オーライの暴論の材料にしては行けません。それに「ルールはルールだ。大国と小国は同じだ」という考え方は決して官僚的で馬鹿馬鹿しいものでもありません。『週刊文春』12月24日号に以下の逸話が紹介されていました。


……昨年5月、横浜でアフリカ開発会議が開催され、アフリカ諸国の首脳が来日した際……「陛下との会見を希望した国が多かったので、宮内庁の内部でさえ、優先順位をつけてはどうか、という案が出た……陛下は『決して分け隔てをしてはならない』と強くたしなめられた。結局、参加国首脳、全員を招いてのお茶会が開かれました」(宮内庁関係者)

■グループ会長とは言っても、ナベツネさん個人の茶飲み話として片付けておいた方が、新聞社としては宜しいかと思います。実際に讀賣新聞の記事にはナベツネ流の宮内庁批判は出て来ていないようです。


……「本当に大事な方」ゆえの特例と、首相は語っている。外国からの賓客にルール無用の「本当に大事な方」と、ルールを厳守してもらう「あまり大事でない方」がるならば、後者の国名を一つでも二つでも挙げてみよ――そう問われたら、首相は答えに窮するだろう。……お隣の国である。今回の会見は見送り、改めてお招きすればいいだろう。
12月15日 讀賣新聞「編集手帳」

記念撮影の後先 其の壱拾六

2009-12-27 16:12:40 | 外交・情勢(アジア)
■新聞と週刊誌の記事を拾い集めて時系列を再構成してみましょう。「特例会見」に関しては不思議なほど何も語らない山岡賢次国対委員長、そして、日増しに悪評ばかりが高くなっている平野官房長官。どうやら、今回の騒動を大きくしてしまった責任はこの辺りに有りそうな感じが……。

11月下旬、チャイナ側から習副主席の訪日日程が外務省に伝わる。
11月20日、楊外相が首相と会談した後、小沢幹事長と会談し習副主席の来日への協力を要請。。
11月26日(木)、外務省が宮内庁に会見を打診するも翌日に拒否される。

中国大使館の依頼で山岡国対委員長が首相・官房長官・外相・宮内庁長官に電話で「小沢の意向だ!」と圧力。

12月3日(木)、王光亜外務次官に呼び付けられ脅された宮本雄二駐中国大使が外務省に「官邸を説得しろ!」と伝えるが、岡田外相の独断で拒否。

12月7日(月)、崔天凱駐日中国大使の依頼で中曽根大勲位が平野官房長官に電話で「協力してやれ」と言い、首相の指示もあり官房長官は羽毛田長官に電話で要請するも「ルール遵守」で拒否される。

12月9日(水)、崔大使が小沢幹事長・平野官房長官と会談し特例会見と「143人ツーショット」とのバーター取引。小沢が首相側近に電話で「オレの面子を潰す気か!」と罵倒。

12月10日(木)、小沢大訪中団が出発。ツーショット撮影会。胡主席との会談直前、小沢が直接首相に電話し「ゴチャゴチャやっとらんで早くせい!」と恫喝。首相の指示で官房長官が羽毛田長官に再度電話で会見を強く迫る。会談で小沢が「ツーショット」のお礼を述べる。

12月11日、政府が「特例会見」を発表。羽毛田長官が記者会見で「大変、異例であるが、曲げて陛下に会見をお願いした」

12月14日(月)、首相が「判断は間違っていなかった」と発言。小沢幹事長が帰国して「憲法論」会見。

12月15日(火)、天皇陛下と習副主席との特例会見。

■讀賣新聞・週刊文春・週刊新潮などを参照して再構成すると以上のような流れになりますが、『週刊文春』12月24日号には帰国後の定例記者会見で「憲法」「陛下の気持ち」を記者に押し付けて見せた後の話として、完全オフレコの場での発言を暴露しております。


「オレは1箇月ルールがあるから、前からちゃんとやっておくように言ってたんだ。なのに平野は何の調整もしていなかった。それもオレの責任になるのか!」

■なーんだ。「誰が作ったんだっちゅうの!」と言いながら、クラッシャー小沢もちゃんとルールを守ろうとしていたんじゃないか?!とちょっと安心する怒りの言葉であります。でも、12月15日に来日する予定だとチャイナ側が伝えたのが11月20日過ぎだったのですから、最初から無理な話で、「平野が調整していない」のは事実だとしても、特に有能だという評判は微塵も聞かれない官房長官にとっては、ますます重荷としか言いようがありませんなあ。

■元々、就任当初から覇気も精気も感じられない官房長官でしたが、「特例会見」以来、ますます元気が無くなってしょぼくれた会見しか出来ないようなのですが、怖い人が怒鳴りつけたりしたのでしょうか?何にしましても、テレビで小沢幹事長の「潔白」を力説していた細野副幹事長は「特例会見」に関して何の役目も果たしていないのは確かなようです。細野さんは毎年の「長城計画」に欠かさず参加しているそうなので添乗員扱いだった可能性が高い?


……小沢一郎幹事長は15日昼、都内のホテルで開いた自身の政治資金パーティーであいさつし……「天皇陛下の政治利用」にあたると懸念を表明した羽毛田信吾宮内庁長官について「一官僚が記者会見することではない」と述べ、改めて批判した。……「私の信念は間違っていない」と強調した。
2009年12月15日 産経ニュース

■クラッシャー小沢の「信念」と鳩山サセテイタダク首相の「判断」は、両方とも「間違っていないのだそうです。沖縄の辺野古基地移転問題の「判断」も間違っていないことを祈るばかりですが、クリスマスが終わったら突如として「グアム移転は無理」と判断し、その翌日には「ひとつの考え」と言い直すような首相の判断では非常に頼りないのですが……。その点、クラッシャー小沢は違いますなあ。この人の「信念」は本物かも知れません。訪日直前の忙しい時でも、北京に着いて分刻みのスケジュールを消化している最中でも、実に小まめに首相や官房長官に「信念」を伝え続けていたのに、帰国後の記者会見では「自分は無関係だ」としらっと断言してしまいますからなあ。「信念」さえあれば、いくら嘘をついても良いのでしょう。

■岩手県の小沢王国には「天の声」など存在しない!と言い張る陰気な王様の小沢幹事長ですが、これも政治家としての固い「信念」があったればこそ、なのでありましょう。それにしましても、小沢幹事長が自分の信念を自慢していたのが「政治資金パーティー」の会場だったというのは意外でした。金権政治を盛大に批判して選挙に勝った民主党ですが、その批判の標的にされた自公政権が「大臣規範」を作って閣僚の大規模な政治資金パーティを自粛してのを忘れたかのように、讀賣新聞の調査によりますと


……先月6日、名古屋市内のホテルの宴会場に主役の赤松農相が1時間遅れで登場。……民主党の全国会議員423人と47都道府県連にアンケートした結果、政権交代後、9人の議員と8府県連が政治資金パーティーを開いたと応えた。……小沢幹事長も、報道陣をシャットアウトしたパーティーを2度……2万円の会費を払って計数百人が集まった。今月19日、長妻厚生労働相が都内で開いたパーティも報道陣には非公開……
2009年12月26日 讀賣新聞

■長妻大臣は「企業の支援は受けない」と言っているそうですが、パーティを開かない同党議員からは「パーティは政治腐敗の温床」との答えがあったそうですし、今時「2万円のパーティ券を個人のカネで買える人」は居ないという答えもあったとか……。特例・子供手当てを毎月1500万円もオカアチャンから貰っていた鳩山サセテイタダク首相なら、パーティ参加者に2万円ずつ配ってくれそうかも?

記念撮影の後先 其の壱拾伍

2009-12-27 12:29:09 | 外交・情勢(アジア)
■1992年(平成4年)と言えば、クラッシャー小沢にとっても決して忘れられない年であります。同年8月には、自民党副総裁だった金丸信は5億円のヤミ献金が発覚(東京佐川急便事件)して事実関係を認めて副総裁を辞任。法律の不備で何と罰金がたったの20万円の略式起訴だったために国民は激怒したものです。当時の最高権力者と恐れられた金丸さんは轟々たる非難の声に耐え切れず10月14日に議員辞職。それが引き金となって最大派閥の竹下派(経世会)が後継者争いで大揺れが続きまして、10月28日、後に首相となる小渕恵三が新会長に就任したのであります。

■つまり、実質的に最後の自民党政権となった宮澤内閣は、天皇皇后両陛下をチャイナに送り出していた間に、こんな馬鹿馬鹿しい騒動を起こしていたのであります。佐川急便事件に際して金丸邸の大金庫からは謎めいた金の延べ棒やら無記名金融証券の束が出て来たりしたのですが、御本人は「新党結成」のための資金だったと説明したと伝えられたものでしたが、どうやら小沢政権を実現するための軍資金だったとか……。

■今でも憲法は勿論のこと、その他の法律にも詳しい?らしいクラッシャー小沢ですが、経世会の内部で「金丸を守れ!」の声が満ちていた時に、ヤミ献金の「事実関係」を認めて略式起訴で決着させるのが最善の策だ!と提言したのが小沢氏で、目論見が外れて議員辞職にまで至った責任を追及されたのが、羽田孜を担いで宮澤改造内閣発足直後の12月18日に新派閥(羽田派)を作った本当の原因だったという話があります。小沢幹事長にとって「訪中」は鬼門なのか?この人の周辺で波風が立つ時には、何故かチャイナ関連の話が付き物になっているようです。


習近平中国副主席の経団連会館訪問で朝の大手町は日の丸を掲げての抗議活動が行われた。……警察当局は民主党と政府、中国関係者の警備を強めている。15日朝から右翼団体や保守派の活動家が抗議集会を行うなどしており、警視庁などは反発する勢力による不測の事態を未然に防ぐように全力を挙げている。警視庁は、小沢一郎民主党幹事長の警護を強化。小沢幹事長が会見の設定に関与したとの指摘があるためで、自宅の警護に当たる警察官を増員した。また、習副主席が宿泊するホテルでも、通常よりも多くの機動隊員を配置した。……15日に予定されていた習副主席と小沢幹事長との会談は中止になった。
2009年12月15日 産経ニュース

■この種の報道は下手をするとアナウンス効果の影響で、思いもしない新手が現われて混乱と緊張がますます高まる可能性があるものですから、マスコミ各社が自粛しているのか?不思議なくらい小沢幹事長の周辺が緊張しているようには見えないようになっております。実際には「不測の事態」が起きる可能性が高まっているらしいのですが……。別の報道で来年1月27日に予定されていた「くしろサッポロ氷雪国体」の開会式が予算不足を理由に中止になったそうであります。特に恒例となっている御臨席いただく皇族方の警護の予算が足りない!という話が先にありました。それを考えますと、クラッシャー小沢一人を守るために無駄な税金が使われていることが気になります。これが長期に及びますと、必殺!仕分け人達が搾り出した税金節約分を磨り潰してしまうかも知れませんなあ。

■天皇陛下の御心中まで透視してしまえるクラッシャー小沢は、宮内庁長官に辞任を求め、新聞記者はバカだと言い切り、マスコミ各社がウソを垂れ流して自分を中傷し続けている!と、まったく反省の色は見せず厳重な警備にがっちり守られながら、自分(だけ)は正しい!と発言し続けている模様です。鳩山サセテイタダク内閣に対する支持が急速に低下しているのは内閣・政府の問題で我関せず、民主党への支持も下がっていることには聞こえない振りをしているようですが、小沢幹事長の周りを固めているのは警備陣だけではなく、偉大ではないイエス・マンの大群らしい……。


民主党の細野豪志副幹事長は20日のテレビ朝日番組で……「特例会見」に記者会見で懸念表明した羽毛田信吾宮内庁長官に対し「中でいろいろ言うのはいいが、外向きに出すのはどうなのか」と批判した。同時に「新政権が(皇室外交という)デリケートな問題に不慣れで、内閣と宮内庁の意思が通い合わなかった」と述べ、鳩山政権の対応にも問題があったと指摘した。

■これは来年春に終了すると言われている『サンデープロジェクト』での発言です。細野副幹事長の表情からは、ただならぬ緊張が画面を通して伝わって来ましたから、発言内容は相当に練り込んで来たのでありましょう。要するに、悪いのは宮内庁長官と内閣の両者ということですから、天皇陛下と小沢幹事長は「悪くない」と言っているわけであります。しかも、問題は「意思疎通の不足」で、その原因は新政権が「不慣れだった」から。本当に今でも不慣れなら、外交などは全面的に開店休業状態にしておくのが国益に適っているのではないでしょうか?


小沢一郎幹事長が首相官邸に会見実現を働き掛けたとの見方に関しては「訪中の準備で自分が一番小沢氏の近くにいたが、そういう要請をした事実はないと思う」と否定した。……
2009年12月20日 産経ニュース

■末尾を「思う」にして万が一の事態に備えた発言です、「一番近くにいた」人物の証言は重大な意味を持ちますから、真相が暴露されたりすると、細野発言は吊し上げの対象となるでしょう。同じ番組内で、今回の訪中団は何も特別なものではなく、すべて毎度お馴染みのイベントが粛々と進められただけとも言っていたようです。

■「一番近くにいた」人が言っている事だから、信じて上げたいのは山々ですが、週刊誌が掻き集めた裏話を参考にすると、細野副幹事長はクラッシャー小沢の小間使い役で選挙絡みの雑用しか仰せ付かっていないような印象を受けるのであります。

記念撮影の後先 其の壱拾四

2009-12-23 09:48:30 | 外交・情勢(アジア)
■日中間の要人訪問というものは、こちらとあちらとではまったく意味と重みが違います。それを知っているからこそ、民主党の誰かさんと誰かさんは「特例会見」を強行したのでありましょう。

……共産党は、毛沢東時代から天皇について、侵略戦争を絡めた負のイメージを持ちながらも「元首」ととらえ、日本で尊敬されるその重みを認識し、味方に付けることで日本国民の対中感情好転につなげたい「取り込み対象」として重視してきた。……1980年代から天皇訪中を本格的に打診し、天皇、皇后両陛下は92年に初訪中した。銭元副首相は回顧録で、天皇訪中は89年の天安門事件を受けた西側諸国の制裁を「打ち破る最良の突破口だった」と振り返ったが、中国側は「日中友好」を前面に天皇の政治利用も辞さないしたたかさを持つ。

■その「したたか外交」の片棒を担がされる格好になったクラッシャー小沢も、ちょっと可哀想な気もしますが、『週刊文春』の最新号がオフレコ情報を含めて舞台裏を詳細に再現してくれておりまして、やっぱり訪中直前に仕掛けられたバーター取引だったようですなあ。 


習氏も「胡氏が副主席時代の98年に実現させた天皇会見という前例を踏襲し、『後継者』として国内向けに権威を高めたかった」(中国筋)。さらに国交正常化30周年(02年)や昨年の北京五輪の機会にも希望した念願の皇太子さま訪中に向けた布石として皇室との関係強化は「自分の得点となる」(日中関係筋)と見たのは確実だ。

■そのような北京政府側の事情などすっかりお見通しの皇室側だからこそ、敢えて「30日ルール」の再確認を求めたものと推察されます。『週刊文春』の当該記事を読みますと、ルールを守れなかったのは習副主席が何が何でも出席しなければならない重要な「12月の中央経済工作会議の日程が決まらない」という御家の事情があったからのようです。そんなにバタバタしているのなら、日を改めて日本側のルールに従って会見しましょうよ、というのが宮内庁側の判断で、板挟み状態になっていた外務省も了承して話は終わり、鳩山サセテイタダク首相も納得したはずが……。



……今のところ中国紙は「民主党は『政治主導』体制を推進しており、宮内庁の主張する『1カ月ルール』は鳩山改革の対象の一つだ」(国際先駆導報)と鳩山政権の決定を歓迎し、習氏自身も14日の鳩山首相との会談で「(日本側の)周到な手配に感謝する」と表明、中国側が強く要求した天皇会見は、日本側が決めた問題との認識を強調した。「ポスト胡」へ敏感な時期を迎える習氏にとって、今回の特例会見が中国で国内問題化し、日本や天皇への複雑な国民感情が自分に向かうことも警戒しているとみられる。
2009年12月15日 時事通信

■日本が勝手に「特例会見」をしたんだ!という理屈は酷いの一語に尽きますが、それを許したのは鳩山サセテイタダク内閣の責任であります。「決めないこと」しか決められない首相が、珍しく自分の決定は正しかった!と言い張っているのですから、真の権力者が誰であろうと、首相が全責任を負わねばなりますまいなあ。それに加えてルールを曲げて「特例」を許すのなら、それなりに元を取る工夫が必要でしょう。どうも日本外交は元を取るのが下手なようです。

■北京政府の外交にとって日本の皇族がどれほど重要なものなのかを如実に示したのが1992年秋の両陛下による御訪問でありました。89年6月の天安門事件で世界中から激しい非難が押し寄せ、国際的に完全に孤立していたチャイナは、海外からの投資が止まって前年までの急成長は幻となって実質的なマイナス成長になってしまい、古い馴染みの共産圏諸国との外交関係を修復してみても、東欧革命の嵐に続いて91年にはソ連が崩壊。万事休すかと思われた時にすがった藁が日本でありました。

■1992年の10月23目、北京首都空港から市の中心部まで5m置きに警官を並べ、歩道は動員された市民で溢れ、配給された小旗が振られる「熱烈歓迎」。有名な当時の銭外相の回想録には「日中関係2000年の歴史のなかでも例がない日本の天皇陛下訪中の瞬間である」と書かれているとか……。江沢民総書記、楊尚昆国家主席、李鵬首相などの最高指導者と次々に会見して文字通りの下にも置かない歓待ぶりだったのでした。

記念撮影の後先 其の壱拾参

2009-12-21 13:15:13 | 外交・情勢(アジア)
■週刊誌も新聞も特例会見を大きく取り上げ、テレビもワイドショーや週末のニュース・ショーでこのネタを材料にして存分に楽しんでいたようです。だんだん感情的になって来た日本国内から目をチャイナ現地に移してみましょう。

(12月)16日付の共産党機関紙「人民日報」傘下の中国紙「環球時報」は、天皇陛下と中国の習近平国家副主席の会見に関し「“特例”会見で示された積極姿勢は鳩山首相の中国傾斜の表れ」として、日中関係を重視する鳩山政権の日程調整で会見が実現したことを評価する内容の記事を掲載した。人民日報などの中国主要各紙は会見の事実関係のみを伝えた。……会見実現が日本で反中感情を刺激し、抗議行動が起きていることは報道していない。中国内での対日感情への影響を避けようとする狙いがあるとみられる。
2009年12月16日 産経ニュース

■「特例」の会見が実現したのは、チャイナが偉大で「特別」な国だからだ!という論理は御馴染みのものですから、国内向けの報道はもっと加熱気味にはしゃいだ書き方になっても不思議ではないのですが、ゴリ押しに成功した在日外交スタッフ辺りが、一旦は「してやったり!」と鼻高々で鼓腹撃壌、大喜びしたものの、波紋の広がりを見て「ちょっとやり過ぎたかなあ」くらいの事は考えたのかも知れません。今回の事案であまり偉大な祖国を宣伝し過ぎると、愛国運動に事寄せて「日本は生意気だ!失礼だ!」とデモが流行でもすると、それに紛れて各種暴動が頻発しそうですから、既に過ぎた事として忘れてしまうことにしたのかも?

■民主党の中には「次期主席候補」などと気の早い皮算用をしている向きもあるようですが、権謀術数渦巻く激しい権力闘争と暗闘が伝統の北京政府のことですから、すんなりと順当な権力移動が起こるとも思えません。特例会見を実現させた習副主席のライバルとされる李国強の方がクラッシャー小沢との親交が深いから、宮内庁にねじ込むほどのサービスを小沢幹事長がするはずがない、という説も流れているようですが、史上最大の訪中団を率いて出発間近だった小沢名誉団長としては、足元を見られて憎まれ役を演じざるを得なかった状況証拠は揃っておりますからなあ。


……習近平国家副主席は16日、北九州市を視察し3日間の訪日日程を終了した。中国の次世代指導者の“お披露目”という意味を持つ今回の訪日は、日中の親善をアピールすることが目的だった。……滞在中、与野党、日中友好団体、地方自治体など多くの日本側の関係者と交流したが、東シナ海ガス田共同開発、中国製ギョーザ中毒事件など日中間で懸案となっている具体的事案にほとんど踏み込まず、「今後の日中協力の大切さ」を繰り返し強調した。16日付の中国メディアも、「特例会見」による日本国内の波紋にほとんど触れず、今回の訪問を「順調」「成功」と報じている。

■まるで訪中した小沢幹事長と打ち合わせでもしたかのような当たり障りの無い「親善」「交流」の3日間だったようです。どうして「1箇月ルール」を守れないタイミングで訪日が決まったのか?胡錦濤主席が西方向の中央アジア歴訪に合わせて東方向の日本を訪れるように画策でもしたのか?などと邪推でもしないと、訪問自体が非常に形式的である上に目的もはっきりしないものだったことからも、急いで決めた理由が分かりません。


しかし一方では、「訪問はむしろマイナス効果が大きい」との見方もある。北京の日中関係筋によると、中国側は2012年の国交正常化40周年に合わせて天皇陛下か皇太子さまの訪中を希望しているが、今回の特例会見によって実現が難しくなる可能性もあるという。同筋は「多くの日本国民は、今回の中国側の強引な要請手法に不満をもっており、これからは中国による皇室の政治利用への警戒がさらに高まるのが必至だ」と分析している。
2009年12月16日 産経ニュース

■もしも、本当に「40周年」記念式典に天皇の訪中が無くなれば、胡錦濤主席から特例会見を強行した事を習副主席は叱責されることになるのかも知れません。今回の形式ばかりの親善訪問と40周年記念行事とは比べて見れば、本来は「大事の前の小事」として宮内庁の丁寧な拒否返答を尊重しておくべきだったと冷徹に計算しているエライ人達が多そうです。そうなると宮内庁批判までして泥を被る役目を果たしたクラッシャー小沢の立場は無くなってしまいますなあ。

記念撮影の後先 其の壱拾弐

2009-12-21 10:51:46 | 外交・情勢(アジア)
■記事の続きです。

アジアでの人民元の浸透作戦は、まさしく解放区方式を思わせる。まず国境周辺のベトナム、ラオス、ミャンマー、北朝鮮、さらにロシア極東部と交易を通じて人民元建てのビジネスを活発にする。……出稼ぎ労働者や経営スタッフを大量に送り込む。中国資本はこの数年間で人民元専用の経済特区をラオスやミャンマーから租借して建設した。中国資本が人民元専用のカジノ賭博場を建て、ギャンブル好きな中国人観光客を人民元の札束を手になだれこませる。特区内の公用語、標準時間、通貨のすべては中国と同じである。……ASEAN全域が中国の自由貿易区になることで人民元を一挙に東南アジア全域に普及させるチャンスが到来した。

■民主党政権は日本経済を輸出型から内需型に大転換する!と大見得を切って、財務相は激しい円高を容認するような態度さえ取ったのでした。政権交代が起こったからと言って、戦後60余年に亘って積み上げて来た輸出大国のノウハウを一斉に捨ててすべての企業が内需型に大変身など出来るはずもなく、民主党のマニフェストにも「雇用と経済を育てる」と称して中小企業の救済策が並べられております。政府が米国と距離を置いて北京政府に急接近する姿勢を見せたら、苦境にある企業は雪崩を打って脱出移転を始めるでしょうから、国内はぽっかり空洞化して生産工場が消え、金融機関も後を追う?雇用を守る諸政策がマニフェストには列挙されていますが、肝腎の働き口が消失したら、就職氷河期はますます厳しくなって行くばかりでありましょう。


……人民元のアジア通貨化作戦の担い手は、最大の国有商業銀行である中国工商銀行と国際化が最も先行している中国銀行である。まず工商銀行は09年9月、インドネシア企業向けに人民元を融資した。中国企業との貿易決済用で……これを機に、ASEAN向けなど対外貿易決済用の人民元資金融資を一挙に拡大するつもりだ。中国工商銀行はマレーシアで商業銀行免許を取得し、現地法人の設立準備を進めている。タイでは大手の地元銀行買収に乗り出した。中国銀行は香港法人を拠点にインドネシア、シンガポール、タイ、マレーシアでの支店で人民元決済業務を拡大させる。10月下旬には、ブラジルと中国の企業に対して初めて人民元決済融資に踏み切った。

■既に東アジア共同体が決算通貨においては出現しつつあるというわけですが、それを鳩山サセテイタダク首相はどう見ているのでしょうなあ?友愛の精神で人民元経済圏に日本を溶かし込んでしまうお心算か?


……香港に一大拠点を持つ英国の香港上海銀行グループ(HSBC)は11月、インドネシアで人民元建ての貿易決済サービスを開始した。……貿易金融、インドネシア・ルピアと人民元の両替、輸出入金融など幅広く人民元取引サービスを提供する予定だ。さらにマレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム、ブルネイにも同様の業務を展開する。

■サッチャー政権以来、物作りを止めて熱心に金融工学を発展?させて来た英国ですから、かつての植民地でせっせと金儲けしようとするのは当然の流れなのでしょうなあ。大量に刷って国内に溢れ返っている人民元は、近いうちにバブルを破裂させて大変なことになるだろうと言われている一方で、ASEAN地域に放出してバブルをもっと膨らませ続けることで破裂を先送りする腹積もりなのかも知れませんが、それが崩壊したらさぞや凄まじい恐慌になるのでしょうなあ。


中国が思い切った人民元経済圏拡大に踏み切るきっかけになったのは「リーマン・ショック」である。中国は未曾有の金融危機が起きると、ただちに人民元をドルにペッグ(釘打ち)し、対ドル・レートを固定した。中国の取引先は為替変動リスクを被る恐れがなくなり、相手も人民元建て貿易決済を受け入れる。同時に、ドルの大量発行にあわせて人民元札の印刷機をフル回転させている。人民元の大河は周辺アジアに注ぎ込み、拡散する。

■リーマン・ショックで外需が蒸発して真っ青になった日本は、新政権が目論む内需拡大を支えるはずの雇用と収入が激減したのですから、やはり「外需が中心だ!」と鳩山サセテイタダク首相が得意とする「前言撤回」、クラッシャー小沢の「豪腕」でマニフェスト丸ごと棚上げ!新たな輸出先を東アジア全域に求めて米国・チャイナ両国と陣取り合戦を始めるのでしょうか?既にスタートで出遅れているような気もするのですが……。


……国際的な準備通貨として円のシェアはこの10年間で半減し、3%にすぎない。日本の通貨関係者は、これまでの無策を押し隠して「アジア共通通貨単位」という机上計算上の共通通貨構想をきまじめに中国側に働きかけている。中国はそんな「友愛クラブ」の発想を外交儀礼で受け流しながら、地域の標準決済通貨国の座を射程内におさめたようだ。
2009年12月20日 産経ニュース

■友愛の海になるはずの東シナ海では日本の海上保安庁の巡視船が命懸けでチャイナの海洋調査船と対峙する事件が頻発、麻生前政権の置き土産で日本最西端の与那国島に自衛隊を常駐させることを決定しているそうですが、それを知ってか知らずか、鳩山サセテイタダク首相は「友愛の海」構想を打ち出し、東アジア共同体へと妄想?話は広がって行くのであります。

記念撮影の後先 其の壱拾壱

2009-12-21 10:51:27 | 外交・情勢(アジア)
■北京やソウルでは羽目を外して軍事・外交に関して発言していたクラッシャー小沢でしたが、国内では沖縄の基地問題に関して党務に専念する幹事長の立場を隠れ蓑?にでもするかのように、目立った発言は控えているようですが、かつては以下のように語っておりました。

……日本に駐留する米軍の7割以上があるというのは、沖縄の県民に対して申し訳ない。全国民がそう思うべきだと思います。

■2006年10月、沖縄県知事選挙に関連して述べたものですが、ここからは「県外」移転が望ましいから、他の地方自治体も協力しろ!という意味が汲み取れそうです。グアムなど「国外」への移転退去までは読み取れませんが、沖縄基地問題を「全国民」が本気で考えねばならない、というメッセージはよく伝わって来るのですが、普天間問題で大揺れの真最中にあの大訪中団と特例会見が同時進行していた有様を見た後となりますと、別の懸念が出て来ます。

■『週刊文春』12月17日号に富坂聡さんが「沖縄が中国になる日」という刺激的な題名の文章を書いておりまして、その中に「沖縄問題に詳しい政界関係者」の話として、こんな一節があります。


「11月8日の二万人集会で、民主党の喜納昌吉参議院議員は『自決権を主張する』と事実上の独立宣言をしました。県民投票で50%以上を取り、周辺二カ国が承認すれば、沖縄は独立できるのですよ。沖縄の地政学的な重要性を考えれば、二カ国の承認などすぐに集まる。少なくとも中国は賛成してくれるでしょうね」

■先の総選挙では「県外・国外」移転を公約にして立候補した民主党候補が地元で全員当選している事実を鳩山サセテイタダク首相は何度も指摘しておりますし、この「自決権」発言も喜納昌吉さんが民主党参議院議員であるのですから、党代表の鳩山サセテイタダク首相が明確に否定しないところを見ると、党内でも一定の理解が得られているのか?と勘繰りたくなります。そこに民主党議員142人が北京に大挙して渡って熱烈歓迎を受けている光景を重ね合わせると、米軍を追い出した場合に生ずる沖縄の基地経済の空白を、外貨を溜め込んでいる北京政府に肩代わりさせると同時に、現在の米軍基地より若干小さめの基地を有料で提供するなどという、トンデモない構想を民主党内で練っている輩が居ないとも限りません。

■長引く不況に喘ぐ今の日本で、「国民の生活が一番!」という政策を考えれば、チャイナ市場への輸出を大幅に増やして輸入国から輸出国に転じようとしている米国と競合することになりそうです。そうなれば小沢幹事長の言う「世界戦略」と鳩山サセテイタダク首相が模索する「東アジア共同体」とが合体して、日本を人民元を基軸通貨とする新秩序の中に流し込んで行くことになるのではないか?という恐ろしい話があるとか……。 


中国の習近平国家副主席が来日し、鳩山由紀夫首相提唱の東アジア共同体構想に相づちを打ってみせたが、腹の底では日本の甘さをせせら笑っているかもしれない。中国は東アジアを「人民元の海」にするための布石を各所で打ち終わり、2010年から本格的に戦略展開する用意を整えた。……中国は1月、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定を発効させる。中国はこの自由貿易対象地域全体を「自由貿易区」と呼ぶ。この用語は何やら、「解放区」を連想させる。解放区とは1930年代から1949年の中華人民共和国建国まで、中国共産党が日本軍や蒋介石総統率いる国民党政権との戦いを通じて占拠した地域のことである。解放区の統治と拡大のためには武力ばかりではなく、解放区の銀行が発行する紙幣「辺区劵」が日本の軍票や国民党の「法幣」を駆逐、圧倒する必要があった。毛沢東はこの通貨戦争で最終的に勝利し、乱発、乱立していた通貨を現在の人民元(中国語では「人民幣」と呼ぶ)に統一した。人民元は通貨戦争の遺伝子を受け継ぎ、その象徴は勝利者毛沢東の肖像でなければならない。

■自民党政権が世界各地で盛んにFTA交渉が次々にまとまって行くのを指を咥えて眺めていたばかりに、虚しい「内需拡大」の掛け声を余所に日本国内の企業はどんどんFTA経済圏へと脱出!この産経ニュースが流した人民元の経済戦略をかつての「解放区」に擬(なぞら)える考察は、北京で選挙を「解放戦争」に喩(たと)えて見せたクラッシャー小沢の発言と共鳴しているような不気味なものを感じてしまいます。

記念撮影の後先 其の壱拾

2009-12-20 18:02:23 | 外交・情勢(アジア)
■盛大な熱烈歓迎の大宴会の一夜が明けた12月11日は、クラッシャー小沢幹事長にとって一生忘れられない一日だったのかも知れません。

民主党の小沢一郎幹事長は11日、北京市内の中国国防部で、梁光烈国防相と会談した。小沢氏は「中国の軍の近代化、強大化により、日本でも中国脅威論という名の下に防衛力強化の意見が根強くある。中国軍部の皆さんにはぜひ頭においてほしい」と述べ、中国の軍拡に懸念を表明した。「中国の軍は大きな国土と国境線を守るためで覇権を求めるものではない。軍事費は他の国と比べそれほど飛躍的な増加ではない」と反論した。これに対し小沢氏は「専守防衛の原則の下で今後も国防政策を進めていただきたい」と語った。……
2009年12月11日 産経新聞

■「大きな国土と国境線を守るため」に、東シナ海のガス田周辺やら沖ノ鳥島の海域やら、チャイナの海軍がうろちょろしているのか?航空母艦を急いで建造しているのも「専守防衛」が目的なのか?対米関係を動揺させても平気でいられるのは民主党の中核に「中国脅威論」が存在しないからなのか?日米安保を根本的に見直すのなら、日本は大急ぎで重武装化して極東の軍事バランスを調整しなければならないはずなのに、民主党の予算では防衛費を削減しようとしているのは変な話であります。

■防衛・軍事に関してなかなかユニークな意見を持っている小沢幹事長は、1990年8月末日に毎日新聞のインタヴューで以下のように発言しているのだそうです。


……平和のためのひとつの手段として武力があるのに、日本人は「武」がつけば全部だめ、となってしまう。

■この発言は湾岸戦争に自衛隊を派遣しようと自民党幹事長として外務省と激しい折衝を繰り返して法案を提出させたクラッシャー小沢が、野党の大反対で廃案になった直後のものです。後に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法)」が成立したものの、日本は何とも珍妙な国際協力をする国になっております。更に珍妙なのは「自衛隊派遣法」を潰した今の社民党と連立を組んで沖縄問題を大混乱させていることでありましょうなあ。

■2007年の秋には雑誌『世界』に公開書簡が掲載され、その中に以下の一文が含まれております。


……国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない、むしろ憲法の理念に合致する……

■献金疑惑で選挙前に民主党代表を辞している小沢幹事長ですが、もしも代表のままだったら沖縄の普天間移転問題でどんな言動を見せたのでしょう?有名な「第七艦隊」発言が思い出されます。


……米軍再編に絡む問題は、米国に唯々諾々と従うのではなく、私達も世界戦略を持ち、日本に関連する事柄はもっと日本自身が役割を果たすべきだ。……軍事戦略的には(米海軍)第七艦隊がいあるので極東でのプレゼンスは十分だ。……

■この発言は選挙モードに突入していた2009年2月24日のものでした。それから3箇月後、西松建設疑惑で公設秘書が逮捕されて党代表を辞任することになるのですが、選挙用マニフェストには小沢幹事長が主張する「世界戦略」の欠片も見当たらず、具体的な「沖縄」の地名は何故か削られて、「日米地位協定の改定の提起」と「在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と、何となくぼんやりとした表現になっているのであります。何度読んでも、ここから沖縄の普天間移設問題を白紙に戻す!という決意は読み取れませんでしたなあ。はっきり書かれていれば、選挙前から米国が騒ぎ出していたはずです。

記念撮影の後先 其の九

2009-12-20 16:21:24 | 外交・情勢(アジア)
■まだまだ長く尾を引き続ける「特例会見」問題。あまりに騒動が大きくなって、クラッシャー小沢が得意の「雲隠れ」状態になっているとの噂が流れているとか……。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のか選挙マニフェストの内容を大幅に変更する「党の要望」を政府に提出する前に、小沢幹事長は原田総務相や馬渕国交副大臣などを呼び付けて予算削減の調整をしたそうですが、忙しくて呼び出しに応じられなかった長妻厚労相には電話で或る政策に対して「党としては絶対に反対だ!」と語気を強めたとの報道がありました。その時「羽毛田も厚生省だったな」と宮内庁長官が元厚生次官だった昔の話を掘り返していたそうですが、これは「党として許さんぞ!」という意味にも取れますなあ。

■あの特例会見が、北京での大歓迎とのバーター取引で強行されたのかどうか、今となっては藪の中で、それをいい事に民主党内では会見の正当性が「踏み絵」になって、小沢・反小沢のリトマス試験紙みたいな取り扱い方になっているようでありますが、ここは落ち着いて大訪中団が何をして来たのかを再確認しておこうと思います。其の八の続きです。


……小沢一郎幹事長が名誉団長を務める総勢600人超の同党訪中団は11日、グループに分かれ、北京市内の各地を視察した。小沢氏は11日夜、一行と別れ、韓国・ソウルへ移動した。……「成果は諸君が見た通り。胡錦濤主席も、あそこまで誠意を持ってやってくださったことは多分、いまだかつてない」小沢氏は11日、ソウルへの出発前に、北京市内のホテルで同行記者団に、訪中の成果をこう強調した。

■訪問団は置き去りで、親分一人は北京に一泊したのみで韓国に飛びましたから、本当に慌しい滞在だったことが分かります。その他大勢はお決まりの「謁見」セレモニーと宴会と若干の見学・交流の予定に従ってぞろぞろと移動し、小沢幹事長自身はぎっしり詰まった会見予定を消化したようなのですが……。


胡氏は10日夕、人民大会堂の北側入り口で小沢氏ら民主党首脳を待ち受け、握手で出迎えた。訪中団の名誉副団長の輿石東参院議員会長は胡氏の手を押し頂くように両手で握り、頭を下げてあいさつした。胡氏とツーショット写真を撮った議員は「後援会の会報や選挙のときにぜひ使いたい」と笑顔を見せた。中国側の10日夜の歓迎レセプションも盛大だった。人民大会堂の広大な「宴会庁」に並ぶ70卓のテーブルには、訪中団にまじって中国共産主義青年団に所属する芸能人やオリンピック選手が座った。舞台では女性らの太鼓や踊り、歌のショーが繰り広げられた。小沢氏もすべてのテーブルを回って、訪中団の議員や後援会関係者らと写真に収まった。……

■政治家の国際交流なのに、日本の国益となるような動きが目立たないのは「草の根交流」だから、という便利な言い訳が用意されております。でも国会議員が142人も参加しているのですから、国民の負託に応えられるような言動が期待されます。輿石会長は日教組を支持団体としていますから、イデオロギー上の思い入れがあっての「両手握手」だったのかも知れませんが、うっかりツーショット写真を撮った議員の中には早々と後悔している人も出て来ているのではないでしょうか?「会報や選挙用パンフレット・ポスター」などに本当にツーショット写真を活用できるかどうか?事と次第によっては封印せざるを得なくなるかも?


「党レベルの交流は、政府レベルでは難しいものについても忌憚ない話し合いができればいい」小沢氏は胡氏との会談でこう述べた。だが、11日以降の訪中団の日程は、北京市内の汚水処理場の見学などで中国側との討論は計画されていなかった。目的が「基本的に草の根交流」(小沢氏)だったからだ。

■「忌憚のない議論」が出来るような準備をして行った議員は居たのか?成田空港の売店で北京の観光ガイド雑誌を買っている議員の姿まで報道されてしまいますと、日中関係に影響を及ぼすか否かのレベルではない参加者が多かったような印象がありました。日中間の懸案事項に関して政治家としての見識をしっかり持って参加した議員は何人いたのでしょう?


11日午前には、約30人の議員らが中国外交部を訪ね、約1時間、アジア担当の胡正躍次官補と面談……。「東アジア共同体に向けてどんな活動をやったらいいか、その辺を先生(胡次官補)に教えていただきたいと思います」(若泉征三衆院議員)

■自分の党の選挙用マニフェストに大書されている「共同体」構想を実現する方法を「教えて頂く」のが訪問の目的だったのか?!それなら、東アジア共同体というのはチャイナ主導で形成されることが決まっているのか?!


「小沢幹事長が大訪中団を率いてこられたのは、小沢先生と民主党の先生方が中日関係を重視している積極的な姿勢を示しており、高く評価します」(胡次官補)……「小沢氏の率いる大規模な代表団の訪中は、対内的には、小沢氏が自らの政治権力を示すためのものであり…」。中国現代国際関係研究院の劉軍紅研究員は、国際関係専門紙「環球時報」にこんなコメントを寄せた。目立ったのは度を過ぎた友好ぶりと142人もの議員を動かし、中国側からも一目置かれる小沢氏の存在感ばかりだった。
12月12日 産経新聞

■党務と政務を峻別して内閣一元化して政治主導で政策を実行する、と言っていたのに、訪中以後のクラッシャー小沢は自分の権力が絶頂期にあると確信したかのように、外交・皇室・予算に次々と介入し始めたのは、単なる偶然ではないのかも知れませんなあ。小沢の意見が党の意見とされて、党が政府を振り回し続けるのなら、日本の外交は大きく舵を切ってしまうことになりそうです。国民をチャイナ側に引き摺って行く前に皇室を引っ張り込んだのなら、やはり、これは大問題でありましょう。

記念撮影の後先 其の八

2009-12-18 11:52:59 | 外交・情勢(アジア)
■草の根「長城計画」を大成功させて意気揚々と凱旋帰国してみたら、宮内著の何とか言う役人に文句を言われたと怒髪天を衝く怒りを露にしてしまったクラッシャー小沢は、得意の?憲法論を振り回して自分の「信念」を内外に示したものの、上手の手から水が漏れると申しましょうか、カッパの川流れと申しましょうか、もしかしたら虎の尾を踏んでしまったのかも?

自民党の「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」(委員長・石破茂政調会長)は17日、党本部で会合を開いた。……大原康男国学院大教授(皇室制度史)は特例会見があった15日は宮中で「賢所御神楽(かしこどころみかぐら)の儀」の祭祀が行われたことを明らかにし、「(お出ましになった)天皇陛下がお心を安らかに保たれなければならない日だった」と語った。小沢氏が「30日ルール」を「法律ではない」と発言したことには「宮内庁は宮内庁法第2条に基づきルールを作った」と反論した。また「他の国にはルールを守るよう求め、中国の無理強いだけを認めるのは極めて卑屈な政治的配慮だ」と、首相らを批判した。

■ちょっと危なっかしい憲法解釈を披瀝した上に、宮内庁を下に見る露骨な態度を示してしまったのは大失敗だったようです。関係各界の専門家が一斉に批判を始めたら、残念ながらクラッシャー小沢に勝ち目は無さそうです。立法府の実力者として法律の専門家でなければならない立場なのですが……。


百地章日大教授(憲法学)は「30日ルールは、自社さ連立政権で、鳩山由紀夫首相が新党さきがけ代表幹事だったときにできた」と述べた。羽毛田信吾宮内庁長官が小沢氏の辞任要求を拒否したことについては「30日ルールを無視した内閣の政治的要求を拒否するのは当然だ」と擁護した。また、外務省側は特例会見までの経緯について口頭で追加説明したが、文書での回答は岡田克也外相の指示を理由に拒否した。
2009年12月17日 産経ニュース

■元気だった頃の自民党だったら、舌鋒鋭い議員と腕力自慢の議員が一斉に反撃の狼煙を上げて大いに士気が高まったに違いないのですが、惨敗の元凶でしかない年長者と日和見続きの中堅、どれも小粒で大方は後援会と役人頼みの世襲議員ばかりの集団になってしまっては、民主党に向って吹いていた風が弱まったのに乗じて政局を巻き返しに出る元気が無いようにお見受けいたします。

■マニフェストに並んでいた公約がドミノ倒しのように引っくり返り、党幹事長と代表総理には政治資金の深い疑惑が噴出し、外交は大混乱!そこれに加えての天皇陛下の政治利用問題が出て来たのですから、弁慶の七つ道具が揃ったようなものです。ここで責め切れないようだと、自民党の復活は当分無理だということになりそうです。だからと言って政権与党の責任感がなかなか身に着かない生煮え状態の民主党を全面的に支持するわけにも行かず。有権者は来年の夏まで頭を悩まし続けることになりそうです。