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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾八

2008-11-24 14:24:40 | チベットもの
■でも、国際社会では五輪大会を「大成功させた」という既成事実が作られると、その国の政府は肩で風を切って歩けるもののようですなあ。

2008年11月9日、中国の胡錦濤国家主席は8日夜、オバマ次期米国大統領と電話で会談し、両国の今後の関係発展に向けて話し合いをもった。……胡主席は「国交樹立30年の間に、中米両国間に確かに紆余曲折はあった」と認めながらも、「総じて前向きに関係を発展させてきた」と評価。「世界最大の発展途上国と世界最大の発展国として、中米両国は世界平和と発展に貢献するという共通の重要な責任を負っている」……「両国トップレベルでの対話を続け、2国間の交流や協力範囲を拡大しながら、台湾問題などデリケートな問題をさらに踏み込んで話し合いたい」と語った。

■この電話会談には興味深い裏話があるのですが、それは後述。胡錦濤主席が言う「紆余曲折」には、核使用の可能性さえあった血みどろの朝鮮戦争もソ連と黒幕競争をしたヴェトナム戦争も丸ごと含まれているのは明らかで、それで済むなら日本の「村山談話」でも「天皇陛下のお言葉」でも、しっかり借用させて頂きたいものですなあ。この「紆余曲折」が「国交樹立30年」という期間を限定して使われている所にも注意が必要でしょう。蒋介石が率いた中華民国にこそ米国は多大な軍事援助を続けていたのですから、後の国共内戦時代には毛沢東率いる共産党軍は米国製の武器弾薬で多大なる犠牲を払ったことは封印されているわけです。日本も同じ外交手法は使えないのでしょうか?いろいろと名目を作ってはいくらでもカネを出すような国に対しては、これほど気を使った言葉遣いはしないのでしょうなあ。

■それにしましても「世界最大の発展途上国と世界最大の発展国」とは、何とも上手な表現であります。発展途上国だと言い張ることで、世界最大の地球温暖化ガスを好き放題に放出できますし、一方の世界最大の発展国はイラク戦争で泥沼に嵌まって身動きが取れない足元で、金融危機のクラスター爆弾が破裂したのですから、破片が飛び散った世界は大変な迷惑を蒙っております。まったく「世界最大」というのは傍迷惑なものですなあ。


これに対しオバマ氏は「中国は偉大な国家であり、中国の発展と成功は米国の利益に繋がる。現在の国際状況を考えると、米中関係の発展は両国にとってだけでなく世界にとっても有益」と述べ、治安や異常気象、地球温暖化などの問題に両国が協力して積極的に取り組むことを求めた。

■京都議定書を蹴っ飛ばした国と、議定書の「最大の欠陥」を利用して迷惑なガスを出し続ける権利?を主張する自称・途上国の首脳同士が、地球環境をネタにして互いに当て擦りを演じているように見えないこともありませんなあ。本当に「協力して積極的に取り組」んでくれると嬉しい!


「今回の世界的金融危機は国際金融システムのほころびを露呈した」と話す胡主席は、「国際社会はこれを教訓にして、国際金融システムに必要な改革を推し進めていくべきだ」と主張。オバマ氏も世界的金融危機について中国首脳とのトップ会談の必要性を認める発言を行った。
2008年11月10日  Record China

■「教訓」にするのは危機を回避した後です!オバマ新大統領としては「トップ会談」で大穴が更に開がってしまった米国経済の穴埋めに、チャイナが貯め込んだ外貨を使いたいのが本音でしょうが、何処かの島国とは違って既に巨額のドル国債を売り払って見せた相手ですから、米国政府としても口の利き方には最新の注意が必要でしょうなあ。今のところ、オバマ新大統領の口からはチベット問題に関する具体的な発言は出ていないようですが、積年のアメリカの壁を崩した人物として人権問題の解決に何処まで迫れるか?まだまだ本音は見せない新大統領であります。

テロの季節?

2008-11-24 12:29:33 | マスメディア
■旧厚労省事務次官連続襲撃の事件は、「年金問題」「義憤」「政治テロ」などとは何の関係もない地方出身の寂しい男の、思い込み・八つ当たりの犯罪として片付きつつあるようです。周辺情報として昔の「ピアノ騒音殺人事件」を思い出す人格の歪みや、対人関係が不得手で孤立してしまう性格などが取り沙汰されているようです。出頭後の様子などから宅間守死刑囚を思い出す人生の幕引きを決意した人間の表情も読み取れそうですが、どうやら、容疑者の「供述」を大真面目に聞かない方が良さそうな感じがしますなあ。巷で囁かれる「黒幕説」は消えないでしょうが……。
 
■武器か美術工芸品かの区分けと判断が難しい刃物が凶器に使われる犯罪は、事前に予防や予測をするのは困難で、どんなに『銃刀法』を改正したところで、身近にある包丁・カッターや鋏まで没収したら社会生活が破壊されてしまうのですから、身辺に異変を感じたら即座に逃げて難を避けるしかなさそうです。宅配便を装った者に狙われて襲われるという事態は、極極稀なことなのですから、針小棒大の騒ぎを起こすのが仕事のマスコミに踊らされる必要はないでしょう。同じ「装う」なら、家族に成り済ましたり、公的機関の役人に成り済まして電話を悪用する詐欺犯罪の方が何千倍も身近に迫っているのですし、いろいろ問題のある自動車が襲い掛かって来る確率もずっと高いのですからなあ。

■世界的に見ても治安の良さは日本が誇れる美点の代表なのですから、我が身の自衛と生活防衛を考えるのなら、しっかり危険度のランクを認識しておくべきでしょう。


午前10時2分、高知市 22日午後11時35分ごろ、高知市南はりまや町の食品卸業「旭食品」本社で、爆発のような音がしたと通報があった。……約30キロ離れた高知県芸西村のゴルフ場では18日、クラブハウスのガラスが爆発物で破壊された事件があった。旭食品の竹内克之会長はゴルフ場を経営する「黒潮観光開発」の役員を兼務しており、県警は23日、同一犯による事件の可能性もあるとみて捜査本部を設置、建造物損壊容疑で調べている。竹内会長は県公安委員も務めている。……ゴルフ場は27日から開催される男子プロゴルフトーナメント「カシオ・ワールドオープン」の会場。
2008年11月23日 産経ニュース

■この報道の前日に県は違いますが同じ四国で発した連続爆破事件に関するニュースがありました。


徳島市で10月、創価学会徳島文化会館など2か所のビルのドアが爆発物で壊された事件で、徳島県警徳島東署の捜査本部は21日、徳島市不動東町、無職堀たかあき容疑者(35)を爆発物取締罰則違反などの疑いで逮捕した。堀容疑者は「自宅で爆竹の火薬を使って爆発物を作った」と容疑を認めているが、動機について「以前から右翼関係の本を読んでいた。敵対する団体を狙った」と供述しているという。……堀容疑者は10月13日午前1時20分頃、同市南内町の、県日中友好協会の入った民間ビル1階に仕掛けた爆発物でドアを壊し、同日午前4時半頃には、同市南沖洲の創価学会徳島文化会館正面入り口ドアを爆破した疑い。
2008年11月22日 読売新聞

■標的にされたのが公明党の支持団体だったからか、日中友好関連の機関だったからか、マスコミの報道は不自然に小さな扱いだった印象がありました。今回の事務次官連続襲撃が「政治テロ」なのかどうかの議論が、容疑者が出頭する前には盛んでしたが、この徳島市での爆破は明らかにテロ行為でしょう。第一報を聞いた時に「連続」という点が妙に気になったのを覚えておりますが、これが小泉毅容疑者に何かのインスピレーションを与えたのかどうかは分かりません。

■渋谷区で火薬類の専門家が大きな爆発炎上事故を起こしたニュースを思い出しますが、この犯人は市販の爆竹をバラして利用しているようですから、詰め込み作業で事故を起こさなかったのは御近所の皆さんにとっては幸いでした。犯人が創価学会と日中友好協会を「敵対する団体」と見なしていたのですから、これは間違いなく「政治テロ」でしょう。人的被害が無かったから事務次官連続襲撃事件のような大騒ぎにならなかったのだとしたら、「昭和初期に似ている」と危機感を煽る一部のマスコミは平衡感覚に欠けていると申せましょう。


高知県芸西村のゴルフ場と、高知市の食品卸売会社の玄関ガラスが爆発物で破壊された2つの事件で、いずれも手榴弾が使われたとみられることが24日、高知県警の調べで分かった。……両現場には、手榴弾の破片とみられる金属片や安全ピンが落ちていたほか、爆発の衝撃でできたとみられる穴が床に開いていた。……
2008年11月24日 産経ニュース

■拳銃の密輸や変造に関する報道がめっきり減ったと思っていたら、何処かから手榴弾が入り込んでいたというのは衝撃的です。破片や安全ピンが発見されているのなら、おそらく手製ではないでしょう。手榴弾にも多くの種類がありますから、優秀な鑑識が製品を特定してくれるでしょうが、さてさて、何処の国が製造した物なのでしょう?日中友好の暗黒面につながっているのか?不良米兵が小遣い稼ぎをしているのか?東南アジアの某国か?はたまたロシア製か?

■高級官僚が狙われた時だけ大騒ぎしていると、本当にテロの季節がやって来たのかどうかが分からなくなるというお話でした。
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾七

2008-11-23 20:57:19 | チベットもの
■既にダラムサラでの緊急会議の議決結果が報道されているので、北京五輪が開催された時期あたりまで遡っているのは歯痒い限りですが、やはり腐っても鯛、「平和の祭典」として莫大な資金と膨大な労力を費やして開催された北京五輪には、他には変え難い意味があった事を確認するためにも、話が冗長になっても仕方がないと思います。く

8月16日、中国国家民族事務委員会の呉仕民・副主任は、08北京国際ニュースセンターで行われた記者会見で、「中国の憲法では、少数民族の人権は保障されている」と述べた。「民族の平等こそが中国政府の民族政策の基本だ」と述べ、「中国憲法では、少数民族の合法的な権利と利益を保障し、如何なる民族に対する差別や抑圧も禁止している」「少数民族は中国国民の一員として平等に扱われており、政治、経済、文化、教育等社会生活の各方面において、差別どころか様々な優遇措置を展開している。」と強調した。

■五輪大会が終盤を迎えた頃、取り敢えずはチベットやウイグルから民族問題を思い詰めて過激な行動に出る者が(表には)現われず、どうやら無事に閉幕まで持ち込めると判断した時期に、このような自信に満ちた発言が出たものと思われます。何の問題も無いのなら、チベットやウイグルなどの世界中が心配している地域の息苦しい警戒体制を解いて、大々的に大会中の北京見物が出来るようにしてくれれば良さそうなものでした。「憲法」に何が書いてあろうと、残念ながらほとんど意味が無いのが一党独裁体制の特徴で、「憲法違反だ!」と行政裁判が行われた前例があるのか?とIOCは一度も問い質したことはないはずです。

■あれこれ憲法で「禁止」されていても、憲法を一方的に制定して下げ渡している独裁政府自身は、その憲法の解釈と運用に関して絶対の権力を持っているのですから、どれほど「禁止事項」を並べても大した意味はなさそうですなあ。「中国国民の一員」という言葉には他国とは違う脅迫めいた響きがありますなあ。


さらに呉副主任は、「漢族と少数民族は、憲法や法の下に平等である。同時に少数民族は、その言語や文化、宗教の自由などが専門の規定により守られており、広い範囲にわたる自治権も有している。中国の民族区域自治制度は、少数民族の人権を守る重要な政策だ」と重ねて強調した。
2008年8月18日 Record China

■一般の人間とはまったく違う文章解釈をしてしまえるのが、官僚の名人芸の一つだそうで、日本の官僚などは句読点を魔術のように使ってバカ長い文の意味を一瞬で逆転してしまえるとか……。文字の国を自称するチャイナが保有する膨大な漢籍には、元々、句読点がまったく無かった!という歴史的事実が有ります。つまり、「分かる人には分かる」ことが前提になっていて、それが解釈の流儀を分ける原因にもなって行き、有名な「科挙」も王朝が変わる度に受験生は新しい解釈に則った答案を作らねばならなかったとか……。

■今のチャイナで「平等」がどんな意味を持っているのか?たまたま漢字という道具が共通だからと日本人が勝手な想像をして解釈すると、即座に「正しい歴史認識」に抵触する恐れがあります。それよりも「専門の規定」という一言に注目した方が良いでしょうなあ。こんな恐ろしい但し書きを挟み込んだ法律を持つ国も珍しいのではないでしょうか?共産党が独占的に少数民族の「人権を守る」という前提が問題があったらどうなるのでしょうなあ。

■そんな細かい?ことは巨大な五輪ビジネスの前には鴻毛の軽さしかないようで、北京大会は強引に成功させられたのでした。大地震に襲われた四川省でも、大規模な騒乱が起こったチベット地域でも、勿論、暴力事件が多発したウイグルでも日本のようにテレビの視聴率が面白いように上昇したはずはないのです。テレビがあっても観ない人民が国内に多数存在した事を忘れて「感動!」を売り物にしては行けません。

ソマリア沖海戦 其の弐

2008-11-23 16:44:00 | 外交・世界情勢全般
(11月)20日環球時報によると、多発するソマリアの海賊問題に絡み、中国国内で「解放軍海軍に攻撃させよ」の声が高まっている。ソマリアの海賊は7日から16日の10日間までだけで、外国船籍の5隻を乗っ取った。うち1隻は天津遠洋漁業公司の「天裕8号」で、中国人16人と日本人船長1人を含む外国人8人が乗り組んでいた。現在のところ、乗組員の様子は不明。また9月には、中国人24人を含む香港籍の貨物船が乗っ取られている。……

■海外へ打って出ようと大車輪の北京政府としましては、国際航路の安全を守る仕事でも確固とした地位を築いておきたいところでしょう。南シナ海からマラッカ海峡を抜けてインド洋に抜け、そのまま中東とアフリカへと着実に拠点を作って進出している段階ですから、自国民を救うという大義名分が生々しいうちに増強著しい人民解放軍の海軍が持つ力を世界に見せ付けておきたいでしょうなあ。インドに先を越された!と一部の熱血軍人は地団駄を踏んでいるに違いないのです。


環球時報が運営するニュースサイト「環球網」が19日に始めたアンケートによると、「中国は海軍を出動させ、海賊に打撃を与えるべきと思いますか?」との質問に、20日午後1時までに、86%が「そう思う」と回答。理由としては「国家の利益のため、軍艦を派遣して貨物船を保護せよ」、「中国は貿易大国だ。海の平和を守るため、他の国と共同で海賊を攻撃せよ」、「軍艦を出して防衛任務にあたらせることは、大国である中国の責任」などの意見が寄せられた。

■お手盛りヤラセの臭いがしないでもないアンケート調査ですが、「貿易大国」「大国」という自負が盛り上がっている様子が分かって興味深いですなあ。きっと日本は「貿易小国」なのでしょう。そのうち人民解放軍の軍艦にお世話になる日が来るのでしょうか?得意の後方支援や給油などで恩返しなどして……。


一方、反対意見には、「海賊多発の原因は、長期的な内戦がもたらしたソマリアの貧困。中国は経済援助に力を入れるべきだ」、「軍艦を出したら、いわゆる中国脅威論が強まる」などがある。

■86%が賛成なのですから、このような冷静な自重を促す声は少数意見、つまりお飾りみたいな言い訳の役目を果たしているようです。原因とされる「長期的な内戦」の、そのまた原因は欧州列強による植民地政策と米ソ冷戦時代の陣取り合戦なのは明らかですから、慎重意見の中にもしっかり米国とロシアに対する批判が埋め込まれているわけです。海賊を掃討するのに「脅威論」が湧き起こるほど強力な武器を使って徹底的な殺戮戦を展開すると前提して反対しているのなら、そちらの方がずっと恐ろしいかも?


中国社会科学院で国際問題が専門の楊丹志氏は、「中国海軍による攻撃を望む考えは理解できる」としながらも、「単純な思考は好ましくない」と主張。「中国のような新興の大国は、一挙一動が国際的に大きな注目を集める。国際問題で中国は、慎重に振る舞わなければならない」との考えを示した。

■慎重に振舞っている間に、何処かの国が突出した行動に出ること、その後、国際世論が武力行使を求めるようになること、ある種の共同作戦が決まれば、その時こそ存分に活躍すれば良いという見通しがあるのでしょうなあ。戦費については、いつものように日本が担当でしょうか?戦後補償の代わりにあれこれと経済援助を要求し、誰が埋めたか分からない毒ガス処理でも莫大な資金が転がり込み、そろそろ環境問題での協力要請に切り替えようかという被援助政策の流れのようですから、米国の流儀に則って「対テロ戦争」に実戦で参加して燃料と費用は日本に求めるのも悪くないかも?米国枠とは別に「思いやり予算」を要求して来たらどうしましょう?


ソマリアの海賊問題では、インド海軍が18日に交戦し1隻を撃沈と発表。韓国は駆逐艦派遣の方針。国連安全保障理事会は20日、同問題で公開会議を行う。
11月20日 サーチナ

■すっかり蚊帳の外に置かれた日本では、「田母神論文」ひとつ扱えない国会のレベルですから、また訳の分からない神学論争に時間を取られて身動きが取れず、気が付いたら「奉加帳」と「請求書」の束が送りつけられる悪夢が再現されるのでしょうか?

ソマリア沖海戦 其の壱

2008-11-23 00:58:31 | 外交・世界情勢全般
■麻生コロコロ首相と小沢クラッシャー民主党代表とが喧嘩ばかりしていて、解散総選挙も第二次補正予算も先送りになって永田町は既に「来年の話」が飛び交っているようですから、何処かで鬼たちが大笑いしているのでしょうなあ。自動車産業から1万人を越える失業者があふれ出すと言われている時に、最後のセーフティ・ネットとなるはずの社会保障制度は穴だらけ、医療の現場は医師不足、何とか外交では日米同盟を機軸としてせっせとインド洋上での給油活動は続けている日本であります。

■しかし、そのインド洋の西端では新たな「非対称戦争」が勃発寸前!灼熱のインド洋で海上自衛隊の皆さんが命懸けの給油活動をしていれば、日米関係は磐石になり日本の生命線のシーレーンも守れるのだ!と政府与党は言っていたはずなのですが……。


インドのPTI通信によると、同国海軍は19日、ソマリア沖のアデン湾で18日夜にインドのフリゲート艦が海賊の「母船」とみられる船を交戦の末、撃沈したと発表した。……臨検のため、この船に停止を命じたが、船はこれを無視して同艦に銃撃を加えた。同艦が応戦したところ、船で爆発が起きたという。インドは同海域での海賊被害多発を受け、10月に特殊部隊が乗り組んだ同艦を派遣していた。
11月19日 時事通信

■北朝鮮の不審船と日本の海上保安庁の巡視船が交戦した映像が蘇りますが、インドの船は立派な海軍の軍艦でありますから、これはもう戦争です。「インド洋」という名前が付いているくらいですから、インド海軍も気合が入っているのかも?それに引き換え「日本海」では日本の海自も保安庁も実に奥ゆかしいですなあ。冗談はともかく、内乱続きだったアフリカの角、ソマリアで海賊商売が大人気!丸腰の船を乗っ取って乗員の命と積荷と船体を丸ごと「人質」に取っての拉致・誘拐・恐喝ですから、相手になるには正規の軍隊に頼るしかありません。

■こういう話になりますと、国際社会で日本の肩身が途端に狭くなります。苦し紛れに与党内から「もっと沢山給油しよう」などと言い出す変な政治家が出て来るのが心配です。


欧州連合(EU)議長国のフランスのモラン国防相は19日、来月8日からインド洋やアデン湾にEUの軍艦船を派遣すると語った。国防相によると、作戦は「3カ月の予定」で、フランスをはじめEU加盟国から5、6隻の艦船が参加する。派遣艦船の役割は、
(1)要請による商船の護衛
(2)世界食糧計画(WFP)によるソマリアへの食料品輸送船の護衛
(3)偵察機を伴う海上パトロールの強化だ。
11月20日 産経新聞

■この記事の題名が「12月8日に開戦」となっておりまして、真珠湾攻撃の日付と引っ掛けたのでしょうが、あまり上等なジョークとも思えません「護衛」と「偵察」から何処まで事態が発展して行くことやら……。海賊行為をしているのがソマリア政府だったら話は単純なのですが、相手は食い詰め浪人ならぬ貧困から脱した素人集団とのことで、テロ集団とも違う野蛮な商売の旨味を知って俄かに急増中だとか……。伝統的な山賊・海賊ならば、重要な交易路を隣接する場所を根拠地にして縄張りを設定、一種の通行税を取り立てる代わりに交通の安全を保障するのが普通なのですが、人質を取って法外な身代金を要求するというのは単なる海の強盗集団であります。しかし、そんな事をして稼がないと生きて行けない状況に追い込んだ責任を負うべき国もあるのが現実で、取り合えずは航路の安全を確保するのが喫緊の課題でしょうが、その後はイラクやアフガンと同様に平常の生活が成り立つ国づくりを援助しなければならないのでしょうなあ。

取り敢えずは容疑者が出頭 

2008-11-23 00:54:56 | 社会問題・事件
■TBSテレビの『ニュースキャスター』という番組をスッポカしてフジテレビの教育問題を考える生放送の特別番組に出ていたビートたけしさん。そこには公務で忙しくて国会の喚問にも行けない石原東京都知事も顔を出していたそうですが、TBSの方では危機管理のエキスパートの佐々淳行さんをゲストに迎えて元事務次官が連続して襲撃された事件を取り上げて、あれこれと推理をしている時に「自称犯人が出頭」との第一報が入りました。教育問題も大事ですが、速報性で勝負するテレビとしては、土曜の夜に報道娯楽番組を残しておいたTBSは思わぬ拾い物をしたという事になりそうです。

「次官を刺した」。元厚生次官ら連続殺傷事件は22日午後9時40分すぎ、東京・霞が関の警視庁に軽乗用車で乗り付けた男が、取り囲んだ警察官にそう言い放ったことで新たな局面を迎えた。ピンク色の軽自動車は川越ナンバーのレンタカー。軽自動車は警視庁の正面玄関前の歩道に乗り上げる形で停車。……

■秋葉原で発生した無差別ナイフ殺人事件と同じく、自称犯人が使っていたのもレンタカー。こんな所にも日本社会から自家用車が減少していることが感じられます。それにしても、犯行現場で目撃された黒か濃紺のワンボックス車は何処に行ったのでしょう?近所の人が耳にしたスライド式ドアの閉まる音というのは、何処から聞こえて来たのやら。相変わらずテレビを筆頭にマスコミが情報を混乱させているような感じですなあ。意味も無く現場に近づいて、玉石混淆の「情報」を大急ぎで掻き集め、スタジオでは専門家と称する人が引っ張り出されてその場で「推理」を披露するという手法は、事件の解決よりも徒に恐怖を煽って社会生活を混乱させるだけのような気がします。


車両左側のドアが2つとも開いた状態。後部座席には粘着テープで閉じられた段ボール箱2箱が置かれていた。……車にはすぐにブルーシートがかけられ、周囲から中がうかがえない状態に。鑑識資材を持った捜査員が車内に入り、ライトで中を照らすなどしながら鑑識活動を始めた。……署から出てきた警備部幹部は「今続けてる警備は継続する。犯人かどうかは全く分からない」と話した。

■もしも政治的なテロ集団が動いているとしたら、わざわざ週末の警視庁に車で乗り付けたのは陽動作戦で、すわっと報道陣の目と耳が集中して警備陣も浮き足立った隙に第三の事件を起こす可能性は有りますから、これですべてが解決したなどとは言えないでしょう。血の着いたナイフやスニーカーなどを持参して年齢も身長も一命を取り留めた被害者の証言と一致しているようですが、それら全部が周到に用意された物かも知れません。


さいたま市と東京都中野区で3人が死傷した連続殺傷事件は、犯人が宅配業者を装うなど用意周到に自宅内に侵入。傷の状況から犯人が凶器の刃物を振り下ろして襲撃し、被害者の肋骨が砕けるなど残忍な犯行だった。両事件とも片刃の短刀のような形状の同種の刃物が使われた可能性が高い。刃こぼれせず、刃先も折れずに肋骨を砕いていることから、硬い材質の極めて殺傷能力の高い刃物とみられることから、警視庁と埼玉県警は強い殺意を裏付けるものとみている。

■秋葉原で犯人が振り回した道具も、専門店で買い揃えた特殊なナイフでしたから、その中の殺傷力が強い両刃ナイフは販売禁止になったようですが、その前に売られてしまった分は回収不能ですから、実際に使用された様子や威力を報道から知って妙に納得している所持者も居るでしょうなあ。因みに今の厚労省の大臣は富士山麓に持っている別荘に、異様な数の各種サバイバルナイフのコレクションを持っていたはずです。退職しているとは言え、かつての事務次官がナイフで襲われるというのは、何かの因縁でしょうか?さすがにお喋りな舛添大臣も、凶器に関して薀蓄を垂れるのは控えているようであります。


東京・霞が関の厚生労働省。犯人出頭との一報に、大臣官房のある幹部は「テレビで知った。驚いた。ただ犯人と決まったわけではないので、捜査の推移を見守りたい」と緊張した声で語った。庁舎は休日とあって職員はまばら。事件について対応している人事担当の幹部の電話は話し中のままで、幹部同士で連絡を取っているようだった。
11月22日 産経新聞

■捜査本部が置かれている麹町警察署でもなく、埼玉県の浦和警察署でもなく、最寄の交番でもなく警視庁に名乗り出るというのは、ちょっと病的な自己顕示欲の持ち主か?との推測もできそうですが、単に元官僚トップを狙った者としては警視庁か警察庁に行かないとバランスが取れないと考えただけかも?それにしましても、出頭して来た男は「コイズミ」と名乗っているそうですが、ターゲットにされた二人の官僚は小泉厚生大臣と深いつながりが有ったそうですから、この男が真犯人で本名がその通りだったとしたら、これまた奇怪な偶然と申せましょうか?

■官僚や社会保険庁の職員を傷つけても、消えた年金は復活などしませんし、グリーンピアなどで浪費された積み立て金も戻りません。年金問題は担当大臣さえも頭を抱えてしまうほど複雑で奇妙な国家犯罪ですから、制度設計の段階からトボケタ運用段階まで、詳細に時系列を追って調査しなければ全容の解明も、問題の原因も簡単には分からないようです。官僚が悪いのなら、その時の大臣も悪いでしょうし、その大臣を任命した総理大臣はもっと悪いはずです。グリーンピアの廃墟があるところは歴代厚生相の地元が多いという話もありますし、勿論、民主党の支持団体とされる自治労が続けていたサボタージュは言語道断ですから、政局や選挙とも切り離して考えねばなりません。さてさて、明日は秋場所の千秋楽、相撲界の黒い霧がどうなるのか?などという話より、マスコミが大喜びする大ネタが転がり込んでさぞや現場は活気に満ちているのでしょうなあ。

■『週刊ポスト』の最新号が「犯人の犯行声明」として引用しているウェブサイトに掲載されていた短い書き込みは本物だったのか?それとも毎日新聞の誤報と似たような勘違いだったのか?その辺も数日中に明らかになる可能性がありますなあ。毎日、頑張っておられる宅配業者の皆さんはトバッチリを受けて大変な迷惑を蒙っておられるとか……。怪しからん扇情的な映像作品などでも、さんざん安直に利用されている「宅配業者に成り済まし」という陳腐な設定にも迷惑を受けているでしょうし、極稀に起こるこうした凶悪犯罪にも使われるのも、裏を返せばそれだけ(郵便局とは違って)宅配サービスが生活に欠かせない物として定着している証拠なのですから、これからも誇りを持って仕事に励んで欲しいものです。
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾六

2008-11-23 00:05:28 | チベットもの
■チベット関係の「サイバーテロ」を粉砕した後で、IOCと約束していたチベット亡命政府の代表との会談が行われておりました。まあ、「サイバーテロ」を仕掛けて来るような失礼千万な連中の言う事など最初から聞く耳持たぬ!という伏線にもなっていたのでしょう。

6日の新華社通信によると、中国共産党でチベット問題を担当する杜青林・統一戦線工作部部長は、北京でチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の代理人ロディ・ギャリ氏らと会談した。「チベットの独立、半独立、形を変えた独立は認めない」と述べ、ダライ・ラマが求める「高度の自治」を受け入れない立場を明確にした。

■いろいろと修飾句を付けた「独立」が並べられていますが、ダライ・ラマ法王が求めている「高度の自治」と、どの「独立」概念が一致しているのか、さっぱり分かりません。チベット自治区が既に存在しているのですから「自治」という言葉には問題はなさそうです。従って「高度の」という修飾句に「独立」の意味が含まれていると判断されていることになります。北京語でもチベット語でも英語でも、そんな解釈は無理なのですが……。


……双方の協議は5日まで開かれた。杜部長はチベット統治について「民族による地域自治制度を堅持する」とし、香港やマカオのような「1国2制度」や連邦制、国家連合は行わないと強調。さらに「ダライ・ラマは、政治的主張を抜本的に正さなければならない」と要求。中国はダライ・ラマが求めるチベット自治区と周辺地域を含めた「大チベット」や独自憲法の制定を独立要求とみなし、拒否している。
2008年11月7日 毎日新聞

■「大チベット」に関しては、拙著『チベ坊』にも簡単に書きましたが、チベット仏教の広がりを考えれば「信仰の自由」だけでなく、文化や歴史の尊重という意味でも、「高度の自治」が求められる範囲は北京政府が切り取った現在のチベット自治区の境界線を越えます。「独自憲法」の問題は、確かに独立要求とも取れますが、中華人民共和国憲法が一党独裁・共産党無謬説で固められている限り、そっくり受け入れるわけには行かない事情があります。半世紀も前の毛沢東時代に締結された『17条協約』を遵守し、それと矛盾しないように現行憲法を修正して貰えればよいのですが……。

■今の中華人民共和国憲法でも、第二章『公民の基本的な権利と義務』に「言論、出版、集会、団体の形成、行進、デモ、宗教、の自由」が記載されているのですが、例えば「集会・行進・デモ」の場合、五輪大会の開催中に北京市内の3箇所が「集会デモ」の専用広場に指定され、恐る恐る現われた申請者たちのほとんどが却下され、許可された3件の集会も、実際には行われなかったとか……。

■第三章「国家機構」の第六節には「民族自治と地方自治機関」の規定も有ります。しかし、美しい文言で飾られた条文と実態とが著しく乖離しているのが問題なのでしょうなあ。そもそも、 第一章の「総則」に「中華人民共和国は社会主義国家を目指す……社会主義を破壊するようないかなる組織や集団も禁止する」と書かれているのに、市場経済を導入したエライ人も反社会主義的にコネと利権を濫用して巨万の富を得た人も、一度も憲法違反に問われていないのは実に不思議な話です。

■法は運用によって何でも出来るものなのでしょうが、あまり無茶な運用ばかりしていると非常に危険なことになりますぞ。かつてソビエト連邦には『スターリン憲法』という世界で最も民主的で人権尊重を謳い上げた素晴らしい「作品」が有りましたが、それを制定した本人が一度も守らなかったという恥ずかしい歴史が有りましたなあ。中ソ対決の切っ掛けは、その憲法を作って一度も守らなかった人が死去した後、フルシチョフが「批判」した!と起こった毛沢東が仕掛けた内輪揉めでした。憲法を守らないような国でも五輪大会は開催されるという悪い先例が出来てしまったのは、実に残念なことであります。

広がる麻薬禍 その壱拾壱

2008-11-22 13:42:08 | 社会問題・事件
……関西大学では今春、大阪府吹田市の千里山キャンパスの正門が24時間開放されていることを利用し、工学部4年の男子学生が夜間に構内の中庭にある芝生広場で大麻を密売していたことが明らかになっている。……

■大麻商売で濡れ手に粟の大儲けをする経験をした学生が摘発された場合、決定的に不利な一般企業への就職活動を諦めて「昔とった杵柄」を本業にしてしまう危険は無いのでしょうか?だからと言って、厳しい不況に突入する企業が福利厚生どころか「更正」のために元売人の学生を率先して採用してくれるほど「寛容」ではないでしょうなあ。

■巨大化した大学に集まる学生たちも、就職戦線では互いにライバルとなりますから、大麻問題を起こした「大学」の学生と一括りにされたら迷惑でしょう。学部が違う!付属高出身ではない!などの自己アッピールが大切になるのかも知れませんなあ。同学同窓文化は破壊されますが……。


大麻の種の「輸入」や「所持」が日本では合法……。だが、無許可で種を発芽させて育てる「栽培」は大麻取締法違反に該当し、「7年以下の懲役」となる。営利目的の場合はさらに重くなる。……

■麻を栽培して麻布を織り上げるのは立派な農業の仕事ですから、許可を受けて栽培するのが合法なのは当然で、長く育った茎を収穫したらしっかり後始末することが義務付けられているようです。それを「法律の穴」だと思い込むのが間違いの元。茎から繊維を取り出すのは重労働で、それを布にしたり染めたりするのも大変な作業だそうですが、葉っぱを乾燥させて吸引用大麻に加工するのは非常に簡単だとか……。でも、二十歳そこそこで逮捕され、7年もの懲役刑を受けたら大変ですぞ。栽培などしないことです。


……値段はおおむね、送料別で10粒5000~7000円ぐらいで、10粒4万円程度の高級品もあるという。……栽培により捜査機関に摘発されるケースは、乾燥大麻などの「既製品」を購入するケースに比べれば少ないが、こうした状況が犯罪に走る垣根を低くしているのは間違いない。昨年11月に発覚した関東学院大ラグビー部員の事件では、2人が大麻栽培の現行犯で神奈川県警に逮捕されたことが摘発の契機になった。その後、ほかの部員12人も大麻の吸引を認めた。……

■大学生が読む専門書なら1冊か2冊分の金額で種を10粒買えるわけですなあ。それが高いのか安いのかは個人差があるでしょうが、危険な犯罪に走るより二度とない専門的な勉学に集中できる貴重な時間なのですから、同じカネなら図書費に回した方がよいでしょうなあ。仕送りしてくれる御両親が泣きますぞ。


……警察庁のまとめによると、大麻の摘発件数は年々増加する傾向にある。今年は6月までに約1200人が摘発されており、10~20歳代が半数以上を占める。ほかの薬物に比べて大学生が目立つのが特徴で、警視庁が1~8月に摘発した752人をみると、学生は9.2%を占める。……1つは、留学生などの外国人が大麻使用の一線を越えさせる“伝道師”となり、大学生に口コミなどで大麻が広がっていくパターン……また、「『レイブ』と呼ばれる音楽系の野外イベントなどで大麻が使われることが当たり前になってきており、若者に抵抗感が薄くなっている……

■60年代には『ウッドストック』という若者の祭典が米国で開催されたのは有名な話ですが、日本でも記紀万葉の頃から「歌垣」という歌と踊りと恋愛のナイト・イベントが盛んでありましたから、若者が大勢集まって歌や酒で盛り上がるのは決して珍しい現象でもなければ、「最近の若者」だけの特徴でもありません。でも、薬物まで利用して盛り上がらなくても十分に楽しめるでしょう。何万年も人類は火と歌舞と酒で楽しんで来たのですから。


……インドなどの海外旅行の際に遊び感覚で大麻吸引を経験した学生が、継続して手を出している可能性も指摘できる……慶応大の事件では、発覚直後に会見した学校関係者が「学生の良識を信じていた」と述べた。しかし、もはや性善説も限界を感じさせる状況だ。11月16日 産経新聞

■1960年代から70年代にかけて、麻薬類を求めてバック・パッカーがアフガニスタンを目指したものですが、そのアフガニスタンが紆余曲折の末に再び世界の麻薬生産輸出基地になっているそうですなあ。これが西や東に流れ出してインドや東南アジアで客に売られるというわけで、円高を利用して海外旅行に出向く日本人などを待ち構えている連中も増えているのでしょうなあ。御用心、御用心。

当たるも八卦、米国の予測 其の弐

2008-11-22 13:05:07 | 外交・世界情勢全般
世界が多極化するなかで、ライバルとなるのは、中国、インド、ロシアなどの新興国だと分析。とりわけ中国については、25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測している。

■宇宙戦争の分野にも手を出し、地上では無人飛行機を飛ばし、海には原子力潜水艦を入れ、そろそろ航空母艦も建造しようというチャイナですから、台湾問題の解決を変に急いで墓穴を掘らない限りは順調に軍事力を強化して行けるはずです。しかし、経済成長が本当に続くのか?という疑問は残りますなあ。五輪大会を開催した独裁国家の宿命論を初めて超克する国になれるのでしょうか?


テロ組織は、25年までに組織再編を経てなお存続するとみている。大規模テロ事件は、生物・化学兵器の使用が懸念されるとしている。核兵器や放射性物質によるテロの可能性はやや低いものの、インド、パキスタンなどに続く実質的な核保有国の増加で、核拡散が進むことを懸念している。

■自力で核物質を入手して濃縮加工する手間を省いて、何処かの国から完成品を購入する国が現われたら時代はがらりと変わるでしょう。もしもイランが核兵器の自力開発に成功したら、対インド用のパキスタンの核とは違って初めて「イスラムの核」が出現することになりそうです。アフリカや中南米に核保有を決意する国が現われたら実にややこしいことになりそうですなあ。


日本については、自民党の優位が崩れ、内政・外交とも再構築を迫られるとみている。日米同盟は維持されるものの、米国の国力低下を受けて、「同盟の力は今日ほど強固ではなくなる」と予測。日本の地位は米中のパワーバランスの間で「板ばさみ状態」になるとして、日本が親米、親中に傾く可能性など4種類のシナリオを挙げた。
11月21日 産経新聞

■「自民党の優位」など今でも崩壊しているでしょうに?!野党第一党の民主党がポンコツ政党だから公明党のツッカエ棒で何とか立っている状態であります。大連立だの全面対決だの、解散だの延期だの、何も決まらないまま時間ばかりが過ぎていくような政治しか持てない日本が、内政・外交両面での「再構築」など出来る物でしょうか?米国の期待なのか、手前勝手な責任の押し付けなのか、判断に苦しむ「予測」であります。外交の「板ばさみ状態」にしても、米国が日本を見棄てるという意味が込められているような印象が強いですなあ。

■イラクの後始末とアフガニスタン問題の梃入れ、そして金融危機に対処するための「知恵」ではなく資金!いろいろと日本にタカって毟り取らねばならない物が有りそうですから、この先数年は日米関係が重要なのでしょうが……。
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当たるも八卦、米国の予測 其の壱

2008-11-22 12:53:27 | 外交・世界情勢全般
■年末の宝クジ発売が近づく時節です。アメリカが撒き散らしたトンデモ証券の毒に当たって世界中の金融機関が仕事が出来なくなり、資金が回らなくなった実体経済も揺らぎ始めているのですから、今年は例年以上に○億円の夢を見る人が増えるそうです。公的年金はテロが起こっても不思議がないほど国民からの信頼が得られない体たらく、金融危機に急いで対応するための第二次補正予算も野党が怖くて出せない政府、民間の保険会社も頼りになるかどうか分からなくなりそうですから、振り込め詐欺に狙われる前に全財産を宝クジに投げ込みたくなる向きもございましょうが、自暴自棄は慎みましょう。

■当たらないと評判の星占いオバサンの細木さんがテレビ界から消えて、世間の占い好きはスピリチュアルに傾いているそうですなあ。どうしても先の事を知りたい!少しでも安心したい!という不安に駆られるのも人情でしょうが、本当に先の事が分かってしまったら、案外と人生が詰まらなくなってしまうかも知れませんぞ。それでも占いより少しは的中率が高そうな「分析」や「予測」に対する需要と興味は尽きないらしく、シンクタンクや研究所などが盛んにあれこれと文書を発表します。

■日本では、この種の研究所の多くは保険会社と証券会社が運営しているため、本業が儲かるように世論を誘導しようとする商売っ気が混入するという説もあるようです。国家が運営する研究機関ともなると、国益に適う内容と政府の権威を高める目的とが混ざり合っているでしょうから、あまり真に受けない方が良いかも?とは言え、占いや予言というものは、多かれ少なかれ「現在」を未来に投影している面がありますから、現在の映し鏡として参考にすれば役に立つこともありそうです。


米国家情報会議(NIC)は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表した。中国、インドの台頭など世界の多極化が進むなか、相対的に米国の影響力が低下すると悲観的な判断を示している。また、韓国と北朝鮮は25年ごろの国家統一が予想されるものの、核開発の放棄が実現できるのかは「不確実だ」としている。

■未来を予告したり警告を発したりする「緊急出版」本なる物が、何故かいつも本屋さんには並んでおります。でも、この種の本を年に何冊も出しているような人に限って、自分が前に発表した予告内容の検証作業は一切やらないようです。中には数年前とまったく逆の内容を平然と発表する剛の者も居るようですなあ。米国家情報会議ともなれば、国の威信を懸けてまとめられているはずですから、個人的な見聞を基にした直感的予測などとは比較にならない豊富な情報を総合して分析しているのでしょうから、丸ごと全部が大ハズレになる可能性は低いかも知れません。


この報告書は、米中央情報局(CIA)などの情勢分析を踏まえたもので、5年ごとに世界の未来像を描いている。今回の報告書では、金融危機の影響や原油の先高傾向を織り込み、これまでの情勢予測を修正。向こう20年ほどが「新秩序への移行期にあたる」として、不安定化を警戒している。
 
■前回は05年に公表されたのだそうですが、その時の「予測」には、2020年まで「米国支配の継続」が続くと書かれていたそうですなあ。米国ではCIAと国防省の仲が悪いのは有名で、国務省も混ざると収拾が付かなくなるとか……。その上、CIA自体が変に高学歴化が進んで諜報能力はぐんと落ちているという噂は以前からあるようです。前回の報告書が発表されたのはイラク戦争に勝利してから2年、本国がハリケーン・カトリーナに襲われて復旧作業に当たるべき州兵がイラクに送られていた事が問題となるくらい、イラク占領に疑問が出て来た頃でした。それでも「米国支配」には揺るがぬ自信が有ったのでしょうなあ。


米国は、経済力や国際的な影響力低下が避けがたい半面、軍事技術の進歩に支えられて、なお世界トップの大国にとどまるとみている。さらに、「中東とアジアでは、依然バランサーとしての役割を求められる」と指摘した。

■中東和平プランを崩壊させ、北朝鮮の核武装を許したブッシュ大統領が去るのですから、次の大統領に対する大いなる期待を込めて「バランサー」の役割と強調したかったのでしょう。しかし、ブッシュ時代に当該地域のバランスは大きく崩れてしまっておりますから、それを扱い易い状態にまで戻せるのか?という問題に答えねばなりますまいなあ。

インドの因習 其の弐

2008-11-21 18:52:22 | 外交・情勢(アジア)
しかし、階級制度と男尊女卑の考えが強いインドでは、ダウリは女性が良縁を得るための手段となっており、そのことが多くの悲劇を生む。親が結婚相手を決めることが多いインドでは、結婚前にどれだけダウリを出せるかを男性の側と協議し、話がつかなければ結婚はない。このためダウリは女性の値段といわれる。

■貧乏人が王様や貴族の真似をするとロクなことにならない好例みたいな話であります。日本でも貴金属を売りつけるために、西欧流の指輪だの宝石だのを庶民も買わねばならないように仕向けるのに必死ですからなあ。誰でも買えるような宝石は決して財産などにはならないという話もありますから、まあ愛情と信頼の度合を計る儀式の道具として利用されているのでありましょう。あまり欲張らずにつましく堅実に夫婦仲良く暮らすのが良さそうです。

■もしも、サブプライム・ローンやらデリバティブなどを組み込んだ有価証券などをダウリに含んだりしていると大変な事になるのでしょうなあ。


さらに、結婚後もダウリを要求することができるため、持参金が少ない嫁は常に嫁ぎ先からの“圧力”にさらされる。16日付のタイムズ・オブ・インディアは、東部チェンナイの警察が、22歳の女性が焼死した事件で夫とその両親の3人を拘束したと伝えた。この女性は5カ月前に地元の有名企業に勤める男性(29)と結婚したが、夫らに、もっと現金や宝石を持ってくるよう責められていたという。

■相場が変動するような物を持参金にすると大変な事になりそうです。現金などと言っても為替相場が乱高下している時期なら、目減り分を要求されたりするのでしょうか?株価も暴落したら命が危ない!


「ダウリ殺人」の場合、台所で事故を装って焼殺されるケースが多い。11日にやはりチェンナイであった事件では、新婚4カ月の新妻が台所で死亡し、夫とその母親が灯油をかけて火を付けた疑いで逮捕された。……1961年にダウリ廃止法が導入され、贈ることも受け取ることも禁止された。しかし、「経済成長に伴い、物質主義が広がり、中流階級ではテレビで宣伝される服や電化製品などを、ダウリとして手に入れようとする人が増えている」(デリー女性協議会)といい、減るどころか逆に増えている。

■長い歴史を持つ伝統と因習は政府が作った法律など軽々と弾き飛ばしてしまうパワーがあるのでしょう。日本にも馬鹿馬鹿しい差別が残っているのは、法律や教育よりも伝統と自分の思い込みを優先する困った人が頑張っているからでしょうし、巨大なインドとなればその圧力は凄まじいものがありそうですなあ。


……インド犯罪統計局によると、95年に4648件だったダウリに絡む殺人は、2006年には7618件になった。また、ダウリが原因の自殺は今も1日6件起きているという。人権団体の統計では年間2万5000人の女性が犠牲になっているともいう。インドの新聞には、花嫁募集の広告がずらりと並ぶ。が、ダウリ不要と明記しているのはわずかにすぎない。
2008年11月18日

■インド全体で1万件に満たない統計数値というのは、これこそ「氷山の一角」なのでしょう。世の中には男と女しか居ませんから、年頃になったら配偶者を見つけて家族を作るのは自然な事なのですが、こんな因習がはびこっている間は女性が社会に進出する機会は非常に少ないでしょうし、それが教育や文化にも影響を及ぼし、やがては国家全体の発展を阻害する要因になるのでしょう。欧米諸国の人権団体は、イスラム社会の女性差別を取り上げて騒ぐことがありますが、有望な投資相手と目されるようになったインドに対してはどんな動きを見せるのでしょう?相手と問題が多き過ぎて手の出しようが無いのかも知れませんなあ。
 
 
米中央情報局(CIA)などで組織する国家情報会議は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表し、米国の影響力が衰える一方で、中国やインドが著しく台頭して米中印の3国が並び立つ時代の到来を予見した。日本については「米中両大国の板挟み」になり、大幅な外交戦略の見直しを迫られるなど、埋没感が強まる可能性を指摘している。
11月21日 共同通信社

■それほど単純に歴史が動いて行くでしょうか?あのガンジーを公衆の面前で射殺したのが真面目なインド人なら、文化大革命の10年間に大真面目にチャイナ全土を破壊して廻ったのはチャイナの純朴な学生たちでした。両国とも基本的な社会インフラを整えるのにも、教育制度を整えるのにも、まだまだ時間と資金を必要とする大国です。核武装を済ませてから、どちらも大海軍を作ろうともしていますぞ。アメリカ流の単純な予測が当たるかどうか、2025年が楽しみですが、先ずは米国発の金融危機を凌がねばなりませんなあ。

■日本が外交戦略を見直さねばならない事など、ずっと前から分かっていることです。それを徹底的に邪魔しているのが米国なのに、自分の事は棚に上げてイケシャアシャアと御託宣を発表するアメリカという国は、何も学ばず反省もしない国のようですなあ。
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五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

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インドの因習 其の壱

2008-11-21 18:51:58 | 外交・情勢(アジア)
■新興国家の巨頭扱いで公用語が英語だの数学が強いだの、いろいろと評判になって株式投資も活況を呈していたインドであります。観光地としても名所が数多く、日本からも多くの旅行客が足を向ける神秘の国!でも、輝かしい未来を煽る行き過ぎた動きを牽制する声も無いわけではなく、法律上は禁止されているにもかかわらず根絶不可能とされる厳しい身分制度のカーストが、最終的には経済発展の決定的な障害となるだろうと冷ややかに見ている人も多いようです。

自分よりも下級カーストに属する少女にラブレターを書いたインドの少年が、髪を刈られて通りを引き回された上、列車に投げ込まれて殺害されるという事件が起きた。ビハール州の警察が20日に明らかにした。……登校途中に相手のカーストメンバーに拉致されたManish Kumar君(15)は、髪を刈られた上、母親が慈悲を懇願する中、列車に投げ込まれた。この事件でこれまでに、1人の男が逮捕され、警察官1人が停職処分となっている。
2008年11月20日 ロイター

■さっぱり要領を得ないニュースであります。カーストの基本構造は上に行くほど人口が少なくなるピラミッド構造だと言われていますから、下の階層が怒ったら数にものを言わせて上に襲い掛かることは物理的には可能なのでしょうが、一般的に身分差別が引き起こす悲劇というのは、上が下を理不尽に弾圧することが原因となるはずなのですで、「身の程知らず」の恋をして酷い目に遭うのは下の階層と相場が決まっているものです。弄ばれて捨てられると先読みした仲間が激怒したのか?手紙の内容に不穏当な言葉が書かれていたのか?

■髪を刈るのは侮辱するのが目的でしょうが、殺害方法が「列車に投げ込む」というのも想像するのが容易ではありませんなあ。通過する列車に轢かせるのなら何らかの方法で身動き出来ない状態にしておかねばなりませんから、簀巻きにされてレールの上に寝かされたのか?意識を失うほどの残酷なリンチを受けて運ばれたのか?犯人として逮捕されたのが男が1人というのも集団リンチ殺人としては不自然な処分のような気がしますなあ。それに停職処分になった警察官が何をしたのかも分かりません。警察官が少年の自由を奪う道具を提供したのか?単に集団リンチ殺人を傍観していた職務怠慢が問題となったのか?神秘と言うより得たいの知れない訳の分からない殺人事件であります。


……金融危機の影響は欧米に比べると小さいといわれたインドも、外国の投資引き上げなどで株価が大幅に下落し、企業では解雇も行われるなど景気悪化は顕著だ。不景気で苦しい生活を強いられるのは低所得者層であるのは、インドでも例外ではない。こうしたなかで、最近、インドの新聞では、保険金殺人ならぬ持参金「ダウリ」をめぐる殺人や自殺の記事が目につく。ダウリは、インドなど南アジアにおける女性虐待の実態を浮き彫りにする古くて新しい問題だ。

■「ダウリ」制度が数多くの悲劇を生んでいる話は昔から有名ですなあ。日本にも持参金だの結納だのという古い因習が少しは残っていますが、ほとんど形骸化していて結納品でも代替品やレンタルで済ます事も多く、最初から「省略」というのも増えているとか……。その代わりに新郎新婦の実家同士が話し合って、新所帯に必要な物品を分担して買い揃えるという現代風の流儀も増えているようですなあ。


ダウリとは、女性が結婚する際、女性の親が持たせる現金や宝石、家財道具などの財産を指す。その起源は、ハムラビ法典にまでさかのぼるとされる。インドではもともとヒンズー教徒の高い階級の人々の間で行われていた習慣で、その後、宗教を問わず全土に広がった。ダウリそのものは、娘に対する財産分与と、嫁ぎ先で何かあった場合の保険という意味もあるとされる。

■ここまでの話は多くの地域で生まれ育った婚礼に関する文化や取り決めと共通しているものです。王族などは領地や領民を持参金として持って行くような話もありますからなあ。唐の時代にチベットに興し入りした金城公主などは、今の青海省と甘粛省に跨るバカ広い土地を分与されています。まあ、北京政府が意地になって否定する「大チベット」の歴史的根拠の一つなのですが……。日本でも徳川幕府の第11代将軍の家斉さんなどは、特定されるだけで16人の妻妾が居て、大いに努力した甲斐?もあって男子26人と女子27人の子宝に恵まれたとかで、娘さん達の輿入れ騒ぎは徳川幕藩体制を揺るがすほどの経済的インパクトがあったとか……。

原爆が使われる日 其の九

2008-11-21 17:11:29 | 外交・世界情勢全般
■大旋風を巻き起こした米国大統領候補のオバマ氏が当選を決めてから、それほど時間が経ってないのに早くもいろいろと不安な面が語られ始めているようです。イラク撤退も口で言うほど簡単ではないし、ブッシュ政権があちこちを突きまわして藪蛇だらけにしてしまった後始末を上手にやり遂(おお)せるのか?という心配です。

米中央情報局(CIA)など各情報機関を統括する国家情報長官室は20日、2025年までの近未来世界を予測する報告書を公表……「世界の潮流2025」と題されたもので、計約120ページ。同長官室傘下の分析機関である国家情報評議会が作成した。報告書は、今後20年足らずの間に核兵器技術の拡散が進み、限定的核使用という選択肢が生じるとのシナリオを示し、核拡散防止の取り組みを強化するよう警鐘を鳴らした。 
11月21日 時事通信

■この機関は同時多発テロ攻撃に襲われた米国が、情報戦略を大幅に見直して複数の機関に分散する膨大な情報を一箇所に集めて分析し、有効に活用するためにブッシュ大統領が作ったものでした。単に休んでばかりいて提出されていた各種レポートをちゃんと読まなかったから、アルカーイダの動きに気付かず、ビン・ラディンの一族と付き合い続けていたという話もありますが……。組織を整理するのではなく、多くの組織を大規模に束ねて更に上に統括組織を置くというアメリカらしい大雑把な再編ではありました。

■産みの親に当たるブッシュ大統領が水に落ちた犬のように、ずぶ濡れでホワイトハウスを追い出されることが決まったので、その餞(はなむけ)にでもするつもりなのか、いよいよ「核兵器の拡散」の危険が現実味を帯びて来たとの警告が鳴り響く内容の冊子らしいですなあ。でも、拡散を防ぐという大義を振り翳して「大量破壊兵器」など無かったイラクを攻め滅ぼし、次は原爆を買う込みそうなビンラディン容疑者はいまだに捕まえられないのがブッシュ大統領の恥ずかしい業績です。その上、パキスタンと北朝鮮という新しい原爆クラブ会員を増やし、ロシアを怒らせるようなことばかり続けて新たな冷戦時代の幕を開けたのもブッシュ大統領なのですから、この報告書は去り行く大統領の背中に泥と石ころを投げ付けたようなものかも?

■「限定的核使用」のために小型戦術核を山ほど作ったのは米国で、それに対抗してソ連も似たような物を作っている最中に崩壊してしまったのでした。今でも崩壊後の混乱期に何個か行方不明になったという噂は絶えません。他に売り物が無い北朝鮮などは、販売を臭わせて恫喝を始めるかも知れませんが、そういう時には妙に気が小さくなるの傾向がある米国なのが心配です。「核拡散防止」に取り組むと言っても、米国流のやり方では味方の振りをする国なら簡単に核武装を許してしまう可能性が高く、その内の1各国でも裏切ったら大変なことになりますぞ。報告書が「今後20年」などとこの種の警告としては気の長い尺度で表現しているのは、本当はもっともっと近い将来に怖れている事態が起こる予想しているのではありますまいか?

■今回の大統領選挙で盛り上がっていた時に、共和党のマケイン候補がいかにもアメリカらしい勇ましい「思い出話」をしておりましたなあ。


米共和党の大統領候補、マケイン上院議員は(10月)21日、1962年にソ連(当時)によるキューバへのミサイル配備で緊張が高まった「キューバ危機」当時、空母から艦載機で出撃準備態勢をとった経験を披露し、「危機対応」に自信を示した。……ペンシルベニア州での演説で、「(当時)自分はキューバ沖に展開していた空母エンタープライズ艦上で(艦載機の)コックピットにいた。標的も決まっていた。核戦争にどれほど近づいていたかお分かりだろう」……「自分はこうした経験を積んだが、(民主党候補の)オバマ氏には経験がない」と述べ、同氏との「違い」を強調した。
10月22日 時事通信

■エメリッヒ監督の『インディペンデンス・デイ』では、異星人の巨大円盤に向かって決死の戦いに挑む場面で戦闘機に大統領自身が乗り込んでしまった!それを観ていたのか、イラク戦争に勝った!勝った!とお祭騒ぎをしていた時にブッシュ大統領は戦闘飛行服を着込んで航空母艦に着艦して見せたのでした。勿論、操縦していたのはプロのパイロットで、大統領は副座に乗っていただけでしたが……。マケイン候補が最前線で撃墜され長年、過酷な捕虜生活を送ったヴェトナム戦争当時、呑気に?州兵パイロットとして米国本土の防衛に当たっていたのがブッシュ一家の長男坊でしたなあ。

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾伍

2008-11-21 13:50:20 | チベットもの
■日本での各地から降雪の報せが届き始めておりますが、チベット高原や青蔵高原などでは氷点下を楽々と越える厳しい冬になっている頃であります。温かいバター茶がいっそう美味になり、茹でたての羊肉と強い蒸留酒が恋しい季節でもあります。インドのダラムサラも寒くなり始めているのでしょうが、民族の将来を決める緊迫した議論が続いているようです。

11月19日午後、チベットで兵役に就く予定の重慶地区2008年冬季召集兵915名が列車に乗り込んだ。彼ら新兵は重慶北駅から列車に乗って四川省成都に向かい、訓練を受けた後、チベットで任務に就く。今回召集された新兵は8割以上が高卒で平均年齢は19歳、重慶の大足、壁山、渝北など17の区県から集められた。
11月21日 サーチナ

■五輪景気が去ったところに不動産バブルが破裂して、あちこちで社会主義国には珍しい?血みどろの労働争議が頻発していますから、高卒での就職は一族郎党からも喜ばれた事でしょう。平和憲法を護持して不必要に自衛隊を蔑視しがちな日本とは違ってチャイナでは人民解放軍の入隊するのは貧困地域の人々にとっては大きな夢ですからなあ。「正しい歴史認識」を正しく学んでいる事を何重にも精査した上で、チベット解放の輝かしい歴史とチベット人に対する一方的な哀れみと差別意識を植え付けられた新兵クンたちは、訓練を受ける成都よりも遥かに寒い異文化の土地で、どんな体験をするのでしょうか?

■アフガニスタンやイラクのように、日常的に自爆テロが起こることもなく、駐屯地に携帯型ミサイルが撃ち込まれることもありませんから、出発を見送った御親族の皆さんも安心して「任務」を果たして無事に戻ることを確信している事でしょう。でも、ダラムサラでの会議が何かの決議をした場合は……。万が一、騒乱が起こっても五輪大会は既に開催してしまいましたし、チベット以外の場所で激増中の暴動騒ぎを押さえ込むための見せしめにもなりますから、今度は簡単に「戒厳令」が出るのかも知れませんなあ。そうなれば丸腰の市民や僧侶が標的です。

■戦いは目に見えない所でも続けられているそうで、北京で五輪大会が華々しく行われていた時にも、人民の安全を守るためにサイバーテロとの戦いが繰り広げられていたのだそうです。勿論、発表されたからには「勝利」したという話です。


2008年11月7日、中国紙「北京青年報」は、チベット独立派が北京五輪期間中、サイバーテロを仕掛けようとしたが、当局に早期発見され失敗に終わったと報じた。……北京五輪組織委員会技術部に特別に招かれたインターネットセキュリティの専門家、王江民氏を中心としたチームが発見した。

■チャイナこそがサイバーテロの総本山だと言われているのですから、英雄的に?大活躍した王江民氏が率いるチームの本職が何なのかが非常に気になります。どんな戦いでも、守るより攻める方が簡単ですからなあ。


このチームは北京五輪期間中、24時間体制でサイバーテロの未然防止に努めてきた。発見されたのは開会式から10日後の8月18日。公安部から派遣されたウィルス対策専門家がワード形式の怪しいファイルを発見した。チベット独立を訴える大量の画像のほか、活動地点や代表者の連絡先などもあったという。発見されたウィルスファイルは直ちに処理されたため、拡大被害もなかった。王氏は、「我々が犯人に与えたダメージは大きい。抑制効果も期待できる」とセキュリティ技術の高さをアピールした。
11月7日 Record China

■民間のITサービス企業でも、「24時間体制」を採るのは当たり前。発見したワード形式のファイルが、どうしてウイルスファイルとして処理されたのかは不明。単なる広報文書だったような印象も受けますが、開くとパソコン内で暴れ回るウイルスが仕込まれていたという事でしょうか?それなら北京政府が大喜びするような内容にして送信されるはずなのですが……。国家の威信を懸けた五輪大会ですから、それにちょっとでも「反対」するような内容のファイルなら、すべてがサイバーテロと呼ばれそうな勢いを感じるニュースであります。チベット国旗を持っているだけでもテロリスト候補でしたからなあ。

■「セキュリティは万全」だそうですから、今頃は「攻撃は最大の防御也」の教え通りにチベット支援団体向けに報復攻撃を「24時間体制」で仕掛けている頃かも知れません。
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾四

2008-11-21 11:03:30 | チベットもの
■核廃絶のイニシアティブを取るように日本を激励して下さるダライ・ラマ法王ですが、亡命政府が置かれているインドが着々と核弾頭の保有数を増やしながらミサイル技術もどんどん向上させているのですから、平和を求める祈りも些か複雑なものになってしまいますなあ。チャイナに対する核武装だけは認める、などとは決して思っておられないのは確かです。そう言えば、大いなる期待を背にして当選した米国次期大統領のオバマさんが、何を考えたのかイラクからの撤退とセットにして主張しているアフガニスタン問題の解決に連動させて、インドとパキスタンの国境をめぐるカシミール問題の仲介をするぞ!と言い出したとか……。カシミールはチベット亡命政府があるダラム・サラとも近く、チベットに隣接している場所ですし、チャイナもちゃっかり領土権を主張しているという実にややこしい場所なのであります。

……オバマ氏がアフガンを「テロの震源地」と位置づけ、米軍の増派などで積極的に取り組む姿勢を示したことについては、アフガンだけでなく隣接するパキスタンやインドも歓迎する。しかし、具体策が進まぬうちにオバマ氏が、アフガンの状況を打開するためとして、唐突にインドとパキスタンの国境をめぐるカシミール問題の仲介に乗り出す考えを明らかにしたことで、各国は逆に困惑を強めている。……同国内のイスラム武装勢力タリバンを押さえ、同時にパキスタンとの国境地帯に潜伏する国際テロ組織アルカーイダ勢力を一掃すると表明。米軍をイラクから撤退させる一方、現在3万2000人規模のアフガン駐留米軍に、2個旅団を増派する考えを示してきた。

■米国の1旅団は3000人前後で編成され、現在イラクに駐留しているのは15旅団なのだそうです。その他もろもろを含めて米軍は15万2000人もイラクに貼り付けていますが、莫大な戦費を負担するのにも限界が来ている経済的事情と人的被害の大きさに米国民もブッシュの失政を声高に責めるようになっていますから、何とかイラクに自立して貰ってさっさと手を引きたいところでしょう。でも、フランスとイギリスが勝手に国境線を引いて誕生させたイラクは、常に宗派と民族によって最低でも三つに分裂する危険を孕んだ人造国家国ですから、後は「野となれ山となれ」などと無責任に投げ出すとイランが待ってましたとばかりに動き出す心配がありますなあ。

■分裂と言えばカシミールは実質的に既に三分割されているのですが、飽くまでも暫定的に三つ巴の睨み合いによって微妙なバランスが保たれているだけのことですから、オバマ新大統領がしゃしゃり出て来て「ちゃんと分けましょう」などと能天気な事を口走ったら三つの核保有国が我先に先制攻撃に出るかも知れませんぞ。地図を眺めていて思い付いただけの事なら、早々に考えを変えた方が良さそうですなあ。


……カシミールをめぐるインドとの緊張が緩めば、パキスタンは武装勢力の掃討に力を注ぐことができるというのだ。オバマ氏は、カシミール問題仲介の特使に、クリントン前大統領を任命する可能性があることも明らかにした。……インドにとってカシミール問題は国内問題であり、パキスタンが主張するような、国連を含む国際社会の介入は認められないとの立場だからだ。しかも、インドは、今もパキスタンがイスラム武装勢力のテロを支援しているとみており、米国がパキスタンに有利になる仲介に乗り出すことは、「テロが外交問題を解決する有効な手段であると、パキスタンに誤解させる」(インドの英字紙タイムズ・オブ・インディア)。……

■かつて大インドを支配していた大英帝国は、植民地支配の要諦は「分裂と対立」だと考えて実行しておりました。イスラム教徒が多いのを承知でカシミール地方にインド人の王族を据えて傀儡としていたのがそもそもの始まりです。まったくイギリスは世界中に歴史の地雷を撒き散らしたようなもので、実に困ったことをしてくれたものです。


一方、パキスタンも「米国の狙いは、(カシミール)地域においてインドが影響力を持つ現状をわれわれに認めさせるつもりではないか」(パキスタンの英字紙ドーン)と疑心を募らせる。……オバマ次期大統領は来年の就任後、アフガン増派で北大西洋条約機構(NATO)加盟各国だけでなく日本にも協力を求めるとされる。……オバマ氏側近は、アフガン増派の一方、イランと協議することも含めた新たな地域戦略を検討していることを明らかにした。アフガン政府は10月初旬、サウジアラビアでタリバン側と協議を行ったとされるが、オバマ次期政権としては、その協議の行方についても期待をもって見守っているという。一方、アルカーイダ掃討にはこれまで以上に力を入れ、ウサマ・ビンラーディン容疑者の追跡に全力を挙げる方針だ。……
2008年11月12日 産経ニュース

■核廃絶の動きを少しでも加速させるのに成功すれば、その人や組織は間違いなくノーベル平和賞を受賞するでしょうし、同じくカシミール問題を解決させられれば受賞は確実でしょう。しかし、カシミールを平和にするには核兵器を廃絶しておかないとトンデモないことになりそうですなあ。