■リビアで市民を虐殺しているのは周辺諸国から雇われた傭兵だともっぱらの噂。フランスの外人部隊をそのまま真似たわけでもないのでしょうが、チュニジアで仏外相が大失態を演じているくらいですから、悪い事なら模倣する関係にあるとも考えられます。とは言っても、いざとなったら忽ち略奪・強姦・放火・殺人集団に変貌する雇われ兵などというものは、欧州諸国が苦労の末に編み出した国際法の体系によって何とか根絶されたことになっていたのですが、こうして現代世界にひょっこり顔を出すようだとアフリカの将来はますます暗いものになりそうです。
■部族間の複雑な敵対関係を利用して反目させて第二勢力の芽を摘み、独裁体制を守るためには国内の部族関係とは何の関係も無い他国から兵隊を雇い入れるというのは理に適っている面もありそうですが、実際に反政府運動が盛り上がったら収拾が着かなくなります。サダム・フセインが養成した親衛隊は精鋭を以って聞こえておりましたが、メイド・イン・アメリカの精密兵器の標的にされて呆気なく全滅したくらいですから、内戦が激化した場合にカダフィ自慢の傭兵による親衛隊も悲惨な目に遭いそうですし、東西南からトリポリが包囲されたら海にでも逃げない限り石や棍棒や包丁の類で嬲り殺しに遭うかも知れません。「ルワンダ化」が心配される由縁。
■カダフィ大佐は「諸悪の根源は米国帝国主義だ!」と一面の真理を突く率直な意見を持っていた指導者ですが、経済制裁に耐え切れずに欧米諸国に詫びを入れて表面上は和解して、カネの亡者を呼び込んで国家存亡の危機を脱したものの、三つ子の魂は百までの譬えに漏れず、国連総会の場で安保理を「テロ会議だ!」とこれまた一面の真理を突いて見せていたものでした。日本に対しても「戦後体制を卒業しろ!」との趣旨の貴重な?メッセージを送ってくれたこともありました。
■しかし、自分の独裁体制を崩壊させるのが、本来ならば自分を指導者と仰ぎ、父と慕い、友として信頼するはずの自国民だという単純な事実は認められず、傭兵のリクルートをしていた地域に根を張ったアルカイダ系の組織が「諸悪の根源だ!」と言い出すようでは、自分自身が犯した罪の影に怯える老いた独裁者になり果てたということでしょうなあ。
アルカイダの北アフリカ組織は、リビアのカダフィ大佐を糾弾し、大佐の支配に反抗するデモ隊との連帯を表明した。テロ組織を監視するSITEインテリジェンスグループが24日伝えた。……北アフリカで展開するアルカイダ・イン・ザ・イスラミック・マグレブ(AQIM)は声明で、カダフィ大佐がアフリカの傭兵を雇い、軍用機にデモ隊への攻撃を命じたとして大佐を非難した。AQIMはまた、イスラム聖職者、思想家、ジャーナリストに対し、リビアの民衆蜂起を支持するよう求めた。……
■リビアの南には西のギニアと東のソマリアに挟まれたイスラム教徒と土着宗教とが混在する国が並んでおりまして、そうした国の一つであるスーダンはとうとう分離独立へと向かい始めています。そんなややこしい地域は深刻な貧困地域でもありますから、オイル・マネーで傭兵を募集するには打って付けでもありましょうし、仮に異教徒を選抜していたりするとイスラム原理主義組織が激怒するような事が起こり得ることになります。
AQIMの声明は「われわれは、カダフィ氏の圧制を終わらせようとしたにすぎない市民や非武装のイスラム教徒に対し、同氏が行った卑劣な殺りく行為を腹立たしく思っている」とし、「われわれはリビアのイスラム教徒に対し、確固たる信念を持って耐えることを呼び掛ける。われわれは彼らが戦いと変革を継続し、犯罪者である暴君の追放に至るよう、彼らを鼓舞する」としている。AQIMはアルジェリア北部で治安部隊から圧力を受けており、ニジェール、マリ、アルジェリア、モーリタニアにまたがる砂漠地帯に一部の拠点を移している。
2011年2月24日 ロイター
■こうした現地の情報は、残念ながら日本の一般的な新聞や雑誌、あるいはテレビやラジオを情報源にしている限り接することは出来ません。AQIMという組織の真意は不明ながら、欧米諸国と和解したことに加えて自国のイスラム教徒を虐殺している点を問題視して、単なる反米テロ組織ではない面を誇示したいのかも知れませんなあ。ただ、イスラム原理主義組織に狙われる指導者の中には近代化を目指して政教分離に踏み切った人物も多く含まれますから、仮にAQIMが推奨するような人物が次のリビアの指導者になったりすると、それはそれで困ったことになりそうです。
■部族間の複雑な敵対関係を利用して反目させて第二勢力の芽を摘み、独裁体制を守るためには国内の部族関係とは何の関係も無い他国から兵隊を雇い入れるというのは理に適っている面もありそうですが、実際に反政府運動が盛り上がったら収拾が着かなくなります。サダム・フセインが養成した親衛隊は精鋭を以って聞こえておりましたが、メイド・イン・アメリカの精密兵器の標的にされて呆気なく全滅したくらいですから、内戦が激化した場合にカダフィ自慢の傭兵による親衛隊も悲惨な目に遭いそうですし、東西南からトリポリが包囲されたら海にでも逃げない限り石や棍棒や包丁の類で嬲り殺しに遭うかも知れません。「ルワンダ化」が心配される由縁。
■カダフィ大佐は「諸悪の根源は米国帝国主義だ!」と一面の真理を突く率直な意見を持っていた指導者ですが、経済制裁に耐え切れずに欧米諸国に詫びを入れて表面上は和解して、カネの亡者を呼び込んで国家存亡の危機を脱したものの、三つ子の魂は百までの譬えに漏れず、国連総会の場で安保理を「テロ会議だ!」とこれまた一面の真理を突いて見せていたものでした。日本に対しても「戦後体制を卒業しろ!」との趣旨の貴重な?メッセージを送ってくれたこともありました。
■しかし、自分の独裁体制を崩壊させるのが、本来ならば自分を指導者と仰ぎ、父と慕い、友として信頼するはずの自国民だという単純な事実は認められず、傭兵のリクルートをしていた地域に根を張ったアルカイダ系の組織が「諸悪の根源だ!」と言い出すようでは、自分自身が犯した罪の影に怯える老いた独裁者になり果てたということでしょうなあ。
アルカイダの北アフリカ組織は、リビアのカダフィ大佐を糾弾し、大佐の支配に反抗するデモ隊との連帯を表明した。テロ組織を監視するSITEインテリジェンスグループが24日伝えた。……北アフリカで展開するアルカイダ・イン・ザ・イスラミック・マグレブ(AQIM)は声明で、カダフィ大佐がアフリカの傭兵を雇い、軍用機にデモ隊への攻撃を命じたとして大佐を非難した。AQIMはまた、イスラム聖職者、思想家、ジャーナリストに対し、リビアの民衆蜂起を支持するよう求めた。……
■リビアの南には西のギニアと東のソマリアに挟まれたイスラム教徒と土着宗教とが混在する国が並んでおりまして、そうした国の一つであるスーダンはとうとう分離独立へと向かい始めています。そんなややこしい地域は深刻な貧困地域でもありますから、オイル・マネーで傭兵を募集するには打って付けでもありましょうし、仮に異教徒を選抜していたりするとイスラム原理主義組織が激怒するような事が起こり得ることになります。
AQIMの声明は「われわれは、カダフィ氏の圧制を終わらせようとしたにすぎない市民や非武装のイスラム教徒に対し、同氏が行った卑劣な殺りく行為を腹立たしく思っている」とし、「われわれはリビアのイスラム教徒に対し、確固たる信念を持って耐えることを呼び掛ける。われわれは彼らが戦いと変革を継続し、犯罪者である暴君の追放に至るよう、彼らを鼓舞する」としている。AQIMはアルジェリア北部で治安部隊から圧力を受けており、ニジェール、マリ、アルジェリア、モーリタニアにまたがる砂漠地帯に一部の拠点を移している。
2011年2月24日 ロイター
■こうした現地の情報は、残念ながら日本の一般的な新聞や雑誌、あるいはテレビやラジオを情報源にしている限り接することは出来ません。AQIMという組織の真意は不明ながら、欧米諸国と和解したことに加えて自国のイスラム教徒を虐殺している点を問題視して、単なる反米テロ組織ではない面を誇示したいのかも知れませんなあ。ただ、イスラム原理主義組織に狙われる指導者の中には近代化を目指して政教分離に踏み切った人物も多く含まれますから、仮にAQIMが推奨するような人物が次のリビアの指導者になったりすると、それはそれで困ったことになりそうです。