旅限無(りょげむ)

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チュニジアから 其の伍

2011-02-28 16:01:23 | 外交・世界情勢全般
■リビアで市民を虐殺しているのは周辺諸国から雇われた傭兵だともっぱらの噂。フランスの外人部隊をそのまま真似たわけでもないのでしょうが、チュニジアで仏外相が大失態を演じているくらいですから、悪い事なら模倣する関係にあるとも考えられます。とは言っても、いざとなったら忽ち略奪・強姦・放火・殺人集団に変貌する雇われ兵などというものは、欧州諸国が苦労の末に編み出した国際法の体系によって何とか根絶されたことになっていたのですが、こうして現代世界にひょっこり顔を出すようだとアフリカの将来はますます暗いものになりそうです。

■部族間の複雑な敵対関係を利用して反目させて第二勢力の芽を摘み、独裁体制を守るためには国内の部族関係とは何の関係も無い他国から兵隊を雇い入れるというのは理に適っている面もありそうですが、実際に反政府運動が盛り上がったら収拾が着かなくなります。サダム・フセインが養成した親衛隊は精鋭を以って聞こえておりましたが、メイド・イン・アメリカの精密兵器の標的にされて呆気なく全滅したくらいですから、内戦が激化した場合にカダフィ自慢の傭兵による親衛隊も悲惨な目に遭いそうですし、東西南からトリポリが包囲されたら海にでも逃げない限り石や棍棒や包丁の類で嬲り殺しに遭うかも知れません。「ルワンダ化」が心配される由縁。

■カダフィ大佐は「諸悪の根源は米国帝国主義だ!」と一面の真理を突く率直な意見を持っていた指導者ですが、経済制裁に耐え切れずに欧米諸国に詫びを入れて表面上は和解して、カネの亡者を呼び込んで国家存亡の危機を脱したものの、三つ子の魂は百までの譬えに漏れず、国連総会の場で安保理を「テロ会議だ!」とこれまた一面の真理を突いて見せていたものでした。日本に対しても「戦後体制を卒業しろ!」との趣旨の貴重な?メッセージを送ってくれたこともありました。

■しかし、自分の独裁体制を崩壊させるのが、本来ならば自分を指導者と仰ぎ、父と慕い、友として信頼するはずの自国民だという単純な事実は認められず、傭兵のリクルートをしていた地域に根を張ったアルカイダ系の組織が「諸悪の根源だ!」と言い出すようでは、自分自身が犯した罪の影に怯える老いた独裁者になり果てたということでしょうなあ。


アルカイダの北アフリカ組織は、リビアのカダフィ大佐を糾弾し、大佐の支配に反抗するデモ隊との連帯を表明した。テロ組織を監視するSITEインテリジェンスグループが24日伝えた。……北アフリカで展開するアルカイダ・イン・ザ・イスラミック・マグレブ(AQIM)は声明で、カダフィ大佐がアフリカの傭兵を雇い、軍用機にデモ隊への攻撃を命じたとして大佐を非難した。AQIMはまた、イスラム聖職者、思想家、ジャーナリストに対し、リビアの民衆蜂起を支持するよう求めた。…… 

■リビアの南には西のギニアと東のソマリアに挟まれたイスラム教徒と土着宗教とが混在する国が並んでおりまして、そうした国の一つであるスーダンはとうとう分離独立へと向かい始めています。そんなややこしい地域は深刻な貧困地域でもありますから、オイル・マネーで傭兵を募集するには打って付けでもありましょうし、仮に異教徒を選抜していたりするとイスラム原理主義組織が激怒するような事が起こり得ることになります。


AQIMの声明は「われわれは、カダフィ氏の圧制を終わらせようとしたにすぎない市民や非武装のイスラム教徒に対し、同氏が行った卑劣な殺りく行為を腹立たしく思っている」とし、「われわれはリビアのイスラム教徒に対し、確固たる信念を持って耐えることを呼び掛ける。われわれは彼らが戦いと変革を継続し、犯罪者である暴君の追放に至るよう、彼らを鼓舞する」としている。AQIMはアルジェリア北部で治安部隊から圧力を受けており、ニジェール、マリ、アルジェリア、モーリタニアにまたがる砂漠地帯に一部の拠点を移している。
2011年2月24日 ロイター 

■こうした現地の情報は、残念ながら日本の一般的な新聞や雑誌、あるいはテレビやラジオを情報源にしている限り接することは出来ません。AQIMという組織の真意は不明ながら、欧米諸国と和解したことに加えて自国のイスラム教徒を虐殺している点を問題視して、単なる反米テロ組織ではない面を誇示したいのかも知れませんなあ。ただ、イスラム原理主義組織に狙われる指導者の中には近代化を目指して政教分離に踏み切った人物も多く含まれますから、仮にAQIMが推奨するような人物が次のリビアの指導者になったりすると、それはそれで困ったことになりそうです。

チュニジアから 其の四

2011-02-28 10:32:48 | 外交・世界情勢全般
■「ジャマーヒリーヤ」政治思想には独裁者の存在は許されていないそうで、カダフィ大佐は公職から身を引いて純粋に「革命の指導者」として暮らしていたことになっていましたが、一族郎党が利権を独占してやりたい放題に独裁体制を利用して甘い汁をたらふく吸っていた事実が暴露されております。

……25日夜から26日にかけ、カダフィ派による反体制派の弾圧とみられる銃撃作戦が首都トリポリの複数地区で行われた。ロイター通信は住民の話として、反体制派とみられる25人が殺害されたと伝えた。……体制存続に背水の陣を敷くカダフィ氏は26日、支持派に武器を配ったり、検問所を設置するなどして態勢を増強し、市街戦に備えている模様だ。…… 

■先の大戦でサイパン島や沖縄でも戦時国際法を無視して一般住民に武器を渡して悲惨な結果を招いたことがありますが、既に内戦状態になった以上は勝敗の決着がつくまでは大小の悲劇が起こり続けることになりそうです。しかし、多勢に無勢でさっさと武器を捨てて投降して脅迫された身の上を切々と訴えれば反政府側に生きて寝返ることが許される可能性は残っているので、カダフィ大佐の最後はルーマニアのチャウシェスクに酷似したものになるかも知れませんなあ。


……26日の汎アラブ紙アッシャルクルアウサトによると、首都で籠城するカダフィ氏は出身地シルテの部族に軍事支援を緊急要請。部族は機関銃を積み込んだ車両30台を首都へ送ったが、途中で反体制派に遮られ、シルテに戻ったという。また、同紙は、先に辞任したアラブ連盟のアブドルモネム・フーニ前大使の話として、カダフィ大佐が反乱の扇動者と主張する国際テロ組織アル・カーイダとの戦闘強化と引き換えに「体制存続を保証してほしい」と米欧に水面下で働きかけたと伝えた。……
2011年2月27日 読売新聞

■「敵の敵は味方」という究極の選択はあり得ましょうが、それも時と場合に因りますますから、この「体制存続の保証」を求めたという情報が本当だとしても、悪い冗談としか思われないでしょうなあ。まあ、カダフィを見棄てて反乱側に加わった前大使の話ですから、自分の危うい立場を補強するために流した大法螺だある可能性はありますが……。


フランスのミシェル・アリヨマリ外相が、抗議デモの吹き荒れるチュニジアで冬休みを過ごしていた問題で、サルコジ大統領は外相の更迭を決めた。……外相は休暇中、抗議デモで国を追われたベンアリ前大統領と極めて親しい実業家が保有する私有ジェット機を提供された。デモが起きると「フランスには治安維持のノウハウがあり、チュニジアに提供してもいい」などと発言。デモの最中にベンアリ前大統領と電話で連絡し合っていたことも暴露され、野党が一斉に「仏外交の信用性を失墜させた」として大統領に罷免を求めていた。サルコジ大統領は当初、外相を守る構えだった。……
2月27日 読売新聞 

■こういう現象は「EUボケ」とでも呼ぶのでしょうか?フランスの外交戦略も地に墜ちてしまいましたなあ。本気でカダフィ大佐に「フランスの治安維持のノウハウ」を提供する心算だったのでしょうか?現在のリビアは1911年から大戦後までイタリアの植民地で、戦後は英仏の共同統治の下に置かれた歴史がありますから、フランス外相は元は自国の植民地だという危険な錯覚があったのかも知れません。でも、地中海対岸のアルジェリアからサハラ砂漠を越えてアフリカ中央部に広がっていた旧フランス植民地に当たる国々にとっては見過ごせない言動と受け取られるでしょうなあ。独裁政権の利権に食い込んで荒稼ぎしている人物とべたべた付き合っている時点で外務大臣の資格は無いのでしょうが……。日本の政治かも御近所の独裁国家に関連する組織とのお付き合いには十分にご注意願いたいものであります。

チュニジアから 其の参

2011-02-28 10:32:28 | 外交・世界情勢全般
■今にして思えば、よくぞこれまで40年以上も独裁体制を維持できたものだと、感心するやら呆れるやらのカダフィ政治の内幕が徐々に暴露されておりますが、御本人は支離滅裂な演説を繰り返して断末魔の悲劇を演じているようです。思えば政権交代の後、鳩山、菅と迷走しながらもよくぞ2年間も寄り合い所帯内閣が存続したものだ、とも言えそうですが、寄木細工の接着剤が劣化して小さい順?にぽろぽろと脱落し始めた民主党は、いよいよ「数の論理」によって予算関連法案の成立が絶望視される段階に至って周辺・身内・側近からも菅アルイミ首相の辞任が囁かれ始めていると聞けば、劇的に孤立して行くカダフィ政権の断末魔と重なって見えないこともないような……。

内戦状態に陥りつつあるリビアで、同国東部を支配下に置いた反体制派の軍部隊は同日までに指揮系統を統一、西部の制圧を進めている。……最高指導者カダフィ氏を拘束するため、首都トリポリの反体制派を支援するとしており、首都で本格的な戦闘が起きる可能性が出ている。……主要製油所がある北部ラスラヌフも反体制派が制圧したと伝えた。……カダフィ氏は同日、国営テレビでザーウィヤ市民に向けたとする演説を行い、「(国際テロ組織)アルカーイダにそそのかされるな。冷静さを取り戻せ」などと呼びかけた。……隣国アルジェリアを拠点とするイスラム過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカーイダ組織」は同日、ウェブサイト上で声明を出し、リビアの反体制派への支援を表明した。…… 

■「アルカイダ黒幕説」はあながち真っ赤な嘘とも言えないようですが、広大なアラブ地域の中でカダフィ大佐を全面的に支持してくれる政治的な勢力は何処にも見当たらないのが現状ですから、反カダフィの動きに細かい網の目で構成されているアルカイダの組織が便乗したところで、何の不思議もありませんなあ。「アラブの大義」だの「イスラム同胞」だの、中東地域で振られていた大きな旗があっさり降ろされてしまう事も多いようですから、独裁者の仲良しクラブが崩壊し始めた今となっては裸の王様カダフィ大佐は世にも滑稽な孤軍奮闘に努めねばなりますまいなあ。


……中東の衛星テレビ局アルジャジーラは23日、カダフィ大佐の長女アイーシャ氏らを乗せたとみられる飛行機が地中海のマルタで着陸を拒否され、リビアに引き返したと報じた。カダフィ氏は新たに外国人傭兵を募るなど反体制派に対する弾圧を強めているが、同時に家族の脱出も図っていたことが明らかになった格好だ。中東の衛星テレビ局アルアラビーヤなどは23日、カダフィ氏の七男ハミース氏の部隊でも命令拒否が相次ぎ兵士十数人が処刑されたと報じた。
2011年2月25日 産経ニュース 

■自分は「最後の血の一滴まで戦う!」と叫んで見せて、裏では一族を国外に逃がしているのが本当だとしたら、動員されて演説を聞かされ旗を振らされている支持者達はいい面の皮であります。日本の隣近所でも似たような事態になったら、あちこちで同じ悲惨な茶番劇が演じられそうで想像するだけでも実に不愉快であります。玩具の兵隊達を束ねてクーデターを起こした1969年は、「アフリカの年」と呼ばれた1960年の熱気が濃厚に残っていましたし、社会主義陣営の宣伝にも乗って「民族解放」の大ブームが続いていましたから、日本の大手マスコミでも英雄扱いだったようです。

■折も折、チャイナでは徹底的な情報封鎖の中で文化大革命が進行していた1973年から、イスラームとアラブ民族主義と社会主義という驚天動地のハチャメチャな組み合わせで「ジャマーヒリーヤ」思想を捻り出してリビア版の文化大革命を始めてしまいます。『毛沢東語録』を手本にしたかどうかは定かではありませんが本家の文革が惨憺たる結果に終わった1976年に『緑の書』という聖典?を国民に押し付けて、先日も断末魔の演説をしている時に御本人が振り回しておりましたなあ。

■「ジャマーヒリーヤ」は「イスラム社会主義」と訳されているようですが、どうやら語源を分析すると直接民主主義・アラブ民族主義・社会主義という当時、大流行していた理想的な政治思想を並べてイスラーム教を接木するという盛り沢山である一方で矛盾だらけの政治思想と言えそうです。リビアは略称で日本語の正式国名は「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」と、隣の将軍様の国に似て長い名前になってしまうのは旧ソ連の影響があったと考えられましょう。そのソ連にはスターリンという世界で最も民主的な憲法を作って公布し、それを一度も守らなかったという偉大な先輩がおりますから、その弟子筋に当たる独裁国は同じ運命を辿るのかも知れません。

チュニジアから 其の弐

2011-02-27 16:14:53 | 外交・世界情勢全般
■1月上旬に始まったチュニジアの反政府動乱は、ほんの些細な?一人の若者の焼身自殺が切っ掛けだったのでした。モハメド・ブアジジ君という26歳の若者が細々と街頭で果物と野菜を売って糊口を凌ごうと思ったら、お決まりの悪徳警官が現われて露骨に賄賂を要求したのが事の発端で、日本のマンネリ時代劇では定番のシーンそのままに、商品と計量用の天秤を没収された哀れな若者が抗議をすると衆人環視の中でビンタを張られて「商売物と道具を返して欲しければカネを出せ!」と無理難題を押し付けられたとか……。

■おそらくは仕入れの元手も商売道具も借り物だったのでしょうなあ。袖の下を強要されても無い袖は振れず、絶望した若者は焼身自殺を図り、独裁国家らのマスコミは小さな日常茶飯事とばかりにいつも通りに無視……とここまでならば、日本の隣近所の国々でも頻発している恥ずかしくも情けない独裁政権の日常風景なのですが、ここに一躍有名になったフェイスブックとツィッターが参戦!して事態は急変して行ったのでした。

■チュニジアでベンアリ大統領が国外脱出劇を演じると、反政府ネット運動は文字通り燎原の火のように砂漠を飛び越えてあちこちに飛び火して広がり、中東和平の要石となっているエジプトでも大統領を追い落とすことに成功したのでありますが、それを受けて2月12日に菅アルイミ首相は首相公邸前で記者団に「エジプト国民の平和的に政権交代を求める活動が新しい展開を示していることに敬意を表し、民主的に新たな政権が誕生することを期待したい」と述べたのだそうです。

■自分の政権が画像投稿サイトのユーチューブを舞台にした「国家機密漏洩」事件で大きく揺らぎ始めたことをすっかりお忘れの御様子。そして、ムバラク大統領を追い出したのはエジプト国軍だったことと、仙谷ノーコメント前官房長官の「柳腰外交」で海上保安庁と自衛隊が政府に不信感を募らせていることに不気味な共通性がありはせぬか?ともお考えにはならない御様子。特に自衛隊には沖縄の基地移設問題に関して日米同盟関係に亀裂が入ってから、現政権に対して静かな怒りが渦巻き始めているような気配があるのも気になるところであります。

■リビアでは部族間対立が表面化してカダフィ後の混乱と内戦が心配されておりますが、日本でも地方自治体の政治的な反乱があちこちで起こり、事は菅アルイミ首相自身が「びっくりした」と言う子供手当ての財源を巡っての対立に留まりそうにありませんぞ。悲しいことに「地方分権」も紙くず同然となった民主党の選挙用マニフェストに書かれているのですから、これも前言撤回の一つに加わる可能性が高いのですから、統一地方選は民主的かつ平和的な反政府運動になるかも知れませんなあ。

■テレビ東京が毎週土曜日に放送している『田勢康弘の週刊ニュース新書』という番組で、菅アルイミ政権が発足した時に田勢さんが、いみじくも「かつての三木政権の誕生を思い出します」と語っていたのでしたが、確かにクラッシャー小沢との代表選で自分が初当選したのは「ロッキード選挙」だったなどと不吉な?思い出話を持ち出して、相手に致命傷を負わせる一矢を報いたような得意げな表情を見せていましたから、政治ジャーナリストの田勢氏としては、あのバカバカしい「三木おろし」騒動を即座に思い出していたのかも知れません。

■その予感はほぼ的中して、どうやら仙谷ノーコメント前官房長官が主導する「政治とカネ」の問題という通りのいい包装紙で包んで陰湿な小沢斬りの粛清劇がねちねちと進行しているのであります。「三木おろし」というのは、椎名裁定の「青天の霹靂」で誕生した三木武夫政権の76年5月に、最大派閥の田中派・第二派閥の福田派・田中角栄の盟友だった大平派が党内に「挙党協」なる組織を作って半年以上も熾烈な首相追い落としを仕掛け、対する三木総理総裁の方は粘り粘って同年12月5日のロッキード総選挙まで居座ったという自民党史に輝く?派閥抗争のことであります。菅アルイミ首相が初当選を果たした「ロッキード総選挙」が忘れられないのでしょうが、自分が日本の首相になっている事を時々忘れてしまうのは困ったものであります。

チュニジアから 其の壱

2011-02-27 14:48:20 | 外交・世界情勢全般
■チュニジアに始まって中東・北アフリカ地域に飛び火して、大国エジプトのムバラク政権が崩壊、そして、そのエジプトの英雄ナセル故大統領に影響され「アラブの狂犬」として暴れ続けたリビアのカダフィ大佐が裸の王様になって虚しい遠吠えを響かせております。こうした一連の反政府運動の動きを「ドミノ現象」と呼ぶようですが、チュニジアからリビアへと広がった動きを地図上で辿ってみますと、ドミノというより「オセロ」に似ているような気がします。テレビ局や新聞社が提供してくれるアフリカ北部から中東を含んだ地図では、泥沼化して分裂状態が続くイラクが一種の空白地域のような印象を与えてしまいますが、ブッシュ政権が仕掛けたフセイン退治の戦争が今回の大変動に小さからぬ影響を与えていた可能性も考えてみるべきかも知れません。

……イラク北部バイジにある同国最大級の石油精製所で26日、爆弾テロとみられる爆発があり、操業が全面停止、従業員4人が死亡した。この精製所の処理能力は1日約15万バレル。当局側は1週間分の国内需要をまかなうだけの備蓄はあるとしているものの、施設の完全復旧には早くとも数週間はかかる見通しで石油製品供給に影響が出るのは必至だ。イラクでは電力不足やインフラの不備などに対する不満が高まっている。25日には、マリキ首相の不参加呼びかけにもかかわらず、首都バグダッドや北部キルクーク、南部バスラなど少なくとも17都市で大規模な反政府デモが発生、各地で治安部隊との衝突があり、計15人が死亡した。今回の精製所爆破により燃料不足がさらに深刻化すれば、国民の不満に拍車がかかる可能性が高い。
2月27日 産経新聞

■サダム・フセインさえ排除すれば、米軍を中心とする同盟軍は歓呼の声で迎えられ、手品のように民主主義の芽が出て魔法のように根が生えて全国土を覆い尽くして目出度し目出度しの解放物語が完結する、などと当時のブッシュ政権の中枢では考えてたのかも知れませんが、民族対立と宗派間の対立が複雑に絡み合っている現地の歴史と現状を理解していれば、フセイン独裁政権の崩壊後にトンデモない混乱が起こることなど簡単に分かったはずですし、先住民との惨たらしい殺し合いやら史上最大規模の内戦だった南北戦争の歴史を少しは真面目に勉強していれば、能天気なフセイン退治など考えないだろうに、と思っても後の祭りであります。

■石油と武器とのバーター取り引きを基本として独裁政治を容認するダブル・スタンダードが米国の中東戦略でしたが、武器を売りつけてもまだ余るオイル・マネーも吸い上げてマネー・ゲームに誘い込むようになってからは、独裁政権下の産油国では国内格差が途方も無く大きくなり、その一方でIT産業が乗り込んで情報機器を大量に販売し続けて結果が、手製爆弾の氾濫と反政府運動の急展開という大混乱。憎しみ合っている敵方に渡るなら石油など不要だ!と唯一の売り物の原油を自らの手で売れなくしてしまう困った輩が続々と現われますと、一望千里の砂漠に伸びるパイプ・ラインは恰好の標的になりましょうなあ。実際に石油の富をまったく配分されない貧困層の中には、こうした絶望的な爆破テロに走る動機を持った若者が多いのでしょうから……。

■ムバラク政権が崩壊したエジプトでも同様のテロ事件が起こっておりました。反政府デモの伝播拡散よりも、こうした破壊工作の方が直接的な影響を日本に及ぼす可能性が高いのに、不思議なくらいに扱いが小さかったのでした。


エジプト国営テレビは5日、シナイ半島にある同国産天然ガスのパイプラインが複数箇所でテロ攻撃を受けて爆破され、火災が発生したと伝えた。同テレビは「外国勢力による攻撃」としている。エジプト当局は現場一帯で「非常事態」を宣言、安全措置としてイスラエルやヨルダン向けの供給を停止した。パレスチナ自治区ガザに近いアリーシュで、シナイ半島を通ってヨルダンへ向かうパイプラインが標的にされた。一部のイスラム原理主義武装勢力は「イスラエル向けパイプラインを爆破せよ」と呼びかけていた。…… 

■これはムバラク政権が崩壊する僅か6日前の小さな?出来事でしたが、何が起こっても不思議ではないと言われる中東という地域では、平和ボケ日本からは想像もできない奇怪な事が起こるという現実を教えてくれる貴重な情報でもあります。


ムバラク大統領退陣を求める反政府勢力の間では、延命を図る大統領周辺が、「原理主義の脅威」を印象づけるため爆破を自作自演したのではないかとの見方も出ている。反政府デモで存在感を増す原理主義組織ムスリム同胞団に対する国民の不信感をあおるのに好都合だからだ。ガザ地区に近いエジプトのラファでも5日、キリスト教会が何者かに爆破された。教会は事件当時は無人で、死傷者はいない模様だ。
2011年2月5日 読売新聞 

■もしも「自作自演」ならば政権末期のムバラク大統領が仕掛けた、断末魔の謀略ということになりますし、パイプ・ラインが爆破された同日に「無人の教会」を爆破するというのも、確かに芝居がかったものを感じますなあ。リビアでも追い詰められたカダフィ大佐が国内の石油関連設備を「爆破しろ!」と命じたという報道があったようですし、湾岸戦争の折にはサダム・フセインが油井を爆破炎上させたことがありました。本当に石油しかない国の独裁政権が崩壊するというのは大変なことなのであります。 

素人政権の災害対応 

2011-02-27 12:55:02 | 政治
■ニュージーランドのクライストチャーチを襲った震災で崩落した学校の残骸を目にして言葉も出ませんが、世界最高レベルのハイパーレスキュー隊の皆さんが続ける努力が奇跡を呼ぶことを祈るばかりであります。看護師養成コースが評判だったとはいえ、行方不明者に女性が多い事に驚くと共に日本の女性はグローバル化時代に即応して行動的なのだと改めて知った次第です。昼食時の大地震は関東大震災と同じですが、ニュージーランドでは大きな火災が発生しなかった換りに食事を摂る場所に多くの人が集まっていたのが大きな悲劇を生んだ原因なのでしょう。

■日本政府の対応は早かったと一部では評価されているようですが、党首討論で自民党の谷垣総裁が指摘した通り、小沢斬りのセレモニーに時間を取られていなければ、更に半日早く救助隊は現地に到着していた可能性はありましょうし、2月24日の記者会見で枝野ウカツニモ官房長官が「地震への対等に政府一体となって取り組んでいる……」と大見得を切りながらも松木農水政務官の「(辞任)報道は残念だ」と弱音を吐かねばならない民主党政権の内部分裂はますます深刻なようであります。

■「政府一体」などと実態を無視した言葉の遊びを続けているから支持率が奈落の底に向かって落ちて行くことに気付かない鈍感さだけは「政府一体」と言えそうなのですが……。


政府は23日、ニュージーランド地震を受けた国際緊急援助隊派遣など、日本政府の迅速な対応をアピールしたが、政府内で足並みの乱れもあった。「これまでのところ、極めて迅速に行動できた」菅首相は国会内で開いた関係閣僚会議で、政府の対応を自賛した。党首討論でも「迅速な対応が出来た」と繰り返した。その後、記者団に、「国際緊急援助隊の派遣要請がある前に先遣隊を送った」ことを強調。首相と枝野官房長官はそれぞれ、外務省の担当部局を激励するために同省を訪問し、枝野氏はドリンク剤を差し入れるなど、担当職員への気遣いも見せた。…… 

■素直に「迅速な対応」を賞賛したい気持ちにもなりますが、予算関連法案もTPP加盟問題も税制論議も普天間基地移設問題も、何もかもが「迅速な対応」を取れずに混迷が深まるばかりの菅アルイミ内閣が、多くの邦人も巻き込まれた異国の大地震という不幸に乗じて情けない点数稼ぎをしようともがいているようにしか見えないのは悲しい話であります。


……前原外相が22日夜、緊急援助隊を被災地に輸送するための政府専用機に被災者の家族を同乗させる考えを表明しながら、政府専用機を管理・運用する防衛省との具体的な調整も行われないまま、見送られたことだ。「一刻も早く政府専用機に旅立ってもらい、現地で対応する方が優先度が高い」(枝野官房長官)との考えからだが、防衛省では「外務省から協議の要請もなかった」として、根回しもないままのアナウンスに不満もくすぶっている。
2011年2月23日 読売新聞 

■残念ながら、民主党政権が「政府一体」「迅速な対応」と自画自賛する仕事の実態を象徴的に表わしているようなお粗末な話でありますなあ。花火を打ち上げては逃げ去る前原外相、そして、独裁専断の権化だった仙谷ノーコメント官房長官の精神を見事に受け継いた枝野ウカツニモ官房長官の独断が縦割り行政の壁をまたまた際立たせてくれる、総理大臣の首を何回挿げ替えても民主党はいつまでも民主党なのでしょうか?毎日新聞の記事には、発言内容など詳しく載っています。


……前原誠司外相は22日夜、「うまくタイミングが合えばという前提だが、現地に行きたい(被災者の)保護者も乗ってもらうよう段取りを今している」と述べ、政府専用機に国際緊急援助隊だけでなく、被災した富山市立富山外国語専門学校などの学生の保護者で現地入りを希望する人の搭乗も受ける意向をいったんは表明した。ところが、政府専用機を管理、運用する防衛省は「家族を乗せることについて、外務省から正式な依頼は来ていない」と説明、搭乗は見送られた。今回の派遣の根拠となる国際緊急援助隊法は被災者の保護者を想定していないという。北沢俊美防衛相も「聞いていない」と完全否定した。
2011年2月23日 毎日新聞 

■但し書きの「前提」を貼り付けておけば責任を追及される事は無いと予防線を張っていたようにも見えますが、防衛省との交渉をまったく指示していなかったとすれば、エエカッコシイと陰口を叩かれる前原流の言いっ放し・やりっ放しの悪い癖が甚大な被害が出ている局面でも出てしまったのかも知れません。更に根拠となる法律の内容にも疎くその運用にも不手際が目立つというのも、選挙前の「政治主導」が政権奪取後に「官僚依存」へと大転換した素人政治家集団から抜け出せない現状を物語っておりますなあ。

領海内の次は公海上 其の参

2011-02-19 16:21:45 | 外交・情勢(アジア)
■『其の弐』に事実誤認がりましたので訂正しつつ、シーシェパード問題を考えたいと存じます。

日本が南極海調査捕鯨の中止を決めた背景には、日本の捕鯨やイルカ漁を「食い物」(農林水産省幹部)にして、寄付金収入を増大させてきたシー・シェパード(SS)に経済的な打撃を与えたいという日本側の隠れた狙いがある。SSは、米有料チャンネル「アニマル・プラネット」が2008年から放送しているテレビ番組「鯨戦争」を通じて飛躍的に知名度を上げてきた。撮影班が抗議船に乗って妨害活動を収録、SSの主張を反映した一方的な内容に編集した番組で、同チャンネルの歴代2位の視聴率を稼ぎ出す人気番組に成長している。SSにとっては、支持者や寄付者を増やすための「情報戦略の核」となる宣伝媒体となった。…… 

■「日本側の隠れた狙い」とは兵糧攻めのことのようですが、敵もさるもの引っ掻く者、こちら側が補助金切れで調査捕鯨の再開が出来なくなる危険もありそうで心配です。何せ、後先考えずに花火を打ち上げては取り返しの付かない事態を招くのが民主党政権の悪癖ですからなあ。


しかし、内容には問題点が多い。SS代表のポール・ワトソン容疑者は著書で、「派手派手しいドラマを演出し、相手をだませ」と述べている。番組も日本側を悪役に仕立て上げてショー化され、代表が日本の暗殺者に撃たれ「たまたま弾が胸のバッジに当たって助かった」とするような“やらせ演出シーン”が数多く存在する。…… 

■八百長問題は大相撲だけに限らず、報道メディアにも数多く存在する問題でもあります。米国は戦争報道などで八百長の専門家が数多く育って腕を磨いて競い合って来た輝かしい?歴史を持っていますから、日本の捕鯨船がゴルゴ13を雇ってワトソン容疑者を狙撃するようなでっち上げ番組くらい簡単に作ってしまうのでしょう。ゴルゴ13なら胸の小さなバッジに殺傷力が弱い小口径弾を命中させることも出来そうですから、雇い主はシーシェパード側という筋立てになりそうですが……。


SSの妨害は撮影とセットで行われており、16日には抗議船3隻が合流、大規模な攻撃が予想されていた。このため、日本政府内では「SSにこれ以上、PR用の光景を撮らせるべきではない」として、肩すかしを食わせようとの考えが強まった。実際、SSを知る元活動家は「盛り上がりシーンに欠ける今回の鯨戦争は大幅な番組縮小を余儀なくされ、団体は経済的な打撃を受ける」と語った。これまで、SSの妨害に苦しんだカナダやノルウェーは、抗議船の拿捕や活動家の立件で、妨害を阻止してきた。日本はSS船の旗国であるオーストラリアやオランダに厳しい措置を要請していく必要がありそうだ。(佐々木正明)
2011年2月19日 産経新聞 

■『其の弐』ではワトソン容疑者は白人に対しては寛容との事実誤認をしてしまいました。ここに訂正してお詫び申し上げます。カナダやノルウェーもしっかり標的にされて苦労したのですなあ。しかし、法律に従って粛々と対応して妨害行為の意志を挫いていたわけですなあ。やはり「1歩後退、2歩前進」の稚拙な策は単なる敗北主義の言い換えでしかなく、合法と違法の区別を明確にして断固とした対応を採るのが最も経済的で適切な選択だということなのでしょう。もしも、記事にある元活動家の予想が外れて、「中止」に追い込まれた日本側の姿勢が過剰演出によって一方的な勝利として報道された場合、寄付金は更に増えるかも?尖閣衝突事件の犯人といい、ワトソン容疑者といい、悪を裁けぬ日本を嘲笑う輩がどんどん増えると、日本国内のモラルはますます低下してしまいそうで心配になりますなあ。
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領海内の次は公海上 其の弐

2011-02-19 15:56:24 | 外交・情勢(アジア)
■自分の退陣が政治日程に上り始めたからと言って、突如として調査捕鯨を中止させて捕鯨そのものを消滅させようとする菅アルイミ首相には困ったものでありますが、少し冷静になって敵方のシーシェパートの正体を知っておくのも大事かも?

……調査捕鯨は南極海と北西太平洋で財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が行っている。10年度の南極海での捕獲数は、中止によりミンククジラ170頭(計画は約850頭)、ナガスクジラ2頭(同50頭)止まりで、87年の開始以来最少となった。調査捕鯨の費用には鯨肉の販売代金と国からの補助金が充当されている。鯨研は08年度で1億6400万円の赤字に陥っており、中止が財政的に追い打ちをかけることは間違いない。鹿野道彦農相は18日、今後について「財政的な困難が予想される」と語った。中止を機に南極海調査捕鯨からの撤退論も浮上しかねない状況だ。…… 

■テロ行為に屈して調査捕鯨を中止し、ついでに補助金をカットする「事業仕分け」に役立てるお積りか?テロが過激になっているのは国際会議の場で日本の主張が徐々に認められ始めていることが原因と思われるのに、ここで財政的な問題を理由に調査捕鯨から撤退したら二度と再び捕鯨は復活することはなくなるかも?そんな重大な決定を軽々にしてしまうところが菅アルイミ政権の恐ろしいところでなのですが……。


……日本人の鯨離れは進んでいる。水産庁の統計では、国内の鯨肉在庫は10年末現在で5093トンと5年前より4割も増加。捕鯨中止ですぐに鯨肉が足りなくなることはない。だが、料理店や捕鯨基地などでは不安や反発の声が上がる。東京都千代田区の鯨料理店「くじらのお宿 一乃谷」の店主、谷光男さん(55)は「安全を考えれば打ち切りは仕方ないが、他国の食文化を尊重しようとしないSSの行動は理解できない。事態が長引けば、メニューを替えざるをえなくなるかも」と話す。…… 

■1972年の外交的敗北以来、日本政府は捕鯨の重要性を世界に発信するのを怠り、その一方で農水省は「カロリーベース」による奇怪な数値を編み出して自給率が低い!と対策予算を上積みさせる画策に熱心で、そのくせ家畜用飼料を大量に輸入して牛・豚・鶏をせっせと増産して国民の食生活を大きく変化させる政策を採って来たはずです。「鯨離れ」は市場から鯨肉が消え、学校給食からも美味な「竜田揚げ」が無くなってから起きたことで、穀物飼料を必要としない良質な動物性蛋白源としての鯨をエコな食料資源として有効利用するのが時代の趨勢ではないのか?日本近海の鯨が激減した理由もしっかり考えることも重要で、沿岸漁業を再興する大事な作業の一助にもなるはずなのですが……。穀物飼料と食肉をどっさり輸出して外貨を稼いでいる国が「鯨を喰うな」というのは、「黙って飼料と肉を買え!」という意味なのでしょうなあ。


 調査捕鯨基地がある山口県下関市。義理の息子が捕鯨船に乗船中という女性(55)は「出港後、家族は心配で仕方がない。息子は『SSに薬品や塗料をかけられ、船体はぼろぼろの状態』と話していた。帰国が決まって安心したが、乗組員としては歯がゆいだろう」と語った。元水産庁漁場資源課長で政策研究大学院大学の小松正之教授は「合法的な捕鯨なのに暴力で邪魔された。逃げ帰ってはいけない。日本は悪いことをしていると国際的に喧伝される。乗組員に生命の危機があるなら、海上保安庁に護衛を頼み、居続けることが何より大切だ」と強調した。
2011年2月18日 毎日新聞 

■尖閣諸島の海域に「領土問題」を発生させ、今度は「調査捕鯨は悪いこと」と世界中に周知徹底させてしまう菅アルイミ内閣には、もう何もして欲しくありませんなあ。まさか、TPPの交渉相手となるオーストラリアに妙な気を使って御無理ご尤もと卑屈な外交裏取引でもしたのではありますまいな?!摩擦が生じる度に「安全第一」でさっさと撤退するだけなら政治家も役所も不要だと思うのですが……。


調査捕鯨妨害事件で国際手配中のポール・ワトソン容疑者(60)が率いる米団体、シー・シェパード(SS)は2003(平成15)年、日本の捕鯨やイルカ漁を本格的に妨害して以来、急成長を果たしてきた経緯がある。ワトソン容疑者は03年10月、追い込みイルカ漁を行っている和歌山県太地町に、当時の自分の妻と現在、調査捕鯨妨害で抗議船の船長を務めているオランダ国籍の男の2人の活動家を送りこみ、いけす網を切断する事件を起こした。…… 

■環境問題に関しては間違った情報が氾濫して素人を翻弄しているとの警鐘が鳴らされておりまして、時には独断と偏見に凝り固まって狂信的に暴力行為を働いて陶酔感と自己満足を味わう人がいるようです。その中から職業テロリストが登場して来るのは当然でしょうなあ。宣伝のダシに使われる漁師の皆さんは本当に可哀想です。


また、05年には日本が調査捕鯨を行う南極海に、自らが船長として抗議船に乗り込み、船団への妨害活動を始めた。妨害行為は、悪臭を放つ酸化物の液体が入った瓶や固形の物体を高圧ランチャーで投擲する攻撃だけに止まらず、捕鯨船への体当たりや活動家の捕鯨船への乗り込み行為など、年々、苛烈を極めるようになった。…… 

■身内で和歌山を襲ってから、僅か2年の間に南極海に繰り出して行ける装備と人員を手に入れたのなら、相当の経営手腕の持ち主なのでしょうなあ。「体当たり」と聞きますと即座に尖閣衝突事件を思い出しますが、ワトソン容疑者達の方が先だったことになり、日本のマスコミはどうして大々的に報道しなかったのか?非常に疑問を感じますぞ。


SSを「海の警察」と評するワトソン容疑者はこうした妨害行為のあと、派手派手しい演出を交えながら、「鯨の命をわれわれが救った」などとPR。反捕鯨派が多いオーストラリアやニュージーランド、米国などのメディアなどに報道してもらうことで、支持者を増やしていった。その結果、SSが毎年、米政府に提出するNPO年間活動報告書によれば、米国内での04年の寄付収入が120万ドル(約9960万円)だったのに対し、09年は約940万ドル(約7億8020万円)と7倍強に膨れあがった。SSは集めた資金で、100万ドル以上を支払って、抗議船の数を増やしたほか、装備品を増強。今期は3隻態勢で南極海に展開し、信号弾や発光弾なども発射して、日本船員の生命を脅かす事態にまで至った。…… 

■鯨のための抗議なのか?寄付金集めのための危険行為なのか?御本人も区別が付かなくなってしまいそうな「急成長」であります。この種の新商売も三日やったら止められない類のもののようで、おまけに宣伝用に振りかざす大義名分がありますから、集めた浄財を私的に流用した等の偽善がバレる事態にでもならない限り、ワトソン容疑者の事業はまだまだ成長が見込めるかも?


また、昨年9月には、太地町に初めて活動家を常駐させ、イルカ漁に圧力を加えている。今も、数人の活動家が滞在しており、悪質な嫌がらせを続けている。こうした費用は、日本をダシにして急増した寄付収入でまかなわれている実態がある。
2011年2月18日 産経ニュース 

■日本と同様に調査捕鯨を行なっているアイスランド、IWCに異議申し立ての上で大型商業捕鯨を再会したノルウェー、先住民族が捕鯨を続けているアメリカ、ロシア、デンマーク等の国に対しては「海の警察」を自認しているワトソン容疑者は不思議なくらいに寛容なようです(この点に関して事実誤認がありましたので後述します)。支離滅裂な要求でも、ちょっと強圧的に迫られると簡単に「謝罪」を繰り返して来た戦後の日本外交が足元を見られているということなのでしょうが、長かった自民党政権の負の遺産ばかり熱心に継承しているかのような菅アルイミ政権には、これ以上の屈辱外交の「業績」を作って欲しくはありませんなあ。小泉進次郎議員が国会で紹介した「自民党 らしくなったね 民主党」という川柳は小泉元首相の作品との説が流れているようですが、既に「自民党 よりも酷いね 民主党」という段階のようですなあ。

領海内の次は公海上 其の壱

2011-02-19 15:12:22 | 外交・情勢(アジア)
■「調査捕鯨」という言葉もどこか苦し紛れで後ろ向きの響きがあったのですが、それは1972年6月8日にストックホルムで開かれた「第一回国連人間環境会議」の第2委員会で米国に仕掛けられた罠にはまって後手に回った日本が、1986年に国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨を禁止するという暴挙に出たことに対する唯一の選択肢だったのでした。そもそも、国連人間環境会議の議題に捕鯨問題が取り上げられるという異常さは、日米関係の裏に隠された恐ろしくも腹立たしい現実を露骨に表わすものでした。

■本当はベトナム戦争で米軍が大量に散布したダイオキシンが主要議題だったのに、選挙を控えていた当時のニクソン大統領が懐刀のキッシンジャーを走らせて強引に議題を変更させたことが捕鯨問題の発火点となったのですが、マッカーサー憲法と同様に捕鯨問題でも米国は稚拙なマッチポンプ外交を展開した揚句にマニアックな環境恐喝団体に後始末を丸投げして今では知らん振りしているというのが実情のようであります。そこに環境問題や人口問題と絡んで食糧問題がますます深刻化して世界は海洋資源の争奪戦で火花が飛び交う時代になりまして、「鯨が可哀想だ!」などと乙女趣味のヒューマニズムを掲げて南氷洋から日本の船影を駆逐して海洋権益を独占しようとしているオーストラリアが捕鯨問題の重鎮みたいな顔であれこれ発言しているのは困ったことであります。

■まあ、この長い長い歴史の因縁話はペリーの黒船艦隊が押し掛ける前から米国の捕鯨船が日本近海をうろうろしていた事から始まりますから、忘れっぽい日本人には不向きな交渉事になってしまうでしょうし、沖縄の基地問題さえも解決できない民主党政権ですから、捕鯨問題を上手に処理することなど最初から期待はしておりませんが、尖閣酒乱衝突事件でドジを踏んだ半年後に、「シーシェパードが怖い」と尻尾を巻くというのは国民の反感を買うでしょうなあ。本当に展開がそっくりなのが非常に気になりますぞ。


米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」が南極海での日本の調査捕鯨に妨害を続けている問題で、政府は18日、今季の調査中断を決め、船団に帰国を指示した。中断に追い込まれるのは初めて。鹿野道彦農水相(69)は記者会見で「乗員、調査船の安全確保の観点からやむを得ず切り上げることにした」と述べ、テロに屈したことを事実上認めた。枝野幸男官房長官(46)はこの日、来季も南極海での調査捕鯨を継続する方針を表明したが、文字通り“難航”が予想される。…… 

■国際会議で採択された規則に従って行なわれている調査捕鯨を、違法で危険なテロ行為に屈する形で自主的に「中止」するのは、外交の自殺行為でもありましょうし、自民党政権の時代に突き上げてきた成果を一挙に白紙に戻してしまうことにもなり兼ねません。こんな拙速な政治判断をしておいて、どうして「来季の継続」などが実現出来るのでしょう?その頃には別の政権が誕生しているということでしょうかな?


発光弾、レーザー光線、異常接近…。シー・シェパードによる妨害行為は近年、過激さを増している。沈没や火災の危険性もあるといい、水産庁によると、今年の調査捕鯨船団への妨害は9回に及んでいる。日本鯨類研究所によると、今年最初の妨害は1月1日午前8時(日本時間)ごろに始まった。調査船の進路上にロープを投入、瓶を投げ付けてきた。ロープが船のプロペラに絡むと沈没する危険性があるという。その後も断続的に妨害を継続。発煙筒や着色弾、異臭を放つ酪酸入り瓶を投げ付け、進路を横切る異常接近などを繰り返してきた。最近は火災の危険がある発光弾を投擲、炎を発しながら落下してくる落下傘信号弾も発射、乗組員に向けてレーザー光線を照射するなど過激さが高まっていた。…… 

■アラビア海の海賊退治に多大な協力をした日本なのに、南極海でテロ攻撃を受けても黙って一人耐えるだけというのは、外交政策に大きな過誤があったのではないでしょうか?日夜自分の生命を賭して無法者と対峙している海上保安庁の保安官と同様に、調査捕鯨に従事している皆さんも正に命懸けで環境テロ集団と対峙しているのでありますから、どちらもマスコミがしっかりと報道して欲しいものであります。それにしてもシー・シェパードの蛮行を撮影した映像が「国家機密」扱いにならなかったのは唯一の救いかも?今回は「柳腰外交」は発動されなかったようですなあ。


16日には抗議船3隻が合流し、大規模な妨害が予想されていた。今季の調査捕鯨中断を知らされた乗組員の一人は「どんなに妨害を受けても非暴力でがんばってきたのに、残念だ」と声を震わせた。
シー・シェパード代表のポール・ワトソン容疑者(60)=傷害容疑などで国際手配中=はこの日、共同通信の電話取材に対し「(日本政府の)方針を歓迎する。クジラたちにとっての勝利だ」と勝利宣言し、来季はさらに妨害活動を強化すると述べた。今季は、新たに導入した高速船「ゴジラ号」を含め計3隻で臨んだが、より高速で強力な4隻目の購入も検討しているという。…… 

■年がら年中、日本の捕鯨船を追い回しているワトソン容疑者は、他に事業を営んでいるわけでもないそうですから、立派なプロ。職業環境テロリストと呼ぶべき不思議な人物であります。そんな常軌を逸した犯罪商売に屈して「中止」命令を出す菅アルイミ政権とは、一体、何なのでしょうなあ?


伴野豊外務副大臣はこの日、シー・シェパード船の船籍国であるオランダ、オーストラリアと寄港国のニュージーランドの各在京大使を外務省に呼び遺憾の意を伝えた。だが、オーストラリアのケビン・ラッド外相とトニー・バーク環境相はこの日、共同声明を発表し「(日本の調査捕鯨打ち切り方針は)前向きな一歩だが、今季だけでなく、永久に終了することを期待する」と訴えており、これまで通り、取り締まりへの協力は望めない。…… 

■「永久に終了することを期待する」というのは、南太平洋の西半分は自分の縄張りだと露骨に言ったのも同然で、反捕鯨運動を利用して南極海の海産資源・海底資源を独占する国家戦略を着々と進めて行くお手並みは見事と申せましょうが、まあ、相手が日本となればこれくらいの強圧的態度を取るのは簡単なことなのかも知れませんなあ。


来季以降について政府は、捕鯨船の装備拡充や、同行する海上保安庁職員の増員などを検討しているが、「テロ支援国家」と言われても仕方ない国が存在する以上、根本的な解決にはなりそうにない。
2011年2月19日 産経ニュース 

■もしも「増員命令」が下ったら海上保安庁の内部には割り切れない思いと怒りの感情が渦巻いて、勇んで任務に就く職員はいなくなっているのではないでしょうか?「捕鯨船の装備拡充」というのは自衛的反撃が可能となるように武装することだと解釈されますが、そんな決定を民主党政権が出来るのかいなあ?いっそのこと海上保安庁の巡視船を一隻新造して、鳩山前首相の母方の実家に特注して艦体全部を特殊不燃ゴムで覆い尽くし、捕鯨船とテロ艦艇との間に割って入ってなよなよと「柳腰」航行で専守防衛に徹するとか……、船の名前は勿論、「せんごく」或いはズバリ「やなぎごし」?進水式には是非とも仙谷代表代行と鳩山前総理に御出席願って、支離滅裂な御祝辞を頂いて……。馬鹿馬鹿しいお話になって恐縮でありました……。

盗っ人に追い銭 其の弐

2011-02-04 14:35:43 | 社会問題・事件
■所管する文科省からは「全容解明」の厳命が下っているそうですが、本当に解明してしまったら相撲協会の理事会が崩壊してしまわないでしょうか?八百長疑惑は大鵬時代にも囁かれていて、ライバルだった柏戸が最も熱心だったとか、今は偉そうな顔してNHKテレビの解説席に座っている実力不足と言われた元横綱の北の富士とか、特に北の富士には「領収書の要らない札束をくれる暴力団が大好きだ」と言っていたという週刊誌の記事もありましたぞ。そして、「憎らしいほど強い!」と讃えられた横綱・北の湖にも、記録よりもカネ欲しさで八百長に応じていたという噂もあるようですし、国民栄誉賞を受けた唯一の横綱である千代の富士に関しては、暴行事件と八百長疑惑で『週刊ポスト』から徹底的にマークされた過去がありましたなあ。

■部屋を上げて「ガチンコ相撲」に拘っていたとされる二子山部屋の伝統を継ぐ貴乃花が相撲協会の理事会でねちねちと苛められているのも、八百長容認派VS反・八百長派の対立みたいに見えて来ますが、慌てて作った記名アンケートを現役力士たちに配るより、協会理事や親方衆が集まって「年貢の納め時」を相談するべき時ではないのでしょうか?


……八百長をしたと認めている十両力士の千代白鵬(27)=本名柿内大樹、熊本県出身、九重部屋=が日本相撲協会に引退届を出していたことが4日、分かった。相撲協会は引退を認めず一時預かりとし、6日の臨時理事会で処分を検討する。……すでに放駒理事長(元大関魁傑)は「事実なら厳罰にする」と語っており、幹部の一人も「そういうこと(八百長)をしている者は永久追放になるだろう」と話した。……近年の不祥事続発で解雇者は多数出ているが、最も重い除名は現行制度になってから例がない。除名と解雇は手続きが異なり、いわゆる退職金も、解雇は支払われる場合があるのに対し、除名は支給されない。……
2011年2月4日 時事通信 

■「解雇」の処分は協会理事や親方でも同様に適用されるのでしょうな?!トカゲの尻尾切りでお茶を濁して相撲よりも自分の老後の安定を優先させるような上層部ならば、その背中を見ている若い力士達もそれを見本として道を踏み外してしまいましょう。外国、特に経済的に貧しい国をスカウト行脚して弟子を確保するようになった段階で、相撲協会は大規模な改革を行なわなければならなかったのでしょうが、先輩・親方を神様扱いするように躾けられた力士は、横綱になろうと理事になろうと三つ子の魂百まで変わらず、犯罪行為も「伝統」として押し付けられて継承させられたようなものなのかも知れませんなあ。

■2008年8月に若ノ鵬が逮捕されて発覚した角界の大麻汚染問題がありましたが、事件が発覚した直後に実施された抜き打ち薬物検査に参加しなかった唯一の力士が千代白鳳だったこと、そして、解雇された若ノ鵬が『週刊現代』の八百長告発記事に協力して自分の八百長体験を語っていたことが、とても気になって参りますなあ。
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盗っ人に追い銭 其の壱

2011-02-04 14:35:06 | 社会問題・事件
盗っ人に追い銭 其の壱■日本相撲協会が公益法人の資格を失うかも?と相撲好きの皆さんが心配するような発言をしたのは枝野ウカツニモ官房長官でしたが、必殺!仕分け人の看板に傷が付いてしまった蓮舫大臣からの「物言い」で、翌日には民主党名物の「前言撤回」をして「処分までにはいろいろなハーハードルがあって……」とか何とか、涼しい顔してしどろもどろの言い訳をしていたようです。マスコミが喜ぶ耳目を集めるような言動をしては、結局は羊頭狗肉の尻すぼみに終わる民主党に染み付いた野党の悪癖は、そう簡単に直らないのでしょうなあ。

■全盛期に比べれば相撲ファンの数は減って、莫大な放送権料(原資は受信料)を支払っている皆様のNHKも肝を潰すほど本場所はいつでも空席が目立っておりますが、それでも50代から上には熱烈な相撲ファンがいるのも事実であります。しかし、相撲ファンはいても相撲協会ファンというのは存在するのでしょうか?御贔屓だった力士が引退後に親方になり協会の理事になったと個人的に喜ぶ力士ファンはいるとしても、理事の顔ぶれを見渡せば首を傾げたくなるでしょうし、度重なる不祥事に対応する能力がまったくない現状に立腹している相撲ファンも多いのではないでしょうか?

■旧弊悪弊が腕力によって継承されている相撲界のことですから、今回発覚した八百長談合が竹縄親方=元幕内春日錦、十両千代白鵬=九重、三段目の恵那司=入間川の3人が発明した真新しい犯罪システムだったなどとは誰も考えないでしょう。協会理事長が拙速に「過去には一切無い!」などと乱暴に断言する姿を見せられれば、いよいよ協会組織には自浄能力など皆無だと分かるというものです。おそらく、理事長発言の拠り所となったのは勝訴に終わった八百長記事裁判だったのではないでしょうか?


……竹縄親方(元幕内、春日錦)が平成19年、八百長行為を指摘した週刊誌の発行元を訴えて勝訴し賠償金を受け取っていたことが3日、分かった。原告には関与が疑われる豊桜も加わり、法廷で「真剣勝負を旨とする力士が社会的評価を傷つけられた」と疑惑を全面否定。……問題となったのは講談社が発行する雑誌「週刊現代」。19年2月3日号から3週にわたり「横綱朝青龍の八百長を告発する」などの題名で特集記事を連載した。報道で名誉を傷つけられたとして、日本相撲協会と元横綱、朝青龍のほか、記事で「ガチンコ(真剣勝負)力士」として名前を記載された以外の力士計30人が原告となり、賠償などを求めて訴えを起こした。19年初場所当時、幕内力士だった竹縄親方と豊桜も原告団に名を連ねている。…… 

■八百長メールがウィキリークスならぬ日本の警察から暴露されたのですから、今頃『週刊現代』の編集室は熱気を帯びて来週号の内容を大幅に変更する忙しい作業を嬉々として進めているものと推察されますが、その中には原告団30人の顔写真を並べた特集グラビア頁も含まれていましょうし、印刷直前までの八百長関与の「星取表」なども付いているかも知れませんなあ。出来れば東京地裁、高裁、最高裁で担当した裁判官の顔と名前も加えて頂ければ、次の「最高裁判所裁判官国民審査」の折などに参考になるかと存じますが……。


法廷に提出した最終準備書面で竹縄親方ら原告側は記事が指摘する事実がなかったことを主張。「八百長という言葉が意味するところはインチキ勝負。真剣勝負を旨とするプロスポーツ選手たる力士にとって社会的評価が傷つけられたことは明らか」などと激しく非難した。……金銭の授受については「勝負後に約束した金銭が支払われる場合は、より恥ずべき行為と評価されることは明らかである」と断じていた。…… 

■「社会的評価が傷つけられた!」と怒って見せた後に起こったのが大麻事件と野球賭博問題だったのですから、『週刊現代』の記事によって傷つけられた(とされる)社会的評価は地に落ちて泥にまみれてしまいましたなあ。


東京地裁は21年3月、判決で「八百長があったと認められれば力士生命に直接かかわり、協会の存立自体の危機ともなりかねない。記事には具体性があるが、取材はずさんだ」などとし、講談社側に計4290万円の支払いと記事取り消し広告の掲載を命じた。…… 

■「取材が杜撰」な事より八百長情報の「具体性」の方がずっと重要なのではないか?と素人には思えるのですが、裁判官には庶民には窺い知れない深い考えがあるのでしょうなあ、きっと。そんな浮世離れした裁判官の言う通り、「八百長があったと認められれば……協会の存立自体の危機」という事態が本当に起って、今や裁判所内の仮定の話ではなく政治・国際問題にまで発展してしまいました。


2審の東京高裁も21年12月、計3960万円の賠償を命じ、講談社側は上告したが最高裁は昨年10月に棄却。高裁判決が確定した。講談社は判決確定を受け昨年末、竹縄親方と豊桜にそれぞれ賠償金22万円を支払った。2日の会見で日本相撲協会の放駒理事長は八百長について「過去には一切なかったこと」とし、“昨年春と夏場所のみ”だったことを強調。過去の疑惑を全面的に否定した。……
2011年2月4日 産経新聞 

■欠陥だらけの「裁判員制度」が採用された理由の一つが変な裁判が多いからだそうですが、この上告棄却も相当に変な判決だったのではないでしょうか?週刊誌VS相撲協会という取り組みは、最初から皇室や政府を後ろ盾にしている気の協会側が(八百長を持ちかけずとも)勝つに決まっているようなもので、日本の裁判が抱える歪んだ権力志向が浮き彫りになっていたようにも思えますなあ。

そして誰もいなくなる? 其の壱拾参

2011-02-03 15:08:03 | 政治
■巷間、「週刊誌の記事」と言うと事を荒立てる針小棒大な記事が多いとか、火の無いところから煙を上げて世情を混乱させるとか、半ばは嘘が書かれているものと思われていたもののようであります。しかし、30年前は『週刊ポスト』、最近では『週刊現代』が追求した大相撲の八百長「疑惑」が、野球賭博事件の捜査過程で浮上した携帯メールが動かぬ証拠となって、世間に「ああ、やっぱり」との溜息と囁きを広げているようですなあ。

■閉鎖的な記者クラブの弊害と内閣機密費による世論操作の疑惑をしぶとく追求しているのは週刊誌で、無視しているのは新聞とテレビという奇妙な構図が出来上がり、面白いのはラジオ界はちょっとした野放し状態で硬派な番組では追求・糾弾の姿勢を見せているようです。その理由が分かりませんでしたが、NHKと日本民間放送連盟が「はじめまして、ラジオです。」という名の共同キャンペーンを5月15日に開催するとの報道がありましたぞ。「若者を中心とするラジオ離れ」が深刻で「端末普及を含む送受信環境の整備」が必要なほどだそうです。つまり、最も影響力の小さなメディアになり下がっていたのですなあ。

■さて、長い枕になりましたが……最新の『週刊新潮』2月10日号によりますと、1月31日に民主党役員会で「党改革検討本部」という組織が設置された由。その下には3つの委員会が作られ、その目玉が「党規約検討委員会」なのだそうです。菅アルイミ首相は、この委員会で民主党代表の任期を2年から「衆院選毎」に改正しようと執念を燃やしているという話です。ああ、成る程、何を言われようとも「解散総選挙は無い!」とこれだけはブレずに明言している理由はこれか?!と合点がいった次第。


与謝野馨経済財政担当相は2日午後の衆院予算委員会で、1日の同委で民主党のマニフェストを「無知」と指摘したことについて、「やや礼を欠く表現になり、大変申し訳ないと思っている」と陳謝した。……「マニフェストを作成した当時、民主党は野党だったため、政策を作る場合の情報量はどうしても少なかった。そのことを申し上げたかった」と説明。「その当時、私は財務相だったが、財源問題は民主党が政策を行っていくうえで、最大の関門になるとすぐわかった。これからさらに厳しい壁があるだろう、と申し上げたかった」と述べた。
2011年2月2日 産経ニュース 

■三権の長から法務大臣に任命された江田法相は、民主党の「マニフェスト」に関して与謝野大臣と同様の理由を並べて「心眼」で作ったから欠陥商品だと平然と言い放っていましたから、「情報量不足」の状態で空証文を書く時に「心眼」を使うことを「無知」と言うのだと、妙に納得したのですが……。こんな言い訳が通用するのなら、二度と再び「政権交代」など起こしてはならないということになりますなあ。


菅直人首相は3日午前の衆院予算委員会で、昨年10月にブリュッセルで行われた中国の温家宝首相との「廊下懇談」の際、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に一切言及しなかったと報じた2日付産経新聞の記事に関し、「懇談では尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土問題は存在しないと申し上げた」と強調した。自民党の斎藤健氏の質問に答えた。…… 

■拙ブログでも『そして誰もいなくなる? 其の壱拾壱』で取り上げたスクープ記事ですから、御本人が飽くまでも外務省HPの記載を読み上げたようは答弁をしているのですから、無視は出来ませんぞ。


菅首相は懇談で尖閣問題について「温首相は日本の立場をご存じでしょうから、今日は言いません」と語ったことが明らかになっている。菅首相は斎藤氏の「『今日は言いません』という記事はウソか」との質問には「今申し上げたことに尽きる」と繰り返し、記事への反論は避けた。……
2011年2月3日 産経ニュース 

■「ウソだ!」と即答できない菅アルイミ首相の答弁は実に苦しい。どうやら「申し上げた」という表現に秘密があるのかも?「心眼」で選挙公約を作ってしまう政党の代表ですから、外交交渉の場で玉虫色の腰抜け発言をしても、「以心伝心」の秘術?を使って伝えたのだ!ぐらいの事は言い出し兼ねませんなあ。選挙用「マニフェスト」はウソだらけ、所信表明演説は抽象論と希望ばかりが並び、国会答弁になったら質問には答えず逃げ回ってばかり、これは「八百長」にも劣る三文芝居と申せましょう。三文芝居の菅アルイミ一座が大相撲の「八百長」を厳しく処断できるのでしょうか?


枝野幸男官房長官は3日午前の記者会見で、大相撲の八百長メール問題に関し、日本相撲協会が新たに公益法人の認可を受けられるかどうかについて「八百長が蔓延しているような法人であれば、公益認定は難しいと言わざるを得ない」と述べた。……「広く国技として受け止められている大相撲に対し、国民の期待と信頼を裏切るもので、大変遺憾だ。まずは徹底して事実を明らかにして、ウミはすべて表に出していただく」と述べ、厳しい処置が必要との認識を示した。…… 

■枝野ウカツニモ官房長官の発言に少し手を入れますと、「ウソが蔓延しているような政権政党であれば、国政を任せるのは難しいと言わざるを得ない。広く生活が第一の政党として受け止められている民主党に対し、国民の期待と信頼を裏切るもので、大変遺憾だ。まずは徹底してマニフェストのウソを明らかにして、ウミはすべて表に出して」欲しいものですなあ。枝野ウカツニモ長官の鼻息が荒い発言を外務大臣席に座って聞いていた前原外相は「偽メールじゃないだろうなあ?」とちょっと心配しているかも知れませんぞ。


……政府の公益法人制度改革に伴い、日本相撲協会などの公益法人は平成25年11月末までに審査を受けなければならない。政府が認可しなければ、税制優遇措置などが受けられなくなる。
2011年2月3日 産経ニュース 

■収益に対する税金ばかりでなく、財産や土地に対する税金なども免除されている巨大な公益法人から優遇措置を奪ったら、さぞや税収が増えるでしょうなあ。こういう美味しい話になれば、「必殺!仕分け人」の出番になります。


公益法人改革を担当する蓮舫行政刷新担当相は3日、大相撲の八百長メール問題に関し、日本相撲協会の公益法人認可について「今その条件を満たしているとは思えない。現段階では厳しいと思っている」と述べた。国会内で記者団に答えた。……「問われているのはこれまでの暴行事件や野球賭博疑惑など日本相撲協会のガバナンスそのものだ。内部の浄化がまずできているのか」と協会の体制を痛烈に批判した。日本相撲協会は新公益法人制度のもとでの公益法人化を目指している。
2011年2月3日 産経ニュース 

■理事会後の記者会見で放駒理事長(62)=元大関魁傑=は「過去には一切ない」と強調していたのが印象的で、一体、何を根拠にこんな事を断言口調で言ってしまえるのだろう?と非常に怪訝な思いがしたのでした。日本相撲協会外部委員も務めたことのある漫画家のやくみつる氏は「根拠はない」と一刀両断にしているのも当然でしょう。前言撤回と腰砕けが習い性の民主党政権ですし、看板倒れに終わった事業仕分けの実態を知っていれば、蓮舫大臣の発言など蚊に刺されたほどにも感じない日本相撲協会のお歴々なのかも知れませんが、またしてもNHKに見捨てられ、切符が山のように売れ残り、今度ばかりは櫛の歯を引くようにタニマチが次々と去って行く様な事態になれば、公益法人の旨味にしがみつくことばかり考えてはいられなくなるかも知れませんなあ。

そして誰もいなくなる? 其の壱拾弐

2011-02-02 15:49:00 | 政治
■破綻に向かって突き進んでいるかのような日本の経済を「ゾンビ経済」と呼ぶ米国投資アナリストがいるそうですが、野党のゾンビ議員を閣僚に迎え入れる菅アルイミ内閣も、或る意味で、ゾンビ状態になっているのかも知れません。

与謝野経済財政相は1日の衆院予算委員会で、民主党が政権交代前に作った2009年衆院選の『マニフェスト』の財源捻出策について「民主党は無知だったと言わざるを得ない」と答弁した。……各公約の財源について、予算組み替えやムダ削減などで16・8兆円を捻出する方針を掲げたが、与謝野氏は著書などでもこの点を批判していた。……菅首相も「一部は過大に見積もっていたところもある」と追随し、与謝野氏の考え方が首相に影響を与えている様子をうかがわせた。与謝野氏周辺は、「誤った財源論に固執する民主党の呪縛を与謝野氏が解放してあげているのだ」と指摘する。
2011年2月1日 読売新聞 

■これは一体、どういう事だ?!選挙区選挙で落選して比例で甦った野党ゾンビ議員時代とは言え、悪口雑言を浴びせて本まで書いて攻撃していた天敵みたいな張本人を――おそららくこれも日本語の誤用――「三顧の礼」で内閣に招き入れ、「無知だ!」とまで言われて「その通りでございます」と答弁する総理大臣など前代未聞でありましょう。それにしましても「予算組み替えやムダ削減などで16・8兆円を捻出」と大法螺を吹いておいて、予算の組み替えは官僚軍団の壁に跳ね返されて断念し、ムダ削減の切り札だった「事業仕分け」も法的不備で単なる見世物で終わった結果、捻り出せたのは約束の10分の1程度だったというのに、「一部は過大に見積もっていた」と強がってしまうのが菅アルイミ首相の真骨頂なのでしょうなあ。9割と「一部」とでは意味が違い過ぎます。

■自分が選挙区で落選した恨みなのでしょうか?与謝野経済財政相の「無知」発言は、民主党に投票して政権交代を実現させた有権者を阿呆呼ばわりしているに等しいのに、何故かきっと投票したに違いない人たちから怒りの声が上がらないのですから、民主党は既に歴史的な使命を終えているのかも知れませんなあ。与謝野大臣本人も御自身の健康問題もあり、既に政治家として動ける時間が終わりつつあることを自覚しているようですが、菅アルイミ内閣は「三顧の礼」を大安売り中らしく与謝野大臣に続いて更に「終わっている」元政治家を招いたのだそうです。


政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」の幹事委員に、前自民党衆院議員の柳沢伯夫城西国際大学長が起用された人事が与野党に波紋を広げている。柳沢氏は、自民党政権下の厚生労働相時代の2007年、女性を「子供を産む機械」と例える発言をしたため、民主党など野党が不信任決議案、参院で問責決議案を突きつけた経緯がある。公明党の山口代表は1日の記者会見で、柳沢氏の起用について、「自公政権の政策や方向性に、菅政権が白旗を揚げたに等しい。政権交代が必要なかったと認めている人事だ」と皮肉った。民主党内からも「柳沢氏の起用は、これまでの我が党の対応と整合性が取れない。菅政権は大丈夫か」(若手)と起用を懸念する声が出ている。
2011年2月1日 読売新聞 

■「社会保障改革」に精通した議員が民主党には居ません!と公言しているのも同然の「三顧の礼」第二弾。一体、これから民主党政権が終わるまで、何度の「三顧の礼」を繰り返すのでしょうなあ。出典の『三国志演義』では劉備玄徳が諸葛孔明を軍師に招く場面の1回だけなのですが……。柳沢氏は大学の学長になっていたのも驚きました。余り聞いたことがない大学名ですが、千葉県東金市に1992年に設置された大学なのだそうです。少子化を承知の上で「駅弁大学」の時代以上に大学を作り続けた自民党政権は、もしかしたら政治家が学長や教授になって余生を過ごす「天下り先」として、「地方の活性化」とか何と言いながら大学を過剰に作らせていたのではありますまいな?!「就職氷河期」報道の裏で、大学生の数は30年前に比べて100万人も増えていて、実態としては今の新卒者の就職活動は「高校6年生」の就職活動だとまで言う人もいるのですが、柳沢学長の大学はどうなのでしょう?

そして誰もいなくなる? 其の壱拾壱

2011-02-02 15:38:31 | 政治
■東京都内の昨年の振り込め詐欺被害額が前年比で約9億円も増えて約32億円(前年比38・6%増)にもなっているそうです。認知件数は1771件(同31・8%増)で、その中で悪名高い「オレオレ詐欺」が前年比65・2%増の1520件。金融機関の窓口業務を担当する人たちが警察に協力して振り込み直前に詐欺が露見するという報道が増えたと思っていたら、憎っくき詐欺師どもは金融機関を迂回する手口を次々に開発して、被害者宅に現金やキャッシュカードを受け取り行ってうまうまと他人の虎の子を騙し取るのだそうですなあ。そう言えば日本郵政が宅急便に対向して作ったエックスパックという簡易小包が詐欺師どもに悪用されて取り扱いを中止したこともありました。

■また、生活保護など各種の社会保障制度を悪用する詐欺事件も5年前の2倍以上になって、被害総額は立件分だけで約2億8千万円にも上ると警察庁が発表したそうです。国債の格付けが下がるほど財政が悪化して火の車の国会で、財務省の悲願である消費税引き上げを目指して税制と社会保障制度の抜本的見直しが議論されているというのに、個人資産や税金を騙し取る輩が横行しているようでは日本の将来は真っ暗闇じゃあござんせんか……。

■詐欺と言えば民主党が掲げた『マニフェスト』が有権者を騙して釣る毛ばりだ!詐欺だ!と揶揄されておりましたが、とうとう菅アルイミ内閣は素直に謝り始めたとか……。悪いことをして叱られたら、素直に頭を下げて謝って反省するのは良い子なのですが、それが一国の首相となりますと、頭を撫でて褒めてあげる訳には行きません。政権公約だけでなく、国民に対する説明が嘘ばかりだと政治不信が極まって政治家の権威が失われ、昔なら軍司官僚、今は財務官僚が好き勝手に国を動かして再び亡国の危機が訪れるかも?


菅直人首相が昨年10月、ブリュッセルでのアジア欧州会議(ASEM)の際に行った温家宝首相の「廊下懇談」で、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件について「温首相は日本の立場をご存じでしょうから今日は言いません」と語り、一切言及しなかったことが分かった。……首相は懇談後、同行記者団に「温首相から原則的な話があり、私も尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土の問題は存在しないという原則的なことを申し上げた」と虚偽の説明をしていた。当時、中国河北省で準大手ゼネコン「フジタ」の日本人社員1人が拘束されていたが、首相は懇談でこの問題にも触れず、社員の早期解放を求めなかったという。…… 

■こういう話を聞きますと、平成12(2000)年7月26日にタイのバンコクで開催された史上初の日朝外相会談の事を思い出します。出席したのは河野洋平外務大臣と白南淳外相でありますが、既に北朝鮮による拉致犯罪が明らかになり、核開発も言い逃れの出来ない段階になっていたというのに、この時の会談では驚くことに拉致の拉の字も核の一字も言及されず、その代わりに「朝日関係正常化」だの「主権尊重、平等互恵、内政不干渉の原則」だの「善隣友好関係」だのが並び、勿論、河野外相が大好きな「過去の清算」もきっちりと取り上げられておりました。

■日朝間の外交交渉が第一歩だったバンコク会談で日本側は交渉の目的と国家としての意志をまったく伝えなかったばかりに、その後の二国間協議でも六カ国協議でも日本の立場はどんどん弱くなって存在感が無くなってしまうことになりましたが、その元凶が「我々の懸念している問題はお分かりですね」の一言だったとの厳しい批判があります。言い難いことを避けるのなら外交交渉など税金の無駄、外相ポストも無用でしょうなあ。


……日中首脳会談は昨年10月4日、ASEM首脳会議の最中に急遽セットされ、廊下を使って約25分間行われた。日本側は別所浩郎外務審議官と山野内勘二首相秘書官、英語の通訳が同席した。懇談で首相が尖閣諸島問題に言及しない意向を示したところ、温首相も同調し「中国固有の領土」とする立場を主張しなかった。その上で「両者とも今の状況では好ましくないということで戦略的互恵関係を進展させることを確認した」(首相)という。…… 

■こういうのを世間では「会っただけ」と言います。「餓鬼の使い」とも呼びますが、子供の使いなら親のメッセージくらいは相手に手渡して来ますから、それ以下の「廊下会談」だと申せましょう。


……外務省はホームページに「温家宝首相は尖閣諸島についての原則的な立場を述べた。菅首相は尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土問題は存在しないとの原則的立場を述べた」と、首相の説明に沿った内容を掲載している。中国国営新華社通信も、温首相は釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土であると主張したと報じた。日本政府関係者は「日中双方が会談内容の公表範囲をすりあわせた結果だ」としている。…… 

■尖閣諸島の海域には「領土問題は存在しない」のだそうですが、日本の漁船は近づけず、チャイナや台湾の船は大挙して押し掛けている実態があり、酒乱船長が危険な衝突行為に及んで公務執行妨害で逮捕されても「起訴猶予」で釈放され、御丁寧に深夜の営業時間外なのに飛行場を使わせて帰してくれるのですから、少なくとも「領土問題が発生した」と言うべきでしょう。日本の国民に対しては映像証拠を秘匿して「領土問題は存在しない」と御題目を繰り返しながら、「国民一人ひとりが考える外交」などと平然として語る菅アルイミ首相にとっての外交と言うのは、国際会議に出掛けて「誰も聴いてくれない演説」をし、言い難いことは徹底的に避けてにやにやしながら各国要人と握手して来ることでしかないようです。嗚呼


 ……9月20日に中国河北省で拘束されたフジタの現地法人社員4人のうち、懇談が行われた時点で1人が解放されていなかった。首相周辺が懇談直前、早期解放を温首相に求めるよう首相に伝えたが、首相は「それはできない」と断り、話題にしなかったという。
2011年2月2日 産経新聞 

■どうして「できない」のか?これは重大な疑問であります。別のルートから悪質な脅迫めいたメッセージが伝えられていたのか?単に過剰に相手を刺激しないようにと病的な臆病さで方向違いの忖度をしたのか?国内向けに立派な仕事をしている振りをして虚勢を張るのは実に卑屈で見っともない話でありますが、いよいよ、国内政治も格好つけている余裕は無くなってしまった菅アルイミ首相なのであります。

目出度さ少ないお正月 其の六

2011-02-01 15:55:58 | 外交・情勢(アジア)
■『其の伍』の続きです。
……鳩山前政権以来の日本の民主党政権が外交分野で失った信頼観は内外ともに想像以上に大きく、真剣に回復しようというならば、相当に踏み込んだ決意表明が必要だ。しかし、演説には、たとえば日米関係を深化させることに直結する「集団的自衛権問題」など、国の形を見直すことに踏み込むリーダーの覚悟は示されなかった。…… 

■民主党が政党として必須の綱領を作れないのは、安全保障という鬼門を通ると党内で瞬時に爆発が起って接木細工が木っ端微塵に飛び散るからだと言われておりますから、絶対に「集団的自衛権」になど触れるわけに行きません。日米同盟の深化と言っても安保条約の中身についての議論が党内で封印されている限り、日米関係を修復する方法など見つけようがありますまいなあ。今の菅アルイミ首相にとって「リーダーの覚悟」は、間違いなく政権を失う選挙を何が何でも任期満了まで先送りすることで、それは自分がずーっと総理大臣の椅子に座っていられる事を意味しております。ただ人形みたいに黙って座っていてくれれば害は無いのでしょうが、困ったことに気の利いたことを言おうと悪あがきするものですから、オウン・ゴールの連発となってしまうようです。


……27日早朝、尖閣諸島の領海すれすれの接続水域に今年初の中国漁業監視船「漁政201」が現れた。約4時間後に水域を離れ、領海侵入はなかったが、昨秋の中国漁船衝突事件以来、漁業監視船(1000トン級)の出没は今回で6回目だ。尖閣諸島周辺では海上保安庁の複数の巡視船による監視・警告活動が続いている。全国から巡視船を集めた「尖閣ローテーション」で、関東や新潟などから船を集める体制は「しわ寄せが限界に近づいている」(関係者)という。尖閣周辺は3月ごろからは漁期に入る。昨年並みなら、多いときで150~270隻もの中国漁船が尖閣周辺に集まってくる。衝突事件での中国人船長逮捕、釈放、起訴猶予、しかも法務・検察にげたを預けた無責任な事件処理で、中国は民主党の政治力の弱点を知り尽くした。今年、どんな挑発行動をとってワナを仕掛けてくるのか。警戒現場はぴりぴりしている。 

■月刊誌『WILL』最新号には海上保安官達の覆面座談会が掲載されておりますが、あの尖閣衝突事件が発した衝撃波は組織全体に深刻な影響を及ぼしているようです。ダボス会議や国会で好き勝手な事を言っている菅アルイミ内閣に対する信頼感は消失しても、危険な任務に従事している保安官の皆さんには同情するばかりであります。感謝されるべきが、仲間の一人は罪人にされてしまったのですからなあ。菅アルイミ首相は尖閣衝突事件に関して意図的に言及しないように細心の注意を払っている節がありますから、現場の保安官には卑怯者にしか見えないでしょうなあ。


……中国が速報した2010年のGDPは前年対比で10・3%の増加だった。しかし、日本の対中ODAは続いており、見直しの方針はない。……日本の対中ODAは、約30年間で3兆3000億円に上った円借款は08年度で終了しているものの、世銀の融資ガイドラインに沿って国民のGNI(国民総所得)を基準に対象国を決める無償援助や技術支援が続いている。その額は09年度で約46億円。10年度は微減で40億円強が見込まれている。……「GDPが世界1になっても13億の人口を盾に中国は途上国の看板を下ろさないのでは」という分析もある。…… 

■自分の都合に合わせて大国になったり発展途上国になったり、その変わり身の巧みさには舌を巻くばかりですが、衣の下から鎧が覗いて地球温暖化会議と尖閣衝突事件後の振る舞いとで、すっかり米国を怒らせてしまったのは失敗でした。その点、菅アルイミ内閣は怪我の功名で下手クソな外交が北京政府の本性を世界に示すことに大成功!との分析もあるとか……。それが怪我の功名だった証拠に、褒められる材料を必死に探して見つからず、醜態としか思えない自画自賛を繰り返す菅アルイミ首相が、外交の勝利だ!とは絶対に言わないことからも明らかでしょう。


……人材育成や災害支援など、現在、対中ODAの形を取っている協力事業をすべて否定することはないが、枠組みを整理し、国民の納得する形で相互の感情論を未然に防止する知恵を出す必要があろう。欧州ではすでに、英独などが対中ODAの段階的停止の検討を始めている。
2011年1月29日 産経ニュース【久保田るり子の外交ウオッチ】 

■既に見掛け倒しだとバレてしまった「事業仕分け」ですが、とうとう対中ODAは一度も俎上に載せられることなく終了してしまったようです。在外公館に秘蔵されている高級ワインの数などは話題になりましたが、ODAの徹底的な見直しには及ばなかったのは残念でした。特にチャイナに対しての様々な援助については、まともに感謝もされず3兆3000億円もの円借款に対する答えが「反日教育」と「反日暴動」で、技術や人材の底抜けの流出も続けて来た日中友好政策は実に迂闊な点が多いのですから、無駄遣いを廃止するのなら外交予算も有望な標的になるはずなのですが……。