旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

マスクが無い! 

2009-05-20 13:54:01 | 健康
■第一次石油ショックの時に起こったトイレット・ペーパー騒動を考えれば、為政者が気楽にあれこれ買えだの買うなだのと言うべきではないだろうに、と思っていたら町中の薬局やドラッグ・ストアからマスクが消えてしまいました。正確な情報を提供出来ないまま真意不明の「冷静に対応」を言いだけの舛添クチダケ厚労相には困ったものであります。高病原性鳥インフルエンザを想定したマニュアルしか用意していない政府の責任なのでしょうが、何がどうなるのか誰にも分からない段階で「季節性インフルエンザのワクチン製造を減らして新型を……」などと口走ったのを皮切りに、鶏を裂くのに牛刀を振り回すような実態を無視した発表が多過ぎるようです。
 
■欧米では早々に新型ウイルスは弱毒性だという事実を踏まえて冷静な対処を行っているというのに、日本だけが大規模な社会生活の制約に踏み切ってしまいそうだったので、関西の地方自治体では先手を打って直談判に及びました。社会の機能が完全に麻痺するような命令を出して「転ばぬ先の杖」などと正当化するわけには行きません。感染者の数を発表する時に決まり文句のように挟み込まれる「マスク、うがい、手洗い」という要請も、マスクはワクチンと同様の製造物だという当たり前の前提を忘れているとエライことになります。

■買い物客の一部でも、通常の購買行動の質を変えただけで店先の品物は姿を消します。生産・物流・在庫の流れは急には変えられないのですから、日頃マスクを使用していない人達の購買行動が変わるに違いない「マスク着用」指示を厚労相という最高責任者が口にするのなら、生産状況と在庫の実態を先に調べておくべきでしょう。それにマスク着用自体に専門家の間では議論が分かれているという話もあります。短期語学留学先のカナダで感染した高校生たちは、母校から急送されたマスクを着用しなかったのも、現地では誰もマスクを使っていなかったからでした。

■欧米には日常生活でのマスク着用は逆効果だという有力な意見があるそうです。飛沫を抑止する効果は認めるものの、マスク自体が感染源になる危険性の方が高いという主張です。あちらではクシャミや鼻水にはハンカチを使う習慣がありますから、マスクは純粋に医療用で病院内でしか使われないのでしょう。


新型インフルエンザの感染拡大を受け、各地の薬局、ドラッグストアなどでマスクの品薄状態が続くなか、インターネットオークションで、マスクの値段が急騰している。薬局などで購入できなかった消費者が殺到しているとみられ、なかには元値から10倍に跳ね上がった商品もでているが、厚生労働省は「冷静に対応してほしい」と呼びかけている。

■某日、近くのドラッグ・ストアに立ち寄った時のこと、足の悪い御高齢の方がマスクは品切れと聞いて「入荷はいつになる?」と熱心に、いささか感情的になって店員さんに詰め寄っていました。持病がある高齢者は季節性インフルエンザでも深刻なダメージを受けるのですから、得体の知れない新型ウイルスが大流行するぞ!と厚労相が蒼褪めた表情で公言しているのですから、精一杯の予防対応を取りたいと思うのは人情です。

■痛い足でもマスクを買おうとやって来る人の姿を見て、本当に大流行が起こったら、マスクや薬品を求めて町中の薬品店がパニック状態になりそうな予感がしましたぞ。中には感染者もいるでしょうから、予防目的で来店して感染するのでは救いがありません。


インターネットのオークションサイトでは、新型インフルエンザ予防に効果があるとされる医療用マスクの人気が急上昇。50枚入りで1200円程度の商品に、1万4000円の値がついたケースもあった。……大阪市の女性(25)は「お店では品切れのところが多くて困っている。神戸に住む親類からもマスクを送ってほしいと頼まれており、インターネットなら外出をせず購入できると思ったがこの値段には驚いた」と話していた。

■オークションですから買い手が値段をつけているのでしょうが、中には「転売」目的で買い漁っている不心得者もいるかも?地元の店先が品切れならばネットで購入しようと思うのは当然です。「品切れ」と聞いただけで不要な不安が広がって行くかも知れません。マスク着用の効果に疑問があると思っている人でも、何となくマスクが無いと心細くなってしまうかも?ある医師はラジオ番組の取材に答えて「マスク着用は感染予防の心構えを強化する」点で効果があると言っていましたから、単なる飛沫予防以外にもいろいろな効用がありそうです。


大手薬局チェーンの担当者によると、関西地区のほか、首都圏などでもマスクは品薄状態になっているというが、チェーン全体ではまだ在庫があるといい、現在は本部の在庫を順次、各店に振り分けているところだという。……メーカーも大量増産をはじめており、神戸市に本社を置く「メディコム・ジャパン」は「通常の20~30倍の注文が医療機関やドラッグストアから殺到しており、増産にあたっているところ」としていた。

■増産を始めるのが遅過ぎるような気がしますが、小泉改革以来の新自由経済の原理が今でも生きているのでしょうか?メーカーに増産を依頼して在庫が増えた段階で厚労相は「マスク着用」を呼び掛けるべきだったのではないでしょうか?マスク泥棒やらマスク取り込み詐欺などが頻発したらどうするのでしょう?


厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の担当者は「メーカーには関西地区を中心に在庫を流通させるように要請しており、まもなく、消費者に行き渡ると考えている。消費者の方には冷静に対応してほしい」と話していた。
2009年5月20日 産経ニュース

■「水際作戦」が呆気なく破綻しているのですから、大阪・兵庫に感染を封じ込めることなど不可能でしょう。関西にマスクを集中させてしまったら次に集団感染が起こる別の地域がパニックになりそうです。こうなったら厚労相の指示など無視して、小さなビニル袋にハンカチを入れて持ち歩き、人混みでは鼻と口を抑えて自分のクシャミの飛沫も押さえ込み、1日に2枚か3枚のハンカチを使うようにするべきかも?こまめに石鹸・流水で手洗いし、ハンカチもこまめに洗濯をする方が、マスクの品切れパニックに巻き込まれるよりも精神衛生上も良さそうです。

■舛添厚労相が安請け合いしていた切り札のワクチンは、予定より1箇月半も遅れることが判明したそうです。分割するより厚労省をもっと役に立つ役所に改良して欲しいですなあ。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

水際作戦の後遺症 

2009-05-17 12:09:56 | 健康
■全力で、万全を期して、と前のめり気味に「水際作戦」を喧伝していた厚労省の責任が問われることになりそうです。個人差も大きい潜伏期間を考えれば、国際空港で不眠不休の検査活動に従事していた人達の献身的な努力が無駄になるのは分かっていたことで、WHOや海外の専門家からも「水際作戦の効果は期待薄」と指摘されていたのですから、過度に水際作戦の効用を宣伝してしまった罪は重いでしょうなあ。

■その水際作戦の網に引っ掛かったカナダ帰りの高校生たちが学校ぐるみで非難されるような場面もあったやに聞きますが、学校側は品薄を心配してマスクを急送していたそうですし、運悪く感染してしまった生徒や教師の方では周囲の状況を見て着用を見送ったと伝えられているのですから、感情的になって悪口雑言を投げつけるより、冷静に見舞いの言葉を送るべきだったでしょう。

■グローバル化の時代だ!英語力が大切だ!と日本の文科省は笛や太鼓で囃し立て、経済産業省あたりは「観光大国になるぞ!」と外務省やら総務省やらと手を組んで張り切っていたのですから、医師不足と病院閉鎖でただでさえ人手不足の日本の医療体制が張り巡らす水際作戦の網など、最初から貧弱な物になるのは仕方がないことであります。


新型インフルエンザ感染が確認された高校3年の男子生徒の検体が、医師から神戸市に提出されてから詳細(PCR)検査までに3日間かかるなど、今回の騒動では、行政側や学校現場の対応の遅れが浮き彫りになった。

■「対応の遅れ」というのは飽くまでも結果論で、一応は「マスク着用とうがい励行」を呼び掛けていたにしても、通常生活の中ではマスク着用は馴染まない場面は多いでしょうし、のべつ幕無しに丁寧に手を洗ってなどいられませんから、「水際作戦」はパニック予防の方便として軸足は感染者の探索と発見に置いておかねば対応が遅れるのは当たり前です。


感染者が確認された県立神戸高では、11日に5人の生徒にインフルエンザのような症状があったため、校医が校長に報告。13日から全生徒の健康観察を開始し、保健所にも相談したが、「海外渡航者でないなら季節性インフルエンザではないか。これ以上増えるようならまた連絡してほしい」と指導され、簡易検査の緊急度についても「低い」と判断されたという。

■「発熱したら病院ではなく保健所へ」と熱心に広報していても、当の保健所が「水際作戦」を全面的に信頼しているいれば、対応が後手に廻ってしまいます。海外渡航者かどうか?で線引きしているということは、感染者の入国は完全に防がれているという前提があったということになります。


県教委の藤原茂之総務課長は「海外からの帰国者には学校も県教委も神経をとがらせ、報告を求めていたが、国内で2次感染とも思われる発症例が見つかるというのは想定外だった」と釈明した。

■2次感染が「想定外」という学校側も、同様に「水際作戦」を信頼していたことになります。こうした信頼感は、一体、何処から湧いて来たのでしょうなあ?水際作戦に万全を期している!と言いながらも政府当局は「発熱したら保健所へ」と連呼していたのですから、暗黙の裡に感染者の入国は前提されていたのに……。自分だけは最初の2次感染者にはならない、などと変な自信は持たないことが肝要のようであります。日常生活の中では、誰が触ったか分からない品物や家具などに無造作に手を伸ばさねばならない場面が無数にあるのですから、絵に描いたような高熱を発した患者さんからの飛沫感染を避けていれば大丈夫というわけには行きません。

■それにしましても、テレビ報道で紹介された某美術館などが入り口に置いている「アルコール消毒液」は食中毒対策にはなってもインフルエンザの予防には何の効果も期待できないはずなのですが……。大丈夫なのでしょうか?


神戸市医師会が16日に中央区の医師会館で開いた緊急会議では、出席した開業医約50人から「検査キットが足りない」などの声が上がった。感染した男子生徒の検体は、発熱外来からの検体や市内での食中毒の検査のためにPCR検査の機械が使われたため、後回しになった。

■飲食店が多ければ、どうしても食中毒は発生するものです。それ以外にも検査機械を使う通常の検査業務も多いはずです。検査キットにせよ、PCR検査機にせよ、大量に増設されたという話は一度も聞いておりませんなあ。医師も足りない、機械も足りない、残るのは精神論だけになってしまいます。


また、同市北区の男性開業医は感染が疑われる別の県立高校2年の男子生徒の情報について16日午前、市発熱相談センターに電話で相談したが、2時間以上も何の返答もなかったことを明かし、「一般市民と医療機関からの相談を混同している。医療機関からの相談の方が信憑性や緊急性が高いのは明白で、情報の整理がなっていない」と指摘した。
2009年5月16日 産経ニュース

■お役所仕事の典型なのでしょうが、現場の保健所の問題よりも厚労省が作成しているマニュアルや指示文書がプライオリティをきっちりと整理していない可能性が高そうです。「発熱したら保健所に連絡」と連呼してみても、肝腎の保健所の受付・受け入れ態勢が不十分であれば何の役にも立ちません。更に「出物腫れ物ところ嫌わず」と言うのが病気の性質だというのに、深刻な医師不足で夜間診療が危機的な状況になっている医療機関が圧倒的に多いそうですから、万が一、夜間に高熱を発したら恐怖の「たらい回し」が起こる心配もありそうです。小泉改革、恐るべし!

■発熱外来が未整備の地域も多いとも言いますし、ウイルスを封じ込める減圧室の無い地域はもっと多いとか……。本当にパンデミックを想定しているのなら、自動車産業を救済する景気対策の意味でも、トレーラー型のパンデミック対応車両などを大量に発注するようなアイデアは出ないのでしょうか?ハイブリッド・エンジンを搭載するもよし、ソーラー発電パネルを貼り付けるもよし、医療機関が手薄な地域に配置する一方で、集中的な感染が起こった地域に集中的に派遣する車両も必要でしょう。そして、幸運にも国内の感染が収束したら完全に滅菌消毒した上で海外援助物資として感染症に悩む国々に無償て提供するとか……。

■大阪や神戸など人口密度の高い都市部で最初の感染者が出ても、何とか対応できる設備や人員は確保できそうですが、実質的に医療体制が崩壊しているような中山間地や過疎地域で感染者が見つかったらどうなるのでしょう?解散総選挙の争点にでもなったら政権交代は必至ということになるのでしょうなあ。

■マスク着用!嗽・手洗いの励行!そして自分が住んでいる地域の医療体制をもう一度確認して食糧と水を備蓄しておきましょう。病気に対しては油断大敵。政府に対しては信頼大敵かも?

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

ウイルスより怖いもの 其の四

2009-05-07 10:46:54 | 健康
新型インフルエンザ感染が疑われ、陰性と判明した群馬県に滞在中の30代女性と1歳未満の男児の母子について、群馬県は6日、連絡先の電話番号が不明だったため、入国後の健康観察を行うことができていなかったと発表した。厚生労働省は4月28日から、メキシコ、米国、カナダからの航空便での入国者から「健康状態質問票」の提出を受け、国内での住所や電話番号などを確認。連絡先をリスト化したものは、都道府県を通して住所地を管轄する保健所に送付され、各保健所は約10日間、電話で健康状態を確認することになっている。

■この「健康状態質問票」が、水際作戦が発動された直後から1万枚も未回収になっているのは周知の事実です。これから日本国内で広範囲に感染者がぽつぽつと現われたら、厚労省の初動が遅れた責任が問われることになるのは必定なのに、福田一家か中曽根一家か小渕一家か、どちらの御身内の「縄張り」なのかは存じませんが、群馬県で起こった大失態であります。結果的に陰性だったから大丈夫、という話ではありますまい。米国でも前大統領の出身地であるテキサス州から感染者や死亡者の報告が出て来るというもの偶然の一致とは言え皮肉なものですなあ。


……母子は4月29日に米シカゴからの航空便で入国した際、質問票の電話番号の部分が未記入だったため、今月3日にリストが到着した後も保健所が連絡を取ることができず、5日に母子の家族が県保健予防課に連絡するまで、健康状態の確認ができなかった。県によると、リストは計138件分集まっているが、一部については電話番号の間違いなどで連絡が取れない状態になっているという。
2009年5月6日 産経ニュース

■重要な情報が書かれるはずの欄が未記入になっていても「回収」作業は進んで行たというのなら、単なる形式だけの税金の無駄遣いと言われても仕方がないでしょう。大臣が「パンデミックが起こるぞ!」と危機感を煽っているのに現場は妙に呑気なのでしょうか?少し落ち着いて日本の政府と厚労省が用意している対応策を検証してみる必要がありそうです。


……世界的大流行(パンデミック)のリスクが高まるなか、発熱などの初期症状がある「疑い患者」を集中的に診察する「発熱外来」の設置準備について、全国47都道府県中16自治体で設置確保ができていなかった……。舛添要一厚労相は30日、設置準備を急ぐよう指示したが、最前線となる各自治体の取り組みには温度差があるようだ。……

■「病院に行かずに保健所に電話」と言っておきながら、心配ないから医者に行けとの助言に従えば爪弾きされ、あれこれ調べて「発熱外来」に行こうかと思ったら市内どころか県内にも無い!これが日本政府が言う「万全の体制」ならば日本語の使い方が間違っています。


東京都が「発熱外来」として確保している医療機関は約60カ所。……28日、都は各機関に設置準備を要請。29日には約8000人分の抗インフルエンザ薬や感染症防護服約11万セットを、約60の医療機関と都内31カ所の保健所に届けた。……11ある感染症指定機関以外の名前は公表しないとしている。患者が殺到することによる混乱を避けるためで、「発熱相談センター」である保健所に電話してもらい、個別に発熱外来を設置する機関を教える方針だ。……

■なるほど、なるほど、相談センターに電話して秘密の指定機関ではなく一般の病院に行きなさい、と指示されると診療を拒否されるというシステムになってしまっているのですな?そして世界有数の人口集中都市の東京で8000、11万、60、30などという数字が並んでいるのが「安心と活力」を目指す麻生内閣と二度目の東京五輪を実現したいと熱望する都知事が備えた水際作戦の実態ということのようです。森谷司郎監督の映画『日本沈没』で、大地震に襲われた後の首相官邸内で「都内には110万食の備蓄食糧がある」という報告を聞いた総理が「東京の人口は、君!」と言って絶句する場面がありましたなあ。


……協力機関に指定されていない都内の民間総合病院の感染症科の部長は「実際に鳥インフルエンザの感染疑いがある患者が受診し、対応に追われたことがある。どの病院で感染患者が受診してもおかしくない。病院として発熱外来を設置できるよう準備を始めたが、今の段階でどこまで準備するべきか…」と打ち明ける。

■鳥と豚とは大違いで、どこの国でもパンデミックを想定しているのは鳥インフルエンザの変異ウイルスだそうですから、想定外の豚インフルエンザに対処しろ!と急に言われても混乱してしまう事情があるのでしょう。東京都下がこの状態なら、それ以外の地方自治体は大変なことになっているのでしょう。


……神奈川県は感染症指定機関を中心に「発熱外来」医療機関をリストアップしている最中で、まだ決まっていない。「地方には医師不足の問題もあり、負担は小さくない」(健康増進課)という。
……群馬県は36カ所の目標に対し、3カ所しか協力を得られなかった。医師らが感染した場合の補償問題がまとまらなかったためという。……千葉県は10の医療機関を確保。……同県で発熱外来を設置することになる感染症指定機関の担当部長は「今年、新型インフルエンザの演習を体育館を使って行ったが、ここまで早い展開になるとは予想していなかった。実際にどこに発熱外来を設置するかまだ決まっていない」と話す。

■「確保」と「設置」は意味が違うようです。これも役所言葉の「定義」が不明確だからかも知れません。厚労相も首相も「確保」の二文字に安心していたのならトンデモない話でありますなあ。

ウイルスより怖いもの 其の参

2009-05-07 10:46:34 | 健康
新型インフルエンザに関して東京都は6日、都独自の検査過程で「感染の疑い」とされた例が5日までに9件あったと発表した。……疑いが発生した場合、国は感染症法に基づき報告を義務づけているが、この9件については「国への届け出る基準に該当するものはなかった」としている。……感染者の早期把握のため、独自の検査手法「東京感染症アラート」という制度を設けている。……「医療機関が新型インフルエンザを疑った際に、保健所に報告し、接触者の追跡調査やウイルス検査を行う」という仕組みで、9件はこれに適用された。

■ちょっとテニヲハが変な記事ですが、東京都には独自の「水際作戦」があったという話のようです。警察庁とは別格の警視庁を持ち、予算規模もオーストラリア一国を凌駕するとも言われる東京都ですから、アホな?厚労省とは別の作戦を持っていても不思議では無いのですが……。虚仮にされたら静かに激怒して陰湿な仕返しをする傾向があるのがキャリア官僚の伝統的な体質だとも聞きますから、後の意趣返しが怖いかも知れませんなあ。


また、厚生労働省インフルエンザ対策推進本部では「感染症法の趣旨から判断して、国が定める疑い例に該当する場合には、直ちに報告してほしい。自治体が独自の判断で報告を見送ることはできない制度になっている」としている。
5月6日 産経新聞

■何だか「年金特別便」の返信を待っているような話になっているようですが、地に落ちた厚労省の権威には頼らないぞ!という変な独立心が日本中に芽生えてしまったような時期に、本物のパンデミックの予行演習みたいな事態になって、選りにも選って口先ばかりの大臣が妙に興奮してしまったばかりに地道に政策を考えていた数少ない?良心的な官僚も、いよいよ馬鹿馬鹿しくなって「匙を投げて」しまうのではないかと心配ですなあ。何しろ「エンドレス」に尻拭いをしなければ手に負えないような「こんなに酷いとは思わなかった」と(年金部門だけですが)担当大臣が呆れるような役所なのですから……。
 

……舛添要一厚生労働相は6日、厚労省で河村建夫官房長官と面談し、水際対策として行っている国内空港などでの検疫態勢強化のため、検疫官を支える人員の応援を要請した。面談で河村官房長官は、「WHOが(警戒水準を)レベル6に上げることを検討しているという話も聞いた。対応をしっかり整えてもらいたい」と注文をつけた。

■厚労相が「要請」つまりは泣き付いているのに、官房長官は「注文を付けて」どうするのでしょう?クチダケ大臣と口が軽い官房長官が組めば間抜けな漫才みたいな話にしかならないのは当然なのでしょうが……。レベル5の段階で「人手不足」なら、本物が襲来したら担当者は存在しないことになるのでしょうか?役人任せの「万全な対応策」には限界があるようですなあ。思えば小泉改革は「自己責任」の追求で現場を無視した医療費削減をどしどし進めた恐ろしいものでしたから、今でも「次期総理大臣」に小泉さんを希望している人は、よほど強力な免疫力と高度な衛生環境を確保している人なのでしょうなあ。そんなに丈夫な人なら、少子化対策にもなりますから丈夫な赤ちゃんをどんどん産んで欲しいものであります。


舛添厚労相は、入国者の健康状態把握などの検疫を強化して引き続き国内感染阻止に努めることを述べた上で、「最大の問題は検疫官の不足。応援のため、荷物運びなど検疫官を支える人を各省から出してもらうとともに、自衛隊の支援を引き続きお願いしたい」と要望した。

■大型連休が重なったとは言っても、この段階で「検疫官の不足」を言い立てられたら、政府の無策・無能を宣伝するようなものですから、選挙モードに入っている閣僚や議員からは「テレビ芸者の参議院議員は黙っていろ!」と文句が出そうな気もしますが、後先を考えずに自分の得点だけを考える悪い癖は簡単には治らないのでしょうなあ。それが治っていたら、今頃は古巣の東京大学で絶大な学内政治力を振るっていたのに違いありますまい。


この後、河村官房長官と舛添厚労相は、新型インフルエンザに関する電話相談業務を行っているコールセンターなどを視察。担当職員から相談件数や内容などの説明を受け、河村官房長官は、うなづきながら「引き続き、がんばってください」などと声を掛けていた。

■年金問題が火を噴いた時に「あなたとは違う」福田ホイホイ元首相が社保庁の電話窓口に押し掛けて、何とも頼り無さそうな職員を激励していた情けない風景を思い出しますなあ。コールセンターに張り付いている職員がどんなに頑張っても、内閣が作ったというシステム自体がボロボロならば「引き続き頑張って」も仕方がないでしょう。


一方、6日午前に急遽決まった官房長官の「電撃訪問」で対応に追われた厚労省。センター視察でも、厚労省の職員らは、詰めかけた多数の報道陣などにやや困惑気味。ある職員は「激励をしてもらうのはありがたいが、このタイミングで来てもらうのも…」と話していた。
2009年5月6日 産経ニュース

■絵に描いたようなバカ経営者みたいな現場無視のエエカッコシイが雁首揃えて百害あって一利無しの「電撃訪問」をして見せたのでしょうが、訪問するならお忍びで成田空港の「滑走路」に立って体力の限界を越えて検疫に走り回っている検疫官の実情を秘かに視察するとか、「疑い」が掛けられた患者の家族を元気付けるとか、もう少し知恵を使ったら如何なものでしょうなあ?邪魔にならないのならワクチン製造の現場に行って荷物運びのパフォーマンスでも選挙に好影響をもたらしたかも知れません。

ウイルスより怖いもの 其の弐

2009-05-06 22:19:52 | 健康
……診療拒否の相談は、都が新型インフルエンザ感染を心配する患者らを対象に設置した電話相談窓口「発熱相談センター」に寄せられた。92件の半数以上は、「最近海外に渡航していないのに診察を拒まれた」という内容だったという。 ……発熱などの症状があっても、国が発生国として指定しているメキシコ、米国、カナダからの帰国者でなければ、診察を拒まないで欲しいと、都は病院に呼びかけている。都健康安全部の加藤みほ副参事は「新型インフルエンザへの警戒心が強すぎるためだと思うが、診療拒否が増えると医療現場が混乱し、都民の不安も増す。適切に対応してほしい」と話す。

■誰かさんが「騒ぎ過ぎても後で修正すればよい」と狼少年大臣を擁護しているようですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」とも申しますし、「鶏を裂くに牛刀を以ってする」のは愚か者とも申します。特に医療の場合は薬と毒は紙一重、文字通りに「匙加減」を誤れば生死に関わるのですから、念のために多めに……などと言われた患者は可哀相です。仄聞しますに団塊の世代が意図せずに生み出した偏差値受検術の悪弊で、単に偏差値が高いという理由で医学部に進まされたという畑違いの秀才やら、政治家ならぬ世襲を強いられて医者にならされた!などという悲喜劇が1970年代あたりから日本中で起こっていたとか……。

■予防・防御の方法は無い段階で、ウイルスの恐ろしさだけは勉強して知っている「お医者様」が保身を図るのは当然なのかも知れません。今は絶対に観てはいけない角川映画の『復活の日』で、ほんの数分間の出演なのに緒形拳さんが演じた悲劇的な医師の姿は印象的でありましたなあ。黒澤映画の『赤ひげ』も、暫くの間は観ない方がよいかも知れません。


同様の苦情は厚生労働省のコールセンターにも寄せられている。江浪武志・結核感染症課課長補佐は5日の会見で「相談件数や現場の実態などを確認し、(診断基準となる)症例定義が誤って伝わっているなら、正したい」と述べた。
2009年5月5日 朝日新聞

■法律の文案を作り「定義」を決めるのが高級官僚の専権事項だったはずです。平時であろうと有事であろうと、命令中枢と最前線や現場との間で「定義」がズレていたら大変なことになります。本物の鳥インフルエンザが変異して隣の国で感染爆発を起こしたらどうなるのでしょう?


……厚生労働省は5日「単なる診察拒否なら重大な問題だ」として、全国の実態把握に乗り出すことを決めた。東京都はこれまでに92件を確認。厚労省は、悪質なケースで医療機関名が把握できれば、都道府県を通じた個別指導などを検討する方針。厚労省結核感染症課は「『感染の疑いがあれば発熱外来に誘導する』という国内発生後の対応を前倒ししているのか確認が必要」とする一方「現段階でのこうした対応は常識的に考えられない」と不快感を示している。

■厚生労働省の内部に今でも「常識」という言葉が生き残っている事実に、涙が出るほど感動を覚えますぞ!何処の誰が「医者が余ってしょうがない」だの「すぐに日本の人口は増加に転じる」だの、「多様な働き方は日本人を幸せにする」だのという非常識な前提を今でも死守しているのでしょう?年金制度は決して崩壊しないと言い張っている厚労省の役人は、いざとなったら神風が吹くか大増税が襲い掛かるから大丈夫だと安心しているとか……。早く「常識的」な健康と労働の基本的な条件が整えられるのを待つばかりであります。


……診察を拒否されたりセンターに相談するよう言われたりした人が大半だが、「成田空港に勤務」「友人が外国人」と話した途端、診察を拒まれた人も。センターの電話相談で一般病院に行くよう勧められたのに、実際に行くと、そこで拒否された例もあった。
2009年5月5日 共同通信

■こうなったら昔懐かしい橋幸夫さんの恐ろしくテンポが遅い『メキシカンロック』でも口ずさみながらソンブレロをかぶって厚労省の周りをデモ行進するしかないのかも?隣のチャイナでは「SARSで失敗したので」という言い訳を最大限に利用して脱・メキシコ政策を採っているようですから、日本は伊達政宗以来のノビスパン交流を思い出し、怪獣マニアなら分かる大伴昌司を育てたメキシコの古代文化の恩義も考えてメキシコ虐めは回避したいものであります。

ウイルスより怖いもの 其の壱

2009-05-06 22:19:16 | 健康
■欧州諸国を歴訪中の「外交の麻生」コロコロ首相は、ETC普及を加速して役人の天下り団体を潤す目的を隠して「景気対策」だと言い張って決めた「高速道路1000円乗り放題」政策?がどれほど世間を混乱させ、ほとんど景気刺激の効果が無かったことなど知らぬ顔。「100年に1度の経済危機」に協力して対処しましょうね、と絶対に対立も決裂もしないに決まっている会談を繰り返しているそうです。共同記者会見では「チェコ」と「スロバキア」をうっかり再合併?させてしまい「外交の麻生」の金(鍍金)看板に小さな傷が付いたそうですが……。
 
■新型インフルエンザ対策でも大方は話がまとまっているそうですが、要するに「情報交換」と「水際作戦」を頑張りましょうね、というだけの話だそうですから、本当に外遊などする必要があったのでしょうか?莫大な赤字国債の発行を決めておいて単なる外交日程を消化するだけの外遊などあっさり中止するのが「100年に1度の経済危機」に対処する責任者の義務ではないのかなあ?とニュース映像を眺めながら思った次第です。

■欧州各国で「協力」を話し合っておきながら、自国内での新型インフルエンザに対する「水際作戦」は大混乱なのですから、リアルタイムで情報を得ているはずの会談相手は腹の中では呆れているかも知れませんぞ。


新型インフルエンザへの感染が世界的に拡大する中、東京都内の一般病院で、発熱の症状があるだけで診察を拒否したり、出勤の際に非感染の診断書の提出を求めたりする、過剰反応とも言えるケースが続出していることが5日、東京都のまとめで分かった。2日午前9時から5日正午までに診察拒否は計92件、診断書提出要求も複数あった。都によると、(1)海外への渡航歴がない(2)感染者が出ていない国から戻った(3)発熱相談センターから「新型インフルエンザではないから一般病院へ」と言われた-などの発熱患者に、拒否された例が多かった。中には、▽勤務先が成田空港▽外国人の友人がいる-などの理由で診察を断られた人もいた。病院の中には大学病院もあったという。
2009年5月5日 時事通信

■「羹に懲りて膾を吹く」というメイド・イン・チャイナの諺がありますが、御本家では世界中から顰蹙を買ったSARS騒動にすっかり懲りて、メキシコを戦争でも始めそうな勢いで過剰な隔離・断絶政策を矢継ぎ早に展開中であります。漢字文化を取り入れたからと言っても、日本も足並み揃えて過剰反応するのは如何なものでしょう?まあ、現場責任者の厚労大臣が真っ先駆けて浮き足立ってしまったのですから、医療現場が冷静さを失ってしまっても仕方がないのかも知れませんが、アマチュアの俄か大臣と一緒に医療のプロが恐慌状態になって貰っては困りますなあ。

■この「診療拒否」現象についてはもう少し詳しく知る必要がありそうです。

 
海外渡航歴がなく、新型インフルエンザ感染の可能性の低い発熱患者が、医療機関から診察を拒否されるケースが相次いでいる。東京都の場合……「きちんと対応してくれない」との苦情が92件あった。「成田空港で働いているだけで発熱相談センターに連絡するよう求められた」「国内の観光地に出かけ、外国人観光客が多かったと言ったら、診察してもらえなかった」――など。相談センターから疑いなしとされたのに、拒否されたケースも数件あったという。

■各種文書の句読点を弄(いじ)くったり「等」の一文字を紛れ込ませて黒い物を白くしてしまうのが役人の「文章力」だそうですが、大臣が「パンデミック近し!」と騒いでいる足元で診断基準が違っているようでは困ります。


政府の方針では、新型の確認された国からの帰国者が高熱などを発症した場合、自治体の発熱相談センターに電話で相談し、指定された発熱外来で受診することになっている。ところが、病院の当直職員らが発熱患者はすべて「相談センター対応」と誤解しているケースが多いとみられ、都は「診察拒否が広がれば、患者が海外渡航歴などを正しく申告しなくなる恐れがある」と懸念を深めている。

■既に「92件」も拒否された!と怒っている人がいるのですから、ちょっと気になる発熱を感じても、腹を立てるよりも安静にしていようと考えを変えた人が多いかも?死亡者がメキシコに集中している原因が適切な治療を受けるのが遅れたことだったと判明しているというのに……。


横浜市や大阪市の発熱相談センターにも、苦情や相談がそれぞれ数件ほど寄せられている。横浜市健康安全課は5日、医師会や病院協会に診察拒否をしないよう文書で要請した。厚生労働省結核感染症課は「相談センターが『疑いなし』とした患者の診療を拒否するのは問題」としている。
2009年5月5日 読売新聞

■政府は「フェーズ6」のパンデミックが発生した場合に備えて「万全の計画」を立てているのだ!と豪語していたはずなのに、「水際作戦」の最前線で誤解や解釈の齟齬が発生中であります。一体、どんな計画を立てていたのでしょう?ふと「画餅」という言葉を思い出しますが……。

海賊とインフルエンザ 其の弐

2009-05-06 13:11:32 | 健康

ソマリア沖で25日夜、イタリアの客船が海賊の小型船と交戦、海賊を追い払った。客船には乗客乗員約1500人が乗っていたがいずれも無事。……客船は南アフリカのダーバンからイタリアに向かう途中で、6人乗り組みの小型船が近づき発砲。客船に乗船していた治安部隊員も発砲し応戦すると、小型船は逃げたという。海賊情報を収集している「東アフリカ船員援助計画」(ケニア)のコーディネーター、アンドルー・ムワングラ氏は「(客船に)武器を持ち込むのは危険な行為」と述べた。(共同)
2009年4月27日 毎日新聞

■さすがはマフィアの本場!などと感心している場合ではありません。軍艦ではない民間の船に撃退されたとあっては海賊の面目が丸潰れでしょうから、海賊が使用する武器が凶暴化する可能性があります。相手が海賊ならば正当防衛の理屈が立ちますが、相手が難民や遭難者だった場合は救助する義務が生じるでしょうから、もしも、接近する小型船から「新型インフルエンザに感染した者がいる。助けてくれ!」と言われたらどうするのでしょう?日本では厚労相が興奮気味に「水際作戦」を指揮しているそうですが、公海上で伝染病患者と遭遇した場合には、1949年8月に締結されたジュネーブ(第二)条約に従って対処しなければならないのかも?でも、隔離施設も防護服も無い状況で感染覚悟で救助する義務までは負えないでしょうから、現場の指揮官は大変な決断を迫られてしまいそうです。退治するより救助する方が何倍も難しいでしょうからなあ。

■その第二章・第十二条には、「……軍隊の構成員及びその他の者で、海上にあり、且つ、傷者、病者又は難船者であるものは、すべての場合において、尊重し、且つ、保護しなければならない」という規定があるようですから、これを悪用されると非常に困ったことになりますなあ。日本の野党の中には自衛隊を出さないで海上保安庁の船を出せ!という声がありますから、真偽不明でも救助要請があったら率先して助けろ!と主張する政治家も出て来そうですが……。パンデミックを警戒しながら海賊退治をするというのは、大変な仕事になりそうであります。
 

ソマリア沖で今月8日、米国船籍の貨物船「マースク・アラバマ」が4人組の武装海賊に襲撃された事件で、同船の救命ボートで人質になっていたリチャード・フィリップス船長(53)が12日救出された。近くで監視中の米海軍駆逐艦から出動した特殊部隊員が海賊3人を射殺、交渉のため艦内にいた1人を拘束した。フィリップス氏は乗組員20人の安全のため自ら人質となっていた。米軍によると、海賊が同氏に自動小銃を突きつけたため「人質の生命が切迫した危険に直面した」と判断した現場指揮官が狙撃を命じた。オバマ米大統領も武力行使による救出作戦への許可を出していた。……フィリップス氏を拘束した海賊は、身代金200万ドル(約2億円)を要求。米海軍は現場海域に駆逐艦など3隻を急派し、「人命最優先」(ゲーツ米国防長官)で対応に当たった。……
2009年4月13日 毎日新聞

■日本からも特殊部隊に相当する精鋭が派遣されることになっていますが、日本船籍の貨物船が襲われた場合、同様の強襲作戦が発動されるのかどうか?やはり「話せば分かる」という建て前を守って裏側で身代金の交渉をすることになりそうです。この救出劇には後日談があって、生け捕りにされた兄ちゃんが「未成年かも知れない」だの母親が恩赦を願い出ただの、20余人の生命を危険に晒して2億円ものカネを要求しておいて、「実は未成年だったから許して下さい」と言い出されては、命懸けで警備任務に就いている隊員の士気も鈍ってしまいそうです。まして、生け捕りにしてみたら下痢と発熱の深刻な症状だった、などという事にでもなったら実にややこしい話になりそうです。

■どうやら新型インフルエンザの大流行には、嗽(うがい)と手洗いとマスクだけでは対処し切れない難問が付き纏っているようです。感染者の数を数えるよりも、政治的・軍事的な分野に広がる問題を重視しておく必要がありそうです。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

海賊とインフルエンザ 其の壱

2009-05-06 13:10:43 | 健康
■いよいよ新型インフルエンザの警戒レベルがパンデミックを意味する「フェーズ6」に引き上げられそうな雲行きですが、世界中の国々が一丸となって感染爆発を阻止する協力体制など夢のまた夢というのが現実のようです。その代表がソマリアかも知れません。他にも感染状況を調べられないような国や地域は数多いのですが……。
東アフリカ・ソマリア沖で多発する海賊に対処するため、クリントン米国務長官は15日、国際会議招集や海賊の武器購入ルート遮断などを柱とする四つの緊急対策を明らかにした。長官は「17世紀の犯罪」に「21世紀の解決策」が必要と述べ、国際的な取り組みを訴えた。海賊対策に関する国際会議への参加国は30カ国以上とみられる。海賊は身代金で高性能な船や武器を購入していることから、各国が協力して海賊との取引業者の取り締まりなどを行う。また、ソマリア暫定政府や地域の部族長らと協力するための外交チームを派遣する。
毎日新聞 2009年4月16日

■この記事はメキシコでの新型インフルエンザ感染が確認される直前のものです。文中の「17世紀の犯罪」というのは映画が大ヒットしたカリブの海賊が荒稼ぎしていた時代と同じ状況がソマリア沖に現出していることを象徴的に表現したものと思われますが、今となってはなかなか意味深長な言い回しでした。今回の新型インフルエンザの感染爆発を解説する時に必ず引き合いに出されるのが第一次大戦を終結させた「スペイン風邪」の大流行の話でありますが、あれは20世紀初頭のことでした。あれから抗生物質が開発されたり、ウイルス研究や治療技術も随分と進みましたから、3000万人もの犠牲者は出ないだろうと言われています。

■しかし、スペイン風邪が大流行した時代よりも300年も前の状態にある国や地方が現実に存在し、統治機能を失った名前だけの国家も数多く残っています。中には一部の特権的な階層以外の生命や健康をまったく斟酌しない独裁国家もありますから、トンデモないもぐら叩き状態になる心配がありそうです。すっかり世界中に広まってしまったHIVウイルスも発生源となったウガンダが内戦状態が続いてたために封じ込めに失敗したという苦い経験を思い出してしまいます。
 

ソマリア沖のアデン湾で4日、北朝鮮の貨物船に迫っていた海賊船を韓国海軍のヘリが威嚇飛行で追い払う救出劇があった。南北関係は現在、最悪の状況にあるが、貨物船は「カムサハムニダ(ありがとう)」を無線で連呼して目的地のインドへ向かったという。

■元?テロ支援国家の船をソマリアの海賊が襲う!何とも喜劇的な響きのある事件であります。それにしても、この北朝鮮貨物船は、一体、何処から来たのでしょう?


5日付の有力紙、朝鮮日報によると4日朝、海賊対策で派遣された韓国海軍の駆逐艦が、北朝鮮の貨物船から英語の救助要請を受信した。貨物船はイエメン・アデン港沖37キロの海域で海賊船に追われていた。駆逐艦から現場まで約100キロ離れており、同艦のヘリが救助要請から40分後に貨物船を発見した際、海賊船は約3キロ近くにまで迫っていた。海賊船は接舷のため小型船やはしごなどを積んでいたが、ヘリが銃器の照準を海賊船に合わせ、約10分間、威嚇飛行したところ、逃走。……駆逐艦は2月に派遣され、北朝鮮の船舶を海賊から保護したのは初のケース。
5月5日 毎日新聞

■基本的には自国の船しか助けないことになっている日本の海上自衛隊だったら、これ幸いに北朝鮮の貨物船を見殺しにしてしまうかも?法律で許される範囲の対処法で助けたとしても、素直に感謝してくれるかどうか……。それはさて措き、日本からの制裁を受けている北朝鮮の船が、世界の国々を相手にややこしい商売を続けているのは明らかで、もしも、乗員が新型ウイスルに感染した場合、あの国はどんな扱いをするのでしょう?「帰って来るな」の一言で治療を他国に丸投げするような気もするのですが……。まさか海上で自爆自沈せよ!とまでは言わないとは思いますが、見られては困る物騒な荷物を積んでいた場合はどうなるのでしょうなあ?

守りたい日本ブランド 其の壱

2008-10-19 01:30:06 | 健康
■店にはバターが無い!酪農家は乳価が安くて廃業だ!もっと変なのがコメが余って困るからコメを作るな!と安全で美味しい国産米は減反し続けて、海外から「食えないコメ」を買って保管しているという大矛盾。貿易収支を調整する為のミニマム・アクセスだとは承知していますが、その「食えないコメ」が管理しているはずの農水省でも末端まで解明不可能だと匙を投げるほど日本中の「食品」に混ぜ込まれていたのですから、コメは余っているのか?足りないのか?本当にはっきりさせて欲しいですなあ。

■日本銀行というところは「インフレを監視して抑止する」ことを自分の使命だと信じ込んでいる所だそうで、それが原因でバブルが膨らみ、破裂し、その後も不景気がずっと続いているとか……。農水省という役所は、「コメは自給自足する物」だと信じ込んでいる所で、国内の米作農家を守るという大義名分で減反補助金政策を延々と続けているのだそうです。そして、輸入小麦が高いのは、国内で麦作農家を増やすための予算に充てるために高い税を課しているからだそうです。コメが豊作になると生産者は値崩れを心配し、不作になったら収量不足で借金も返せないとか……。

■戦前の大凶作は忘れては行けない歴史ですし、終戦後の数年間、需給バランスが崩れ輸送設備が破壊されたために起こった食料不足も忘れては行けません。しかし、農水省に農産物を輸出することを専門に考える部署が長い間なかったというのは実に不思議な話です。農林水産省のHPには、「大臣官房国際部貿易関税課輸出促進室」という長い名前の部署名で平成16年4月1日に「輸出相談窓口」を設置した!と書かれています。それから、農産物の輸出額を平成25年までに1兆円規模にするという目標を平成19年5月23日に「農林水産省国産農林水産物・食品輸出促進本部」という所で決めて、『我が国農林水産物・食品の総合的な輸出戦略』という文書が作られたのだそうです。何とも忙しいことですが、その2日後の同年5月25日に「平成19年度農林水産物等輸出促進全国協議会総会」という早口言葉みたいな長い名前の会議を開いて、頑張ろう!という事になっているのだそうです。

■平成19年まで、日本国内の余剰農産物を積極的に輸出しようとは、政府内では誰も考えなかったのでしょうか?そうそう、ドバイあたりの某高級スーパーの一角には農水省が税金で確保した日本産コーナーがあるそうですが、人をバカにしたような馬鹿高い値を付けて何の宣伝もしないまま放置して、どんどん腐らせているとか……。もっと近い所に巨大な需要があるのになあ、と思います。


ロシア極東のハバロフスク市で、日本直輸入の食料品店が人気を呼んでいる。背景には中国産の危険な食料への不信感があり、高価でも安全な食料を手に入れたいという意識が働いているようだ。アムール川を隔てて国境を接している極東地方では中国との経済的な結びつきも強まっているが、食の安全や環境汚染問題などで、中国への不満が高まっていた。……中央市場にある日本食材専門店は今年4月にオープンした。冷蔵ケースにはしょうゆ、わさび、焼き肉のたれなどが並べられ、カレー粉やのり、野菜ジュースも売られている。値段は日本の3~4倍だ。

■「どうして4倍も高くなるんだ?」というコストの謎が隠れているようですが、環日本海貿易圏という壮大な計画が出ては消えるようでは困りますなあ。日本海岸の北の港から輸出してアムール川を遡る航路を使えば?などと素人は地図を眺めながら考えてしまいます。


店を経営する輸入業者「ミグトレード」のフェデーイェバ・アレクサンドラさん(32)は、「日本の食料品は品質が良いという印象が定着していて、宣伝なしでも客は安心して手に取ってくれる」と話す。他店では日本の青果も取り扱っており、リンゴは1個500円もするが、高価でも売り切れるという。日本の食料品が人気なのは、街に出回る中国産への警戒心が強いからだ。今年4月には、同市の卸売市場で、許容量の9倍の農薬が含まれている中国産のリンゴが発見され、5トン以上が処分された。9月には、輸入したモモなどの果物に害虫がつまっていることがわかり、96トンも中国に送り返された。今月に入り、有害物質のメラミンが混入した“粉ミルク騒動”も起きた。発覚が遅れ、過剰摂取した乳児の健康悪化が心配されている。……

■石油や天然ガスを売ってくれない!と泣き言を並べてばかり居ても仕方がありません。少しでも景気の良い時に、安全で美味しい日本産の味を相手に教えましょう。まあ、出来れば南樺太をしっかり日本に返還してくれれば輸送設備や交通インフラも整備して上げられるのですが……。

ドーピングの品格

2008-09-06 14:26:48 | 健康
 ■この数年、人物や品物だけでなく、国家や会社や「女性一般」にも品格が必要だと主張する本が売れまして、品格の大安売り状態になっております。国家の場合は戦争、企業であればシェア争い、アスリートならば競争があるわけで、サバイバルの極限状態に追い詰められた時にも、悠然と構えて品格を保って敗れ去る覚悟を固めるのは容易なことではありません。

■世の中は何でも宣伝、大きな声をしつこく上げ続けた者が勝った形になる場合がやたらに多くなったような気もしますが……。本や映画などはその典型で、集中豪雨のような話題作り努める人達は、犯罪以外なら何でもやるぞ!という品格どころの騒ぎではないようで、文字通りの「勝てば官軍」で荒稼ぎしては次の獲物を求めて走り去って行きますなあ。だから時代を超えた名作などという物は生まれないのでしょう。

■相撲協会が何を勘違いしたのか、抜き打ちでドーピング検査をしたら、ビンゴ!の2連発が出ました。先に逮捕された若の鵬と同郷で付け人をしていた兄弟だというのですから、「関係ない」では話は通りません。マスコミでは「ロシア出身」と報道されていますが、正確に言えば北オセチアの出身です。つまり、北京五輪大会の開幕と同時に戦争が始まった南オセチアの北に国境を接している兄弟国の出身です。何となくオセチアやグルジアの地名を出すのが憚(はばか)られるのか、大雑把に「ロシア出身力士」という表現が目立ちます。

■アンチ・ドーミング機構という世界的な権威のある組織が「クロ」と判定したのに、「簡易検査」だったことを口実に「シロ」の可能性も無いわけではない!という粘り腰を見せているのが北の海理事長。「勝てば官軍」はもう古いのか?逮捕されるまでは検査結果は無視する!との暴言を吐いているそうですなあ。これでは「負けが決まるまでは官軍」という理屈になります。もっと分かり易く言うなら、一度手に入れた既得権益は泥にまみれても手放さない!ということでしょう。「横綱の品格」などと言ってみても、所詮は「ごっつぁんです」で済んでしまう特殊な世界の話なのでしょうなあ。


大相撲の幕内露鵬と十両白露山のロシア人兄弟から大麻吸引の陽性反応が出た問題で5日、日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱北の湖)は8日に出る予定の精密検査の結果が陽性でも秋場所(14日初日、東京・両国国技館)の出場を容認する考えを示した。……「精密検査の結果が陽性でも、本人がやっていないといっているのだから、別のところで調べてもらう」と述べ、秋場所出場については「そのつもりで稽古している。何がいけないの」と話した。……

■バレなければ良い、シラを切り通せば良い、最後まで罪を認めない、こうした態度は品格以前の問題で、学者や芸術家の領分から外れてしまいますから、さっさと警察に動いてもらうしかありません。既に自分の相撲部屋を家宅捜査されているというのに、北の海理事長は泰然自若?本当は事の大きさに茫然自失で身の置き所が無くなっているのかも知れません。元々、公益法人のトップとして納税者に向かって明瞭に語り掛ける能力など無い人ですが、黙っている間は「説明不足」で済みますが、失言・暴言となりますと取り返しが付きません。検査の「陽性反応」を無視する!という暴言は、警察側を刺激したでしょうなあ。
驚く。

理事長は精密検査の結果を最終的な結果ではないと考えているが、相撲以外のスポーツでは通常あり得ない。精密検査を担当する三菱化学メディエンスは、世界反ドーピング機関が公認する国内唯一の検査機関。信頼度の高さは折り紙付きだ。2日の簡易検査を行った日本相撲協会アンチ・ドーピング委員会専門委員の大西祥平・慶大教授も「精密検査で、反応した物質が大麻か痛み止めか、吸引したのが主流煙か副流煙かが分かる」と説明している。……科学的なデータを無視し、疑惑を否定している両力士の言葉だけを信じて本場所出場を認めるのには無理がある。……
2008年9月5日 産経ニュース

■この大不祥事に関連する興味深い記事が『週刊文春』9月1日号に掲載されていました。一つは『細木数子・朝青龍モンゴル巡業の国辱』で、もう一つが宮崎哲弥さんの『仏頂面日記 101回』です。その8月20日の日記。TBSのワイドショーに出演した宮崎さんは「ドーピング」というものの厳しさを実感したそうです。その日のゲストは五輪大会のフェンシング競技で男子フルーレ個人種目に初の銀メダルを取って帰国した太田雄貴選手。


……祝捷ラッシュで「一時間しか眠っていない」という太田選手の疲労を案じて、MCの福澤朗氏が「栄養ドリンクでも用意しましょうか」と勧めたところ、「栄養ドリンクはドーピングチェックがあるので飲めないんです」と辞謝した。……試合後であっても抜き内ちのドーピング検査があり、万全を期すために一年中、禁止薬物が含有されている可能性のあるものには手を出さないのだという。……

■男子ハンマー投げでは、アテネ大会に続いて北京大会でも室伏選手が上位の選手がドーピング検査に引っ掛かり、帰国してからの繰上げによってメダルを獲得したそうですなあ。アテネ大会では金メダルを取ったのですが、「メダルより大事なものが有るだろう」と怒っていた室伏選手は、またもドーピング問題での繰り上げメダルを受け取って馬鹿馬鹿しくなってしまったかも?フェンシングの太田選手が栄養ドリンクを「一年中」飲まないという記事を読んで、ふっと、「ユンケル、エブリデー」と見事なカタカナ発音で栄養ドリンクの宣伝をしているメジャー・リーガーのイチロー選手の事を考えてしまいました。御本人は「五輪大会はアマチュアが出場すべきだ」という哲学?があるから星野ジャパンに参加しなかったと聞きましたが、プロ野球は五輪種目とは別に独自のドーピング検査基準を持っているという話も聞きますと、まったく別のストーリーが組み立てられそうですなあ。

■サプリメントや栄養ドリンクの類は「気休め」効果しか期待出来ないという医師が多いのですが、もしも害毒になる成分が含まれているのなら、「エブリデー」などと言っている場合ではなくなりそうです。昔、王貞治さんはリポビタンDのCMに何年間も出演していましたなあ。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

最も身近な国防問題 その四

2008-01-11 11:09:20 | 健康
運送業者らによると、中国産タマネギは中国から船で運ばれ、神戸港などからコンテナで水揚げ。深夜にトラックで淡路島にある大型倉庫に搬送して、淡路島産の袋や箱に詰め替える作業が行われ、全国各地に出荷されるという。……ここ数年、日本の商社などが淡路島産タマネギの主流品種を中国・山東省などに持ち込み、栽培技術を指導。収穫したタマネギの甘みを強める淡路島独特の「つり小屋」と呼ばれる乾燥法も伝授しており、「(本物と)区別できないほど(の出来映え位)になっている」。

■それなら商社の名前を堂々と表に出して、「○○商社が責任をもって指導」と表示して欲しいものですなあ。勿論、「生産地」は大書して貰わねばなりません。


……産地偽装タマネギの日本上陸は、国産が不作だった1994年ごろから始まったという。農水省調べでは、同年度、外国産タマネギは約20万トン輸入された。その後、増え始め、05年度は約35万8000トンにまで増加。なかでも安価な中国産の伸びが群を抜き、05年度は約22万トンに達している。

■この間に「毒入り野菜」の騒動が起こってスーパーや八百屋からは中国産が消えて行ったのでしたが、輸入量は増え続けて行ったのでした。外食産業が一度味わった安さに酔っ払って中毒を起こしているとか……。売り手も買い手も承知の上で取り引きするより、箱だけ偽造してブランド品として売った方が儲かりますからなあ。


……淡路島産は大玉10キロ当たり1200~1300円の卸値で出荷されるが、中国産はその数分の一という安さ。このため、国産の出荷量は落ち込んでいるが、淡路島産は、そのネームバリューのため値崩れが少なく、安価な中国で栽培した偽装タマネギを淡路島産として出荷すれば、業者にとっては利益が大きい。淡路島産と偽装するには、地元の生産農家から出荷された形跡が必要なため、農家の関与も指摘されている。また、仕入れをめぐっては中国マフィアの介在もとりざたされているという。

■ブランド野菜は買わない方が良いという事になりそうです。日本のお百姓さんがチャイナ・マフィアと結託しているなどとは想像したくはありませんが、農作業をせずに暴利を貪れるなら高齢化している生産現場では付け込まれる余地が多いのでしょう。


……JAあわじ島は、02年7月に産地偽装タマネギの根絶を目指して決起集会「あわじ島玉葱ほんまもん大会」を開催。兵庫県玉葱協会も同年から「タマネギGメン」(原産地表示自主検査員)を置いて産地偽装タマネギの監視強化に乗り出していた。だが、タマネギGメンは05年に解散。「結局、身内(農家)の犯罪を暴くことにもつながるため、当初から効果は疑問だった」(地元関係者)といい、産地偽装の撲滅には程遠い状態だ。

■山形県のサクランボを筆頭に、果実や米が大量に盗難に遭う事件が多発していますが、これも「同業者」の犯行が大半だとも言われているようです。問題が解決もしていないのに「Gメン」が解散したというのは、発足の何百倍も重大なニュースですが、それほど大きく報道された記憶が無いのはどうしてでしょう?


……02年に決起集会「あわじ島玉葱ほんまもん大会」を開催したJAあわじ島の盛野元・営農部長は1日、夕刊フジの取材に「農協出荷分には絶対の自信をもっているが、その他の分や加工品に混在する偽装分の量などの把握は不可能。農協出荷分をPRすることで“本物”の啓発を続けていくしかない」と話している。……
2007年11月1日 産経ニュース

■でも、「JAあわじ」の箱を偽造されたらどうするのでしょう?産地偽装を防ぐ切り札として「トレーサビリティ」技術が開発されていますが、その基礎データ自体も偽装されたら信頼は根底から崩れてしまいます。やっぱり、食品偽装の刑罰を重くして一罰百戒の効果を期待するしか無いのでしょうか?このニュースには続報がありまして、事態はますます混迷しているようです。強引な「火消し」という印象も受けるのですが……。


……産地偽装を伝える報道が一部であり、県が昨年11月からJAS(日本農林規格)法に基づき調査……県消費流通課によると、農水省と共同で、淡路島内でタマネギの流通、加工にかかわる計114業者に立ち入り調査を実施した。中国などの外国産タマネギを扱う25業者も含め、伝票などで仕入れ数や在庫を確認した結果、偽装は見つからなかったという。また、淡路島産として県内外の47店舗で売られていたタマネギ計149個を収集。農林水産消費安全技術センター(本部・さいたま市)の協力で、ナトリウムやマンガンなど、産地によって異なる細胞内の微量元素の含有量を分析し、偽装はないと判断した。このうち淡路島産と断定できなかったタマネギが5個あったが、流通業者の伝票などで偽装は確認できなかった。
 県は今後、淡路島産タマネギの流通量が増える5、6月を中心に、JAS法に基づき小売店で伝票などの検査を続ける。
1月9日 毎日新聞

■最盛期でもない「11月」に調査を実施する事に意味が有るのでしょうか?記事によると「伝票」調査が中心になっているようですが、玉葱自体より「伝票」を偽造する方が簡単なような気もするのですが……。更に穿って考えれば、こうした調査は完全な「抜き打ち」で実施されたのか?昨年発覚した食品偽装事件でも、担当部署の杜撰な調査体制が問題になりましたし、業者と癒着して予告ヤラセ調査は茶番劇だという話もありました。自力での監視摘発を断念した場所で、地元の役所がどれほどの調査が出来るのか?何だか問題がもっと大きくなりそうな予感もしますが、黒幕の方で「淡路はヤバイ!」と判断したら、別のブランドが標的になる可能性も有りそうですが、どちらにしても最盛期の夏場を待つしかなさそうですなあ。せいぜい、自分の目で選んだ野菜を充分に水洗いしたり下茹でして料理するのが最も有効な防衛策のようです。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------
チベット語にな

最も身近な国防問題 その参

2008-01-11 11:08:46 | 健康
■日本の農水省は「攻めの農業」を打ち出していますが、まだまだ『食糧管理法』時代の体質を脱却していないのでチグハグな面が目立つようです。それでも、安全で美味しい高級!を目指して頑張っている農家も増えているようですから、まずは近くの国に上客を増やして行きたいものです。飽くまでも商売ですから、間違っても政府が低姿勢になどなってはダメですぞ!商売は互いが平等の立場でなければ失敗しますからなあ。

新華社電によると、中国検疫当局は4日、上海空港で今年6月から11月までに、輸入が禁止されている日本産の牛肉計3トン余りを没収したことを明らかにした。中国では日本産牛肉の人気が高まり、旅行客を装って牛肉を密輸するケースが相次いでいるという。1回に30キロ以上が見つかった例だけで33回に上り、検疫当局は牛肉の没収のほか最高5000元(約7万4000円)の罰金を科している。中国は2001年、牛海綿状脳症(BSE)に汚染されている恐れがあるとして、日本産の牛肉と牛肉加工食品の輸入を禁止。牛肉密輸の増加は、中国産食品の安全性に対し不信感が広がっていることも背景にあるとみられる。
2007年12月5日 共同通信

■確かに日本でもBSE牛肉は発見されてはいますが、市場に流れ出したことは無いはずです。日本政府は米国が激怒するほど執拗に牛肉の安全性に拘って輸入している立場ですから、隣からこんな仕打ちを受ける覚えはないのです。これも外交戦略の一環として実施されている揺さぶり・嫌がらせなのでしょう。世界に冠たる密輸と偽造の大国のことですから、住民は「本物」に対して非常に敏感でもあります。常に市場には玉石混交の商品が流れているものですが、毒入りの「石」を除去して「玉」だけが残るシステムを国の内外に確立する必要が有ります。それは日本を守るためだけではなく、日本が攻めて行くための武器でもありますから、北京政府と仲の良いホイホイ首相やプッツン代表には大いに頑張って貰いたいものです。


中国産タマネギが、高級ブランド野菜の淡路島(兵庫県)産タマネギとして産地偽装され、全国に大量に出荷されていることが1日、関係者の証言で明らかになった。偽装の過程では、中国産を淡路島に運び込み、現地産の箱などに詰め替えて産地偽装する業者が暗躍しているという。……「箱詰め作業だけで中国産がいとも簡単に淡路島産に化けてしまった。ブランド物のタマネギも、牛肉や米の偽装と同じなんだなと思った」中国産タマネギを淡路島産の箱に詰め替える作業場まで運んだ運送業者の男性は、産地偽装の実態をこう証言する。

■前述の『知らずに食べるな!「中国産」』という本には、もっと複雑なカラクリが紹介されていますが、こんなに単純で乱暴な「偽装」が横行していたら、自給自足で生活するか親しい農家と結び付かないと生きて行けなくなりそうですなあ。


産地偽装は地元では半ば公然の事実で、南あわじ市の男性も「皆が知っている。観光客用の店などは中国産が疑われるので、遊びにきた友人らには普通の八百屋さんやスーパーをすすめている」という。地元の農業団体「JAあわじ島」の関係者は、「安価な中国産タマネギを扱う業者が、淡路島産と偽装して全国に出荷している。それが大きな差益を生む『ヤミ特産物』として定着している」と実情を打ち明ける。

■安い物には危険性が潜んでいるような気もしますが、こういう手法を使われたら値段で安全性を判定できない事になります。偽物を高い値段で買わされる客は怒り心頭でしょうなあ。


淡路島産タマネギの出荷量は年間約8万5000トン(2005年度)で、うち地元JAを通じて出荷されるのは年間約6万5000トン。……JA関係者は「偽装タマネギはJAを介さずに生産農家から直接出荷される分に紛れ込んでいるとみられる。詳しい実態は不明だが、実感としてはJAの扱い量(年間約6万7000トン)の2割増から倍近い産地偽装品が出回っている」と指摘。だとすれば、最大13万トン超のニセ淡路島産タマネギが全国に流通していることになる。

■「生産農家から直接」というのは最も安全で新鮮な農産物を入手する方法だったはずです!素人考えで悪人に騙されるのなら、身近なスーパーや八百屋さんと親しくなった方が遥かに安全かも知れませんなあ。でも、年末に伊丹十三監督の『スーパーの女』を観てしまい、あの作品が10年以上も前に制作されている事に衝撃を受けたばかり……。

最も身近な国防問題 その弐

2008-01-11 11:08:11 | 健康
学研トイズは「当初は日本の学校教科書同様の表記をするつもりだったが、工場が中国にあり、中国政府から表記を変更しないと日本への輸出を認めないと迫られた。すでに注文が殺到していたので、仕方なく中国政府の指示に従った」と説明している。同社は応急措置としてメモを添付。「生産国の中華人民共和国政府の指示により、地球儀表面の『台湾』の表記が『台湾島』音声が『中華人民共和国』となっております」などと記している。

■地球儀は結構かさばる物で、見栄えの宜しい立派な物になるとインテリアとしては気が利いていても、日本の家屋の場合は置き場所に困るものです。邪魔にならないサイズだとひどく貧乏ったらしくなってしまいますし……。球面を強引に平面化した地図では分からない距離感覚を知るには地球儀は貴重な資料なのですから、もしも外注するのなら地図のソフト面を除いた形だけを作って文字情報や音声は日本国内で付け加えるぐらいの戦略は必要でしょうなあ。今年は北京五輪が開催されるそうですから、北京市に入る日本人も増えると北京政府は大いに期待しています。チャイナ土産のお薦めは「歴史地図」です。北京政府が公認しなければ出版不可能な物ですから、古代から現代まで「中華思想」で解釈された歴史像が君が悪いほど良く分かる逸品!です。最近はグラビア印刷技術も広まっているので、日本の書籍と変わらない高価な物も出回っているようですが、学生向きに編集された廉価版で充分に楽しめます。


東アジア情勢に詳しい伊原吉之助・帝塚山大名誉教授は「世界地図の表記はその国の利益に直結しており、他国の主張にやすやすと屈服し、自国で販売するというのは主権侵害への加担で、一企業の商行為でも不誠実のそしりは免れない。それが学習教材大手というからなおさらだ」と指摘している。
1月10日 産経新聞

■相手に「正しい歴史認識」と言われたら反射的に頭を下げる政府を見ていれば、地図の重要性をコロリと忘れる国民が増えても仕方が無いのかも知れません。でも、学校で使う教材まで杜撰な作り方をするようになっては、これは国家衰亡の始まりだと思った方が良いでしょうなあ。「生産地チャイナ」にはこうした毒性も入り込んでいる事を再認識しておきましょう。


静岡市清水区の食品会社「はごろもフーズ」は10日、顧客から「異臭がする」などの問い合わせがあった中国産塩漬けマッシュルームを原料とした自社製品の自主回収を始めた。成分検査の結果、健康被害はないとみられる。対象製品は「ホームクッキング マッシュルーム スライス」50グラム透明パウチ入りで、賞味期限が2008年8月19日~10月9日と同年11月27日~12月17日▽同名製品の130グラム缶で賞味期限が2010年12月2日~12月6日▽「ホームクッキング マッシュルーム ランダムスライス」85グラム缶、賞味期限2010年12月5日の3種類。出荷数は計37万7520個で、全国出荷されているという。
1月10日 産経新聞

■日常生活でも災害時にも便利で心強い食材を提供してくれる缶詰は、有事の際にも貴重な補給物資であります。各自治体でも大災害に備えていろいろな缶詰が備蓄されているのですから、「開けてビックリ玉手箱」のような悲喜劇が起こらないように注意していなければなりません。これも氷山の一角なのでしょうが、農産物として入って来る物と「加工食品」で入って来る物との扱いがまったく違うという検疫制度を見直さないままグローバル時代に突入してしまったのは政策の失敗です。しかし、もしも、問題のマッシュルームを調理中の鍋に投入して夕食のメインディッシュを台無しにしてしまったのは、個人の責任という事になります。

■週刊誌などが時々、メイド・イン・チャイナの食品事情を特集しますが、情報をコンパクトにまとめた物は無いかと書店に入って見つけたのが以下の本でした。週刊誌ならば「驚愕の事実!」と銘打って掲載するような話がずらずらと並んでおりまして、ちょっと書き過ぎかも?と思える箇所もありましたが、昨年度に大騒ぎになった偽装問題の裏側にはもっと深い闇が広がっている事を思い知らされます。既に完璧な防衛体制を作るのは不可能な状態にまで日本の食糧事情は追い詰められているのは残念ですが、まったく知らないよりも少しでも事実を知っておく方が身のためだと思います。

食品のカラクリ8 知らずに食べるな!「中国産」 (別冊宝島 1484)

宝島社

このアイテムの詳細を見る


最も身近な国防問題 その壱

2008-01-11 11:07:33 | 健康
■予想を上回る暖冬が原因なのか、今年の冬にはインフルエンザが大流行するとの予測が外れているようです。マスコミの大騒ぎしてくれたのでワクチン接種が増えた事も要因かも?それでも油断は大敵で、1月後半から2月にかけてはどうなるものやら分かったものではありません。ウィルスは天から降って来る物ではないので、手洗い・うがいは欠かさないようにするべきでしょう。新しい説としては「鼻呼吸」という予防法があるそうですなあ。ウィルスのほとんどは口の呼吸で体内に入るとか……。それから手洗いに洗顔も加えるべきだ、という説もあるようです。

■個人の体内にウィルスが侵入するのを阻止するのが最善の防疫なのですが、ここに出て来るのが米国産のグローバル・ボーダーレス経済が起こした人・物・カネの大流動化現象というわけで、人体の「皮膚」に当たるのが「国境線」で、島国の日本にとっては空港と港湾が「口と皮膚」に当たるでしょう。ウィルスは宿主の人間が居なければ生き延びられませんから、海外に行って戻る日本人と外から入ってくる外国人が運び役になりまって日本という身体に潜入するウィルスに当たります。


中国江蘇省南京市で昨年、男性が鳥インフルエンザで死亡、その父親も感染した問題で、中国衛生省は10日、父親は息子との「密接な接触」によって感染したと発表した。中国で人から人への鳥インフルエンザ感染が確認されたのは初めて。ただ、ウイルスの変異は起きておらず、大規模な流行をもたらす感染ではないとしている。
1月10日 時事通信

■既に欧州のオランダやアジアではベトナムとインドネシアで「人から人感染」は確認されていますから、世界初!というわけではありません。でも、じわじわと日本に接近しているような印象は否めませんなあ。国と国が仲良くなるのは結構な話ですが、近しくなれば好い物も困った物も行ったり来たりするもので、一種のフィルターやら白血球みたいな防衛装置が必要になって来ます。不法滞在者を摘発している警察は、一種の免疫システムみたいなものでしょう。個々の人体も国家も、性能のよい免疫システムを持っていれば、悪性のウィルスに侵入されても対処は出来るというものです。

■目に見えないほど小さいウィルスや黴菌も要注意ですが、人間の目に見えるどころか見上げるような巨大なモンスターとなると、これはSF映画の世界になります。でも、国と国との関係となりますと、ゴジラやキングギドラよりも遥かに巨大な怪獣となって互いに呑み込み合って来たのが人類の「歴史」というものです。歴史の勉強は一生もので、学校時代に学び切れなかった事を補ったり、忘れてしまった事を調べ直してみるのに、良質の歴史小説は恰好の教材になってくれますなあ。それに加えて新聞などが伝えてくれる「新発見」にも目を配っておかねばなりません。

■歴史を学ぶのに欠かせないのが年表と歴史地図で、さまざまに工夫されて毎年のように新しい物が登場するのは有り難いことです。案外、学生時代に使った資料を大切に使い続けている人も多いかも知れませんが、どんどんややこしくなる国際情勢を理解するにも歴史年表・歴史地図は必要です。そして、ソ連邦の崩壊のような巨大な変化が起こった時だけでなく、規模は小さくても独立や分裂が起こるたびに作り直さねばならないのが「地図」であります。こればかりは学生時代に使った地図を後生大事に使っていると大恥をかく原因にもなりますからなあ。


学習教材大手「学研」(東京都大田区)グループが国内向けに販売する音声ガイド付きの地球儀が、中国政府から圧力を受けて、台湾を単なる「台湾島」と表記していることが9日、わかった。同社は「中国の工場で生産しているため、中国政府の指示に従わざるを得なかった」と釈明しているが、識者からは「国益を損ないかねない」と憂慮の声が上がっている。

■何でもかんでも海外で作れば良いというものではありません。日本が世界に誇るアニメ作品も面倒なセル画描きなどの作業は外国に任せているとは聞いていましたが、まさか、こんな物まで「歴史問題」を政治に利用する国で作っているとは!学校で使う教科書や地図の印刷までコスト削減を名目に外国に注文などしたらどうなるのでしょう?


この地球儀は、学研の関連会社「学研トイズ」(東京)が昨秋発売した「スマートグローブ」。各国の地理や文化などの情報を音声で案内するシステムが組み込まれ、情報はネットで更新される。希望小売価格は2万8000円で、初回製造の1万個は完売という。問題の表記は台湾(中華民国)について、「台湾島」と記載。また、日本の北方では、樺太の南半分や北方領土以北の千島列島をロシア領として色分けしている。これらはサンフランシスコ講和条約(1951年)で日本が領有権を放棄した後、帰属先が未定となっているため、日本の地理の教科書では、日露のいずれにも属さない白表記になっている。台湾島という呼び名や千島などのロシア領表示は、いずれも中国発行の地図で一般的に使われる表記。

■ここで大騒ぎを起こしておかないと、気が付いたら「沖縄の色が変わっているぞ!」などという事になり兼ねませんぞ!ついでにグアム島も……。

ペット・フードの問題か? 其の弐

2007-03-25 15:24:35 | 健康
同社は先週末に北米で、缶詰など6000万個以上を対象にした回収・無償交換を開始した。同社製ペットフードを食べた猫や犬が腎不全を起こし、少なくとも16匹の死亡が確認された。同社はペットフードの有力メーカーで、全米のスーパーで商品が販売されている。さらに、競合各社のペットフードも手広く受託製造している実態が判明し、愛犬家や愛猫家に「どのペットフードを買ったらいいか分からない」とパニックが広がった。同社に対する訴訟も起こされた。
3月24日 時事通信

■「たった16匹」なのか、「16匹も!」なのかは、個人的な感情によって違うでしょうが、犬猫が食べる量と人間ががつがつ食べる小麦の量を考えると、やはり、油断のならない数値と思われます。日本に輸入される小麦は米国・カナダ・オーストリアからのものがほとんどで、今のところはメイド・イン・チャイナは入って来ていない模様ですが、冷凍食品などの形で輸入されている可能性は有りますなあ。いつの間にやら穀物の大輸入国になってしまったチャイナですが、農村部の現金収入を伸ばすには積極的に高品質な商品を作って輸出しなければならぬ!と、日本からの技術援助も有って、野菜だけでなく小麦の輸出にも力を入れているようです。


中国で暖冬が続いている。北京市では5日、2月としては1840年以来最高の摂氏16度を記録。その他、4日から7日にかけて、上海市では最高気温が21度、浙江省杭州市で24度、湖南省長沙市で23度に達した。2006年12月~07年1月の平均気温は過去30年の平均より0.5度高くなっているが、この暖冬が冬小麦の収穫量に悪影響を与えるとの見方が出ている。……冬の気温が高いと小麦が必要以上に伸び、春以降の成長力が逆に低下。その結果、収穫量が落ち込んでしまう。そのため、一帯の農民は小麦の根元に「凍水」と呼ばれる水をかけ、生育を抑え込んでいる。また冬期に高い気温が続くと地面からの水分蒸発量が増え、春播き作物の発芽率が低下する。暖冬のため害虫の越冬率が大幅に増加しており、専門家は春以降に大発生する可能性を指摘している。また、作物の耐寒性が落ちているため、3~4月の「寒の戻し」で大打撃を受ける可能性も出ている
2007年2月7日 中国情報局

■病害虫に加えて旱魃や長雨、そして気温の変化、農業が直面する難題はたくさん有ります。農学者達の研究と化学製品や温室などの技術によって生産量と品質が安定するようになったと言うものの、天候に左右される農業の本質は変わらないようです。自然の力に逆らわずに順応すると同時に、時には人為的な対応策を採らねばならない農業は、安全性と収量と経済性とのバランスを取るのが難しい局面が常に出て来ます。その代表が農薬汚染の問題でしょうなあ。


国家発展・改革委員会(発改委)と中国生物工程学会によると、2010年までに中国での甘味剤、ソルビン酸、乳化剤などの食品添加物の需要が480万トンになる見通しとなった。仕出し業者などが急増するとみられるため。現在、中国で食品添加物を製造している業者は1500社で、年間生産量は325万トン、生産額は35億元に上る。26日付で新華社が伝えた。
2007年2月26日 中国情報局

■チャイナの経済成長と言えば、北京や上海の高層ビル群や証券取引所の賑わいなどを思い浮かびますが、劇的に変わりつつある食生活を支える国内農業と食料生産業が、各種の便利な薬品を利用するようになるのは当然の流れです。但し、使用方法をきちんと守るかどうかは別の問題ですが……。


北京市政府食品安全弁公室の張志寛主任は2月28日に行った会議の席上、北京市が2007年、食品添加物の生産と使用製品に関する検査を厳格化すると述べたことが5日までに明らかになった。すべての食品添加物生産企業に認可の取得を義務付け、使用企業に対しては添加物の種類と使用量などに関する検査を行う。また07年前半までに農作物の配送管理制度を確立し、農薬・畜薬の管理も強化していく。
2007年3月5日 中国情報局

■「それでは今までは野放しだったのか?」と強く問い詰めたくなるような記事ですが、農薬や添加剤をふんだんに使える資金力が最近まで無かったのですから、規制や検査も必要なかったというのが実情でしょうなあ。遊牧文化を持っている地域を除くと、贅沢品だった肉製品が、普通の食材になって行く時代ですから、飼料作物の消費量は凄まじい勢いで増加し輸入農作物のほとんどが家畜の餌だとも言われています。バイオエネルギーの原料としても注目されているトウモロコシの生産も盛んですが、収量の多い新種を栽培すると猛烈に地力を奪うとも言われていますから、肉だ!エネルギーだ!と熱心に栽培し続けると、気が付いたら広大な畑が砂漠になっていた、などという恐ろしい事が起こるのではないか?と心配する声も有るようです。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------
チベット語になった『坊っちゃん』書評や関連記事