旅限無(りょげむ)

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ムンバイのテロ事件 其の壱

2008-11-30 15:19:52 | 外交・情勢(アジア)
■とうとう起こってしまったインドでの大規模同時多発テロ事件。米国に誕生したオバマ新大統領の政治思想を辿って行くとガンジーの言行に行き着くのだそうですが、それが本当かどうかは就任式での演説と実際の政治手法を見るまでは真偽のほどは分かりません。しかし、米国民が大いなる疑問と嫌悪感にさいなまれている「ブッシュの戦争」を終わらせるために、期限を切ってイラクからの撤退を公約する一方で、アフガニスタンこそが「主戦場だ!」と新たな戦争を公言したのもオバマ新大統領で、それが今回起こったテロの原因だという説もあるようです。
 
■間も無く荷物をまとめてホワイトハウスを去るブッシュ現大統領も、自分で撒いた種だからと何やら急いで刈り取り作業をしている様子。一説にはイラクで効果があったからと、せっかく武装解除したアフガニスタンの元軍閥に武器を渡して治安維持に役立てようと考えているとか……。米国が手を出して去った後には武器の山が残るそうですから、それが巡り巡って何処かで起こるテロ事件に使われたりするのでしょうなあ。大規模な景気対策を打ち出さねばならない米国政府ではありますが、間違っても軍需産業に梃入れして「通常兵器の拡散」などを起こさないように祈るばかりであります。

■さてさて、オバマ新大統領に対する宣戦布告とも言えそうな、インドのムンバイで起こったテロ事件の話です。


インド軍特殊部隊は29日、武装グループが立てこもり最後まで抵抗を続けたタージマハル・ホテルを制圧。地元メディアが「インドの9・11(米国同時多発テロ)」と呼ぶイスラム武装グループによるとみられるムンバイの同時多発テロ事件は、ひとまず幕を閉じた。だがタージホテル内には人質とみられる多数の遺体が散乱。地元住民は「テロリストがまた襲ってくるのではないか」と不安を募らせる。綿密に準備を重ねたうえで、重武装で突入し人質を取るという、インドのテロでは過去に例のない凶行は、同国最大の商都ムンバイに深い傷跡を残した。

■自爆を含む爆弾テロも恐ろしいものですが、人が人に銃口を向けて機関銃を乱射したり手榴弾を投げつける地獄絵図の方が市民社会を破壊する効果は抜群であります。日常生活の場が戦場になるのですから、自分の生活圏を見回してみれば便利で快適な場所は何処も襲われたら危険な場所ばかりです。


……特殊部隊は突入した部屋で30人の遺体を発見した。武装グループは、遺体の口の中に手投げ弾を押し込み、動かすと爆発するなどの罠を仕掛けており、遺体搬出に手間取っている。グループはホテル内に計230発の手投げ弾を持ち込み、うち80発程度が不発のまま残った。部隊はこの処理にも追われている。

■朝鮮戦争でもヴェトナム戦争でも遺体を利用したトラップ爆弾が多用されたそうですが、21世紀の世界でも同じ事が起こるとは!相当な訓練を受けた若者たちが送り込まれて来たのでしょうなあ。


29日未明から始まった最後の掃討作戦で、部隊は一部屋ずつ安全を確認しながら武装グループに接近。だが自動小銃AK47と手投げ弾、拳銃で武装したグループの抵抗は予想以上に激しかった。午前7時過ぎ、部隊が最後の突入を図った。ホテルは下層階が猛烈な炎に包まれ、爆発音や銃声が鳴り響く。だが30分ほどでそれも収まり、武装グループ全員の殺害、ホテルの完全制圧が宣言された。

■アフガニスタンとパキスタンの国境地帯ではロシア製突撃銃AK47を自在に扱える優秀な武器職人がたくさん居るとも言われていますし、丈夫で故障が少なく長持ちの上に手入れが簡単な構造を持つ銃ですから、多くの国がコピー製品を造っているようです。日本でもオウム真理教が山梨県内の加工業者の工場を買い取って、この銃を大量生産しようとしましたから、他人事ではありません。


……事件の解決を知り、ホテル前の広場には多くの市民が集まり始めた。中には、待機する特殊部隊の隊員に、バラの花束を渡したり、「ヒーローだ」と握手を求める市民の姿も見られた。近くに住むアッバスさん(50)は「住民はテロリストがまた、襲撃するのではないか恐れている。街ではそういううわさが広がっている」と話した。
11月29日 毎日新聞

■人質事件と言っても、相手がテロ集団ならば強襲して殲滅する以外に解決策はないとインド政府は決めていたようですなあ。あまりにも具体的な仮想敵国を持っている国ですから、テロリストの要求を聞いて交渉するなどという悠長な事は最初から選択肢の中に無いようです。インドでこの種の事件に巻き込まれたら自力で逃げ出すしか方法がないようです。まあ、似たような事をする国は他にも有るのですが……。

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