旅限無(りょげむ)

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パンドラの箱の蓋 其の九

2010-05-31 07:38:32 | 政治
「……(石原知事が、鳩山首相に)『もう1回、政府としてアメリカ政府に、尖閣でホット・フラッシュが起こったときに安保発動して守るんですか? そのために沖縄の基地もあるんでしょうって言ったらどうですか?』と言いましたら、驚くこと言ったね、総理は。諸君、聞いたろ? どこが問題だと思った?」

 --「これから中国と領土問題について話し合う」と…

「そうだ! まさにそう言ったんだよ! こんなたわけたことをいう総理大臣が世の中にいますか? もともと正式に(アメリカから)返還されて、日本人が住み着いて。あそこにはかつて人も住んでて、カツオの工場まであった。いま非常に不便になったから誰もいない。それを中国は海底資源ということで、かこつけて領土を主張してきた。その問題に触れたら、(鳩山首相が)『抑止力の問題とは別に、尖閣の主権についてはこれから日中で協議します』と。私はこういう総理大臣、認められないね!」

■「こういう総理大臣」を認められないのは石原都知事だけではないようで、週明けには民主党内外から一斉に「辞めろ」コールが吹き上がりそうな気配であります。「ながながと訳の分からない」謝罪の皮を被った続投宣言の会見をした後、いそいそと愛妻とオテテつないで韓国を訪問している鳩山サセテイタダク首相ですが、どんな覚悟で帰国するのでしょうなあ?


「(この発言は)自分の国土を売るんだよ。中国の言いなりになって。協議するということは、一歩も二歩も譲歩したということじゃないですか? どういうことなんだ、これ?……日本の領土なんだぞ。われわれの先祖が手をかけて育て、整備もし水路も作った。その島が拡張主義の中国からチベット、モンゴルと同じように、『あそこもおれのもんだ』と言ってきて。結局、スプラトリーというフィリピンの間近なほんとに難しい位置にある(諸島)を中国がどうしました? アメリカがマニラの基地を取っ払った後、たちまちやってきて実質的に占拠してものを作ったじゃないか。……肝心の日本の一番、目と鼻の先にある尖閣諸島に対して、(安保を発動しないと)前の大使が言った。「それについて『確かめるのか?』って言ったら、(鳩山首相は)『尖閣諸島の所属、主権はこれから日中で協議する』って、こんなばかなことをいう総理大臣どこにあるか! ほんとに! 怒るのは当たり前でしょう。怒らない国民の方がどうかしてるね」……
2010年5月30日 産経新聞

■あのどんよりと気味悪く見開いたままの目玉で、バカ丁寧な言葉を乱用しながらペコペコ頭を下げるばかりの首相を見ていると、怒る気分も何処かに失せてしまうのは、これも政治家としての才能の一つなのでしょうか?正体がつかめなかったからこそ、先の総選挙で民主党が大勝出来たのかも知れませんが、次の選挙では直裁な怒りは表面化しなくても、呆れて失望した元支持者達の票は音も無く、津波の前の海岸のようにスーッと引いて、その後には貝殻やヒトデに混じって民主党が擁立したタレント・有名人の候補者の無残な姿が……。

■日米同盟を深化させると言いながら、憲法問題も軍事・外交戦略も手を着けず、党としても政府としても安全保障政策を国民に提示する努力もしないで、普天間基地移設問題と言う重要ながらも小さなピースに8箇月も拘泥した揚句、そのピースを抜き取ったら日米間で合意した在日米軍再編計画のパッケージ全体が崩壊することを土壇場になって「学び」、北朝鮮が放った一発の長魚雷で「抑止力」に思い至った鳩山サセテイタダク首相は、強引に引き抜いて「国外だ!最低でも県外だ!」と社民党と一緒になってはしゃいだものの、普天間基地問題のピースをしれっと辺野古に嵌め込み直し、ほんの1箇月前までは一緒に盛り上がっていた社民党や沖縄県民を見捨ててしまいました。心優しく育ちのよい首相はちょっと悪戯して抜き取ってみせたピースを元に戻したのだから、あとはペコペコ頭を下げてみせれば万事が丸く収まると考えているのかも知れませんが、元に戻さねばならないのは自分が押し開けてしまったパンドラの箱の蓋の方でしょう。

パンドラの箱の蓋 其の八

2010-05-31 07:38:01 | 政治
……「私は普天間の問題を大騒ぎしてるが、昨日、鳩山君がだらだらした長ったらしい訳の分からんあいさつの中で『北朝鮮、北朝鮮』と。幸か不幸か知らんが、北朝鮮にいま緊張が生まれてね。(韓国の)哨戒鑑を北朝鮮が小型潜水艦で撃沈した。……緊張が高まっているときに(鳩山首相が)『北朝鮮に対する抑止力が、沖縄に大変に必要でございます』って。そんなことの前に、肝心の日本の領土、沖縄県下の目と鼻の先、石垣島のわずか先にある尖閣諸島を、モンデールが言ったようにアメリカが同じ民主党の政権になり、かつてと同じように守る意志がないというのならば、普天間の問題を議論したってしようがないじゃないか! 何のためにアメリカ軍は日本に駐在してるんですか?」

■鳩山サセテイタダク首相の「友愛の海」発言などは、あまりに馬鹿馬鹿しくてコメントするに値しないと思っている石原都知事は、何を仕出かすか分からない北朝鮮よりも、何をしようとしているのか明白なチャイナの動きが気になって仕方がありません。鳩山首相とは正反対の方向を見ていることになります。もしも本気で東シナ海を「友愛の海」にする意志と覚悟と能力がある首相ならば、黄海の緊張を解く動きを見せているはずですから、あれもやっぱり個人的に「言ってみただけ」なのでしょうなあ。


「……アメリカは沖縄を返還しましたが、占領中に尖閣諸島を爆撃(訓練)のターゲットにして、爆弾を落として射撃していた。その間、あれ(尖閣諸島)は日本の領土だから持ち主である女性がいて、沖縄の人と結婚して那覇に住んでた。その人にずっと慰謝料というか、使用料を払っていた。私たちは、尖閣は非常に微妙な問題になってきたから、青嵐会としてあの島を買おうじゃないかということで、あそこに小さな灯台を建てた。その後、青年社という右翼が金持ちで、後を次いで立派な灯台を建ててくれた。灯台としても立派だけど、足りないところもあって、私がいた運輸省の水路部に行って調べさせて『足りない所があったら完璧な灯台にさせますから。その後に(海図に)記載し下さい』と言って直した。ところが、自民党政権下の外務省は腰抜けでね。中国が尖閣問題でぐちゃぐちゃ言ってるもんだから、日本の領土に、日本人が立派な灯台を建ててもね『灯台としてチャートに記載するのを時期尚早』と。何が時期尚早だ! ずっとほったらかしにしていたんですよ」
2010年5月29日 産経新聞

■自民党政権下でなくても、日本の外務省は憲法9条遵守という便利な言い訳で、外交に欠かせない後詰の軍事力を放棄している国の役所としては、相手が怒ることや嫌がることはやらないと勝手に決め込んでいるらしく、世界中でも珍しい何とも気楽な仕事をしているのでありましょう。数年前、福田ホイホイ元総理などは外務省直伝の「相手の嫌がることはやらない」外交政策を公式に宣言していましたなあ。似合わない野球のユニフォームを着てチャイナの首脳とキャッチボールを楽しそうにやっておりましたっけ。


「……やっと、この2、3年前に尖閣の灯台が正式にチャートに記載された。この話の連脈で、モンデールの事例もあるし、同じ(民主党)政権がアメリカが支配している。この時期に普天間(基地)が戻ってきて、しかも尖閣を最近、中国が『あれは本当はおれたちのものだ』と領有権を正式に主張したんでしょう? そして日本の海上保安庁の船を、向こうの船が『お前たち領海から出ていけ。侵犯だ』と。どういう訳か知らんが、相手も軍艦じゃなかったが『そうですか』ということで(自らの)領海を離れたんです。変な国だね」

■「集団的自衛権」がどうのこうのという議論も決着がつかずに続いているのですが、「自衛権」だけでも日本政府として正常な統一見解を出して欲しいものです。罷免された福島党首は「憲法9条が最大の抑止力だ」と言っているそうですから、閣僚を辞めさせる前に尖閣問題の特命大使に任命して「憲法9条」を使って解決する神業を見せて欲しかったのですが、政権から去ってしまって残念であります。

パンドラの箱の蓋 其の七

2010-05-31 07:37:46 | 政治
■石原都知事の定例会見の話の続きです。予想通りに何の実りも進展も無い首相の「独り言」を聞かされただけの全国知事会の後の会見です。
……政府が沖縄の負担軽減策の柱とした訓練の全国分散移転をめぐって27日に開かれた全国知事会議について、鳩山由紀夫首相が「(尖閣諸島の)帰属問題は、日中当事者同士で議論して結論を出す」と発言したことに「こんなたわけたことをいう総理が世の中にいるのか!?」と怒りをあらわにした。……

■「鼬の最後っ屁」という訳でもないのでしょうが、大臣を罷免された福島党首は直後の会見で「言葉を大切にする政治」という精いっぱいの皮肉を込めて鳩山サセテイタダク首相にとっては致命的な弱点を衝いた発言をしました。しかし、首相の最大の強みは軽々に謝罪するくせに絶対に反省しない頑迷さにありますから、福島党首の最後の一刺しにも何の痛痒も感じていないのでしょうなあ。あの不気味なほどの自信は何処から来るのやら……。歴代総理の中で最も「言葉」を軽んじているとの評価が固まっているのに、人類が大昔から血で血を洗う戦いを重ねて来た境界(国境)争いを話し合いの「言葉」で解決しようと言うのですから、確かに地球上の生物ではないのかも知れません。もしかすると基本的な歴史に関しても「まったく知らなかった」のではないでしょうな!?

■作家でもある石原都知事が激怒するのも当然と言えば当然でありましょう。


「……私が昨日、基本的な質問をしたけど……『抑止力、抑止力』というけど、ほんとに抑止力はあるんですかね? これは機能だけの問題だけじゃなしに、これを保有している軍事力を持ってる当事者の意志の問題がある。」

■石原都知事が問題にしているのは米国の「意志」なのですが、日本側の「意志」も重要でしょう。鳩山サセテイタダク首相には溢れるばかりの「思い」があるそうですが、それがコロコロと変わってしまうから困ります。就任以来、これまでの言動から何がしかの「意志」を感じた国民は皆無だったのではないでしょうか?「だったらいいなあ」とぼんやりと思ったことを「個人的意見」として思い付きで喋ってしまう病的な体質を持っているとしか思えません。本気でロシアとの交渉事などに手を着けないうちに、さっさと退陣して頂かないと大変なことになりましょうぞ。


「14、15年前ね、クリントンが2度目の選挙終わったばかり、橋本(龍太郎)君の内閣が総選挙終わったばかりの時に、(ウォルター・)モンデールという大統領の候補にもなった大物駐日大使がとんでもないこと言ったんです。……その時は、尖閣諸島に香港の活動家と称する中国人…これ、明らかに軍人です。DIA(米国国防情報局)の情報で間違いない。それが尖閣諸島に上陸して旗を立て、『ここは日本の領土じゃない。われわれの領土だ』と言ってわめいた。……同時に沖縄本島では、黒人の海兵隊員3人が小学校5年生の女の子を輪姦して。その後、この家はどうなりましたか? 彼女の一生はむちゃくちゃになったでしょう。あまりに無残な事件なんで、みんな本当に怒った。同時に尖閣ではそういうホット・フラッシュが起こった。……そのモンデールという大使に、『もしこれ以上、尖閣での摩擦が激しくなったときには日米安保は発動するんですか?』と言ったら、モンデールは言下に『ノー』といったんですよ。……その後、私がモンデールの言動にかみついて。『尖閣に火が着いたときに守らない安保だったらいらないじゃない。一体何のために米軍は日本に基地を構えているんだ』と非難したら、当時、野党だった共和党議員やそのスタッフ、学者たちが『石原のいうとおりじゃないか。こんなばかな発言をした大使がまかり通るなら、日米安保は大変なことになるぞ』といって、カルダーが来て、1週間後にモンデールは更迭されましたな」

■この時の「モンデール発言」には本当に腹が立ったらしく、石原都知事は何度も繰り返して記憶を呼び戻しております。日米安保の条文には無条件で米軍が日本本土を守るとは書かれておらず、議会の承認と大統領の決断があって初めて軍事力を行使することになっている点を、先日亡くなった大森実氏はずっと危惧していたはずです。条文で定められている手続きを飛び越えて大使が「発動しない」などと断言するのは分際を越えておこがましい限りでありますが、当時の米国民主党政権内では既定の事だったとしたらもっと恐ろしい話であります。

喧嘩の相手が違うかも?

2010-05-31 07:34:16 | 社会問題・事件
■日本農政の一大事であり、地域経済が崩壊するかどうかの瀬戸際とも言える宮崎県の口蹄疫問題が、「不毛な犯人探しよりも云々」という本当に責任を負うべき人物がほくそ笑むような理屈があちこちのマスコミから垂れ流されているようでしたが、紙面に限りのある新聞や窮屈な放送時間枠の中でオチを付けねばならないテレビなどは、どうしてもこの種の他人事・綺麗ごとで締め括りたくもなるのでしょうが、下手をすると高みの見物になる危険性もあります。

■実際に首相は普天間の基地問題で元の木阿弥・謝罪・続投会見に全精力を注ぎ込み、長期外遊が責められた赤松農水相はずっと「反省すべきことはない」と強気の姿勢を続けている間に口蹄疫は猛烈な勢いで広がって行ったのですから、次の政権交代の後のためにも、しっかり失敗の本質を明らかにしておくべきでしょうなあ。


肉用牛の生産者でつくる「全国肉牛事業協同組合」(東京)は29日、口蹄疫問題での宮崎県の対応について、「生産者に対する裏切りで、疫学上あり得ない言語道断の行為だ」などとする抗議文を発表した。種牛49頭を殺処分しなかった上、うち2頭が口蹄疫に似た症状が出たのに国に報告してなかったことを問題視している。さらに、特別措置として隔離している5頭の優良種牛の処分も要求した。
山氏徹理事長は同日記者会見し、「県は大事な種牛だから残したいというが、(普通の)農家の牛はそうではないのか」と指摘。「(感染の可能性のある)種牛を残すことで、他県の生産者が心配で(子牛の)購入に行けない」と強調した。 
5月29日 時事通信

■日本の各地で「宮崎を救え!」と消費者たちの草の根運動が静かに広がり、著名人たちが義捐金を出すという美談も聞かれている時に、現在の被害者と将来の被害者になるかも知れない同業者の間で、「裏切り」「言語道断」などの厳しい言葉が投げられるというのは実に悲しい話であります。確かに、情に負けて心血を注いだ種牛を殺処分しなかったことも、症状を正確に報告しなかったことも「疫学上あり得ない行為」でありましょう。しかし、肝腎の政府が「疫学上あり得ない」対応をし続けたこと、そして現地の知事にも同様の嫌疑が掛けられていることを重視すべきではないでしょうか?

■政府の対応に問題があったのは間違いなのですが、5月20日の朝、TBSが放送した『みのもんたの朝ズバッ!』という番組で、赤松農水相の「外遊中ゴルフ疑惑」を報道して誤報騒ぎを起こしてしまいました。番組の司会者は例の調子で商売用の義憤を視聴者の「みなさん」に代わって爆発させたのかも知れませんが、昼のニュースで訂正し午後には報道局長と政治部部長が揃って赤松大臣に謝罪に行って、みのもんたさんの何倍もの怒りが返って来たとか……。

■しかし、この話は「またもやったかTBS」と笑っていられない裏があると『週刊新潮』6月3日号は伝えております。赤松大臣がカストロ詣で?から帰国した2週間余りが過ぎた5月17日頃から、実際に永田町で「外遊中にゴルフ、その晩は豪遊して写真もある」との噂が流れ始めていたそうで、国会の場でも自民党の阿部俊子議員が「与党執行部から出て来た情報」と発言しているくらいですから、TBSが事実確認せずに他局を出し抜いて「速報」したのも一概には責められないと同情する向きもあるとか……。

■赤松ゴルフ疑惑の火元は山岡賢次国体委員長だったと『週刊新潮』は書いています。その記事によりますと、元々、農水族議員だった山岡さんは政権交代後の新政権で公然と「農水大臣」のポストが欲しいと周囲に語っていたのに、今回、最悪の形で証明されたように農水行政の「ど素人」でしかない赤松広隆さんに大臣ポストを奪われて面子を潰され、口蹄疫の大問題で怨念が頭をもたげて「それ見たことか!」と悪意の噂を流したのではないか?と考えている人が党内にいるのだそうです。少なくともTBSテレビが鵜呑みにしたくなるくらいの情報元だったのでしょうから、きっと根も葉もない話だったわけでもなさそうです。まあ、政党支持率がぐんぐん下がるのも当たり前ですなあ。

パンドラの箱の蓋 其の伍

2010-05-30 15:52:49 | 政治
「今ね、このアジア、東アジアにおいて、日本とアメリカが共同して守らなければいけない仮想敵国というか、危険というものの存在がどこかといえば、それはやっぱり北朝鮮と中国でしょう。そう想定して考えるときに、基地というのは相手の基地の近くにあればあるほど有利なわけだし。間近すぎれば不利なこともありますけどね。それでこれがどれほど日本以外の国に頼りにされているか、韓国もそうだし台湾もそうだし、東南アジアの国々もそれに期待している」

■「間近すぎれば不利」というのは冷戦時代の三沢基地にも適応できるセオリーで、東アジアの地図を眺めてみれば沖縄本島の位置と姿は絶妙なものに思えて来ます。しかし、沖縄を地理的に守るのは海と距離だけですから、裸で浮かんでいるのは危険過ぎましょう。戦後の日本は軽武装・経済重視で突き進み、米国からは「安保タダ乗り論」まで突きつけられるほどの大勝利を収めたくらいですから、「はいご苦労さまでした」と言って日本が米国が去った後の軍事的空白を作らないだけの戦力を国益と日米同盟とを(当面は)両立させる形で埋められる体制を作れれば話は簡単だったのですが……。


「そういう中で、かつて私の親友の奥さんがフィリピンの大統領になってだね、しきりにフィリピンにある米軍の基地に『出ていけ、出ていけ』というから、『ナショナリズムは結構だけれどもね、あなたね、あんまり言い過ぎとアメリカはパッと出ていっちゃうよ』と」

■これはベニグノ・アキノ氏の話で、当時は大作映画『ガンジー』を亡命先の米国で観たアキノ氏が敢然と悟るところがあって、マルコス独裁王朝に挑戦する使命感に燃えて帰国を強行して空港の地面に降り立った瞬間に射殺されてしまった悲劇を語っているのであります。日本国憲法の雛形は米国がフィリピンに押し付けた憲法だったという説やら、GHQの親玉として戦後日本に君臨したマッカーサーが被っていた帽子はフィリピンの王者の印だったとか、フィリピンは日本の戦後を考える時に何かと鏡とすべき点の多い国のようであります。


「それで『実はアメリカはフィリピン(の基地を)全然評価してないんだよ』と。『ほれ、見なさい』といって、私、手にしていたアメリカの極東における軍事基地の評価分析を渡してあげました。……気の毒な話だけど、『クラークフィールド、スービックの海軍基地というものの存在価値はほとんどない。特に日本における基地に比べれば全く見劣りし、ほとんど価値がない。唯一の価値は決定的に安い買春』だって」

■最後の衝撃的な一節は、一部の日本男児にとってはドキッとする話かも知れませんなあ。「東アジアのバチカン」と呼ばれるほど多くのカトリック教徒がいて、スペイン帝国が統治した時代からの伝統で戦前の日本も驚くほど少数の大地主が半独立状態で分割統治を続ける超格差社会が今でも続いているのがフィリピンで、華僑・華人が流入し続けた長い歴史もあって、ヴェトナム戦争で手痛い敗北を喫した米国にしてみれば、確かにぐっと北に上がった所に位置する沖縄に比べると利用価値はどんどん減退していたのでしょうなあ。


「これで(奥さんが)怒っちゃった。けしからんといって『出ていけ、出ていけ』といったら出ていっちゃったね、アメリカは。その後、あの基地の経済というのは疲弊して、基地がもたらした経済というのは全くなくなって。それで企業誘致の特許区も作りましたが、あんまりはやってませんな。何が怖かったかというと、その後、フィリピンがちょうど日本の尖閣諸島と同じようにギリギリの境界線で持っているスプラトリー諸島は、完全に中国に盗られたんですよ。で、何をやったかというと、『これはもともと中国の領土だ』と言いだした」

■「奥さん」というのはコラソン・アキノ元大統領のことで、マラカニアン宮殿からマルコス大統領一家が逃亡するドラマを演出した主人公となったのでしたが、何と悪名高かったはずのマルコス夫人のイメルダさんは次の選挙に出馬する準備を着々と進めているとか……。スプラトリー(南沙)諸島にチャイナが触手を伸ばすことを米国が鳩山総理みたいに「まったく知らなかった」はずはなく、太平洋の分割統治を念頭に置いた密約めいた話し合いが無かったとは言い切れないでしょうなあ。元々、ハワイ諸島を領土に組み込むために仕掛けた対スペイン戦争で戦端を開くのに都合の良かったのがフィリピンだったという身も蓋もない話もあるくらいですから……。

パンドラの箱の蓋 其の四

2010-05-30 10:39:15 | 政治
■「誠心誠意」「職を賭して」普天間基地の移設問題に取り組んでいる姿勢を示すアリバイ作りのためだけに召集した全国(18人は欠席)県知事会議は、どうやら「藪を突いて蛇を出す」結果になりそうです。やはり、国政の経験も豊富な東京都知事の発言が一番分かり易くて面白いかも?以下は最近の「石原知事会見詳報」です。まずは知事会が開かれる直前の会見から。

……石原慎太郎知事は14日の定例会見で、米軍普天間飛行場移設問題をめぐる鳩山由紀夫首相の言動について、「(中国による強引な領土拡張の)事例を鳩山大先生が知ってるか知らないが、この時期に一国の総理が『勉強したら、海兵隊の抑止力を認識しました』とはナンセンス」などと苦言を呈した。……
「要するに、普天間が象徴する沖縄のアメリカの陸海空、海兵隊を含めた戦力の存在意義というものを、全国の知事が認めて、基地をできればあちこち引き受けてくれ、ということなんでしょうけども。

■知事会を開催する意図と目的は良く分かっているよ、と前置きしてから石原知事は鳩山サセテイタダク首相の御勉強に役立つようにと考えたのか、或いは若い記者諸君を教育するためなのか、懇切丁寧に話を続けました。


……かつては三沢基地がアメリカの日本における在日米軍基地の最も大事なもののひとつで、(そのほか)岩国であり嘉手納だっだ。これは冷戦構造の中で、たびたび三沢の日本の空軍とアメリカの空軍が共同して、領空を侵犯してきたロシア(旧ソ連)の空軍にスクランブルをかけて追っ払っていた。そういう時代というのはほとんど解消しましたな、冷戦構造も崩壊して。ゆえにも、ヨーロッパでの西東の軍備配備もだいぶん形が変わってきました」

■言わずもがなの世界情勢の基本的な骨格から説き起こして行くのですが、こんな事から始めないと自分の発言の真意を理解できないような記者諸君が参集しているのでしょうか?ここの出て来る「三沢」は青森県の三沢基地で1941年に大日本帝国海軍が設置した航空基地を米軍が接収して対ソ戦略の拠点とするのに、北海道の陰になる太平洋岸に位置する、「北の槍」を置くのに絶好の場所と判断されて拡張され、他の在日基地と同様に民間航空機を締め出したり自衛隊との共用を始めたりしながら冷戦時代から情報収集の分野で大活躍している重要な基地であります。ロシアではレーニン主義で塗り固めたイデオロギーの鎖が錆びて腐って切れてしまい、イスラム原理主義や各種民族主義による分離運動を押さえ込むのに忙しく、対外的には自由主義経済の舞台に乗って地下資源で外貨を稼ぐのに熱心な国になってくれている間は、日本列島に対する北からの脅威は弱まっているでしょう。

■そんな事情を利用して、お墓に落書きされただけで沖縄も政治とカネも連立問題も放り出して駆けつけねば気が済まないほど尊敬している祖父が手を着けた「北方領土」を一気に解決?しようかと本気で思っているとかいないとか……。仄聞するに首相に就任した直後に「半年くらいで……」などと悪い夢でも見たような寝言を漏らしていたとか……。その辺の事情も知っているかも知れない石原都知事はわざわざロシアの話を枕にしたのかも知れませんなあ。

パンドラの箱の蓋 其の参

2010-05-30 10:38:42 | 政治
首相「普天間の移設先は辺野古沖で考えているが、知事会を開催してもらったのは沖縄の負担軽減に理解を深めてほしいからだ。将来的に訓練移転を引き受けてやろうとの気持ちを示してほしい」

北海道・高橋はるみ知事「政府が具体的に移転候補先を示すべきだ」

首相「すぐに理解を得られるとは思っていない。これから知事や市町村長に、より具体的な政府からの提案をしていきたい」

■「理解を深め」れば問題は解決するのか?「気持ち」で沖縄の負担を軽減することができるのか?ちょっと気になるのは、またぞろ「腹案がある!」みたいなニュアンスで首相が口走った「具体的な提案」が既に政府が持っているかのような発言であります。


大阪府・橋下徹知事「大阪は負担していないので、真っ先に手を挙げないといけないが、米国との問題もある。必要なら沖縄県に行き、我慢してくださいとおわびしたい」

首相「感謝する。ぜひ協力してほしい」

■巨額赤字に喘ぐ関西空港の再利用法を考えている橋本知事ならではの発言でしょうが、あんなに奥まった場所が訓練施設に適しているのか?こればかりは米軍の意向を確かめてみなければ分かりません。誰かさんの入れ知恵で首相の「腹」には全国の自衛隊基地を順番に利用する「ローテーション方式」の案がインプットされているのかも知れませんが、嘉手納基地から岩国などに訓練が移動すると別の部隊が飛来して騒音は酷くなったという話がありましたが、これも首相は「まったく知らない」のかも?


鹿児島県・伊藤祐一郎知事「徳之島は、島をあげて反対だと伝えたい」

首相「反対の姿勢は分かっているが、将来的に訓練の移転先の一つとして徳之島を挙げて日米間で議論を詰めている」
2010年5月28日 更新産経エクスプレス

■首相自身が「13年間、1本の杭さえ打ち込めなかったではないか?!」と自民党総裁をやり込めたのが辺野古周辺で、何を根拠に自分の政権ならば短期間のうちに杭をドカドカと打ち込めると思ったのか?これから辺野古の具体的な工事方法を決めて地元の了解を取り付け、その後が「将来的に」の話になるでしょうが、辺野古を埋めた後は徳之島も埋める心算なのでしょうか?「コンクリートから人へ」のスローガンは何処に仕舞い込んでしまったのやら……。

パンドラの箱の蓋 其の弐

2010-05-29 17:45:51 | 政治
■問題の全国知事会は47都道府県のうち18人の知事が欠席で、渋々出席した知事の首相に投げられた視線は冷ややかなものだったようです。 
 
鳩山由紀夫首相は27日午後、都内で開かれた全国知事会議で、沖縄県の基地負担軽減に関して「米軍普天間飛行場や嘉手納基地の航空機訓練の一部を県外に移すことが可能かどうか、考えてもらえるとありがたい」と述べ、訓練の全国分散に向けた協力を求めた。普天間飛行場については、既に県外で実施している海兵隊地上部隊の一部訓練にヘリコプター部隊も参加できないか検討を要請。嘉手納基地に関しては、県外の航空自衛隊基地で行っているF15戦闘機の一部訓練拡大への理解を求めた。

■鳩山サセテイタダク首相は平野官房長官が意地になって進めている徳之島案は駄目だと知っているからこそ、「全国分散」を哀願したのではないでしょうか?それならば米国に対してもウソをついたことになるのですが……。


仲井真弘多沖縄県知事は、基地負担について「日本国民として負うべき負担を超えている。大幅に減らしてもらいたいというのが沖縄県民の切なる願いだ」と強調した。……一部の知事は「防衛問題は政府が責任を持つことだ」として欠席した。

■どこの県知事さんも就任する時に国家の防衛政策を自分の仕事に含めてはいないでしょうから、「東アジアの軍事バランス」だの最近になって首相が御勉強した「抑止力」だの、自分の領分を越えた相談を受けても対処のしようが無いと考えるのは当然で、こうした態度が沖縄にすべてを押し付ける差別的な態度だと解釈するのは酷でありましょう。政府が防衛政策を決め、日米間できっちり話を摺り合わせてから、当該地域の首長に具体的な相談を持ち掛けるのが筋でしょうから、鳩山サセテイタダク首相のやり方は完全に逆立ちしていることになります。


全国知事会議における主な議論は次の通り。
……神奈川県・松沢成文知事「自衛隊増強を考えるべきではないか」
首相「自衛隊を増強して、米軍のプレゼンスを大きく減らすことが許される状況ではない」

■「生活が第一」のバラマキ放漫公約を実現しようと、減り続ける防衛予算をさらに削って自衛隊では入浴回数を減らしたり食事を質素にしたり、制服の支給も節約しているという話があります。日本政府が責任をもって果たさねばならない役割を最初から封じているから日米交渉も頓挫するのでしょうし、沖縄の基地問題も堂々巡りを続けてしまうのでしょうなあ。松沢知事の発言は福島大臣が罷免される前のものですが、「選挙が第一」で連立維持の話を進めているくらいですから、最初から現政権は受け入れるはずもない話ではあります。


東京都・石原慎太郎知事「尖閣諸島で日中が衝突したら日米安全保障条約は発動されるのか。沖縄問題の前に日本の領土を守る抑止力があるかどうかを米国に確かめてほしい」

首相「(尖閣諸島の)施政権は当然日本が有しているが、日中間で衝突があったときは、米国は日本に対し安全保障条約の立場から行動すると理解しているが、確かめる必要がある。米国は帰属問題は日中間で議論して結論を見いだしてもらいたいということだと理解している」 

《尖閣諸島での日中間の衝突については麻生前政権時代に決着済み。「安保条約は適用される」との米公式見解を確認したことを明らかにしている》

■これが翌日になって岡田外相が尻拭い会見を開かねばならなくなった首相の問題発言であります。自分の政治資金ばかりでなく、鳩山サセテイタダク首相には「まったく知らなかった」事がたくさんあるのですなあ。

パンドラの箱の蓋 其の壱

2010-05-29 17:24:09 | 政治
■社民党は党の存在理由が無くなってしまうと自分なりの筋を通して閣議決定に署名せずに罷免された(面白い字を書く)福島大臣の態度を諒として、
連立解消まで匂わせて政権を内部から揺さぶり始めているようですが、沖縄の声に殉じて美しく滅びる覚悟は無さそうで、しっかり「選挙協力」の約束は守るのだとか……。不思議な候補者が続々と立てられる中で、ますます参議院選挙の意味が分からなくなる流れに棹差すような動きでありますなあ。

■すったもんだの末にワシントンで「2プラス2」の交渉によってまとまった『日米共同声明』を地元の了解も連立相手の理解も得られないまま、東京で蒼い顔をしていた鳩山サセテイタダク首相が受け取って閣僚に署名を求め、一人だけゴネていた福島大臣を土壇場で説得しようとして失敗した揚句に追い出して一件落着。鳩山流の政権運営の実態と特徴を余すところ無く表現した歴史的な1日でありましたなあ。

■その日米共同声明の中で、普天間代替基地は「「辺野古崎地区及び隣接する水域」に建設する旨が明記され、おまけに英文で「滑走路」を複数形にして自民党がまとめた現行案を踏襲しているそうです。「怪我の功名」か「不幸中の幸い」か、8ヶ月間の迷走で米軍の本音が白日の下に晒されたとか、沖縄に対する差別意識が日本中に根付いていることが分かったとか、何とか愚かしい徒労ばかりではなかったと言いたい人もいるようですが、予定を4時間も遅らせて開かれた鳩山サセテイタダク首相の「お詫び会見」の表情を見れば、何一つ得るものは無かったことは明々白々でありましょう。まあ、政治家になって四半世紀のキャリアを持つ首相が、「抑止力」について初めて御勉強したことが唯一の収穫かも?

■沖縄で自分がパンドラ箱を開いておきながら、その後に起こった外交・内政の大混乱に最も驚いていたのは鳩山サセテイタダク首相御本人だったようで、最後は放心状態で8ヶ月間の記憶を失ったかのようにいつもの他人事口調で長々と「謝罪会見」の場にふらふらと登場したのでした。でも、あの会見で首相が訴えたかったのは「続投」の二文字だけだったのではないでしょうか?パンドラの箱は元通りに蓋をしっかり据えないと続々と災厄が飛び出し続けることになっておりまして、「5月末日」が目前に迫った時期に口蹄疫が蔓延したのは悲しいほど出来過ぎの話でありました。

■梯子を外され窮地に陥った沖縄県知事の怒りは計り知れないものがあるというのに、空疎なパフォーマンスとも呼べないアリバイ作りの下心が見え見えの「全国知事会」を緊急に召集したのは日米合意が正式に発表される前日のことでした。もしかすると、これは第二のパンドラの箱を開けてしまったのかも知れませんぞ。合意文書には「施設整備を条件に徳之島への訓練移転検討」と具体的に鹿児島県の地名が書かれているのを承知の上で、しかも現行案には沖縄の負担を軽減させる一案として福岡県の築城基地と宮崎県の新田原基地の利用が盛り込まれている事もきっと知っての上で、全国の県知事にあやふやな「お願い」をして明確な「約束」をその場で求めるような乱暴な議事進行には、呼び付けられた知事でなくても腹が立つでしょう。召集する側が無駄だと百も承知なのですから、何とも動機が不純な会議だったと申せましょう。

■文書に明記された徳之島ですが、最新の『週刊文春』6月3日号に、民主党関係者の話として「徳之島案を推進する平野氏が鹿児島に飛んでいる間、官邸内部から……防衛省に確認した」小さな事件?の話が出ています。エクスパートの防衛省からは「即座に徳之島は無理」との回答が戻って来たそうで、何度もテレビ画面に映った海岸の滑走路は「有視界飛行対応型」で肉眼を使わない計器飛行には狭過ぎて不向き、どうしても訓練用に改造したいのなら地形の制限があるので大々的に海を埋めて滑走路の幅を広げる必要があるのだそうです。文春の記事には民主党幹部の「平野のヤツ!できもしないことで今まで振り回してきたのか!」という怒鳴り声が紹介されております。それでも徳之島の基地推進派の「民間人」14人と鹿児島市内のホテルで「7項目」丸のみ密約をして見せたのですから、平野官房長官の名は歴史に刻まれるでしょうなあ。

■さてさて、ただのアリバイ作りのはずが、しっかり鳩山サセテイタダク首相はまたまた自分の御勉強不足を披露してしまったのは、実に首相らしい話ではあります。


岡田克也外相は28日の記者会見で、尖閣諸島について「領土問題ではない。議論の余地はない」と述べ、確定した日本の領土であり、他国との間に領有権争いは存在しないとの見解を強調した。鳩山由紀夫首相が27日の全国知事会議で、日中間で帰属が未確定であるように受け取れる発言をしたことを修正したものだ。全国知事会議では、石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島をめぐり日中間で衝突が起きた場合に米国が日米安全保障条約を発動するかどうかを質問。これに対し、首相は「(米側に)確かめる必要がある。帰属問題に関しては、(米国の立場は)日本と中国、当事者同士で議論して結論を見いだしてもらいたいということだと理解している」と発言した。
5月28日 時事通信

■鳩山サセテイタダク首相が自己陶酔気味に放言した「友愛の海」をどこの国の言葉に翻訳しようとも、いざとなったら「切り取り放題の領海」の意味を含んでしまうのではないか?と心配したものですが、当時も岡田外相が訂正会見を開いたはずでしたなあ。常識的には地方自治体の首長よりも首相の方が高い政治的見識を持っているはずなのですが、何事にも例外はつき物のようですなあ。まあ、岡田大臣も「次」か「次の次」を狙っている身としては、アホな首相の尻拭いをしてでも閣僚ポストを立派に勤め上げておかねばなりませんし、沖縄の基地移設問題では「嘉手納統合案」を振り回してしまった黒星の件もありますから、地道に外相の職務を粛々とこなさねばなりますまい。

自滅・自爆の民主党 其の参

2010-05-28 16:48:28 | 政治
比例代表については「22議席取れると思って44人を擁立したが、(鳩山内閣の)支持率がどんどん下がり、今では立て過ぎたと反省している」として、「当選は10台半ばだ。仮に17、18と申し上げる」と述べた。……3人目の候補の擁立が遅れている東京選挙区(改選5)について「無理だ。(現職の)2人とるのも至難の業だ」と断念を表明した。選挙の最高責任者である小沢一郎同党幹事長は、東京について3人は擁立すべきだと主張してきた。しかし、各党候補の乱立で選挙情勢が厳しくなっていることや、東京都連が3人目の擁立に難色を示していることなどを配慮したといえる。民主党選対幹部も27日、「現職2の当選を確実にした方がいい」と指摘した。

■小沢幹事長の豪腕を制止できるのは長年の盟友である石井一さんだけなのか?それとも世論の動向なのか?少なくとも各種マスコミは相手にされていないようですから、一般の読者・視聴者である有権者にとっては正確な情報を得るのは至難の業でありますなあ。投票日に投票箱の前で最終的な支持政党を決める心算の有権者が大多数だとも言われていますから、各党が本格的に選挙モードに入ってからの演説や中傷合戦を材料にして判断するしかないかも知れませんなあ。でも、今から民主党と自民党の泥仕合が目に見えるようで実に情けない選挙戦になりそうな予感がしますぞ。


また、選対幹部は改選1の29選挙区のうち唯一、公認・推薦が決まっていない沖縄については「普天間飛行場の移設問題が落ち着いたら発表する」と語った。
5月27日 産経新聞

■一体、どのように「落ち着いた」後の話なのでしょう?どんな候補者が立とうとも、開口一番「ウソをついて御免なさい」と言わねばならないことになりそうですから、飛んで火に入る夏の虫、自爆覚悟の立候補ということになりそうですなあ。党の代表である首相が応援演説に入れないような選挙区で、どんな選挙戦を展開するのやら……。赤松農水相は九州には行けないでしょうが、他の地域には入れるのでしょうか?何かと不自由な制限の多い民主党の選挙運動が見られそうではあります。
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自滅・自爆の民主党 其の弐

2010-05-28 16:47:54 | 政治
■民主党が得点を稼ぐ機会はいくらでもあるという話の続きです。

工場作業中に顔や首にやけどを負った京都府の男性(35)が、労災認定に男女差があるのは法の下の平等を定めた憲法14条に反するとして、女性に比べて低額な障害補償給付とした処分の取り消しを国に求めた訴訟の判決で、京都地裁の瀧華聡之裁判長は27日、「給付の男女差は合理的な理由なく、性別によって差別的取り扱いをしており、憲法違反だ」と判断し、処分の取り消しを命じた。……労災認定で外見上の障害に対する男女差別への憲法判断は初めて。同様の基準で算定している交通事故などの後遺障害の補償にも影響を与えそうだ。

■現行の法律に「こんな差別が残っていたのか?!」と驚いた人が多かったのではないでしょうか?『人は見た目が9割』という新書がベストセラーになったのは最近のことですし、毎日のように仕事中の事故は報道されていますし、交通事故は日常茶飯事と思ってしまうほど多発しているのに、一つ一つの事故が人生を大きく変えてしまう事に考えが及ばないのが人情というものであります。しかし、立法府や行政府も同じように鈍感になっていたは困ります。民主党の誰かさんはこの京都地裁の判決を聞いて臍(ほぞ)を噛んで悔しがっているかも?


瀧華裁判長は「見かけの醜状(しゅうじょう)障害の影響は男女間で事実的、実質的な違いがないとは言い切れない」とした上で、性別によって給付額が大幅に違う点などを指摘して「著しく不合理で、厚生労働大臣の裁量の範囲を超えている」と結論付けた。
判決によると、労災認定で使われている障害等級表は、顔に卵大以上の傷あとがある場合などを「著しい醜状障害」と定める。女性の場合、年収の約35%分を毎年支給する「7級」と規定しているのに対し、男性は約40%を一時金として支給する「12級」としている。……厚労省は「違憲判決は把握している。今後の対応は、関係省庁と協議して決定する」とコメントしている。……
5月27日 京都新聞

■こういう時こそ長妻大臣が電光石火で「制度改正」を宣言してくれないと見せ場がありません。「命を守りたい」首相も御同様で、不得手な外交などに時間を割いているより、国民にとって身近な問題をこまめにてきぱきと処理して見せた方が、クラッシャー小沢の「選挙が第一」戦略にも合致するのではないでしょうかな?最新号の『週刊新潮』には、祖父の鳩山一郎元総理が手をつけた日ソ交渉を進めるのが鳩山サセテイタダク首相の本望とするところで、北方領土問題を解決するために総理大臣の椅子にしがみついている、などという恐ろしい話が載っているのですが……。
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行政刷新会議の事業仕分けで「仕分け人」を務めた民主党の蓮舫参院議員は26日午前、党参院議員総会で「事業仕分けで税金の浪費を徹底的にあぶった材料があるが、党からどうやってまとめればいいかという相談が一つもない。材料があるのにそれが生かされないのは絶対おかしい」と述べ、参院選が迫る中、事業仕分けをアピールする党の努力が不十分だと不満を表明した。
蓮舫氏は「政調(党政策調査会)がなくなり、まとめてくれる人が誰もいない。材料は全部提供する。早々にやって新人、改選組、全員に材料を提供してほしい」と述べた。
5月26日 産経新聞

■何かとマスコミの注目を集める「必殺!仕分け人」ではありますが、公開で行われる議論を見聞きする度に、「嗚呼、あの席に兇刃に斃れた石井紘基元議員が座っていてくれたらなあ」と何度も思いました。彼が残した『だれも知らない日本国の裏帳簿』ぐらいは仕分け作業の机の上にこれ見よがしに積んでくれれば、有能な政治家の供養にもなったでしょうし民主党の宣伝にもなったかも知れないのに……。でも、実際に政権を担って張り切って「特別会計」にも手を突っ込もうとしたら火傷して手を引っ込めてしまった今の内閣にとっては煙たいだけかも知れませんなあ。

■今回の公益法人も前回の独立行政法人も、自民党時代に誕生して爆発的に増殖・繁殖した奇怪な寄生生物みたいな組織ですから、これを根絶やしに出来れば民主党の長期政権は国民の喝采の中で約束されたも同然でしたでしょう。しかし、特に税金が投入されていない公益法人などは、今の法律では必殺!仕分け人が何を言おうともまったく屁の河童なのだそうですなあ。まあ、それでも政権交代が起こっていなければ、この種のパフォーマンスは見られなかったのですから、これから本気で民主党が政権を維持しようとするのなら、法律を改正して仕分け作業を根付かせて実を結ぶように努力するはずなのですが……。タレント・有名人を候補者に並べて郵政・農政関連の組織票で皮算用しているような旧態依然とした選挙戦略にしがみ付いているようでは無理かも知れませんなあ。


民主党の石井一選挙対策委員長は27日、都内で講演し、夏の参院選での同党の獲得議席について、「選挙区では30取れる。比例代表では17~18は取れる」と述べ、48議席程度は確保できるとの見通しを示した。そのうえで、「(与党の)社民党、国民新党が2、3議席取れるなら、連立政権維持のぎりぎりの数字だ」と述べた。……

■こういう「票読み」が出来ること自体、民主主義の基本である無記名秘密選挙を冒涜しているような気がしてならないのですが……。各種週刊誌は競って「票読み」を特集しては「衝撃の予測結果!」で商売するものですが、政権与党の選挙対策委員長が「結果」でしかない議席数を講演の場で熱心に数えて見せるというのは、何だか生々し過ぎると申しましょうか、品格に欠けると申しましょうか、事ここに至って「鳩山外交」も「鳩山財政」も「鳩山連立」もこれ以上は願い下げだ!という怨嗟の声が沖縄に限らず日本各地で湧き上がっている時に、投票行動の「原因」となる現政権の政治行動をそのままにして「連立政権維持」のためなら何でもやるぞ!と眦を決して藁をも掴む思いを吐露する姿は、既に選挙での大敗を予感させるには十分なものがあります。さぞや改選議員はぞっとしていることでございましょうなあ。


石井氏は具体的な内訳に関しては、「参院選の勝敗は(改選1の)1人区でどれだけ取れるかだ。10選挙区前後は勝てる。6ないし7選挙区で横一線だ」と説明した。改選2の「2人区」では「(2候補のうち当選確実なのは)辛うじて1人だ」と指摘した。改選3の「3人区」についても、擁立した全候補の当選はおぼつかないと厳しい見通しを示した。

■2週間ほど前でしたか、テレビ東京の番組に自称黄門様の渡部恒三さんが出演して、参議院選挙の勝敗を決するのは「1人区」だ!と言っておりましたなあ。2人区に候補者2人を立てるという小沢幹事長の作戦については「何をトチ狂ったのかなあ?」とばっさり切り捨てていましたから、石井一選対委員長の「読み」と通底しているようです。共倒れの可能性が高いと危惧される複数候補の濫立を敢えて仕掛けた小沢幹事長の本音は、民主党と自民党が抱き合い心中状態で共に惨敗した後で本格的な政界再編に持ち込みたいのだとする憶測も流れているようです。出来たばかりの新政権を早々にぶっ壊して、またまた新たな寄り合い所帯を作るのは有権者にとっては甚だ迷惑な話ではないかと思うのですが……。

自滅・自爆の民主党 其の壱

2010-05-28 15:41:37 | 政治
■5月25日に発表されたロイター通信による全国の個人投資家(747人)を対象にした参院選で投票したい政党に関する調査。
1位=みんなの党が34・8%(前月29・9%)
2位=民主党が  26・2%
3位=自民党で  15・3%。
自民党の支持率に「復調傾向」が見られる一方で、民主党に対しては「昨秋の政権交代から短期間では成果は生みづらいため、今後の政策運営を見守りたいとの意見が多く出ていた」との分析結果になっているそうです。

■金持ちボンボン首相が率いるど素人集団が、「政治主導」を旗印に楽屋裏も公開してどたばた劇を続けているのですから、心優しい支持者の中には今でも温かく「見守ろう」とじっと我慢している人が現段階でも残っているのでしょう。しかし、そういう人達も「民主党を支持する。期待している」と公の場で口外するのはちょっと勇気が必要かも知れません。

■無い袖をぶんぶん振り回して薔薇色のバラマキ政策を並べた、こしゃくれたマニフェストに大真面目で期待して投票した人よりも、長い間、自民党が内向きの馴れ合い政治を続けてすっかり淀んでしまった日本の政治に大きな石を投げ込むか、苔が生えてしまった堰を叩き切って泥水を一気に吐き出して欲しい思いで、政権交代という荒療治を選択した人が多かったのではないか?と今になって分かります。その証拠に少しは身に滲みて反省の態度が見え始めた自民党に対する支持率が底割れせずに徐々に上昇を始めると同時に、自民党内で官僚と戦った渡辺喜美氏が率いる「みんなの党」が大化けする気配が濃厚になっているのですから、「やっぱり駄目か」と思ったら、衣替えした自民党に支持が回帰して行くのかも知れません。

■「雉も鳴かずば撃たれまい」と言いますが、自民党が積み上げてくれた莫大な借金と役人天国、時代にまったく合わない古臭い法律や特別会計に流れ込む隠れた税金などなど、新政権が国民から喝采を浴び続ける材料はごろごろしているというのに、国民が期待していない事に血道を上げては失点を重ねる民主党には失望を通り越して哀れを催す昨今であります。


低所得の父子家庭に児童扶養手当を新たに支給するための改正児童扶養手当法は、26日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。8月に施行される。児童扶養手当はこれまで低所得の母子家庭にしか支給されていなかった。今年度は父子家庭にも年3回の支給月(4、8、12月)のうち、12月の1回に限って8~11月分を支給する。支給額は子ども1人に対し、所得に応じて月額9850~4万1720円。2人目は5000円、3人目以降は3000円をそれぞれ上乗せする。父子家庭約20万世帯のうち10万世帯が受給すると見込まれており、政府は今年度予算に50億円を計上している。
5月26日 読売新聞

■こんな法律改正が21世紀に入って10年も経ってから行われるとは驚きです。映画『クレーマー、クレーマー』が日本で公開されたのは1980年で、通称『男女雇用機会均等法』が改正制定されたのは1985年のことでした。勿論、揺ぎ無い自民党の長期政権時代のお話です。当時の政府機関が発表する各種統計は「夫婦と子供二人の標準家庭」という強固な基準に従って作られていましたが、足元では少子高齢化と足並み揃えて「標準家庭」は滅亡しつつあったのでした。80年代前半には現行の年金制度は必然的に破綻する!と警告する声があちこちから上がっていましたし、民間保険会社はセールスの強力な武器として存分に活用して業績をどんどん伸ばしていたものです。

■元々、不幸にもどちらかの親と死別して片親が子育てに励む家庭はありましたが、この時期には離婚率が上がって生き別れて片親の家庭も加わって「標準家庭」はますます減少して行ったのでありました。母子家庭と父子家庭はどう違うのか?これまで日本の政治はこの問題に正面から向かい合おうとはしなかったようです。民主党の選挙用マニフェストには「父子家庭にも児童扶養手当を支給します」という一文がありましたから、普天間基地移設問題やら宮崎県で発生した口蹄疫で失政を重ねて「ウソツキ」「ど素人!」と罵られている最中ではありますが、こうして重要な法律改正が実現して政権交代の意義があったと国民が拍手するはずだったのに、残念ながら失点があまりにも大きくて得点が翳(かす)んでしまいましたなあ。もしも、得点だけに注目を集めて前政権の怠慢やら時代遅れの政治センスを際立たせていたら、自民党や公明党は足腰立たない大打撃を受けたかも知れませんぞ。

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5月末日の後 其の弐

2010-05-27 22:40:35 | 外交・情勢(アメリカ)
中国は、北朝鮮との関係を再考し、今週28・29日の温家宝・中国首相の訪韓の際には、哨戒艦沈没事件に関して、韓国により理解を示す可能性がある。米高官が26日、明らかにした。中国は北朝鮮へ不満を募らせており、哨戒艦沈没を受けた国連の対応に関しても、早期に協議に加わる意向を示す可能性があるという。

■先の「朝中国境付近の国境警備隊に82ミリ迫撃砲を扱う火力支援小隊が編成され、実戦配備」との報道は、北朝鮮が北京政府の極秘情報をいち早く察知した上での反応だったとしたら……。先代様の流儀を踏襲すればチャイナがダメならロシアがあるさ!と両天秤の一方に重心を移して切り抜けるところでしょうが、既に米ロ関係は新しい段階に入っていて、両国政府にしてみればその手は桑名の焼き蛤でありましょう。


中国はこれまで中立の立場……哨戒艦沈没事件は、北朝鮮の魚雷攻撃によるものとの調査結果に関しても、断定を避けている。匿名のある米高官は、温首相の訪韓の際に「中国は急だが慎重に韓国寄りへと態度を変え、(沈没事件に対する)適切な国際社会の対応についても、韓国との協議を開始する可能性がある」と述べた。また別の高官は「中国は、自国の安全保障に関して、北朝鮮が中国の立場を複雑化しているとみており、北朝鮮に対し強い不満を持っている」と指摘。

■毛沢東が強行した朝鮮戦争への介入は正しかったのか?などという恐ろしい疑問が蒸し返されては大変だあ!と北京政府内の誰かさんは慌てているかも知れません。このままでは、本当に朝鮮戦争の休戦が敗れて第二ラウンドが始まってしまうと誰かさんは本気で心配しているのかも?日本の民主党と社民党は選挙協力という米櫃(こめびつ)を真ん中に置いて沖縄基地問題で「チキンレース」をしているとの報道もあるようですが、今の半島で展開しているのは生きるか死ぬかの本物のチキン・レースでありましょう。いよいよ「6者協議」が「5者協議」になって、北朝鮮崩壊後の綿密な打ち合わせが始まるなどという恐ろしいことのないように願いたいものであります。何せ今の日本にはそんな物騒で緊迫した重要な会議に出席する実力がありませんからなあ。まさか、福島代表を送って「憲法9条が最大の抑止力だ!」などと一席ぶって会場を爆笑の渦に巻き込むような不真面目なことは出来ませんし……。


米国と韓国が合同軍事訓練や軍の戦闘体制強化、情報機関の提携強化などを検討していることを受けて、中国は安全保障環境の悪化を憂慮し「北朝鮮の態度を改めさせるため、手を打つ必要があるとの考えに変わる」との見方を示した。
5月27日 ロイター

■北京から見たら海への出口を塞ぐ形で半島が南北に伸びているのですから、ここに米軍が再び本格的な軍事拠点を置くようなことになったら、壮大な外洋に向かう世界戦略が目詰まりを起こしてしまうでしょう。黄海で北朝鮮に対する警戒態勢を敷かれるのも傍迷惑なことで、半島と地続きで隣り合っているチャイナとしては目障りで仕方が無いでしょうからなあ。
 
……米韓軍当局は26日、北朝鮮軍に対する情報監視レベルを一段階引き上げた。哨戒艦沈没事件で韓国政府が対北制裁措置を発表したことを受け、挑発の可能性が高まっているためという。監視レベルは5段階で、「注意深い監視が必要」な「3」から今回、「国益に著しい脅威が及ぶ兆候がある」とする「2」となった。レベル2では、米国の情報衛星による監視が強化され、在韓米軍の偵察機の飛行回数が増える。状況によっては在沖縄米軍基地から空中警戒管制機(AWACS)なども投入される。

■「辺野古」の地名を書くか書かないかと大騒ぎしている日本を嘲笑うかのように、半島情勢を睨んで沖縄が対北朝鮮監視の要となって動き始めるようです。韓国の哨戒艦を魚雷一発で沈めて興奮状態の北朝鮮が、今度は米軍の偵察機を撃墜しようと対空ミサイルでも発射しようものなら、またまた米国は正気を失って熱狂的に戦争を希(こいねが)い始めるかも知れません。それを同盟国の日本は止められるでしょうか?鳩山サセテイタダク首相が憧れる対等な関係ならば、米国が振り上げた拳を下ろさせることも有りえるのですが……。


……韓国のYTNテレビは27日、江原道鉄原に近い非武装地帯内にある哨所に北朝鮮が14.5ミリ重機関銃を束ねた対空兵器を持ち込む動きが確認されたと報じた。非武装地帯への重火器の搬入は朝鮮戦争の休戦協定に違反する。
5月27日 時事通信

■北朝鮮の情報収集能力は非常に高く、米軍の動きを読み切って先手を打って待ち構えているかのようです。「休戦協定」を破ったのなら、それは実質的に戦争状態への回帰を意味しているはずです。鳩山サセテイタダク首相は国連での会議を楽しみにしているようですが、北朝鮮も米国も話し合いで決着をつけるのを好まない国ですから、「安保理制裁決議に先頭を切って走りたい!」という願いは適わないかも知れませんなあ。まあ、適ったところで誰も「独り言」は聞いてくれそうもありませんが……。


米中戦略・経済対話が閉幕した。記者会見に出席したヒラリー・クリントン米国務長官は、今後4年間で10万人の米国大学生を中国に派遣する計画を明らかにした。……対話では計26項目もの合意が交わされた。クリントン国務長官は一朝一夕にこうした合意が得られたわけではないと話し、過去数か月にわたる大量の作業、そして両国の長期的な信頼関係が基礎になったと強調した。

■クリントン長官の外遊日程は日本に4時間、北京に6日間だそうですなあ。鳩山サセテイタダク首相の「トラスト・ミー」発言の影響で、日本には「給油に立ち寄っただけ」と同行した高官が言ったとか言わなかったとか……。日本の新聞は米国務長官の訪日を大々的に報道していましたが、米国では非常に小さな扱いだったそうであります。それにしましても、東京の次に訪れた北京で「過去数か月にわたる大量の作業」だの、「両国の長期的な信頼関係」だの、まるで日本政府に対する当て擦りとしか思えないスピーチでありますなあ。日本の鳩山サセテイタダク首相は「一朝一夕」に日米関係を深化させて沖縄の基地問題も片付くと思っていたようですから、日本に対するメッセージにもなるように工夫したのかも?

■「今後4年間で10万人の米国大学生」とは、昔、日本の中曽根政権時代に似たような計画が立てられましたが、「修学生」だの「研修生」だのと正体不明の制度が作られて当初の目的とは随分と違った結果になってしまったようですが、米国が打ち出した派遣計画はかつてキッシンジャー外交で使った「ピンポン外交」路線を大規模に踏襲したもののような印象で、大成功の予感が濃厚であります。それにしましても「今後4年間」に朝鮮戦争は起きないのでしょうか?


……今回交わされた合意の一つに大学生の派遣がある。今後4年間で米国は10万人を超える大学生を中国に派遣することになる。派遣された大学生は中国語を学び、また中国社会のさまざまな階層の人々と交流することで、中国理解を深めることが期待される
5月27日 Record China

■戦前、戦後を通じて米国は日本に対して同じような学生の派遣計画を考えたことは無かったと思います。日米同盟を深化させる前に、米中同盟のようなものが出現したら、日本の命運は尽きてしまいそうな不安があります。それはともかく、北朝鮮包囲網が急速に生まれつつあるタイミングで北京に国務長官が腰を据えて「米中戦略・経済対話」を行うとは、とても日本には真似の出来ない芸当であります。何よりも北朝鮮の心胆を寒からしめるには最高の外交イベントであるとも言えそうです。鳩山サセテイタダク首相は「5月末」の後をどのように考えているやら……。
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5月末日の後 其の壱

2010-05-27 16:46:56 | 外交・情勢(アメリカ)
■運悪く今年の「5月末日」は月曜日だそうで、鳩山サセテイタダク首相は北沢防衛相をワシントンに貼り付けて、日米同時進行で懸案の普天間基地の問題を「決着」させようと、ご本人なりに精いっぱい頑張っているのだそうです。連立相手の社民党が駄々を捏ねて騒いで、大手新聞の紙面に党名や議員の名前が大きな活字で踊るという椿事が起こっております。参議院選挙前ですから、身銭を切らずに済むパブリシティ効果には大いに期待したいところでしょうが、閣内で外交の足を引っ張り日米関係を悪化させている姿が有権者の目にどのように映るっているのか?猫の額ほどの党内でもくっきりと色分けされて大議論が起こっていることにコアな支持者たちが何を思っているのか?
 
■「言うことを聞かないのなら放り出せ!」と言いそうな怖い幹事長が黙っているのは、直近の選挙で社民党に投じられた300万余の票を民主党の苦しい台所事情の穴埋めに使うための苦渋の選択だとか……。元々吹き溜まりの寄り合い所帯の民主党内部がちょっとした切っ掛けで動揺して軋(きし)むのは当たり前ですが、分裂後も縮小衰退の一途を辿りながらも打って一丸となって生き残っているはずのこちこちのイデオロギー政党だったはずの社民党が、政権与党の蜜の味を知って日和ったか?と思われたらコアな支持票も逃げて行くような気もしますなあ。

■日米共同声明には「辺野古」と書き込み、署名しないわよ!と「消費者及び食品安全・少子化対策・男女共同参画担当」の特命大臣が脅すので閣内で作る書類には地名を書かずに済ませる方策を考え中とか……。福島大臣は自分の担当分野の仕事をしているのでしょうか?官僚に留守を預けて丸投げか?ちょっと心配でありますなあ。

■「二枚舌」だの「ウソつき」だのと、今更騒いでも詮無いことながら、やっぱり「独り言」しか言えない人を総理大臣にしたらダメですなあ。いっそのこと、閣内で作る文書の「辺野古」を果汁液で書いておいて社民党には空白ですよと騙して署名して貰い、後で炙り出すとか、造幣局に頼んで「辺野古」を透かしに仕込んでおいて光りに翳さないと見えないとか、金属箔でスクラッチ籤状態にしておいて福島大臣が署名したら鳩山首相の有り余る財産の中から10円玉を出してキュッキュッと地名を削り出すとか……。
そんな馬鹿馬鹿しい冗談しか思い浮かばない「5月末決着」へと雪崩れ込んでいく茶番劇であります。


北朝鮮が韓国からの攻撃に備えるため、朝中国境を守る国境警備隊に砲撃砲を追加配備し、この一帯に放射砲旅団を展開させたことが分かった。韓国メディアが26日、対北朝鮮消息筋の話として伝えた。……2010年2月までに朝中国境付近の国境警備隊に82ミリ迫撃砲を扱う火力支援小隊が編成され、実戦配備が完了したと明かした。国境警備隊は人民武力部に属するが、主な任務は住民の脱北防止であるため、小銃などの軽装備が主だった。……休戦ライン一帯や海岸付近に配備されてきた北朝鮮型多連装ロケット砲が朝中国境にも配備され、北朝鮮と中国との間で微妙な緊張が生じていることも伝えられている。北朝鮮は武器強化の理由について、「中国側から韓国の特攻隊が攻撃する可能性があるため」と説明しているという。

■何かと北朝鮮問題に関して北京政府の影響力を期待する声が多いようですが、将軍様が最も本音で嫌っている国はチャイナだという噂もあるようですし、痩せても枯れても自力で生き延びている独立国ですから、相手だ何処であろうと飼い犬のように従順であるはずはないでしょう。北側の国境も油断無く見張っているでしょうし、その目的が「地上の楽園」からの逃亡者を射殺することなのか、チャイナが仕掛ける謀略を警戒するものなのかは時と場合に因るのでありましょう。目と鼻の先でキナ臭い空気が流れているというのに、日本の動きは特に鈍いような気がします。


……韓国メディアによると、北朝鮮住民の間では「6月1日-4日ごろに戦争が始まる」といったうわさが流れている。このうわさは一部の地域だけで広がっているものとみられているが、北朝鮮国内の緊迫する様子が表れている。
5月27日 サーチナ

■その「戦争」は鳩山サセテイタダク首相が発火させて傷つけた日米同盟が破綻して起こる日米間の武力衝突ではないでしょうが、「5月末」の翌日という日付が気になりますなあ。建国以来、ずっと宙ぶらりんの戦時体制下で暮らして来た北朝鮮の人たちは、いっそのこと勝っても負けても本当に戦争を仕掛けて決着をつけて欲しいと思っているという話もあるようですから、噂は願望の一種なのかも知れません。

■週末のニュース・ショーなどでは「どこの国も戦争は望んでいない」と気楽に口にする専門家やコメンテーター諸氏がいるようですが、その中に北朝鮮が間違いなく含まれているという確証はあるのでしょうか?そして、さらに緊張が高まって問題となっている沖縄駐留の海兵隊が米韓軍事同盟の尖兵となって大活躍するような事態になったら、福島「消費者及び食品安全・少子化対策・男女共同参画担当」大臣は何と言うのでしょうなあ?問題は55年体制の記念品みたいな社民党の存亡などという小さな事ではなく、東アジアの中で日本が占めるべき役割なのですが……。

魚雷の後は悪口 其の弐

2010-05-26 16:16:29 | 外交・情勢(アジア)
韓国国防省は24日、同国海軍哨戒艦が北朝鮮の魚雷で沈没したことへの対抗措置の一環として、FMラジオを使った対北朝鮮宣伝放送を開始した。……ラジオ放送は「自由の声」とのタイトルで、1日3回、計10時間にわたって流される。金泰栄国防相は同日の記者会見で、非武装地帯周辺での大音量スピーカーによる宣伝放送再開を明らかにしていた。……北朝鮮は24日、朝鮮人民軍の前線中部地区司令官が、軍事境界線での宣伝放送が再開されれば射撃を開始すると警告文を発表している。
2010年5月25日 産経ニュース

■FM放送を聴くためのラジオが無い!国を相手にするのですから、カード型の超小型ラジオを数百万個用意して、風船などを使って全土にばら撒いてからの方が効果的かも?日韓の拉致被害者の皆さんが風船に僅かなカネとメッセージを付けて国境から風に乗せようとするのを実力で阻止しようとした話は過去のものになりましたなあ。小型ラジオよりも衛星回線が使える簡素な使い捨て型の携帯電話などもよろしいかも?将軍様は遠隔操作で爆弾を破裂させられる携帯電話が大嫌いだそうですが……。


韓国と北朝鮮の将官級軍事会談の北朝鮮代表は26日、韓国が軍事境界線一帯で北朝鮮向け宣伝放送のための拡声器を設置すれば「軍事的挑発とみなし即座に(拡声器に)照準を合わせ射撃、撃破する軍事的措置を講じる」と警告する通知文を韓国代表に送った。……韓国側の拡声器設置の動きについては、朝鮮人民軍の前線中部地区司令官も24日、射撃するとの警告文を出している。
2010年5月26日 産経ニュース

■冷戦中は国境線を挟んでの謀略宣伝放送合戦は凄まじかったそうで、内容も政治的な物から相当に下卑た話題まで盛り沢山で、悪口のボキャブラリーの豊富さは他言語の追随を許さないほどだと評判の言葉の投げ合いですから、外聞を憚るような放送も多かったらしく、軍事境界線だからとの理由で一般人には非公開同然だったとか……。再開された宣伝放送は経済的に豊かにもなって自信も付いた韓国らしく、以前とは違って質量ともに充実した内容となっているとか……。だからこそ北朝鮮側は黙って兵士に聞かせておくわけには行かない!と危機感を強めているのでしょうなあ。

 
26日付の韓国紙、朝鮮日報は、北朝鮮の「サンオ(サメ)級」小型潜水艦4隻が24日以降、日本海側の海軍基地から姿を消したことを確認し、韓国軍が追跡調査中だと伝えた……李明博大統領が国民向け談話を発表した24日、サンオ級潜水艦4隻が北朝鮮咸鏡南道の基地を離れた後、2日間の足取りがつかめていない。この当局者は「北朝鮮の潜水艦4隻が一度に消えたのは珍しい」と話した。サンオ級は、侵入作戦用に北朝鮮が独自に開発した主力潜水艦で、40隻余りを保有している。1996年9月、韓国・江陵近海で座礁した潜水艦もサンオ級だった。
2010年5月26日 産経ニュース

■1996年9月の事件は韓国軍がたった1隻の小型潜水艦相手に、10万人規模の兵力を投入して始末したはずです。もしも、4隻があの時と同じことをやれ!と「指令」を受けていたりしたら大変です。潜水艦は隠密性が命ですから、行方不明であることだけで十分に武器として活躍しているとも言えるのですが、対潜哨戒能力が高いと評判の日本の海上自衛隊に協力要請でも来たらどうしましょう?まあ、魚雷1発で哨戒艦を真っ二つにされた韓国海軍が日本に助っ人を頼むはずもありませんが……。面子に賭けても探し出して領海内だったら復讐戦を始めてしまうかも知れません。せっかく金星を取った潜水艦が無残に撃沈されたり生け捕りになったりしたら、さぞや将軍様は落胆するでしょうなあ。

■国境警戒の精鋭たちが悪口を言い合っている間に、各国の政治家がちゃんと役目を果たして北朝鮮が自棄を起こす前に「一部の冒険主義者が……」とか何とか、お決まりの文句で結構ですから、一応の謝罪を引き出して欲しいものです。勿論、変な見返りはナシで……。

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