旅限無(りょげむ)

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引きずり飛んで大阪 其の壱

2008-11-18 15:31:33 | 政治
■何かと話題になる地名の大阪、最近では「また大阪」というフレーズで使われているようです。遠い遠い昔、「またも負けたか八連隊」という流行フレーズがありました。始まりは西南戦争まで遡れるそうですが、「第8連隊」というのは明治7年12月18日に創設された大阪鎮台の陸軍部隊を指しているのは確かです。本当に連戦連敗の根性なし軍隊だったのかどうかは議論が分かれるようですが、「商人の町」というイメージも手伝って調子のよいフレーズは日本中に膾炙して、最近のすぐに忘れられる「流行語大賞」などとは比べ物にならない長寿を保ちました。

■出身地で差別するのは根拠も無い馬鹿馬鹿しい話なのですが、地域ごとの特色というものはあるもので、羨ましい長所もあれば、真似したくない短所もありますから、互いに文化や歴史の違いを楽しみたいものです。でも、残念ながら「また福岡」と双璧をなす「また大阪」というフレーズが定着しつつあるのも事実のようですなあ。


都道府県議会で議員や各会派に支給された2007年度の政務調査費のうち、使われないまま返還された額が前年度比2・4倍の5億5516万円に上ったことが、読売新聞社の調査でわかった。返還額は交付総額の4・3%に当たる。車のローン返済や飲食代など不適切な流用が判明して批判が高まり、領収書添付を義務付ける議会が増えたことなどが背景にある。……

■郵政解散選挙の際に、「ヒラリーマン」で一世を風靡した小泉チルドレンの1人タイゾー君が、当選後の楽しみとして料亭と100万円通信費!と言い放って物議を醸したことがありましたが、実際には地方自治体の「政務調査費」の方がタイゾー君好みの食べ放題ならぬ、使い放題!の無駄遣いだという話はすっかり有名になりました。なあ。「調査視察旅行」と観光大名旅行との違いはさっぱり分かりませんし、コピペで作る報告書は大学のレポートにもならない恥ずかしい作品だったり、名前が立派過ぎるのが悪いのか?政務も調査も知らない素人議員が多すぎるのか?


……07年度は前年度の計2億3024万円から3億2492万円増えた。返還は茨城、沖縄を除く45都道府県であり、うち35都道府県が前年度より増えた。返還額は、前年度の5倍に膨らんだ大阪の5650万円が最多で、埼玉の5336万円、兵庫の5228万円と続く。06年度まで全額を使い切っていた福岡でも、1690万円が返還された……
11月18日 読売新聞

■あちこちで不正が発覚したとて、遅ればせながら「領収書添付」を義務付けたら、予算がごっそり余るようになったのだそうです。それに加えて市民オンブズマンの活躍や「住民監査請求」の増加が地方自治体の議員さん達を覚醒させたとか……。引用部分に並ぶ地名を見ていると、実にさまざまな事が思い浮かびますなあ。絆創膏農林大臣を生んだ茨城県は、某市の市議がセクハラ旅行をしたとテレビ朝日あたりに追い回されたこともありました。沖縄は独特の政治風土を持っている上に日米間の諸問題を考えねばならない事情もあるのいでしょう。でも、「一銭も返さん!」というのはユニークです。

■前年度の5倍も返還額が増えたのが大阪府。新しい知事の業績なのか?市民の監視が強まったのか?東部に「埼玉都民」を多数抱え西には中山間地を背負う埼玉県は、いろいろと公共事業が多いところで、とかくの噂や疑惑が出るところ。知事が変わって少しは政治風土も変わったのかも?そして、「チャンス!」の兵庫県。大阪以上に「またか」と言われる福岡県は、きっちり毎年使い切っていたのですなあ。政務調査費が余ったのは議員や市役所の職員が飲酒運転をしなくなったからでもなさそうですが……。

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾壱

2008-11-18 14:50:26 | チベットもの
■11月2日のダライ・ラマ法王インタヴューの続きです。

中国内のチベット人居住区に関して、ダライ・ラマは「いたるところに中国人民解放軍が駐留している。秘密警察要員も多数入り込んでおり、チベット人は厳重な監視下に置かれている」としたうえで、ある地区には1万人以上もの兵士が駐留し、チベットの伝統的な文化財や寺院などが破壊されていることを明らかにした。また、5月と7月の話し合いでも、中国側はダライ・ラマを批判したという。

■5月と7月という事は北京五輪大会の開幕カウントダウンが本格的に始まっていた時期に、チベット問題を少しでも進展させようとなどとは北京政府側は欠片ほども考えていなかったことを証明しています。本当に平和の祭典という看板を掲げて興行商売をしている場合ではありませんなあ。IOCは北京大会の総括・反省もせずに、ロンドン大会の次を狙う国々から、「1票2000万円」とも言われる袖の下を貰うのに忙しい日々を送っているのでしょうか?あの異様な聖火リレーも、開催地となった北京市内で実行された恐るべき浄化作戦で住居を奪われた人達の涙も無視して、大会後には妖怪サマランチが「大成功と絶賛」してはしゃぐのに調子を合わせて祝宴を楽しんだ連中ですから、四川省のパンダ大震災もチベット騒乱後の人権弾圧も他人事だったのでしょうなあ。

■何とも後味の悪い五輪大会でありましたが、五輪大会が飯のタネになってしまった大手のマスコミは、商売ネタの感動と興奮が少しでも減るのを怖れて悲しく生臭い話題は極力避けねばならず、五輪報道は単なる五輪宣伝となっているのですなあ。チベット地域で騒乱が起こり、無気味な警備体制の中でチョモランマやらラサやら、好き放題に聖火リレーのコースにされてもダライ・ラマ法王側は最後まで北京五輪大会を支持していたのに……。


ダライ・ラマは今後の対応を協議するため、今月17日からインド在住の亡命チベット人ばかりでなく、世界中から自身の支持者らが集まり、インド北西部の亡命政府で特別会議を開催することを明らかにした。会議について「どのような結果になるか、まったく予想もつかない。ただ、民主的にそれぞれの意見を腹蔵なくオープンに披露する場になる」と述べた。

■「意見を腹蔵なくオープンに披露する場」も習慣もないチャイナに向かってダラムサラでの会議内容が流れ込むと大変なことになりそうです。この会議自体を内容の如何にかかわらず「分裂主義者の犯罪的行為」だと決め付けるはずですから、万が一、本当に「民主的な」議論が展開されたら愛国主義の動員デモで応じるかも知れませんなあ。日本国内からも勘違いした同調者が出ないことを祈るばかりです。


かつて自らが言及したこともある「政治的引退」が現実化するかどうかについてダライ・ラマは、「当分の間は、そうならないだろう。私はまだ(亡命政府に)全面的な責任があるし、(中国の)中央政府に関与していかなければならない」と引退の可能性を否定し、中国政府と粘り強く交渉する姿勢を明らかにした。
11月3日 産経新聞

■引退どころか、ダライ・ラマ制度の廃止まで言及された事もありましたが、言葉だけで戦い続ける法王としては少しでも事態を改善できる可能性のある事は時宜を得た上で語らねばならない立場なのでしょう。それもこれもすべての発言は直接・間接に北京政府へのメッセージとして発信されていたのですが、解放戦争史観に傷が付くのを最も怖れる共産党としては、チベット問題を原点に戻すのは至難の業でしょう。ラサ市に戒厳令を敷いた胡錦濤という不倶戴天の敵みたいな人物が主席になっていても、ダライ・ラマ法王は語りかけ続けていたのでした。馬耳東風という四字熟語がありますが、「馬の耳に念仏」の方が適切かも?
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾

2008-11-18 14:50:09 | チベットもの
10月28日、中国外交部の姜瑜報道官は定例記者会見の席上「ダライ・ラマ側との対話に対する中国政府の態度は真摯なもので、さらに接触し状況を見極めたい」と発言した。……さらに、誠意をもって行動で示すことがチベット人民の利益になると述べた。
10月30日 サーチナ

■木で鼻を括ったような返答の見本みたいな発言ですなあ。俺の物は俺の物、お前の物も俺の物、妥協と譲歩はお前だけの義務!という姿勢では交渉など最初から無理なのであります。自分たちの要求を少しずつ膨らませながら主張し続け、気長に時間を引き伸ばして相手が折れるのを待つのがチャイナ外交の体質でしょうが、相手の隙や弱みが見えると武力を使って威嚇する時は素早い。その流儀で日本は尖閣諸島を既に半分以上持って行かれてしまいましたなあ。


チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は2日、東京都内のホテルで産経新聞と会見し、今年3月のチベット騒乱以後に再開されたダライ・ラマの特使と中国政府による話し合いについて、「中国はチベット問題の現実を全く無視している。状況は変わっていない」と指摘した。

■産経新聞だけが熱心にダライ・ラマ法王の話を聞こうとしていたようです。奇妙な因縁と申しましょうか、産経新聞とは多くの面で意見を異にしていた筑紫哲也さんが亡くなったのが11月7日で、この日はダライ・ラマ法王が8日間の来日スケジュールを終えて日本を去る日に当たっていました。死者をホトケと呼んで決して鞭打たないのが日本仏教の特徴ですが、何かと苦しいTBSテレビだけでなく、テレビ朝日も日本テレビも放送中に何かと熱心に追悼の意を表わしていたようです。中にはちょっと身贔屓が過ぎて、聞いてる方が鼻白んでしまうほど持ち上げていた向きもあったようですが……。

■筑紫さんの名前を番組名に冠した『ニュース23』も間も無く編成替えで終了となるようですが、1998年の4月10日の事でしたが、同番組で『ダライ・ラマ法王インタビュー』と銘打って来日中だったダライ・ラマ 法王をお招きしての単独インタビューを放送したのでした。筑紫哲也さんは以前にも何度か会っているとのことで親しげに「希望」と「楽観主義」について聞いていたものです。

■でも、インタヴューの録画映像を放送した後で女性キャスターが、前年に公開されてアカデミー賞にノミネートされた映画『セブン・イヤー・イン・チベット』に言及して「チベット解放を描いた作品です」と真顔でコメントしたのが実に印象的でしたなあ。それはウソではありませんが、『ディア・ハンター』を観た後で「鹿狩りの映画でした」と感想を述べるのと同様に間抜けな響きがある蛇足コメントでありました。その発言は打ち合わせ済みだったらしく、筑紫さんは手元のメモを見ていて訂正もせずに次のニュースへと事務的に番組を進めたのでした。

■今年11月のインタヴューの続きです。


また、中国の温家宝首相が「ダライ・ラマはチベットと中国を分離させようとしている」などと述べたことに触れ、「温家宝首相に直接、その根拠をただしたい。私がそのような行動をとっていないことはすべての人々が知っている」などとして激しく批判。その一方で、「将来的にも中国政府に関与していきたい」とも強調し、中国側の方針転換に期待を示した。

■温家宝さんが生まれたのは1942年の9月だそうですから、その2年前にダライ・ラマ14世は民族と国家の危機を乗り切る使命を帯びて法王に即位しています。温家宝さんが小学校3年生の時に、今でもダライ・ラマ側が遵守を求め続けている『チベット平和解放に関する17条の協約』が締結されています。勿論、その締結にはさまざまな疑惑や問題があるのですが、興味深いことに『17条の協約』に並んでいる約束内容には、今のチベット亡命政府が要求している「高度な自治」がそっくり含まれているのです。でも、温家宝さんは当時、まだ子供だったから知らないのかも?

■青年だったダライ・ラマ法王が毛沢東の有無を言わせぬ「招待」に応じて北京に来たのは1954年のことでした。温家宝さんが北京地質学院(現・中国地質大学)に入学するのは1960年ですから、北京市内での騒動は知らなかったかかも?でも、18歳で大学に入る前年に起こったチベット動乱とダライ・ラマ法王の亡命事件ぐらいはリアル・タイムで聞いた記憶ぐらいはあるでしょう。いつの間にやら、「正しい歴史認識」で書かれた教科書で建国・解放の歴史を学んだ世代が、歴史の生き証人でもある御本人の交渉相手になってしまっているというわけです。本来なら、温家宝側がダライ・ラマ法王に「正しい歴史」の真実を尋ねなければならないのですが……。
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来るべきものが来たか?

2008-11-18 14:47:08 | 政治
■元・厚生省エリート官僚、現・天下り独立行政法人の理事長がご夫婦揃って何者かに殺害されました。「年金のスペシャリト」なのだそうです。官僚としては最高ポストの事務次官になったのは、婦唱夫随で「わるいね」収賄を重ねて辞職した岡光序治の後任人事の時だったのだそうです。大蔵省の「ノーパンしゃぶしゃぶ」と厚生省の「わるいね」は全国民の記憶に残る実に恥ずかしいお役所スキャンダルでありましたなあ。

■11月12日のことでした。トヨタ自動車の奥田碩相談役が、首相官邸で開かれた政府の有識者会議「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で何を考えたのか、厚労省を庇うかのような発言をしたとの報道がありました。曰く、「朝から晩まで厚労省を批判している。あれだけ厚労省がたたかれるのはちょっと異常。何か報復でもしてやろうか。例えばスポンサーにならないとかね」。

■トヨタ自動車が悪意に満ちたいわれ無き批判を浴びているのなら、立派な営業妨害になりますから、大いに「報復」でも弁解でもすれば宜しいでしょう。しかし、年金問題に絡んだ不備・不祥事・犯罪・罷業などなど、ちょっと叩けばもうもうと埃が舞い上がるような状態なのですから、「朝から晩まで」というほどではないにせよ、報道番組を自称するテレビ番組ならば材料探しに苦労はしませんし、政権交代を望んでいるマスコミも多く、国民の怒りが視聴率の上昇につながるのですから、年金問題・年金犯罪に関するテレビ番組は無くならないでしょう。

■それに、年金問題が根本的に解決されて老後の不安も心配もぐっと減れば、トヨタの自動車も再び売れるようになるのではないでしょうか?誰が言ったか「有識者会議」というお手盛り会合に呼ばれて参加する人たちは、素人凡人とは格が違う見識と情報を持っているはずですから、相当な自負があって「素人は黙っていろ!貧乏人は大人しくしていろ!」という驕りも手伝っての変な発言だったのかも知れません。

■トヨタの奥田さんが厚労省の味方になって怒っても、年金絡みのスキャンダルが続々と発覚するのですから、報道するな!と言われても上から(特に)下まで制度自体がボロボロになっているのですから、手直しや修復で間に合うのか?解体という名の看板の架け替えで諸問題が一挙に解決するのか?それこそ解散総選挙の第一の論争テーマにすべき大問題でしょう。マスコミの厚労省叩きも有識者会議の改革案も、官僚や諸君の個人名を取り沙汰することはありません。歴代社保庁長官ぐらいに偉くなると名前は公表され、突撃取材のインタヴューも求められるのは仕方がありません。天下り先の独立行政法人の「激務」が待っている職場に向かう途中にマイクを突きつけられても仕方がない理由があります。しかし、命まで奪われるとは……。テロの季節が訪れたとは考えたくありませんなあ。


18日午前10時15分ごろ、さいたま市……元厚生事務次官、山口剛彦さん(66)方で、男女2人が胸や腹から血を流して死亡しているのが見つかった。……山口さんと妻美知子さん(61)とみられ、埼玉県警は殺人事件の疑いが強いとみて捜査を始めた。……玄関を入ってすぐの場所に足を外へ向け、あおむけで倒れていたという。男性はシャツにズボン姿、女性は部屋着にスカートをはいており、外出用の上着などは着ていなかった。服の上から刃物で刺されたとみられる。玄関から外へ血が流れ出ているのを近所の住人が見つけて110番した。



……現在は夫婦の2人暮らし……隣の家に住む女性(59)によると、18日午前5時半ごろ、新聞を取ろうとして外を見ると、山口さん方の居間の電灯がついていたといい、女性は「山口さんは普段はこんなに早起きではないので、ずいぶん早いなと思った」という。また、前日の午後6時半ごろに雨戸を閉める際は「台所に電灯がついていたけれど、シーンと静かで、雨戸も開けっ放しだった」と話していた。……現場はJR埼京線武蔵浦和駅の北西約500メートルにある閑静な住宅街。……山口元事務次官は東大法学部を卒業後、1965年に厚生省に入省、年金局年金課長、年金担当の官房審議官、年金局長などを経て、96年から厚生事務次官を2年9カ月担当した。

■犯行は月曜の夜から未明に行われた可能性が高そうです。何故、週明けの夜に?誰が?個人的な極めて個人的事情による怨恨なのか?まさか、公的な義憤に駆られて……。課長、審議官、局長と年金一筋のピカピカと眩しいくらいに輝くキャリアが積み重なった時期は、社会保険事務所の現場ではあれこれと良からぬ不正操作やら杜撰なデータ管理が続いていた期間と重なっているようです。


その後、社会福祉・医療事業団と、事業団が組織変更した独立行政法人福祉医療機構の理事長を08年3月まで務めた。現在は、全国生活協同組合連合会理事長。年金課長時代に85年の年金制度大改正を手がけ、省内では「年金制度のスペシャリスト」と呼ばれていた。
11月18日 毎日新聞

■「罪を憎んで人を憎まず」とは言いますが、税金の無駄遣いの筆頭、悪の権化、伏魔殿としてすっかり有名になった天下り団体。そして、天下りに付随する莫大な退職金と言うオマケ付きの「渡りリ」。トヨタの相談役が「洗脳だ!」と怒るほど、全国民がしっかり記憶してしまった官僚国家が抱え込む闇と税金の無駄遣いの構造が、誰の責任なのかも分からないまま改革が先送りされ、郵政解散選挙以来、選挙権を行使できないまま憤懣を溜め込んでいる国民の感情は限界に近づいていると思われます。

■事件の真相が判明するまでは予断は許されませんが、エリート官僚夫婦が殺害されたという事実だけでも、政界・官界に与える衝撃を大きいでしょうし、何よりも不安と絶望にさいなまれて暮らす人々が受け取る無言のメッセージとイメージには危険なものが多いのではないでしょうか?舛添口先厚労相や麻生コロコロ首相の対応と発言に注目です。
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の壱拾九

2008-11-18 01:48:12 | チベットもの
■11月初旬に手術後の経過が良好というので予定より早めに来日して精力的に語ったダライ・ラマ14世でしたが、今にして思えば最も伝えたかったのは緊急会議を開催するので、多くの日本人にも注目して欲しいという一点だったかも知れません。テレビ局は来日直後の様子を短く伝えただけでしたが、活字メディアに対しては実に多くのメッセージを切々と訴えて行かれたのでした。

2008年10月26日、米AP通信によると、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世はインドのダラムサラで発表した声明で、「中央政府との対話に自信を失った」……「(対話による進展への期待を)すでに放棄した」と述べた。チベット問題解決を求めるダライ・ラマ側は、「これまで誠意を尽くして中間路線を模索してきたが、中央政府が積極的な反応を見せない」とし、「今後の路線は600万のチベット人民に決めてもらう」とする意向を示した。記事は、今月末に行われる話し合いを前に、ダライ・ラマ側が「尋常ではない態度を示して来た」と指摘した。

■「尋常ではない態度」になるのも当然で、時々体調不良が伝えられながらも世界各国を微笑みながら行脚し続けるエネルギーは大変なものですが、戒律厳守の生活と日々の修行を続けておられても、生身の法王にはこの世での寿命というものが我ら凡人と同様に定まっていますから、北京政府が五輪大会を開催するためだけのポーズとしてであろうと、交渉を再開したことに一縷の望みを懸ける意気込みが分かります。

■先代パンチェン・ラマが入寂した時の転生者選定に際して北京政府が見せた苛烈な豪腕ぶりを目の当たりにしているダライ・ラマ法王としては、御自分の寿命が尽きる時を舌なめずりして待っているような相手に対して寛容の態度を取り続けるのにも限界を感じているということなのでしょう。阿弥陀如来の化身とされるパンチェン・ラマに続いて観世音菩薩の化身とされるダライ・ラマまでが、北京政府の掌中に握られてしまっては、内外のチベット人たちが精神的に支えを失って阿修羅道や畜生道に落ちるような所業に出るような事態を心配されているのでしょうなあ。


英BBCは、独立を求める過激派が「強硬路線」をとるようダライ・ラマに圧力を掛けているが、「『非暴力』の姿勢を崩せば、せっかく築き上げた西側諸国との信頼関係も失ってしまうだろう」と指摘している。また、中国人民大学国際関係学院の金燦栄教授は、今回の発言を「苦境から脱するための、中央政府と西側各国に対する一種の脅し」とした上で、「温和路線を捨てることは、自らの首を絞めるようなものだ」と切り捨てた。
10月28日 Record China

■異論反論どころか独自の主張も許されないチャイナの学者を引っ張り出しても、政府見解と寸分違わぬ判で捺したような無味乾燥の発言しか出ないのは分かっていますが、ダライ・ラマ14世の言っている事と金教授の意見とは、不思議なくらいに似ています。ただ、ダライ・ラマ法王側は北京政府に対しても「温和路線」を採るように要求しているのに対して、金教授の方は政府に対しては何も求めていないという点だけです。でも、これが決定的に違う結論と行動に行き着いてしまうのが残念であります。
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