旅限無(りょげむ)

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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の八

2008-10-31 16:24:29 | チベットもの
夏季休暇までに委員会は候補者を5人までに絞り、そのリストをアカデミーのほかの会員に提示する。そして夏季休暇中に全会員は5人の作品を読破することが「望ましい」とエングダール氏はいう。9月には長期間におよぶ全体協議が行われ、投票が始まる。投票は無記名で、候補者1人に対する投票が過半数に達するまで行われるが、通常は2回目の投票までで決まる。……「規則は非常に厳しい。わたしが代表になってからはさらに強化した。公の場で作者について議論することは許されていないし、本を持っている姿を見られてもいけない。もし人前で話すならば、作者名を符丁で話す」とエングダール氏。……
2007年10月10日 AFP/Francis Kohn

■文学作品を通して異文化を理解するのは世界を平和にする効果があります。戦時中に「適性言語」などと言い立てて焚書まがいの弾圧や摘発に精力を傾けた大日本帝国と、開戦直後に日本語学習者を急募して徹底的に鍛え上げた米国との対照が有名ですが、日本は幕末から翻訳大国になる財産を築き上げて来た歴史がありますから、本来なら日本政府が翻訳文化を振興するための国際的な賞を創設してちょっと大きな賞金でも付けて、原作者と翻訳者を賞讃するような粋な制度を作ったらどうでしょう?小さな賞は既に運営されているかも知れませんが、国家規模で異文化理解を進めると同時に、相手国の文化を賞讃することで商売抜きの外交が展開できるかも知れませんぞ。

■さてさて、チャイナで家族が拉致され、ノーベル平和賞の候補になった胡佳さんに関する続報が入りました。


2008年10月23日、欧州連合(EU)の欧州議会は中国の人権活動家・胡佳氏に人権擁護の貢献者に送られるサハロフ賞を授与した。24日付で英BBC放送中国語版が伝えた。サハロフ賞はソ連の物理学者にして反体制運動家、市民運動家として活躍したアンドレイ・サハロフ氏を記念して1988年に創設されたもの。今年のノーベル平和賞有力候補と言われながらも落選した胡佳氏に贈られた。米国も胡佳氏への授与に賛同していたといわれており、欧州及び米国は協力して中国に人権問題改善を進めるよう強力なメッセージを送ったと見られる。

■旧ソ連の反体制運動家だったサハロフ博士の名前が付いた賞とは!欧米もなかなか手の込んだ事をするものですなあ。北京政府は中ソ対立の時期はありましたが、あれは当時の毛沢東がお手本として敬愛して止まないスターリンをソ連が否定した!というので喧嘩しただけのことで、ソ連が完成した人権弾圧システムはそっくり移植されて今の現役!ですからなあ。旧ソ連で「水爆の父」と呼ばれる業績を持ち、その一方で平和人権運動に夫婦で関わったサハロフ博士の名前を、日本の若い世代は知らないかも知れませんが、北京政府はよーく知っていますから、受賞の報せを聞いて激怒!


一方、中国政府は国家政権転覆扇動罪で懲役刑を受けている胡佳氏は犯罪者であるとの姿勢を取っている。外交部の秦剛報道官は先ごろ「もしサハロフ賞を胡佳氏に授与すれば、欧州諸国の中国への内政干渉及び司法主権の侵害にあたる」と強く批判している。
10月25日 Record China

■環境悪化の現状を報道しただけで「国家政権転覆煽動剤罪」になってしまうような場所で、よくもIOCは五輪大会を開催できたものです。妖怪サマランチは大会後に「絶賛!」して北京政府の自画自賛の提灯持ちまでやって帰ったのですから、サハロフ賞の件では何もコメントできないのでしょう。ノーベル平和賞の候補に関しても部外者みたいな顔をして無視しているくらいですから、五輪大会が国際平和や人権問題とは何の関係もない興行商売になっている何よりの証拠でしょう。本来ならノーベル平和賞の選考よりも、五輪大会の開催地を選ぶ事の方が、やり方さえ間違えなければ世界平和に大きく貢献できるはずなのですが、閉鎖された気味の悪い利権組織になってしまったIOCにはそんな役目は期待できそうもありません。

■ここでチャイナで唯一人のノーベル平和賞を貰った方の来日のニュース!残念ながら北京政府はこの授賞に今でも文句を言っていますし、更に残念なのは1989年に「世界平和やチベット宗教・文化の普及に対する貢献」が高く評価されて、ノーベル平和賞が送られたのに、それを伝えた日本の朝日新聞が同年10月7日の社説で、「チベットの緊張を高めるおそれさえある。そうなれば『平和賞』の名が泣こう」と変な言い掛かりをつけて北京政府に同調した事でありました。チベットの緊張が高まるとすれば、授賞を喜ぶチベット人に対する監視と圧力と「教育」が強化され、それに反発する動きが生まれるからで、問題は喜ぶチベット人の側にあるのではなく、ノーベル平和賞が平和を乱すのでもありません。


チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が31日から8日間の日程で日本を訪問する。ダライ・ラマは北九州市と東京都内で講演するほか、記者会見も予定されている。……ダライ・ラマの訪日は福岡県仏教連合会設立35周年を記念したもので、11月4日に北九州市で、同6日には都内でそれぞれ講演。日本滞在中、超党派の国会議員でつくる「チベット問題を考える議員連盟」のメンバーとの会見も検討しているという。ダライ・ラマはチベット暴動後の今年4月、訪米途中に日本に立ち寄ったが、本格的な訪日は昨年11月以来。ダライ・ラマの特使と中国側との協議が今月末に開催されるとの見方も出る中、発言に注目が集まりそうだ。
2008年10月22日 時事通信

■そうです。4月に訪問されたのに成田空港に「軟禁」状態に置いて知らん振りしたのは福田ホイホイ首相でしたなあ。安倍元首相の奥さんが夫の代理ということで会見しただけでした。麻生総理は金融危機への対応と国会対策と選挙準備で忙しい!という理由で丁重に無視するのでしょうか?日本国内での講演などを皆様のNHKが中継するかどうか?以前は教育テレビで特別に講演と質疑応答の様子を放送したことがあったのですが……。
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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の七

2008-10-31 16:23:04 | チベットもの
■ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)のホーラス・エングダール(Horace Engdahl)代表(58)に対してAFPがインタビューを行いました。発表当日まで受賞者が絶対に分からないと言われる鉄壁の秘密主義を貫く選考委員組織に関する貴重な証言が並びます。

……「何が起こるか、事前には分からない。アカデミー内でも、最後の瞬間まで誰が受賞するか分からない」という。受賞者選考をめぐる議論については「礼儀は保つが、白熱する。文学に関する議論では時に、不思議な反応が起こる」とエングダール氏はほほ笑みながら語った。氏は1999年以来、同アカデミー会員の代表を務めている。18人いる終身会員のほとんどは70-80歳代で、エングダール氏は最も若い会員の1人だ。

■58歳が最年少というのですから、なかなか重厚な雰囲気で組織は運営されているのでしょうなあ。でも、やはり欧州文化が最優先にされる傾向はメンバーからも窺えそうです。文化上の人種差別を言い立てるなら、アジアでもアフリカでも独自に組織を作って地道に努力して行くしかないかも知れません。


同氏はフランスの詩人、ポール・ヴァレリー(Paul Valery)やアルゼンチンの小説家、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges)などの名を挙げ、彼らがノーベル文学賞を受賞しなかったことは残念だと述べた。ボルヘスの代表作『砂の本(The Book of Sand)』がノミネートから外されたのは政治的思惑からだとする見方もあるが、エングダール氏は選考過程で「政治について議論されることは決してない」とこれを強く否定した。

■「政治的思惑」だけで決定されるノーベル平和賞とは格が違う!ということでしょうか?毎年、1人しか選ばれないという枠の狭さが思い掛けない選考漏れが発生する原因だと思われます。ノミネートの段階でも無数の傑作がふるい落とされるのでしょうからなあ。


ノーベル賞の選考は毎年2月に始まる。4~5人の会員で構成される委員会がまず、世界中の学会や文学協会などが推薦する200~300人の作家一覧から候補者を選別。4~6月には候補者は20人まで絞られる。300人と聞きますと多い感じもしますが、毎年、発表される作品数を考えれば世界中の「ベスト300」に残るのは容易なことではなさそうです。そこから20人に絞り込むとなると、選考する委員は大変なストレスに耐えねばならないでしょうなあ。


委員会では候補作品を原文で読むよう可能な限り努めるが、委員会の主要言語が英仏独露語に限られるため、難しい場合は訳本が用いられる。「翻訳を依頼することもあるが、(翻訳家には)口外しないことを誓約してもらう」という。過去数年では、候補となった詩人の作品の訳を依頼した例があるという。「詩の場合、翻訳は必須だ。翻訳家が来て朗読してもらい、その言語の機微まで説明してもらう」

■ここで「翻訳」の重要性が際立ちます。翻訳家自身の力量が問われますから、優れた翻訳家に恵まれない言語や作品は不運!日本人で始めてノーベル文学賞を受賞した川端康成の『雪国』は、本当に素晴らしい翻訳に恵まれたという説がありましたなあ。「詩」まで候補に挙がるとなれば、各言語の持っている音楽的な響きの違いも重要でしょうから、詩人本人以上に上手な朗読が可能なのかどうか?ちょっと気になります。日本の短歌や俳句などはどんな扱いを受けているのやら……。

広がる麻薬禍 その弐

2008-10-31 13:56:38 | 社会問題・事件
■一時はマスコミも「1000円になったら禁煙するか?」と、大真面目にアンケート調査などもしていたようですが、その時の解答から漏れていたものが有ったようです。その一つはすっかり有名になった北朝鮮製の偽タバコや密輸タバコに手を出す話、もっと怖いのが「タバコを止めて麻薬類に乗り換える」という選択肢です。公共の電波に乗せられない犯罪行為ですが、突如としてタバコが1000円になったら冗談ではなくなるかも?それが悪い冗談で杞憂に過ぎないと思い直そうとしていたら、急に大麻事件の報道が増えましたなあ。

警視庁浅草署は31日までに「失恋レストラン」の大ヒットで知られる歌手で俳優の清水健太郎(56)を自動車運転過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕した。清水容疑者は30日午後「ひき逃げをした」と出頭、同署が事情を聴いていた。……27日午後4時ごろ、台東区浅草の交差点で一時停止を怠って左折し、自転車で横断中の男性とぶつかり、男性の胸などにけがをさせてそのまま逃走した疑い。清水容疑者は「ものにぶつかったみたいだった」「友人に事故のことを相談したら『捕まるから出頭した方がいい』と言われた」などと話しているという。

■既に出頭するまでの「謎の3日間」が注目されているようですが、以前にショーケンこと萩原健一さんが交通違反で逮捕された時、しつこく薬物検査を受けたという話がありましたから、大麻常習者として有名だった清水健太郎さんならば、同様の検査を求められるに違いありません。相撲協会が大揺れに揺れている騒動の切っ掛けも「大麻」でしたし、それも抜き打ち薬物検査が発端でした。相撲協会が厳罰で臨んだばかりに、逆恨みが「八百長裁判」へと飛び火して文字通りの火に油を注ぐ結果になってしまって泥仕合が続いています。

■解雇された元若ノ鵬(20=本名ガグロエフ・ソスラン)は、最初の謝罪会見で「すいませんでした」を連発して相撲界への復帰を望んでいたのが印象的でした。その後の告発や暴露話から推測すると、彼の周りで大麻吸引は特に珍しいことではなかったのではないか?と勘ぐってしまいます。出稼ぎ身分の外人力士にとって解雇は国外退去と同義ですから、経済大国での稼ぎと将来の事業計画が吹き飛んでしまいます。「謹慎処分」だったら納得できたという話も有るようですが、それは薬物に甘い芸能界の傾向を参考にしたのかも?


清水は福岡県出身。昭和51年にデビュー曲「失恋レストラン」がヒットし、翌52年、「帰らない」で日本レコード大賞最優秀新人賞受賞、同年の紅白歌合戦にも出場した。俳優としても活躍し、一時は「Vシネマの帝王」とも呼ばれた。一方、58年11月に大麻取締法違反で初めて逮捕されたのを皮切りに、大麻と覚せい剤の所持でこれまでに4度の逮捕歴がある。平成18年5月の仮釈放後、一時は“格闘技デビュー”も目指したが、今年1月に芸能界に復帰する考えを表明。……
10月31日 サンケイスポーツ

■大麻と覚醒剤で「4度の逮捕歴」が有っても「復帰」が可能な芸能界と、本人曰く「ちょっと吸っただけ」で永久追放・国外退去の処分を受ける相撲界、特に外人力士の扱いは随分と違うと思われても仕方がありません。こんな時だけ「国技」やら「品格」やらを持ち出すから、「八百長」告発を誘発するのではないでしょうか?薬物に対する姿勢が一貫していないところに問題が有りそうです。ぞろぞろと出て来る薬物汚染の広がり具合を見ますと、日本の何処かで「大麻が吸えないなら相撲界には行かない」と秘かに決心した有望な少年力士が居るかも?さらにその少年が芸能人を目指すと言い出したら、本当に悪い冗談であります。

広がる麻薬禍 その壱

2008-10-31 13:56:02 | 社会問題・事件
■タバコの税金を大幅に引き上げて販売価格を1000円にしよう!という話が福田政権時代に飛び出したのですが、あの話は何処に行ったのでしょう?福田ホイホイ首相は民主党の意地悪と公明党からのイジメに辛抱し切れず、政権を投げ出してしまったのですが、総理総裁の「遺言」として麻生新総理の「顔」で自分が出来なかった解散総選挙を早期に実施する約束になっていたようですが、金融危機の対応策をせずに選挙をするわけには行かない!というのは表向きの話で、本当は極秘裏に調査した当落予想が腰を抜かすほどの惨敗になるとの結果になって、前もって月刊誌に送った選挙モードいっぱいの原稿との齟齬が生じてしまったとか……。

■民主党に負けないバラマキ公約を並べて経済対策だと言い張る一方で、財政立て直しの公約も守らねばならないから「消費税引き上げ」も予告するという、自転車操業・マッチポンプ状態になってしまった自民党であります。本当に3年後に消費税が今の倍になるのなら、煙草税の引き上げは見送られるのか?はたまた「毒を喰らわば皿までも」の勢いで、行き掛けの駄賃だ!とドサクサ紛れに増税してしまうのか?タバコだけは消費が低迷しても経済問題にならないのは、禁煙運動が医療費の削減に役立つからだそうです。

■先の自民党総裁選で落選した小池ゆり子候補は、愛煙家のイベントに参加して気勢を上げていたはずで、総裁選の中でもタバコ税の引き上げに関する賛否は語らなかったようです。どうやら、降って湧いたようなタバコ大増税の話は、選挙対策で消費税論議を封印するための苦肉の策だったのか?と政治の貧困を疑いたくなるようなタイミングと扱い方だったような気がしますなあ。消費税引き上げの話が出たらタバコ税の話が煙のように消えてしまうのなら、消費税に触れずに選挙をしようという姑息な話だった証拠になりそうです。


たばこが1000円に値上げされたと仮定すると、その後20年間で死亡を約6万人減らせることが、厚生労働省研究班の試算で分かった。喫煙率の最新データがある2006年を基準に計算した。……研究班の片野田耕太国立がんセンター研究員は「値上げは禁煙のきっかけになるが、それだけでは依存に苦しむ人をより苦しめることになる。楽にやめられるようサポートが必要」としている。……
2008年10月4日 時事通信

■厚労省の「研究」だの「試算」だのと聞きますと、年金制度の設計基盤となる人口動態の予測が注文主の官僚によって悪用されて、常に最も楽観的な数値ばかり採用された話や、医師免許を所持している人数と実際に医療に携わっている現役医師の数とを混同して「医師が余る!」などという狂気の沙汰の予測と警告を出して小泉改革政権を喜ばせたばかりに、今の医療現場が大混乱している事などを思い出してしまいますなあ。この禁煙に関する「研究」でも、専門家は医学的な「サポートが必要」だと言っているのですから、新たな資金が必要になるのに、癌の発症率や死亡率が低下する話ばかりが強調されて、あたかも全国民が禁煙したら医療費が劇的に減るような話になってしまう危険性が有るようです。


たばこが1箱1000円に値上がりした場合、今後9年で計9兆円の税収増が見込めるとの新たな試算を17日、厚生労働省研究班(主任研究者・高橋裕子奈良女子大教授)が公表した。京都大大学院の依田高典教授の試算では、禁煙の意思を示す人全員が成功するとして、最大1.9兆円の減収が見込まれるとしたが、高橋教授は「1年後には多くが禁煙から脱落する。減収はあり得ない」と反論している。研究班は、たばこが来年元旦に1000円になったとして2017年までの9年間の税収を試算した。
2008年9月17日 時事通信

■こんな下手な占い師みたいな水掛け論をするために研究費を使っているのですから、厚労省という役所は自分たちの本分をまったく分かっていないのでしょうなあ。社保庁を解体(衣替え)するのと、全面的に年金業務を民間企業に譲渡するのと、どちらが経済的で効率的で信頼性が高いか?の研究調査でもしたらどうなのでしょうなあ。

史上最悪の大統領 其の壱拾参

2008-10-30 15:42:43 | 外交・情勢(アメリカ)
文書は対米外交勝利の原因はミサイル発射(2006年7月)と核実験(同年10月)と明記。ミサイル発射、核実験ともに米国の金融制裁への対応(報復)だったとしている。さらに“核とミサイル戦術”により「ブッシュ政権は朝鮮と核対決か直接対話かの二者択一を迫られ、結局みずから直接対話を提起せざるをえなかった」と成果を強調。今後の見通しを、「(朝鮮戦争の)終戦宣言の契機となるだろう」と述べ、困窮する経済への影響について、「法的措置(テロ支援国家指定解除と敵国通商法の適用終了)で今後は米国をはじめ世界のすべての国が貿易と合弁、金融取引を行うようになり、世界銀行やアジア開発銀行などの国際金融機関からの融資も受ける道が開かれることになる」とバラ色の夢を語っている。

■確かに北朝鮮は地下資源に恵まれていると言われていますし、社会インフラの整備事業ともなれば、本格的に始まったら数十年間も続くでしょう。国際金融機関から融資を受けて、地下資源を開発して輸出し、外国企業を誘致しながら国内事業を立ち上げて産業を育成して行ければ、韓国が世界を驚かせた「漢江の奇跡」を髣髴とさせることになるのでしょうが……。外交交渉の切り札が原爆モドキと弾道ミサイルで、国内はスターリン方式の監視密告制度が今でも機能している一方で、国民の健康と教育に大いなる不安があるような状態で、バラ色の夢が実現するのでしょうか?

■「核の拡散」を防ぐという一点で譲歩した米国は、決して世界の賞讃を受けることは無さそうですし、ブッシュ大統領やライス国務長官がノーベル平和賞の候補になる気配もありません。一時はレアメタルを求めて欧米から美味しい投資話も舞い込んでいたそうですが、サブプライム問題から始まった金融危機で世界中の消費が落ち、生産が減り、何よりも資金がリスクを嫌うようになってしまいましたから、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の蛮勇を奮って北朝鮮に乗り込む企業はぱったり姿を消すのではないでしょうか?

■「金持ち喧嘩せず」という下世話な諺がありますから、少しはバラ色の皮算用が実現して、「先軍政治」を転換して国民生活を第一に考える国になってくれれば、カネしか交渉材料の無い日本としても、たとえ川砂利などの利権目当てであろうとも、政治家が動いて拉致問題の解決に近づけるかも?でも、軍部を押さえ込んだら手が着けられない混乱が起きる可能性の方が高そうですなあ。


対日政策に関しては、6月時点の米朝接近で「日本は孤立した」し、拉致問題の再調査に関する日朝協議を「米朝関係の急速な進展により6カ国協議で完全に孤立し強硬策をこれ以上続けられなくなった日本政府は、わが国に制裁解除の意志を示しながら対話を求めてきた」などと対米交渉の成功の成果と位置づけた。

■言いたい放題ですが、ほとんどが当たっている事なのが悔しい……。土壇場で拉致問題の解決が無ければ6カ国協議で何が決まろうが、日本政府は参加できない!という原則を守り通している限りは、たとえ米国が腰砕けになっても、日本には打つ手が残されていることになります。少なくとも制裁解除に関して「不快感」を示した事は記憶されるでしょうから、踏ん張りどころでしょうなあ。


文書発送後、米国はいったん解除を棚上げにしたが、10月11日(米国時間)に解除を発表、北朝鮮は核施設再稼働に向けた揺さぶり戦術で、任期終了間近のブッシュ政権から「解除」をもぎ取る「勝利」を収めたことになる。
10月15日 産経新聞

■米国と韓国との間では、あれこれとコード番号が付いた仮想プロジェクトが話し合われ、中には実行に移されている物もあるようです。金融危機の後始末を日本に押し付けようとする悪巧みが話し合われているという噂もあり、韓国経済が危機的状況になっている時でもあります。盗っ人に追い銭みたいな手打ちの経済援助を日本に求められるような風が吹き出す前に、ちゃんと「その時」に備えておくべきでしょうなあ。

■既に本国ではオリバー・ストーンの監督で伝記映画?まで封切られ、ニュース・レポーター役で出演した本職もキャスターという女性が自宅で暴漢に襲われたり、CGを駆使した暗殺映画が先行して公開されてしまうというブッシュ大統領です。もしも自伝が出たなら、「不適切な関係」に期待して大いに売れたクリントン大統領の厚いだけの自伝より、ずっと歴史的な意義のある裏話を期待して手に取ることになるでしょう。最初からゴースト・ライターの作品だと分かり切っていても、任期中に何を考えていたのかは知りたいですなあ。何かは考えていたはずですから……。
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史上最悪の大統領 其の壱拾弐

2008-10-30 15:42:20 | 外交・情勢(アメリカ)
■テロ支援国家指定の解除に関する報道がぱったり無くなって半月、北朝鮮関連の報道は将軍様の健康状態に集中しております。日本では我が事のように、連日、オバマ候補が有利!と変な期待を臭わせるような報道が続いているようですが、韓国筋からは大統領選挙の日程に合わせて物騒な攪乱戦術が使われる可能性が指摘されています。破れかぶれになって軍部が暴発するのではないか?と心配している専門家は、常に核兵器が使われることを恐れているようです。何処に向かってミサイルが発射されるにせよ、日本のイージス艦や地対空ミサイルがちゃんと対応できるのか?テロ支援国家の指定解除と同様に、日本が何も知らない所で米国がまたトンデモない決断をしてしまうかも知れません。

■平和憲法の精神で北朝鮮の暴発が止まり、崩壊する独裁国家から逃げ出す大量の難民を救済できれば良いのですが、金融パニックの先が見えない時期に日本が手も足も出せない軍事パニックが近所で起こるのは実に困ったことです。


ブッシュ米政権による北朝鮮へのテロ支援国家指定解除を、北朝鮮が「金正日将軍さまに米国政治史上最も好戦的で反動的な大統領ブッシュがひざを屈した降伏宣言」と位置付け、日朝関係については「米朝が急接近したから日本は孤立、対話を求めた」などとみていることが、日本の朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)幹部向けに送った文書で分かった。

■餓死者が200万人!と聞いたから、人道的支援で食糧を送ってやれば、「偉大なる将軍様に対する贈り物」だと言い張ってお礼の一つも言わずに居丈高に受け取る国ですから、理由はどうあれ米国政府が妥協したとなれば、国内向けの宣伝には絶好の材料であります。でも、こんな虚報に大喜びする人は軍部以外には居なかったのではないでしょうか?


この文書は6月時点で、ブッシュ大統領が指定解除の方針を記者会見で発表した後、北朝鮮から総連幹部に送られた活動指針「新しい転換的局面を迎えた朝鮮半島情勢について 主体97(2008)年7月」(A4全25ページ)。専門家によると「朝鮮労働党・中央委員会宣伝部が書き、定期的に総連幹部に送っている外交指針」という。……全編が「指定解除」に関する分析と今後の見通しで、北朝鮮の対米外交の考え方が解説されている。

■夏の段階で指定解除は既定路線になっていたようですなあ。知らなかったのは日本政府だけ?ブッシュ大統領の発言は、何度か変わって真意が読めなかったのですが、裏側では着々と交渉が進められていたのでしょう。


「あの《悪の枢軸》の烙印を押した大統領が、朝早く起きてホワイトハウスで朝鮮への重要経済制裁解除を宣言した意味は大きい」「米国の敵対政策転換の戦略目標に、軍事的抑制力(核開発)を片時も怠らずに強化してきた偉大な金将軍の超強硬策の原則と、対話には対話で応じるとの外交術の成果」などと述べ、「敬愛する金正日将軍さまの偉大な先軍領導で(朝鮮戦争以来)60年の米国による敵対政策をついに転換させた」と勝利の賛歌だ。この時点で北朝鮮は米政府が8月11日(議会通告期間)後の解除発効を確信していたことがうかがえる。また文書は金総書記の決裁を受けているとみられ、健康危機説の直前の“指令書”となった。

■核兵器さえ有れば米国は何処までも妥協する、そんな恐ろしいメッセージが世界中の物騒な連中に伝わって広まって行くのが最も困るのですが、国民を餓死させ偽札や麻薬で外貨を稼いで推し進めた核兵器の開発を、このように自画自賛されては米国政府も立場がありませんなあ。まあ、日本政府には最初から面子も立場も無いようなものですが……。

史上最悪の大統領 其の壱拾壱

2008-10-30 13:53:22 | 外交・情勢(アメリカ)
■隣国の北朝鮮では孝行息子がフランスで見つけた脳外科医を父親の元に送り込んだとの報道。フランス語を含めて数ヶ国語を操ると言われているITと密輸と密航のプロのお手並みは大したもののようであります。極貧の小国でも特権支配階級や将軍様であれば、今の日本でも珍しくなった「往診」を頼めます。それも欧州からの出張ですからご苦労様な話です。断片的に流れ出す噂によると脳内出血で半身に麻痺が残っている可能性が高いようですが、わざわざフランスから外科医を呼ばねばならないという事は、北朝鮮には脳外科医は存在しないことの証明なのでしょう。建国以来、食糧不足が解消したこともない国ですから、先端医療など期待出来ないのは分かっているのですが、将軍様でなければ脳外科手術も受けられない国というのは、何とも恐ろしい。

■世界は金融危機と世界恐慌の不安と心配が先行して、北朝鮮の原爆モドキやミサイルの心配などしている暇も余裕もありません。あの国は無視されるのが大嫌いな体質を持っているので、そろそろ注目を引くために三平の娘みたいに騒動を起こすかも知れませんぞ。話は10月11日に戻ります。


中川昭一財務・金融相は11日、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後、ホワイトハウスでライス米国務長官と会い、米政府による北朝鮮のテロ支援国指定解除の動きについて「拉致被害者にとっては非常にショッキングなことで、われわれとしては認めることはできない」との考えを伝えた。……これに対し長官は「(解除は)あくまで形式的な問題。全く意味のないことだ」などと説明した上で、指定解除する際には「日本に対して大統領からメッセージを出させる」と語ったという。 
10月11日 時事通信

■自国が震源地の金融危機に関する会議を開いている時に、同盟国に相談もせずに勝手にテロ支援国家の指定を解除すると何かのツイデみたいに通告する神経が分かりません。この件はあっと言う間に忘れ去られた模様で、日本のマスコミも被害者家族の皆さんが発した悲痛な落胆の声を伝えただけで、その後はまったく米国の裏切りに関する報道が無くなってしまいました。世界中の金融機関と預金者・投資家に対する裏切りの方が遥かに大問題だからなのでしょうが、新しい大統領が登場しても、北朝鮮に対するテロ国家指定が再び復活するとも思えません。

■拉致事件の被害国として、日本の動きは世界の常識から見れば到って緩慢で、さほど怒っているようにも見えないでしょう。莫大な予算を食っている自衛隊が目立った動きをするわけでもなく、日米韓の合同軍事演習が日本海の東よりで大々的に実施されることもなく、何が何でも拉致された国民を取り戻す!という気概は見受けられません。憲法や関連する法律が足枷になるのなら、国会はさっさと改正の動きを見せるべきでしたが、そうした動きは今になっても見られませんなあ。

■北朝鮮を相手に穏便な話し合いで何かを解決しようなどと日本政府が考えているのなら、間も無く起こる北朝鮮での大きな変化に対しても茫然自失、米国任せの恥ずかしい姿を晒してしまいそうです。被害者家族の横田さん一家をホワイトハウスに招き入れた時のブッシュ大統領は、当時の小泉プレスリー首相よりはずっと親身になって懸念を表明して元気付けていた印象がありましたが、所詮は他国の問題ですから米軍が救出に動くことなど最初から期待できませんでした。

■テロ支援国家の指定が解除されたら、北朝鮮が突如として飼い猫みたいに大人しくなると思ったら大間違い。


北朝鮮が黄海の北方限界線(NLL)近くの海上で繰り返し「危機指数」を高めており、韓国軍当局は北朝鮮軍の動向を注視している。……12日、「北朝鮮が先月中旬と下旬に白リョン島上方の海上で、警備艇の実射撃訓練と仮想対地攻撃訓練を実施したものと承知している」……。訓練には西海艦隊司令部所属の8戦隊の警備艇数隻が動員されたと伝えられる。……北朝鮮は今月7日に黄海上空で空対艦ミサイル2発を実験発射し、9日には海軍司令部報道官の談話として、韓国の艦艇が北朝鮮領海を侵犯したことで「海上衝突が起き得る危機一髪の事態がつくられた」と主張した。北朝鮮警備艇のNLL侵犯回数も今年はすでに7回を数える。……

■指定解除が決定された直接の原因は原爆モドキの実験を再開する動きが見られたことだと言われていますが、全面衝突に発展する陸上の38度線は避けながら、海上での小競り合いを演じて米国を揺さぶり続けていたのです。韓国の新大統領が大きく支持率を下げているのも北朝鮮にとっては追い風でしょうし、日本が目を覚まさないでいてくれるのも大助かりに違いありません。


韓国軍関係者は、北朝鮮海軍司令部が談話で、9月27日に延坪島と大青島近くで戦闘艦船が砲弾を打つ挑発行為があったと主張したことについて、当時、海上で韓国海軍艦艇の射撃訓練はなかったとした。その上で「黄海で起こっている一連の行為を注視している」と述べた。
10月12日 YONHAP NEWS

■「正当防衛」の狂言を演出するのは謀略の基本でしょうから、米国が指定解除に動かなければ、もっと危ない狂言を準備していると思わせて、イラクでの大失敗で身動きが取れない任期切れ間近のブッシュ政権を追い詰めて行ったもののようです。指定解除に到る経緯には、なかなか複雑な情報の錯綜があったとか……。

選挙は遠くなりにけり 其の弐

2008-10-29 15:42:05 | 政治
持ち主が分からない年金記録の照合を進めるため、昨年12月からすべての受給者と加入者計1億873万人に送り始めた「ねんきん特別便」について、社会保険庁は今月中にすべての発送作業を終える。9月30日まで計8811万人に送られた特別便のうち、46.5%に当たる4100万人からは返答がなく、171万人分はあて先不明で届いていない。発送を終えても、課題は積み残される。

■半分以上からは返答が来た!という事の方が大ニュースではないでしょうか?他に老後の保障が得られる役所は無いのですから、事態がここまで悪化してしまっても社保庁て手を切れないというのは実に切ないことであります。でも、あの実に不遜で失礼千万な文面を送り付けられれば、普通の日本語能力を持っている人なら激怒しないまでも実に不愉快な気分になるのは当然です。この報道記事でも「持ち主が分からない年金記録」などと、まるで自然災害みたいな書き方になっているのが不思議であります。「社保庁が記録管理を怠った」と正確に書くべきでしょうなあ。

■届出制で自己申告制だから、社保庁にはほとんど責任が無いかのような乱暴な理屈で運営されて来た日本の年金制度は、既に正確な記録も記憶も何処にも無いのです。更に、それを何としてでも復元しようという責任感は役所に無く、それに協力しようという共感など国民の中にはありません。それを承知で「ねんきん特別便」を送り付けているのですから、税金(年金保険料)の無駄遣い以外の何物でもありません。舛添大臣は「懸命にやっている」としか言わなくなりましたが、この人が東大の先生をしていた時に「懸命にやっている」という理由で出席日数もテストの得点も足りない落第必至の学生を進級させたり卒業させたりしていたのでしょうか?別に必死の形相で懸命にやってくれなくても結構なのです。普通に決められた職務を果たしてくれてさえいれば、こんな事にはならなかったのですから。


特別便には、年金の種類と加入期間が記されている。特に記録に誤りがある可能性が高い1030万人(受給者300万人、加入者730万人)には今年3月までに発送。残る9843万人(同3395万人、同6448万人)分も今月末にはすべて送り終える。

■勿論、この「記録に誤りがある可能性が高い」とされる年金記録には、今現在、火を噴いている「改竄記録」の大犯罪は含まれておりません。そもそも「ねんきん特別便」には受給予定額の欠片も書かれていないのですから、50年も60年も前の記憶を辿り記録を探し回って「年金の種類と加入期間」を調べて返答しても、実は改竄されていましたと追伸が届く可能性があるのですから、誰も本気で調べようとは思わないのではないでしょうか?記憶を頼りに申請しても、ほとんどが門前払いされているという報道もありますから、ますます不備な点を指摘する元気が無くなります。どうせ、こちらの事情や都合を斟酌せずに、「話を聞いてやる」という態度で出頭命令が来て、何とか出向いて行けばややこしい書類を作ったり、時間の無駄でしかない紋切り型の質問が続くのでしょうからなあ。


回答者は多くない。記録に誤りがある可能性が高い3月までに特別便を受け取った人に限っても、655万人(63.5%)止まり。その回答者のうち、記録に「訂正あり」は395万人(60.3%)で、「訂正なし」は260万人(39.7%)だった。一方、4~9月に送付された7781万人中、既に回答したのは3887万人(50.0%)。記録に訂正があった人は337万人(8.9%)で、訂正なしは3550万人(91.3%)だった。

■まだ国民の半分に、役所として相手にされている事を厚労省や社保庁は大いに感激して感謝しなければなりません。「訂正あり」の400万人近い対象者がどんな扱いを受けるのか?また、「訂正なし」と答えた人の中にどれほど徒労感と諦めの気持ちに襲われている人が含まれているのか?暗澹たるものを感じますなあ。半世紀以上も仕事をサボって記録を破壊し、無駄遣いばかりしていた役所の後始末を、どうして従順に制度を信頼していた人達がしなければならないのか?そこのところを舛添大臣は一度も明確に説明しておりませんからなあ。時々、自分が一番の被害者みたいな顔をすることがある変な大臣であります。


なお、昨年12月~今年8月8日までに「訂正なし」と答えた人のうち、宙に浮く記録が本人のものである可能性が高い約24万人に再確認したところ、78.2%に当たる18万7333人分は本人の記録で、実際は訂正が必要だったことも分かった。
10月27日 毎日新聞

■御高齢の加入者に責任を丸投げして「言質」を取ろうとするかのような姑息な手段を弄したばかりに、傷口はますます大きく開いて行くばかりのようです。国民の「生存権」と「財産権」を侵害しているのですから、立派な憲法違反だと思うのですが、今のところは役人の無能と無責任を問える刑法が無いのだそうです。仕事をしないでも給与・賞与・退職金を平気で貰い、あまつさえ天下り・再就職先まで与えられるのが当然だと思っている感覚には、普通の日本人は付いて行けません。インド洋での給油活動など、さっさと延長しておいて税制と年金制度の本当の抜本的改革を論点にした総選挙をして貰いたいものです。
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選挙は遠くなりにけり 其の壱

2008-10-29 15:40:54 | 政治
■格差社会の時代とかで、富の偏在が米国並みに進んで行きそうな日本でありますが、他人のカネを横領着服してでも格差を埋めてしまおうと思うのが人情なのでしょうか?石原慎太郎さんが独断で創設したお気楽銀行は、都の公金を元手に金融業を始めてみたものの、奇怪なノルマ制度を導入したばかりに銀行内の職員は乱暴な点数稼ぎに奔走し、腕自慢の詐欺師たちがブローカー業を買って出てあっと言う間に経営破綻!シロアリが去った蟻塚同然の新東京銀行は崩壊寸前となって、またまた都の公金を注入することになったのでした。
 
■今頃になって、詐欺だの横領だのと盗人がぽつぽつ逮捕され始めたようですが、賢いシロアリはたっぷり甘い汁を吸って何処かに逃げてしまっているのでしょうなあ。追加支援を要請した都議会では、「自分が経営していたら、もっと大きな銀行にしていた!」などと、子供の喧嘩の売り言葉に買い言葉でしかない空疎な啖呵を切った裕次郎さんの兄でありましたが、とうとう逮捕者が出たと聞いて、「自分は銀行の専門家ではないから……」と今度はマトモなことを言ったとか……。少しは大人になったということでしょうか?

■バブル時代には土地や絵画を右から左に動かすだけで、何億円ものカネが湧き出して来るという話が横行し、株の投機も大流行で額に汗して働く者は愚か者だと言われたものです。バブル再来を願って株式市場も規制緩和の対象となったら、ホリエモンを代表とするM&Aで企業をくっ付けたり転がしたり潰したりしてボロ儲けする連中が現われて、またまた朝から晩まで働いているのが馬鹿馬鹿しくなるような時代にもなりました。その一方で朝から晩まで身を粉にして働いても生活が成り立たない派遣労働者がどんどん増えたのも規制緩和の小泉時代で、日雇い労働者を派遣する親分は高級外車を並べて軽井沢に別荘を建てる成金生活を楽しめたのですから、やっぱり真面目に働くのは馬鹿馬鹿しくなってしまいますなあ。

■小泉改革の是非を問う解散総選挙が急がれるのに、自民党はあれこれと言い逃れをしながら総理大臣の顔だけ替えて凌いで来ましたが、今度は金融危機が起こったという理由で選挙はまたまた先送りだそうです。「小泉改革を継承する!」と宣言した安倍首相の後、福田ホイホイ首相の代になると冠が取れて「改革はねえ、改革はしなければいけませんよ。そうでしょ?」と脱力気味の何となく小泉改革と距離を置いて、もしかしたら見直しをするかも?と思わせるような話も出たものです。

■「郵政民営化の是非を問う!」と凄まじい形相で衆議院を解散した小泉さんの後、誰も「小泉改革の是非を問う!」と宣言して選挙をやろうとしないのは、やはり卑怯でしょうなあ。先行きが見えなくなると、「小人閑居して不善を為す」の諺通り、詐欺や横領が日本中で横行するようになります。そうなれば税金を払いたくなくなりますし、税金に準じた年金保険料なども、馬鹿馬鹿しくて払いたくなくなるのも人情です。「税金の無駄遣いをやめます!」あの福田ホイホイ首相でさえも気楽に約束していたくらいですから、これこそ日本の政治が抱え込んだ最大のテーマであり病根なのでしょう。「年金制度を改革します」というのも同様です。でも、庶民にとっては税金の無駄遣いをした役人や年金制度を崩壊させたバカ役人が逮捕される姿を見る方が、ずっと分かり易いのであります。

■「盗っ人は牢屋に入れる!」と格好良い事を言っていた舛添大臣があっさりと前言を翻してから、自民党内はすっかり内向きになってしまった感がありますなあ。


会計検査院の指摘で不正経理が明らかになった愛知県の出先機関「新城設楽(しんしろしたら)農林水産事務所」(愛知県設楽町)で約300万円が使途不明になっていた問題で、県警は29日、公金をだまし取ったとして、同県東栄町本郷、県職員内藤三重子容疑者(60)を詐欺容疑で逮捕した。……内藤容疑者は、物品発注を名目に公金をだまし取ることを計画。同事務所総務課主任だった2004年3月下旬から4月上旬までの間、架空の事務用品購入の支出金調書を作成するなどし、県から公金175万円をだまし取った疑い。容疑を認めており、「洋服代に使った」などと供述しているという。

■農林水産省の出先機関と聞けば、土地改良事務所とかいう暇そうな出先機関でバカ息子に騙されたとか言って莫大な公金を横領した御婦人が居ましたなあ。ですから「300万円」などと聞いても大罪を犯した感じがしません。困ったものです。日本の農政が腐り果てていることは分かっているのに、いざ選挙!となると組織票が期待できると言われているので、抜本的な改革などは行えないのでしょうなあ。だらだらと不思議な税金が地方の暇そうな出先機関に毎年毎年、垂れ流され続ける一方で食糧自給率はどんどん下がって行くのであります。


同事務所の使途不明金は、今年5月に会計検査院から不正経理を指摘された県が、調査したところ判明。2001~03年度の消耗品購入で、業者への発注額が納入された品の総額より約300万円多かったという。
10月29日 読売新聞

■「会計検査院」自身が、下手をすると税金の無駄!と言われかねない立場に追い込まれているのか、地方分権を進めるための生贄探しの見せしめ逮捕か、簡単に判断は出来ませんが、二重行政の最たるものと言われる国の出先機関は大急ぎで整理しないとエライことになります。でも、たった?300万円でも逮捕者が出せるくらいの役所なら、まだ少しは救いがあるのかも知れません。金融危機が起こる度に、巨大な銀行は「大き過ぎて潰せない」という理屈が罷り通りますが、年金制度も同様に問題が大き過ぎて手の施しようが無いようですからなあ。

史上最悪の大統領 其の壱拾

2008-10-29 02:11:11 | 外交・情勢(アメリカ)
この緩和措置で自己資本の最高40倍の負債を持てるようになったといわれる。こうして創出された借り入れ余力を生かして、投資銀行は住宅ローンを証券化したデリバティブ商品やクレジットリスクスワップといった金融商品に投資し、大きな収益を上げていった。……レッセフェール(自由放任主義)を標榜するブッシュ政権下では、「規制は悪、規制なしが当然」という雰囲気が支配しており、企業に有利な法改正をするのが堂々と行われてきたという。SECだけではない、EPA(環境保護庁)他の官庁でも規制を骨抜きにするような改正が堂々と行われてきたと報道機関は指摘している。

■日本では小泉・竹中コンビの規制緩和が進められた時期に当たります。「小泉改革」の功罪や是非論が起こり掛けたのに、解散総選挙が先送りされる度に議論も先送りされ、御本人は息子に選挙区を世襲させて隠居の身になってしまいましたなあ。仲良しだったブッシュ息子大統領は「規制緩和」の自己批判をしなければならない立場に追い込まれているというのに……。でも、ブッシュとボールソンのコンビは、小泉・竹中コンビに似ているような気もしますなあ。先日も、年初に住民票を海外に移しておけば住民税を踏み倒せると「大臣経験者の経済学者」が言っていたのを参考にして脱税しようとして摘発された人がいたようですが、一部の週刊誌が竹中さんは住民税を払っていない!と書き立てたことがありました。米国のボールソンもカリブ海の怪しい国にペーパーカンパニーを作って税金逃れをしているのかも知れませんなあ。


……米国には金融監督官庁が3つある。投資銀行を監督するSEC、商業銀行を監督するFRB、そして徴税と予算の執行を監督する財務省である。歴代の財務長官が政治の前面に出てくることは稀だった。問題の性格からすればSECのコックス議長が前面に出てくるのが自然である。ポールソン財務長官が前面に出てくるのはむしろ場違いとも言える。……2005年8月にSEC議長に就任したコックス氏にしてみれば、「ポールソン氏こそが、SECにゴリ押して異常な規制緩和を飲ませた張本人ではないか」との気持ちが強いのではないだろうか。ポールソン財務長官もその辺の事情が分かっているので、率先して自分の蒔いた種を一生懸命に拾おうとしているのではないだろうか。……

■以上が安藤茂彌さんの『シリコンバレーで考える』の抜粋ですが、最後に「1930年代の大恐慌で誕生した投資銀行という業種は、今年3月から9月の間にあっけなく自己崩壊してしまった。70余年の短い歴史であった」と総括した安藤氏は、「歴史は繰り返す。人間は過去の歴史から何も学んでいないのである」とレポートを結んでおります。さてさて、日本の政府や金融業界はバブルの悪夢からしっかり学んでいるのでしょうか?マスコミも……。


米共和党大統領候補のマケイン上院議員は28日、CNBCテレビのインタビューで、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に関し「現政権はやるべきことをやっていない」と述べ、ブッシュ大統領の経済政策を批判した。……差し押さえに直面している住宅ローン債務者を救済するため、政府がローンを買い上げた上で債務を減免する必要を強調。このアイデアに慎重なポールソン財務長官に「失望した」とし、当選した場合の再任は「その時の状況による」と述べるにとどめた。
10月29日 時事通信

■オバマ候補に「経済が分かっていない」と断じられて見識の無さを露呈してしまったマケインさんでも、現政権の経済政策は批判できるのです。何度も「ブッシュ大統領とは違う」と言い続けているマケイン候補ですが、さずがにボールソン財務長官の面子を潰す度胸は無いようです。選挙資金が心配なのでしょうか?
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史上最悪の大統領 其の九

2008-10-29 02:10:29 | 外交・情勢(アメリカ)
■何をやっても上手く行かずにアルコール中毒にもなったブッシュ大統領が、初めて「大成功」したのは株式の売却だったそうです。一体、誰が手助けしたのでしょうなあ?1989年の4月、ブッシュさんはテキサス・レンジャーズの株を80万ドルで購入します。訪米した小泉さんとキャッチボールするくらい野球が好き?そして、1998年に80万ドルで買ったレンジャーズの株式を売却して1500万ドルも儲けたのだそうです。せっせと石油の鉱脈を探して掘るよりも、これは美味しい話だと思ったでしょうなあ。つまり、ブッシュ大統領は野球よりも家業の石油掘りよりも、株が大好きになった可能性があるわけです。

■もう少し、安藤茂彌さんの『シリコンバレーで考える』の抜粋が続きます。


商業銀行には自己資本比率8%というグローバルな規制がある。そのために負債/資本倍率は12倍以内に収まる。実際に、アメリカの主要商業銀行では9.1倍から11.6倍の間に収まっている。唯一の例外はシティ・コープである。投資銀行部門を含んでいるので18.2倍と高いが、それでも20倍は超えていない。

■同記事に掲載された資料によりますと、ゴールドマン社は25.2倍、
破綻したリーマン・ブラザースは29.7倍で、メリル社は30.9倍、モルガン社は32.4倍、ベアー社は32.5倍という数値が並んでいます。ああ、恐ろしい。


投資銀行の負債/資本倍率の高さは異常である。もしSPC(資金調達のためのペーパーカンパニー)を使った簿外負債があれば、倍率は更に大きくなる。……商業銀行では安定的な預金が負債の大部分を占めるが、投資銀行の短期負債は借入金である。これでは、いったん信用不安が発生すると、直ちに資金的に破綻する。こんなに脆弱な規制をどの監督機関が認めたのか。

■この「簿外負債」というのが曲者だそうで、ヤバイ部分は全部隠してしまえる実に便利で危険なカラクリなのだそうですなあ。裏帳簿だの二重帳簿という物は脱税ツールの代表ですが、何故か投資銀行業界の「簿外負債」は摘発対象にはならないようです。リーマン社の破綻で世界中の金融機関が一瞬で疑心暗鬼に陥ったのは、隠された負債の大きさを誰もが知っていたことを示しているのでしょうなあ。でも、こんな危険な話を大手マスコミは取り上げて来なかったような気がします。


投資銀行の監督機関はSEC(証券取引委員会)である。SECは以前からNet Capital Ruleという規制を行い、負債は自己資本の12倍までとするよう指導してきた。だが、大手投資銀行5行は、この規制がある限り欧州系の投資銀行との競争に不利なるとの理由から、規制緩和を求めてきた。……この規制緩和を業界の代表として強力に推し進めたのは、当時ゴールドマン・サックスの社長(1998年~2006年)であったポールソン現財務長官であった。

■出ました!ボールソンさん!赤旗新聞が「年収は、推定約37憶ドル(約3800億円)、日給約10億円」とすっぱ抜いた大金持ちです。ゴールドマン社との腐れ縁は、ブッシュ政権ばかりではなくクリントン政権の財務長官も同社の最高経営責任者から引っ張って来たそうですから、米国は投資銀行の骨がらみになっていたという事でしょうなあ。レーガン時代はまだ物作りに励んでいたので、仲良しだった中曽根総理も協力して「バイ・アメリカ」キャンペーンをしていたのが懐かしい!ブッシュ父が大統領をしていた頃も、米国製造業界の大物をぞろぞろ連れて来日して宮澤総理に圧力を掛けていたものでしたなあ。


SECの規制緩和検討会議は2004年4月28日にSECビルの地下会議室で開催され、一切の報道機関を締め出して行われた秘密会議の形をとった。規制緩和措置は自己資本50億ドル以上の投資銀行に限って認めることとし、SECの5人のコミッショナー全員一致の賛成で決定された。自主管理(Self-Regulation)を基本的に認めたことで、SECの規制は事実上骨抜きとなった。以降、SECが投資銀行に検査に入ることは一度もなかった。

■なるほど、4年も前に投資銀行の暴走は公認されて始まっていたというわけです。ブッシュ政権の第一期が終わるぎりぎりのタイミングだった事になりますが、もしかしたら、この裏取引で再選が決まったのではないでしょうな?!お目付け役から何をやっても天下御免のお墨付きを取り付けたのですから、天文学的な収入を得る我利我利亡者が大量発生しても不思議ではありません。そんな亡者たちが莫大な政治献金をしたから、史上最高の選挙資金が集まったとしたら、何とも出来過ぎた話ではあります。

史上最悪の大統領 其の八

2008-10-28 17:54:13 | 外交・情勢(アメリカ)
■ちょっと手先の器用な日本の詐欺師が、CIAが秘密裏に使用している100万ドル紙幣という奇天烈な物を発明したそうですが、過去に10万ドル紙幣は発行されていると言いますから、この21世紀初頭に世界中が迷惑を被った大統領が存在したことを忘れないように、ブッシュ二代目の肖像画を刷り込んだ本物の100万ドル札を発行したら如何でしょう?また、数十年後に奇怪なバブルが膨らんだ時に、大金持ちになった愚か者が詐欺やお手盛り昇給でブッシュ紙幣を手にする時、はっとする効用ぐらいはあるのではないでしょうか?

■安藤茂彌さんの『シリコンバレーで考える』の続きです。


投資銀行という業種がなぜ消滅したのだろうか。モルガンの歴史を紐解くと1930年代の大恐慌に辿り着く。銀行に自由を許しすぎた大恐慌の教訓から銀行業務と証券業務に垣根を設けるグラススティーガル法が制定された。そして新法のもとでモルガン銀行は銀行業務の専業になることを決定した。当時モルガン銀行の幹部であったヘンリー・モルガンとハロルド・スタンレーは、モルガン銀行を退職して証券業務を行うモルガン・スタンレーを1935年に設立した。

■日本もバブル崩壊後にスキャンダルが噴出したのを追い風にして、大蔵省の財政と金融の機能を分割したのでしたが、麻生新首相は思うところあって盟友の中川さんに財務と金融の両方を担当させる事にしました。あまりマスコミが騒がないのが不思議なのですが、役所が分割されているから以前のような唯我独尊の暴走はしないと誰もが安心しているという事なのでしょうなあ。先の事は分かりませんが、麻生さんはキャリア官僚と非常に仲が良いという噂が絶えないことが心配です。

■日本の証券会社はバブル時代までは「株屋」という一種の蔑称で呼ばれていたものですが、当時は有名大学の、それも理系の大卒就職希望のトップが証券会社になった!と新聞などが書き立てたものです。その後、日本の証券会社は米国に生まれた怪しげな金融派生商品だの金融工学だのに押しまくられて、政府が主導した「貯蓄から投資へ」運動に助けられて、団塊の世代を相手に投資信託で地道に?稼いでいたようですが、優秀な日本の若者は蛮勇を奮って「外資系」の証券会社に職を求める時代が続いておりましたなあ。

■バブル期に大量採用された若きエリート達は、青田刈り・囲い込み・リゾート合宿で迎え入れられたのは夢物語で、会社の中堅とされる年齢を迎える頃には「窓際族」にされてしまったとか……。外資系に野蛮な夢を懸けた一旗組も、多くは心身を病んで人生を見直すの多大な努力をしているとも聞きます。アメリカの「株屋」が何をしていたのか、本国では議会の調査委員会が開かれて錚々たる面子が呼び付けられて油を絞られる中で、悪事が次々と暴露されている最中であります。


モルガン・スタンレーは、アメリカの大手企業の株式・社債の発行引き受け業務と、企業に財務面の助言を行うアドバイサリー業務を行い、少人数で事業を続けてきた。パートナーシップの形態をとり、……業績がよければパートナーは高額な所得を手に入れられた。モルガン・スタンレーは70年代の初めまで、従業員数は100人前後の小さな会社だった。著名なビジネススクールを優秀な成績で卒業した毛並みの良いWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)しか採用しなかった。

■文中の「企業の株式・社債の発行引き受け業務」というのは、日本でも「エクィティファイナンス」というカタカナ語で呼ばれた株式市場から企業が直接資金を手に入れる打ち出の小槌みたいに持て囃された「財テク」時代の流行語になったものです。これによって銀行は借り手を失って土地の投機に走るヤクザや不動産屋を新しい客としてつかんでしまったのでしたなあ。農協まで調子に乗って農家から預かったカネを住専に貸し込んで大火傷を負って、それが最初の「公的資金」騒ぎの元になったのでした。


……そもそも投資銀行は金融機関から借金して資金調達しているので、資金コストは高く、借入枠は限られており、自己勘定で取引することは難しかった。当時はM&A(合併買収仲介業務)にも進出していたが、これも数十名の小さな部門であった。……その後、モルガン・スタンレーは1971年に東京に最初の海外駐在員事務所を開いたのを皮切りに、次々と海外拠点を開設していった。1986年には株式会社に改組し、ニューヨーク証券取引所に上場した。事業内容も資産運用部門、投資部門を急拡大し、現在の従業員数は48000人……。

■モルガン・スタンレーが急成長する時期は第40代ロナルド・レーガン大統領の時代(1981年1月~1989年1月)と重なっています。その頃、今の大統領は何をしていたのか?一族の家業である石油関連企業の社長や最高経営責任者になっていますが、原油安の影響もあって失敗続き、経営していたハーケン社の株取引で大儲けしたのが「インサイダー取引」の嫌疑を受けてしまった!でも、副大統領だったパパやパパの友達の力は絶大で、調査に当たった証券取引委員会(SEC)は、怪しい株取り引きの「前に」インサイダー情報を得た証拠が無い!と無罪放免を言い渡しています。それがレーガン時代のブッシュ息子のやった事です。

史上最悪の大統領 其の七

2008-10-26 03:12:24 | 外交・情勢(アメリカ)
■米国大統領選は、実質的には既に終了しているような気配です。期日前投票に現われたブッシュ息子大統領の影は薄く、既に敗残の引退者の風情だったとか……。ブッシュ政権と最も距離があるという理由で押し出された共和党候補のマケインさんは、高齢である点が心配されていたので若くて丈夫なイメージを前面に打ち出せるアラスカ州知事のペイリンさんを副大統領候補に指名したのですが、見識の無さと過去の悪評が噴出して期待された女性票は逃げ出し、大統領の身に万が一の事が起こったら?と真面目に考える共和党支持者も退去して逃げ出したとか……。
 
■「不適切な関係」の大統領の下で副大統領を務めたばかりに、ブッシュ二代目候補に奇妙な敗北を喫したのがゴアさんでしたが、今回の大統領選は裁判沙汰になるほど僅差で争われる可能性は無さそうですなあ。但し、就任直後の大統領暗殺などという史上初の惨劇が起きないとも限らないのがアメリカですから、イラク戦争に躓き、野放図で能天気な経済政策を続けて世界恐慌を起こしたかけているブッシュ時代の次に、もっと世界が暗澹としてしまうような大事件など起こって欲しくないのですが……。


ブッシュ米大統領は25日のラジオ演説で、来月15日にワシントンで開くG8に中国、インドなどを加えた20か国・地域(G20)による「金融サミット」について、「金融危機に取り組む一連の会合の最初であり、危機の原因や対応の進捗状況を議論する」と述べた。さらに、「各国の解決策は同じではないが、今後、同様の金融危機を起こさせないとの共通原則で一致している」と強調した。

■毎週金曜日の夜にラジオを通じて全米に語り掛けるのが恒例になっている米国ですが、今のブッシュ大統領から何かを聞きたいと思う人が居るのでしょうか?G8の議長国は日本なのに、ワシントンで会合を開く理由は、決して愚かな米国大統領が世界の首脳陣を前にして懺悔と反省と謝罪を述べるからではありません。本来なら、傍迷惑な火事の失火元になった家の前に焼け出された被害者が集まれば、怒号の中で主人公は涙を流して土下座をするものなのでしょう。世界の富と経済を焦土に変えてしまったも同然の金融危機を引き起こした国の元首が、一言の反省も述べずに「一致協力して困難を乗り越えよう!」などと一足飛びに呼びかけたら、石ならぬ靴や万年質が飛んで来るかも?


一方、悪化する米経済については、「過去2世紀にわたって(自由経済の)原則を貫いて困難を克服してきた。再びできると自信を持っている」と述べた。
10月26日 読売新聞

■「過去2世紀」の中には米国発の世界恐慌もドルショックも、プラザ合意も含まれて居ます。従って、戦争も経済も分からない史上最悪の大統領が言うべき言葉は「自信を持っている」ではなく、また、「世界中に迷惑を掛ける」でなければなりません。本音の「また、日本を利用して穴埋めさせるぜ」という言葉は隠しておくにしても……。それにしても、世界恐慌が起こった「暗黒の木曜日」と呼ばれた10月24日とたった1日違いという無気味な日に、一体、どんな気分でラジオ演説をしたのでしょうなあ?困った大統領でした。温暖化対策に背を向け続け、その一方で世界の経済を氷河期に追い込んで、ブッシュ政権は終わるのですなあ。

■誰が書いた演説原稿かは知りませんが、何の根拠も無く「自信」を持っていると嘯(うそぶ)く最悪の大統領には「過去2世紀」を語る資格などまったく無い!という事を確認するには、ダイヤモンド社が開いているサイト、ダイヤモンド・オンラインに掲載している安藤茂彌さんの『シリコンバレーで考える』が非常に参考になります。 


……この1ヵ月間に、リーマン・ブラザーズは倒産し、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに買収され、ベアー・スターンズはJPモルガン・チェース銀行に買収された。残る二社、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは銀行持ち株会社を設立して、FRB(連邦準備理事会)の信用供与を受けられる銀行に変身した。これで大手の投資銀行はすべて消滅した。

■「世界恐慌」とセットになって永久に記憶されるのがフーバー大統領の名で、その恐慌を脱して米国を軍事と工業の超大国として蘇らせたのがルーズベルト大統領で、こちらの方は日本の義務教育でも学びますなあ。歴史の真相としては異説もあるようですが、ここでは通説に従っておきます。ルーズベルト大統領は米国内の経済恐慌を収拾し、太平洋と欧州での戦争にも勝利しましたが、アホの見本みたいにバカにされるフーバー大統領は、自由主義の伝統を守って史上最大の経済危機を理解するのが遅れたのでした。

■そこへ行きますと、ブッシュ息子大統領は、先の世界恐慌に優るとも劣らない金融危機を大爆発させただけでなく、イラクに攻め込んで泥沼状態を作り、ロシアの復活に手を貸し、北朝鮮を核保有国にしてしまったばかりか、チャイナにインド洋の東半分と太平洋の西半分を明け渡すチャンスを与えてしまった事になりますから、今度、これらの災厄のどれかが更に大きな災難のタネになっても、「ブッシュ二代目」の名前が世界中の人々の記憶に蘇り続ける事になるのでしょうなあ。

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の六

2008-10-25 19:38:16 | チベットもの
■24日夜の『朝まで生テレビ』をいつになく熱心に視聴してしまったのは、テーマが喫緊の金融危機問題で、同時刻に開いていた欧州市場で刻々と上がる円の為替相場と奈落の底に落ちて行く株価の数値が番組の節節に挟み込まれる緊迫感が原因でした。幼稚な怒鳴り合いは少なく、割と実のある議論になっておりましたが、経営コンサルタントの堀紘一さんが分かり易い比喩を使って危機の中身を説明していたのが印象的でした。番組の終盤、ノーベル賞に関係する話が飛び出したのはちょっと衝撃的でしたなあ。

■米国籍の学者も含めて4人の日本人にノーベル賞を贈ったのは、欧米諸国の恐ろしい算盤勘定の一環だというのですが、誰かさんは東京五輪も開催させ、サッカーのワールドカップも主催させて日本をどんどん持ち上げて、まるで世界の盟主かリーダーのように祭り上げようとしているのだとか……。勿論、それは何処かで用意されつつある世界を救うための莫大な経済援助の大半を押し付けてやろう!という魂胆なのだそうです。そう言われてみれば、今回の受賞者は揃って御高齢で評価された研究も随分と古いものでしたなあ。研究成果が実際に検証されたり応用されて真価が認められるまでに時間が掛かるという取って付けた様な解説もあったようですが……。

■本当に日本の骨までしゃぶり尽くす大陰謀の部品としてノーベル賞が使われているのなら、急速に外貨準備高を積み上げているチャイナなどは、そんなノーベル賞など要らん!と言うかも知れませんが、どうも日本は戦争に負けたトラウマから抜け出せず、海外から褒めらると単純に舞い上がってしまう傾向がありますなあ。


2008年10月11日、台湾の著名な詩人、余光中氏はノーベル文学賞の選考のあり方に疑問を投げかけ、華字文学賞の設立を呼びかけた。……08年のノーベル文学賞の受賞者は、フランスの小説家ジャン・マリ・ギュスターブ・ル・クレジオ氏(68)に決定した。10日に収録されたテレビ対談で、中国がノーベル文学賞と縁がないことについて質問された余氏は、「ノーベル文学賞は西欧の文学賞。選考過程では、非西欧圏、非英語圏の華人作家に対して明らかな偏見が存在する」との見解を率直に語り、華字文学賞の設立を主張した。

■文学作品は、欧米系の言語、特に英語に翻訳されない限りはノーべル賞の対象にはならないというのは衆知の事です。川端康成も大江健三郎も主要作品が翻訳されていなければ受賞は不可能だったと言われていますからなあ。


「ノーベル文学賞は創設100年以上の歴史があり、世界の主要メディアが注目する文学活動」と評価する余氏。しかし一方で、選考上の不利を指摘する。「受賞者の大半が西欧人で、次に米国人。アジア人は最も少なく34人。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語を母国語とする作家は、自国語で文化的背景を選考委員に伝えることができる。しかし、中国語が分かるのは選考委員18人のうち1人だけだ」。

■選考委員の中に日本語が自在に読みこなせる人は居ないのではないでしょうか?そもそもノーベル賞も近代五輪大会も、「欧州=世界」という世界観が共有されていた時と場所で始まって現在に到っているのですから、「世界の外」にも受賞者が現われるのは例外的な現象なのかも知れません。言論の自由が認められないチャイナから優れた現代文学が生まれる可能性は低いでしょうし、台湾と日本との文化交流は変な政治家の思惑で断ち切られたままになっていますから、今の台湾にどんなに素晴らしい作家が活躍しているのか、日本でも知ることは難しい状況ですし、明治以来の脱亜入欧が脱亜入米になっただけの日本では、広いアジアで書かれている文学作品よりも、やはり欧米の翻訳本が圧倒的に多い現実もあります。


余氏自身も、かつて受賞候補に挙がったことがある。しかし「世界的に作家は2グループに分類される。1つは、ノーベル賞を受賞したグループ。そして、受賞したことがないグループだ。むしろ私は後者に属したい。偉大な作家が多くいるのは後者だからだ。その数は絶対的に受賞グループを上回るだろう」と述べている
10月13日 Record China

■聞きようによっては負け犬の遠吠え、「酸っぱい葡萄」のような印象を受ける話ですが、ノーベル文学賞の選考過程で文字通り世界中の「偉大な作家」が漏れなく吟味されることなど不可能でしょうし、異文化を基盤とした作品に普遍性が認められるかどうかも定かではありますまい。この件に関しては、昨年の受賞者発表前にAFPが貴重なインタヴューをしております。つづく

北朝鮮の核 余話 其の伍

2008-10-24 00:00:51 | 外交・情勢(アジア)
■インタヴューの最後に、一番気になる話が出て来ます。 

--北朝鮮の核兵器の能力は?

「2006年の実験は1キロトン以下だったが、成功だった。インドやパキスタンも同様の小型化の実験をやっている。中距離ミサイル『ノドン』(射程1000~1300キロ)に搭載可能な核弾頭を完成した可能性が高い。われわれは深刻な問題を抱えている。特に日本、韓国は現実を直視すべきだ。私はこの問題を日米が真剣に話し合うべきだと思う。リスクが高いのは日本なのだ。……クリントン前政権もブッシュ政権も答えをだすことはできなかった。しかし、北朝鮮の核問題より日米関係の方が重要だと思うからだ」
2008年9月30日 産経ニュース

■クリントン大統領は精密爆撃による施設の破壊を決断する直前まで行き、それに驚いたカーター元大統領が平壌にすっ飛んで行って核と原発の交換という麗しい平和交渉に成功し、その功績でノーベル平和賞を受けたのでしたなあ。でも、北朝鮮は「交換」というのが大嫌いなので、「核も原発もミサイルも原油も電気も食糧も現金も……」と欲深さは底なしです。建国以来、ソ連から何でも恵んでもらえた「幼児体験」と、その後はチャイナが肩代わりしたのですが、チャイナとコリアの長い長い歴史の中では実に珍しい関係が実現しまして、兄貴分が弟分から一切収奪せず、軍事援助からエネルギーや食糧まで身銭を切って供与(昔なら下賜)したのですから、青春時代もボンボン暮らしが続けられた次第です。そんな国が「主体思想」という不思議な事を言い出したのは悪い冗談だったのでしょうなあ。

■ノドンが完成し、それに搭載可能な小型原爆が出来上がれば、日本列島のほぼ全域が標的になります。将棋で言えば飛車と角が、日本海の向こう岸から日本中に並べられているどの駒でも狙えるという事です。角道を塞ごうとイージス艦や迎撃ミサイルを急いで配備している日本ですが、運良く配備が間に合って、さらに天の配剤か神の御加護で撃墜出来たとして、その次の手は用意されていません。米国か韓国が助っ人役を買って出て報復の代行をしてくれたら、せっせと「後方支援」と称して燃料と水を補給するのか?はたまた外務省あたりが核攻撃による被害を調査算定して「損害賠償」でもする心算なのか?「支払いが遅れている戦後賠償から差し引いてもよいよ」などと言われたら何と答えるのでしょうなあ。

■このインタヴューが行われる2日ほど前に、国連総会の場で北朝鮮の外務次官が物騒な恫喝演説をしております。


北朝鮮の朴吉淵外務次官は27日、国連総会で一般討論演説を行い、「米政府が合意を破ったため、『行動対行動の原則』に基づいていや応なく対抗措置を取っている」と述べ、米国がテロ支援国家指定解除を先送りしていることを非難、核施設再稼働に向けた動きを正当化した。国際社会の注目を集めている金正日総書記の健康状態に関する言及はなかった。

■悪いのは常に相手のみで、自分の方には一点の非も無い!という立場は国が滅ぶまで変わらないのでしょうが、「行動対行動」という理屈なら、使いようによっては「報復」や「復讐」にも応用できそうです。今のところ、米朝間では「お手をしたら犬クッキーをあげる」という意味で使われているようですが……。古代ペルシアのハムラビ法典並みに「目には目を」「拉致には拉致」、「核には核」という具合には行かないようです。


核計画申告の検証方法については、米国が「国際標準」の検証を求めているが、朴次官は「6カ国協議でも、朝米間でも合意されたものではない」と述べ、北朝鮮は合意に基づく義務を誠実に履行してきたと強調した。そのうえで、米国が一方的に査察を行うというのは「われわれだけを武装解除させようとする強盗のような要求」と非難した。さらにこのように相互が信頼を欠いた状況で、6カ国協議参加国が義務を履行しないのであれば、「いかなる進展もない。これが6カ国協議の過程で得た教訓だった」と米国に指定解除を迫った。
9月29日 産経新聞

■この暴論演説の半月後に、ブッシュ政権はテロ支援国家の指定を解除したのですから、総選挙の準備に忙しい日本の議員や役所にとっては青天の霹靂であったでしょうなあ。でも、直接的な影響が無かったはずの外務省幹部にも、指定解除の怪しい流れは感知されていなかったのか?その点をまったく衝かない日本のマスコミは、今でも外交官に対して特殊な感情を持っているのでしょうか?毎日、一所懸命に職務に邁進している事や現在のポストを得るまでに若い頃から数々の難関テストを突破して来た事と、今現在の国益を左右するような大問題の扱い方とは何の関係も無い!という単純な事が理解できないような偏差値伝説の生き残りが大手マスオミに棲息している限りは、新聞読者もテレビの視聴者も、肝腎な事は何も知らされずにのほほんと暮らしていくしかないのかも知れませんが、黒船みたいな隠しようもない具体的で巨大な外圧が出現した時に、国民よりもマスコミが慌てふためくような無様な話は聞きたくありませんなあ。