旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

チャイナは何処も○○だらけ 其の弐

2006-01-31 17:32:33 | 外交・情勢(アジア)
■物事を始めるのも乱暴なら、終わらせる時はもっと乱暴なのがチャイナの伝統です。どの革命王朝も、建国から絶頂期を経て、大動乱の中でメチャクチャになって滅びましたからなあ。それを2500年も続けている人達ですから、生産調整など簡単なものだと考えているのでしょう。

だが、さらに深刻なのは、中国の生産設備能力がすでに約4億7000万トンもあるという事実だ。中国政府の国家発展改革委員会の馬凱主任は昨年12月、全国発展改革工作会議で「生産能力は需要規模を1・2億トン上回っている。加えて建設中の生産増強分が7000万トン、さらに建設計画分は8000万トンにのぼる」と明らかにしたうえで、「過剰な生産能力は、国内価格を世界最低の水準にまで落とす巨大な圧力となっている」と認めた。この発言は、生産調整や高炉の統廃合を急がなければ、倒産や失業などの経済危機を招くとの警告だ。改革委は対応策として中国全土で800社以上ある容積300立方メートル以下のミニ高炉の廃止を強く打ち出している。

■誰かさんが「先に豊かになれる者から、どんどん豊かになれ!」などと言うからこんな騒動になってしまったのですぞ!限度というものを知らない人口過剰な国なのに、日本はせっせと協力に勤しんでいたのですから、責任は重大ですなあ。


中国では昨年、景気過熱を抑制する金融引き締めが進むなか、鋼材価格の下落に伴って鉄鋼業界の収益悪化が進行した。ところが市場原理に従った淘汰(とうた)は進まず、地方のミニ高炉に融資する銀行が「不良債権処理を先送りし、延命された赤字企業が少なくない」(国際金融関係者)という。中国の鉄鋼業界は昨年10月から5%の減産を申し合わせたが、効果は上がっていない。しびれを切らした最大手の宝山鋼鉄(上海市)は1月から鋼材価格の20%値下げを断行した。国家直営である宝山鋼鉄の値下げは、政府が中小高炉つぶしを仕掛けた構図だ。最強メーカーの値下げに「ついてこられる国内企業はどれだけあるか」(鉄鋼専門商社)と衝撃が走っている。

■「宝山鋼鉄」というのはNHKのテレビ・ドラマの舞台となった場所ではないでしょうか?何とも恐ろしいドラマを制作したものです。海老沢会長時代の作品に違いありませんが、これこそ政府からの「圧力」を追求しなければならない問題でしょうなあ。チャイナを理解しない日本に比べて、さすがに現地の政府は人々の気質を知り尽くしています。「2割の値下げ」など、血も涙も無い暴挙です!しかし、こういう手段に訴えないと何も動かないのがチャイナです。総領事官で自殺事件が起こった頃、こんな大問題が置きつつあったという訳です。


ただ、生産過剰問題の解決は容易ではない。三村鉄連会長は「スムーズな解決策がないところに大きな問題がある」と頭を痛めている。中国メーカーの安値鋼材が昨年からアジア市場に流出し、市況に影響が出ている。高級鋼材の需要が多い日本にはいまのところ影響は少ないが、韓国に中国製品が浸透し、玉突きで韓国製品が日本に入り始めるなど、中国の過剰生産問題は世界経済をじわじわと侵食し始めた。産経新聞 - 1月31日

■国を栄えさせると思って後先考えずに作り続けた鉄がゴミとなっているわけですが、800も有る工場を強引に閉鎖に追い込んだ後、そこから溢れ出る失業者をどうするつもりでしょう?余った鉄で大きな輸送船を作って、何処かの国に「人間」を輸出する心算ではありますまいな!?黒潮に乗れば、貴重な燃料もほとんど使わずに3日で日本列島の何処かに漂着しますぞ!先に、余剰の鉄を買い叩いて警備艇を大量に建造して置いた方が良くはないか?と心配になります。チャイナに人権思想など根付くはずは無いのです。人民はこうしてゴミ扱いされるのですから、可哀想です。でも、不良外人に襲われて金品と生命を奪われる日本人の方がもっと可哀想です。


行政収費法(行政費用徴収法)の制定が、第10期全国人民代表大会(全人代)常務委員会の立法計画に取り上げられ、すでに国務院法制弁公室が具体的な作業に着手しているもよう。30日付で新華社が伝えた。全人代法律委員会によると、すでに2005年3月に開催された第10期全人代第3回会議において、行政収費法の制定が提案され、討論が行われている。中国では、地方政府がインフラ整備などさまざまな名目の行政費を設け、徴収していることが問題になっている。実質的には、中央政府が認めていない税を独自に課していることになるという批判がある。行政収費法は、行政当局による費用徴収に一定の歯止めをかけることが主な目的になる。専門家は、「行政費の徴収に対しては社会的な関心が高いが、法の制定は、行政の費用徴収行為に対する基準を形成する一助となるだろう」と解説している。
サーチナ・中国情報局 - 1月31日

■余らないのは徴収された税金だけのようです。幾ら搾り取っても不足するのが税金です。何処の国の役人も、一度手に入れた税金の既得権は絶対に手放しませんから、お手盛りのコネ採用で無駄な役人をどんどん増やして喜んでいるチャイナの役人ともなると、自分の子分に配る分と自分がピンハネする分とで、幾ら集めても足りません。博打と思って株に投資するわ、紙切れの人民元は信用なら無いから外貨や金地金を買い漁るわ、今のチャイナでは買うものが沢山有ります。株式市場や不動産がバブル状態になっているのを見ても、何処からカネが涌いて来るのか不思議ですが、絞り取られる人と搾り取る者とが対立してる構造から湧き出ているのでしょうなあ。

■年に一度の爆竹でウサ晴らしが出来る呑気な国にはもう戻れませんから、いびつな社会構造の矛盾をどんどん深刻化させる人口増加と経済格差が限界まで突き進むでしょう。既に、春節前の大移動の時期には、全国の列車は文字通りの寿司詰め状態で、網棚まで座席になっているとの話です。そして、長距離移動の必需品が「紙おむつ」になっているとの報道も有りました。列車に乗ると、のべつ幕なしに食い続ける人達ですから、トイレ事情は最悪です。大人も子供も紙おむつを使って、その後始末はどうしているのでしょう?嗚呼、考えるだけでも恐ろしい事であります。

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チャイナは何処も○○だらけ 其の壱

2006-01-31 17:31:02 | 外交・情勢(アジア)
■昨年の夏、香港のディズニーランドで行儀の悪い客が目立って仕方がない、という如何にもチャイナらしいニュースが有りました。出物腫れ物所構わずで、ツバや痰をぺっぺと吐くし、トイレの配置よりも自分の排泄欲を優先させるし、暑いと言っては直ぐに裸になるし、場内の清掃やトイレの管理を担当する方々のご苦労が忍ばれますなあ。ちょっとでも注意すると、けたたましい反発が10倍になって返って来ますから、黙々と「シジフォスの神話」に堪えねばなりません。ゴミ掃除係がストライキでも始めたら、あっと言う間にスペースマウンテンよりも巨大なゴミの山が出現するでしょうなあ。

春節(旧正月)を迎えるにあたり、中国各地で爆竹が鳴らされたが、ゴミ問題も深刻だ。30日付で東方早報などが伝えた。各地のゴミの量は、北京市458トン、上海市1100トン、浙江省・杭州市256トン、江蘇省・南京市100トンなどとなっている。北京市では、清掃スタッフ約1万人、清掃車236台を動員した。また、くすぶっている火を消すために、武装警察5000人も投入した。このほか、上海市では、清掃スタッフ3.5万人を動員、杭州市では清掃車1025台分のゴミを片付けたとしている。サーチナ・中国情報局 - 1月31日

■下手に爆竹を止めると暴動の引き金を引く事になりますから、政府もゴミ掃除に予算を割くしかないのでしょう。しかし、オリンピック本番ともなれば、テロ対策で爆竹は当然禁止されるのでしょうが、史上初の快挙を爆竹無しで祝えるのでしょうか?天安門を埋め尽くす(動員された)人民が思い思いに爆竹を持ち寄って、それを一つに集めれば結構な破壊力を持った即席爆弾の完成です。中には「特性爆竹」を工夫する人も来るでしょうし、服の下に巻き付けて来るややこしい人も出るかも知れません。仮に禁止にしても、屋外や道路で行なわれる競技となれば沿道から爆竹の束が投げ込まれたりしないでしょうか?その度に公安がどっと飛び出して来ては面子が丸潰れですなあ。それでも、使用後はただの紙屑になるだけですから、爆竹ぐらいはゴミの内に入りません。


昨年初めて粗鋼生産3億トンを突破して鉄鋼超大国の道をひた走る中国。その高成長の足元で、世界第2位の鉄鋼大国・日本の生産量に匹敵する約1億2000万トンもの過剰生産能力の問題が表面化した。中国当局は今年から、乱立する地方の中小高炉を軒並み廃業に追い込む決意だが、余波は中国国内だけでなく世界に及ぶことが避けられず、関係者はかたずをのんで見守っている。

■農業であろうと工業であろうと、生産物という物は過剰になればゴミとなる宿命を帯びています。しかし、共通の国際価格で取引される原材料が過剰になるのは困りものです。


生産設備のフル稼働と過去最高の収益に沸く日本の鉄鋼業界は今年、不安を抱えた状態で年明けを迎えた。「すべての問題は中国の過剰能力、過剰生産にかかわっている。どのタイミングでどう解決されるか」-。日本鉄鋼連盟の三村明夫会長(新日本製鉄社長)は19日の年頭会見でこう語り、表情を曇らせた。日本経団連副会長で中国委員会委員長の三村会長は中国を熟知するだけに、問題を過小評価していない。国際鉄鋼連盟がまとめた2005年の世界生産速報によると、世界の粗鋼生産は前年比5・9%増の11億2936万トン。日本0・2%減、米国5・3%減、EU15カ国2・5%減と先進国は、価格安定を狙う減産で足並みをそろえたが、中国だけは前年比24・6%増の3億4936六万トンと突出した生産増を記録した。

■なまじっか日本が大々的に技術援助を続けたので、毛沢東時代の「土炉法」騒動で屑鉄の塊を作って喜んでいた頃とは様変わりで、なかなかの高品質な製品を大変な勢いで生産しているようです。『大地の子』などという恐ろしいテレビ・ドラマをNHKが放送したそうですが、感動したとの声が沢山寄せられたとも聞きます。一体、日本人は何に感動したのでしょう?残留孤児の物語だったようですが、舞台は製鉄所なのでしょう?これから「鉄は国家なり」の時代に突入するズレた国なのですから、最先端の製鉄所なんかを作ってやれば、韓国も日本も大いに迷惑するに決まっているではありませんか!それに加えて、愚かな経営者が有能な技術者を「リストラ」という便利な外来語を振り回して職場から追い出したばかりに、能天気な外務省の日中友好政策に乗せられて、あらゆる業種に亘って人材が日本から流出して、お人好しの日本人がチャイナの地で「熱烈歓迎」に感動したのだそうです。

■最初は「優れた教師だ」「恩人だ」と持ち上げられて、日本では邪魔者扱いされたのに、チャイナの人達の心は温かい!などと油断をしていると、技術の吸い取りが終われば「はい、さようなら」で御仕舞いです。韓国は真正面からヘッド・ハンティングに来ますから、集積回路の生産で追い抜かれても仕方が無いような気もしますが、援助だの友好だのと美辞麗句で煽り立てておいて、知的所有権も何も関係なく、パクリにパクッて後は独立してしまう過当競争のチャイナには手を焼きますなあ。もう手遅れだ、と言う人も多いようですが、大変な事が本当に起こり始めているようですぞ。(其の弐に続く)

小嶋と言えば、本末転倒 其の弐

2006-01-31 16:29:12 | 社会問題・事件
■小嶋社長の徹底した見事な本末転倒ぶりに、政府側も笑ってしまいたい気分のようです。国会の証人喚問でもコケにされている政府ですから、またしても小馬鹿にされたような気分に違いありません。

耐震強度偽装事件で、多数の偽装マンションを販売した開発会社「ヒューザー」(東京都、小嶋進社長)が、首都圏の18自治体に損害賠償請求訴訟を提起したことについて、北側国土交通相は31日の閣議後会見で、「故意に偽装した設計者を自ら選んだのは建築主。建物の安全にすべての責任を負うべきで、(訴訟費用の約2000万円の)印紙代だって住民の方々の補償にあてるべき。何かはき違えているのでは」と、強い不快の念を示した。さらに、同社が販売した分譲マンションの解体・建て替え費用など約30億円が計上された2005年度補正予算案が通常国会で審議中だが、北側国交相は「予算案が認められ、財政出動となったら、厳正に建築主に請求したい」と、ヒューザーに、国として速やかに損害賠償請求などを起こす考えを改めて表明した。以上は読売新聞 - 1月31日

■不思議なもので、ライブドアの株式が時価総額で8000億円も下落した!などというトンデモない話を聞かされた後だと、「2000万円印紙代」やら「工事費30億円」などと聞いてもぴんと来ません。弁護士を雇ったり高額の印紙を買ったりするお金は、若い娘さんを囲っておくのと同じ財布から出ているのでしょうが、小嶋社長は本当は大金持ちなのかも知れません。自分の欲望を満たすか、我が身を守るため以外のカネは一銭も出さない!という固い決心が有るのかも知れませんなあ。「俺の金は俺だけの物、他人の金も将来は俺も物、国家予算も俺の物」とでも信じ込んでいないと、こんな事は出来ないでしょう。こんな戦いを10年も20年もやる心算なのでしょうなあ。


耐震強度偽装事件で、姉歯秀次・元1級建築士(48)による偽装マンション約20件を販売した開発会社「ヒューザー」(東京都、小嶋進社長)について、9マンションの住民が31日、東京地裁に破産を申し立てた。ヒューザーが所有する不動産や預金などの資産を保全し、住民側への補償を確保するのが目的。同地裁は今後、ヒューザーの資産内容などを検討したうえで、破産手続きを開始するかどうか決定する。申し立てをしたのは、東京、神奈川、千葉の1都2県でヒューザーの欠陥マンションを購入した計309世帯の住民。これら住民に対しヒューザーは、瑕疵(かし)担保責任に基づく賠償義務を負っている。賠償総額は、ヒューザーの試算によると約84億円。これに対しヒューザーは、1月25日現在の純資産が「約7億4000万円」と主張しており、住民側は、破産申し立てによりヒューザーの資産を保全する必要があると判断した。住民側は破産手続きを通し、役員の責任も追及する構えだ。 読売新聞 - 1月31日

■「7億4000万円」から問題の印紙代と裁判費用が引かれると、7億円を切るのかも知れませんし、しつこいようですが、オネエちゃんに使う金額も毎月減って行くわけですから、住民の皆さんは、ざらざらと砂が落ちて行く大きな砂時計を見詰めているような気分になっている事でしょう。この砂時計は分厚いガラス製ですから、叩こうが蹴ろうが中に手は突っ込めないようです。歯がゆいでしょうが、相手が相手なのですから、能書きを言わせずに算盤ずくで攻める一手でしょう。でも、きっと小嶋社長は言い出しますよ。「私を責めても一銭にもなりませんよ。私が裁判に勝つように皆さんも応援しなさい」ってね。その内、小嶋社長の裁判費用を援助する「カンパ箱」がヒューザーマンションに設置される事でしょう。そのくらいの事は平気でする人のようですからなあ。勿論、これも「本末転倒」です。

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五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

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小嶋と言えば、本末転倒 其の壱

2006-01-31 16:26:39 | 社会問題・事件
■「若い時の苦労は買ってでもしろ」という格言が、昔の日本には有りました。しかし、ホリエモンや小嶋社長というカネしか信じない人達が騒ぎの中心になると、余り幼い頃からカネで苦労すると歪んだ欲望や人間不信の心ばかりが肥大化する事が例証されているようなので、「若い時の適度な苦労は買ってでもしろ」ぐらいに言い換えた方が良いかも知れませんなあ。ホリエモンは小菅の拘置所で隠し財産の心配でもしているのかどうかは分かりませんが、ヒューザーの小嶋社長は今も塀のこちら側で意気軒昂のようですあります。げっそりと痩せるでもなく、弱気の表情を見せるでもなく、杉村太蔵君と期を一にして「声」が急に小さくなって、ワイドショーを喜ばすような面白い暴言は吐かなくなったのが、唯一の変化でしょうか?

■そんな静かになった小嶋社長の内面には何の変化も起きていない事が明らかになりました。


耐震データ偽造事件に絡み、建築主のヒューザー(東京都大田区)が30日、建築確認の際に姉歯秀次元1級建築士の偽造を見逃したのは自治体の責任として、東京都、横浜市など18自治体に総額約139億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。一方、提訴には約2000万円の印紙代がかかった。被害住民からは「そんなに金があるなら住民に配分すべきだ」と怒りの声が上がり、提訴された自治体も「言語道断。本末転倒だ」とあきれていた。提訴されたのは、姉歯元建築士が関与した26のマンションが建つ自治体。横浜市や東京都北区など実際に建築確認をした自治体のほか、指定確認検査機関に代行させた自治体についても、「確認の権限がある」として訴えの対象とした。

■訴えられた横浜市は文書で「本末転倒だ!」と呆れながら怒っているようです。しかし、小嶋社長という人がやる事はほとんど全てが「本末転倒」なのですから、改めて文書で指摘するのはイカガなものでしょう?漏れ伝わる話によりますと、小嶋社長がこれまでにやった商売の代表的なものが、「先物取引」だったそうです。この詐欺商売は、契約前から「絶対儲かります!」を連呼し、殴られても蹴られても、水をかけられても絶対に黙らないのが成功の極意なのだそうですなあ。品物の売り買いなのですから、実際に取り引きして見るまで損か得かは誰にも分かりません。商売する前から「儲かる」と断言するのは、「本末転倒」です。

■怪しげな高級鍋も押し売りしていたそうです。「これで料理すれば絶対に美味しい!」と言って売るのでしょうが、料理の出来を決めるのは調理する人の腕と味覚です。基本からきちんと訓練を積んで、自分に適した道具を選べるようになって一人前、それから多少高額でも使い易くて丈夫な物を選び、そこで初めて「美味しい料理」が出来るのです。従って、カップ麺とゆで卵くらいしか作った事のない人間に、「絶対に美味しい料理が出来る」と断言するのも、やはり「本末転倒」です。


賠償額については、
▽ヒューザーが買い主に賠償義務を負う売却済みマンションの解体・耐震補強費用など約84億円
▽物件を売却出来なかったことによる損害約25億円
▽社会的信用低下に伴う損害など30億円--を積算した。
姉歯元建築士に対しては、賠償責任が認められても回収の見込みが薄いと判断し、提訴を見送った。毎日新聞 - 1月31日

■小嶋社長はどさくさに紛れて「30億円」儲けようとしていますぞ!自分が賠償や保障をしなければならない立場なのに、裁判に訴えて税金を取り込もうと言うのですから、これも「本末転倒」ですが、それ以上に「盗人猛々しい」とも言えそうですなあ。この人の心臓と頭脳はどんな材料で作られているのか、非常に興味が有ります。何でも、記者会見で明らかになった所では、若い女性を家賃40数万円の高級マンションに住まわせて囲っているそうです。今もその家賃(とお手当ても?)は毎月欠かさず支払って上げているとの話です。一説には正妻の方は質素な暮らしをしているとも言いますし、騒動の間、本宅に帰っていないようでもあり、ちゃんと生活費は入れているのか、と他人事ながら気になります。この奥さんと愛人との扱い方の違いも「本末転倒」と言えそうです。

■小嶋社長は、当初、資産50億円とか豪語していたようですが、発言する度に金額が目減りして、とうとう負債と相殺したら無一文と言い出したそうです。住めないマンションを売りつけた道義的責任からも、あちこちから賠償金に当てる資金を掻き集めるのが責任ある経営者ですから、本来なら保障に当てる資金は発表毎に増額されて行くものでしょう。ですから、詐欺がバレた直後から大ボラを吹いていたのも「本末転倒」でしょうなあ。「カネは有るから心配するな」などと青島幸男の歌みたいな事を言っていた頃、一体、彼は何を考えていたのでしょう?何も考えずとも自動的にホラ話が涌いて出てくるような思考回路が組み込んである大脳皮質なのかも知れませんなあ。(其の弐に続きます)

一皮剥いたら「十字軍」 其の弐

2006-01-31 11:05:32 | 外交・世界情勢全般
■アノ事件を思い出してみましょう。

1989年2月14日 イランの最高指導者アヤトラ・ホメイニによって『悪魔の詩』の著者ラシュディ、及び、発行に関わった者などに対する死刑宣告が言い渡され、ラシュディはイギリス警察に厳重に保護された。死刑宣告はイスラム法の解釈であるファトワー(fatwa)として宣告された。

1989年2月15日 イランの財団より、ファトワーの実行者に対する高額の懸賞金(日本円に換算して数億円)が提示される。

1989年6月3日 心臓発作のためホメイニが死去。ファトワーの撤回は行われなかった。ファトワーは発した本人以外は撤回できないので、以後、撤回することはできなくなった。

1991年7月12日 日本語訳を出版した五十嵐一(筑波大学助教授)が研究室にて何者かに襲われ、喉を繰り返し切られて惨殺される。 他の外国語翻訳者も狙われる。イタリアやノルウェーでは訳者が何者かに襲われ重傷を負う事件が起こった。

1993年 トルコ語翻訳者の集会が襲撃され、37人が死亡する。

1998年 イラン政府は、ファトワーを撤回することはできないが、今後一切関与せず、懸賞金も指示しないとの立場を表明する。
以上ウィキペディアより引用

■『悪魔の詩』(原題:The Satanic Verses)は、1989年にイギリスで出版された幻想小説で、今でも古本屋に並んでいます。ムハンマドの生涯を題材にしてはいますが、一種の地獄巡りのファンタジーです。その中にムハンマドが悪魔の誘惑に負けるような場面が入っていたのがホメイニ師の逆鱗に触れてしまったようです。日本では、筑波大助教授の五十嵐一(いがらし ひとし)さんが邦訳して、新泉社から1990年に発刊されました。大学構内での惨殺事件でしたが犯人はまったく分からないままでしたなあ。今回の風刺画問題では、「ファトワー」は出ていないようなので、犠牲者が出る心配は無さそうです。しかし、英・独・仏などで移民問題とイスラム教徒問題が絡み合って発火しそうな状態なので、「自由」と「世俗化」との問題が表面化すると、欧州内で自爆テロのもぐら叩きが始まり、終にはイスラム包囲網が出現してしまうかも知れません。

■そうなれば、イラク駐留軍とアフガニスタンで掃討作戦をしている部隊は一瞬にして「十字軍」の遠征隊になってしまいます。中東民主化が、いつの間にか「中東キリスト教化」になったら第三次世界大戦の勃発という事にもなり兼ねません。常任理事国が対テロ戦争を宗教問題と区別している間は大丈夫でしょうが、何かに付けて「アッラー、アクバル」を叫ぶ習慣を持つ人達を相手にするのも限度が有るような気がしますなあ。イスラム問題の最先端に位置していた昔懐かしい「アラブの大義」は、スポンサーだったソ連が崩壊してから見事に骨抜きになっているので、欧米諸国は安心してハマス苛めを始めているようです。しかし、余りやり過ぎると危険な「助っ人」を呼び込む事になるので、ご用心、ご用心。


パレスチナ評議会選挙で大勝したイスラム原理主義組織ハマスの最高幹部、ハニヤ氏は30日、ガザ地区で記者会見し、国際社会でパレスチナ自治区向け支援の見直しを示唆する動きが広まっていることを受け、欧米に対して財政支援の継続を求めた。AP通信などが伝えた。イスラエルや欧米などは国際支援が特にハマスの軍事部門に流れる事態を危惧(きぐ)している。イスラエルのオルメルト首相代行は30日、イスラエル放送で「イスラエル市民を狙うテロの資金を提供するつもりはない」と述べ、パレスチナ自治政府に代わって港湾などで徴収している関税などの引き渡しを凍結することを示唆した。国際社会による「ハマス兵糧攻め」の動きに対して、ハニヤ氏は記者会見で「支援はパレスチナ人の給与や日々の生活、社会資本に振り向けると保証する」と確約した。

■「アラブの大義」もキリスト教精神に助けられるようでは立つ瀬が有りません。欧米の人道博愛主義はキリスト教文化から生まれたものですから、イスラムは自慢の互助精神が失われている事を反省しなければ太刀打ち出来そうも有りません。アラファトさんはパレスチナ闘争を商売にしてしまったばかりに、後に残された人達は大変な目に遭っております。折角独立しても、生産活動をする基礎教育が行なわれていなかったのですから、元気なのは子供の頃からテロリスト育成教育を受けた連中ばかりのような状態でしょう。文化大革命直後と同じですなあ。武器の扱いばかり上達した人達が国づくりをしようと言うのですから、頼みの綱の援助資金が減ったりすると、血で血を洗う分捕り合戦が始まるでしょうし、一番物騒なグループが治安活動を行なうという悪い冗談が現実化しようとしているのですから、本当に悪い冗談のような事件が多発するに違い有りません。


AP通信によると、自治政府議長府は30日、アッバス議長が同日午後、ヨルダンに向かい、同国のアブドラ国王と会談すると明らかにした。31日にはエジプトを訪問する予定。武装解除などハマス穏健化で仲介を要請するとみられる。イスラエル放送はアッバス議長がエジプトでハマス政治部門指導者のメシャール氏と会談すると報じた。一方、選挙で惨敗したパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハを支持する自治政府治安機関要員は30日、ファタハ指導部の退陣を求め、ガザ市でデモを繰り広げた。毎日新聞 - 1月30日

■「アラブの大義」と「反イスラエル闘争」の支援という名目で集まった資金を溜め込んだアラファトさんは、PLOが武装解除した後は軍資金をばら撒くのが仕事になっていたようで、戦闘を止めた戦闘集団が腐敗堕落するのは自然な流れです。今度はハマスが武装解除しなければなりませんが、武器を無くしたハマスはハマスではなくなって、ただのサンタクロースか慈善団体になってしまいます。迷彩服と目だし帽姿で慈善活動するのはちょっと恥ずかしいでしょうなあ。PLOと同じようにハマスも腐敗堕落してしまうのではないかと心配?になります。ハマスから分離する過激集団も現われるでしょうし、パレスチナ人同士の暗殺やらイスラエルに対する八つ当たり自爆テロも頻発する可能性が高まります。

■早く教育と地場産業の育成に着手しないと、手遅れになってしまいますなあ。ヨルダン川西岸の主要産業はキリスト教徒の観光業なのですから、「名物は自爆テロ」などという時代を早く終わらせて、イエス様が生まれた馬小屋とかマリア様が使った揺り籠とか、落語の『火炎太鼓』みたいな楽しい商売を再開した方が良いでしょう。「聖地の土」のビン詰やら、「聖地の空気」の缶詰だって売れるんですから、早く「剣を鋤に」変えた方が良いでしょうなあ。

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一皮剥いたら「十字軍」 其の壱

2006-01-31 11:04:41 | 外交・世界情勢全般

■イラクではサダム・フセイン大統領が大変にお元気で、裁判所から追い出されるほどだそうです。世が世ならば裁判官だろうが検察官だろうが、文字通り首にしてしまえた人ですから、自分が座らされているが被告席だとは思っていないようで、発言は全部「大統領演説」になってしまいます。うっかりしていて負けただけなのだから、彼が訴える事は「復讐」と「逆襲」です。先の対米戦争に日本が敗れた時、GHQが最も怖れていたのも同じ事でした。「敵討ち」という言葉を徹底的に取り締まり、時代劇は映画も演劇も本も禁止!勧進帳を題材にした黒澤明の映画『虎の尾を踏んだ男たち』でも、主君のために命を投げ出す内容だから発禁処分になったほどでした。やられたら倍にしてやり返す、それが国際的な暗黙のルールでした。

■しかし、熱核兵器まで作り出した人類が、昔通りの復讐劇を繰り返していたら、世界中が原爆や水爆で穴だらけになってしまうので、核保有国が復讐の代行をする約束が出来たわけです。国連安全保障理事会の常任理事国という名前を持つこれらの国々は、他の国の代わりに懲罰を考えて復讐の代行をしてくれる仕組みですから、当然、常任理事国を標的にした復讐は原理的に認められません。フセイン元(ご本人にとっては現職)大統領としては、武装勢力が頑張っているのだから、これを火種にして米国を追い出すアラブ式の喧嘩をするように国民に訴えているわけです。つまり、国連相手に喧嘩しているのですから、国連傘下の組織とも喧嘩を続けているわけです。核開発の調査を拒否するのも、人権問題をごちゃごちゃ言われるのも拒否するのも、反国連政策の一環でしょうなあ。

■アッラーの思し召しで、砂漠の下に原油と天然ガスを埋めて貰っていた国は自前で戦費を調達出来ますから、抜け駆けして武器で儲けようとする不埒な国を引っ張り込んで武器弾薬を買い集める事も出来ますし、原油自体を武器に使うことだって出来ます。でも、油田を差し押さえられてしまったら御仕舞いです。マホメットの布教軍団以来、オスマン帝国まではイスラム軍は欧州を圧倒していましたが、これを逆転したのが近代国民国家というシステムでした。王の為でもなく、神の為でもなく、自分が所属する国家の為に戦う軍隊は文字通り滅亡を覚悟で戦いますから、神の思し召しによって和戦を考える軍隊と戦えば必ず勝ちます。最初に大砲を開発したのはイスラム軍でしたが、その精度と破壊力を飛躍的に高めたのは欧州の国民国家群でした。その時に生まれた軍事技術の格差は開く一方でした。

■こうした形勢を一挙に逆転する切り札が原油でしたが、産油国の団結が崩れてからは逆に足枷(あしかせ)になってしまいました。スルタンが復活しない限り、団結も帝国も実現しませんから、各国が自由に戦える道具が必要となって出て来た答えが核武装というわけです。今、イスラム諸国は本当に核兵器を持たない悔しさを味わっていると思われます。イラクに攻め込む高揚感で、ブッシュ大統領はうっかり「十字軍」という言葉を使って本音を漏らした事が有りましたが、イスラム教のネットワークをずたずたに切り刻みながら大規模な包囲網を構築するには、最新式の十字軍が必要になります。米国は着々とこの包囲網を完成させつつありますが、その規模の大きさは万里の長城を遥かに越えるトンデモない物なので、ところどころに穴が空いてしうのは分かっています。ラムズフェルドさん達が考えている即応部隊のアイデアは、網に穴や目の粗い所を全部埋めるのは諦めて、網の結び目に当たる場所に必要最低限の部隊を置いて、危険を察知したら即座に対応する作戦です。

■将棋で言えば、数ばかり多い「歩」を二重三重に並べて置いて「飛車」や「角」は後ろに温存しておくのは止めて、最前列に「香車」を並べているようなイメージでしょうか?しかし、折角のアイデアも「十字軍」にとっては鬼門のアフガニスタンでは役に立たないようで、ビン・ラディン君はネット空間に隠れてしまって手の打ちようが無いようです。対ソ連戦争の時に裏まで見せてしまった米国は、ビン・ラディンにすっかり裏をかかれているとの話です。「香車」の泣き所は後ろに回られたら何も出来ない事ですし、将棋の盤上から姿を消した駒を相手にする事も出来ません。そうなると、再び大包囲網を構築する方法を採るしか無くなって行きますなあ。


イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)をテロリスト扱いしたと受け止められるデンマーク紙の風刺漫画が、アラブ諸国から反発を浴びている。リビアが30日、在デンマーク大使館の閉鎖を決定、デンマーク製品ボイコットの動きも出始めるなど、アラブ側の怒りは当分、収まりそうにない。問題の漫画はデンマーク紙ユランズ・ポステンが昨年9月に掲載。時限爆弾付きのターバンを巻いたムハンマドを描いたもので、アラブ・イスラム世界では直後から抗議の声が上がった。これに対し、デンマーク政府は「言論の自由」を理由に同紙を擁護。一部のアラブ諸国の駐デンマーク大使がラスムセン首相に面会を求めたが、首相はこれを拒否したと伝えられている。時事通信 - 1月30日

■「言論の自由」が神に対しても有効かどうかは議論が分かれるでしょう。自由の帝国アメリカでも、『最後の誘惑』というイエスの新解釈映画が大問題になった事が有りますし、この種のデリケートな問題となると、アノ問題を直ぐに思い出しますなあ。
(其の弐に続きます)

不況脱出のカラクリ 其の弐

2006-01-30 16:15:50 | 社会問題・事件
■防衛庁の事件の続きです。
 
関係者によると、東京・六本木から移転した防衛庁庁舎(東京都新宿区市谷本村町)や、自衛隊中央病院(世田谷区池尻)の新設工事は「2大プロジェクト」とされ、その入札を半年後に控えた02年夏、ゼネコン側は元審議官に受注調整を行う方針を伝えた。
元審議官は特捜部の調べに対し、こうした経緯を認めたうえで、談合の継続について「いいでしょう」と応じたことも認めているという。防衛庁の移転に伴う一連の工事のうち、庁舎新設工事の指名競争入札は03年3月14日にあり、鹿島、大成建設、清水建設、大林組といったスーパーゼネコンなどが参加。2回の入札で全社の入札価格が予定価格(上限価格)を上回ったため、随意契約に移行して、清水建設などの共同企業体(JV)が7億4500万円で受注した。

■こういう事件に連座するような起業を超一流と言うのでしょうなあ。バブル崩壊の後で、アホな投機で大借金を背負って首が回らなくなって税金使って棒引きしてもらったメンバーがずらりと並んでおりますぞ!談合も税金の無駄使いですから、税金で救ってもらった後も税金を食い物にしているわけですなあ。こういう一流企業が建てたマンションならば安心なのでしょうか?


自衛隊中央病院は03年3月18日、2工区に分けて一般競争入札で発注され、一方は大成建設などのJVが12億7000万円で、もう一方は大林組などのJVが38億5000万円で受注した。元審議官は、同庁札幌防衛施設局長や建設部長などを歴任。審議官を最後に退職し、現在は中堅ゼネコンに天下りしている。審議官は、同庁長官、次長に次ぐ技術系の最高ポストで、上層部の関与判明により、年内にも予定されている防衛庁の省への昇格や、それに続く防衛施設庁の廃止・統合論議に影響を与える可能性もある。また、重電や空調メーカーを巡っては、同庁東京防衛施設局の発注担当課長(当時)が、予定価格の算出に使う「査定率」などを漏えいする官製談合が既に判明している。毎日新聞 - 1月30日

■日本のあちこちで、「税金が余っている」事は明らかです。足りない足りない、と病人や年寄りに恩着せがましい事を言いながら、談合と天下り、勿論、政治献金も上乗せした価格で落札しているのですから、その上乗せ分は正真正銘の「税金の無駄遣い」です。天下りとは無関係な中小企業は、鉄筋を抜いたり壁に穴を開けたりして稼ぐしかないようです。

国土交通省は30日、姉歯秀次元1級建築士が構造計算書を偽造した物件が1件増え、計18都府県、97件になったと発表した。新たに判明したのは、東京都江東区の分譲マンション「グランドステージ東陽町」で、耐震強度は基準の61%だった。このマンションの建築主は「ヒューザー」で、「木村建設」が施工し、指定確認検査機関「日本ERI」が02年に建築確認していた。同区はこれまで「偽造なし」としていたが、再計算の結果、偽造を確認したという。
毎日新聞 - 1月30日

■指定確認検査機関は小規模ながらも立派な天下り機関ですから、問題の根っこは談合犯罪と同じです。ここを忘れて小嶋社長を苛めていると、本当の悪い奴は陰で祝杯を上げて笑うことになりますなあ。小嶋社長も姉歯君も、既に人生を棒に振っていますが、天下って検査会社で高級取っている元役人は、まだまだ人生は安泰です。都市の再開発をマスコミは大々的に取り上げて、バブルの再来とまで喧伝したところも有ります。素人でも不動産ファンドに投資すれば、利息ゼロの銀行預金よりも有利だ!と囃し立てたメディアも有ります。自分が住むわけでも無いマンションを買って大家になろう!という美味しい話も出ていましたなあ。安く買って高く貸せば儲かるのは当然ですが、「どうして安いのか?」とは誰も問いません。利幅が大きいものが勝ちなのですからなあ。


ビジネスホテルチェーン「東横イン」(本社・東京都大田区)による無断改築問題で、同社が仙台市の「仙台中央1丁目1番」(05年完了検査)が、1階駐輪場を無届けでギャラリーに変更していたことが30日、同市建築指導課の立ち入り調査で分かった。同課は建築基準法(容積率の制限)に違反する可能性が高いとみて是正を求める方針。同課によると、立ち入り調査は、同社が市内で営業するホテル計4棟で実施している。「仙台中央1丁目1番」のギャラリーは一連の問題を受け、27日に閉鎖を発表していた。また、「仙台東口1号館」(92年完了検査)は94年3月の防災指導の調査で、1、2階の屋内駐車場計18台分を客室25室に無断で改築していたため市が行政指導。同ホテルは是正に応じている。毎日新聞 - 1月30日

■「ホテル戦争」などと呼ばれる出張族の皆さんに格安で宿を提供する商売が過熱しているのは新聞でも盛んに報道されていましたから、東横インという名前のチェーンが抜群の戦闘力を持っている事も有名でした。ここでも、「何故安いのか?」とは誰も考えず、そこで働く社員の待遇や、経営方針、建築物の内容なども、どうでも良い事です。安く止まれて朝飯食い放題、それが勝利の理由なのだそうです。地価が暴落して立ち上がれない地方都市の駅近くの土地を買い漁り、統一規格のホテルを建て続ける経営は、日本中の駅前の風景を画一化する破壊的行為だとはどのマスコミも言いませんでしたなあ。このチェーンの急成長も、日本が不況を脱した事の証拠の一つとして政府が利用していた節があります。そろそろ、日本はどうやって不況を脱したのか?とじっくり検証した方が良いですぞ。一喜一憂している「株式指標」にしたところで、中身が相当に怪しい事がバレたのですからなあ。

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不況脱出のカラクリ 其の壱

2006-01-30 16:14:44 | 社会問題・事件
■懐かしい橋本総理大臣の時代に、英国のサッチャー首相と米国のレーガン大統領を真似して「金融ビッグバン」をやったのは20年前です。乱暴に言ってしまえば、カネに関連する仕事をしている会社は何をやっても構わない!という大変化です。近所の商店でドルやポンドが自由に使えるようになる、などというややこしい話まで出ていましたなあ。それが実現する前に、日本の円が世界で一番価値の有る通過になって悪夢のバブル経済が起こったのでした。そしてバブルが崩壊して、形振り構わない後始末をやってアホな銀行やらゼネコンやらに税金が放り込まれ、政治家に税金を分捕って来て貰いながら活きている地方の土建業者には莫大な公共投資予算がばら撒かれた結果、天文学的な国の借金が積みあがったわけであります。

■バブル崩壊は、巨大地震に似ています。瓦礫になってしまった町を構成していた多種多様の建物の中には、間違いなく手抜く工事や違法設計の建物が混在しているのに、復興事業が最優先されて残骸の欠片を一つずつ吟味調査することなどしません。経済の巨大地震でもあったバブルの崩壊は、ドミノ倒しのような倒産の無限連鎖が起こると皆が心配しました。ピラミッド構造を持っている各業界は、親亀がこけると無数の子亀や孫亀がこけてしまうので、親亀の健康診断もしないでカンフル注射やら覚醒剤やら何でも使って元気にしたものです。

■都市部の連鎖倒産を食い止める内に、地方には資金も仕事も流れなくなってシャッター商店街が増えました。そんな地方から東京に向って芸能人やらホリエモンやらが集まって来たというわけですから、こうした人達にモラルだの恥だのを言い立てても無理でしょうなあ。ヒューザーの社長だって年齢は上ですが、都市部に集まっている旨味を求めて移住して来た人です。彼は都市も国も愛してなどいませんし、住民も顧客も大切になどしていません。妙に慇懃な言葉使いをするので誤解されるようですが、最短距離で富を手に入れるためには手段を選ばないのはホリエモンと同じです。姉歯君1人に責任を押し付けて、国と地方自治体から援助金を出させる心算だった頃、小嶋社長はマスコミに登場するのを大いに楽しんでいましたなあ。心の中では、富と名声の両方を手に入れたような気分だったのでしょうし、マスコミが煽り立ててくれれば次の事業展開が楽になるとも計算したはずです。本当に自分が悪いとは思っていないのですから、これは彼にとって至極当然の考え方でしょうなあ。

■不動産の売主も、設計部門の建築士も、そして現場の建設業者も、皆まとめて犯罪行為をしていました。建設業者とは区別されますが、狭い国土で建設する前には必ず古い建物の取り壊しが必要です。そこから出る膨大な瓦礫廃材の捨て場が無いので、関東平野の周辺には不法投棄の名所が点在しているのは誰でも知っている事です。捨てる時に法を破って平気な業界なのですから、真新しい建物を造る時だけ法を順守すると考えるのは間違っているでしょう。「丸投げ」だの「孫受け」だのという詐欺みたいな商売が横行している業界ですから、顧客や政府が出したカネが途中で消えて無くなって現場に必要な資金が足りなくなれば、材料を削ったり安く使える素人に作業をさせるしか無いでしょう。


ディーゼル車などの排ガスを制限する「自動車NOx・PM法」の規制を逃れるため、規制地域外に車庫があるように偽ったとして、警視庁交通捜査課が東京都八王子市の土木建築会社社長ら3人を電磁的公正証書原本不実記載容疑で逮捕していたことが分かった。
調べでは、3人は昨年3~8月、それぞれが所有するトラック計15台について、桧原村の営業所で保有しているかのように装った虚偽の車検登録を東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所に行い、いわゆる「車庫飛ばし」をした疑い。3人はそれぞれ同法規制の対象地域である八王子市、あきる野市、瑞穂町で土建業を営んでいる。所有するトラックが排ガス基準を満たさないことから、規制対象外の桧原村での所有を偽ったという。3人は「排ガス除去装置を整備する資金がなかった」などと容疑を認めている。
毎日新聞 - 1月30日

■耐震偽装問題は「国民の生命と安全」に関わる重大な問題だ!とマスコミも政治家も繰り返していますが、「資金が足りない」の一言で大気汚染も環境問題もまったく気にしないでいられる人達が参加している業界で、本当に顧客の安全などを真面目に考えている人がいるのでしょうか?「ほとんどの業者は真面目で…」などと調査もしないで口走る人がいるようですが、本当でしょうか?「リフォーム」などと言い換えて、人をバカにしたようなテレビ番組もあるようですが、不良建築か違法建築としか思えない建物を改造したところで、合法的な建物になるのかどうか、素人には判定できません。しかし、悪徳詐欺業者まで参入する「リフォーム」流行の裏側には、住む人の事などまったく考慮しない建物が日本中に満ちている現実が有るのではないでしょうか?

■有名な占い師?は、ヒューザー問題が発覚した時に、「一流企業から買わないから…」などと暴言を吐いたそうですが、一流企業と言うのは何処のことを言うのか、是非占って欲しいものですなあ。ホリエモンの今年の運勢を見事に見誤ったのをどうやって誤魔化すのかも楽しみですが…


防衛施設庁発注工事を巡り、同庁ナンバー3の技術審議官(当時)が東京地検特捜部の調べに対し「大手総合建設会社(ゼネコン)が談合を繰り返していることを知っていた」と供述していることが、関係者の話で分かった。対象は防衛庁の新庁舎建設工事などで、02年夏にゼネコン側から談合継続を打診された際、了承したことも認めているという。電機設備、空調工事に続いて、日本を代表するスーパーゼネコンが参加した工事でも、官製談合が行われた疑いが浮上した。特捜部は、重電、空調メーカーによる官製談合疑惑については、競売入札妨害容疑で詰めの捜査を進めている模様だ。……(其の弐に続きます)


春節の花火

2006-01-30 10:38:59 | 外交・情勢(アジア)
■旧暦では本日29日が元旦です。本当にこれから春めいて来るのが自然の営みというものです。北京では13年ぶりに市内中心部での爆竹花火が解禁されて、早速、大火傷やら大怪我する人が病院に担ぎ込まれているそうです。お祝いというよりも、うっぷん晴らしの意味があるので抑えが聞きません。大音響は日本の豆まきの「鬼は外」の呪文と同じ役目なので、大きいほど効き目が有りますから、あの馬鹿長い爆竹のテープが愛用されるようです。あの毒々しいほどの真紅の色も魔除けと招福の意味が有るので、一夜明けて町中が真っ赤な紙屑で埋まっていると良い事が起こる予感がするのでしょう。筒型の打ち上げ花火も人気が有りますので、農村部では枯れ草に火が落ちて小火(ぼや)が起こります。うっかりしていると家に燃え移るので、何処も消火用の水を用意して徹夜です。

■某所では、祝い酒の勢いを借りて共産党の建物や人民解放軍の施設に打ち上げ花火を打ち込んで笑っている人達を見たことが有りますが、泥酔状態で打ち上げ花火を振り回す困った連中も見たことがありますから、爆竹を投げ合ったり人に向けて打ち上げたりしてしまう愚か者は無数にいるでしょうなあ。どこも水不足ですから、物騒な話です。と思っていたら、案の定、盛大なニュースが入って来ました。


中国では29日、春節(旧正月)の大型連休が始まり、全国で祝賀行事が行われた。市街地で13年ぶりに爆竹が解禁された北京では、前日から未明まで爆竹の破裂音が響き渡った。新華社電によると、河南省林州市では29日夕、爆竹が爆竹倉庫に引火して爆発、16人が死亡、多数が負傷した。中国では春節を爆竹で祝う伝統的な習慣があるが、北京では粗悪品の暴発で負傷者が多発するなどしたため、1994年から市街地では爆竹が禁止されていた。しかし「爆竹がないと新年を祝った気がしない」(40代男性)と解禁を求める声がここ数年高まり、北京市当局は世論に押される形で大みそかに当たる28日から来月12日まで解禁。28日夜は消防士4000人が大事故など不測の事態に備えた。共同通信 - 1月30日

■そう言えば、統制国家のシンガポールは春節の花火は後のゴミが美観を損なうのと危険なので全面禁止だったはずですが、今もそうなのでしょうか?禁止されても春らしさを求めてゲリラ的に爆竹を仕掛ける馬鹿者がいて、高層住宅のエレベーター内に仕掛けて本人は点火後に逃げて轟音とゴミだけを残すような小さな事件があちこちで起きていましたが……。夏の川原で、命のはかなさをふと感じて大人しく楽しむ日本人の風情は世界でも珍しく、世界中で楽しまれる花火はディズニーランド風のちょっと殺伐とした夜空の花畑みたいな装飾感覚が多いようです。春節を祝うのはチャイニーズが住んでいる所だけですが、彼等は世界中に散らばってあちこちに固まって暮らしているので、この騒々しい習慣も世界中に広まっています。

■他民族が混在する国際都市の場合、この時期にタクシーに乗ると運転手に新年の挨拶をされて驚く日本人も多いでしょう。「俺は日本人だ」と本気で起こるナショナリストも居るようですが、クリスマスを祝っているのですから、余り大きな顔も出来ませんなあ。旧暦とは別にイスラム暦を持っているのがイスラム教徒で、ユダヤ教徒はユダヤ暦を持っていますから、世界中が同時に新年を祝っているわけではありません。そのその日本では「初売り」「初荷」などが死語になっていすし、テレビやラジオは騒々しく「カウントダウン」などをしているので、あと数年で文化的にお正月は消滅することでしょう。

■所変ってパレスチナでは、テロ集団が第一党に躍り出てしまって悪い初夢を見ているようです。真正面から祝辞を送ったのは核武装を公言するイランだけで、周囲のアラブ諸国は心配そうですから、イスラエルのユダヤ人は頭が大混乱しているようです。責任政党になったのだから、外交交渉が可能だと希望を語る人達と、始めからそんな悪い冗談に乗らない人達で、国論は真っ二つです。


イラン革命防衛隊のサファビ司令官は28日、「イランは弾道ミサイルを製造している。攻撃された場合、有効な反撃を行う能力がある」と述べ、同国核問題に絡んで軍事行動がとられた際には弾道ミサイルを使うと警告した。国営テレビが伝えた。司令官の警告は、報復能力を強調することで、イランへの圧力を強める米国やイスラエルをけん制する狙いがあるとみられる。
読売新聞 - 1月28日

■これがイラン式の「春節の花火」です。日本の広報活動が弱いせいか、世界の多くの国では核兵器は単に大きな爆弾だと思い込んでいる人が多いのです。もっと酷い所だと、大きな花火ぐらいに思っているでしょう。ロケット花火と核弾頭付き弾道ミサイルはぜんぜん違うものだ!と教える必要が有りそうです。パキスタンとインドのように、互いに神様を讃える名前をミサイルに付けて睨み合っている国も有ります。昔、広島と長崎に原爆を投下したパイロットも、離陸前には神の祝福を受けていましたからなあ。神の偉大さを讃えるためにキノコ雲を上げられては堪りませんぞ!


イスラエル軍幹部は28日、イスラエル放送に対し、パレスチナ評議会選で当選したイスラム原理主義組織ハマスの議員や幹部の移動を制限すると語った。対イスラエル武装闘争継続を掲げるハマスの圧勝後、イスラエル側が具体的な対抗措置に言及したのは初めて。ロイター通信によると、ダマスカス在住のハマス指導者マシャル氏は28日の記者会見で、パレスチナ各派の武装組織を統一し、軍隊を結成する用意があると語った。また、米国などが求めている武装解除について、ハマス幹部のハニヤ氏は「国際社会の脅迫に屈しない」と述べ、拒否する姿勢を示した。パレスチナ自治区はイスラエル領を挟んでヨルダン川西岸、ガザ地区に分断されており、移動の自由制限はハマスの政治活動を抑えるのが目的とみられる。
共同通信 - 1月28日

■基本的人権には、「移動や居住の自由」が保証されているのですが、パレスチナの場合、ガザ地区に入った武器がイスラエルを通ってヨルダン川西岸に運び込まれるので、イスラエルはそれを阻止しようと必死です。北のレバノンからのルートは使えなくなり、シリアからもヨルダンからも武器は入らないので、もっぱらガザ地区に海かエジプトから武器が供給されているようです。先日も大規模な密輸トンネルが発見されたばかりですから、せっせと武器を密輸して蓄えているような集団が政府を代表するなどというのは納得出来ないでしょう。ハマスは何処からどうやって入手したのか分からない武器を持って行進するのが恒例になっていますが、ほとんどが目だし帽姿です。彼等を「正規軍」に格上げする計画が表明されたりしていますから、大手を振って国軍を名乗って重武装など始めたら、第5次中東戦争の危機です。

■イラクから新年の贈り物などが届かない事を祈るばかりですが、ハマス政府支援を目的に、巨大な花火がイスラエルに打ち込まれるような危険が増せば、第2次バビロン作戦の発動です。中東で対イラン戦争などが始まったらその後の展開は誰も予想が出来ません。ロシアと中国がイランの火遊びを認めるような意見を表明し、韓国が北朝鮮の核開発に対して明確な反対を発表できないのですから、不測の事態を考えなければならないようです。

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ライブドアの向こうは闇

2006-01-29 13:55:05 | 社会問題・事件
■ホリエモンを持ち上げて株価吊り上げの片棒を担いだと、満身創痍の小泉さんから責められるマスコミは、今度はそれを逆手に取って利用しているようです。そんなものに付き合っていたら、時間とお金を無駄にするだけです。何が本当に問題なのかが分からないまま、速報とスクープを求めて右往左往しているだけのマスコミですから、その醜態を晒しているのを冷笑してみても、ホリエモン騒動の第二幕に巻き込まれるだけです。

民主党の鳩山由紀夫幹事長は28日午後、札幌市内のホテルで開かれた同党北海道連大会であいさつし、ライブドアグループの企業買収をめぐる証券取引法違反事件に関し、「(ライブドアの傘下にあった)投資事業組合に自民党国会議員がかかわっていた可能性が極めて濃くなっている」と述べ、投資組合とのかかわりを追及していく考えを強調した。時事通信 - 1月28日

■唐突に変な事を言い出す「させていただく」鳩山さんですが、どんな情報源から出て来た話なのかも分からず、こんなに重大な事を口走ってしまって大丈夫なのでしょうか?検察側からのリークなのか、自民とを逆恨みする「昨日の友は今日の敵」からの密告なのかは分かりませんが、ロッキード事件やリクルート事件の再現を目論んで政権交代に持ち込もうなどと考えているとしたら、これは危険な賭けではないでしょうか?万一、これが本当の話だったとしても、民主党が捜査当局を出し抜いてスクープを提供したからと言って、そんな変な手柄で政権を奪ってどうすると言うのでしょう?

■「自殺」で片付けられた沖縄での野口英昭さんの死亡事件が、葬儀まで終わって忘れ去られようとしている時になって、闇組織との関連が取り沙汰されて手遅れの「再捜査」に着手したとの報道も有り、週刊誌お得意の匿名情報を駆使した「疑惑」ネタとして盛り上がって賞味期限が来て完全に風化してしまうのでしょう。突然の「自殺」と聞いて、オウム真理教事件の村井秀夫刺殺事件を思い出した人も多かったのではないでしょうか?事件の全貌を知る人物が消える事で、主要な問題が全て未解決のままに放置されてしまいます。せれも捜査が佳境に入る直前と言う絶妙のタイミングで、「真犯人」も目的も分からない偶発的で個人的な殺人事件として処理されて終わるのです。今回も致命傷は内臓が出るほど「腹を深く抉った」ものだったと言われています。村井さんも体当たりで長い包丁を腹に差し込まれたのでした。

■宮内というナンバー2は逮捕されていますが、オウム事件ではああ言えば上祐君が、何を聞かれても「村井が」「村井が」を連呼して答えにならない答えを繰り返しましたが、ホリエモンや宮内容疑者も同じ手を使えば、非難の声は沖縄県警に集中するのは当然の流れでしょう。アリバイ作りの必要性を感じた誰かが、証拠も無くなってからの再捜査を指示したのでしょうなあ。既に、死亡した野口さんが資金の還流や外国資本の利用法などを考えて指示していたという構図が出来上がっているようですが、死人に口なし。


ライブドア側は平成16年10月から翌年2月ごろにかけて、子会社だったバリュークリックジャパン(現・ライブドアマーケティング)が、株式の交換で出版社「マネーライフ社」を買収したと装い、バリュー社の新株を発行。ライブドア側は昨年2月、この新株を実質支配していた投資事業組合を通じ、外資系の金融機関などを経て約8億円で海外ファンドに売却した。このうち手数料などを除いた約7億円がライブドア本体に還流された疑いが持たれている。還流させる過程で利用されたのは、スイスの銀行やタックスヘイブンの英領・バージン諸島に本社のある組織など複数の海外金融機関だった。スイスの金融機関は徹底した顧客情報の秘匿で世界的に有名なほか、租税回避地は法人税や所得税の優遇などから、犯罪組織による資金洗浄に使われることも多いとされる。ライブドア側はこうして得た現金を投資事業組合の口座に入金させたうえで、バリュー社に送金させて預金化。バリュー社はライブドアに架空の事業を発注したことにして現金を払い込み、最終的にライブドア本体の売り上げに計上された。こうした取引は犯行の発覚を防ぐため、ライブドアの取締役で最高財務責任者だった宮内亮治容疑者(38)らが発案し、前社長の堀江貴文容疑者(33)が、了承を与えていた可能性が高い。
産経新聞 - 1月29日

■こうして話は、『ゴルゴ13』の世界にどんどん入って行きます。北朝鮮問題でも、マカオとスイスは何度も出て来る地名ですなあ。そこから奥は「深い闇」と言うしかない地名です。米国は世界一の情報収集能力を駆使してマカオで尻尾を掴みましたが、日本にそんな力が有るわけも有りません。ロッキード事件でも、米国から提供された資料しか物証は無かったのですから、米国系の金融資本がライブドアを食い物にした事件ならば、米国政府が日本に協力するとも思えません。損をしたのは、日本の素人投資家だけなのですから、世界中はすぐにこの事件を忘れます。それをじっと待っている人が日本にも沢山いるでしょう。ライブドア関連の株で損をしたプロは、既に穴埋め作業に入っていますし、最悪の場合でもライブドアの死肉を食い荒らして骨までしゃぶってしまう心算でしょう。

■残念ながら、ライブドアという会社が消えて無くなっても、誰も困らないのです。ホリエモンが手を出した事業の中には、他の誰にも真似できない事など一つも無いのですから、今にして思えば、ライブドア株だけが急騰する理由など無かったのです。怪しげに乱高下する株などと聞けば、ヤクザさんと政治家が集まって来るのは当たり前の話ですし、こういう人達は必ず「絶対儲けさせろよ!」と言うものです。その注文に答えられなくなると、不思議な自殺事件や事故が頻発するというのも決まっている事のようです。何だか、ヒューザー騒動がどんどん小さな事件に思えて来るのが不思議なのですが、政界との癒着規模を比較すれば動いた金額の大きさから推測しても、ヒューザーやら総合経営研究所から流れた金よりもライブドア関連で吸った甘い汁の方が遥かに大きいでしょうから、もしかしたら、ホリエモン潰しが決まった段階で煙幕に使える事件を表沙汰にしたのではないか?などと邪推したくもなります。

■ワイドショーが、目を引く映像を追い回している間に、事件はどんどん専門的なものになってろくに新聞も読まないテレビ好き達が興味を失うのに、それほど時間は掛からないでしょう。国内の闇組織だの、海外の金融の闇などが「映像」になるはずも無いのですから、大衆マスコミも手に余って捨ててしまうでしょう。鳩山発言はトンデモない核心に踏み込んでしまったのかも知れないのですが、ちゃんと後始末できるのでしょうか?ライブドアが駆使した投資組合に出資した人々の名前が全面的に公開でもされない限り、うっかり者の目立ちたがり屋が恥をかいただけの話で終わる可能性も有ります。肝腎な事が何も解明されずに10年も20年もの時間が経過してから、プロの執念で誰かが調査結果を本にしても、誰も読まないのが日本ですからなあ。この体質を改善しないと、政治家も検察も生まれ変わる事はないでしょう。

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60年も経てば、何でも忘れる 其の壱拾六

2006-01-28 22:49:52 | 歴史
■本当にスターリンという人物は面白いですなあ。何を考えているのか、本人も分からなかったのではないでしょうか?晩年は相当に危険な精神状態だったそうですが、本当はずっと前から変だったのではないでしょうか?

平沼騏一郎内閣は、昭和14年の独ソ不可侵条約に仰天して「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じ」と退陣しますが、まあ複雑だけど、怪奇ではないですよね。国内でも、見える人には見えている。宇垣一成のように……「霞ヶ関(外務省)や三宅坂(参謀本部)は青天の霹靂だったようだが、何も驚くに値せぬ。来るべきものが当然に到来しただけだ」と日記に書いている

■ここで名指しされているのが外交と陸軍の中枢だというのは大問題です。東京大学法学部と陸軍大学のエリートが、集団で大間違いをしていたという事ですぞ。松岡さんくらいの胆力と張ったりが有れば、エリート集団なんかはころりと参るのでしょうか?その松岡さんもまんまとドイツに嵌められたわけです。四国同盟のホラ話を重大機密のように耳打ちされた大島浩駐ドイツ大使や松岡さんは、有頂天になったようです。ここでも、冷静に情勢を見ていた人物は一人だけだったようです。


『昭和天皇独白録』で、「松岡は(昭和16年)2月の末にドイツに向い4月に帰って来たが、それからは別人の様に非常なドイツびいきになった、恐らくはヒトラーに買収でもされたのではないかと思われる」

人物を見抜く昭和天皇の眼力は大変なもののようです。古代から、天皇家は情報と文化の力だけで生き残ってきたお家柄ですからなあ。常に勝ち馬に乗っていないと、天下大乱になってしまうのですから、天皇家の教育システムには要注意ですぞ。


ゾルゲ事件について、戦後、GHQ特にG2(参謀第二部)のウィロビーらが徹底的に調査しています。当時国民党が支配していた上海にも調査団を送った。おそらくゾルゲはアメリカの情報源でもあったからです。

■篠田正浩監督が最後の作品として撮った『スパイ・ゾルゲ』でも上海は重要な場所として登場しましたなあ。スメドレーなどという懐かしい女性も出て来たりして……。


ドイツ側にも日本の情報を与えた三重スパイの可能性があります。イギリスの研究者によると、ゾルゲがドイツ大使館にあれほど食い込めたのは、日本政府の極秘情報をドイツに持って来るからだと指摘しています。野坂参三もそうですが、1930年代から大戦にいたるまでは、忠誠心のありかが全く不明なスパイが暗躍した時代ですから、珍しくはありませんが、アメリカがゾルゲ事件を戦後追及したのは、ソ連情報を取りたいのと同時に、ドイツやソ連がどこまで連合国の情報網に食い込んでいたかを検証したかったからだと思います。ドイツの対日情報力、宣伝工作は大変なものがあった。

話がこういう所に入って来ると素人の手に負えなくなりますが、プロはそんな弱音を吐いては行けません。憲法9条が有ろうと無かろうと、情報戦から撤退したら国家は死生を制せられます。今の日本は相当に制せられているそうなので心配です。佐藤優さんの本などを読むと、頑張っている外務官僚も居るらしいのですが……


昭和13年10月7日に、対ソ情報交換及び謀略に関する日独両国軍部のとりきめが正式に調印されています。ドイツ国防軍最高司令官カイテルと大島浩の間で調印された軍事協定は、日独がソ連軍及びソ連邦に対する防衛工作を協力して行なう事を定めていますね。

こんな「取り決め」など知りませんでしたが、大島浩さんは戦後、自分の情報戦での大失敗を認めて謹慎生活をしたそうですから、日本は弄ばれただけだったのでしょう。中野学校のスパイを演じた市川雷蔵が泣いてますぞ。

偽装が多過ぎる日本

2006-01-28 16:00:03 | 社会問題・事件


■建設業界の耐震性偽装問題がまだまだ根深いらしいとの思いが強まる中で、ホリエモンの株価吊り上げ仕事に決算書の粉飾=偽装の疑いが出て来ました。会計監査会社の中にはトンデモない偽装屋がうじゃうじゃしているんじゃないか?とこの数年の間に大小の事件が報道されていたので、監査会社が抱きこまれていたと聞いても、さほど驚きもしない、日本は実に変な資本主義の国になっていますなあ。あちこちで公表されている数値がウソばかりだったら、株式投資をしている人達は、一体、どんな情報を頼りにして売買をしているのでしょう?就職活動の学生達は『会社四季報』などという本を買って熱心に慣れない数字を解読しようとしているのではないのでしょうか?

■どこに出ている情報が正しいのか?耐震偽装事件では、民間調査会社だけでなく、公的機関も見事に騙されてしまいましたし、ホリエモン事件ではマスコミ各種ばかりか、自民党執行部までもがペテンに引っ掛かって大恥をかいてしまいましたぞ!どちらも情報でメシを食べている人達の集まりでしょう?どちらの問題に関しても、必ず出て来るのが、「根本は教育問題だ」という指摘です。では、その現場は信頼できるのか?と思っていたら、トンデモないニュースが飛び込んできました。以下、毎日新聞の記事からの引用です。


教科書通りに答えると、不正解になる――今年の大学入試センター試験で、英語リスニングテストに続きミスが明らかになった。文部科学省の27日の発表によれば、実教出版(東京都千代田区)の政治・経済の高校教科書に掲載されていたグラフに誤りがあった。類似したグラフが今年の大学入試センター試験で出題され、受験生が同社に問い合わせて判明した。この教科書で学んだ受験生が不利益を被った可能性があるが、センターは「問題と答え自体に誤りはない」などと救済措置は取らない方針だ。。

■国民の教育を支えるのは学校制度です。そこで教える内容を支えているのが教科書です。それを生徒に理解させるのが授業で、記憶の定着具合を見るのが試験です。教科書の内容を上手に教えられるかどうか、そもそも、教科書の内容をきちんと理解しているかどうかが教師の資質の最低限を決めるものです。ろくに英語など離せない困った教師を大量に生み出しておいて、突然、「使える英語」などを思いつく文科省ですから、ちゃちなポンコツ機械をセンター試験に持ち込むぐらいの事はしそうなものですが、欠陥偽装教科書の使用を許可していたとは前代未聞ですなあ。


同省教科書課などによると、グラフは、日米英独仏のGDP(国内総生産)に占める公共投資の割合の推移を示した。実教出版が教科書に使う際、英米両国の国名を誤って逆に記載。検定でも訂正されなかった。センター試験では、5カ国のうち日米英3カ国の割合の推移を示したグラフを示し、正しい国名の組み合わせを答えさせる問題が出題された。配点は100点満点中3点。この教科書で学んだ生徒は、教科書通りに解答すると間違いとなる。

■合否が分かれるボーダー・ラインには大変な数の受験生が集まりますから、3点差は運命の分かれ道となります。


同試験後の24日に群馬県の受験生から同社に問い合わせがあり誤りが確認されたため、同社が25日に文科省に訂正申請を提出。27日付で同省が訂正を承認した。この受験生は教科書通りに答えたため、不正解となったという。同社は「教科書への信頼を傷つける結果となり深くおわび申し上げる」と謝罪。同省教科書課の山下和茂課長も「教科書の誤りで一部の受験生が正答を得られなかったとすれば申し訳なく、心からおわび申し上げる」と陳謝した。また、大学入試センターは「大変気の毒だが、救済措置は正解を答えた受験生に不利益になり、救済措置は取れない」と述べた。

■教科書の検定をしている部署とセンター試験の管理運営をしている部署が違うから、こんな寝ぼけた暴言が吐けるのでしょうが、最高責任者の文部科学大臣となれば話は別ですぞ!週明けの国会が楽しみですなあ。

 
同課などによると、この教科書は02年度の検定に合格。今年度は424校で6万6163冊が使用され、11社15冊中のシェアは12.6%で2番目に多かった。センター試験では昨年も、国語1の問題で、教科書と同一文章は避けるよう厳重チェックすることになっていたのにもかかわらず、1社の高校教科書に載っている評論文が出題されるミスがあった。

記事では、「群馬県の受験生」にしか言及していませんが、他の生徒達は何も気が付かなかったのでしょうか?何よりも不思議なのは、記事の数字を「正しい」と信じれば、問題の教科書を使っている少なくとも424人の政治経済を担当する高校教師がいる事になります。使用開始から2年経過していれば、ウソ・グラフを2回も授業で扱っている事になりますぞ!このグラフがどんなものなのか、毎日新聞では詳報しています。


…問題のグラフは、公共投資割合の高い日本と低い米国に対し、70年代後半から80年代初めにかけて公共投資の割合が一気に低下する英国の動きが特徴的だ。これは79年に労働党から保守党に政権が移り、「サッチャー革命」で小さな政府づくりが進められた経緯を物語る。

■中曾根政権の「民間活力」から、小泉政権の「官から民へ」まで、日本を大きく変えて来た流れの元になったサッチャー政権の政策を理解する大切なデータです。このグラフのイギリスとアメリカの国名を入れ替えてしまえば、イギリスにはサッチャー政権が誕生せず、アメリカのレーガン大統領が公共投資を減らしたことになります。こんなメチャクチャな話を、全国の424もの高校で平然と教えられていたのか?教室という現場にいる誰一人も、この凡ミスに気が付かなかったのか?まさか、ちょっと国際政治に詳しい生徒が「先生、このグラフは間違ってませんか?」「なに?教科書が間違っているわけがないだろ!」などというアホ丸出し授業を何処かの高校でやっていたのではなかろうか?

■学校の先生方は、笑ってしまうほど本を読まないらしいし、社会科の先生も新聞さえ読まない人が増えているとも聞きますからなあ。どんな大学生活を送り、どんな採用試験を受けているのか、よく考えてみた方が良いでしょう。


同省は「なぜこんな間違いに気づかなかったか。調査態勢を見直していきたい」と表明したが、後の祭りだ。…再び15冊の政治・経済の教科書のうち1冊しか使っていないグラフと類似したグラフが出題されるという不可解なことが起きた。同センターによると、問題に使うグラフや写真、表が教科書に出ているかどうかの確認は、問題作成者に求めていなかったという。センターは「今後はすべてを見るようにしたい」と述べ、謝罪の言葉はなかった。
毎日新聞 - 1月27日

■文部科学省では、道徳教育を強化して行くつもりなのではなかったですかな?生徒達に「自分の間違いが明らかになっても、絶対に謝ってはいけません」と教えるのですかな?そして、「世の中にはウソがいっぱいですから、教科書も信じてはいけませんよ」と教えるのですかな?

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これが民主化ですよ、ブッシュさん

2006-01-27 17:03:17 | 外交・情勢(アジア)
■欧米のメディアは、パレスチナでの選挙結果を知って上を下への大騒ぎをしていますが、さすがは世界の外側で昼寝をしている日本のメディアは静かなものです。対岸の火事どころか、別世界の話なのでしょうなあ。別世界でこんな事件が起きたそうです。

コロンビア北部のバランキヤ市でこのほど、おいのしゃっくりを驚かせて止めようとした叔父が誤って、おいを射殺し、自分も自殺する悲劇があった。RCNラジオによると、ラファエル・バルガスさん(35)はおいのダビド・ガルバンさん(21)と近所で酒を飲んで帰宅。ガルバンさんのしゃっくりが止まらなくなったため、驚かせて直そうと、バルガスさんが突き付けた拳銃が暴発したという。 
時事通信 - 1月27日

■この事件を知って、「ああ、自分も気をつけなければ行かんな」と思った人と、「どうしてそんな事に鉄砲を使うんだ」と首を傾げる人の二種類の人類が今の世界に住んでいるのだと仮定しますと、二人はまったく別の世界に住んでいるのです。ですから、彼らが使う日常の会話も深い所ではまったく別の意味を持っている事になるでしょう。日本人にとって「発砲」は大事件を報道する時に使われる言葉です。法律で携行と使用が認められている警察官が拳銃を使用しても、その使用が適切だったかを疑う報道が行なわれるのが日本です。


爆薬や回転式拳銃などを密輸入したとして、警視庁組織犯罪対策4課などは27日までに、銃刀法違反容疑などで3人を逮捕、同日、横浜市内の指定暴力団稲川会系組事務所など10数カ所を家宅捜索した。
調べによると、逮捕したのは日本人の男1人と、フィリピン人の男2人。3人は18日、横浜港に入港したフィリピン籍の船を使い、爆薬や回転式拳銃約10丁、実弾約200発などを密輸しようとした疑い。組対4課は、背後に稲川会系の組員らが関与していた疑いが強まったとして、組事務所などの家宅捜索に踏み切った。
共同通信 - 1月27日

■日本に危険な銃器が入るのは、このように注意深く2つの世界を隔てている壁に不法に穴を空ける悪い連中がいるからです。東アジアにEUのような共同体を作ろうなどという悪い夢を見ている人達は、こうした壁を維持しながら共同体を作ろうとしているのでしょうか?日本の周囲には銃器を単なる「輸出品」と思っている国も存在しますが、そういう国では「しゃっくり事件」のニュースを聞いても有り得る話だと思うでしょうなあ。


長崎県警は26日、事件の関係者として呼び出した男性の顔に銃口を向け自白を迫ったなどとして、特別公務員暴行陵虐と銃刀法違反の疑いで、大浦署地域課の警部補、入江憲彦容疑者(53)を逮捕した。「拳銃を取り出した事実はない」と容疑を否認している。県警は今後、入江容疑者の処分を検討する。調べでは、入江容疑者は17日、当時勤務していた長崎市高島町の同署高島駐在所の門扉が何者かに外されたことについて、男性公務員(56)を駐在所に呼び出し、持っていた拳銃と実弾五発を机に置いて脅したほか、別の男性公務員(34)の顔に拳銃の銃口を向け「うそばかりつくな」などと自白を迫った疑い。産経新聞1月27日

■この警部補は、前任地で問題を起こしているちょっと変った人のようですが、こんな話が新聞で報道される事を不思議に思う国の方が多いはずです。「銃口」とわざわざ書いているのですから、実弾を抜いた拳銃を突きつけていると思われます。日本では拳銃は隠しておくべきもので、決して使わない道具という暗黙の前提が有るようです。無闇に拳銃を抜いたり発砲する警察官などというのは、赤塚不二夫さんなどの漫画にしか登場しないのが日本で、多くの国の警察官は拳銃無しの捜査活動など自殺行為と考えられています。

■去年、エアガンの改造が大問題になって、日本にも本物の銃器に止みがたい興味と情熱を持つ人間が増えている事が明らかになりました。「鉄砲撃ちツアー」などという世にも珍しい商売が有る日本は本当に変った国なのだと、もう一度確認した方が良いでしょうなあ。アラブ系の国々からのニュースには、嬉しいにつけ悲しいにつけ、機関銃を空に向けて乱射する男達が出て来ます。花火の代わりらしいのですが、花火より弾丸の方が安いのかも知れませんが、何かと沢山の人が直ぐに集まって何日も騒いでいるのを見ると、銃器は簡単に手に入るのに仕事が無いという困った国情が忍ばれます。そんな国が緊張状態になると、子供が玩具の鉄砲で遊んでいると問答無用で狙撃されるような悲劇も起きます。そんなややこしい国の代表格だったパレスチナで、驚天動地の選挙結果が出たのです。

■平和裏に交渉と議論をする同胞を非難して、自爆テロや狙撃事件を頻発させていた集団が、試しに選挙に候補者を立ててみたら大量に当選してしまったのですから、投票者も本人達も大いに驚いたことでしょう。どうやら、当選の祝い方も知らなかったらしい事件が早速起きているようです。


ヨルダン川西岸からの報道によると、西岸ラマラのパレスチナ評議会(議会)で26日、評議会選挙で大勝したイスラム原理主義組織ハマスの支持者が建物からパレスチナ旗を引きずり降ろし、緑色のハマスの旗を掲げた。これに怒ったパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ支持者との間で銃撃を交えた小競り合いが発生したもようだ。時事通信 - 1月27日

■小さな事件ですが、これでパレスチナの旗を自分達の「国旗」だとは考えていないパレスチナ人の存在が明らかになりました。アラファトさんは国家元首だったはずなのですが……。「選挙」で勝った方も負けた方も大量の武器を持っているのですから、選挙の前も物騒な「選挙運動」が各地で繰り広げられていました。相手陣営を誹謗中傷するビラを作って播くような面倒臭い事はしないで、対立候補の支援者を脅迫したり銃撃したりする「選挙活動」です。アラファトさんが作ったパレスチナ国家は、名前通りの機能を持ってはいませんでしたから、国民は独立した後もずっと難民と変らない生活を強いられていたのが不思議です。革命家にしてもテロリストにしても破壊と殺戮は上手でも国を作る方法を知らないものです。まあ、独立した後で文化大革命を起こさなかったのがせめても慰めと言うところでしょうか?

■自分の権力を守る為に外国から入って来る援助資金を子分達に山分けする事が仕事だったアラファトさんが死亡したのですから、跡目争いが民主的に行なわれるはずはなく、一応、アラファトさんは信任選挙をやってはみましたが、対抗候補も無ければ政策論争も経済論争もない奇妙な選挙でした。それから10年、民主化の大義を振りかざしてイラクに攻め込んだブッシュ大統領はパレスチナの選挙に大いに期待をしていたようですが、まさかテロリスト集団が第一党になろうとは思いもしなかったでしょうなあ。ハマスの支援者は、選挙の勝利を「神は偉大なり!」を連呼して祝っているそうですが、負けた方は、一体、何と言っているのでしょう?

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感謝知らずの小泉さんにマスコミが怒った

2006-01-27 10:46:42 | マスメディア
■26日の衆議院予算委員会で、小泉首相がお得意の「すり替え」を使って竹中さんと武部さんに集中している逆風をかわそうとしました。正当性に大きな疑義をのこしたまま強行された解散総選挙が巻き起こした、日本中をわけの分からない熱狂で包み込んだ選挙騒動に、ホリエモンを利用した事を野党から攻撃されたからです。誰も郵政改革の意味も目的も効果も考えない「郵政改革選挙」は、刺客・マドンナ・分裂新党などのワイドショー向きの話題ばかりが先行する、実に落ち着きの無い珍しい選挙でした。こんな盛り上がりを「時価総額世界一」を目指すホリエモンが黙って見ているはずはなく、話題の刺客の1人として各種カメラの被写体になって走り回りました。

■逮捕された後の今になって、悪事を働いていた犯罪者を選挙に利用した!とマスコミや野党が追及すれば、「弟です!息子です!」と絶叫した武部さんは「公認も推薦もしていない」と苦しい言い訳をするしかありません。その姿がまた滑稽なので、メディアが面白がって取り上げます。これは火に油を注ぐだけの逆効果ですから、この悪循環を断ち切るにはマスコミを黙らせるのが手っ取り早いと感じた小泉さんが、首相の品格も威厳も(元々無いのですが)打ち捨てて開き直って八つ当たりをしたという流れです。しかし、そんな事を言われる前からマスコミは自省の言葉を吐き始めていたのでした。これはオウム事件の後始末の悪さに比べると、随分と様変わりしたように思えます。

■小泉さんが見当違いのマスコミ批判をした日の読売新聞が、「ドキュメント ライブドア事件」という連載記事として『視聴率男』という記事を掲載しています。


「ヒルズから三畳半の拘置所生活」「王国崩壊 堀江容疑者が社長退任 黙秘」――。堀江貴文容疑者の逮捕後、ますます加熱するテレビ報道。……拘置所の独居房の模型を作って生活を再現したり、行きつけの飲食店を訪ねて「一枚2000円の焼き肉が好み」と伝えたり……ある民放局が捜査後に放送を取りやめた番組の中には、彼自身が“犯罪者役”で出演したものまであったという。

と前半を書き綴りった後で、テレビ業界からの自省の言葉を拾っています。


TBSの井上弘社長は「我々も日本レコード大賞のプレゼンターとして出演させるなど、ちょっと情けなかったかな」と漏らした。

■今時、大晦日のレコード大賞を熱心に観ている日本人がどれほどいるのかは知りませんが、NHKの紅白歌合戦の前座に当たる時間帯に紅白に対抗する番組として、今も放送が続いているらしいのですが、1年を締め括るに当たって改めて聴き直したくなる歌自体が無くなっているのですから、製品としての「レコード」さえも消え去ったレコード大賞は、凶暴な殴り合い番組の陰で消えて行く運命なのでしょう。それでも、その利用価値をホリエモンは認めて出演依頼に応じたのでしょうから、案外、番組の商品価値は高いのかも知れません。オウム事件で死んだはずのTBSは、死亡宣告をしたご本人の筑紫さんと一緒に、蘇生宣言もせずにみのもんたさんの協力も得て元気になっているようです。ですから、ホリエモンを利用したぐらいで文句を言われる事も無いのではないでしょうか?


「番組にもよく協力してくれるし、ホリエモンという人の魅力を感じていたが、はやし立てたマスコミの責任もある」(TBSの番組で、みのもんた氏)、「ITの寵児としてまつりあげたことに若干の責任を感じる」(日本テレビの番組で徳光和夫氏)

■下手くそなディスクジョッキーだったみのもんたさんが、どうして年がら年中テレビに出ているのか、その理由がさっぱり分からないのですが、番組を選んで時間を区切ってテレビを視聴する習慣が壊れてしまった時代の過渡的な現象かとも思えますなあ。徳光さんという人は、日本プロレスという興行番組をスポーツ競技のように実況していた人で、巨人軍が常に優勝していれば日本は安泰だと公言する人ですから、テレビ報道とは縁の薄い人なのではないでしょうか?年に1回黄色いTシャツを着て公衆の面前で大泣きする仕事をしているそうですなあ。


…強制捜査後、バラエティー番組でアナウンサーが堀江容疑者に電話出演を呼びかけるなど、依然として局側には事件の本筋とは程遠い“視聴率稼ぎ”の思惑がうかがえる。…

■新聞業界では、「インテリが書いてヤクザが売る」などと悪口を言われる押し売り販売方法と、既に時代に合わなくなっている宅配制度という有り難い保険がまだ効いているので、テレビの視聴率競争をバカにしていられるのでしょうが、宅配制度が無くなってしまえば、テレビの視聴率に負けない販売部数競争が激しくなるはずで、欧米と同じように高級紙と大衆紙の2つの顔を使い分けねばならなくなるのは分かっています。テレビは、政治に影響を及ぼす高級紙の役割とウソでも面白ければそれで良い、というエロ・グロ・ナンセンスの塊(かたまり)のようなタブロイド紙の両方を、一つの局が放送しているから常に偽善性と作為が鼻につくわけですなあ。

■国内政治や国際情勢のニュース原稿を鹿つめらしく読んだ人が、馬鹿面さらして大口開けて、物を食って見せるのも平気なのが日本のテレビです。米国映画の中にもテレビ業界を描いた作品が沢山有りますが、基本的にテレビ局の下品さやモラルの低さをからかう内容の物が圧倒的に多いような気がします。世界を支配する巨大な映画産業を持っている米国だけの現象なのかと思えば、そうでもないような気がします。日本人ほどテレビが大好きな国民も珍しいからこそ、広告会社が大きな力を持ったり、特技も職業も不詳の怪しげな人物がテレビを利用して変な金儲けも出来るのでしょう。そもそも、街頭でインタヴューしている時に通り掛かりの無関係な連中が立ち止まって、画面に割り込んでVサインをして喜んでいる間は、テレビ業界は安泰なのだと思います。

■決められた放送時間枠を埋めるためには、視聴率が取れそうな「面白そうな」材料を探し出して映像にしなければなりませんから、その段階で映像になり得ない重要な事項は切り捨てられます。そして、埋め草に使った対象が再び「面白そうな」映像になれば続報を流します。ますます「面白そうな」事をやって見せると、習慣的にカメラはその人物を追い回す事になって、それが犯罪だと判明するまで終わりません。その端的な例がオウム真理教事件でした。映像化不可能のはずだった精神世界や宗教問題を易々と映像商品化して見せたオウム真理教に、テレビは手も無く弄ばれたのです。仏教、チベット仏教に関する基礎的な知識さえ持っていれば、全国向けの布教宣伝番組を無料で提供するような間抜けで罪作りな役から逃れられたのに、まんまと多くのメディアがオウム真理教広報部の仕事を熱心にし続けたのでした。それを検証するには長大な特別番組を制作しなければなりませんし、各民放局が「秘蔵」する恥ずかしい映像が延々と再生される事に堪えねばなりませんから、これが実現することは無いのです。

■「テレビで観た」という言葉自体が、良い意味と価値を持っているような国では、放送内容ではなく単に回数と延べ時間だけが影響力を持ってしまうのです。特に、奇異な映像に心を奪われず、じっと目を閉じて流れて来る言葉に耳を傾ける習慣の無い人には、「水中で昼寝ができる」「空を飛べる」「壁を通り抜けられる」などのホラ話が、無防備に記憶として蓄積されてしまいます。「救い」「癒し」なども同様で、これが「儲かる」「健康になる」「美しくなる」などになると詐欺直前です。「霊が見える」「運命が分かる」「超能力が使える」などの責任の取れない内容になった時がテレビ局の教養とモラルが問われる時なのですが、それを今の日本のテレビに求める事自体が時間の無駄だと思っていた方が良いでしょうなあ。先の選挙で自民党を大勝させたのは、日本のテレビです。それを知っているからこそ、小泉さんの八つ当たりに対して、「恩を忘れている!」とテレビ業界は怒っているのでしょう。どっちもどっちの空騒ぎですなあ。

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60年も経てば、何でも忘れる 其の壱拾伍

2006-01-26 17:43:04 | 歴史
■スターリンとヒトラーは最初はとても仲が良かったという話が有ります。世界を山分けしようと言って誇大妄想の二人は大いに盛り上がったのですが、ちっちゃな「ボスポラス海峡」の奪い合いで決裂したとか……。ろくな海軍を持っていないドイツは、遠いばかりで石油も出ない山東半島や南洋諸島を持っていても仕方が無かったのですから、そんな物を日本に譲るのは惜しくもなかったでしょう。その代わりに東側から英国とソ連に対して、ドイツの注文通りに嫌がらせをしてくれるのなら、安い物でした。随分と蒋介石には武器を買って貰ってお得意さんでしたが、戦争が始まったら商売はオシマイです。置き土産で日本軍が痛い目に遭っているのですから何のための同盟だか分かりませんなあ。

6月22日にドイツが「バルバロッサ作戦」でソ連侵攻に大成功すると、スターリンは大ショックを受けて二週間くらい行方をくらませますよ。……ドイツは6月初め、ソ連攻撃について日本の指導部に知らせ、日本の参戦は日本にまかせるとは述べますが、リッペントロップは日本陸軍とのソ連挟撃作戦を提案しています。

■どこまで本気だったのか分からない「アーリア人伝説」からすれば、猿同然の日本人と栄光の「バルバロッサ作戦」を共同でやる気などヒトラーには無かったでしょうなあ。以前の「シベリア出兵」と満洲独立があるので、自分はウクライナの穀倉地帯とカスピ海沿岸の大油田地帯をごっそり奪って、日本には材木しかない寒いシベリアをプレゼントするつもりだったのかも知れません。


なぜだかスターリンは、ヒトラーを信用していたみたいですね。ソビエト諜報機関のリーダーだったクリヴィツキーが、スターリンはヒトラーを政権獲得前から評価していて、独裁者となってからは心酔していたと記しています。赤軍粛清なんて、まるっきりヒトラーの真似でしょう。……自国軍に対してヒトラーを挑発するあらゆる動きを禁止します。それが「バルバロッサ作戦」の大敗北につながり、パニックを起こしてしまう。

レーニンが世界初の社会主義革命政権を打ち立てた時、マルクス先生は具体的な社会主義国家の設計図を描いてくれていなかったので、困り果ててしまったそうです。その時、第一次大戦で大成功したらしいドイツの戦時経済体制をパクリます。資本は米国から、システムはドイツ製だったのがソ連という国です。その縁なのか、完全に武装解除されてしまった敗戦国のドイツは、密かにソ連の陸軍と手を結んで大砲の開発を共同で進め、「次の決戦」の準備をしていたという事です。ドイツの先端技術をソ連は学び、ドイツは撃ち放題の演習場が手に入ったというわけです。ヒトラーが正式にベルサイユ条約を破棄した後、瞬く間に欧州最強の軍隊が再建されたのは、何の事は無いソ連に温存して置いた兵力を呼び戻したようなものだったのでした。

■それほど縁の深いドイツとソ連ですから、松岡さんも仲人役を買って出たのかも知れませんか、日本には荷が勝ち過ぎて単なる猿回しになってしまいましたなあ。


スパイのゾルゲが、バルバロッサ作戦の開始日まで事前に報告していたのに、スターリンは「デマだ」と断言して信じなかった。……スターリンもひそかにソ連軍を前線に動かしていた、というヴェルナー・マーザーらの研究が出てきました……