旅限無(りょげむ)

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最近の詐欺横領事件 其の参

2006-07-30 07:45:18 | 社会問題・事件


国立印刷局の工場から収入証紙が持ち出された事件で、埼玉県警捜査2課と大宮署は27日、国立印刷局滝野川工場印刷1課準備係長、山野辺弘道容疑者(59)(東京都北区豊島)を業務上横領容疑で逮捕した。調べによると、山野辺容疑者は、同局王子工場(同区)に勤務していた2002年4月~03年10月にかけ、「損紙」として廃棄される埼玉県収入証紙計400枚(80万円相当)を横領した疑い。今年4月、さいたま市内の金券ショップに持ち込んで換金していた。山野辺容疑者は、このほか約700万円分の証紙を換金。自宅のゴルフバッグ内にも約300万円分の証紙を隠していた。山野辺容疑者は当時、工場で廃棄される証紙や切手などを管理・裁断する責任者だった。調べに対し「1人になった時に(損紙を)抜いた。住宅ローン支払いや教育にかかる費用が必要だった」と供述しているという。
読売新聞 - 7月28日

■国立印刷局という固い職場に勤めていても、「住宅ローンや教育費」が足りないのですなあ。北朝鮮の国家的偽札犯罪を追求しなければならない日本で、不良品の「損紙」を抜き取って換金しなければ生活が出来ない人が居る!日本銀行のジョークには、「ウチは不景気でボーナスは現物支給なんだ」というのが有りましたなあ。庶民の軽口にも「刷り損なった札でも良いから少し回してくれないかなあ」などというのも有りました。本当に「現物」を持ち出してしまったら洒落になりませんなあ。


京都市東山区の浄土宗(総本山・知恩院)の宗務庁で多額の使途不明金が発覚した問題で、浄土宗が使い込みを認めていた会計担当の男性職員(50)を26日付で懲戒解雇したことが27日、分かった。内部調査の結果、使途不明金は約7億4500万円に上ることが判明。元職員は「大豆や金などの商品先物取引に使い込んだ」と話しているという。浄土宗によると、元職員は財務局で出納係をしていた1997年ごろから9年間、僧侶が加入している共済会の積立金などを流用。今年4月の異動の際に業務の引き継ぎをせず、内部調査で不正が判明、使い込みを認めた。
共同通信 - 7月28日

■諸行無常の修行をしているはずのお坊さんが「共済組合」に加入してるのも面白い?のですが、お布施を「先物取引」に投げ込むお寺の職員と言うのも面白い。世俗には「坊主丸儲け」という悪口が有りますが、その儲けを更に掠め取る輩が居るのですなあ。


福岡県内の無職少女(16)が、拾った他人の保険証を悪用し、住民基本台帳カードを偽造していたことが県警の調べでわかった。少女は4月に遺失物横領容疑で逮捕されており、県警は25日、カードに絡んだ詐欺などの容疑で福岡地検に追送検した。県警によると、未成年者による住基カードの偽造は全国で初めて。芸能プロダクションに入った後、18歳以上であることを証明できるものの提出を求められ、犯行を思いついたという。…少女は昨年2月、沖縄県糸満市の女性(21)が福岡市内で落とした保険証を拾って届け出ずに所持。その後、東京都渋谷区に引っ越して、女性になりすまし「渋谷区に住所を移したい」と糸満市役所に保険証のコピーを郵送して転出届を取り寄せ、同年12月15日、同区役所で年齢と名前は女性、顔写真は自分という住基カードを発行させた疑い。
読売新聞 - 7月28日

■どうして「18歳以上」である事を証明しなければならなかったのか?未成年では出来ない労働条件を提示されていたという事なのでしょうか?人気の無い住民基本台帳カードですが、こういう利用法?が有るのは始めから分かっていた事です。カードの発行過程で本人確認が不十分な手続きが行われるのですから、カードの便利さを宣伝する前に、こうしたIT時代に相応しくない古めかしい事務処理を根本から見直しておかねばなりませんでしたなあ。今回は大した罪でもない年齢詐称だけで済みましたが、このカードはいくらでも悪用できる代物なのですから、早急に手を打たないと単なる維持経費が掛かり過ぎるだけの問題では済まなくなりますぞ。

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最近の詐欺横領事件 其の弐

2006-07-30 07:44:47 | 社会問題・事件


東京外郭環状道路(外環道)建設に伴い、国土交通省が千葉県市川市にあった産業廃棄物処理会社に不当に高額の移転補償費を支払わされたとされる問題で、埼玉県警は28日までに、国交省から補償費を詐取したとして詐欺容疑で、指定暴力団山口組系組元幹部の70代の男を書類送検した。同省関東地方整備局は昨年12月、「(会社側との)交渉で脅迫的な言葉があり、結果として補償費の一部をだまし取られた」として県警に被害届を出していた。県警によると、元幹部の男は会社側について国交省側との協議に介入、不当に高額な補償費を支払わせて詐取した疑いが持たれている。
共同通信 - 7月29日

■工業社会の裏側では、膨大な量の廃棄物が動いているのは周知の事実で、産廃処分場が有る地方では奇怪な事件が時々起こりますなあ。大規模な再開発だの新築マンションの建設だの、威勢の良い風景には光が当たって報道もされますが、何かを作る前には何かを壊して捨てているのですから、それが何処へ行ってしまうのか、きっと誰かが上手く処理しているのだろう、と何となく考えるのを止めてしまわないと、心配で夜も眠れなくなります。闇から闇に流れて葬られる廃棄物は、案外身近な所に埋められていたりするものです。どんなに人目を誤魔化しても、自然には勝てませんから、いつかは水か空気に溶け込んで皆の体内に入り込むのですが、「産廃は儲かる」と思い込んでいる人達にはその道理が分からないのでしょうなあ。

■この事件も産廃処理業者と暴力団との関係が明らかにはなっていません。元々は無関係だったのに、介入すれば儲かると踏んで暴力団が入り込んで来たのか、始めから暴力団が処理場を経営していたのか、それも分かりませんなあ。


青森市文化スポーツ振興公社(青森市)で多額の使途不明金が見つかった問題で、会計を担当していた小島健一元主幹(51)=3月30日に懲戒免職=が着服したとみられる使途不明金の総額は1億3921万円にのぼることが27日、市の調査で分かった。公社の独自調査(6月公表)で判明した1億628万円よりも3293万円多かった。また、市はこれまでの調査を踏まえ、不正に対する公社の組織的関与はなかったと結論付けた。これら調査結果は31日に市議会に報告される。

■冬季オリンピックでカーリングの人気を高めたのが青森県の女性チームでしたなあ。テレビの中継も高視聴率で、確か映画まで製作されたのではないでしょうか?この不正疑惑はチームが解散した直後に露見したものだったと記憶しますぞ。「青森の公社」と聞けば、反射的に「アニータ!」と叫んでしまいそうですが、青森の役人と言うのはこんな事ばかりしているのでしょうか?そんな役人風土の所に、莫大な資金を投入して核燃料のサイクル基地を建設しているのですから、よほど注意深く金の流れを見ていないと危ないですなあ。いろいろと「風評」を気にする原子力事業ですから、多少の不祥事は握りつぶして闇に葬ってしまうでしょうからなあ。


…公社は6月6日、99年から今年3月までの間に、公金に当たる一般会計を含む公社会計で8774万円、互助会会計で1853万円の計1億6628万円が使途不明金になっていたと明らかにした。これに対し、市は同月、「公社が設立された96年までさかのぼって調べる必要がある」として、米塚博・自治体経営監を責任者とする調査チームを設置し、問題の全容解明を急いでいた。市の調査で判明した使途不明金は
(1)法人税・消費税・労働保険料関連4658万円(公社調査比9万円増)
(2)源泉所得税関連4343万円(同219万円増)
(3)互助会費関連4583万円(同2730万円増)――など。
互助会費関連のうち、2650万円は自動販売機設置料収入に絡む使途不明金で、公社が調査しなかった96~98年で796万円の使途不明金が確認された。……元主幹は、税金関係で正規の納税額を水増しして公金請求したうえで、本来の納税額との差額を着服。領収書を偽造して帳簿上の帳尻を合わせていた。また、架空請求書を偽造していたケースも確認された。一方、一部関係者らから指摘されていた「組織的な不正」疑惑については、元主幹以外の関与は確認できなかったとした。……毎日新聞 - 7月28日

■懲戒免職になった小島健一元主幹は、単独の犯行ではない!と主張しているそうですが、多勢に無勢で地縁血縁の圧力と、議会と役所の鉄壁のチーム・ワークによる力で押し切られてしまうのでしょうなあ。まあ、アニータさんにプレゼントされた金額に比べれば、1億4000万円は小さなものでしょうが、公金が何処かに消えてしまう構造があちこちに潜んでいるとしたら、青森県は日本中の不信と嘲笑の対象になってしまいますぞ!

最近の詐欺横領事件 其の壱

2006-07-30 07:44:15 | 社会問題・事件
■「犯罪だけは好景気!」と書きましたが、景気とは無関係に常にお金が有る場所があるのですなあ。プロでなくても、簡単に公金を引き抜ける仕組みが有る限り、こうした犯罪は無くならないのでしょうが、個人的な責任感や職業倫理が崩れたら、社会構造自体が崩壊するのですから、政治を担当する人達には一層の研究を求めたいところですなあ。

愛知県警捜査2課と熱田署などは28日、架空のパソコン検定合格講座を開設し、厚生労働省の教育訓練給付金をだまし取ったとして、詐欺の疑いで、会社員高木末広(57)=名古屋市北区=と、理容業小川日出夫(57)=三重県四日市市、会社員増田俊一(56)=津市=の3容疑者を逮捕した。県警は2002年1月から03年7月までの間に、高木容疑者らが全国から約3600人の受講者を集め、総額約8億2000万円をだまし取ったとみて追及する。
(共同通信) - 7月28日

■「士(さむらい)」商法という詐欺と恐喝を巧妙に混ぜた悪徳商売が有りますが、この事件はそれとは違う詐欺事件のようです。パソコン検定に合格します!と宣伝して生徒を集める商売はたくさん有りますし、その中には怪しげな指導をして詐欺同然の教室も有るようです。合格者の数を水増ししたり、検定に合格しただけで人生が薔薇色になるように信じ込ませる誇大広告も有ります。それらが摘発されず、この事件が問題となった理由は「教育訓練給付金」を詐取したという一点でしょう。カモになる失業者が町に溢れている証拠でも有りますが、公金を騙し取られた役所も怒っているのでしょうが、熱心に学んでいたはずの3600人の人達はどうなるのでしょう?

■少しは良心的な指導を受けていたのなら、別の訓練機関に鞍替えして努力を重ねれば当初の目標に達するでしょうが、逮捕された人の経歴を見ると適当な事をやっていた可能性が高いですなあ。失業対策であろうと、介護制度であろうと、予算が付いた福祉政策の穴を狙う小賢(こざか)しい輩が跡を絶ちませんなあ。


NHKの関連団体「NHKサービスセンター」は28日、NHK杯国際フィギュアスケート競技大会(日本スケート連盟主催)の出納業務を担当していた文化事業部の男性職員(38)が2000年から5年にわたり、入場料収入など約370万円を着服したとして、同日付で懲戒免職としたと発表した。同センターは今期以降の大会運営業務の受託を辞退するとともに、山田勝美理事長を減給(20%)3カ月とするなど、役員6人を処分した。今後は上司らの処分と職員の告訴を検討するという。時事通信 - 7月28日

■皆様のNHKからどんな不祥事が出て来ても、大きなニュースにはならなくなってしまいました。「まっすぐに」改革している最中だそうですが、その裏側では小銭稼ぎが無くならないようです。日本のスケート連盟自体に不明朗な裏金疑惑が有った事をNHKも厳しく報道していたはずです。選手や後進の子供達を育成するために使われるべき公金が、わけの分からない所に流用されたり、悪い連中が山分けしたりしていた上に、フィギュア・スケートの発展に少しは寄与できるかと競技を楽しみながら、会場に足を運ぶ人が支払う入場料を着服する者が居たら、選手の育成などに回す資金が足らないはずですなあ。世間の注目が集まると、不思議な金が流れ込み、その匂いを嗅いで悪い奴が集まって来るのは仕方が無いでしょう。しかし、そんな魔の手から団体と競技と選手を守り抜くのが競技団体とマスコミの使命なのではないでしょうか?


朝銀西信用組合(本店岡山市)は28日、福岡支店の次長が取引先の預金計約3億1800万円を不正に引き出し、着服していたと発表した。穴埋め分を差し引き、実損額は2億円余に上るという。同信組は次長について業務上横領と詐欺容疑で福岡県警に告訴した。このほか、宇部支店と本店営業部でも職員2人が計約3600万円を着服。同信組は同日までに次長ら3人を懲戒解雇した。 
時事通信 - 7月28日

■全国の朝銀には、1兆円を越える税金が投入されています。元々、他の金融機関から融資を受けられない在日の人々のために設立されたはずなのに、預かった金が何処かに消えてしまってその行方はほとんど解明されないまま、国民生活を混乱させないために税金を投入して破綻を食い止めたはずです。この着服された莫大な預金も何処に消えたのか分からないまま事件は幕引きになるのでしょうなあ。

野口英世賞を考える 其の四

2006-07-29 10:00:38 | 外交・世界情勢全般
■映画『ブラック・ホーク・ダウン』にも描かれたソマリアの内戦に中途半端に介入したクリントン政権は、最悪のやりっ放し撤収をしてしまいました。その武力の空白地帯にアルカーイダが入り込んでいるわけです。ブッシュ政権がアフガニスタンで不毛な鬼ごっこをやってもアルカーイダは細胞分裂を続けて活動拠点を増やしているのです。そのアフガニスタンでは壊滅したはずのタリバンが完全復活して暴れ回っていると伝えられます。日本も協力しているアフガニスタン制圧作戦は完全に失敗する恐れが出ているばかりか、アフリカも敵に回し兼ねない情勢になっていると言えるでしょう。

アラブの衛星テレビ局アルジャジーラは27日、国際テロ組織アルカイダのナンバー2であるザワヒリ容疑者のビデオ声明を放映、この中で同容疑者は、イスラエル軍によるレバノン、パレスチナ攻撃を座視しないと警告した。ザワヒリ容疑者は「ガザやレバノンで起きている深刻な出来事を見れば、十字軍とシオニスト(イスラエル)に道徳心がないことは誰の目にも明らかだ」と非難。さらに「聖戦参加の義務の名において決起し、十字軍やシオニストとの戦いでの殉教の道を追求するよう、あなた方に求める」とイスラム教徒に向けて語った。時事通信 - 7月27日

■アフガニスタンとアフリカの間にイスラエルが有って、アルカーイダにとってヒズボラ戦争は宗派の違いを超えて、大いに利用価値の高い事件となりました。イラクではシーア派を殺し回りながら、対イスラエルとなったら手のひらを返して全イスラムの共闘を訴えています。親玉のイランとアルカーイダが部分的にも手を結んだら、非常に厄介な事になります。ソマリアの対岸、イエメンにもアルカーイダの活動拠点が有りますから、インド洋西岸からペルシア湾までが危険な海域になりつつあります。


スイスのジュネーブ高等国際問題研究所は26日、イランとクロアチアが2003年の小型武器取引(金額ベース)で初めて「主要輸出国」に仲間入りしたとする06年版の「小型武器概観」を発表した。概観によると、イランは03年、スーダンやイタリアなどに1600万ドル(約18億6000万円)以上の小型武器を輸出。「部品や弾薬も含め年間輸出額1000万ドル以上」という主要輸出国の基準を満たした。全体では、ロシア(約4億3200万ドル以上)を筆頭に米国、イタリア、ドイツ、ブラジル、中国の6カ国を「輸出上位国」と分類。「輸入上位国」としては米国(約6億2300万ドル)、キプロス、ドイツを挙げた。共同通信 - 6月27日

■さりげなくイタリアとイランの間に密接な武器取引が書かれていますが、ヒズボラ戦争が始まって直ぐにイタリアがイスラエル批判を表明した裏には、こうしたキナ臭い武器商売の話が有ったのですなあ。トルコとギリシアが島を割って対峙しているキプロスに大量の武器が売られているというのも無気味な話ですぞ。キリスト教対イスラム教の対立が火を噴くとしたら、レバノンの沖合いのキプロスかも知れません。

■武器の輸出上位国のお得意様がアフリカ諸国である状態が続く限り、コナレ委員長としてはそれに対抗出来る強力なAU軍を創設しなければなりません。国連の監視団や平和維持軍はいざとなったら何の役にも立たない事を、スーダンに続いてレバノンでも明らかになってしまっていても、「アフリカ大戦」が中東戦争と連動して大爆発を起こすのを止めるには、国連の旗と強力な国連軍の出動が必要です。コナレ委員長の来日時期が、イラクからの陸上自衛隊撤収の日程と合っていたのも、意味が無いわけではないでしょう。米国の注文に応じて自衛隊を派遣しているだけでは、日本に対する国際的な期待には応えられない立場にだんだん追い込まれているようですぞ。「野口英世賞」は、戦争が終わってから提案すべきアイデアでした。それも、5年に1度、1億円を拠出する程度で、広大なアフリカにどんな貢献が出来るのでしょう?世間知らずの自画自賛で外交など出来ませんぞ!

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野口英世賞を考える 其の参

2006-07-29 10:00:04 | 外交・世界情勢全般
■コナレさんには、日本の総理と相談したい問題が山ほど有ったのに、日本はアフリカ問題に冷淡だと言われても仕方が有りませんなあ。日本の外務省が何も知らないというわけではなく、外務省の危険情報HPには、ちょっと大雑把ですが正確な情報が出ています。

2006年7月30日は、コンゴ民主共和国の大統領選挙及び国民議会選挙が予定されています。しかし、野党の民主社会進歩連合(UDPS)は、選挙プロセスのボイコットや国民に対して再三デモ行進を呼び掛けるなどの抗議行動を行っています。6月29日から選挙キャンペーンが始まっており、野党UDPSは、6月12日のデモ行進では、「6月30日通り」を行進しつつ付近の車両や建物への投石を行いました。規制に当たった警察部隊は、威嚇射撃でデモ隊を解散させましたが、付近は一時騒然となりました。また7月11日には、選挙キャンペーンの一時中断を求める大統領選挙候補者19人の支持者による大規模な抗議行動が行われました。これに対して警察部隊が催涙ガスや手榴弾を使用してデモ規制を行い、少なくとも10数人が負傷する事件が発生しています。……

■日本のマスコミはこの歴史的な大統領選挙に関して、ほとんど報道していないようです。それだけアフリカは遠い見知らぬ場所なのでしょうなあ。希少金属と宝石の文字通り宝庫のコンゴが安定し、民主化が進んで国富の配分が進まないと、アフリカ大陸全体の復興は進みません。欧米のメディアはこの選挙の成り行きを凝視しているのも当然です。周辺諸国からの干渉で小競り合いが続き、時々は大規模な国境紛争も起こり続けたコンゴが簡単に民主化されるはずはないのですが、飴を与えて民主化を支援しないと歴史が逆流してしまう可能性が有ります。コナレ委員長は、出来れば日本にも武装した選挙監視団を派遣して欲しかったでしょうし、民主化が進んだらという条件付きでも良いから、国民の励みになる援助計画の話も聞きたかったはずです。今のコンゴは、野口英世博士のような立派な医学者に治療して貰うよりも、鉄砲玉や鉈(なた)で頭を割られない生活が欲しいのです。


ソマリアの首都モガディシオなど南部の大半を支配するイスラム原理主義勢力と、ソマリア暫定政府を支援する隣国エチオピアの間で緊張が高まっている。エチオピア軍がソマリアへ越境、そのまま居座り本格的な支援を始めたとの目撃情報が相次いでいるのが原因で、イスラム原理主義勢力の指導者らは国民に「聖戦」を呼びかけた。AP通信やロイター通信が伝えた目撃者情報によると、エチオピア軍兵士約400人が20日、暫定政府が拠点とする地方都市バイドアに現れ、ユスフ暫定大統領の官邸周囲に布陣。22日には国境近くの町ワジドで兵士約200人が目撃され、飛行場を接収し軍ヘリコプター2機が着陸したという。共同通信 - 7月23日

■コナレ委員長が最も心配しているのがソマリアの内戦です。大国スーダンでもイスラム教徒と非イスラム教徒との間で凄惨な戦いが続いているのですから、エチオピアを挟んでソマリアでもイスラム原理主義が暴れ出したら、アフリカの東北部は中東と連動して大混乱に陥る危険が有るのです。この緊張が高まっている最中にコナレ委員長が来日している事を首相官邸は分かっていたのでしょうか?


ソマリアの首都モガディシオなど南部地域の大半を支配する原理主義勢力「イスラム法廷会議」の新指導者アウェイス師は25日、ソマリアの新政府はイスラム教の聖典コーランと預言者ムハンマドの教えに基づくイスラム国家を目指す考えを強調した。AP通信が伝えた。アウェイス師は、米政府から国際テロ組織アルカイダに協力するテロリストと非難される急進派。地方都市バイドアに拠点を構える暫定政府は政教分離の立場を取っており、7月中旬に予定されている和平協議は難航する恐れが強まっている。アウェイス師は「われわれが同意できる政府は、聖なるコーランと預言者ムハンマドの教えに基づくものだ」と強調。「米政府との関係は、彼らがわれわれをどう待遇するかによるだろう」と語った。
共同通信 - 6月27日

野口英世賞を考える 其の弐

2006-07-29 09:59:32 | 外交・世界情勢全般


日本は、戦後の貧困から国際社会の支援を受けて発展を遂げることができました。この経験を活かして、紛争や感染症などの問題に直面するアフリカの国々が自らの力で立ち上がっていくことができるように、日本としてできる限り支援をしていきたいと思います。

■日本の戦後とこれからのアフリカの復興を素朴に重ねてしまう感覚がさっぱ分かりません。


いまから約80年前、野口英世博士は遠くガーナの地にわたり、黄熱病の研究に身を捧げ、その途上、病に倒れ、51歳で亡くなりました。ガーナの首都アクラには、野口博士が黄熱病研究にあたった研究室があり、当時の顕微鏡も残されていました。野口博士のお母さまから、そしてアメリカ人の夫人からの手紙などゆかりの品々を拝見し、既に日本やアメリカで名声を博していた野口博士が、遙かかなたのガーナで研究をしようとしたその探求心、勇気に改めて感銘を受けました。

■アフリカと言ったら野口英世しか出て来ない!何とも救いようのないアナクロニズムと歴史の貧困ですなあ。世界最初のノーベル賞を貰えるはずだった野口博士は確かに偉大な業績を残して下さいました。しかし、今も変わらない日本の医学を停滞させている下らない学閥政治に邪魔されて、野口博士は祖国に居場所が無かったという悲しい話も有ります。日本でよりもアメリカやアフリカの一部で非常に有名な野口博士を、アメリカ大好きな小泉プレスリー首相が玩具にしようと思い付くのは当然だったのかも知れません。


エチオピアに向かう飛行機の中で、野口英世賞を創設するというアイデアがひらめきました。アフリカの医学や医療に貢献した人に、アフリカの人に限らず、アジアの人でもヨーロッパの人でもよい、そういう功績のある人に野口英世博士の名前を冠した賞を授与するというものです。クフォー大統領とともに臨んだガーナでの共同記者会見の場でこの考えを披露したところ、現地でも大変な反響をよびました。

■我田引水、自画自賛、「大変な反響」とは大仰な!今のアフリカにまとまった金額の経済支援をしようという国は有りません。欧米諸国が話し合っているのは、「借金棒引き」問題です。アホな独裁者が米ソ両国から売りつけられた武器の代金が主な借金の原因ですから、何とも非生産的な借金問題です。本当は日本からは「借金棒引き」とは別枠の資金援助が欲しいのがアフリカの本音です。これまでの紐付きハコモノ援助でも良いのでしょうが、新しい実の有る援助が欲しいのです。そこに「野口英世賞」がどれほどの価値を持ち得るのか、はなはだ頼りないですなあ。


アフリカ53カ国が参加するアフリカ連合(AU)のコナレ委員長が近来日する予定なので、その際に、コナレ委員長の考えもよく聞いて、ノーベル賞に匹敵するような立派な賞にしたいと考えています。今回のアフリカ訪問は、野口英世博士が私を呼んだような気がします。
日本は、ノーベル賞をとろうとするばかりでなく、野口英世賞を創設して、少しでもアフリカの医学や医療のためになるように、野口英世博士の志を活かしていきたいと思います。
(情報提供:日本エチオピア協会)

■これが政府のホーム・ページに掲載されていた能天気な小泉プレスリー首相の御言葉です。この掲示文を見つけて、やっと合点が行った話が有りますぞ。


午後5時58分、公邸着。同6時から同1分まで、玄関ホールでコナレ・アフリカ連合(AU)委員長を出迎え。同2分、応接室で同委員長との会談開始。午後7時、会談終了。同2分から同13分まで、2階ラウンジで野口英世アフリカ賞に関するコナレ委員長との共同記者発表。午後7時14分、和室へ。同15分、コナレ委員長との夕食会開始。森喜朗前首相、高添一郎野口英世記念会会長ら同席。
午後8時59分、夕食会終了。同9時1分から同4分まで、公邸玄関でコナレ委員長らを見送り。森氏残る。……

■これはコナレ委員長が来日した7月25日の首相動向です。まるでコナレ委員長は「野口英世賞」を貰いに来たようにしか見えませんなあ。たった1時間の会談をして夕食会です。

野口英世賞を考える 其の壱

2006-07-29 09:58:58 | 外交・世界情勢全般
■日本の公立学校で教育を受けると、欧州の歴史を「世界の歴史」として勉強させられます。文明の黎明(れいめい)か何かで、メソポタミアとエジプトが出て来たかと思うと、あっと言う間にギリシア・ローマ、あとはキリスト教と王様の話で、その後がいよいよ近代市民革命!…この流れを「世界地図」の上で再確認すると、あら?随分と世界は狭いんだなあと思います。まるで1960年代に巨大なアフリカ大陸が海の底から浮上したような話を聞かされますから、今でも「アフリカ」と聞いてもほとんどの日本人には、定かなイメージなど有りません。

小泉純一郎首相は25日夜、首相公邸で来日中のコナレ・アフリカ連合(AU)委員長とともに記者会見し、アフリカで活動する医学研究者らを対象にした「野口英世アフリカ賞」の創設を正式発表した。5年に1度授与し、賞金は1億円程度。2008年に東京で開くアフリカ開発会議(TICAD)で最初の授与式を行う方針だ。28日に閣議決定する。首相は「ノーベル賞に匹敵するような、長く将来にわたって継続し、医療、医学の研究に貢献できる賞にしたい」と強調。コナレ委員長も「賞の創設は野口英世博士のようなアフリカへの献身的な取り組みの象徴になるだろう」と歓迎した。 
時事通信 - 7月25日

■AUはEUを手本にして発足した、壮大な目標を掲げている若い組織です。コナレさんはマリ共和国の初めて民主的に選ばれた大統領で2期10年の任期を務め上げた人です。南アフリカのマンデラさんほどではないにしても、独裁政権を批判して苦労した人でもあります。そして、コナレさんが束ねるAU(アフリカ連合)は、53カ国が参加する世界最大規模の国際組織です。アフリカは奴隷貿易の舞台となり、長い欧州諸国の植民地となっていた歴史が災いし、その上冷戦時代には米ソが無責任な陣取り合戦を繰り広げたお陰で、独裁的な傀儡政権が跋扈して無意味な代理戦争をやらされたのでした。こうした重い歴史の負の遺産を生産して立ち上がろうとしているわけですが、あまりに広大で遠い場所ゆえか、日本人には実感としてアフリカの問題は理解されていないようです。

■貧困と各種の感染症など、解決すべき民政問題が山積しているというのに、「アフリカ大戦」と呼ばれる大規模な軍事衝突が拡大しています。経済・文化の発展を目指すAUですが、喫緊の課題は「アフリカ待機軍」を設置してアフリカ人の手で民族紛争を終わらせる事です。国連の援助を受けながら、徐々に自立した軍隊にしたいのですが、どうも国連との連携がうまく取れず苦労しているようです。アフリカの角、ソマリアからスーダン、コンゴを通ってアンゴラに抜けるアフリカ大陸を斜めに横断する紛争地域には、ルワンダとブルンジの民族皆殺し合戦を続けている国も含まれます。西アフリカのリベリアやコート・ジボワールにも紛争は有りますが、まずはソマリアとコンゴを安定させなければならない、とコナレさんは焦っております。

■AUの本部が置かれているアジス・アベバの有るエチオピアを挟んで、ソマリアとスーダンがイスラム原理主義問題を抱えて大規模な内戦状態になっています。東のアフガニスタンから中東を通過して東アフリカまでイスラム原理主義問題が連なっているのですが、日本は自衛隊を派遣したイラクに注目するので、この世界規模の連鎖が良く分からないようです。


小泉純一郎です。
先週一週間、アフリカのエチオピアとガーナ、北欧のスウェーデンを訪問しました。エチオピアでは、メレス首相、そしてアフリカ連合(AU)のコナレ委員長と、ガーナでは、クフォー大統領とそれぞれ会談し、アフリカ支援や国連安保理改革などについて話し合いました。

アフリカには、全部で53の国があります。その面積は、コナレ委員長に聞かされて私も驚きましたが、アメリカ、中国とインド、そしてヨーロッパを合わせたより広いそうです。60年ほど前、国連ができたとき、加盟国は全部で51カ国、そのうちアフリカは4カ国に過ぎませんでした。現在、加盟国は191カ国に増加し、アフリカはいまやその4分の1以上を占めるまでになりました。

■首相の認識がこの程度ですから、鈴木宗男さん一人でアフリカ外交を仕切ってしまえたのでしょうなあ。外務省の中では中東とアフリカを一括りにして担当部署を設置しているくらいですから、どうしても扱いが大雑把になってしまいます。それでも、「鯨が可哀想運動」を押し返して商業捕鯨を再開する道を開くのに、アフリカ諸国の協力を得られたのは最近の良いニュースでした。

寿命が縮まる話 其の参

2006-07-28 19:48:14 | 社会問題・事件


この事故で、東北新幹線は上下線で計23本が最大で76分遅れ、約2万1000人に影響が出た。調べでは、現場は宇都宮-那須塩原駅間のほぼ中間地点。一部高架で、遺体の発見場所から約200メートル下り方向に保線用の階段が設置されていた。階段の入り口扉は施錠されていたが、よじ登ることは可能という。また、道路などに面した部分は、有刺鉄線を張った金網のフェンス(高さ約2.5メートル)が張られている。男性は数日前、家族から「自殺の恐れがある」と捜索願が出されていた。

■新幹線の運転手さんというのは、鉄道界のエリートのはずです。最も飛び込み自殺に関わる可能性の低い運転手さんなのに、さぞや後味の悪い思いをしている事でしょう。そして、2万1000人の乗客の中には、仕事や生活に大いなる支障を来たしてしまって途方に暮れた人も居たに違い有りません。しかし、その中には飛び込み自殺と聞いて、「明日は我が身」と思って怒りを忘れた人も居たのではないでしょうか?


同本部によると、保線用の階段は約1キロごとに設置。レール上の異物を感知する装置はあるが、人や動物が軌道内に入ってもレールに触らない限り反応しないという。東北新幹線では5月29日、小山駅(栃木県小山市)で28歳の男性がはねられ、死亡している。
毎日新聞 - 7月22日

■新幹線の(自殺)事故ならばマスコミも取り上げますが、大都市の通勤列車が度々止まる「人身事故」となると、ほとんど取り上げないのは、特別な意味を持つ事件とは思われなくなっている証拠なのでしょうなあ。操作上のミスでダイヤが乱れた場合にも、責任逃れで「人身事故」をデッチ上げる不埒(ふらち)なヤツも居るという噂も聞きますが、それにしても東京都内の電車は頻繁に止まりますなあ。


韓国の釜山で23日夕、旅行者の日本人男性(65)=東京都在住=が自殺しようと地下鉄の線路に飛び込み、直後に列車が通過したが奇跡的に軽傷を負っただけで助かった。ニュース専門テレビYTNなどが24日、一部始終を写した監視カメラの映像を放映した。映像では、男性は近づく列車を見ながら線路に飛び降りた。3、4秒後、列車は男性が降りた場所から10数メートル先まで進み止まった。しかし、男性は間もなく車体とホームの間から右手を出し、駆けつけた2人の助けでホームに上がった。線路内のすき間に落ち無事だったらしい。聯合ニュースによると、男性は今月14日、韓国に入国。妻と離婚し、旅券をなくすなどして落ち込み、焼酎を1本飲んで自殺を図ったという。共同通信 - 7月24日

■こういうニュースを聞きますと、JR高田の馬場駅でホームから転落した酔っ払いを助けようとして犠牲になった韓国からの留学生を思い出してしまいます。旅券を無くしたら大使館か領事館に行けば良いのですが、そんな知識も無いまま海外旅行に行ったのか、在外公館は国民を助けない、と思い込んでいたのか、理由は分かりませんがパスポート紛失くらいで他国に迷惑を掛けては行けません。「離婚」というのも、日本での事なのか、夫婦で韓国旅行に行っての事なのかも分かりませんが、同国人として何となく気恥ずかしい事件であります。


大阪府池田市の50歳代の男性が昨年11月、振り込め詐欺で数百万円の被害に遭った後、首をつって自殺していたことが、わかった。大阪府警捜査2課は、男性の振込先の口座から、川崎市高津区の塗装工竹内針字被告(27)ら8人を割り出し、詐欺などの疑いで逮捕した。竹内被告らの背後に、大がかりな振り込め詐欺グループがあるとみて全容解明を進める。

■詐欺に遭って老後の蓄えを失ったという被害者のインタヴューが頻繁に報道されますが、呆然自失状態で力無く語っている被害者が、その後どうなったのかを追跡する報道は無いような気がします。最初は「オレオレ詐欺」などと、笑い話のような名称で呼ばれた電話での詐欺は、年間200億円近い被害を出すような大流行を見せています。電話と言う文明の利器の重要性を考えれば、現行の法律では傷害罪や殺人罪には問えないのでしょうが、社会の安定を脅かし、人間不信を助長してしまう罪は重いと考えられないのでしょうか?詐欺罪にしても強盗や殺人など比べると、刑罰は軽いというのも解せません。騙されるヤツも悪いのだ、などと考えているのなら、標的にされて被害に遭う社会的弱者を守る法律が無いことになりますぞ。


調べでは、竹内被告らは昨年9月中旬、他人名義の健康保険証を使って口座を開設し、キャッシュカードをだまし取った疑い。男性はこの口座を含む4口座に金を振り込んでいたという。府警によると、昨年11月1日、池田市内の公園で男性が首をつって死亡しているのが発見された後、男性の自宅に「債務者リストからデータを削除するために金が必要とだまされ、数百万円を振り込んだ」との内容の遺書が郵送され、詐欺被害が発覚。府警は、振込先の口座の入手経路などから、振り込め詐欺グループの特定を進めていた。
読売新聞 - 7月28日

■この国で生きていたくないと思っても、海外に逃げ出す経験をした事のない日本人は、切羽詰って自殺してしまうのかも知れません。税金の安い国を物色して移住してしまうのは大金持ちばかりです。このまま社会的弱者を救えない政治が続けば、日本から「難民」が海外に逃げ出す騒ぎが起こるかも知れませんなあ。そうなったら見栄を張ってODAなどばら撒いていられなくなるのでしょうか?時々、スクープ映像として流される、飢え苦しむ北朝鮮の人々の姿を、上から見下ろしていられない時代が近付いているような気がします。こうした現状や、暗澹たる近い将来を考えると、それだけでも気が滅入って「寿命が縮ま」りそうです。

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寿命が縮まる話 其の弐

2006-07-28 19:47:46 | 社会問題・事件
■香港とスイスという、少し性格は違いますが男尊女卑の文化が色濃く残っている場所が上位に来るのは意味深ですなあ。アイスランドもルター派のキリスト教徒が多いので家族制度は古風なところが残っているのかも知れません。まあ、女性を虐げれば良いという話ではありませんが……。

厚労省は、昨年は春先にインフルエンザが流行し、3月の肺炎による死亡数が前年同月比43.1%増となったことや自殺の増加傾向が平均寿命の短縮をもたらしたと分析、「平均寿命が今後延びていく傾向に変わりはない」とみている。一方、05年のデータでは、
65歳まで生存する人の割合は男85.6%、女93.1%。
80歳まででは、男55.0%、女76.8%だった。

0歳児の将来の死因別死亡確率は、
男が(1)がん29.88%(2)心臓病14.88%(3)肺炎12.46%――で、
女は(1)がん20・54%(2)心臓病19・17%(3)脳卒中14.52――の順。がん、心臓病、脳卒中が克服されると、男の平均寿命は8.49年延び87.02歳に、女は7.68年増え、93.17歳になるという。毎日新聞 - 7月25日

■インフルエンザの流行が平均寿命を縮めたとすれば、急速に危険性が高まっている鳥インフルエンザなどの新型ウィルスの脅威は、薬剤で延命しているような抵抗力の弱い人々を直撃する事が心配になりますなあ。何よりも「自殺」の増加が深刻です。毎日どこかで起こっている火災の中に、どれ程の焼身自殺が含まれているのか、あまり判然としない印象が有りますぞ。遺書が残されていたり、周囲の人々が動機や兆候に気が付いている場合を除けば、失火なのか焼身自殺なのかは判断出来ないのではないでしょうか?


24日午後2時ごろ、秋田市山王の秋田市役所駐車場に止めた車の中で、男性が倒れているのを市職員が見つけた。秋田中央署が調べたところ、市内の無職男性(37)が車内で死亡しており、練炭を燃やしたしちりんが2個あった。死因は一酸化炭素中毒で、同署は自殺とみている。市健康福祉部によると、男性は睡眠障害で働けないとして、5、6月に計2回、生活保護を申請したが、市は就労可能などと判断し却下した。男性が相談に訪れていた市民団体「秋田生活と健康を守る会」によると、男性は23日夜、友人に「俺(おれ)みたいな人がいっぱいいる。俺が犠牲になって福祉をよくしたい」と話したという。遺書はなかったが、同会は申請却下に対する抗議の自殺だったとみている。時事通信 - 7月25日

■以前から、秋田県は自殺者が多いところという統計が出ていたはずです。命を絶たねば安眠できないと思い詰めるほど苦しんでいた人を助ける「予算」が無いのなら、役所のコストや人員を整理する方が先のような気がします。最近破綻した夕張市でも、これから残された住民に苦しい生活を強いる責任など一切感じていないかのように、市議やら職員の給料を増額させたという驚くべきニュースもありました。


21日午後1時35分ごろ、栃木県矢板市片岡を走行中の東京発盛岡行き東北新幹線「やまびこ53号」の運転士から「線路脇に動物の死がいらしい物がある」とJR東日本新幹線運行本部に連絡があった。約1時間40分後、保線員が人の遺体と確認、県警矢板署に届けた。同署は同市内の会社員男性(68)が線路内に入りひかれた可能性が高いとみて、入った経路や身元確認を急いでいる。

■68歳で「会社員」をして収入を得ていても自殺する人が居ます。東京オリンピックから始まった新幹線建設は、日本の豊かさの象徴でしたのに、調子に乗って全国に新幹線を走らせようという無茶な計画が、専用の高架線ではなく田圃の真ん中を高速で通過する奇妙な新幹線を生み出してしまいました。そこが自殺に名所になったりしたら、随分と皮肉な話ですなあ。

寿命が縮まる話 其の壱

2006-07-28 19:47:17 | 社会問題・事件
■何事にもピークというものが有りますから、世界一を誇った日本人の平均寿命がその地位を失っても驚くには値しないのが道理というものです。しかし、その原因によってはのんびりと構えていられない事も有りそうです。国民の平均寿命が伸びるのを、何となく政府が喜んでいないのがとても気になっていたのですが、それに呼応するように数値が下がるというのは気に入りませんなあ。「ああ、寿命が縮まった」という慣用句が、もう直ぐ比喩として使えなくなるのではないでしょうか?食生態学者の西丸震哉さんが『41歳寿命説』という恐ろしげな本を書いていますが、「昭和30年代に日本はうっすらとしたガス室に入った」という刺激的な比喩で、公害によって日本人の心身が蝕まれているシミュレーションを提示していました。大気汚染の凄まじさは四日市喘息という難病に象徴され、水質汚染は水俣病に象徴されますが、それは決して地名で限定される局地的な問題ではなかったわけですから、自分だけは汚染を免れていると断言できる人は居ません。
 
■食品に含まれる添加物にも相当に怪しげな物が有りますし、体や食器を洗う界面活性剤も巡り巡って体内に取り込まれると、生物として致命的な打撃を受けるなどという説も有りますなあ。自然現象は恐ろしく気長に変化する場合も有れば、予想に反して短期間に激変する場合も有りますから対応は難しいのですが、人為的な、特に政治の無策や失敗によって寿命が縮められたりする場合は、人の智恵と行動で対処は可能なはずなのです。老人の医療費負担やら年金の受給額やら、行け行けどんどんの高度成長期に約束してた話とは随分と違っているのは、決して自然現象ではありません。税金の無駄遣いや特別会計の異常な増殖は、最近起こった問題ではありませんし、専門家の間では今の事態は随分前から警告されていたのでした。それを先送りして来た結果、当然のことながら奇跡も起きず、神風も吹きませんでしたから、借金を返済しながらの自転車操業でも間に合わなくなってしまいました。

■皮肉な事に、戦後の日米関係の歪みを一身に背負わされたような沖縄地方が、統計を取る度に日本全体の平均寿命を押し上げるほどの長寿ぶりでした。しかし、米軍が持ち込んだ食文化で育った世代には明らかに成人病が増えており、平均寿命を縮め始めていると指摘されたのは数年前の事でした。沖縄ほど劇的に食生活が短期間に変化はしなかった他の地域でも、昔は盆と正月にしか食べなかったような御馳走が常食になり、動物性蛋白質の摂取量は増加し、砂糖類も過剰に摂るようになりました。その反面、自動車や家電製品のお陰で日常生活の運動量は、数百分の一か数千分の一に減っているのですから、甚だしく生物としてはバランスが崩れた生活をしているのは明らかです。

■成人病予防に力を入れましょう、などと言い出した頃には、形振り構わぬリストラの嵐が吹き荒れて、サービス残業や強引な配置転換で労働者は心身ともに疲れ果ててしまっていました。何よりも健康を悪化させる精神的なストレスが、これほど高まったのは戦争末期の絶望的な時期以来の事ではないでしょうか?50年ほど前までなら、都市生活が破綻しても、多くの国民を受け容れる農業が健在でしたが、食糧は広大な耕地を巨大な機械で耕す国から輸入するか、貧しい国に商品作物を作らせて安く買い上げて消費すれば良いとされてからは、喰うだけなら何とかなった農村が壊滅してしまいましたなあ。


厚生労働省は25日、05年の日本人の平均寿命について、男性は78.53歳、女性は85.49歳で、前年よりそれぞれ0.11歳、0.10歳短くなったと発表した。男女ともに平均寿命が前年を下回ったのは、99年以来6年ぶりで、インフルエンザ流行による死者数増加などが響いたとみられる。国際比較(香港を含む)では女性は21年連続で世界一だったが、男性は前年の2位から4位に後退、32年ぶりにベスト3の座を明け渡した。

■まだまだ男社会の企業で何が起こっているのかを象徴するような数値だと思われますが、核家族化をまるで良い事のように進めて見たら、子供が巣立った後に残された高齢者の離婚が増加するようになりました。配偶者との死別が人間にとって、特に男にとっては最大のストレスになると言われていますが、一人になるのは生き別れも結果は同じでしょう。自由を履き違えたまま進んで来た戦後の日本は、我慢する事を忘れて「個性」と「好み」を優先させてしまいましたから、老いも若きも、簡単にキレテしまうようです。


日本の男性は73年に5位だったが74年からはずっとベスト3の座を維持してきた。最新の調査年に違いがあるため単純に比較はできないが、今回は香港(79.0歳、04年)、アイスランド(78.9歳、01~05年)、スイス(78.6歳、04年)に次ぐ4位で、なお上位国ながら後退した。

頑張れオンブズマン! 其の参

2006-07-28 11:06:03 | 政治


…提訴後1年あまりを経過した平成15年7月になってようやく、各支出について通り一遍の説明をおこないました。その説明は、例えば、銀座のキャバレーでの支出について、「政調会・第1部会・区民調査会」が「産業振興・景気動向調査研究」をおこなった際の支出であるとだけ説明するものでした。また、六本木のクラブについては「都連青年部・青年局城南ブロック意見交換」の場で「都市空間のありかた」が話し合われたとの説明がけがなされました。

■一般常識に照らせば、醜い悪あがきなのですが、こんな無様な言い訳を捻り出すのに、歳費で賄われる貴重な時間を使っている事も問題ですなあ。もしかしたら、この裁判闘争に最も熱心に取り組んでいる議員や役人が居るのではないでしょうかな?


こうした説明のおかしさは歴然としていましたが、われわれは政務調査費の使途のおかしさを広く知ってもらうためにも、いち早く判決を受けたほうが得策と判断し、違法性が一見明白な支出項目7件29万余に返還請求を絞り込んだうえで判決を求めることにしました。ところが、被告は、審理終結の直前になって、絞り込まれた請求対象額全額を区に自主的に返還し、裁判所に原告の請求の棄却を求めたのです。

■マスコミにでも嗅ぎ付けられては、事は面倒!とでも思ったのでしょうか、「金を返せば文句は無かろう」という開き直りも人を馬鹿にしていますなあ。


東京地方裁判所平成14年4月13日判決……判決では、訴訟の対象額がすでに返還されたことを理由に請求こそ棄却されましたが、判決文のなかで政務調査費の支出が違法であることが明確に認定されました。

裁判所というところは、時として寄席よりも面白い出し物が有るとは聞いたことがありますが、この判決文も随分と楽しめますぞ。日本語で読むのが恥ずかしくなるような、何とも不愉快な文面になっております。■


「上記の事実によれば、本件各支出がされた場所は、女性店員による接客がおこなわれるか、大きな音響が常に響いているかのいずれか又は両方に該当するものであり、それに加え、前記各号証の写真により認められる各店舗の外観等をも考慮した場合、上記(1)で認定した各会合を開催し、各記載の内容の意見交換や会議を行うにはそぐわないものであるばかりか、通常は遊興のみを行う場所であることが一見明白である。・・・そうすると、本件支出が行われた場所は、いずれもそれが行われた目的には到底そぐわない場所であるといわざるを得ず、その場所と目的との乖離があまりに大きいことにかんがみれば、現に区政に関する調査研究に用いられたことを示す具体的な主張立証がされない限り、本件支出は政務調査費の目的外のものであったと推認すべき…」

■オンブズマンとしては、金を返還したから済むような訴訟ではないので、訴訟は第2次へと引き継がれたそうです。


…この判決の3日後、新たに区民4名が申立人となって、自民党区議団が平成13年度の研究費と会議費、平成14年の会議費と研究費として支出した飲食費351件769万円余について、監査請求をおこないました。ところが、監査委員会では、平成13年度分について期限経過を理由に監査を実施しませんでした(この解釈が間違っていることは後の住民訴訟のなかで品川区自身が認めました。政務調査費の目的外支出についての監査請求・住民訴訟は返還請求権が10年間の時効にからない限りいつでも起こることができます)。また、監査をおこなった平成14年度分についても、支出の内容に立ち入って検討することもなく、「時間・場所を問わず多様な活動をおこなう必要性が存することも理解できる」として監査請求を棄却しました。

■税金の無駄遣いに「時効」が有るのも困った話ですが、「10年間」という時間が確保されているのは有り難い事です。これは他の地域でも参考になる規定でしょうなあ。


そこで、平成14年7月6日、品川区と被告として、自民党区議団らに対して769万円余の返還を請求することを求める住民訴訟を東京地方裁判所に起こしました。……品川区民オンブズマンの会のメンバーが手分けして支出先の飲食店(計151件)を訪問し、店の概観を写真におさめ、店のメニュー表やインターネットで探し出した資料を付して、裁判所に報告しました。報告書には店ごとに説明をつけて、いかに会合に不向きな場所であるかを裁判官にわかってもらうよう努めました。これに対して、被告(品川区議会事務局長)は、裁判所から釈明を受けても、各支出の内容を明らかにしようとせず、「調査権限がない」との答弁に終始しました。

■この程度の案件にも「調査権限」が無いような非力な議員なら、税金で雇っておく必要も無さそうですなあ。「政務調査費の不正支出」という裁判用語で収めておけば、こんなに恥ずかしい言葉が飛び交うような醜態は晒さずとも良かったのに、恥の上塗り泥沼状態になってしまったようです。の


…平成18年4月14日東京地方裁判所判決…裁判所は、それぞれの支出内容ごとに飲食する必要性があったか否かを検討したうえで、すべての飲食費の支出について目的外支出であるとして、請求していた769万余の全額について自民党区議団らに対して返還請求をおこなうよう命じました。例えば、居酒屋・ビヤガーデンについては「これらの店舗は、通常、顧客が飲酒を伴う食事をし、歓談に興ずる場所として利用されており、その性質からみて、社会通念上、「区政に関する調査研究」のための会合をおこなうに適切な場所とはいえないことは明らかである」と支出の必要性を否定し、目的外支出であると認定しています。……

■このような地方自治体に巣食っている馬鹿馬鹿しい公費の無駄遣いを、細かい物から全部を積算したら、一体、幾らになるのでしょう?国会議員の文書通信費や議員宿舎立替など、予算が有り余っているとしか思えない無駄遣いが指摘されていますが、増税議論になると必ず出て来る「足りない」話には、よほど注意しないと本当に節約しなければならない無駄遣いが見逃されてしまうでしょうなあ。国政の増税議論に常に欠けているのは、「特別会計」の扱いだという点も、自民党総裁選挙の行方を追う時には忘れては行けませんぞ!品川区のオンブズマンの皆さん、頑張って下さい。マスコミもそれに協力するように、こうした問題を粘り強く取り上げる努力をするべきでしょうなあ。

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頑張れオンブズマン! 其の弐

2006-07-28 11:05:27 | 政治


…自民党区議団においては、政務調査費(平成13年度)が東京六本木のクラブや銀座のキャバレーなどで使用されていました。さらに、カラオケスナックでの度重なる支出、すし・割烹店・しゃぶしゃぶ店などの高級料理店での支出、はたまた居酒屋やビヤガーデンでの支出など、飲食経費に対する政務調査費の支出は自民党区議団だけで2年間で350件以上にのぼっていました。政務調査費の多くが飲食費に支出されている現状は、自民党区議団以外のいくつかの会派でも似たり寄ったりでした。

■「2年間で350件以上」ということは、2日に1度は「楽しい政務調査」が実施されてた事になりますぞ!これなら一度やったら区議は止められませんなあ。


自民党

総支給額   29,640,000円
総支出額 29,888,163円
会派人数 13人
議員1人あたり 2,299,089円
飲食費総額 9,016,963円
議員1人あたり 693,613円
飲食費の占める割合 30.17%

公明党

総支給額   18,240,000円
総支出額 18,261,389円
会派人数 8人
議員1人あたり 2,282,674円
飲食費総額 4,100,999円
議員1人あたり 512,625円
飲食費の占める割合 22.46%

■なかなか興味深い数値が並んでいますぞ。因みに他の党会派の「議員1人あたり」の金額を並べてみますと、共産党=46,117円、合同= 23,556円、民主区民= 494,544円、区民クラブ= 0円なのだそうです。民主党もなかなか頑張っておりますなあ。国会では自民党と喧嘩している振りをしているのに、地方選挙となると奇怪な相乗り選挙をしている理由も、何となく分かるような気がしますなあ。


…さらに、政務調査費が日常的にタクシー代のために使われていることも明らかになりました。こうした使用実体をさらに明らかにして、目的外に支出された区民の税金の返還を求めるため、品川区民オンブズマンの会では平成14年4月に住民監査請求の申立をおこないました。……平成14年7月23日に、区民4名が申立人となって、品川区の監査委員会に対し、自民党区議団が平成13年度に支出した政務調査費のうち「研究費」名目で支出された飲食費208件620万円余について監査請求をおこないました。

■「日常的にタクシー代」とは、皆さまのNHKの職員もタクシーを異常に愛用しているという噂も有りましたが、他人の金を使い放題となればそうなるのでしょうか?


ところが、監査委員会は、「請求人の主張する違法性・不当性は請求人の主観を述べたものにすぎない」として、監査すら実施しませんでした。このため、平成14年8月30日、住民4名が原告になって、自民党区議団の代表者に対し、目的外使用金620万円あまりを品川区に返還するよう求める住民訴訟を東京地方裁判所に提起しました。

■これが「第1次住民訴訟」の顛末だそうです。絶対に非を認めて謝らないのが「お上」というものですから、区議会側の「言い訳」は奇妙キテレツな噴飯もので、品川区民でない限りは大笑いできる内容になっております。

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頑張れオンブズマン! 其の壱

2006-07-28 11:04:49 | 政治
■異色の漫画家、故・青木雄二さんの出世作『なにわ金融道』に「市議やで、市議が一番おいしいんや!」という恐ろしい台詞が出て来る話が有りました。選挙区が狭いので、選挙民との距離が近く、細々とした陳情を受けて直ぐに現場に行けるという立場なので、真面目に市会議員として働いている人は忙しい毎日を過ごしておられるとは思いますが、『なにわ金融道』に描かれる悪辣(あくらつ)な市議会議員は、夜な夜な綺麗なオネエサンたちがお酒を注いでくれる場所を会場にして、「勉強会」を開いているのでした。ボックス席に陣取って隣に座ってくれたオネエサンのおっぱいから手を離さない市議会議員の姿は醜悪なのでした。
 
■漫画に出て来る市議さんが言うには、公共事業の入札でわざとゴネて見せると業者が「裏献金」を持ってすっ飛んで来るとか、お手盛りの予算審議で数々の名目で公金を合法的に流用できるカラクリなどが得々と語れるのですが、それは飽くまでもフィクション!でした。でも、実際の市会議員の仕事というのは、実質的には1箇月ほどの予算審議の会議だけで、後は何をしているのかさっぱり分からないという話も聞きますなあ。欧米のコミュニティ議会は、ほとんど無償ボランティアによって運営されているなどという話を聞くと、やはり、明治以来の「上からの近代化」の悪しき伝統が色濃く残っている日本の姿が浮かび上がります。民主的に選挙されたはずの議員さんが、当選した直後から何故か「お上」に変身してしまう不思議は、誰にも解明できないまま、ずるずると続いているのですなあ。

■もしかすると、市議より区議の方がオイシイのかも知れない、と思える裁判沙汰が東京都の品川区で起こっているそうです。テレビ朝日の『スーパーモーニング』が取り上げて、疑惑の区議にインタビューしたり、「政務調査」の現場を追跡したりしていました。あまりに面白かったので、サイト検索してみたら、品川区のオンブズマンの皆さんが裁判の経過を詳細に記録していましたぞ。


品川区の区会議員には、毎月の給料(歳費と呼ばれています)として月額61万円余りが支払われていますが、そのほかに、議員が結成する会派に対し「区政に関する調査研究」のための費用が支給されています。それが政務調査費と呼ばれるもので、品川区では年4回にわたり会派の所属議員数に応じた額が支給されています。支給額は、所属議員あたり月額19万円です。

■何かの間違いで国会議員になってしまった杉村太蔵君が口走った「文書通信月額100万円」が有名になった事が有りましたが、区議は月額19万円なのですなあ。まあ、狭い区の中を歩き回って「調査研究」するのですから、これでも多過ぎるような気がしますなあ。本気で調査研究しようと思ったら、読みきれないほどの本も買えそうですし、存分に資料を集められそうですなあ。


政務調査費は、「区政に関する調査研究」のためにのみ使うことが許され、目的外使用がなされた場合、会派と会派代表者は区長に対して金額を返還しなければならないと条例において定められています。また、会派に交付されたものの使用されなかった調査費についても、返還が義務付けられています。

■ここまでの話は、至極尤もです。何処の地方公共団体も財政赤字で四苦八苦なのですから、遊んでいる予算など有るはずもなく、無駄を省いて財政再建に努力している真っ最中のはずですからなあ。


…品川区では、平成13年4月から、政務調査費の使用状況について領収書を添付して収支報告書を提出することが義務付けられました。収支報告書においては、「研究費」「研修費」「会議費」「資料費」「広報活動費」「事務費」「人件費」の項目ごとに使用金額の合計額が報告されますが、現状では個々の使用内容についての報告はありません。そのため個々の使用状況は、報告書に添付して提出された領収書から推測するほかありませんが、領収書からは政務調査費がどのような使途に使われているのかをかなり具体的に知ることができます。品川区民オンブズマンの会では、平成13年4月以降、各会派から提出された領収書を情報公開請求によって入手していますが、それによって政務調査費が議員の「ポケットマネー」のごとくに使用されている実体が明らかになりました。

■平成13年までは、闇から闇に怪しい予算が横領されていた可能性が有るようです。「依らしむべし、知らしむべからず」の権力者の極意が貫徹されていたのかも知れませんぞ。

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韓国の後始末は韓国で 其の参

2006-07-27 19:44:38 | 外交・情勢(アジア)


他の部署の当局者も私的な席で、「もう大統領府の発言を翻訳(問題発言の釈明をすること)するのにも限界を感じる。本音を言えば今すぐ辞めてしまいたい」と語った。ある大統領府当局者も、同僚らに会っては「つらい。だが、ぱっと辞めてしまうわけにもいかないし…」と言っているという。このように「漠然としている」、「答えが見えない」という言葉が特別多く聞かれるのは、以前とは異なる新しい現象だ。ある当局者は「大部分の外交・安保の実務者らが疲労感に陥っている」と語った。このような現象が生じた原因について当局者らは、第1の原因提供者として北朝鮮を挙げている。わずか数カ月前まで「北朝鮮も合理的な思考をしている」と述べていたのとは、すっかり様変わりしてしまった。

■特に面子にこだわる人達は、疲労感は口にしても絶対に自ら失敗を認めるような事は無いでしょうから、盧武鉉政権が続く限り政策の軌道修正は期待出来そうにありません。


ほとんどすべての当局者らが「(北朝鮮が)なぜそのような愚かなまねをするのか分からない。自分たちを助けようとしている人たちを、このように困難な立場に追いやるとは理解ができない」と話している。また、北朝鮮に対し、あまりにも早くカードを切ってしまったことに対する反省の雰囲気も漂っている。最近会ったある当局者は「世論が悪化してもポケットの中に“隠しカード”を握っていれば、もっと悠然と構えていられるのだが…。重大提案をすでに使ってしまったのにさらに重大な提案が残っているだろうか」と語った。安容均(アン・ヨンギュン)記者  朝鮮日報

■発足当初から、盧武鉉政権の政策スタッフは素人集団だと悪口を言われていたようですが、本当にオタク集団が集まってカルトを作ってしまったのだとしたら、その後始末には多大のコストが掛かりそうです。それを考えたら、意地でも北朝鮮を延命させる援助を続けていた方が、ずっと安上がりなのは確かでしょう。しかし、始めから返済する気がぜんぜん無い相手に借金の追い貸しをし続けるには、最終的に相手の資産全部を丸ごと奪い取る悪どさが無ければなりません。有望な地下資源や港湾設備を中国やロシアに奪われた後に残された同胞2000万人がその資産ですが、それを奪い取ってそんなに嬉しいのでしょうか?


韓国の聯合ニュースは26日、北朝鮮が韓国企業・現代峨山に運営を認めている北朝鮮・金剛山観光について、米ドルで受け取ってきた代金を今年2月からユーロ決済に変更するよう要求、現代峨山はこれに応じて一部をユーロで送金したと報じた。変更要求は米国による北朝鮮のドル資金追跡、金融制裁への対応策だろうという見方も伝えている。……米国はドル偽造などの疑惑を背景に北朝鮮資金を追跡し、昨年9月にはマカオの銀行バンコ・デルタ・アジアへの制裁で北朝鮮関連口座を凍結させた。これとは別に、中国銀行マカオ支店の北朝鮮資産も凍結されたという米政府当局者の証言を、ロイター通信が24日伝えている。……北朝鮮は98年の金剛山観光開始以来、代金の送金を中国銀行マカオ支店の口座で受け取っていたが、昨年10月以降は送金先指定をオーストリアにある銀行口座に変更したとされる。聯合ニュースによると現代峨山は現在、金剛山観光客1人当たり70ドルを北朝鮮側に送り、毎月の送金額は約100万ドルに上るが、ユーロへの変更などについては具体的言及を避けているという。毎日新聞 - 7月26日

■刷り過ぎてしまった偽米ドルが国内に還流して大混乱しているという噂も有りますから、まだ偽札事業に手を出していないユーロに切り替えて、後は野となれ山となれ、と偽ドル札を放り出すつもりなのではないでしょうか?こんな馬鹿馬鹿しい事情でユーロが値上がりでもしたら、欧州の輸出産業に従事している人達は良い面の皮ですなあ。以前に、北朝鮮に電気をプレゼントする大計画が打ち出された事ありましたが、その時には大部分の資金援助は日本の担当にされそうな計画だったと記憶します。クリントン政権の置き土産だったKEDOにしても、日本は言われるままに資金を出して無駄になってしまいました。6カ国協議にしても既に実体の無い単なるカードになってしまっているように見えますから、次の手を考えねばなりません。

■何度も旗振り役と資金の支払い役を押し付けられては裏切られた日本としては、そろそろ一歩後ろに引いて、様子を見ていた方が良さそうです。間違っても、米国に見棄てられ、ロシアや中国にも嫌われてから、苦し紛れ日本に泣き付いて来られたら大変ですから、その予防線はしっかり張っておいた方が良いでしょうなあ。この苦境は、豊臣秀吉や大日本帝国の時代とは何の関係も無いのですから、自ら播いた種は自分で刈り取ってね、と言える人が日本の次期総理になって欲しいものです。

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韓国の後始末は韓国で 其の弐

2006-07-27 19:44:08 | 外交・情勢(アジア)


北朝鮮ミサイル発射問題をめぐり、制裁に反対する韓国の李鍾セキ(イジョンソク)統一相が「米国に多くの失敗があった」と発言、ここ数日、与野党から集中砲火を浴びている。25日には盧武鉉大統領が統一相を擁護したことから、非難の矛先は一気に大統領へ。国民への謝罪や統一相辞任を野党が要求するなど混乱に拍車がかかっている。ミサイル問題で日米から離反、北朝鮮との対話も閉ざされている盧政権は、国内でも窮地に立たされた格好だ。

■李ジョンソク統一相というのは、盧武鉉政権の単なる一閣僚などではなく、盧武鉉大統領の思想的な基盤であり、政策の指針を与える「個人教授」とさえ言われる人物です。『サピオ』7月10日号に、李ジョンソクさんが大学院生時代に書き上げた論文の要旨と、その経歴がレポートされていました。それによると、成均大学大学院で修士論文に「金日成の抗日武装闘争と主体思想」をテーマにし、博士論文では金正日を手放しで賞賛する内容になっているそうです。何でも韓国の学界では北朝鮮の身になって考える事で相手を深く研究する「内在的接近法」という研究が流行していたそうで、完全に相手に取り込まれる寸前まで深く相手を理解しようと言う非常に危険な研究手法のようです。ですから、一見トンデモ論文のようでも最終的には相手を根底から批判する大どんでん返しが仕掛けられている物と、最後の批判が不発に終わって研究に失敗する場合も有るようです。

■李ジョンソクさんは、大学院を終えると世宗研究所という政府系シンクタンクの研究員になるのですが、その時に目を掛けてくれたのが林東源という人物だったそうです。この人は金大中政権の太陽政策を立案した人です。盧武鉉政権の「親北反米」政策は金大中政権時代には顕在化していなかったのですが、この数十年の間に一部の韓国人達によって積み上げられて来たもののようです。拉致事件が発覚しようと、ミサイルが乱射されようと、それは瑣末な問題で同胞として許容してしまおうと言うのですから、その先には北朝鮮が開発した核兵器を共有財産として米国の属国から完全に脱するという野望が有るようですが、それが危険な誇大妄想に終わった場合、韓国は北朝鮮と抱き合い心中する可能性も有るでしょうなあ。

■盧武鉉政権は民主的な選挙によって出現したのですから、これを代えるのも民主的な手法でなければなりません。しかし、日本以上に国民の政治離れが進んでいるようですから、変に意地になった一部の熱心な支持者が頑張ってしまうと、またぞろ米国が悪い癖を出して裏で糸を引いて軍事クーデターでも起こそうとしたら、東アジアは大変な事になるでしょうなあ。そんな事が起こったら日本は逸早くクーデター政権を承認して見せなければなりませんぞ。李ジョンソクという人物が推し進めている危険な火遊びに付き合わされる韓国の国民は気の毒ですが、今の日韓関係ではどうしようも無いでしょう。


北朝鮮への対応で日本批判を続けていた李統一相は最近、「(ミサイル発射阻止の努力で)米国に最も多くの失敗があった」「米国のすることが国際社会の行動ではない」と対米批判を連発。これに与野党ともに反発し、24日の国会では野党が「対北支援、南北融和政策こそが失敗」と李統一相を追及したものの、統一相は融和政策堅持を主張した。国会で激しく叱責(しっせき)された揚げ句、辞任要求まで突き付けられた李統一相に、メディアや市民団体も批判を強めたことから、盧大統領は25日、青瓦台(大統領官邸)に閣僚を集めた会議でこの問題に言及した。ところが盧大統領は、李統一相の国会答弁が明確でなかったことを責めつつも、「(米国の政策について)韓国の閣僚が『成功していない』と発言してはいけないのか」「発言のために閣僚が国会で糾弾される必要があるのか」と主張した。

■米国が何度も外交的に失敗をしているのは周知の事実ですが、大統領が側近を庇う目的で露骨にそれに言及するのは、政治手法としては稚拙に過ぎますなあ。民主国家として、発言の自由は権利として保障されねばなりませんが、政治家がそれを振り回すとろくな事にはなりません。


さらに「(統一相は)米国が最も多くの失敗をしており、韓国は小さな失敗をした、との趣旨で述べた」と指摘、閣僚らに「(国会で追及されたら)北の首を絞めようとでも言うのか、米国が一切誤りのない国だとでも言うのか、と反問すべきだ」と促した。盧大統領の発言内容は瞬く間に国会を駆け巡り、与党ウリ党からも一斉に反発の声が上がった。同党指導部は「半島が緊張している中で、大統領がそこまで言うか」「国会にやいばを突き付けた発言で、言うべき言葉もない」と動揺している。
西日本新聞 - 7月26日

■盧武鉉大統領の発言は自爆テロのような響きが有りますが、度重なる失政の後始末が出来ずに窮地に追い詰められている事を証明しているようでもあります。


最近、韓国の外交・安保当局者らの間で「辞めてしまいたい」と話す人が増えている。大部分の人は口にした後で、「つらさのあまりつい口にしてしまった」と前言を撤回するのがパターンだ。これは外交通商部や統一部に限った話ではなく、青瓦台(大統領府)でも「辞めたい」と口にする人が出てきているという。先日、ある当局者が記者らと会談した席で、「代案も提示せず、あまり批判ばかりするな」と要請した。それに対し、数人の記者が「政府がしっかりしなければならない」と抗議すると、その当局者は「自分ももう辞めるべき時が来たようだ。とても疲れた」と語った。

■とても政府内の責任ある人物達の発言とも思えない投げやりな感じですなあ。あちこちに火を付けてしまったのなら、まずは完全に消火してから反省でも後悔でも自由にして頂かねばなりません。燃え上がってしまってから、手が着けられないと言って放り出されたら、国民はどうしたら良いのでしょう?