旅限無(りょげむ)

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北京五輪の内と外 その弐百七拾壱

2008-07-31 17:54:58 | チベットもの
■4年に1度の五輪大会が間も無く開催されるというのに、どうも期待感が盛り上がらず広がっていないようです。昨夜は極秘非公開で開会式のリハーサルが行われた由。毎年の建国記念の国慶節などで、市民生活を完全に麻痺させてしまう「大動員」命令に慣れている人達も、さすがに真夏の夜に駆り出されると翌日に疲れが残るでしょうなあ。国慶節のパレードともなりますと、1ヶ月前から昼夜逆転の生活が始まり、商店も飲食店もお昼寝休業になるとかで、外食が習慣になっている北京市民は実に不便な暮らしが続くとか……。今回はイベントの時間が短いので、リハーサルも1週間程度で済みそうなので引っ張り出される人達もオリンピック気分で誤魔化せる程度の疲れに耐えれば良いだけかも?でも、今頃の北京は夜でも暑いでしょうなあ。

北京五輪開幕まであと1週間余となる中、北京市内のホテルが予約が埋まらず苦戦している。押し寄せる外国人観光客で連日満室のはずが、最高級の五つ星でも2割が空室。四つ星以下は半分にも満たない状況……。今月26日、北京市西部にまた一つ、五つ星ホテルが開業した。美泉宮飯店。ヨーロッパの歴史的建造物を思わせる外観で……鳥の巣まで車で20分の好立地が売り物だ。「でも、実はまだ半分しか完成していないんです」と支配人補佐の陳少強さん(48)。正面玄関の左右に両翼を広げるように北館と南館を配置する構造になるはずだったが、南館の場所には、閉店したショッピングセンターが取り壊されないまま残っている。開業したのは北館だけで、サウナやジムがオープンするのは来年11月になる。

■新築されるのは本格的なホテルばかりでなく、コンドミニアム風に自炊して長期滞在型のオリンピック見物を想定してマンション型の物件が驚くほどたくさん建てられているという話ですが、そちらも皮算用がすっかり外れて借り手が見つからずに困っているそうですなあ。政府が「必ず大成功させよう!」と言うべきところを、「北京五輪は大成功する」と断言口調で宣伝したのが悪いのか、それを真に受けて投資や投機に走った方が悪いのか?既にツアー会社は参加希望者が揃わず、ヤケクソの半値割引に踏み切っているそうですから、多額の借金をして五輪景気に便乗して大儲けしようと思った人達の中から、夜逃げや自殺者が出ない事を祈るばかりであります。


通常の3倍以上と強気の宿泊費を設定する五つ星ホテルもあるが、美泉宮飯店は1500元(約2万2500円)~2000元(約3万円)の正規料金に据え置く。それでも大会後半の予約率は50%以下という。北京五輪組織委の今月15日までのまとめによると、五つ星ホテルの平均予約率はどうにか80%で、四つ星以下は40%台。食の問題や大気汚染への不安に、「五輪開幕までにまだ三十数軒開業する」(組織委)という供給過剰が不人気に拍車をかけている。

■最高級ホテルに滞在して五輪見物をするのは誰なのでしょう?案外、地方政府の大幹部やら共産党や人民解放軍と癒着して荒稼ぎした成金連中がぞろぞろと北京に集まって散財するだけだったりすると、外貨をたっぷり稼ごうという皮算用が狂いますなあ。まあ、海外からやって来る宿泊客の多くは、変に安い宿に泊まると、窃盗・強盗・スリ・置き引きの餌食にされそうだし、食事をしようにもドブ川氷を浮かべた怪しげな色つきドリンクやらダンボール入り肉饅が出て来るような悪い予感がするので、バカ高い値段を平気で要求する宿なら、それなりのサービスをするだろう、と考えているのかも?しかし、チャイナの恐ろしさと凄さは、そのような世界の常識を軽々と超えますぞ!御用心、御用心。


1泊1000元の“五輪料金”を設定するホテルチェーン。予約担当の女性は「チェーンなので価格はどこも統一」と言いながら、「特別割引で600元。さらに100元値引きする用意があります」と背に腹は代えられぬ様子だった。
7月31日3時4分配信 読売新聞

■これはよ~く覚えておきましょう。最初に吹っかける言い値は「倍額」です。「チェーン店の規定料金だ」などと能書きを言っても、それは薄っぺらな建て前です。客が弱気で愚か者ならば、好き放題に高値を吹っかけて毟り取る!その場合、騙される方が悪いのですなあ。その流儀は公的な場でも同じで、ODAだろうが善意の国際親善だろうが、支払う者にはそれだけの能力が有っただけのこと。四川省でのパンダ大震災でも、日本からの援助で建設された学校が崩壊しなかったという話がありましたが、ピンハネ山分け分をたっぷりと上乗せした金額をホイホイ支払ってくれたからこそ、真っ当な材料で建設されたことを立証したような話です。

北京五輪の内と外 その弐百七拾

2008-07-31 04:09:20 | チベットもの
……IBAF、全アマとも以前から、五輪での競技復活のためには、試合時間を短くしてテレビ向きのスポーツであることを内外に知らせる必要があるという認識で一致していた。09年のW杯(欧州各地で開催予定)でのタイブレーク導入が検討されていることは、全アマ側も把握していた。北京五輪での導入を知らなかった全アマ側は情報収集不足を露呈した形だが、日本にひと言も打診しなかったシラー会長の姿勢も問われそうだ。……
7月29日 スポーツ報知

■切っ掛けは日本の松田氏からのアイデアで、決定にはまったく関与していないIBAF第一副会長のが松田氏。会長就任に汗をかいた恩人の割には、松田氏も随分と軽く見られたようです。やっぱり日米の力関係なのでしょうなあ。取り敢えず、日本側としては文書で決定の経緯について抗議をすることにしているそうですが、逆に「提案者なのだから、反対するとは思わなかったぞ」と言い返されたら、日本側は何と言うのでしょう?

■言い出しっぺなのに何の相談も連絡も貰えなかった松田氏と全日本アマチュア野球連盟という組織は情けなく、「なめるな!」と激怒している星野監督の方が筋が通っているようにも見えますが、どうしても星野監督の顔を見ると、長野市で行われた「聖火リレー」に関する大きな勘違いが思い出されて仕方がありません。『週刊文春』5月1日・8日ゴールデンウィーク特大号に掲載された「火ダルマ、長野4・26聖火リレー」という大特集記事に、星野ランナーと有森裕子ランアーに関してこんな一節がありました。


……取材を申し込んだところ両者とも「取材は遠慮したい」とのこと。しかし、星野監督は自身の会員制サイトで次のようにコメントしている。
「星野は、国からの委任というか国の命令で、聖火リレーのランナー役も粛々と務めることだけを考えている」……

■記事によりますと、聖火リレーのスポンサー契約(推定10億円)を結んでいるコカ・コーラ、レノボ、サムスンの3社のうち、星野監督はサムスン社の参加者枠で抜擢されたのだそうです。文春の記事では、「国の命令」と言うなら、長野市選出のランナー枠で参加せよ、との意見が添えられています。因みに萩本欽一ランナーも同じくサムスン社の枠で参加していたのだそうです。本番のリレーでは、宣伝用に仕立てた特別車両を各スポンサーが必死にカメラから逃げるように死角を探して走り回っていたのでしたなあ。

■この週刊文春には、実録ドキュメント「『長野善光寺 だから我々は聖火を拒否した!』中国の圧力、煮え切らない執行部に対し若手僧侶たちは抗議の垂れ幕まで準備していた」という生々しい記事が先に引用した特集の後に載っているのです。何だか戦時中の赤紙でも貰ったような悲壮感さえ漂わせて見せた星野監督は、「オリンピック憲章」などは読んだ事が無いのかも知れませんが、五輪大会は決して国家が開催するものではありません。ヒトラーが徹底的にナチス宣伝に利用したことで有名な大会でさえも、「ベルリン大会」なのですから、都市が誘致して開催運営すべきものと規定されております。参加選手も、本来なら「国の代表」ではなく飽くまでもスポーツと通して国際親善を願う個人として参加するのが建て前ですから、まるで戦争に出掛けるような気合の入れ方は間違っていると思われます。

■蛇足ながら、同じサムスン枠で参加した萩本欽一ランナーの方は、チャリティに熱心で日本テレビの24時間マラソンも走ったことで、一層チベット問題やチャイナの人権問題に対する姿勢が厳しく問われたのでした。『週刊新潮』6月19日号に、「欽ちゃんが語る。母ちゃんから教わった一番大事なこと」という泣かせるインタヴュー記事が掲載されまして、五輪大会と長野市とが結び付いたら、どうしても参加しなければならない母と子の秘話が有るという話です。1ヶ月間の沈黙の後にしては、随分と遠回しの説明で「聖火リレー」参加の理由を語ったものです。おそらく、あの記事は逆効果だったでしょうなあ。

北京五輪の内と外 その弐百六拾九

2008-07-31 04:08:05 | チベットもの
■オリンピック参加者の中で、何故か一番はしゃいでいるようにお見受けする野球の星野監督につきましては、長野市を大混乱させた「聖火リレー」の時から、困ったお人だと気になっておりました。阪神の監督を辞める時には体調不良で血圧が高いと仄聞しましたが、五輪のためなら「カレーを食べて頑張ろう!」と医者なら激怒するようなテレビCMに出演する一方で、外資系の生命保険会社の宣伝もしてしまうという支離滅裂さには迫力さえ感じてしまいます。うっかりしていると日本テレビのニュース・ショーにコメンテーターとなって時々ピント外れの御高説を披露しているようですが、やっぱり巨人軍の監督になりたいのかいなあ、などと下種の勘ぐりをしてしまうのであります。

■おそらく、野球競技の金メダルを何処の国が取るのかを注目している人は世界中でも少ないでしょうし、もしかしたら日本国内でも案外と少ないのではないでしょうか?既に日本テレビがドル箱だっが巨人戦の生中継を止めてしまいましたし、スポーツ・ニュースでなく御贔屓球団の試合をテレビ観戦したい人は衛星放送やケーブル局に申し込まなければならないようですから、IT機器の操作が苦手だという往年の野球ファンの皆さんは、さぞかし悔しい思いをしながらラジオ放送で我慢しているのでしょう。皮肉なことに、金メダルの可能性が高い野球より、まずはメダルは無理だろうと思われているサッカーの方が注目されているようですからなあ。

■そんな埋まった外堀など気にしないのが燃える男!星野仙一なのでしょう。


国際野球連盟(IBAF)が北京五輪から国際大会でのタイブレーク制導入を発表した問題で、日本代表の星野仙一監督(61)が、一連の騒動に改めて苦言を呈した。 ……「キチッと抗議すべき。日本の風潮(姿勢)を示さないとだめだ」と、無条件で受け入れる甘さを指摘した。

■「日本の風潮」という表現は、日本の世論に怒りが沸騰しているぞ!というメッセージのことでしょうか?それなら誇張が過ぎるというものです。日本には、こんな事よりも本気で腹を立てねばならないことが沢山あります。星野監督が激怒する気持ちは分かりますが、この発言が米国に届いても「HOSHINO,WHO?」などと言われて、もっと腹が立つことになるでしょうなあ。この事態は、オリンピック競技の中で野球という種目が軽視されている証拠でもあり、外交面で日本が「ハイ、ハイ、ハイ」と言い続けている現実の反映でもあります。男・星野が吠えるのは当然ではあります。


IBAFのシラー会長が米国出身であることを踏まえ、「アメリカだけが(導入を)知っていて、我々が知らなかったことも気に入らない。アメリカにハイ、ハイ、ハイでは情けない。日本がなめられてしまう」と毅然(きぜん)とした態度を求めた。この日、全アマ副会長の鈴木義信氏が謝罪に訪れたが、会えずじまい。日本がタイブレーク制を提案したことには「あれはアマチュアのルール。こういうシステムがあると伝えたということ」と理解を示したが、「(撤回の)チャンスはもうないに等しい。切り替えつつある。(回の)表と裏でどういう戦いをするか考えていかないと。この件はもうええわ」とピシャリ。8月2日からの直前合宿で、サインプレーによるタイブレーク制対策に取り組んでいく。
7月29日 スポーツ報知

■ちょっとスポーツ報知の記事は主語に混乱が見られますが、星野監督が個人的に怒ってばかりいても、何の解決策にもならないという事のようです。どうやら、突然のルール変更が行われた背景には、星野監督が知らない事情もあったようです。


……国際的な窓口の全日本アマチュア野球連盟(全アマ)・松田昌士会長(IBAF第一副会長=72)が今年4月、IBAFのシラー会長に、日本の社会人野球での同制度実施を紹介していたことが28日、分かった。日本は制度採用のきっかけを作りながら、導入を知らされなかったことになり、全アマ関係者が謝罪に追われた。……発端は今年4月26日、スイス・チューリヒで開かれたIBAFの執行委員会……野球競技は2012年のロンドン五輪から除外される。いかにして16年五輪で復活させるかが、この会議でも話題になった。

■星野監督の知らないところで、オリンピック向けに野球競技を変えねばならないと、エライ人達がいろいろと考えていたようですが、
こんなところに松田昌士という人の名前が出るとは驚きますなあ。国鉄民営化後にJR東日本の社長にまで上り詰めた元国鉄職員、労働組合の革マル派に尻尾をつかまれていたという話など、いろいろ噂がありましたなあ。道路公団の民営化でも、どういうわけだか2002年に「道路関係四公団民営化推進委員会委員」に選ばれ、7人の侍とか何とか言われたのに、土壇場で逃げ出したのでした。国鉄時代から国鉄スワローズや都市対抗野球に深く関わったとかで、ちゃっかり2005年にうは全日本アマチュア野球連盟会長になっていたそうです。


シラー会長「IOC(国際オリンピック委員会)から試合時間の短縮を検討してほしい、と言われている」
松田会長「日本は(社会人の)都市対抗野球でタイブレーク制を実施しています」
シラー会長「興味があるね」

■IOCという組織の本性が見えるような無茶な話ですが、プロもアマチュアも野球には詳しいところを見せた松田氏も、ちょっと勇み足だったかも?このシラー会長を担ぎ上げたのも松田氏だったとか……。

日本の外交感覚 その弐

2008-07-31 02:03:48 | 外交・世界情勢全般
ホテル側は「これまで誠意ある態度が一切みられなかった」と納得しておらず、官僚に対し刑事・民事両面での措置を検討しているという。官僚は産経新聞の取材に、「宿泊したことや料金を支払っていないのは事実で、金額については先方とお話させていただきたい。もちろん払う意志はあり、誠意は尽くすつもり」などと話している。

■高級な部屋に泊まり続けて支払いはエコノミー扱い?それが外務省の「誠意」ならば、何とも恐ろしい話であります。こんな人物が難しい外交交渉などをしたら国益が大きく損なわれるか、アホな戦争の原因を作ってしまいそうです。さっさと刑事事件として立件して逮捕した方が、公務員制度改革の流れにも沿っていることになりそうです。所管は違いますが、舛添厚労相にもう一度、「盗っ人は牢屋に入ってもらう」の名言を吐いて貰いたいですなあ。

■しかし、少し斜に構えて考え直してみますと、こういう変な神経を持っている人物が、戦前の外務省で活躍していたら、「満洲を手放せ!」と国際連盟や米国に詰め寄られても、「手放さないとは言わない」とトボケ通して時間を稼ぎ、国連脱退も日米開戦もせずにダラダラと大日本帝国の国益を守り通せたかも知れませんぞ。

■「極めて礼節を欠いた不義理を働いたことにつき、本当に恥じ入るばかりであり、申し開きのことばもございません。今の日本には満洲利権をすぐに手放して生き残る能力はございません。せめて手放すまでの猶予期間を、年間資本投下額×経過年数の全額が回収されるまでは待つことをご検討頂けないでしょうか?」ぐらいの事をイケシャアシャアと交渉の場で発言して貰ったら、少しは歴史が別の展開を見せたかも?勿論、日本に帰国した後は右翼や元気な軍人に命を狙われるのは避けられなかったでしょうが……。


外務省をめぐっては平成13年、要人外国訪問支援室長による外務機密費詐取や課長補佐によるハイヤー代水増し請求、ホテル代水増し請求が次々と発覚し、関係者が逮捕・起訴されるなど、金銭に絡む問題が多発。昨年8月には、在外公館に勤務していた職員が公金を着服したとして懲戒免職処分となっている。
7月30日 産経新聞

■この外務官僚も、国内勤務で裏金から甘い汁を吸い、海外勤務経験があるのなら、夢のような殿様生活を体験して金銭感覚がすっかり麻痺してしまったのかも知れませんなあ。「税金の無駄遣い」を解消しよう!という話になっても、不思議に外務省はお目こぼしして貰えるようですが、こういう小さな?事件を切っ掛けにして他のトボケた省庁と同様に、しっかりと伏魔殿の大掃除をして欲しいものですなあ。

■北朝鮮問題に関する「六カ国協議」で日本が置いてけ堀にされたり、竹島や尖閣諸島でも相手の好き放題な言動を許している理由も、何となく分かるようなスキャンダル話ではあります。 
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日本の外交感覚 その壱

2008-07-31 02:03:15 | 外交・世界情勢全般
■昔は「外交官試験」(外務公務員採用I種試験)と言えば、三大難関国家試験の一つと言われて合格者は大そう尊敬されたそうですが、「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの大蔵省スキャンダルに続いて外務省でも「アケミボタン」疑獄などの不祥事が暴露されてしまった平成13年、単なる偶然とも思われない制度改正が行われまして、官僚の中でも別格扱いだった「外交官試験」が廃止されまして、他のキャリア官僚と同じ「国家公務員採用I種試験」で採用されるようになったとか……。

■その後も在外公館に勤務している大使や職員に関する横領疑惑が何度も取り沙汰されたりもしましたが、何故か日本の一般人に名前が知られている外務官僚と職員の出身者と言えば、皇室にお輿入れとなった雅子さま、奇怪な「国策捜査」で休職身分になって活躍している佐藤勝氏。

■外務省の専権事項ではないにしても、重要な国際会議だったWTOの関税問題を話し合う協議が決裂した日に、外務省に巣食っているかも知れない「特権意識」が透けてみるスキャンダルが露見!やっぱり不通の人間では務まらない役所なのでしょうか?司法試験と外交官試験は、大学3年生の段階で合格して中退するのが最も格好良いこととされて外務省では出世も早いと聞きますが、人と違う人生を歩んでいるという変な自意識が膨らみ過ぎるのかも知れませんなあ。任官後に税金で語学留学や研究員生活も出来るというのも、もしかすると人のカネと自分のカネの区別が付けられない体質になる原因なのかも?

 
外務省経済局の男性官僚(40)が、都内のホテルの宿泊代1500万円以上を支払わず、ホテル側とトラブルになっていることが30日、関係者の話で分かった。ホテル側は刑事告訴や民事訴訟を検討しているという。……外務省では以前、ホテル代の水増し請求事件などで職員が逮捕されており、再び外務官僚の“たかり体質”の一端が浮かんだ。

■そもそも、牛丼一杯でもハンバーガー1個でも、一般庶民が「食い逃げ」したら、即座に実名と顔写真が報道されるものですが、貯めに貯めた宿代1500万円!という大事件でも、「男性官僚」としか報道されないのですなあ。やっぱり、お役人はエライのでしょうか?まあ、某週刊誌には実名も経歴も人の噂も全部書かれるのでしょうが……。「40歳」という年齢から推測すると、外交官試験が他の上級国家公務員試験とは別枠で実施されていた頃に採用されている人物の可能性が高いでしょう。


……この官僚は平成18年6月から19年4月までの293日間、該当のホテルのセミスイートルームに宿泊。1泊の料金は5万2500円で、合計で約1538万円の債務が生じたが、現在まで全く支払われていない。


■現実に「踏み倒し」が行われているのに、ホテルの名前も伏せて「該当のホテル」と書かねばならない理由が分かりませんが、やっぱり外交官ともなると世間一般の出張族が利用する宿の10倍、巨人軍の選手と女性タレントが酔っ払って転がり込む特殊な宿の5倍以上の部屋を愛用するのですなあ。まさか、外交機密費で尻拭い出来るなどと不埒なことを考えたのではないでしょうな?!


官僚は家庭の事情で都内の自宅を出た後、知人の紹介などがあってホテル宿泊を始め、そこから東京・霞が関の外務省に出勤していた。19年4月以降は官舎に移り住んでいるという。ホテル側はこれまで再三にわたって支払いを求めたが、応じる気配がないとして、今年7月に請求書を送付。官僚は数日後にホテルに出向き、謝罪文を示したという。この謝罪文では「極めて礼節を欠いた不義理を働いたことにつき、一人の人間として本当に恥じ入るばかりであり、申し開きのことばもございません」としながら、「今の自分にはとても支払い能力はございません。せめて金額を一般客室料金×宿泊日数としてお支払いさせていただくことでご検討頂けないでしょうか」と“割り引き”を求めている。

■「19年4月以降は官舎」生活ならば、一体、どうやってチャック・アウトしたのでしょう?着の身着のままで長期間のホテル暮らしを続けて、ある日の出勤姿を見せて忽然と姿を消したとも思えませんから、相当量の衣服などの生活用品を運び出しながら、支払いに関してホテル側を納得させる説明をしなければホテルを出られないでしょう?「外務省に付けておいて」と言ったのでしょうか?それなら請求書を送りつけられてから「値引き交渉」をするのは変ですなあ。「支払い能力はございません」と開き直って見せるのは、徳島県の6億円横領母子みたいです。

「安心」の逆説 その伍

2008-07-30 15:00:54 | 政治
焦点の厚労行政の信頼回復については、「国民の目線に立ち、厚労行政を総点検する」として有識者懇談会の設置を挙げたが、具体的な改革案は示されず、有識者懇任せとなった。また「懇談会の議論を逐次具体化する」としているが、実施の期限や財源の裏付けについての明示がなく、実効性への疑問も出ている。

■夏休み中には「何もしなかった」と御本人は謙遜していましたが、どうして、どうして、しっかり「プラン」の作文をしていたのですなあ。「国民の目線」「総点検」「懇談会の設置」「逐次具体化」こんな空疎な文言をだらだらと並べられるのは福田首相以外におりません。


高齢者政策では、65歳以上も雇用継続する企業や介護労働者の待遇改善に取り組む事業所などに財政支援を行う。また、定年後働き続けると年金が減額される「在職老齢年金制度」の見直しや、加入期間にかかわらず一定額の基礎年金を支給する「最低保障年金」の導入も検討する方針だ。

■企業や事業所に「財政支援」、定年後も働く人の年金支給「制度の見直し」、民主党のプランをパクッたとしか思えない最低保障年金の「導入」と言いたい放題に夢想気味に羅列して見せるのが福田ホイホイ流であります。財源はどうする?「有識者懇談会」を厚労省より上に置けるか?後始末も終わらないボロボロの年金制度は放り投げて、新しい年金制を発足させるつもりなのか?と、いくらでも文句が出て来そうです。間違ってもこんな代物を選挙用の「マニュフェスト」には書けないでしょうなあ。政権政党を止めて気楽な野党になる決意があれば別ですが……。


医師不足対策については、平成22年に行われる次回の診療報酬改定を待たず、予算を捻出することで僻地に派遣される医師や産科・小児科・救急医に対し、直接財政支援する仕組みを新たに導入する。

■医師不足を発生させた原因は、旧厚生省が「医者が余る」と言い続けたことと、突如として始まった「臨床研修医制度」にあるはずですが、その責任問題と制度改革はしないわけですな?お医者さん相手に自民党伝統の「ばら撒き」行政をやったところで、医療危機は解消されないのではないでしょうか?人件費の安い外国から医者を呼んで来た方が早いかも?診療を受けられずに落命するよりはマシだと思う国民は多いはずです。ここまで「安心」を破壊したのは誰なのでしょうなあ?それにまったく答えない「プラン」だから、誰も真剣に受け止めてくれないのですぞ!


少子化対策では、文部科学、厚生労働両省の交付金を「こども交付金」として一括支給することで、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ「認定こども園」整備促進させる。

■「少子化」こそ、旧厚生省が税金を投入して人口問題研究所に予測値を出させながら、最も甘い見通しだけを採用した上に、楽観的な文言を使って粉飾した文書を発表し続けたのが元凶です。「間違っておりました」と責任者が頭を下げる必要は無いのでしょうか?


非正規雇用対策では、インターネットカフェで寝泊まりしながら生活する「ネットカフェ難民」に、アパートの入居費を貸与するなどの支援策を盛り込んだ。……
7月29日 産経新聞

■「入居費」は一時金でしょう?絵に描いたような虚しい人気取り、税金のバラマキ無駄使いですなあ。「ネット難民」と呼ばれる人達が求めているのは涙金ではなくて、安定した就職口のはずです。

■さて、今の日本が「安心」できない理由がこれで大体分かります。「5つの安心プラン」の項目別に確認してみますと……。
(1)高齢者の「不安」
①65歳以上を雇用する企業が無い!
②在職老齢年金制度は頼りにならない!
③「最低保障年金」が無い制度は不安だ!
④高齢者用の住宅は高値の花の贅沢品!貧乏人は転んで寝たきり!

(2)医療政策の「不安」
①産科・小児科・救急医が居ない!
②医師養成数がまったく足りない!誰が減らしたんだ?
③僻地には医師が居ない!老後は大都市のスラムへ!

(3)子育て支援の「不安」
①子育て支援が圧倒的に不足!
②保育所の数が足りない!民間の保育ママを想定しない法律しかない!

(4)非正規雇用の「不安」
①ネットカフェ難民は餓死寸前!
②日雇い派遣の規制緩和は大失敗!

(5)厚生労働行政の「不安」
①有識者懇談会にでも頼まないと役人はロクな事をしない!

こんなに不安だらけの日本にしたのは誰なのでしょう?やっぱり、省内だけの「福利厚生」ばかりを考えている各省庁と、自分の省内だけの「健康」と「年金」と「天下り」ばかり考えている厚労省という役所に責任があるのでしょうなあ。だったら、どこの政党でも選挙に大勝するのは簡単な話なのに、訳の分からない理由をつけて解散総選挙を先延ばしにしている理由が分からなくなりますなあ。きっと国会議員、特に政権与党の皆さんが、とっても「不安」だからなのでしょう。嗚呼、バカバカしい。
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「安心」の逆説 その四

2008-07-30 14:59:49 | 政治
■思い起こせば総裁選挙の時に福島県いわき市のシャッター商店街に乗り込んで、「何とかしましょう」と軽々しく公約とも思えない戯言を口にして以来、イタリアで開催された食糧サミットに出掛ける直前には「食糧自給率を上げます」などと、本当ならこれまでの農林水産政策を引っくり返さねばならないような事をさらりと言いましたなあ。虎の子のように大事にしていた洞爺湖サミットも、懸案の地球温暖化に関して「その内、何とかしましょうね」という作文を発表しただけでした。そんなホイホイ首相が「安心プラン」を言い出したのですから、誰も相手にはしてくれません。

安心プランは首相が6月23日の記者会見で発表した。舛添要一厚生労働相と事前の打ち合わせがほとんどなかったことから、与党内では「現状の厚労行政に満足せず、官邸主導による厚労省改革に乗り出した」(自民党ベテラン)とも受け止められた。……首相がプランの策定期限を7月中と指示したため、「厚労行政の拡充を内閣の重要施策として打ち出した。改造人事では厚労相が最大の焦点になる」(派閥幹部)ともみられてきた。

■すっかり厚労省内の役人に操られるようになった元東京大学教授の舛添大臣に相談をしなかったという一点だけが、厚労省の官僚群に対する嫌がらせだったのでしょうなあ。もう少し実行力がある首相がこれをやったら、省内は蜂の巣を突いたような大騒ぎになったのでしょうが……。それこそ厚労省の役人にとっての「安心なプラン」でしかありません。


ところが、これまでにまとまった内容を見る限り、政府の社会保障国民会議などで検討済みの項目の列挙で、目新しさはない。プランの最大の柱とされた厚労行政の信頼回復策も、厚労省設置法の改正による組織見直しや技官制度の見直しの検討を掲げた程度。医薬食品局を厚労省から独立させ、独立行政法人と統合させる案などが浮上してはいるが、具体策は先送りし、8月に厚労相の下に「厚労行政在り方懇談会」を発足させて検討を始めるという。

■この記事の書き方はちょっと変です。「設置法」への言及は重大な問題に発展することになるはずですぞ。『六法全書』にも掲載されない各省庁の存在理由を規定した「設置法」は、誰も見られないし誰も触れては行けないものと言われているのではないでしょうか?仮に「設置法」の蓋を開けるとしたら、仕事を増やし予算を増やす方向にしか手は加えられないはずです。従って、「信頼回復」を目的に同法を改正するとなれば、ますます組織が膨れ上がる「焼け太り」の結果しか産まないのでしょう。せっかく「社保庁解体」という、実質的には看板の掛け替えでしかない改革でも、官僚機構に手を突っ込めたのですから、本当なら一気呵成に厚労省の解体まで突っ走れれば良いのですが……。


首相の意気込みが“尻すぼみ”になったのは、この1カ月の間に与党内にも年末・年始の解散を求める声が広がるなど「首相を取り巻く政治情勢が変わった」(中堅議員)ことが大きい。このまま公表すれば、事前に期待を持たせたのが裏目となり、「安心プランではなく不安プランにならないか」(若手議員)との冷めた見方さえある。
7月26日 産経ニュース

■「不安定プラン」とは言いえて妙ですなあ。実際に「安心」を約束するプランである限り、引っくり返して文言を読み直せば、今の日本が抱え込んでいる「不安」を福田首相がどのように認識しているのかが分かります。


福田康夫首相が7月中の取りまとめを関係閣僚に指示していたもので、高齢者政策や非正規雇用対策など約150項目を総花的に列挙した。必要財源の一部は平成21年度予算の重点枠で手当てし、法改正も検討する。ただ、大半はこれまで、政府内で検討してきた政策で、例年8月末に行われる来年度の概算要求を1カ月前倒しただけの印象が強い。

■それはそうと、新しい「プラン」を作る前に、「100年安心年金プラン」はどうなったのか検証しなくても宜しいのでしょうか?それに前の安部首相が「お約束」していた「最後の一人まで、最後の一円まで」法律通りに年金を支払うという話はどうなったのでしょうなあ?


プランは、6月に発表された政府の社会保障国民会議の中間報告を受け、(1)高齢者政策(2)医療政策(3)子育て支援(4)非正規雇用対策(5)厚労行政の信頼回復-の5テーマについて、政府がこの1、2年で緊急的に取り組むべき対策としてまとめられた。

■どれもこれも「1、2年で」何とかなるような生易しい問題ではないようですが、それを平然と「プラン」と銘打って発表できるところがホイホイ首相の真骨頂なのであります。何だか自制心の無い小学生が担任教師に提出する「夏休みの学習計画」みたいな気もしますなあ。

「安心」の逆説 その参

2008-07-30 14:59:16 | 政治
厚労省では昨年7月、労働基準局の職員がスナックで私的に飲食した後、タクシー券を使って帰宅していたことが発覚。6人が懲戒処分になった。この不祥事を受け、当時の柳沢厚労相は、タクシー券の一定期間の保存を指示。昨年9月以降、各部署で使用規程を整備した。ただ、タクシー券の保存については明記されなかった。結局、今年6月に「居酒屋タクシー」が問題化したことなどを受け、厚労省は同月、使用済みタクシー券を1年間保存するよう規程を改定している。
7月28日 産経新聞

■使用規定を細々と決める作業をさせると、肝腎の「タクシー券の保存」は書き漏らす!これを「骨抜き」と言うのでしょうが、中には句読点を加えたり消したりするだけで、規則や法律の内容が無意味になるという高等技術もあるそうです。忙しくてうっかり「産む機械」などと失言をする柳沢元厚労相ですから、性悪説を前提にして規則文書を熟読吟味する暇も無かったでしょう。役人の悪巧みを担当大臣が事前に見抜けないのなら、役人天国は安泰です。

■ちょっと古い話ですが、「深夜タクシーに1億6000万円」も使う厚労省の役人は、一体、役所の中でどんな激務をしているのか?なかなか一般庶民には伺い知れないエライ人達の日常ですが、少しばかりそれが垣間見える場合もあります。


厚生労働省で、官用パソコンを用いてゲームやお笑いなど業務と関係のないHP閲覧が1日に約12万件もあったことが12日、分かった。……厚労省統計情報部では今年5月7日、職員約5万5000人のうち、東京・霞が関の本省と8つの地方厚生局計約5500台のパソコンを対象にインターネットの閲覧状況を調査。総閲覧数1000万件のうち、少なくとも12万2000件が業務外と判明した。……7万5000件が掲示板やチャットなど情報交換系のHP。ゲームソフトやネット上で遊べるゲーム関連のHPが4万1000件、芸人や演芸場、アニメなどお笑い系HPも6000件……。厚労省は平成17年7月から省内のパソコンから閲覧制限できるシステムを導入。アダルト系、株取引といった分野は当初から閲覧不可にしたが、調査対象となった分野は接続が可能な状態になっていた。

■これも「タクシー半券」の保存問題と同じ構図ですなあ。どうしてパソコンの「私的利用」を全面的に禁止しなかったのでしょう?公務員の職務と関係のない時間つぶしは税金泥棒の典型で、暇潰しに助兵衛サイトを見ようとアニメを鑑賞しようと何の違いもないでしょうに!?こうして「法律に違反してはいない」の一言で、誰も責任を問われず、選挙と内閣街道で気もそぞろの政治家は来年度予算を懲罰的に減額するような気力は無いのでしょうなあ。人事と予算、役人の心胆を寒からしめるにはこの二つの道具しか無いのですから、マスコミのその点に留意して意地の悪い報道に努めて欲しいものです。


昨年8月、ネット上の百科事典「ウィキペディア」に外務省、農水省、宮内庁などの官用パソコンからの書き込みが相次いで発覚。厚労省からも美少女アダルトゲームやアイドルなどの項目の編集が判明し、同年10月に20回以上も編集を行った職員2人を訓告にしたほか、計12人を処分。全職員に業務外のパソコン使用を禁じる通知を出した。
7月13日 産経ニュース

■「トイレに行ったら手を洗いましょう」「ハンカチとちり紙を忘れずに」「元気に挨拶しましょう」などの幼稚園並みの規則を文書化しなければならないようですなあ。こういうレベルの役人を相手にするのですから、意味不明の「安心プラン」が出て来るのも納得は行きます。でも、「馬鹿と鋏は使いよう」と申します。選挙対策用に糊と鋏で急ごしらえした煙幕文書でも、利用方法はあるようです。


政府は29日に、社会保障に関する「5つの安心プラン」を公表する。福田康夫首相の肝いりで検討が始まったものの、これまでに固まった内容は、最低保障年金や僻地医療への支援など、従来検討されてきた政策を寄せ集めた印象が濃い。厚労行政への取り組みを強化することをアピールし、内閣改造に弾みをつけるはずが、改造自体に与党内から異論も出て、「安心プランへの思いそのものが、急速に冷え込んだのではないか」(与党幹部)との見方が広がっている。

■赤坂の料亭辺りに発生した奇怪な「反麻生」の風が吹いて、一夜にして誕生した墨俣城みたいな福田ホイホイ内閣ですから、部品となる閣僚は前の内閣からの流用で、党人事だけはウルサイ連中を石垣に塗りこんで固めてみたものの、誰もこの城を枕に討ち死にする覚悟など持っていないホイホイ内閣ですから、何も始まらないし動きませんなあ。

「安心」の逆説 その弐

2008-07-30 14:58:36 | 政治
厚労省が情報公開した「タクシー乗車券使用記録簿」などによると、労働基準局の複数の職員が、徹夜勤務明けの朝に労働保険特別会計から支出される深夜帰宅用タクシー券を使って帰宅。平成19年8月から8カ月分だけでも、地下鉄・霞ケ関駅で3線の始発が出そろった後の午前5時半から7時台までの間に、計6課室で140件の使用があった。1件あたりの運賃は、千数百円から一万数千円。最高額は、労災管理課の1万9400円だった。……

■厚労省のモットーは「健康第一」なのだそうです。勿論、肝炎訴訟などでも明らかなように、対象は国民ではなくて省の役人と職員に限定されているようですなあ。


……労働基準局のタクシー券使用規程は「原則、業務が深夜におよび通常の交通手段により帰宅することができない場合に限る」と定める一方で「例外的に使用する場合は総務課予算・庶務経理班に協議すること」ともしている。

■規定内容は民間企業と大差の無いものですが、役人の世界はどれほど多くの「例外」を潜ませる技術と、それを限度まで拡大解釈する異様な国語力と無神経さが求められるのだそうです。


労働基準局書記室は「徹夜勤務をした職員の健康管理に配慮し、例外的に使用した」と説明。厚労省のある職員も「タクシーで帰宅した後、シャワーを浴び、着替えただけで再び職場に戻ることもある。それくらいは勘弁してほしい」と話す。

■正に激務!毎日ご苦労さまです。と言いたいところですが、休む暇もなく働いて、出生率を意図的に操作して年金制度をぼろぼろにし、天下り企業を死守するために危険な血液製剤を野放し、地方の医療体制を崩壊させる医師不足を発生させる工夫をしていたのなら、言語道断!仕事などやめて、さっさと定時に電車バス帰ってゆっくり休んで欲しいものです。


しかし、別の職員は「徹夜勤務といっても働き通しで一睡もしないわけではないし、帰宅後少し寝て遅れて出勤することもある」と打ち明ける。また、使用日が休日のケースもあった。……厚労省会計課によると、19年度の労働保険特別会計から支出された深夜帰宅用タクシー券の総額は、1億6300万円にのぼっている。

■政治家には「予算が足りない!」と洗脳を掛け、マスコミにも同様の情報を広めて既得権を守っているのでしょうが、実際には「予算は余っている」のでしょうなあ。


タクシー帰りが多い背景には、霞が関の本省に勤務する国家公務員の深夜残業がある。政策立案や国会議員の質問に対する答弁づくりなどで連日、仕事が深夜に及び、超勤時間が月200時間を超えることも珍しくないという。ビジネスホテルに宿泊した方が健康管理やコスト面でもメリットがあるとする声もあるが、「法律にないからできない」(財務省)とされており、立法を含めたなんらかの対策が求められている。
7月27日 産経新聞

■立法は国会議員の仕事です。法の不備を楯にとって役人が税金の無駄遣いをしているのを放置しているのなら、国会議員の価値はありませんなあ。政治家がバカだと役人は好き放題に税金を食い潰せるという見本のような話です。こんな化け物じみた無神経軍団を相手にホイホイ首相が喧嘩は出来ないでしょうなあ。


厚生労働省大臣官房の3課が、昨年度に使用した深夜帰宅用タクシー券(特別会計分)をすべて廃棄していたことが分かった。……深夜帰宅用タクシー券を使用しているのは、大臣官房や労働基準局など17部署。券は運転手に渡す「本券」と、使用した職員が保存する「半券」に分かれる。職員は本券、半券ともに金額などを記載し、半券は職員が所属部署に提出。本券は後日、タクシー会社から厚労省に戻される。大臣官房の人事課と総務課、地方課の3課は、昨年度分の使用済みタクシー券の本券も半券もまったく保存していなかった。……

■所轄する役所がこの程度の管理体制ですから、社保庁の年金台帳が廃棄されたり、ぼろぼろになって使い物にならなくなるのも無理もない話です。こういう体質の役所が、「安心プラン」の趣旨を曲げずに実行するとはとても思えませんなあ。

「安心」の逆説 その壱

2008-07-30 14:56:23 | 政治
■8月上旬の閣僚外遊予定を強引にキャンセルさせたので、いよいよ福田首相が「内閣改造」を行うのではないか?と揣摩臆測(しまおくそく)が飛び交っているようですが、何だか政治記者が専門的・独占的に訳知り顔で騒いでいるだけかも?閣僚の顔が変わっても「官僚内閣制」である限り、日本の政治はぴくりとも動きませんからなあ。
 
■「洞爺湖サミット」を開催すれば内閣支持率が上がると本気で信じていたとすれば、福田首相の周辺には無責任な茶坊主でも居るのではないか?と想像したくなりますが、側近と呼ばれる政治家がいない福田首相ですから、元気付けてくれるのは出向中の官僚なのでしょうなあ。彼らは選挙で落選することもないので気楽なものです。選挙のこと以外には知恵が回らない無能な政治家を丸め込んで喜ばせる「作文」をちょいちょいと書き上げるのが得意な人達ですから、うかうかとその手に乗ると内閣の寿命はどんどん短くなります。

■もう誰も覚えては居ない「施政方針演説」を読み直しますと、虚しさと怒りを通り越して笑ってしまう薔薇色の空手形が山盛りであります。今更、内容を再点検するのも時間無駄で、何もしなかった内閣として幕引きとなる福田内閣は、ひたすら必ず負ける総選挙を先延ばしすることを存在理由問として延命している状態のようであります。無駄を承知のカンフル剤が突如として発表された「5つの安心プラン」なのでしょうが、分かり易く副題を付ければ「解体は出来ない厚労省の改革プラン」ということになりそうです。でも、郵政省と大喧嘩して人気を高めた小泉さんのように、厚労省と全面対決でもしないと、何一つ実現などしないこれまた虚しい画餅(がへい)でしかありません。

■厚労省と大喧嘩する「大義名分」は山ほどあるのですから、社保庁にきっちり責任を取らせて、しっかり解体すれば内閣支持率は倍増するでしょうし、返す刀で「厚労省が本丸だ!」と殴り込みを宣言すれば支持率80%も夢ではありませんぞ!でも、ビジョンも無ければ実行力も無いホイホイ首相では無理でしょうなあ。


……「居酒屋タクシー」問題などを受け、国土交通省が本省職員約4000人を対象にタクシーチケットの使用を停止してから1カ月が過ぎたが、例年なら月1億円に上る本省職員のタクシー代が10分の1以下に激減したことが26日までに分かった。同省は「終電までに帰れるよう、急がない仕事は翌日に回すなど職員の意識が変わりつつある」と分析、地方出先機関への拡大や停止期間の延長を検討している。……
7月27日 時事通信

■「歳出削減」と政治家が何万遍叫んでも、お役人の「役得」感覚は無くなりません。表の国家予算を削っても、何処かか「埋蔵金」を掘り出して来て好き放題に使う狡知に長けておりますからなあ。マスコミが大騒ぎすれば、簡単に「10分の1」になってしまう予算が存在する!増税を目論む官僚の神輿に載せられている政治家は、足並み揃えてこうした問題にはコメントを出しませんなあ。


厚生労働省労働基準局などの職員が徹夜勤務明けに、電車がある時間帯にもかかわらず、特別会計から支出される深夜帰宅用タクシー券を使って“朝帰り”していることが分かった。厚労省のタクシー券使用規程では「原則、業務が深夜におよび通常の交通手段がない場合に限る」と定めているが、労働基準局書記室は「職員の健康管理に配慮した」と説明。霞が関で働く国家公務員の過酷な労働実態が明らかになるとともに、税金の使い道に対するコスト意識の低さも浮かび上がった。

■こういう所に「特別会計」が顔を出します。好き放題に使える「便利で大きな財布」であります。カネのなる木と呼んでもよいでしょう。こういう物を持っている身分になりたいと、優秀な学生が必死に勉強しているような国家は早々に滅びるのでしょうなあ。心配なことです。

北京五輪の内と外 その弐百六拾八

2008-07-30 03:18:03 | チベットもの
■いくら星野監督が「真剣勝負だ!」「世界一だ!」と怒り狂っても、野球人口が増えるどころか急速に減少し続けている時に、五輪大会を切っ掛けにして世界中に野球を広めようなどと考えるのは本末転倒の話でありましょう。降って湧いたような「タイブレーク制」は、競技時間が決まっているサッカーの「PK戦」のようなもので、既にソフトボールでは採用されているとか……。大雨でも降らない限りは半永久的に「延長戦」を続けられるような気の長いスポーツは生き残れない時代でもあります。

「どこにも相談なくIBAFが決めたのも納得できない。ひっくり返らないかもしれないが、強く抗議していきたい」。星野監督は憤懣やるかたないが、導入が正式に決まった場合に備え、戦術の検討や実戦練習の場の用意などを進めておく必要もある。主将を務めるヤクルトの宮本慎也内野手は、驚きながらも「そのようなルールに持ち込むことなく、九回で終われるようにしたい。ルールの変更で負けても決して言い訳にはならない」と、努めて冷静に話した。
7月26日 産経ニュース

■星野監督は「どこにも相談がない!」と怒っていますが、素直に表現すれば、「野球大国の日本代表チームの監督にも相談せずに!」ということなのでしょうなあ。でも、五輪大会の種目になるのは世界的に普及している競技である必要があるでしょうし、その点、野球は決して全世界的に普及したスポーツとは言えません。その上、野茂選手が出現するまでは米国内で知られた日本人選手など一人も居なかったという歴史もあります。勿論、「星野投手」の存在も知られていなかったでしょう。

■念のために「タイブレーク制」の内容を確認しておきましょう。


IBAFのシラー会長は試合時間の短縮を目指すとして「延長戦は劇的な結果をもたらすが、五輪には向かない。テレビ放映などに適したスポーツであることを示したかった」と規則改正の狙いを説明した。新規則では延長10回は通常通りだが、11回はどの打順からでも攻撃を始めてよく、打者の直前の打順の2人が走者となる。12回以降はその続きの打順で進行し、11回と同様の方式で2人の走者を置く。……。
2008年7月26日 産経ニュース

■要するに「1打逆転」のスコアリング・ポジションを意図的にお膳立てしてくれるから、さっさと勝負を決めなさい!というやり方です。ここでやっぱり問題になるのは、野球競技の普及度ということになります。「無死1,2塁」なら、送りバントと犠牲フライで得点だあ!などという理屈をすっと理解できる人が世界中にあまり居ないのですからなあ。「ダブル・スチール」だの「スクイズ」などというレベルになったら説明するのも大変です。

■しかし、今回の問題は直前のルール変更という事よりも「連絡方法」が乱暴だった事の方が感情的なしこりを生んでしまった原因のようです。


国際野球連盟(IBAF)が開幕を目前に控えた北京五輪の野球でタイブレーク方式を導入する方針を示したことについて、日本の野球界で対外的な窓口となっている全日本アマチュア野球連盟は26日、困惑した様子を見せた。……同連盟はこの日、電子メールで新ルール導入の連絡を受けたという。事務局の職員は「北京五輪の代表が出そろったところで運営要領などは決まったはず。(新ルールの)意思決定の経緯が読めない」と話し、寝耳に水とも言える通知に戸惑いを隠せなかった。同連盟国際委員会の委員は「IBAFのホームページを読む限り、シラー会長は野球の試合が長引くことはテレビ放映にいい影響を与えないと思っているようだ。それが大きいのでしょう」と推察した。
7月26日 時事通信

■古い話ですが、学生野球はラジオ放送によって成長し、プロ野球はラジオとテレビが育てて来た経緯がありますから、常に「延長」問題は難しいテーマでした。「1打逆転の場面ですが、ここで放送時間が終了となります」というアナウンサーの声に、どれほどファンは激怒したことでしょう?インターネット放送が定着したことで、やっと「CM中の大逆転劇」も解消されたと思ったら、残念ながら何時間でも熱心に観戦してくれるファンが激減してしまっていたというのは、何とも皮肉な話であります。

■全世界に向けての生放送となりますと、ルールも分からない不思議な競技を4時間も5時間も凝視してくれる変人は極少数でしょうから、試合時間の短縮という問題は常に国際組織の中で検討されていたに違いありません。腹を立てるより、日本国内の試合でも「タイブレーク制」の導入を考える方が、野球の将来にとっては良いことかも知れませんぞ。

北京五輪の内と外 その弐百六拾七

2008-07-30 03:17:49 | チベットもの
■今回の北京五輪を最後に公式種目から弾かれる「野球」に、最もこだわって報道し続けているのは日本だけのようです。数日前のニュースに野球発祥の地であるはずの米国でさえ、野球に対する熱がすっかり冷めているという話がありましたが、日本国内では真贋取り混ぜた高校野球神話とプロ野球界の伝説を新聞社や漫画雑誌が延々と描き続けた財産もありますし、国内でサッカー人気に押される危機に見舞われると、今度は本場の米国メジャーという格好の突破口が見つかって、テレビもスポーツ新聞も野球商売を続けられているというわけです。

■野茂英雄という無口で無愛想な男の物語は歴史として語り継がれるのでしょうが、メジャー・リーグの輝きも無くなったら、いよいよ野球人気はどん底になりそうです。少子化と都市化が同時に進んだ結果、キャッチボールや文字通りの草野球を楽しんでいる少年たちの姿が消えまして、最初から大人たちがさまざまな思惑で運営する立派な道具を使った少年野球クラブにでも入らないとボールやグローブに触れないまま大人になる日本人が随分と増えてしまいましたなあ。

■日本の野球文化は、もしかすると長嶋茂雄という一人の選手が居なくなったらあっと言う間に滅んでしまうのではないか?などと想像してしまいますが、彼も手作りバットで三角ベース野球を楽しんだ少年時代を経験した世代です。まあ、それはさて措きましてお話は北京五輪のことであります。


突然のタイブレーク導入に星野監督も戸惑いを隠さない 「オリンピックの2週間前になってルールを変えるなんて、おかしいにもほどがある」。北京五輪でのタイブレーク制導入の方針に、日本代表の星野仙一監督は強い不快感を表明した。「われわれは親善試合ではなく、世界一を決める真剣勝負をするんです。延長11回から無死1、2塁でスタートといわれても…」

■欧州列強の限定的な国際親善を目的として始まった近代オリンピックに、当時は植民地か劣等民族と蔑まれていたアジアやアフリカの国々が、欧米人と肩を並べて参加するようになっただけでも大変なことなのですから、ましてや「世界一」の金メダルを取るようになったら、陰に陽に嫌がらせが始まるのは当たり前の話でしょう。日本人が金メダルを取ると即座にルール変更して邪魔する種目と言えば、水泳競技が有名ですが、事はスポーツばかりでなく、自動車レースの世界でも日本製の車が活躍すると、何だかんだと文句がついてルールがころころ変わるという話もありますなあ。

■五輪大会について、何か大きな勘違いをしているとしか思えない星野監督が腹を立ててみても、日本の一部マスコミが取り上げてくれるくらいなもので、国際的には誰も耳を貸してはくれません。


最も影響があるのはリリーフ投手だが、首脳陣にストッパー役を期待されている巨人の上原浩治投手は「それは必要ないでしょう。野球が野球でなくなる」と不満をあらわにした。同じ巨人の阿部慎之助捕手は「草野球みたいだね」と、突然の動きを痛烈に皮肉る。五輪復活に向けた取り組みとはいえ、一方的なやり方を簡単には受け入れられない。日本側は28日に行われるアマチュア3団体の協議会で、IBAFへの抗議などの対応を協議する見込みだ。

■莫大な金銭で取り引きされる「テレビ放映権」を考えれば、買取った時間枠の中で競技が終わってくれなくては困ります。それでなくてもルールが非常に複雑な野球というスポーツを楽しむには膨大な知識と経験が必要なのです。チベット留学をした時に、たまたまグローブとボールが手に入ったので、学校のグラウンドでキャッチボールをしたことがありました。興味を持ったチベット人学生を相手に蠅が止まりそうな送球をした時、日本の男なら誰でも出来るキャッチボールでさえ、幼い時から訓練していないと簡単には出来ないという当たり前の事を知ってちょっとした衝撃を受けたものです。

■それ以上に野球のルールの説明を求められた時には、改めてその複雑さに驚いた次第です。プロの選手にまでなる人達の努力もすごいのですが、ビールを楽しみながら観戦できる人達の存在も貴重なものなのですなあ。さて、五輪大会に野球競技が採用された裏側には、さまざまな商売が絡んでいるのでしょうが、日米を軸にして韓国や中南米の数カ国ぐらいにしか、選手はともかく「観客」が居ないという現実を大きく変えるための努力がまったく足りなかったのが大問題で、台湾やオーストラリアなどが参加しても、最後まで五輪競技としては座りの悪い印象がありましたなあ。

北京五輪の内と外 その弐百六拾六

2008-07-29 00:41:28 | チベットもの
■武力闘争を挑んで来そうなウイグルに対して、言葉とデモ行進で抗議の意思を表しているチベットは、弾圧する側としては別の苦労が有るのでしょう。昆明市の爆弾テロが起こる直前に、実に思わせぶりでワザとらしい報道が有ったようです。

2008年7月23日、国営新華社通信発行の国際先駆導報(電子版)は、「ダライ集団があらゆる優遇条件でチベット族の青少年をそそのかし、インドやネパールなど海外の『ダライ学校』に入学させている」という記事を掲載。「無垢な若者を洗脳する許しがたい行為」と糾弾した。

■「あらゆる優遇条件」で理系の大学生を海外に留学させて、最先端の技術を持ち帰れ!と発破を掛けているのは何処の国でしょう?欧米諸国では国家機密に含まれる軍事技術や産業部門の先端技術を盗まれないように神経を尖らせているのは有名な話で、スパイ防止法を持たない日本では、潰れそうな大学を救済する為に玉石混交の留学生誘致を尚一層進めるそうですが……。「無垢な若者を洗脳する」とは、言いも言ったり!大したものですなあ。


記事によると、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計では、1993年から06年までにネパールの「チベット難民受け入れセンター」が収容したチベットからの亡命者は、計3万3343人。うち30%が児童・学生で、そのほとんどが現地の「ダライ学校」に入学している。

■共産党学校に入れたくない親たちが、今生の別れになるのを覚悟の上で、命懸けのヒマラヤ越えに我が子を送り出す悲劇を、この記事はすっぽりと抜き取っております。無事に山を越えられたのが3万人なら、失敗して命を落とした子供たちはどれほど居るのでしょうなあ。


また、ダライ・ラマ14世はインド亡命後の60年代からこれまで、世界各地に80か所以上の「ダライ学校」を設立。在校生は現在、小学校から大学、成人学校までおよそ2万7000人、教師も2000人近くに上る。これらの学校は学費や生活費の全てを「チベット亡命政府」が負担し、毎月のお小遣いまでもらえるという。

■改革開放で豪華な設備を誇る私立学校が雨後の筍みたいに建てられているチャイナとは違って、亡命した子供達が通う学校は質素なものです。亡命政府が伝統文化と「正しい歴史」を伝えて残そうと努力している活動を支えているのは、世界中から集まる寄付金のはずです。チャイナの方でも日本を筆頭に、篤志家の私産やら優しい国のODAで小中学校が建設されていますなあ。中には建設資金の8割を横領してオカラ校舎を建てておいて、「熱烈感謝」の式典を開いたら実質的に閉校してしまうような詐欺話も多いとか……。それに比べたら亡命チベット人の学校は立派なものです。

■「お小遣い」に目くじらを立てるより、自分の国の学生達にスパイ行為を奨励して校内の反革命分子やら分裂主義者を密告させるような奨励金制度は止めたらどうでしょう?


「手段を選ばないダライ集団のやり方」(同紙)に危機を感じたチベット自治区ではこのほど、共産党員および国家公務員の子女が海外の「ダライ学校」に通うことを禁じた「紀律及び処分規定」(試行)を制定。違反した者は、党籍剥奪および懲戒処分になるという。7月24日 Record China

■「面従腹背」とはこの事でしょう。チベット自治区の共産党員が、秘かに我が子を亡命させてチベット学校に通わせている!ことを端無くも自白してしまったようなものです。同じニュースが一週間前にも流れていました。


2008年7月、チベット自治区規律委員会、監察庁は「共産党員、国家公務員の子弟が、ダライ・ラマグループが経営する学校に留学した場合に適用される、規律処分規定(試行案)」を発表した。17日、チベット日報が伝えた。 海外にはチベット独立勢力が運営する学校(寺、僧職養成学校)が存在し、青少年のチベット独立賛同者を増やすことを企図しているという。海外留学、学費免除、食費住居費無料などの条件で誘い、学生を集めている。

■この記事の方が、詳しく学校の運営方法を説明していますが、何を根拠に「独立勢力」と判定するのかがまったく述べられていません。ダライ・ラマ法王を「分離独立主義者」と決め付けている北京政府ですから、教室内に毛沢東の肖像画を掛けずにダライ・ラマ法王の写真が掲げられていれば、それだけで「独立勢力」と断定できるのでしょうなあ。この記事では、学校と学問寺院とが意図的に混同されているのも気になるところです。。


同規定は子弟がチベット独立勢力運営の学校に留学していた場合、厳しい処分を科すことを決めたもの。すでに留学を終えた場合は自ら報告し、現在留学中の場合は2か月以内に帰国すれば処分を軽減するが、隠ぺいしようとした場合は党籍を剥奪、公職から追放することを定めている。
2008年7月18日 Record China

■報道のタイミングから考えて、国際的な非難を避けるために苦渋の選択でチベット亡命政府と会談を持たざるを得なかったことの穴埋めに、ダライ・ラマ法王が過激な分離独立運動の陰謀を企んでいる!と証明したかったのでしょうが、どこか腰が引けている印象が強い記事でありました。

北京五輪の内と外 その弐百六拾伍

2008-07-29 00:41:08 | チベットもの
■北京五輪の開催を危ぶむ声を掻き消すように、日本では参加選手の「決断式」だの「壮行会」だの、マスコミは挙(こぞ)って気分を盛り上げようと必死の模様。一足先に競泳陣は北京入り。迎えのバスが30分のところを道を間違えて一時間半も彷徨して選手たちを疲労させたとか……。米国選手団は特別製の防毒マスクを用意しているとの噂も流れる恐怖の汚染大気はそのままで、本当かウソか?室内プールの天井付近にもスモッグが漂っているとの話。24時間サービスの食堂を試した選手は、「特に問題はない」と言っているようですが、どぶ川の水を使っていた製氷業者が摘発された折も折、張り切ってプールで練習をし過ぎて体調を崩すような事があったらどうしましょう?

■ウイグル問題が俄かに注目されてテロ攻撃も冗談では済まない話になってしまいましたが、北京開催を決定したIOCが期待を込めて出した民主化という条件は一向にクリアされる様子も見えず、チベット問題はフランス大統領を開会式に呼び込む餌かアリバイ作りのように無愛想な公式会談が開かれただけで、何も解決はしておりません。そもそも、3月に発生した争乱は北京五輪に対する反対運動ではありませんでしたから、開催日が近づくにつれて再びチベット地域が緊張するという理由も無いのですが……。


訪米中のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は25日、コロラド州アスペンで、共和党の大統領候補指名が確定したマケイン上院議員と会談した。会談では、来月開かれる北京五輪が取り上げられ、マケイン氏は五輪の開催が中国にとり、人権への配慮を示す機会となり得るとの考えを述べた。

■「機会」という言い方は上手な外交辞令ですなあ。でも、今のところは「人権への配慮」と思われる動きはまったく見えません。政府の腐敗は限界点を突破して人民の財産権も生存権も守られず、信仰の自由は最初から有りませんし、表現の自由も見当たりません。マケイン候補の対北京外交の中身は不明ですが、オバマ候補よりも先にダライ・ラマ法王と会見するとは大したものであります。


……マケイン氏は記者団に対し、「中国は3月のチベット騒乱で行方不明とされたチベット人政治犯を釈放し、チベットの自治に関する実効的な対話に応じるべきだ」と語った。ダライ・ラマはマケイン氏のチベット問題への関心に謝意を述べる一方、五輪後に再開が見込まれるチベット亡命政府の特使と中国当局の対話で各国指導者の支援を得たいと期待を示した。今回の米大統領選で、与野党の候補がダライ・ラマと会談するのは初めて。
7月26日 産経新聞

■民主党候補のオバマ氏は、ドイツに乗りこんで「壁を取り払う」演説をしたようですが、その中には「民族、宗教」の壁も含まれていたとか……。それなら、チベット問題に関しても何らかの発言が欲しいところですなあ。でも、チャイナ重視の日本パッシング外交が好きな民主党の候補ですから、チャイナの中に張り巡らされている様々な「壁」については例外扱いなのかも知れませんなあ。うかうかしていると、太平洋の真ん中に軍事境界線が引かれて、米中で折半するような間抜けな大統領になってしまいますぞ!

■一時はたっぷり嫌味を言っていたフランスのサルコジ大統領でしたが、洞爺湖サミットの会場で、ちゃっかり北京五輪の開会式には参列すると約束してしまいました。まるで福田ホイホイ首相に頼まれたかのように……。チャイナとは軍用民生用の大きな商談をまとめている国の元首ですから、最後には参加を表明するに違いないとは思っていましたが、わざわざ日本に来て発表する事もないでしょう。何も決まらなかった洞爺湖サミットですが、北京五輪の前夜祭としては十分に役立ったようですなあ。

■同じ欧州でも血を流してソ連と対決した経験を持つチェコは一味違うようです。


2008年7月26日、チェコのミレク・トポラーネク首相は記者会見を開き、北京五輪開会式参加を表明した。しかしネクタイに「チベット独立旗」をつけるなど中国への批判的姿勢を明らかにしたことから、中国政府は強い反発を見せている。……3月14日のチベット暴動発生以来、欧州各国はチベット問題、人権問題に関して中国への批判を強めている。特にチェコはその急先鋒で、クラウス大統領は早々と開会式欠席を表明した。同首相は記者会見で「開会式参加はたんに選手を応援するためのもの」とも発言、中国の五輪開催を支持しない姿勢をにじませた。この記者会見を受け、中国外交部はチェコ駐中国大使を呼び出し、厳重に抗議した。
7月28日 Record China

■さすがはマサリク大統領の国!こういうのを「言うべき事は言う」外交と呼ぶのでしょうなあ。日本で行われた「結団式」の映像では、選手団の旗手に(わざとらしい!)選ばれた福原愛さんの挨拶を受けていたのは河野洋平さんだったように見えましたが、何とも品格の無い人選のように思えてなりません。ぞろぞろと並んだ参加者の中には、苦しい言い訳をしながら聖火リレーに引っ張り出された人物もちらほらと見受けられまして、チベット問題の欠片も覚えていないような顔をしておられたようです。

北京五輪の内と外 その弐百六拾四

2008-07-28 15:04:22 | チベットもの
■底が割れて何事もバレバレなのに、それでも強引に面子を取り繕うとするチャイナの根性には感心してしまいます。世界中に暴動・テロ・腐敗・格差などなど、とても五輪大会など開いている場合ではない実情が毎日のように報道されているというのに、北京市内の空気が綺麗になった!水も食糧も安全だ!地方政府の不正を訴えに来ている者などいない!などなど、言っている本人も信じているとは思えない無茶苦茶なことを発表していますなあ。政府がウソを言うわけには行かないとて、地域内の工場を有無を言わせず閉鎖するわ、物流も交通の便も無視して走行車両を半減させるわ、外部からの食糧品の搬入が激減するわ、揚句の果てに世界的に有名な「直訴」から可哀想な人達を追い出して一夜にして廃墟にしてしまったとか……。

■争乱が終息した後のチベットで、国際的な非難に耐えられなくなった北京政府がマスコミを入れたら、お坊さんたちがカメラとマイクに駆け寄って実情を叫び出したという事件がありました。何万人ものマスコミ関係者が北京市内に入る五輪大会の期間中は、競技場や選手村の「外」も取材対象になりますから、地方政府の腐敗ぶりを世界のマスコミを通して訴える!という人はいくらでも出て来るでしょう。「直訴村」を廃墟にしたのは中央政府ではなくて、自分たちの首が掛かっている地方政府の公安警察だという話もありますなあ。これでは北京市の独立性を無視した「拉致」犯罪も同然です。まあ、将軍様の国には「直訴村」自体が存在しないのですから、チャイナの方が少しばかり民主化されているのかも?

■力づくで口を塞ぐと絶望に狂って「窮鼠猫を咬む」ことになりますから、猫の親分は咬まれる前にガス抜きをしようとしております。


中国政府は24日、直訴処理にあたる役人の対応について新規定を発表。市民の利益を著しく損ない、直訴をめぐる衝突や暴動を引き起こした役人は、降格・懲戒免職となる。この規定により、直訴処理における権力乱用を取り締まる方針。……新規定は国家メディアと中国政府のサイトで発表。規定に反した権力で暴動を処理した場合、あるいは規定に反した武器を携帯・使用した場合、処罰するとしている。このほか、「直訴処理を引き延ばしてはならない」「衝突を激化させてはならない」「問題を深刻化させてはならない」としている。……香港・台湾のメディアも新規定について報道。市民の意見を聞き入れ、判断が難しい事件を審査するため、7月から県・市・区の委員会書記は直訴の受け付けをおこなっていると伝えた。7月28日 Record China

■慌てて出された「新規定」の要点は、「暴動を起こさせるな!」ということのようですが、禁止されている「権力で暴動を処理」や「武器の使用」、「引き延ばし」などが実際に起こっている事を喧伝しているようなものですなあ。「直訴村」を追い出された人達が素直に「新規定」を信じて故郷の村々に帰って行ったのなら問題は無いのですが、そんな物は信じないぞ!と考えている人達は、北京市内の何処かで息を潜めながら、五輪大会を心待ちにしているのでしょう。あれほど世界中に迷惑を掛けても強行した「聖火リレー」が、国内に入ってからは何かを怖れて規模縮小や中止が相次ぎ、直前までコースや日時を発表しないような状態になっているようです。

■それでも開会式のスケジュールは決まっているので、まずは聖火リレーを妨害して「直訴」の切っ掛けにしようと思っている人がいるかも知れませんなあ。市内を走る抜ける「五輪の華」マラソン競技の日には、沿道での応援が大幅に制限されるという噂もありますから、当局は最悪の場合を想定して恥も外聞も無い対応策を打っているのでしょう。あの「聖火リレー」のように、応援する観客よりも多い警備員に囲まれながら、各種競技は行われるのでしょうか?

■最初に火の手が上がったチベット地域が、妙に静かになったまま五輪大会の日を迎えようとしていますが、チベット人全員がダライ・ラマ法王の指示と祈りに従って大人しく大会をお祝いするとは限りません。この度の「東トルキスタン・イスラム党」の名乗りを受けて、チベット人や支援者の中に大いなる刺激を受けた者が居るかも知れませんからなあ。