旅限無(りょげむ)

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外交の麻生? 其の参

2009-05-31 21:21:34 | 外交・情勢(アジア)
■将来に起こる大きな出来事の原因となる極小さな予兆を「蟻の一穴」と申しますが、北方領土には間違いなく日本人が暮らしていた事実があったことを揉み消されないように、「里帰り」を続けることには大きな意味があるでしょう。この細い紙縒(こよ)りのように細い絆が小さな穴を穿って外交的に大きな成果が得られるかも?と日本としては微かな期待も持てるわけですが、長々と「不法占拠」を続けている相手としては日本にメッセージを送る伝声管に利用できるようです。

6月上旬に再開が予定されていた北方4島への人道支援物資の輸送事業が、ロシア側との調整が間に合わないため、さらに延期されることが28日わかった。……今年1月、「出入国カード問題」で一度は中断。外務省では「手続きの上の問題があるわけではない」としているが、再開のめどは立っていないという。……外務省の委託を受けて、元島民団体「千島歯舞諸島居住者連盟」が……ビザなし交流や自由訪問などと同じチャーター船を使用しており、同連盟は、ビザなし交流などで使用する計画がない、6月1~4日で支援物資輸送を予定していた。連盟は「何がネックになっているかが分からない。今後については、外務省と協議したい」とする。同省ロシア支援室は、「ロシア側と6月中に実施することで合意していたわけではない」としている。
2009年5月29日 読売新聞

■「外務省の委託」なのに、同省の担当者が他人事みたいな話をしているのは解せませんなあ。下らない面子を気にして連盟の人達を虚仮(こけ)にするような保身を図っているのなら、相手に弱みを見せてしまうことになり兼ねませんぞ。この讀賣新聞の記事では「調整が間に合わない」のが遅滞の原因とされていますが、別の報道ではまったく違った原因が指摘されております。


北方四島を“管轄”するロシア極東のサハリン州政府が、四島住民に医療物資を届ける日本の人道支援について、経済発展した今のロシアには必要がなくなったとして受け取りを拒否する姿勢に転じたことが28日分かった。医療物資の人道支援は1月、国後島に上陸しようとした日本外務省職員らにロシアが出入国カードの提出を要求したため、中止に追い込まれていた。

■1月に発生した「出入国カード」事件は、実質的に医療物資の援助活動に対する拒否だったわけで、現場にいた外務省職員はその背景をしっかりと探る努力をしていたのでしょうか?もしかすると、一見小さな事件の裏側に「北方領土問題」を解決する糸口を発見?してしまったのかも知れませんなあ。その糸口を手繰って行ったら「3.5島返還論」が出て来たりして……。


州政府と州議会の機関紙「州報」は同日までに、ソ連崩壊で経済が混乱した1990年代を経て「今やロシアは大国の一員になり、ロシアに領土的要求を行う隣国から人道支援を受ける必要はなくなった」との見解を報道。日本による人道支援の「政治問題化」を避けるため、支援を拒否し、ロシア連邦政府が医療支援の肩代わりを検討すべきだとしている。
2009年5月28日 産経ニュース

■この機関紙の記事はとても興味深いものがあります。深読みすればクレムリンに対する嫌味、或いは脅迫や恫喝とも受け取れますからなあ。「今や大国の一員」という夜郎自大の話を枕にして、自分たちもその「大国の一員の一員だろ!?」とクレムリンに念押しをしている節があります。そして権威が動揺していると言われている現政権にとって致命傷となる「領土的要求」を自分達が身体を張って拒否して見せるんだぜ!という痩せ我慢の極致のような啖呵が聞こえて来るようです。要するに、これ以上「サハリン州」を継子(ままこ)扱いしていると、いろいろと支援してくれている日本からもっともっと多くの支援を貰うために「領土的要求」に応じてしまうかもね?とクレムリンを脅しているようにも読めるのではないでしょうか?少々夢見がちな深読みなのではありますが……。

外交の麻生? 其の弐

2009-05-31 09:07:04 | 外交・情勢(アジア)
■現地と関係者は随分と迷惑を蒙っている様子です。

択捉島を訪れていた今年度最初のビザなし訪問団(第2陣、小林常次団長ら61人)が26日、予定より1日遅れてチャーター船で根室市根室港に戻った。ロシア側が出した「出入国カード」の問題で交流が暗礁に乗り上げてから4カ月、18年目を迎えたビザなし交流はようやく正常な状態に戻った。……顧問として参加した勝部賢志道議は「日露戦争で失った領土を第二次世界大戦で取り戻したと思っている現地(ロシア島民)の歴史感に、(日本との)教育の差があると感じた。歴史的な部分を共有するには時間がかかる。いろいろな作業をする必要がある」と指摘し、ロシア人との共生も視野に歴史感を改めるような相互理解を進めていくことの必要性を強調した。……

■既に北方領土のロシア住民は三世の代になっていますから、今更、「教育」を問題にして「歴史の共有」が課題だなどと言われては、日本外交は60年間も昼寝していたのも同然でありましょう。黒船来航から営々として戦争と交渉によって合法的に領土と支配地域を拡張し続けた大日本帝国が、先の大戦に敗れたことで一瞬にしてそのほとんどを失ったのは歴史的な痛恨の極みではありますが、対するロシアは「タタールの頸木」が外れてからと言うもの、ちゃっかりチンギス汗の後継者になりすまし、形振り構わず領土を広げ続けた歴史を持っております。ロシア帝国の後継者となったソビエト連邦も、新たな領土拡張に貪欲でしたが、北方領土は元々日本の領土であって決して日露戦争でロシア帝国から奪ったものではありません。それはスターリンも承知していた歴史的事実です。樺太の南半分に関してはロシア側の主張が認められる部分もありそうですが……。

■冷戦時代にさえも北方領土への侵攻を社会主義国家らしく「解放」と称さなかったのはヤルタでの密約があったからでしょうが、幕末から熾烈な争奪戦が続いた樺太に比べて、北方領土は1945年8月まで領土問題のネタにはなった験しは無かったのに……。外国の地理と歴史に疎かった米国のルーズベルト大統領は「クリル諸島」と北方領土との関係がよく分かっていなかったとも言われていますが、米国の歴代大統領は皆同じようなものだったようですなあ。オバマ大統領は例外的に地理と歴史に関する教養が豊かであれば幸いなのですが……。


高橋孝志副団長(75)=根室市=は「検疫は書類だけで済むかと思ったら、(新型インフルエンザの発生で)体温などいろいろ検査された」と話し、得能宏さん(75)=同=は「6年ぶりに訪れたが、内岡港の港湾整備が大きな変ぼうをとげていて、完成すれば古釜布より整備されるのではないか」と、進む開発に警戒感を示した。
2009年5月27日 毎日新聞

■韓国の漁船に操業許可を大盤振る舞いしているという話もありますから、他人のフンドシで相撲を取る方式で開発資金を手に入れているのかも知れません。資源価格が世界的に暴落して大きな打撃を受けて青息吐息のプーチン帝国は、相当の譲歩をしてでも資金の手当てをしなければならない苦しい立場で訪日したと言われていましたなあ。そのアドバンテージを使い切れなかった麻生コロコロ外交は、将来に大いなる禍根を残してしまったのかも知れません。

外交の麻生? 其の壱

2009-05-30 13:03:43 | 外交・情勢(アジア)
■もしも、「日本列島は日本人だけの所有物じゃない」などと本気で考えている政治家が総理大臣になったら、「その日本の領土に含まれている北方領土も……」などと言い出したらどうしましょう?と取らぬ狸の皮算用をして心配になってしまう今日この頃であります。子供も口喧嘩みたいな低レベルの党首討論が開催されましたが、討論の中に「安心と活力」も「友愛精神」の欠片も見当たらず、会場は野卑な怒号と下劣な野次が鳴り響き、討論というよりも腰抜けヤクザの「出入り」みたいな雰囲気だったようですなあ。まあ、与党も野党も既に総選挙モードに入っているので、野次も選挙運動の一環ということなのでしょう。その証拠に「西松問題」で俎上に載せられたクラッシャー小沢さん本人は国会を遠く離れた福岡県の休耕田で立会い演説会を開催していたのでした。
 
■幸か不幸か、党首討論では外交問題はまともに取り上げられず、北朝鮮の核実験に関してだけ「米国からの事前通告」の有無を鳩山代表が質しただけでした。野党に軍事機密に関連する情報交換の実態を説明する必要は無い!と一蹴され、返す刀で「安全保障政策」を統一できない民主党の泣き所をチクチク突いていた麻生コロコロ首相でした。討論の最後に鳩山代表が取り上げた「めちゃくちゃな補正予算」に盛り込まれている通称『アニメの殿堂』ばかりが世間の注目を集めてしまい「外交の麻生」の影がすっかり薄くなっていますなあ。それもそのはずで、正真正銘の瀬戸際に追い詰められた北朝鮮が、どうやら今回は本物の地下核実験に踏み切ったことに関連して質問した記者に、同じ質問を返してしまっては自称ながら「外交の麻生」の看板が泣きますぞ。

■長年続いている年金制度崩壊の問題に連動する派遣労働者問題、そして、御丁寧にまたまた新型インフルエンザの感染騒動で机上の空論でしかなった「水際作戦」で国内をパニックに陥れた厚生労働省を「分割」して諸問題を整理すると称して大問題を先送りしてうやむやにしてしまおう!とした麻生コロコロ首相は、その名の通り自民党内の族議員が押し掛けて来ただけで「分割なんて言ってない」と内政問題でもコロコロと前言を変えてしまうのでした。そんな調子で外交交渉などをしたらトンデモないことになりそうだなあ。と心配していたら……


ロシアのメドベージェフ大統領は29日、「クリール(千島)諸島に対するロシアの主権を疑問視するような日本のパートナーの企ては、受け入れられない。こうした行為は交渉継続を促進しない」と述べ、北方領土問題を含む平和条約交渉の進展に影響する恐れがあると警告した。クレムリンで行われた河野雅治駐ロシア大使の信任状奉呈式で語った。

■典型的な外交儀礼の場で、これほど露骨に嫌味を言うというのも珍しい話で、着任したての河野大使にとっては青天の霹靂だったでしょう。奉呈式には他の国の大使も出席していたそうですから、日本だけが名指しで釘を刺されてしまったことになります。どうやら、これがプーチン首相の訪日団が持ち帰った麻生コロコロ内閣からのお土産に対する返答だということなのでしょうなあ。


大統領は、麻生太郎首相が先に「戦後60年以上、ロシアによる北方領土の不法占拠が続いているのは遺憾」と発言したことを念頭に、日本側を強くけん制したとみられる。……先のプーチン首相訪日の際、同首相が7月のイタリアでの主要国首脳会議(サミット)の際に行われる日ロ首脳会談で、北方領土問題の打開に向け「あらゆるオプションが話し合われる」との見通しを示したことを受け、日本側では交渉進展に期待が高まっていたが、冷水を浴びせられた格好だ。
2009年5月29日 時事通信

■時事通信社は「冷や水を浴びせる」とは書かないことになっているようです。実に結構なことであります。それはさて措き、欲しい物は全部手に入れて帰ったプーチン訪日団が北方領土問題を一種の毛鉤(けばり)に使って麻生コロコロ首相を油断させ、3割台の支持率を「得意の外交」で一挙に反転上昇させられるかも?とその気にさせた手腕はお見事でした。毛鉤に引っ掛かって釣り上げられてしまった麻生コロコロ首相は、解散総選挙を限界まで先延ばしして何としてでもサミットに参加する!という虚仮の一念が実ったと思ったのは糠喜びで、瓢箪から駒が出て北方領土問題の解決に大きな貢献をしたと歴史に刻まれるかも?などと色気を出したのは拙(まず)かったのでしょう。

弔電と原爆 其の壱

2009-05-27 21:12:41 | 外交・情勢(アジア)
■テポドン騒ぎの次は「お世継ぎ」問題が話題となって、三男だ!次男だ!と自称他称の北朝鮮事情通があれこれと先物買いの話題を振り撒き、騒ぎが有る所に必ず現われる?とも言われる田原総一郎さんが『北斗の拳』みたいな「……はもう死んでいる」などと放言している間に、本家本元は人工衛星打ち上げに失敗したらしいテポドン発射の汚名を雪(そそ)ごうと、手前勝手な「予定」通りに変な事をやった模様であります。

■数日前まで、「短距離ミサイルの実験」を行うのではないか?と実(まこと)しやかに流されていた呑気な情報は何だったのでしょう?


北朝鮮の金正日総書記は、23日に死亡した韓国の盧武鉉前大統領の遺族に哀悼の意を表明した。北朝鮮国営メディアが25日報じた。……「盧武鉉・前大統領が不慮の事故で亡くなったとのニュースに接し、権良淑夫人、並びに遺族の方々に心から哀悼の意を表する」とした。金総書記は2007年に平壌で開催された南北首脳会談で盧・前大統領と会談している。不正資金疑惑で捜査を受けていた盧・前大統領(62)は23日朝、自宅近くで山歩き中に岩から飛び降り死亡した。……北朝鮮は、盧・前大統領の宥和政策を継承していないとして、韓国の李明博現政権を非難している。
5月25日9時53分配信 ロイター

■韓国では大掛かりな弔いが行われるそうですが、ほぼ自殺に近い悲惨な晩年を過ごした田中角栄さんとの扱いが随分違うような気もしますが、伝統的な御国柄の違いなのか?米国との距離感が違うのか?今の韓国は検察批判の嵐が起こっているとか……。今更、戦後の韓国大統領が残した失脚後の「列伝」を蒸し返しても仕方がありません。しかし、前大統領には以前から怪しげな資金源の影が付き纏っていましたから、北の将軍様からテキパキと弔電が送られて来たと聞きますと、嗚呼、やっぱり礼儀を重んずる儒教の国同士の関係なのであるなあ……などと呑気なことは考えていられません。やはり、アノ時代には南は北に侵食されて完全に取り込まれていたのか?と今更ながらに隣国の厳しい現代史を忖度(そんたく)してしまいます。

■どんな思惑やら背景があるにせよ、礼儀に従って死者を悼む者を悪しざまに言うわけに行きません。しかし、23日の土曜日に岩山から身を投げた韓国前大統領に対して送られた北朝鮮からの弔電が、一体、いつ打たれたものなのか?24日の日曜日はキリスト教文化圏(今の日本も含む)では報道機関が羽を休めていますから、それを狙って弔電を打っておいて、その情報が広まる間合いは折込済みで……。となりますと、前大統領の死には演出された不自然な臭いも立ってしまいそうです。


マレン米統合参謀本部議長が(5月)18日、北朝鮮は核兵器を保有していると言及し、核実験問題に懸念を表明した。……ブルッキングス研究所での国防関連討論会で、北朝鮮が2回目の核実験を準備しているかどうかの質問に答えたもの。……「核実験を考慮しているという報道がある。わたしはこれをどちらの方向にも、肯定も否定もしない」と述べ、いわゆるNCNDの立場を示した。統合参謀本部議長のこうした発言は、北朝鮮が核実験を準備しているという報道を積極的に否定はしないものと解釈できる。……
5月19日11時25分配信 YONHAP NEWS

■5月19日の火曜日の段階で、日本のメディアにどれだけ、この物騒な情報が流れたのでしょう?先の地下核実験(らしき)ものと、日本が「誤探知」「誤報」で世界に恥を晒したテポドン騒動との間に線を引けば、北朝鮮が米国を本気にさせるためには核弾頭の小型化を意地になって成功させようという決意を見せ付ける道しか残されていなかったのは明らかで、米国はその可能性を事前に予測し、在日米軍基地とグアム島の運命も計算して情報を収集していたに違いありません。全部、文字通り、日本の頭越し……。font> 
 
北朝鮮が25日午前に2回目の核実験を実施した可能性が高いと伝えられた。青瓦台(大統領府)の李東官報道官は同日の会見で、午前9時54分に咸鏡北道吉州郡豊渓里近くで震度4.5前後の人工地震が感知されたと明らかにした。複数状況から核実験の可能性があるとみて、韓米情報当局が分析するとともに鋭意注視していると伝えた。詳細と韓国政府の立場は正確な事実が確認でき次第、発表するとした。

■どうして25日なのか?と最初に問わねばなりますまいなあ。


これに関連し、李明博大統領は同日午後に緊急国家安全保障会議(NSC)を主宰し、対策を熟議する予定だ。……
5月25日12時10分配信 YONHAP NEWS

■こうして北朝鮮にとっては最後の賭けとしか言いようがない核とミサイルの大騒ぎが始まったのでした。今となっては、北の将軍様が送った「弔電」は長過ぎた休戦状態を強引に終わらせる宣言だったようにも思えます。既に韓国に対しては「宣戦布告」をしたも同然ですから、間も無く日本にも……。

日曜日のテレビから 

2009-05-26 10:47:51 | 日記・雑学
■日曜日は大相撲夏場所の千秋楽でしたから、長かった朝青龍時代の終焉を象徴する微妙な星取り合戦になって相撲本来の面白さを取り戻し、視聴率も高かったようです。もしかしたら4人が2敗で並んでプレーオフのトーナメントになるかも?という展開でしたから、たとえそのうち3人がモンゴル出身力士であろうと、相撲ファンには関係ない話だったようです。その一方で交流戦が行われているというのにプロ野球の試合はNHK衛星第一放送で阪神対ロッテの中継があっただけでした。ラジオでは3試合の中継番組があったようですが……。

■国会で補正予算の審議が始まったので、テレビの報道番組は一斉に政治色を濃くして日曜日のニュースショー系の番組は軒並み各党代表を集めてワイワイ討論会を開催していたようです。論客と呼べる政治家は少ないらしく、結局は同じ面子で似たような議論を展開するので金太郎飴状態になってしまうのは残念です。その中でフジテレビの『新報道2001』では米国の経済学者クルーグマン博士と与謝野財務相との対談を仕掛けておりましたなあ。ノーベル賞受賞者が100円ショップで買い物をしている姿などは、いかにもテレビ的で面白い見世物でした。

■バラマキ補正予算を正当化するための企画かと思いきや、「定額給付金」政策を零点だ!と一刀両断にされるわ、高速料金1000円制度は経済的にも環境面でも逆効果だ!と叱られるわ、日本政府の甘い皮算用を言下に否定されてしまったのでした。対談に引っ張り出された与謝野財務相はクルーグマンの著書を研究して予算を組んでいるんです、と最後は泣き言みたいなことを言っていましたなあ。奇怪な「基金」に流れ込む莫大な予算やら、麻生コロコロ首相の肝煎りらしいアニメ館やら、とても天下のクルーグマン博士にコメントを求められないような変なものが埋め込まれた補正予算案ですから、短めにまとめたのは番組として正解でした。

■北朝鮮による拉致被害者家族に「詫び状」を送ったとの報道がありましたから、田原総一郎さんご本人から何かコメントがあるかとテレビ朝日の『サンデープロジェクト』をちらちら観ていましたが、北朝鮮関連の話はまったく無かったようです。「横田めぐみさんはもう死んでいる」という発言は、特に視聴者全体に向かって詫びたり説明したりする必要は無いということのようです。その代わり、田原さん得意の討論という名の喧嘩を演出して面白がろうという企画が放送されました。


小泉構造改革を批判する新著を出版した自民党の加藤紘一元幹事長と、小泉内閣の閣僚として構造改革を主導した竹中平蔵慶応大教授が24日、テレビ朝日番組で、激しい非難の応酬を繰り広げた。加藤氏が「改革で地方の疲弊は程度を超えている。あなたの考えには、社会(への配慮)がない」と竹中氏を糾弾すると、竹中氏は「加藤氏は(経済が停滞した)『失われた10年』を作った責任者だ。それを終わらせた小泉氏を文明評論家のように批判するのはおかしい」と反撃した。

■途中で何度も口を挟んで「分かり易く」解説すると称して怒りの炎にせっせと油を注いでいたのは田原さん。まったく噛み合わない議論をどんどん混乱させ、感情的な怒鳴り合いになってしまいそうな危ない司会ぶりでありました。どうやら、田原さん自身がこの二人が議論すべきテーマなど最初から存在していないことを承知で、既に政治的には終わっているから後は野となれ山となれと考えて企画したもののようです。口火を切る時、自分の本と同様にテレビ画面いっぱいに加藤氏の新著を映してちゃっかり宣伝していた田原さんでした。


加藤氏は小泉内閣当時のゼロ金利政策や企業重視の姿勢が、個人の資産目減りや収入減につながり、「今や社会全体がイライラしている」と指摘。これに対して竹中氏は、加藤氏がバブル崩壊直後の1990年代、自民党幹事長などの要職を歴任したことを指摘し、「加藤さんがしっかり不良債権処理をしなかったから、われわれが処理した。後ろに戻れば未来があるというような議論は間違いだ」と述べた。
5月25日 産経新聞

■聞いている方としては、バブル崩壊の実態を把握出来ずに右往左往していた「失われた10年」の責任者も、小泉改革で日本を大きく変質させてしまった学者大臣も、どっちもどっちで、下品な表現ながら目糞鼻糞を笑う類(たぐい)の不毛な喧嘩にしか聞こえませんでしたなあ。

劇場政治の誤算 (角川oneテーマ21)
加藤 紘一
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■同じ日曜日、夜10時から放送されたフジテレビの『サキヨミLIVE』という報道バラエティは、扱う事件より司会者のスキャンダルの方が関心を集めるという変わった経歴を持つ番組らしく、偶に観る度に安上がりに作っているなあ、と脱力してしまう傾向があります。そんな番組でも熱心な視聴者がいるらしく、番組と同時進行でアンケート調査を行っておりました。質問は政治家の「世襲禁止」に賛成か?反対か?というものでした。スタジオでは取り留めのない茶飲み話が続いていたようですが、結果は世襲禁止に賛成だという意見が55%で、禁止すべきではないという意見が45%でした。番組としては分かったような理屈を付けておりましたが、ざっくり言ってしまえば、地方自治体の平均的な投票率と世襲禁止に反対している比率がほぼ同じなのです。

■従って、世襲議員でも問題はない!と主張する人達は選挙となればせっせと応援運動をしたり、必ず投票に行ったりする人達で、世襲議員は怪しからんぞ!と怒って見せている人達は、天気が悪いだの、遊びに行く予定があるだの、かったるいから家でごろごろしているなどの理由で投票には行かない人なのだと考えるとすっきりする数値なのでした。普通は選挙に行かない人がほんの少し考えを変えて投票に出掛けると、さいたま市の市長選挙みたいなどんでん返しが起こるというわけなのでしょうなあ。

■まあ、何にしても日馬富士の初優勝で終わった大相撲夏場所は、久し振りにテレビの有難味を思い出したイベントでありました。それにしましてもモンゴル力士は強い!もしかしたら日本人力士が弱過ぎるのかも知れませんが……。

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マスクが無い! 

2009-05-20 13:54:01 | 健康
■第一次石油ショックの時に起こったトイレット・ペーパー騒動を考えれば、為政者が気楽にあれこれ買えだの買うなだのと言うべきではないだろうに、と思っていたら町中の薬局やドラッグ・ストアからマスクが消えてしまいました。正確な情報を提供出来ないまま真意不明の「冷静に対応」を言いだけの舛添クチダケ厚労相には困ったものであります。高病原性鳥インフルエンザを想定したマニュアルしか用意していない政府の責任なのでしょうが、何がどうなるのか誰にも分からない段階で「季節性インフルエンザのワクチン製造を減らして新型を……」などと口走ったのを皮切りに、鶏を裂くのに牛刀を振り回すような実態を無視した発表が多過ぎるようです。
 
■欧米では早々に新型ウイルスは弱毒性だという事実を踏まえて冷静な対処を行っているというのに、日本だけが大規模な社会生活の制約に踏み切ってしまいそうだったので、関西の地方自治体では先手を打って直談判に及びました。社会の機能が完全に麻痺するような命令を出して「転ばぬ先の杖」などと正当化するわけには行きません。感染者の数を発表する時に決まり文句のように挟み込まれる「マスク、うがい、手洗い」という要請も、マスクはワクチンと同様の製造物だという当たり前の前提を忘れているとエライことになります。

■買い物客の一部でも、通常の購買行動の質を変えただけで店先の品物は姿を消します。生産・物流・在庫の流れは急には変えられないのですから、日頃マスクを使用していない人達の購買行動が変わるに違いない「マスク着用」指示を厚労相という最高責任者が口にするのなら、生産状況と在庫の実態を先に調べておくべきでしょう。それにマスク着用自体に専門家の間では議論が分かれているという話もあります。短期語学留学先のカナダで感染した高校生たちは、母校から急送されたマスクを着用しなかったのも、現地では誰もマスクを使っていなかったからでした。

■欧米には日常生活でのマスク着用は逆効果だという有力な意見があるそうです。飛沫を抑止する効果は認めるものの、マスク自体が感染源になる危険性の方が高いという主張です。あちらではクシャミや鼻水にはハンカチを使う習慣がありますから、マスクは純粋に医療用で病院内でしか使われないのでしょう。


新型インフルエンザの感染拡大を受け、各地の薬局、ドラッグストアなどでマスクの品薄状態が続くなか、インターネットオークションで、マスクの値段が急騰している。薬局などで購入できなかった消費者が殺到しているとみられ、なかには元値から10倍に跳ね上がった商品もでているが、厚生労働省は「冷静に対応してほしい」と呼びかけている。

■某日、近くのドラッグ・ストアに立ち寄った時のこと、足の悪い御高齢の方がマスクは品切れと聞いて「入荷はいつになる?」と熱心に、いささか感情的になって店員さんに詰め寄っていました。持病がある高齢者は季節性インフルエンザでも深刻なダメージを受けるのですから、得体の知れない新型ウイルスが大流行するぞ!と厚労相が蒼褪めた表情で公言しているのですから、精一杯の予防対応を取りたいと思うのは人情です。

■痛い足でもマスクを買おうとやって来る人の姿を見て、本当に大流行が起こったら、マスクや薬品を求めて町中の薬品店がパニック状態になりそうな予感がしましたぞ。中には感染者もいるでしょうから、予防目的で来店して感染するのでは救いがありません。


インターネットのオークションサイトでは、新型インフルエンザ予防に効果があるとされる医療用マスクの人気が急上昇。50枚入りで1200円程度の商品に、1万4000円の値がついたケースもあった。……大阪市の女性(25)は「お店では品切れのところが多くて困っている。神戸に住む親類からもマスクを送ってほしいと頼まれており、インターネットなら外出をせず購入できると思ったがこの値段には驚いた」と話していた。

■オークションですから買い手が値段をつけているのでしょうが、中には「転売」目的で買い漁っている不心得者もいるかも?地元の店先が品切れならばネットで購入しようと思うのは当然です。「品切れ」と聞いただけで不要な不安が広がって行くかも知れません。マスク着用の効果に疑問があると思っている人でも、何となくマスクが無いと心細くなってしまうかも?ある医師はラジオ番組の取材に答えて「マスク着用は感染予防の心構えを強化する」点で効果があると言っていましたから、単なる飛沫予防以外にもいろいろな効用がありそうです。


大手薬局チェーンの担当者によると、関西地区のほか、首都圏などでもマスクは品薄状態になっているというが、チェーン全体ではまだ在庫があるといい、現在は本部の在庫を順次、各店に振り分けているところだという。……メーカーも大量増産をはじめており、神戸市に本社を置く「メディコム・ジャパン」は「通常の20~30倍の注文が医療機関やドラッグストアから殺到しており、増産にあたっているところ」としていた。

■増産を始めるのが遅過ぎるような気がしますが、小泉改革以来の新自由経済の原理が今でも生きているのでしょうか?メーカーに増産を依頼して在庫が増えた段階で厚労相は「マスク着用」を呼び掛けるべきだったのではないでしょうか?マスク泥棒やらマスク取り込み詐欺などが頻発したらどうするのでしょう?


厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の担当者は「メーカーには関西地区を中心に在庫を流通させるように要請しており、まもなく、消費者に行き渡ると考えている。消費者の方には冷静に対応してほしい」と話していた。
2009年5月20日 産経ニュース

■「水際作戦」が呆気なく破綻しているのですから、大阪・兵庫に感染を封じ込めることなど不可能でしょう。関西にマスクを集中させてしまったら次に集団感染が起こる別の地域がパニックになりそうです。こうなったら厚労相の指示など無視して、小さなビニル袋にハンカチを入れて持ち歩き、人混みでは鼻と口を抑えて自分のクシャミの飛沫も押さえ込み、1日に2枚か3枚のハンカチを使うようにするべきかも?こまめに石鹸・流水で手洗いし、ハンカチもこまめに洗濯をする方が、マスクの品切れパニックに巻き込まれるよりも精神衛生上も良さそうです。

■舛添厚労相が安請け合いしていた切り札のワクチンは、予定より1箇月半も遅れることが判明したそうです。分割するより厚労省をもっと役に立つ役所に改良して欲しいですなあ。

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分割すればポストが増える

2009-05-20 10:36:44 | 政治
■「総選挙の顔」として首相に指名されたのに、何だかんだと言いながら解散総選挙は虹のように日々遠ざかるばかり。外交の麻生!で得点を上げて、あわよくば選挙の後も留任?とでも思ったのか、何をしに行ったかのさっぱり分からない外遊の回数ばかりを重ね、内外の問題山積で青息吐息のロシアからプーチン首相を迎えるという千載一遇の機会も功を焦るサモシイ姿勢の足元を見られてロシア側は言いたい事を言い、欲しい物は満遍なく手に入れてさっさと離日。

■それならば、経済再建の麻生!で一発逆転ホームランを狙ってみたら、役人に丸投げして集まった補正予算は矛盾だらけのバラマキばかりの噴飯物。どさくさに紛れて国立漫画喫茶のハコモノまで作る予算が付いたのでした。何やら怪しい雰囲気の中で民主党の小沢代表が追い詰められて、原因不明の支持率上昇!何の事はない、民主党内のお家事情丸出しの出来レースで代表が交代しただけで、あっさりと支持率は急降下。

■弱小派閥のオーナーとしては、本来なら圧倒的な国民的人気を得て政権を強化したいのは山々なれど、小泉時代に騙された!と多くの国民が正気に返ってしまったので愚かな民の熱狂は期待薄。それなら「麻生を守れ!」と大合唱する集団を作らねばなりません。


麻生太郎首相が厚生労働省の再編・分割の具体化を指示し、自民党が次期衆院選のマニフェスト(政権公約)に厚労省分割・再編案を盛り込む方針を固めたのは、国民が社会保障や雇用の将来に強い不安を抱いている中で、国民生活重視の姿勢をアピールする狙いがある。

■「生活が第一」というのは小沢民主党の専売特許だったはず……。かつての橋本行革内閣が着手して悪い冗談だった森内閣で断交された省庁再編でありましたが、どうやら麻生コロコロ首相は「郵政民営化」に反対だったばかりでなく、省庁再編にも反対だったのかも知れません。一体、どこまで遡って歴代自民党政権が積み重ねてきた政策に反対していたのでしょう?森元総理などは、唯一の?自分の業績みたいに自画自賛していた省庁再編だったのに……。森・小泉ラインを敵に回して喧嘩が出来るのか?


自民党は「平成21年度補正予算案で景気対策のタマを撃ち尽くし、訴える政策に乏しい」(自民党経済閣僚経験者)との事情から衆院選の“目玉商品”にしたい考えだが、行政改革に逆行するとの指摘もあり、厚労省分割案が世論の支持を得られるかは不透明だ。

■省庁再編で最も批判が多かったのは国土交通省の巨大化だったはずです。合体厚労省に関しては大して問題視されていなかったような印象があります。どうせやるなら「厚労省分割」ではなく、正真正銘の社保庁解体!が先ではないでしょうか?看板だけ架け替えて年金制度をぼろぼろにしてしまった責任はまったく問われないまま、宙に浮いた年金やら改竄された年金やら、不祥事だらけなのに一切の刑事責任は問われない下部組織を抱え込んだまま、大臣以下、官僚のポストが二倍か三倍に増えるだけの省庁分割などして、誰が喜ぶのでしょう?


与謝野馨経済財政担当相の具体案策定と並行して、自民党は近く発足させる衆院選マニフェストを検討するプロジェクトチームで主要議題とし、マニフェストの柱とする。与謝野氏は19日夜、経済財政諮問会議後の記者会見で「(首相から分割・再編の)指示が雷(いかずち)のように降りてきた」と語った。……

■ギリシア神話のゼウス神か、ヒンズーのシバ神でもあるまいし、雷(いかずち)で省庁再編をするおつもりか?そんなパワーが麻生コロコロ首相に有るのでしょうか?本来ならずっと前に解散総選挙は行われていたはずで、自民党は今頃になってマニフェストを書き始めているとは……。いつの間にやら財政再建も行政改革も封じてしまったのですから、これからせっせと取りまとめる自民党の公約は注目には値しますなあ。


厚労省分割は福田康夫前首相が設置した「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」でも議論されたが結論には至らなかった。「党内に厚労省分割のコンセンサスはあるが、権限やポスト増を狙う他省からも分割要求が出るというパンドラの箱を開けかねない」(同党政調関係者)ためだ。党内には自治行政と情報通信行政を分離する総務省分割論などがあり、混乱回避のためには議論の拡大を押さえ込む必要がある。厚労省を分割しても、新組織が肥大化すれば、「厚労官僚の焼け太りだ」(民主党中堅)との批判を浴びかねない。……
5月20日 産経新聞

■悪評高い「縦割り行政」の弊害は司令塔の総理大臣が閣僚を自由自在に動かす政治主導型の行政が出来れば解決するはずなのですが、縄張り根性に凝り固まった官僚に行政を丸投げしていれば百年経っても修正されることはないでしょう。役人の作文を読み上げ、人事も官僚の慣習に従っているだけなら、省庁を割ろうと合体させようと何も変わらないでしょうなあ。

水際作戦の後遺症 

2009-05-17 12:09:56 | 健康
■全力で、万全を期して、と前のめり気味に「水際作戦」を喧伝していた厚労省の責任が問われることになりそうです。個人差も大きい潜伏期間を考えれば、国際空港で不眠不休の検査活動に従事していた人達の献身的な努力が無駄になるのは分かっていたことで、WHOや海外の専門家からも「水際作戦の効果は期待薄」と指摘されていたのですから、過度に水際作戦の効用を宣伝してしまった罪は重いでしょうなあ。

■その水際作戦の網に引っ掛かったカナダ帰りの高校生たちが学校ぐるみで非難されるような場面もあったやに聞きますが、学校側は品薄を心配してマスクを急送していたそうですし、運悪く感染してしまった生徒や教師の方では周囲の状況を見て着用を見送ったと伝えられているのですから、感情的になって悪口雑言を投げつけるより、冷静に見舞いの言葉を送るべきだったでしょう。

■グローバル化の時代だ!英語力が大切だ!と日本の文科省は笛や太鼓で囃し立て、経済産業省あたりは「観光大国になるぞ!」と外務省やら総務省やらと手を組んで張り切っていたのですから、医師不足と病院閉鎖でただでさえ人手不足の日本の医療体制が張り巡らす水際作戦の網など、最初から貧弱な物になるのは仕方がないことであります。


新型インフルエンザ感染が確認された高校3年の男子生徒の検体が、医師から神戸市に提出されてから詳細(PCR)検査までに3日間かかるなど、今回の騒動では、行政側や学校現場の対応の遅れが浮き彫りになった。

■「対応の遅れ」というのは飽くまでも結果論で、一応は「マスク着用とうがい励行」を呼び掛けていたにしても、通常生活の中ではマスク着用は馴染まない場面は多いでしょうし、のべつ幕無しに丁寧に手を洗ってなどいられませんから、「水際作戦」はパニック予防の方便として軸足は感染者の探索と発見に置いておかねば対応が遅れるのは当たり前です。


感染者が確認された県立神戸高では、11日に5人の生徒にインフルエンザのような症状があったため、校医が校長に報告。13日から全生徒の健康観察を開始し、保健所にも相談したが、「海外渡航者でないなら季節性インフルエンザではないか。これ以上増えるようならまた連絡してほしい」と指導され、簡易検査の緊急度についても「低い」と判断されたという。

■「発熱したら病院ではなく保健所へ」と熱心に広報していても、当の保健所が「水際作戦」を全面的に信頼しているいれば、対応が後手に廻ってしまいます。海外渡航者かどうか?で線引きしているということは、感染者の入国は完全に防がれているという前提があったということになります。


県教委の藤原茂之総務課長は「海外からの帰国者には学校も県教委も神経をとがらせ、報告を求めていたが、国内で2次感染とも思われる発症例が見つかるというのは想定外だった」と釈明した。

■2次感染が「想定外」という学校側も、同様に「水際作戦」を信頼していたことになります。こうした信頼感は、一体、何処から湧いて来たのでしょうなあ?水際作戦に万全を期している!と言いながらも政府当局は「発熱したら保健所へ」と連呼していたのですから、暗黙の裡に感染者の入国は前提されていたのに……。自分だけは最初の2次感染者にはならない、などと変な自信は持たないことが肝要のようであります。日常生活の中では、誰が触ったか分からない品物や家具などに無造作に手を伸ばさねばならない場面が無数にあるのですから、絵に描いたような高熱を発した患者さんからの飛沫感染を避けていれば大丈夫というわけには行きません。

■それにしましても、テレビ報道で紹介された某美術館などが入り口に置いている「アルコール消毒液」は食中毒対策にはなってもインフルエンザの予防には何の効果も期待できないはずなのですが……。大丈夫なのでしょうか?


神戸市医師会が16日に中央区の医師会館で開いた緊急会議では、出席した開業医約50人から「検査キットが足りない」などの声が上がった。感染した男子生徒の検体は、発熱外来からの検体や市内での食中毒の検査のためにPCR検査の機械が使われたため、後回しになった。

■飲食店が多ければ、どうしても食中毒は発生するものです。それ以外にも検査機械を使う通常の検査業務も多いはずです。検査キットにせよ、PCR検査機にせよ、大量に増設されたという話は一度も聞いておりませんなあ。医師も足りない、機械も足りない、残るのは精神論だけになってしまいます。


また、同市北区の男性開業医は感染が疑われる別の県立高校2年の男子生徒の情報について16日午前、市発熱相談センターに電話で相談したが、2時間以上も何の返答もなかったことを明かし、「一般市民と医療機関からの相談を混同している。医療機関からの相談の方が信憑性や緊急性が高いのは明白で、情報の整理がなっていない」と指摘した。
2009年5月16日 産経ニュース

■お役所仕事の典型なのでしょうが、現場の保健所の問題よりも厚労省が作成しているマニュアルや指示文書がプライオリティをきっちりと整理していない可能性が高そうです。「発熱したら保健所に連絡」と連呼してみても、肝腎の保健所の受付・受け入れ態勢が不十分であれば何の役にも立ちません。更に「出物腫れ物ところ嫌わず」と言うのが病気の性質だというのに、深刻な医師不足で夜間診療が危機的な状況になっている医療機関が圧倒的に多いそうですから、万が一、夜間に高熱を発したら恐怖の「たらい回し」が起こる心配もありそうです。小泉改革、恐るべし!

■発熱外来が未整備の地域も多いとも言いますし、ウイルスを封じ込める減圧室の無い地域はもっと多いとか……。本当にパンデミックを想定しているのなら、自動車産業を救済する景気対策の意味でも、トレーラー型のパンデミック対応車両などを大量に発注するようなアイデアは出ないのでしょうか?ハイブリッド・エンジンを搭載するもよし、ソーラー発電パネルを貼り付けるもよし、医療機関が手薄な地域に配置する一方で、集中的な感染が起こった地域に集中的に派遣する車両も必要でしょう。そして、幸運にも国内の感染が収束したら完全に滅菌消毒した上で海外援助物資として感染症に悩む国々に無償て提供するとか……。

■大阪や神戸など人口密度の高い都市部で最初の感染者が出ても、何とか対応できる設備や人員は確保できそうですが、実質的に医療体制が崩壊しているような中山間地や過疎地域で感染者が見つかったらどうなるのでしょう?解散総選挙の争点にでもなったら政権交代は必至ということになるのでしょうなあ。

■マスク着用!嗽・手洗いの励行!そして自分が住んでいる地域の医療体制をもう一度確認して食糧と水を備蓄しておきましょう。病気に対しては油断大敵。政府に対しては信頼大敵かも?

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孔明は居なくても走る仲達 其の弐

2009-05-14 12:06:45 | 政治
正午現在のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点から下落し96円前半で取引されている。前日海外でドルが売られた流れを引き継ぎ、東京市場もドルは全面安。……95.78円まで下落して2週間ぶり安値を更新した。……英フィナンシャルタイムズ紙が電子版のオピニオン欄に「米国のトリプルA格付けにリスク」とする記事を掲載したことが話題となった。しかし「実際に米国がトリプルAから格下げされるというのは考えづらい」(外銀)として、短期筋のドル売りの口実のひとつとして話題になった程度だったという。……

■米ドルに対する信用が失墜するという噂話を補強するような情報が流れると為替相場は乱高下してしまいますから、常にアンテナを張って通貨を売買しているプロたちは情報の真偽を確かめる前に誰かが反応すれば、あっと言う間に雪崩現象が起きてしまいます。後から走り出した連中が新しい情報を補強材料にして更に突っ走る場合もありますから、玉石混交の情報の中に「小石」が紛れ込むことはよくあることでしょう。


……民主党の中川正春・衆議院議員(「次の内閣」財務相)が英BBC電子版とのインタビューで、民主党が総選挙で勝利し政権を担えば、ドル建て米国債の購入を控えるとの認識を示したことも話題となったが、値動きへの影響はなかった。
5月13日 ロイター

■5月10日頃にはドル・円相場は下降局面に入っていたようですから、中川発言が流れる前にドルは売られ始めていたわけです。それが11日に97円台半ばで落ち着いたのも束の間、あれよあれよと思う間に95円台に急降下したのですから、誰かさんが原因を究明したくなるのも無理はありませんが……。独り歩きしてしまったBBCの報道とはどんな内容だったのでしょう?
  

英BBC放送は12日、民主党の「次の内閣」財務相である中川正春衆院議員が、民主党政権が誕生すれば「ドル建ての米国債を購入しない」と述べた、と伝えた。……将来のドルの価値に懸念を表明した上で「ドル建てでなく、円建てならば(米国債を)購入してもよい」と語った。この発言が伝わると、外国為替市場で一時、ドル安が進んだ。日本は中国に次ぐ米国債の保有国。次期総選挙で政権奪取を狙う民主党幹部の発言についてBBCは、重要な政策変更になるとしながらも、民主党が選挙で勝つことはないだろうとの見方を伝えた。
5月13日 ロンドン発共同通信

■最後の部分が重要なのに、噂は「民主党が選挙に勝つかも?」との思惑でドルを売り浴びせたことになります。しかし、その後にドル相場は元に戻っているようですから、仮に中川発言に何らかの影響力があったにしても、半日程度で効き目が無くなった模様です。それでも発言した御本人は寝耳に水で驚いていたようであります。


13日の東京外国為替市場で、円相場は3日続伸。17時時点では前日の同時点に比べ1円21銭の円高・ドル安の1ドル=96円42―45銭近辺で推移している。米国の財政不安が高まり、ドルの信認低下の思惑で対円などでドル売りが膨らんだ。……英BBC(電子版)が英国時間12日に「民主党の中川正春氏が、『民主党が政権を取れば、ドル建ての米国債購入を断る』と話した」と報じたことも蒸し返され、ドルの信認低下の思惑が広がった。中川氏は日経QUICKニュース社の取材に対し、「米国債の購入を停止する考えはない」などと話した。……午後は96円70銭近辺まで円が伸び悩んだ。日経平均株価が反発したことで投資家のリスク回避の思惑が後退し、持ち高調整の円売り・ドル買いにつながった。東京市場での値幅は92銭程度だった。……
5月13日 日経ネット

■たったの「92銭程度」だったと言っても、巨大な資金を運用している人達にとっては莫大な利益や損失につながる場合もありますから、もしも、日本の野党の一議員の発言で為替相場が動いたのだとしたら、それは大変なことでありましょう。まさか、御本人が前もって為替オプション取引の予約などしていなかったでしょうな?!

孔明は居なくても走る仲達  其の壱

2009-05-14 11:38:15 | 政治
■民主党の小沢代表が辞任して、次の代表は鳩山さんになるように仕組まれているかのような話がマスコミを賑わしているようです。5月11日の月曜日、大相撲夏場所二日目の午後5時という時刻に、皆様のNHKが両国国技館からの実況生中継を中断して会見の模様を生中継してからの大騒ぎでしたが、小沢辞任と同じ週の土曜日には次の代表が決まるのだそうです。小沢前代表は自民党の田中派で政治家としての薫陶(くんとう)を受けて人なので、自分が属す政治集団は何が何でも「鉄の団結力」を持っていないと気が済まないのでしょうなあ。
 
■有名な田中角栄の言葉に「政治は数であり、数は力、力は金だ」という身も蓋も無い露骨な金権政治のエッセンスを表現したものがありますが、その後に「金は献金、献金はゼネコン、ゼネコンは西松」という具合に続くのでしょうなあ。「壊し屋」などと呼ばれた豪腕・小沢も、力の源は「カネ」だったと改めて知らされた日本の国民は、「それなら麻生さんでも良いや」と急に投げ遣りな気分になってしまったようです。それも支持率としてカウントされますから「政治は数」という原理に符合します。

■今年2月12日付けの讀賣新聞に『混沌』と題した連続政局インタビューで元自民党幹事長の肩書きで加藤紘一さんが登場していまして、政治家にしておくには勿体無いような実に切れの良い民主党評を語っておりましたぞ。加藤の乱で総理総裁になれる可能性はほぼ無くなったのですから、政治評論家に転じても良さそうです。加藤さんに言わせると民主党というのは「旧社会党の流れの人」「自民党を出た人」「自民党では候補者になれなかった人」「自民党が嫌いだという人」が集まっている政党で、「何が綱領か分からない」のだそうです。

■「政権交代という言葉が綱領、旗のようなもので、交代した途端に崩れる。今のままでは民主党にも未来はない」という結論になります。この加藤紘一さんの分析を前提にしますと、代表選挙を大々的に行って国民的なイベントに仕立て上げれば解散総選挙に向けて大いに勢いがつくのは重々承知で、一切の議論・討論・演説を封じ込んでボロを出さないうちに淡々と事務的に次期代表を決めてしまう必要があることが分かります。「政権交代」「生活だ第一」以外の話をし始めた瞬間に血みどろの怨念話が噴出して収拾が着かなくなって総選挙前に空中分解?

■加藤さん流の分類とは別に、マスコミが愛用している民主党内の「グループ(派閥とは呼ばない、何だかよど号犯みたいですが……)」は、「小沢グループ」というそのものズバリの名前を持つ50人、「政権交代を実現する会」という名の本当は「鳩山グループ」、「国のかたち研究会」という司馬遼太郎の歴史エッセイでも愛読するサークル活動みたいな名前の「菅グループ」、「凌雲会」という何だか戦前の香りがする「前原グループ」、チャイナの毛沢東時代を思い出すような名前の「花斉会」は「野田グループ」、安直さが気になる「リベラルの会」と名乗っているのは「平岡グループ」。あとは名が体を表わしている「旧社会党系」と呼ばれる「輿石グループ」と「旧民社党系」の「川端グループ」という群雄割拠か地方軍閥と呼ぶには小粒な8箇の集団が寄せ集まっているのが民主党。

■少なくとも8種類の政権構想が提示されても良さそうなものですが、それを実行してしまうと寄木細工にひびが入って一挙に崩壊してしまうのかも知れません。


英BBC放送は12日、民主党「次の内閣」の財務相を務める中川正春衆議院議員が、「民主党が政権を握ったら、ドル建ての米国債は購入しない」と発言したと報じ、ニューヨーク外国為替市場でドルが対円で売られる要因となった。次期総選挙後に政権を担う可能性がある民主党の幹部が、ドルの安全性に懸念を表明したことで、ドルに対する不安が強まったとみられる。
5月12日 ニューヨーク発時事通信

■西松建設の疑惑が問題になる前、米国のオバマ新政権が民主党の小沢代表と接触しようと熱心になっていたり、訪日したロシアのプーチン首相も慌しいスケジュールを縫って辞任表明したばかりの小沢前?代表と会見したように、世界の目は日本の政界が大きく変わると踏んで、少しでも有利な先物買いをしようと鵜の目鷹の目状態になっているらしいですなあ。最初は冗談みたいな感じがした「次の内閣」も、本家の英国並みの存在感を示すようになったのか?と思えば政権交代も夢や幻ではないことになるのですが……。

外交の麻生! 其の壱拾

2009-05-13 14:48:55 | 外交・情勢(アジア)
08年6月、モスクワで開かれた原発事業の国際会議。日本政府の原子力委員会の神田啓治元専門委員は、ロシア国営原子力会社「ロスアトム」のスパスキー副総裁から「あの工場を買いたいが厳しいようだ。政府間協定の正攻法でやりたいから協力してくれ」と持ちかけられた。7月の北海道洞爺湖サミットでもロシア側から「日露首脳会談で締結する」との観測が流れ、その後、交渉は異例の速さで進んだ。……日本の技術を導入したいロシアの熱意と、ロシアのウラン濃縮能力を活用したい日本の思惑が一致した。日本が原子力協定を結ぶのは1955年の米国以来7カ国目。かつて日米同盟の仮想敵だった核大国との提携は、半世紀を超える日本の原子力エネルギー政策の転換点となる。
5月8日 毎日新聞

■これほど大きな歴史的転換点に、民主党の内紛を心待ちにしているようなマスコミ報道にはがっかりします。自民党の副官房長官が新型ウイルス襲来!とてんやわんやの大騒ぎをしていた時に、議員の特権を利用して浮気旅行をしていたのがバレたとて、「健康問題」を理由に辞任したのだそうです。まさか「異常性欲」の問題ではないとは思いますが……。その絶倫鴻池さんが温泉・ゴルフ密会ツアーを楽しんでいたのはゴールデン・ウィークのことだったそうですが、同じ頃、民主党の小沢代表は辞任の決意を固めていたのでした。そしてその頃、プーチン首相の訪日を前にしていたロシアでは……。
 
 
第二次大戦の戦勝64周年を祝う軍事パレードが9日、モスクワ中心部の「赤の広場」など国内各地で行われた。最新型の地対空迎撃ミサイルS400が初披露され、米国が東欧で進めるミサイル防衛(MD)計画への対抗姿勢を示したほか、戦闘機などの航空機も昨年の倍以上の約70機が参加、「軍事大国の復活」を国内外に誇示した。……S400は、米パトリオット地対空ミサイルを上回る射程400キロの能力を持つとされる「ロシア版MD」兵器だ。このほか、移動式大陸間弾道ミサイル「トーポリ」なども登場。ツポレフ95型戦略爆撃機などが首都上空を低空飛行した。

■米国が最新鋭のステルス戦闘機を売ってくれないのなら、ロシアから割安の兵器を購入しますかな?軍事マニアの中には高価なくせに故障が多い日本製の小銃よりもロシア製のアサルト・ライフルの方が安くて信頼性も高いぞ!という声があるそうです。しかし、オウム真理教が首都攻撃用に「量産」しようとした製品でもありますからイメージが悪いですなあ。それにしても射程400キロのミサイルというのは魅力的かも?


プーチン首相とともにパレードを観閲したメドべージェフ大統領は演説で、「今日でも軍事的な冒険を行う者がいる。われわれへの攻撃には相応の反撃が加えられるだろう」と述べ、昨夏のグルジア侵攻を思い起こさせた。ロシア政府は昨年、将校の人数削減を柱とする軍改革を行うと表明したが、これに反対する幹部が抗議の辞任に踏み切るケースが続いている。金融危機のさなかにもかかわらず大規模なパレードを行う背景には、軍内部の士気を高める思惑もありそうだ。
5月10日 産経新聞

■革命国家の常として軍部の機嫌を損ねると大変なことになりますから、絶対的な権力を持っていると言われるプーチン首相でも軍部を宥め透かすのは大変なようです。日本に出発する前に、こういう物騒なパレードで威勢のよい演説をしていたという事は覚えておいた方が良さそうです。

外交の麻生! 其の九

2009-05-13 14:48:12 | 外交・情勢(アジア)
■いよいよ解散総選挙に向けて民主党の小沢代表を極悪非道の悪徳政治家として、天下の晒し者にしてくれようと党首討論の開催日を指折り数えて舌なめずりしていた麻生コロコロ首相でしたが、夜逃げ同然の敵前逃亡に遭ってすっかり肩透かしを喰った格好になってしまいました。外交の麻生!の金看板に磨きを掛ける絶好の機会となる?ロシアのプーチン首相の訪日直後に党首討論をセットしたのですから、「細工は流々、仕上げをごろうじろ」と思っていたに違いありません。

■夢の二大政党制を予告するように企画された与党と野党第一党との党首討論ではありますが、政治史に残るような政策討論が行われた験(ため)しが無いのは実に残念なことであります。今回の討論は「100年に1度の経済危機」への対応策でもなく、はたまた「新型インフルエンザ」の予防策でもなく、外交問題でもない、自民党側にもダメージが及ぶ西松建設の不正献金疑惑がぐだぐだと取り上げられると予想されていたので、国民としては小沢代表の辞任によって中止になっても何の痛痒も感じない程度のものでした。

■麻生コロコロ首相としては、外交手腕を誇示して得点を稼ぎ、返す刀で民主党の敵失を誘って相対的に得点を上積みしようとの目論見があったと思われますが、小沢代表が夜逃げ同然に辞任してしまったので自力で得点を稼がねばなりません。間違っても民主党の敵失で得られたはずの得点も上げようなどと考えては行けません。足元を見られたら外交は負けですからなあ。

■どうやら谷内政府代表は麻生外交のアドバルーン役を押し付けられて、自分の信条とは裏腹の発言を強いられた可能性が高いようです。今回のプーチン首相訪日に向けて、麻生外交はそれなりに着々と水面下で準備を進めていたようです。まあ、外交政策としては当然のことなのですが、「すぐさま解散総選挙をやってね」と前任の福田ホイホイ首相から依頼されて登場した麻生内閣となりますと事情は少し違って来ます。どうやら夏のサミットまでは何が何でも総理の座にしがみ付く腹を括っていなければ、これほど大規模な訪日ロシア代表団を迎える大計画は立てられませんからなあ。そうなると、日本の政治記者たちはそれを承知で「解散時期」に関する揣摩臆測を書き散らして読者を騙していたことになりそうです。


厚生労働省は6日、戦後旧ソ連で抑留され死亡したとして、日本側で作成した抑留中死亡者名簿に掲載されている約5万3000人のうち、身元が確認されていない約2万1000人の氏名などの個人情報をロシア政府に提供すると発表した。厚労省によると、名簿掲載者の個人情報を一度にまとめてロシア側に提供するのは初めて。
2009年3月6日 時事通信

■小さな記事でしたが、どうも気になってチェックしておいたものです。実際にプーチン訪日団御一行様が接触したのは厚労省が管轄する分野とは無関係の人達ばかりですが、端(はな)から火種の「北方領土問題」を取り上げたら入り口で話は潰れますから、北方領土の火事場泥棒のイメージと重なるシベリア抑留問題に絡めて交渉の切っ掛けにしたのなら、麻生外交は見直されてもよいかも知れません。

■プーチン来日が近づくに連れてアドバルーンだった「3・5島」案は脇に置かれて本当の目的が徐々に明らかになって来たのでした。


世界随一の原子炉製造技術を持つ日本メーカーをロシア企業が買収しようとし、日本が官民挙げての防衛策で阻止していたことが7日、明らかになった。……07年2月28日、来日したフラトコフ露首相(当時)は安倍晋三首相(同)と会談し、原子力協定の交渉を始めることで一致した。2日後、「ロシアのアルミ王」と呼ばれた富豪デリパスカ氏が、首相随行団から離れ、技術者を伴って日本製鋼所室蘭製作所(北海道室蘭市)を視察した。……

■こんなところに安倍ハライタ元首相の名前が出て来ます。原子力協定は2年以上も話し合われていたことが分かります。今回の外交日程に合わせるように柏崎刈谷原発の無理矢理再起動させたのも、誰かさんの計画に合わせた流れのような気もしますなあ。


原子炉の心臓部の圧力容器は、継ぎ目を極力減らすため巨大な鋼塊をプレスして造る。原子炉は大型化しているが、同製作所は世界最大の約600トンの塊を造る技術を持ち、他の追随を許さない。技術に驚嘆したアルミ王は、関係者に言った。「あの会社の株を取得できないか。買収したい」デリパスカ氏はプーチン首相との親密な間柄で知られる。日本政府に「買収はロシア政府の意向だ」と危機感が走った。半年後の同年9月、日本製鋼所は20%以上の株取得を目指す投資家に目的などの説明を求める「事前警告型」の防衛策を導入。また、経済産業省は、外国資本が航空機・原子力・電気・ガス会社の10%以上の株式を取得する場合、外為法に基づく事前届け出義務があることをロシア側に繰り返し伝えた。

■この買収話が進んでいたのはエネルギーや地下資源の価格が高騰しロシアが我が世の春を楽しんでいた時期でした。ロシアの隣国イランが世界有数の産油国でありながら原子力発電所?を建設しようとする話とも共通するような新しいエネルギー政策の流れがあるのかも知れません。日本が発展蓄積して来た原子力関連の技術は大変なものですが、実際に原発を運転している人員や電気会社の経営陣の中にはそれに見合わないレベルの低い人がちらほら……。北朝鮮の核兵器開発やミサイル技術の向上に日本の人材が利用されているという話もありますから、日本の技術は是非とも国益と世界の平和に貢献できるようにしっかり管理して欲しいものです。

今日は悪日 其の参

2009-05-11 23:50:51 | 日記・雑学
 
北朝鮮による拉致被害者の家族会と支援団体「救う会」は11日、横田めぐみさん(行方不明時13歳)と、有本恵子さん(同23歳)の安否を巡り、テレビ番組で根拠のない発言をしたとして、ジャーナリストの田原総一朗氏とテレビ朝日の君和田正夫社長に抗議文書を送付したと発表した。……田原氏は4月25日放映のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ」で、2人について「外務省も生きていないことは分かっている」などと発言した。……田原氏は「家族のお気持ちは分かる。ただ、情報源は言えないが情報を得ている」と説明。テレビ朝日広報部は「内容を詳細に検討し、誠意をもって対応したい」と話している。
5月11日18時52分配信 毎日新聞
 
■田原氏が言う「外務省」とは誰のことを指しているのか?そして「情報源」とは何処の誰のことなのか?下手をすると『週刊新潮』の二の舞になり兼ねない危ない話のようですが、田原さんは以前に北朝鮮の平壌を訪問して横田めぐみさんの遺骨は本物らしい、という「情報」らしきものを自分自身で演出したことがありましたなあ。ああいう危ないことは、よほど相手を知ってからでないと出来ないものなのですが……。さてさて、この「情報源」が特定もされず公表もされないまま田原氏が頑張ってしまったらどうなるのでしょう?テレビ朝日の「誠意」だけで問題が解決するのかどうか心配ですなあ。

■それにしましても、田原氏の「情報源」は例の病院の裏庭に生えていた木の枝に紐を掛けて……という話を「事実」だと言っているのかどうか?もしも、田原氏も谷内政府代表と同じように、誰かさんのアドバルーン役を演じているのなら、ちょっと面倒なことになりそうですなあ。売り物・切り札が無くなるテレビ朝日は真っ青になっているかも?

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今日は悪日 其の弐

2009-05-11 23:39:43 | 日記・雑学
■懲りずに恥の上塗りをしていりうのは東京電力です。 
東京電力は11日、起動試験中の柏崎刈羽原子力発電所7号機(新潟県柏崎市・刈羽村)で同日午前、炉内の水位が低下した際、温度が上がりすぎないよう水を注入する冷却系システムで二つのトラブルがあったと発表した。……同日午前6時43分、注入する水をためている圧力抑制室(プール)の水位が通常より上がったため、水を抜く作業を行った。また、同53分には、冷却系システムの試験が終わり、止めようとしたが中央制御室での通常操作では停止できなくなった。このため、現場で手動で停止させた。7号機は9日、新潟県中越沖地震で運転停止してから1年10か月ぶりに運転再開し、試運転に相当する起動試験が始まったばかり。
5月11日 読売新聞

■新潟県刈羽は言わずと知れた故・田中角栄さんの領地みたいな場所だったそうですから、活断層が見つかろうと人災が起きようと、「列島改造論」の最前線として建設された原発は、きっと某プロ野球び球団以上に「永久に不滅」なのでしょうなあ。歴史にには城下町や門前町などがありますが、高度成長期に企業城下町という言葉が生まれ、その後「原発銀座」という楽しそうな言葉も発明されたのですが、何故か原発城下町や原発門前町などの言葉は普及しませんでした。政府や専門家は「原発は安全だ!二酸化炭素を出さない!」と大金を使って宣伝し続けているのですが……。


先月25日放送の討論番組「朝まで生テレビ!」で、司会を務めるジャーナリストの田原総一朗氏(75)が、拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんについて「生きていない」と発言したことに対し、拉致被害者家族会などは11日、田原氏と番組を放送したテレビ朝日に抗議文を送ったと発表した。……田原氏は読売新聞の取材に「家族の方が心を痛めたことは大変申し訳ないと思う。(発言には)事実に基づく明確な根拠があるが、情報源を明らかにすることはできない」としている。
5月11日 読売新聞

■いつの間にやら田原総一郎さんは「ジャーナリスト」の肩書きで語られるようになりました。でも、御本人は「自分はテレビ・ディレクターだ」と言い張っているとか……。視聴率を上げるためには何でもするのが信条のディレクターとジャーナリストはまったく違う職業のはずなのですが、新聞とテレビが癒着し記者クラブという泥沼・微温湯に浸かりきった日本のマスコミには、本物のジャーナリストは存在しない!という厳しい意見もありますなあ。

■出版不況の中で必ず数十万部を売る田原さんは、テレビの視聴率を取るのも上手だそうです。個人的に田原さんの本で感心したのは『セックス・ウォーズ』だけだったものですから、田原さんがジャーナリストかどうかを語る資格はないのですが……。
 
 
ジャーナリストの田原総一朗氏が……「朝まで生テレビ!」で、拉致問題交渉が難航する背景について、「2人は死亡した」と主張する北朝鮮側に対し、日本側が生存を前提に交渉しているためと説明。「外務省も生きていないことは分かっている」と発言した。めぐみさんの父、滋さん(76)は「めぐみが死んだという北朝鮮の説明に納得することはできない。外務省の見解についても根拠を示してほしい」。有本さんの父、明弘さん(80)は「死んだという前提で話をされるのは、とんでもないこと。家族は怒り心頭だ」と話している。田原総一朗氏の話 「家族会の方が抗議される気持ちはよく分かる。しかし、私は事実を言ったまでです」
5月11日 産経新聞

■田原さんがこれまでに書いたり喋ったりした「事実」が全部、「真実」だったというわけでもなさそうです。ロッキード事件で田中角栄さんが政治生命を絶たれた理由の推測とか……。件の深夜番組はほんの10分ほど観ただけですが、田原さんは田中均さんを熱心に擁護しているところでした。テレビ番組にも出演してもらっているし共著も出している間柄ですからなあ。

飽食時代の性―セックス・ウォーズ (文春文庫)
田原 総一朗
文藝春秋

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今日は悪日 其の壱

2009-05-11 23:38:38 | 日記・雑学
■世の中には「悪日(アクビ)」という不思議な巡り合わせが集まる日があるものですが、本当に偶然が重なって起こる不運が何の脈絡もなく同時多発的に起こるように見えて、実は「同時」に起こる理由がちゃんと存在しているということもあるようです。変な陰謀話を活用すれば面白おかしい因縁話を作り上げられるのでしょうが、今日は何だか「来るべきものが来た」というだけの情けない話が集まってしまったようです。

民主党の鳩山由紀夫幹事長は11日、小沢一郎代表が辞任することを発表したのを受けて、自身も幹事長職を辞する考えを明らかにした。
5月11日19時27分 産経新聞

■相撲ファンにとっては夏場所2日目、少しでも政治に興味のある人にとっては党首討論の日程が決まった翌日、多くの人にとっては例年に無い連休疲れが身に染みている月曜日に、クラッシャー小沢さんが「時間の問題」と思われていた民主党代表の辞任を決意!政権交代を云々する前に民主党自体が空中分解するのではないか?と多少でも政権交代を願っている人達にとっては旧田中派の尻尾が気になって仕方がなかったこの2箇月。公設秘書が逮捕されたのが桃の節句でしたから、端午の節句に次の動きでもあるか?と思っていたら、小沢代表は連休を利用して熟考したのだそうです。

■「追い腹」と言うべきか後追い型の「抱き合い心中」と言うべきか、鳩山幹事長も辞任だそうです。他にも「小沢続投!」を主張していた人達が動きを見せるかも知れませんが、寄り合い所帯の野党の悲しさで、次の代表以外はマスコミも相手にしてくれそうにもありません。奇怪な補正予算案が国会を通過しようとしている時に、野党第一党が逃げの一手で論戦もなく解散を強要するでもなく、景気対策・外交問題・パンデミック対策などなど、それこそ「朝まで生国会!」を開催して皆様のNHKが延々と実況生中継しなければならないような大問題があるというのに……。


舛添要一厚生労働相は11日午後の衆院予算委員会で、今後の新型インフルエンザ対策に関し、「医者や検疫官の数が限られており、上手な資源配分を考えないといけない。少しずつ国内態勢強化に移っていく必要がある」と述べ、水際重視の態勢見直しを検討する考えを明らかにした。……国内初の新型インフルエンザ感染者の周囲にいた人たちが10日間の「停留」と呼ばれる措置で留め置かれていることについて……停留期間の短縮を検討していく考えを示した。共産党の高橋千鶴子氏への答弁。
5月11日 時事通信

■栗林中将の硫黄島守備隊を思い出すような「水際作戦」でしたが、最初からWHOから「無駄」と言われていたのに、政府が事前に決めていた事だからという理由で自衛隊まで動員しての水際「簡易検査」作戦!手抜かりの連続になったのは、絶対に現場でご苦労しておられる皆さんの責任ではございません。正確な情報とリアリズムを欠いた想像力しか持たない誰かさんたちが、「後は野となれ山となれ」式の最悪パンデミックを前提とした絵に描いた餅同然の計画を作って安心・慢心していたことが問題だったのでしょうなあ。

■「医者や検疫官の数」を掌握しているべき役所は何処なのでしょう?これが強毒性の鳥インフルエンザその物の来襲だったら?と考えたらぞっとします。別に発症したからと言って特別な持病でもない限りは「即死」するようなことは無いのですから、誰もが等しく感染・発症の可能性を持っている事実を前提にして、栗林中将の作戦通りに上陸侵攻を前提にした長期的な撃滅作戦が基本になるのでしょうなあ。実際の歴史では、陸軍の栗林中将を馬鹿にしていたアホな海軍守備隊が勝手に「水際作戦」を実行したばかりに地下要塞計画も長期ゲリラ戦の工夫も一瞬で吹き飛んでしまったのが硫黄島の悲劇となったそうな。イーストウッドの『硫黄島からの手紙』には、武士の情か作品を台無しにしてしまうからか?海軍守備隊の愚挙は描かれていなかったようですなあ。

■「水際作戦」は「不沈艦」やら「常勝軍」と同じ、秀才が夢想する机上の空論らしいですなあ。激烈な艦砲射撃に襲われることはないものの、「水際作戦」の人海戦術に借り出された皆さんには、感謝と共に少しばかりの同情を申し上げる次第であります。舛添クチサキ大臣は、深夜の記者会見に自己陶酔してしまって厚労省と政府が失ったいたリアリズムを再構築する必要性を感じている暇が無いかのようです。


判決終了後、小室被告は弁護士らとともに、大阪地裁近くの大阪弁護士会館で記者会見。「私は大変大きな過ちを犯してしまいました。被害者の方に大変長い間苦しい時を送らせてしまいました。ファンの方、音楽関係の方、多くの方を裏切ってしまいました。深く深くみなさまにお詫び申し上げたい。本当に申し訳ありませんでした」と改めて謝罪し、深々と頭を下げた。
5月11日 産経新聞

■裁判員制度が実施されるとどんな悪逆非道な犯罪をした容疑者でも、泣いたり土下座したり、はたまた化粧や衣装まで素人受けするように工夫して「反省」パファーマンスを繰り広げるようになるのだそうですなあ。あまりにも真に迫っていたら、素人芸と言えどもコロリと騙されてしまいそうです。特に下手な学芸会レベルのテレビ・ドラマやタイアップ映画などを見慣れていたりすると……。

■今でも小室被告に5億や10億のカネを稼がせてくれる「ファン」が存在しているのかどうか?そもそも「ファン」ほど移り気で無節操なものも無いそうですからなあ。下手くそなウソ泣きパフォーマンスを見せられて、毎度御馴染みのマンネリ・パタンに載せて愛だの恋だのを謳い上げられても、誰が本気で聴くのやら……。小室被告は5億円騙し取った相手を訴えていたそうですなあ。盗っ人猛々しいのレベルを遥かに越えた米国風の過剰訴訟の臭いさえ感じる異様な行動も「大変大きな間違い」の中に含まれているのでしょうか?何だか『宇宙戦艦ヤマト』で人生を狂わせてしまった某プロデューサーを思い出すような小室被告の表情でありました。ところで、どうして容疑者になると茶髪や金髪が一斉に黒髪に変わるのでしょう?うっかり真似している中高生はじっくり考えてみた方が良いかも知れませんぞ。