旅限無(りょげむ)

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北京五輪の内と外 その壱百九拾四

2008-04-30 09:12:07 | チベットもの
■北京五輪には世界中から観光客が大挙して押し寄せる!という皮算用をしていたチャイナは、鉄道ダイヤも大幅に改訂されて大量輸送に対応して大いに儲けようとしていたとか……。1970年代にも、ちょっとしたチャイナ観光のブームが有りまして、先見性に富んだ?日本の高校なども「修学旅行」に日中友好を取り入れ始めたのでした。そして、1988年に上海近郊で起こったのが高知学芸高校の教師と生徒73人が死傷した「正面衝突」事故でした。事故発生当時も日本中に「チャイナは危ない!」という危機感が満ち溢れましたが、その後の補償交渉には日本中があきれ返ったものでしたなあ。チャイナ側の提示額は1人当たり110万円!いくら何でも人命を安く見積もり過ぎているぞ!と日本国民が怒ったものですから、渋々、その後450万円まで引き上げて決着したそうです。あの国の人命が余りにも安い事を日本人は学んでいたはずなのに……。

28日付の東方網によると、山東省内で同日午前5時前に起きた列車衝突事故で死者が66人に増えた。けがをしたのは247人で、うち51人が重傷だという。けが人にフランス国籍の4人が含まれているとの情報もある。また北京市から山東省青島市に向かう列車の9両目から17両目が脱線し、最後尾の車両が同省煙台市から江蘇省徐州市を目指して走ってきた列車と衝突したことも分かった。
4月28日 サーチナ・中国情報局

■高知県の高校生たちが巻き込まれた事故も「正面衝突」、パンダ人気と皆様のNHKが日中共同で制作した『シルクロード』番組が大評判になっていた事を思い出しますと、今回の大事故には日本人が巻き込まれなかったのは不幸中の幸いではありますが、皆様のNHKが『青蔵鉄道』特集でチベット観光を煽り、間も無く来日する胡錦濤主席はパンダを2頭ほど連れて来るとか来ないとか……。流れた20年の歳月をどう考えるか?その間、日本の産業界が「空洞化」するほどチャイナへ生産拠点を移して酷い目に遭う企業が続出し、安くて危ない食料品を大量に輸入するようになった日本は、イチコロ餃子殺人未遂事件が起こるまで、本気で北京五輪を祝おうとしていたのでした。

■聖火リレーの騒動から少しばかり話が離れてしまったので、この辺で戻しましょう。


……北京五輪の聖火を乗せた専用機が28日午前0時20分、北朝鮮首都の平壌国際空港に到着した。……北朝鮮を五輪の聖火が訪れるのは……初めて。また、北京リレーの聖火リレーでは、18カ国目の開催地になる。……北朝鮮での抗議活動はありえないとするのが、一般的な見方だ。……中国国旗と北京五輪旗が振られている。プラカードには「中朝の伝統的な親善万歳!」と書かれている
4月28日 サーチナ・中国情報局

■1936年のベルリン大会から始まった聖火リレーですから、当時の半島は大日本帝国の領土でしたし、1940年と44年で世界大戦の騒ぎで大会自体が中止。戦後初となったロンドン大会は1948年に開催されましたが、日本は参加を認めらませんでした。何せ1946年5月3日に始まった「極東軍事裁判」が結審した年ですからなあ。1948年の11月4日から同月12日まで判決の言い渡しが行われたのでした。その年、朝鮮半島の南側に大韓民国が8月に独立、翌9月に朝鮮民主主義人民共和国が対抗して独立を宣言したのでした。つまり、オリンピックどころの話ではなかったわけです。

■次の1952年に開催されたオスロ大会はどうだったかと言うと、1950年6月25日に北朝鮮が越境攻撃して始まった朝鮮戦争が起こっていますから、これまたオリンピックどころではありませんでした。その後もあれこれとややこしい事が続きまして、対南工作が難しくなると日本人を拉致してスパイ教育要員にするという漫画みたいな大作戦を発動!ソウル五輪の開催が決まった時には大韓航空機爆破テロを仕掛けて大成功!……そんな国に聖火を運び込んで何をしようと言うのでしょう?嗚呼。

■北京政府の立場としては、世界の視線を気にして北朝鮮とは「他人の関係」の演出をするのも可能でしょうが、露骨に無視などすると、またまた、何処かで不思議な爆弾テロ事件が起こり兼ねませんから、極普通の隣国関係を言い訳にして通過させたまでの事でしょうが、チベットに対する大弾圧の直後に、一糸乱れぬ大歓迎芝居をやられるのは、本当は困ったことなのでしょう。世界中が「ラサと平壌は似ている」と感じてしまいますからなあ。


北京五輪の聖火は28日未明、ソウルから平壌に到着、午前10時すぎにリレーが始まった。……リレーは各地で抗議行動に見舞われたが、北朝鮮当局は中朝友好を強調するため市民を大規模動員し、国を挙げての歓迎ムードを演出した。……市内の主体思想塔広場で行われた出発式には北朝鮮ナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長が出席。第1ランナーの朴斗翼氏(72)にトーチを手渡した。朴氏は1966年のサッカー・ワールドカップで北朝鮮の8強入りに貢献した国民的英雄。

■オリンピックに所縁のある「英雄」が居ないのはどうして?などと意地の悪い事を言っては行けません。闇の世界でテロ五輪などの悪趣味なイベントが有れば、相当の成績を残せるだろうなあ、などと想像しても行けませんぞ。北朝鮮のような国でしか熱烈歓迎を受けないのがチャイアンの「特色ある」五輪大会なのですから……。


聖火のルートは中朝友誼塔、中国大使館前、平壌大劇場、金日成広場、凱旋門などを通り、金日成競技場までの20キロ。著名スポーツ選手ら北朝鮮市民56人と中国大使館員ら計80人がランナーを務める。……中朝の国旗や花を手に、聖火を迎える沿道の市民は数十万人に上る見通し。北朝鮮当局者は「聖火は花の海を泳いでいく」と語っている。 
4月28日 時事通信

■何とも目出度さ一色の演出でしょう。深刻な食糧危機も、シリアへ原爆技術を拡散させた物騒な闇商売も、将軍様の健康状態も、この際は全部忘れて隣国の五輪大会を祝う北朝鮮であります。そんな将軍様の国の対極に位置するのがフランスという市民革命発祥の国であります。馬鹿馬鹿しい噂話から始まった「不買運動」を苦々しく思っている時に、北京政府に物申すのを避けて、最も忠実な子分が聖火リレーを賑々(にぎにぎ)しく行おうとする直前に、しっかりと冷水をぶっ掛ける報道が流されております。上手ですなあ。案外、フランスでの拉致犯罪に関する報道が、プーチン大統領の「拉致は許せん!」発言に影響しているのかも知れません。
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北京五輪の内と外 その壱百九拾参

2008-04-30 08:01:26 | チベットもの
■テレビ映像に映し出された韓国での聖火リレーは感情むき出しで、「激突」の様子は救いようもない非友好的なものでした。最も先鋭化していたのが脱北者を支援する団体だったとのことですが、命懸けで越境して来る人々を「難民」とは認めず、狩り出しては捕まえて北朝鮮に送り返しているのですから、あの国のやり方を考えれば、これは銃器で人間狩りをするのに等しい蛮行でしょう。自分たちはヒマラヤ山中やチベット地区で越境者や抗議活動を行う者を射殺しながら、脱北者には直接手を下さずに送還された後に待っている恐ろしい運命を承知の上で難民狩りを続けているのですから、韓国の皆さんの怒りは当然でしょうなあ。

■「忠勤」を励んで北京政府に褒めて貰おうと張り切った北朝鮮でしたが、既に裏側が世界中に知られてしまった恐るべき強制と訓練によって演出される集団演劇を、性懲りも無く聖火リレーでも再演して見せられますと、ああいう国々だけを選んで聖火リレーを行えば騒ぎにならずに済んだものを……と思ってしまいますなあ。さすがに北京政府も公には賞讃するわけに行かないらしく、事務的に平壌を後にして、次なるヴェトナムへの対応に追われているようです。国民は1979年の「懲罰戦争」を忘れていませんし、南沙諸島の領土問題という難問も控えていますから、人権問題とは別の「衝突」が懸念されているようです。

■北京政府という後ろ盾をがっちりと繋ぎ止めておきたい北朝鮮ですが、傍迷惑な聖火リレーと併行して動いている「核問題」ではシリアとの密約関係が暴露され、ここに来て急に「拉致問題」でも大きな動きがあるようです。精一杯のヤラセ聖火リレーで北京政府の御機嫌を取っても、自業自得の道理からは逃れられないのでしょうなあ。


北朝鮮にフランス人女性3人が拉致されていたとの情報が最近、仏紙フィガロに異例の大きな扱いで掲載された。拉致事件はフランスではほとんど知られておらず、「悪夢のような話」と読者から驚きの声が上がっている。……拉致問題への国際世論喚起を目指す日本政府の招きで3月末に訪日し、拉致被害者支援団体「救う会」の西岡力常任副会長らに取材。「アジアの富豪の息子」と称する男にパリで誘惑され、中国経由で平壌へ連れ去られた女性を含め、1970年代末に北朝鮮がスパイにフランス語を教えさせる狙いで拉致したフランス人女性が3人いると19~20日付の同紙で2面ぶち抜きで伝えた。……24日には一部メディアが仏外務省に確認を求めるなど反響を呼んでいる。 
4月25日 時事通信

■政治と五輪が無関係なのかどうか?それには議論がありますが、北京政府と平壌とが深い深い結び付きを持っていることは疑いようがありません。フランスは、大統領が五輪大会の開会式に欠席する可能性が高いところに、北京の忠実な子分の北朝鮮が繰り返した拉致犯罪のキャンペーンが始まれば、これは北京と平壌をセットにして「人権問題」に関する大きな運動になるかも知れません。大規模な騒乱が起こったパリ市内での聖火リレーと、何事も起こらなかった平壌市内でのリレーとの対比は、「拉致犯罪」という新しい要素が加わって別の展開を見せるかも?

■先代の金日成さん以来、北京とモスクワを天秤に掛けてしたたかに双方から援助を引き出して生き延びて来た北朝鮮ですから、北京五輪大会を利用して恩を売っておこうと思っているでしょう。その証拠?にロシアは突如として、拉致犯罪の問題を、まるで最近知ったかのように怒って見せたとか……。それも平壌での聖火リレーが行われる2日前のことだそうです。


ロシアのプーチン大統領が26日の福田康夫首相との首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致事件について「許せない行為だ」と述べ、かつてない強い口調で北朝鮮を批判し、拉致問題解決に向けての協力を惜しまない考えを示していたことが明らかになった。北朝鮮に隠然たる影響力をもつロシアの首脳の「怒り」が、北朝鮮を動かす圧力になる可能性がある。……プーチン大統領の「許せない」発言は、首相が北朝鮮の拉致問題に言及した際に飛び出した。首相が「ロシアの影響力を行使してほしい」と要請したところ、大統領は北朝鮮を厳しく非難し、「極東地域の安定のために今後も日本に協力していく」と応じたという。……メドベージェフ次期大統領との「双頭」体制で対外戦略を推進するとみられ、日本政府内には「ロシアの北朝鮮への強硬姿勢は援軍になる」との見方がある。……
2008年4月29日 産経ニュース

■小泉政権時代の「尻拭い」役、正真正銘の貧乏籤を引いてしまった福田首相は、前政権の政策をホイホイと引き継いで発言しているだけなのに、血も涙もない役人追従の能無しダム首相と揶揄されている自分を「カワイソウ」だと思い、支持率はずるずると低下し続けて選挙ともなれば応援にも呼ばれない!追い詰められたホイホイ首相には、公約を忘却するという得意技がありますが、不思議に忘れていない「公約」があって、それが「拉致問題を自分の政権で解決する」というものだそうで、御本人は本気で平壌電撃訪問!を計画しているとの噂が絶えません。

■また、ロシアとしてもチャイナと国境線を画定したとは言え、日本海と西太平洋の戦略を考えれば、平和憲法で手も足も出ない不祥事だらけの日本の自衛隊など眼中に無く、かつて冷戦時代には米国と空と海で虚虚実実の戦いを繰り広げた舞台をチャイナに奪われるという危機感は大変なものでしょう。先日、日本の航空自衛隊が再びスクランブルで大忙し!という報道が有りまして、人騒がせな領空侵犯を重ねているのはロシアだという話でしたが、あれも日本に対する嫌がらせというよりも、チャイナが太平洋に進出しようとしている出鼻を挫く目的が有りそうです。まさか、日露会談で「一緒にやろうね」などと相談を持ち掛けられたとは思えませんが……。

北京五輪の内と外 その壱百九拾弐

2008-04-29 16:32:23 | チベットもの
■どうやら、日中両国政府の間には、「長野市での聖火リレーは大成功」という事前の打ち合わせが出来ていたような印象があります。当日の夕刻には100人規模の「感謝レセプション」が催される一方で、マスメディアもそれに同調するように、「ごく一部の独立派」が聖火リレーを妨害しようとした!という構図で当日の報道が行われたような気がします。あちこちで「小競り合い」どころではない暴力事件が起こっていたことをテレビが伝え出したのは数日後だったようです。何だか、マスコミも両政府が作ったシナリオに妥協していたような気もしますなあ。

■逮捕者の人数は報道されていますが、逮捕理由となっている行動にはそれなりの理由が有る筈ですから、誰が何を考えて逮捕されるような行動に出たのか?それを伝えるのはジャーナリズムの使命だと思います。まあ、単に「チャイナが嫌いだ!」というだけの感情論ならば、報道する価値は少ないでしょうが……。何処で製造して運び込んだのかも分からない巨大な五星紅旗を林立させた人々は、アゴ・アシ付きの動員を掛けられた留学生が中心だったようですが、雪獅子チベット国旗を並べて抗議していた人達の大半は、文字通りのボランティアで、手弁当で参加した日本人が大半でした。つまり、「加油!中国!」を連呼していた側には、特に訴えねばならないメッセージは無く、一方のチベット問題を考える側には、発信したい情報が山ほどあった、という奇妙なコントラストがありましたなあ。

■そもそも、「頑張れ!○○!」という応援は競技会場で行うものなのですから、聖火リレーは競技ではなく儀式ですぞ!どうして、儀式を「応援」しなければならないのでしょう?雨の中、聖火リレーがドッ白けのうちに終了した後も、チベット側は一時間以上も旗を振り、横断幕を掲げて叫び続けたそうですが、「頑張れ中国」大動員組は、さっさと旗を片付けて現場を離れたとか……。その点、隣の韓国は感情豊かで、とても分かり易い対決の構図が出来上がっていたようです。東シナ海と玄界灘を隔てている日本とは違って、否応も無く巨大なチャイナの圧力を肌で感じる半島の歴史は熾烈ですから、待ち構えていた脱北者を支援する人権集団の怒りと憎悪は天井知らずでした。


北京五輪の聖火が28日、韓国から北朝鮮に到着し、平壌で初めてとなる聖火リレー行われた。韓国の聯合ニュースによると、リレーのコース沿いには北朝鮮と中国の国旗を手にした何万人もの民衆が並び、聖火リレーを熱狂的に出迎えた。ソウルで前日行われたリレーとは対照的に、今のところ抗議活動などは全くみられない。聖火はこの後ベトナムに運ばれる予定。
4月28日 ロイター

■日本の聖火リレーの印象は、韓国と北朝鮮との中間に位置するような気がします。北京政府としては、「北朝鮮こそ聖火リレーの手本だ!」とでも言いたいところでしょうが、建国の歴史的背景や事情に多くの共通点を持っている限り、基本的に北朝鮮にあってチャイナに無い物や制度はほとんどないようなものですから、当初、北京政府が想定していた聖火の「世界巡幸」は、何処の国でも北朝鮮と同じような雰囲気で行われると思い込んでいたのではないでしょうか?予想が大きく外れてしまったからこそ、世界各地の華人華僑を動かし、留学生を動員するしかなくなったのでしょう。

■本当に北京五輪の開催が世界中から支持されているのなら、各地で「中国、頑張れ!」の声が湧き上がるはずなのに、自前の仕出しで自国を「応援」しているという世にも珍しい奇怪な現象が起こってしまいましたなあ。こうなりますと、本番の競技大会でもチャイナの選手を応援する外国人はほとんど居ないというトゲトゲしい五輪大会になってしまいそうです。チャイナの選手が敗北する度に、客席から拍手と歓声が起こるようなことになったらどうしましょう?


韓国の李容濬外交通商次官補は28日、寧賦魁・駐韓中国大使を呼び、27日にソウルで行われた北京五輪の聖火リレーで、中国人応援団の一部が韓国の警察官や市民団体に「過激な行動」をしたとして「強い遺憾」を表明した。……寧大使は負傷者が出たことに「遺憾と慰労」の意を伝えたという。韓国警察庁は28日、チベット問題で中国政府に抗議する韓国の市民団体に歩道ブロックなどを投げた中国人留学生(21)を書類送検し、リレーの走行を妨害しようとした脱北者3人を立件(うち2人逮捕)したと発表した。……1万人以上の中国人留学生が沿道で応援。過激化した一部が市民団体などと衝突、10人以上の負傷者が出た。
4月28日 毎日新聞

■チャイナで展開されている「正しい歴史認識」に基づく教育によれば、朝鮮半島はチベット以上に中国の領土に準ずる場所だという事になりますから、それを修正しないままに学生を動員したら、自国に居る時よりも更に行儀の悪いことを仕出かすのは当たり前です。それを知っているからこそ、ソウル市民から「ここは韓国だ!とっとと帰れ!」という的を射た叫びが起こったのでしょう。その点、長野市の皆さんは沿道を埋め尽くした五星紅旗とチャイナ国歌の大合唱に対して、露骨な抗議はせずに眉を顰(ひそ)めて傍観・放置する態度を貫いたのは、日中間の歪んだ歴史論争に対する一つの見識を示したのかも知れません。

北京五輪の内と外 その壱百九拾壱

2008-04-29 08:11:55 | チベットもの
■長野市の騒動は何だのか?と落ち着いて考える暇が無いかのように、マスコミは次の「話題」を追って休むことなく走り続けています。当面は、長野騒動の翌日に行われた保守王国の山口県での補欠選挙が、投票率が珍しく高くなって自公民の推薦候補が大差で落選するという結果を受けての自民党内の陰湿な内紛と、連立相手の公明党からの不平不満が報道されるのでありましょう。こちらの騒ぎが大きくなれば、当然、解散・総選挙!という展開になるわけですが、与党としては解党に等しい大敗北を喫するわけには行きませんから、手段を選ばず往生際の悪さを晒し続けるのでしょう。

■日本の片田舎で起こった小さな椿事のようでもありますが、案外と外交問題にも影響がありそうです。何せ、長野騒動直前に北京政府が煙幕か爆竹のように発表したダライ・ラマ法王(の代理人)との「対話」は、イチコロ餃子以来の嫌チャイナ・ムードを抑え込んで、予定通りに訪日するための撒餌(まきえ)か毛鉤(けばり)だとの見方がもっぱらですからなあ。そこまで大サービスをして臨む日中首脳会談が、面白くも可笑しくもない、単なる北京五輪と洞爺湖サミットの「成功を祈る」だけの虚しい結果に終わったら、「外交の福田!」「チャイナの味方!」の看板さえ降ろさねばならなくなり、地元の支援者しか知らない「ダムの福田!」の小さな看板しか残らないようなことにでもなれば、「居たか居なかったか分からない総理」として政界を去るようなことにもなり兼ねません。

■そんな「末期高齢者重病総理」と会談しても熱は入らないでしょうし、五輪大会を盛り上げる役にも立たないでしょう。いよいよ店仕舞い!と思われる頃になって、「環境の福田!」などと慌ててみても、恥の上塗りになるだけでしょうなあ。既に、閣内からホイホイ外交を見棄てるような発言も飛び出しているようですぞ。


高村外相は27日、フジテレビの報道番組で、チベット問題について、「(中国による)人権弾圧、人権問題が全然ないなんて考えられない。どこまでのものかは分からないが、あるだろう」と述べた。……「中国は内政問題と言っているが、内政問題でも人権の問題だから透明性を明らかにしろと言っている」と説明した。また、外相は都内で記者団に対し、5月に予定される日中首脳会談に関し、「福田首相がどう言うか。その話題は当然出る」と述べ、首相がチベット問題も取り上げるとの見通しを示した。
4月27日 読売新聞

■イチコロ餃子ぐらいなら、「原因も犯人も不明だけど、これからお互いに注意しようね」くらいの玉虫色作文を確認し合えば、何とかお茶を濁せるでしょうが、チベットを筆頭に国内何処にでも「人権問題」を抱えている北京政府としては、これまでの統治姿勢を変えるはずもなく、それだからこそ、ホイホイ首相が困らないように「対話」を始めると発表したのでしょう。「対話を進めて下さいね」「はいよ」というホイホイ対話が来月早々に報道されることでしょう。

■福田首相にとっては、長野市での聖火リレーが「無事」に終わったと、少なくとも胡錦濤主席を胸を張って迎えられる!と大いに安心しているのでしょうが、聖火リレーが通過した後に実に嫌な騒動が続く場合が有りますから、あまりホイホイと喜んでいては行けません。


2008年4月24日、今月9日、米サンフランシスコで行われた北京五輪聖火リレーで、チベット旗を振ったことが原因で、デューク大学に在籍する中国人女子留学生・王千源さんの個人情報が同大のサイトから流出したことを受け、大学側は管理責任を追及するため調査を開始した。……「チベット独立を支持する団体と中国人学生との対話を促したかった。チベット旗を振ってはいるが、人権を訴えただけ。独立を支持してはいない」と王さんは語る。しかし、同大の中国学生学者聯誼会(DCSSA)のサイト上に個人と実家の情報が掲載されたことで、王さんのもとには抗議のメールや電話が殺到したという。

■この王さんの件は、一部のテレビ・ニュースでも取り上げていました。同大学内でチベットの人権問題を訴える活動をしている学生と、チャイナの愛国的留学生とが対立して睨み合いになりまして、一触即発の状態になった時に「中央」位置に進み出たのが王さんだったそうです。人数も多く殺気立っているチャイナ愛国陣営に向かって、冷静に話し合おう!と訴えたのが王さん。この「中間点」に立って正しい事を堂々と語り掛けている王さんの姿を、チャイナ愛国側から撮影すると、チベット支援陣営の先頭に立って何かを訴えている「図」になります。恐ろしい!

■そのややこしい構図のデジタル映像を加工してネット上に掲載する者が続出し、あっと言う間に「売国奴!」の書き込みが増殖したばかりか、誰が何処から引っ張って来たのか?個人情報が罵詈雑言と共に次々とネット上に書き込まれ、祖国の家族に関する情報も加わったので、実家が攻撃の標的になってしまい、王さんの家族は身を隠さねばならなくなったとか……。


同大の学生団体らは、ネット上での個人攻撃を非常に重く受け止め、DCSSAへの調査を大学側に要請。それを受け、学生団体が組織する“学生政府(Student Government)”は委員会を発足し、DCSSAに対して調査と話し合いを行うことを決定した。両者の話し合いは今月22日に行われ、学生政府は現在、DCSSA側に責任があるか否か、またDCSSAを除名するか否かを調査している。なお、決定は今秋にも下される見通し。

■日本の長野市で凄まじいばかりの「動員力」を見せ付けたチャイナ留学生たちの組織力を考えれば、同胞1人をネット上で吊るし上げるくらいは朝飯前!だと分かりますが、名門デューク大学に留学するほどの才媛ならば、徹底的に足を引っ張って優秀な人材を蹴落とす、これまた凄まじい弱肉強食の伝統が米国でも噴出したとも考えられますなあ。中華数千年の歴史は、常に人口過剰と食糧・物資の不足に耐え続ける歴史でもありますから、どんなに「一致団結!」を叫ぼうと、その内実は一歩でも前に出て相手を出し抜こうとする殺伐とした情念が渦巻いているはずです。

■そんなささくれ立った心を持った大群が、仏の加護だけを念じて質素に暮らしている人々の中に土足で入り込んで来れば何が起こるでしょう?それも「チベット問題」の一つの断面ではありますなあ。


王さんを支持する学生団体、デューク保守聯盟(Duke Conservative Union)の執行長ジェイムス・ディールさんは、「多維新聞網」の取材に応じて、「個人情報を流布した人物の特定を進めるべき」との意見を述べると同時に、「DCSSAは内部情報を十分に管理していない」とその責任を指摘した。
2008年4月26日 Record China

■チャイナの「愛国」という言葉の後ろには、「運動」が付き物ですが、実際には「競争」や「強制」などの薄ら寒い言葉が隠されている場合が多いようです。長野市を五星紅旗で埋め尽くす原動力は、決して祖国で五輪大会が開催されることを純粋に喜ぶ気分ばかりでない、という事を日本人も知っておくべきでしょうなあ。
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北京五輪の内と外 その壱百九拾

2008-04-27 23:36:32 | チベットもの
■数日、ブログ記事を書けない所に行っていた間に、聖火はとうとう長野市を何とか通過して、忙しく韓国に降り立つと同時に、大規模な熱い!戦いを巻き起こし、そそくさと絶対に何も起こらない!北朝鮮へ向けて逃げるように移動したようです。各メディアは、これまでの無関心と不勉強を大急ぎで取り繕い、国民に何も伝えなかった反省もせずに、聖火を移送する車やチャイナ軍団のバスを追い掛け回すわ、中継用のヘリコプターは飛ばすわ、チャイナ顔負けの「物量作戦」で長野イベントを報道していたようですなあ。

■元々、基礎となる資料もデータも無い上に、基本的な歴史に関しても知識が不足しているのですから、騒動の源をすっかり忘れて相も変らぬワイドショー型のゲーノー情報上っ面報道ばかりが目立った印象が強かったようです。長野市に吹き寄せられたテレビ局のレポーターと称される人達の顔には、露骨に「騒動」を期待して探し求める、獲物を求める猛獣のような雰囲気を発散していた人も居たようです。

■結局は、誰一人として聖火ランナーを辞退する者が現われなかった?らしいのですが(辞退者の存在は未確認……)、これは世界でも珍しい現象でしたから、第一に特筆すべき点でしょう。その裏側に関しては最新号の『週刊文春』が、カネまみれの五輪大会を抉り出すような悲しい特集記事を掲載しております。「闘将!」だの「心優しい喜劇王」だのと称された昭和の有名人も、或いは「超気持ちイイ」やら「自分を褒めてやりたい」やらで、スポーツ記者を大喜びさせたアスリート達も、人権問題やチベット問題などを考えることさえ許されない、雁字搦めの銭カネ事情が有るのだそうです。80人全員の顔と経歴を知っているわけでは有りませんが、「五輪と政治は別!」「平和の祭典!」以上の発言を求めるべき人は含まれていなかったと思われます。


……長野で終了した聖火リレーの歓迎レセプションが26日夜、東京都港区の中国大使館で行なわれ、河野洋平衆院議長、公明党の太田昭宏党首、福田康夫首相の貴代子夫人ら日本の各界代表約100人が出席した。崔天凱大使は「多くの市民が風雨を冒して街頭を走り、各地の華人華僑と留学生が長野に駆けつけて聖火を応援し、正に多くの人々の協力で聖火リレーが成功した。日本オリンピック委員会、日本政府、長野市などに感謝する」と述べた。

■政府の上層部と「各界代表」が100人もホイホイと大使館に呼び寄せられて、聖火リレーが無事?に済んだことを祝っているというのも、日本独特の風景ではないでしょうか?「4月26日」に関しては、じっくりしつこく考察することにしますが、崔大使が言う「聖火を応援し……」という表現が、すべてを語っていますぞ!大動員を掛けられて集まった6000人とも言われる赤い集団は、一度も「聖火」や「オリンピック」を応援などしていません。彼らは声を嗄らして祖国「中国」に声援を送り続けていたはずです。

■従って、大規模な流血事件が起こらなかったにしても、成功したのは「チャイナ・パレード」であって、五輪大会のリレー行事としては、他国と同様に大失敗!怪しげな資金を渡され、「帰国後」の出世話と「今現在」故郷で待っている親族の話をされて参加せざるを得なくなった可哀想な留学生を含め、長野市に大量に持ち込まれたのは「五輪旗」ではなくて、「五星紅旗」でしたなあ。


北京五輪組織委員会の李炳華副委員長は「聖火リレーは各地でごく少数のチベット独立派分子の妨害を受けたが、いかなる力によっても聖火リレーの成功を妨げられないことを事実が証明した」などと語った。
4月27日 サーチナ・中国情報局

■「ごく少数」を相手にするには、聊か動員の規模が大き過ぎたのではないですかな?たった一本の聖火トーチを守るくらいのことは、何とか「成功」させられるでしょうが、本番の五輪大会を五星紅旗の林で大成功させられると思ったら大間違いでしょうなあ。まあ、その前にチャイナ国内の「地獄のロード」が待っているのですが……。

■それにしましても、たかが子供騙しの聖火リレーが「成功」したからとて、100人もの忙しい身の重要人物を集める意味は何なのでしょう?それ以上に、いそいそと出向いた日本側の参加者は、一体、何を喜びに行ったのか、さっぱり分かりません。これが日中友好の姿なら、イチコロ餃子殺人未遂事件も尖閣問題も、永久に解決などしないのでしょうなあ。

■何故、日本では「成功」したのか?つまり、何故「失敗」しなかったのか?この問題をしばらく考えたいと思います。

北京五輪の内と外 その壱百八拾九

2008-04-24 12:34:49 | チベットもの
■聖火はオーストラリでの恥さらしを終えて、いよいよ羽田に向かって飛び立つそうですなあ。長野市の皆さんは戦々恐々として心は休まらず、落ち着かない日々を過ごしているのでしょう。東京に本部のあるJOCあたりが勝手に決めた企画なのでしょうが、うかうかとお祝い話に乗ってしまった軽率さを反省している様子もない地元の関係者たちが謝罪会見するハメに陥らないように祈るばかりです。

■サンフランシスコ市での聖火リレーが終わった後の米国議会では、北京政府に対する圧力がどんどんと高まっているというのに、日本の国会は山口県の補欠選挙に夢中になっているようです。ここで敗北したら福田オロシが始まるのは確実ですから、北京五輪もチベット問題も関係なく、後(末)期高齢者保険と年金と道路という、実に恥ずかしい失政三点セットが争点だそうです。レベルが低すぎて涙も出ませんなあ。


講演などのために米ミシガン州を訪れているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は18日、同州アナーバーで、中国政府に対し「内密なチャンネル」を通じて書簡を送ったが「前向きな兆しはない」と明らかにした。チベット自治を支援するカナダの「チベットの友人議員団」との会見の際、報道陣に述べた。……ダライ・ラマは北京五輪の聖火リレーをめぐる欧米での混乱の後、書簡を送ったと述べたが、詳細には触れなかった。……
4月19日 産経ニュース

■このまま「ダライ・ラマ一派」の陰謀話で北京政府は突っ張り続けて五輪大会を開催する腹を固めているようですから、欧米から提案されている「対話」を始めると面子を失うことになります。人権問題をうやむやにしたまま対決ムードを引き摺って開会式が始まると、鳥の巣スタジアムのスタンドにチベット雪獅子国旗が出現する騒ぎが全世界に放送されてしまうのでしょうなあ。何処からともなく青色ターミネータ軍団が現れて、「テロ防止」の名目で入場者全員の持ち物検査でもやり始めそうですし、私有物を強引に没収したりすると忽ち「人権問題!」が発生します。

■自爆用の爆弾ではなくチベット国旗を衣服の下に隠して入場しようと計画している人もいるでしょうし、小さく分割して入場し現場でつなぎ合わせるジグソーパズル作戦を準備している人も居そうですなあ。「国境無き記者団」は自慢の手錠五輪デザインの旗を必ず持ち込むのでしょうし、あちこちで不祥事が起こる様子が無数のカメラで撮影されるとしたら、それはそれで北京五輪を象徴する場面として歴史に残りますなあ。


米政府のチベット問題担当特別調整官を兼ねるドブリャンスキー国務次官は21日、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と訪問先の中西部ミシガン州アナーバーで会談した。会談では、チベット亡命政府と中国政府との非公式接触の状況を把握する一方、事態打開のため、ダライ・ラマが中国側との早期対話を求める方針が確認された。……ドブリャンスキー次官は、ロイター通信などに対し、「ブッシュ政権は、チベット情勢を懸念し、解決を促している」と発言。ダライ・ラマは、「よろしく頼みたい」として、米側の支援を求めた。

■「解決を促す」とは何とも頼もしい表現であります。日本の外交姿勢とは雲泥の差?チャイナ包囲網を布くには日本も重要な立場なのですが、今のホイホイ首相では逆立ちしても参加は無理でしょうなあ。


国務省のケーシー副報道官は、同日の定例記者会見で、「会談は、ダライ・ラマと中国政府の対話に向けて、米政府が進めている取り組みの一環だ」と説明。米側はダライ・ラマに対し、最近の中国側との接触状況についても詳しい説明を求めたもようだ。ダライ・ラマは訪米後の記者会見で、交渉ルートを通じた中国側との「非公式接触」を確認していたが、18日にアナーバーでカナダ議員団と会談した後、この対中接触では「前向きな兆候がみられない」と述べていた。
4月22日 産経ニュース

■日本にお立ち寄りの際にも、この程度の話をお聞きすることも可能だったはずなのに、実に勿体無い機会を逃したものです。日本で「対話」を求める外交が本格的に始まっていれば、もう少し格好良い立場を得られたものを、洞爺湖サミットしか頭にないホイホイ首相としては、北京政府の「嫌がること」をして御機嫌を損ねては大変だと、チベット問題を無視してでもサミットを成功させたいのでしょう。でも、人権無視の国が地球環境について真面目に考えてくれるとは思えないのですが……。


中国外務省の姜瑜報道官は22日の定例記者会見で、ドブリャンスキー米国務次官がダライ・ラマ14世と会談したことについて、「次官は中国の強い反対をも顧みずに、我を張ってダライに会い、中国の内政に属するチベット問題についてあれこれいった。極めて誤った無責任な行為だ」と非難し、米国側に厳重な申し入れをしたことを明らかにした。
4月23日 産経新聞

■米国と喧嘩をしてでも五輪大会を成功させたい北京政府は、自分で自分の首を絞めているのも同然なのですが、喧嘩の仲裁に入るべきIOCは「政治とは無関係」だという便利な言い訳を切り札にして逃げ回っているので、米中の喧嘩はどんどん大きくなるかも?勿論、日本は火の粉を浴びたくないので知らん振り!


23日付中国新聞社によると、米ニューヨーク在住の中国人と中国系住民が22日(現地時間)、軽飛行機を利用して「チベットは中国の一部」との示威活動を行った。飛行機は「TIBET WILL ALWAYS BE A PART OF CHINA!(チベットはこれからもずっと、中国の一部だ!)」と書かれた横断幕をなびかせながら、マンハッタン地域など市上空を旋回した。
4月23日 サーチナ・中国情報局

■「マンハッタン上空」とはウサマ・ビンラディンを思い出す最悪の飛行コースですなあ。ビルに突入しなくても、米国の人々は実に嫌な気分になったはずです。「相手の嫌がること」を平気で実行してしまうのがチャイナなのですなあ。


チベット旗 長野での聖火リレーを目前に、チベットの旗が日本で“品切れ状態”になっている。先月のチベット騒動以降、「デモに使いたい」と国内のチベットグッズを扱う店などに問い合わせが相次ぎ、完売する店もある。大人気になっているのは、チベット独立の象徴「雪山獅子旗」。都内の店には騒動後、「旗はありますか?」との問い合わせが連日4、5件あり、すぐに完売。先週60枚再入荷したが、すでに半数が売れた。また19、20日に都内で行われた環境イベントに出店したチベット関連ブースでも旗が一番人気。用意した100枚が初日の午前中に完売した。出店したチベットサポートグループ代表は「『長野に持っていきます!』という若者が多くてビックリ」と話した。

■外務省やホイホイ首相には何も期待できませんが、日本の若者達には大いに期待したいものです。これだけチベット国旗が有名になったのは何よりの幸運であります。長野市が雪獅子国旗で埋め尽くされたら素晴らしいですなあ。少なくとも善光寺さんの境内ぐらいは埋め尽くせるかも?


チベット旗をめぐっては、21日にマレーシアで旗を広げようとした日本人が、中国支持派グループに取り囲まれる騒動が起きたばかり。長野でも同様の事態が想定されるが、在日チベット人男性(34)は「挑発に乗らず、しっかりと“国旗”を振って自由をアピールしたい」と訴えた。
2008年4月24日 産経ニュース

■聖火トーチを握り締めて守り抜いた車椅子の女性ランナーが「英雄」ならば、チベット国旗を守り抜く者だって「英雄」と呼ばれるべきでしょう。北京政府が支援する学生団体が持ち込む五星紅旗よりも数多くのチベット国旗が並びますように!「人海戦術」はチャイナだけの独占物ではありませんからなあ。

北京五輪の内と外 その壱百八拾八

2008-04-24 11:00:52 | チベットもの
■リレーの第一走者は星野監督と決定し、御本人は張り切って走るつもりのようですが、熱血漢の星野監督を応援して来た多くのファンの中から、「辞めてくれ!」という声は出ていないのでしょうか?何だか、ひどく軽薄な野球バカにしか見えないのですが……。萩本欽一さんはコメディアンで、チャーリー・チャップリンを崇拝している人ですから、名作『独裁者』の精神を継承してくれれば、聖火ランナーにはなれないはずです。チャップリンの精神で北京五輪を徹底的に茶化して笑いを取る覚悟があっての聖火リレー参加ならば、大いに期待して笑いの真髄を見守りたいところです。

■萩本欽一さんが笑いを取る前に、既に就任中にもブラックな笑いを誘っていた村山元総理大臣という人が、のこのこと北京に出向いて、苦笑させてくれましたぞ。


中国の習近平国家副主席は18日、北京の人民大会堂で村山富市元首相らと会談し、26日に長野市で行われる北京五輪の聖火リレーに触れ、「日本側の力強い協力によって必ず成功するものと信じている」と述べ、警備強化など万全の態勢で臨むよう暗に要請した。
 長野聖火リレーについては、習氏から発言。善光寺の出発地辞退などの動きを受け、リレーに対する日本の協力にクギを刺したものとみられる。村山元首相は「日本の警察当局や県、市が準備しており、安心してもらいたい」と応じた。習氏は「非常に期待している」と語ったという。
4月18日 時事通信
 
■村山総理と言えば、早朝5時に発生した阪神淡路大震災を8時のNHKニュースで初めて知った!恐ろしいことにその後、午前中のスケジュールを淡々と消化していたという歴代総理の中でも危機意識が非常に薄い人でしたなあ。作業服姿で現場に入った時にも、被災者の皆さんが不安を口にしているというのに、何の根拠も無く「大丈夫です!しっかりやっています。安心して下さい」などと無責任な発言をして回って、後々、随分と恨みを買ったとか……。そのくせ、オウム真理教の都市型テロ犯罪に対しては、驚くほど寛容な発言を繰り返した人物でもありましたぞ。

■そんな人から「安心してもらいたい」などと言われても、返事に困りますなあ。「後期高齢者」の村山さんが、一体、何をしに北京にまで出掛けて行ったのでしょう?老醜という言葉を思い出す元総理の愚かしい外交は、次の総選挙で社民党を消滅させる原因になるかも知れませんなあ。村山さんは北京で油を売っている暇があるのなら、平壌に行ってやるべき事が沢山あるはずなのに……。

■社民党の村山さんが素っ頓狂な外交をするのは笑って済ませられますが、政権与党が間抜けな外交を展開するのはずっと罪が重いはずです。


来日中の楊潔チ中国外相は18日、福田首相や与野党幹部らとの一連の会談で、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世側への激しい批判を繰り返し、日本側の対話呼びかけにはほとんど耳を貸さなかった。楊外相は民主党の小沢代表らとの会談で、「人権問題で中国は批判を受けているが、人権問題を起こしているのはダライ・ラマ側だ。中国国民の命や人権を守るため、治安を強化する必要がある」と強調。自民党の伊吹幹事長との会談では、「西側メディアは、明らかに(中国政府に不利なことを)選んで報道している」と、報道にも批判の矛先を向けた。

■この種の暴言を吐かせるために会談をするのは実に愚かしいことです。小沢さんは田中角栄の元秘蔵っ子として北京との太いパイプを持つ人ですが、こちら側からの意見を聞いて貰えるほどのパイプではないようですなあ。こちらからは資金と情報を一方的に流れているのに、あちら側からは日本の国益になる話すら貰えないのなら、そんなパイプは無い方が良いでしょうなあ。


楊外相は17日の日中外相会談で、「アジアで中国に何か言っているのは、日本だけだ」とも述べており、自民党内では「胡錦濤国家主席来日の地ならしで来日したはずだが、逆効果だ」と反発する声も出ている。
4月19日 読売新聞

■聖火リレーの後に胡錦濤主席が来日するのですから、長野市で何かが起これば、その記憶と気分が濃厚に残っているところに飛び込んで来るわけですなあ。国家主席も青色ターミネータに守られて移動するのでしょうか?
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北京五輪の内と外 その壱百八拾七

2008-04-24 10:59:40 | チベットもの
■聖火がいよいよ日本に接近中!と、まるで大型台風のようなマスコミの扱い方で、オーストラリアから日本に飛来してしまえば、チャイナへの帰還は目前というわけで、既にチャイナの国内では聖火リレーの経路となる都市では、無情な「整理」が始まっているとか……。チョモランマ登頂を含めてチベット自治区内の通過には、世界中の関心が集まっているというのに、北京政府は露骨な情報操作を伴った完全封鎖体制を完成させようと、予防的?先制攻撃を繰り広げている模様です。

米政府系放送局「ラジオ自由アジア」は21日、中国チベット自治区ラサのセラ寺で18日、僧侶約400人が武装警察に拘束されたと報じた。インドのチベット亡命政府が同ラジオ局に明らかにした。拘束された僧侶らは、いったん近くの洞窟内に身柄を置かれたという。中国当局は「チベット族居住区の治安は既に安定した」と対外的に説明しているが、報道が事実なら、僧侶らによる不満が依然、収まっていないとみられる。

■人権問題を指摘する国際的な声にはまったく耳を貸さず「内政干渉」と「領土問題」を言い立てる北京政府の頑なさには呆れ果ててしまいますが、そんな国が開催する五輪大会に協力しなければならない義理があるのでしょうか?傍迷惑な聖火リレーの時刻に合わせて行われる善光寺さんの大法要で読み上げられる犠牲者が増えないことを祈るばかりなのですが……。


また同ラジオによると、中国当局は先週、青海、四川両省などチベット族居住区の僧侶少なくとも計700人を拘束した。チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世への批判を当局に迫られたが、拒んだのが理由という。
毎日新聞 2008年4月22日

■これは逆効果ですなあ。ダライ・ラマ法王を公然と批判できるようになることが、愛国教育の目標とされてしまったら、精神的な「内戦」状態になってしまいますぞ!武器を隠匿していたとのデッチ上げ事件では足りず、とうとう、真正面からお坊さん達を「教育」し始めたということは、相当に北京政府が危機感を強めていることは明らかです。

■こんな野蛮で乱暴なことをしなければ開催できない五輪大会ならば、即刻、中止すべきだと思うのですが、日本も国を挙げて片棒を担がねばならないとは、国際信義というものの胡散臭さを思い知りますなあ。こんなに不愉快で悲しい五輪大会は、モスクワ大会以上の傷を近代五輪の歴史に刻み付けることになるでしょう。小さな個人が出来る「ボイコット!」を考えますと、五輪関係のテレビ番組は絶対に観ない!五輪関連のグッズは絶対に買わない!開催している事自体を無視して忘れた振りをする。等々の消極的な対応と、関係機関に抗議の文書を送る運動に署名参加するという、少しだけ積極的な行動も採れます。

■不思議なことに、北京五輪を現地で楽しもう!という人が日本にも大勢いて、チケット類が大いに売れているとか……。どんな楽しみが待っているというのか、よく分からない話ですあります。


長野市で26日に開催される北京五輪の聖火リレーで、中国側が日本の警察当局に、聖火の伴走者について「公権力は行使しない」と伝えてきたことが23日、分かった。海外の聖火リレーでは、青い服を着た「聖火防衛隊」が妨害活動を阻止しており、警察当局は中国側に公権力行使は認めないとし、伴走者らの役割について説明を求めていた。警察当局は中国側が確約をしても、混乱が生じた場合、予定外の行動に出る可能性もあるとして、長野県警を中心に3000人規模で聖火を厳重に警備。万全の態勢で臨むとしている。
4月24日 時事通信

■聖火を勝手に消したり点けたりするのは「公権力」の行使ではないのか?聖火トーチを何処かに隠してしまうのはどうなのか?長野県警と北京政府との見解が完全に一致しないままリレーを挙行してしまうと、非常にややこしいことになりそうですなあ。あまり勝手な事をしているようなら、青色ターミネータを長野県警が「逮捕!」してしまうのでしょうか?日中友好の精神で、やりたい放題を指をくわえて許すのか?

北京五輪の内と外 その壱百八拾六

2008-04-23 15:04:22 | チベットもの
■世界中に恥を晒して顰蹙を買って回っているような聖火リレーさえも、「禍転じて福となす」奇策を研究中のようですから、この手紙も「恥の上塗り」の材料になる可能性はありそうです。

中国の国際情報紙「環球時報」は21日、「中国には力強い民間外交が必要」と題する大型対談記事を掲載した。出席者は大学教授ら著名学者6人で、北京五輪の聖火リレーへの妨害活動に対抗した海外の中国人留学生らの一連の抗議デモが「欧米社会の偏った世論に対し大きな反撃となった」と高く評価。抗議デモを「民間外交」の一形態ととらえ、「政府はこうした民間外交をもっと積極的に活用すべきだ」と主張した。

■海外の留学生・華人・華僑を総動員しているのは北京政府なのでしょうから、それを「民間外交」と呼ぶのは乱暴な話です。「妨害」に対する「反撃」という殺伐とした構図でしか「民間外交」を考えられないような国が、五輪大会を開催する資格を持っているとはどうしても考えられません。


中国はこれまで、このような「民間」の力をあまり活用してこなかったが、同紙は中国共産党機関紙「人民日報」の傘下にあり、「民間外交」が今後、中国の有力な外交手段の一つとなる可能性もある。もっとも、「民間外交」を担う組織は、実際には背後で中国政府が影響力を行使しているとみられ、政府の「別動隊」の色彩が濃い。

■子供や学生を重視するのは社会主義革命政権の得意技!チャイナも文化大革命に少年少女を大量に動員しました。当時、北京を訪問する機会を得た大宅壮一氏が「ジャリ革命」と名付けたのは有名な話です。旧ソ連も子供を重視して赤いスカーフに象徴される洗脳教育に熱心でした。今でもチャイナでは赤いスカーフを巻いた可愛い小学生に会えますなあ。

■国内の権力闘争や人民教育のためには徹底的に「民間」をこき使って来た伝統はそのままに、続々と海外に出て行った人民の数が十分に増えたので、これを「民間外交」に利用できる時代がやって来た!というわけですなあ。でも、留学生であろうと労働者であろうと、それぞれの在外生活には個人的な付き合いというものが有りますから、各個人の人間関係を破壊させる権限は誰にも無いはずなのに……。


出席者は、チベットと五輪問題で中国の外交が逆境にあることを認めたうえで、中国を批判している主な勢力は、欧米諸国の政府ではなく、人権団体と称する民間組織だと指摘。中国政府がこれらの組織を相手にすることは「大砲で蚊を攻撃しているようなもので、対応しきれない」と論じた。その一方で、欧米などで最近、中国人留学生が起こした大規模なデモが、海外の反中勢力に対して「大きな圧力となった」と結論づけた。

■チャイナの外交が「逆境」にある原因に、イチコロ餃子が含まれていない!数々の有毒物質が混入した製品も、知的所有権を無視した商売も、外交問題には含まれない!しかもチベット問題に義憤を感じているのが特定の「人権団体」だという解釈もヒドイですなあ。それなら、今の日本人は半数以上が何処かの「人権団体」に所属していることになりますぞ!400万人ものチベット人を「少数民族」と呼ぶ国ですから、1000万人程度の日本人が騒いでも、やっぱり「少数」の特定団体として処理してしまえるのでしょうなあ。欧米となれば、チベット問題に関心が無いと言う人間を探すのは至難のワザでしょうに!


北京師範大学の張勝軍教授は、「民間外交」を展開することは、政府にとって外交上のリスクがないことがメリットだと強調。「例えば、個別の韓国人が日本大使館の前で、指を詰めたり、焼身自殺を図ったりしても、韓国政府と関係がないことから、外交上のリスクが全くない」と、人道感覚の希薄さを露呈する表現まで使い、これからはもっと積極的に「民間外交」を推進すべきだと提案した。

■エッ!これからチャイナの留学生は「指を詰めたり」「焼身自殺」をしなければならなくなるのでしょうか?何かと言うと「人海戦術」を発動するのは、もういい加減にして欲しいですなあ。何やら珍奇な物のように「人権団体」に言及していますが、早くチャイナの国内でも「人権団体」が自由に組織出来るように法律の改正に努力すべきでしょう。そもそも、北京五輪の開催が決定した時には、人権問題を解決する動きが生まれそうだなあ、と能天気なIOCは希望的観測を述べていたはずです。


……北京大学の余万里助教授らは、政府は協力してくれるNGO(非政府組織)などに対し、資金やノウハウの面で援助する必要があると指摘した。同時に、「民間外交」を展開するためには、民間組織が愛国的で政府の外交方針をよく理解していなければならないとし、そのためには、政府による基礎教育が必要だとの意見も出された。最近の欧米での留学生デモでも、中国政府の関与を示す情報が流れている。

■日本からの留学生も増えている北京大学には、こういう助教授が居るということをよく覚えておくべきでしょう。政府が教育して資金を提供し、活動内容まで指導するのなら、それは「民間外交」とは誰も認めない!という道理が分からない助教授のようです。一体、何を研究している人なのでしょうなあ。


中国紙などの報道によると、19日にドイツのベルリンで行われたデモで、数千人の参加者にマニュアルが配られたという。このマニュアルは「ナチスを連想させる行為をするな」「外国の指導者を侮辱してはならない」などと指示、中国のイメージを損なうことや、ドイツの法律に触れることを厳禁したという。参加者には交通費が提供されたといわれ、その動員力と資金力から、背後で中国政府が影響力を行使しているのは間違いないとの指摘もある。
4月22日 産経新聞

■50年以上も国内で培った集団行動の指導方法を、何の迷いも無く外国でも採用してしまうのは、相手国の主権を侵しているのではないでしょうか?チャイナ国内では、留学生だからと言ってスパイ容疑を免れるわけではないのですから、チャイナからの留学生を受け入れている国でも、国内治安を乱すことをやった工作員学生はどしどし逮捕しても良いはずです。北朝鮮が韓国や日本に送り込んでいる工作員と、チャイナの愛国学生とは極めてよく似た存在になりつつあるようですなあ。危ない、危ない。

北京五輪の内と外 その壱百八拾伍

2008-04-23 12:58:06 | チベットもの
■「オリンピック」と聞くと、何故か家電メーカーが騒ぎ出し、国民が一斉にテレビを買い換えねばならない雰囲気を作って宣伝合戦を繰り広げますが、それは高度成長期と重なった東京オリンピックの記憶が、少なくともメーカー側に強く残っているからなのでしょう。それに輪を掛けて五輪は商売になる!と強く思い込んでいるのがマスコミ業界なのでしょうが、今回の北京五輪は様子が違っているのにやっと気が付いてしまったようです。純粋に出場する選手に親近感を持って熱心に応援する気になれない不思議な雰囲気が日々強まって、代表選手が決まった!とスポーツ・ニュースが五輪気分を煽ろうと頑張っても、大会での活躍を祈るよりも、「本当に出場するのかいなあ?」と心の何処かで「ボイコット!」の可能性を考えてしまうこの頃ではないでしょうか?

■テレビ業界と家電メーカーとしては、五輪を利用して地上デジタル放送への切り替えに向けた大規模なテレビ需要が発生すると見込んで、肛門の疾病を思い出しそうな「チデジ」の大キャンペーンを展開しておりましたが、聖火リレーの騒動が拡大して行く中で「チデジ」の掛け声がどんどん小さくなって来たような印象ですなあ。薄型テレビの新製品を投入している大手メーカーも、いつもなら五輪大会に便乗した宣伝を盛んに行うはずなのに、何となく自粛ムードが漂っているようにも思えます。

■石原都知事が『太陽の季節』を懐かしんで、東京五輪をもう一度!と唐突に言い出したものの、チベット騒乱が起こる前に露見した都営銀行の破綻問題が禍したのか、御本人も五輪開催を口にしなくなったようです。五輪憲章の中には、政治問題とは無関係に4年に1度の大会を開くことを決めた条項が有るそうですが、「商売」と五輪大会との関係となりますと、明確な禁止事項は書かれていないとか……。でも、国家行事になってしまった五輪大会が、政治と無関係に開催されるはずもなく、スポーツ産業が巨大化したのですから、極端な商業化が起こるのも当然のことでしょう。

■聖火リレーが「政治化」し、次には不買運動という「商売」の問題に発展しても、IOCはただ傍観しているだけのようです。「政治とは無関係」だと建て前を繰り返すしか能の無い組織だから仕方がないのでしょうなあ。開催国は自業自得でしょうが、協力を強いられる国々は実に馬鹿馬鹿しい片棒を担がされるのに、若干の不満を感じますぞ。


2008年4月21日、フランスのボンスレ上院議長が上海を訪問、市障害者スポーツ訓練センターでパリの聖火リレーで聖火を守ったことで有名になった「車椅子の天使」金晶さんと会い、サルコジ大統領からの手紙を手渡した。カルフールの不買運動など悪化する反仏感情を和らげようとの狙いがあると見られる。中国新聞社が伝えた。

■外交は「狐と狸の化かし合い」とは言いますが、大統領が乗り込んでトップセールスに成功した直後に聖火リレーの騒動が起きて、五輪開会式への出席を白紙に戻した手際の良さは、チャイナから見ればフランスの手玉に取られて弄ばれたとしか思えないでしょう。でも、仏国政府が聖火リレーを批判したことは一度も無いし、サルコジ大統領自身も北京五輪は聖火については何も言っていません。人権問題に関する極めて常識的な発言をしただけなのに、カルフールが不買運動の標的になってしまいました。

■ここでいきり立って不買運動のお返しを始める不毛な喧嘩をするよりも、さっさと和解を求めて下手に出た方が、傷を広げずに済ませる最善の策なのでしょうが、ワザとらしく英雄に祭り上げられた1人のランナーに手紙を送るとは、フランス外交の真髄を見る思いがします。サルコジ大統領はどんな手紙を書いたのでしょう?


敬愛する金晶さんへ

4月7日のパリ聖火リレーであなたが襲撃を受けたことに私も驚きました。あなたが見せた勇敢な行為に対し、あなたとあなたが代表する国家に敬意を表します。事件の翌日にも同様のことを言いましたが、今回の事件で中国人の民族感情が傷ついたこと、特にあなたが卑劣な襲撃を受けたことに怒りを覚えたことはよくわかっております。私は事件の犯人を強く非難するものです。

しかし、事件は極少数の者によって起こされたものであり、フランス人全体の対中感情を代表するものではないことを信じてください。あなたが受けた苦しみを埋め合わせるためにも、ぜひ近いうちにフランスに招待させてください。

フランス大統領サルコジ

2008年4月20日パリ

4月22日 Record China

■こういう場合は、自分も「驚き」被害者側に付いてしまうのが一番!車椅子の上で身を硬くして聖火トーチを抱いているしかなかった彼女の姿勢を「勇敢」だと持ち上げるもの外交辞令として及第でしょう。しかし、「あたなが代表する国家に敬意」を表する理屈が分かりませんなあ。傍迷惑な五輪大会を強引に開催したばかりか、頼みもしない聖火リレーを押し付けられた側が、どうしてあの国に「敬意」を表するのでしょう?チャイナの人民は納得しても、フランス国民の中には「卑屈だ!」の声が上がるかも知れませんぞ。

■ちょっとした外交辞令でも、国威発揚に利用できる一言半句を切り取って鬼の首を取ったような話に膨らませる悪い癖がある国ですから、サルコジ大統領名が記された手紙の利用法は注目しておくべきでしょう。福田ホイホイ首相も他人事ではありませんぞ!
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チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

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北京五輪の内と外 その壱百八拾伍

2008-04-22 12:57:08 | チベットもの
……北京五輪聖火リレーに合わせ、中国チベット自治区などで起きた暴動での犠牲者を追悼する法要がリレー当日の朝、国宝・善光寺の本堂で営まれる。主催する市民団体が21日、記者会見で明らかにした。在日チベット人も参加する見込み。

■嗚呼、こういう素晴らしい企画は、リレーの出発点になる要請を受けた時に、やんわりと拒絶する仏教的な「方便」として思い付くべきでしたなあ。非常に残念なことですが、深く考えずに、気楽なお祭気分で引き受けてしまった事実は消えません。


追悼法要は、市民団体「チベット問題を考える長野の会」(野池元基代表)など2団体が主催し、善光寺の僧侶ら有志でつくる「平和を願う僧侶の会」(若麻績=わかおみ=敬史代表)も協力する。若麻績代表は「国や宗教などの差異を超えた平和な世界の実現を訴えたい。国籍を問わず行いたい」と開催理由を説明し、追悼法要はチベット人だけではなく、中国人らも対象にするという。

■国際平和を願って活動している大小の組織や個人も多いのですから、もっともっと早い時期にこうした企画を立ててマスコミも協力して広報に努めていれば、もっと多くの人達が、ちょっと特別な連休を過ごせたに違いありません。国籍も宗派も越えて集まった老若男女が善光寺さんの境内を埋め尽くし、その一方で聖火リレーの沿道は閑散としている!そんな風景を見たかったですなあ。まさか、真っ赤な国旗を押し立てた愛国学生が善光寺さんの追悼法要を「粉砕」しようと突入乱入することも無いでしょうし、もしも八つ当たり愛国留学生が現われたら、大きく門を開いて一緒に祈るように誘うのが仏教者としての務めでしょう。


追悼法要は26日午前6時半、本堂前に集合し、同7時から本堂で、同団体などが現地の報道などを通じて把握した犠牲者60人以上の名前を読み上げて弔うという。野池代表は「非暴力で、平和的に活動を行いたい」と語り、法要後には、新たに決まった出発・点火式会場や沿道などで「チベットに自由を」などの横断幕を掲げる方針。
4月21日 毎日新聞

■法要自体が予想外の人数を集めてくれたら、沿道に移動して横断幕を広げる必要もなくなるのではないでしょうか?せっかくの法要ですから、26日の早朝から深夜まで、ちょうど奈良東大寺の二月堂での荒行のように、読経を続けたらどうでしょう?参加者には本堂の外でも中でも、好きな場所で好きな時間に参加して合掌して貰えば、膨大な延べ人数を数えることも出来るでしょう。聖火リレーの1日前から始めて、傍迷惑な聖火が日本を去るまで法要を続けるくらいの粘り強さを示して欲しいところです。ついでに、4月26日を平和祈願の日にしてしまったら如何でしょう?

■これから長野市で起こるかも知れないことを、あれこれ想像逞しく書き立てているメディアもあるようですが、欧州とアジアは違う事をインドでの聖火リレーが示したとも言えそうですから、さらに日本は違う!というところを見せて欲しいものです。
 
 
世界最多の約10万の亡命チベット人が住むインドの首都ニューデリーで17日夕(日本時間同日夜)、北京五輪の聖火リレーが行われた。治安当局は厳重な警戒態勢を敷き、懸念された妨害行為など大きな混乱はなかった。一方、チベット人ら約3500人は中国当局によるチベット暴動鎮圧に抗議して独自のリレーを実施した。

■北京を振り出しに始まった聖火リレーを完全に無視してしまうというのも、なかなか面白い試みです。種火からいくらでも聖火トーチは作れるのですし、わざわざギリシアの遺跡で採火しなくても、それぞれが聖なる場所と思っているところで点火してもよいはずです。インドで行われた抗議の聖火リレーは電気仕掛けになっていたとか……。本物?が消えたり点いたりしているのを皮肉っているとしたら、なかなかのアイデアであります。


聖火は大統領府前からインド門まで約2キロの直線を走った。周辺一帯は封鎖され、約1万6000人の警官らが展開。走者は数十メートルごとにトーチをつなぎ、中国の聖火警備隊が並走した。観客として入場が認められた政府系学校の生徒や中国政府関係者らは中印両国の国旗を振り、「平和の祭典」を演出した。

■これこそ文字通りの「演出」であります。レニ・リーフェンシュタールが残したベルリン五輪の映像は、決してドキュメンタリーではなかったそうで、撮影用に競技を終えた選手を呼び出して飛んだり跳ねたりさせた「演出」場面も多いとか……。本番の試合とは何の関係も無い聖火リレーの段階から、こんなに露骨な「演出」を 北京五輪の記録映像にも、数々の「演出」場面が織り込まれるのでしょうなあ。


■たったの2キロでも、聖火リレーの意味が有るのか?意味があるのなら、1キロでもよいでしょう。さらに100メートルでも、10メートルでも「走ることに意義がある」のならば距離は問題にならなくなります。長野市では、何が何でも走らねばならない義理があるのなら、「1メートル」ぐらい走って終了してもよさそうですぞ。


リレーは約30分で無事終了したが、当局が中国政府の意向をくむ形で一般市民を沿道から排除したことに、市民からは「誰のためのリレーか」と不満の声が上がった。インド門に近付くのを制止された元公務員の男性(73)は「そんなに大事な聖火なら金庫にしまっておけ」と治安要員に抗議した。

■まったくその通り!そんなに大事な聖火なら、無名戦士の墓などに灯される不滅の炎のように、北京の天安門広場を雨の日も風の日も、半永久的にリレー行進させておけば良いかも?人民解放軍の中から担当者を選んで、世界中が北京五輪の苦い思い出を忘れ去ってしまわないように、国営放送テレビの最初と最後に短い実況中継場面を入れて発信し続けるくらいの意地を見せてくれるかも知れませんぞ。


……亡命チベット人らは聖火リレー開始前、市内でチベット暴動鎮圧の犠牲者を弔う「鎮魂の聖火」リレーを行い、電池で光る「聖火」を手に約5キロを歩いた。参加したインド人学生のプーシャン・シンさん(21)は「インドが世界最大の民主国を自任するなら、反対意見を排除する見せ掛けの成功に甘んじてはいけない」と政府を批判した。AFP通信によると、ニューデリーの警察当局はこの日、抗議デモに参加するなどしたチベット人約180人を拘束した。
毎日新聞 2008年4月17日

■学生のシンさんは、実に立派な見識を持っていますなあ。長野市でも、これくらいの事をビシッと答えられる若者が出現して欲しいものです。拘束された180人のチベット人は、暴動や破壊行為をしたわけではないので、短時間で解放されたものと思われます。北京政府に対する義理で、この程度の「人数」を確保しなければならなかったのでしょう。日本政府に対しては何人くらいの「注文」が来ているのでしょう?
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北京五輪の内と外 その壱百八拾四

2008-04-22 09:13:39 | チベットもの
■チャイナでは自主的な「愛国」運動が盛り上がり、北京政府が心配するほど過熱し始めているとか……。江沢民時代に歴史的な「抗日」を土台に据えて未来志向の「反日」で味付けした「愛国教育」を徹底的に推し進めた大いなる成果なのですから、今のところは江沢民路線を継承する立場を捨てていない胡錦濤政権としては、反政府暴動に発展しない限りは「弾圧」するわけには行きません。報道される映像を見ると、小中学校時代を通して「愛国精神」を刷り込まれ、叩き込まれた世代の顔が並んでいますなあ。皆、素直に愛国教科書を音読暗記し、何百回も熱烈な愛国作文を書き続けた世代なのでしょうなあ。

■聖火リレーが長野市に来る前は、フランスが吊るし上げの標的となって留まるところを知らない様子ですが、長野市でのイベントが終わった直後からは、標的がコロリと変わる可能性があります。5月には胡錦濤主席が訪日することになっているのに、米国帰りの李大統領を迎えて日韓首脳会談を行わねばならない福田ホイホイ首相も、「外交の福田」を宣伝して支持率を少しでも上げておきたいところですが、会談内容が経済分野に留まらずに北朝鮮がらみで軍事関連分野にまで広がると、日中首脳会談がとげとげしいものになってしまうのは、とても困る福田首相であります。

■補欠選挙が近づく山口県に出掛けて、「ガソリンは値上げする!」「後(末)期高齢者医療保険はよいものだ!」「年金はそのうち何とかなるだろう」と、候補者が蒼褪める本音をホイホイ吐いて支援者や聴衆を凍りつかせたのだそうですが、何が何でも今年度分の道路特定財源を確保するつもりの福田内閣は、長野市の「道路」を封鎖して実施する傍迷惑な聖火リレーの警備費用も「道路関連」と解釈して有り余っている特定財源から拠出するつもりなのでしょうか?


米サンフランシスコの地元紙が18日報じたところによると、同市で9日に行われた北京五輪聖火リレーについて、市当局はコースを変更してデモ隊との衝突を回避した結果、費用を抑えることができたとの概算をまとめた。……費用は72万6400ドル(約7500万円)。ニューサム市長は、リレーを予定通り続行していたら大量の逮捕者を出し、市の負担は「膨張していた」と指摘、変更した判断の正当性を主張した。
4月19日 時事通信

■聖火が行方不明になってサンフランシスコでも7500万円ですから、現段階でも堂々と沿道をリレーする予定の長野市では、この傍迷惑な行事の警備にどれほどの臨時支出をさせられることやら……。インドでは亡命チベット人達が、独自の聖火リレーを行ったそうですが、そちらは相当に安上がりだったと思われます。やっぱり、「素直には祝えない!」という気持ちを表すには、取って付けた様な日中友好ムードを莫大は費用で警備する馬鹿馬鹿しいリレーなどをするよりも、聖火の種火を善光寺堂内の法灯に移して、参加者全員でそれぞれの思いを込めて祈りを捧げるのが、一番安上がりで日本らしい態度を示せるような気がします。

■このまま強引にリレーを行えば、そのワザとらしさは24時間テレビが続けている売名マラソンを越えてしまうかも?


長野市で26日に行われる北京五輪聖火リレーで、善光寺が出発地点を辞退した理由にもなったチベット問題について、全日本仏教会(東京都港区)は「平和的に解決してほしい」とする要望書を関係先に送付できるよう準備を進めている。同会には全国の仏教各宗派などが加盟。チベット仏教関係者と交流がある。昨年11月には、全日本仏教徒会議にダライ・ラマ14世を招き、「信じる心と平和」との演題で特別記念講演を開いた。
 チベット騒乱後、ダライ・ラマ法王日本代表部からは「関心を寄せてもらっていることに感謝する」と言われたという。既に「対話による問題解決の可能性を模索するよう強く求める」との声明を出しているが、事態を重くみて、さらに要望書をまとめることにした。ホームページなどにも掲載する予定で、「一般の人にも賛同してもらえる呼び掛け」にしたいという。 
4月19日 時事通信

■偶々、善光寺さんが出発点に予定されていた事が、日本の仏教界を動かす切っ掛けになったのならば、これこそ不幸中の幸いというものです。でも、ダライ・ラマ法王御自信が来日したのが10日前だったのですから、その時に、御本人と同席の上で声明文を読み上げ、チベット語と英語に翻訳した文書を手渡すくらいの行動力が欲しかったですなあ。

北京五輪の内と外 その壱百八拾参

2008-04-21 16:33:20 | チベットもの
■長野県警の警備体制に冠する記事の続きです。出発地点の変更に伴って、リレーのコース全体を見直さねばならず、これだけ悪評が立ってしまったのですから、突如としてコースを押し付けられたりしたら、商店も住宅地も大騒ぎでしょうなあ。どっと押し寄せるマスコミの中にも行儀の悪い者が居るとか……。長野市も、もっと別の方面で注目されたかったでしょうが、こうなっては災難以外の何ものでもありません。

県警は当初、交通部を中心とした交通規制などを行う予定だった。しかし、欧米各国で聖火リレーへの妨害が相次いだため、各国と同様にランナーを取り囲んでガードすることを決めた。一時は機動隊員5人程度の伴走を考えていたが、警察庁が警備態勢を増強する方針を示したことなどもあり、さらに人数を増やす方針だ。
4月16日 読売新聞

■マラソン大会であろうと、通常のデモ行進であろうと、交通課のお廻りさんで十分に対応可能のはずなのですが、まるで予告付きの暴動を待ち構えているような騒ぎになって、マスメディアもあまりの馬鹿馬鹿しさに取り上げ方に苦労しているようにも見えます。物が壊れたり怪我人が出るような騒々しい聖火リレーなど止めて、静かに「祈る」イベントにでも変更しては如何でしょう?いっそのこと、イベント全体を日没後にしてしまえば、横断幕や何処の国の国旗も見えなくなって、既に本物か偽物か怪しくなってしまった聖火なども種火のままで参加する、静かな灯篭行列にでもすれば、善光寺さんも喜んで法灯を提供してくれるのではないでしょうか?

■以下は4月13日の新聞記事です。もっと大きく取り上げてくれても良かったと思うのですが……。


……長野市の善光寺前で、中国チベット自治区などで起きた抗議行動の犠牲者を悼む追悼式が13日、開かれた。小雨が降る中、市民ら約70人が参加し、僧侶の読経が響く中、犠牲者の数を示す150個のろうそくが、円満な仏の世界や調和を表すという円い形に並べられた。追悼式は、市民団体「チベット問題を考える長野の会」が主催。チベット人と漢族の区別なく、双方の犠牲者すべてが追悼された。野池元基代表は「これだけの人が平和を望み世界平和を願い、ろうそくをともしてくださったことに感謝したい」と感想を述べた。
2008年4月13日 時事通信

■馬鹿馬鹿しい流血事件でも起こるかと、悪趣味の野次馬も含めて大勢が集まりそうな聖火リレーに比べて、たったの70人しか参加しない実につましい静かな儀式ですが、もしも、この種の「追悼式」が数千人、数万人規模にでもなったら、北京政府には深刻な非難が集まるかも知れませんぞ!日本に滞在しているチベット仏教のお坊さんと善光寺さんのお坊さん、それ以外の宗派を問わずに宗教家が大挙して長野市に集まるくらいの信仰心と企画力が、今の日本には無いのでしょうか?


善光寺が聖火リレーのスタート地点に選ばれたのは、昨年10月。市の実行委は五輪とゆかりの深い善光寺を選び、寺側も快諾した。3月のチベット騒乱直後、「同じ仏教徒が悲惨な目に遭っている」などの声は出たが、多くはダライ・ラマ14世の「五輪を支持する」との姿勢を範とし、リレー協力の方向でまとまっていたという。その流れを変えたのは世界各地で続いた聖火リレーにまつわる激しい抗議と混乱。「国宝の本堂に何かあればどうする」「参拝者の安全はどうなるのか」…。善光寺事務局や宿坊には、メールや電話などが相次いだ。「聖火リレーに協力しないで」と書かれたはがきや、チベット人が中国兵に暴行されているようなシーンの写真が送られてきた宿坊もあった。

■はっきり申し上げて、もしも「本堂」が焼けたり傷付けられたら、それをキッチリと保存する工夫をすれば良いのです。「北京五輪聖火リレー記念」として、21世紀の初めに、五輪大会を政治と商売に利用し尽くそうとした愚か者が仕出かした傍迷惑な騒動は、長く人々の記憶に残すべきでしょう。ついでに善光寺の境内に、今年の3月以降に起こった「仏教弾圧」を記録した映像や文書類を集めた記念資料館を建てても良いでしょう。額縁に『日中友好……』と誰かさんが揮毫したら、もっと良い!福田ホイホイ首相が辞任する前に頼んだ方が良いでしょうなあ。案外、大きな勘違いをしたまま、ホイホイ筆を執ってしまうかも?


……17日午後の善光寺が開いた局議と呼ばれる会議。「時期が時期だけにやめるのは難しい」との意見も出たが、辞退を求める意見が大勢を占めた。関係者は「『積極的に聖火リレーをやりましょう』との声は最後まで出なかった」と明かす。市内では17日ごろから街宣車などが走っている。別の関係者は「本来は良い意味で注目されるイベントだったが、今回は何が起きるかわからない不安感があった」と背景を解説した。

■一体、いつのどの段階で、「良い意味で注目される」と思っていたのでしょう?日本のマスコミの偏重にも責任は有るのでしょうが、海外メディアや日本国内の団体や知識人からも、ずっと前から北京五輪大会の開催には、温度差こそあれ各種の反対意見がたくさん出ていたのですから、聖火リレーの出発地点という重責を担う話が来た時点で、情報収集に最大限の努力を払うべきでした。この段階になって、実質的に「知らなかった!」「うっかりしていた!」では、あまりにも脇が甘いかも?
 

長野商工会議所の加藤久雄会頭は「聖火リレーのルートに決まったときは、地元経済界も名誉なことと大喜びしたが、(善光寺の辞退は)賢明な判断と思う。チベット問題が取りざたされている中、会場を提供したら、チベット僧への弾圧を認めたことになる」と善光寺を支持した。一方で善光寺参道の土産物店経営者は「聖火リレーによる経済効果は期待していなかったので、とくに影響はない」。市内の旅館経営者は「リレー前夜に入っている予約にキャンセルが出ないか心配」と話した。
4月19日 産経新聞

■観光業者が聖火リレーに「経済効果をは期待していなかった」のだとしたら、どこの誰が、何を考えて受け入れたのでしょう?新幹線と高速道路を誰かさんが造ってくれたお蔭で、大東京圏からの宿泊客がめっきり減って、長野県の観光産業は大打撃を受けているのですから、「聖火さえ来なければ」例年通りの善光寺参拝を目的に訪れるはずの信心深い方たちが、「今年は止めておこう」と考えてしまったら、誰が責任を取って損害を補償してくれるのでしょう?間違っても北京政府や在日中国大使館などに請求しては行けませんが……。
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北京五輪の内と外 その壱百八拾弐

2008-04-21 09:59:40 | チベットもの
■4月20日の日曜日、北京は「黒い雨」の中をマラソン選手が試走して、路面の悪さや空気の汚さを実感したそうです。所属企業や団体、その上のJOCと文科省、それにまとわり付く政治家等々の顔を思い浮かべれば、環境の悪さを正直に言うわけにも行かないでしょう。どんなに正確な客観的事実を並べても、戦う前だと言い訳めいた弱音と曲解されてしまいますからなあ。それでも命にかかわる事情があれば、世界最速のマラソンマンのように、出場を辞退して別の国際大会で高記録を狙うという話にもなるわけですから、大きな悲劇が起きないうちに、健康に不安のある選手達は勇気を持って「辞退」した方が身のためということでしょうなあ。

■新しい韓国大統領が米国に続いて日本に飛来!どちらの訪問国も「政権末期」とは言え、日米韓の連携を世界に示す手堅いパフォーマンスは見事です。それを迎える日本側……呼ばれもいない支持率3割のホイホイ首相が補欠選挙1週間前の山口県に押しかけて、聴衆と候補者を凍りつかせる惨劇が起こったとか、公明党のエイライ人が正直に創価学会が動員を書けたことを自ら暴露したとか、状況判断も出来ない上に口が軽いとなれば、こういう人達は絶対に外交交渉などをしては行けないでしょうなあ。

■その場しのぎの人気取り、後でコロリと忘れる「公約」を吹いているば済む政治家に比べれば、生き馬の目を抜く国際ビジネスの世界では、一度失った信頼を取り戻すには大変な苦労を強いられるので、自社の評判を落とすようなミスは命取り!というわけなので、世界中が注目する五輪大会という最大の宣伝効果が期待できる舞台は正念場であると同時に、大きな賭けの場でもあるのでしょう。■


北京五輪では、TOPパートナーと呼ばれる12企業を頂点に、64社がスポンサー群を形成する。聖火リレーでは別に、コカ・コーラなど3社がスポンサーをかって出た。だが、中国批判の世論がこれほど高まると、その矛先は企業にも向けられ、巨大なビジネスでもある五輪という広告塔に名を連ねていることが、かえってマイナスイメージとなりかねない。スポンサーの苦悩はそこにある。

■これはサンフランシスコ市内で発生した聖火リレーをめぐる大騒動を息を呑んで見守っていたスポンサーを取材した記事です。


「幸せな状況とはいえないが、嵐は過ぎ去ると信じたい」。コカ・コーラ社の元役員の一人は語る。スポンサーは、チベット情勢が沈静化へ向かえば自然と嵐は過ぎ去るかもしれず、「競技が始まれば興味はそちらへ移る」と期待する。極秘にルートを変更するという「撹乱戦術」により、サンフランシスコでは沿道で聖火を待ち受ける観客もいなければ、テレビ中継もなかった。当然、スポンサーにとってもメリットは皆無なのだが、そもそもロンドンやもパリでも、広告があまり目につかない印象がある。

■今も続く聖火騒動の中で、最大の宣伝効果があったのは雪獅子チベット国旗でしょう。各スポンサーはあれこれと大金を注ぎ込んだ企画を準備していたのでしょうが、報道カメラはチベット国旗ばかりを追っていますからなあ。


スポンサーと連絡を密にする国際オリンピック委員会(IOC)のハイベルク・マーケティング委員長は「事態が好転するまで、(スポンサーと広告は)できるだけ目立たないようにする」と話す。「目立たないスポンサー」。この奇妙な表現こそ、北京五輪が置かれている厳しい状況を物語っている。
2008年4月17日 産経ニュース

■青いターミネータ軍団VSチベット国旗というコントラストは色彩的にはよく出来た構図になりますが、それが意味している歴史と政治状況は恐るべきものです。後から増え始めた五星紅旗の赤色が、寺院を焼き尽くした炎の色や、チベットの草原や町で流された大量の血の色のようにも見えたりします。既に長野市でコースを変更して行われる聖火リレーでは、大手企業のスポンサーが身を潜めて難を避けることを決定しております。莫大な宣伝費用が無駄になるのですから、これは大損害ですなあ。


長野市教委は15日、26日の聖火リレー後に予定した長野オリンピックスタジアム前での「聖火リレー記念イベント」の中止を正式に発表した。各国で相次ぐ妨害行為を考慮し「リレーの運営を万全な態勢で臨む」ためと説明している。
4月16日 毎日新聞

■今も昔も五輪大会は変わらぬ目出度い行事だと思い込んでいた長野市の関係者は、欧米で起こった騒動も何処か対岸の火事とでも思ったのか、悠長に構えていたようです。しかし、他国と日本はまったく立場が違う!という重大な事を忘れていたと気が付いたらしく、急に後ろ向きにまって守勢に回り始めましたなあ。今は仏国のスーパーが標的になっていますが、長野市で何事かが起こったら、これまでにない「反日暴動」が起こる可能性が非常に高い!既に出発地点とされた善光寺が穏やかに「ボイコット!」しており、関連するイベントの規模もどんどん縮小して行けば、それだけで反日気分は盛り上がるでしょうなあ。


長野市で今月26日に行われる北京五輪の聖火リレー(18・5キロ)で、長野県警は機動隊員が聖火ランナーを取り囲んで伴走する形でガードすることを決めた。沿道には制服警察官を一定間隔で配置し、ランナーに合わせて順次移動させるが、動員される警察官は、応援の管区機動隊員らを含めて2000人規模に膨れ上がる。

■やっぱり、ターミネータ軍団の肩代わりをするには、鬼の機動隊!の出番になるのでしょうなあ。昔は社会主義革命に憧れて暴れた学生達と戦った機動隊が、今度は「特色ある社会主義」の国が送り込んで来る傍迷惑な聖火を守らねばならない……何とも皮肉な巡り合わせであります。鎌倉時代の元寇ではありませんが、カミカゼが吹いて長野市が暴風雨に襲われて警戒警報が数日間も続くような天変地異が起これば、終結した警察官や機動隊員は「聖火」などより住民を守らねばならなくなりますから、不可抗力を理由にしてリレーを「ボイコット!」出来るのですが……。

北京五輪の内と外 その壱百八拾壱

2008-04-20 00:19:02 | チベットもの
米国が北朝鮮とシリアの核協力疑惑を提起するなか、北朝鮮の金正日総書記が17日にシリアのアサド大統領に独立62周年の祝電を送り、両国間の協力関係強化への確信を示した。……祝電で「われわれ2国の人民間の素晴らしい親善協調関係が、引き続き強化、発展されるという確信を表明する」と述べ、アサド大統領の健康と幸福、シリア人民の前途に大きな成果があることを願った。さらに中東問題に言及した後、「国の平和と民族繁栄の実現に向けた正義の闘争に固い支持と連帯性を表する」とした。
4月18日 YONHAP NEWS

■北朝鮮の「正義の闘争」はまだまだ続くのでしょうか?偽札・偽タバコ・偽薬、薄利多売の各種の兵器類と、国際信義と平和をぶっ壊すような物ばかりを「製造」する国家事業が、これからも続くのかと思うと、気が重くなりますなあ。


韓国の聯合ニュースは18日、北京の消息筋の話として、8月の北京五輪開会式に北朝鮮から金永南最高人民会議常任委員長が出席することが決まったと報じた。北朝鮮内部で、金正日総書記が出席するには条件が整っていないとの判断が下され、代わりにナンバー2の金永南氏を派遣することにしたという。
4月18日 時事通信

■日に日に主席者名簿から要人の名前が消え続ける北京五輪の開会式!どうやら将軍様の「出席」カードを高く売りつけようと生臭い取り引きが行われたようです。どんな「条件が整っていない」のかは、さっぱり分かりませんが、取り敢えずは「一の子分」として恩着せがましくも開会式参加を勿体ぶって表明しておくのが、あの国の性格なのでしょうなあ。別に、誰も注目などしていないのでしょうが……。実はこの報道の一日前に、ちょっと驚くガセネタが流れたのでした。


韓国の聯合ニュースは17日、中国外交筋の話として、北朝鮮の金正日労働党総書記が来週中にベトナムを訪問、その後に中国を訪れる可能性が高いと報じた。北京の消息筋によると、今回の訪問は列車ではなく、飛行機を利用するという。金総書記はベトナム訪問で、同国の改革開放政策の状況を視察した上で食糧問題などを話し合うとみられる。また中国訪問では胡錦濤国家主席と会談するほか、東北3省にある抗日運動に関する史跡を視察する計画もある。訪中すれば2006年1月以来となる。 
4月17日 時事通信

■「中国外交筋」というのが誰を指しているのか不明な上に、将軍様が「飛行機を利用」というのが本当ならば大スクープ!です。何せ、地べたを離れるのが大嫌いな事で有名な人物ですからなあ。ロシアに出向いた時にもお召し列車で行きまして、噂によると飲食物はすべて自前で途中からは平壌から空輸して補給したというのですから、自分の命が常に狙われている恐怖感は大変なもののようです。父親も後頭部にできた巨大なコブを決して切除しようとはしなかったのと共通するものがあるようです。父親は全身麻酔を掛けられたら二度と目覚めない謀略を恐れ、その息子は航空機事故を極度に怖れる。そのまた息子は日本のディズニーランドやら赤坂の飲み屋に気楽に飛来するとか、欧州に留学するとか、気楽に世界を飛び回っている様子ですから、絶対権力者にならない限りは暗殺の危険は少ない国とも言えそうです。

■いろいろ勝手に想像させてくれる記事でしたが、直ぐに全面的に否定する続報が流れたのでした。一体、誰が何のために流したガセネタだったのか?


北朝鮮の金正日総書記が来週、ベトナムと中国を訪問する可能性があるとの報道について、中国外務省の姜瑜副報道局長は17日の定例記者会見で「それに関する情報は聞いていない」と述べ、否定した。ただ、「中朝間の伝統的なハイレベルの相互訪問は今後も続けられる」と語った。
4月17日 時事通信

■正体不明の「外交筋」から流れた情報を、報道局長があっさりと否定するのですから、チャイナの情報操作と利用法にはよほど注意しなければなりませんなあ。穿って考えれば、本当に将軍様の飛行機を使った外遊計画が有って、その除法を事前にリークすることで、誰かさんが将軍様の動きを封じ込めたのかも?大事な五輪大会の前に、ちょろちょろされると目障りだというメッセージとも勘ぐれそうです。

■パキスタンあたりが一枚噛んで、北朝鮮からシリアへと核兵器の開発技術が流れ、それをイスラエルが空爆して破壊するのを米国が黙認して……。そこにはチャイナの影はまったく見えませんが、6カ国協議を停止させたまま、米中協議だけが着々と五輪大会を期限にしているかのように進んで行くような印象があります。北朝鮮問題が大きく進展すれば、「平和の祭典」に大きな花を添えることになりますなあ。しかし、北京大会はそれに相応しくない!という声が世界のあちこちで湧きあがっているのですから、多少のオマケが付いたとしても、心から祝いたくなるほどの感動は呼ばないでしょう。

■今も出口がまったく見えないアフガニスタンで、国連主導で進められた北部同盟軍などの武装解除という大プロジェクトがありましたが、供出された古ぼけた武器の山を仕分けしたら、その6割以上がメイド・イン・チャイナだった!という恐ろしい話があるそうです。軍事費の突出と異常な増加率は常に指摘されてはいますが、密輸まがいの武器商売については一切の情報が公表されていないようですが、時々、ぎょっとするような事実が暴露されることもあるようです。


大統領選の結果発表が遅れ、不正が指摘されるアフリカ南部ジンバブエに向け、中国籍の貨物船が武器や弾薬などを運び込もうとしていることが分かった。……貨物船は荷揚げのため南アフリカ東部ダーバン港に停泊したが、南ア港湾組合関係者らが荷揚げを拒否。同船は18日、モザンビークへ向かった模様だ。中国船籍の積み荷記載によると、自動小銃AK47や弾薬、迫撃砲、携帯型対戦車ロケット弾(RPG)など77トン分が積まれ、荷受先はジンバブエ国防省となっていた。ムガベ政権と深い関係を持つ中国は、これまでも戦闘機や軍用車両などを供給している。……独裁体制を敷くムガベ大統領(84)を公認候補とする政権・与党は野党支持者らへの弾圧を強めており、中国からの武器流入が混乱に拍車をかける可能性もある。……
4月19日 毎日新聞

■こういう物騒で汚い武器商売を続けながら、世界中で傍迷惑な聖火リレーを強行して「平和」だの「正義」だのと自己正当化を続けるのは如何なものでしょうなあ。悪評高いムガベ大統領が、選挙の不正を言い立てる「分裂主義者」を機銃掃射で黙らせるような事が起こっても、北京政府としては驚きもしないのでしょう。ダルフール問題を欧米諸国が大いに非難しているというのに、まったく意に介さないのも北京政府ですからなあ。チベットで何が起こっているのかを想像するのには、非常に役立つ小さなニュースではありますぞ。

■物騒な相手に物騒な品物を売り付けながら、聖火リレーの防衛を協力国に押し付けるのは、やっぱり変でしょうなあ。IOCは国際政治とは何の関係も無い組織ですから、チャイナがどんな武器商売をしていようと、「五輪大会を主催する資格がある!」と言い続けるのでしょう。その程度の組織だという事を、日本のオリンピック・ファンも覚えておいた方が良いでしょうなあ。
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