旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

不況に強い職業? 其の弐

2008-11-15 05:17:27 | 社会問題・事件
■大モメの定額給付金バラマキ政策で政権与党内がてんやわんやの大騒ぎになっているのに、麻生コロコロ首相は「外交の麻生」の勢いで、張り切って厳寒のワシントンに一番乗り!手土産は「IMFに10兆円貸付」だそうですが、御本人は「日本のバブル」の体験を世界の首脳に語って聞かせるんだと大見得を切っていたようですが、足元で火が燃え上がっている拙速の極みのバラマキ政策自体が経済対策として打ち出されて今の大騒動が起きているのですから、日本政府はバブル崩壊から何も学んでいない事を自ら証明していることになりませんかな?

■「あなたとは違う」福田ホイホイ首相に対して連立解消・政権離脱を匂わせて「定額減税」を飲ませた頃の公明党は意気軒昂だったようですが、解散だけのために就任した麻生コロコロ首相に対しては「誰のお蔭で総理大臣になれたんだ!」と分かり易い恫喝で、今度は納税していない人も含める「定額給付」を強要した公明党は、言い出しっぺのくせに政界からもマスコミからも凄まじい怨嗟の声が上がったので頬被りして息を潜めているとかいないとか……。

■麻生コロコロ内閣は「解散するぞ!」と2回もウソをついた上に、「定額給付は全国民が対象」と言った舌の根も乾かないうちに「高額所得者は除外かも?」と言い出して、実際に窓口業務を押し付けられる自治体から悲鳴が聞こえてくるわ、自民党内からも「除外したら法律にならなんぞ!」と怒りの声が上がるわ、マスコミからは麻生ではなく阿呆扱いされるに及び、「除外はしないけど、自主的に遠慮してくれると嬉しい」などとコロコロするので、聞いている国民は大混乱。

■給付時期に関しても「今年中に配る」と啖呵を切ったのに、すぐに「今年度中に法案を通す」とコロコロ……。


総務省の「定額給付金実施本部」は14日、総額2兆円にのぼる定額給付金の支給を装った「振り込め詐欺」被害に遭わないよう、総務省のホームページで情報提供を始めた。「市区町村や総務省などがATM(現金自動受払機)の操作をお願いすることは絶対にありません」「現時点で市区町村や総務省などが、世帯構成や銀行口座番号などの個人情報を照会することは絶対にありません」などと具体的な事例を挙げ、注意を呼びかけている。

■プロの詐欺師に掛かったら、どんな「御注意」も効果など無くなってしまうのが詐欺犯罪の恐ろしいところで、北の札幌あたりでは親切な銀行員と熱心な警察官が止めるのも聴かずに、我が子可愛さで被害者になった御婦人が居るくらいですから、給付の方法や時期がコロコロ変わるような混乱が続けば、詐欺師たちに悪知恵を働かせて新手の作戦を練る時間を与えるようなものでしょうなあ。


給付金の支給は金融機関の個人口座に振り込まれる方式が有力だが、実施本部には「もう給付されるのか」「どこに行けばいいのか」といった問い合わせが1日数十件寄せられているという。都道府県や市区町村のホームページでも注意の呼びかけを働きかける。
2008年11月14日 毎日新聞

■既に国民の中には浮き足立っている人が出ているのですから、実際に支給が始まれば冷静な判断など出来ない人が増えるでしょう。支給が始まる前から「今だけ、ここだけ、貴方だけ」の必殺技で口座から巧妙に虎の子を全部巻き上げる悪い奴が出て来るでしょうなあ。聞くところによると、「オレオレ詐欺」の全盛期にはほとんど被害を受けなかった関西方面の皆さんでさえ、「還付金詐欺」が横行し始めたら他の地域以上に被害が拡大しているとか……。今度は全世帯が対象となるのですから、騙す方法は幾らでも有りそうです。2万円ほどの涙金を有り難く受け取るより、同じ財源から何億円もまとめて騙し取った方が「定額給付」の恩恵も厚くなると考える一攫千金の悪い夢を見ている俄か悪人も現われているかも知れません。

■何ともややこしい浅はかな政策を思いついたものです。まさか名誉会長の「世襲」が噂される某新興宗教の教団が、代替わりの御祝儀やら御布施やら寄付金の財源にしようと、ジリ貧の自民党を脅したり騙したりしてカネ配りを強要しているわけでもないのでしょうが……。三年後には消費税の引き上げ、社会保障費の削減は続行、年金制度は崩壊したまま、医療システムは壊滅近し!町の銀行は貸し渋りに貸し剥がし、大小企業は内偵取り消し……。そんな時代に1万2000円や2万円を貰う日本国民は「朝三暮四」のバカ猿にならないように気をつけねばなりますまい。そして、随喜の涙を流して感謝感激して解散総選挙の暁には、御恩を忘れずに自民党と公明党に投票する人が大幅に増える!などと思われているとしたら、随分と舐められたものだと怒らねばなりませんなあ。

■「落選したらただの人」になりそうな議員が今でも多い自民党は、何度も解散を先延ばしにし続けて今に至っているのですから、もうそろそろ「その内、何とかなるだろう」などと思うのは止めたらどうでしょう?どうやら政治家も不況に強い職業ではなさそうですなあ。ますます公私ともに詐欺が横行する時期になりますから、くれぐれも御用心、御用心。
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不況に強い職業? 其の壱

2008-11-15 03:43:30 | 社会問題・事件
■「カネは天下の廻りもの」とは申しますが、米国産の証券化商品に仕込まれていた猛毒が全身に廻ってしまった世界の金融機関はカネを回すのを止めてしまいました。また、「借金は信用の証」とも言われるそうで、融資や投資を受けてせっせと世のため人のためになる商品を開発・生産して利益を上げて借金を返済するというのは正常な経営だったはずが、「黒字倒産」などという信じ難い椿事があちこちで発生し始めているのは実に心配なことです。銀行や証券会社がばたばたと破綻してしまう世の中になると、まじめに働く気力が失せてしまう人がどんどん増えて、世の中が際限も無く暗く沈んでしまいます。

■そうならないように知恵を搾るのが政治家と官僚の仕事なのですが、「2兆円ぐらいばら撒けば選挙に勝てるかも?」などと浅はかな事しか思い付かない政党が政権を握っているようでは、バブル時代に学んだはずの知恵も目詰まりしてしまうでしょうなあ。生活費を切り詰めて嵐が去るのをじっと忍んで待つしかない庶民とは別の世界で暮らしている人がいるもので、小泉元総理が言った通りに、「会社もイロイロ、人もイロイロ」というのが世の中というものなのかも知れませんが、皆が困っている時に抜け駆けしてボロ儲けするには、やっぱり悪事に走るしかないのか?と暗澹たる思いにさせられるようなニュースが、これからどんどん増えて行くのは精神衛生上もよろしくありません。勿論、若い世代にとっては最悪の教育効果を持ってしまうでしょう。困った、困った。


金沢市でパチンコ景品業を営む男性(死亡)に対する追徴課税をめぐり、大幅な減額が可能と説明され報酬を支払ったのに実現しなかったとして、男性の遺族が14日、元大蔵省審議官の杉井孝弁護士や国税OBの税理士らに3億1000万円の返還を求める訴えを東京地裁に起こした。

■広告料が激減して真っ青になっているテレビ業界で、矢鱈と増えたのが保険会社とパチンコ関連のCMだとか……。博打と金貸しは宣伝しては行けない業種だと思うのですが、テレビ局も背に腹は替えられない苦しい立場なのでしょう。でも、パチンコの宣伝をしながらパチンコ関連の犯罪を報道する矛盾に苦しんだりはしないのでしょうか?それにしてもパチンコという業種は儲かるのですなあ。博打の胴元なのですから当たり前と言えば当たり前なのですが……。


……税務調査を受けた男性は2006年3月、金沢国税局から所得隠しを指摘され、7年間で総額約77億円の追徴課税処分を受けた。調査段階から相談を受けていた杉井氏は男性に対し、「異議申し立てを行ったので、課税処分は3年分の約13億円で収まる」などと説明。男性は報酬として計3億1000万円を支払ったという。

■平均すると毎年10億円も脱税し続けたことになります。場所は森元総理大臣の地元の金沢市。ユニークな論文を書いた航空自衛隊のエライ人に1等賞の賞状と300万円を送ったホテル会社の社長も森元総理の地元でただならぬ関係にあったそうですが、77億円-13億円=64億円也。64億円-3億1000万円=60億9000万円也。その中から政治献金などは流れ出していないのでしょうな?!それにしましても、剛毅な金銭感覚ですが、脱税商売ではこの程度が相場なのでしょうか?


しかし、実際に減額が認められたのは報酬と同程度で、「劇的な減額は実現せず、報酬の支払い条件は満たしていない。全額返還する義務がある」としている。杉井氏は「国税局の大物OBを中心としたチームで対応する」と男性に話し、元東京国税局査察部幹部や税務署長経験者を集め、「杉井プロジェクト」と命名していたという。杉井氏の代理人弁護士の話 報酬の額が過大であるようには考えられない。 
11月14日 時事通信

■税収が減って大変だあ!と財務省は危機感を膨らませているとの報道がある一方で、OB達はせっせと節税・脱税の指南をして荒稼ぎしているのなら、財務省や国税庁は何の役に立つのでしょうなあ?このパチンコ屋さんは、結局、74億円ほどの追徴課税分を支払ったという事になりますが、それを徴収した税務署は立派に職務を果たしているのに、OBになると同じ知識で逆の仕事をして莫大な報酬が得られるわけですなあ。下手な天下り人生よりも遥かに豪華な老後が楽しめそうですが……。これから人生の選択をする優秀な若者は、パチンコ業界に行きたがるのか?それとも国税庁「OB」を目指して必死に試験勉強に励むのか?

■パチンコ屋さんは伊藤四郎さんが出演して名演技をしてくれましたが、伊丹十三監督がご存命なら、『マルサの女』シリーズで是非とも悪徳OBの話を映画化して欲しかった!

テレビ界の岐路 其の弐

2008-11-15 02:44:39 | マスメディア
本年度上半期のTBS(関東地区)の視聴率は、全日帯が7・3%で4位、プライム帯が10・9%で5位と低迷した。その一方で、ニュースや報道番組が中心のNHKは、ゴールデン帯が13・6%を記録し、民放を抑えて初めて1位になった。TBS井上弘社長は最近の定例会見で「わが社は大変厳しい状況」と語り、NHKの番組制作を見習いたい旨を明かした。

■民放テレビがかつての映画会社と同じ様に、番組制作を丸投げ外注して企画は他局の後追いという内向き経営を何年も続けた結果、局ごとの特色など無くなって共食い状態になって次々にジリ貧になったのではないでしょうか?安直な企画で安上がりに制作した番組を喜んでくれる視聴者は、決してテレビ文化を鍛えるパートナーにはなれないような気がします。最初に音を上げた苦境のTBS社長が今頃になって手本にしようとしているNHKも、民放との視聴率競争に巻き込まれて随分と変質してしまったような気もしますから、近いうちにNHKも一緒になって日本のテレビ文化は衰退して行くのかも知れませんなあ。「世界遺産」を扱った特集番組などで、NHKが民放の企画をそっくり真似した!と責められたことがありましたなあ。


来年4月以降の午後11時30分からは、バラエティー番組を編成する予定。テレビ朝日では、バラエティー新番組を午後11時台に編成し、人気が出た番組をゴールデン帯に昇格させる手法で、視聴率を伸ばしてきた。TBSも、ライバル局の手法を参考にした番組編成をするようだ。現在、民放各局は午後7時の番組の視聴率が取れず、番組編成に頭を悩ませている。今回のTBSの英断は各局の編成にも刺激を与えそうだ。
11月14日 日刊スポーツ


■こういうのを「英断」と呼んでよいものか?夜中の11時にテレビを楽しむ人達と午後7時や8時に娯楽や情報をテレビに求める人を同じ様に扱うのは乱暴な話でしょう。テレビ朝日が苦し紛れに採用した廃物利用みたいな深夜枠の試みが、真っ当なやり方とも思えません。最初から高い視聴率など期待されないからこそ開き直って多少は思い切った企画が実現したとしても、泡沫のように短期間で消えて行く可哀想な番組も多いようです。新聞のテレビ欄を眺めていても、一体、どんな番組なのか見当も付かない日本語とも思えない奇妙な名前の番組が並んでいるのが深夜枠のようですから、そんな迂遠で姑息な事をするより番組の質を上げる真摯な努力をした方が良さそうですなあ。


在京民放キー局5社の平成20年9月中間連結決算が13日、出そろった。景況感の悪化で利益率の高いスポット広告が大きく落ち込んだことが響き、3社が最終減益、日本テレビ放送網、テレビ東京の2社が赤字になった。日テレは半期ベースで37年ぶり、テレ東は中間連結決算の集計を始めた14年9月中間期以降で初の赤字。全社が期初の最終利益予想を下方修正し、合計最終利益は前期比48%減の275億円と半減する見込み。

■「年金問題ばかり取り上げる民放テレビのスポンサーを降りるぞ」と世界一の自動車会社の社長が厚労省の審議会で吠えたそうですが、朝から晩まで厚労省の悪口を放送しているのは「洗脳」と同じだから悪いことなのだそうです。しかし、日本の自動車会社が流し続けるテレビ広告は、どうして海外ロケばかりなんだ?という疑問を突きつけられたら何と答えるのでしょうなあ。世界で最も自社のイメージに合う風景を探し出し、高額の出演料で有名人を起用して制作される自動車のCMこそ、過剰なイメージを偽造して消費者を洗脳する最先端のようなものでしょう。起用された御本人が根っからの外車好きだったりするのも消費者をバカにしていることになりましょう。

■今時、テレビの宣伝を観て購買意欲を高める人など居るのでしょうか?子供用のお菓子や玩具の宣伝は一定の効果があるような気もしますが、食品に始まって偽装事件が連続してしまうと、「看板に偽りあり」が常識になって「宣伝なのだから」という寛容さも失われた時代に、大袈裟に商品の宣伝をされても受け手の側には何も伝わらないでしょう。効果が無いからスポンサー契約が減るのでしょうし、視聴者は詐欺まがいの宣伝に辟易しているからますます効果が無くなるという相乗効果があるのでしょうなあ。


売上高は日テレを除く4社が増収だった。音楽、出版など放送外収入の伸びで広告収入の落ち込みを補った。ただ、放送事業では番組の前後に流される「スポット広告」の不振が際立ち、5社の同収入は前年同期比9.6~11.7%の大幅減となった。業績不振を受けて、フジ・メディア・ホールディングスを除く4社が役員報酬を削減している。
11月13日 産経新聞

■金融危機から始まった大不況の荒波が、放送メディアの経営にも及んで来たというわけです。何だか他人事みたいな報道が当たり前になっていた時代が少し変わるかも?かつての石油危機の時代にはスタジオの照明や装飾を減らしたテレビ業界ですから、今度はセットや衣装がどんどん貧乏ったらしく変わるかも知れませんなあ。少なくとも真夏日に厚手の衣装を着たり、真冬日に涼しげな服装でニュースを読むような人は居なくなるかも知れません。視聴者の方でも「無料」でテレビを楽しめる時代が終わることを覚悟した方がよいかも知れませんなあ。
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