旅限無(りょげむ)

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同時多発テロの直前 

2008-11-29 11:07:21 | 外交・情勢(アジア)
■インドのムンバイを襲った大規模なテロ攻撃に関して、全容解明には時間がかかるのは当然とはいえ、驚くほど多くの情報分析が展開されているようです。それなりの軍隊と情報機関を持っている国々は、しっかり「対テロ戦争」に対処している事を再認識させられます。その点、日本のマスコミが長し続けている国際ニュースの素朴さと幼稚さが際立ってしまうのは残念でありますなあ。何も知らずに平和に暮らしていられるのならそれでも良いのでしょうが……。

■ムンバイのテロに関しては改めて情報を整理してみることにして、大事件が発生した日に、チャイナの新聞が現場となっているムンバイ市内で数日前に開催された小さなイベントについて、何事かを狙ったかのように報道しています。これから世界中の協力を取り付けねばならないインドには、「敵」を名指しして事態をややこしくしない工夫と自制心を持って欲しいところですし、特にカシミール問題が軍事衝突に発展しないように「当事国」と予防的な折衝もしてほしい時なのですが……。


2008年11月、インド・ムンバイ市でのチャリティーイベントに出席した有名女優アイシュワリヤー・ラーイさんは「中国は感謝を知らない国」と発言した。26日、環球時報が伝えた。

■「感謝を知らない国」であることは、日本人の多くが知っている事ですが、1人の映画女優のコメントを取り上げるマメマメしい努力と執念には恐れ入りますなあ。まるでムンバイが大規模テロに襲われたのは、チャイナを侮辱したから天罰を受けたのだ!とでも言いたいのかも知れません。


ラーイさんは今後10~20年以内にインドが米国に次ぐ世界第2の経済大国になると預言した。その後、中国の急速な経済発展がインドに与える脅威について質問されたところ、「中国のことについてはよく知らないが」と前置きしたうえで、短期的に中国がインドに追いつくことはないだろうとの見方を示した。そして「わたしは中国に行きたいとは思いません。感謝を知らない国だからです」とコメントしている。

■経済の一大拠点となっているムンバイが襲われ、世界中の企業が恐怖におののいて資本を引き上げるパニックが始まるとの憶測も出ているようですが、出張を見合わせる企業やビジネスの拠点を撤去する会社も現われているという話もありまうから、「世界第2位」はチャイナでなくインドだ!という皮算用を嘲笑するには絶好のタイミングだと誰かさんが考えて、ちょっと古いネタを引っ張り出したとしか思えませんなあ。他人の不幸をこのように利用するのは如何なものでしょう?


インドでは、中国が台湾にかわって国連に加盟できたこと、安保理常任理事国になれたことはインドの支持があったためと信じる人々が多いだけに、領土問題をはじめ両国関係がさまざまな問題を抱える現状に不満を抱く人が多いという。

■周恩来の『平和五原則』などが一時は日本の教科書にも麗々しく取り上げられていたものですが、相互の「内政不干渉」を謳い上げておいてチベット全土を占領してそれを正当化するための道具だったと分かった時には遅かったのでした。チベットを併合したチャイナはカシミール地方と国境を接する広大な領土を持つ国になったのであります。一応は新しい国境に圧力を加えて牽制したインドでしたが、相手は本気で戦争しても構わないぞ!という迫力がありましたから、インドはチベットを見棄ててチャイナに譲歩する苦渋の選択をせざるを得なかったとか……。やっぱり強大な軍事力と核兵器が有ると、外交面での有効利用が出来るものであります。そしてインドも核武装し、それに対抗するパキスタンをチャイナが助けて核武装……。


ラーイさんは1973年生まれの35歳。1994年にミスワールド選出後、インド映画界のトップ女優に上り詰め、「Dhoom2」などのヒット映画に出演している。最新作はハリウッド映画で、メリル・ストリープと共演すると伝えられている。ラーイさんの発言は中国のメディアに大きく取り上げられただけに、中国市民の反発を呼ぶことは必至と見られる。
11月27日 Record China

■本当に「反発」を呼ぶのなら、それはそれで見物であります。「感謝を知らない国」と言われて反論するなら、感謝をした「実績」を並べて見せねば話になりませんからなあ。日本政府は逸早くインド政府への支援を約束しましたが、テロに負けずにインドが穏やかに踏ん張ってくれることを願わずにはいられません。「世界第2位」の座を争っているうちに軍事衝突など起きては困りますからなあ。
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