旅限無(りょげむ)

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インドの因習 其の弐

2008-11-21 18:52:22 | 外交・情勢(アジア)
しかし、階級制度と男尊女卑の考えが強いインドでは、ダウリは女性が良縁を得るための手段となっており、そのことが多くの悲劇を生む。親が結婚相手を決めることが多いインドでは、結婚前にどれだけダウリを出せるかを男性の側と協議し、話がつかなければ結婚はない。このためダウリは女性の値段といわれる。

■貧乏人が王様や貴族の真似をするとロクなことにならない好例みたいな話であります。日本でも貴金属を売りつけるために、西欧流の指輪だの宝石だのを庶民も買わねばならないように仕向けるのに必死ですからなあ。誰でも買えるような宝石は決して財産などにはならないという話もありますから、まあ愛情と信頼の度合を計る儀式の道具として利用されているのでありましょう。あまり欲張らずにつましく堅実に夫婦仲良く暮らすのが良さそうです。

■もしも、サブプライム・ローンやらデリバティブなどを組み込んだ有価証券などをダウリに含んだりしていると大変な事になるのでしょうなあ。


さらに、結婚後もダウリを要求することができるため、持参金が少ない嫁は常に嫁ぎ先からの“圧力”にさらされる。16日付のタイムズ・オブ・インディアは、東部チェンナイの警察が、22歳の女性が焼死した事件で夫とその両親の3人を拘束したと伝えた。この女性は5カ月前に地元の有名企業に勤める男性(29)と結婚したが、夫らに、もっと現金や宝石を持ってくるよう責められていたという。

■相場が変動するような物を持参金にすると大変な事になりそうです。現金などと言っても為替相場が乱高下している時期なら、目減り分を要求されたりするのでしょうか?株価も暴落したら命が危ない!


「ダウリ殺人」の場合、台所で事故を装って焼殺されるケースが多い。11日にやはりチェンナイであった事件では、新婚4カ月の新妻が台所で死亡し、夫とその母親が灯油をかけて火を付けた疑いで逮捕された。……1961年にダウリ廃止法が導入され、贈ることも受け取ることも禁止された。しかし、「経済成長に伴い、物質主義が広がり、中流階級ではテレビで宣伝される服や電化製品などを、ダウリとして手に入れようとする人が増えている」(デリー女性協議会)といい、減るどころか逆に増えている。

■長い歴史を持つ伝統と因習は政府が作った法律など軽々と弾き飛ばしてしまうパワーがあるのでしょう。日本にも馬鹿馬鹿しい差別が残っているのは、法律や教育よりも伝統と自分の思い込みを優先する困った人が頑張っているからでしょうし、巨大なインドとなればその圧力は凄まじいものがありそうですなあ。


……インド犯罪統計局によると、95年に4648件だったダウリに絡む殺人は、2006年には7618件になった。また、ダウリが原因の自殺は今も1日6件起きているという。人権団体の統計では年間2万5000人の女性が犠牲になっているともいう。インドの新聞には、花嫁募集の広告がずらりと並ぶ。が、ダウリ不要と明記しているのはわずかにすぎない。
2008年11月18日

■インド全体で1万件に満たない統計数値というのは、これこそ「氷山の一角」なのでしょう。世の中には男と女しか居ませんから、年頃になったら配偶者を見つけて家族を作るのは自然な事なのですが、こんな因習がはびこっている間は女性が社会に進出する機会は非常に少ないでしょうし、それが教育や文化にも影響を及ぼし、やがては国家全体の発展を阻害する要因になるのでしょう。欧米諸国の人権団体は、イスラム社会の女性差別を取り上げて騒ぐことがありますが、有望な投資相手と目されるようになったインドに対してはどんな動きを見せるのでしょう?相手と問題が多き過ぎて手の出しようが無いのかも知れませんなあ。
 
 
米中央情報局(CIA)などで組織する国家情報会議は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表し、米国の影響力が衰える一方で、中国やインドが著しく台頭して米中印の3国が並び立つ時代の到来を予見した。日本については「米中両大国の板挟み」になり、大幅な外交戦略の見直しを迫られるなど、埋没感が強まる可能性を指摘している。
11月21日 共同通信社

■それほど単純に歴史が動いて行くでしょうか?あのガンジーを公衆の面前で射殺したのが真面目なインド人なら、文化大革命の10年間に大真面目にチャイナ全土を破壊して廻ったのはチャイナの純朴な学生たちでした。両国とも基本的な社会インフラを整えるのにも、教育制度を整えるのにも、まだまだ時間と資金を必要とする大国です。核武装を済ませてから、どちらも大海軍を作ろうともしていますぞ。アメリカ流の単純な予測が当たるかどうか、2025年が楽しみですが、先ずは米国発の金融危機を凌がねばなりませんなあ。

■日本が外交戦略を見直さねばならない事など、ずっと前から分かっていることです。それを徹底的に邪魔しているのが米国なのに、自分の事は棚に上げてイケシャアシャアと御託宣を発表するアメリカという国は、何も学ばず反省もしない国のようですなあ。
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インドの因習 其の壱

2008-11-21 18:51:58 | 外交・情勢(アジア)
■新興国家の巨頭扱いで公用語が英語だの数学が強いだの、いろいろと評判になって株式投資も活況を呈していたインドであります。観光地としても名所が数多く、日本からも多くの旅行客が足を向ける神秘の国!でも、輝かしい未来を煽る行き過ぎた動きを牽制する声も無いわけではなく、法律上は禁止されているにもかかわらず根絶不可能とされる厳しい身分制度のカーストが、最終的には経済発展の決定的な障害となるだろうと冷ややかに見ている人も多いようです。

自分よりも下級カーストに属する少女にラブレターを書いたインドの少年が、髪を刈られて通りを引き回された上、列車に投げ込まれて殺害されるという事件が起きた。ビハール州の警察が20日に明らかにした。……登校途中に相手のカーストメンバーに拉致されたManish Kumar君(15)は、髪を刈られた上、母親が慈悲を懇願する中、列車に投げ込まれた。この事件でこれまでに、1人の男が逮捕され、警察官1人が停職処分となっている。
2008年11月20日 ロイター

■さっぱり要領を得ないニュースであります。カーストの基本構造は上に行くほど人口が少なくなるピラミッド構造だと言われていますから、下の階層が怒ったら数にものを言わせて上に襲い掛かることは物理的には可能なのでしょうが、一般的に身分差別が引き起こす悲劇というのは、上が下を理不尽に弾圧することが原因となるはずなのですで、「身の程知らず」の恋をして酷い目に遭うのは下の階層と相場が決まっているものです。弄ばれて捨てられると先読みした仲間が激怒したのか?手紙の内容に不穏当な言葉が書かれていたのか?

■髪を刈るのは侮辱するのが目的でしょうが、殺害方法が「列車に投げ込む」というのも想像するのが容易ではありませんなあ。通過する列車に轢かせるのなら何らかの方法で身動き出来ない状態にしておかねばなりませんから、簀巻きにされてレールの上に寝かされたのか?意識を失うほどの残酷なリンチを受けて運ばれたのか?犯人として逮捕されたのが男が1人というのも集団リンチ殺人としては不自然な処分のような気がしますなあ。それに停職処分になった警察官が何をしたのかも分かりません。警察官が少年の自由を奪う道具を提供したのか?単に集団リンチ殺人を傍観していた職務怠慢が問題となったのか?神秘と言うより得たいの知れない訳の分からない殺人事件であります。


……金融危機の影響は欧米に比べると小さいといわれたインドも、外国の投資引き上げなどで株価が大幅に下落し、企業では解雇も行われるなど景気悪化は顕著だ。不景気で苦しい生活を強いられるのは低所得者層であるのは、インドでも例外ではない。こうしたなかで、最近、インドの新聞では、保険金殺人ならぬ持参金「ダウリ」をめぐる殺人や自殺の記事が目につく。ダウリは、インドなど南アジアにおける女性虐待の実態を浮き彫りにする古くて新しい問題だ。

■「ダウリ」制度が数多くの悲劇を生んでいる話は昔から有名ですなあ。日本にも持参金だの結納だのという古い因習が少しは残っていますが、ほとんど形骸化していて結納品でも代替品やレンタルで済ます事も多く、最初から「省略」というのも増えているとか……。その代わりに新郎新婦の実家同士が話し合って、新所帯に必要な物品を分担して買い揃えるという現代風の流儀も増えているようですなあ。


ダウリとは、女性が結婚する際、女性の親が持たせる現金や宝石、家財道具などの財産を指す。その起源は、ハムラビ法典にまでさかのぼるとされる。インドではもともとヒンズー教徒の高い階級の人々の間で行われていた習慣で、その後、宗教を問わず全土に広がった。ダウリそのものは、娘に対する財産分与と、嫁ぎ先で何かあった場合の保険という意味もあるとされる。

■ここまでの話は多くの地域で生まれ育った婚礼に関する文化や取り決めと共通しているものです。王族などは領地や領民を持参金として持って行くような話もありますからなあ。唐の時代にチベットに興し入りした金城公主などは、今の青海省と甘粛省に跨るバカ広い土地を分与されています。まあ、北京政府が意地になって否定する「大チベット」の歴史的根拠の一つなのですが……。日本でも徳川幕府の第11代将軍の家斉さんなどは、特定されるだけで16人の妻妾が居て、大いに努力した甲斐?もあって男子26人と女子27人の子宝に恵まれたとかで、娘さん達の輿入れ騒ぎは徳川幕藩体制を揺るがすほどの経済的インパクトがあったとか……。

原爆が使われる日 其の九

2008-11-21 17:11:29 | 外交・世界情勢全般
■大旋風を巻き起こした米国大統領候補のオバマ氏が当選を決めてから、それほど時間が経ってないのに早くもいろいろと不安な面が語られ始めているようです。イラク撤退も口で言うほど簡単ではないし、ブッシュ政権があちこちを突きまわして藪蛇だらけにしてしまった後始末を上手にやり遂(おお)せるのか?という心配です。

米中央情報局(CIA)など各情報機関を統括する国家情報長官室は20日、2025年までの近未来世界を予測する報告書を公表……「世界の潮流2025」と題されたもので、計約120ページ。同長官室傘下の分析機関である国家情報評議会が作成した。報告書は、今後20年足らずの間に核兵器技術の拡散が進み、限定的核使用という選択肢が生じるとのシナリオを示し、核拡散防止の取り組みを強化するよう警鐘を鳴らした。 
11月21日 時事通信

■この機関は同時多発テロ攻撃に襲われた米国が、情報戦略を大幅に見直して複数の機関に分散する膨大な情報を一箇所に集めて分析し、有効に活用するためにブッシュ大統領が作ったものでした。単に休んでばかりいて提出されていた各種レポートをちゃんと読まなかったから、アルカーイダの動きに気付かず、ビン・ラディンの一族と付き合い続けていたという話もありますが……。組織を整理するのではなく、多くの組織を大規模に束ねて更に上に統括組織を置くというアメリカらしい大雑把な再編ではありました。

■産みの親に当たるブッシュ大統領が水に落ちた犬のように、ずぶ濡れでホワイトハウスを追い出されることが決まったので、その餞(はなむけ)にでもするつもりなのか、いよいよ「核兵器の拡散」の危険が現実味を帯びて来たとの警告が鳴り響く内容の冊子らしいですなあ。でも、拡散を防ぐという大義を振り翳して「大量破壊兵器」など無かったイラクを攻め滅ぼし、次は原爆を買う込みそうなビンラディン容疑者はいまだに捕まえられないのがブッシュ大統領の恥ずかしい業績です。その上、パキスタンと北朝鮮という新しい原爆クラブ会員を増やし、ロシアを怒らせるようなことばかり続けて新たな冷戦時代の幕を開けたのもブッシュ大統領なのですから、この報告書は去り行く大統領の背中に泥と石ころを投げ付けたようなものかも?

■「限定的核使用」のために小型戦術核を山ほど作ったのは米国で、それに対抗してソ連も似たような物を作っている最中に崩壊してしまったのでした。今でも崩壊後の混乱期に何個か行方不明になったという噂は絶えません。他に売り物が無い北朝鮮などは、販売を臭わせて恫喝を始めるかも知れませんが、そういう時には妙に気が小さくなるの傾向がある米国なのが心配です。「核拡散防止」に取り組むと言っても、米国流のやり方では味方の振りをする国なら簡単に核武装を許してしまう可能性が高く、その内の1各国でも裏切ったら大変なことになりますぞ。報告書が「今後20年」などとこの種の警告としては気の長い尺度で表現しているのは、本当はもっともっと近い将来に怖れている事態が起こる予想しているのではありますまいか?

■今回の大統領選挙で盛り上がっていた時に、共和党のマケイン候補がいかにもアメリカらしい勇ましい「思い出話」をしておりましたなあ。


米共和党の大統領候補、マケイン上院議員は(10月)21日、1962年にソ連(当時)によるキューバへのミサイル配備で緊張が高まった「キューバ危機」当時、空母から艦載機で出撃準備態勢をとった経験を披露し、「危機対応」に自信を示した。……ペンシルベニア州での演説で、「(当時)自分はキューバ沖に展開していた空母エンタープライズ艦上で(艦載機の)コックピットにいた。標的も決まっていた。核戦争にどれほど近づいていたかお分かりだろう」……「自分はこうした経験を積んだが、(民主党候補の)オバマ氏には経験がない」と述べ、同氏との「違い」を強調した。
10月22日 時事通信

■エメリッヒ監督の『インディペンデンス・デイ』では、異星人の巨大円盤に向かって決死の戦いに挑む場面で戦闘機に大統領自身が乗り込んでしまった!それを観ていたのか、イラク戦争に勝った!勝った!とお祭騒ぎをしていた時にブッシュ大統領は戦闘飛行服を着込んで航空母艦に着艦して見せたのでした。勿論、操縦していたのはプロのパイロットで、大統領は副座に乗っていただけでしたが……。マケイン候補が最前線で撃墜され長年、過酷な捕虜生活を送ったヴェトナム戦争当時、呑気に?州兵パイロットとして米国本土の防衛に当たっていたのがブッシュ一家の長男坊でしたなあ。

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾伍

2008-11-21 13:50:20 | チベットもの
■日本での各地から降雪の報せが届き始めておりますが、チベット高原や青蔵高原などでは氷点下を楽々と越える厳しい冬になっている頃であります。温かいバター茶がいっそう美味になり、茹でたての羊肉と強い蒸留酒が恋しい季節でもあります。インドのダラムサラも寒くなり始めているのでしょうが、民族の将来を決める緊迫した議論が続いているようです。

11月19日午後、チベットで兵役に就く予定の重慶地区2008年冬季召集兵915名が列車に乗り込んだ。彼ら新兵は重慶北駅から列車に乗って四川省成都に向かい、訓練を受けた後、チベットで任務に就く。今回召集された新兵は8割以上が高卒で平均年齢は19歳、重慶の大足、壁山、渝北など17の区県から集められた。
11月21日 サーチナ

■五輪景気が去ったところに不動産バブルが破裂して、あちこちで社会主義国には珍しい?血みどろの労働争議が頻発していますから、高卒での就職は一族郎党からも喜ばれた事でしょう。平和憲法を護持して不必要に自衛隊を蔑視しがちな日本とは違ってチャイナでは人民解放軍の入隊するのは貧困地域の人々にとっては大きな夢ですからなあ。「正しい歴史認識」を正しく学んでいる事を何重にも精査した上で、チベット解放の輝かしい歴史とチベット人に対する一方的な哀れみと差別意識を植え付けられた新兵クンたちは、訓練を受ける成都よりも遥かに寒い異文化の土地で、どんな体験をするのでしょうか?

■アフガニスタンやイラクのように、日常的に自爆テロが起こることもなく、駐屯地に携帯型ミサイルが撃ち込まれることもありませんから、出発を見送った御親族の皆さんも安心して「任務」を果たして無事に戻ることを確信している事でしょう。でも、ダラムサラでの会議が何かの決議をした場合は……。万が一、騒乱が起こっても五輪大会は既に開催してしまいましたし、チベット以外の場所で激増中の暴動騒ぎを押さえ込むための見せしめにもなりますから、今度は簡単に「戒厳令」が出るのかも知れませんなあ。そうなれば丸腰の市民や僧侶が標的です。

■戦いは目に見えない所でも続けられているそうで、北京で五輪大会が華々しく行われていた時にも、人民の安全を守るためにサイバーテロとの戦いが繰り広げられていたのだそうです。勿論、発表されたからには「勝利」したという話です。


2008年11月7日、中国紙「北京青年報」は、チベット独立派が北京五輪期間中、サイバーテロを仕掛けようとしたが、当局に早期発見され失敗に終わったと報じた。……北京五輪組織委員会技術部に特別に招かれたインターネットセキュリティの専門家、王江民氏を中心としたチームが発見した。

■チャイナこそがサイバーテロの総本山だと言われているのですから、英雄的に?大活躍した王江民氏が率いるチームの本職が何なのかが非常に気になります。どんな戦いでも、守るより攻める方が簡単ですからなあ。


このチームは北京五輪期間中、24時間体制でサイバーテロの未然防止に努めてきた。発見されたのは開会式から10日後の8月18日。公安部から派遣されたウィルス対策専門家がワード形式の怪しいファイルを発見した。チベット独立を訴える大量の画像のほか、活動地点や代表者の連絡先などもあったという。発見されたウィルスファイルは直ちに処理されたため、拡大被害もなかった。王氏は、「我々が犯人に与えたダメージは大きい。抑制効果も期待できる」とセキュリティ技術の高さをアピールした。
11月7日 Record China

■民間のITサービス企業でも、「24時間体制」を採るのは当たり前。発見したワード形式のファイルが、どうしてウイルスファイルとして処理されたのかは不明。単なる広報文書だったような印象も受けますが、開くとパソコン内で暴れ回るウイルスが仕込まれていたという事でしょうか?それなら北京政府が大喜びするような内容にして送信されるはずなのですが……。国家の威信を懸けた五輪大会ですから、それにちょっとでも「反対」するような内容のファイルなら、すべてがサイバーテロと呼ばれそうな勢いを感じるニュースであります。チベット国旗を持っているだけでもテロリスト候補でしたからなあ。

■「セキュリティは万全」だそうですから、今頃は「攻撃は最大の防御也」の教え通りにチベット支援団体向けに報復攻撃を「24時間体制」で仕掛けている頃かも知れません。
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チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

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欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾四

2008-11-21 11:03:30 | チベットもの
■核廃絶のイニシアティブを取るように日本を激励して下さるダライ・ラマ法王ですが、亡命政府が置かれているインドが着々と核弾頭の保有数を増やしながらミサイル技術もどんどん向上させているのですから、平和を求める祈りも些か複雑なものになってしまいますなあ。チャイナに対する核武装だけは認める、などとは決して思っておられないのは確かです。そう言えば、大いなる期待を背にして当選した米国次期大統領のオバマさんが、何を考えたのかイラクからの撤退とセットにして主張しているアフガニスタン問題の解決に連動させて、インドとパキスタンの国境をめぐるカシミール問題の仲介をするぞ!と言い出したとか……。カシミールはチベット亡命政府があるダラム・サラとも近く、チベットに隣接している場所ですし、チャイナもちゃっかり領土権を主張しているという実にややこしい場所なのであります。

……オバマ氏がアフガンを「テロの震源地」と位置づけ、米軍の増派などで積極的に取り組む姿勢を示したことについては、アフガンだけでなく隣接するパキスタンやインドも歓迎する。しかし、具体策が進まぬうちにオバマ氏が、アフガンの状況を打開するためとして、唐突にインドとパキスタンの国境をめぐるカシミール問題の仲介に乗り出す考えを明らかにしたことで、各国は逆に困惑を強めている。……同国内のイスラム武装勢力タリバンを押さえ、同時にパキスタンとの国境地帯に潜伏する国際テロ組織アルカーイダ勢力を一掃すると表明。米軍をイラクから撤退させる一方、現在3万2000人規模のアフガン駐留米軍に、2個旅団を増派する考えを示してきた。

■米国の1旅団は3000人前後で編成され、現在イラクに駐留しているのは15旅団なのだそうです。その他もろもろを含めて米軍は15万2000人もイラクに貼り付けていますが、莫大な戦費を負担するのにも限界が来ている経済的事情と人的被害の大きさに米国民もブッシュの失政を声高に責めるようになっていますから、何とかイラクに自立して貰ってさっさと手を引きたいところでしょう。でも、フランスとイギリスが勝手に国境線を引いて誕生させたイラクは、常に宗派と民族によって最低でも三つに分裂する危険を孕んだ人造国家国ですから、後は「野となれ山となれ」などと無責任に投げ出すとイランが待ってましたとばかりに動き出す心配がありますなあ。

■分裂と言えばカシミールは実質的に既に三分割されているのですが、飽くまでも暫定的に三つ巴の睨み合いによって微妙なバランスが保たれているだけのことですから、オバマ新大統領がしゃしゃり出て来て「ちゃんと分けましょう」などと能天気な事を口走ったら三つの核保有国が我先に先制攻撃に出るかも知れませんぞ。地図を眺めていて思い付いただけの事なら、早々に考えを変えた方が良さそうですなあ。


……カシミールをめぐるインドとの緊張が緩めば、パキスタンは武装勢力の掃討に力を注ぐことができるというのだ。オバマ氏は、カシミール問題仲介の特使に、クリントン前大統領を任命する可能性があることも明らかにした。……インドにとってカシミール問題は国内問題であり、パキスタンが主張するような、国連を含む国際社会の介入は認められないとの立場だからだ。しかも、インドは、今もパキスタンがイスラム武装勢力のテロを支援しているとみており、米国がパキスタンに有利になる仲介に乗り出すことは、「テロが外交問題を解決する有効な手段であると、パキスタンに誤解させる」(インドの英字紙タイムズ・オブ・インディア)。……

■かつて大インドを支配していた大英帝国は、植民地支配の要諦は「分裂と対立」だと考えて実行しておりました。イスラム教徒が多いのを承知でカシミール地方にインド人の王族を据えて傀儡としていたのがそもそもの始まりです。まったくイギリスは世界中に歴史の地雷を撒き散らしたようなもので、実に困ったことをしてくれたものです。


一方、パキスタンも「米国の狙いは、(カシミール)地域においてインドが影響力を持つ現状をわれわれに認めさせるつもりではないか」(パキスタンの英字紙ドーン)と疑心を募らせる。……オバマ次期大統領は来年の就任後、アフガン増派で北大西洋条約機構(NATO)加盟各国だけでなく日本にも協力を求めるとされる。……オバマ氏側近は、アフガン増派の一方、イランと協議することも含めた新たな地域戦略を検討していることを明らかにした。アフガン政府は10月初旬、サウジアラビアでタリバン側と協議を行ったとされるが、オバマ次期政権としては、その協議の行方についても期待をもって見守っているという。一方、アルカーイダ掃討にはこれまで以上に力を入れ、ウサマ・ビンラーディン容疑者の追跡に全力を挙げる方針だ。……
2008年11月12日 産経ニュース

■核廃絶の動きを少しでも加速させるのに成功すれば、その人や組織は間違いなくノーベル平和賞を受賞するでしょうし、同じくカシミール問題を解決させられれば受賞は確実でしょう。しかし、カシミールを平和にするには核兵器を廃絶しておかないとトンデモないことになりそうですなあ。

広がる麻薬禍 その壱拾

2008-11-21 11:01:24 | 社会問題・事件
■自主独立をモットーにしているはずの大学も、財布の中身は国の助成金に頼らなければ経営が成り立たないのが実情で、妙に機械的な配分が行き過ぎたのか怪しげなデリバティブ投資をして100億円を越える大損をした私立大学が現われましたなあ。学生が大麻を吸ってぼんやりしている一方で、何と目的としたのか危険な投機に走る大学側も、バブル時代で儲け損ねたと思ったのか一種の麻薬中毒のように一攫千金を夢見たかのようです。そういう大学の経済学部は来年度も学生を募集するのでしょうか?

■大学生の摘発は一段落したようですが、一罰百戒の効果があったと当局が判断したのか?これ以上の摘発を続けると日本の大学業界が壊滅してしまうという危機感が出たからなのかは分かりませんが、、これで大麻騒動が沈静化してすべての問題が解決したなどとは誰も思っていないでしょうなあ。


……大麻が若者に蔓延する背景には、海外通販で大麻の種を合法的に入手できる現行法の“抜け穴”などにより、罪悪感の低下があるようだ。一方、大麻で摘発され、犯罪者に転落した学生は多くが退学に追い込まれる。法廷で“高偏差値学生”の末路を見ると、「大麻なんかに手を出したらどうなるか」という“想像力”の欠如の大きさに唖然とせざるを得ない。……「友達の家に遊びに行って、酒でテンションあがったときに勧められたらみんな軽く吸っちゃうでしょ。副作用ないことがみんな分かってるし、興味はあるから…」……取材で東京都町田市の多摩キャンパスを訪れた本紙の記者に対し、4年生の男子学生(23)は堂々と持論をぶつけてきた。「大麻って、外国では合法でしょう。タバコより身体に悪くないらしいし、日本の法律もおかしい。マスコミも騒ぎすぎ」

■不正確な情報と「らしい」話をつなぎ合わせたようなレポートを書いても、最近の大学では単位を認定してくれるのでしょうか?国際化の時代に「外国」などという大雑把な括り方で大学生が会話をしているのは驚きであります。隣の「外国」なら大麻を含めて麻薬犯罪は問答無用で無期懲役か死刑になりますし、東南アジア諸国も非常に厳しい判決が出るようです。欧州には大麻に対して比較的「寛容」な国もあるようですが、大学生がキャンパスで大麻を楽しむのが「合法」だと決めているわけではないでしょう。そのような国が「寛容」なのは、もっと恐ろしいアヘンなどの麻薬禍を封じ込めるための苦しい方便のようなものかも知れませんなあ。

■かつてアジアに広大な植民地を持って荒稼ぎしていた欧州の国々が大麻に寛容で、アヘン戦争を仕掛けられた場所やその周辺では「極刑」で臨んでいるというのも歴史的経緯から考えれば当然なのかも知れません。日本も列強のお株を奪ってアヘン商売で軍事機密費を得ていた事実がありますが、変なことは真似ない方が良いでしょうなあ。


……大多数の学生が今回の騒動を迷惑がっているのは間違いない。逮捕された5人は、多摩キャンパスの図書館や会議室の個室で、大麻をたばこの巻紙で巻く「ジョイント」と呼ばれる方法で吸引していた。……予約すればだれでも使えるという図書館の個室ドアには窓もあり、学生たちは「あんなところでやっているとは思わなかった」と口をそろえる。

■共同研究や議論の場所として作られた立派な施設なのでしょうから、本来の目的で使って欲しいものです。そもそも、学生の本分を忘れて遊び呆けていては行けません。


3年生の男子学生(22)は「法政大生の就職活動にも悪いイメージがつきそうで困る」と迷惑そうに話した。また、別の男子学生(20)は、今回摘発された学生が「付属校あがり」で、遊び慣れているタイプだったことを指摘し、今回の事件について独自の分析をした。「違う付属校出身者と大学で出会うと、見えの張り合いになるやつらがいる。『どこで遊んだ』とか、『芸能人とコンパやった』とか。そういうことで、遊びがエスカレートすることがあるのかも…」

■突如として就職氷河期が再来襲するのは確実と言われている時期ですから、就職活動に多大な影響が出るのを心配するのは当然です。面接でも露骨に問われるでしょうし、下手をすればエントリー段階で薬物使用経験の有無を問う欄が作られるかも?希望者全員が正直に答えるかどうかは分かりませんが……。

広がる麻薬禍 その九

2008-11-21 11:00:56 | 社会問題・事件
■早大商学部3年生に大麻の種を売った男の話が続きます。

落合容疑者は平成15年、「クリスタルシーズ」というホームページを開設し、大麻種子を1粒1000~5000円で販売。延べ2100人に売り、約3200万円を売り上げていた。……大麻約3・7グラムを所持していたとして、落合容疑者を同法違反(所持)の現行犯で逮捕。その後、早大生に種子を売った行為が栽培の幇助に当たるとして、同法違反幇助の疑いで再逮捕した。……落合容疑者の客を大麻の栽培や所持などで摘発。摘発された客はこの早大生や少年2人を含めて計14人になる。

■以前に大麻の種子30,000粒を売り捌いて8000万円を荒稼ぎして逮捕された者が居ましたが、落合容疑者は1粒1000円からの商売をしていたというのは良心的な値段だったと言うべきか?タバコの税金を引き上げて、1箱1000円にしようという政治家や役所の話が思い出されますなあ。もともと野性の麻は日本でもあちこちに自生しているくらいですから、吸引目的で自家栽培するのは簡単なはずです。雑草の仲間みたいなものですから、日本の某所などでは夏休み前になると学校の廊下にサンプル写真つきの発見・通報を生徒に義務付けるポスターが貼られるとか……。タネの種類や栽培・加工の方法で風味や効果に違いはあるのでしょうが、危険な遊びや安タバコの代替品としてなら、1粒1000円でタネを買って雑草を育てて吸引した方が安上がりという計算は成り立ちそうです。だから危険なのですが……。


……千葉県警などは大麻取締法違反などの疑いで、早大国際教養学部2年の男子留学生(22)と同学部3年の男子学生(20)のほか、東京理科大夜間部の学生1人を逮捕した。県警などの調べによると、3人は今年5月、国際航空郵便を使ってオランダから大麻草を密輸入しようとした疑い。3人はいずれも起訴済みで、早大によると、早大生2人は執行猶予付きの有罪判決が確定しているという。
11月16日 産経新聞

■オランダからの密輸は未遂に終わったことになっていますが、どうやって当局が事前にそれを知ったのかは不明です。あけっぴろげに吹聴でもして当局の網に掛かったものなのか、或いは別口で逮捕した者からの情報によるものなのか、どちらにしても大学内に大麻ネットワークが出来ているのは確かなようです。慶応大学での大麻吸引の噂は以前からあったようで、在学生の口から外部に広がって行けば捜査当局も動かざるを得なくなるのも当然なのでしょう。


早稲田大は17日、2004年と今年、国際教養学部の日本人学生と米国の交換留学生の計4人が大麻取締法違反容疑(所持)で逮捕されていたことを明らかにした。関東信越厚生局麻薬取締部などが逮捕した3人とは別で、同大での逮捕者は計7人になった。学生はいずれも退学処分となっている。……4人は男子学生で、04年10月に当時20歳の留学生が逮捕され翌月起訴された。1年の同19歳の日本人学生も同年に逮捕されたほか、今年には留学生2人が逮捕された。3人は起訴が見送られた。
11月17日 時事通信

■退学処分で十分な社会的制裁を受けたと判断しての「起訴猶予」なのでしょうが、これに懲りて彼らが二度と再び薬物に手を出さないかどうか、こればかりは分かりません。それにしましても「国際教養学部」という学部名が虚しく響きますなあ。今回の麻薬騒動は、逮捕や公表が遅きに失した観もあるのですが、摘発する側の方にも暴力団がらみの覚醒剤犯罪にばかりに目を奪われていた傾向は無かったのでしょうか?以前から巷には噂が流れていたのですし、麻薬組織を摘発すれば「商品」や「顧客」に関する情報も得られていたに違いないわけで、まさか文科省あたりが縄張り意識と事なかれ主義で邪魔や圧力が掛かったなどというのではないでしょうな?!