旅限無(りょげむ)

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日本の幸福度、ブータン国王演説 其の四

2011-11-18 15:48:58 | 日記・雑学
■先の藤村官房長官の会見で言及された「携帯電話を使用した閣僚」は蓮舫大臣だったことが判明したそうです。

蓮舫行政刷新担当相が、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会前に行なわれた立食形式のカクテルパーティーの際、携帯電話を使用していたことが分かった。複数の出席者が証言した。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は徹底的に追及する構えを見せている。
藤村修官房長官は17日の記者会見で、晩餐会で閣僚が携帯電話を使用したことを認めたが、誰が使用したかは明らかにしなかった。蓮舫氏は記者団の質問に一切答えなかった。……
2011年11月18日(金) 産経新聞  

■蓮舫行政刷新担当相は脱税などで逮捕歴がある男性との関係がある!と一部週刊誌が指摘しており、国会でも西田昌司議員に詰め寄られて「逮捕歴を知らなかった」と弁解しております。看板倒れの「2位では行けないのか?」仕分けで人気急落してからは、菅アルイミ内閣では「節電啓蒙」などという訳の分からないポストを与えられて震災後の混乱期に何処で何をしていたのやら、さっぱり分からなかったものでしたが、野田ドジョウ内閣では二匹目の泥鰌を狙って行政刷新担当大臣として返り咲いたものの、あまりぱっとしないようです。今回の「携帯電話の使用」疑惑でも、後で使用したことは認めたものの、失礼のないように使ったんだ!と言い張っているそうです。

■さてさて欠席四人衆の最後は細野豪志環境相であります。欠席理由について記者会見で「(地方の)首長が上京し、ゴミの広域処理問題で東日本大震災の被災地を助けてもらえないかとお願いする機会があったので、そちらを優先した」とのことです。菅アルイミ内閣がもたもたしていて震災後8箇月も経っているのに瓦礫処理が進まず現地では困り果てている実情であります。震災復興の巨大プロジェクトの絵が描けず、官僚組織も動かせないから法律も作れない。地方議会とのパイプが無いから責任の押し付け合いばかり目立って実効が上がらない。細野環境相に特別の権限と財源があるのならば上京した首長と直談判するのも結構ですが、どうせ「聞き置く」だけで民主党得意の「全力を尽くします」「万全を期します」と言って見送るだけのことならば、国賓歓迎の宮中晩餐会を欠席するのは如何なものでしょうなあ。震災復興に熱心に取り組んでいると言いたいところでしょうが、取り組み方が間違っているような気がします。まともな政府であれば行政システムがフル稼働できる仕組みと法律を作って官僚と地方に任せればよいのですから、大臣は宮中晩餐会であろうと国際会議であろうと悠々と出席できる体勢になっているでしょうに?!

■菅アルイミ前首相を手本にしているわけでもないでしょうが、あれもこれも自分で背負い込んで身動きが取れなくなるかも知れないパフォーマンス型の行動が目立つ細野環境相の足元で呆れ果てたミスが露見してしまいました。


福島市内で採取されたとみられる放射性物質を含む土壌が環境省に送られ、職員が埼玉県内の空き地に投棄した問題で、細野豪志環境相は18日、自身について今後の在任期間中の大臣給与を全額、国庫に返納するなどの処分内容を発表した。職員の上司だった前官房総務課長(17日付で異動)は国家公務員法に基づく戒告、職員は同省の規定に基づく訓告、南川秀樹事務次官と谷津龍太郎官房長を同厳重注意の各処分とした。……横光克彦副環境相と高山智司環境政務官が2カ月間2割▽南川事務次官と谷津官房長が1カ月間1割--を自主返納することを決めた。…… 

■原発事故の被災地から対応の遅い政府に対する怒りを込めて放射能汚染土壌が環境省に送り付けられ、それを役人が放射線を計測して勝手に捨ててしまったという漫画みたいな話なのですが、元々、詳細な汚染情報も出せず、迅速な除染活動も実施せず、最終処分地も決められない政府の対応が問題なのですが、法律に従って仕事をするはずの行政府の省内で「違法投棄」が行なわれてしまうというのは緊張感も危機感も欠落している証拠でしょうなあ。何とも恐ろしい話であります。こんな役所が不法投棄を取り締まれるのでしょうか?


前総務課長は東日本大震災の現地災害対策本部(仙台市)の本部長を兼任していた。細野氏は「危機管理の要の官房総務課長を現地対策本部長と兼任させた責任は私にある。また、(送付された汚染土壌には)除染について国が責任を果たしていないという福島県民の気持ちが込められている」などと処分理由を説明した。
2011年11月18日(金) 毎日新聞

■ブータンを世界的に有名にした「国民総幸福度」を今回の国王夫妻は直接日本に持ち来たったような数日間でありますが、迎えた日本の幸福度は恥ずかしくも悲しいほど低いレベルのままで、民主党政権が続く限りはますます低下して行くようで心配であります。さっさと違法状態の選挙制度を変更して日本が潰れてしまう前に総選挙をして欲しいものです。ウソやペテンではなく、幸福度を上げる真の政策を提言する政治家をしっかり選びたいものでありますなあ。
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日本の幸福度、ブータン国王演説 其の参

2011-11-18 15:48:31 | 日記・雑学
■「適材適所」で組閣したはずの野田ドジョウ内閣には不可解な疑惑が次々に浮上して国会の議論でも追及されることが多いのでありますが、残念ながら余りにもレベルが低い話ばかりで寄り合い所帯の経験不足と人材不足の恥を晒すだけで、国家百年の計とは何の関係も無い馬鹿馬鹿しい子供の口喧嘩ばかりのようです。任命責任者の野田ドジョウ首相が「適材適所なのか?」と追求される閣僚の代表が素人=シビリアン・コントロールの防衛相でありますが……。

一川保夫防衛相が16日夜、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席し、同僚議員のパーティーで「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」とあいさつしていたことが17日分かった。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は参院での問責決議案提出を視野に徹底追及する構え。発言は参院予算委員会でも取り上げられ、一川氏は「軽率だった。申し訳なく思い、反省している」と陳謝した。藤村修官房長官は首相官邸に一川氏を呼び「宮中行事を軽視するかの発言は軽率だ。厳に慎むように」と厳重注意した。この後、一川氏は記者団に「自分の任務はしっかりと責任を持ってやっているつもりだ」と述べ、引責辞任を否定した。…… 

■国賓のブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会よりも大事なパーティというのは、三重県選出の高橋千秋参院議員が開いた政治資金集めの催し物だった由。政治家ではなく選挙屋たる面目躍如と申せましょうが、驚くべきことに主催者の橋議員は「日本・ブータン友好議員連盟副会長」という役職に就いているのだそうですぞ。自分が宮中晩餐会に招待されない小者だからと言っても、正式に招待を受けている防衛相を呼びつけて政治資金集めを手伝わせるとは言語道断!まずは「日本・ブータン友好議員連盟副会長」を謹んで辞任することから始めるべきでありましょう。実に失礼千万な話でありますからなあ。これが民主党流の外交か?!

■高橋千秋参議院議員は自身の公式ホームページでも「農業」を強調していますし、三重県農業協同組合中央会との関係が深いこともあり、農林水産省の元官僚出身の一川防衛相とも「農業」繋がりで仲がよいのかも知れません。農協やトヨタの労働組合との関係が深いと言われる橋議員が、どうして「日本・ブータン友好議員連盟副会長」になっているのでしょう?仔細は不明ながら農業技術支援の関係か、はたまた、菅第2次改造内閣で外務副大臣に就任したのが切っ掛けだったのか?もし外務副大臣時代の就任ならば東日本大震災発生の2日後3月13日夜、外務省で宿直勤務に就く直前まで外務省関連団体の20代の女性職員と酒を飲み、女性の体をあちこち触りまくったと週刊誌に書き立てられた頃の話かも?どちらにしてもブータン国民から「そんな副会長は要らない」と言われてしまいそうですなあ。


……宮中晩餐会には全閣僚が招待されたが、一川氏のほか山岡賢次国家公安委員長、川端達夫総務相、細野豪志環境相が欠席した。また、藤村氏は17日の記者会見で、晩餐会の席上で携帯電話を使用した閣僚がいたことを認めた上で「行事進行上支障を生じることのないように」と全閣僚に注意したことを明らかにした。携帯電話を使用した閣僚は特定できていないという。自民党は、他の欠席閣僚についても理由が適切だったかどうかを追及する構え。携帯電話問題についても閣僚の特定に向け、調査を始めた。
2011年11月17日(木) 産経新聞 

■改めて一川保夫防衛相の経歴を見てみますと、三重大学農学部農業土木学科卒業後、農林省入省。農林水産省災害対策室長を最後に退官して石川県議会議員(2期)、96年10月より衆議院議員(3期)、この間、農林水産委員会、国土交通委員会、議院運営委員会、国家基本政策委員会などの各理事を歴任。落選後、07年、参議院通常選挙において当選。ということです。鳩山サセテイタダク元首相が点火して爆発させてしまった沖縄基地移設問題を菅アルイミ前首相は拱手傍観の構えで先送りし、いよいよ野田ドジョウ内閣が本気で後始末しなければ日米関係が危うくなったという緊迫した状況で、どうして農業専門家が防衛相に任命されたのか?誰にも理由は分かりません。これまでも一川防衛相には数々の舌禍事件がありまして、さぞや自衛隊隊員の皆さんは腹立たしい思いを我慢していることであろうとお察し申し上げます。

■因みに雁首揃えて宮中晩餐会を欠席した山岡賢次国家公安委員長は、国会予算委員会などで集中砲火を浴びて吊るし上げられている身で「マルチを取り締まる立場の大臣の秘書官の母がマルチの会員、叔母がマルチのトップリーダーだ!」と暴露されて火達磨状態。自民党は18日午前に山岡消費者相に対する問責決議案を2011年度第3次補正予算案の関連法案成立後に参院へ提出する方針を固めた由。そして、川端達夫総務相は欠席理由を国会で追及されて「ずいぶん昔からの約束があり、調整を試みたが、どうしても昨日しかできないということで、結果として欠席することになってしまった」と意味不明の言い訳をしていたそうです。一体、何を約束していたのかこれから暴露されるでしょうが、余り格好の悪い「約束」でなければよいのですが……。細野豪志環境相については後述。


一川氏は9月2日就任に際して記者団に「私は安全保障に関して素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と発言して批判されたが、反省の色はない。
10月15日には地元・石川県の民主党県連パーティーで「防衛省、自衛隊の仕事は私より前原誠司政調会長のほうが詳しい」と発言するなど素人ぶりはむしろエスカレートしている。
米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、10月17日に沖縄県の仲井真弘多知事と会談した際は「私も航空自衛隊小松基地を抱える石川県に生まれ育った。地元の悩みや苦労は分かっている」と米軍基地と自衛隊基地を混同した。このとき仲井真氏は黙っていたが、2日後に会談した玄葉光一郎外相に「首相の指揮命令系統にある自衛隊と米軍基地が全く違うことが分かっているのか」と詰め寄った。…… 

■まだ就任してから3箇月にも満たないのに、これだけ危ない素人発言を連発しているのですから野田ドジョウ首相の任命責任は厳しく追及されるべきでありましょう。既に沖縄県民・県知事からの信頼を失い、おそらく防衛省内部でも邪魔者扱いされていそうですし、何よりも米軍関係者から相手にされていない可能性が濃厚で、これでは日本の安全保障はボロボロになってしまいますぞ。小沢グループからの数合わせ人事との噂があった一川防衛相就任ですから、下手に馘首したら党内分裂騒ぎが再発すると野田ドジョウ首相が考えているのなら、それは国益に照らして本末転倒と申せましょうなあ。


10月25日には衆院安全保障委員会で平成23年版防衛白書について「正直言ってまだ全部目を通していない」と発言。11月12日には、年内に提出予定の普天間飛行場移設に関わる環境影響評価書について「無理に提出するものではない」と言い放った。防衛省内での求心力は皆無に等しい。10月7日に起きた航空自衛隊小松基地所属のF15戦闘機の燃料タンク落下事故について同月11日の「防衛省は国民目線の観点が十分浸透していない」と身内を批判し、自衛官の総スカンを食った。南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣は外務省主導で決まり、当事者の防衛省はほぼ“蚊帳の外”。年内に控える航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の選定では、一川氏に政府・与党の調整役を期待する声はなく、北沢俊美前防衛相が「影の防衛相」として影響力を強めている。
2011年11月17日 産経ニュース 

■これでは税金泥棒!との誹りは免れないでしょう。こんな人物に大臣給与を誰が払いたいと思うでしょう?役立たず、石潰し、そして、今回の欠席事件で国賊の呼称も授与されそうですなあ。本来なら農政で守旧派として大暴れすべき経歴と素質の持ち主のようですから、きっと御本人も「どうして防衛相なんだ?」と思いつつ、でも初入閣は嬉しいなあ!と就任したのでしょうが、辞退すべきだったでしょう。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の弐

2011-11-18 14:10:34 | 日記・雑学
■演説の続きです。

私は若き父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化に導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時開発途上地域であったアジアに自信と進むべき道の自覚をもたらし、以降日本のあとについて世界経済の最先端に躍り出た数々の国々に希望を与えてきました。日本は過去にも、そして現代もリーダーであり続けます。このグローバル化した世界において、日本は技術と確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値における模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。…… 

■「確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値」なんだか随分と懐かしい言葉が並んでいるような気がします。「勤勉さ」が発揮できない非正規雇用制度の暴走が起こり、最近では超一流企業の経営者の中には「責任」の欠片も無い犯罪行為に走って会社を潰し兼ねない大事件を起こしてしまう愚か者が目に付きます。「強固な伝統的価値」は衰退著しい地方とグロテスクに巨大化する都市のどちらにも見当たらなくなって久しいような気がします。ブータン国王陛下は古きよき時代の日本のことをお話になっているような感じがしますなあ。


世界は常に日本のことを大変な名誉と誇り、そして規律を重んじる国民、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ国民、不屈の精神、断固たる決意、そして秀でることへ願望を持って何事にも取り組む国民。知行合一、兄弟愛や友人との揺るぎない強さと気丈さを併せ持つ国民であると認識してまいりました。これは神話ではなく現実であると謹んで申しあげたいと思います。それは近年の不幸な経済不況や、3月の自然災害への皆様の対応にも示されています。…… 

■我々一人ひとりがもう一度「規律を重んじる国民」になれるように努力したいものですし、大急ぎで「誇り高き伝統」を再発見して学び直す必要もありそうです。そして、「不屈の精神」と「断固たる決意」ができるマトモな政治家を是非とも選び直して自民党政権が産み育て民主党政権が増徴させてしまった役人天国国家を改革することが急務でありましょう。


……皆様、日本および日本国民は素晴らしい資質を示されました。他の国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は最悪の状況下でさえ静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処されました。文化、伝統および価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、我々の現代の世界で見出すことはほぼ不可能です。すべての国がそうありたいと切望しますが、これは日本人特有の特性であり、不可分の要素です。このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年数十年で失われることはありません。そうした力を備えた日本には、非常に素晴らしい未来が待っていることでしょう。この力を通じて日本はあらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国のひとつとして地位を築いてきました。さらに注目に値すべきは、日本がためらうことなく世界中の人々と自国の成功を常に分かち合ってきたということです。…… 

■これほど真正面から「素晴らしい未来が待っている」と断言して頂けるのは大変に有り難いことであります。確かにパニックや暴動も起こさず、多少の空き巣こそ泥は出没したものの、苦難にじっと耐えている日本は海外から高く評価されているようです。しかし、それは被災された多くの人々が賞賛されてるだけのことで、日本政府の対応が褒められているとは寡聞にしして知りません。今回の大震災と原発事故を本当に乗り越えられるのか?と自信がなくなりそうな時もありますが、もう一度だけ「あらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国」になる努力をしてみようと元気が湧く演説であります。


ご列席の皆様。私はすべてのブータン人に代わり、心からいまお話をしています。私は専門家でも学者でもなく日本に深い親愛の情を抱くごく普通の人間に過ぎません。その私が申しあげたいのは、世界は日本から大きな恩恵を受けるであろうということです。卓越性や技術革新がなんたるかを体現する日本。偉大な決断と業績を成し遂げつつも、静かな尊厳と謙虚さとを兼ね備えた日本国民。他の国々の模範となるこの国から、世界は大きな恩恵を受けるでしょう。日本がアジアと世界を導き、また世界情勢における日本の存在が、日本国民の偉大な業績と歴史を反映するにつけ、ブータンは皆様を応援し支持してまいります。ブータンは国連安全保障理事会の議席拡大の必要性だけでなく、日本がそのなかで主導的な役割を果たさなければならないと確認しております。日本はブータンの全面的な約束と支持を得ております。…… 

■「他の国々の模範」となるべく国民一人ひとりが頑張らねばなりませんが、残念ながら戦後60有余年「アジアと世界を導」くことなどまったく考えずに経済成長に邁進した日本には「国連安全保障理事会の議席拡大」に本気で取り組む外交能力は無く、小選挙区から出て来た地元密着型の政治家の中からは必要な人材が得られないのが実情であります。ブータンが熱心に応援して下さっても日本にその意思と能力が欠如していてばどうしようもありません。


ご列席の皆様、ブータンは人口約70万人の小さなヒマラヤの国です。国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように人々のあいだに深い調和の精神を持ち、質素で謙虚な生活を続けています。今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気や品位を持ち先祖の価値観によって導かれる社会。そうした思いやりのある社会で生きている我々のあり方を、私は最も誇りに思います。我が国は有能な若きブータン人の手のなかに委ねられています。我々は歴史ある価値観を持つ若々しい現代的な国民です。小さな美しい国ではありますが、強い国でもあります。…… 

■多くの場合、自画自賛は聞くに堪えない不快なものですが、ブータン国王陛下の演説は素直に感動できる誠実さがあるように感じます。はたして日本人が同じ調子で自国を語れるのだろうか?「手付かずの自然」などはほとんど残されていませんし、僅かに残った自然もマスコミが玩具にして人々を呼び寄せて荒らしてしまいますし、相変わらず自然災害には弱い面が目立ちます。精神や文化の面でも「我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています」と胸を張って言える状況ではなさそうです。自民党政権末期、安倍元首相が「美しい国」と言ったことがありましたが具体的な政治ビジョンにならないまま忘れ去られてしまいましたなあ。


それゆえブータンの成長と開発における日本の役割は大変特別なものです。我々が独自の願望を満たすべく努力するなかで、日本からは貴重な援助や支援だけでなく力強い励ましをいただいてきました。ブータン国民の寛大さ、両国民のあいだを結ぶより次元の高い大きな自然の絆。言葉には言い表せない非常に深い精神的な絆によってブータンは常に日本の友人であり続けます。日本はかねてよりブータンの最も重大な開発パートナーのひとつです。それゆえに日本政府、およびブータンで暮らし、我々とともに働いてきてくれた日本人の方々の、ブータン国民のゆるぎない支援と善意に対し、感謝の意を伝えることができて大変嬉しく思います。私はここに、両国民のあいだの絆をより強め深めるために不断の努力を行うことを誓います。改めてここで、ブータン国民からの祈りと祝福をお伝えします。ご列席の皆様。簡単ではありますが、(英語ではなく)ゾンカ語、国の言葉でお話したいと思います。
「(ゾンカ語での祈りが捧げられる)」
ご列席の皆様。いま私は祈りを捧げました。小さな祈りですけれど、日本そして日本国民が常に平和と安定、調和を経験しそしてこれからも繁栄を享受されますようにという祈りです。ありがとうございました。 

■実に忝(かたじけな)い気持になる名演説でありました。見事な親善外交と申せましょう。政治家の外交演説とは次元が違う格調の高さ、深い精神性が満ちております。やはり伝統的な精神文化を継承する人格は貴重な存在なのだと再認識させられます。せっかくの清清しい気分が台無しになってしまうのが残念ですが、ブータン国王両陛下をお迎えして我が日本国の民主党政権は実に恥ずかしい騒ぎを起こしてしまった話に移らねばなりません。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の壱

2011-11-18 14:02:02 | 日記・雑学
■東日本大震災と原発事故が起こって以来、日本の政治家は勿論のこと作家やジャーナリストなどの文筆家からさえも永久保存版の言葉が聞けないことは非常に残念なことであります。それだからこそ今年3月16日にビデオ・レターとして公表された天皇陛下のお言葉が折に触れて思い出されるのであります。深い悲しみを同情と労りの言葉に包み込み、慰めと励ましを分かり易く語り掛けて下さる歴史に残る名文は、日本経済新聞以外の新聞は1面に掲載しなかったという事実と共に長く記憶に留めておくべきでしょう。それにしましても御高齢の陛下が日帰りも含めて被災地を訪れては苦境にある人々に直接語り掛け続けねばならなかったのは、民主党政権の菅アルイミ内閣が政局の内輪揉めばかりしていて復興や事故対応に「全力」を注いでいなかったからだったと思われます。皇族内の諸問題も報じられているとは言え、天皇陛下の御不例は震災・原発事故に真摯に立ち向かい続けたお疲れが原因であるとすれば、菅アルイミ前首相の罪は実に深いものがありましょうなあ。

■ましてロクでもない組閣人事を弄び、年に数日だけの御静養を中断させて認証式に引っ張り出したのは菅アルイミ前首相でしたし、その前の鳩山サセテイタダク元首相の時代には素人内閣の閣議がまとまらず、だらだらと無駄話を続けて結論が出るのが夜になることもあったそうで、内容を熟読の上で署名捺印せねばならない天皇陛下はずっと閣議決定書が届くのを待って御就寝時刻がどんどん遅くなることもあったやに聞きます。御臨席の皇族方に対して「早く座れよ!」と文句を言った某委員長もいましたし、民主党はどこか子供染みた迂闊さが目立つ寄り合い所帯なのであります。

■さてさて、自国内でも東南アジア地域でも絶大な人気を得ているブータン国王が来日中で、会見を楽しみになさっていたのに入院治療中とて晩餐会などの歓迎式典に参加できなかった天皇陛下はさぞや無念であられましょうが、そんな陛下の御心中も察せず野田ドジョウ内閣の閣僚数名はトンデモない無礼を働いてしまったのは恥ずかしい限りであります。公式歓迎晩餐会を選挙屋稼業に忙しいとの理由で平然と欠席した閣僚連中も以下の国会演説は何事も無かったような顔をして拝聴していたのでしょうか?耳の鼓膜と脳みそが正常に接続されているなら恥ずかしくてその場から逃げ出したくなったはずなのですが……。


天皇皇后両陛下、日本国民と皆さまに深い敬意を表しますとともにこのたび日本国国会で演説する機会を賜りましたことを謹んでお受けします。衆議院議長閣下、参議院議長閣下、内閣総理大臣閣下、国会議員の皆様、ご列席の皆様。世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会のなかで、私は偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様の前に、ひとりの若者として立っております。皆様のお役に立てるようなことを私の口から多くを申しあげられるとは思いません。それどころか、この歴史的瞬間から多くを得ようとしているのは私のほうです。このことに対し、感謝いたします。…… 

■このように呼び掛けられた「国会議員の皆様」の中に、世が世ならば陛下の宸襟を乱す不忠の者!と誅される不心得者が混入しておりますぞ。それにしましても、いかに外交辞令とは申せ「世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会」とまで言われてしまいますと、一有権者として穴があったら入りたくなりますなあ。なるほど国会は野党の野次と怒号が渦巻く中で与党は役人の作文を棒読みするだけなのですから、野田ドジョウ総理大臣閣下は謹んで間違いを訂正して差し上げたら如何でしょう?今の国会議事堂の中に「偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様」など存在していたのか?と国王の御言葉を拝聴しながらドギマギしてしまいました。


妻ヅェチェンと私は、結婚のわずか1ヶ月後に日本にお招きいただき、ご厚情を賜りましたことに心から感謝申しあげます。ありがとうございます。これは両国間の長年の友情を支える皆さまの、寛大な精神の表れであり、特別のおもてなしであると認識しております。
ご列席の皆様、演説を進める前に先代の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク陛下およびブータン政府およびブータン国民からの皆様への祈りと祝福の言葉をお伝えしなければなりません。ブータン国民は常に日本に強い愛着の心を持ち、何十年ものあいだ偉大な日本の成功を心情的に分かちあってまいりました。3月の壊滅的な地震と津波のあと、ブータンの至るところで大勢のブータン人が寺院や僧院を訪れ、日本国民になぐさめと支えを与えようと、供養のための灯明を捧げつつ、ささやかながらも心のこもった勤めを行うのを目にし、私は深く心を動かされました。…… 

■王族の名前にもチベット文化の影響が見られるようにブータンはチベット仏教文化圏ですから慈悲の心に満ち溢れる信仰心の厚い国なのであります。変なブータン・ブームが起こって怪しげな宗教商売の材料にするような不心得者が出て来ないことを祈るばかりですが、旧オウム真理教の集団が急速に信者数を増やしているなどというニュースを耳にしますと、韓流ブームの次にブータン・ブームを起こしてやろうと考える輩が出て来ないとも限りませんから御用心、御用心。


私自身は押し寄せる津波のニュースをなすすべもなく見つめていたことをおぼえております。そのときからずっと、私は愛する人々を失くした家族の痛みと苦しみ、生活基盤を失った人々、人生が完全に変わってしまった若者たち、そして大災害から復興しなければならない日本国民に対する私の深い同情を、直接お伝えできる日を待ち望んでまいりました。いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。…… 

■ブータン国王陛下がお感じになった「深い同情」こそ、日本の天皇陛下が決してお忘れにならない御心痛と同じもので、新婚旅行でもある来日の貴重な1日を福島県訪問に割くというのも同じ精神をお持ちになっているからでありましょう。今も地道なボランティア活動に精を出している多くの人々がいることを改めて思い出し、しっかり愚かな政府を監視して次の総選挙では決して間違いを繰り返さないよう準備しておきたいものです。


皆様が生活を再建し復興に向け歩まれるなかで、我々ブータン人は皆様とともにあります。我々の物質的支援はつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からの真実味のあるものです。ご列席の皆様、我々ブータンに暮らす者は常に日本国民を親愛なる兄弟・姉妹であると考えてまいりました。両国民を結びつけるものは家族、誠実さ。そして名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちなどであります。2011年は両国の国交樹立25周年にあたる特別な年であります。しかしブータン国民は常に、公式な関係を超えた特別な愛着を日本に対し抱いてまいりました。…… 

■「名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ち」を何処かに置き忘れて来てしまった我々の来し方行く末を考えさせられますなあ。そんな強い気持が日本中に満ちているのなら、毎年3万人以上もの人が自殺し続けることもないでしょうし、1000兆円もの国の借金が積み上がったり年金制度が食い荒らされてしまうこともなかったはずなのですが……。

円高と日銀のお仕事 其の伍

2011-11-05 15:02:51 | 日記・雑学
■対談も大詰め、これから日本が採るべき経済政策のお話です。

――では、最後のまとめとして、これから日本はどのような経済政策を取るべきなのかについて、意見を聞かせてください。

若田部 第1にはやはり震災復興が大事です。まだ9万人弱の人が避難所生活を送っているというのは異常な状態だし、仮設住宅に入れても、働く場所がない、仕事がない、お金がない。場合によっては食事を切り詰めるなんていうのは、文明国ではありません。まずはそこに重点的に対応する。それからマクロ経済として次の課題はデフレからの脱却で、経済成長路線に復帰し、そういう条件が整ってきて財政再建、そしてさまざまな制度改革という順番だと思います。……

――野田首相の国会の答弁では、現役世代が痛みを分かち合うと言っていますよね。

若田部 痛みを分かち合う心は持っていても、痛みは痛みなんですよね。……「仕方ない」と思って税金を払ったあとは、みんな財布のヒモをしめる。そのことが一番大事な復興需要みたいなものが出てくるのを阻害します。そうするとデフレがさらにひどくなりかねない。悪いことばかりです。だから、政策の流れでいえば、復興から考えなくてはいけないので、マクロでいうと財政を出動させる。そうする円高が進んでしまうかもしれないので、円高対策、震災復興、そしてデフレ脱却を考えると、一層の金融緩和を行う。普通に考えれば、こういうことだと思います。……
 
■この①円高対策、②復興政策、③デフレ脱却という順番は非常に重要だと思います。これを無視して②のために「まずは増税だ!」と動き出したら③のデフレ対策が消えて無くなり①の円高対策は永久に不可能になってしまうでしょう。日本を滅ぼすような話を誰が野田ドジョウ前財務大臣に吹き込んだのでしょうなあ?


……気をつけないといけないのが、1997年に消費税増税や社会保険料の引き上げで、国民の負担を9兆円増やし、その後不況になった経験です。あのときには、アジア通貨危機が起きたので、不況に陥ったのはアジア通貨危機が主因だという話になっているが、負担の増加が悪影響をもたらしたことを否定できる人は少ない。今回も、例えば2013年度から増税をやるとなると、ちょうどギリシャがデフォルトするときと、一緒になりかねません。

高橋 その可能性はありますね。

若田部 昭和恐慌のときも、いまと似たような感じがあった。29年の10月に金本位制への復帰を決めて、30年の1月に実施した。大恐慌という大嵐がきているときに、窓を開けたようなもだという言い方があるが、歴史を生半可に知っている人の中には、金本位制への復帰は正しかったけれども、大恐慌がやってきて、日本経済がダメになったという言い方をする人もいます。今回も、「増税は正しかったけれども、ユーロ危機が……」と、これと似たような言い方をされる可能性もある。

高橋 97年の時も「消費税増税は正しかったが、アジア金融危機が……」と似たような言い訳があった。……ギリシャのCDSからみれば、多分、増税とギリシャのデフォルトは同じタイミングになる。そのときに震源地ではない日本の景気がどうして悪くなるのか。リーマンショックのときも、景気が急激に落ち込んだけれども、実はその前から悪くなっているんですね。2006年に量的緩和を解除し金融引き締めに転じた。その約半年後から景気が悪くなってくる。悪くなっているときに、リーマンショックで後ろから押されたために、大変な景気後退になったわけです。だから今回も、円高や増税で雰囲気が悪くなってきているときに、後ろから押されると大変ですよ、ということを、言っているわけです。

若田部 今の政府は大嵐が来ることがわかっていながら、自ら窓を開け放とうとしているということです。 

■以上で橋・若田部対談は終了であります。大嵐が来るのを窓を開いて待ち構える野田ドジョウ首相の心中や如何に?やはり、既に「窓を開けたのは正しかったのだが、嵐が来たのが不運だった」という言い訳を誰かさんが用意して手渡しているのかも知れませんなあ。

円高と日銀のお仕事 其の四

2011-11-05 15:02:35 | 日記・雑学

――「実質成長率信仰」については、どう考えますか。

高橋 実質成長率は高いほうがいいに決まっている。ただ、実質成長率を上げるのは結構、難しい。もし、実質成長率を上げる確実な方法がわかったら、ノーベル経済学賞ものです。実質経済成長率を上げるには基本的には、生産性を上げないといけないが、生産性は物的資本、人的資本、天然資源、技術の組み合わせで決まるので、こうすれば上がるという方程式はありません。ただ、実質成長率を上げるためには、企業が設備投資をどんどん行って、その中に技術が織り込まれているという設備投資経由によるものが、一番、生産性を上げる可能性が高い。

若田部 技術が設備に体化されるというような形ですね。

高橋 そうです。それで実質金利(=名目金利-期待インフレ率)をある程度下げないと、設備投資が出てこない。だから、期待インフレン率を高めて実質金利を下げると、設備投資が出てくるから、実質成長率を上げる方向に働くと、私は実は思っている。今の状況では、日本はデフレ、つまりインフレ率がマイナスで実質金利高いから、設備投資がでてこない。実質金利は為替にも関係する、実質金利の高いほうの通貨が高くなるから。実はお金の量が少なくなると、インフレ率が低くなって、実質金利が高まる。デフレ、円高、設備投資不足も実質金利を介して、みんな整合的につながっている話なんです。…… 

■実質金利と名目金利のややこしい話が、デフレや円高との関係から説明されると比較的分かり易くなります。今の日本が苦しむ経済的な停滞は、決して大地震や津波のような自然災害ではないというのが橋さんの主張であります。では、誰がどんな大間違いをしているのか?


……小泉政権のときに、要するにみんなが予想インフレ率がわからないと言うから、私が物価連動国債を新たに発行できるようにしたんです。一生懸命やって、実現まで2年かかった。この物価連動国債と通常の固定金利の国債を比べることで、市場がインフレ率をどう予想しているかわかる。今の日本はこれを計算すると、これからの5年間でマイナス0.5%です。アメリカを同様に見てみると、予想インフレ率は1.5%くらいある。名目金利の差は小さいけれども、実質金利は2%程度も差がある。

若田部 アメリカの方が予想インフレ率が高く、反対に実質金利は日本よりが低いということですね。それで、実質金利の高い日本円に需要が集まって円高になる。当然ですよね。…… 

■日銀にとって「インフレ」という言葉はすべての辞書から削除したいくらいに忌み嫌われる呪わしい響きがあるようなので、「インフレ・ターゲット」だの「予想インフレ率」だのは耳を塞いでしまいたくなる話でしょう。手が付けられないインフレよりはデフレの方がずっとマシだ、と信じて疑わない病気が蔓延している巨大な組織を消毒して治療するのはほぼ不可能かも知れませんなあ。ここから「日銀があと70兆円お札を刷れば円・ドルレートは100円になる」という橋説に入ります。


若田部 ただ、円高是正論者の中には、円高を是正するために金融緩和の必要性は分かるけれども、すでに日本は十分に金融緩和をしてきた、この失われた20年をみると、欧米の中央銀行に比べて、一番自分自身のバランスシート(貸借対照表)を拡大して、金融緩和を行ったのは日銀だという人もいますね。

高橋 これには完璧な誤解があると思います。金融緩和の度合いをGDPと中央銀行のバランスシートの大きさの対比でみるんだけれども、GDPに対する比率は、もともと現金通貨がどれだけ決済などに使われているかで、国によってそれぞれ違う。アメリカのようにクレジットカードやチェックなどが多く使われて、現金通貨をあまり使わない社会というのは、GDPに対する中央銀行のバランスシートの比率は低い。だから、金融緩和の度合いを見るときに大切なのは、その水準ではなく、どのくらい変化したかという変化のほうが重要です。例えば、アメリカは低いレベルから、ものすごくGDPに対する中央銀行のバランスシートの比率を上げた。日本は高いレベルから少し上げただけで、その意味では金融緩和をしていません。それで、結果的に日本は円高になっている。…… 

■金融緩和政策の度合い(効果)は「水準」ではなく「変化」の方が大事だという話は、橋氏は雑誌やテレビで何度も語っていますが、「日本は十分に金融緩和をしてきた」説は、日銀が垂れ流している責任逃れのヨタ話の類だと分かっているのに大手新聞もテレビのニュース解説番組でも知らん振りして日銀の伝令役に徹しているのは実に不思議であります。


高橋 為替の話をすると、1985年のプラザ合意の1年間ほどあとから、実は円・ドルレートは、日本のベースマネーをアメリカのベースマネーで割り算した数値にほとんど近くなる。……国際金融のマネタリーアプローチから自然に出てくる。今だと大体、日本のベースマネーは約130兆円で、アメリカのそれは2兆ドルくらいだから、割り算すると円・ドルレートは1ドル大体65円になる。本当にこれはね、ここ25年で7~8割くらいの確率で当たる。だから、1ドル100円くらいにするためには、あと70兆円ほどお札を刷ればいい。70兆円マネーの供給量を増やしても、少しインフレになるくらいだと思います。しかも日本はいま国内が大変だから、この金融緩和は国内の金融政策としてやるということす。だから、他の国は日本に対して何も言えない。…… 

■実際にリーマン・ショックを起こして世界中に多大なご迷惑をかけた米国は、一言も謝りもせずにドル紙幣を洪水のように国際市場に溢れさせて金融破綻を避けるのに必死でありますし、EUもギリシアばかりを責めていますが、ちゃっかり共通通貨のユーロをダンピング同然に安値に誘導しているという現実を踏まえて、議論はメディアが盛んに流している「近隣窮乏化」説の誤りを衝いて「通貨安競争は大恐慌の時に世界経済を混乱させたとして、悪者扱いされているけれども、最近の大恐慌研究ではそうではない。金融緩和によって通貨を安くした競争は、基本的に悪くなかったというのが結論だ」という新しい理論が紹介され、帝国主義的なブロック経済圏の少なくとも内側では「近隣富裕化」の効果があったとの分析まで出ているのだそうです。

■為替問題の結論としては「貧しくなりたくないのであれば、近隣窮乏化であろうがなかろうが、通貨安競争には参加するしかない」という覚悟の問題になるというお話です。

円高と日銀のお仕事 其の参

2011-11-04 14:00:28 | 日記・雑学
■日銀と大蔵省との対立と軋轢は戦後ずっと続いていたのは有名な話で、日銀総裁人事や公定歩合の引き上げ問題などでは政権与党だった自民党も混ざって三つ巴の大喧嘩をしていたものです。そして、その陰には新聞やテレビがまったく触れない米国という真の支配者がいて、プラザ合意の頃から日本の富を吸い取って米国の赤字を裏から支えようと悪知恵を働かせて陰に陽に圧力をかけていたという話も既に秘密ではなくなっているようです。

若田部 それは日銀の独立性にかかわる問題ですね。97年の日銀法の改正の時には、政府部内ではそういう議論はしなかったんですか?それともする余裕がなかったのですか?

――それまでの日銀法では、政府に日銀の役員の解任権や、大蔵(財務)大臣に業務の命令権があったが、新日銀法ではそれらが廃止されて、日銀の独立性が高まりましたね。

高橋 日銀法改正というのは、当時、大蔵省(現・財務省)が接待スキャンダルに追われていて、それから目をそらすために、仕掛けて出してきたやつだから(笑)。もう動機が不純なんですね。だから、日銀の独立性について議論ができるわけない。大蔵省が「独立性がちょっと……」などと言ったら、当時の雰囲気では「まだ大蔵省は懲りていない」と、言われてしまう。だから、中央銀行の独立性がどうあるべきかについて、実は真面目な議論ができなかった。同時期に、バンク・オブ・イングランド・アクト(イングランド銀行法)も改正が行われていて、当時から、すでに中央銀行の独立性というのは、金融政策という手段に関する独立性であって、目標の独立性ではないということは、私はだいたい知っていました。しかし、日銀法の改正に当たっては、大蔵省はそうした資料は提出しなかった。 

■難しい財政問題などはさっぱり分からない国民でも大蔵省の悪口が言える材料となったのがあの「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの過剰接待の実態暴露事件でしたが、今から考えれば護送船団方式の鉄壁の守りを乱暴に破るために米国のCIAあたりが仕組んだ謀略だったとの指摘も出来るようですが、役所の中の役所と自他共に認めた大蔵省は悪口雑言の嵐の中で解体されたのでした。バブル経済のお祭り騒ぎとその後の「失われた10(20)年」も米国が仕掛けた急激な円安が発端だったのですから、解体された大蔵省としては納得できない非難も多かったでしょうし、棚から牡丹餅の新日銀法で「独立性」を手に入れた日本銀行は大喜びだったのでしょうが、どちらも成長政策を打ち出さないままリーマン・ショックとギリシア危機の時代に突入してしまったのは残念至極。


高橋 日銀にはできるだけ国債は買いたくないという、持って生まれた本能みたいなものがあります。まず金融を緩和する、金利を下げると負けという意識がある。国債を沢山買うのも金融緩和になってしまうから、要するに両方とも負けということになってしまう。だから、そういう意味でバイアスがかかっていて、日銀法改正以前は、実質的に大蔵省の子会社だったということが、心理的に影響していると思う。実際に、昔は「国債を買え」と、言ったこともあります。

若田部 その根拠は財政法第5条但し書きですね。予算総則の「第5条 国債整理基金特別会計において、「財政法」第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする……」。つまり、日銀が保有する国債のうち、償還される分については、日銀が直接引き受けることができるということですね。

高橋 その条項は予算総則ですね。それが有名になったのはうれしい。私は1990年代前半に(大蔵省)理財局の担当課長補佐だったのですが、これを使って日銀に国債を引き受けてもらっていました。予算総則では、引受は日本銀行が保有している国債の今年度の償還の範囲内ということになっているので、実はそれを目一杯やったところで、ベースマネー(日銀が供給する通貨のこと。市中に出回っている流通通貨と日銀当座預金残高の合計)は増えないというレベル。だから、日銀の直接引き受けは「禁じ手だ、禁じ手だ」というのだけれども、その禁じ手をずっとやってきたわけです。…… 

■この「禁じ手だ!」の大キャンペーンが割と成功したことが不思議であります。新聞各紙がお先棒を担いで「禁じられている」報道に熱心だったのも、おそらくは記者クラブの癒着構造が原因なのでしょうが、財政再建の錦の御旗を押し立てて「増税だ!」と一心不乱の財務省も円安になって景気が回復したら税収が増えてしまい、悲願の増税が出来なくなるから日銀と結託して情報操作をしている節があるようです。


若田部 日銀が国債の引受を嫌がるときには、それが財政をファイナンスすることになるという理由を挙げますね。直接引受をやると、財政や通貨に対する信用が失われると……。

高橋 それは観念論でしょう。これまで財政法の但し書きを使って、日銀が直接引受をやってきて、国債の信認が失われて、長期金利が急上昇したことはありません。……今年度、日銀が保有している国債の償還額は30兆円。今年度は12兆円を日銀が引き受ける計画なので、償還額に対して18兆円の余裕がある。だから、日銀が国債を引き受ければ、増税しなくても、復興財源は捻出できます。…… 

■ここに出て来る「増税しなくても」の一節が重要ですなあ。国会では民主党のマニフェストを今こそ実行して公務員給与2割カット!を法制化すれば増税予定分は捻出できるじゃないか!?と至極当たり前の議論が吹っ掛けられているのですが、野田ドジョウ首相は役人作文を俯いて棒読みするばかりで議論が噛み合ったことがありません。次の総選挙で、もしも奇跡的に民主党が原型を留めていたとして、一体、どんなマニフェストをどの面さげて発表するのか、今からぞくぞくするほど楽しみでありますなあ。

円高と日銀のお仕事 其の弐

2011-11-02 15:53:53 | 日記・雑学
■自称・脱藩官僚の橋洋一さんと早稲田大学政治経済学術院教授の若田部昌澄さんがダイヤモンド・オンラインで特別対談をしております。橋さんは雑誌やテレビなどで自説を発表していますが、雑誌記事が引用するコメントは前後の文脈に恣意性がありますし、テレビでは悪い癖の「一言で」と話が細切れになってしまいますから、オリジナルの発言が損なわれない対談記事は貴重であります。

■野田ドジョウ内閣が一心不乱に推し進める増税路線の指南役・黒幕の財務省と、根本的に自分の使命を勘違いしている日銀が日本経済を奈落の底に引きずり込むかも知れないという恐ろしい話は傾聴に値すると思います。原文は非常に長いので要点だけを抜粋しますが、前後の脈絡はしっかり残してあります。


高橋 ……名目成長率を上げることが「できない」という議論をやっているのは、世界中で日本だけです。1998年に現在の改正日銀法が施行されて、いままで約160ヵ月が経つ。日銀がいう物価安定は、消費者物価指数(CPI)の伸び率がゼロから2%と考えられるけれども、CPIがゼロから2%に収まった確率というのが、わずか1割6分。……他の主要国はどうかというと、中央銀行が目標としている物価安定の範囲に収まる確率は約8割。しかも、日銀の場合は目指す範囲の下に外した確率が8割です。……インフレターゲットではなく、まるでデフレターゲット。 

■日銀のお仕事は「インフレ防止」だそうですが、失われた10年以来、日本は不況下のデフレ・スパイラルを転がり落ちているのですから、誰が総裁や理事になろうと何もせずに昼寝をしていれば絶対にインフレになりそうもありませんから、こんなに気楽な商売は他に無いかも知れませんなあ。しかも驚くほど高い給料付き!


若田部 日銀の方に伺うと、日銀は実質的にインフレ目標を採用している、それどころかインフレ目標を超えて、世界的にみても先進的な金融政策をやっているという言い方をしています。その目標値は1%だともいいます。しかし、仮に日銀が1%でインフレ目標をやっているとすると、他の中央銀行と比べて一番の問題は実績値がともなっていないことですね。

高橋 みんな物価を上げることは「できない」という議論はするのだけれども、私に言わせれば「やっていない」としか言いようがない。だって統計的に考えると、物価上昇率がゼロからマイナス1%の間に8割も収まっていたら、普通はゼロから2%の間に8割収めることができるはずだと思いますよ。逆にいうと、日銀は物価に対するコントローラビリティは高くて、能力が高いと思うんです。ただ、強烈に独立性が強くて、失敗しても……。

若田部 ペナルティがない。

高橋 そう。これは不思議な制度ですね。失敗してもペナルティがないという制度は制度としてはあり得ない、というのが私の理解です。ただし、今の日銀法ではダメな指揮官をクビにすることができない。私の結論は簡単で、目標が達成できなければ、できそうな人に代わってもらうということです。 

■今の白川総裁を選んだのは実質的に現政権与党の民主党でした。日本中枢を支えるという名目で張り巡らされた官僚世界の既得権の代表たる順送り人事に乱暴に介入して破壊した後遺症は恐るべき結果をもたらしたのかも知れません。しかし、この大事件に関して新聞やテレビの大手メディアは沈黙を守ったままなので、素人判断では何も申し上げられないのが残念至極。だた、クラッシャー小沢の全盛期だった日本新党・細川政権時代に掟破りの動きを見せたエライ人が長い雌伏の天下り時代を経て民主党政権になってから日本郵政の親分に返り咲いたことは衆知の事実であります。思えば、二十世紀が産み落としたとんでもない鬼っ子の原子力発電所を押し付けられた電力会社も、ペナルティを免れる密約を自民党政権と結んでいたらしい尻尾がちょろちょろと見え隠れしている昨今ではあります。

■田中角栄の秘蔵ッ子とマスコミが腫れ物にでも触るように遠巻きに扱っていた昔をころりと忘れて、天下の極悪人みたいに鼻を摘んでピンセットで挟むような扱い方をされているクラッシャー小沢が、古巣の自民党憎しの私的感情と父親の代から受け継いだ「二大政党制」の壮大な夢を実現しようと頑張った結果の「政権交代」でありましたのに、あれほど煽りに煽ったマスコミが「数は力だ!」の底深い原理原則に則って政権交代をした直後から、一体、誰がこつこつと無党派層の票を掘り起こして頭数を揃えて、極めて現代の日本に似つかわしい素人寄り合い所帯の政党を急ごしらえするという離れ業をして見せたのか?世襲三代目のボンボン鳩山が歌って踊って自分からコケたのはご愛嬌として、いよいよ小沢政権かと思ったら菅アルイミ前首相が転がり出て来て多くの旧・投票者は唖然・憮然としたはずであります。さはされども、日銀総裁の人事を幼子の玩具のように政権交代の具にしてしまった罪は歴史に刻まれて然るべきでありましょうなあ。

円高と日銀のお仕事 其の壱

2011-11-02 15:49:51 | 日記・雑学
■政権交代マニフェストを投げ捨てて増税路線をひた走る野田ドジョウ政権の尖兵となって小柄な安住蔵相が不慣れな財政を預かっている姿は、「政治主導」の四文字を民主党は苦い思い出と共に忘れ去ったことを証明しているようであります。あれこれ羅列してあったマニフェストですが、今となってはあれこれも空想と妄想を寄せ集めた大嘘だったのは明らかで、少なくとも自民党(途中から公明党も参加)政権が残した負の遺産を裏も表もしっかり「情報公開」して、きっちり「仕分け」して国民に告げ知らせてくれるかと少しばかり期待したものでしたが、国民が嫌気をさした自民党の悪弊のほとんどを受け継いで不思議なくらいに早々と政権末期の頃の自民党と民主党は瓜二つのように見える昨今であります。

■期待された情報公開が実現しないのは、政権を取ってから初めて官僚から知らされる話に度肝を抜かれて日夜繰り返される「ご説明」の洗脳教育によって閣僚になった議員が順に情報隠しの手先になってしまったからなのでしょうなあ。でも、素人臭い情報管理の甘さが変な場面で出ることもあるようです。今回の円売りドル買い介入に際して安住蔵相は実に饒舌でありました。介入の日時、指し値売買方式の採用、続行の予告まで、すべては極秘裏に行なわれるべき為替介入について、これほどぺらぺらと喋る蔵相は前代未聞かも?

■歴史的円高が続いて輸出企業は為替差損を嫌って日本を離脱しようとするのは経営方針として間違ってはいないのでしょうが、円高不況に続いて雇用が失われ続けたら日本に希望は無くなってしまうでしょう。円高の原因はギリシアから始まったユーロ危機や米国の財政悪化だと聞かされると何だか自然災害みたいなものなのかと思ってしまいますが、本当は財務省の増税政策が進むようにデフレ不況が長引き、円高不況も重なるように日銀が協力して増税路線を後押ししているとの指摘もあるのですが……。


日銀は(10月)27日の金融政策決定会合で、歴史的な水準の円高や欧州債務問題の混乱による景気の下振れ懸念に対応するため、追加金融緩和を決定した。市場への資金供給のための基金のうち、長期国債を対象に資産買い入れ枠を5兆円増額し、55兆円とする案を8対1の賛成多数で可決。政策金利は年0~0.1%とする事実上のゼロ金利を全員一致で据え置いた。
追加緩和は、基金の10兆円増額を決定した8月4日以来。反対した宮尾龍蔵審議委員は基金を10兆円増額するよう提案し、1対8で否決された。日銀は声明で「国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要」と警戒感を示した。
2011年10月27日(木) 時事通信 

■今週は11月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を皮切りに、3~4日には主要20カ国・地域(G20)首脳会合、さらには欧州中央銀行(ECB)理事会とイベントが目白押しなのだそうで、日本は自由貿易に抵触する意図的な為替操作は出来ないだろうと思われていた10月31日午前10時のサプライズ介入でありました。それに先立って日銀が毎度御馴染みの中途半端な金融緩和を形だけやっておいたという話であります。

■一時は78円台を突破して79円15銭あたりまで円が急落しましたが、前回の介入と同様に元の木阿弥・三日天下になってしまいそうです。安住財務相は「実体経済を反映しない一方的・投機的な動きが続いている」から「納得いくまで介入する」と啖呵を切っているようですが、どうせアメリカの国債を買いますことにしか使えないドルを買い込むより別の円の使い方が今の日本にはたくさんあるような気もしますが……。

■介入の前日、安住財務相を「オオカミ少年」呼ばわりする新聞記事がありましたが、それに腹を立てての決断だったのではありますまいな?!。


超円高を阻止しようと安住淳財務相が「口先介入」を連発するなか、外国為替証拠金取引(FX)の個人投資家や一部のヘッジファンドが、せっせとドルを買い込んでいる。実際に為替介入が行われて円安ドル高に戻った際に買っておいたドルを売って円を買えば、大もうけできるためだ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切れば、「待ってました」と大量の円買いが出され、円高是正の効果が帳消しとなってしまう恐れが高まっている。…… 

■4円もの急速な円安で、一体、誰が得したのか?誰のための介入だったのか?まさかとは思いますが、長い間政治資金の不足に苦しんでいた民主党議員や関係者の中にインサイダー情報を利用して濡れ手で粟の荒稼ぎをしたような悪い奴はいなかったのでしょうな?!外国人からの違法献金など民主党が抱え込んでいる「政治とカネ」の問題は自民党時代の疑獄事件よりは規模は小さくとも、胡散臭さは際立っておりますからなあ。


「必要があれば、断固たる措置をとる」。25日から3日連続で円相場が戦後最高値を更新し、1ドル=75円67銭まで上昇。安住財務相も連日のように介入示唆を続けた。証拠金の何倍もの取引ができるFXの投資家は、「円高局面では、『今がドルの底値』と考え、円安ドル高に戻った際の利益を狙い、逆張りでドルを買う傾向が強い」(マネックスFX)。それに安住財務相の口先介入が拍車をかけた。東京金融取引所のFX「くりっく365」では27日時点のドル買い越し残高が約40万2千枚(1枚は1万ドル)と、金額換算で約40億ドル(約3千億円)分に上る。円高に歩調を合わせて今月に入り急増し3日時点の1・5倍に膨らんだ。……元本である証拠金は6月末時点で9446億円に達し、現在は1兆円を突破しているとみられる。証拠金の25倍まで取引が可能で、平均10倍と仮定すると、10兆円もの取引量となる。…… 

■一時は広告臭いニュースが流れて一挙に有名になったFX取引きですが、本当に素人が一攫千金の夢を叶えられるのか?超高性能のコンピュータを駆使して稼ぎ回るプロが蠢(うごめ)く為替市場ですからご用心、ご用心。でも、デフレ不況が長引く中で銀行預金には利子らしい利子は付かず、株価も低迷しているとなれば、異様な円高が続いているぞ!と連日連夜のニュースが騒ぎ立てれば、外貨を買ってみようかなあと思うのは人情というものであります。やはり、円高を放置するのは悪いことです。


一方、欧米のヘッジファンドの一部も、「介入を待ち構え、先週ごろからドルを買い込んでいる」(市場筋)という。安住財務相が介入をあおればあおるほど、「ドル買いのマグマ」(同)がたまる構図だ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切っても、FXとヘッジファンドが束になってドル売り円買いを浴びせれば、ひとたまりもない。「円安への戻りは限定的で一時的にとどまり、もうけるチャンスを与えるだけ」(外為ディーラー)に終わる可能性が高い。だが口先介入ばかりでは、イソップ童話の「オオカミ少年」のように誰にも相手にされなくなり、市場は安心して円買いを仕掛け、円高が加速しかねない。日銀が27日に実施した追加金融緩和も効果はなかった。政府・日銀は戦略を欠いた対応によって円高阻止の手段を失いつつある。
2011年10月30日 産経ニュースfont color="#000000"> 

■戦争もビジネスも政治も、兵力を逐次小出しに投入するのは愚の骨頂とされていますが、協調介入の交渉も出来ないまま孤軍奮闘するのは万策尽きたバンザイ突撃を連想させる悲壮なものがありますが、安住蔵相のキャラクターには滑稽さも漂っているようです。「納得いくまで介入する!」などと9月上旬にスイスが発表した無期限の為替介入を真似てみても、スイス・フランと日本の円とでは発行残高の規模は比べ物にならないのですから、スイス政府が成功したような強引な安値誘導を単独で成功させるには想像もできない額のドル買いをしなければなりますまい。

急流を渡っている時に

2011-05-23 07:07:35 | 日記・雑学
■各種義捐金がまともに届かない被災地に、菅アルイミ首相はチャイナと韓国の首脳を連れて乗り込み、身も世も無いほど嬉しそうな笑顔で記者会見をしたそうですが、今の日本でにやにや笑っていられるのは菅アルイミ首相だけだという現実を、どう受け止めてよいのかまったく分からず当惑するばかりであります。
誰が言ったか知りませんが、「急流を渡っている時に馬を換えるな」との諺が取り沙汰され、民主党内からも菅アルイミ首相では急流を渡れない!という声が漏れ始めているそうで、野党側と結託して内閣不信任案を出すの出さないのと寂しい政局話が浮いたり沈んだりしている昨今であります。

■フクシマ第一原発の事故から2箇月、「実はあの時……」という話がポロポロと転がり出しております。要するに東京電力という異様な大企業を存続させることに決するまでは、事故の真相を隠し通すと誰かさんが決めていたようで、密かにネットニュースや各種週刊誌の記事を掻き集めて事故の全貌を再構成しようとしても、まるでピースが無くなったジグソー・パズルみたいにいつまで経っても完成しそうにありませんでしたが、不十分な情報ながら原発行政の裏側で起こっていることが、何となく透けて見えるようにはなって参りました。

■諸般の事情によりまして、しばらく新しいブログ記事をアップできませんが、読者の皆さんにはもう少しお待ち願いたく存じます。日本は本当に「急流を渡っている」のか?それとも急流に押し流されているのか?それを見極めるには、もう少し時間がかかりそうでありますが、夏の猛暑が始まれば何とか誤魔化して隠されている本当の問題があちこちから噴出して来るものと思われます。「安心安全」ではない今年の夏を、今の菅アルイミ首相という馬で乗り切れるのかどうか?心配しながらもう少し推移を見守ろうと思います。

想定外と言う前に 其の参

2011-03-25 14:22:50 | 日記・雑学

……現場の作業環境も劣悪さを増している。その一端を、東電社員の家族が明かした。
「睡眠はイスに座ったまま1、2時間。トイレは水が出ず、汚れっぱなし」
今週初め。神奈川県に住む女性のもとに、第一原発で復旧作業にあたっている夫から初めて電話があった。夫は40代、東京本社の原発部門の社員だ。11日の震災発生後からほぼ連日、対応のため会社に泊まり込んだ。16日、ようやく自宅に戻ったが、出勤すると、そのまま第一原発行きを命じられた。「ヘリに乗る。福島に行く」こんなメールを最後に、メールも電話もつながらなくなった。16日は3号機から白煙が上がり、放射線量が上昇。自衛隊は上空からの放水を断念した。東電の会見では、夫の旧知の同僚がつらそうな顔で対応を迫られていた。…… 

■総理大臣の指示で動く自衛隊には一時作戦中止を命令しておいて、民間企業の社員に対して避難を禁じた菅アルイミ内閣の姿勢には批判が出ているようですが、週刊誌の記事などを読みますと同じ危険な現場でも東電社員が安全な場所に逃げる時にも「作業員」には連絡もせず見棄ててしまうことが多いようです。「国民が一丸となって……」とか何とか下手な演説をしてみても事故現場でさえも一丸になっていないのが現状で、危機管理能力などまったくない事なかれ主義だけで社長にまで上り詰めた人物と、それを取り巻く同じ体質の茶坊主がうろうろしていると悪口を言われる今の東京電力で社員として危機に立ち向かうのは大変なことでありましょうが、本当に大変な仕事をしているのは多くの「作業員」だという現実には変わりはなさそうです。


「お父さん大丈夫かな」。2人の小学生の子どもも不安を口にした。
夫は原発部門を希望したわけではなかった。理系の大学を出て入社し、「たまたま配属された」。以後、原発の現場と本社勤務を繰り返した。2007年の中越沖地震の際、柏崎刈羽原発で火災が起きた時も現地に2週間ほど詰めた。当時はメールや電話で様子を知ることができたが、今回は音信不通。自衛隊が接近をためらうほどの放射能の中で、「いったいどうしているのか」。…… 

■就職大氷河期と言われる時代ですから、この大事故が起こる前は公務員並に安定した国策電力会社に就職が決まった若者達は大喜びしていたことでしょうが、今となってはトンデモない会社に入ってしまったなあ、と困惑しているのかも知れません。原子力を専門に学んだわけでもないのに高度に専門性が求められるはずの部署に配属されるというのは如何ものでしょう?大学在学中の勉学に価値を認めず、単に厳しい入試競争に勝ったことを重視して学閥採用した後で、しっかり企業内で教育して優れた人材を作り上げるという悪習がまだ直っていないようですなあ。刈羽原発の事故とは比べ物にならない今回の事故に、刈羽の体験だけで立ち向かえるのか?こうして現場で踏ん張ってくれている社員に悪口を言う人はいないでしょう。最悪の場合は家族を含めて被災者になってしまう立場なのですから、無事に任務を達成して御帰宅なさることを切に祈るばかりであります。許せないのは経営陣とその取り巻き!そして国策会社と癒着して甘い汁を吸っていた政治家と官僚。


20日、ようやく本社の専用線を経由して自宅に電話があった。「食事は“カロリーメイト”だけ。着替えは支給されたが、風呂には入れない」。あまり感情を表に出さない夫は淡々と語り、2分ほどで電話を切った。
23日の電話では、「そろそろ被曝量が限界のようだ」。交代はまだか。もし夫が健康を害したら、家族はどうなるのだろう。政府に頼りたいが、新聞やテレビのニュースによると、菅直人首相は東電幹部に「撤退などありえない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は、東電は100%つぶれます」と怒鳴ったという。不安と、悲しさがこみ上げた。
24日、原子力安全・保安院が、3号機のタービン建屋地下1階で作業員3人が被曝したことを明らかにした。国民の、電力会社への厳しい視線は理解できる。でも、「いま体を張っているのは、家庭を持つ、普通の市民であることもわかって欲しい」。
2011年3月25日8時1分 asahi.com 

■夫の身を案じて世間の冷たい視線に耐えて待つ奥さんは、きっと水や食料の買い占めには走らず、お子さんと静かに暮らしておられるのではないでしょうか?本当に危険な場所で作業をしている人、地震と大津波の被災者の皆さん、貴重な船を失ってしまった漁師の皆さん、愚かな政府の指示に振り回される熱心な生産農家、部品が届かず仕事が出来ない企業などなど、本当に困っている人たちの窮状に思いを馳せて自分の行動を決める余裕を持ちたいものであります。


東北関東大震災の発生から25日で2週間になりますが、死亡した人は、これまでに確認されただけでも9811人に上り、警察に届け出があった行方不明者をあわせると2万7000人を超えています。これとは別に、津波で壊滅的な被害を受けた沿岸部の自治体の中には1万人を超える住民の安否が確認できなくなっているところもあり、犠牲者の人数は、今後、大幅に増えるおそれが強くなっています。…… 

■犠牲者の数と死亡者の氏名・年齢は連日報道されておりますが、飽くまでも「警察に届け出があった」場合に限定されているので、家族が全滅してしまったり、届出を嫌って独力で家族を探し回っている方も少なくなさそうですから、「1000人を越える」「2000人を越えた」とマスコミが流していた情報の意味が分かりませんでしたが、とうとう被害の全貌が見え始めたようです。


警察庁によりますと、東北関東大震災で死亡が確認された人は24日午後11時の時点であわせて9811人で、このうち東北地方では▽宮城県で5889人、▽岩手県で3025人、▽福島県で839人、▽青森県で3人、▽山形県で1人となっています。また関東地方では▽茨城県で20人、▽千葉県で17人、▽東京で7人、▽栃木県と神奈川県でそれぞれ4人、▽群馬県で1人となっていて▽北海道でも1人の死亡が確認されています。警察に家族などから届け出があった行方不明者は、これまでに確認されただけでも1万7541人に上り死亡した人とあわせると2万7000人を超えています。…… 

■高速道路や国道はマスコミが復旧状況などを報道してくれますが、無数の市町村道は実態がつかめず沿岸部だけでなく中山間部から奥の地域に孤立している集落が見落とされているのでは?という恐ろしい話もあるようです。警察も頑張っているのでしょうが、道が無いところまで調べまわるのは無理でしょう。民間のヘリコプターを借り上げて虱潰しに空から大規模な捜索をするべきだ!という提案もあったようですが、菅アルイミ内閣からその主の動きは見られないようです。さらに現行の法律では民間のヘリコプターから物品の投下は禁止されているのだそうですなあ。必要な物を寸断された道を越えて届けるにはヘリコプターが最も便利だと思うのですが、物はあっても届ける道がない!という悲痛な声は消えていません。


これとは別に、沿岸部にある岩手県山田町では人口が集中していた町の中心部が津波によって壊滅的な被害を受けており、警察が発表した行方不明者のほかに、町の人口の8割近くにあたるおよそ1万5000人の安否が確認できなくなっているということです。また、沿岸部や川沿いの集落が大きな被害を受けた宮城県石巻市は、これまでにおよそ2800人が行方不明になっていると発表していますが、行方不明者の人数は最終的に1万人近くに上る可能性があると推定しています。さらに、福島第一原子力発電所から半径20キロの地域では避難指示の対象となっているため、捜索活動が中断していて死者や行方不明者の人数ははっきり分かっていないのが現状です。このため、震災の発生から2週間たっても依然として人的被害の全容は把握できておらず、犠牲者の人数は、今後、大幅に増えるおそれが強くなっています。
2011年3月25日 NHK

■本当の悲しみに襲われるのはこれから、巨大な余震が起こる可能性も残っています。今からパニックを起こして右往左往するのは止めた方がよさそうです。本当に慌てなければならない事態が起こらないとは限らないのですから……。
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想定外と言う前に 其の弐

2011-03-25 14:22:19 | 日記・雑学
■「其の壱」の続きです。

金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)によると、1メートル四方深さ5センチで、土壌の密度を1.5程度と仮定すると、飯舘村の1平方メートルあたりのセシウム濃度は約1200万ベクレルに上る。チェルノブイリの約20倍。「直ちに避難するレベルではないが、セシウムは半減期が30年と長い。その場に長年住み続けることを考えると、土壌の入れ替えも必要ではないか」と話した。…… 

■これからは、何かとチェルノブイリの大事故と比較された話が多くなって行くものと思われます。旧ソ連を崩壊させた硬直した官僚主義や革命以来続いた人命軽視の支配体制でさえ、東京電力の体質を検証する時には引き合いに出されることもありましょう。原子力エネルギー政策に関しては旧ソ連も顔負けの恐るべき独裁権力が密かに生まれて、長い間に日本を滅亡させるほど危険に強大化していたようですからなあ。残念ながら、旧ソ連の国民はその恐ろしさと問題点をよく知っていましたが、我々日本人は政・官・産・学が練り上げて宣伝した「安全神話」を刷り込まれて、何も知らずに過ごしてしまったのは残念なことでありました。


健康への影響はどうか。チェルノブイリ原発事故では、強制移住の地域では平均50ミリシーベルト程度の放射線を浴びたとされる。しかし汚染地での長期の住民健康調査では、成人では白血病などの発症率は増えていない。甲状腺がんは増えたが、事故当時小児だった住民が放射性ヨウ素で汚染された牛乳などを飲んで内部被曝したためとみられている。飯舘村の24日午後までの放射線の総量は、3.7ミリシーベルトだ。長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は「チェルノブイリ原発事故後でも小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、すぐに健康を害するとは考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、データをもとに住民と十分に話し合って対応を考えてほしい」と話している。
2011年3月25日(金) asahi.com 

■一瞬で炉心の蓋が吹き飛んで大量の放射性廃棄物が天高く吹き上がったチェルノブイリ原発の事故とは違い、今までのところは福島第一原発に並んだ6機の原子炉は建屋の屋上や上半分の吹き飛んだり、あちこちに未発見のひびや亀裂が出来て水や水蒸気に混じって外部に漏れ続けているようですから、単純な比較は難しいところではありますが、決定的な解決策が見付からないまま反応炉や格納容器内の圧力を下げる対症療法を長期間に亘って続けた場合、最も心配な半減期の長い物を含めて大量の放射性物質が流出し続けることになりましょうから、積算するとチェルノブイリ事故を遥かに越える汚染を示す数値が出ることも有り得ましょう。勿論、本当に最悪の事態が起これば稼働中だった3機の原子炉内の核燃料が溶けて集まって再臨界になって爆発的事象が発生し、その爆風と振動で定期点検中だった3機の貯蔵プールに沈んでいた使用済み燃料棒が転がり出したりしたら、チェルノブイリよりも多量の放射性物質が大気中にも水中にも放出されてしまうのでしょうから、「チェルノブイリ級」と呼ばれている段階で食い止めねばなりません。


東京電力福島原子力発電所3号機の電源復旧作業中に作業員3人が被曝した問題で、東電は25日未明、タービン建屋地下1階の水に含まれる放射性物質の濃度は通常運転時の原子炉内の水の約1万倍に達したと発表した。通常はほとんど検出されない放射性物質も高い濃度で検出され、同社は3号機の原子炉か使用済み核燃料一時貯蔵プール内の核燃料が破損した後、現場周辺に漏れ出した可能性が高いという。
2011年3月25日(金) 読売新聞 

■怪獣映画か災害パニック映画の一場面みたいな現場の写真を見れば、危険な物質が完全に封じ込められているなどとは誰にも思えませんし、何処から何が溶け出そうと何が噴き出そうと驚かないと言いたくなるほどですが、テレビに出て来る「専門家」の先生方は、妙に落ち着いて既に崩壊しているはずの「安全神話」の破片をしらっと拾い集めて、しらばっくれているとしか思えない大丈夫な話をしているのには当惑するばかりであります。とは言っても東京電力を中心とする「原子力村」とは無関係なところから出て来る客観的な数値には冷静に対応したいと思います。


東日本大震災で深刻な状況が続く東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の復旧作業は、3号機のタービン建屋地下で24日に起きた作業員3人の被ばく事故の影響で、遅れる見通しとなった。経済産業省原子力安全・保安院は25日未明、東電に対し、再発防止のため直ちに放射線管理を改善するよう口頭で指示。東電は被ばく防止を改めて周知徹底させることを明らかにした。…… 

■原子力産業に完全に支配されてしまう現地の苦しい事情を詳しく取り上げるのは別の機会としますが、東京電力社員と「作業員」との間には気が遠くなるほどの距離があることだけは知っておくべきでしょう。そして、幸か不幸か電気料金を支払って利用している人々は東京電力社員の側に近いところに位置していると申せましょう。恐ろしい放射性物質が漂っている真っ暗闇の中で命懸けの作業を続ける人達に比べれて、無計画停電に文句を言いながら節電に努めている我々は遥かに安全な環境に居るということになります。だからと言って問題山積の経済産業省原子力安全・保安院などには感謝の言葉など一切伝える必要はありません。「安全」だの「保安」だの、この奇怪な組織に属している役人達はその意味をまったく知らないのかも知れませんからなあ。


3人は地下の水たまりに入ってケーブルを敷設中に大量に被ばく。このうち2人が放射線によるやけどの疑いで福島県立医大病院に搬送された。25日に千葉市の放射線医学総合研究所に移り専門的な診療を受ける。東電が25日未明に発表した聞き取り調査結果では、作業員らは現場に入って間もなく、全員の個人線量計のアラームが鳴ったが、誤報と思い作業を続けたという。東電は復旧作業を再開できれば、原子炉を安定して冷却するため、まず3号機にダムからの真水を送る作業を行う方針。ダム水は敷地内の高台にある原水タンクを経て、隣のろ過水タンクにためられており、各種ポンプを使うか落差を利用して原子炉に送り込む。
2011年3月25日 時事通信 

■随分前のことですが、堀江邦夫著の『原発ジプシー』(講談社文庫)という本を読んだことがありました。そこに「個人線量計のアラーム」に関する恐ろしい話が出ていたように記憶しておりますが、この文庫本が出た1984年から既に30年近く経っているはずなのに、現場の状況はまったく改善されていないことが分かります。作業員の実情に関しては前の福島県知事だった佐藤栄佐久氏が、週刊誌などに経験談を発表し始めているようですから、国策捜査の疑いが濃厚な怪しい辞職劇と共に国のエネルギー政策の暗部が徐々に明るみに出て来るかも知れません。重要なことは被曝した3人は東京電力の社員ではないという一事をしっかり覚えておくことでしょう。

想定外と言う前に 其の壱

2011-03-25 10:51:17 | 日記・雑学
■「犬が人を咬んでもニュースにならないが、人が犬を咬んだら大ニュース」とか申しますが、震災翌日の3月12日午後3時45分に福島第1原発1号機で水素爆発事故が発生してからの経緯を冷静に思い返してみれば、10日も2週間も経って水も空気も海も放射性物質による影響をまったく受けていない!としたら、これこそ世紀の大ニュースでありましょう。事故現場の周辺半径20キロが「人が住めない場所」と指定されてたいへんな数の避難民が故郷を捨てる覚悟を強いられているのに、半径50キロ、100キロ、150キロ、200キロの同心円に含まれている場所が何の放射線汚染を受けていない筈はありますまい。従って、昨日の3月24日になって「水道水が放射線で汚染!」とパニックが始まったという報道には違和感があるのであります。

■今朝、お一人様1箇の購入制限のある納豆1パックと食パンを某スーパーで買って来たのですが、「世界一の速度で高齢化する日本」を否が応にも実感させられる光景を眺められましたぞ。元気なお年寄りが行列を作って水のペットボトルを殺気立って買う中に、顔を強張らせた若い母親の姿が散見されましたが、少なくとも旅限無が目撃した範囲では若い母親に優先権を与える御老人は居なかったようであります。そしてレジで清算している時にもメガネを掛けた元気な御老人が巨大な張り紙が見えなかったのか購入制限を無視してあれこれ備え付けの買い物籠に放り込んで来て、レジの御婦人に注意を受けて本当かウソかは分かりませんが耳が遠いからと何度も同じ事を聞き返しつつ、何とかお目こぼしを要求しているかのような芝居がかった押し問答をしておりましたぞ。幸か不幸かごの御老人は渋々ながらレジ係の説得に応じて、未練たらたらの態度丸出しで制限を越えた商品を諦めて清算を済ませたのでした。可哀想なのはレジ係の御夫人で、「大変でしょうが、落ち着いて仕事をして下さいね。東北あたりでは殴り合いも始まっているみたいですから、気を付けてね」と一声掛けて清算を済ませた旅限無でありました。

■店の外に出て来るとペットボトルを2本ずつレジ袋に入れた御老人たちが集まって、安心して満足した表情でタバコを吸って談笑している姿は、落語の小話の実演を見た思いがして、人間の矛盾した行動の滑稽さと同時に愚かしい悲しさを感じた次第であります。でも、それが人間というものだよ、と落語家たちは言うのでしょう。汚染はこれからが本番かも知れないのに……。


東京電力福島第一原発の事故は、放出された放射能の推定量からみて、国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。すでに米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。放出は今も続き、周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがある。…… 

■何やら電力会社とマスコミ各社との間には密約があるらしく、大丈夫、大丈夫のメッセージを繰り返し流している間に、何となく信用できない物を感じる人たちを増やしてしまう逆効果が見られるような気がしますなあ。既に週刊誌などでは「原子力村」というキーワードで隠されている日本の電気事業の巨大な闇を解明する記事を書き始めておりますから、新聞・テレビの国策報道に対する不信感はますます高まった行くのかも知れません。スリーマイル島の原発事故では冷却装置の電源は失われなかったのですし水素爆破で建屋が吹き飛ぶような事も無かったようですから、最初から福島原発の事故はスリーマイル島の事故より深刻であることは素人の目でも判断できたはずです。水道水に放射性物質!と同様に、何を今更……という話でありましょうなあ。


原子力安全委員会は、SPEEDI(スピーディ)(緊急時迅速放射能影響予測)システムで放射能の広がりを計算するため、各地での放射線測定値をもとに、同原発からの1時間あたりの放射性ヨウ素の放出率を推定した。事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放出量を単純計算すると、3万~11万テラベクレル(テラは1兆倍)になる。国際原子力事象評価尺度(INES)は、1986年のチェルノブイリ原発事故のような最悪の「レベル7=深刻な事故」を数万テラベクレル以上の放出と定義する。実際の放出量は約180万テラベクレルだったとされる。今回は少なくともそれに次ぐ「レベル6」(数千~数万テラベクレル)に相当する。…… 

■ギガやらテラやら、ちょっと前にはIT技術の分野でしかお目に掛からない単位が、こんな最悪の場面で飛び出して来るのは確かに衝撃的ですが、いくつかの週刊誌を並べて読んでみますと、今回の事故はずっと前から予想された「想定内」のものだった可能性が高そうなのであります。それについては別稿にまとめて検証してみようと思いますが、何とも恐ろしい陰謀が日本の原子力政策には隠されていたことが間も無く公にされるのではないでしょうかな?それは戦後の長い長い歴史の暗部の物語になるに違いないのですが……。


経済産業省原子力安全・保安院は18日、福島第一原発の1~3号機の暫定評価を「レベル5」と発表したが、今後放出量の見積もりが進めば、再検討される可能性が高い。土壌の汚染は、局地的には、チェルノブイリ事故と同レベルの場所がある。原発から北西に約40キロ離れた福島県飯舘村では20日、土壌1キログラムあたり16万3千ベクレルのセシウム137が出た。県内で最も高いレベルだ。京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)によると、1平方メートルあたりに換算して326万ベクレルになるという。チェルノブイリ事故では、1平方メートルあたり55万ベクレル以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となった。チェルノブイリで強制移住の対象となった地域の約6倍の汚染度になる計算だ。今中さんは「飯舘村は避難が必要な汚染レベル。チェルノブイリの放射能放出は事故から10日ほどでおさまったが、福島第一原発では放射能が出続けており、汚染度の高い地域はチェルノブイリ級と言っていいだろう」と指摘した。…… 

■名を上げた東京消防庁のレスキュー隊を筆頭に自衛隊、警察、消防の皆様は正真正銘の「決死の活動」に従事しておられるのですから、空と土と水はすべてつながっているのですから、事故現場の近隣ばかりでなく遠く隔たった場所にも放射性物質は流れて来ることは最初から分かっていたはずです。それが生存の上で許容範囲と言えるかどうかが問題で、既に現場の作業員の皆さんが守らねばならない被曝量の許容限度は2倍以上に引き上げられているのですから、便利で快適な電気電化ライフを原発の御蔭で楽しんで来れた我々が特別に安全な環境を保証されるというような非科学的な特権が与えられるはずもなく、冷静に推移を見守りながら原子力発電について、政治について、科学について、そして、日本についてじっくり考えてみる時ではないでしょうか?重要な数々の問題が国策として隠蔽されているのは事実であっても、有権者・子の親・教師として誰もが「知らなかった」ことの罪を反省するのも大切でしょうし、国民を無知な状態に導いたマスコミの責任を追求するのは、将来のエネルギー政策を考えるためには必須の作業でしょうなあ。

政治も列島も揺れる日本 其の弐

2011-03-12 12:28:17 | 日記・雑学
■「其の壱」のつづきです。

……「日本名の方なので日本国籍と思っていた。外国籍の方とはまったく承知いたしていない…」首相は11日の参院決算委員会でこう繰り返した。だが、首相は在日韓国人男性から計104万円もの献金を受け、一緒に釣りに出かけ、複数回にわたって会食したという。なおかつ特定人物からの100万円以上の献金は「比較的まれなことだ」とも認めた。にもかかわらず男性が外国籍だと知らなかったとは…。にわかには信じ難い。ましてこの男性は在日韓国人系の「旧横浜商銀信用組合」(現中央商銀信組)の非常勤理事を長年務めた人物である。これについても首相は「そういう立場にあることも全く知らなかった」と釈明したが、もし本当ならばとんでもない迂闊さではないか。もはや危機管理というレベルではない。しかも首相は「私の代で政治とカネの問題に終止符を打つ」(2月8日)と大見えを切り、政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表を党員資格停止に追い込んだはず。首相が掲げる「クリーンな政治」の看板はもはや地に堕ちた。…… 

■この奇怪な献金は政権交代が起こる前に100万円、交代後は突如として1万円や2万円に激減しているのだそうで、「5万円未満は匿名も可」という法律を意識して後ろ暗い献金元を隠匿したのではないか?と素人でも考えるような実に怪しい事実もあるようです。政治資金規正法にある「意図的に」の一点に縋り付いて「知らなかった」の連発で中央突破を試みている菅アルイミ首相は、自分が初当選したのはロッキード選挙の時だったと代表選挙の時にクラッシャー小沢に対する嫌味としか思えない唐突な思い出話で討論を始めたものでしたが、ロッキード事件に際して国会での証人喚問の場で「記憶にございません」という悪辣な保身の証言が国民に軽蔑されて流行語になった事を忘れているのでしょうか?


首相はあくまで続投する考えのようだが、前原誠司前外相が6日に在日韓国人から計25万円の献金を受けたことを認め外相を引責辞任したばかり。首相が「知らぬ存ぜぬ」では、内閣の一貫性も整合性もあったものではない。…… 

■『週刊文春』最新号には、前原外相の電光石火の辞任劇には別の意味がある!という特集記事が掲載されております。外国人献金疑惑の前に指摘されていた怪しげな脱税企業からの献金の方が前原エエカッコシイ外相にとっては致命的な傷になる可能性が高いという話なのですが、同じ怪しげな献金が蓮舫大臣や野田大臣にも流れていて、ダルマ落としみたいにころころ辞任に追い込まれたら菅アルイミ政権どころか民主党の政権与党としての地位さえ吹き飛んでしまうから25万円の献金問題だけを理由にして泥船内閣から逃げ出したのだ、という筋になっているようです。


実は首相には教訓として学んでおくべき先例があった。岡崎トミ子前国家公安委員長の事例である。平成16年、岡崎氏の政治団体が13年に朝鮮籍で朝鮮学校理事長の男性と韓国籍のパチンコ店経営者からそれぞれ2万円ずつ受け取っていたことが発覚した。産経新聞の指摘を受け、岡崎氏は「違法と気付かなかった」とコメントしたが、首相と前原氏は内閣改造前にこの貴重な体験談をよく聞いておくべきだった。…… 

■岡崎トミ子前委員長は反日デモ参加で有名になりましたが、証拠写真の背景にトンデモない物が写り込んでいることを「知りませんでした」の一点張りで絶対に認めなかったことがありましたなあ。それを手本に出来なかったのが土肥前政治倫理審査会会長でありましょう。


「『もっと元気な歌もありうるのかな』という意見があった」首相は11日の参院決算委で、平成11年の国旗国歌法案採決に反対した理由を問われ、こう答えた。首相は14年5月にラジオ日本の番組に出演した際、番組恒例の国歌斉唱時に起立しようとせず、君が代も歌わなかったとされる。前原氏も岡崎氏も同じく国旗国歌法に反対している。3人とも永住外国人への地方参政権付与に賛成という共通項もある。民主党が先の衆院選で在日本大韓民国民団の全面支援を受けたことも周知の事実だ。……
3月12日 産経新聞 

■キリスト教の牧師さんとして「日本の罪」を神に懺悔するパフォーマンスを得意としているらしい土肥議員も仲間に入れたあげないと可哀想かも?「君が代は暗い歌だ」というのは石原慎太郎都知事の持論でもあったはずですが、菅アルイミ首相が言うと非難轟々で、本家の都知事は大震災直前に4選目指しての都知事選への出馬を表明しているのですから皮肉なものであります。

■誰が当選しようとも地震災害に対する東京の脆弱性と恐ろしさが全住民に浸透したのですから、世界一の耐震都市対策に取り組んで欲しいものでありますが、大災害からの復興に取り組む試練で民主党が少しは大人になってくれることを密かに願いつつ、どんな首相・政権であろうとも贅沢は言っていられない深刻な状況に鑑みせいぜい菅アルイミ首相にエールを送って踊って頂きたいものだと思う日々が続きます。頑張りましょう。
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政治も列島も揺れる日本 其の壱

2011-03-12 12:27:40 | 日記・雑学
■被災した皆様、その御家族には心よりのお見舞いを申し上げます。まるでSF小説のような専門家も呆然とするような巨大地震の群発が起こってしまいました。続々と報道される被災地の光景は米国のCG映画でも再現できない生々しく、人間の営みの儚さと文明や技術の無力さを思い知らされる心痛むものであります。しかし、世界有数の地震国の代表としてご先祖様から受け継いでいるはずの精神と根性を発揮して、この未曾有の天災を克服して見せねばなりません。

■今のところは精一杯の助け合い活動があちこちから伝えられておりますが、阪神淡路の大震災が起こった時のように、壊滅した町並みを背景にして記念写真を撮るような馬鹿者や、瓦礫の中をうろついて思う存分の窃盗行為を続けた愚か者などが再び現われないことを願うばかりであります。あの震災が起こった年は自民党が天敵だった社会党と連立を組むという禁じ手を使って政権を奪回し、村山政権と言う驚天動地のトンデモないものを作ってしまった年でありました。オウム真理教の地下鉄毒ガス・テロ事件と相前後して起こった大震災に、原始的な天人感応説を思い出したものでした。そして、民主党政権が誕生してからの稚拙で見苦しいドタバタ政治劇を見せられ続けた人々の中には、あの時と同じ不安を感じたり、既視感さえ持った人がいたのではなかろうか?

■神奈川県警の元警視(55)=懲戒免職=が関わっていた「神世界」(山梨県甲斐市)グループの霊感商法事件で関係者5人が逮捕されたのは大地震の前日でしたが、偶々、このインチキ宗教グループは武装していなかったので一連のオウム事件のような惨劇は起こっていなかったようなのですが……。考えてみれば「政権交代」の四文字だけで誕生した民主党の実態は、自社連立政権よりも酷い打算的野合だったとも思えます。既に泥船と呼ばれても寂しくニヤニヤするだけの菅アルイミ政権ですが、総理大臣の椅子にしがみつくだけのさもしく情けない動機であろうと、ここで格好よく振舞えば支持率が急上昇するかも?などと虚しく悲しい皮算用があろうとも、ここは一人しかいない日本の首相としてしっかり対応して有終の美?を飾って欲しいものであります。

■国民としては聞くに堪えない国会審議がさっさと打ち切られたのは有り難いことですし、国民生活に甚大な影響を及ぼす予算県連法案を人質に取っての生煮えの政権苛めが手仕舞いになりそうな気配も嬉しいことであります。災害対策に徹夜で取り組み、翌朝早々にヘリコプターで被災地に乗り込むパフォーマンスに出た菅アルイミ首相の胸中には、「村山首相とは違うんだぜ!」と勇む心が躍っているのかも知れませんが、豚も煽てりゃ木に登るとも言いますから、ここは現首相に声援を送って頑張ってもらうのが得策でしょうなあ。


連の潘基文事務総長は11日、記者団に対し、三陸沖を震源とする大地震に関し、「日本政府と国民に心から哀悼の意を表します。日本がこの重大な試練を乗り越えられると確信しています」と日本語で声明を読み上げた。潘事務総長は、日本は世界で助けを必要としている人たちに対する最大の支援国の一つだと述べた上で、「この極めて困難な時に、国連は日本国民と共にある。われわれは(日本のために)全力を尽くすだろう」と強調した。
2011年3月12日 時事通信 

■国連至上主義者のクラッシャー小沢が聞いたら嬉し泣きしそうな事務総長からの激励であります。大正時代の関東大震災に遭遇した欧州人の見聞録に、着の身着のままで焼け出された日本婦人達が避難先で「あら、お久し振りねえ。大変なことになりましわねえ」と微笑みながら挨拶している姿に別世界を感じたという話があるそうです。目撃した欧州人も女性で、「世界の終わりだ。最後の審判だ」と正気を失って逆上している自分との違いの大きさに呆然としたのだそうです。不運にも落命した犠牲者を供養するためにも、逸早く復興に向かって残骸を片付けて再建作業に取り掛からねば何も始まらないことを、我らの御先祖様は身をもって学び続けて子孫に伝え残して来たのでありましょう。

■大地震の発生をラジオの緊急速報で知った人の多くは、先の衆議院で聞かされた救いようもなく無内容な口喧嘩の焼き直しを参議院でも聞かされてうんざりしていた筈です。まあ、前原外相が辞任した外国人からの違法献金疑惑が菅アルイミ首相にも発見された!というドングリの背比べみたいな新しいネタが加わってはいたのですが……。