旅限無(りょげむ)

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やっぱり駄目か?テレビ朝日 其の弐

2006-09-30 21:42:04 | マスメディア
■オウム真理教と幸福の科学を左右に並べて、一晩中、「超能力」「救済」「瞑想」「解脱」などという取り扱い厳重注意の危険な宗教用語を「朝まで」放送したのもテレビ朝日ですから、何を放送しても不思議ではないのですが、どうも不透明な部分の多い日本のテレビ局には、オカルトよりも奇怪な隠された部分が多いようですなあ。そんな事を考えながら、『初公開・焼却を免れた大量の検閲写真を発見…当局は国民に何を隠していたのか?封印された歴史の闇が明らかに…」という新聞のテレビ欄の予告が気になって、しっかりとビデオに録画して『ニュース・ステーション』ではなく『報道ステーション』を観たのですが、この特ダネ?特集の前に自社の不祥事を報道しなければならなかったのは皮肉でしたなあ。でも、強引に一般論に広げて恥晒しなイメージをさらりと薄めて、何だか他人事みたいなコメントを付けていたのは残念でした。

■問題のスクープですが、「上海事変は負け戦」というちょっと戦史に興味を持っている人なら誰でも知っている話から始まって、大陸では負け戦が続いた!という誰かさんが大喜びするような「スクープ」の連続?「写真に写っている中国軍の捕虜はどうなったのでしょう?」などと能天気な他人事コメントを続けたのは不味かったですなあ。戦時中の報道管制は衆知の事実ですが、軍部が目くじら立てて弾圧に乗り出すよりも前に、戦争を煽り立てたのは日本の新聞でした。その象徴的な歴史の残滓(ざんし)が「百人斬り」競走という悪質な捏造記事問題です。今では毎日新聞に統合されている大阪毎日新聞と東京日日新聞が、日本軍が南京へ進軍する間に歩兵第9連隊-第3大隊-歩兵砲小隊長の向井敏明少尉と、歩兵第9連隊-第3大隊副官の野田毅少尉が100人斬り競争をしている!と、当時としては驚くほどのリアル・タイム報道をした事件です。

■中でも1937年12月13日付けの東京日日新聞記事に掲載されたインタヴュー記事の生々しさは特筆もので、「無錫-常州間で向井少尉は106人、野田少尉は105人の中国兵を殺害していて、100人斬り競争の決着が付かないから、改めて150人を目標とする」という記事が掲載されたのでした。戦争に便乗して血生臭い捏造記事を書いただけならば苦笑いで済むかも知れませんが、向井・野田の両少尉は、この奇怪な新聞記事を証拠として南京軍事法廷に起訴され、判決は当然のように死刑判決!1948年1月28日に南京郊外で処刑されてしまいました。書いた記者も興奮して記事を読んだ読者も、すっかり忘れていたそうですが、1971年に本多勝一さんが朝日新聞にルポルタージュ『中国の旅』を連載し、後に単行本となって今でも文庫本は簡単に入手出来ますが、そこで「百人斬り」事件を掘り起こしてから論争が始まり、歴史問題としてではなく「名誉毀損」の裁判が遺族の訴えで起こされた経緯が有ります。

■今でも、毎日新聞にしても朝日新聞にしても、歴史的な真贋にかんするコメントを発表せず、当然ながら「謝罪」もしていないようですなあ。今回の特集は、検閲で発表が禁じられた報道写真が保存されていたという、確かに重要な事件のをスクープなのですが、自社の不祥事をウヤムヤにしようとする嫌な雰囲気が色濃く残っている中での放送は、大失敗でしたなあ。


東京国税局の税務調査で約1億3000万円の架空外注費を指摘されたテレビ朝日(東京都港区)は28日、君和田正夫社長が記者会見し、「視聴者をはじめ関係者の信頼を裏切ることになりおわび申し上げます」と謝罪した。同社は29日付で不正な経理処理を繰り返していた男性チーフプロデューサー(59)を懲戒解雇し、君和田社長らを減俸処分などにする。テレビ朝日によると、下請けの制作会社に架空の外注費を支払っていたチーフプロデューサーは、制作会社に大半を負担させてオーストラリアやハワイへの海外旅行に計5回も行っていたほか、東京・銀座の高級クラブで繰り返し接待を受けたり、高級外車の購入代金の千数百万円を借りるなどしていたという。しかし、テレビ朝日の社内調査では、チーフプロデューサーに現金が直接渡されたことが確認できず、借金も返済されていることなどから、刑事告訴はしないという。
毎日新聞 - 9月28日

■テレビ朝日の話なのか、皆様のNHKの話なのか区別が付かなくなるような記事です。男性プロデューサーに愛人が居たのか、何かの賞を貰ってトボケた記念撮影写真が残っているのか、その辺が明らかではありませんが、視聴率=CM放送料という博打めいた仕来りで経営されるテレビ局ですから、こうした不祥事は無くならないのでしょうなあ。これ以上の詳報は、またまた週刊誌の取材を待たねばなりませんが、犯人をクビにして金の帳尻も合わせたから一件落着、というのでは岐阜県やら福島県で続々と発覚している不祥事を報道する資格は有りません。「他人に厳しく自分に甘く、いつもニコニコ腹黒く」をモットーにしている人が居るそうですが、少なくとも報道機関としては許されない態度ですなあ。

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やっぱり駄目か?テレビ朝日 其の壱

2006-09-30 21:41:35 | マスメディア
■平成18年9月28は、東京駅で電気系統が燃え上がって「東京ディズニーランド」のためだけに有るような浦安駅を通るJR京葉線が半日以上も停止するという大騒ぎが起こった日でした。皆様のNHKでは、この速報価値の高い都市パニック情報をニュースの最初に置いて、何故か?その次辺りでテレビ朝日の、何処かで聞いたような「不祥事」を速報していたそうです。

テレビ朝日(東京)が東京国税局の税務調査を受け、番組制作で架空の外注費を計上したとして、平成17年3月期までの3年間に約1億3000万円の所得隠しを指摘されたことが28日、分かった。関係者によると、テレビ朝日は番組制作で下請けの制作会社2社と委託契約を結んだ際、架空の外注費を計上し、制作の担当プロデューサー(59)らが飲食代などに流用していた。東京国税局はこうした飲食代などについて、業務上の関係がない交際費に当たると判断、外注費に仮装・隠蔽(いんぺい)行為があったとして重加算税の対象とした。

■天下の朝日新聞と密接な関係のあるテレビ朝日が、マルサの手入れを喰らって「番組プロデューサー」が制作費をチョロまかして、裏金にして遊び呆けていた!嗚呼、テレビ朝日にも「受信料制度」が有れば!と地団駄踏んでいる諸兄がいらっしゃるのでしょうなあ。民放各局の中でも、貧乏だ!と言われている元「日本教育テレビ:NET」は、小さなNHKだったのかも知れませんなあ。そんな事は無いでしょうか?


テレビ業界をめぐっては16年、民放キー局4社が東京国税局の税務調査を受け、過去2~3年間にそれぞれ2~3億円の申告漏れを指摘されたことが明るみに出た。その際、番組制作費を水増しして制作会社に発注した上にその会社から接待を受けたり、領収書の改竄(かいざん)、飲食代を制作費の一部として処理するなどしていた実態が分かった。関係者は「視聴率さえ上げれば何をやってもいいという雰囲気がある」と金銭感覚がまひしている状況を説明した。
産経新聞 - 9月28日

■これを報じている産経新聞と密接な関係のあるフジテレビは、「面白ければ何でも良い」と最初に開き直ったテレビ局です。メクソ・ハナクソの騒動みたいですが、テレビ朝日は皆様のNHKと同じようにトカゲの尻尾切りでこの不祥事も切り抜けられると思っているのでしょうか?昔、『アフタヌーン・ショー』という午後のワイド・ショーの名物番組を持ちながら、「そうなんですよ、山本さん」というオール阪神・巨人の名物漫才のネタにまでなっていたのに、暴走族の凶悪さをヤラセ演出してしまったばかりに、突如としてそのドル箱番組が打ち切りになってしまった「歴史」を持っているのがテレビ朝日です。

■『ETV8』という恐ろしく視聴率が低い番組を悪用して「天皇死刑」番組を放送してしまった、皆様のNHKは、その罪を朝日新聞と結託して切り抜けようとして、逆に責任の押し付け合いの泥仕合を演じたのでしたが、最終的にはどちらのテレビ局も「業界」内でウヤムヤにして馬鹿な視聴者が忘れるのをじっと待っているようです。不肖旅限無は、問題のETV特集番組の「再放送」を熱望し続けているのですが……。


テレビ朝日(東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、05年3月期までの3年間で約1億5000万円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。そのうち約1億3000万円は、情報番組などの下請け制作会社などへの架空の外注費と判明し、国税局は悪質な所得隠しと認定したという。追徴税額は、重加算税を含め約6000万円に上るとみられる。関係者によると、架空外注によりねん出した資金は、情報番組の制作を行っていた男性チーフプロデューサーが、出演者などとの飲食などに使っていたとみられる。チーフプロデューサーは、これまでに「川口浩探検隊」や「目撃!ドキュン」などの番組を担当しており、最近までは失跡者の捜索などを行う人気番組「奇跡の扉TVのチカラ」を担当していた。
毎日新聞 - 9月28日

■オウムで死んだのに、ミイラかゾンビのように毎晩、「法話」を放送しているTBSと密接な関係にある毎日新聞も、「ミニ朝日」などという不名誉な?呼称を返上しようと言うのか、具体的に鬼才・嘉門達夫の唄にもなった『川口探検隊』という、テレビ朝日にとっては最も痛い所を突くニクイ記事が出て来ましたなあ。それに加えて『TVのチカラ』は得体の知れない白人超能力者を来日させては、先代・桃太郎侍に煽らせる危険な演出で売っていた番組で、秋田の連続幼児殺人事件を全国区に発展させて第二の幼児殺人事件を誘発した!と疑いの目で見られている奇怪な番組ですな。馬鹿馬鹿しくてほとんど観ていないので詳しいコメントが書けないのが残念ですが、新聞のテレビ欄で「FBI超能力捜査官」だの「透視」だのの活字を見れば、誰でも「日本で小遣い稼ぎなどしないで、ケネディ暗殺事件でもビン・ラディンの居場所でも透視しろよ!」と思ってしまうに違いない、実に怪しい企画を得意とする番組のようです。

元の木阿弥~中東 其の伍

2006-09-30 18:44:25 | 外交・世界情勢全般


米エクソンモービル<XOM.N>は、同社が主体となって進めているロシアの大型資源開発プロジェクト「サハリン1」産原油の初輸出に向けた作業を10月4日に開始する予定。「サハリン1」に関わっているエクソンモービルの関係者が28日、明らかにした。10月4日から「サハリン1」のターミナルで原油をタンカーに注入するための作業が始まるという。 「サハリン1」をめぐっては、最近持ち上がった環境問題が障害となって生産・輸出できなくなる可能性やロシア政府がプロジェクトの掌握権を高めようとしている兆候が懸念材料となっていた。輸出作業の開始は、こうした懸念を和らげることになる。……「サハリン1」は、年内に日量25万バレルの原油を生産する予定となっている。ロイター - 9月28日

■「サハリン1」と「サハリン2」の違いは、日本が出資しているかどうかだけでしょう?英米資本とは喧嘩しなけれど、日本相手なら好き放題というわけですなあ。嗚呼、美しい日本!


イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘が行われたレバノンで、日本のNGO「JEN(ジェン)」(本部・東京都新宿区)が27日、タオルや水タンクなど生活必需品を被災者に配布した。停戦が発効した先月14日以降、日本のNGOとしては最初の本格的な活動となった。……南東部の激戦地マルジャユーン近郊の5カ所の村で活動を開始。一帯では、半数近くの建物が全壊した村もあり、壊れたままの建物がいたるところに残っている。今も、水や電気は止まっている。……仏人スタッフのシリル・カッパイさん(39)は「やっと活動を始めることができた。被害は深刻で、農場には不発弾や地雷が埋まっていて農作業ができず、収入源を断たれた家庭が多い」と話す。今後、スコップや金づち、がれきを運ぶ一輪車など、壊れた家を修理するのに必要な道具一式を約4800セット用意し、約4カ月かけて各集落に配布するという。
毎日新聞 - 9月29日

■緊急事態ですからNGOの皆さんの活躍が期待されるところです。しかし、ベイルートで大金をばら撒いているヒズボラは、レバノン南部に気に入らない者が多いからか、冷たく見棄てているのですなあ。レバノン政府は何をしているのでしょう?それにしても日本のNGOのスタッフがフランス人というのは、やはり言葉の問題なのでしょうか?日本の中東戦略はどうなっているのやら、親分の米軍が右往左往している下で、ワン・テンポ遅れて右往左往し続けるのにも限界が有りますぞ。


国際テロ組織アルカーイダのナンバー2で、実質的な理論的指導者といえるアイマン・ザワヒリ容疑者の新たなビデオ映像が29日、イスラム系サイトで流された。同容疑者はその中で、ブッシュ米大統領を「アフガニスタンとイラクで敗北した真実を国民に告げる勇気のない大うそつき」とののしり、同大統領の反テロ戦争にもかかわらず「アルカーイダは以前にも増して強力になった」と強調した。

■大幹部がイラクのバスラに居たのですから、ブッシュさんの空元気よりはザワヒリ演説の方が信憑性が有りそうです。タリバンもアルカーイダからの資金援助で復活しましたし、東南アジアでもテロの危険性が高まっているようですから、もうビン・ラディンが死んでいても生きていても、大した問題ではないようですなあ。


さらにザワヒリ容疑者は、イスラム教を侮辱したと受け止められかねない発言をしたことに謝罪を表明したローマ法王ベネディクト16世についても「このペテン師はイスラム教と理性は折り合わないと非難したが、彼自身のキリスト教は思慮深い心には受け入れがたいものであることを忘れている」と非難したうえで、キリスト教徒に対してイスラム教に改宗するよう呼びかけた。また、スーダン西部のダルフール紛争で派遣が検討されている国連平和維持部隊について、「イスラム教徒よ、国連の仮面をかぶった十字軍から、あなた方の土地を防衛せよ」と述べ、国連部隊に対するジハード(聖戦)遂行を求めた。

■世界中の人々をキリスト教に改宗させようと頑張っている人も多いのですから、この「イスラム教への改宗」の呼びかけは強(あなが)ち無茶な話ではありません。勿論、美しい国・日本はキリスト教側で十字軍の下請けを担当しております。


「ブッシュ、ローマ法王、ダルフールと十字軍」と題されたこのビデオ映像は約18分。2つの部分に分かれ、ザワヒリ容疑者は前半と後半で異なる服装で現れた。ザワヒリ容疑者のビデオ映像は、米中枢同時テロ5年の今月11日にもウェブ上で流れ、同容疑者はその中で、新たなテロを警告していた。産経新聞 - 9月30日

■次の大規模テロが米国本で起こるのが先か、「第2次ヒズボラ戦争」が火を噴くのが先か、はたまたイラン戦争の勃発の方が先なのか、小泉政権が誕生した時よりも一層厳しくなった世界情勢ですが、基本的な構図は当時とまったく同じです。安倍新総理の予想は如何に?

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元の木阿弥~中東 其の四

2006-09-30 18:43:58 | 外交・世界情勢全般
■責任の擦り付け合いと「丸投げ」が続くアフガニスタン戦争は、まったく出口など見えない状態になっているわけです。南部で続く掃討作戦も日本から給油を受けた艦船の支援を受けて続行されているのでしょうから、注文はどんどん増えて行くのでしょうなあ。日本は黙って協力して灼熱のインド洋で今日も命懸けの給油作業が続けられているというわけです。こうしたニュースが海上自衛隊の皆さんの耳に届くと、士気が下がるでしょうなあ。安倍政権の最初の仕事は、この遣り甲斐の少ない給油作業を1年延長する事になりそうです。美しい国の軍隊がやるべき仕事なのかどうか、とくと御高説を拝聴する事にしましょう。

イラク駐留英軍は25日、国際テロ組織アル・カーイダを率いるウサマ・ビンラーディンの側近が潜んでいた同国南部バスラの隠れ家を急襲、交戦の末、側近を射殺した。……射殺されたのは、オマル・ファルーク容疑者。米当局は、同容疑者が東南アジアでのテロ活動を担当し、インドネシア・バリ島の爆弾テロに関与したとされるテロ組織ジェマア・イスラミア(JI)との連携役を務めていたとみている。読売新聞 - 9月26日

■情け無い話しか聞こえてこないイラクから、こんなニュースが流れて来ました。米英両政府はこれを大きな「戦果」だと宣伝したいところでしょうが、バスラという重要な場所にアルカーイダの大幹部が潜伏していた事実の方に注目した方が良いでしょうなあ。イラクはテロリストが自由に出入りできる場所になっている証拠です。バスラの近所に居た日本の陸上自衛隊が引き上げて来ていて良かったなあ、と日本政府は絶対に言えないでしょうなあ。でも、「当初の目的を達成したので…」と言って撤収した日本の影はどんどん薄くなりそうです。


日本政府が米政府に対し、イランが国連安全保障理事会決議に反してウラン濃縮活動を今後も継続した場合、アザデガン油田の開発に公的融資や債務保証を行わない方針を非公式に伝えていたことが分かった。29日までに米政府筋などが明らかにした。イラン政府はウラン濃縮活動を放棄しない考えを繰り返し明確にしており、米国は、日本が事実上、国際石油開発が権益を持つ同油田から撤退を決断したと受け止め、歓迎している。 
時事通信 - 9月30日

■狂ったような原油の高騰が一段落したとは言え、日本のエネルギー政策の虚弱さは変わっていません。サハリン2に続いてイランの権益を失う事が、美しい国の国益に適うのかどうか、とくと考えねばなりませんぞ。サハリン2の石油・天然ガス田を強奪しようとしているロシア政府は、日本が石油を諦めるイランに原発プラントを売り付けているのは、どうも間尺に合わない話ですなあ。


イランのダバーディ第1副大統領は22日、同国の核問題をめぐって西側諸国が対イラン攻撃を考えることがあってはならない、と警告した。テヘランではこの日、イラン・イラク戦争開戦日を記念する軍事バレードが行われ、イスラエルや湾岸諸国の米軍基地を射程に収める弾道ミサイル「シャハブ3」(射程2000キロ)が披露された。パレードに先立ち演説した同第1副大統領は「われわれは平和を望んでいるが、(西側の)大国に対しては(イランへの)攻撃を考えることのないよう警告する。イランを守る体制は完全に整っている」と述べた。ロイター - 9月23日

■日に日に「イラン戦争」が近付いている気配が濃厚になって行きますから、イランでの石油開発は急いで進めない方が良いと日本政府は判断したのかも知れませんが、アザデガン油田の分を穴埋めできる手当ては済んでいるのでしょうか?

元の木阿弥~中東 其の参

2006-09-30 18:43:28 | 外交・世界情勢全般


イラクのマリキ首相は29日、首都バグダッドで同日夜から外出禁止令を敷いた。10月1日午前6時(日本時間同日午前11時)までで、その間、車だけでなく市民の外出も完全に禁止される。イラク国営テレビが政府の決定を発表した。バグダッドではこれまでも夜間外出禁止令が敷かれてきたが、政府発表は、30日の日中も外出が禁止された理由を明らかにしていない。バグダッドでは、イスラム教徒が宗教的感情を高めるラマダン月(断食月)に入ってから、自爆テロや、宗派抗争を背景にした「処刑部隊」による無差別殺人が激化している。産経新聞 - 9月30日

■年に一度の禁欲生活に耐えねばならないラマダンの1箇月間は、常にも増して神の存在を実感し、時には神からのメッセージが届くような経験をする人が続出する季節です。外出を禁じられてしまうと、日没後に許される食事と友との語らいも味気ないものになってしまいますなあ。日の出から続く空腹感に絶望感が混ざり合うと、テロリストからの勧誘の声が聞こえ易くなるのですが……。少なくともサダム・フセイン時代のラマダンは、今よりもずっと楽しく充実した時間だった事だけは確かです。


ブッシュ米大統領は26日、ホワイトハウスでアフガニスタンのカルザイ大統領と会談し、同国の治安悪化への対応などを協議した。カルザイ大統領は会談後の共同会見で、隣国パキスタンによる国境管理努力に懐疑的な見方を示した。ブッシュ大統領は27日、亀裂が深刻化するアフガンとパキスタンの両大統領を招き、対テロ戦争での足並みを調整する。ブッシュ大統領は01年秋のタリバン政権打倒から5年を経てアフガンの治安悪化が深刻化している理由を「タリバンや(国際テロ組織)アルカイダの残党が民主化プロセスを脅威とみなしているからだ」と説明。アフガン国内に米国の再建支援への「決意」を疑う声があることを認識しているとした上で、「米国はアフガンの自由な人々を支援していく」と約束した。米国では、アフガン情勢悪化の原因として、イラク戦争に重心を移したブッシュ政権が国家再建面で十分な対応を怠ったと批判する声が強い。

■戦力の逐次投入という最も危険な過ちを犯したクリントン政権を批判して大統領になったブッシュさんは、そのアフガニスタンを放り出してイラクに攻め込み泥沼化、一旦は壊滅させたタリバンにアフガンの南半分を奪い返されて、泣きっ面に蜂の状態です。一時はサウジから中央アジアにかけてのイスラム地域に駐留基地を展開したものの、元々一枚岩になどなれない独裁政権が林立している場所柄、対テロ包囲網は穴だらけとなってその穴から復活したタリバンはせっせと麻薬を密輸して大儲けしているそうですなあ。巡り巡ってそのタリバン製品が米国内で販売されるのでしょうから、まったく間抜けな話です。


…カルザイ大統領はパキスタン軍が先にアフガンとの国境地帯に位置する北ワジリスタン管区で地元部族と結んだ「和平協定」について「最も重要なことはテロリストのアフガンへの越境を許さないことだ。合意が履行されるか見守るしかない」と述べた。カルザイ大統領はワジリスタン地方がアルカイダなどの避難所となっていることが治安悪化の要因だと繰り返し指摘し、テロ対策をめぐる非難合戦でパキスタンのムシャラフ大統領との関係が悪化している。ブッシュ大統領は27日夜、対テロ戦争の重要なパートナーであるカルザイ、ムシャラフ両大統領をホワイトハウスに招き、「仲裁」を試みる。毎日新聞 - 9月27日

■タリバンを生み育てたのは確かにパキスタンでした。しかし、アーミテージさんに「原始時代にしてやるぞ!」などと脅されて渋々タリバン退治に協力したムシャラフさんですから、裏に回ってどんなお目こぼしをしているかは分かったものではありません。同じイスラム教徒同士で殺しあう命令を出し続ければ、必ず自分が暗殺されるのは目に見えているのですからなあ。パキスタンを一方的に責めているカルザイさんにしたところで、北部の軍閥と米軍に責任を丸投げしているだけですから、この仲違いが克服される事など無いでしょうなあ。


NATOは28日、スロベニアで国防相会議を開き、アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊の指揮権を来月以降、同国全土で執ることを決めた。イスラム原理主義勢力タリバンの掃討作戦を実施している米軍部隊約2万人のうち、約1万2000人も指揮下に入り、国際治安支援部隊は3万人規模となる。毎日新聞) - 9月29日

■とうとうブッシュさんもNATOに「丸投げ」です。勇んで出掛けるNATOの方も、成功すればイラク戦争の失敗を当てこすって恩を売れると計算しているのでしょうが、たった3万人でアフガニスタンを制圧など出来はしません。


北大西洋条約機構(NATO)は7月末、アフガニスタンでの治安維持活動の指揮権を米軍から引き継いだが、タリバンからの予想外の抵抗に遭い、加盟各国に緊急増派を求めている。しかしレバノン派兵などもあって各国とも余裕がなく、反応は鈍いのが現状だ。アフガンでは現在、約2万1000人の米軍と、約2万人のNATO主体の国際治安支援部隊(ISAF)が治安維持活動を行っている。ISAFは今月、南部のタリバン勢力掃討を狙った「メドゥーサ作戦」を実施。タリバンのメンバー500人以上を殺害したもようだが、ISAF側も戦闘でカナダ兵5人が死亡。7月末の指揮権移譲後では、ISAFは少なくとも35人の犠牲者を出している。時事通信 - 9月24日

元の木阿弥~中東 其の弐

2006-09-30 18:42:59 | 外交・世界情勢全般


イスラエルのオルメルト首相は、近日中にアッバス・パレスチナ自治政府議長と会談する計画だと明らかにした。イスラエル・ラジオが28日放送予定のインタビューで述べた。ただ、最終決定はしていないという。また、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘について同首相は、近く戦闘が再開するとは考えていないと述べた。ただ、レバノン南部からのイスラエル撤退が完了する時期などは、明らかにしなかった。会談が実現すれば、両者による初の首脳会談となる。さらに、オルメルト首相は、ガザで拘束されているイスラエル兵が釈放されない限り、イスラエルが拘束しているパレスチナ人の釈放は検討しないと述べた。
ロイター - 9月28日

■オルメルト首相とサウジ国王とが秘密裏に接触したとの報道も流れましたが、イラン・イラク・シリア・レバノン・パレスチナと広まってしまった「シーア派ベルト」の南側に沿って、イスラエル・パレスチナ・ヨルダン・サウジアラビアに親米防御壁を築き上げたいブッシュ政権ですが、それにはイラクから撤兵して前線を南に下げるのが順当な戦略のはずです。しかし、現状を考えればイラクからの撤収は絵に描いたような「敗北」となってしまいますから、簡単には決断出来ないのがブッシュ政権の苦しいところですなあ。アルカーイダとも無関係で大量破壊兵器も無かったイラクに襲い掛かった大義名分は「対テロ戦争」でしたから、テロが大流行しているイラクの現状を放置して引き上げたら、あの戦争の意味は消失します。


米著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏は、1日放映予定のCBSのインタビュー番組「60ミニッツ」で、ブッシュ政権はイラクでの米軍に対する暴力行為の実態を隠しており、政府や国防総省がイラク情勢の進展を強調しているのに反し、現地の状況は悪化していると語った。ウッドワード氏は、米国主導の多国籍軍に対する暴力行為は15分おきに発生していると指摘。「攻撃は1週間に800─900件という水準に達している。これは1日に100件以上という計算になり、1時間当たりでは4件となる」と述べた。また「諜報問題の専門家によると、2007年には状況がさらに悪化する見通しだが、大統領も国防総省も『そんなことはない、事態は改善している』と言っているに過ぎない」と語った。同氏の新著出版に先立ち、28日にインタビューの一部が公表された。
ロイター - 9月29日

■ウッドワードさんはイラク戦争が開始された事情の裏側は暴露する本を出していますが、事態は当初の最悪の予想を遥かに越えて悪化しているという事になりますなあ。「1日100件」以上のテロ攻撃に晒されているという事は、滅多打ちに遭っているという意味になりますぞ。既に親米勢力などは消え去って、無関心を装う多くの市民とそんな市民を隠れ蓑にして動き回っているテロリストとの区別はまったく付かなくなっているようです。既に米軍の中には厭戦気分と敗北の予感が満ちているようで、輸送トラックの車列が襲撃されて命辛々生き残った運転手が決死のビデオ撮影をしていた証拠が公表され、車列に同行していた護衛部隊は我先に現場から逃げ去ったという冗談のような話です。まるで大日本帝国が満洲に国民を置き去りにして逃げ帰った話とそっくりで、既に戦争とも呼べない段階に入った証拠かも知れませんなあ。


アーミテージ元米国務副長官は27日、毎日新聞とのインタビューで、米軍駐留が3年を超えながら治安が安定しないイラクの状況について、「我々が勝利しつつあるとは思わない。現状が長期化すれば敗北につながる」と述べ、駐留継続への米国内の政治的支持や、安定化を目指すイラク側の決意が重要だとの認識を示した。アーミテージ氏はイラクの現況を「米国は軍事的には負けもしないが、勝利も出来ない」と分析。しかし、米国内で根強い早期撤退論に対しては「今、我々が出て行けば事態は混とんとなる」と否定的で、イラク側主導の治安安定化を目指すブッシュ大統領の政策は「正しい方向だ」と評価した。……イラク戦争開始時、国務省ナンバー2として、開戦に慎重だったパウエル長官(当時)を補佐した。同氏はフセイン旧政権の武力排除には賛成だったが、対テロ戦争の主戦場だったアフガニスタンの状況が安定するよう、05年初めごろまでイラク開戦を待つべきだと大統領やチェイニー副大統領に進言したという。アーミテージ氏は「結局、二つの場所(イラクとアフガン)に注意と兵力を分散することになった」と語り、戦線拡大を問題視した。……毎日新聞 - 9月28日

■北朝鮮の軍部が聞いたら随喜の涙を流して胸を撫で下ろしような発言ですなあ。今の米国には2つの戦線を維持する実力が無いのです!迎撃ミサイルが絶対に届かない超高空爆撃か、遠い海から巡航ミサイルを撃ち込む事ぐらいしか出来ない図体ばかり大きな米軍は、ネズミか蚤のように身を潜めて動き回る小さな標的を捕捉する事が出来ず、陸上部隊が投入されたら自爆テロと待ち伏せ攻撃に苦しめられるばかりです。ヴェトナム戦争から何も学んでいないようですなあ。「負けもしないけれど、勝ちもしない」そんな苦し紛れの誤魔化しをしている間にも、貧困層から釣り上げられた若い米兵が命を落としていのです。それを「戦死」と呼べなくなったら御仕舞いですなあ。

元の木阿弥~中東 其の壱

2006-09-30 18:42:23 | 外交・世界情勢全般
■日本ではシナリオ通り、予想通りに自民党総裁選挙が滞り無く、サプライズも無く一皮剥けば「旧福田派」から「旧岸派」へと実質的には身内の間で権力が移譲されました。自民党の派閥支配が終わったとマスコミが何の疑念も無く書き立てていたのに、実態はかつての田中派以上に森派が政権中枢を独占する長い時代が続く事になったというわけですなあ。他の派閥に所属している議員の個人的な出世欲に付け込んで閣僚ポストを配分しながら、腹に一物有る実力者はしっかりと干されたのですから、マスコミに満ちている御祝儀気分が一段落したら、怨念の茶番劇が始まることでしょう。

■何事も「小泉政権」の政策を継承する宿命を負っている安倍政権ですから、米国が苦しみのた打ち回っている中東政策の大失敗にもずっと付き合い続けねばなりません。特に変わった事も起こらないと分かっていた安倍内閣の誕生劇がマスコミ報道の中心を占めていた間に、世界はどうしようもなく「第2次ヒズボラ戦争」へ向けてまっしぐらに進んでいたのでした。もう、後戻りも出来ず迂回路も閉ざされてしまったようですなあ。


中東和平4者協議(米露と欧州、国連)は20日、ニューヨークで会合を開き、アッバス・パレスチナ自治政府議長のイスラム原理主義組織ハマスとの統一政府樹立に向けた努力を支持することで一致した。また、パレスチナ国家建設によるイスラエルとの2国家共存への道筋を示した「ロードマップ」(新中東和平案)の有効性も再確認した。会談にはアナン事務総長やライス米国務長官、欧州連合(EU)のソラナ共通外交・安保上級代表らが出席した。協議後に発表された声明は、統一政府への支持に条件をつける形で「統一政府の政策綱領が4者協議の原則を反映することを望む」と表明した。欧米諸国は今春のハマス政権発足後にパレスチナへの援助停止に踏み切り、4者協議は支援再開などの条件として、イスラエルの承認など3条件を突きつけた。今回の声明は「原則の反映」を求めるにとどまっており、強硬姿勢を見せてきた米国が一定の柔軟性を示したと見られる。毎日新聞 - 9月21日

■ブッシュ政権の支持率が、単なるマネー・ゲームの投機熱が石油から去っただけの理由で、ぴょこんと跳ね上がったとの話ですが、この10日ほど前の中東問題に関する能天気な会議も支持率上昇に寄与したのではないでしょうか?イラク占領政策の大失敗で、ブッシュ政権の中東民主化政策は根底から覆ってしまっているのを、なつかしい「ロード・マップ」を蘇生させる事で米国の民ばかりか世界中を騙そうとしたようなものですなあ。


パレスチナの「挙国一致内閣」構想をめぐり、アッバス自治政府議長の側近でファタハ幹部のサエブ・エレカト元交渉相が28日、本紙と会見し、「現内閣を率いるハマスが過去の和平合意を認めず、米国の支持が得られなかった。このままでは組閣は無意味だ」と述べ、構想が頓挫する可能性を示唆した。議長とともに22日まで約1週間訪米したエレカト氏は、一行がライス国務長官との会談直前、米側に組閣構想への支持を求めたことを明らかにした。だが、米側は「イスラエルの生存権は認めない」とするハニヤ首相らハマス幹部の最近の発言記録を突きつけた上で、「これでは(組閣に)合意できない」と通告したという。
読売新聞 - 9月30日

■第一次ヒズボラ戦争を我が事のように喜び誇っているハマスが、「反イスラエル」の大看板を外すわけも無く、しかブッシュ政権のお望み通りに「民主的な選挙」を実施して正式に国会内に議席を得るわ、閣僚は出すわで、中東の民主化とは何なのかを世界中に示しております。それを今更、合法的な「連立政権」を認めないとは、本来ならば口が裂けても言えないはずのブッシュさんなのに、平気で民主的な組閣に反対しているのは実に苦しい話です。

自動車=必要悪 其の四

2006-09-28 17:20:32 | 社会問題・事件


中古車の大量架空販売が発覚した自動車販売大手「大阪トヨタ自動車」で、大阪府内の営業店が幹部社員の中古マイカーを高値で買い取り、さらに高い価格で一般顧客に販売していたことが、27日わかった。幹部社員はマイカーを自ら「査定」し、約50万円の売却益を得ていたという。顧客への販売価格に、その分が上乗せされた形になり、同社の営業モラルが問われそうだ。同社関係者によると、幹部社員は2003年10月、同社が仕入れた中古ワゴン車を、勤務していた営業店で126万円で購入。通勤用などに使った後、翌年9月、同社に1・4倍の180万円で売却した。ワゴン車はその3週間後、同営業店で一般顧客に198万円で販売された。
読売新聞- 9月27日

■広い裾野を日本中ばかりか世界に広げた巨大産業となっている自動車会社ですから、この程度の小遣い稼ぎをしている不心得者が居ても不思議ではありません。しかし、莫大な政治献金をしたりテレビや新聞雑誌にそれ以上の宣伝広告費を供給する自動車産業には、敵対する者は皆無でしょうから、逸早くロボット化を進めて人員を激減させた上に、すべての単純労働を一時雇いの非正社員に切り替えたり、社会保障や子供の教育に不安の有る外国人労働者を大量に呼び込んで、ちょっとでも景気が悪くなれば「人員調整」してしまう。仕事が有る時には過労死覚悟で働いた後には使い捨て、そんな黒い噂が耐えなくても空前の収益を上げていると誰もが賞賛する空気がいっぱいです。


千葉県成田市の国道で2001年、同市不動ヶ岡、元郵便局員根本健宏さん(42)が酒気帯び運転の乗用車にはねられ、意識不明の重体になっている事故を巡り、根本さんの両親らが、運転手の同市、男性受刑者(34)(業務上過失傷害などの罪で懲役2年4月が確定)を相手取り、介護料など計約4億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、千葉地裁佐倉支部であった。溝口理佳裁判官は「著しい過失があった」などとして計約3億円の支払いを命じた。判決によると、男性受刑者は01年10月4日午前3時ごろ、同市飯田町の国道464号で、乗用車を酒気帯び運転。知人の車を誘導していた根本さんをはねた。根本さんは意識不明の状態で自宅療養している。
読売新聞 - 9月27日

■この34歳の受刑者は、この事故の前にも飲酒運転をしていたのに、地元の「有力者」の父親の圧力で摘発を逃れたとの話も伝わっております。唯一の救いは対人・対物保障無制限の保険に加入していたとかで、裁判所の命令通りの支払いは受けられるのだそうですなあ。恐ろしい事に悪質な運転手の中には酒代惜しさに強制保険以外にはまったくの無保険状態で走り回っている危ない連中が多いのだそうですなあ。そんな酔っ払いに出っくわしたら、もう諦めるしか無いというのは何とも恐ろしい話です。

■世界的に有名な元F1日本人レーサーの中島悟さんが、「公道を走るのは恐ろしい」と言っていたのを覚えています。ところが下手くそな素人にはこういう超一流のドライバーが言っている恐ろしさが分からないのが哀しいところで、子供が玩具を扱うように自動車で遊んでいる者が居なくならない限り、よほど注意しながら自動車の脇で生きて行かねばなりませんなあ。

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自動車=必要悪 其の参

2006-09-28 17:20:07 | 社会問題・事件


群馬県警高崎署は26日未明、酒を飲んでタクシーを運転していたとして、群馬県高崎市中居町2丁目、タクシー会社「日本中央交通」の運転手中山株重(もとしげ)容疑者(61)を道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕した。調べでは、中山容疑者は26日午前1時10分ごろ、高崎市八島町の県道で、酒気帯び状態で客を乗せタクシーを運転していた疑い。乗客が、酒臭く、道を間違うなど様子がおかしいのに気づき、JR高崎駅前の交番で止めさせ、本署への専用電話で通報した。署員が交番に駆けつけた時には、中山容疑者ははいていた靴下の中に200ミリリットルの焼酎の空き瓶を隠していたといい、「1~2時間前に車内でビールや焼酎を飲んだ」と話しているという。 朝日新聞 2006年9月26日

■この人物がタクシー運転手になってからどれほどの年月が経過しているのか、記事からは分かりませんが、もしも長引く地方の不景気で失業し、自分がアルコール中毒であることを隠してタクシー会社に再就職していたとしたら、何とも恐ろしい話になりますなあ。酒乱のけも有ったのかも知れませんから、この上客は怖かったことでしょう。交番前に停車させたのはお手柄でしたし、きっと機転を利かせて酔っ払い運転手を騙したのでしょうなあ。「靴下の中」に焼酎の瓶を隠していたというのですから、万一、警察官や目敏(ざと)い人が車内を覗き込んだ時の用心をしていたのでしょうが、一時も酒を手放せない中毒である可能性も有ります。タクシー会社の管理責任と採用責任が追求されそうな事件です。バスの運転手の中にも、酒で景気を付けて乗務する恐ろしい習慣を持っているツワモノも居るとの報道が続いていましたが、やはり、タクシー業界にも居るのですなあ。


排ガスによる汚染で健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが自動車メーカー7社と国、東京都などを訴えた「東京大気汚染訴訟」の控訴審が28日、東京高裁で結審する。02年の東京地裁判決では、原告102人のうち7人に国と都などの損害賠償が認められたが、メーカーの責任は否定。残りの原告については、排ガスと健康被害の因果関係を認めなかった。原告は「被告は謝罪し、早く原告全員を救済してほしい」と訴えている。原告の小柳聡美さん(27)=東京都北区=は小学校へ入学する直前、ぜんそくを発病。それ以来、病気だけではなく偏見とも闘ってきた。体育の授業では全力疾走できず、同級生から「サボっている」といじめを受けた。「人と話すのが怖くなり、昼間の外出を避けるようになった」しかし、96年の提訴後は「被害を訴えなければ、周囲の無理解も変わらない」と体験を語ろうと決意。控訴後も多い時には月2~3回、地元の集会場や街頭などで、震える手足を抑えながらマイクを握った。

■各種の排ガス規制が実施され、日本は世界でも最先端の排気ガスの清浄化技術を開発したのは事実ですが、石油燃料をエネルギーにしている限りは汚染物質をまったく排出しないでは済まされないのもまた事実。ガソリンから硫黄や鉛を除去しても光化学スモッグは発生しますし、ディーゼル・エンジンの粉塵も長い間放置されて道路沿いの建物を真っ黒くし続けていましたから、生身の人間が呼吸器系の病気になるのも当たり前の話でしょうなあ。振動や騒音と言う神経をいたぶる困った問題も有ります。国民病とも言われる「花粉症」もその引き金は排気ガスだと言う恐ろしい仮説も無くなりませんなあ。


地裁判決は、排ガス中の二酸化窒素(NO2)などの物質と健康被害との因果関係が認められる地域を「昼間12時間の交通量が4万台を超える道路の沿道50メートル以内」とした。小柳さんの自宅は、都道からわずか約20メートルの距離だったが、交通量が約1万台だったため因果関係は認められなかった。しかし、原告団が独自調査したところ、NO2の濃度は都心の幹線道路並みだった。

■「12時間に1万台」ということは、1時間に833台、1分間に14台になる計算ですから、4秒に1台!これ以下ならば健康被害は自動車の排気ガスの影響とは認めないと言うのならば、5秒に1台通過するくらいは大丈夫という事ですなあ。


小柳さんは「ぜんそく患者は周囲の偏見で、体と心の二重の被害に苦しんでいる。23区全体に汚染が広がっており、被害者を増やさないためにも早く解決してほしい」と話した。……東京大気汚染訴訟は、96年5月に初提訴後、今年2月の第6次まで患者や遺族計633人が提訴した。被告メーカーは▽トヨタ自動車▽日産自動車▽三菱自動車工業▽日野自動車▽いすゞ自動車▽日産ディーゼル工業▽マツダの7社で、損害賠償の請求総額は1~6次で計148億円。第2次提訴以降の裁判は現在、東京地裁で係争中。
毎日新聞 - 9月27日

■死ぬより苦しいと言われる発作が起こる喘息に耐え切れずに提訴した人が633人というのは随分と少ないような気がします。泣き寝入りしている人や、自動車の排気ガスとの因果関係をまったく知らない患者も多いのかも知れません。何よりも、現代社会において自動車会社を相手に裁判を戦い続ける徒労感を先回りして考え、諦めている人も多いでしょうなあ。


東京都内のぜんそく患者らが排ガスで健康被害を受けたとして、国と都、旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)、自動車メーカー7社に損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟で、都が患者救済に向けてメーカー側と協議の場を設けることが27日、わかった。メーカー側に協力金の支出を求めて、患者への医療費助成制度の創設などを検討する。同訴訟の控訴審は28日に東京高裁で結審する見通しだが、裁判所の結論を待たずに、新たな患者救済制度ができる可能性が出てきた。……2002年10月の1審判決では、国と都、公団が損害賠償の支払いを命じられた。ディーゼル車規制などに取り組んでいる都は「被害者救済は行政の使命」として控訴を見送り、国にも控訴取り下げを要請した。
読売新聞 - 9月28日

■経済団体の重鎮でもある自動車会社の会長が、どんな対応をするのか見物ですが、ディーゼル車の煤煙を除去する条例を作った石原都知事ご自身も、最近になって花粉症に苦しみ出したとの報道が有りましたなあ。健康のためと称して、都内では自動車が引っ切り無しに走っている道路の脇を熱心にジョギングしたり散歩している人がたくさん居ますが、今のところガス・マスクのような重装備をしている人は居ないようです。まあ、電気自動車であろうが、天然ガスを燃料にしたエンジンであろうが、とにかくガソリン文明を脱する技術が確立すれば、昭和40年代頃の凄まじい排ガス公害の記録フィルムは、ナチスのガス室並みの恐怖感を持って後代の人々に見られる事だけは確かです。

自動車=必要悪 其の弐

2006-09-28 17:19:37 | 社会問題・事件
■24日は日曜日、電車を使わず埼玉から渋谷や池袋に車で出掛けねばならない「理由」が分かりません。「車中泊」というのも奇怪な話です。月曜の午前9時55分に東川口あたりでトイレを探してうろうろしているのも変な話で、井沢容疑者の居住地が栗橋ならば、事故現場から40キロも北に戻らねばなりません。運送業の手伝いというのは夜勤が中心なのかも知れませんなあ。それも、池袋からまっすぐ帰宅するのなら、車を止めて眠ったと言う戸田市は西にズレています。戸田から川口を経由して栗橋に向かうのならば、東京外環自動車道から東北自動車道を通って行けば、少なくとも園児の朝の散歩に出会うことは無かった!東川口ジャンクションで高速に乗るつもりだったのか?事故現場は信号を嫌って先を急ぐ車が愛用する抜け道なのだそうです。

■元々、巨大な馬や駅馬車が駆け抜けていた広い道を舗装して自動車社会に移行した国々とは違って、人と人とが行き交って大八車か人に引かれた馬ぐらいしか通らなかった日本の道に、強引に自動車が入り込んでいるような場所がそこら中に有りますなあ。馬車文化が成熟していた欧米諸国で暮らしてから日本に戻って、人と車の距離が余りにも近くて恐ろしくて足がすくんだ経験をした人も多いはずです。玄関先を自動車が通過し、向かいの建物同士で会話が通じるような商店街の真ん中を自動車が通過する。通学路に指定されている狭い道路を大型ダンプやトラックが我が物顔で走り抜ける。それが世界第二位の経済大国が作り出した風景です。それを一番良く知っているのが日本の自動車メーカーで、その証拠に新車のCMは必ず海外の道路で撮影して放送しているでしょう?

■そんな奇怪で物騒な日本の道路事情に腹を立てて、身勝手にアクセルを踏み込むのは狂人に他ならず、園児の健康を考えて車に怯えながらも散歩をさせねばならない保育士の皆さんは大変な緊張を強いられます。今回の大事故は、後ろから園児の列を薙ぎ倒したのだそうですから、逃げようが有りませんなあ。


飲酒運転の車で幼い3人の子どもの命が絶たれた福岡市東区の事故から約1カ月の間に、九州7県で計1139人が飲酒運転で摘発されていることが25日、各県警の集計で分かった。うち、逮捕者は71人。悲惨な事故後も1日平均38人が摘発されている計算で、多くが「自分の問題」としていない現実が浮かび上がった。各県警によると摘発の内訳は、呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上の酒気帯び運転は1120人。それ以上に酔って正常な運転ができない酒酔い運転が19人。県別では福岡が摘発総数の約44%を占めて最も多かった。

■こういう数値を見せられますと、梯子酒の揚句に女アサリに車を走らせていた若造など珍しくもない土地柄なのかなあ、と思わざるを得ませんぞ。別に九州だけに飲酒運転が集中しているわけではないでしょうが、全国的に大騒ぎをしていても、急に「習慣」は変わりませんし、酔っ払い運転を冗談にしたり武勇伝にしたりしているような地域では、どんなにポスターをべたべた貼ろうが、摘発を強化しようが根絶は不可能でしょうなあ。日本中


相次ぐ飲酒運転の摘発。柴尾美敏・福岡県警交通指導課次席は「飲酒運転の悲劇に対する想像力が欠けている。検問などの取り締まりは続けるが、飲酒運転は恐ろしい犯罪という啓発活動にも力を入れたい」と話す。また、「これだけ飲酒運転が社会悪と言われながら、なくならないのは悲しい」(鹿児島県警)「関心をもっていないとしか思えない。引き続きこつこつと取り締まる」(熊本県警)など、各県警からも怒りの声が相次ぐ。……今回の事故後、福岡市と佐賀県多久市では、飲酒を知りながら同乗した場合も懲戒免職と決定。佐賀県や同県武雄市、長崎県、福岡県大川市など2県・6市で飲酒運転は原則免職にすることを決めた。また、福岡銀行(福岡市)も酒酔い運転の場合は解雇とする処分基準を新設した。……
西日本新聞 2006年9月26日

■よほどの事が無い限りは定時に退社できる地方公務員が目の敵にされるのは、サービス残業やらリストラだの倒産だのに腹立たしい思いをしている民間企業で働く人達の感情も関係しているのでしょうが、馘首も倒産もまったく心配もせずに高給貰って暇が余っていれば気に入った車を買って酒を飲み歩く不心得者も出て来るのでしょうなあ。だからと言って給料を減らしたり、取ってつけた様に残業を演出するのもわざとらしい。「懲戒免職」という脅しをかけるしか方法は無いのでしょうなあ。

自動車=必要悪 其の壱

2006-09-28 17:19:09 | 社会問題・事件
■自動車に関係する出来事が連続しております。総合的な民間技術力の水準を世界に示す商品、日本の代表的な輸出品、生活必需品を運び、買い物・通勤・通学・通院の足、どんなに問題が起きようと、自動車が消え去る事は絶対にありませんし、自動車が無くなればどれほどの命が失われるか分からない社会になるのに、ほんの半世紀しかかかりませんでした。地方のテレビCMには、必ず自動車教習所の宣伝が流されます。誰でも短期間で免許が取得できます!全国の教習所は同じような宣伝文句を連呼して、それに歩調を合わせるように日本人の免許取得率はずっと右肩上がりでした。

■1980年には0・67台だった世帯当たりの自動車保有台数が、1995年には1台を越えたのだそうです。同じ時期の免許証保有者は4300万人から7000万人に増加し、少子化と言われながらもその数値は上がり続けているようです。7000万人の中には、運動神経が鈍い人も注意力散漫な人も含まれるでしょうし、自分勝手で周囲の状況を無視する気性の人も居るはずです。更には、自動車を宝物や財産だと思っている人も居れば、大きな玩具だと信じ切っている人も居ることでしょうなあ。原油価格が下がれば、用も無いのに排気ガスを吐き散らして回る人も居るでしょうし、少々ガソリン代が高くても自宅よりも自動車の中で多くの時間を過ごす人も居るようです。何気なく道路を走る自動車の列を眺めていると、運転技術にしろハンドルを握る心構えにしろ、どの運転手も大差無いような気になってしまうものですが、実はトンデモない不適格者が動かしている自動車も一定の割合で車列の中に紛れ込んでいるに違いないのですなあ。


埼玉県川口市の市道で「川口小鳩保育園」(同市戸塚)の園児らの列に車が突っ込んだ事故で25日、病院に搬送された園児2人が死亡した。他の園児3人も意識不明の重体。保育士の女性2人と園児10人が重軽傷を負った。県警武南署に業務上過失傷害容疑で逮捕された同県栗橋町南栗橋、運送業手伝い、井沢英行容疑者(37)は「助手席に置いたカセットプレーヤーのカセットを裏返そうと脇見していた。ブレーキはかけたが間に合わなかった」と供述。同署は容疑を同致死傷に切り替えて調べる方針。

■今時、自動車に組み込まれていないカセットプレーヤーを操作しながら走っている運転手が居る!オート・リバース機能の無い機種を探すのは大変なのではないでしょうか?


亡くなったのは……夢乃ちゃん(4)、陽南子(ひなこ)ちゃん(3)で、頭などを強く打っていた。他に平井萌奈ちゃん(5)が心肺停止、福地悠月ちゃん(5)と細江美智瑠ちゃん(4)が意識不明の重体。

■天気の好い日に散歩している時に、一瞬で2人の幼児が死亡し、3人が意識不明になってしまう。本来なら、少子化の不安を忘れさせてくれる幼児達の散歩風景は、何処で目にしても良いものですし、自動車で走っていれば減速徐行して声の一つも掛けたくなるものですが……。


現場は幅員約6メートルの直線道路で、歩道やガードレールはなく、園児36人が保育士5人に引率され、道路左側を2列で歩いていた。車は列の右後方脇から、女児(6カ月)を乗せたカートを押していた女性保育士と、亡くなった夢乃ちゃんが歩いていた付近に突っ込んだ。車はそのまま園児らをなぎ倒して約11メートル走り、電柱に衝突して止まったという。

■ちっちゃな体が行儀良く隊列を組んで並んでいるのですから、「11メートル」という距離の間にほとんどの園児が入ってしまうでしょうなあ。まるで縦に並べたボウリングのピンをなぎ倒すようなものです。


井沢容疑者は24日、東京・渋谷周辺でパチンコをしたり池袋で遊んだりした後、埼玉県戸田市で車中泊し、帰宅する途中だった。「トイレのためコンビニを探しに脇道に入った。とんでもないことをして申し訳ない」とも供述しているという。……
毎日新聞 - 9月26日

小泉さんの置き土産 其の弐

2006-09-27 20:14:13 | 政治


日本道路公団から昨年10月、分割・民営化された西日本高速道路会社(大阪市)が、今年行った道路維持管理など4業務の一般競争入札87件のうち、約8割の69件で、公団時代からのファミリー企業1社だけが入札に参加し、無競争で受注していたことがわかった。新規参入した業者の受注は1件もなかった。69件の予定価格に対する落札率は平均97・6%と極めて高く、民営化後も、入札の形骸(けいがい)化で受注価格が高止まりしている実態が浮かび上がった。4業務は、公団時代から「ファミリー企業による独占」と批判されてきた料金収受、交通管理、道路・施設の保全点検、修繕工事。昨年度からは、門戸拡大を目的に、入札前に業者の知識や技能を審査する試験制度が導入されている。
読売新聞 - 9月26日

■道路公団の民営化に協力した猪瀬さんは、盛んに「入り口」「過渡期」だからマスコミと国民の厳しい監視が必要だと発言しているようですが、道路建設の利権構造は簡単に根絶やしになど出来るものではないでしょう。安倍さんは小泉改革を引き継ぐと公約しているわけですが、道路公団民営化には直接関わっては来なかった以上、掛け替えた看板の裏側に巣食っているシロアリを駆除することが出来るかどうか、はなはだ不安になりますなあ。


国土交通省は20日、日本高速道路保有・返済機構と高速道路6社が、旧道路関係4公団から引き継いだ資産評価額を誤り、計207億円を過小計上するミスがあったとして、資産管理体制の強化を求めて厳重注意した。行政指導を行うのは、昨年10月の道路公団民営化後初めて。毎日新聞 - 9月20日

■湯水のごとく税金を吸い込んでいた道路公団が、やっと税金を国庫に納めるようになったと思ったら、こんな事をやっていたのですなあ。税金を誤魔化すところだけ先に民間企業と同じになっては困りますぞ。資産の売却なども始まっているようですが、その払い下げにしても汚職の匂いが立ち上らないようにしないと、改革の元も子も無くなってしまい兼ねませんなあ。


政府の規制改革・民間開放推進会議の議長を務める宮内義彦・オリックス会長(71)が21日夕、小泉純一郎首相に辞任の意向を伝え、了承された。一方、経済財政諮問会議の民間議員、牛尾治朗・ウシオ電機会長も同日、小泉首相に正式に辞意を表明した。諮問会議は民間議員4人全員が退任し、政権交代を機に官邸主導の主要会議のトップやメンバーが相次ぎ入れ替わる。宮内氏は委員も辞任。後任議長には同会議委員で、議長の補佐役である総括主査の草刈隆郎・日本郵船会長(66)の起用が浮上している。宮内氏は小泉首相との面会後、記者団に対し村上ファンド事件と辞任は「何の関係もない」と強調。後任については、「経済界の方がいいと申し上げた」と語った。

■宮内さんが「辞任と村上ファンドは無関係だ」と言い張るのは正しいでしょう。でも、これまで辞任しなかった事と村上ファンド問題とは密接な関係が有ります!この点を記者団はちゃんと質問しなければ行けませんなあ。日銀総裁が辞めるような騒ぎにならないように、宮内さんは歯を食いしばって生き恥を晒していたのでしょうから、どんな思いで辞任せずに頑張っていたのか、是非とも聞きたかったですなあ。


規制改革会議の存続期限は来年3月までだが、宮内氏は、村上ファンド前代表で証券取引法違反の罪で起訴された村上世彰被告との親密な関係が表面化し、与党から辞任要求が強まっていた。後ろ盾だった小泉首相の退任を機に、身を引くことにしたものとみられる。一方、経済財政諮問会議は、22日に開かれる小泉内閣最後の会議で、民間議員全員が退任する。民間議員のうち、奥田碩・トヨタ自動車取締役相談役の後任には、日本経団連会長の御手洗冨士夫・キヤノン会長の就任が明らかになっている。
産経新聞 - 9月22日

■これで怪しげなマネー・ゲームの首謀者みたいな人達は竹中さんと一緒に退任で、今度は技術系の企業から御意見番が出て来たというわけですなあ。「経済財政諮問会議」自体、その功罪がまだはっきりしていませんし、何だか「後は野となれ山となれ」と言いたげな後任人事でもあります。財界とのパイプが無かった小泉さんには、非常に便利な会議だったのでしょうが、血と金で財界としっかりと結び付いている安倍さんには、役人との喧嘩に使うは便利でしょうが、どうも就任前から役人の方には安倍内閣を舐めて掛かっているような気配もありますから、開店休業状態に追い込まれる可能性も有りそうです。


竹中総務大臣:「1つの船の旅、ボヤージュ(航海)が終わって、港に帰ってきたという心境。新しい人たちには、ボン・ボヤージュ(よい船出を)と言いたい」

■本職が大学教授ですから、何か気の利いた名言でも残したいところでしょうが、選挙で当選しておきながら議員を途中で辞める身では、何を言っても唇寒しというところでしょうなあ。結果的には米国政府の注文通りの政策を実現できたのですから、次は米国の有名大学に就職するのでしょう。まさか、自分がぼろぼろにした地方の大学で「経済学」など教えていたら、何をされるか分かったものではないでしょうからなあ。


小池環境大臣:「『あの人、何かの大臣やってたね』と、最長の大臣じゃなく、最善の大臣と呼ばれたい」

猪口少子化担当大臣:「閣僚として何点だったかと聞かれると、難しいところがありますね。とかく、女性のやる仕事は、過小評価されることが常です。この際、自分としては、95点ぐらいつけてもよろしいのでは」。

■猪口さんの仰る通り、「女性のやる仕事は過小評価される」事が多いでしょう。それは何故なのかを御自身が身をもって典型的なサンプルを日本の政治史に残された功績は大きいかも知れません。

猪口さんの公式ホーム・ページ
http://www.kunikoinoguchi.jp/

何処を開いても「95点」の評価を与えたくなる活動内容はまったく見当たりません。トップ・ページに列挙されている無内容な自画自賛の「業績」欄、NPO関連に「市民活動の促進の促進」などという大学の先生らしからぬ面妖な日本語が出ているのが目を引くくらいですなあ。

■「女性閣僚を○人」などと新聞にも平気で書かれているようでは、女性閣僚が活躍する時代はまだまだ来ないでしょう。まして女性首相などとは冗談にも言えません。何しろ、日本の恐るべき選挙民は、あの田中真紀子さんを日本初の女性首相の候補だと持ち上げたのですからなあ。昔、アメリカ合衆国では「エルビス・プレスリーを大統領に!」と本気でデモ行進した能天気な連中が随分と居たそうですが、プロレスラーや漫才師などの人気商売出身者に投票している人を笑っていられないトンデモない現象が起きる可能性は日本にも有ります。金と権力の亡者ばかりでも困りますが、衆愚政治が暴走して誕生する人気者も困ります。

■安倍新首相を誕生させるのに功績が有った人が順送りで閣僚に抜擢されたようですが、一番の功績は北朝鮮の将軍様ではないでしょうか?余りにも短い政治キャリア、大臣経験も無く、パイプの有る外遊先も無い、そんな総理大臣に大きな期待を寄せるのは間違いでしょう。父親が新聞記者出身で、とても温厚な正確だったことから敵がおらず、その父の秘書時代を含めて子供の頃から顔見知りになっているベテランの政治記者が、メディアに登場しては孫か息子を見るような目で甘い事を言っているのが気になります。既に自民党内には組閣にかかわる怨念が目を吹いているとの報道も有りますから、恐ろしく内向きの揉め事が続発する可能性も有りそうですし、異常なパフォーマンス先行の小泉政治の後を受けるには、「芸」の無い安倍晋政権はすぐに「客」に飽きられるのではないでしょうか?唯一の売り物になってしまった「拉致問題」にしても、安倍さんだけが特殊な武器を持っているわけではありません。

■来年7月の選挙向けに何かの見せ場を作ろうにも、その舞台は見当たりませんし、愚かしい妥協と譲歩の末に北京を訪問したところで、日本の国益に敵うような展開は望めないでしょう。唯一、瓢箪から駒が転がり出るとしたら、小泉政権が固めた対米従属路線の延長線上で、イラクの泥沼から抜け出すために北朝鮮への空爆を米国が実行でもして、これまでの行き掛かり上協力せざるを得ないと言い張って、日本海を戦場にでもしたら、憲法改正だろうが集団的自衛権だろうが、ばたばたと事が運ぶかも知れませんなあ。防衛庁長官の顔を見ていると、そんな事態を想定しているのかなあ、と想像したくもなります。

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小泉さんの置き土産 其の壱

2006-09-27 20:12:30 | 政治
■「皆で仲良く、どうぞ宜しく内閣」とでも名付けたくなるような諸先輩に対する敬意と気配りが滲み出た、面白くも可笑しくもない安倍政権の組閣が終わったようですなあ。小泉さんは就任した5年前と同じ調子で、自画自賛と自己満足の表情で、ナルシストの本性丸出しで引っ越して行ったようです。しかし、いくら日本人が忘れっぽくて新し物好きとは言っても、小泉内閣が残したゴミを忘れては行けませんなあ。マスコミはうっかり真紀子さんブームの煙幕と看板に騙されて、小泉政権の支持率アップに全面協力させられたという前科と恥が有りますから、さっさと安倍政権の新しいネタで気分を変えたいのは分かりますが、騙された国民はもっと冷静な目を持っていた方が良いでしょうなあ。

死刑執行命令書への署名を拒んだまま退任する杉浦正健法相は26日の閣議後会見で「死刑問題については答えを差し控えたい。『コメントはなし』でお願いしたい」と述べ、具体的な言及を避けた。死刑制度の在り方についても「自由の身になったら感慨を言うことはあるかもしれないが、ここでは控えさせていただくのが適当と思う」と話した。昨年10月の就任会見で杉浦法相は「(死刑執行命令書に)私はサインしません。私の宗教観というか哲学の問題だ」と述べた直後に発言を撤回。その後は「適切に判断する」としつつも、「理由のいかんを問わず、他の人間の命を奪うことは許されないという気持ちは根底にある」と消極姿勢をにじませていた。
毎日新聞 - 9月26日

■死刑反対!と公言した法務大臣は杉浦さんが最初ではありませんが、この種の「問題発言」が出る度に、必ず任命権者の首相の政治責任が追求されるのが通例でした。しかし、「人生いろいろ」の小泉プレスリー首相には、誰も責任追及の矢を放ちませんでしたなあ。実に不思議な現象です。法務大臣としての職責を果たさぬ法律違反を犯しているのですから、これは大問題です。死刑制度が有る国の法務大臣が、死刑に反対するのは間違っています。「俺は外国生活が長かったから、右側走行に慣れているから道路はいつも右側を走るんだ!」という総務大臣がいたらどうするのでしょう?「俺はアメリカの西部劇やアクション映画が大好きで、日本も早く銃社会になった方が良いと信じているから、いつでもピストルを持ち歩いているぞ」という大臣がいたら……。それでも「人生いろいろ、法律もいろいろ」なのでしょうか?

■少年法の不備を突いた凶悪少年犯罪が多発して、少年法を改正する時代に、終身刑などの新しい法体系を提案するでもなく、「俺は死刑が嫌い」などと寝ぼけた事を放言する法務大臣を任命して放置した小泉政権の罪は軽くはありませんぞ!


法相に就任した長勢甚遠さんは26日の会見で、死刑問題について「大変重大な刑罰で、慎重に考えなければならない問題だが、確定した裁判を厳正に執行することも大切なことだ」と述べ、法の規定に沿って判断するとの考えを示した。杉浦前法相は、昨年10月の就任会見で死刑執行命令書に署名しない考えを明らかにし、その直後に発言を撤回していた。ところが、今月、法務省事務当局から、執行対象となる死刑囚の記録を渡され、命令書への署名を求められたものの、これを拒んでいたことが判明。結局、約11か月間の在任期間中、死刑は執行されなかった。
読売新聞 - 9月26日

■新大臣の、「執行する事も大切なこと」という発言の「も」には問題が有りますなあ。正しくは、「重大な刑罰だが、厳正に執行する」と言わねばならないでしょう。内閣の最高責任者が総理大臣だという基本的な認識が、小泉政権時代には失われていたような気がしますぞ。相手構わず「抵抗勢力」にしてしまうので、小泉さんは政府とも内閣とも自民党とも切り離された一匹狼のように扱われていたのではないでしょうか?「派閥政治を無くした」などとも言われますが、最初から派閥などの組織には居られない特殊な性格の持ち主だったのでしょう。孤独な自分を礼賛して公言するような異常な人物を、どうして多くの国民が支持したのか?孤立を怖れて気を遣っているのに草臥れ果てた末の妄信だったのかも知れませんなあ。


小泉純一郎首相は15日夜、オウム真理教元代表、松本智津夫被告の死刑確定について、首相官邸で記者団に「ひどい事件だったから、厳粛に刑を受け止めなければならないと思う」と述べた。また、死刑執行については「法律にのっとって整然と執行されるべき問題だと思っている」と語った。
毎日新聞 - 9月15日

■死刑を執行させない法務大臣を閣内に置いているのに、こういうことを平気で言う総理大臣は駄目です。時として法律を無視する八方破れは、架空のテレビ・ドラマならば個人的に楽しめば良いのですが、一国の総理が法律を軽視して平然としているのは大問題でしたなあ。

1978年に東京都足立区立小の女性教諭・石川千佳子さん(当時29歳)を殺害して自宅の床下に埋め、殺人罪の時効成立後の2004年に犯行を自白した同小の元警備員の男(70)らに、遺族3人が約1億8600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。永野厚郎裁判長は、男が遺体を隠し続けた行為について、「遺族が故人を弔う機会を奪い、故人に対する敬愛・追慕の情を著しく侵害した」と述べ、男に計330万円の賠償を命じた。一方、殺害行為については、民法上の「時効」が経過しているとして、賠償責任は認めなかった。

■「時効」という制度は、決して法の正義から導き出されたものではないそうです。限られた捜査体制と司法組織の機能を考えて、人生50年時代に便宜的に定められた制度です。100歳も珍しくない時代に、もしも20歳で殺人を犯して40歳まで逃げ延びれば、驚くべき無神経と自己主張の強ささえ持っていれば、後の40年間は通常の社会生活を送れるわけですなあ。殺人事件の遺族も同じ時間を共に過ごさねばなりません。


訴訟では、不法行為から20年がたつと賠償請求が出来なくなる「除斥期間」を適用するかどうか争点となった。遺族側は、「殺害と遺体の隠匿は一連の不法行為で、除斥期間の始まりは遺体発見時とすべきだ」と主張したが、判決は、「殺害と隠匿を一体的に評価することは困難で、殺人についての除斥期間の始まりは殺害行為の時点とせざるを得ない」と指摘した。
読売新聞 - 9月26日

■法務大臣も認めない死刑制度と言い、放置されたままの時効制度と言い、「少子高齢化」が急速に進んでいる時代なのですから、早急に改正する議論が盛り上がらねばなりませんでした。支持率アップに効果の無い地味な法律にはまったく興味を示さなかった異常な総理大臣が5年間も為政者となっていたばかりに、法の抑止力を高める諸制度の改革はまったくの手付かずのままにされましたなあ。凶悪犯が20年の時効で大手を振って歩いているのが、「美しい日本」なのかどうか、是非とも安倍新総理に聞いてみたいものです。

コロコロ安倍さん 其の六

2006-09-27 18:32:06 | 政治


安倍晋三首相は26日夜、首相官邸で就任後初の記者会見に臨み、財政再建の模範を示すため自らの給与の3割、閣僚の給与の1割をカットすることを明らかにした。また、07年度予算編成で新規国債発行額を06年度(約30兆円)以下に抑制する方針を公約した。首相は自ら「美しい国づくり内閣」と命名。教育再生を政権の最重要課題とし、臨時国会で教育基本法改正案を成立させ、首相直属の「教育再生会議」を設置して具体策を作る考えを示した。

■就任早々に「給料カット」だそうです。何だか倒産寸前の企業を立て直しに来たような話ですなあ。通常なら、無能で愚かな前任者が犯した失敗を糾弾して改善すべき点と長期と短期の「再建計画」を発表するのと同時に、経営陣の給与減らしを提案するもののようですが、「小泉政策の継承」を宣言しながら、給与のカットというのは実に変な話です。でも、安倍さんの頭の中ではぜんぜん変な話ではないのでしょうなあ。


また、「成長なくして財政再建なし」を強調。(1)人材育成(2)イノベーション(技術革新)(3)オープン(市場開放など)――をキーワードに挙げた。外交では中国、韓国との関係について「首脳同士が会って胸襟を開くことが大切だ。そのために努力していきたい。両国にも一歩前に出てほしい」と述べ、早期の首脳会談開催を呼びかけた。皇室典範の改正については「安定的な皇位継承は極めて重要な問題。慎重に議論を重ねていく必要がある」と慎重姿勢を示した。

■「茫洋(ぼうよう)」という表現がぴったりするような、小泉改革の表面的な焼き直しをツギハギしただけの作文のようにしか聞こえませんが、御本人は(1)を実現したら(3)は不可能なのだとは考えないのでしょうなあ。(1)から(3)までを強引に同時進行させたら、人材・技術・市場が一挙に地方から都市に更に集中して、日本は「美しく歪み」、随分とシュールな風景が現出しそうですなあ。地元の山口県には玄界灘を越えて韓国からの人材が集まり、韓国との貿易で豊かになるとでもお考えなのでしょうか?

■何だか、老人の手足と胴体を縫い合わせて小学生の脳を移植したちょっと滑稽なフランケンシュタイン内閣のように思えて来ますが、大丈夫でしょうか?姑小姑、口うるさい親戚に加えて近所の知り合いも混ざって、ぜんぜん話がまとまらない長屋の茶飲み話みたいな閣議が続きそうですなあ。本当に来年の夏まで持つのでしょうか?小泉さんの「充電」が終わったら「大御所」か何かになって、オペラ帰りに官邸に立ち寄るようになりはしませんかな?

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