旅限無(りょげむ)

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断末魔のドサクサに 其の壱

2010-08-30 16:45:33 | 政治
■参院選に落選したのに今も閣内に留まっている千葉法務大臣の強い意向で東京拘置所内の刑場内部がマスコミに初めて公開され、裁判員制度の施行で一般人が「死刑判決」の片棒を担がされる可能性が高まっているというので、死刑制度自体を考え直したら?という含みでマスコミ各社は公開された刑場に関して妙に大きく取り上げているようです。毎週のように世論調査を行っては飯のタネにしている大手マスコミなのに、8割以上の国民が死刑制度を必要だと判断している調査結果には不満を持っていて、今更のように愚かで無責任な?国民の啓蒙に取り組み始めているようにも見えます。

■居座り残留中の千葉大臣は有名な人権派弁護士だそうで、マスコミが作ってくれた波に乗って死刑制度に関する国民的な議論を起こし、あわよくば大臣個人の念願でもある死刑制度の廃止にまで持ち込みたいのかも知れませんが、駆け込みで死刑執行命令に署名する一方で処刑現場に立会い、民主党政権としては驚異的な早さで刑場公開を実現させられたのは、選挙が迫る気ぜわしい時に官僚群から熱心な「御説明」を受け続けた結果の取引だったとの噂も流れていますから、この方面でも現政権の言う政治主導は看板倒れになっていると推測されますなあ。

■不快な酷暑の中で政治記者が煽り立てて、更に不快指数を引き上げている民主党の代表選騒動には付き合い切れない馬鹿馬鹿しさと、気恥ずかしさを感じてますます暑苦しくなっている今日この頃でありますが、民主党の分裂騒ぎにまで至った原因は、千葉法相の留任も含めて参院選に大敗した後の総括や反省をせずに小沢一派を日干しにしたまま口を拭って知らん振りで、菅アルイミ首相が政権にしがみついたからでありましょう。

■落選したのに法相が交代しなかったのは、誰かさんたちが「法相よりも先に更迭すべき選挙惨敗の戦犯がいるだろう?!」と騒ぎ出すのは必定で、クラッシャー小沢が組み上げた万全の?選挙体制を素人同然のカネと人の配り方をしてめちゃくちゃにしてしまった枝野幹事長が最初に血祭りに上げられるのは火を見るよりも明らかで、もしもそれに応じたら最後、続いて任命権者の責任を問われて菅アルイミ首相代表と仙石官房長官が抱き合い心中みたいに簀巻きにされて官邸から放り出されるという「脱小沢」政権のドミノ倒しが起こる可能性が大きかったからだとも言われております。

■公開された刑場の映像を見ていると、不謹慎なこととは重々承知しながらも今回の民主党代表選で敗れた候補者の政治家としての末路と、時節柄なのでしょうが重なってしまうのでありました。もしかすると民主党を分裂させるような疑心暗鬼に陥って走り出したテレビに出ずっぱりの誰かさん達も、代表選に敗れたら政治的に処刑されてしまうと震え上がったのかも?国民にとっては随分と昔の話のように思える参院選の責任問題がずるずると尾を引いて、ほとんど子供の喧嘩レベルの泥仕合を公共の電波や新聞紙面に載せてしまう困った政治家には国益を論じる資格はないでしょうなあ。

■クラッシャー小沢立候補の一報が永田町を震撼させた日、その3時間後の午前11時には、首相官邸に14人の1年生衆院議員が馳せ参じたそうで、そこで菅アルイミ首相は「この代表選で、どういう日本をつくりたいのか、全国民の皆さんに訴えたい……」とか何とか熱く語ったとのことですが、先の参議院選挙で大いに「どういう日本をつくりたいか」を全国を飛び回って訴えて回った結果が大惨敗だったのではなかったのか?代表選の公示日を目前にしても、具体的な政策は何も語れず「どういう日本を……」などと空っぽの入れ物しか提示できないから空き缶内閣などと悪口を言われてしまうのでしょうなあ。


鳩山前首相は26日、訪問先のモスクワ市内で記者団に、持論とする友愛政治について、「菅首相の様々な施策の中に十分見えてきていない」と苦言を呈した。その上で、党代表選について、「正々堂々と戦われた後、ラグビーで言えばノーサイドが実現できるようにすれば日本の政治も渋滞を起こさない」と述べ、挙党態勢構築の必要性を強調した。
8月27日 読売新聞

■鳩山サセテイタダク前首相は、夢見がちの独りよがりの悪い癖がまったく治っていないようです。今の民主党内に「友愛政治」などを真面目に論じている人物を知りませんし、オカアチャン基金で面倒を見てもらっている小判鮫・腰巾着議員の中からも「挙党一致」は聞こえて来ても「友愛政治」の声はまったく聞こえませんぞ。鳩山サセテイタダク前首相が変な動きをしなければ、「ノーサイド」の落とし所もあったような気もしますが、党内のあちこちに燻る熾き火にガソリンを噴き付けて歩くような下手な「仲介」は止めた方がよいでしょうに……。

■総理辞任後には「政界引退」と言い、その舌の根も乾かぬうちに「支援者が頑張れと言ったから……」と前言をあっさり撤回し、参院選の惨敗後には逃げるように北京を訪問して無資格で「友愛外交」を振り回してみたりもしていましたが、あれも後々禍根となって日本の外交を歪めるのではないか?と心配しておりますが……。代表選が近づくと今度はロシアに出向き、遠いモスクワの地からまたまた無責任な放言をしてみせる。党内には誰も止める人がいないようですなあ。菅VS小沢の単純明快な食うか食われるかの権力闘争劇を、優柔不断で矛盾に満ちた無責任な「友愛」でどんどん対立のレベルを下げてしまう鳩山サセテイタダク前首相が、どうやら代表選挙の台風の目になってしまったような感じがしますなあ。何とも恐ろしいことであります。

鬼も笑わぬ3年後 其の弐

2010-08-23 16:28:24 | 政治
民主党代表選(9月1日告示、同14日投開票)を見据え、小沢一郎前幹事長を推す勢力が動きを活発化させたことを受け、菅直人首相再選を支持する勢力が反撃の狼煙を上げた。参院選大敗で“選挙恐怖症”になっている議員心理を逆手にとり、「首相が交代すれば衆院解散圧力が強まる」とアナウンスも忘れない。……前原氏が「これからも菅首相を支えていこう」と呼びかけると仙谷由人官房長官ら約40人が気勢を上げた。前原氏ら再選支持派は、「数の力」を見せつける小沢氏支持勢力への対抗手段も編み出した。

■前原大臣は「何度でも足を運ぶ」と約束した八ツ場ダムに行かずに、都内でこんな事をやっていても良いのか?と群馬県から怒りの声が聞こえそうですし、生気を失った菅アルイミ首相の裏で『お詫び文書』を書き上げてしまった仙石官房長官にしても、露骨に一蓮托生の延命工作をしているようにしか見えませんなあ。


「代表選で仮にまた代表が代わり、首相が代わるとなると個人的には総選挙が筋だと思っている。私は菅首相を支持したい」蓮舫行政刷新担当相は18日の野田佳彦財務相らのグループ研修会でこう力説した。ほかの再選支持派も「首相が代わったら総選挙だぞ」とささやき続ける。民主党は3年間で3人の首相を交代させた自民党を「信を問え」と攻め続けた。政権交代から1年で首相が3人目に代わる事態となれば、解散圧力には抗しきれないという理屈はそれなりの説得力がある。しかも民主党国会議員413人のうち衆院1回生は144人。選挙基盤が弱い彼らに「菅降ろし=総選挙」という図式を流布すれば、安易に小沢氏支持には動くまいと考えたのだ。

■かつて小泉プレスリー元首相が「自民党をぶっ壊す!」と叫んで旧田中派の残存勢力を壊滅させて見せたのを真似て、菅アルイミ首相も「民主党をぶっ壊す!」と宣言して解散・総選挙に打って出れば、見事に小沢チルドレンは小泉チルドレンと同様に次々に落選して壊滅し小沢一派の「数の力」は衰退するでありましょう。同時に衆議院でも過半数を大きく割り込んで、自動的に政界再編が始まるのでしょうが……。首相御本人も当選するかどうかは誰にも分かりませんでしょうなあ。

■すっかり貫禄をつけた蓮舫行政刷新担当相ですが、菅政権を支持する理由が首相が交代すると「10月からの事業仕分け第3弾」に支障が出るから、という背筋が寒くなるような後ろ向きのものであります。これでは首相の椅子に座るのは誰でもよいことになります。


……首相の女房役である仙谷氏は強気一辺倒だ。20日の記者会見では「現時点でも挙党態勢だ」と断じた。鳩山由紀夫前首相や小沢氏らの「挙党態勢」の求めをはねつけ、脱小沢路線を死守する腹づもりのようだ。岡田克也外相も20日、「起訴される可能性のある方が代表、首相になることに違和感を感じている」と述べ、小沢氏が出馬するならば、政治とカネ問題を再燃させることも辞さない構えを見せた。……
2010年8月20日 産経ニュース

■何度目かの代表選挙になりますが、民主党は親分を決める前に早く「党綱領」を決めなさいよ!という声があちこちから噴出しているようです。『週刊新潮』の連載で櫻井よしこさんが指摘していたのは数ヶ月も前のことでしたが、最近では各マスコミから同じ指摘が出て来ているようです。まあ「綱領」が無いからこそ、奇妙奇天烈な寄り合い所帯が生き延びているようなものでしょうから、これに手を着けた瞬間に火花が飛んで党内に充満していたガスに引火して大爆発か大火災が起こるのは必至とも言われているのですが……。

■こんな馬鹿馬鹿しい内輪揉めを続けながら、政局が漂流を続ければ、誰が代表になろうとも総花的な巨大な予算を組まざるを得なくなって、いよいよ日本の国債に赤信号が灯って円が暴落し始めるかも?それが最善の円高対策であろうはずはないのですが……。
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鬼も笑わぬ3年後 其の壱

2010-08-23 16:27:57 | 政治
■「来年の話をすれば鬼が笑う」という諺があります。真意や語源には諸説あるようですが、死期を含めて人の運命を握っている者として鬼が引き合いに出されているのは確からしい……。獲らぬ狸の皮算用を戒めている諺と考えておけば間違いがないでしょうが、何でも水に流してさっぱりしたいのが日本人だという説もあり、幕末に外来のコレラが大流行した時には時ならず七夕・お正月騒ぎが起こったという記録があるそうで、忘れたい嫌な年の事は大酒を飲んで「忘年会」で無かったことにするように、来年になればコレラが終息するだろうと考えた人達が、無理やり年越しを敢行した騒動だったとか……。

■このところ忘れたい嫌な年がずっと続いて「失われた10年」が何処まで先延ばしされて行くのやら……と就職難に苦しみ、長引く不況で店や工場を閉めて悔し涙を流す人が多い日本ですから、憂さ晴らしに「ええじゃないか」の御伊勢参りでも起きたら誰も止められないのではないか?と不気味な予感がしないでもない今の日本であります。そんな日本で来年どころか「3年後」を熱く語っている人がいるのだそうです。多分、正気だとは思うのですが……。


菅直人首相(民主党代表)は23日午前、衆院議員会館の自身の事務所で、党所属の衆参両院当選1回生議員18人と懇談会を開き、「日本は国政選挙が頻繁にあるが、3年間腰を据えて政権運営したい。安心してついてきてほしい」と9月の代表選での再選支持を訴えた。「3年間しっかりやって、3年後に衆参ダブル選挙をやればいい」とも述べた。代表選後の政権運営についても、「代表選がどういう形で終わるか分からないが、終われば鳩山由紀夫前首相、小沢一郎前幹事長を含め、これでいけるという態勢を作る」と語った。……

■自身の舌禍で参院選に敗れた菅アルイミ首相が、衆議院の任期いっぱいまで選挙をせずに総理大臣を務める所存だということでしょうなあ。選挙のためを思って身を引いたクラッシャー小沢に対して石を投げつけるように「しばらく静かにしていろ!」と見事な啖呵を切って見せた頃の勢いはすぐに無くなって、選挙に負けた直後は「謝りたいから会いたい!」と涙目で懇願していた菅アルイミ首相ですが、さすがに1年生議員を相手となれば事務所に呼びつけて好き勝手なことが言えるもののようです。しかし、脱「政治とカネ」の象徴として蹴り出した2人に詫びを入れて恥も外聞も無く挙党体制を作ろうとするのは、聊か虫が良過ぎるような気もしますなあ。

■前の首相は日替わり定食のように「前言撤回」を繰り返して自ら総理の座から転がり落ちましたが、現総理は「過去を無かったことにする」悪い癖があるようであります。


懇談会は党代表選に向け、大票田の新人たちを囲い込むのが狙い。25日までの3日間で計6回で衆参両院の計157人を招待、約100人の出席を見込んでいる。初回となる23日午前の集会には東日本の1回生議員18人が参加した。……参加者の1人が「政治主導で国民を引っ張る信念を持って行動してほしい」と要請。また「小沢さんには魅力がある。代表選で首相に投票するかどうかは分からない」と明言する議員に、ほかの参加者が「そうだ、そうだ」と同調する一幕もあったという。このほか、デフレ脱却や地方を重視した活性化対策などを要望する声もあった。
2010年8月23日 産経ニュース

■総理の威光と風圧で屈服させられると思ったら、すっかり足元を見られて逆に注文を付けられてしまった菅アルイミ首相の「安心してついて来い!」は植木等さんの「そのうち何とかなるだろう~♪」という歌詞みたいに響きますぞ。ネジレ国会を乗り切るためには複雑怪奇な部分連立の綱渡りを続けねばならないのに、鳩山・小沢の御意向も斟酌していたら、首相の存在意義など芥子粒みたいなものになりましょう。誰が見ての官僚主導に切り替えられた現政権の政治に、他党の公約やら党内各勢力の意見を盛り込んだら、見るも無残な矛盾だらけの政策が羅列されることになるでしょう。やっぱり官僚群の根回し仕事に頼らないと何も出来ないということになりそうですなあ。

■「3年後にダブル選挙」と言質を取られてしまった菅アルイミ首相は最後のカードを切ってしまったことになりそうです。代表選挙の公示日が迫っているので、ここが勝負所だ!とバルカン政治家の勘が働いたのかも知れませんが、「3年後」と言い切ってしまうと3年の間はずっと党内からの揺さぶりを受けながら野党との取引交渉を続けねばならなくなりましょう。ほんの2日前までは、明日にでも解散総選挙があるような噂を流して解散権という伝家の宝刀に手を掛けるふりをして代表選を乗り切ろうと誰かさん達は熱心に菅政権の続投を画策していたのに、親分が3年間は宝刀を抜かない!と1年生議員に約束してしまったら、子分たちは立ち往生してしまいますぞ。

菅首相の夏の思い出 其の弐

2010-08-23 14:58:07 | 政治
■世間では「一つの嘘をつき通すには百の嘘をつかねばなぬ」という諺がありますし、「天網恢恢疎にして漏らさず」とも申します。

菅直人首相が平成14年5月31日にラジオ日本の番組「ミッキー安川のずばり勝負」に出演した際、国歌斉唱時に起立しようとせず、君が代も歌わなかったという疑惑が話題となっている。……
「菅さんは立とうとしなかった。安川さんから『立つだけ立ちなよ』と促され、ようやく立った」
産経新聞の取材にこう証言したのは、現場を目撃した男性スタッフ(53)だ。男性は番組中、スタジオの首相らの様子を隣のミキサー室から窓越しに見ており、今でもはっきりと記憶している。番組では、11年の国旗国歌法成立をきっかけに、冒頭かゲスト登場時に歌手が歌う君が代のテープを流し、全員起立して斉唱する決まりになっていた。……

■予算委員会の場では「証拠を出せ!」と息巻いていた菅アルイミ首相にとっては「死人に口なし」の自信があったのかも知れませんが、ラジオの放送中にこれだけ目立つ行動を執っていれば記憶している目撃者が出て来るのも不思議ではありますまい。当時は本当に政権交代が起こって自分に総理大臣の椅子が回って来るとは思いもしなかったのでしょうなあ。万年野党の弱小政党で舌鋒鋭く与党自民党を責め苛(さいな)むパフォーマンスに徹していれば自分の議席は磐石だと思っていたのかも知れません。しかし、それこそ55年体制にどっぷり首まで浸かった馴れ合い体質そのものでありましょう。


……ラジオ日本には首相の出演当日の番組の音盤は残されておらず、安川氏も今年1月に死去したため、真偽確認は難しい。だが、平沢氏が入手した15年1月31日の番組録音テープによると、安川氏はゲストに次のように語っている。
「菅さんがこの番組に出たんです。さあ(君が代を)歌えよと言ったら、『えっ、なに、国歌を歌うの。おれ歌いたくねえんだよな』と言って…」このエピソードは、作家の佐藤優氏も安川氏から聞いたとして6月5日付の「SANKEI EXPRESS」コラムで紹介している。平沢氏は民主党議員からも「質問は図星だ」と耳打ちされたという。首相には、国旗国歌法案採決時に「天皇主権時代の国歌」として反対票を投じた過去もある。……
2010年8月22日 産経ニュース

■さてさて「天皇主権時代の国家」という懐かしいフレーズが「今ごろ」になって引っ張りだされると、こういう文言の総本家だった社民党が連立を離脱した後に小規模な空中分解を始めている時期でもありますから、あれこれと野党から「昔」を掘り返され、その掘り出したドロを党内の誰かさん達が喜んで拾って背中に投げつけて来そうであります。そしてドロが積もって外堀が埋められた時、菅アルイミ首相は何を仕出かすのか?ちょっと心配ではあります。
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菅首相の夏の思い出 其の壱

2010-08-23 14:57:11 | 政治
■8月末には沖縄の普天間基地移設問題を大きく前進させねばならないし、円高問題を筆頭に喫緊の政治課題が目白押し、猛暑に苛立ち不景気に国民が泣いているというのに、民主党政権は何をやっているのでしょうなあ?菅アルイミ首相は週明け早々に予定されていた日銀総裁との会談をしらっと延期したそうですから、円高問題よりも重大な仕事があるのでしょうが、それが一体、何なのか?夏休み返上であれこれの緊急課題に取り組む姿勢を見せるのかと思いきや、『週刊文春』最新号の記事によりますと、軽井沢の高級ホテルに籠もって「読書三昧」などというのは真っ赤な嘘で、立ち上がれ日本の与謝野さんに囲碁で負けたことを根に持ってホテルではネット囲碁でリベンチに備えて腕を磨いていたとの話が漏れて来ておりますぞ。
 
■まあ、変な読書をして付け焼刃の知識を仕入れて「学べば学ぶほど」などと自分の無知を曝け出すような無様な首相になるよりは、毒にも薬にもならない囲碁三昧で暇つぶしをしていてくれた方がよい、などという投げ遣りな声も聞こえて来そうでありますが……。都内を離れて軽井沢に行ったのは、鳩山サセテイタダク前首相の別荘で開かれる怪しげな集会を牽制するための虚仮脅しだったのかも知れませんが、しっかり160人もの有象無象が集まって静かな高原の森に「小沢一郎、鳩山由紀夫(なんか)嫌いだ!嫌いだ!嫌いだ!」の雄叫びが木霊していたとかいないとか……。

■何も実績を上げられず選挙が怖くて代表・総理の首を挿げ替えて、有権者の目を誤魔化そうとして失敗したのですから、一丁前に「菅下ろし」などと権力闘争の真似事などしている場合ではないはずなのですが、これまでは陰口だった「寄り合い所帯」という蔑称を、皆で足並み揃えて実証して見せている民主党の議員たちであります。なりふり構わず1年生議員に縋りつき、前の総理大臣とは違うんだぞ!と意気込んで防衛省の制服組を呼んでお勉強会を開いたり、菅アルイミ首相という人は総理大臣になることだけが目的で政治家をやっていたのだなあ、と呆れてしまう暑い暑い夏であります。それにしても消費税引き上げを前提とする「強い経済・強い財政・強い社会保障」の話は何処に仕舞いこんでしまったのでしょうなあ?

■国民不在の不毛な権力闘争に夢中になっている政権政党の支持率は下がるのは当然でしょうが、どうも菅アルイミ首相に関する話題のレベルが低過ぎるのが気になります。「立った、立たなかった」「歌った、歌わなかった」の子供の喧嘩みたいな話が、一国の総理大臣の資質を問う話になってしまうというのは、国家としては甚だ残念なことであります。


菅直人首相は(6月)14日、衆院本会議の代表質問で、平成11年成立の国旗国歌法に反対した当時から方針転換した“心境”を語った。首相は「もっと元気のいい国歌でもいいかなという意見があった」と、同法の採決で対応が割れた民主党内の情勢を説明したが、自身が反対した理由は触れずじまい。その上で「今は常に国旗があるところではきちんと敬意を表し、国歌斉唱もしている」との弁明も忘れなかった。
2010年6月14日 産経ニュース

■菅アルイミ首相にとって「今は」が最も重要で、昔、拉致犯罪の中心的人物だった北朝鮮工作員のシンガンスを釈放するように嘆願書に署名したことも「今は」反省しているから問題は無いと言い張る姿に政治家としての定見や矜持はまったく感じられず、同志だった変な法務大臣が参議院選挙で落選しても留任させてしまう無神経さに、国民は呆れ返っていることでしょう。その大臣が任期切れ直前に突如として死刑執行の署名をしたばかりか、処刑の現場に「見学」に行くという異例で異様な行動を執っても任命権者として何も感じていない御様子が不気味です。参院選での惨敗以降、クラッシャー小沢に「菅はすでに死んでいる」と言われたそうですが、実際に目が落ち窪んで生気が失せて、にやにや顔にも死相が浮かんでいるような気がしますなあ。

■野党側としては「今は」の穴に逃げ込む首相は絶好の獲物らしく、やっと野党らしさが身に着いた?自民党から小さいながらも鋭い矢が放たれまして、菅アルイミ首相は国会という場を弁える余裕も無く鬼の形相で怒り狂ってしまったのでした。


菅直人首相は(8月)3日の衆院予算委員会で、首相が平成14年に出演したラジオ日本の番組内で「私は君が代を歌いたくない」と国歌斉唱を拒否したと自民党の平沢勝栄氏から指摘され、色をなして反論した。……首相は自席から険しい表情で「違う、違う」と、首相としては異例のやじ。答弁では「小中学校の時代から、国歌を斉唱しなかったとかそういう態度をとったことはない。(ラジオで)そんな行動を取るはずがない」と、“事実無根”を強調した。しかし平沢氏は「当時そばにいたみんなから聞いた」と述べて納得せず、平行線をたどった。
2010年8月3日 産経ニュース

■偶々、この瑣末な議論をラジオで聴いておりまして、議員席からの怒号に負けない首相の大きな怒声がしっかりマイクに拾われており、よほど勘に障ったのであろうことは分かりましたが、同時に6月14日の「今は常に国旗があるところではきちんと敬意を表し、国歌斉唱もしている」という「今は」答弁を思い出したものであります。日本の国家について、巧みに他人の意見として他国のようにもっと勇壮で猛々しい元気の出る歌の方がよいかも?などと聞かれてもいない話を唐突に挟んで、真の反対理由を隠してしまった菅アルイミ首相の答弁に胡散臭さも感じたものでした。

懐かしい?ミグが墜落 

2010-08-19 16:22:09 | 歴史
■昔から「航空機事故は連続する」と言われているように、日本国内で最上級の技術を持っているパイロットが操縦するヘリコプターが埼玉の山奥と瀬戸内の海に立て続けに墜落する事故が発生したそうです。人命救助や各種調査のために日夜空を飛んでいるプロが殉職するのは実に残念なことであります。ご遺族や関係者のご心痛は想像に余りあるものがりますが、犠牲者のご冥福を祈りたいと思います。
 
■そんな折も折、朝鮮半島では世にも奇妙な墜落事故が発生とのことであります。
 


17日午後に中国遼寧省撫順県で墜落した北朝鮮の軍用機は旧ソ連が開発した「MiG-21」で、燃料切れが墜落の原因だったとみられている。軍消息筋は18日、「中国で墜落した軍用機をとらえたレーダー画面から、MiG-21と識別されたものと承知している」と伝えた。同機が離陸した北朝鮮・新義州の空軍基地には、MiG-21とMiG-19、MiG-23が展開されている。

■日本では終戦記念日、韓国では光復節の各種イベントが終わったばかりで自分の「影響力」を心配する日本の前首相が北京を訪問している時期に、領空侵犯事件が起こったというわけですが、この前首相は自分の浅はかな外交政策が日米間の大きな溝を掘ったことに凝りもせず、何でも「次は北方領土問題を解決する」とか何とか放言しているとか……。日本ではすっかり忘れ去られている「友愛の海」発言を言質として北京政府は変な要求や提案をしている節があり、日本ではアホウ扱いされていることを逆手に取られて、「前首相!前首相!」と煽てられて有頂天になるのが心配でありますなあ。

■このMiG-21はロシア亡命を試みたのではないか?との説も出ているそうですが、領空侵犯しながら撃墜されなかったのはチャイナと北朝鮮との間で素早い情報交換があったからなのか?それとも最初から骨董品同然の機種だと承知の上で迎撃の手間とコストを節約して傍観していたのものなのか?謎は多く残っていますぞ。


別の消息筋は、北朝鮮戦闘機は近ごろ短距離訓練を中心に行っており、燃料も満タンにしないで飛行させていると伝えた。新義州から墜落地点まで距離があり、墜落時に機体が炎上していないことから、燃料が切れて墜落したとの見方を示している。元北朝鮮空軍部隊幹部だった北朝鮮脱出住民(脱北者)も、戦闘機訓練は燃料不足のため、燃料を3分の2ほど入れ、約30分飛べる状態で行うのが慣例だと話している。
8月18日 聯合ニュース

■「亡命」「ミグ」と聞きますと、1976年9月6日の午後に発生したベレンコ中尉の亡命事件を思い出す方も多いのではないでしょうか?34年も前の話ではありますが、時は冷戦時代で仮想敵国のソ連から当時の最新鋭機MiG-25が飛来したのですから大騒ぎでした。極東のウラジオストク近くの空軍基地から千歳空港を目指してヴィクトル・ベレンコという空軍中尉が飛んで来て、千歳上空は雲が多くて着陸を断念し、民間の函館空港に強行着陸したのでした。日本側でも午後1時10分頃にはレーダーで機影を捉えて航空自衛隊千歳基地のF-4EJがスクランブル発進したものの、超低空飛行に移った後は見失い自衛隊は大いに緊張したのでした。

■MiG-25は自衛隊に発見されずに北海道の函館空港に接近し、市街上空を3度旋回したあと午後1時50分頃に滑走路に強行着陸したのですが、当時の住民から上空に舞う「巨大な黒い影」の不気味さを聞いたことがありますが、北の空を守る自衛隊は緊張の極に達していたのでした。午後2時10分頃には警察が空港周辺を完全封鎖し、変な法律で駆けつけた陸上自衛隊員は管轄権を盾に締め出された事実があります。亡命ではなくて「本物」だったらどうするつもりだったのでしょうなあ?

■ソ連の特殊部隊が機体を奪還しに来る?!虎の子の最新鋭機の機密保全のために破壊しに来る!?とも考えられ、函館駐屯の北部方面隊第11師団隷下の第28普通科連隊は作戦準備。61式戦車だの35mm2連装高射機関砲 L-90だのが基地内に搬入されて、ソ連軍来襲時には戦車を先頭に完全武装の自衛隊員200人が函館空港に突入する決意だったそうですが、海上自衛隊も日本海側に3隻、太平洋側に2隻を展開し、函館基地隊の掃海艇は函館港一帯を警戒、余市防備隊の魚雷艇も警備に当たり、大湊航空隊のヘリコプターは津軽海峡上空で警戒飛行してF-4EJも24時間哨戒飛行を実施。海自の竜飛警備所内には陸自東北方面隊の対戦車隊が集結して、64式対戦車誘導弾と106ミリ対戦車無反動砲が水際迎撃作戦の準備をしていたというのですから、現場では戦争を覚悟したのでありましょうなあ。

■ソ連側から「機体の即時返還」の要求があって、親ソ連だった当時の日本社会党は同調して騒いだものの、日本と米国は9月24日に共同で機体検査のためにMiG-25を分解して、米空軍のC-5Aギャラクシー大型輸送機に搭載して百里基地(茨城県)に移送した後、11月15日にやっと機体はソ連に返還され乗って来たベレンコ中尉は希望通り米国に亡命したのでした。

■今回の北朝鮮機はMiG-21の練習機だと言われているので、単なる空から落ちて来た迷惑な粗大ゴミでしかないので、チャイナ側は「ゴミ処理費用」でも要求するのかも知れませんが、3代目襲名が近いと言われている北朝鮮としては、何とも恥ずかしい事件が起きてしまって頭を抱えているのでしょうなあ。それにしても、30分しか飛べない燃料で、一体、どんな練習をしているのでしょう?まさか、大日本帝国末期みたいに離陸と肉弾特攻の訓練だけを繰り返しているのではありますまいな?!

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猛暑の中の冷血 其の壱

2010-08-04 16:15:33 | 社会問題・事件
■天地は猛暑で熱中症の犠牲者が出ていると、連日の報道が続いておりまして、冷房嫌いなどと言ってはいられない凄まじく暑い日々の中、幼い命が密閉された暗くて臭いワンルーム・マンションの一室で失われたという事件が大阪で発生しました。意地を張っても網戸からの風と団扇では凌ぎ切れない異常な猛暑で、不景気なのにエアコンの売り上げは驚異的な伸びを見せているそうですし、麻生元総理も好物だと言った大衆的な氷菓子が品切れになっているとも聞きました。そんな暑さの中で、何とも言いようもない残酷な子殺し事件が起きてしまいました。嗚呼!

……近隣住民から虐待を疑う通報を3回も受けながら事件を防ぐことができなかった大阪市こども相談センター(児童相談所)に、全国から数百件の抗議が殺到していることが2日、分かった。……2日までに電話だけで100件以上の抗議が寄せられ、「日中は電話が鳴りっぱなし」(担当者)の状態。ファクスやメールなどもあり、「対応が手ぬるい」など厳しい意見が大半だ。

■余りに衝撃的で救いのない第一報を耳にした時には、28度設定の室内冷房の慎ましい冷気さえも要らないほどの寒気を感じたものでした。しかし、後に続いている続報・詳報が伝えてくれる事件の内容と背景を知るほどに、やり場の無い怒りが空しく湧き上がります。2人の幼子が短い生涯で出会った大人たち、なかんずく両親と祖父母の存在は、まだまだ不明なことが多いとはいえ、我が子・我が孫に対する奇妙な冷めた無関心が根付いているような印象を受けます。親子関係は無償の愛情で結び付いているはずで、それが人間社会の基盤とされていて、先輩には「親ばか」と笑われ、育児の専門家からは「過保護」を注意されても子が可愛くて仕方がないのが親というのもので、仏教用語を転用して「子煩悩」と言われて久しいのが親子関係だったのに……。

■既に逮捕拘束されている若いバカ母に向けるべき怒りが所管の行政機関に向かうのは仕方がないのでしょうが、この種の事件は怒りよりも悲しみが先行しますなあ。それにしましても、他人の子であろうと異様な泣き声を夜となく昼となく聞きながら暮らしていた現場周辺の住民、そして、都市の無関心を越えて通報した人の心に対応できなかった関係機関の担当者たち、幼い命の周りには何かが出来たはずの多くの人々が存在し、働いてもいたのに死んでしまった2人の幼子は、建前上は法的にも慣習上も何重にも守られていることになっていた事さえも知らなかったのでしょう。


児童虐待防止法の改正で平成20年4月から、虐待の恐れのある家庭への強制的な臨検・捜索が可能になったが、21年度までの2年間に実施されたのは全国でわずか3件。今回のように保護者や被害児童を特定できなければ、前段階の任意の立ち入り調査すらできないなど、多くの壁が立ちはだかるためだ。センターの担当者は「抗議を真摯に受け止めなければ」としながらも、「保護者や児童の特定ができず、緊急性の高さを認識できなかった。どうすればいいか答えが見つからない…」と無力感を漂わせる。……

■「無力感」に浸っているよりも辞職・転職をお考えになった方がよいかも知れません。職能と感性に欠けるところがあれば適性が無いと誰かが判断しなければなりますまい。失業率が高止まりしている不景気が続いているとはいえ、充実した年金や手厚い福利厚生が魅力の地方公務員の身分にしがみ付く情熱の万分の一でも、幼い命を守る使命感に向いていたら、もう少し何とかなったのではないか?と「お役所仕事」とは分かっていても、考えてしまいますなあ。


……立命館大学の野田正人教授(司法福祉論)は「本気でやれば近隣への聞き込みで居住者を特定できたはず。まず子供の安全を第一に考えるべきだった」と話している。……厚生労働省は2日、児童相談所が虐待の疑いがあると通告を受けたうち、子供の安全が確認できていない事例がないか、全国の自治体に把握するよう要請した。長妻昭厚労相は2日に開いた緊急会議で、事件について「もう少しやりようがあったのではないかと強く感じる」と述べ、強制立ち入りも念頭に対応を強化するよう求めた。
2010年8月3日 産経ニュース

■「即身成仏」や行方不明の高齢者に年金やら長寿の祝いを機械的に送付し続けていた部署を所管している厚労省ですから、危険な状態に置かれている幼い子供達を守るために「やりよう」は無いかも知れません。法律や制度を変えても、現場に人材と精神が不足していれば同じような事件はこれからも起こってしまう可能性が高そうです。ほんの少しでしたが、政権交代が起こった時、前首相が「友愛」精神で「命を守りたい!」と演説した時、何かが変わるかも?と思ったのは大間違いだったようですなあ。