旅限無(りょげむ)

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冗談も過ぎるとホラーになる 其の壱拾

2012-03-29 16:05:47 | 外交・情勢(アジア)
■台湾からの義援金が昨年5月27日の時点で約55億5千万台湾元(約157億円)に達していたと「其の九」で指摘しました。お話はその続きでございます。

訪米中の楊永明・台湾行政院新聞局長(46)=閣僚=は(7月)11日、ニューヨーク市内で共同通信と会見し、東日本大震災の被災者に対する台湾の義援金が約200億円に達したことを明らかにするとともに、馬英九政権(国民党)が「対日特別パートナーシップ」路線を重視していると述べた。……支援額は「世界一」で、1999年の台湾中部大地震で日本がいち早く支援をしたことに対する「お返し」の意味もあるという。
局長はまた、原発廃止が台湾の目標であるとしながらも、電力の約20%を供給している3カ所の原発が2025年までに稼働を中止するため、建設中の第4原発を稼働させて補うことが必要との考えを示し、安全性の確保を強調した。
2011年7月12日 産経ニュース 

■地震に加えて原発問題でも日本と台湾は共同して研究すべき課題があり、助け合いも続けて行かねばならないということであります。行け行けドンドンで強引に100基もの原発を並べるぞ!と意気込んでいる北京政府は有力な商売相手なのでしょうが、原発政策の曲がり角に来ている台湾とは冷静で深い話し合いが出来そうな気がします。北京の国際空港を新築する費用を日本政府に出して貰ったことを頬被りしている北京政府とは対照的に1999年の大地震に際して支援して貰ったことの「恩返し」だと国を挙げて世界一の義援金を送ってくれる国との関係を大事にしなければなりますまい。

■金額では400億円相当の原油500万バレルを贈ってくれたクウェートの支援も忘れてはなりますまい。3月21日の午前、皇居で両胸の胸水を抜く治療をお受けになったばかりの天皇陛下が直々に皇后さまとご一緒に来日したサバーハ首長をお出迎えになり、30分間の会見の後、お見送りまでしたのでした。バイパス手術のことを知っている首長は大変に感動した由。更に両陛下は23日の午前にも、サバーハ首長が宿泊していた東京・元赤坂の迎賓館を御訪問になってお別れのご挨拶をなさったとのこと。国民を代表して恩を忘れない姿勢がしっかりと相手に伝わったものと推察いたします。ついでながら?野田ドジョウ首相も22日に首相官邸で首長と会談しておりまして、クウェートから日本への原油の安定供給などを盛り込んだ共同声明を発表した折、原油の無償提供に謝意を表したとのことです。こちらの方はどの程度相手に伝ったかどうか怪しいものでありますが……。

■ここからまた台湾の話に戻ります。


政府は23日、東日本大震災追悼式典に台湾代表として出席した台北駐日経済文化代表処の羅坤燦副代表を指名献花から外したことについて「配慮が足りなかった」とする答弁書を閣議決定した。答弁書は「台湾の人々の気持ちを傷付けるようなことがあったとすれば政府の本意ではない。大震災に際しての多大な支援に深く心から感謝している」としている。大江康弘参院議員(無所属)の質問主意書に答えた。
2012年3月23日 産経ニュース 

■本当に「配慮が足りなかった」のかどうかは真偽不明でありますが、野田ドジョウ内閣は取り敢えずは追悼式典での非礼を謝ったのでした。最初から常識的に事を運んでいれば「相手の気持を傷付けるような」心配はしなくても済んだのであります。これから振り返る追悼式典後の支離滅裂な民主党政権の答弁と態度を思い出せば、こんな役人作文を棒読みしたくらいで式典での大失敗を帳消しになど出来ないのは明らかでありましょうなあ。


政府が11日に主催した東日本大震災の一周年追悼式典で、台湾代表として出席した台北駐日経済文化代表処の羅坤燦副代表が指名献花から外されるなど冷遇されたことが分かった。12日の参院予算委員会で世耕弘成氏(自民)が明らかにした。
野田佳彦首相は「台湾の皆さまに温かい支援をいただいた。その気持ちを傷つけるようなことがあったら本当に申し訳ない。深く反省したい」と陳謝した。藤村修官房長官は「十分にマネジメントできていなかったことについてはおわびしたい」と述べた。…… 

■3月23日に閣議決定した「答弁書」と寸分違わぬ文言で野田ドジョウ首相は国会で陳謝していたのであります。10日間も正式な謝罪が遅れたのは何故だったのか?どうせ謝るのなら早いことに越したことはないのに……。党内の陰湿な権力闘争と消費税引き上げで忙しかったのでしょうなあ。


世耕氏によると、政府は約160の国と国際機関の代表に会場1階に来賓席を用意したが、羅氏は「民間機関代表」と位置付け、2階の企業関係者などの一般席に案内。指名献花からも外し、羅氏は一般参加者と献花したという。……台湾は、大震災の際、世界最大規模の約200億円の義援金を寄せた。政府は昭和47年の日中国交正常化後、台湾を国として承認していないが、代表処は事実上の大使館にあたる。
2012年3月12日 産経ニュース 

■「政治主導」が奇しくも東日本大震災と原発事故で看板倒れに終わってしまい、その後は官僚主導へと大きく振り子が戻っていることもあり、杓子常時に時代遅れの手続きを踏襲して北京政府のご機嫌を取ろうとでもしたのでしょうが、危機管理能力が無い政権ならではの恥ずかしい失敗でありました。その責任は何処にあるのか?首相が国会で陳謝した翌日に明らかになりました。


……藤村修官房長官は13日午前の記者会見で「外交団という仕切りの中で整理され、外務省と内閣府で調整済みだったと後から聞いた」と述べ、対応に問題はなかったとの認識を示した。また12日に開かれた玄葉光一郎外相主催の各国高官のレセプション(歓迎会)には、台湾代表を招待したことを明らかにした。……この件について野田佳彦首相は12日の参院予算委員会で「本当に申し訳ない。深く反省したい」と陳謝しており、一夜にして謝罪を覆した形だ。
2012年3月13日 産経ニュース 

■「其の九」で引用した3月27日の参院政府開発援助(ODA)特別委員会で玄葉光一郎外相が明かした台湾からの出席者に「直接陳謝」したのがこのレセプションの場だったわけであります。しかし、藤村官房長官は「陳謝」の件には一切触れず、追悼式での献花では民間扱いしておいて歓迎レセプションでは各国高官と同等の扱いで「招待」したのだから問題は無い!と言い張ったのであります。こんな無茶な答弁をさせていたのは外務省だったことが翌日に判明しました。


……「外交団という仕切りの中で整理された。外務省と内閣府で式典のやり方を十分に調整された」、「外交団の仕分け(基準)は外務省にきちんとしたものが伝統的にある」
藤村氏は13日の会見で、追悼式典の準備に当たった外務省と内閣府が事務レベルで台湾をリストから外したこと自体には問題はないとの認識を強調した。自らの対応については「配慮が足りなかったかどうかを反省材料にする」と述べた。…… 

■注目すべきは基準が「外務省の伝統」に従って定められているという点です。元々、党としての綱領を持たない民主党には外交・安全保障(税制も)に関する統一見解も政策もありません。それ故に初代総理となった鳩山サセテイタダク元首相は「東アジア共同体」やら「沖縄の米海兵隊を国外へ」やら、夢見がちな独裁者のように後先を考えずに放言を繰り返して自滅したのでありました。菅アルイミ前首相は最初から外交政策など持ち合わせておらず、国際会議に行けば遠足に行った幼稚園児みたいにはしゃぎ、チャイナの胡錦濤国家主席を迎えれば悪さをして先生に叱られている中学生みたいに俯いてメモをぼそぼそと読んで見せたりしたものでした。さて、野田ドジョウ首相が国会で陳謝した翌日、藤村官房長官が前言を撤回したも同然の開き直りに出たのは、外務省からの圧力や指示があったからだと誰にでも分かります。


外務省は日本に公館を置いている150カ国、中国などにある公館で日本を担当している18カ国、経済協力開発機構(OECD)など35の国際機関に追悼式典への案内状を出し、約160人の外交団が式典に参加。日本が国家承認していないパレスチナの代表も例外的に外交団として扱われた。だが、外務省は台湾の駐日大使館に相当する台北駐日経済文化代表処を「民間団体のステータスで呼んだ」(同省儀典官室)と説明している。そのため、羅副代表は外交団がいた会場1階の来賓席ではなく2階の企業関係者などの一般席に案内され、国名が読み上げられる「指名献花」の対象にもならず、一般参加者と一緒に献花したという。…… 

■「前例」と「文書」で武装して「御説明」攻撃を得意技にする官僚に対して民主党は「政治主導」の看板を掲げていたのですが、こうも簡単に臆面もなく「外務省の伝統」を振り回されたら二の句が継げませんなあ。台湾から贈られた莫大な義援金を「民間団体からの寄付」として民主党政権は受け取っていたから、追悼式でも同等の扱いをしたんだ!という恩も情も無い官僚主導のセレモニーだったと分かれば、野田ドジョウ首相が読み上げた作文の味気なさも納得出来ますが、何とも割り切れないものが残ります。


藤村氏は12日の参院予算委員会で「事務方ですべておぜん立てした。台湾に関するわが国の基本的立場は1972年の日中共同声明の通りだ」と語り、台湾が中国の領土の不可分の一部との中国政府の立場を「理解し尊重する」としている日中共同声明をもとに機械的にリストを作成したことを認めた。参院予算委でこの問題を追及した自民党の世耕弘成参院国対委員長代理は13日、「事務方で調整していようといまいと、台湾を各国代表の枠の中で扱わなかったのは問題だ」と非難した。
野田佳彦首相は12日の参院予算委で、世耕氏の指摘を受けて陳謝し、「行き届いていなかったことを深く反省したい」と述べた。外務省によると、この発言に対し、13日時点で中国政府からの反応はないという。もっとも、輿石東幹事長を団長とする訪中団の派遣を23~25日に控える民主党政権が、台湾への配慮を示せたかどうかは疑問だ。……
2012年3月14日  産経ニュース 

■こんなところにも輿石訪中団の影が射していたのかと唖然としてしまいます。追悼式を開催する意味を野田ドジョウ首相自身が理解しておらず、事務方に丸投げして官僚の「伝統」に引きずり回されていたとしたら実に情けない話であります。まあ、こんな事務方の言い分を鸚鵡(おうむ)か九官鳥の如く会見の場で平然と披瀝すれば野党が勇んで攻撃するのは当然のことでありました。


……藤村修官房長官は14日の参院予算委員会で「配慮が足りなかった点についてはおわびしたい」と陳謝、13日の「事務レベルの仕切りに問題があったとは思わない」との発言を撤回した。
12日の参院予算委で問題を取り上げた世耕弘成氏(自民)が再び追及した。藤村氏は、指名献花での対応を「事務的に問題はなかったが、もう少し配慮があってしかるべきだった。新聞報道は発言の一部で私の言ったこととちょっと違う」と強弁。羅氏を1階の来賓席ではなく2階の一般席に案内したことも「何か問題があったということではない」と開き直った。
ところが、世耕氏が「記者会見で明言したではないか」と迫ると、藤村氏は「式典の運びに配慮が足りなかったことは問題で反省材料としたい。事務的にも問題があったことをきちんと認め、おわびしたい」と渋々発言を撤回した。
一方、野田佳彦首相は「私はやはり失礼があったと思う。きちんとご案内しなかったことも含めて心からおわびしたい」と陳謝。藤村氏の13日の発言についても「誤解を招いたならば申し訳ない」と述べた。
2012年3月15日 産経ニュース 

■自分の非を認めずに「誤解」を便利に使うのは実に卑怯な態度で見苦しい限りであります。同様に「説明が足りなかった」というフザケタ言い方もありまして、東京電力が一方的に電気料金の値上げを通告しておいて、契約期間は値上げを拒否できる規定を隠していたのがバレた時も社長は平然と「ご説明が足りない点がありました」などと言っておりましたなあ。バカな客は大人しく値上げ分を支払うだろうと信じ込んでいる底意地の悪さが滲み出した言い訳でしたが、電力会社も内閣も言葉が信頼されなくなったらお仕舞いです。


超党派の日華議員懇談会の平沼赳夫会長(たちあがれ日本代表)は17日夜、台北市内で台湾の王金平立法院長と会談し、東日本大震災1周年追悼式典で台湾の代表が指名献花から外された問題について、「台湾から義援金を200億円もいただいたのに大変無礼なことをした」などと述べ、謝罪した。王氏は理解を示した。会談には日華懇副会長の中井洽元拉致問題担当相(民主党)も同席した。
2012年3月18日 産経ニュース 

■野田ドジョウ内閣が正式に台湾側に陳謝の意を伝えていたのか否か、この平沼さんの会見の場で中井元拉致問題担当相が総理の使者として何らかの仕事をしたのかどうかも分かりません。しかし、1週間近くも経って野党議員に謝ってもらっているようでは野田ドジョウ首相の指導力も大したことはないようです。こうしたドタバタ劇の後、3月23日の閣議でやっと正式に「御免なさい」の答弁書を決定したというお粗末な話でありました。嗚呼、今の日本を動かしているのは、一体、誰なのだろう?と考えますと本当にぞっとしますなあ。

冗談も過ぎるとホラーになる 其の九

2012-03-28 16:10:14 | 外交・情勢(アジア)
■「選挙は嫌だ!」の一点だけで繋がっている運命共同体の民主党が8日間に亘る合計40時間もの茶番劇がやっと終演したのだそうです。肌寒さが残る東京で国会が閉会した後、夜を徹しての長丁場、本来なら地元に帰って万が一の解散総選挙に備えてせっせと人気取りの売名行為に励まねばならない週末も党本部の地下室に籠って空疎な口喧嘩が続いていたそうです。さぞや光熱費が嵩(かさ)んだことでありましょうなあ。税金の無駄遣いは止めよう!という声はまったく出なかったようですし、震災復興や福島原発の後始末を優先させるべきではないか?!という声も出ず、この際だから党として安全保障政策を練り上げておくべきだ!という話にもならず、消費税をすぐ上げる、数年後にはまた上げる!という野田ドジョウ首相の私家版マニフェストに対して、反対派は具体的な対案も出さずに「今は上げるな!」のバカの一つ覚えを連呼していた由。そんな下らない集まりなら電気不要の真昼間に近所の公園でも借りて花見気分でわいわい勝手にやれば宜しい!

■次の選挙が怖くて夜も眠れないぽっと出の議員がイッパシの政治家を気取って田舎芝居を演じている間に、東京電力は傍若無人な電気料金の値上げを一方的に通告するわ、隣の韓国では北朝鮮の若い大将が大喜びするような腑抜けた外交祭りが終わって、いよいよ極東アジアの緊張度はドジョウならぬウナギ昇り状態であります。野田ドジョウ首相はトンボ返りの非礼を顧みず、「皆さんがダメだと言っている事を北朝鮮がしようとするのは悪いことだと思います」という小学生でも言える程度の短いスピーチをして戻って来た野田ドジョウ首相の影は限りなく薄かったので、会議が終わった後で「日本は参加したのか?」と海外メディアに言われてしまいそうです。日本の国民の多くも野田ドジョウ首相が「外遊」に出たことを知らないかも?

■「核サミット」のテーマに合わせて世界中が心配している福島原発の事故に関しても、駅前演説で鍛えた野田ドジョウ首相自慢の訳の分からないスピーチがあったそうです。原発事故を防ぐ方法は「想定外を想定すること」なのだとか……。何だか「右足が沈む前に左足を出し、左足が沈む前に右足を……」というインチキ水上歩行法を思い出すような人を馬鹿にした不誠実な発言をしてしまったとは思っていないのでしょうなあ。親分が「北朝鮮のミサイルより、原発事故より消費税の引き上げが心配だあ」という不埒な本音を隠そうともせずに下手くそな外交をしているから、手下共もそれに倣って恥の上塗りを続けておりますぞ。


24日付の中国共産党機関紙・人民日報(海外版)は、民主党代表団を率いて北京を訪れている輿石東幹事長の「日中間の誤解と困難は解決できる」と題する寄稿を1面に掲載した。
輿石氏はこの中で「日中間には政治の面で幾つかの誤解や困難がある」と指摘。「双方が両国間の相互依存関係を構築することを考え、中国と日本、アジアと世界のあすを考える」ことで解決できると強調した。 
2012年3月24日(土)17時14分 時事通信 

■輿石幹事長の頭の中には「憲法9条があれば世界は平和だ」と同様の逆立ちした論理回路が組み込まれているようです。どうして「明日を考える」と誤解と困難が解決できるのでしょう?そんなに簡単な話なら民主党の「明日」を考えてみたら如何でしょう?自分が閣僚に押し込んでしまった田中防衛大臣の「明日」の方を先に考えて上げないと自民党と公明党が問責決議を突きつけて来ますぞ!そしてチャイナは着々とガス田を占有して東シナ海を完全に支配下に置いて太平洋に出て来るでしょうし、南シナ海からインド洋へと支配地域をどんどん広げて行きましょうなあ。それもこれも北京政府が「明日を考える」からこそ強引に推し進めていることなのであります。

■民主党政権には震災からの復興という大事業は荷が勝ち過ぎていることは既に衆知の事実ではありますが、大震災と原発事故は世界中の人々が心配して同情して下さった大きな出来事でしたから、この災厄は日本一国だけの問題ではなく立派な外交テーマに格上げされていなければなりません。小さな記事でしたが民主党政権の外交能力が欠落していることを改めて証明する事実が明らかになりました。情けないことではありますが、これが今の日本の外交なのでありましょうなあ。


玄葉光一郎外相は27日の参院政府開発援助(ODA)特別委員会で、政府主催による11日の東日本大震災追悼式で台湾の代表者を冷遇したとの批判を受け、震災関連の追悼レセプションで台湾側出席者と会い、直接陳謝したと明らかにした。
追悼式後の12日に玄葉氏は各国からの支援に感謝を表明するレセプションを主催。台湾の駐日代表部に相当する台北駐日経済文化代表処の羅坤燦副代表と会い、「申し訳なかった」と陳謝した。追悼式に参列した各国代表者は指名により献花したが、羅氏は指名から外された。
2012年3月27日 産経ニュース 

■輿石・仙谷コンビが北京で熱烈歓迎されて有頂天になっている裏側には、外務大臣が台湾代表に平謝りしなければならなくなるような古臭いイデオロギーの偏向が存在しているのでしょう。何とも恐ろしい集団に政権を預けてしまったものであります。この実に恥ずかしい外交の失敗を遡って検証しておきましょう。話は大震災から10日余り後から始まります。


超党派の議員連盟「日華議員懇談会」(会長・平沼赳夫たちあがれ日本代表)は(4月)20日、都内で会合を開き、東日本大震災の慰問のため訪日している台湾の王金平立法院長(国会議長)に対し、義援金の提供や援助隊の派遣について感謝状を手渡した。
平沼氏は「頂いた好意を無にしないよう一日も早く復興を遂げたい」と謝意を表明。王氏は「台湾各界は日本の被災をわが身のことのように感じている。復興を全力で支援したい」と述べた。
台湾の官民からの義援金は約140億円で各国・地域の中で最多とされる。菅直人首相が11日に米英などの7紙に感謝広告を出した際に対象とならず、20日の国会で「台湾の人々は心を痛めている」(山谷えり子自民党参院議員)と指摘されていた。
王氏は対中交流団体「海峡交流基金会」の江丙坤理事長や企業トップらとともに、23日までの予定で訪日している。
2011年4月21日 産経ニュース 

■菅アルイミ首相が感謝広告から台湾の名を削ったのは確信犯だったに違いなく、御本人としては北京政府のご機嫌を損なわないように細心の注意を払った心算だったのでありましょう。「三つ子の魂、百まで」なのであります。まあ、カネと票を掻き集めてくれた鳩山・小沢コンビを切り捨てる計算高い冷酷さを外交に応用したとも申せましょうが……。


「ありがとう、台湾」。東日本大震災で多くの被災地支援を行った台湾に対し、日本在住の「有志一同」約6千人が3日付の台湾紙、聯合報と自由時報の2紙に、日本語を交えた感謝の広告を掲載した。台湾に謝意を伝えたいとする女性デザイナーが短文投稿サイト「ツイッター」などを通じて広告を提案。約240万円の広告掲載料を捻出するため、1口千円の募金を呼び掛けたところ、1900万円以上が集まった。差額は被災地へ義援金として送るという。
台湾からの義援金は先月27日までに約55億5千万台湾元(約157億円)に達している。
2011年5月3日 産経ニュース 

■菅アルイミ前首相が失礼千万な広告を掲載してから半月もしない間に義援金は10億円以上も上積みされておりました!愚かな首相・政府が感謝などしなくても台湾の人々は根に持たずに被災地の人々を心配してくれていたのであります。まるで国家としての格が違うと世界に宣伝してしまっているようなものでした。更に台湾からの義援金は積み増されて行ったのでした。

冗談も過ぎるとホラーになる 其の八

2012-03-27 16:10:08 | 外交・情勢(アジア)
■国会では企業年金を食い潰したマヌケな元株屋のオヤジが吊るし上げられているそうですが、その後ろに控えている共犯者は国の年金制度を食い荒らしただけでは足りず、役人を辞めてからも民間の投資顧問会社に天下って零細企業の年金基金まで食い散らかしていたという実に気味の悪い年寄り達なのだそうです。浅川某の言うことには「あと100億円あったら損を取り返せた!」と今になっても未練たらたらの負け惜しみを並べているそうで、これは博打で身を滅ぼす愚かな人間が常に口にする言葉であります。大王製紙の御曹司がビギナーズ・ラックの罠に墜ちて背任罪に問われた馬鹿馬鹿しい騒動がありましたが、あれは偉大なるお爺ちゃんからの遺産を食い潰したようなもので言うなれば身内の恥を晒しただけで世間様に笑われはしても外部に多大な御迷惑を掛けずに済んだような事件でしたが、今回のAIJ詐欺事件は天下り官僚と元大手証券会社のやり手営業マンが悪巧みをして1000億円以上もの他人の老後の蓄えを食い潰してしまったのですから、世間は笑うだけでは済ましておれないでしょうなあ。

■バブルを挟んだ時代には「伝説の営業マン」と異名を取っていたという浅川某は、昔取った杵柄で口から出任せ、手には大嘘書類を握って素人相手に随分と阿漕(あこぎ)な商売をしていたようですが、国会では「騙すつもりはなかった」と質問者を睨みつけていた由。最初から「騙すつもりでございました」と頭を下げる詐欺師など聞いたことがありませんから、あの一言は自ら立派な?詐欺師だったことを自白しているも同然。語るに落ちておりますぞ!

■さてさて、真実一路・増税路線まっしぐらの野田ドジョウ首相は「ミサイル撃つぞ!」と鼻息が荒い北朝鮮の目と鼻の先、隣国の韓国で開催された核サミットという重大な国際会議にトンボ返りで顔だけ出して「後は皆さんで、どうぞ宜しく」と日本にとって返して党内の増税反対派の説得に当たるのだそうです。韓国は日本の隣の国、北朝鮮が飛ばそうとしているミサイルの飛行ルートも隣り合っている国なのに、全世界50数カ国の首脳が一堂に会するまたとない外交の舞台を形だけの参加で済ませてしまった良いのでしょうか?親方がこんなことだから手下共は勝手気ままに先の短い与党時代に威張れるだけ威張っておこうと盛大に税金の無駄遣いをしているのでありましょうなあ。

■北京を舞台にした民主党ご一行様の珍道中の続きです。


……輿石東幹事長と鳩山由紀夫元首相という民主党重鎮が、よりによって同じ日に北京で習近平国家副主席と個別に会談した。しかも2人はバラバラに「友好」「友愛」を強調。中国の軍事力増強や東シナ海の権益拡大などには一切触れることはなかった。
「いい話ができたのではないか。今後とも関係を発展させていきたい」会談終了間際、輿石氏は習氏に早くも成果を強調。「地元の山梨は桃がおいしいが、福島の桃も食べてほしい」と“友達気分”で習氏に訪日を促した。輿石氏には待ちに待った初外遊だった。すでに訪米なども計画、党幹部をずらりと率いて自らの存在感を海外に示そうと考えているようだ。とはいえ、外交はずぶの素人。友好演出に腐心するばかりで懸案事項は棚上げされた。…… 

■場所は北京ではなく北朝鮮の平壌でしたが、故人となった金丸ノベボウ信という自民党の重鎮が一人で泣いたり笑ったりしながら愚かな独断専行をして『南北朝鮮分断後45年間についての補償』を浪花節調に決めてしまい日本の外交をメチャクチャにしかけた椿事がありましたが、その平壌訪問を仕組んだのは旧社会党の田辺誠という同じ山梨県を地盤とする人物で、北京ではしゃいでいた輿石さんも山梨の日教組出身なのは単なる偶然なのか?海の無い山梨県という地理的な影響なのか?何とも危なっかしい外遊であります。自分が無理やり閣僚に押し込んだ田中防衛大臣が国会で針の筵に座らされたり、荒縄で縛り上げられて逆さ吊りにされているというのに、チャイナの国家副主席と会えたくらいで舞い上がっているようでは政治家としての器が小さいことは間違いなさそうです。この程度の人物を重鎮扱いせざるを得ない民主党は深刻な人材不足なのでしょうなあ。


一方、党最高顧問に任命された鳩山氏は、「民主党の外交窓口は私だ」と言わんばかりに輿石氏らが去った後の人民大会堂に入った。しかも野田政権で葬り去られている「東アジア共同体」構想をうたい、「東シナ海を友愛の海に」と自説を披露。マイナス効果は輿石氏を上回った。樽床伸二幹事長代行は、鳩山氏の訪中について「何の報告も受けていない」と不信感を隠さない。鳩山氏側も「輿石氏らの訪中は3月に初めて聞かされた」(周辺)と困惑するが、双方が調整した形跡はない。
玄葉光一郎外相は23日の記者会見で「決して二元外交になるようなことがないような形での訪中だ。何か交渉ごとを行うわけではない」と2人を擁護したが、国益を正面から見据えることができぬようならば議員外交は慎むべきではないか。(北京 坂本一之)
2012年3月24日(土)7時55分 産経新聞 

■外交政策・安全保障政策をまったく持たず、党の綱領自体が無い民主党は本来ならば外交に手を出しては行けないのです。鳩山サセテイタダク元首相の方は「俺の方は半年前から予約してあるんだ!」と居直っていたそうですが、そんな先陣争いをして何の意味があるのでしょう?「福島の桃」も「友愛の海」も、外交交渉には何の意味も無い小道具でしかなかったというお粗末な話でした。日本とチャイナとが領海問題で揉めている東シナ海が、今度は北朝鮮の長距離ミサイル試射場になろうという時に「友愛の海」を語っていられる鳩山サセテイタダク元首相は、風変わりな政治活動などせずに専門の医療機関に入って治療に専念した方がよさそうです。


23日から別々に中国を訪問している民主党の訪中団と鳩山元総理。まず、輿石幹事長ら民主党の訪中団9人が、次の指導者とされる習国家副主席と約50分間会談しました。その10分後、今度は鳩山元総理が、また習副主席と同じく50分間会談しました。民主党側の調整不足が際立った形です。
民主党・鳩山由紀夫元総理大臣:「私からは、立て続けに民主党の同僚と会って頂いて恐縮ですと申し上げた」
一連の会談では、民主党側から東シナ海のガス田開発に関する条約締結交渉の早期再開を求め、習副主席は前向きな姿勢を見せました。今回の民主党のバラバラな2つの訪中は、党内の足並みの乱れを外交にまで持ち込んだ格好となりました。
2012年3月24日(土)8時51分 テレビ朝日系(ANN) 

■チャイナと日本との間で日本側が「恐縮」する案件は無いはずなのですが、礼儀正しく上品なのは結構ですが、こんな「恐縮」は育ちが良いというより間抜けと言われても仕方がありますまい。輿石幹事長はお供を連れて殿様気分ではしゃいでいたのでしょうが、鳩山サセテイタダク元首相の方は一人寂しく50分間も無駄話をしている姿は想像するだに寂寥感でいっぱいなのですが、孤立感や孤独感が最初から欠落している異常体質なのかも知れないぞ!と思うとぞっとしますなあ。誰かこの人の奇妙な外交活動を止めてやらないのでしょうか?まあ、民主党内ではとうの昔に「過去の人」扱いなのでしょうが……。民主党内でもガレキ処理が必要なのかも知れませんが、民主党自体がガレキの山なのかも?

冗談も過ぎるとホラーになる 其の七

2012-03-26 15:49:36 | 外交・情勢(アジア)
■自ら解散についてちらほら口走り始めた野田ドジョウ首相でしたが、とうとう消費税の引き上げに「政治生命を懸ける」とまで言い出した由。もしかすると北朝鮮からミサイルが飛来することよりも、ホルムズ海峡が火を噴く心配よりも消費税に引き上げの方が重要だと思い込んでいるのではないか?と国会で開催中の参議院予算委員会の場で集中砲火を浴びて袋叩きに遭っている田中防衛大臣の姿を平然と見物している野田ドジョウ首相の表情を見ていると心配になって参ります。まあ、元々、民主党政権は外交・安全保障に関して確固とした方針も政策も持ち合わせていないのですから、防衛大臣の椅子にトンデモない人が座ってしまっても何の不思議もないのですが……。

■前任の鳩山・菅両人を反面教師として、自分だけは歴史にしっかり名を残すべく腹を括ったのだとしたら、初動対応で大失敗を重ねて大いなる禍根を残してしまった原発事故の後始末と大震災の復興事業は、これから先どれほどの時間と予算が必要になるのか見当も付かない現状ですから、自分の任期を長くても今年の秋までと考えて、下手をすると4月か6月に解散総選挙か?との憶測が飛び交っている厳しい政権運営をよたよたと続けるにしても、大きな政治課題に取り組むのは止めて、政権を失う前に消費税の引き上げを実現し行きがけの駄賃にTPP参加の道筋も付けてしまおう!と本気で考えているような気がします。前任の2人は本当に何もしないで普天間基地移転問題と原発・震災の後始末を置き土産にして逃げるように総理大臣の椅子から転がり落ちたのですから、「ああはなりたくない!」と心から願うのは当然なのですが……。


「環太平洋連携協定(TPP)はビートルズだ」。野田佳彦首相は24日の都内での講演で、TPP交渉参加を検討している日本の立場を、英人気ロックバンドのメンバーに例えて説明、政府の方針に理解を求めた。
首相は「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない」と強調。その上で「米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーしなければいけない」と述べ、日本の交渉参加への決意を重ねて示した。 
2012年3月24日(土)18時4分 時事通信 

■拙ブログでは超親米だった小泉元首相に「プレスリー」のミドル・ネームを献上しておりますが、野田ドジョウ首相の口から「ビートルズ」が出て来たのには驚きつつも強い違和感がありました。それ以上に「TPPはビートルズだ!」と唐突に聞かされた講演会に参加した人達はどんな感想を持ったのでしょう?その意味と真意が伝わったのでしょうか?御本人は気の利いた事を言った心算かも知れませんが、ビートルズが解散したのはジョン・レノンがオノ・ヨーコさんと手に手を取って飛び出してしまったからで、ポール・マッカートニーは名曲『Let it be』を作って解散を回避しようと頑張ったけれど、その思いは伝わらずにビートルズは消滅したのではなかったでしょうかな?もしも「米国がジョン・レノンだ」と言ったのは米国がTPPをぶっ壊してしまう可能性があるとのメッセージだったのならば、それはそれで一つの見識なのですが……。

■この不思議な演説が行なわれた3日前に、第84回選抜高校野球大会の開会式がありまして、21世紀枠で選出された石巻工(宮城)の阿部翔人主将が見事な「選手宣誓」を行なって多くの日本人が感動したばかりでしたから、その余韻を乱暴に消し去ってしまうような野田ドジョウ首相の手前勝手で乱暴な比喩が何とも後味が悪いものになってしまいました。国会から聞こえて来る政治家達の言葉が余りにも貧しく卑しく無責任であるからこそ、高校生の宣誓に皆が感動したとも申せましょう。言葉で人を動かし国を引っ張って行くのが政治家の仕事であり使命であるのに、何も決められない国会の茶番劇がいつまで続くのでしょう?

■せめて茶番劇は国内だけに留めておいて欲しいものですが、民主党はちゃっかり役にも立たない訪中団を結成して仰々しく送り出していたのでした。


民主党の輿石幹事長の訪中団と鳩山元首相は23日、それぞれ中国を訪問し、北京市内の人民大会堂で、中国の次期最高指導者に内定している習近平国家副主席と個別に会談した。
輿石氏の訪中は、民主党と中国共産党の「日中交流協議機構」の事業の一環で、23日から3日間の日程で始まった。訪中団は仙谷由人政調会長代行らを含む10人。一方、鳩山氏も同じ日程だが、現地ではほぼ別行動だ。…… 

■金魚のフンならぬ、こういうのを「ドジョウのフン」とでも言うのでしょうか?二番煎じという言葉もありますが、この場合は「恥の上塗り」という表現が適していましょうなあ。わざわざ「我が党は分裂状態であります」と満天下に示すために税金を無駄遣いしているようなものです。尖閣での酒乱船長暴走衝突事件を卑屈に解決して見せた仙谷さんと、田中防衛大臣の産みの親とされる輿石幹事長が揃い踏み、さぞや北京の覚えは目出度かったことでありましょう。それにしても、どうして10人もぞろぞろ出掛けて行ったのでしょうなあ?先行き短い政権与党時代に物見遊山の旅を税金で楽しんでおこうと有象無象が付いて行ったのなら、野田政権が主張している「財政再建」は大嘘ですぞ!これほど明らかな税金の無駄遣いを見逃して、何の行財政改革なのでしょう?!


輿石氏は習氏と約50分間会談し、東シナ海ガス田の共同開発条約交渉の早期再開を求めたのに対し、習氏は「事務レベルで協議し、早期に再開できるよう条件づくりをしていかなければならない」と応じた。歴史問題では、輿石氏が1995年の「村山談話」を引用しながら、日本が平和主義を貫いているとの考えを強調。習氏は「歴史を鑑(かがみ)とし、未来に向けていくことが日中共通の政治基盤だ」と語った。
約20分後に行われた鳩山氏と習氏の会談でも、鳩山氏はガス田の交渉再開を求めた。鳩山氏は会談後、記者団に、輿石氏らとの調整の有無を問われ、「全くしていない。私(の訪中)は半年前から決めていた」と語った。
2012年3月24日(土)9時3分 読売新聞 

■たった50分、通訳が入りますから実質20分強の形式だけの会談に、わざわざ自分の方から「村山談話」を引っ張り出して東シナ海の問題をどうしようと言うのでしょう?続いて「東アジア共同体」の悪夢から醒めてない鳩山サセテイタダク元首相とも判で捺したような会見をこなした習近平国家副主席は、「こ奴らはアホだな」と思いつつも来日時に天皇陛下との会見を前例を破って強引に実現してくれた従順で間抜けな政権与党を「うい奴じゃ」とほくそ笑んでいたことでしょう。3日間の日程で「日中交流協議機構」の事業という名目で飲めや歌えの熱烈歓迎宴会を繰り返していたのなら、もう処置なしであります。


民主党訪中団(団長・輿石東幹事長)は24日、北京市内で中国共産党や外務省の幹部らと会談した。仙谷由人政調会長代行は、北朝鮮が予告した「衛星」名目の弾道ミサイル発射について「国連決議違反だ」と批判し、発射阻止へ日本と共同歩調を取るよう要請した。これに対し、中国の熊波外務省アジア局副局長は「憂慮している。米国、北朝鮮と密接に連絡を取り、情報をつかもうとしている」と応じた。
仙谷氏はまた、中国の軍事力増強に懸念を表明。呉小毅国防省外事弁公室アジア局長は「(情報を)一枚二枚と脱いでしまうと、丸裸になるからできない」と述べるにとどめた。
2012年3月24日(土)21時41分 時事通信 

■こういうのを「ガキの遣い」と呼ぶのでしょうなあ。要するに仙谷さんが「日本は何も出来ませんし情報もありません」と自国の弱点をバカ正直に伝えて「分かっているよ。黙って我々に任せておけ」と軽くあしらわれ、「怖いから軍事力を増強しないで」とこれまた真っ正直に膝を屈して懇願し、「怖がらせるために増強しているのさ」と切り替えされて返す言葉もなくすごすごと引き下がったということでしょう。これが民主党の外交か?!税金の無駄遣いであるばかりでなく国益を大いに損なっているような気がしてなりませぬ。


……鳩山元首相は「東シナ海を真の意味で友愛の海に」と述べた。会談で鳩山氏は、持論の東アジア共同体構想を説明し、東シナ海を友愛の海にしたいと訴えた。……その1時間前には、輿石氏らが習氏と会談し、東シナ海ガス田開発交渉の早期再開と原発事故による日本産品の輸入制限の早期解除を求めたが、習氏は「条件づくり」や「環境整備」への期待を示しただけだった。また輿石氏は、植民地支配を謝罪した「村山談話」に触れ、習氏は「歴史問題は直視することが大事だ」と述べた。
夕食会では、樽床幹事長代行が、北朝鮮のミサイル問題で協力を呼びかけたが、輿石氏が尖閣諸島問題や中国の不透明な軍拡などに触れることはなく、帰国後に野党から批判も上がるとみられる。
2012年3月24日(土)7時37分 フジテレビ系(FNN) 

■東シナ海を「友愛の海」にするために普天間基地を国外に追い出そうとした鳩山元首相は、自分が総理大臣を辞めざるを得なかった理由をまったく分かっていないのか、すっかり忘れてしまったのか?実に不思議な思考回路を持っている奇怪な政治家であります。既に鳩山グループと呼ばれた手下達は後ろ足で砂をかける様にして去ってしまったと報じられ、すっかり裸の王様(最高顧問)になっているのに、元総理大臣の矜持を守っているかのような言動が時々報道されているようです。「どうせ選挙になったらカネ欲しさに手下が戻って来るさ」とでも考えているのかも知れませんが、自分自身が落選して大恥を掻き、大金を注ぎ込んで作った民主党が消滅するかも知れないなどとは、まったく考えられない強靭な思考回路は健在なのかも知れません。そろそろ総理時代の「宇宙人」というニックネームは返上して「政界のゾンビ」とでも自称しては如何でしょう?嗚呼、気味が悪い。

TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の弐

2011-11-16 16:12:00 | 外交・情勢(アジア)
■ハワイから帰って来たらすぐに衆参両議院の予算委員会で連日吊るし上げられている野田ドジョウ首相は早くも満身創痍の様相を呈しているようです。切り込み隊長役を買って出たのは自民党政策審議会長の山本太一議員のようで、例の米国が仕掛けた「誤報」事件の後始末が外交手続きとして杜撰極まりない!と激しく攻め立てておりましたなあ。自民党も野党暮らしの辛さと惨めさのウサ晴らしでしかない野次と怒号で恥を晒している場合ではなく、与党民主党は弱点だらけなのですから正々堂々と議論で勝負して欲しいものであります。両手の指では足りない民主党の弱点の中でも「独り善がり」で「思いつき」ばかりの外交上の失政は文字通り「国益」に関わる大問題でありまして、無手勝流で夢見がちな書生論を振り回して日米関係をボロボロにした鳩山サセテイタダク元首相、そして、羹に懲りて膾を吹くように何もせずに1年以上も外交空白を作ってしまった菅アルイミ前首相が仕出かした大失敗を、本来ならば大急ぎで整理して国民に詫びて具体的な対応策を次々に打ち出さねばならないのに、野田ドジョウ首相は余りにも長く深く財務官僚と付き合い過ぎた悪影響で、「増税!」以外の話は曖昧模糊とした役人作文を棒読みしているだけのような印象が強いのであります。

■余りにもTPP参加問題が注目されて首脳会議で話し合われる他の議題に関する報道がまったくないまま野田ドジョウ首相が渡米してしまったのが気になっておりましたが、案の定、先代首相と同様に原発事故の収束に手間取り、電気エネルギー政策の見直しも出来ない現状から考えて実現不可能な大計画に満身創痍の日本がうかうかと同調することになったようであります。どうせ、自分の政権にせよ民主党という政党にせよ、あと僅かな命だろうと絶望的に自棄を起こして将来に決定的な禍根を残してやろうなどと恐ろしい逆恨みをしているわけではないでしょうな?!


……アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は13日夕(日本時間14日午前)、経済成長と環境保護を両立する「グリーン成長」の数値目標などを盛り込んだ首脳宣言「ホノルル宣言」を採択し、閉幕した。野田佳彦首相は首脳会議の場で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を改めて表明した。……ホノルル宣言では、域内全体で2035年までに、05年比で45%以上の省エネを実行することを盛り込んだ。太陽光パネルや電気自動車など「環境物品」の普及のため、各国が15年末までに関税を5%以下に引き下げる日米提案にも合意した。…… 

■かつて鳩山サセテイタダク元首相が国連で「省エネ」の大風呂敷を広げて得意顔だった頃は、間違いなく自民党政権よりも大規模な原発増設計画が前提となっていたのですが、菅アルイミ首相変わると直ぐに福島のポンコツ老朽原発が水蒸気爆発を起こしてしまいました。設計段階で想定された稼動期間をコスト削減の名目で大幅に延長したばかりだったポンコツ原発が地震と津波で壊れてしまったからには、もう新設・増設は悪い冗談か夢のまた夢となりまして、下手をしたら来年中にもすべての原発が止まる可能性さえ出て来るのは当然であります。さてさて、反対しにくい「環境」を名目に関税引き下げを組み込んだ「05年比で45%以上の省エネ」を約束してしまって大丈夫なのでしょうか?昔は世界一だった日本の太陽光パネルの技術は残念ながら「原発神話」の猛威の下でどんどん後れを取ってコスト面では競争力が無いとも言われているのですから、うっかりすると原発エネルギーを失った日本が安価な太陽光パネルを大量に輸入することになりはしまいか?こんな所にも「原発安全神話」を広めてしまった罪の深さが浮き出して来ます。


……中小企業やベンチャー企業の国際展開支援のため、今後、税関手続きの円滑化や知的財産権の保護強化を検討。スマートグリッド(次世代電力網)では、規格の国際標準化を目指し、国境を越えた広がりを後押しする。……一方、野田首相は首脳会議で、TPP交渉参加を改めて表明。APEC域内を経済的に統合するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。日本の交渉参加については、複数の首脳から「歓迎の意が示された」(外務省)という。野田首相は13日夜(日本時間14日午後)、政府専用機で帰国の途につく
産経新聞 11月14日(月) 産経新聞 

■原発事故の後で急に注目を集めて話題になった「スマートグリッド」ですが、どんなにバラ色の未来が示されても現在の電力会社の縄張り独占体制が存続している限り、スマートグリッド技術は本来の能力を発揮できないのですから、本当に「国際標準化」が議題になる会議に日本は参加資格が無いことになるかも知れませんぞ。世界が固唾を呑んで見守っている史上最悪の原発事故の対応に手間取り、夏の電力不足騒ぎに続いて冬もエネルギー不足が心配されている日本の実情を考えれば、とても新しいエネルギー・システムを世界に提案して「主導的な役割を果たし」すことなど不可能でしょうなあ。

■日曜日の午前中に放送されたフビテレビ『新報道2001』でも取り上げられていたのですが、
文藝春秋2011年11月特別号に「赤坂太郎」が「野田内閣に跋扈する“十七年前の亡霊”」という気になる文章を書いております。要するに初の非自民党政権となった細川内閣と野田ドジョウ内閣の内外事情が不気味に酷似しているという話なのですが……。副題は『増税、日米関係、小沢一郎……野田内閣は細川内閣と同じ途を辿るのか』という文章です。


■不気味な“暗合”

国会運営は予算日程と密接に絡み合っている。「国対カレンダー」は予算と関連法案をいつ成立させるかを終点に、いつ召集したらよいのかを考えて起点とする。このため財務省、中でも予算を担当する主計局が果たす役割は大きい。鳩山、菅両内閣での財務省出身の首相秘書官が主計畑でなかったことが象徴するように、これまでの民主党政権は主計局とは距離を置いてきた。野田はこれを180度変え、主計局と手を携えて国会、政権運営に乗り出している。財務省で国対の司令塔となる官房長・香川俊介も主計畑で勝の信任が厚く、元代表の小沢が官房副長官を務めた時の秘書官でもある。財務省の「国対ライン」をフル活用する野田の心づもりが、今回の延長劇で明らかになった。過剰なまでの財務省への傾斜に、民主党内では危惧と懸念が芽生える。代表選の最中には財務相だった野田をプレーアップする思惑で円高対策を発表させた。増税論議では財務相・安住淳が持ってきた政府税制調査会の案から消費税を除外させ、財源となる復興債の償還期間は十年とすることを「首相指示」として実行した。だが、これが本当に野田本人の考えだと思う議員は、民主党内には一人たりとも存在しない。…… 

■野田ドジョウ内閣は党内融和と安全運転でのろのろ走り出したものの、素朴で地味で低姿勢という御自身のキャラクターで国民の目をどこまで欺けるかは不明ながら、野田ドジョウ内閣は一皮剥けば財務省主導の増税最優先が生命線で、それ以外の震災復興・原発事故収束・農業改革等々はまったく具体的な政策も予算規模も分からないオマケみたいなものなのかも知れません。


……野田が喜んだ「彼とは仕事ができる」とのオバマの言葉も、史上ワースト一、二を争う元首相・鳩山由紀夫、前首相・菅直人と比較してのことであり、会談本番では沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題など、あらゆる二国間問題を列挙され、進展を迫られた。それを米側は国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のダニエル・ラッセル、国務次官補のカート・キャンベルらが米国人記者へのブリーフィング(状況説明)であからさまに語っている。「自己紹介もそこそこで、ウィットの利いた冗談の一つもなかった」と会談の同席者さえ認めるほど、米側の姿勢も厳しかったのだ。当の野田本人は高揚したまま帰国した翌日の(10月)25日、東京・墨田区の両国国技館に足を運んで大相撲秋場所の優勝力士に内閣総理大臣杯を授与するパフォーマンスをみせた。夜にはキャピトルホテル東急に移動して政府・民主三役会議に臨み、秋以降の日程を確認。政権運営のヤル気をみなぎらせた。だが翌26日、小沢の元秘書三人に有罪判決が出て、野田の「党内融和」は危機を迎える。公明党の姿勢も読みにくさを増した。 

■この文章はハワイのAPEC会議に行く前の話ですが、米国側が野田ドジョウ首相を随分と安く値踏みしていたことが分かります。リーマン・ショックで苦境に立ったオバマ大統領が飛びついたのが太平洋沿岸の小国が作ったTPPで、そこに太平洋を挟んで日本も引っ張り込めれば一挙に好き放題に荒稼ぎができそうだとの皮算用は見え見えなのですから、財務省の言いなりになったのと同じ調子で米国追従になるのも時間の問題なのではないか?と多くの国民は不安になっているのでしょうなあ。


……振り返ってみれば野田が師事する細川も政治改革法を成立させたまではよかったが当時の米大統領、ビル・クリントンとの会談で「日米は成熟した大人の関係」と打ち上げたあたりから雲行きが怪しくなり、大蔵省と組んだ「七%の国民福祉税」で完全に失速。八カ月で政権を投げ出した。衆参両院ともに過半数を確保していた細川に比べ、野田が置かれている「ねじれ国会」の状況は一段と厳しい。野田に「政治とカネ」の問題があることも、細川と同じだ。多すぎる不気味な“暗合”は何を意味するのか。細川と同じ課題への取り扱いを誤れば、野田の退き際も、細川と同じになりかねない。(文中敬称略)

■もう政権を投げ出す姿を細川元首相の終わり方と重なって見え始めているとしたら、中途半端に大きな約束などして国益を損なうことになる前に、さっさと解散総選挙をして『マニフェスト』の落とし前をつけて欲しいものであります。
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TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の壱

2011-11-14 16:06:03 | 外交・情勢(アジア)
■賛成派も反対派も「ああ、よかった」と胸を撫で下ろしてくれる暗号・なぞなぞ・判じ物みたいな「関係諸国との協議を始める」との公式発表を行なって、怒号も投石も受けずに米国ハワイに飛んだ野田ドジョウ首相でしありましたが、短い日程は瞬く間に終わり既に御本人は帰国の途に就いている由。どんな「TPPお化け」が出るかと思っていたら、相も変らぬ上から日本を見下ろす図体の大きな米国が待っていたようです。日露戦争の幕引きを仲介して日本に恩を着せたかつてのセオドア・ルーズベルト大統領は「左手に棍棒を持って笑顔で握手する男」と呼ばれていたそうですが、再選が難しいともっぱらの噂のオバマ大統領は笑顔と貫禄を見せながら議長役を務めつつ、日本の首相に対しては手の込んだ罠を仕掛けておいた模様です。相手がドジョウならば足で泥を掻き乱して笊(ざる)に追い込むだけの話なのですが……。

12日昼(日本時間13日朝)にホノルル市内で行われた日米首脳会談の米側の報道発表をめぐり、とんだハプニングが起きた。米側の報道発表資料には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「野田佳彦首相が『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』と述べた」と書かれていた。これに対し、外務省は「そのような発言を首相が行った事実はない」として、米側の報道発表を否定する報道発表をして火消しに躍起となった。外務省によると、首相は「昨年11月に策定した『包括的経済連携に関する基本方針』に基づいて高いレベルでの経済連携を進める」と述べただけだという。外務省が米側に説明を求めたところ、米側は同基本方針に「センシティブ品目(自由化に慎重な品目)について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし…」と書かれていたことを踏まえ、報道発表したと説明。誤解を認めたという。…… 

■民主党を割るような大騒ぎをしている最中でも、TPP参加に「反対」と明言する議員は一人もなく、賛成派に盾突いた人たちは自称「慎重派」だったことを考えれば、米国側から見れば遅かれ早かれTPPに参加するのだろうと気を利かせて?先回りしてやってつもりだったのかも知れませんが、一晩「慎重に」熟慮したことで離党分裂の危険を何とか乗り切った野田ドジョウ首相としては、「慎重に」の一言を省略されては立つ瀬がありますまいなあ。米国が発表した資料にある問題の『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』という一文では、何処にも「慎重に」の一言を挟み込む隙間がありませぬ。皮肉なことに「センシティブ(慎重)品目に対する配慮」という肝腎な前提条件をばっさり切り捨ててシラッと発表しているのですから、相手は正確に「慎重」の意味を承知の上で、この可否も是非も誤魔化す玉虫色の表現は受け付けないぞ!と軽いジャブを打ったつもりなのかも知れませんが、この先制パンチは厳しいボディブローになって後々ずきずきと痛むことになるかも知れませんぞ。これを「誤解」と報道してよいのでしょうか?


……この基本方針は菅直人政権が閣議決定したもので、民主党政権のあいまいな姿勢が今回のような誤解を招いたともいえそうだ。
2011年11月13日 産経ニュース 

■そもそも、とかく情報不足が責められるTPP参加ですから一般国民としては軽々に賛成だの反対だのとは言えない難問ではあります。しかし、アノ菅アルイミ首相が唐突に言い出して反発を受けてすぐに引っ込めた不快な記憶がある限り、決して手放しで賛成など出来ないという不快感情的な問題があるのは確かでしょうし、政権交代マニフェストで約束した国家戦略局も看板倒れになっている現政権に「国の形」など描いて貰いたくはない!という強い拒否反応も起こっているのではないでしょうか?

■民主党内の「慎重派」が大喜びして送り出したのに、ハワイの会議が始まってしまえば日本の新聞は挙って「TPP交渉入りを表明」と見出しを打ってしまいましたし、外国メディアも「慎重に」も「関係諸国との」も省略して会議の進捗状況を続々と報じていたようであります。


野田佳彦首相は13日午前(日本時間14日早朝)、米ハワイ州で開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向け、関係国と協議に入る」と表明した。その上で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。一方、日本の現状については「少子高齢化が進展し、東日本大震災を契機に厳しいエネルギー制約に直面する『課題先進国』だ」と指摘。昨年6月に閣議決定した新成長戦略を拡充する「日本再生戦略」を年内に取りまとめる方針を改めて強調した。
「(成長のために)復興財源・社会保障の安定財源の確保に取り組む」としたが、消費税増税については具体的に言及しなかった。
2011年11月14日 産経ニュース 

■TPPよりも大規模なFTAAPの実現に「主導的な役割を果たす」と、TPPの交渉会議が開催されるハワイ現地に乗り込んで発表するということは「関係国との協議」は実質的に参加することでなければ辻褄が合わないでしょう。「経済成長のために増税」だの「自由貿易と農業再生の両立」だの、最初から無理な組み合わせを平然と語れる野田ドジョウ首相の神経が分かりませんが、縦割り行政の官僚組織から出て来る紙切れを切り張りしている間に日本はボロボロになって行くような気がしますなあ。日本の企業や国自体が、民主党みたいな内向きで志の無い寄り合い所帯みたいなことになったらどうしましょう?

正体不明の挟み撃ち? 其の弐

2011-10-26 16:09:35 | 外交・情勢(アジア)

一川保夫防衛相は25日、来日中のパネッタ米国防長官と防衛省で会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として日米両政府が合意した同県名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する方針を伝えた。パネッタ氏は「日本側の努力を評価する」と応じ、普天間移設を可能な限り早く進めることで一致した。両氏は世界的なサイバー攻撃への対処に連携していくことも確認した。一川氏は武器輸出三原則の緩和に向け検討を進める方針を伝えた。…… 

■「出来れば国外、最低でも県外」と言い出した前の前の総理大臣が「学べば学ぶほど」沖縄基地の抑止力の有り難味が分かったと、自分だけ納得して政権を投げ出してしまってから、次の菅アルイミ首相は無力の「全力」で沖縄現地にも行かずに機械的に先送り。鳩山サセテイタダク元首相が点火して一度燃え上がった沖縄県民の怒りと声は、野田ドジョウ首相の官僚作文の棒読みなどでは絶対に消せないでしょうから、米国の言いなりに事務的に移設作業を進めようとすると鳩山サセテイタダク元首相が言った「杭の一本も打ち込めない」騒動が起こることを危惧する声があちこちから聞こえているというのに、民主党政権の鈍感さを強引な姿勢に変えてうかうかと火中の栗を素手で拾おうとしているのが分からないのでしょうか?党内融和に全力を使い果たして「官僚主導」で政治を進めようとする野田ドジョウ政権の病的な内向き姿勢が足元から崩れていくかも知れませんなあ。前の総理大臣は「辞任はしない」と粘りに粘って国会を空転させましたが、今度のドジョウ首相は「解散総選挙はしない」と早々に断言して民主党全体で居座るつもりのようですから、政治不信はますます深刻になりそうです。

■民主党名物の唐突な言動から「武器輸出三原則の緩和」が飛び出したのは前原エエカッコシイ政調会長が米国を訪問した時だったと記憶しておりますが、日本に持ち帰って普天間基地移設問題に絡めてしまおうと最初から考えていたのなら、ちょっとした策士と申せましょうが、策士は得てして策に溺れてしまう危険がありまして、前原エエカッコシイ政調会長にはマスコミから「言うだけ番長」の異名が贈られてもおりますから、三原則の緩和がどこまで進むのかは予断を許しません。そこに「世界的なサイバー攻撃への対処」がさり気無く添えられているのが、今回の一川・パネッタ会談の特徴ではないでしょうか?特に防衛軍事情報に関しては、ずっと前から米国は日本の情報管理の杜撰さを知り尽くしていたので、重要情報は渡さないと決めていたはずですぞ。

■もしも、第三国からのサイバー攻撃に対処する事態になったとしても、日本には米国と共同で動ける技術も組織も無いでしょうし、米国が虎の子の最新技術を日本に提供することなど考えられませんから、この「世界的なサイバー攻撃への対処に連携」という話には中身がまったく詰まっていないことになりましょう。


普天間問題をめぐって米国では、普天間移設と関連する在沖縄米海兵隊のグアム移転計画が財政削減を求める議会の反発で頓挫しかねない状況にある。パネッタ氏は「グアム移転には普天間の具体的な進展を得ることが重要だ。両国で協力したい」と述べ、進展の必要性を強調した。……日本政府が欧米の3機種の中から選定を進めている航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)をめぐり、パネッタ氏は日米間の「相互運用性」に言及した。米国など9カ国が共同開発中のF35や米国製のFA18の選定に期待感を示した。
野田佳彦首相もパネッタ氏と首相官邸で会談し「日米同盟は、わが国の外交安全保障の基軸であるというのが私の信念だ。しっかり連携しながら安全保障、防衛面でさらなる強化をしていきたい」と述べ、日米同盟の深化に意欲を表明した。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■野田ドジョウ首相は、こうした発言が即座に世界を駆け巡り、目の前に座っている米国の国務長官を飛び越えて他国の政府に向かっての言葉に変わるという事実を認識しているのか?甚だ不安になるのでありますが、武器輸出三原則を見直して次期戦闘機を米国製に決め、普天間基地もさっさと約束どおりに移設してくれた上にTPPにも積極的に参加する。米国政府にとってこんなに「ウイ奴」は他に居ませんでしょうなあ。しかし、日本の国民にとっては放射能汚染の不安がどんどん膨らみ、震災津波の被災地では復興の目途がまったく立たず、歴史的な円高は変わらず、こんな迷惑千万な政権はかつて無かったかも知れませんなあ。

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正体不明の挟み撃ち? 其の壱

2011-10-26 16:09:06 | 外交・情勢(アジア)
■鬼が出るか蛇が出るか?世に言う「TPPお化け」を呼び出した野田ドジョウ首相は何も語らぬまま、外交日程を最優先に泥の中で眠った振りして独断専行で突っ走るつもりのようであります。隣の韓国が米国と自由貿易協定を結びそうだと言うので日本中がEPAだのFTAだの三文字用語が飛び交い始めて国会議員も含めて俄か勉強が真っ盛り。賛成派と反対派が一歩も譲らず国会も民主党内も真っ二つの様相を呈してはおりますが、余りにも情報が少ないために議論は噛み合わないまま白熱もせず、自由貿易と聞けばすぐに飛び出す「農業問題」、長過ぎた自民党政権時代の負の遺産が解決の糸口も見付からないまま、そっくりそのまま民主党政権にも継承されている恐ろしい現実が露呈してしまっているのは困ったものです。

■日本の財界に「バスに乗り遅れるな!」の声が上がった原因の米韓FTAを詳しく点検した研究者が警鐘を鳴らしている「ラチェット規定」と「ISD条項」という巧妙な罠の標的は決して日本の農業などではなさそうなのですが……。賛成派が鼻息荒く、まずは交渉に参加して日本の国益を堂々と主張して事を有利に進めよう!と空元気を出している様子を拝察しますと、かつての日米構造協議やらクリントン政権時代に仕掛けられた奇怪な高額訴訟の数々を思い出しまして、またまた日本は俎板の上のドジョウならぬ鯉にされて好き放題に料理されてしまいはせぬかと心配にはなりますなあ。


衆院議員のパソコンが外部からの攻撃を受け、コンピューターウイルスに感染し、衆院のサーバーが不正アクセスを受けていたことが25日、分かった。サーバー内には国会議員に割り当てられた電子メールのデータなどが保存され、盗み見された恐れがある。衆院は対策本部を設置し、情報流出の解明に乗り出した。防衛産業へのサイバー攻撃が相次いでいるが、同様の攻撃を受けた可能性もある。ただ、8月に被害が発覚していたものの、対応が遅れ危機管理意識の甘さを露呈した。…… 

■民主党が掲げる「政治主導」の看板が単なる素人集団の絵空事でしかなかったことは分かっているのですが、不正アクセスを知りながら1箇月間も放置していられる無神経さには呆れ果てます。自民党時代にも日米交渉の裏側で世界に名高いスパイ天国の日本らしく、米国側は盗聴やら不正アクセスの技術を駆使して交渉前にすべての情報を入手していたという恐ろしい話があったことを思い出します。もしも春から盛大に発覚しているサイバー攻撃事件の本丸がTPP交渉に関する情報収集だったとしたら、交渉のテーブルに着く前から勝負はついているようなものかも?


衆院事務局によると、ウイルス感染は8月28日頃に判明。サーバーの管理委託を受けた業者が「不正アクセスの痕跡がある」と事務局に通報した。経路を調べたところ、衆院議員3人に貸与したノートパソコンがウイルスに感染していた。議員のパソコンからサーバー自体にウイルスが転移した可能性もある。議員側がメールに添付されたウイルスを不用意に開いたことが原因とみられ、大規模な感染拡大を防ぐため、議員のパソコンとサーバー1台をネットワークから切り離したという。サーバーには衆院議員や公設秘書、事務局職員の計約2660人分のIDやパスワード、メールなどが保存されている。藤村修官房長官は25日の記者会見で「違法行為が確認されれば、警察が厳正に対処していく」と語った。衆院議院運営委員会の庶務小委員会(松野頼久委員長)は対策本部を設置し、各議員にパスワードの変更などを促す方針を決めた。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■日本の警察はサイバー犯罪に対して無力に等しいことは衆知の事実で、情報が1箇月間も駄々漏れになった後で「警察が厳正に対処する」などと寝言を言っているのでしょうか?でも、他に手段がないのが実態なのでしょうなあ。さてさて、国会議員や在外公館を狙ってサイバー攻撃を仕掛けているのは米国なのか?はたまたTPPは自国に対する経済的な封じ込め政策だ!と警戒感を強めているチャイナの北京政府なのか?或いは泰平の夢から醒めずに昼寝を続ける日本を戦場として両国が情報戦を展開していたらどうしましょう?残念ながら戦後の60余年を振り返れば決して米国は日本の良き同盟国ではなかった面も多多あり、ニクソン政権下でのドルショックやらバブル経済の狂乱を生んだプラザ合意、そして未だに傷が癒えないリーマン・ショックと、或る人の資産によりますと毎回毎回100兆円の国富が日本から米国に移転していたとか……。次なる100兆円の奪取方法としてTPPを使おうと悪知恵に長けた誰かさんが画策していないとも限りませんぞ。

野田ドジョウ外交の始まり 其の壱

2011-09-21 15:13:44 | 外交・情勢(アジア)
■先の台風12号が残した傷跡は国の激甚災害指摘を受けるほどに深刻で、今回の台風15号による大雨で土砂ダムの決壊が懸念されているのは天災でありますが、12号来襲時に官邸を空けて1000円散髪に外出した野田ドジョウ首相の危機管理能力が疑問視されたのは災害対応が後手に回る人災になるのを懸念するが故の声だったのでしょう。そして15号が速度を上げて日本列島に上陸せんとする動きを見せている時に野田ドジョウ首相御夫妻は無事に米国ニューヨークに到着された由。紀伊半島の土砂ダム決壊も心配ですが、庄内川の氾濫による名古屋市周辺で避難生活をしている人達のことも気になります。そして台風上陸後に直撃を受けるかも知れない首都圏の大混乱はもっと心配で、それから辿る北上進路によっては福島第一原発の汚染水流出も不安の種となります。

■野田ドジョウ首相は20日、訪米前に米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューに応じたそうで、原発は「来年の春以降、夏に向けて再稼働できるものは再稼働していくということを、きちっとやっていかないといけない」と唐突に発言した由。どうやら前と前の前の総理大臣のような稚拙で愚劣な「思いつき」ではなく対外的な宣伝効果を狙った民主党政権にしては周到な?準備をした上での発言らしいのですが、国民にとっては6万人の反原発デモが行なわれた直後でもあり、やはり「唐突」な印象を持ってしまいます。


野田佳彦首相は20日午後、福島県広野町議会の坂本紀一議長らと首相官邸で会い、東京電力福島第1原発事故収束へ向けた取り組み強化の要請を受けた。この中で首相は、来年1月としてきた原子炉を「冷温停止」させる時期を、年内に前倒しする意向を伝えた。原子炉の温度を安定した状態で100度以下に保つ冷温停止の実現は、事故収束に向けた政府と東電の工程表で「ステップ2」と位置付け、来年1月までの達成を目指していた。これについて首相は「何とか年内に目標を前倒しして実現できるよう、頑張りたい」と述べた。
冷温停止をめぐっては、細野豪志原発事故担当相も19日にウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、年内に達成する方針を表明している。 
2011年9月20日(火) 時事通信 

■1日前に国際社会に向けて「大丈夫だよ」と精一杯のアピールをしておいて、翌日には事故現場の町議会議長さんに直接「大丈夫だよ」と胸を張って見せることで外と内とが呼応して原発大事故の収束を印象付けたかったようです。でも、問題は「冷温停止」後に待っている広域となった被災地での除染作業が喫緊の問題でしょうし、それ以上に廃炉作業と最終処分方法の決定という気の遠くなるような大仕事もどっかりと残っているのですから、「工程表の前倒し」ではしゃぎ過ぎるのは実に危ない感じがしますなあ。

■菅アルイミ前首相が唐突に言い出したストレス・テストと抱き合わせの「脱・原発依存」という話は、民主党の党是にも政権の継承事項にもなっていなかった事実を、やっぱりなあと脱力感と共に考えるのであります。まあ、そのストレス・テストも欧米の基準とは雲泥の差がある穴だらけのお手盛りテストだと分かってしまった時から新政権の方向性は誰かさん達によって決められていたものと想像されます。原発問題が外交問題でもあることは菅アルイミ内閣の時から、日本国内では脱原発なのにトルコやベトナムには原発を買って貰って大喜びというチグハグな素人外交を見せ付けられていますから十分に国民も理解していることでしょう。

■菅アルイミ前首相の不思議な思考回路では矛盾なく両立できていたそうですが、実際には二兎を追って一兎をも得ずに谷に落ちたか池で溺れたか、結論を示すことなく辞任してしまい、後を継いだ野田ドジョウ内閣は呆れるほどあっさりと脱・原発依存をしれっと棚上げして「再稼動」の日程をイの一番に米国新聞で発表!これが新首相本人の決断なのか、誰かさんの入れ知恵や振り付けなのかは分かりません。しかし、自民党も民主党もころころ首相が変わりましたが、民主党は政策そのものが根こそぎ丸ごとガラッと変えてしまう不気味で信用できない正当だという事だけははっきりしましたなあ。これが泥臭いドジョウ政治の本性ならば日本は泥にまみれてずぶずぶと沈んで行ってしまうかも?

■政党としての綱領も無く、安全保障政策も統一されていない寄り合い所帯の民主党ですから、前の前の首相が沖縄でパンドラの箱を開いて日米関係をぶっ壊してしまった後始末など出来ないだろうと諦めていた時に大震災と原発大事故が起こり、国を挙げて国難だ!国難だ!の大合唱になるドサクサに紛れて政権与党としての寿命が延びてしまったのは、やはり日本の歴史にとっては不幸な出来事だったとそろそろ分かり始めているのではないでしょうかな?民主党政権にとっては国連ビルは鬼門中の鬼門で、鳩山サセテイタダク元首相も菅アルイミ前首相もあまりの嬉しさに正気を失って薄っぺらで直ぐ破ける大風呂敷を広げて見せて、後で大恥を掻く悲喜劇を続けて演じておりますから、三度目の正直でまたトンデモない空手形を切ってひらひら見せびらかすような愚かなことだけはしないで欲しいものであります。

■野田ドジョウ首相ご夫妻が降り立ったニューヨークには何と沖縄県知事が一足先に乗り込んでいたそうで、すでに火の手が上がっている現場に入って行くことになります。玄葉外相も露払い役で先に渡米しているようですが、とても火消し役は務まりますまいなあ。


 --米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設は

「安定した秩序をアジア・太平洋に作り上げていくための基軸は日米関係であり、さらに深めることが大事だ。普天間問題は関係閣僚、前原誠司政調会長らともどのように連携をとるか早く決めたい。移設は(名護市辺野古に移設する)日米合意に基づき進めていく。沖縄の負担軽減は大事なことなので、踏まれても蹴られても誠心誠意、沖縄の皆さんに向き合っていく」……
2011年9月8日 産経新聞 

■新閣僚として就任後発の公式会見で玄葉外相は野田ドジョウ首相の所信表明演説を先取りする格好で「誠(正)心誠意」を使っていたのですが、「沖縄の皆さんと向き合う」前に米国であれこれ話を進めてしまって大丈夫なのでしょうか?

予想通りの大惨事? 

2011-07-24 11:25:14 | 外交・情勢(アジア)
■北欧のノルウェーで「予想外」の凶悪テロが発生して驚いていると、今度はチャイナで予想通りの鉄道事故が起こりました。東西冷戦が終わって既に20年以上も経っていますが、ノルウェーのテロ犯人は極端な保守主義思想を持っていたと報じられていますし、チャイナでとうとう大事故を起こしてしまった高速鉄道は「中国共産党結党90周年記念式典」に花を添えるために開通させたそうですから、どちらも古臭いイデオロギーと深く結び付いていると申せましょう。7月14日に福建省武夷山で橋の崩落事故が起き、翌15日には浙江省杭州市の銭江三橋が崩落するなど「90周年」を祝ったはずの橋があちこちで崩れたり大穴が開いているとの報道もありましたから、多くの乗客を運ぶ高速鉄道の安全性を危惧していたのでしたが……。

……中国東部の浙江省温州市付近で23日午後8時34分(日本時間同9時34分)ごろ、同省杭州市から福建省福州市に向かっていた高速鉄道「D3115」が脱線事故を起こし、車両2両が地上20~30メートルの高架橋から転落した。少なくとも11人が死亡、89人が病院に運ばれたが、死傷者は多数に上っているとの報道もある。この路線は、杭州から福州まで740キロの行程で、各車両にはほぼ満席の100人前後の旅客が乗っていた可能性がある。中国中央テレビなどは、列車は別の高速鉄道車両に追突され、高架橋から落下し、雷雨などの悪天候が原因の可能性があると報道。事故は衝突によるものとの報道もあり、情報は錯綜している。…… 

■最新式の高速鉄道で「追突事故」が起こるのも怖いですが、チャイナ各地で頻発している橋の崩落を考えますと、手抜き工事が原因で通過列車の振動に耐えられなくなった高架橋が変形でもしたのではないか?とも思われまして、『また斉南事件?』に書いた嫌な予感よりも事態は深刻なのではないか、と心配になりますなあ。急速に広がる高速の道路・鉄道網は恐ろしいウイルスの如く広まっていますから、崩落の危険が潜んでいる場所を探し出すのは至難の業でしょうし、仮に衝突事故だったとしたら安心して乗っていられません。


北京の日本大使館や上海の日本総領事館などが、事故に日本人が巻き込まれていないかどうか、情報収集にあたっている。事故を起こした列車は、在来線の路線に日本からの技術導入で製造された新幹線型の「動車」と呼ばれる車両を走らせたもので、「和諧号」と総称される。事故現場は、6月30日に開業した北京-上海間の「中国高速鉄道(中国版新幹線)」とは異なる。ただ、中国版新幹線は先月の開業以来、故障や電気系統の不具合などトラブルが相次いでいるほか、中国鉄道省の幹部が、「安全性よりも『世界一』のスピードなどを優先させた設計だった」などと中国紙に暴露して波紋を呼んでいた。中国の高速鉄道は2007年に初めて導入されたばかりだが、昨年末にすでに総延長約8千キロに達し、15年までにこれを1万6千キロにする計画で、急ピッチな建設や路線拡大に安全管理が追いつけるかどうか、疑問視されていた。
2011年7月24日 産経ニュース 

■日本人が巻き込まれているかどうかは不明ですが、思い出すのは1988年(昭和63年)3月24日に上海郊外で発生した急行列車同士の衝突事故であります。高知学芸高等学校の1年生の生徒と教員合わせて28人が死亡した大事故でした。当時は改革解放の小平路線が始まったばかりで急拡大する需要に鉄道インフラが追い付かず、鉄道事故が多発していたのでした。同校でもチャイナ旅行に不安があったらしく、日本の東北地方に向かうコースも選択できるようにしてあったとか……。あの事故の後は、補償問題がこじれにこじれてさっさと日本の外務省は逃げ出し、北京政府と学校、その学校と遺族などなど悲しい対立関係が生まれて大変な騒ぎになってしまったのでした。すったもんだの末に北京政府が極秘裏に示した補償額は400万円前後だったと推測されていますが、最初の提示額は200万円だったとか……。両国の経済力に大きな差があった時代とはいえ、北京政府の人命軽視の本性がちらりと見えた事件だったのでした。さて、世界第2位の経済大国になったらしいチャイナが、どんな補償交渉をするのでしょうなあ?日本人が巻き込まれていないこと、欧米諸国の人間が巻き込まれていないことを北京政府のエライ人たちは願っているに違いないのですが、増加・台頭が著しい富裕層が犠牲者に含まれていると厄介なことになるかも知れませんなあ。

■事故が起こったのは中国版新幹線の路線とは別系統だとのことですが、その本命の方も安全性には問題があるようですから、御用心、御用心。


「中国版新幹線」と呼ばれる北京と上海を結ぶ高速鉄道の列車が13日に江蘇省常州市で停車したトラブルについて、中国鉄道省の王勇平報道官は一部車両が変圧器の故障で出力を失ったと説明した。……車両の問題が浮上し、安全性への懸念が強まりそうだ。同鉄道は2012年に開業予定だったが、中国共産党創建90周年記念日を前にした6月末に開業を前倒しして建設を急いだ経緯があり、工事で手抜きがあったのではないかとの指摘もある。報道官の説明では一部車両の出力喪失で列車全体の走行能力が低下。最高時速が300キロから160キロまで落ち、緊急停止して車両を交換した。トラブルは10~13日の4日間に3度発生。架線など送電系統の障害もあった。報道官は謝罪の一方で「日本の新幹線でもたびたびトラブルが起きている」と釈明した。
2011年7月15日 産経ニュース 

■最後の一言は蛇足ですが、それ以上に苦し紛れの愚かな八つ当たりと申せましょう。人命にかかわる大事故は一度も起こさず、地震や台風などの自然現象に対応して運行を調整することはあっても通常は世界で最も安全で正確な運行を続けているのが日本の新幹線でありますから、東電のポンコツ原発でもあるまいし電源を喪失して停まることもなく、ましてや高架線から列車が脱線落下することなどありません。阪神淡路大震災や中越地震の時にも新幹線は見事に安全に停止して世界を驚かせたものであります。

■新幹線に関しては特許問題も起きておりますが、これは民間技術の前に軍事技術をパクリにパクッて平然と国産と称して商売している実績?があるチャイナですから、日中友好の美名に騙されて虎の子の技術を渡してしまった日本側にも反省すべき点がありそうです。それでも、新幹線の技術から安全性に関する部分を切り捨てて国産品だと言い張るのは不愉快な話で、新幹線に情熱を注いで来た多くの関係者にとっては中国版新幹線は本家とは「似て非なる物」にしか見えないでしょう。日本政府はこの点を早めに世界に向けて発信しておかないと大変なことになるやも知れませんぞ。


中国鉄道省の王勇平報道官は7日、中国国営通信、新華社のインタビューで、中国の高速鉄道について「多くの技術は日本の新幹線よりはるかに優れている」と述べ、日本の技術を上回ったとの認識を表明した。報道官は「日本の高速鉄道計画にも技術を提供したい」と述べ、整備新幹線計画への参入に意欲を示した。技術力誇示は、中国が日本から導入した技術をベースに開発した「中国版新幹線」の技術特許を取得する国際手続きを始めたことについて、日本で反発の声が出ていることへの反論とみられる。日中間で論戦が過熱すれば、両国関係に影響する可能性もある。
2011年7月7日 産経ニュース 

■まあ、今のところはチャイナからの「技術提供」などは悪い冗談でしかありませんが、間も無く、航空母艦や核兵器・大陸間弾道弾などの物騒な分野ならば提供を大歓迎することになるかも?冗談はさて置き、自分達の技術力を無視して「張りぼて」を作って過剰な宣伝で本物らしく見せようとする建国以来の悪い癖を反省して、早目に治しておかないとどんどん高速化・大規模化する陸と空の交通網のあちこちで恐ろしい惨劇が起こる可能性が高まり続けましょう。それ以上に気になるのはチャイナの原発計画であります。

■現在13基の原子炉が稼働中ですが、中国国務院は32基の新規建設を承認済みで、建設・計画中が計70基。2020年までには現在の7倍の約7000万kWにして(大事故前の)日本を抜き、2050年までには230基!もの原発を稼動させるそうですからなあ。偏西風の風下にある日本列島は原発事故が起こらないように毎日毎日祈り続けねばならない時代がやって来るのでしょうなあ。
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また斉南事件? 其の弐

2011-07-11 16:08:33 | 外交・情勢(アジア)
■「其の壱」の続きです。

一方、周氏はそれ以外にも、中国版新幹線の営業時の最高時速が当初計画の350キロから300キロに引き下げられた問題に関し、汚職で2月に失脚した劉志軍・前鉄道相が「世界一」にこだわり、安全性を無視して最高時速を350キロに設定するよう命じていたと暴露。技術供与元の日独企業から時速300キロ以上の営業運転は設計上も乗客の安全を保証できないと指摘され、前鉄道相の更迭後に方針変更したという。周氏は、路線の安全設計や工事が不十分で、地盤沈下による走行支障が起こり得るなど土木工事の問題も告発している。また、香港紙は、高速鉄道の建設に携わった技術者が、工事代金にからむ汚職の結果、手抜き工事が現場で横行したと証言し、「自分は絶対に乗らない」と、不信感をあらわにしていると伝えた。……京滬線は全長1318キロの専用路線で、所要時間は在来線の半分以下に短縮される。2008年4月に着工し、強制的な土地収用が可能な共産党政権下ながら、わずか3年あまりの突貫工事で建設された。国威発揚の期待も高い京滬線は安全性を置き去りにしたまま動き出す懸念がある。
2011年6月24日 産経ニュース 

■人命軽視・人権無視の強権政府でも、さすがに時速350キロは速過ぎたのでしょう。鉄道省の元幹部が「乗らない」と言っているのですから、チャイナ沿岸部を飛び回ってビジネスに精を出す皆様もよくよく考えて御利用になるべきでしょうなあ。やっぱり、クワバラ、クワバラであります。


北京と上海を結ぶ中国の高速鉄道(中国版新幹線)をめぐる“ドタバタ劇”が続いている。7月1日だった正式開業日の予定が突然、前日の6月30日に前倒しされた。関係筋によると、中国共産党創立90周年の記念日(7月1日)に開業報道がかぶらないよう、党が開業日の前倒しを指示したという。中国鉄道省は23日、記念式典を30日に行い、7月1日に開業すると発表。しかし24日になって突然、30日午後に開業するとして乗車券の発売を始め、一番列車は約15分で売り切れた。2008年4月に着工した同路線は当初、来年の開業予定だったが、共産党90周年に合わせて工事を急がされた経緯があり、開業日まで振り回された格好だ。…… 

■こういう政治的な意図で無理を重ねるとトンデモない大事故が起こるものであります。旧ソ連風に言えば「同志の英雄的労働」によって奇跡的に90周年に間に合った!ということになるのでしょうが、精密な巨大システムである新幹線を政治の玩具にして乱暴に扱ってはなりますまいぞ!


……米国で特許申請する計画が報じられたメーカー、南車集団(北京市)が地元紙の取材に「独自開発だ」と強く反論。同社の主張では、川崎重工業などから導入した技術は、時速200~250キロの「CRH2」型車両どまりで、同300キロで北京-上海線を走る「CRH380A」は完全に国産だと主張した。特許申請すれば米国で日本との特許紛争になる可能性があるが、中国のインターネット上では、「中国の国産化率は90%以上」「日本は中国の鉄道輸出を妨害している」などと発言が相次ぎ、模倣を指摘した日本を非難する“逆ギレ”の様相すらみせ始めている。……
2011年6月26日 産経ニュース 

■心配なのは「独自開発だ!」と言った舌の根も乾かぬうちに大きな事故が起こった場合、ころりと話を裏返して「事故の原因は日本の技術だ!」とまたまた騒ぎ立てて責任転嫁するのではないか?という点です。従って、真面目に日中友好を考えている方面から、危険箇所を丁寧に指摘する声を大急ぎで上げておく必要があるでしょうなあ。一体、何処の国がチャイナ新幹線を喜んで購入するのか?今のところは分かりませんが、深刻な事故が起こる前にマトモな運行ができるように地道な改良改善をしつこく求めるキャンペーンを張るべきでしょう。日本はODA政策を逆利用されて資金も技術も大盤振る舞いさせられて、今更、何も言えない愚かしくも恥ずかしい立場に置かれてしまっておりますから、チャイナ新幹線が日本の新幹線と同様に「無事故運行」をずっとずっと続けられますように、と国を挙げて天神様に?お祈りしているしかないでしょうなあ。クワバラ、クワバラ。

■まったく新幹線とは関係がないとは思うのですが……


……広東省深セン市の地下鉄4号線の清湖駅にあるエスカレーターで10日午後9時すぎ、エスカレーターが突然逆行する事故が発生、4人が負傷した。……駅の出入り口につながる上りエスカレーターが逆行し、利用者が転がり落ちた。負傷した4人のうち女性1人は顔面から出血し、病院に運ばれ手当てを受けたという。北京でも5日、地下鉄駅でエスカレーター事故が発生、1人が死亡、約30人が負傷した。北京のエスカレーターは米国に拠点を置くオーチス社製だが、広州日報によると今回はフランスのCNIM社製。
2011年7月11日 産経ニュース 

■これは製品よりも「メンテナンス」の問題だと思われる事案ですが、外国製品が死者を出す事故を起こす!という実に嫌な予感のするニュースなのであります。それも地下鉄駅という鉄道関連の施設内でのことですからなあ。それにしましても夜の9時に「上りエスカレーターが逆走」し始めたら誰も立ってはいられませんぞ!それも北京などは旧ソ連をお手本に核戦争用シェルターにも使える大深度設計ですからエスカレーターも長くて速い!のですからちょっとした事故が大惨事になり兼ねません。エスカレーターを供給したのが米国とフランスという原発製造に熱心な国だというのも、嫌な感じのする偶然の一致ではあります。やっぱり、最後もクワバラ、クワバラというお話になりました。


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また斉南事件? 其の壱

2011-07-11 16:07:57 | 外交・情勢(アジア)
■諸事情が重なりブログが開店休業状態になっておりましたが、大病を患ったり、情報が遮断されているチベットに極秘に潜入したり、あるいは放射能汚染に怯えて遠い南の島に避難していた……などということは一切ございません。大震災以来、とても大きな疑問が頭から離れず、もっぱら雑誌類を買い集めて読み漁り、膨大なネット・ニュースを覗いては少しでの役立つ情報を探したり、偶にブログの下書きをすることもありましたが、どれも真相からは遠く隔たった瑣事ばかりと思われると途中で投げ出してしまうこともしばしばでありました。

■原発事故で国民の信頼を失った新聞・テレビの大手マスコミは不毛で不愉快な「菅降ろし」の寸劇を熱心に報道しているようですが、これまた重要な問題から国民の目を逸らしてしまう結果になりそうな気がしますなあ。菅アルイミ内閣が下手なコメディを演じる度に永田町周辺では時代遅れの三文芝居や田舎芝居が演じられ、震災からの復興も原発事故の収束も、まったく未来の光が見えない絶望的に政治は停滞しての堂々巡りが続いておりますが、アフリカには54番目の国家が分離独立し、IMFの専務理事も交代、南シナ海の波は荒くなる一方だし、チャイナは2隻目の航空母艦を「国産」兵器として建造中との情報も入っておりますが、日本政府の影は何処にも見当たらないのであります。少なくとも外交分野に関しては政権交代はしなかった方がよかったのかも?また、野に下った自由民主党こそが怪しげな原子力行政を強引に推し進めて来た責任をすべて追わねばならない立場なのですから、政権交代は原発事故の後に起こった方がよかったのかも知れません。そんな事を思う今日この頃なのでありますが……。


2011年7月10日、開業したばかりの北京・上海間高速鉄道で事故が発生した。北京発上海行きのG151は山東省済南市付近で2時間以上にわたり立ち往生。計19本に遅れが出た。人民網が伝えた。以下はその抄訳。
G151は午後3時半に北京南駅を出発。時刻表通りならば午後9時に上海駅に到着する予定だった。ところが午後5時ごろ、山東省済南市付近に到達した際、雷雨の影響で電線が故障。立ち往生してしまった。北京・上海間高速鉄道に採用された新型車両は密閉性の高さが売りだが、これがあだとなり乗客は2時間以上もの間、蒸し風呂のような車内に閉じ込められることとなった。総工費2200億元(約2兆7400億円)を投じ、「世界で最も安全な高速鉄道」とうたわれた「夢の超特急」が開業わずか11日目にして故障したことは大きな話題となっている。
2011年7月11日(月) Record China 

■技術を供与したJR東日本と川崎重工が「厳重注意」を申し入れたそうですが、菅アルイミ政権はいつもの「柳腰外交」を展開中?らしく、目立った動きは見られないようです。「現役」の総理大臣として訪中を熱烈歓迎するよ、と甘い声を掛けてくれる国内ばかりか国際的にも四面楚歌状態の菅アルイミ首相にとっては政権延命の切り札になるかも?と藁をも縋る思いでしょうから、東京電力の本社に怒鳴り込んだ勢いで北京・上海に乗り込むことなど金輪際ないのでしょうなあ。「柳腰外交」を反省したらいよいよ政権が押し潰されると怯えている菅アルイミ政権の弱みと足元を見て、どんどん尖閣諸島周辺を我が物顔でチャイナの船が跋扈しているとか……。

■さてさて、「パクリだ!」「偽物だ!」と悪評高いチャイナ新幹線のお話であります。巨大地震が起こったわけでもなく、大雨や大雪、あるいは大嵐で突風竜巻が発生したのでもないのに雷の影響で事故が起こって2時間も停止とは、一体、どんな電気配線をしているのでしょうなあ?!中国共産党創立90周年を祝うとて、鳴り物入りで強引に開業したチャイナ新幹線が停止した場所が山東省「済南市」付近というのは出来すぎた歴史パズルみたいな話であります。教科書問題・歴史問題にも深く関わる斉南事件が起こったのは1928年(昭和3)の5月3日でした。国民党軍が北上して共産党軍を攻撃した「北伐」の中で起こったおぞましい虐殺事件でありました。男10人と女2人の12人が殺害され、負傷後死亡は男2人、暴行侮辱被害は30余人、陵辱2人、掠奪被害戸数136戸等々、被害人員は約400との記録があるそうです。実質的に蒋介石に騙されて油断し、事態の急変に慌てて対応した日本の守備隊も死者26名、負傷者157名の被害を受けております。

■国民党軍と日本軍との間に起こった痛ましい事件ですから、北京政府は第三者の立場で好き放題に政治宣伝の材料に利用して真相がなかなか分かり辛くなってしまったようですが、地道な研究が実って最近では事件の経緯の全貌がほぼ明らかになっているようです。蒋介石自ら「略奪許可」をした事実があり、何せ「良い鉄は釘にならず、良い人は兵にならない」お国柄ですから凄まじい略奪行為が起こったのは当然で、殺害された人達の検死記録は文字を読むだけでも目を背けたくなるような有様で……。日本では雷様は菅原道真公の怨霊として畏れられ、大宰府を筆頭に日本中に天神様が祭られておりますが、チャイナの「国産」新幹線を止めたという異常な?雷雨も何かの祟りなのかもしれませんぞ。クワバラ、クワバラ。


……中国の鉄道車両メーカー、南車集団が中国版新幹線の車両「CRH380A」の技術特許を米国で申請する方針……。南車集団は独自開発を主張しているが、実際は川崎重工業など日本企業が開発した新幹線「はやて」の技術供与を受けて改造した。中国版新幹線には手抜き工事などの指摘もあり、北京-上海線の7月1日開業は“見切り発車”だとの声が高まっている。
中国鉄道省は23日、北京と上海を最短4時間48分で結ぶ高速鉄道「京滬(けいこ)線」を中国共産党の創立90周年記念日の7月1日に正式開業させると発表した。南車集団が特許の申請を予定している「CRH380A」型車両も採用されている。同社は、営業運転時の最高時速を引き上げるため車両の車台部分やロングノーズ(先端部)などが、中国の独自技術で作られたなどと主張して特許申請する。しかし、中国鉄道省の元幹部、周翊民氏が証言したとして21日付の中国紙、21世紀経済報道が報じたところによると、中国の高速鉄道車両は日本やドイツからの導入技術がほとんど。欧州系メーカーから「技術供与はあくまで中国国内での使用に限定している」として、車両輸出は契約違反と警告されているという。川崎重工は「どのような技術が特許申請されるか確認が取れないので、回答を差し控えたい」としているが、欧州も含めた特許紛争に発展する可能性もある。…… 

■今の菅アルイミ政権が日本のメーカーの後ろ盾となって外交的に解決する姿勢を見せる可能性はゼロですから、川崎重工も涙を呑んで「静観」するしかありますまい。経済危機に直面している欧州と上手に手を組んでチャイナに抗議するような大きなシナリオを描ける人材も見当たりませんから、チャイナは大手を振って特許申請をどんどん進めて行くことでしょう。こちらの方は雷雨ぐらいでは止まりそうもありませんなあ。

カダフィからの贈り物 其の六

2011-03-03 10:16:35 | 外交・情勢(アジア)
■『其の伍』の記事が続きます。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の記者は1日、警官に尋問された上で、上海市黄埔区当局がピース・シネマ周辺の地域を外国人記者の立ち入り禁止区域に指定したと告げられた。警官は「今から取材のためにここに入ってはならない」と述べた。別のWSJの記者は27日、北京・王府井地区での取材には特別許可が必要だと伝えられた。警察は同日、マクドナルド店があるこの通りで数人の外国記者を拘束したり暴行したりした。ブルームバーグ・テレビのスタッフは5人の私服警官に捕まり、路上で引きずられ、ほうきの柄で殴られた。…… 

■五輪大会の大成功劇の裏側で、一体、どれほどの惨劇が起こっていたのか?それを丹念に取材して報道するのは不可能に近く、提灯記事を書くためなら下にも置かない大サービスで取材はとても楽だったに違いなく、僅かに環境美化を名目にして追い出された北京市民の悲劇を報道したマスコミはありましたが、全貌を知るには程遠いのが実情でありました。五輪大会の開催中でも目には見えない線で「禁止区域」は設定されていたはずですし、インタヴュー要員は当局が用意していた可能性が高いと考えるべきなのでしょうなあ。米国のマスコミ人だったればこそ、箒の柄で殴られたくらいで済んだわけで、集会参加者として拘束されたらどんな目に遭わされるやら……。


ジャーナリスト保護委員会のアジア・コーディネーター、ボブ・ディーツ氏は声明で、「08年の五輪以降に見られた、外国記者に対する最悪の攻撃だ」と強調した。姜瑜副報道局長は、中国の規制は五輪前の水準に戻ったのかとの質問に対して、同意する人へのインタビューを認めるという政府指令は依然生きていると述べた。…… 

■五輪大会が終わると10年も経たずに独裁体制は崩壊するという歴史法則に敢然と挑戦している北京政府としては、外国メディアに何を言われようとも絶対に第三次天安門事件だけは起こすわけには行かない!というのが本音なのでしょうなあ。


ハンツマン駐中国米大使は2月28日、声明を発表し、27日に「不法に拘束ないし攻撃された」何人かの外国記者と会ったとし、「この種の攻撃や脅しは受け入れられず、極めて不穏だ」と述べた。同大使は偶然に20日の集会の場所に居合わせたが、「現場にいた外国記者とその所有物を中国の公安当局が守れなかったことに失望している」と強調した。欧州連合(EU)の在北京代表部も、外国記者の権利を尊重するよう中国当局に申し入れた。…… 

■現在も続く経済体制と同様に「チャイナの特色ある」という接頭語を付けて考えないと、「自由な取材」に関して相互に大きな誤解が生まれてしまいます。「中国の公安当局」が命懸けで守らねばならないのは外国人記者の安全や権利や自由などではありません。北京五輪も上海万博も「大成功」させたのですから、国際世論の御機嫌取りをするのにも疲れて来たところでもあり、チュニジアに始まった茉莉花革命などという有難くない「流行」が伝染して来るのを予防するためには、建国以来の伝統に戻るしかないとも言えそうです。


一方で、抗議集会への新たな呼び掛けがツイッターやその他の外国サイト上に現れた。ツイッターなどは中国では遮断されているが、ネット検閲を回避できる仮想プライベートネットワーク(VPN)を通じて見ることができる。一つの呼び掛けは日曜日ごとに35の都市で行おうというもので、もう一つは毎週金曜日には職場や学校に行かないことを呼び掛けている。こうした呼び掛けの背後にだれがいるのかは不明だ。これまでの呼び掛けは実際に多くの抗議活動を生み出したとは見られないが、指定された抗議地点は日曜日には買い物客でにぎわう場所であることから、これらの人々と呼び掛けに応じた人たちを区別するのは難しい。
2011年3月2日 ウォールストリートジャーナル日本語版 

■「木を隠すなら森の中」でありますから、人を隠すには雑踏が一番。これからも「野次馬」や「そぞろ歩き」に対する警戒が強まる一方でしょうから、現地に滞在している皆さんも旅行で訪れる皆さんも、巻き添えを喰わないように細心の注意を払って欲しいものであります。それにはネット上に飛び交う「集会予告」をしっかりと把握して、その時、その場に居合わせないようにする工夫が必要かも知れません。しばらくは息苦しい緊張が続くのでしょうが、それが収まる時が来るのか?大陸的な気長さでずっと続くのか?どこかで本格的に発火して爆発するのか?それは誰にも分かりませんが、唯一つ、間違いの無いことは万が一の場合、日本政府は現地の邦人を救出する手段をまったく持っていないということです。従って、「君子危うきに近付かず」を肝に銘じて不要な「そぞろ歩き」は我慢して、妙な動きが見えたらさっさと自力で帰国できる準備は怠らないことが肝要かと存じます。御用心、御用心。
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カダフィからの贈り物 其の伍

2011-03-03 07:38:23 | 外交・情勢(アジア)
■1989年の主要な出来事を時系列で見ると、
3月、ソ連で複数候補の選挙実施。
5月、ゴルバチョフ書記長が訪中して中ソ和解。
6月、天安門事件。
6月、ポーランドで自由選挙
10月、東ドイツ書記長ホーネッカー退陣
11月、ベルリンの壁崩壊。
12月、マルタ会談で冷戦終結。ルーマニアのチャウシェスク刑死。
という具合ですから、東欧諸国が民主化する前に起こった天安門事件が、どれほど大規模に発展しようとも外国軍が惨事を止めるために出動するような時代ではなかったのでした。

■東シナ海を欧米の軍艦が好き勝手に遊弋していたのは19世紀の清朝末期で、日本はその様子に驚いて倒幕運動が起こって明治維新を迎えたのですが、大陸では1911年の辛亥革命が起こった後でもロシア・イギリス・アメリカ・フランス・ドイツ・ベルギーの列強はずっと居座ったままでした。世界大戦に中華民国が勝者の連合国側で参戦したことで一応の独立を取り戻した後、国共内戦に勝った共産党軍が中華人民共和国を建ててロシアにお願いして北に帰ってもらい、朝鮮戦争では国連軍相手に「義勇軍」を送って北朝鮮を助けて東側の国境を固めることに成功し……という経緯があって、二度と再び外国軍が沿岸部に上陸して大陸内部を闊歩するような事は許さないという国是の下に今の膨張戦略があると考えられましょう。

■もしもリビアにNATO軍や米軍が直接的に介入することになれば、それが先例となって独裁政権と民主化を求める国民との衝突が起こる度に他国が軍事介入する大義名分が作られることになりかも知れません。北朝鮮が崩壊した場合のシミュレーションもせず、法律の改正も怠っている日本政府は蚊帳の外に置かれるのは仕方がありませんが、北朝鮮よりも前にチャイナが大混乱に陥った場合の対応策を大急ぎで考えておかねばならないかも?今の政府には絶対に無理な注文なのは明らかなのですが……。

■独裁体制が崩壊するもう一つの指標が五輪大会だという説もあります。ベルリン大会を盛大に開催したヒットラー、ボイコット運動に耐えてモスクワ五輪を開催したソ連、そして、北京五輪が強引な手法を総動員して「大成功」したのであります。


中国はネットでの「ジャスミン革命」の呼び掛けを抑えようとする中で、2008年北京五輪前に緩和された外国記者の取材制限の一部を元に戻したようだ。 中国の警察当局は過去数日間に、反政府活動家が静かな「そぞろ歩き」による抗議を呼び掛けた上海と北京の場所での取材には特別許可が必要で、これがなければ取材は禁止される旨、数十人の外国記者に通告した。…… 

■最初の集会参加の呼び掛けメールが発信された時、指定された場所に多数の「野次馬」が集まったとの報道がありましたが、「そぞろ歩き」も同様で、ちょっとした切っ掛けがあれば偶然に居合わせた人々が一瞬でデモの参加者に変じて大騒ぎが突発的に起こるというわけでしょう。狐と狸の化かし合いで、「上に政策されば、下に対応策あり」の実に逞しいお国柄ですから、外国記者の皆さんも取材には大変な御苦労があるのでありましょう。


姜瑜・中国外務省副報道局長は1日の記者会見で、外国人記者のインタビューに関する規則は変わっていないとし、取材には対象となる個人ないし企業の同意が必要だとする政府指令を指摘した。しかし同時に、地方政府は「障害のないインタビュー環境」を確保するために「特別な詳細手順」を実行できると述べた。…… 

■正確に記せば「障害」というのは民主化要求や政府に対する批判意見が飛び出すことで、「特別な手順」というのは共産党による「検閲済み」のハンコのことでしょう。「個人ないし企業の同意」というのも独特な表現で、インタヴューを受ける自由が保障されていないのですから、同意するのは政府当局だけの権利となりましょうなあ。

カダフィからの贈り物 其の四

2011-03-03 07:38:07 | 外交・情勢(アジア)
■『其の参』の記事を読み続けます。

……ウォールストリート・ジャーナルも22日の「北京とアラブの反乱」と題する社説で、経済成長が目覚ましく、経済の自由は認められていたものの政治の自由がなかったバーレーンでの反政府運動の燃え上がり現象を中国にも適用し、「経済発展はやがては政治権力独占の失陥につながる」という中国系米人学者ミンシン・ペイ氏の言葉を紹介して、中国の現政治体制への危機を警告した。…… 

■国民一人当たりのGNP1万ドル、そして2万ドルが分岐点となって独裁体制は崩壊するという説は歴史的に証明されていることになっておりますし、エマニュエル・トッド氏の人口動態に基づく出生率の低下も民主化への指標となりましょう。トッド氏の計算では「中国は人口学的にはとうに初期の民主社会であっておかしくない」との話が今日の読売新聞7面に載っておりました。無理に無理を重ねて一党独裁を守り続ける北京政府は経済学と科学に真っ向から挑戦しているというわけですなあ。


……共和党保守派ではさらに明確に「米国の盟友だったエジプトのムバラク大統領に民主主義的ではないという理由で即時辞任を求めるならば、なぜ中国の独裁政権の辞任を求めないのだ」(ラジオ政治評論で有名なラッシュ・リムボウ氏)というどぎつい意見も頻繁に表明されるようになった。 

■中東和平の要(かなめ)としてエジプトを援助しつつ利用して来た歴代大統領と同じようにエジプトとの友好関係を守っていたオバマ大統領が、ムバラクと民主主義を天秤に掛けねばならないというのは実に皮肉な話で、最初から民主主義を求めて立ち上がった民衆達を非難するという選択肢は無いのですから、リムボウ氏のような意地悪な質問に対しては「チャイナ国内ではまだ茉莉花革命の動きが無いから」と答えておけば済むかも知れませんが、現実的には反政府運動を心待ちにしているような発言は出来ないでしょうなあ。


大手紙ニューヨーク・タイムズも最近の社説で「リビアのカダフィ政権は武装ヘリコプターで自国民を殺し始めたが、こういう自国民の大量殺害をいったん始めた政権は中国以外は必ずそう遠くない時期に倒れていった」と述べ、中国当局の天安門事件での自国民主活動家の殺害に言及した。
2011年2月24日 産経新聞 

■米国の大手新聞までが「天安事件」を想起して社説に取り上げるというのも、カダフィ大佐の御蔭と申せましょうか?実際に2月4日の時点でオバマ政権の中枢では「カイロの天安門事件」を懸念する意見が出ていたようですから、カダフィ大佐の演説よりも前に米国政府はあの事件を思い出していたようです。まあ、チュニジア以来、群集が溢れる広場と広場に通じる道路上に戦車が並んでいる光景が世界中に発信されれば、「どこかで観たなあ」と当時を知る人たちは同じような既視感に襲われていたに違いないでしょうし、最も敏感に反応したのは北京政府内の要人だったかも知れません。


リビアのカダフィ政権が反政府勢力への武力弾圧を続ける中、イギリス政府などが、NATO(北大西洋条約機構)の部隊をリビアに派遣する検討に入ったもよう。……反政府側を空から攻撃させないため、リビア上空の飛行禁止区域の設定や、周辺海域への艦船派遣を想定しているとみられ、カダフィ政権に対する圧力はさらに高まっている。……
2011年3月2日フジテレビ系(FNN) 

■天安門事件の際は、民主化を求めて集まった学生達は実質的に欧米の民主国家に見棄てられてしまったのでしたが、当時はまだ冷戦構造が本当に崩れるのか?と世界中の国々も半信半疑でしたし、仮に米ソの話し合いがまとまったとしても冷戦後の世界がどうなるのやら、さっぱり分からない状態でもありました。