旅限無(りょげむ)

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一つのテレビ史の終わり

2005-04-29 07:40:18 | マスメディア
■テレビ朝日が公開している公式サイトに、『朝まで生テレビ』がこれまでに扱った問題と概略を紹介するバック・ナンバー(朝生過去データ)が掲載されている。しかし、1996年5月「激論!死刑制度の是非?!」以降のデータしか残っていないのは何故だろう?
これが情報の限界となってネット百科事典の『ウィキペディア』も、まったく同じ回からのデータしか掲載していない。
1996年、つまり、その前年にオウム真理教の毒ガス・サリン事件が起こった影響が、テレビを代表とするマスコミに今も深々と残っている証拠なのではなかろうか?

■テレビ朝日だけを責めても仕方がないのは当然だが、「幸福の科学」と「オウム真理教」という当時の若者向け新興宗教の代表格を土俵に上げて、「宗教討論」を見世物にしたのは『朝まで生テレビ』だけである。このイベントが日本のテレビ史に刻み込んだ意味の大きさを、企画・制作・放送した自分達が一番良く知っているとしか思えない。
「救済」「悟り」「あの世」「神秘体験」等々の、お茶の間テレビには最もふさわしくない危険な用語を一晩中垂れ流しにして、オウムの一方的勝利を演出してしまった責任は重い。
この深夜の似非「宗教議論」が、オウム真理教に社会的認知を与え、マスコミとのタイ・アップから政界進出へと雪崩れ込む「弾(はず)み車」の役目を果たし、ワイド・ショーから娯楽番組にまで「最終解脱者」を玩具のように出演させて、お布施ならぬ出演料を支払っていたのは民放各局である。

1995年3月、そこに日本のテレビ史から決して消えない亀裂が入っている。この前後を平然と押し渡って今もテレビで「仕事」をしている人々の言動には注目していなければならない。
何でも、TBSというテレビ局は、弁護士一家を皆殺しにした共犯となって「死んだ」らしいけれど、いつの間にか生き返って、今でも「死んだ」テレビ局で、「死んだ」人が、有り難い「法話」を放送して下さっているらしい。

そして、当の『朝まで生テレビ』は、1996年5月以降、オウム事件に関しては沈黙を守り続けて、2004年の3月になって、1月の「激論!今、なぜ憲法改正か?」、2月の「激論!崩壊?日本の年金制度 」に続いて、3月になって「激論!オウム・連合赤軍は終わらない?! 」と題したまるでまとまりの無い、学生運動を懐かしむような奇妙な番組の切っ掛け作りに使われただけであったと記憶する。

■そして、サリン事件から10年目の今年、あれだけ儲けてハシャイだ自らの姿を検証する番組は、少なくとも新聞のテレビ欄には現れなかった。毒ガス被害者の実情を、少しばかり同情気味に伝える番組が散見されただけで終わった。この事に驚愕する日本人は、どれほどいたのだろう?既に、テレビは家具の一部、それも無くても良い物になり果てているのではなかろうか?誰も真剣に相手をしてくれないのに、虚しいだけの「視聴率競走」を今も続けるテレビ業界に未来は無いと想うのだが……。
あの恐ろしい事件が起こって、米国の情報担当者が大挙して来日していた時も、日本のテレビは何事も無かったように放送を続けていた。
「最終解脱者」を名乗る男を、今盛んに使われる「公共」の電波に乗せて、日本の津津浦浦に楽しげな笑い声と共に紹介したテレビは一つや二つではなかった。
個人的に、今、株買占め騒動の渦中に有る某テレビ局では、当時若者に大人気だったトンネルズという二人組みと、麻原某を共演させて、その一人に
「麻原さんは、その髪の毛を何で洗っているんですか?」
「ベビー・シャンプーを愛用しています」
という「特ダネ」を手に入れて、スタジオ中が大笑いしていたのを、私は決して忘れない。

■奇妙な擬似裁判イベントを放送したNHKと、それを妨害した政治家や管理責任者の問題が出たり消えたりしているけれど、これもウヤムヤの中に忘れ去られるだろう。
今年の紅白歌合戦の放送時間をすべて潰して、問題のETV特集を「圧力前」の状態で全国放送(地上波と衛星放送)して見せれば良いのである。民放テレビの看板キャスター(この正体が今もさっぱり分からない)や、活字メディアの代表者と関連する政治家を一同に集めて、『朝まで生テレビ』をNHKが制作して生放送すれば、全ての問題は解決する。その出来が良ければ、受信料の不払い運動も収まるだろうに……。誰も見ていない番組を巡って、「報道」全体の問題が論じられるのは、実に奇妙である。
オウム事件の後始末もせずに、次のオウム事件を待っているようならば、テレビはデジタル化する前に消滅するのではないのか?既に、老人と小中学生しか観なくなったテレビを、今世紀に生き残らせるのは至難の業だと思う。「フジテレビが無くなってしまう」と叫んだのは、業界内の人々だけだったではないか?圧倒的な支持を得ているはずの人気テレビ局を守ろうと、何処かで視聴者のデモが起こったのだろうか?寡聞(かぶん)にして知らないのは私だけだろうか?
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タバコの雑談

2005-04-26 06:35:31 | 日記・雑学
■哲学者のカントは、思索にタバコが必要だと言いました。ヘーゲルは自画像にクレイ・パイプを持っている姿を残しました。ショーペンハウエルは「ゴルゴ13」のように、細巻きシガーを愛用しました。但し、父親が自殺した経験から「命大事」「健康第一」をモットーとしたショーペンハウエルは、高級葉巻の半分しか吸いませんでした。理由は、「後ろの半分は健康に害が有るから」でした。一生ホテル暮らしをしたショーペンハウエルは、身嗜(みだしな)みにも気を使って、小まめに理髪店に通いましたが、首筋には絶対に剃刀を当てさせませんでした。理由は「危ないから」。
 親から相続した財産を上手に投資運用して、独身のまま死去した時には、財産が随分と増えていたと言いますから、時代を先取りしたおしゃれな財テクおじさんだったようです。インドのウパニシャット哲学に大感動して、「虚無主義」のアイドルになったのですが、御本人は一度も自暴自棄にならずに、健康第一、運動と心の癒しのためにムク犬の「アートマン」君と毎日散歩して、フルートの練習を欠かさずに、指と頭をボケないように努力していた変なペシミスト哲学者でした。

■幕末の歴史もので何度も取り上げられる長州・萩の松下村塾でもタバコ騒動が起きました。先生の吉田松陰が、「タバコは性(しょう)になる」、つまり強い習慣性と中毒性を嫌って、禁煙を勧めました。愛煙家の弟子の中から、続々と煙管(きせる)を折って見せて、先生を感動させる者が続出。唯一人、先生のご指導を聞き流して芸者遊びしていたのが高杉晋作でした。彼の後輩達が、明治政府の官僚群となって行きました。
 明治時代と言えば、在野の雄として名高い一万円札の福沢諭吉先生は、タバコ好きのアイドルです。生まれ付いての無類の酒好きで、酔った勢いで何度も失態を犯し、飲んでも二日酔いでも、勉強の時間が減ってしまうし、酒代で図書購入費も減ってしまう!悩み抜いた末に、「タバコなら酒より安いし、二日酔いはしない」という友情溢れる助言に飛びついた先生は、無類の愛煙家となって、ますます酒が旨くなってしまい、酒飲みと愛煙家のアイドルとなりました。
まさか、名門慶応大学で反・禁煙運動が盛り上がったりしていませんか?していませんよね。ちょっと残念。

■今は亡き、天才的なコメディアン、レオナルド熊さんの傑作コントに、学校に呼び出されて担任から娘の非行を注意される話がございました。先生役の石倉三郎さんが怖かった。


――地下足袋にニッカ・ポッカ、頭に手拭の鉢巻して毛糸の腹巻に両手を突っ込んで熊さん登場。閻魔帳を持った石倉先生は背広姿――
「お宅のお嬢さんがですねえ、困ったことになっていますよ。」
「エッ、うちの馬鹿娘が、また何かしたんですか?」
「タバコを吸っているんですよ。タバコを!」
「ナンダ、脅かさないで下さいよ、先生。タバコくらいの事で呼び出されちゃ、こちとら、仕事が有るんすから……」
「何を言っているんですか!貴方は父親でしょ?こういう小さな事から大きな問題が起きるんですよ!第一、未成年者の喫煙は、法律で禁止されているんです。法律は守らなければいけないでしょ?」
「そりゃ、そうですけどね。先生は、タバコ吸わないんすか?」
「私も吸っていますよ。でもね、ちゃんと法律を守って、二十歳になってから吸い始めたんですよ、私は!」
「エッ!先生、先生って、下手に出てたけど、あんた!あんたは馬鹿なんじゃないのか?」
「失礼な!何が馬鹿なんですか?」
「だって、そうでしょうが。タバコなんて物はネ、生意気盛りの自分に、オヤジのをちょっと悪戯してさ。カッコつけている内に、癖になって止められなくなるって物でしょ?二十歳にもなってさ、タバコが体に悪いのが、あんた分からなかったのかい?あんた馬鹿だよ!」


という大変に論理的で、タバコに関する人情を見事に抉(えぐ)った作品がございました。

■そう言う自分は、とつらつら思い出してみますと、新聞配達をしながら、大学に通っていた時に、忙しい年末の集金に走り回っていて、「いつもご苦労様」と、ちょっと暗い軒先で差し出された小箱を、チョコレートかと思って気楽に礼を言って受け取ったのが最初でしたなあ。先輩に巻き上げられるのも癪(しゃく)だし、捨ててしまうのも他人(ひと)の親切を無にするようで、心は決まらないし、愛煙家の先輩に相談してみると、ジャズや芸術、哲学に恋愛、タバコを必要とする場面の講釈を一晩中聞かされて、夜が明けても結論が出ず、じれた先輩が「もうイイ!俺が吸ってやる!」と箱を取り上げてストライプを毟(むし)り切ろうとするのを、「ちょっと、待って下さいよ!」と取り返した勢いで……。
 旅や読書、結構あれから、タバコには助けられているような気がしますなあ。不味いと思った時には数が減り、ああ、美味いと思った時には楽しんで、世論を考慮して周囲に迷惑のかからないように、時には喫煙所を探して歩き回る。そんな毎日でございます。

■欧州人が新大陸で体験した最初のタバコは、文化の問題でした。それがあっと言う間に、経済貿易問題となって、税金問題も加わってから、イスラム圏では宗教問題となりまして、その後再び欧州で文化の問題となりました。そして、最近、急にタバコが健康・医学問題となってしまいました。タバコの問題とは何なんだろう?と、禁煙運動家の皆さんを煙に巻きながら、また一服。

くれぐれも、勤労青年に、親切心でもタバコを贈ったりしては行けませんよ。

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草葉の陰を考える

2005-04-25 12:06:00 | 社会問題・事件
■いい年をした親不孝者を詰(なじ)る時に、最も便利で分かり易い慣用句が「○○が草葉の陰で泣いているぞ。」というものであります。「草葉の陰」には二つの意味が有りまして、墓地や墓場が第一の意味でして、二番目が黄泉(よみ)の国、つまり「あの世」という意味でございます。
 仏教もキリスト教も根付かなかった日本列島には、死んだ者は地の底に有る黄泉(よみ)の国に行くという話が広まっていたらしい。『古事記』には、火の神を生んだのが原因で死んでしまった伊邪那美命(いざなみのみこと)を連れ戻そうと、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が黄泉の国に出掛けて行って、「殿の縢戸(とののさしど)」という難しい名前の入り口を通って、割りと簡単に死んだ奥さんに会ってしまいますな。その頃は、黄泉の国の場所も入り口も分かっていたようです。
「出雲の国と伯伎(ははき)の国との堺の比婆(ひば)の山に葬(ほうむ)りき」と書かれていますんで、今の広島県と島根県の県境になっている比婆山の何処かに埋葬したんでしょうが、「根の国」出雲に黄泉の国への入り口が有ると、昔の人は信じていたんでしょうなあ。

■何はともあれ、生きている伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、「うつくしきあがなにものみこと、あれといましとつくれるくに、いまだつくりおへず、かれ、かえるべし」とまあ、要するに「お前と俺とで作っている国が、まだ作り上げられていないじゃないの。さあ、帰ろうよ。」って言ったんですな。すると、黄泉の国に住んでる?死んでしまった伊邪那美命(いざなみのみこと)が言うには、
「くやしきかも、とくこずて。あはよもつへぐかしつ。しかれどもつくしきあがなせのみこと、いりきませることかしこし。かれ、かえらむとおもふを、しばらくよもつかみとあげつらはむ。あをなみたまひそ。」つまりですな。「何でもっと早く来てくれなかったのよ。悔しいわ。もう(黄泉の国の料理を)食べちゃったから、本当は帰れなくなっちゃったんだけど、あんたが来てくれて、嬉しくなっちゃったから、黄泉の国の神様と相談してみるからね。ちょっと待っててね。」なんて言ってます。
 黄泉の国に来ても、何も食べないで我慢している間は、お迎えに来て貰えるとこの世に戻って来れるらしいんです。でも伊邪那美命(いざなみのみこと)さんは、余程お腹が空いていたのでしょうねえ。旦那も迎えに来ないし、生んだ沢山の神様も来ないし、もしかすると女性特有のストレス解消大食い症候群が始まってしまったのかも知れませんなあ。

■伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、「うん、じゃ待ってるね。」と言ったかどうか、『古事記』には書かれていませんので分かりません。でも、女性とのデートでデパートなんぞに足を踏み入れた男達ならば共感できるでしょうが、「ちょっと待っててね。」と化粧品だの衣服だのが並んでいる売り場に吸い込まれて行った女性は、絶対に「ちょっとの時間」には帰って来ません!「ちょっとというのは何分のことだろう?」とか、「一体何を買うんだろう?」とか、無駄な自問自答などしている内に、むかむかと嫌な感じになって参りまして、よせば良いのに、ずかずかと聖域に踏み込んで、うっかりタブーを破ってしまいますな。「早くしろよ!どれだって大して変わんねえよ。土台の顔は同じなんだからさあ。」
 これで楽しいデートは修羅の巷(ちまた)となって、予約していたからとて、無理して食事に行っても砂を噛む様な味気無さ、彼女はふくれっ面だし、視線も合せないし……。
 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)も男ですから、同じことをしてしまいます。でも、さすがに国を生んだ神様ですから、随分と辛抱強く待っていたようです。とは言っても男は男なので、化粧だの衣装の選択だのと、無駄な……いえ、実に大切な女性のタシナミの最中だろうと思って、「見ちゃ駄目よ」と言われているのに、真っ暗な建物の中にずかずかと入っちゃいましたな。

■ばっちり化粧をして、お澄まし顔で歩いているご婦人方は美しいものでございますが、その仕込み中の姿は余り御覧にならない方が宜しいようで、大口開けて唇に紅を引いていたり、間抜けな顔で睫(まつげ)の手入れをしたり、中途半端に裸で、鏡の前と洋服箪笥を往復しながら、誰に向かって言っているのか分からない悪口雑言を言いながら、あれこれ着替えている様子も、余り良い見世物ではございません。
 さてさて、伊邪那美命(いざなみのみこと)はと申しますと、
「この髪型だと、この服は合わないわあ。あら、ちょっとファンデーションの塗りが甘かったかしら?いやあねえ、ここのお肉がはみ出しちゃうわ。まったく、どうしてこう碌な服が無いのかしらねえ。まあ、これでイッカ?そんでえ、帯はどれが良いかしら……」などとオメカシ中かと思いきや、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が割った櫛(くし)に火を灯して中の様子を窺って見ると、暗闇の中に浮かび上がったのは、スプラッター・ホラー映画のファンならば大喜びするような伊邪那美命(いざなみのみこと)の腐乱死体でございましたな。それが、「見たなあ」と言ったってんですから、魂消(たまげ)ますよ、誰だって。

■仏教が入ってくると、西方浄土ってんで、黄泉の国は無くなったも同然で、死んだら阿弥陀様がお迎えに来て下さって、大人しく付いて行くと極楽に着くらしうございますな。でも、戒名(かいみょう)代と葬式代とお墓の永代供養料が必要らしいんですが、仏典の中には書かれていません。誰か御釈迦様の戒名をご存知ですか?
 これがユダヤ教・キリスト教・イスラム教となると、随分話が違って来ますな。この世は宇宙丸ごと、神様お一人が「えいやっ」と創って下さった物なので、どうやら使用期限と耐久期限が予め決められているらしいんです。ユダヤ教は民族宗教なので、自民族(だけ)を救うメシアが現れて、強くて豊かな国を復活させてくれるのが一番大事なんですけれど、キリスト教になると、民族の壁を越えて信者は全員救済するという大きな約束をしてしまったので、あの世の天国についていろいろ考えたようです。
 本当か嘘かは分かりませんが、『聖書』ではイエスという人は「もうすぐ世界が終る」つまり、六千年くらい前に神様が創った宇宙がぶっ壊れる時が近いんだ、と言ったらしいんですね。今もバチカンにミケランジェロが描いた『最後の審判』っていう天井絵が有りますがね、何でもこれまでに生まれて死んだ人たちが一斉に墓から起き出して来て、一人ずつ神様の前に引き出されて、ぶっ壊れるこの世から救い出されて絶対に壊れない天国に連れて行って下さるんだそうです。
 不合格になると地獄に放り込まれてしまいますな。とにかくこの世は粉々になっちゃうんですから、天国に連れて行って貰うか地獄に落とされるかの二者択一の時が「最後の審判」なんですね。だから、その時神様の前に持って行く体が灰になっちゃっていたら大変なんです。着て行く服がないようなもんですからね。日本で不幸にも亡くなった人を親切に火葬にして上げたら、遺族に怒られたっていうのは、こうした事情が裏に有るんです。

■古代のギリシャ人は「地球は丸い」か円筒形だろうと考えていたんですが、その後に広まったキリスト教は絶対にそれを認めませんで、そんな事を言う奴は探し出して全員火あぶりにしておりました。ガリレオさんが苛められたのは有名な話ですし、コペルニクスというポーランドの学者も「地動説」を説明した本の出版は自分が死んでからにする工夫をしております。まったく勉強するのも命懸けでしたな。
 何で、そんな騒動が続いたのか、と申しますと、キリスト教はユダヤ教から「一神教」を受け継いで頑張っておりまして、八百万(やおよろず)の神々を祭っている野蛮人を征服して改宗させなけりゃいけないと言うんで、頼みもしないのに日本までザビエルさんが来ましたね。この「一神教」が問題でして、神様が「最後の審判」をしようとこの世にやって来るんですが、「おお、聖書の通りだ!おお、神よ!」と世界中の信者が平伏さなきゃ行けません。ところが、地球が丸かったらどうなりますでしょう。欧州で「おお、神よ」とやっている時に、地球の裏側では罰当たりな事をしているかも知れませんね。これでは、どうも絵になりません。
 どこまでもまっ平らな大地に世界中の人々が一斉に平伏して、その上に一人の神様が浮かんでいる。これでなきゃいけませんね。ですから、地球が丸いなんて事を言い触らしているような奴は端から捕まえて焼き殺していたんです。

■キリスト教では、きっと信者さん達がしつこく聞いたんでしょうなあ。天国がどんな所なのかをあれこれ描いています。有名なところでは『ヨハネの黙示録』なんていう有り難い本があります。 


……見よ。御座が天に設けられており、その御座にいますかたがあった。その座にいます方は、碧玉(へきぎょく)や赤瑪瑙(めのう)のように見え、また、御座のまわりには、緑色に見える虹が現れていた。また、二十四の座があって、二十四人の長老が白い衣を身にまとい、頭に金の冠をかぶって、それらの座についていた。御座からは、稲妻(いなづま)と、もろもろの声と、雷鳴とが発していた。また、七つの灯火が、御座の前で燃えていた。これらは、神の七つの霊である。御座の前は、水晶に似たガラスの海のようであった。御座のそば近くそのまわりには、四つの生き物がいたが、その前にも後にも、一面に目がついていた。第一の生き物は、獅子のようであり、第二の生き物は雄牛のようであり、第三の生き物は飛ぶ鷲のようであった。この四つの生き物には、それぞれ六つの翼があり、その翼のまわりも内側も目で満ちていた。……『ヨハネの黙示録』第四章

ヨハネという人が幻視した天国は、気楽な楽しい場所ではないようで、何やら恐ろしい場所のような話ばかりが続きます。この一節は、かわぐちかいじさんが描いた『沈黙の艦隊』という漫画にも引用されていたので、覚えている人も多いかも知れません。日本初の攻撃型原子力潜水艦やまと(米国名シー・バット 海の蝙蝠)の司令室にいる海江田艦長の姿が、この黙示録に描かれている神の座の風景に似ているという話でしたね。
 それから、世の若者が熱狂した『エヴァンゲリオン』というアニメの元ネタに使われているイメージは、きっと引用した箇所の最後の部分だろうと思います。

■そんなわけで、日本にはいろいろな「あの世」のイメージや物語が有るんですが、何故か今でも「草葉の陰」という表現が生きているんでございますな。耕作可能な場所は、何がなんでも田畑にしてしまった我らの御先祖様達は、村の外れに墓地を作って草が生えるに任せておいたのでしょうな。一年に決った日だけ、草を刈って御供え物を持って行く祭儀を続けていたんでしょう。だから、「草場」が墓地の意味になって、そこから黄泉の国に繋がっている通路が地中深く続いているんだと考えたんでしょうね。
 人が死ぬと、魂が抜け出て何処かに行くという話は何処にでも有る文化なのですが、漢字を使っている限りは「魂魄(こんぱく)」を知っておくべきでしょうね。魂というのは、息を引き取ると同時に肉体を抜け出て行くもので、魄は遺体の何処かに残っているものだそうです。ただの迷信だとばかりも言えないんですね、これが。
ちゃんと法律に「遺体損壊罪」っていうのが有るでしょう?魂が無くなっちゃったんだから、遺体はただの抜け殻だ、というわけにはいかないんです。では、遺体を焼いてしまったら「魄」はどうなるの?と聞かれても困るんです。魂魄を信じているチャイナの地では、土葬が原則ですからね。インドで生まれた仏教は、伝統に従って御釈迦様の御遺体を荼毘(だび)にふしたと御経に書いてあるからってんで、理由は良く分からないのに火葬という風習が入って来たんです。全国あちこちに五重の塔や三重の塔が残っていまして、時々見に行くと、何だか有り難い気分になるもんですが、あれはほとんど無駄な構造物なんでございますよ。

■大切なのは塔が建っている地面に埋めてある仏舎利(ぶっしゃり)、つまり御釈迦様の遺灰なんです。御寿司屋さんが御飯をシャリなんて言いますが、透明な白っぽい宝石類が代用されているのが普通で、伝承を信じれば、愛知県の日泰寺さんに安置されている、タイから送られた仏舎利は本当に御釈迦様のお骨ということになるんですが、それは信仰の問題ですし、真贋(しんがん)論争をしても仕方が有りませんな。
 インドでは仏塔のことをストゥーパと呼びまして、大きな半球型をしています。日本の五重の塔も、最初はこの半球型のカバーだったんですが、この蓋(ふた)がどんどん高く持ち上げられてしまいまして、それに連れてだんだん小さくなってしまったもんですから、もう蓋には見えない部品になってしまってますな。塔のてっぺんに載っている法輪というアンテナみたいな物が有りますが、あれの根元に見える金属製の半球が、ストゥーパの成れの果てというわけです。

■そろそろ話の〆に入りましょうかね。死んでしまった人は「草場の陰」で泣いたり喜んだりしているらしいんですが、これから生まれる者は、何処にいるんでしょうか?と言うより、我々は彼ら彼女達が何処にいると考えて暮らして来たんでしょうか?もっと分かり易く言うと、「草場の陰」の対義語は何だろう、という事なんです。日本語にそれは無いんじゃないでしょうかねえ。どうして突然こんな事を考えたかと申しますと、国会中継を聞いていて、「年金制度」に関する議論の分かり難さが気になったからなんです。年金の掛け金と、受け取る金額との損得比較は成り立たないっていうのは分かります。賦課制度とか言ってますが、要するに貯金ではないんですね、年金っていうのは。ですから、実質的には毎年集めて翌年使い切る(どうして余らないんでしょう?)税金とまったく同じ勘定なんですよね。税金を途中でちょろまかすと、犯罪なんですけれど、道路使用料金だの年金だのの名目で集めた金は、奇妙な赤字ホテルを建ててみたり、役人の住宅費に使っても犯罪にはならないんです。全部、税金として扱えば、惚(とぼ)けた無駄遣いをしている役人を逮捕出来るんですから、早く制度と法律を改正すべきなんですが、税金となると財務省の力が強くなり過ぎて、またまた「ノーパンしゃぶしゃぶ」事件が起きたりする危険が有るし、他の省庁が「自分達の稼ぎ」だと勘違いして楽しんで来た時代が終ってしまうので、誰も触らないんでしょうねえ。
 高度成長期に一生懸命働いた人も、適当に手を抜いて勤め上げた人も、1970年代に年金給付を受け始めた人たちは支払った金額の何倍も年金を貰っていましたから、寿命が尽きて草場の陰できっと笑っていると思うんです。田中角栄首相は、老齢年金に上乗せを独断で決めましたし、その天敵だった三木武夫首相も負けじと大盤振る舞いなんかしてしまいましたからね。良い時代だったのかも知れませんねえ。

■本当は年金が問題なのではなくて、年金給付金に補助金を出している国家財政自体が破綻している事が主要の問題なのです。ところが、「壱千兆円」なんていう借金を正確に実感出来る人間はいないんですから、手の施しようが無いっていうのが正直なところでしょう。分かり易い例として、毎月40万円の収入の有る愚か者が、何に遣っているのか分かりませんが、生活費が足りないと言って更に40万円を何処かから借りて来て暮らしている。気楽な顔をしているコイツには実は返す当てなど無い1000万円の借金が有る。
 こんな例を出す経済評論家なんぞがおられますが、1000万円と壱兆円との違いは遥かに圧倒的なんです。単なる比率の問題ではありません。1000万円のローンを組む話ならば、何となくイメージが湧きますが、壱兆円のローンを何処で組むんでしょう?比べられないものを無理に比べると、問題の核心が見えなくなるんですよ。

■もう生まれてしまった日本人は、丸投げ先送りが得意な総理大臣を次々に選んでおけば、もしかすれば、滑り込みセーフで国家が借金に押し潰されて崩壊する地獄図を見ないで、「草場の陰」に逃げ込めるかも知れません。でも、これから頑張って生まれて来る可愛い連中は、時間切れに立ち会う可能性が確実に高まって行くわけです。これはもう、昔懐かしい黒くて丸い爆弾を隣の人に手渡して行くコメディと同じで、火が点いた導火線が燃え尽きるのは確実なんですから、問題は誰が犠牲になるのか、という事だけです。
 「草場の陰」の対義語、つまり赤ちゃん達が待機している場所、まだ名前は無いんですが、コウノトリだけが知っているその場所にいる可愛い奴らは、きっと一刻も早く生まれるか、ずっと後に生まれるか、或いは日本以外の国に生まれるか、随分迷っているんじゃないでしょうかねえ。
 変な話ですが、1943年2月1日に大日本帝国がガダルカナル島から撤退(東條さんは転進と言いました)してから1945年の8月15日までの間に生まれた赤ちゃん達は、特攻自爆攻撃要員か本土決戦兵士になる運命の下に生まれたんです。勿論、当時二十歳前後の若者は、生まれた時と随分話が違うなあ、と思いながらも靖国神社に自分が入る順番を待っていたわけですがね。

■赤ちゃんは生まれた時に、逃れられない宿命を負っているんです。その時と場所は大きな規定力を持っていますからね。ですから、「少子高齢化が問題だ。」という決まり文句の後に、「だから老人の人口を減らそう」(昔の米国映画『ソイレント・グリーン』ですな)とは言えない政治家さんたちは、「産めよ殖やせよ。」と言うしかないんです。何せ、御老人達は選挙権を持っていますが、これから生まれて来る赤ちゃんや、今の子供達には選挙権が無いんですから。老人の為に計上される予算と、子供達の為に支出されている金額を比較すると、余りにも露骨なので笑っちゃうしかないんです。紛れもなく日本は主権在民(正確には主権在選挙民)の民主国家ですよ。但し、それはアリストテレスが軽蔑した「衆愚政治」という意味ですけどね。

■最近、ワイド・ショーでも扱わなくなりつつある、若者の集団自殺事件と少子化の根っこは同じなのではなかろうか、なんて考えてしまうのですが、いかがでしょうか?
 壱兆円の借金を解消するには基本的には三つしか方法が無いそうですな。まずは、ハイパーインフレを起こすこと。ヒトラーが出現する直前のドイツですな。給料を受け取るのに小型トラックが必要で、パン一つ買うのに大きなリュックサックに札束を詰め込んで行かねばならない生活です。月給一億円で、ラーメン一杯25万円、そんな世の中になれば、帳簿に書かれた壱兆円の返済も先が見えて来ますが、国際通貨として円はゴミとなって国は滅亡します。
 次が戦争です。戦時経済体制で、強引な景気回復政策が連発出来ます。米国はずっとこの手段を使い続けていますから、もうこの遣り方が良いものではない事は明らかです。
 第三の道は、「踏み倒し」です。デフォルトなんていう外来語を使っても、開き直りの借金踏み倒しです。日本は、一度これをやっています。敗戦の時ですな。昭和20年9月末の段階で、日銀券の発行残高は414億円に対して、金融資産は5000億円も有ったと言います。つまり、実際に動いている貨幣の裏に帳簿の上だけのオカネが動き回っていたわけですな。この中に国債・地方債・社債・株式の2000億円が含まれていました。国債の中には軍艦が印刷されていた戦争国債もたっぷり含まれていました。これらをGHQが実質的に踏み倒したわけです。お国の為だと売りつけた国債が、一夜にして紙屑になったわけです。でも、大事なことは、これを実行したのは米国の占領軍だったということです。

■メイド・イン・ジャパンの「踏み倒し」には、江戸時代の「徳政令」とういのが有りますが、一度踏み倒された商人は二度と金を貸してくれるはずも無いですから、殿様達はますます貧乏になって江戸幕府は破綻してしまいます。討幕軍が作った明治政府は、数々の武勇伝を作りましたが、江戸幕府も各地の大名達も財政破綻に耐えられずに、誰かに肩代わりして欲しいと思っていたのですよ。
 長州や薩摩みたいに密貿易でもやらないと、とてもじゃないけれど、生産能力の無い戦闘集団でしかない武士を終身雇用で養っていれば、よくぞ200年間もやりくりしていたと感心しますな。征東軍が江戸城に入って、空の金蔵を目の当たりにして腰が抜けるほど驚いたそうですな。それで、明治政府は猛烈な増税政策を採らざるを得なくなったのですから、江戸時代とは比べ物にならないほどの激しい国内暴動が起こったとうわけです。
 ですから、明治以来の日本の官僚は、踏み倒しを決断したことも実行したことも無いんです。だんだん苦しくなって来ると、また米国が占領してくれないかなあ、などという国賊官僚が出現するかも知れませんぞ。

これをお読み頂いて、少し仏教を考えてみたくなった方は支店ブログの『五劫の切れ端』にお越しください。

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チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

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チベット語になった『坊っちゃん』書評や関連記事

『日本官僚史!』広見直樹著

2005-04-23 08:36:00 | 書想(その他)
『日本官僚史!』広見直樹著 ダイヤモンド社 1997年

生前、司馬遼太郎さんは、明治時代について多くのエッセイや講演を残しています。その中のこんな一言を覚えております。


「…それにしても、明治の官僚達は、驚くほど汚職をしませんでした。見事と言っても良いかも知れません。」


素敵な言葉だと思ったものですが、この事実を日本古来の「武士道」だの、高い倫理感を持つ「民族性」などに繋(つな)げては行けないようです。
「明治14年の政変」として有名な、北海道開拓に関連した国有地払い下げスキャンダルを筆頭に、怪しげな金の動きは沢山有りましたし、「藩閥」「学閥」「省益」「政商」等、現在に続く諸問題は出揃っていました。山県有朋が築いた軍事官僚による「軍閥」は最終的に大日本帝国を滅亡へと導く基礎を作りつつあり、大久保利通が整備した内務官僚のネット・ワークはGHQによる解体の後にも復活するほどの生命力を持ちました。

■それでも、官僚群の中にミミッチイ「裏金作り」や、浅ましい「天下り・渡り鳥」が発生しなかったのは事実のようです。その謎を一気に解いてくれるのが、この一冊でした。
忙しいビジネスマン向けに、日本の官僚史100年間をコンパクトにまとめてくれたこの本は、とても便利な情報の缶詰に仕上がっています。是非、どこかで文庫化して欲しいものですが……。


文科省:
出向先の会費を私的流用、職員を懲戒処分
 文部科学省は8日、文化庁から日本芸術院に出向中、会費約170万円を私的に流用したとして、男性職員(52)を停職12カ月の懲戒処分にしたと発表した。また同省所管の財団法人「世界青少年交流協会」の補助金不正受給事件に絡み、協会側から飲食接待(約25万円相当)を受けていたとして、青少年課の元課長補佐(45)を停職1カ月とした。
 男性職員は02年4月~今年1月に出向し、芸術院の親ぼく会「寿会」の会費を管理していたが、計130回にわたって友人らとの飲食などに充てていたという。今年2月に内部告発で発覚した。事実を認め、退職する意向。毎日新聞 2005年4月8日


こんなミミッチイ、実に情けない事件が毎日のように新聞に掲載されるのは、明治時代の甘い夢から醒めていないからです。その150年前の夢の甘さが、どれほど強烈であったかが、この本で分かります。


第一章 幕末から明治へ
高級官僚の月収は庶民の
5年分の年収…1996年の各省庁の最高ポストである事務次官は132万1000円(月額)。ボーナスは5.2カ月だ。もちろん、話題の官・官接待から豪華な宿舎、カラ出張、業者による贈答漬け、天下り、揚げ句の果ては賄賂など、さまざまな、“恩恵”に与っている人間もいるから一概に判断できないが、こと給与に関する限り、この額はそれほど恵まれているとはいえない。……
1877(明治10)年の「官等・月給表」によると、次官・局長(官等では2等)の給与は400円。課長クラスでも300円と定められている。…
これより5年後、1882(明治15)年の日雇い労働者の賃金は1日22銭。一カ月まるまる働いても6円60銭にしかならない。ということは一般庶民が5、6年かけて稼ぐ給与を高級官僚は毎月貰っていたことになる。まあ、これでは業者から貰えるものはすべて頂き、なおかつ、天下りを2、3回繰り返し、退職金を懐に、なんてセコい考えは生まれなかっただろう。
ただし、これはピラミッドの頂点の給与であって、官等の最も低い17等(警部補など)は12円と一気に下がる。上に厚く下に薄い給与体系だったのである。
この傾向は、大学教育が整備され、官吏の採用が能力主義になってからも変らなかった。
1890年代前半、帝国大学を卒業し、高等文官試験に合格すれば晴れて高級官僚への道を歩み出すが、順調に出世し、局長までのぼりつめれば給与は250円だ。
1877(明治10)年と比べると目減りはしているが、それでも普通の人間が一生かけても稼げないような高額の報酬を受けていた。


「国会が開設された当初、守衛が次官、局長に対しては敬礼してこれを迎えたが、選挙に当選した政治家にはしなかった」などという逸話を紹介して、この一節は終わります。

■豊富な図表を転記してくれているので、コンパクトな資料としても便利な一冊で、明治から1993(平成5)年の細川内閣成立までの歴史を紹介している本です。代表的名政治家が続々と顔を出して、内政の舞台裏が明かされて行き、官僚こそが政治を主導しているという実態がm延々と描かれているのです。国民の目にはなかなか個人の判別が付かず、常に一個の精密機械として動いている官僚群ですが、この本でも、やはり、官僚の個人名はほとんど出て来ません。その事自体が恐ろしい!「皆で渡れば怖くない!」というネタは、ビートたけしさんの発明ではなさそうですなあ。
彼らの個人名が表面に浮かび上がるのは、巨大なスキャンダルの主人公になった時か、退官して政界に打って出る時だけです。勿論、目出度い皇族との御成婚でも明らかになりましたね。そんなわけで、悪名高い「天下り」の実態を、個人名を挙げて具体的に説明する者などいないのが実情です。官僚は常に顔も名前も分からない「群」として動いているのですなあ。失礼ながら、「蠅」や「蚊」みたいです。

■戦前の日本では「末は博士か大臣か」と、将来ある若者を煽(あお)ったものでした。戦後の「民主化」運動の中で、このスローガンは表からは消えましたが、「学閥」は消えるどころか、団塊の世代の苛烈な進学競争の中で、燻(いぶし)し銀の輝きを増しました。
教育が問題になるたびに、「学ぶ目的」を子供達に正しく伝えよう、と判で捺したように空疎な提案が出て来ますが、多士済々を集めて「御意見を」伺って文書にするのは、東大閥の皆さまですから、「何故学ぶのか?」と問われれば、その理由はとても簡単なのです。「出世するため」「苦労しない金儲けのため」だと誰でも知っていますでしょ?
上に従って小さな集団を作るピラミッド構造の「閥」は、利権と人脈の宝庫となる必然性を持っています。進学競走が激しくなるのは、この「閥」の定員に何とか潜り込もうとするからですね。文系の進路を選択した者は、地方に乱立する無名私立大学よりも、都市部に乱立する無名私立大学へ、その上には有名私立大学と無名国立大学が載り、最上部に有名国立大学が順序良く並んでいるのです。東京帝国大学(官僚養成機関である限り体質は変らない)法学部から上級国家公務員種試験を通って、予算と利権を多く握っている省庁の官僚群に加わる。これが学ぶ意義です。

■この競走に敗れた者が、一般企業の従業員やノン・キャリア官僚になり、その中に「教職」が含まれています。最近まで相撲界では、モンゴル力士の朝青龍が、行儀が悪い、親方の教育が悪い、などと非難されていまして、その度に、横綱になれなかった親方の大ちゃんが、横綱になった弟子に軽く見られているらしい、と無責任な憶測が飛び交っていました。他のプロ・スポーツ界でも、「名選手、必ずしも名監督にあらず」と言われていても、大選手と呼ばれた者が、その指導力よりも現役時代の名前と実績で指導者になる事が多いのは、特に巨人ファン(御免なさいね)の皆さんの骨身に沁みているはずですね。つまり、教育現場では、「東大に合格しなかった先生」と「東大出身の先生」とは違う「先生」なのである。勉強の目的が「権力を握ること」である限り、教育現場は荒涼とした雰囲気に包まれる必然性が潜んでいるのです。

■かつて、独自の学問的使命を持って、官僚にも大学教授にもならず、生活と親の面倒を見る為に、貧しい出身地に戻って教職に就いて、教壇に立ちながらも自分の研究を続ける「先生」の群れが存在していた時代が、日本にも確かに有ったのです。彼らは受験競争や就職競走の敗者ではなく、良い意味での道学者先生として地元の尊敬を集め、畢生(ひっせい)の一冊を残したりして、地方文化の向上に資しました。「官僚」と「労働者」しかいなくなった日本には、教育・学問の目的を、身を以って示せる人材が極端に不足しているのです!天上世界の政治闘争を描いたこの本を読みながら、そんな事を考えたのでありました。一度はしたい天下り?昼前に出勤して、美人秘書さんが煎れてくれた茶をすすりながら新聞をパラパラ、気が向いたら古巣の役所に、運転手付きの黒塗り車で御挨拶に行き、暗くなったら奇怪な他人の金で、飲んだり抱いたり、「ああ、俺はこの為に死ぬほど勉強しただ」と法悦境に入れる精神異常者を、我々は相手にして、官僚体制批判をしているのです。この事実を認めるところから、全てが始まるのではないでしょうか。

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「アジア」の使い方

2005-04-22 06:39:00 | 外交・情勢(アジア)
■とうとう、翌日の新聞紙面にも掲載されなくなってしまった「党首討論会」。ますます、日本の政治から言葉が失われて行きます。理由を聞かれても、「だってそうなんだもん!」とガキンチョ答弁を繰り返す小泉首相と、すぐに言葉に詰まってドギマギしてしまう岡田民主党代表の討論なんて、誰も見たくもないし、聴きたくもないのは当たり前ですね。手元の読売新聞朝刊を開いて「党首討論」の文字を探しましたら、やっと見つけましたよ。第四面の左下隅(すみ)の『首相の一日』

午後2時27分国会。3時、党首討論。同50分、官邸。


これが「二大政党」を目指す日本政界の姿です。まるで散歩かラーメンでも食べに行ったような扱いです。勿論、紙面の何処を探しても討論の内容などは、何も書いてありません。読売新聞が特別に無視を決め込んでいるのではなりません。ネット上のニュースを検索しても、何処にも掲載されていない。つまり、記録されない「党首討論会」が昨日行なわれたわけです。

■何の成果も無いまま、印象深く歴史に刻み込まねばならないような「言葉」の応酬も提示せぬままに終わってしまった討論会でしたが、辛うじて夜のニュースで、断片が二分ほど放送されました。つまり、国会内の廊下ですれ違いざまの立ち話でも、尾篭(びろう)な話ながら、トイレに並んで小便しながらでも用は足せる(ちょっと上手い洒落でしょ?)わけです。警備から記録係、報道関係に参列議員、光熱冷暖房の電気料金に照明と音声の電気料金も含めて、漫然と開かれる党首討論会でありますなあ。
それでも、一つぐらいは価値ある成果は見つかるものです。とても子供達に対話・討論の見本として示せる内容ではなくても、文部科学相の「国語科」担当の皆さんは、毎月示される格好のサンプル(勿論、反面教師としてのですが)をきちんとモニタリングしていて下されば、学校での討論技術に関する授業の参考となるでしょうし、今回もまったく議論が噛み合わなかった事実を辛抱強く観察すれば、意外な発見も有るものなのでございます。全ての必要経費は税金で賄(まかな)われているのですぞ!少しでも役に立って貰います。

■ちぐはぐで盛り上がらない議論の原因は、案外、単純なものでした。それは「アジア」という一つの単語の取り違えなのです。これは考察の価値がある発見となりますなあ。


「中国暴動の原因は、小泉総理のアジアを軽視した外交姿勢にある」(岡田民主党代表)
「いいえ、私の外交姿勢は、常にアジア重視です。」


これでは議論が成り立ちません。少し通訳と翻訳家が必要でしょうなあ。昔、自由民主党が真っ二つに割れて「40日抗争」などと山口組顔負けの騒動を起こして、国会が大混乱したことがありました。まだ元気だった田中角栄さんと岸信介さんの大理戦争です。どっちの子分が首相になるかで大喧嘩したのですが、この時の亀裂がまだ修復してはおりません。田中角栄さんは野党の皆さんととても仲が良かったのは有名な話です。そして、日中平和友好条約を締結する道筋をつけたのも田中角栄さんです。その辺の事情は『園田直を知っていますか?』シリーズに書きました。

■岸さんは、インドネシアや台湾と、それはそれは俗人では計れない太い太いパイプを持っていました。戦後賠償予算が東南アジアに流れ込むと、岸さんに近い人々が復興事業を受注したりしたらしいのですが、田中角栄さんはチャイナ利権を握ります。この対立が、日本の「アジア政策」を分裂させたままなのですなあ。岸さんの一の子分だった福田さん、その秘書をやっていたのが小泉純一郎さんでした。ですから、小泉首相の「アジア」には中国が含まれるのか含まれないのか、微妙なところでしょうなあ。露骨に台湾と仲良くするのだけは我慢していますがね。一方の岡田さんは、元社会党や民社党の残党や、田中派に身を置いていた先生方が「合コン」を開いて作った党の代表者ですから、「アジア=中国」と信じ切っています。ですから、中国が怒っているのは、小泉首相としては「アジアを重視」した結果であって、岡田さんにしてみれば、中国(アジア)が怒っているのは「アジア軽視」だから、という水掛け論が始まってしまうのです。短い時間に、こうした扱いにくい「専門用語」を不用意に使うから、岡田さんの話は分かりにくいのです。勿論、相手の小泉さんは、人との対話が実に下手な方ですから、誰もこの二人の討論なんか見たくないのです。

■この「アジア」の多義性は、戦後日本の宿痾(しゅくあ)です。それを知っているのか、いないのか、相手が意味を取り違えて混乱するのを利用して生き延びた政治家や政党が多過ぎたのです。つい、最近まで、社会党の土井たか子さんや自民党の野中ヒロムさん達の「アジア」は朝鮮民主主義共和国のことを意味していたようですし、中国詣(もう)でが大好きな政治家は、「アジア=中国」を前提に演説をぶって暮らしています。中には、中国政府と「中国以外のアジア」を居丈高に区別する石原慎太郎さん達のような人もいます。日本中の誰もが反対できない「アジアとの友好」という呪文が、とても便利に使われている事がお分かりになったのではないでしょうかな?テレビで何かを喋っている人の中にも、「アジア」をわざと不正確に使ってぬめぬめと捉え所の無い話をしている人が目立ちますから、よく注意して視聴なさることをお奨め致します。

■それに、アジアにおけるチャイナとなると、北京政府、中華民国(台湾)・在外華僑・在外華人、さらには混血しつつも中華にアイデンティティを求める東南アジアの人々という具合に、非常に複雑なのです。気楽に「中国との友好」と言っても、良く話の内容を聞いてみないと、その人の「アジア」と「中国」との関係はなかなか分からないものです。ヴェトナム戦争中に「アジア」を語り、沢山の原稿を書いた人たちの中には、「アジア=ヴェトナム共産党」の使い方をした人がいたり、朝鮮戦争に関連した発言をする人の中には「アジア=朝鮮民主主義人民共和国」の意味を込めていた人もいたようですなあ。他にも「アジア=ASEAN」の使い方もありましたし、最近では「アジア=中国+インド」なんていう新手も出てきましたね。本当に「アジア」は難しいのです。もしかすると、かつて大日本帝国が影響力を及ぼした範囲を越えて「アジア」を使うと、話が通じなくなる傾向は、多くの人が持っているような気がしますなあ。インドはともかく、アラブ諸国やトルコ共和国を「アジア」の中に含めている日本人は余り多くないでしょう。

■その点では、サッカーの流行は時代を変えましたなあ。「アジア地区予選」の出場国は全部「アジア」だと、サッカー・ファンは直に認めているからです。しかし、その新しい「アジア」は、まだ国会の中にもマスコミ・メディアにも浸透してはいないでしょう。日本のマスコミ関係者は、変に長生きなのです。勿論、医学的な意味ではなく、現役から引かないという意味ですよ。
そんな御年寄り・先輩の影響でしょうか、こんな事件が起きました。


<テレビ朝日>「香港の反日デモ」報道は誤りと訂正、謝罪
 テレビ朝日は20日のニュース番組「報道ステーション」で、18日の番組で「香港の反日デモが暴徒化した」などと報道したのは深センの誤りだったと、訂正し、謝罪した。テレ朝によると、「番組担当者の勘違いで深センの映像が流れているのに、ナレーションや表示で香港と伝えてしまった。20日午後、香港特別行政区政府駐東京経済貿易代表部から指摘があり誤りに気づいた。大変申し訳ない」と話している。(毎日新聞) - 4月21日


特別に驚くべき事件ではありません。「アジア=中国」「アジア=朝鮮民主主義人民共和国」としか読めない紙面を作り続けた新聞社の影響下にあるテレビ局ですから、香港も深センも、「大中華圏」ですから、間違ったとも思わなかったのではないでしょうかな?久米ひろしさんの「漫談」は結構面白かったのですから、彼の引退と同時に、報道番組を縮小すれば良かったのではなかろうか?声の大きいおしゃべり好きな古舘さんを引っ張り出していますが、彼のような人材は、プロレスのリング下で、


「アントニオ・スペシャル・サンダー・アトミック・ホールド・キーックゥ!きまっとぉわあぁあぁ」


とか何とか叫んでいる方が、本人にとっても視聴者にとっても心地よいのではないですかな?決して古舘さんが嫌いなのではないのですよ。何でもムキになって吼え始めてしまう衝動を抑え切れない体質と、ワザとらしい作り笑いに苦労するよりも、サッカーのラジオかテレビの中継放送で、


「グゥウヲォォォオォォォウゥゥゥうぅぅるうぅぅぅーー」


と何度でも声帯が破れるまで吼えて叫んで頂きたいだけです。それを待ち望んでいる方が、案外多いのではないかと、思いますなあ。

■せっかく、拙ブログ記事『面白すぎるぞ大阪市!』で「やれば出来るぞ!テレビ朝日」と書いて褒めたのに、またまた、やってしまいましたなあ。4月21日の「スーパー・モーニング」で、中国での暴動を取り上げて、ネタ元の朝日新聞風に日本のアニメや小説が大人気なのだから、日中の「国民・市民」は仲良くなれる。そんな仄仄(ほのぼの)とする方向に持って行こうとしたんですが、間も無くやって来る5月4日を材料にして、「心配ですね」の一言で収めるはずが、背後の画面に「五四運動、1919年に学生達が
テロを行なった日」のテロップがバッチリ映し出されてしまったらしいですなあ。嗚呼、やっぱりダメか、「日本語のテレ朝」。司会者が宣伝広告時間の後で真っ青になって訂正していたようですが、逆に印象に残ってしまうんですなあ。「テロ」がね。日本人が混乱せずに「アジア」を使えるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。何処かの英語自慢が岡倉天心を真似て「亜細亜は一つ!」なんて言い出しましたら、たっぷり眉に唾を付けて、大モンゴル帝国の時代や、チベット・中央アジア諸国の離合集散、出来ましたらインドシナ半島における民族大移動の歴史など、ネオ天心さんを問い詰めてみなければなりませんぞ!

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役人天国、徴収地獄 その壱

2005-04-21 08:30:28 | 社会問題・事件
ちょっと古い記事ですが、

課長以上に3億円返還要請 佐賀県の食糧費問題

 佐賀県の食糧費不正支出問題で古川康知事は25日、実際には職員同士の飲食などに使われていたのに目的を偽って支出されていた計3億900万円について、現在の県課長級以上や県OBに返還を求めると発表した。
 3億900万円は、記録が残っていた飲食代1億5900万円と、飲食したと推定される1億5000万円の合計。このうち記録が残っていた飲食代は、1989年度からの10年間に県職員同士の飲食や、国の職員の飲食代肩代わりに使われていた約8200万円、旅費の不正支出約250万円などで、調査に要した費用約2000万円と利息約4800万円も併せて返還を求める。要請の対象者は約300人。
(共同通信)3月25日


■詳しくは、後日『書想』欄で名作漫画『ナニワ金融道』を取り上げて、みっちり書きますが、最近、役人天国があちこちで小さなひび割れを起こしているようです。強烈なエリート意識と、強固な偏差値信仰が守られていた頃には、水も漏らさぬチームワークで「遣りたい放題」だったようですが、最近では、実にミミッチイ金額で下手な手口からバレる事件が頻発しています。「食料費」は「給食費」と名前は似ていますが、支払いの方向はまったく逆で、「喰った者が貰えるお金」です。
税金から支給される給与などというものは、出世が約束されたポストに就いた皆さんにとっては、とうの昔に計算済みの単なる数字で、それ以外の「収入源」を、如何に開拓するかが、偏差値と学閥とポストの「名目」に重みを加える唯一の道のようですなあ。

■「税収」が「収入」と同義になってしまうので、平凡な議員が議会で追求しても「国民(市民)の皆様からお預かりした、大切な税金でございますから、今後このようなことは……」という心にも無い決まり文句で言い包められてしまいます。でも、本当は、納入直前までは、この通りなのですよ。しかし、一旦役所の帳簿に記入されたら最後です。それは役人の獲物であり、収穫であり、「収入」、酷い場合は「利益」と同じものとして扱われます。「俺の部署の金」から、親分の「俺の金」までは紙一重でしょう。どれほど敏腕・辣腕・有能な官僚でも、その職分では一円の利益も上げることは出来ません。稼ぐのは企業であり、生業を持つ個人ですから、御役人の仕事はもっぱら、庶民(この単語の本当の意味を知っている日本人は少ない)が稼ぎ易い環境と、法体系を整備することだけです。「俺たちも、少しは稼いでみよう」などと馬鹿な「愛国心」を出すから、税金の無駄遣いが発生して積み上がるのです。「稼ぎたいなら公務員になるな!」という単純な一言が、義務教育の現場に欠けているのです!
 
■誰にも真似の出来ない優良な技術と商品を持っている企業・職人ならば、事業を拡大するために、信用と将来性を担保にして多少の借り入れをしても、それは稼ぎ手の勲章になります。しかし、政治的な美辞麗句で塗り固められた作文から捻り出された「国の借金」は、最終的には納税者が「手形の裏書人」にされてしまうのです。
今更、その裏書人を増やそうと、「産めよ殖やせよ」と大号令を掛けても、焼け石に水、それ以下の百害有って一利も無い「悪循環」でしかありません。何故なら、「産み易い環境整備」や「育児の支援」を目的とした役職が凄い勢いで整備されて、無数の「長」ポストが増えるだけだからです。名目だけにしても、役職が上がれば「恩給」金額が面白いように上昇し、「天下り先」となる新規産業があっと言う間にぶら下がります。粗製乱造で、拙速実施した介護制度の裏側はまだ闇の中なのですよ。

■今頃になって、「不正請求」が問題になっている前・厚生省が企画した新しい老人福祉施設のカラクリは、「時代の要請」と「国民の福祉」の美名に隠されて、その拙速と稚拙さの罪深さが見えて来ません。硬派のジャーナリストが本気で追い回せば、「百害有って一利無し」の実態が暴露されるでしょうが、美しい言葉が書き込まれた法律を変更したり、無効にする事が出来るほどの能力を持っている政治家は見当たりません。大学卒業者の就職希望先の上位や第一位に「公務員」が君臨している異常な時代が続く限り、有能な人材が「税金喰い」の規模拡大に勤(いそ)しむ困った「拡大再生産」は止まりません。もう一度書きます。官僚が稼いで国が富んだ歴史など有りはしないのです!

■こんな事を書いてしばらく放置していたら、やってくれます。泣かせます。今宵も、皆様のお耳に怒りと諦めをお届けするのは、そうです。汚職と裏金、横領に水増し、ノーパンしゃぶしゃぶも何のその!人の年金俺の金、俺の年金俺の物。無駄遣いの帝王、社会保険庁の登場でぇす。皆さん、投石の準備は宜しいでしょうか?真打ち登場です。では、どうぞぉ。


社会保険庁、イベント費と偽り6億円を計上し流用
社会保険庁は、イベントの費用として1998年から6年間、毎年1億円を、国民が払う年金保険料を財源とする特別会計の予算に計上していました。ところが、イベントは一切、行われていませんでした。
これは、20日朝の衆議院決算行政監視委員会で、民主党の長妻昭議員が明らかにしたものです。社会保険庁は1998年から2003年までの間、11月の年金週間に全国の社会保険事務所が実施するコンサートやエアロビクス大会、綱引き大会などの費用として予算を要求していました。毎年およそ1億円が年金保険料を財源とする特別会計の予算として計上されましたが、これらのイベントは実際は行われておらず、広報など別の事業に予算は流用されていたということです。4月20日 ANNニュース

 
■昔は「遊び人」と言えば、ヤクザのことを指しましたが、最近のヤクザは「闇金融」からオレオレ詐欺、偽札作りまでやって、悪事ながらも智恵と体を使っておりますが、これからは「遊び人」と言ったら社会保険庁の職員を意味するように運動を起こしたらどうでしょう。


「失礼ですが、お勤め先はどちらでしょうか?」
「はあ、ワタクシは遊び人をやっております。」
「ああ、社保庁にお勤めだったんですか!」


こういう使い方をすれば、「遊び人」という言葉が死語にならずに済みますよ。有難う!社会保険庁!やっと役に立って下さいましたね。


チャイナの欲望

2005-04-20 12:12:10 | 外交・情勢(アジア)
■週末が来るまでの中休みで、電波メディアは中国問題に関連する情報量を劇的に減らしています。また、来週の月曜日に消化不良を起こしながら、映像とコメントの「集中豪雨」をしてくれるのでしょうなあ。そんな事を繰り返していると、ますます何が問題なのかがさっぱり分からないまま、イライラが募って中国関連の在日公館に悪戯電話だの悪戯郵便が届いたりするのです。振り返って見れば、日中国交が始まった時に、「中国が好き」と答えた8割の日本人にとって、それは「パンダが好き」とまったく同じ意味の発言でしたし、その次にはNHKが仕掛けた「シルクロード」ブームが、そのまま「中国に行きたい」という気分を起こさせました。しかし、シルクロードは中華人民共和国の占有物ではありませんし、現在の国境線を見ても、新疆ウイグル地区を出てからが本当のシルクロードなのですから、シルクロード・ブームが中国に対する好感度を高めたという現象は、奇怪なものなのですなあ。

■そして、今吹き荒れる「中国は嫌い」という乱暴な気分と発言は、歴史的風物誌とも呼べる「チャイナ名物・暴動騒ぎ」を理由にしているのですから、日本人が持っているチャイナ情報の少なさと質の悪さが良く分かりますなあ。そんな危なっかしい国民感情を追い風にして「田中派」潰しに奔走する福田派出身の小泉首相は、やりたい放題であります。


ジュンちゃんと 叫んだ自分が 恥ずかしい

と一時は反省した日本の選挙民でしたが、「靖国問題」の不思議な作用で小泉人気を支えています。これは実に奇妙な現象です。中国などの内政干渉は、勿論間違っていますが、小泉首相の行動と言動が稚拙を極めている事とは別問題です。おかしな物を結びつける才能が豊かに見受けられる小泉首相ですから、よくよく注意しないと大きな勘違いをしてしまいます。とかく忘れっぽい日本人は、この手の策略にコロリと騙されますから、用心が肝要ですなあ。

■出版部数80万部とされる週刊ポストの最新号に、気になるグラビア記事が掲載されました。相変わらず意味不明の裸写真(今週は小林恵美さんという見ず知らずの痩せ細った娘さんです)の後に載ったモノクロのグラビア記事には、


「日本製品不買運動の裏、電器店ではソニー製品が平然と売られていた」
「北京欲望ビジネス最前線=街中ではヌード写真集やアダルトグッズが売られ、夜は売春クラブも横 行」
「ホステス2000人が揃う一晩30万円の高級カラオケ店が大盛況」


「人体芸術(陰毛裸写真)」「成人保健(媚薬や電動張り型)」「快楽城(酒と女の大型店)」が北京に存在することを、80万人のサラリーマンがまったく御存じない、という前提の記事と思われます。まさか、毛沢東時代の『整風運動』や『人民公社』のイメージを後生大事に持ち続けている日本人がいる、と小学館の編集部は考えているのでしょうか?無数の飢饉と暴動、略奪と戦乱に襲われても世界最大の人口を維持している巨大な生殖システムを持っているチャイナですぞ!今でも、金持ちは「蓄妾(ちくしょう)」するのが当然で、貧しい家の娘さんは売春宿から仕送りするのが親孝行という風習は不動の伝統となっております。そんな事も知らないで「中国が好き」だの「中国が嫌いになった」だのと騒いでいるのでしょうか、日本人は?

■発行部数13万部のYOMIURI WEEKLY(なんで英語なんでしょう?)の最新号には、


「反日」の陰で着々 
中国「海洋戦略」の脅威
ガス田、尖閣、沖ノ鳥島、台湾‥‥すべては壮大な国家戦略の“海図”の中に
「反日デモ」が収まる気配がない中国。中国側は日本の歴史問題で日本の反省がないことが原因だと主張するが、日中間のトゲはそれだけではない。中国側が開発を進める東シナ海の天然ガス田を巡っても、日本政府が民間企業に試掘を認める手続きに入ったことや尖閣諸島の領有権問題、沖ノ鳥島周辺などでの中国の違法な海洋開発調査など日中間の問題は山積している。東シナ海から太平洋にかけた海域は、日中の「対立の海」と化している。背後にある中国の壮大な海洋戦略の狙いなどを分析する。


という記事が大々的に掲載されています。これまた面妖(めんよう)な話ですなあ。中国がずっと前から主張している、遠慮会釈のまったく無い厚顔無恥の領海設定に関して、13万人の成人男性が何も知らないという前提の記事ですよね?そんな事も知らないで、「尖閣諸島」問題のニュースを見聞きしている日本人がいるのでしょうか?

■帝国書院が発行している手元の地図帳では、確かに北京政府の主張する領海線が露骨に見えないように工夫されている傾向が見られますが、最新版は訂正されているのでしょうか?以前のままならば、何か遠慮が有るのでしょうか?台湾からシンガポールにかけて、ヴェトナムとフィリピンに挟まれた海域を「南シナ海」と呼びます。この名称自体が変なのですが、地名というものは歴史の産物ですから、勘違いして付けた名前が残る場合が多いのです。「シナと呼ぶな!」と起こる人が、「南シナ海と呼べ!」と言うのですから、わけが分かりませんなあ。名前よりも、問題はこの海域のほぼど真ん中に三つも四つもの名称を持つ小さな島の集まりが有る事です。大日本帝国時代には「新南群島」とか「平田群島」と呼ばれ、チャイナの人々は「南沙」と呼び、欧米人は「スプラトリー」と呼んでいました。フィリピンも対抗して、何やら新しい名称を付けたのでしたが、誰も相手にしてくれません。可哀想ですが、国際政治は冷厳ですぞ!


1974年 中国人民解放軍はパラセル(西沙)諸島に襲い掛かって、ヴェトナム駐留軍を追い出す。20箇所以上でボーリング調査開始。
1988年 周辺六カ国が領有権を主張していたスプラトリー(南沙)群島に、中国人民解放軍は勝手に軍事基地を建設する。
1992年 北京政府は「領海法」を制定して、西沙諸島・南沙諸島、ついでに尖閣群島も中国領だと明記する。
2003年 中国は日本を抜いて、米国に次ぐ世界第2の石油消費国となった。
2005年 北京外交部は、日本領の「沖ノ鳥島は岩だ」と発言。
2020年 北京政府の国家目標では、経済規模を2000年の4倍増。


チャイナで販売されている各種の地図には、こうした動きに従った領海線が、真っ赤な線で描かれているのですな。是非、中国土産には荷物になりませんから、一家に一枚、中華人民共和国全図をお買い求め頂きたいものでございます。それを玄関や今の壁など、家人も客人も目にする場所に貼って貰えば、朝な有なに「正しい日中関係」を考える習慣が身に付くことで御座いましょう。旅行の際には、会社の同僚、親戚や友人達の分も忘れずに買って来ましょうね。

■現物を御覧になれない方のために簡単に説明しますと、ヴェトナムのハノイと広西チョワン族自治区の南寧、その中間を通りながら海に出た両国の国境線は、海南島とヴェトナムの中間線を南下して西沙群島と南沙群島の200海里沖を巡って南シナ海に投網を打ったようにフィリピンの西方沖を北上して、勿論の事ですが、台湾を絡(から)め取って問題の「尖閣諸島」を呑み込んでおりますよ。小中学校での授業にも使われていますし、何処の書店でも売っていますから、誰でも持っています。始めてみると、「牛の涎(よだれ)」のようにチャイナの領海が、異様に南に垂れ下がっている印象を受けます。そして、ヴェトナムやフィリピンの人達は、さぞや息苦しいことだろう、と同情心が湧きます。この感覚が大切です。明日は我が身ですからね。でも、本当は10年前から、いや30年前から分かっていた事なのです。それを、反日暴動に驚いて、週刊誌や新聞が「特集記事」を作って啓蒙するとは、何事ですか!?書く方も書く方なら、そんな物を今頃になって読み知っているような日本人だから、外務省に変な人材ばかりが集まってしまうのでしょうに!ちゃんと怒るには、ちゃんとした勉強が必要なのです。勉強しましょう。ちょっと遅いですが、仕方が有りません。

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★旅限無・中国考察特集★
中国の反日暴動・尖閣諸島問題の背景には何が有るのか…考察してみました。
チャイナの欲望>(4/20)
緊張の週明け(4/18)
胡錦涛の後を誰が考えているのか(4/18)
園田直を知っていますか? その五(4/17)
園田直を知っていますか? その四(4/16)
園田直を知っていますか? その参(4/16)
園田直を知っていますか? その弐(4/15)
園田直を知っていますか? その壱(4/15)
「暴行事件」を見棄てる話(4/14)
外務大臣、御用心!(4/13)
「暴動スイッチ」ON(4/13)
中国が謝る時(4/12)
「中国の暴動」を考えるヒント(4/11)

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面白すぎるぞ大阪市!

2005-04-19 11:51:48 | 社会問題・事件
■最近、大阪の関市長さんの顔がちょくちょくテレビに出て来ますね。とても、財政破綻寸前の地方自治体首長のようには見えない「平然さ」が堪りませんなあ。間も無く破綻して国の管理下に置かれる地方自治体は、全国にごろごろしているのですから、大阪市だけを責めても仕方がありませんが、スペインのバルセロナにでも立っていそうな、ゴミ焼却施設の「異様な威容」を今朝のテレビ朝日が放送して下さいまして、市役所の職員にスーツをプレゼント!どころの騒ぎではない事態に息を失いました。

■「地方の時代」と言われまして、平成の大合併とかで地方独特の騒動が起きましたね。改めて日本国の多様性と単一性を勉強させて頂きました。しかし、この「地方の時代」という言葉は不正確ですなあ。これからは、「地方(自治体の破綻連鎖)の時代」と正確に言いましょう。平成の大合併の次に起こるのは、平成の大消滅です。個人であれば、自己破産手続きに当たる、国による管理下への移行措置が実施される地方自治体の栄誉ある第一号になりそうなのが大阪市なので、注目しているだけなのですが、気が付けば、大阪は実に面白い場所になっていたのでございますなあ。それもこれも、地元のマスコミ・メディアが非常に熱心に地道な取材活動を続けて下さっているからでございます。多くの地方自治体では、地方新聞を筆頭に田舎の名士?に注文される通りに「提灯(ちょうちん)記事」を書いているようですから、大阪市以外では財政破綻は青天の霹靂(へきれき)のようにやって来ますぞ!大阪は、前もってその時期が計算できておりますから、それまではシャレのネタにして存分に楽しめますなあ。その点だけは羨(うらや)ましいと思います。

■大阪市長さんは、吉本興業のボケ役の芸人だという噂は無いのでしょうか?凄まじい財政状況を示す数字を突きつけられても、平然としておられます。まるで吉本新喜劇で殴られようとぶたれ様と、平然としている役者さんとそっくりです。大阪には吉本興業という芸能プロダクションが有ると思っておりましたが、本当は、吉本興行の中に大阪市が有ったのですねえ。そうでなければ、タイガースを応援している場合では無いのに、市民の皆さんの熱狂振りも理解出来ません。あのイデタチと楽器類を総動員して市役所を包囲して「応援」パフォーマンスを仕掛ければ、市長さんは直ぐに辞表を出すと思うのですが、そういう事態には至らないようですなあ。もしかすると、「応援」を真に受けて手など振って大喜びするほどの、ブラックな感性をお持ちだと、市民の皆様方は先刻御承知なのかも知れませんなあ。同僚?の売れっ子芸人の多くは、「東京進出」と称して続々と大阪から疎開・退避しているのも、決して偶然ではないのでしょう。

■関市長さんが本当は吉本興業の芸人ではないか?という疑惑は、これまでの経験からの類推から導き出されたものです。面白い漫才ではありましても、「随分、乱暴そうな芸風の芸人さんだなあ」と思っていると、本当に暴力事件を起こす事が何度も有りましたし、漫才のネタに借金問題を使っている芸人さんが、本当に桁外れの債務を負っていたりもしました。ツッパリ兄ちゃん上がりの芸人さんが、有ろう事かニュース・ショーの司会などしていた事もございましたなあ。「立派に更正なさりはったなあ」と思っていると、同僚をドツキ回してしまいました。それでもテレビの仕事には何の支障も無い土地柄らしく、この人も「平然と」以前と変らない面白くも何ともない事を喋っていると風の噂に聞いております。目出度いことなのでしょうか?きっと、そうなのでしょうなあ。吉本興業は、国会議員の先生も出しましたし、大阪府知事さんも輩出する、政界の登竜門のような会社かと思っておりますが、定款(ていかん)に「政治家の養成」と書かれているのでないでしょうか?

■数えるほどしか、大阪には行った事が無い身分ではありますが、行く度にとても緊張します。イスラム革命の真っ只中に、テヘランを歩いていた時の何倍も緊張する場所なのです。確かに日本国内なのですが、いっそパスポートを持っていた方が落ち着くくらいに異質な空気に緊張します。それが嫌いなのでは決してないのですが、道の歩き方、エスカレーターの使い方、何より電車の乗り降りの手順には面食らってしまうばかりです。あの勢いで、バブル時代に市役所が大盤振る舞いをしたとすれば、日本一の借金財政になるのも頷けるものが有りますなあ。あのガウディもどきのゴミ焼却場や、その他のハコモノ建築物は、財政破綻の後には、モニュメントとして役立たせるのでしょうか?その時には、是非小さな石碑を建てて、「二度と過ちは繰り返しません」と仮名文字で揮毫(きごう)して刻みつけて頂きたいと切に希望しております。その筆を採るのは、現在の関市長さん以外の適任者は他におられません!案外、事の重大性を認識なさらずに、嬉々としてお書き下さるかも知れませんなあ。

■関市長の「平然」インタヴューの後、最近喧しい外資系保険会社のコマーシャルが入りましたな。小さな子供達が声を合わせて歌います。


よーく、かんがえよおー、おかねはだいじだよー


子供でも分かる事が、案外大人には分からない、という真理をテレビ局の番組制作者は伝えたかったのでしょうねえ。観る度に、テロップ文字にワープロ変換ミスが必ず一つは見つかるので、個人的に「日本語のテレ朝」と、密かに呼んでいるのですが、今回のコマーシャル挿入技術には脱帽しました。やれば出来るのです!テレビ朝日も!

■とうとう3000になった日本の地方自治体ですが、合併の御褒美に許可された借金の積み増し額いっぱいにワケの分からぬものを沢山建設した村長さんや市長さん達は、きっと内心で叫んでおられることでしょう。


「大阪市よ!お前一人だけを行かせはしないぞ!きっと我々も後に続く!靖国で会おう!」


と、胸の中で涙を流し、白い帽子を力いっぱい振っているのです。その再会の場所が、小菅の拘置所にならないよう、毎日祈っている次第でございます。そうなったら、巣鴨ならぬ「小菅プリズン」ではないですか!地方自治体の財政を破綻させた戦犯を裁くのに、税金をふんだんに遣うわけには行きませんから、市谷の講堂を利用して、効率的な集団裁判が実施されるでしょう。

■ずらりと居並ぶ元市長達の代表として、最初の罪状認否に立つのも元大阪市長の関さんです。「無罪!」とこれまた「平然と」答えて着席すると、後ろの席で合掌していた○○市の元市長が、突然関さんの頭を木魚(もくぎょ)がわりにペンペンと叩きますなあ。すぐに、この不埒な元市長は裁判所の警備員に両側から腕を持たれて退廷します。まさか、そのまま入院して『コーラン』の翻訳までして大川周明の真似などはしますまいが、こんな「新・東京裁判」が開かれる日が刻々と近付いております。栄光ある最初の財政破綻の地方自治体の地位を逃すような事のないように、大阪市役所の職員の皆さんと大阪市議会の皆様に置かれましては、倦(う)まず弛(たゆ)まず、これからも市の財政に空いた大穴を一層大きくして下さることを切にお願い申し上げまして、本日のご挨拶に換えさせて頂きます。頑張れ!大阪!御静聴、感謝申し上げます。

■最後に一言付け加えさせて頂きます。


「もう、止めさしてもらうわ!」「甲子園はどないや?」


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緊張の週明け

2005-04-18 16:00:57 | 外交・情勢(アジア)
■日曜日の夜のテレビ・ニュースを番組途中から観たのですが、画面いっぱいに映し出されたのは無数の空のペット・ボトルでした。桜前線は東北地方に北上していますので、また何処かの公園で花見客が恥を晒したのか?と思う間も無くテレビ・カメラは引き気味に上に向けられると、赤や黒のペンキが投げ付けられたビルの壁が映り、ズーム・アップすると窓ガラスには穴が開いていました。上海の総領事館の惨状を報道している時間だったのでした。先日の北京では、楽しそうな石投げ競争を存分に撮影させていたのに、今回は騒動の現場に撮影禁止指令が出されて、「惨状の跡」だけが公開されたとの事です。

■明らかに北京の共産党政府は態度を変えています。息を殺してじっと事態の推移を見守りながら、徐々に「反日」運動が、国益に反する単純な「暴乱」に変異する証拠を探しているように見えます。調子に乗っていると、天安門広場の学生と同じ目に遭います。参加している人々に直接質問をぶつければ、驚くほど無知な事がすぐ分かるのに、インタヴューよりも騒動の面白さをメディアは採り上げようとばかりしていますなあ。高額な出演料が無駄になるからでしょうが、中国情勢にも「歴史」にも詳しくない出演者に、素人コメントをぐだぐだと並べさせている時間を削って、得意の「100人に聞きました」を現場で行なえば良いものを、東京のスタジオに雁首揃えて、「心配です」「……ではないでしょうか?」などと隔靴掻痒(かっかそうよう)の時間潰しをしている場合ではありませんぞ!


●中国広東省:地元住民が台湾企業襲撃 工場廃水問題で
 中国広東省潮州市で15日、台湾企業の工場が、暴徒化した数千人に及ぶ地元住民に包囲され、工場内の物を略奪される事件が発生した。工場側は住民制止のため、地元の市政府に警察の出動を要請したが、派遣されなかったという。台湾の中央通信が伝えた。
 被害に遭ったのは電池生産を行う台湾企業「美美電池」の工場で、工場廃水が養殖用の海水を汚染しているなどとして地元住民に包囲、略奪を受けた。しかし、工場の廃水は地元当局の基準に適応している上、海水汚染もなく、参加した住民も具体的な賠償の根拠を持っていなかった。このため、同市に進出している台湾系企業からは、特定組織が背後で住民を操っているのではないかとの見方も出ているという。毎日新聞 2005年4月18日

 
■「反日」教育の総合体験実習として始まった今回の暴動は、こうして際限も無く「反日」の拡大解釈が加えられて、北京政府そのものへの抗議に向い始めております。どさくさに紛れて「給料値上げ」のプラカードまで出現した場所も有ったようですなあ。
「郵便ポストが赤いのも、あれもこれも、全部日本が悪いのだ!その日本を対峙した、共産党よ有難う!」のような棒暗記を10年もやらせれば、「腹が減るのも、失業も、病気も怪我も、貧乏も、みんな日本が悪いんだ!」と言い出す輩(やから)が出て来るのは当然の事であります。「走資派」「実権派」「反動分子」「反革命」等等、生存権を奪い取るレッテルの発明にかけては抜群のセンスが光る共産党の手腕は、天安門事件あたりから鈍っておりますなあ。しかし、現政権の正当性と無謬性を主張するために、次々と打倒された悪人のリストを教科書で覚えさせられた人民は、「絶対に自分だけは、その中に入らない」と固く心に誓っているのです。

■「反日無罪」というのは、「党の教えを忠実に守って日本を憎み、日本を詰(なじ)り、日本を責めているのですから、罪ではないですよねえ?」と中南海(政府要人の居住区)に向って、念押ししているのです。暴れている人民も不安なのです。例え、誰かの指示と扇動に従ったまでだ、と言い張れる根拠が有っても、その首謀者が連なる上層部が突然処罰されて失脚するば、芋蔓(いもづる)式に新たなレッテルを貼られて一網打尽にされてしまうのです。人民は毎年恒例の罪人引き回し大会も、弁護人など単なる飾りに過ぎない裁判制度もよく知っていますから、「共産党の敵」と決め付けられたら絶対に逃げられない事を骨身に沁みて分かっているのです。その一方で、その何倍も政府要人は不安の毎日を過ごしているに違い有りません。

■前任者の江沢民さんは、改革開放時代に「何もしなかった」事を認められて小平さんの後継者となりました。胡耀邦さんも趙紫陽さんも、大きな変革を実行しようとして失脚した後に残っていたのが江沢民さんでした。しかし、現総書記の胡錦涛さんは、ラサ暴動に対して躊躇せずに「戒厳令」を敷いて自ら武装した姿を示して断固として弾圧を実行した事で、小平さんに認められたのです。何度も失脚しては、不死鳥のように復活した小平さんの後継者選びは難航して、実務は朱鎔基さんに任せて、新しい時代のイデオロギーを提出する役を果たしました。江沢民さんが提案した「三講」と「三つの代表」が党の指導方針として認められて、全国的な運動が展開されたのです。この流れ柔軟路線でしたから、放って置けば共産党独裁体制が崩れていきます。それを防ぐ目的で強化されたのが「反日」教育運動でした。共産党の存在意義と正当性を保証して、改めて共産党への感謝の念を喚起しようという国内運動でした。しかし、最高指導者としては日本を訪問したり、日本の要人と会見するような機会が有れば、率先垂範(そっせんすいはん)して虚勢を張らねばなりませんでした。

■この江沢民路線を継承して、周囲に残る江沢民勢力を穏やかに除去している最中の胡錦涛さんは、やっと独自色を出し始めていました。出身が土木技術の専門家ですから、下手なイデオロギー理論などを捻り出すと足元を救われてしまいます。そこは慎重の上にも慎重に、江沢民理論を堅持する!と事ある毎に表明しています。しかし、実務派として成長した胡錦涛さんは、現実的な問題の解決を重ねて実績とする計画ですから、海外からの資本と技術を貪欲に導入して、中国の技術力を高めようと努力しているようです。山間地にダムを建設して発電所を稼動させて工業化を進めて来た人ですから、グローバル・スタンダードの会話が可能な人です。問題は共産党の指導者としての「正しい理論」を提案できるかどうかなのです。

■引退した江沢民さんも、完全に影響力を失えば、何を言われるか分かったものでは有りませんから、自分を蔑(ないがし)ろにしたり、裏切る気配が出ていないか、常に監視してるに違いないのです。こうした世代交代を巡る虚虚実実の駆け引きをしている時に、「反日無罪」運動を実行している人民に対する決定は、胡錦涛さんの政治生命に関わっています。これを全面的に罰すれば、まだまだ元気な江沢民さんが、「後継者に相応しくない!」の一声で巻き返しが始まりますし、放って置いたら「反日」が露骨な「反党」になって収拾が付かなくなります。実に悩ましい立場に追い込まれた胡錦涛さんの苦るしみを、にやにやしながら眺めている連中がうようよしているのです。

■ですから、今までに何度も何十回も、「毅然とした態度」を取るべき時が有ったのに、すべての機会を無にして来た腰砕けの日本外交を、ここで一気に挽回しようなどと考えるのは、愚の骨頂でしょうなあ。相手が困り切っているのに、北京に乗り込んで「外相会談」なんかを挙行して、何の得が有るのかさっぱり分かりません!北朝鮮の拉致犯罪と核開発問題については、「じっくり、慎重に」を繰り返す政府が、日本のウッカリ青年が殴られたとか、店が襲われたぐらいで、外相が乗り込むというのはイカガなものか?外相が乗り込むべき時は、いままでに何度も有ったのです。最近では、サッカー場での暴力事件が有りましたね?日本の公用車がベコベコにされ、日本から応援に行った同胞が恐怖に竦(すく)んでいたのですから、あの時こそ、阿南大使と外相が「毅然として」北京に乗り込んで、正式な謝罪と賠償を求めるべきでした。あの時は「反日」運動という名目が無かったのですし、オリンピック開催が危うくなる、という友情に満ちた助言を添えて抗議出来たのです!今回は、あの時と事情がまったく違いますぞ!

■まさか、またぞろ阿呆な外交官が、今捻じ込めば、「相手は、きっと謝る」などと町村外相に耳打ちしたのではありますまいな?!「反日」運動を謝罪して、熱心な活動家を逮捕して処罰などしたら、これまでの江沢民路線を否定する事になってしまうじゃないですか!江沢民路線が間違っているのなら、小平理論だって、毛沢東理論だって……親亀のマルクス・レーニンは、とうの昔にコケテいるのですから、「中国の特色」で強引に社会主義の看板を死守している苦境を察して、今回こそ慎重に事態を見守るべきでした。後手後手に回り続けておいて、突然、振り向きざまに殴るような対応は最悪です。「仰せ御尤(もっと)も」「友好第一」「中国大好き」と言い続けた卑屈な能天気外交を、こんな時に変更するのは、取り返しの付かない禍根を残しますぞ!小泉首相は、「郵政民営化」と「盟友・山拓の変態選挙」しか頭に無いのですから、ますます知恵の足りない外務官僚の皆さんには、自重して貰いたいものですなあ。何なら、五月の連休を前倒しして、早めに長期休暇を全員に取って頂くのが、最善の外交戦術かも知れませんなあ。


●日中外相会談:町村外相が「おわび」と、新華社通信
中国国営、新華社通信は17日深夜、町村信孝外相が同日行った李肇星・中国外相との会談で「日本は中国に対する侵略で、中国人民に巨大な傷を負わせた」と述べ、「再び深い反省とおわび」を表明したと伝えた。
 中国各地で頻発した反日デモで、参加者たちは歴史問題で日本に謝罪を求めるスローガンを掲げた。中国当局は、日本側の歴史問題での「おわび」を強調することで、今週以降に予定されるデモの沈静化を促す狙いがあるとみられる。
 外相会談後の日本側説明によると、町村外相は「日本の歴史認識は日中共同宣言、日中平和友好条約、村山富市首相(当時)が発表した談話(95年)のとおり。日本は過去の戦争を厳しく教訓として、受け止めている」と語った。新華社の報道はこの部分を「深い反省とおわび」と位置づけているとみられる。毎日新聞 2005年4月18日の記事抜粋


■こうなる事は誰でも分かっていたのではないでしょうか?珍しく、こんな単純な事にも気付かない特殊な日本人ばかりを、外務省は採用し続けているのだとしたら、もうダメかも知れない。

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胡錦涛の後を誰が考えているのか?

2005-04-18 06:40:00 | 外交・情勢(アジア)
言わないこっちゃない!
■マスコミ各位、ブログで発言の皆様、今も何かの原稿を書いている皆さん、問題は「胡錦涛の次」なのだと分かった上で、「言説」を操っているのでしょうか?黙って聞いていれば、いい加減にしてくれ!と言いたくなる流れが続いています。


●中国反日デモ:
胡錦濤体制に打撃 統治能力の限界を露呈

中国各地で16日、広がった反日デモが、胡錦濤国家主席-温家宝首相体制に、少なからぬ衝撃を与えたのは間違いない。統治能力の限界を露呈したことで、指導力の低下を招く危険性がある。対外的なイメージを損なったことで、中国が目指す国際社会での地位向上にも影響を与えそうだ。

中国は3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で、江沢民・前国家主席が唯一保持していた国家中央軍事委員会主席のポストを離れ、胡錦濤氏が共産党、国家、軍のトップとして三権を完全掌握した。2週連続で中国国内の日本の在外公館が被害を受けたのは、「胡錦濤時代」が名実ともに幕を開けた直後だった。

胡錦濤指導部が、最優先に取り組むのは「格差是正」「調和した社会」の構築であり、それには「社会の安定」が欠かせない。中国当局は反日デモの原因は「日本に責任がある」(外務省報道官)との立場だが、暴徒化した市民の破壊行為は治安を損なう要因といえる。
……胡錦濤国家主席は今月下旬、インドネシアを訪問するのをはじめ、秋まで首脳外交の日程が目白押しだ。中国の国際的信用回復には反日デモを、どのように食い止めるかが、かぎになりそうだ。
毎日新聞 2005年4月16日


■この報道の重さを誰が真剣に考えたでしょうか?チャイナの主要都市には、小平と江沢民が笑顔で並んだ大きな看板が、長い間立っていたのです。そこに毛沢東も加えて建国五十周年を祝いました。その隣に胡錦涛さんが並ぶはずなのですが、そんな看板はまだ出現していないようです。胡錦涛さんの大出世を決定付けたのはチベット動乱に対する「戒厳令」発令でした。それが同年の天安門事件の前触れとなった事から小平さんの大抜擢がありました。しかし、世の中はすっかり変り、今回の暴動は「野蛮な未開地」で起こったものではありません。今、中南海で起こっている権謀術数の限りを尽くした権力闘争の全貌を見抜いた上で、町村外相が北京に乗り込んだのでしょうか?テレビのニュースでちらりと見えた、名門?阿南家の御子息である中国大使の御顔は、事の重大性をぜんぜん知らない風でしたが、下賎の者には伺い知れない虚虚実実の駆け引きをなさっているのでしょうか?


中国反日デモ:各地で拡大 当局の想定超える現実示す
日本の国連安保理常任理事国入り、歴史教科書問題などに抗議するデモが16日、中国各地で拡大したことは、「反日」のうねりがすでに中国当局の想定を超えている現実を示した。中国当局がデモの過激化を阻止するため、万全の備えをし、各地で無許可デモを取り締まる通知を出した翌日、騒動がさらに広がったことで、17日の日曜日やそれ以降の週末にもデモが継続する可能性が出てきた。中国最大の経済都市である上海では15日に公安当局が市民の携帯電話に無許可のデモ参加を禁じるメールを送信したばかり。市政府も冷静な行動を呼びかけていただけに、総領事館や日本料理店の破壊行為を伴う大規模反日デモが発生したことへの衝撃は大きい。
 デモ参加の呼びかけは13日ごろからインターネット上に流れており、今回のデモのコースはそれに沿ったものだった。呼びかけには「中国に駐在する日本人の友人に対する活動ではなく、日本の右翼勢力に向けられたものだ」「日本人が投資する商店に破壊的な打撃を与えるな」など理性的な内容もあった。実際、デモ参加者には子供連れやアベックも含まれ、当初は平和的に行進していた。
だが、参加者が次第に膨れ上がり、目的地の日本総領事館手前で武装警察に行く手を阻まれると、付近の日本料理店の看板を壊すなど一部が暴徒化。「愛国無罪(愛国的行為は罪にならない)」と連呼し、当局の制止を振り切って、総領事館前になだれ込み、石やペットボトルなどを総領事館の建物へ投げつけた。毎日新聞 2005年4月16日


■こうした報道が大半を占めているようですが、世紀の変わり目に訪日して、天皇陛下を前にして「反日」演説をして見せた江沢民さんの真意を、日本のマスコミは誰も読み取れなかったのではないでしょうか?彼は本気も本気、中日(プロ野球チームの名前ではありません!)友好関係の後を考えて発言していたのです。「友好」の次の時代は「敵対」の時代です。一度、条約に調印すれば、永久に「友好」の時代が続くと書き、歌い、祝うのは下々の者の仕事です。外交と国政を預かる者の視点は、自ずから違っていなければなりません。まさか、国会に雁首(がんくび)揃えた先生方も、外交エリート官僚の全員が、下々と一緒にパンダ祭りに浮かれていたのではありますまいな?毛沢東の「非科学的」社会主義思想が終わる時、現実的な食糧とエネルギー問題が10億人を越える民を養う切実な問題として全面に出て来る、そんな馬鹿馬鹿しくも基本的な「予感」を誰も持たなかったとしたら、日本は滅びる確約をしていたことになります。

■チャイナから「10万人の留学生」を迎える!と大風呂敷を広げた中曾根さんは、日本を手本にして大気汚染や水質汚染を代表とする「公害」がチャイナに出現するとは想像もしなかったのかも知れません。しかし、総理大臣だった彼の周囲に、子供でも分かる昭和史の基本構造を講釈する人材は居なかったのでしょうか?これから、チャイナに、自動車社会・ファミリーレストラン・IT長者が、短期間の内に出現します。その原材料とソフトの供給源として日本が栄える時期は非常に短い事も、現地で奮闘した経験を持つ実業家は知り尽くしています。食えなくなったチャイナの人々が、日中友好時代のコネを使って逆流して来ます。多少の土建業の海外受注を取った後の怖さを、田舎政治家が認識するのは不可能です。日本中に使いようの無い高速道路網を中途半端に造り、在来線を絶滅させて「新幹線」を引き回した、バブル政治家が、続々と特別な年金生活に入って行く時代です。国内の政治的負債も追求できずに、へらへらとニュース・ショーの「ご意見番」に利用しているようなテレビ・マスコミでは、中国問題を解剖して対応策を出して貰えるはずなど有りません!


中国反日デモ:歴史わい曲批判の動きに共感 韓国報道
中国の反日デモについて、韓国では日本の歴史わい曲を批判する動きとして共感を持って報じられている。
韓国のニュース専門テレビYTNは16日、「歴史教科書わい曲反対」を叫ぶ上海のデモ隊の姿を大きく報じ、「経済都市・上海(のデモ)は波及効果が大きく、象徴的な意味を持つ」と伝えた。また、若い世代に影響力のあるインターネット新聞「プレシアン」も、「予想外、上海の大規模デモに日本は衝撃」と記事を配信した。
…中央日報は12日付社説で「日本は東北アジアの反日の風に注目すべきだ」と訴え、「韓中日の和解は、日本の反省と責任ある行動から始まる」と日本に解決策を講じるよう促した。毎日新聞 2005年4月16日


■北朝鮮の拉致犯罪も核武装も、「冷静な対応」と「総合的な判断」で対応できると言い張る靖国・横須賀・慶応・英国留学?総理大臣は、田舎の特定郵便局が徒党を組んで田中角栄さんの勢力を応援していた頃の怨念を晴らそうと、意地になって「郵政民営化」に執念を燃やしております。もう、財政投融資の蟻地獄にはフタが付いています!英国仕込の魂消るほど下手糞な英語を駆使して、これまた英語が下手糞なブッシュさんと、奇妙なコミュニケーションを取って点数を稼いでいるばかりで、外交問題に関しては、あれもこれも「前任者のやらかしたチョンボでしょ?」と言いたげな表情を持ち続けているようにしか見えませんなあ。北京の胡錦涛さんは急に表舞台から消えましたが、気が付いてみれば、我が国の外交戦略の全面に立つべき首相が居なかったという事実を、この週末に日本人全員が再認識したのではないでしょうか?認識していれば、まだ救いが有るかも知れません。


●中国反日デモ:日本政府、中国外務省に電話で抗議
政府は16日、上海の反日デモで日本総領事館に被害が出たことについて外交ルートを通じ中国側に強く抗議し、謝罪と賠償、再発防止などを求めた。町村信孝外相は同日夜、「(反日デモは)3週連続で起こっており、はなはだ遺憾だ。十分な警備が行われていなかったと判断せざるを得ない」と記者団に語り、中国側の対応を批判した。町村外相の訪中を17日に控え、中国側が反日デモをどれだけ規制できるかを注視していた政府は、上海にデモが拡大したことにショックを受けている。外相は16日夕、外務省に幹部を集めて対応を協議し、予定通り17日に訪中して李肇星外相に謝罪などを改めて求めることを決めた。外務省はまた、「デモの情報が事前に察知されていたにもかかわらず、未然に防止されないまま投石などの暴行が行われた」と中国政府に抗議する外務報道官談話を発表した。談話は「中国各地における今後の類似の事態の拡大に危惧(きぐ)を覚える」と中国側が再発防止に真剣に取り組むことを求めた。毎日新聞 2005年4月16日


■チャイナ・スクールの出世頭が豹変!北京政府としては弱り目に祟り目ですなあ。この恨みは、後々高くつきますぞ!チャイナ・スクールを快く思っていない米国ファンやら欧州ファンの外務官僚が、ここぞとばかりに町村外相にあることないこと言わせようとハシャイでいるのではないでしょうか?勿論、チャイナ・スクールを飼いならしていたチャイナの外交部でも、所詮こいつらは「人事」と「恩給」と「天下り先」しか頭の中には何も無い、という痛い事実を見抜いていますから、本気で裏切りを怒ることもないでしょうなあ。


●町村外相訪中:ネットで17日のデモ呼びかけ相次ぐ
町村信孝外相が17日訪中するのに合わせ、中国のウェブサイト上で反日デモ実施を呼びかける書き込みが相次いでいる。16日までに確認されたのは、四川省成都や海南省海口、遼寧省瀋陽、福建省アモイなど少なくとも14都市。17日午前9~11時に集合するよう記載されている。一連のデモ情報は、主にインターネットや携帯電話を通じ伝えられてきた。毎日新聞 2005年4月16日


■この一年間、チャイナ全土で起こっている命を懸けた大暴動を、まともに報道しなかった日本のマスコミが、ちょっと心配な「語学留学」をしていた二人のお兄ちゃんを大々的に取り上げて、「中国が嫌いになりました」などと発言させて、視聴者に媚びています。ならば、あのお兄ちゃん二人は、どれほどチャイナに思い入れを持っていたのでしょう?獲物を探し回っていた馬鹿野郎が、とても分かり易い発音で、「あなたは日本人ですか?」と国内の中国語教室で日本語に訳した文と同じものを、ゆっくりと質問して、「トイ、トイ(はい、はい)」と嬉しくなって答えたのが、ビール瓶でぶん殴られた原因ではないのか?言語教育には、「嘘も方便」の特別授業も必要なのです。戦後の日本は、世界も社会も、学校も、表面しか無いのっぺらぼう構造だと教え続けたのですから!反日暴動が起こっている江沢民さんの地元で、「日本人である事」の意味も分からない人は、生意気に「留学」などしては行けませんぞ。イラクに暢気な服装で出掛けて殺害された青年と、今回、上海で殴られた二人の青年に、まったく違いが見つけられなかったのは小生だけなのでしょうか?

■外務大臣だけは、こうした能天気症候群に毒されていない事を祈っていたのですが、何だか、もっと酷い高揚感を誰かから焚き付けられて北京に入ってしまったように見えるのですが、どうでしょう?政権地盤が不安定な相手を追い詰めるのならば、彼よりも組し易い「次の相手」を想定していないのならば、それはヤクザの鉄砲玉と同じですぞ!胡錦涛の次を、外交エリート集団は二人か三人はちゃんとリストアップしてあるのでしょうね?

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園田直を知っていますか? その四(4/16)
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園田直を知っていますか? その弐(4/15)
園田直を知っていますか? その壱(4/15)
「暴行事件」を見棄てる話(4/14)
外務大臣、御用心!(4/13)
「暴動スイッチ」ON(4/13)
中国が謝る時(4/12)
「中国の暴動」を考えるヒント(4/11)

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園田直を知っていますか? その五

2005-04-17 09:12:42 | 外交・情勢(アジア)
■そもそも商売というものは、政治とは無関係に裏でも表でも逞しく続けられるものですから、日中間には少ないながらも貿易関係は有りました。しかし、70年代後期には中国側の外貨不足が露呈して、裏でこそこそやっている場合では無くなり、経済界からも「公費投入」の要求が出たようです。何のことは無い、最初の援助資金は中国側が穴を開けた日中貿易の穴埋めに使われたのです。しかし、こうして生まれた中国利権は田中派の独占状態となって、闇将軍の異名を取って田中さんが「キング・メーカー」として造り続けた内閣は、際限も無く中国への援助額を膨らませて行きました。「キック・バック」や「マージン」、「口利き料」などの諸雑費は、何処をどう流れて消えたのか、誰にも分かりませんなあ。相手が「賄賂」と「手土産」万能のコネ国家なのですから、日本側でも遣り放題だったと想像されます。
1979年12月、日本は中国に対して初の政府円借款の提供を承諾。翌年には無償援助と技術協力も始まって、


①西側の一員として中国の近代化を助ける。
②「資源の開発輸入」 などを含む対中経済関係を拡大する。
③戦争賠償を放棄した中国に対して出来るだけの協力をする。


という遠大な計画が打ち出されました。日本経済が上昇期で、「ODA中期計画」のように援助拡大への国際公約を掲げる輝かしい時期でありました。しかし、この頃の国債残高は何とか返済可能な金額に収まっていた事実も確認しておきましょう。日本は、庶民がバブルに浮かれ騒ぐ前に、政府が外交部門でバブル踊りを始めていたのです。1980年から現在まで、中国は日本から約三兆円超の円借款と、その約十分の一の規模の無償援助と技術協力を受け入れています。しかし、そんな事は一行も教科書には載せないし、人民日報にも書かないのが皇帝の国の流儀です。体質なのですから怒っても仕方が有りません。詐欺犯罪は、乗せられた方も半分悪いのですが、自分の金ではない「税金」を騙し取られても、偉そうに晩年を過ごせるくらいの心臓が無いと、とても政治家は務まりませんなあ。


● 第36回国連総会一般討論における園田外務大臣演説(抜粋)
[場所] ニューヨーク [年月日] 1981年9月22日

日ソ両国間には現在なお未解決の領土問題が存在しております。我が国がソ連に返還を求めている北方領土は,歯舞群島,色丹島,国後島,択捉島でありますが,これらの諸島が,我が国がサンフランシスコ対日平和条約で放棄した千島列島に含まれていないことは,歴史的にも,また,法的にも明らかであります。私は,この領土問題が未解決のため両国間の平和条約の締結をみるに至っていないことが,両国関係を安定的な基礎の上に発展させるための大きな障害となっていること,また,近年,ソ連が,我が北方領土において軍事力の配備・強化を行うという,極めて遺憾な事態が生じていることを指摘せざるを得ません。日本政府としては,このような事態の速やかなる是正を求めるとともに,北方領土問題を解決して我が国との平和条約を締結するための話し合いの関につくことをソ連に強く求めるものであります。私は,この問題が解決され我が国とソ連との間の真の友好関係が発展することはアジアひいては世界の平和と安定に寄与する所以であると確信するものであります。


■日中平和友好条約を締結し、対中援助も順調に「拡大」し始めた時期の園田さんは、きっと自分は世界一の外交通だと思い込んでいたのではないでしょうか?誰が書いた作文かは存じませんが、この時の国連演説は見事な出来栄えでした。天下の国連でソ連を名指しして「島を返せ!」と演説していました。最近、国連演説で注目すべき名演説が無くなってしまったのは、外務官僚の作文力が低下したからなのでしょうか?
当時の日本政府の認識では、国境問題は北にしか存在していませんでした。韓国とも中国とも「国境問題」を正式に交渉した形跡が有りません。金を与えて御機嫌を取っておけば、外交関係は円満に進む、そう信じ切っていたとしか思えません。余り相手を見くびっては行けませんなあ。韓国でも中国でも、国内の政治問題が片付けば、国民教育に努力を傾注して人材を育てて国力を蓄え始めるのは当然のことです。油断大敵火がぼうぼうですなあ。
この演説で園田さんが怒っている北方領土での「ソ連の軍備強化」は、園田さん御自身が締結した条約に紛れ込んだ一文が原因でした。こういうのを世間では「マッチ・ポンプ」と言うそうですなあ。
当時のソ連はアフガニスタンに侵攻して、いよいよ泥沼化が始まっていたのですから、好き好んで北方領土に兵隊を集めたくはなかったのです。日本が中国の口車に乗って「喧嘩を売った」から、それなりの対応をしたのでした。

■中国にとっては、葱を背負ってきたカモが「咬ませ犬」にまでなってくれるのですから、外交部では祝杯を上げていた事でしょうなあ。当時の日本の自衛隊の皆さんは怒髪天を衝くような怒りに震えていたのです。核保有国相手に「専守防衛」と言う名の「標的」になれ、と命令されるのですから、それは神風特別攻撃隊よりも惨めです。「自分から志願したんだろう」などと無責任な言葉を吐く同胞の声を背に受けて、ソ連軍と対峙するのですから堪ったものではありませんでした。ソ連がロシアになって、やっと、「島二つ」返そうかなあ?などと言い始めています。どうして、四つが二つになるのか、外務省から納得の行く説明を聞いたことが有りません。確かに日本側の誰かさんが「二つで手打ち」と言ったらしいのですが、とんでもない事です!もっと酷いのが、「樺太」の扱いです。70年代までは、日本で発行される地図には樺太の南半分は白い色で塗られていたではありませんか?樺太の南半分は、北方領土と同様に日本が降伏したどさくさに紛れてソ連が強奪した領土です。それが、何時の間にやら交渉記録も外交文書も無いまま、何となくロシア領になっているらしいのです!日本の外務省は、「総領事館」を樺太に建ててしまいました。日本国内に日本大使館や領事館は建てませんから、これは外務省が樺太をロシア領だと勝手に認めてしまった事を意味します。そんな外務省なら、尖閣諸島だろうと、竹島だろうと、沖縄だろうと、国民に無断で他国に渡してしまうかも知れませんぞ!

■外務省を統括・指導するのが外務大臣という役職です。それを統括するのが総理大臣です。余り、馬鹿馬鹿しい選挙を続けていると、頭のオカシイお役人が、日本の予算どころか領土まで食いつぶしてしまいますぞ!
組閣の時期になりますと、新閣僚が順番にマイクの前に出て、珍妙な就任会見を催しますなあ。


「ええー、オホン、この度ぃ、○○大臣をぉ、拝命致しましたぁ。△△××でございます。ええー、浅学ぅ菲才のぉ身ではございますが、粉骨砕身、全身全霊を以ってぇ、職務をぉ全うする所存であります。つきましてはぁ、これからぁ良く勉強させて頂きましてぇ、大臣の名に恥じない仕事を致す所存で御座います。」


これがただの作文ではなく、本当に大臣職に必要な知識も経験も無い!という正直な告白だったらどうしましょう?大臣様が勉強するなら、その先生は官僚群しかいませんぞ!「三尺下がって師の影を踏まず」官僚の操り人形になります、という意味の決意表明です。勢いだけで外務省に殴りこんだ田中真紀子さんは自滅しましたから、同じ目には遭いたくないなあ、と誰でも思うでしょう。政治家にとって最も必要な能力が、官僚直伝の答弁棒暗記能力である限り、日本の領土は定まりますまいなあ。

■園田直さんは、艶福家としても有名で、何でも臨終間際の床を囲んだ家族から「もう、他に隠し子はいませんね?」と確認を取られたという伝説が残っています。その園田さんのジバン・カンバン・カバンを継承した御子息が、今も国会議員として頑張っておられます。おそらく偉大な父を尊敬なさっておられるんでしょうが、間違っても日中外交を褒め称えるような、恥の上塗りは謹んで下さるよう。切に望むところであります。


●2003年選挙  熊本4区
得票数第一位 園田博之、父親は衆議院議員(園田直)
自由民主党所属 前 137,428 当選


父上の汚名を晴らすべく是非とも頑張って頂きたいものです。中国に言われるまでもなく、「正しい歴史認識」は必要なのです。これから「尖閣諸島」の名がマスコミに氾濫するでしょうが、その時に園田直さんの名前を思い出して下さい。浅薄なマスコミの解説に隠れた歴史が分かります。長い間の御静聴を感謝いたします。

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園田直を知っていますか? その四

2005-04-16 08:55:00 | 外交・情勢(アジア)
■英国首相として第二次大戦を戦ったチャーチルが、逸早く東西冷戦構造の出現を警告した、有名な『鉄のカーテン』演説が行なわれたのが1946年3月5日でした。中華人民共和国が建国されたのが1949年の10月1日です。社会主義陣営の主要な地位を占めようとスターリン崇拝を取り入れ、それを毛沢東の権威付けに利用しようとしていた頃から、西の領袖・ソ連に負けじと、北京政府も他国の社会主義運動を援助しています。決してタカッテばかりいる国なのではありませんでした。そんな事は、日本の政治家も外務省も百も承知でODA資金の多くを中国に供与していたのです。
建国間もない50年代初期から文化大革命が終わった70年代後期まで、中国は「抗米援朝」 戦争と 「抗米援越」 戦争に積極的に加わり、北朝鮮と北ヴェトナム (1975年南北統一)を援助し続けました。残念ながら、親分のソ連から武器・弾薬をお下げ渡し頂いていた身分ですから、貰った方がぶつぶつ文句を言うような貧弱な物資が送られていたようです。「貧者の一灯」で戦えるほど、近代戦争は甘くはありません。事実、北朝鮮が朝鮮戦争を始めたのは、ソ連からの戦車と戦闘機の援助を受けたからでしたし、北ヴェトナム軍の装備は、日本の新聞が書き散らしたような米軍機を小銃で打ち落とすなどという物ではなく、ドイツ直伝のソ連製大砲がごろごろしていたのです。

■こうしたソ連と中国との援助競走は、ヴェトナムと北朝鮮に「中国怖るるに足らず」の気分を植えつけてしまったようです。今に至っても、メイド・イン・チャイナの軍需製品は安さだけが売り物です。毛沢東の名を不動のものとした解放戦争・国共内戦の期間を通じて、一丁のピストルも一発の弾薬も自前で生産したことなど有りませんでしたし、日本が米国に降伏した後、脇目も振らずに満洲に襲い掛かったのは、関東軍が備蓄していた膨大な武器弾薬を強奪するためでした。ですから、草創期の人民解放軍の皆さんは大日本帝国陸軍に「感謝」するべきなのですが……。「その節は、御宅の品物を無断で使わせて頂いて、本当に助かりました」と、菓子折りの一つも持って挨拶に来ても罰は当たりません。まあ、戦後の満洲での悲劇は別の機会に譲るとして、毛沢東は武器弾薬を、ソ連軍は女性や食料、目に付く品物は何と便器まで持ち去る徹底振りでした。貧乏人の強盗団ですなあ。因みに、ソ連はドイツに乱入した時に、本の活字と映画撮影機材を根こそぎにして持ち去ったので、ドイツの文化活動の復興が大変に遅れたのでした。負けるなら、米国のような金持ちに限る?という悪い冗談をこれくらいにしましょう。

■中国共産党政府は、大の仲良しだったアルバニアを筆頭に、アフリカやアラブ諸国にも援助を続けて、世界中の民族解放戦争を指導しようとしました。一番弟子のポルポトさんは師の毛沢東さんもビックリするほどの思い切った「革命」を実行してカンボジアの田んぼを白骨で埋め尽くしましたなあ。今もネパールの山賊が「毛沢東派」を名乗って頑張っております。勿論、中国政府は無関係だ、と主張しております。
いくら情報貧乏の日本外務省でも、海外の雑誌に掲載されている話くらいは切り抜いて持っていましたから、中国に大金を渡せば何に使うかぐらいは充分に想像が出来ました。
1978年8月10日、 小平副総理が園田直外相との会談で「 中国の対ヴェトナム援助は、 会談時点でのレートに換算すると二百億円以上で、その大部分が無償援助、一部が無利息の借款、ごく一部が利息付きの借款であるが、それも返却されるか不確定だ」と正直に言ったそうです。言っている本人が、日本からの借款を真面目に返済する心算があったのかどうかは、今では確かめようが有りませんなあ。「あれは御詫びとして貰ってやったんだ!」などと踏み倒されては日本の納税者が、黙って……いるかも知れないなあ。

■1966年から1976年までの文化大革命は、中国の経済を崩壊寸前にまで陥れた、と言われますが、現地で聞いてみると完全に崩壊していたようです。いくら見栄っ張りの中国でも無い袖は振れませんから援助能力の限界が見えて来ます。そこに慌てふためいて田中角栄さんが飛んで来たのですから、狂喜乱舞、盆と正月、七福神に阿弥陀様がいらっしゃったようなものでした。しかし、この時の神様仏様田中様は、妙に腰の低い救い主でした。
大変な金ヅルをつかんだ小平さんは、国内政治運動の「極左」路線をさっさと止めて1978年末には、「階級闘争を要とする」路線から、「経済建設を中心とする」近代化路線に転換してしまいます。日本の社会主義マニアはさぞガッカリしたでしょうが、ファンの声など聞いている暇など小平さんには有りませんでした。思想的な指導者の地位なら安いものですが、軍事的・経済的援助は高くつくので、面子を捨てて再び「被援助国」へと変身したのが、園田さんが外務大臣の時だったわけですなあ。

■「大躍進」も「人民公社」も「文化大革命」も、百害有って一利無く、莫大な物的損失と二千万人とも言われる人的損害を出しても、社会主義の意地を捨てられない輩(やから)が頑張っておりました。革命家という人達は、丈夫で長寿な方が多いようです。頑丈な肉体と強靭な舌と喉を持っていないと立派な革命家にはなれないようです。1978~1979年の間、 中国指導部内は命懸けの「政策論争」を戦わせていました。日本では「選挙に落ちればただの人」になるだけですが、社会主義体制の中では「論争に負ければ死体」になるので、それは必死の論争です。どこかの国の国会や市議会のように、ご老人が涎(よだれ)を垂らして昼寝をしているのとは違います。
そして、不滅のカリスマ・小平の指導力によって、「近代化を勝ち取るには、 先進国からの技術と資金を導入することが必要である」という馬鹿馬鹿しいほど単純な結論に達します。既に、カモが葱を背負って飛んで来たのですから、資金源に不安は有りません!
もう「自力更生」の破れ看板など捨てて、「外資・外債・外援」を断固拒否する狂気の「三無政策」も転換して、国際機関と外国政府からの資金援助でも借款でも何でも貰ってしまう事にしました。
元々、勧進元のソ連が自己崩壊を始めていましたから、中ソ論争が終結しても碌な援助は期待できない事は分かっていたでしょう。

つづきは最終回で
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園田直を知っていますか? その参

2005-04-16 08:50:00 | 外交・情勢(アジア)
■では、「日中平和友好条約」本文を見てみましょう。最初に注目すべきは、第二条です。若い日本人は、この短い文がソ連を激怒させ、北方領土で東西対立が冷戦から熱戦に変る危機が発生した事実を知らないでしょうなあ。

第一条
1 両締約国は、日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
2  両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。

第二条
 両締約国は、いずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇(は)権を求めるべきではなく、また、このような覇(は)権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。

第三条
 両締約国は、善隣友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する(以下省略)

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■第二条が有名な「覇権条項」と呼ばれた日本外交の禍根です。この条項は、露骨にソ連を非難する内容になっています。と言うのも、50年代のフルシチョフによる「スターリン批判」から始まった中ソ論争が、現実の国境紛争にまで発展してソ連は邪悪な「覇権国家」だと中国側が口を極めて避難していた時期でしたから、この文言は日本が中国と手を結んでソ連と対決するという意味になってしまいます。勿論、日本側はそんな間尺に合わない内輪揉めに巻き込まれたくないので、この条項を削除しようと抵抗はしたらしいのですが、外交下手はこういう決定的な場面で表面化してしまいますなあ。後先考えずに、園田さんは署名してしまったのです。中国側は大喜び、一緒になって大喜びしていて外務大臣が務まるものなのです。日本と言う国は……。外交交渉と宴会の隠し芸との区別が付かないのか、相手に受けると、「友好的」だったと喜んでしまうのが日本の外交です。相手が怒れなくなってしまう交渉術が必要なのですが、真正面から相手を喜ばせる努力をするのは外交ではありません。この条項に反応したソ連は、艦隊を日本海でうろつかせ、北方領土の駐留軍を急速に増強しました。勿論、定期便だった領空侵犯の回数も激増したのです。防衛庁の幹部が、「来たら勝手に撃つ」という当たり前の発言をして日本中が大騒ぎになりました。誠に日本はお目出度い国で御座いますなあ。

■この条約が効力を発揮して実際に動き始めると、大盤振る舞いの経済援助という名の「お詫び金」が北京に送られ始めるのです。そのパイプを支配したのが田中角栄さんで、後のロッキード裁判で針の筵(むしろ)に座らされていた頃に来日した小平さんは、日本のマスコミ陣をぞろぞろと引き連れて目白の田中御殿を訪問して見せます。何でも「井戸を掘ってくれた恩人」を忘れないのがチャイナの道徳なのだそうです。水と金は同義ですなあ。井戸水は一時も枯れては困りますから、この比喩は言い得て妙でしょう。要するに、井戸水のように「送金を絶やさないでね」という意味でしょうなあ。それを大喜びで握手で応えていた田中角栄さんもどうかと思います。確かに武者小路実篤さんが言うように「仲良きことは美しい」のですが、外交はもっと生臭くて血腥(ちなまぐさ)いものです。政治は古来からマツリゴトとは言いますが、お祭り騒ぎとはまったく違いますぞ!第一、相手は無神論の唯物史観を教科書にしている社会主義政権ですから、一緒にお祭り騒ぎは出来ません。

■この条約の第一条には、はっきりと「領土の保全」と書いてあるのですが、国境線に関しては全部棚上げにした条約でした。朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化を目指して、「拉致」の二文字を盛り込めなかった日本の外務省ですから、それ以上に重大な意味を持つ「国境問題」を扱うのは不可能なのです。省略した条文の中に、国境に関する取り決めも、今後の交渉も書かれていません。ということは、国境問題は、剥き出しのパワーゲームの中に放置されたままで、日中国交は始まったのです。たまたま、文化大革命の傷が癒えないまま、ヴェトナムとソ連の代理戦争を行なわなければならず、朝鮮戦争での教訓も生かされず、結果的にはソ連の最新兵器を持っていたヴェトナムに敗退してしまいます。国内の政治体制を復興させねばならなかった当時の中国は、国境を越えて出陣する翼も牙も無かったのです。日本は、中国を可愛い「猫」だと思ったのかも知れませんなあ。土レンガの長屋、汲み取り式のトイレ、薪や石炭での煮炊き、自転車にズック靴……嗚呼、かわいそうに、と愚かにも同情などしたのでしょうか?チャイナは安定期に世界の富を集め、動乱期に何もかも失う巨大なサイクルを歴史として持っていますから、獅子身中の虫の退治が終われば、海外華僑や台湾資本が集まって来るという計算が有ったはずです。その呼び水として日本の「お詫び金」はとても重要でした。しかし、それも用済みとなれば、日本に対して牙を剥くのは当然の話です。「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを取るのが良い猫だ」と言った小平さんは、中国を凶暴な虎に育てる努力を続けていたのですなあ。

■次回の「その四」では、中国のお金の遣い方を、当時の日本の外務省がどこまで把握していたのか、それは分かりませんが、簡単に振り返っておきましょう。そうすれば、中国政府の態度が変化した理由が良く分かると思います。
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園田直を知っていますか? その弐

2005-04-15 09:03:04 | 外交・情勢(アジア)
■戦後、1954年7月にスウェーデンで開催された「世界平和集会」に出席の帰路、中国に立ち寄った園田さんは生涯を日中国交回復と日中友好に献げる決意をして政界に入ったそうですが、この頃のチャイナはソ連の援助を受けて「第一次五ヵ年計画」を前年に開始して「中華人民共和国憲法」が公布されました。まだ、「大躍進運動」から始まる権力闘争も起こっていませんでした。
その18年後の1972年に国交正常化に踏み切るのですが、この期間は今も真相が良く分からない大事件が続発した激動期でした。原水爆を所有し、国際連合の常任理事国の座も手に入れた中国は、米国の対ソ封じ込め戦略を存分に利用して新しい時代を迎えます。何がどうなっているのか分からないまま、日本はニクソン米大統領の訪中に腰を抜かして慌てて動き始めました。昔のシナと、当時の中華人民共和国の区別も付いていなかったと思われます。何故なら、今も昔話と現実を混同している政治家や知識人がうようよしているからです。露骨な宣伝情報しか出てこない「社会主義国」は、理想国家だと信じ込んでいる人と、戦場を歩き回ってシナの貧しさと悲惨を目撃した経験を持つ人は、日中国交正常化に関しては意見の対立は有りませんでした。

■しかし、当時のシナの貧しさは清朝崩壊以来の動乱と、軍閥同士の内紛が大きな原因でした。日本軍が点と線を結んでうろうろしていたからシナが貧しくなったのではありません。それは辛亥革命を起こした孫文があちこちで演説し、著書にも書き残していますから確かでしょう。それが、いつの間にか、中華五千年の文明を「日本だけ」が破壊して迷惑を掛けた事になっています。シナの人々が逃げ回ったのは、軍閥同士の内戦と国民党と共産党の殺し合いに巻き込まれないためでした。確かに満洲を出て南下してしまった日本軍は、明確な戦略目標も無く場当たり的に大陸をうろうろして、毛沢東を大喜びさせたのですが、同士討ちの混乱の中で起こった全ての災厄の責任を押し付けられる謂(いわ)れは有りません。チャイナの「正しい歴史認識」は、日本軍対チャイナの民という便利な構図を基盤にしています。台湾に逃れた蒋介石は、何度も大陸侵攻を企てては米国に邪魔されたり制止されたりしてイライラしておりました。当時の北京と台湾との間で投げ付けあった悪口雑言は、いつの間にか消え去って、「台湾は中国のもの」「悪いのは日本だけ」という暗黙の了解が出来上がってしまいました。それは国交正常化後の話です。

■更に6年後の1978年8月12日に園田さんは、外務大臣として日中平和友好条約に署名、調印する役回りになりました。「日中平和友好条約の締結が出来なければ生きて帰らぬ」という悲壮な決意で日本を出発したそうですが、園田さんが東アジア戦略を持っていたのかどうか、はなはだ心元無い状態だったのではないでしょうか?個人的な思い込みで外交を進めては行けませんが、自民党内の派閥争いが外交に影響を与えるのは、もっと行けませんなあ。当時の園田さんは、福田派の議員でしたが、大親分の岸信介(安倍晋三さんの祖父)さんは、無邪気な中国好きの園田さんを「園田は隠れ共産党員だ」と非難していたのに、福田内閣(1976.12~1978.12)の官房長官に就任するのを認めていました。しかし、途中から娘婿の安倍晋太郎を幹事長にしろ!と駄々を捏(こ)ね始めます。福田派の中に跡目争いが勃発すると、福田総理大臣は「妥協策」として園田さんを外務大臣にしたのでした。適性も能力もまったく関係が無い役割配分ですなあ。

■そんな、「取り合えず」人事の結果で外務大臣になった園田さんは意地になって、田中内閣以来の懸案だった「日中平和友好条約」の締結に走り出します。自民党の派閥というのは実に奇妙な集団で、親分の福田さんは、総理なのに外相の園田さんに功名を挙げられるのを嫌って、北京に行かせまいと裏で懸命に邪魔していたそうです。策士・園田さんは、福田さんの宿敵・田中角栄さんと裏で手を結んで、条約締結・調印を果たしてしまいます。何だか、意地の張り合いの結果、どさくさに紛れて調印されてしまったような印象が強いですなあ。では、その内容はどんなものだったのか、重要な部分を抜粋してみましょう。最初は前文です。


●日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約

昭和53(1978)年10月23日 条約第19号
昭和53(1978)年8月12日 北京で署名。10月18日 国会承認。10月23日 批准書交換・発効。(外務省告示296)

日本国と中華人民共和国は、千九百七十二年九月二十九日に北京で日本国政府及び中華人民共和国政府が共同声明を発出して以来、両国政府及び両国民の間の友好関係が新しい基礎の上に大きな発展を遂げていることを満足の意をもつて回顧し、前記の共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し、国際連合憲章の原則が十分に遵守されるべきことを確認し、アジア及び世界の平和及び安定に寄与することを希望し、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれ全権委員を任命した。
日本国     外務大臣 園田 直
中華人民共和国 外交部長 黄  華

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。


外交文書ですから、美辞麗句が並んでいますが「国連憲章」やら「アジア及び世界の平和及び安定」やら、今は昔の感慨が湧きますね。

その参に続きます。
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