普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

農家戸別保証制度について

2009-11-16 10:20:22 | 農村問題

 タイトルの農家戸別保証制度について既に何度か取り上げて来ましたが、今日の朝日新聞の社説の農家戸別補償―拙速を避け、本格案に で取り上げていますので、この問題に集中して考えて見ました。
(いつもの書き方ですが青字は引用文、黒字は私の意見、緑字は補記です。)

 民主党が総選挙で掲げた政権公約の目玉の一つ、農家への「戸別所得補償制度」の導入に向けて、農林水産省が動き出したがこのままだと日本農業の再生はおぼつかない。
 最大の問題は、日本の農業衰退の原因となった「減反政策」を温存していること。さらに、大半の農家を補償対象としてしまい、農地の集約が進まなくなりそうなこと、である。
  大半の農家を保障の対象にしたのは選挙に勝つためのばら蒔き政策だと言われています。
 制度の導入に伴い農水省が来年度に要求している予算は約5600億円。事業仕分け作業などを通じて予算削減に力を注いでいる一方で、これほどの巨額が結果的に農家へのバラマキと化さないようにしなくてはならない。 
  事業仕分けで折角産み出した財源を下記のように朝日の指摘する農家の弱体化に繋がる戸別保障につぎ込むなど考えられません。
  私が前にも書いたようにこの制度こそ事業仕分けの対象にすべきだと思うのですが、鳩山政権は自党のマニフェストはその対象にしないそうです。
 減反政策は、需要が減っても米価が下がらないようにして、農家経営を支える狙いがある。この政策は40年間にわたって続けられてきた。つぎ込まれた財政資金は累計約7兆円。国民は消費者として高いコメを買わされ、納税者としても巨額の負担を担わされてきた。 
  この政策は自民党政府の農村票の取り込み策だったのは明らかですが、強い輸出企業に支えられた一億総中流意識を持てた良い時代だったから成り立ってきた政策です。
 そして今日本の輸出企業は中国などの台頭のために苦戦を強いられて、国民の収入も大きく落ちて来ています。
  1世帯当たり平均所得金額の年次推移 
によりますと、平成10年655.2万円、19年は556.2万円で約百万円の平均所得が減っています。
 これからは農業、林業、漁業なども頑張って貰わねば日本の貧困化はますます進むことになると思います。
 農業で言えば、貴重な生産資材である休耕田の活用は勿論、年間を通じての田畑の有効利用、農機具の有効活用などによる、生産性の向上、米から他の農産物への転換など、工業製品と同様に競争力の強化を図るしか農村だけでなく日本の生き残る道はないと思います。

 安い輸入米が入らないようにと、コメに778%という高関税をかけていることの弊害も大きい。世界貿易機関での農業交渉や主要国との自由貿易交渉の足かせになっている。
  民主党公約は米国とFTA交渉を進めると言っていましたが、農家の抗議で農産物は除くと訂正しました。
 米国に取って日本とのFTA交渉のメリットは農産物さの自由化であり、この項目を除くFTA交渉など事実上成り立たないようです。

 これほどの代償を払ったにもかかわらず(正確にはこの代償を払って) 、減反は日本の農業の足腰を弱めてきた。農家の増産意欲が奪われた結果、後継者不足や耕作放棄地の拡大に拍車がかかっている。
 戸別所得補償制度は、農家の販売価格が生産コストを下回った場合、その差額に補助金を払って農家所得を補償する仕組みだ。欧米ではこの政策が生産拡大に効果をあげている。うまく生かせば、日本のゆがんだコメ政策の転換と農業再生につながる。
  フランスの例で言えば殆どが大規模農家であり、大規模化のために強制的に集約化する制度もあるそうです。 (日本の場合棚田など集約化に不便な制約がありますが。)
 民意尊重の鳩山政権で強制的な集約化などできそうにありません。

 だが、農水省案のように減反を続けつつ戸別所得補償を導入するのでは、農家の生産意欲は高まらない。
 農水省は補償対象を約180万戸と想定し、(ばら蒔き政策で)ほぼすべてのコメ販売農家に適用しようとしている。しかし、副業でコメを作っている農家が所得補償を期待して農地を手放さなくなれば、少しずつ進んできた主業農家への農地集約の流れが止まってしまう。

  事実、兼業農家による貸し出し田畑の買い戻しの動きが報じられています。
 自民党政権は過去の農政失敗の反省に立って農地の集約化に向けた農地集積加速化政策進めて来ましたが、鳩山政権はこれを無駄として廃止して仕舞いました。
 ここは補償対象を農業を主業としている数十万戸に絞るべきではないか。
  鳩山政権の今までのやり方から考えると、農村票の減少に繋がることはほぼ絶対にしないでしょう。
 
メの生産と輸入を自由化する。米価が下がって、主業農家の経営は打撃を受けるが、所得補償で支える。その先に、高品質の日本米を輸出する道も開けてくるだろう。政府はそういう農業の未来をめざしてほしい。
  私は米の生産自由化は考えられても、米の輸入も自由化しろという朝日の社説は乱暴過ぎると思います。
 勿論、鳩山政権がそんなことをするはずはありませんが、
 高品質の米だけでなく果物などの様に製品の転換で輸出の増加図るべきです。
 農政の抜本的転換となるべき改革を、あまりに短期間に進めようという手法にも無理があるのではないか。拙速でない案を練り直すべきだ。 
   朝日では取り上げられていませんが、農村を地盤とする巨大企業?であるJAなどの農業団体の改革、今まで巨大スーパーなどで独占的に価格を決められるなど、農産品の流通システムの見直しなどやるべきことが一杯あるとおもうのですが。

[全体的な感想]

  全体的に言えば、農家の戸別所得保障制度は、農村の再生への効果は限られていることを考えると、農村票獲得のためのばら蒔き政策、そして農村の疲弊の固定化の政策としか考えられない様な気がします。

 何時も思うのですが、政治主導の行政改革、良く勉強している大臣以下の政務三役の活躍や官僚の国会答弁の禁止など国民の評価の高い政策や進め方と、今、問題になってている普天間基地の国外または県外移設、国民から評価の低い高速道路無料化、暫定税率廃止(して後から環境税導入)、これも効果が限定的と言われる子ども手当てのような耳触りが良いが問題だらけの公約、貧弱と言うより殆どないと言われる経済政策(農家の所得戸別保障に加えて、上記の目玉政策がそうだと鳩山さんが言っていますが)など落差が余りにも大きいのが目立ちますが困ったものです。
 これも選挙のためなら何でもありの一方で、政治に関して理想主義者?の小沢さんの考え方が民主党の政策に大きく影響しているような気がするのですが、果たしてどうでしょうか。

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