裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

木村拓哉

2009年10月05日 06時20分49秒 | Weblog
ツマによるとオレは、テレビでキムタクの新しいCMが流れるといちいち反応してるんだそうです。
「なるほど」とか「ほー」とか、ひとりごちてるらしい。
だけどオレは別にキムタクが好きなわけじゃなくて、彼の芝居のですね、質というか、こちらを引っかける(興味を引かせる)技術というか、特別な雰囲気を持ってるなあ、といちいち感知させられてしまうのでした。
ところで、ブラッド・ピットがある映画で演じたワンシーンがすごく印象に残ってるんで、ちょっと書かせてください。
たぶん台本では、そのシーンはト書きで「刑務所前でジョージの出所を待っている」とだけ書かれてると思うのです。
そこをどう演じます?
ブラピはですね、このシーンにかなりの長尺を費やしてるのですよ。
つまり彼は、スポーツカーに寄りかかってハンバーガーを食べている。(記憶だけで書かせてもらってるので、若干ちがうかも)
そのソースがこぼれて、手に付いてしまう。
汚れた手をスーツの裾にこすりつけてぬぐおうとする、が、思いとどまる。
それは、次の場面でジョージ・クルーニーに「なんだそりゃ、ロックスターか?」とツッコまれるまっ白な高級スーツだからなの。
これでふいてしまおうかどうか躊躇してるうちに、ふとジョージが現れたことに気付く。
ハンバーガーをひょいと放り捨て、指をなめた彼は、結局その手をスーツにこすりつけながら出迎えに向かう。
こんなシーン。
つまりブラピは、自分の役柄が「育ちの悪い人間」で「最近成り上がった立場」で「高級スーツを着慣れてなく」て「ジョージを敬ってる」ということを、このワンシーンで説明しきってるわけです。
「彼はついに成し遂げた。そして意気揚々とジョージを出迎えにいったのである」などとナレーションがつく映画があるけど、まったくヤボってものですよ。
ストーリー展開や状況の説明は、画面の中で演者が動くことのみによってなされるべきなのです。
そのシネマの構造を、ブラピはよく理解してるわけ。
日本人ならこのシーンをどう演じるかというと、門にもたれかかって、ふと目深にかぶった帽子のひさしを上げ(出所者に気付いた)、にやりと笑って歩き出す=5秒、といったところ。
絵コンテの中ではそうでも、そこから解釈を働かせて演じるのが本物の役者ってものでしょう。
つまり、そういうことができる役者なんじゃないかなー、と、オレはキムタクを見てるわけでして。
ゴールデンタイムのテレビドラマを観てると、登場人物たちがきちんと目と目を見つめ合って会話をしてます。
そんなニンゲン、実際にいます?
これは「見つめる相手に向かって話をしている」という、視聴者の目の動線を意識した演技上の記号(モンタージュ理論)であるわけなんだけど、舞台芝居ならともかく、テレビでそれをやるとリアリティが損なわれてしまいます。
そのへんをよくわかってる芝居ですよ、キムタクのそれというのは。
好きでも嫌いでもなく、「見せ方」をよく知るいい役者なのではないか、と思うのですよ。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
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