徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

もう18歳/「ハイティーンやくざ」

2012-11-17 03:24:34 | Movie/Theater
ハイティーンやくざ
1962年/日活
監督:鈴木清順
出演:川地民夫、初井言栄、松本典子、杉山俊夫、松尾嘉代、佐野浅夫、田代みどり、上野山功一
<吉村望と奥園守が共同で脚本を執筆、「百万弗を叩き出せ」の鈴木清順が監督した青春ドラマ。撮影は「事件記者 影なき侵入者」の萩原憲治。>(Goo映画

舞台は東京近郊のある町、チンピラ相手にも一歩も引かずに渡り合う正義漢である高校生・次郎。その腕を見込んで商店街の人々もやくざを追っ払ってもらおうと次郎に金を払い、用心棒代わりに利用する。しかし親友で今はやくざの子分となっていた芳夫に密告され、恐喝容疑で警察に補導されてしまう。そして新聞の見出しに「ハイティーンやくざ」の文字が…。
しかしこの映画、徹頭徹尾、青春映画なのである。何よりも川地民夫の青春アイドル映画である。
主役の“ハイティーンやくざ”次郎も言葉こそハイティーンらしく乱暴で、アルバイトをしている競輪場で車券を買ったりする程度の“悪さ”はするが、詰襟のカラーは上までしっかり止めているし、大学へ進学する夢もある。何よりも、次郎はやくざが嫌いで、この用心棒役にしても正義感からの行動でしかないのだ。
次郎の補導によって家族にまで商店街の人々から白い目が向けられ、家業の喫茶店(ロビン)も閑古鳥が鳴き、母親と姉はこの町から出て行くことになる。警察から釈放され、母を見送る次郎はこう話しかける。

次郎「母ちゃん、町をきれいにしようと思った俺の気持ちは間違っちゃいなかったんだよ。ただやり方を間違えたんだ。俺は俺ひとりの力でできると思っていたんだよ。でも、本当にやくざを追っ払うんなら、町の人の力が合わせなきゃできないんだ。俺はここに残ってそれを町の人にわかってもらうよ。おかげでずいぶんいろんなものを失くしちゃったなァ。ロビン、学校、芳夫…友達まで失くしちゃった…どうしたんだよ、母ちゃん」

たき(母)「次郎、おまえひとりで寂しくないかい?」

次郎「嫌だなァ、俺もう18だぜ」

この後に「手をつなぐ」とかいうやりとりがあるのだが(この辺りが蛇足で、説経臭い所以か)、「嫌だなァ、俺もう18だぜ」の笑顔、爽やかさ、清々しさはどうだ。まさに青春スターの輝き。このとき川地民夫、24歳。
次郎は家族と離れ、ひとり町に残り、やくざに利用されているだけの芳夫を正義の鉄拳と自爆的友情で立ち直らせ、街からやくざを追い出すことに成功する。
清順作品とはいえ主人公がタイトル通り、ハイティーンで詰襟の高校生設定のため(それこそやくざやチンピラならともかく)同時代の青春映画の域は出ていない内容だとは思うが、芳夫との造成地(?)でのアクションシーンの構成に見所あり。造成地(?)を挟んで団地の反対に田んぼが拡がる田舎風景というのがまた昭和30年代。

60年代カバーポップス時代の重要人物である田代みどりがラーメン屋の娘役で出演し、芳夫役の杉山俊夫と共に主題歌「イカレちゃった」をデュエットしている。これがいかにも青春映画らしく、というかいかにも昭和30年代らしく、青春のサムシング(だけ)を謳い上げるなかなかイカした楽曲。この辺は「信じられぬ大人との争いの中で」とか「この支配からの卒業」とかうっかり歌ってしまう80年代の青春とは違う。青春歌謡や後年の橋幸夫のリズム歌謡にも通じるリズムで「何かが欲しくて、何かが燃えててノックアウト」だ。
しかしまあ、やはり60年代とはいえ、半世紀前の映画ともなると風俗の記録映画としても観られます。

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