徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

サイコと妄執/「ザ・バニシング 消失」(1988)

2012-11-16 20:21:37 | Movie/Theater
ザ・バニシング 消失
Spoorloos/The Vanishing
1988年/オランダ=フランス
監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:ベルナール=ピエール・ドナドュー、ジューネ・ベルフォーツ、ヨハンナ・テーア・スティーゲ
<オランダ産のサイコ・サスペンス。レックスの恋人サスキアは、三年前に突然の失踪を遂げた。必死で探し続ける彼に、レイモンドという男が近づいてくる。レイモンドは、自分がサスキアを誘拐したのだと言い、犯行を再現するからレックスに同行しろともちかける。レックスは彼と行動をともにし、犯行を検証してゆく。>(Yahoo映画

謎解きよりも人物や心理描写に重きを置いていると見られる演出は、1988年の作品なのに70年代の古いホラー映画を観ているような気分にさせる。

ホラー映画のキャラクターというのはエキセントリック気味に描かれるのは了解している。
犯人役のレイモンドの設定やキャラクター作りはいかにもクラシカルなサイコキラーなのだけれども、何よりもそれに対峙するレックスもサスキアへの妄執では負けず劣らずのサイコに見える。またその他の登場人物もエキセントリックでこってりとしている。オープニングのレックスとサスキアのドライブシーンにしても、ストーリー上は“幸福”とされるレイモンドの家族だって怪しい。
何でこうも揃いも揃ってエキセントリックなのだ。
ダレる展開はまったくなく一気にラストシーンまで見せる展開は悪くないものの、“3年間探し続けた”形跡がエキセントリックにしか表現されないレックスや、サスキアに妄執するレックスの元をあっさり去る次の彼女とか、レイモンドに疑念の目を向ける次女とか、もう少しストーリーを展開できる要素があったと思うんだが…キャラクターの濃さに比べて構成のあっさり感は一体何なんだろう。要するにレックスとレイモンド以外の造形が雑だったんじゃないか。

とにかくまったく救いようのないラストシーン(結末)も含めて観る者を嫌~な感じにさせる映画である。
これ、カルト的に人気があったって解説があるけれども、それは傑作、ヒチコック云々というよりも、あまりにもこってりしたキャラクター造形が突っ込みどころ満載だからという意味なんじゃないだろうか(深夜帯に放送されたら、実況では楽しく盛り上がるタイプの映画だと思う)。エキセントリックな演出は勿論、拉致を失敗し続けるレイモンドなど正直、ほとんど笑いながら観ていたんだけどw ちょっと「傑作」とは言い難い。

それはなぜかと言えば、やっぱしレックスが3年間サスキアを探し続けたという描写にリアリティが欠けているからに他ならない。3年を経てレックスがサイコ(妄執)しているのならわかるけれども、この男、どう観たって最初のドライブシーンからそんなにキャラが変わっていない。
この映画の見所はサイコと執念(妄執)の対決なわけ(になるはず)だから、それは致命的だと思う。

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