徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

最先端と軽薄/「殺人狂時代」「地獄の饗宴」

2010-01-15 02:53:18 | Movie/Theater
殺人狂時代 
1967/モノクロ
監督:岡本喜八
原作:都築道夫「飢えた遺産」
脚本:小川英/山崎忠昭/岡本喜八
出演:仲代達矢、団令子、砂塚秀夫、天本英世
<大学講師・桔梗(仲代)の背中の傷に埋め込まれているヒトラーのダイヤモンド"クレオパトラの涙"をめぐって、人口調節のため殺人を行う奇妙な団体"大日本人口調節審議会"と、講師の仲間たちが争奪戦を繰り広げていくスリリングで奇怪なコメディ。>(日本映画専門チャンネル

地獄の饗宴 
1961/モノクロ
監督:岡本喜八
原作:中村真一郎「黒い終点」
出演:三橋達也、団令子、池内淳子、田崎潤
<国際コールガールのポン引きをする一方、得意のカメラでエロ写真を客に売り付けている戸部修(三橋)は、あるネガを拾ったことから、1億5千万の横領事件に関わり、殺し屋に命を狙われるハメに陥る。>(日本映画専門チャンネル

喜八作品で一番繰り返し観たのが「殺人狂時代」だと思う。何回観ても古臭さをほとんど感じさせない、実にモダンでかっちょいい世界なのである。
「殺人狂時代」があまり古臭さを感じさせないのは、少ないキャストに加えて、当時まだ生々しい記憶が残っていたはずの第二次世界大戦のエピソード以外に、あまり当時の風俗を登場させていないこともあるのだろうが、「地獄の饗宴」は昭和30年代当時の東京の風俗や日本人をしっかり匂わせる世界になっている。それでもモダンに感じさせるのは、もちろんそもそも監督のセンスだろうし、風俗の描き方が巧いということもあるのだろうし、映画が“最先端”の表現だったということもあるだろうし、それを全部ひっくるめて昭和30年代=60年代という時代のモダンがあるのだと思う。
「地獄の饗宴」のラストシーンは結構ヘヴィなのだけれども、そこまでに至る三橋達也の軽薄さが実に心地良い。
軽薄さとは即ちモダンである。
そしてそれは、やはり今の時代には失われてしまったものでもある。

あ、あと2本ともヒロインの悪女役で出演している団玲子が最高。

日本映画専門チャンネルの<映画のすべて、ここにあり。-娯楽のアルチザン 監督 岡本喜八>特集はまだ続く。