本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ルーム

2016-05-07 10:52:40 | Weblog
■本
37 CMを科学する/横山 隆治

 ネットにつながったテレビからの「視聴ログ測定サービス」や脳波や表情からどのような感情や集中度合でテレビを観ているかという「視聴質」の測定など、主に動画CM分野での科学的にその効果を分析する手法について解説してくれています。まだ実用途上の技術を過大に評価している傾向はありますが、アメリカの最新事例レポートも収録されていて、この分野の最先端の知識を得るにはよい本です。アンルーリー社やViibar社といった、これから旬を迎えそうな企業関係者へのインタビューが掲載されているところも、横山さんらしい目利きの鋭さが感じられます。


■映画
32 キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー/監督 ジョー・ジョンストン
33 キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー/監督 アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
34 インヒアレント・ヴァイス/監督 ポール・トーマス・アンダーソン
35 スポットライト 世紀のスクープ/監督 トム・マッカーシー
36 ルーム/監督 レニー・アブラハムソン

32、33 先週に「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を観たのですが、主人公とその友人であるバッキー・バーンズとの関係がよくわからなかったので、その前2作を続けて観ました。キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースが以前は虚弱な青年で、バッキー・バーンズにいろいろと助けてもらっていたこと、第二次世界大戦のナチスに対抗するために、科学技術によりスティーブ・ロジャースは超人となったが、ナチスの残党の組織ヒドラからアメリカを守るためにミサイルを積んだ飛行機とともに北極に沈み70年後に冷凍保存状態で発見されたこと、バッキー・バーンズがヒドラに洗脳と肉体改造を受けていたこと、などなどを知ることができ、全てのストーリーがつながりました。トミー・リー・ジョーンズやロバート・レッドフォードといった大御所を、さほどおいしくない役で使っていてとても贅沢です。「ウィンター・ソルジャー」では、スカーレット・ヨハンソン演じるナターシャ・ロマノフが、峰不二子ばりのトリックスターぶりで大活躍していて、「アベンジャーズ」シリーズを通じて一番の存在感を示しています。基本的には暗い話なのですが、キャプテン・アメリカの愚直なまでの正義感のためか、深みがありかつ後味のよいアクション大作となっていて好ましいです。

34 クリストファー・ノーラン監督と並び、私と同じ歳の天才監督として尊敬している、ポール・トーマス・アンダーソン監督の現時点での最新作です。大作「ザ・マスター 」の後なので、当分新作が出ないだろうと油断している間に公開されていて、観逃していたものをレンタルして観ました。奇抜な設定とハイセンスな映像の力技で若干冗長な作品を見せ切るという、もともとあまり観客に親切な作風の監督ではないですが、それでもこれまでの作品はストーリー展開的には追いやすいものが多かったです。しかし、本作では、そのストーリー展開も、難解で名高いトマス・ピンチョン原作のためか、わかりにくく、これまでにも増して観客を選ぶ作品だと思います。ホアキン・フェニックスの怪演と70年代のアメリカを忠実に再現した(と思われる)映像と音楽で、楽しく観ることができましたが、最後まで消化不良な印象が残る映画です。ポール・トーマス・アンダーソン監督の才気は画面から迸りまくっていますが、若干空回っている印象の作品です。でも、次作も必ず観ます。

35 特段真面目でも不真面目でもない普通の組織人が、上司の指示により取材をする中で、その取材対象の苦悩に共感し、次第に仕事にのめり込み大きな成果を得るという、とても真面目で地に足のついた作品です。大きな事件や陰謀で過度に脚色することなく、淡々した描写が続く点や超人的な登場人物がいないところも好感が持てます。「働く」ことに対する希望が得られてGW明けもなんとか頑張れそうです。個人的にはアカデミー賞の脚本賞は納得ですが、作品賞と監督賞は、「レヴェナント」と逆でもよかったと思います。この作品は脚本と監督の力が特に評価されるべきだと思いますし、「レヴェナント」は逆にアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督のディレクション、レオナルド・ディカプリオの演技、映像や音楽に関わった全ての人が総合的に評価されるべき作品だと思いました。作品賞は同じく圧倒的な総合力の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でもよかったかもしれませんが。あと、昨年のアカデミー賞でアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の「バードマン」で主演男優賞を逃し、本作でもアカデミー賞からは無視されているマイケル・キートンですが、地元愛に満ちたベテラン記者をとても味わい深く演じています。

36 こちらも今年のアカデミー賞で話題をさらった作品です。脚本・脚色も素晴らしいですが、やはり主演女優賞を取ったブリー・ラーソンとその息子役を演じた子役の演技力に圧倒されます。監禁生活とその脱出後という、大きく異なる二つの生活を描いています。こういうタイプの作品は、緊迫感のある前半を経ての後半はえてして平板になることが多いですが、観客受けしがちな芸達者な子役をメインにしたいという誘惑に耐えて、母親の方の心理状態に焦点を当てたところが勝因だと思います。主人公の失ったもの(7年間の両親や友人との時間)と得たもの(息子)のそれぞれの重みを丁寧に描き、さまざまな葛藤を経つつも、ささやかな再生の予感を感じさせるエンディングにつなげる手腕も見事です。テーマも含めて巧みに現代という時代を切り取った作品だと思います。
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