本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

君はどう生きるか

2024-06-23 07:38:56 | Weblog
■本
55 君はどう生きるか/鴻上 尚史
56 ネガティブクリエイティブ/藤井 亮

55 「シンパシー」と「エンパシー」の違いや「悩むこと」と「考えること」の違いなど、鴻上尚史さんが、これまでに様々な場所で発信されてきたメッセージを、10代の人たち向けにわかりやすくアドバイスされている本です。10代の人たちの多くが悩む、「コミュニケーション」についてのアドバイスが多いことが特徴的で、「もめること」や「迷惑をかけること」は悪いことではないとし、「対話すること」の重要性が強調されています。ベースにあるのは「自分の頭で考える」ことの大切さで、学ぶことの意味も、この点にあるということが繰り返し説明されています。結局は、自分の好きなことを追求して、自立できる人間になるという結論に集約されるのだと思います。スマホやAIとの付き合い方やルッキズムなど、最新の課題についてもアドバイスしてくれていて参考になります。個人的には、「よりよく生きるため」に「たくさんの言葉を手に入れる」というアドバイスが印象に残りました。大人にとっても、鴻上さんが発する「たくさんの言葉を手に入れる」ことができ、気持ちが軽くなる示唆に溢れた本です。

56 私もネガティブな人間なのでタイトルに魅かれて読みました。内容は、元電通のしかも亜流の関西で勤務されていた、クリエイターの方が書かれた発想術、仕事術です。ネガティブな人間が持つ、細かいことにくよくよとする性質や劣等感を創作活動のバネとしている点や、亜流であったが故に徹底的に差別化したアウトプットを追求されてきた筆者の姿勢に共感します。一方で、理想を高く持ち、リスクを取って活動し、様々な分野に自分で手を動かして取り組まれている、ネガティブ人間にまるまじき姿勢に憧れます。個人的には、私はネガティブ思考に加え、手先が不器用という欠点もあるので、物を生み出す技術を持つ筆者がうらやましいです。結局は、ネガティブな思考をどのようにポジティブな行動につなげるのかが重要なのだと気づきました。マイナスをプラスに転化する、クリエイティブな仕事以外でも役立つ思考法が満載です。個人的には「土台となる世界観をしっかりと決め込んで」「その世界観の枠組みの中で遊ぶ/ふざける」という考え方が印象に残りました。私が好きな映画や小説はこの世界観の完成度が高いのだと思います(ヨルゴス・ランティモス監督作品が好きな理由もこの点にあると気づきました)。ネガティブで不器用な私でも、なんとかサバイブしていくために、自分の強みや特徴は磨いていきたいと思いました。


■映画 
52 星の子/監督 大森 立嗣
53 死刑にいたる病/監督 白石 和彌
54 許されざる者/監督 ジョン・ヒューストン

52 少し前に読んだ「むらさきのスカートの女」がとても印象的だったので、同じく今村夏子さん原作のこの作品を観ました。新興宗教にはまった両親をその子どもの視点から描き、愛情と崩壊の予感に満ちた、ありそうでないタイプの作品で不思議な余韻が残っています。公開当時16歳の芦田愛菜さんが、まさにはまり役で、恋に恋する中三女子を見事に演じています。器の小さいイケメンを演じると天下一品の岡田将生さんが、この作品でも薄っぺらい教師を自然体で演じられていて魅力的です。その他にも技巧派俳優が効果的に配されて、作品に安定感をもたらせています。観ている間、もやもやとした感情がずっとついてまわりますが、その感情が不思議と不快ではないです。よかれと思ってとっている行動が、少しずつ不幸を増幅させていく過程が切ないです。せめて、宗教にはまる人たちが、誰かの悪意によって翻弄されていないことを祈るのみです。そういった複雑な宗教という問題に、ありのままの感情でタブーなく向き合っているこどもたちの姿が新鮮です。強烈なインパクトはないですが、引っ掛かりの多い作品です。

53 「羊たちの沈黙」のレクター博士のように、阿部サダヲさん演じる連続殺人犯が、獄中からいろいろな登場人物に影響を与えるサイコ・スリラーです。ストーリーは、よく練られていて、随所に張られた伏線が、終盤にかけて怒涛のように回収されていきます。殺人シーンは、思わず声が出そうになるほど残酷で迫力があります。エンディングも違った角度からの恐ろしさを提示してきて印象的です。阿部サダヲさんは、こういった作品で重要な、凶暴さと狂気と可愛げとを兼ね備えた人物を見事に演じています。にもかかわらず、私個人としてのこの作品の評価は低めです。マインドコントロールと言ってしまえばそれまでですが、主人公に操られる人々の行動原理の説得力が弱いと感じました。また、これだけ狭いエリアでの連続殺人で、犯人がなかなか捕まらなかったということも考えられません。異常な世界を描くにしても、その世界の中での説得力は必要だと思います。いっときの刺激は得られますが、「羊たちの沈黙」のように長く語り継がれる作品にはならない気がします。

54 クリント・イーストウッド監督主演でアカデミー作品賞を取った「許されざる者」ではなく、オードリー・ヘプバーン主演の1960年公開の方です。オードリー・ヘプバーンがこういう西部劇に出ていたことを知らなかったので興味深かったです。埃っぽい西部においても、オードリー・ヘプバーンはとても魅力的でした。ストーリーの方はネタバレになるので詳しく書きませんが、少し前に観たエルヴィス・プレスリー主演の「燃える平原児」と構造が全く同じものでした。ハリウッドは、ネイティブ・アメリカン迫害の贖罪意識もあってか、大スター主演で同じ構造の作品を好むのかもしれません。ストーリーはダラダラとした展開で、クライマックスのカイオワ族との戦闘シーンに入ったのが最終盤で、無事エンディングにたどり着くかという点でハラハラとしました。予想通り中途半端で力技の結末で、美しい風景を描けば、オチがつくという安直な発想にガッカリしました。一方、恋愛映画としてはベタながらも、オードリー・ヘプバーンの美しさと相まって、それなりに萌えました。やはり、オードリー・ヘプバーンを愛でるための作品だと思います。
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