■本
6 0秒リーダーシップ/ピョートル・フェリークス・グジバチ
7 とにかくうちに帰ります/津村 記久子
6 特に目新しい内容はありませんでしたが、「プロトタイプシンキング」や「マインドフルリーダーシップ」など、最新のトレンドをコンパクトに押さえつつ、テクノロジーが進化してグローバル化も進展した変化の激しい時代のリーダーシップのあり方について、網羅的に解説してくれているので参考になります。しかし、書かれている内容よりも、共産主義時代のポーランドで生まれて、冷戦終結に伴う混乱に翻弄されつつも学習意欲を失わず、モルガン・スタンレーやグーグルの人材開発責任者にまでになった、筆者の経歴とマインドセットの方に刺激を受けました。
7 津村記久子さんの短中編小説集です。冒頭の「職場の作法」と題された短編連作集は、津村さんらしく、仕事上の些細な屈託や矜持が丁寧にかつコミカルに描かれていて、「職場あるある」的な楽しみ方ができます。アルゼンチン男子フィギュアスケーターについての、トリビアルな関心を描いた短編を経て、圧巻は表題作の「とにかくうちに帰ります」です。いつものように、仕事で嫌なことがあった主人公の、早く家に帰りたいという心の叫びを描いた小説かと読む前に勝手に想像していましたが、豪雨で交通機関がマヒした人工島から歩いて家路を急ぐ4人の登場人物を描いた、津村さんの作品にしては非常にダイナミックな内容でした。豪雨という非日常を描くことにより日常の平凡な生活の有難さが、そして、普段の職場では冴えない人物の緊急時の善意を描くことにより人間のささやかな気高さが、地味ながらもしみじみと心に浸み込んできます。津村さんの新しい試みが成功していて、ファンとしてはいろんな意味でも楽しめました。これからも彼女の作品を読み続けたいと思わせる優れた作品です。
■映画
8 チェンジング・レーン/監督 ロジャー・ミッシェル
自動車接触事故により人生の歯車が狂い始める二人の登場人物を描いたサスペンスです。ベン・アフレックが少し傲慢なエリート弁護士を、サミュエル・L・ジャクソンがアルコール依存症から脱却しようとする保険セールスマンを手堅く演じています。衝動的な「怒り」がもたらす悪影響をテーマにしている点や、先の読めない展開、そして、なによりサスペンスなのに人が誰も死なないところにとても好感が持てました。しかし、ストーリーがなにぶんご都合主義過ぎます。狭い町なのでしょうが、主人公がやたらと偶然に出会います。出番は少ないものの、アルコール依存症患者の集会で出会った友人役をウィリアム・ハートが好演していたので、「怒り」に翻弄される主人公たちと彼の対比をもっと強調して欲しかったです。二人の不幸な諍いが、お互いの成長につながったように見せるエンディングは素晴らしいと思いました。
6 0秒リーダーシップ/ピョートル・フェリークス・グジバチ
7 とにかくうちに帰ります/津村 記久子
6 特に目新しい内容はありませんでしたが、「プロトタイプシンキング」や「マインドフルリーダーシップ」など、最新のトレンドをコンパクトに押さえつつ、テクノロジーが進化してグローバル化も進展した変化の激しい時代のリーダーシップのあり方について、網羅的に解説してくれているので参考になります。しかし、書かれている内容よりも、共産主義時代のポーランドで生まれて、冷戦終結に伴う混乱に翻弄されつつも学習意欲を失わず、モルガン・スタンレーやグーグルの人材開発責任者にまでになった、筆者の経歴とマインドセットの方に刺激を受けました。
7 津村記久子さんの短中編小説集です。冒頭の「職場の作法」と題された短編連作集は、津村さんらしく、仕事上の些細な屈託や矜持が丁寧にかつコミカルに描かれていて、「職場あるある」的な楽しみ方ができます。アルゼンチン男子フィギュアスケーターについての、トリビアルな関心を描いた短編を経て、圧巻は表題作の「とにかくうちに帰ります」です。いつものように、仕事で嫌なことがあった主人公の、早く家に帰りたいという心の叫びを描いた小説かと読む前に勝手に想像していましたが、豪雨で交通機関がマヒした人工島から歩いて家路を急ぐ4人の登場人物を描いた、津村さんの作品にしては非常にダイナミックな内容でした。豪雨という非日常を描くことにより日常の平凡な生活の有難さが、そして、普段の職場では冴えない人物の緊急時の善意を描くことにより人間のささやかな気高さが、地味ながらもしみじみと心に浸み込んできます。津村さんの新しい試みが成功していて、ファンとしてはいろんな意味でも楽しめました。これからも彼女の作品を読み続けたいと思わせる優れた作品です。
■映画
8 チェンジング・レーン/監督 ロジャー・ミッシェル
自動車接触事故により人生の歯車が狂い始める二人の登場人物を描いたサスペンスです。ベン・アフレックが少し傲慢なエリート弁護士を、サミュエル・L・ジャクソンがアルコール依存症から脱却しようとする保険セールスマンを手堅く演じています。衝動的な「怒り」がもたらす悪影響をテーマにしている点や、先の読めない展開、そして、なによりサスペンスなのに人が誰も死なないところにとても好感が持てました。しかし、ストーリーがなにぶんご都合主義過ぎます。狭い町なのでしょうが、主人公がやたらと偶然に出会います。出番は少ないものの、アルコール依存症患者の集会で出会った友人役をウィリアム・ハートが好演していたので、「怒り」に翻弄される主人公たちと彼の対比をもっと強調して欲しかったです。二人の不幸な諍いが、お互いの成長につながったように見せるエンディングは素晴らしいと思いました。