本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

本屋、はじめました

2024-06-30 06:08:10 | Weblog
■本
57 本屋、はじめました 増補版/辻山 良雄
58 なぜ働いていると本が読めなくなるのか/三宅 香帆

57 定年後に本屋をするのもいいかな、といった軽い気持ちで読み始めましたが、そんな浅はかな考えが恥ずかしくなるほど、本気に本屋という職業について考え抜かれた素晴らしい本でした。「リブロ」で20年近く働いた生粋の書店員の方が、その事業計画から、立地、間取り、品ぞろえ、イベント企画、そしてその1年目の営業成績まで、隠すことなく細かく紹介してくれていて、とても興味深いです(しかし、今からのにわか勉強で、真似できるとはとても思えません)。自店の顧客のターゲットを明確にし、その顧客に喜んでもらうためには、どのような品揃えやイベントを考えるべきか、ということの整合性が取れていて、実に見事です。ウェブサイトや旧ツイッターの活用方法も適切で、デジタルマーケティング事例としても秀逸です。環境変化により衰退しつつある業界でも、知恵と情熱があればビジネスとして成立させることができるということがよくわかります。ただ、成長産業とは異なり、人と同じことをしていては、成功できないという厳しさも感じます。人口減少局面にある日本で働く我々も、今後ますます辻山さんのような心構えで、仕事に取り組まなければならないのだとも思いました。ある種のサクセスストーリーなので爽快感も感じますが、日本のビジネスパーソンが置かれている厳しい状況についても考えさせられる本です。

58 引き続き「本」に関する本を。最近売れているということで、タイトルのキャッチーさにも惹かれて読みました。働きながら本を読めるだけの心の余裕が持てるように、「全身全霊で働くことはやめよう(半身で働こう)」という結論は大いに共感できますし、「修養」と「教養」をキーワードに明治時代から現代に至るまでのベストセラーの変遷を振り返りながら、日本人と読書との関係を見ていく構成も興味深かったです。しかし、細部のロジックは個人的には甘さを感じました。働くとスマホゲームはできても読書ができなくなる理由として、新自由主義の競争社会で疲弊している労働者にとっては、ノイズ(未知の要素)が含まれる読書をする精神的な余裕がない、ということがこの本の大まかな趣旨だと私は理解しましたが、このような傾向は否定しないまでも、やはり、本という媒体がインターネットやソーシャルメディア、動画も含めた他の媒体との競争に負けているという面の方が大きいと思います。確かにネット社会にフィルターバブル的な傾向があるのは事実ですが、知的好奇心(必ずしも自分の既知の知識を強化する目的だけではない)からショート動画などを観る人も大勢いると感じますので、「ノイズ」の有無だけで労働者が接するメディアを選択することはそう多くはない気がします。この本がウェブでの連載を元にしているという事実も、ウェブを閲覧している人が「ノイズ」に耐えられることを証明しているのだと思います(筆者はウェブ連載は、本と同等と考えられているのかもしれませんが)。とはいえ、毒舌も交えつつも丁寧に議論を進める姿勢からは、筆者の教養の深さと読書に対する愛情を感じました。働いていてもゆっくり本を読める社会になって欲しいです。


■映画 
55 レッド・スパロー/監督 フランシス・ローレンス
56 オータム・イン・ニューヨーク/監督 ジョアン・チェン

55 ジェニファー・ローレンス出演作は、はずれがないという印象があります。こちらは彼女がロシアのスパイを演じた2018年公開の作品です。相変わらず芯の強い女性を巧みに演じています。フルヌードシーンも含めた身体を張った演技で、いろいろな意味で迫力満点です。ギリギリでエロティックな絡みに進まないこともあり、セクシーさよりも凛とした佇まいの方が印象に残ります。もちろん素晴らしい演技なのですが、従来の彼女の演技と比べると少しクドさを感じます。ストーリーの方は、若干冗長でご都合主義的ですが、二重三重に観客の予想を裏切る先の読めない展開で、最後まで飽きませんでした。残酷な拷問シーンが多い割には、後味もよく、ジェニファー・ローレンスの強かにサバイブしていくイメージによく合った作品だと思います。やはり男は美人に弱いということも思い知らされます。彼女の出演作の中ではベストなものではないですが、良質のサスペンス映画だと思います。

56 一見ウディ・アレン監督作かと思うタイトルの、リチャード・ギアとウィノナ・ライダーが、歳の離れた恋愛関係を演じた作品です。リチャード・ギアもウィノナ・ライダーも実に美しく、それだけでも一見の価値はあります。特に、中年のプレイボーイを演じたリチャード・ギアはセクシーで、この作品で初めて格好いいと思いました。ウィノナ・ライダーも2000年公開の作品なので、まだ、無垢な魅力に溢れています。一方、ストーリーの方は実に平板で、既視感のある展開が続き、先の展開が容易に予想出来て興ざめでした。その分「真実は悪臭を放つ」などの魅力的なセリフで雰囲気を出そうと健闘していますが、いかんせん、ストーリーが浅すぎて、ウディ・アレン監督作のスタイリッシュさには遠く及びません。何より、プレイボーイの過去のエピソードがクズ過ぎて、なぜ、彼がこんなに周囲の人間に恵まれているのかが疑問になるほどでした。モテない中年男の嫉妬も多分に含まれていますが、ニューヨークを舞台にした恋愛映画なら他にいくらでも観るべき映画はあると思います。
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