本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

クリスタル・スカルの王国

2008-07-27 07:05:21 | Weblog
■本
57 実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法/安田 雪
58 大企業のウェブはなぜつまらないのか/本荘修二

57 ネットワーク分析に興味があるので読みました。大学の講義用のテキストといった趣の本です。行列なんて久しぶりに接しました(「インバース」って言葉を目にしたのは20年ぶりくらいです)。この分野に興味のある方はまず、同じ筆者の「ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ) 」から読むべきだと思います。 若干高度な内容になっていますが、用語の定義がしっかりしていて、論理展開も厳密なので、丁寧に読めば理解できると思います。筆者の学問に対する情熱も伝わってきて、再読しながら少しずつ理解していく価値のある本だと思います。

58 ECサイト向けのノウハウ本はたくさんありますが、大企業向けのWEBサイトに書かれた本は意外と少ないので、その着眼点はよいと思います。ただ、筆者が引用している事例の出典のかなりの部分をすでに僕が読んでいるので、目新しさはあまりありませんでした(この点で少し評価が厳しくなっているのかもしれません)。展開されている理論も、少しこの分野に詳しい人間ならすでに常識となっていることばかり。筆者が収集している情報に漏れはなく、主流の論点も押さえられているのですが、筆者自身の独自の経験や主張がほとんどなく、この本から得られた新たな気づきは皆無でした。そもそも、筆者のターゲットと僕があっていないのかもしれませんが、どちらかといえばネットに疎いおじさん向けの、解説書という印象を受けました(がそんな人がこの本を手に取るのかは、はなはだ疑問ですが)。


■CD
20  Beautiful Future/Primal Scream

 正直言ってイマイチじゃないですか、本作。「Screamadelica」以降の作品を手放しで評価してきた僕ですが、時代の半歩先を常に歩んできた Primal Screamの進取の気性といったものが、本作からまるで感じられません。過去の遺産を食い潰しているかのような、自己模倣のにおいがプンプンします。僕が歳を取ったのか、Primal Screamが歳を取ったのか、その両方なのか、、、正直失望しています。


■映画
17 インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国/監督 スティーヴン・スピルバーグ
18 劇場版ポケットモンスター/ダイヤモンド&パール ギラティナと氷空(そら)の花束 シェイミ/監督 湯山邦彦

17 本作も賛否が分かれていますが。僕は好きです。全編エンターテイメントに徹しているところがすばらしい。最近のアクションものは主人公の内面の葛藤やトラウマを描いたものが多かったのですが(それはそれで、物語の深みを与える要素として重要だとは思いますが)、「物語の深みなど不要」といわんばかりに浅い人間像でコミカルに「楽しければそれでいい」と割り切って描ききった凄みを感じます。Primal Screamの新作と同様自己模倣なのですが、なぜこうも印象が違うのでしょうか? 作り手側が自己模倣と認識しているか否かが、僕の印象の違いになっているような気がします。ハリソンフォードやケイト・ブランシェットの動きの切れが悪い(特にケイト・ブランシェットは優秀なロシア兵とはとても思えない切れの悪さです)など、つっこみどころはたくさんありますが、僕は本作を評価します。

18 子どもたちの映画館デビューに付き合ってきました。完成度は高いと思いますが、前作の方がおもしろかったです。人間とポケモンが戦われてもねえ、といんのが第一印象。ちゃんとポケモン同士の戦いを描いて欲しかったし、子どもたちもそれを望んでいると思います。僕の好きなロケット団(特にソーナンス)やグレッグルがほとんど登場していないのも個人的に評価が低い理由です。

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タンノイのエジンバラ

2008-07-21 07:13:38 | Weblog
■本
55 Fが通過します/佐藤 雅彦
56 タンノイのエジンバラ/長嶋 有

55 かなり反則ですが、それなりに高価な本なのであえて1冊とカウントさせていただきます。開封したときのインパクトがまずでかいです(たぶん、そのインパクトがこの本の価値の半分以上を占めているでしょう)。内容は佐藤さんの作品らしい、「そういう見方があったか!」という発見の連続です。鈍感な僕は最後の目次を見て初めてその意味に気づくことも多かったです。疲れたときの頭の体操によい本です。

56 最近まとめて読んでいる長嶋さんの短編小説集。これまで読んだ長嶋作品の中で一番好きです。どの作品も「他人の気持ちはわからない」という前提にたちながら、ささやかに気持ちが通い合う瞬間が描かれています、(そして通い合ったかに見えた気持ちがまた離れていく瞬間も)。「あいつとはすべて分かり合っている」という濃密な信頼感よりも、あまり親しくない人たち(というか、たまたま1、2回偶然に出会った人たちとか)とほんのわずかに心が通い合った経験の方が、厳しい人生をサバイブしていく上では、有益なのでは、とふと思わせるような作品集です。人生に対して、妄信しておらず、かといって絶望もしていない絶妙のバランス感覚が僕にとっては読んでいて心地よいです。
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おはなし おはなし

2008-07-14 06:25:17 | Weblog
■本
53 なめこ・イン・サマー/吉田 戦車
54 おはなし おはなし/河合 隼雄

53 吉田戦車さんの結構若い時代のエッセイ。漫画と同様のシュールな世界感ですが、子育てや手料理など、吉田さんの日常生活も垣間見られます。僕にとって吉田戦車さんは常に年上のイメージですので、吉田さんの30歳台の文章を読むのは少し変な感じがしました。母校に寄稿した高校時代の思い出の話は結構感動的で、ゆるい学生生活も無駄にはならないというメッセージが好きです。

54 河合隼雄先生のエッセイ集。河合先生はたくさんエッセイも出されていますが、僕の読んだ限りでは、本作はプライベートの話題も多く、もっとも親しみやすい作品だと思います。かといって内容が薄いわけでは決してなく、自己理解促進といった本来の目的よりも、他人への攻撃に心理学の知識を乱用する風潮を危惧される、「心理学公害」 というエッセイなど、切れ味鋭い内容も多々あります。「偏食」や「子どもがなぜ怖い話を好むのか」についてなど、自分の子育ての参考になる話もたくさんあり、楽しみながらも役に立つ知恵が得られるよい本です。


■CD
19 Modern Guilt/Beck

 前作がキラキラゴージャスな印象の作品だったのと一転して、本作は押さえのきいた深みのある作品です。とはいえ相変わらずのアイデアてんこ盛りで、引っ掛かりのあるリズムトラックなど、Beckの才気の迸りも堪能することができます。全体で30数分と最近の作品にしては珍しく、収録時間が短い作品なので、油断しているとあっという間に聴き終えてしまいます。何度も繰り返し聴いて、細部の工夫を新たに発見して喜べる、長く付き合える作品だと思います。

・Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust/Sigur Ros

 Napsterではまって聴きまくってます。ジャケットもインパクトありますが、それに負けずに内容も充実しています。アイルランドのバンドということもあり、Sigur Rosはこれまで静寂を基本とした「冬」のイメージが強かったのですが、本作は静寂を連想させる作品も収録されているものの、どちらかといえば、雪解けの高揚をイメージさせるような「春」的な作品が多い気がします。間違いなくSigur Rosの最高傑作。多くの人に聴いてもらいたい作品です。ちょっと日本にはいないタイプのアーチストです。

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JUNO

2008-07-05 06:40:02 | Weblog
■本
51 ニート/絲山 秋子
52 雨の日も、晴れ男/水野 敬也

51 かなりだめな男を、つかず離れずある覚悟を持って見守る女性、といった似た構成を持つ短編集。絲山さんの文章はクールだけど、どこか熱を持っていて本当に格好いい。こういう文章を書けるようになりたい、といつも思います。本作も写筆したいと思わせるほどの格好いい文章が満載です。5作の中では、「へたれ」がちょうど新幹線に乗りながら読んでいたこともあり、臨場感を持って読めたので、一番印象に残っています。最後の「愛なんていらねー」は野心作であるとは思いますし、男の挫折と絶望を描くために変態的な性癖を使った意図も理解できるのですが、かなり読んでいてつらかったです。

52 たまにポジティブ成分を注入しないと、どこまでもネガティブな思考に陥るので本作を読みました。筆者の「俺、いいこと書いてる」という意図が見え過ぎるとか、商業主義的過ぎるとか、批判をしようと思えばいくらでもできますし、あまり好きなタイプの本ではないのですが、エンターテインメントにこだわった自己啓発本というジャンルを切り開いて成功しているところは評価すべきだと思います。本書のテーマは単純化すれば、「周囲に楽しませてもらうことを期待するのでなく、周囲を楽しませることを意識すれば人生は変わる」というものですが、過剰なまでにコミカルな味付けをすることにより、説教臭さを巧みに消しています。とはいえ、こういう本がバカ売れする世の中もちょっと浅すぎて嫌な気もしますが。


■映画
16 JUNO/監督 ジェイソン・ライトマン

 脚本(特にキャラの立て方と会話のセンス)とJUNO役のエレン・ペイジの演技に尽きます。アメリカの女子高校生もなかなか大変だなあ、と思いました。どこか屈折していますが、前向きに妊娠という現実に向かいあうJUNOの強さに好感が持てます。今のアメリカで、こういう映画がヒットしたという事実に少し救われた気がしました。JUNOのお父さんも適度な距離感を保ちつつ、娘を信じて温かく見守っていて、こういう父親にならねば、と思いました。最初はヘタレっぽかったJUNOのボーイフレンドも寡黙に耐えることにより、男らしさを示していていい感じです。適度な長さで、映画を観る楽しさを実感できるいい作品です。
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